説明

エンジン燃焼制御装置、及び、自動二輪車

【課題】自動二輪車において、エンジンの鼓動感を切り替えて異なる乗車フィーリングを得られるようにする。
【解決手段】一本のクランクシャフト11当たりに複数の気筒C1〜C4を備えた車両用エンジンのエンジン燃焼制御装置において、カムシャフトを一側と他側とに2分割してその分割部分に位相切替え機構を設けて一側と他側のバルブタイミングを変化可能に構成し、エンジンの爆発タイミングを変化させる場合に、切り替える前のステージに位置する気筒の燃料噴射量及び吸入空気量の増量制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン燃焼制御装置、及び、自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車において、エンジンの燃焼間隔を不等間隔にすることで、運転者が鼓動感を得られるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4489674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動二輪車では、同一の車両において、鼓動感を切り替えて異なる乗車フィーリングを得られるようにしたいという課題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、自動二輪車において、エンジンの鼓動感を切り替えて異なる乗車フィーリングを得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、一本のクランクシャフト(11,311)当たりに複数の気筒(C1,C2,C3,C4)を備えた車両用エンジン(10,310)のエンジン燃焼制御装置において、カムシャフト(21,22)を一側と他側とに2分割してその分割部分に位相切替え機構(30,230)を設けて一側と他側のバルブタイミングを変化可能に構成し、エンジンの爆発タイミングを変化させる場合に、切り替える前のステージに位置する気筒の燃料噴射量及び吸入空気量の増量制御を行うことを特徴とする。
この構成によれば、一本のクランクシャフト当たりに複数の気筒を備えた車両用エンジンのカムシャフトを一側と他側とに2分割してその分割部分に位相切替え機構を設けて一側と他側のバルブタイミングを変化可能に構成し、エンジンの爆発タイミングを変化させるため、エンジンの鼓動感を切り替えて異なる乗車フィーリングを得ることができるとともに、位相を切り替える前のステージに位置する気筒の燃料噴射量及び吸入空気量の増量制御を行うため、位相の切り替え中においてもエンジンを適正に回転させることができ、位相の切り替えの際の出力低下やストールを防止して、スムーズにエンジンの鼓動感を切り替えできる。
【0006】
また、上記構成において、前記一本のクランクシャフト(11)当たりに4つの気筒(C1,C2,C3,C4)が備えられ、前記爆発タイミングは、等間隔爆発状態から不等間隔爆発状態に変化されても良い。
この場合、一本のクランクシャフト当たりに4つの気筒が備えられ、爆発タイミングが等間隔爆発状態から不等間隔爆発状態に変化されるため、エンジンの鼓動感を切り替えて異なる乗車フィーリングを得ることができる。
また、前記一側のカムシャフト(26,28)に対応する2つの気筒(C1,C2)の爆発は連続して行われ、前記他側のカムシャフト(27,29)に対応する2つの気筒(C3,C4)の爆発は連続して行われ、前記位相切替え機構(30)によってバルブタイミングが変化される時期は、前記他側のカムシャフト(27,29)によるバルブの開弁が行われていない時期である構成としても良い。
この場合、一側のカムシャフトに対応する2つの気筒の爆発は連続して行われ、他側のカムシャフトに対応する2つの気筒の爆発は連続して行われ、位相切替え機構によってバルブタイミングが変化される時期は、他側のカムシャフトによるバルブの開弁が行われていない時期であるため、位相切替え機構によってバルブタイミングを変化させるための時間を長く確保でき、確実にバルブタイミングを変化させてエンジンの鼓動感を切り替えることができる。
【0007】
