エンジン制御装置
【課題】エンジンにおける粒子状物質の排出量異常を精度良く検出する。
【解決手段】PMセンサ17は、ガス中に含まれるPM(導電性粒子状物質)を付着させる被付着部と、被付着部に互いに離間して設けられる一対の対向電極とを有し、一対の対向電極間の抵抗値に応じた検出信号を出力する。PMセンサ17には、被付着部に付着したPMを燃焼除去させるべく被付着部を加熱するヒータ部35が設けられている。マイコン44は、エンジン停止時に、ヒータ部35の加熱によるPMの燃焼除去を行い、燃焼除去した後の次回のエンジン始動時において、PMセンサ17によるセンサ検出信号に基づいてエンジンにおけるPM排出量異常を診断する。
【解決手段】PMセンサ17は、ガス中に含まれるPM(導電性粒子状物質)を付着させる被付着部と、被付着部に互いに離間して設けられる一対の対向電極とを有し、一対の対向電極間の抵抗値に応じた検出信号を出力する。PMセンサ17には、被付着部に付着したPMを燃焼除去させるべく被付着部を加熱するヒータ部35が設けられている。マイコン44は、エンジン停止時に、ヒータ部35の加熱によるPMの燃焼除去を行い、燃焼除去した後の次回のエンジン始動時において、PMセンサ17によるセンサ検出信号に基づいてエンジンにおけるPM排出量異常を診断する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン制御装置に関し、詳しくは、粒子状物質検出センサの検出信号に基づいて、排気に含まれる粒子状物質(PM:Particulate Matter)の量を検出するエンジン制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンから排出されるPMの量を検出するPMセンサ(粒子状物質検出センサ)が各種提案されている。例えば、特許文献1のPMセンサでは、絶縁基板上に一対の対向電極を設けておき、その一対の対向電極間にPMが堆積すると電極間抵抗が変化することを利用し、電極間抵抗を計測することでPM量を検出する構成としている。この場合、センサ素子に接続される検出回路としては、一対の対向電極間の抵抗分である電極間抵抗と所定のシャント抵抗とにより分圧回路を構成し、分圧回路の中間点電圧をセンサ検出信号として出力するようにしている。
【0003】
また、特許文献2のPMセンサでは、ヒータが内蔵されており、所定の走行距離毎、所定の走行距離毎、又は使用燃料量毎にヒータによる加熱を行うことにより、一対の対向電極間に堆積したPMを燃焼除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−196453号公報
【特許文献2】特開2009−144577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンジンでは、その燃焼状態を制御するための各種パラメータにおいて適合値のずれが生じたり、あるいはエンジンの燃焼に係る各種アクチュエータの故障が発生したりするとPM排出過多の状態になり、エミッションが悪化することが想定される。この場合、環境の悪化を招くことから、何らかの対策を講じるべく、その燃焼異常を精度良く検出する必要がある。
【0006】
本発明は、エンジンにおける粒子状物質の排出量異常を精度良く検出することができるエンジン制御装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について説明する。
【0008】
本発明は、排気に含まれる導電性の粒子状物質を付着させる被付着部と、前記被付着部に互いに離間して設けられる一対の対向電極と、前記被付着部を加熱する加熱手段とを有し前記一対の対向電極間の抵抗値に応じた検出信号を出力する粒子状物質検出センサを排気通路に備えるエンジンに適用される。そして、請求項1に記載の発明は、エンジン停止時に、前記被付着部に付着した粒子状物質を燃焼除去すべく前記加熱手段による加熱を実施する加熱制御手段と、前記加熱制御手段により前記粒子状物質を燃焼除去した後の次回のエンジン始動時において、前記粒子状物質検出センサによるセンサ検出値に基づいて、前記エンジンにおける前記粒子状物質の排出量異常を診断する異常診断手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
粒子状物質検出センサでは、排気中の粒子状物質の量に応じてセンサ検出信号が変動する。また、排気中の粒子状物質の量はエンジン運転状態に応じて変化し、例えばエンジンの燃焼状態に異常が生じていると、粒子状物質の排出過多が生じる。本発明は、エンジン始動時には例えば燃料増量等に起因して粒子状物質の排出量が比較的多くなることに着目し、エンジン始動時において、センサ検出値をパラメータとしてエンジンの燃焼異常を診断するものである。この場合、エンジンの正常時と異常時とで粒子状物質の排出量の相違が現れやすく、その結果、エンジンの燃焼状態に異常が生じ、粒子状物質の排出過多が生じている時にも、その排出過多の状態を精度良く検出できる。
【0010】
ただし、エンジン始動時では粒子状物質の排出量が比較的多いことから、異常診断の開始前においてある程度の粒子状物質が被付着部に堆積した状態であると、エンジン始動時にセンサ検出値が一気に変化して出力限界値に達してしまい、結果として異常の検出漏れが生じるおそれがある。その点に鑑み、本発明では、エンジン始動時の異常診断に先立ち、エンジン停止時において、加熱手段の加熱による粒子状物質の燃焼除去を実施する。これにより、粒子状物質の排出量が多い状況下で上記異常診断を実施する場合にも、異常を精度良く検出できる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、前記加熱制御手段は、前記被付着部に付着している全ての粒子状物質を燃焼除去する第1制御手段を有し、前記異常診断手段は、エンジン停止時に前記第1制御手段により前記粒子状物質を燃焼除去した場合において、前記一対の対向電極の抵抗値の減少変化に伴い前記センサ検出値が変化するまでの不感帯の時間に基づいて異常診断を実施する。
【0012】
粒子状物質検出センサでは、被付着部に付着した全ての粒子状物質を燃焼除去すると、その後は、被付着部にある程度の量の粒子状物質が付着するまで粒子状物質の付着量が検出不可能になる、いわゆる不感帯が存在する。ここで、エンジンが正常であれば、被付着部の全ての粒子状物質をエンジン停止時に燃焼除去しておくことにより、エンジン始動時において十分に長い時間の不感帯が生じる。これに対し、エンジンの燃焼異常が生じ、粒子状物質の排出量が過多になった場合には、不感帯の時間が正常時よりも短くなる。この点に着目し、本構成では、不感帯の時間をパラメータとしてエンジンの異常診断を実施することにより、エンジン燃焼状態の正常時と異常時とを明確に判別することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、前記加熱制御手段は、前記被付着部に付着している粒子状物質の一部を残し、その一部以外の粒子状物質を燃焼除去する第2制御手段を有し、前記異常診断手段は、エンジン停止時に前記第2制御手段により前記粒子状物質を燃焼除去した場合において、前記センサ検出値の変化量に基づいて異常診断を実施する。
【0014】
上記構成によれば、エンジン始動時には一対の対向電極間に粒子状物質が残存し、その残存している粒子状物質の量に応じたセンサ検出値を取得できる。つまり、一対の対向電極間が繋がる程度に粒子状物質を残存させることで、不感帯を無くすことができる。また、一対の対向電極間において粒子状物質が途切れたとしても、被付着部に残存している粒子状物質によって一対の対向電極間がいち早く導通され、この場合には不感帯を短縮することができる。このように、不感帯を無くすか又は不感帯を短縮することにより、エンジン始動期間においてエンジンから排出される粒子状物質の量が比較的少ない場合にも、異常診断をできるだけ短時間で実施することができる。
【0015】
ここで、「センサ検出値の変化量に基づいて異常診断を実施する」とは、例えば、センサ検出値の所定時間あたりの変化量と判定値との比較や、又はセンサ検出値が所定量変化するのに要する時間と判定値との比較に基づいて異常診断を実施する場合を含む。
【0016】
請求項4に記載の発明では、所定の自動停止条件が成立した場合に前記エンジンを自動停止し、前記自動停止条件の成立後に所定の再始動条件が成立した場合に前記エンジンを再始動する手段と、前記エンジンの停止要求があった場合に、その停止要求が前記自動停止条件の成立に伴う停止要求か否かを判定する手段と、を備え、前記加熱制御手段は、前記被付着部に付着している全ての粒子状物質を燃焼除去する第1制御手段と、前記被付着部に付着している粒子状物質の一部を残し、その一部以外の粒子状物質を燃焼除去する第2制御手段とを有し、前記停止要求が、前記自動停止条件の成立に伴う停止要求である場合に前記第2制御手段による燃焼除去を実施し、前記自動停止条件の成立に伴う停止要求以外のエンジン停止要求である場合に前記第1制御手段による燃焼除去を実施する。
【0017】
エンジン自動停止後の再始動では、暖機状態でエンジン始動されることが考えられ、この場合に不感帯が存在していると、一対の対向電極間が導通されるまでに時間がかかり、その結果、異常診断に要する時間が長くなってしまう。この点に鑑み、本構成では、自動停止条件の成立に伴うエンジン停止時には、被付着部に付着している粒子状物質の一部を残し、その一部以外の粒子状物質を燃焼除去する。
【0018】
一方、ドライバのキー操作等に基づくエンジン始動では、冷間状態でエンジン始動されることが考えられ、この場合には不感帯の時間が適度に短くなる。したがって、ドライバのキー操作等に基づくエンジン停止時には、被付着部に付着している全ての粒子状物質を燃焼除去させるようにする。この場合、次回のエンジン始動時において不感帯の時間に基づく異常診断を実施することにより、エンジン始動開始後できるだけ早期に異常診断を実施できる。
【0019】
請求項5に記載の発明では、前記一対の対向電極間の抵抗である電極間抵抗と所定のシャント抵抗と電源部とを有してなる分圧回路を備え、前記センサ検出値が、前記電極間抵抗と前記シャント抵抗との中間点の電圧として出力されるものであり、前記異常診断手段は、エンジン始動時に前記中間点の電圧を取得し、該取得した中間点電圧に基づいて異常診断を実施する。
【0020】
粒子状物質検出センサの検出信号が、電極間抵抗とシャント抵抗との中間点電圧として出力される構成では、被付着部における粒子状物質の付着量と中間点電圧との関係が非線形となる。つまり、粒子状物質の付着量に対するセンサ検出値の感度は付着量に応じて異なり、付着量が多くなるほど、すなわち電極間抵抗が小さくなるほど、感度が低下する。したがって、上記異常診断に先立ち粒子状物質の燃焼除去を行う構成とすることにより、感度の高い領域で異常診断を実施することができ、診断精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】発明の実施の形態におけるエンジン制御システムの概略を示す構成図。
【図2】センサ素子の要部構成を分解して示す分解斜視図。
【図3】PMセンサに関する電気的構成を示す図。
【図4】PM堆積量とPM検出電圧との関係を示す図。
【図5】IGスイッチ切り替え時のPM強制燃焼処理及び異常診断処理の具体的態様を示すタイムチャート。
【図6】エンジン自動停止/再始動の場合におけるPM強制燃焼処理及び異常診断処理の具体的態様を示すタイムチャート。
【図7】PM強制燃焼処理を示すフローチャート。
【図8】第1燃焼処理を示すフローチャート。
【図9】第2燃焼処理を示すフローチャート。
【図10】第1異常診断処理を示すフローチャート。
【図11】第2異常診断処理を示すフローチャート。
【図12】異常判定値tthr1の設定用マップを示す図。
【図13】異常判定値tthr2の設定用マップを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、車載エンジンを備える車両エンジンシステムにおいて、同エンジンから排出される排気中のPM量(導電性粒子状物質の量)を監視するものである。特に、エンジン排気管にPMセンサを設け、そのPMセンサでのPM付着量に基づいてPM量を監視するものとしている。図1は、本システムの概略構成を示す構成図である。
【0023】
図1において、エンジン11は直噴式ガソリンエンジンであり、同エンジン11の運転に関わるアクチュエータとして燃料噴射弁12や点火装置13等が設けられている。エンジン11の排気管14には排気浄化装置としての三元触媒15が設けられており、その三元触媒15の上流側にはA/Fセンサ16が設けられ、下流側には粒子状物質検出センサとしてのPMセンサ17が設けられている。その他、本システムでは、エンジン回転速度を検出するための回転センサ18や、吸気管圧力を検出するための圧力センサ19等が設けられている。
【0024】
ECU20は、周知のCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータ(マイコン)を主体として構成されており、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、都度のエンジン運転状態に応じてエンジン11の各種制御を実施する。すなわち、ECU20は、上記各種センサ等から各々信号を入力し、それらの各種信号に基づいて燃料噴射量や点火時期を演算して燃料噴射弁12や点火装置13の駆動を制御したり、アイドルストップ制御などの各種エンジン制御を実施したりする。
【0025】
燃料噴射量制御について、ECU20は、エンジン始動開始当初では(例えばエンジン回転速度が400rpmや500rpm以下では)、エンジン水温等に応じた燃料増量(始動時増量)を実施してエンジン11の始動性を高めるとともに、エンジン始動開始当初以外の通常時には、例えば吸入空気量に応じて基本噴射量を算出し、その基本噴射量に対して、始動後増量補正や暖機増量補正などの各種補正を実施している。
【0026】
また、上記のシステム構成において実施されるアイドルストップ制御について詳述する。アイドルストップ制御は、エンジン11のアイドル運転時に所定の自動停止条件が成立すると当該エンジン11を自動停止させるとともに、その自動停止条件の成立後、所定の再始動条件が成立するとエンジン11を再始動させるものである。自動停止条件としては、例えば、アクセル操作量がゼロになったこと、ブレーキペダルの踏込み操作が行われたこと等の少なくともいずれかが含まれる。また、再始動条件としては、例えばアクセルの踏込み操作が行われたこと、ブレーキ操作量がゼロになったこと等の少なくともいずれかが含まれる。
【0027】
その他、ECU20は、PMセンサ17の検出結果から算出されるエンジン11の実際のPM排出量(実PM排出量)に基づいて、エンジン11の制御態様を可変に制御する構成であってもよい。例えば、実PM排出量に基づいて燃料噴射量を制御したり、燃料噴射時期を制御したり、点火時期を制御したりすることが可能である。
【0028】
次に、PMセンサ17の構成、及びそのPMセンサ17に関する電気的構成を図2及び図3を用いて説明する。図2は、PMセンサ17を構成するセンサ素子31の要部構成を分解して示す分解斜視図であり、図3は、PMセンサ17に関する電気的構成図である。
【0029】
図2に示すように、センサ素子31は、長尺板状をなす2枚の絶縁基板32,33を有しており、一方の絶縁基板32にはPM量を検出するためのPM検出部34が設けられ、他方の絶縁基板33にはセンサ素子31を加熱するためのヒータ部35が設けられている。センサ素子31は、絶縁基板32,33が二層に積層されることで構成されている。絶縁基板32が被付着部に相当する。
【0030】
絶縁基板32には、他方の絶縁基板33とは反対側の基板表面に、互いに離間して設けられる一対の検出電極36a,36bが設けられており、この一対の検出電極36a,36bによりPM検出部34が構成されている。検出電極36a,36bは、各々複数の櫛歯を有する櫛歯形状をなしており、各検出電極36a,36bの櫛歯同士が互い違いとなるようして所定間隔をあけて対向配置されている。また、ヒータ部35は例えば電熱線からなる発熱体により構成されている。
【0031】
ただし、一対の検出電極36a,36bの形状は上記に限定されず、曲線状をなす形状で設けられているものや、各1本の線からなる一対の電極部が所定距離を隔てて平行に対向配置されているものであってもよい。
【0032】
なお、図示は省略するが、PMセンサ17は、センサ素子31を保持するための保持部を有しており、センサ素子31はその一端側が保持部により保持された状態で排気管に固定されるようになっている。この場合、少なくともPM検出部34及びヒータ部35を含む部位が排気管内に位置するように配されるとともに、センサ素子31において絶縁基板32(PM被付着部)が排気上流側を向くようにして、PMセンサ17が排気管に取り付けられる構成となっている。これにより、PMを含む排気が排気管内を流れる際、そのPMが絶縁基板32において検出電極36a,36b及びその周辺に付着し堆積する。また、PMセンサ17は、センサ素子31の突出部分を覆う保護カバーを有している。
【0033】
上記構成のPMセンサ17は、排気中のPMがセンサ素子31の絶縁基板32に付着し堆積すると、それによりPM検出部34の抵抗値(すなわち一対の検出電極36a,36b間の抵抗値)が変化すること、及びその抵抗値の変化がPM堆積量に対応していることから、その抵抗値の変化を利用してPM量を検出するものである。
【0034】
図3に示すように、PMセンサ17に関する電気的構成として、PMセンサ17のPM検出部34の一端側にはセンサ電源41が接続され、他端側にはシャント抵抗42が接続されている。センサ電源41は、例えば定電圧回路により構成されており、定電圧Vccが5Vとなっている。この場合、PM検出部34とシャント抵抗42とにより分圧回路40が形成されており、それらの中間点電圧がPM検出電圧Vpm(センサ検出値)としてECU20に入力されるようになっている。つまり、PM検出部34ではPM堆積量に応じて抵抗値Rpmが変化し、その抵抗値Rpmとシャント抵抗42の抵抗値RsとによりPM検出電圧Vpmが変化する。そして、そのPM検出電圧VpmがA/D変換器43を介してマイコン44に入力される。
【0035】
ここで、Vcc=5V、Rs=100kΩとすると、PM検出電圧Vpmは次の(1)式で求められる。
Vpm=5V×100kΩ/(100kΩ+Rpm) …(1)
このとき、PM堆積量が0(又は略0)であれば、PM検出部34の抵抗値Rpmは無限大になることから、Vpm=0Vとなる。また、PM検出部34でのPM堆積によりPM検出部34の抵抗値Rpmが例えば1kΩまで低下すると、Vpm=4.95Vとなる。こうしてPM検出部34でのPM堆積量に応じてPM検出電圧Vpmが変化する。マイコン44は、PM検出電圧Vpmに応じてPM堆積量を算出する。
【0036】
PMセンサ17では、分圧回路40により信号出力回路が構成されており、この分圧回路40によって0〜5Vを出力範囲としてPM検出電圧Vpmが変化可能となっている。この場合、PM検出電圧Vpmの出力上限値は5Vであり、より厳密には5Vよりも若干低い電圧値となっている。
【0037】
また、PMセンサ17のヒータ部35には、ヒータ電源45が接続されている。ヒータ電源45は例えば車載バッテリであり、車載バッテリからの給電によりヒータ部35が加熱される。この場合、ヒータ部35のローサイドにはスイッチング素子としてのトランジスタ46が接続されており、マイコン44によりトランジスタ46がオン/オフされることでヒータ部35の加熱制御が行われる。
【0038】
絶縁基板32上にPMが堆積した状態でヒータ部35の通電を開始すると、堆積PMの温度が上昇し、それに伴い堆積PMが強制燃焼される。こうした強制燃焼により、絶縁基板32に堆積したPMが燃焼除去される。マイコン44は、例えば、絶縁基板32上のPM堆積量が所定量になったと判定された時や、前回のPM強制燃焼からのエンジン運転時間や車両走行距離が所定値になったと判定された時に、PMの強制燃焼要求が生じたとしてヒータ部35による加熱制御を実施する。また特に、本実施形態では、エンジン停止時に、PMの強制燃焼要求が生じたとしてヒータ部35による加熱制御を実施する。
【0039】
その他、ECU20には、各種の学習値や異常診断値(ダイアグデータ)等を記憶するためのバックアップ用メモリとしてのEEPROM47が設けられている。
【0040】
さて、本実施形態では、PMセンサ17のPM検出電圧Vpmに基づいてエンジン11のPM排出量を監視することにより、エンジン11の燃焼異常を診断することとしている。特に本実施形態では、エンジン始動時(例えば、エンジン始動開始から所定の経過時間内又は所定のエンジン回転速度以下)では、燃料増量等に起因してエンジン11のPM排出量が比較的多く、正常時と異常時とでPM排出量の相違が現れやすいことに着目し、エンジン始動時において異常診断処理を実施することとしている。
【0041】
また、本実施形態では、エンジン始動時に異常診断処理を実施するのに先立ち、直前のエンジン停止の際にヒータ部35による加熱制御を実施しており、その加熱制御によるPMの強制燃焼後、次回のエンジン始動時にエンジン11の燃焼状態の異常診断を実施することとしている。
【0042】
その理由は次のとおりである。すなわち、エンジン始動時ではPM排出量が比較的多いため、仮に絶縁基板32上にPMがある程度堆積した状態であると、PM検出電圧Vpmが出力上限値に達してしまい、異常の検出漏れが生じるおそれがある。また、PM検出電圧Vpmは分圧回路を利用して検出される値であることから、PM検出電圧Vpmの出力特性は非線形となっており、より具体的には、図4に示すように、PM堆積量に対するPM検出電圧Vpmの感度はPM堆積量に応じて異なり、PM堆積量が多くなるほど、すなわち電極間抵抗が小さくなるほど、感度が低下する。このようなVpm出力特性を考慮すると、診断精度を高めるには、絶縁基板32上のPM堆積量が少ない状態で異常診断を実施するのが望ましい。
【0043】
更に詳しくは、本実施形態では、エンジン11の運転を停止するためのエンジン停止要求があった場合、そのエンジン停止要求が、イグニッションスイッチ(IGスイッチ)のオフ切り替えによるものか、それともエンジン自動停止条件の成立によるものかに応じて、異なる態様でPM強制燃焼処理及びエンジン11の異常診断処理をそれぞれ実施する。以下に、本実施形態のPM強制燃焼処理及び異常診断処理について詳しく説明する。
【0044】
PMセンサ17では、絶縁基板32上において一対の検出電極36a,36b間を導通させるようにPMが堆積(付着)することで電極間抵抗が低下するが、絶縁基板32上に微少量のPMが付着した状態では一対の検出電極36a,36b間を導通させるまでには至らず、電極間抵抗も生じない。したがって、絶縁基板32上にPMが全く付着していない状態からPMが付着し始めることを想定すると、その付着し始めからある程度の時間が経過するまでの期間では、PM検出電圧Vpmが0Vのままとなる不感帯となる。
【0045】
本実施形態では、エンジン11のPM排出量異常を診断する一つの態様として不感帯を利用することとしており、具体的には、まず、エンジン停止時にPM強制燃焼処理を実施することにより、一対の検出電極36a,36b間に付着したPMを全て燃焼除去する。そして、その後のエンジン始動時においてPM検出電圧Vpmが、0Vから立ち上がるまでの時間を計測し、その計測した時間(始動後経過時間カウンタTesta1)に基づいてエンジン11のPM排出量異常の有無を検出する。