さらに、前記一本のクランクシャフト(311)当たりに2つの気筒(C1,C4)が備えられ、前記爆発タイミングは、等間隔爆発状態から同時爆発状態に変化されても良い。
この場合、一本のクランクシャフト当たりに2つの気筒が備えられ、爆発タイミングが、等間隔爆発状態から同時爆発状態に変化されるため、エンジンの鼓動感を切り替えて異なる乗車フィーリングを得ることができる。
さらにまた、前記車両用エンジン(10,310)の始動時は爆発タイミングの選択位置に関わらず等間隔爆発となるように制御されても良い。
この場合、エンジンの始動時は爆発タイミングが等間隔爆発となるように制御されるため、クランクシャフトを容易に回転させることができ、エンジンの始動性が向上する。
【0008】
また、他側の前記カムシャフト(27,29)は、前記位相切替え機構によって回転の位相が180°遅れるように切り替えられても良い。
この場合、他側のカムシャフトの位相を180°変化させるだけで爆発タイミングを変化させることができるとともに、位相が遅れるように切り替えられるため、切り替えのための時間をより長く確保でき、確実にバルブタイミングを変化させることができる。
また、前記位相切替え機構(30,230)による切り替えは、前記車両用エンジン(10,310)のアイドリング回転中に行われても良い。
この場合、位相切替え機構による切り替えは、車両用エンジンのアイドリング回転中に行われ、エンジンの回転数が低い状態で切り替えが行われるため、切り替えのための時間をより長く確保でき、確実にバルブタイミングを変化させてエンジンの鼓動感を切り替えることができる。
【0009】
さらに、前記位相切替え機構(30)は、一側のカムシャフト(26,28)の端部に設けられた係合部(25B)に対して他側のカムシャフト(27,29)の端部に設けられた係合部(32C)が係合離脱するスライド機構(34)を有し、カムチェーン(9)により駆動される前記一側のカムシャフト(26,28)に対して前記他側のカムシャフト(27,29)の端部に設けられたスライド部材(32)が移動して噛合う構造であっても良い。
この場合、位相切替え機構は、一側のカムシャフトの端部に設けられた係合部に対して他側のカムシャフトの端部に設けられた係合部が係合離脱するスライド機構を有し、カムチェーンにより駆動される一側のカムシャフトに対して他側のカムシャフトの端部に設けられたスライド部材が移動して噛合う構造であるため、スライド部材をスライドさせる簡単な構造でエンジンの爆発タイミングを変化させることができ、エンジンの鼓動感を切り替えることができる。
【0010】
さらにまた、前記スライド部材(32)は、該スライド部材(32)を移動させる駆動部材(39)に連結され、前記一側のカムシャフト(26,28)の端部の前記係合部(25B)から離脱する際に、前記駆動部材(39)によって軸方向に押圧される構成としても良い。
この場合、一側のカムシャフトの端部の係合部からスライド部材が離脱する際に、スライド部材が駆動部材によって軸方向に押圧され、スライド部材と駆動部材との摩擦によって他側のカムシャフトの回転にブレーキをかけることができるため、切り替えにかかる時間を短縮でき、確実にバルブタイミングを変化させてエンジンの鼓動感を切り替えることができる。
【0011】
また、前記位相切替え機構(30)は、吸気カムシャフト(21)と排気カムシャフト(22)との間でカムチェーン(9)を跨いだ反スライド機構側に設けられた電磁ソレノイド(38)によって制御される構成としても良い。
この場合、位相切替え機構は、吸気カムシャフトと排気カムシャフトとの間でカムチェーンを跨いだ反スライド機構側に設けられた電磁ソレノイドによって制御されるため、吸気カムシャフトと排気カムシャフトとの間のスペースを利用してコンパクトに電磁ソレノイドを配置でき、エンジンの大型化を防止できる。
また、前記位相切替え機構は、一側のカムシャフトの端部に設けられた係合部に対して他側のカムシャフトの端部に設けられた係合部が係合離脱するスライド機構を有し、カムチェーンにより駆動される前記一側のカムシャフトに対して前記他側のカムシャフトの端部に設けられたインナー部材が移動して噛合う構造であり、前記インナー部材はバネにより連結方向に付勢されたスライドピン部を有し、前記インナー部材は、外周に配置された誘導コイルで離脱方向にスライドされる構成としても良い。