【0046】
図5は、本実施形態のPM強制燃焼処理及び異常診断処理の一態様を示すタイムチャートである。図5では、IGスイッチの切り替えに伴うエンジン停止/始動を想定している。また、図中、実線は正常時を示し、破線は異常時を示す。
【0047】
図5において、IGスイッチのオフ切り替えによりエンジン停止要求があった場合、そのタイミングt11でヒータ通電が開始される。このヒータ通電により、PMセンサ17に堆積しているPMが燃焼除去される。なお、本実施形態では、タイミングt11においてPM検出電圧Vpmが判定値Vthrhigh1であることを条件にヒータ加熱を行う。また、図5では、エンジン停止要求のタイミングt11でヒータ通電を開始したが、エンジン停止要求タイミングから所定時間後にヒータ通電を開始してもよい。
【0048】
PM燃焼除去によってPM検出電圧Vpmが0V(ゼロ点)まで低下し、Vpm=0になってから所定のディレイ時間Tdが経過したタイミングt12でヒータ通電が終了される。また、タイミングt12では、第1燃焼処理実行履歴フラグXpmrstがセットされる。
【0049】
エンジン停止後において、IGスイッチのオン切り替えによるエンジン始動要求があった場合、そのタイミングt13から、PM検出電圧Vpmが0Vから立ち上がるまでに要した時間(不感帯時間Tpmout1)が計測される。このとき、エンジン11のPM排出量が正常であれば、不感帯時間Tpmout1は異常判定値tthr1以上となり、PM排出量異常フラグXpmfailはリセットされたままとなる。一方、エンジン11のPM排出量異常が生じている場合には、不感帯時間Tpmout1が異常判定値tthr1未満となる。この場合、PM排出量異常フラグXpmfailがセットされる。
【0050】
つまり、エンジン始動時ではPM排出量が比較的多くなるが、その量は、エンジン正常時であれば、絶縁基板32上の堆積PMの全てをエンジン停止時に予め燃焼除去しておくことにより、PMセンサ17において十分に長い時間(例えば数秒)の不感帯が生じる。一方、エンジン11の燃焼異常が生じ、PM排出過多になると、絶縁基板32上の堆積PMをエンジン停止時に全て燃焼除去しておいたとしても、エンジン始動時ではその始動直後においてセンサ検出値が0から上昇する。この事象を利用し、本システムでは、不感帯時間Tpmout1に基づいてエンジン11のPM排出量に関する異常診断処理を実施する。
【0051】
ただし、今回のエンジン始動要求がアイドルストップ機能による再始動要求である場合には、エンジン始動時において、燃料増量に伴いエンジン11のPM排出量は比較的多くなるものの、エンジン11が暖機状態であり、IGスイッチ切り替えに伴うエンジン始動の場合に比べてPM排出量が少なくなる。そのため、PMセンサ17における不感帯を利用してエンジン11のPM排出量異常を判定しようとすると、PM排出量異常が生じている時であっても、PMセンサ17におけるPM堆積量が不感帯を越える程度になるまでに時間がかかり、その結果、異常診断に要する時間が長くなってしまう。
【0052】
そこで、本実施形態では、エンジン停止要求がエンジン自動停止条件の成立によるものである場合には、エンジン停止時のPM強制燃焼処理において、一対の検出電極36a,36b間に付着したPMを全て燃焼除去するのではなく、付着PMの一部を残しておく。そして、次回のエンジン再始動において、PM検出電圧Vpmの変化量に基づいて、より具体的には、PM検出電圧Vpmが所定量変化するのに要した時間に基づいて、エンジン11のPM排出量異常の有無を検出する。
【0053】
図6は、エンジン自動停止/再始動の場合におけるPM強制燃焼処理及び異常診断処理の具体的態様を示すタイムチャートである。図中、実線は正常時を示し、破線は異常時を示す。
【0054】
図6において、自動停止条件の成立によるエンジン停止要求があった場合、例えばその要求タイミングt21でヒータ通電が開始される。このヒータ通電により、PMセンサ17に堆積しているPMが燃焼除去される。なお、本実施形態では、タイミングt11においてPM検出電圧Vpmが判定値Vthrhigh2であることを条件にヒータ加熱を行う。
【0055】
図6では、上記図5とは異なり、ヒータ通電の開始後においてPM検出電圧Vpmが降下している最中であって、PM検出電圧Vpmが所定値Vthrlowまで降下した時点でヒータ通電が終了される(タイミングt22)。換言すれば、PM検出電圧Vpmが0V(ゼロ点)まで低下するよりも前にヒータ通電が終了される。これにより、タイミングt22以後では、余熱により若干のPM燃焼が継続された後にPM燃焼が終了し、結果として絶縁基板32上には若干量のPMが残存することとなる。本実施形態では、絶縁基板32上には、一対の検出電極36a,36bの導通を維持するだけのPMが残るように所定値Vthrlowが定められており、PM検出電圧Vpmとしては0Vよりも大きくなる。また、タイミングt22では、第2燃焼処理実行履歴フラグXpmrstiがセットされる。
【0056】
なお、本実施形態では、一対の検出電極36a,36bの導通を維持するだけのPMを絶縁基板32上に残すようにしたが、絶縁基板32上にPMを残しつつ、一対の検出電極間36a,36bの導通を遮断する程度までPMが燃焼除去されていてもよい。
【0057】
エンジン自動停止後において、再始動条件の成立によるエンジン始動要求があった場合、そのタイミングt23以降では、エンジン11の運転開始に伴い新たにPMが堆積する。この場合、PMセンサ17において不感帯が生じることなく直ちにPM検出電圧Vpmが上昇変化することとなる。図6では、タイミングt23から、PM検出電圧Vpmが所定値Vthrfailまで上昇するのに要した時間(PM上昇時間Tpmouti)が計測される。このとき、エンジン11のPM排出量が正常であれば、PM上昇時間Tpmout2は異常判定値tthr2以上となり、PM排出量異常フラグXpmfailはリセットされたままとなる。一方、エンジン11のPM排出量異常が生じている場合には、PM上昇時間Tpmout2が異常判定値tthr2未満となる。この場合、PM排出量異常フラグXpmfailがセットされる。
【0058】
次に、本実施形態のPM強制燃焼処理及び異常診断処理の具体的態様について、図7〜11のフローチャートを用いて説明する。
【0059】
図7は、PM強制燃焼処理を示すフローチャートである。本処理は、マイコン44により所定時間ごとに繰り返し実行される。
【0060】
図7において、ステップS11では、エンジン運転中にエンジン停止要求があったか否かを判定し、ステップS11がYESの場合、ステップS12へ進み、そのエンジン停止要求がアイドルストップ制御(ISS)に基づく停止要求か否かを判定する。ISSに基づくエンジン停止要求でない場合、つまりIGスイッチのオフ切り替えによるエンジン停止要求の場合にはステップS13へ進み、図8に示す第1燃焼処理を実行する。また、ISSに基づくエンジン停止要求の場合には、ステップS14へ進み、図9に示す第2燃焼処理を実行する。
【0061】
次に、第1燃焼処理について図8のフローチャートを用いて説明する。
【0062】
図8において、ステップS21では、PMの強制燃焼開始前であるか否かを判定し、強制燃焼の開始前であればステップS22へ進み、エンジン停止時のPM検出電圧Vpm(例えばIGスイッチのオフ切替タイミングでのPM検出電圧)を取得し、エンジン停止時電圧Vpmestpとして記憶する。続くステップS23では、エンジン停止時電圧Vpmestpと判定値Vthrhigh1とを比較する。このとき、Vpmestp≦Vthrhigh1であればステップS24へ進み、第1燃焼処理実行履歴フラグXpmrstをリセットして本処理を終了する。
【0063】
ステップS23においてVpmestp>Vthrhigh1の場合、ステップS25へ進み、絶縁基板32(一対の検出電極36a,36b)上に堆積したPMの強制燃焼処理を実施する(PMセンサ17のヒータ部35の通電をオンする)。続くステップS26では、PM強制燃焼処理実施中のPM検出電圧Vpmを取得し、燃焼処理時電圧Vpmhtupとして記憶する。その後、ステップS27において、燃焼処理時電圧Vpmhtupに基づいて、PM強制燃焼処理の終了タイミングか否かを判定する。ここでは、燃焼処理時電圧Vpmhtupが0になったか否か、つまり一対の検出電極36a,36b間にPMが堆積していない状態になったかを判定する。
【0064】
ステップS27がNOの場合、そのまま本ルーチンを終了し、ステップS21及びS27の処理を繰り返し実行する。そして、ステップS27がYESになるとステップS28へ進み、PM強制燃焼処理の終了タイミングと判定されてから所定のディレイ時間Tdが経過した後にヒータ部35の通電をオフする。その後、ステップS29において、第1燃焼処理実行履歴フラグXpmrstをセットして本ルーチンを終了する。
【0065】
次に、第2燃焼処理について図9のフローチャートを用いて説明する。
【0066】
図9において、ステップS31では、PMの強制燃焼開始前であるか否かを判定する。強制燃焼の開始前であればステップS32へ進み、アイドルストップ制御によるエンジン停止時のPM検出電圧Vpm(例えばエンジン自動停止条件の成立タイミングでのPM検出電圧)を取得し、エンジン自動停止時電圧Vpmistpとして記憶する。続くステップS33では、エンジン自動停止時電圧Vpmistpと判定値Vthrhigh2とを比較し、Vpmistp≦Vthrhigh2であればステップS34へ進み、第2燃焼処理実行履歴フラグXpmrstiをリセットして本処理を終了する。なお、判定値Vthrhigh2については、図8の判定値Vthrhigh1と同じ値であってもよいし異なる値であってもよい。
【0067】
ステップS33においてVpmistp>Vthrhigh2の場合、ステップS35へ進み、絶縁基板32上の堆積PMの強制燃焼処理を実施すべく、PMセンサ17のヒータ部35の通電をオンする。続くステップS36では、PM強制燃焼処理実施中のPM検出電圧Vpmを取得し、燃焼処理時電圧Vpmhtupとして記憶する。その後、ステップS37において、燃焼処理時電圧Vpmhtupに基づいて、PM強制燃焼処理の終了タイミングか否かを判定する。ここでは、燃焼処理時電圧Vpmhtupが所定値Vthrlowまで降下したか否かを判定する。
【0068】
ステップS37がNOの場合、そのまま本ルーチンを終了し、ステップS31及びS37の処理を繰り返し実行する。そして、ステップS37がYESになるとステップS38へ進み、その終了タイミングにおいて直ちにヒータ部35の通電をオフする。また、ステップS39において、第2燃焼処理実行履歴フラグXpmrstiをセットするとともに、アイドルストップ時間カウンタTistpによるエンジン自動停止時間の計測を開始する。そして本ルーチンを終了する。なお、アイドルストップ時間カウンタTistpによるエンジン自動停止時間の計測は、図示しない別ルーチンにより、エンジン再始動条件が成立するまで継続される。
【0069】
次に、エンジン11の異常診断処理について図10及び図11のフローチャートを用いて説明する。これらのうち、図10では、IGスイッチの切り替えに伴うエンジン始動の際に実施される異常診断処理(第1異常診断処理)について示し、図11では、エンジン自動停止後における再始動の際に実施される異常診断処理(第2異常診断処理)について示す。これらの処理は、マイコン44により所定時間ごとに繰り返し実行される。
【0070】
まず、第1異常診断処理について説明する。図10において、ステップS41では、IGスイッチのオン切り替え後における所定のエンジン始動期間か否かを判定する。ステップS41がYESの場合、ステップS42へ進み、第1燃焼処理実行履歴フラグXpmrstがセットされているか否かを判定する。ステップS42がYESの場合、ステップS43へ進み、PM検出電圧Vpmを取得して始動時電圧Vpmestaとして記憶する。また、始動後経過時間カウンタTesta1を1インクリメントするとともに、エンジン始動時水温Wtpestaを取得する。
【0071】
ステップS44では、始動時電圧Vpmestaが0よりも大きくなったか否かを判定し、ステップS44がYESであることを条件にステップS45へ進み、不感帯時間Tpmout1に基づいて、エンジン11のPM排出量の異常判定を行う。
【0072】
すなわち、ステップS45では、Vpmestaが0を超えたタイミング(Vpmestaの立ち上がりタイミング)での始動後経過時間カウンタTesta1を不感帯時間Tpmout1とし、その不感帯時間Tpmout1と異常判定値tthr1とを比較する。異常判定値tthr1について本実施形態では、図12に示す判定値設定用マップを用いて、エンジン始動時水温Wtpestaに応じて異常判定値tthr1を定めている。図12のマップによれば、エンジン始動時水温Wtpestaが低いほど、異常判定値tthr1が小さくなっている。
【0073】
図10の説明に戻り、ステップS45がTpmout≧ftthr1の場合にはステップS46へ進み、PM排出量正常フラグXpmokをセットし、PM排出量異常フラグXpmfailをリセットする。一方、ステップS45がTpmout<ftthr1の場合にはステップS47へ進み、PM排出量異常フラグXpmfailをセットし、PM排出量正常フラグXpmokをリセットする。その後、ステップS48において、始動後経過時間カウンタTesta1をゼロにリセットするとともに、第1燃焼処理実行履歴フラグXpmrstをリセットして本ルーチンを終了する。
【0074】
次に、第2異常診断処理について図11のフローチャートを用いて説明する。
【0075】
図11において、ステップS51では、エンジン11の自動停止後において再始動条件が成立した後の所定の始動期間か否かを判定する。ステップS51がYESの場合、ステップS52へ進み、第2燃焼処理実行履歴フラグXpmrstiがセットされているか否かを判定する。ステップS52がYESの場合、ステップS53へ進み、PM検出電圧Vpmを取得して再始動時電圧Vpmistaとして記憶する。また、再始動後経過時間カウンタTesta2を1インクリメントするとともに、アイドルストップ時間カウンタTistpを取得する。
【0076】
ステップS54では、再始動時電圧Vpmistaが所定値Vthrfail2よりも大きくなったか否かを判定する。ステップS54がYESであればステップS55へ進み、再始動時電圧Vpmistaが所定値Vthrfail2を超えるまでに要した時間に基づいて、エンジン11のPM排出量の異常判定を行う。
【0077】
すなわち、ステップS55では、Vpmista>Vthrfail2となったタイミングでの再始動後経過時間カウンタTesta2をPM上昇時間Tpmoutiとし、そのPM上昇時間Tpmoutiと異常判定値tthr2とを比較する。異常判定値tthr2について本実施形態では、図13に示す判定値設定用マップを用いて、アイドルストップ時間カウンタTistpに応じて定めている。図13のマップによれば、アイドルストップ時間カウンタTistpが大きいほど、異常判定値tthr2が大きくなっている。これは、エンジン自動停止の時間が長いほど、始動時燃料増量が多くする必要があり、結果としてPM排出量が多くなるからである。
【0078】
図11の説明に戻り、ステップS55がTpmouti≧ftthr2の場合にはステップS56へ進み、PM排出量正常フラグXpmokをセットし、PM排出量異常フラグXpmfailをリセットする。一方、ステップS55がTpmouti<ftthr2の場合にはステップS57へ進み、PM排出量異常フラグXpmfailをセットし、PM排出量正常フラグXpmokをリセットする。また、ステップS58において、再始動後経過時間カウンタTesta2及びアイドルストップ時間カウンタTistpをゼロにリセットするとともに、第2燃焼処理実行履歴フラグXpmrstiをリセットして本ルーチンを終了する。
【0079】
以上詳述した本実施形態によれば、次の優れた効果が得られる。
【0080】
エンジン始動時には燃料増量等に起因してPM排出量が比較的多くなることに着目し、エンジン始動時において、PM検出電圧Vpmを異常診断パラメータとしてエンジン11のPM排出量異常を診断するため、エンジン11の正常時と異常時とでPM排出量の相違が現れやすく、その結果、エンジン11のPM排出過多が生じている時にも、その排出過多の状態を精度良く検出できる。また、異常診断に先立ち、その直前のエンジン停止時において、ヒータ部35の加熱制御によるPMの強制燃焼が実施してあるため、PM排出量が比較的多くてもPM検出電圧Vpmの出力範囲内で異常診断を実施することができ、ひいては、PM排出量異常を精度良く検出できる。
【0081】
特に、PMセンサ17では、一対の検出電極36a,36bとシャント抵抗42とにより分圧回路40が形成されており、それらの中間点電圧がPM検出電圧Vpm(センサ検出値)としてECU20に入力される構成であるため、PM堆積量に対するPM検出電圧Vpmの感度はその堆積量に応じて異なり、PM堆積量が多くなるほど感度が低下する。その点、上記構成では、したがって、PM排出量異常の診断を行うのに先立ち、エンジン停止時においてPM除去を行うため、感度の高い領域で異常診断を実施することができ、診断精度を高めることができる。
【0082】
エンジン停止要求がIGスイッチのオフ操作に基づく場合には、不感帯の時間をパラメータとしてエンジン11のPM排出量異常を診断するため、エンジン燃焼状態の正常時と異常時とを明確に判別することができる。一方、エンジン停止要求が自動停止条件の成立に基づく場合には、PM排出量の異常診断を、不感帯の時間に代えてPM検出電圧Vpmの変化量をパラメータとして行うため、エンジン始動時においてエンジン11から排出されるPM量が比較的少ない場合にも、異常診断をできるだけ短時間で実施することができる。
【0083】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0084】
・第2異常診断処理では、PM検出電圧Vpmが所定値Vthrfailまで変化するのに要する時間を異常診断のパラメータとしたが、PM検出電圧Vpmの所定時間あたりの変化量を異常診断のパラメータとしてもよい。具体的には、エンジン始動時に、PM検出電圧Vpmが異常判定値(例えば、Vthrfailよりも大きい値)に達した場合にPM排出量異常有りと診断する。
【0085】
・第2異常診断処理において、PM検出電圧Vpmの変化度合い(傾き)に基づいてPM排出量異常を診断する構成としてもよい。この場合、PM検出電圧Vpmの傾きが判定値以上の場合にPM排出量異常有りと診断する。
【0086】
・エンジン11の停止時のPM強制燃焼処理において、エンジン停止要求の内容にかかわらず第1燃焼処理を実施してもよい。この場合、次回のエンジン始動時において第1異常診断処理を実施するのが望ましい。また、エンジン停止要求の内容にかかわらず第2燃焼処理を実施してもよい。この場合、次回のエンジン始動時において第2異常診断処理を実施するのが望ましい。
【0087】
・エンジン始動時の異常診断処理として、エンジン始動要求の内容にかかわらず第2異常診断処理を実施する構成としてもよい。
【0088】
・上記実施形態では、信号出力回路として図3に示す分圧回路40を用いたが、これを変更してもよい。例えば、分圧回路を構成するPM検出部34とシャント抵抗42との接続を逆にし、PM検出部34をローサイド、シャント抵抗42をハイサイドに設ける構成としてもよい。本構成では、PM検出電圧Vpmは次の(2)式で求められることとなる。
Vpm=5V×Rpm/(Rs+Rpm) …(2)
なお、RpmはPM検出部34の抵抗値、Rsはシャント抵抗42の抵抗値(例えば5kΩ)である。
【0089】
・エンジン排気管にPMを捕集するためのPMフィルタを設け、その下流側又は上流側の少なくともいずれかにPMセンサを設けた構成において、PMセンサの検出値に基づいてPMフィルタの再生タイミングを制御する構成としてもよい。また、PMセンサの検出値に基づいて、PMフィルタの故障診断を実施する構成としてもよい。
【0090】
・上記実施形態では、直噴式ガソリンエンジンについての適用を例示したが、他の形式のエンジンにも適用できる。例えば、ディーゼルエンジン(特に、直噴式ディーゼルエンジン)に適用することとし、ディーゼルエンジンの排気管に設けられたPMセンサについて本発明を用いることも可能である。また、エンジンの排気以外のガスを対象としてPM量を検出するものであってもよい。
【符号の説明】
【0091】
11…エンジン、17…PMセンサ(粒子状物質検出センサ)、20…ECU、32…絶縁基板(被付着部)、34…PM検出部、35…ヒータ部(加熱手段)、36a,36b…検出電極(対向電極)、40…分圧回路(信号出力回路)、41…センサ電源、42…シャント抵抗、44…マイコン(加熱制御手段、異常診断手段)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン制御装置に関し、詳しくは、粒子状物質検出センサの検出信号に基づいて、排気に含まれる粒子状物質(PM:Particulate Matter)の量を検出するエンジン制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンから排出されるPMの量を検出するPMセンサ(粒子状物質検出センサ)が各種提案されている。例えば、特許文献1のPMセンサでは、絶縁基板上に一対の対向電極を設けておき、その一対の対向電極間にPMが堆積すると電極間抵抗が変化することを利用し、電極間抵抗を計測することでPM量を検出する構成としている。この場合、センサ素子に接続される検出回路としては、一対の対向電極間の抵抗分である電極間抵抗と所定のシャント抵抗とにより分圧回路を構成し、分圧回路の中間点電圧をセンサ検出信号として出力するようにしている。
【0003】
また、特許文献2のPMセンサでは、ヒータが内蔵されており、所定の走行距離毎、所定の走行距離毎、又は使用燃料量毎にヒータによる加熱を行うことにより、一対の対向電極間に堆積したPMを燃焼除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−196453号公報
【特許文献2】特開2009−144577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンジンでは、その燃焼状態を制御するための各種パラメータにおいて適合値のずれが生じたり、あるいはエンジンの燃焼に係る各種アクチュエータの故障が発生したりするとPM排出過多の状態になり、エミッションが悪化することが想定される。この場合、環境の悪化を招くことから、何らかの対策を講じるべく、その燃焼異常を精度良く検出する必要がある。
【0006】
本発明は、エンジンにおける粒子状物質の排出量異常を精度良く検出することができるエンジン制御装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について説明する。
【0008】
本発明は、排気に含まれる導電性の粒子状物質を付着させる被付着部と、前記被付着部に互いに離間して設けられる一対の対向電極と、前記被付着部を加熱する加熱手段とを有し前記一対の対向電極間の抵抗値に応じた検出信号を出力する粒子状物質検出センサを排気通路に備えるエンジンに適用される。そして、請求項1に記載の発明は、エンジン停止時に、前記被付着部に付着した粒子状物質を燃焼除去すべく前記加熱手段による加熱を実施する加熱制御手段と、前記加熱制御手段により前記粒子状物質を燃焼除去した後の次回のエンジン始動時において、前記粒子状物質検出センサによるセンサ検出値に基づいて、前記エンジンにおける前記粒子状物質の排出量異常を診断する異常診断手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