この場合、誘導コイルでインナー部材をスライドさせることでインナー部材が離脱するため、位相切替え機構を簡単な構成で設けることができるとともに応答性を向上できる。また、インナー部材をバネの付勢によって一側のカムシャフトに連結させておくことができるため、連結時の消費電力を低減できる。
【0012】
また、本発明は、車両用エンジン(10,310)の一本のクランクシャフト(11,311)当たりに複数の気筒(C1,C2,C3,C4)を備えた自動二輪車において、カムシャフト(21,22)を一側と他側とに2分割してその分割部分に位相切替え機構(30,230)を設けて一側と他側のバルブタイミングを変化可能に構成し、エンジンの爆発タイミングを変化させる場合に、切り替える前のステージに位置する気筒の燃料噴射量及び吸入空気量の増量制御を行うことを特徴とする。
この構成によれば、一本のクランクシャフト当たりに複数の気筒を備えた自動二輪車のエンジンのカムシャフトを一側と他側とに2分割してその分割部分に位相切替え機構を設けて一側と他側のバルブタイミングを変化可能に構成し、エンジンの爆発タイミングを変化させるため、エンジンの鼓動感を切り替えて異なる乗車フィーリングを得ることができるとともに、位相を切り替える前のステージに位置する気筒の燃料噴射量及び吸入空気量の増量制御を行うため、位相の切り替え後の爆発を適正に生じさせることができ、位相の切り替えの際の出力低下やストールを防止して、スムーズにエンジンの鼓動感を切り替えできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るエンジン燃焼制御装置及び自動二輪車では、一本のクランクシャフト当たりに複数の気筒を備えた車両用エンジンのカムシャフトを一側と他側とに2分割してその分割部分に位相切替え機構を設けて一側と他側のバルブタイミングを変化可能に構成し、エンジンの爆発タイミングを変化させるため、エンジンの鼓動感を切り替えて異なる乗車フィーリングを得ることができるとともに、位相を切り替える前のステージに位置する気筒の燃料噴射量及び吸入空気量の増量制御を行うため、位相の切り替え後の爆発を適正に生じさせることができ、位相の切り替えの際の出力低下やストールを防止して、スムーズにエンジンの鼓動感を切り替えできる。
【0014】
また、一本のクランクシャフト当たりに4つの気筒が備えられ、爆発タイミングが等間隔爆発状態から不等間隔爆発状態に変化されるため、エンジンの鼓動感を切り替えて異なる乗車フィーリングを得ることができる。
また、他側のカムシャフトに対応する2つの気筒の爆発は連続して行われ、位相切替え機構によってバルブタイミングが変化される時期は、他側のカムシャフトによるバルブの開弁が行われていない時期であるため、位相切替え機構によってバルブタイミングを変化させるための時間を長く確保でき、確実にバルブタイミングを変化させてエンジンの鼓動感を切り替えることができる。
さらに、一本のクランクシャフト当たりに2つの気筒が備えられ、爆発タイミングが、等間隔爆発状態から同時爆発状態に変化されるため、エンジンの鼓動感を切り替えて異なる乗車フィーリングを得ることができる。
【0015】
また、エンジンの始動時は爆発タイミングが等間隔爆発となるように制御されるため、クランクシャフトを容易に回転させることができ、エンジンの始動性が向上する。
また、他側のカムシャフトの位相を180°変化させるだけで爆発タイミングを変化させることができるとともに、位相が遅れるように切り替えられるため、切り替えのための時間をより長く確保でき、確実にバルブタイミングを変化させることができる。
さらに、位相切替え機構による切り替えは、エンジンの回転数が低いアイドリング回転中行われるため、切り替えのための時間をより長く確保でき、確実にバルブタイミングを変化させてエンジンの鼓動感を切り替えることができる。
また、位相切替え機構は、カムチェーンにより駆動される一側のカムシャフトに対して他側のカムシャフトの端部に設けられたスライド部材が移動して噛合う構造であるため、スライド部材をスライドさせる簡単な構造でエンジンの爆発タイミングを変化させることができ、エンジンの鼓動感を切り替えることができる。