粒子状物質検出センサでは、排気中の粒子状物質の量に応じてセンサ検出信号が変動する。また、排気中の粒子状物質の量はエンジン運転状態に応じて変化し、例えばエンジンの燃焼状態に異常が生じていると、粒子状物質の排出過多が生じる。本発明は、エンジン始動時には例えば燃料増量等に起因して粒子状物質の排出量が比較的多くなることに着目し、エンジン始動時において、センサ検出値をパラメータとしてエンジンの燃焼異常を診断するものである。この場合、エンジンの正常時と異常時とで粒子状物質の排出量の相違が現れやすく、その結果、エンジンの燃焼状態に異常が生じ、粒子状物質の排出過多が生じている時にも、その排出過多の状態を精度良く検出できる。
【0010】
ただし、エンジン始動時では粒子状物質の排出量が比較的多いことから、異常診断の開始前においてある程度の粒子状物質が被付着部に堆積した状態であると、エンジン始動時にセンサ検出値が一気に変化して出力限界値に達してしまい、結果として異常の検出漏れが生じるおそれがある。その点に鑑み、本発明では、エンジン始動時の異常診断に先立ち、エンジン停止時において、加熱手段の加熱による粒子状物質の燃焼除去を実施する。これにより、粒子状物質の排出量が多い状況下で上記異常診断を実施する場合にも、異常を精度良く検出できる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、前記加熱制御手段は、前記被付着部に付着している全ての粒子状物質を燃焼除去する第1制御手段を有し、前記異常診断手段は、エンジン停止時に前記第1制御手段により前記粒子状物質を燃焼除去した場合において、前記一対の対向電極の抵抗値の減少変化に伴い前記センサ検出値が変化するまでの不感帯の時間に基づいて異常診断を実施する。
【0012】
粒子状物質検出センサでは、被付着部に付着した全ての粒子状物質を燃焼除去すると、その後は、被付着部にある程度の量の粒子状物質が付着するまで粒子状物質の付着量が検出不可能になる、いわゆる不感帯が存在する。ここで、エンジンが正常であれば、被付着部の全ての粒子状物質をエンジン停止時に燃焼除去しておくことにより、エンジン始動時において十分に長い時間の不感帯が生じる。これに対し、エンジンの燃焼異常が生じ、粒子状物質の排出量が過多になった場合には、不感帯の時間が正常時よりも短くなる。この点に着目し、本構成では、不感帯の時間をパラメータとしてエンジンの異常診断を実施することにより、エンジン燃焼状態の正常時と異常時とを明確に判別することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、前記加熱制御手段は、前記被付着部に付着している粒子状物質の一部を残し、その一部以外の粒子状物質を燃焼除去する第2制御手段を有し、前記異常診断手段は、エンジン停止時に前記第2制御手段により前記粒子状物質を燃焼除去した場合において、前記センサ検出値の変化量に基づいて異常診断を実施する。
【0014】
上記構成によれば、エンジン始動時には一対の対向電極間に粒子状物質が残存し、その残存している粒子状物質の量に応じたセンサ検出値を取得できる。つまり、一対の対向電極間が繋がる程度に粒子状物質を残存させることで、不感帯を無くすことができる。また、一対の対向電極間において粒子状物質が途切れたとしても、被付着部に残存している粒子状物質によって一対の対向電極間がいち早く導通され、この場合には不感帯を短縮することができる。このように、不感帯を無くすか又は不感帯を短縮することにより、エンジン始動期間においてエンジンから排出される粒子状物質の量が比較的少ない場合にも、異常診断をできるだけ短時間で実施することができる。
【0015】
ここで、「センサ検出値の変化量に基づいて異常診断を実施する」とは、例えば、センサ検出値の所定時間あたりの変化量と判定値との比較や、又はセンサ検出値が所定量変化するのに要する時間と判定値との比較に基づいて異常診断を実施する場合を含む。
【0016】
請求項4に記載の発明では、所定の自動停止条件が成立した場合に前記エンジンを自動停止し、前記自動停止条件の成立後に所定の再始動条件が成立した場合に前記エンジンを再始動する手段と、前記エンジンの停止要求があった場合に、その停止要求が前記自動停止条件の成立に伴う停止要求か否かを判定する手段と、を備え、前記加熱制御手段は、前記被付着部に付着している全ての粒子状物質を燃焼除去する第1制御手段と、前記被付着部に付着している粒子状物質の一部を残し、その一部以外の粒子状物質を燃焼除去する第2制御手段とを有し、前記停止要求が、前記自動停止条件の成立に伴う停止要求である場合に前記第2制御手段による燃焼除去を実施し、前記自動停止条件の成立に伴う停止要求以外のエンジン停止要求である場合に前記第1制御手段による燃焼除去を実施する。
【0017】
エンジン自動停止後の再始動では、暖機状態でエンジン始動されることが考えられ、この場合に不感帯が存在していると、一対の対向電極間が導通されるまでに時間がかかり、その結果、異常診断に要する時間が長くなってしまう。この点に鑑み、本構成では、自動停止条件の成立に伴うエンジン停止時には、被付着部に付着している粒子状物質の一部を残し、その一部以外の粒子状物質を燃焼除去する。
【0018】
一方、ドライバのキー操作等に基づくエンジン始動では、冷間状態でエンジン始動されることが考えられ、この場合には不感帯の時間が適度に短くなる。したがって、ドライバのキー操作等に基づくエンジン停止時には、被付着部に付着している全ての粒子状物質を燃焼除去させるようにする。この場合、次回のエンジン始動時において不感帯の時間に基づく異常診断を実施することにより、エンジン始動開始後できるだけ早期に異常診断を実施できる。
【0019】
請求項5に記載の発明では、前記一対の対向電極間の抵抗である電極間抵抗と所定のシャント抵抗と電源部とを有してなる分圧回路を備え、前記センサ検出値が、前記電極間抵抗と前記シャント抵抗との中間点の電圧として出力されるものであり、前記異常診断手段は、エンジン始動時に前記中間点の電圧を取得し、該取得した中間点電圧に基づいて異常診断を実施する。
【0020】
粒子状物質検出センサの検出信号が、電極間抵抗とシャント抵抗との中間点電圧として出力される構成では、被付着部における粒子状物質の付着量と中間点電圧との関係が非線形となる。つまり、粒子状物質の付着量に対するセンサ検出値の感度は付着量に応じて異なり、付着量が多くなるほど、すなわち電極間抵抗が小さくなるほど、感度が低下する。したがって、上記異常診断に先立ち粒子状物質の燃焼除去を行う構成とすることにより、感度の高い領域で異常診断を実施することができ、診断精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】発明の実施の形態におけるエンジン制御システムの概略を示す構成図。
【図2】センサ素子の要部構成を分解して示す分解斜視図。
【図3】PMセンサに関する電気的構成を示す図。
【図4】PM堆積量とPM検出電圧との関係を示す図。
【図5】IGスイッチ切り替え時のPM強制燃焼処理及び異常診断処理の具体的態様を示すタイムチャート。
【図6】エンジン自動停止/再始動の場合におけるPM強制燃焼処理及び異常診断処理の具体的態様を示すタイムチャート。
【図7】PM強制燃焼処理を示すフローチャート。
【図8】第1燃焼処理を示すフローチャート。
【図9】第2燃焼処理を示すフローチャート。
【図10】第1異常診断処理を示すフローチャート。
【図11】第2異常診断処理を示すフローチャート。
【図12】異常判定値tthr1の設定用マップを示す図。
【図13】異常判定値tthr2の設定用マップを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、車載エンジンを備える車両エンジンシステムにおいて、同エンジンから排出される排気中のPM量(導電性粒子状物質の量)を監視するものである。特に、エンジン排気管にPMセンサを設け、そのPMセンサでのPM付着量に基づいてPM量を監視するものとしている。図1は、本システムの概略構成を示す構成図である。
【0023】
図1において、エンジン11は直噴式ガソリンエンジンであり、同エンジン11の運転に関わるアクチュエータとして燃料噴射弁12や点火装置13等が設けられている。エンジン11の排気管14には排気浄化装置としての三元触媒15が設けられており、その三元触媒15の上流側にはA/Fセンサ16が設けられ、下流側には粒子状物質検出センサとしてのPMセンサ17が設けられている。その他、本システムでは、エンジン回転速度を検出するための回転センサ18や、吸気管圧力を検出するための圧力センサ19等が設けられている。
【0024】
ECU20は、周知のCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータ(マイコン)を主体として構成されており、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、都度のエンジン運転状態に応じてエンジン11の各種制御を実施する。すなわち、ECU20は、上記各種センサ等から各々信号を入力し、それらの各種信号に基づいて燃料噴射量や点火時期を演算して燃料噴射弁12や点火装置13の駆動を制御したり、アイドルストップ制御などの各種エンジン制御を実施したりする。
【0025】
燃料噴射量制御について、ECU20は、エンジン始動開始当初では(例えばエンジン回転速度が400rpmや500rpm以下では)、エンジン水温等に応じた燃料増量(始動時増量)を実施してエンジン11の始動性を高めるとともに、エンジン始動開始当初以外の通常時には、例えば吸入空気量に応じて基本噴射量を算出し、その基本噴射量に対して、始動後増量補正や暖機増量補正などの各種補正を実施している。
【0026】
また、上記のシステム構成において実施されるアイドルストップ制御について詳述する。アイドルストップ制御は、エンジン11のアイドル運転時に所定の自動停止条件が成立すると当該エンジン11を自動停止させるとともに、その自動停止条件の成立後、所定の再始動条件が成立するとエンジン11を再始動させるものである。自動停止条件としては、例えば、アクセル操作量がゼロになったこと、ブレーキペダルの踏込み操作が行われたこと等の少なくともいずれかが含まれる。また、再始動条件としては、例えばアクセルの踏込み操作が行われたこと、ブレーキ操作量がゼロになったこと等の少なくともいずれかが含まれる。
【0027】
その他、ECU20は、PMセンサ17の検出結果から算出されるエンジン11の実際のPM排出量(実PM排出量)に基づいて、エンジン11の制御態様を可変に制御する構成であってもよい。例えば、実PM排出量に基づいて燃料噴射量を制御したり、燃料噴射時期を制御したり、点火時期を制御したりすることが可能である。
【0028】
次に、PMセンサ17の構成、及びそのPMセンサ17に関する電気的構成を図2及び図3を用いて説明する。図2は、PMセンサ17を構成するセンサ素子31の要部構成を分解して示す分解斜視図であり、図3は、PMセンサ17に関する電気的構成図である。
【0029】
図2に示すように、センサ素子31は、長尺板状をなす2枚の絶縁基板32,33を有しており、一方の絶縁基板32にはPM量を検出するためのPM検出部34が設けられ、他方の絶縁基板33にはセンサ素子31を加熱するためのヒータ部35が設けられている。センサ素子31は、絶縁基板32,33が二層に積層されることで構成されている。絶縁基板32が被付着部に相当する。
【0030】
絶縁基板32には、他方の絶縁基板33とは反対側の基板表面に、互いに離間して設けられる一対の検出電極36a,36bが設けられており、この一対の検出電極36a,36bによりPM検出部34が構成されている。検出電極36a,36bは、各々複数の櫛歯を有する櫛歯形状をなしており、各検出電極36a,36bの櫛歯同士が互い違いとなるようして所定間隔をあけて対向配置されている。また、ヒータ部35は例えば電熱線からなる発熱体により構成されている。
【0031】
ただし、一対の検出電極36a,36bの形状は上記に限定されず、曲線状をなす形状で設けられているものや、各1本の線からなる一対の電極部が所定距離を隔てて平行に対向配置されているものであってもよい。
【0032】
なお、図示は省略するが、PMセンサ17は、センサ素子31を保持するための保持部を有しており、センサ素子31はその一端側が保持部により保持された状態で排気管に固定されるようになっている。この場合、少なくともPM検出部34及びヒータ部35を含む部位が排気管内に位置するように配されるとともに、センサ素子31において絶縁基板32(PM被付着部)が排気上流側を向くようにして、PMセンサ17が排気管に取り付けられる構成となっている。これにより、PMを含む排気が排気管内を流れる際、そのPMが絶縁基板32において検出電極36a,36b及びその周辺に付着し堆積する。また、PMセンサ17は、センサ素子31の突出部分を覆う保護カバーを有している。
【0033】
上記構成のPMセンサ17は、排気中のPMがセンサ素子31の絶縁基板32に付着し堆積すると、それによりPM検出部34の抵抗値(すなわち一対の検出電極36a,36b間の抵抗値)が変化すること、及びその抵抗値の変化がPM堆積量に対応していることから、その抵抗値の変化を利用してPM量を検出するものである。
【0034】
図3に示すように、PMセンサ17に関する電気的構成として、PMセンサ17のPM検出部34の一端側にはセンサ電源41が接続され、他端側にはシャント抵抗42が接続されている。センサ電源41は、例えば定電圧回路により構成されており、定電圧Vccが5Vとなっている。この場合、PM検出部34とシャント抵抗42とにより分圧回路40が形成されており、それらの中間点電圧がPM検出電圧Vpm(センサ検出値)としてECU20に入力されるようになっている。つまり、PM検出部34ではPM堆積量に応じて抵抗値Rpmが変化し、その抵抗値Rpmとシャント抵抗42の抵抗値RsとによりPM検出電圧Vpmが変化する。そして、そのPM検出電圧VpmがA/D変換器43を介してマイコン44に入力される。
【0035】
ここで、Vcc=5V、Rs=100kΩとすると、PM検出電圧Vpmは次の(1)式で求められる。
Vpm=5V×100kΩ/(100kΩ+Rpm) …(1)
このとき、PM堆積量が0(又は略0)であれば、PM検出部34の抵抗値Rpmは無限大になることから、Vpm=0Vとなる。また、PM検出部34でのPM堆積によりPM検出部34の抵抗値Rpmが例えば1kΩまで低下すると、Vpm=4.95Vとなる。こうしてPM検出部34でのPM堆積量に応じてPM検出電圧Vpmが変化する。マイコン44は、PM検出電圧Vpmに応じてPM堆積量を算出する。
【0036】
PMセンサ17では、分圧回路40により信号出力回路が構成されており、この分圧回路40によって0〜5Vを出力範囲としてPM検出電圧Vpmが変化可能となっている。この場合、PM検出電圧Vpmの出力上限値は5Vであり、より厳密には5Vよりも若干低い電圧値となっている。
【0037】
また、PMセンサ17のヒータ部35には、ヒータ電源45が接続されている。ヒータ電源45は例えば車載バッテリであり、車載バッテリからの給電によりヒータ部35が加熱される。この場合、ヒータ部35のローサイドにはスイッチング素子としてのトランジスタ46が接続されており、マイコン44によりトランジスタ46がオン/オフされることでヒータ部35の加熱制御が行われる。
【0038】
絶縁基板32上にPMが堆積した状態でヒータ部35の通電を開始すると、堆積PMの温度が上昇し、それに伴い堆積PMが強制燃焼される。こうした強制燃焼により、絶縁基板32に堆積したPMが燃焼除去される。マイコン44は、例えば、絶縁基板32上のPM堆積量が所定量になったと判定された時や、前回のPM強制燃焼からのエンジン運転時間や車両走行距離が所定値になったと判定された時に、PMの強制燃焼要求が生じたとしてヒータ部35による加熱制御を実施する。また特に、本実施形態では、エンジン停止時に、PMの強制燃焼要求が生じたとしてヒータ部35による加熱制御を実施する。
【0039】
その他、ECU20には、各種の学習値や異常診断値(ダイアグデータ)等を記憶するためのバックアップ用メモリとしてのEEPROM47が設けられている。
【0040】
さて、本実施形態では、PMセンサ17のPM検出電圧Vpmに基づいてエンジン11のPM排出量を監視することにより、エンジン11の燃焼異常を診断することとしている。特に本実施形態では、エンジン始動時(例えば、エンジン始動開始から所定の経過時間内又は所定のエンジン回転速度以下)では、燃料増量等に起因してエンジン11のPM排出量が比較的多く、正常時と異常時とでPM排出量の相違が現れやすいことに着目し、エンジン始動時において異常診断処理を実施することとしている。
【0041】
また、本実施形態では、エンジン始動時に異常診断処理を実施するのに先立ち、直前のエンジン停止の際にヒータ部35による加熱制御を実施しており、その加熱制御によるPMの強制燃焼後、次回のエンジン始動時にエンジン11の燃焼状態の異常診断を実施することとしている。
【0042】
その理由は次のとおりである。すなわち、エンジン始動時ではPM排出量が比較的多いため、仮に絶縁基板32上にPMがある程度堆積した状態であると、PM検出電圧Vpmが出力上限値に達してしまい、異常の検出漏れが生じるおそれがある。また、PM検出電圧Vpmは分圧回路を利用して検出される値であることから、PM検出電圧Vpmの出力特性は非線形となっており、より具体的には、図4に示すように、PM堆積量に対するPM検出電圧Vpmの感度はPM堆積量に応じて異なり、PM堆積量が多くなるほど、すなわち電極間抵抗が小さくなるほど、感度が低下する。このようなVpm出力特性を考慮すると、診断精度を高めるには、絶縁基板32上のPM堆積量が少ない状態で異常診断を実施するのが望ましい。
【0043】
更に詳しくは、本実施形態では、エンジン11の運転を停止するためのエンジン停止要求があった場合、そのエンジン停止要求が、イグニッションスイッチ(IGスイッチ)のオフ切り替えによるものか、それともエンジン自動停止条件の成立によるものかに応じて、異なる態様でPM強制燃焼処理及びエンジン11の異常診断処理をそれぞれ実施する。以下に、本実施形態のPM強制燃焼処理及び異常診断処理について詳しく説明する。
【0044】
PMセンサ17では、絶縁基板32上において一対の検出電極36a,36b間を導通させるようにPMが堆積(付着)することで電極間抵抗が低下するが、絶縁基板32上に微少量のPMが付着した状態では一対の検出電極36a,36b間を導通させるまでには至らず、電極間抵抗も生じない。したがって、絶縁基板32上にPMが全く付着していない状態からPMが付着し始めることを想定すると、その付着し始めからある程度の時間が経過するまでの期間では、PM検出電圧Vpmが0Vのままとなる不感帯となる。
【0045】
本実施形態では、エンジン11のPM排出量異常を診断する一つの態様として不感帯を利用することとしており、具体的には、まず、エンジン停止時にPM強制燃焼処理を実施することにより、一対の検出電極36a,36b間に付着したPMを全て燃焼除去する。そして、その後のエンジン始動時においてPM検出電圧Vpmが、0Vから立ち上がるまでの時間を計測し、その計測した時間(始動後経過時間カウンタTesta1)に基づいてエンジン11のPM排出量異常の有無を検出する。
【0046】
図5は、本実施形態のPM強制燃焼処理及び異常診断処理の一態様を示すタイムチャートである。図5では、IGスイッチの切り替えに伴うエンジン停止/始動を想定している。また、図中、実線は正常時を示し、破線は異常時を示す。
【0047】
図5において、IGスイッチのオフ切り替えによりエンジン停止要求があった場合、そのタイミングt11でヒータ通電が開始される。このヒータ通電により、PMセンサ17に堆積しているPMが燃焼除去される。なお、本実施形態では、タイミングt11においてPM検出電圧Vpmが判定値Vthrhigh1であることを条件にヒータ加熱を行う。また、図5では、エンジン停止要求のタイミングt11でヒータ通電を開始したが、エンジン停止要求タイミングから所定時間後にヒータ通電を開始してもよい。
【0048】
PM燃焼除去によってPM検出電圧Vpmが0V(ゼロ点)まで低下し、Vpm=0になってから所定のディレイ時間Tdが経過したタイミングt12でヒータ通電が終了される。また、タイミングt12では、第1燃焼処理実行履歴フラグXpmrstがセットされる。
【0049】
エンジン停止後において、IGスイッチのオン切り替えによるエンジン始動要求があった場合、そのタイミングt13から、PM検出電圧Vpmが0Vから立ち上がるまでに要した時間(不感帯時間Tpmout1)が計測される。このとき、エンジン11のPM排出量が正常であれば、不感帯時間Tpmout1は異常判定値tthr1以上となり、PM排出量異常フラグXpmfailはリセットされたままとなる。一方、エンジン11のPM排出量異常が生じている場合には、不感帯時間Tpmout1が異常判定値tthr1未満となる。この場合、PM排出量異常フラグXpmfailがセットされる。
【0050】
つまり、エンジン始動時ではPM排出量が比較的多くなるが、その量は、エンジン正常時であれば、絶縁基板32上の堆積PMの全てをエンジン停止時に予め燃焼除去しておくことにより、PMセンサ17において十分に長い時間(例えば数秒)の不感帯が生じる。一方、エンジン11の燃焼異常が生じ、PM排出過多になると、絶縁基板32上の堆積PMをエンジン停止時に全て燃焼除去しておいたとしても、エンジン始動時ではその始動直後においてセンサ検出値が0から上昇する。この事象を利用し、本システムでは、不感帯時間Tpmout1に基づいてエンジン11のPM排出量に関する異常診断処理を実施する。
【0051】
ただし、今回のエンジン始動要求がアイドルストップ機能による再始動要求である場合には、エンジン始動時において、燃料増量に伴いエンジン11のPM排出量は比較的多くなるものの、エンジン11が暖機状態であり、IGスイッチ切り替えに伴うエンジン始動の場合に比べてPM排出量が少なくなる。そのため、PMセンサ17における不感帯を利用してエンジン11のPM排出量異常を判定しようとすると、PM排出量異常が生じている時であっても、PMセンサ17におけるPM堆積量が不感帯を越える程度になるまでに時間がかかり、その結果、異常診断に要する時間が長くなってしまう。
【0052】
そこで、本実施形態では、エンジン停止要求がエンジン自動停止条件の成立によるものである場合には、エンジン停止時のPM強制燃焼処理において、一対の検出電極36a,36b間に付着したPMを全て燃焼除去するのではなく、付着PMの一部を残しておく。そして、次回のエンジン再始動において、PM検出電圧Vpmの変化量に基づいて、より具体的には、PM検出電圧Vpmが所定量変化するのに要した時間に基づいて、エンジン11のPM排出量異常の有無を検出する。
【0053】
図6は、エンジン自動停止/再始動の場合におけるPM強制燃焼処理及び異常診断処理の具体的態様を示すタイムチャートである。図中、実線は正常時を示し、破線は異常時を示す。
【0054】
図6において、自動停止条件の成立によるエンジン停止要求があった場合、例えばその要求タイミングt21でヒータ通電が開始される。このヒータ通電により、PMセンサ17に堆積しているPMが燃焼除去される。なお、本実施形態では、タイミングt11においてPM検出電圧Vpmが判定値Vthrhigh2であることを条件にヒータ加熱を行う。
【0055】
図6では、上記図5とは異なり、ヒータ通電の開始後においてPM検出電圧Vpmが降下している最中であって、PM検出電圧Vpmが所定値Vthrlowまで降下した時点でヒータ通電が終了される(タイミングt22)。換言すれば、PM検出電圧Vpmが0V(ゼロ点)まで低下するよりも前にヒータ通電が終了される。これにより、タイミングt22以後では、余熱により若干のPM燃焼が継続された後にPM燃焼が終了し、結果として絶縁基板32上には若干量のPMが残存することとなる。本実施形態では、絶縁基板32上には、一対の検出電極36a,36bの導通を維持するだけのPMが残るように所定値Vthrlowが定められており、PM検出電圧Vpmとしては0Vよりも大きくなる。また、タイミングt22では、第2燃焼処理実行履歴フラグXpmrstiがセットされる。
【0056】
なお、本実施形態では、一対の検出電極36a,36bの導通を維持するだけのPMを絶縁基板32上に残すようにしたが、絶縁基板32上にPMを残しつつ、一対の検出電極間36a,36bの導通を遮断する程度までPMが燃焼除去されていてもよい。
【0057】
エンジン自動停止後において、再始動条件の成立によるエンジン始動要求があった場合、そのタイミングt23以降では、エンジン11の運転開始に伴い新たにPMが堆積する。この場合、PMセンサ17において不感帯が生じることなく直ちにPM検出電圧Vpmが上昇変化することとなる。図6では、タイミングt23から、PM検出電圧Vpmが所定値Vthrfailまで上昇するのに要した時間(PM上昇時間Tpmouti)が計測される。このとき、エンジン11のPM排出量が正常であれば、PM上昇時間Tpmout2は異常判定値tthr2以上となり、PM排出量異常フラグXpmfailはリセットされたままとなる。一方、エンジン11のPM排出量異常が生じている場合には、PM上昇時間Tpmout2が異常判定値tthr2未満となる。この場合、PM排出量異常フラグXpmfailがセットされる。
【0058】
次に、本実施形態のPM強制燃焼処理及び異常診断処理の具体的態様について、図7〜11のフローチャートを用いて説明する。
【0059】
図7は、PM強制燃焼処理を示すフローチャートである。本処理は、マイコン44により所定時間ごとに繰り返し実行される。
【0060】
図7において、ステップS11では、エンジン運転中にエンジン停止要求があったか否かを判定し、ステップS11がYESの場合、ステップS12へ進み、そのエンジン停止要求がアイドルストップ制御(ISS)に基づく停止要求か否かを判定する。ISSに基づくエンジン停止要求でない場合、つまりIGスイッチのオフ切り替えによるエンジン停止要求の場合にはステップS13へ進み、図8に示す第1燃焼処理を実行する。また、ISSに基づくエンジン停止要求の場合には、ステップS14へ進み、図9に示す第2燃焼処理を実行する。
【0061】
次に、第1燃焼処理について図8のフローチャートを用いて説明する。
【0062】
図8において、ステップS21では、PMの強制燃焼開始前であるか否かを判定し、強制燃焼の開始前であればステップS22へ進み、エンジン停止時のPM検出電圧Vpm(例えばIGスイッチのオフ切替タイミングでのPM検出電圧)を取得し、エンジン停止時電圧Vpmestpとして記憶する。続くステップS23では、エンジン停止時電圧Vpmestpと判定値Vthrhigh1とを比較する。このとき、Vpmestp≦Vthrhigh1であればステップS24へ進み、第1燃焼処理実行履歴フラグXpmrstをリセットして本処理を終了する。
【0063】
ステップS23においてVpmestp>Vthrhigh1の場合、ステップS25へ進み、絶縁基板32(一対の検出電極36a,36b)上に堆積したPMの強制燃焼処理を実施する(PMセンサ17のヒータ部35の通電をオンする)。続くステップS26では、PM強制燃焼処理実施中のPM検出電圧Vpmを取得し、燃焼処理時電圧Vpmhtupとして記憶する。その後、ステップS27において、燃焼処理時電圧Vpmhtupに基づいて、PM強制燃焼処理の終了タイミングか否かを判定する。ここでは、燃焼処理時電圧Vpmhtupが0になったか否か、つまり一対の検出電極36a,36b間にPMが堆積していない状態になったかを判定する。
【0064】
ステップS27がNOの場合、そのまま本ルーチンを終了し、ステップS21及びS27の処理を繰り返し実行する。そして、ステップS27がYESになるとステップS28へ進み、PM強制燃焼処理の終了タイミングと判定されてから所定のディレイ時間Tdが経過した後にヒータ部35の通電をオフする。その後、ステップS29において、第1燃焼処理実行履歴フラグXpmrstをセットして本ルーチンを終了する。
【0065】
次に、第2燃焼処理について図9のフローチャートを用いて説明する。
【0066】
図9において、ステップS31では、PMの強制燃焼開始前であるか否かを判定する。強制燃焼の開始前であればステップS32へ進み、アイドルストップ制御によるエンジン停止時のPM検出電圧Vpm(例えばエンジン自動停止条件の成立タイミングでのPM検出電圧)を取得し、エンジン自動停止時電圧Vpmistpとして記憶する。続くステップS33では、エンジン自動停止時電圧Vpmistpと判定値Vthrhigh2とを比較し、Vpmistp≦Vthrhigh2であればステップS34へ進み、第2燃焼処理実行履歴フラグXpmrstiをリセットして本処理を終了する。なお、判定値Vthrhigh2については、図8の判定値Vthrhigh1と同じ値であってもよいし異なる値であってもよい。
【0067】
ステップS33においてVpmistp>Vthrhigh2の場合、ステップS35へ進み、絶縁基板32上の堆積PMの強制燃焼処理を実施すべく、PMセンサ17のヒータ部35の通電をオンする。続くステップS36では、PM強制燃焼処理実施中のPM検出電圧Vpmを取得し、燃焼処理時電圧Vpmhtupとして記憶する。その後、ステップS37において、燃焼処理時電圧Vpmhtupに基づいて、PM強制燃焼処理の終了タイミングか否かを判定する。ここでは、燃焼処理時電圧Vpmhtupが所定値Vthrlowまで降下したか否かを判定する。
【0068】
ステップS37がNOの場合、そのまま本ルーチンを終了し、ステップS31及びS37の処理を繰り返し実行する。そして、ステップS37がYESになるとステップS38へ進み、その終了タイミングにおいて直ちにヒータ部35の通電をオフする。また、ステップS39において、第2燃焼処理実行履歴フラグXpmrstiをセットするとともに、アイドルストップ時間カウンタTistpによるエンジン自動停止時間の計測を開始する。そして本ルーチンを終了する。なお、アイドルストップ時間カウンタTistpによるエンジン自動停止時間の計測は、図示しない別ルーチンにより、エンジン再始動条件が成立するまで継続される。
【0069】
次に、エンジン11の異常診断処理について図10及び図11のフローチャートを用いて説明する。これらのうち、図10では、IGスイッチの切り替えに伴うエンジン始動の際に実施される異常診断処理(第1異常診断処理)について示し、図11では、エンジン自動停止後における再始動の際に実施される異常診断処理(第2異常診断処理)について示す。これらの処理は、マイコン44により所定時間ごとに繰り返し実行される。
【0070】
まず、第1異常診断処理について説明する。図10において、ステップS41では、IGスイッチのオン切り替え後における所定のエンジン始動期間か否かを判定する。ステップS41がYESの場合、ステップS42へ進み、第1燃焼処理実行履歴フラグXpmrstがセットされているか否かを判定する。ステップS42がYESの場合、ステップS43へ進み、PM検出電圧Vpmを取得して始動時電圧Vpmestaとして記憶する。また、始動後経過時間カウンタTesta1を1インクリメントするとともに、エンジン始動時水温Wtpestaを取得する。
【0071】
ステップS44では、始動時電圧Vpmestaが0よりも大きくなったか否かを判定し、ステップS44がYESであることを条件にステップS45へ進み、不感帯時間Tpmout1に基づいて、エンジン11のPM排出量の異常判定を行う。
【0072】
すなわち、ステップS45では、Vpmestaが0を超えたタイミング(Vpmestaの立ち上がりタイミング)での始動後経過時間カウンタTesta1を不感帯時間Tpmout1とし、その不感帯時間Tpmout1と異常判定値tthr1とを比較する。異常判定値tthr1について本実施形態では、図12に示す判定値設定用マップを用いて、エンジン始動時水温Wtpestaに応じて異常判定値tthr1を定めている。図12のマップによれば、エンジン始動時水温Wtpestaが低いほど、異常判定値tthr1が小さくなっている。
【0073】
図10の説明に戻り、ステップS45がTpmout≧ftthr1の場合にはステップS46へ進み、PM排出量正常フラグXpmokをセットし、PM排出量異常フラグXpmfailをリセットする。一方、ステップS45がTpmout<ftthr1の場合にはステップS47へ進み、PM排出量異常フラグXpmfailをセットし、PM排出量正常フラグXpmokをリセットする。その後、ステップS48において、始動後経過時間カウンタTesta1をゼロにリセットするとともに、第1燃焼処理実行履歴フラグXpmrstをリセットして本ルーチンを終了する。
【0074】
次に、第2異常診断処理について図11のフローチャートを用いて説明する。
【0075】
図11において、ステップS51では、エンジン11の自動停止後において再始動条件が成立した後の所定の始動期間か否かを判定する。ステップS51がYESの場合、ステップS52へ進み、第2燃焼処理実行履歴フラグXpmrstiがセットされているか否かを判定する。ステップS52がYESの場合、ステップS53へ進み、PM検出電圧Vpmを取得して再始動時電圧Vpmistaとして記憶する。また、再始動後経過時間カウンタTesta2を1インクリメントするとともに、アイドルストップ時間カウンタTistpを取得する。
【0076】
ステップS54では、再始動時電圧Vpmistaが所定値Vthrfail2よりも大きくなったか否かを判定する。ステップS54がYESであればステップS55へ進み、再始動時電圧Vpmistaが所定値Vthrfail2を超えるまでに要した時間に基づいて、エンジン11のPM排出量の異常判定を行う。
【0077】
すなわち、ステップS55では、Vpmista>Vthrfail2となったタイミングでの再始動後経過時間カウンタTesta2をPM上昇時間Tpmoutiとし、そのPM上昇時間Tpmoutiと異常判定値tthr2とを比較する。異常判定値tthr2について本実施形態では、図13に示す判定値設定用マップを用いて、アイドルストップ時間カウンタTistpに応じて定めている。図13のマップによれば、アイドルストップ時間カウンタTistpが大きいほど、異常判定値tthr2が大きくなっている。これは、エンジン自動停止の時間が長いほど、始動時燃料増量が多くする必要があり、結果としてPM排出量が多くなるからである。
【0078】
図11の説明に戻り、ステップS55がTpmouti≧ftthr2の場合にはステップS56へ進み、PM排出量正常フラグXpmokをセットし、PM排出量異常フラグXpmfailをリセットする。一方、ステップS55がTpmouti<ftthr2の場合にはステップS57へ進み、PM排出量異常フラグXpmfailをセットし、PM排出量正常フラグXpmokをリセットする。また、ステップS58において、再始動後経過時間カウンタTesta2及びアイドルストップ時間カウンタTistpをゼロにリセットするとともに、第2燃焼処理実行履歴フラグXpmrstiをリセットして本ルーチンを終了する。
【0079】
以上詳述した本実施形態によれば、次の優れた効果が得られる。
【0080】
エンジン始動時には燃料増量等に起因してPM排出量が比較的多くなることに着目し、エンジン始動時において、PM検出電圧Vpmを異常診断パラメータとしてエンジン11のPM排出量異常を診断するため、エンジン11の正常時と異常時とでPM排出量の相違が現れやすく、その結果、エンジン11のPM排出過多が生じている時にも、その排出過多の状態を精度良く検出できる。また、異常診断に先立ち、その直前のエンジン停止時において、ヒータ部35の加熱制御によるPMの強制燃焼が実施してあるため、PM排出量が比較的多くてもPM検出電圧Vpmの出力範囲内で異常診断を実施することができ、ひいては、PM排出量異常を精度良く検出できる。
【0081】
特に、PMセンサ17では、一対の検出電極36a,36bとシャント抵抗42とにより分圧回路40が形成されており、それらの中間点電圧がPM検出電圧Vpm(センサ検出値)としてECU20に入力される構成であるため、PM堆積量に対するPM検出電圧Vpmの感度はその堆積量に応じて異なり、PM堆積量が多くなるほど感度が低下する。その点、上記構成では、したがって、PM排出量異常の診断を行うのに先立ち、エンジン停止時においてPM除去を行うため、感度の高い領域で異常診断を実施することができ、診断精度を高めることができる。
【0082】
エンジン停止要求がIGスイッチのオフ操作に基づく場合には、不感帯の時間をパラメータとしてエンジン11のPM排出量異常を診断するため、エンジン燃焼状態の正常時と異常時とを明確に判別することができる。一方、エンジン停止要求が自動停止条件の成立に基づく場合には、PM排出量の異常診断を、不感帯の時間に代えてPM検出電圧Vpmの変化量をパラメータとして行うため、エンジン始動時においてエンジン11から排出されるPM量が比較的少ない場合にも、異常診断をできるだけ短時間で実施することができる。
【0083】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0084】
・第2異常診断処理では、PM検出電圧Vpmが所定値Vthrfailまで変化するのに要する時間を異常診断のパラメータとしたが、PM検出電圧Vpmの所定時間あたりの変化量を異常診断のパラメータとしてもよい。具体的には、エンジン始動時に、PM検出電圧Vpmが異常判定値(例えば、Vthrfailよりも大きい値)に達した場合にPM排出量異常有りと診断する。
【0085】
・第2異常診断処理において、PM検出電圧Vpmの変化度合い(傾き)に基づいてPM排出量異常を診断する構成としてもよい。この場合、PM検出電圧Vpmの傾きが判定値以上の場合にPM排出量異常有りと診断する。
【0086】
・エンジン11の停止時のPM強制燃焼処理において、エンジン停止要求の内容にかかわらず第1燃焼処理を実施してもよい。この場合、次回のエンジン始動時において第1異常診断処理を実施するのが望ましい。また、エンジン停止要求の内容にかかわらず第2燃焼処理を実施してもよい。この場合、次回のエンジン始動時において第2異常診断処理を実施するのが望ましい。
【0087】
・エンジン始動時の異常診断処理として、エンジン始動要求の内容にかかわらず第2異常診断処理を実施する構成としてもよい。
【0088】
・上記実施形態では、信号出力回路として図3に示す分圧回路40を用いたが、これを変更してもよい。例えば、分圧回路を構成するPM検出部34とシャント抵抗42との接続を逆にし、PM検出部34をローサイド、シャント抵抗42をハイサイドに設ける構成としてもよい。本構成では、PM検出電圧Vpmは次の(2)式で求められることとなる。
Vpm=5V×Rpm/(Rs+Rpm) …(2)
なお、RpmはPM検出部34の抵抗値、Rsはシャント抵抗42の抵抗値(例えば5kΩ)である。
【0089】
・エンジン排気管にPMを捕集するためのPMフィルタを設け、その下流側又は上流側の少なくともいずれかにPMセンサを設けた構成において、PMセンサの検出値に基づいてPMフィルタの再生タイミングを制御する構成としてもよい。また、PMセンサの検出値に基づいて、PMフィルタの故障診断を実施する構成としてもよい。
【0090】
・上記実施形態では、直噴式ガソリンエンジンについての適用を例示したが、他の形式のエンジンにも適用できる。例えば、ディーゼルエンジン(特に、直噴式ディーゼルエンジン)に適用することとし、ディーゼルエンジンの排気管に設けられたPMセンサについて本発明を用いることも可能である。また、エンジンの排気以外のガスを対象としてPM量を検出するものであってもよい。
【符号の説明】
【0091】
11…エンジン、17…PMセンサ(粒子状物質検出センサ)、20…ECU、32…絶縁基板(被付着部)、34…PM検出部、35…ヒータ部(加熱手段)、36a,36b…検出電極(対向電極)、40…分圧回路(信号出力回路)、41…センサ電源、42…シャント抵抗、44…マイコン(加熱制御手段、異常診断手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気に含まれる導電性の粒子状物質を付着させる被付着部と、前記被付着部に互いに離間して設けられる一対の対向電極と、前記被付着部を加熱する加熱手段とを有し前記一対の対向電極間の抵抗値に応じた検出信号を出力する粒子状物質検出センサを排気通路に備えるエンジンに適用され、
エンジン停止時に、前記被付着部に付着した粒子状物質を燃焼除去すべく前記加熱手段による加熱を実施する加熱制御手段と、
前記加熱制御手段により前記粒子状物質を燃焼除去した後の次回のエンジン始動時において、前記粒子状物質検出センサによるセンサ検出値に基づいて、前記エンジンにおける前記粒子状物質の排出量異常を診断する異常診断手段と、
を備えることを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項2】
前記加熱制御手段は、前記被付着部に付着している全ての粒子状物質を燃焼除去する第1制御手段を有し、
前記異常診断手段は、エンジン停止時に前記第1制御手段により前記粒子状物質を燃焼除去した場合において、前記一対の対向電極の抵抗値の減少変化に伴い前記センサ検出値が変化するまでの不感帯の時間に基づいて異常診断を実施する請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記加熱制御手段は、前記被付着部に付着している粒子状物質の一部を残し、その一部以外の粒子状物質を燃焼除去する第2制御手段を有し、
前記異常診断手段は、エンジン停止時に前記第2制御手段により前記粒子状物質を燃焼除去した場合において、前記センサ検出値の変化量に基づいて異常診断を実施する請求項1又は2に記載のエンジン制御装置。
【請求項4】
所定の自動停止条件が成立した場合に前記エンジンを自動停止し、前記自動停止条件の成立後に所定の再始動条件が成立した場合に前記エンジンを再始動する手段と、
前記エンジンの停止要求があった場合に、その停止要求が前記自動停止条件の成立に伴う停止要求か否かを判定する手段と、を備え、
前記加熱制御手段は、前記被付着部に付着している全ての粒子状物質を燃焼除去する第1制御手段と、前記被付着部に付着している粒子状物質の一部を残し、その一部以外の粒子状物質を燃焼除去する第2制御手段とを有し、
前記停止要求が、前記自動停止条件の成立に伴う停止要求である場合に前記第2制御手段による燃焼除去を実施し、前記自動停止条件の成立に伴う停止要求以外のエンジン停止要求である場合に前記第1制御手段による燃焼除去を実施する請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項5】
前記一対の対向電極間の抵抗である電極間抵抗と所定のシャント抵抗と電源部とを有してなる分圧回路を備え、前記センサ検出値が、前記電極間抵抗と前記シャント抵抗との中間点の電圧として出力されるものであり、
前記異常診断手段は、エンジン始動時に前記中間点の電圧を取得し、該取得した中間点電圧に基づいて異常診断を実施する請求項1乃至4のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【請求項1】
排気に含まれる導電性の粒子状物質を付着させる被付着部と、前記被付着部に互いに離間して設けられる一対の対向電極と、前記被付着部を加熱する加熱手段とを有し前記一対の対向電極間の抵抗値に応じた検出信号を出力する粒子状物質検出センサを排気通路に備えるエンジンに適用され、
エンジン停止時に、前記被付着部に付着した粒子状物質を燃焼除去すべく前記加熱手段による加熱を実施する加熱制御手段と、
前記加熱制御手段により前記粒子状物質を燃焼除去した後の次回のエンジン始動時において、前記粒子状物質検出センサによるセンサ検出値に基づいて、前記エンジンにおける前記粒子状物質の排出量異常を診断する異常診断手段と、
を備えることを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項2】
前記加熱制御手段は、前記被付着部に付着している全ての粒子状物質を燃焼除去する第1制御手段を有し、
前記異常診断手段は、エンジン停止時に前記第1制御手段により前記粒子状物質を燃焼除去した場合において、前記一対の対向電極の抵抗値の減少変化に伴い前記センサ検出値が変化するまでの不感帯の時間に基づいて異常診断を実施する請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記加熱制御手段は、前記被付着部に付着している粒子状物質の一部を残し、その一部以外の粒子状物質を燃焼除去する第2制御手段を有し、
前記異常診断手段は、エンジン停止時に前記第2制御手段により前記粒子状物質を燃焼除去した場合において、前記センサ検出値の変化量に基づいて異常診断を実施する請求項1又は2に記載のエンジン制御装置。
【請求項4】
所定の自動停止条件が成立した場合に前記エンジンを自動停止し、前記自動停止条件の成立後に所定の再始動条件が成立した場合に前記エンジンを再始動する手段と、
前記エンジンの停止要求があった場合に、その停止要求が前記自動停止条件の成立に伴う停止要求か否かを判定する手段と、を備え、
前記加熱制御手段は、前記被付着部に付着している全ての粒子状物質を燃焼除去する第1制御手段と、前記被付着部に付着している粒子状物質の一部を残し、その一部以外の粒子状物質を燃焼除去する第2制御手段とを有し、
前記停止要求が、前記自動停止条件の成立に伴う停止要求である場合に前記第2制御手段による燃焼除去を実施し、前記自動停止条件の成立に伴う停止要求以外のエンジン停止要求である場合に前記第1制御手段による燃焼除去を実施する請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項5】
前記一対の対向電極間の抵抗である電極間抵抗と所定のシャント抵抗と電源部とを有してなる分圧回路を備え、前記センサ検出値が、前記電極間抵抗と前記シャント抵抗との中間点の電圧として出力されるものであり、
前記異常診断手段は、エンジン始動時に前記中間点の電圧を取得し、該取得した中間点電圧に基づいて異常診断を実施する請求項1乃至4のいずれか一項に記載のエンジン制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−62769(P2012−62769A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205259(P2010−205259)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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