【0016】
また、一側のカムシャフトの端部の係合部からスライド部材が離脱する際に、スライド部材と駆動部材との摩擦によって他側のカムシャフトの回転にブレーキをかけることができるため、切り替えにかかる時間を短縮でき、確実にバルブタイミングを変化させてエンジンの鼓動感を切り替えることができる。
また、位相切替え機構は、吸気カムシャフトと排気カムシャフトとの間でカムチェーンを跨いだ反スライド機構側に設けられた電磁ソレノイドによって制御されるため、吸気カムシャフトと排気カムシャフトとの間のスペースを利用してコンパクトに電磁ソレノイドを配置でき、エンジンの大型化を防止できる。
さらに、誘導コイルでインナー部材をスライドさせることでインナー部材が離脱するため、位相切替え機構を簡単な構成で設けることができるとともに応答性を向上できる。また、インナー部材をバネの付勢によって一側のカムシャフトに連結させておくことができるため、連結時の消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るエンジンを示す模式図である。
【図2】エンジン燃焼制御装置を示す平面図である。
【図3】一側シャフトと他側シャフトとの連結部を示す断面図である。
【図4】不等間隔爆発状態とされたエンジン燃焼制御装置を示す平面図である。
【図5】クランクシャフトの回転角に対し、爆発する気筒及びバルブの開閉状態を示した図である。
【図6】クランクシャフトの回転角に対し、爆発する気筒及びバルブの開閉状態を示した図である。
【図7】エンジンの始動時におけるエンジン燃焼制御装置の処理を示すフローチャートである。
【図8】エンジンの運転中における爆発状態の切替えの処理を示すフローチャートである。
【図9】第2の実施の形態のエンジン燃焼制御装置を示す平面図である。
【図10】第3の実施の形態のエンジンにおいて、クランクシャフトの回転角に対し、爆発する気筒及びバルブの開閉状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係るエンジン燃焼制御装置、及び、この燃焼制御装置を搭載した自動二輪車について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
【0019】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るエンジンを示す模式図である。
エンジン10(車両用エンジン)は、自動二輪車に駆動源として搭載され、車幅方向に4つの気筒が並べて配置された直列4気筒の4サイクルエンジンであり、一本のクランクシャフト11当たりに、4つの気筒を備えて構成されている。
エンジン10は、一端側から他端側へ順に、1番気筒C1、2番気筒C2、3番気筒C3、及び、4番気筒C4を有している。ここで、図中では、各気筒を、その番号に対応させて#1〜#4でそれぞれ示すこととする。
【0020】
エンジン10は4サイクルエンジンであるため、吸入、圧縮、爆発、及び、排気の4工程で構成される1回の燃焼プロセスでクランクシャフト11は720°回転する。
クランクシャフト11における1番気筒C1及び4番気筒C4のクランク位相角は、共に0°の位置に配置されている。また、クランクシャフト11における2番気筒C2及び3番気筒C3のクランク位相角は、共に180°の位置に配置されている。ここで、クランク位相角とは、各気筒のピストン(不図示)が連結される各コンロッド(不図示)をクランクシャフト11に連結する各クランクピン(不図示)が配置される角度位置であって、クランクシャフト11上における各クランクピンの回転方向の角度位置を差している。すなわち、クランクシャフト11は、1番気筒C1及び4番気筒C4では同一の位相で回転し、2番気筒C2及び3番気筒C3では、互いに同一の位相、かつ、1番気筒C1及び4番気筒C4と180°異なる位相で回転する。
【0021】
エンジン10は、クランクシャフト11の回転の角度位置を検出するクランク角センサ12と、吸気カムシャフト21及び排気カムシャフト22の角度位置を検出するカム角センサ17と、各気筒に燃料を供給する燃料噴射装置13と、各気筒を点火する点火装置14と、吸気装置としてのスロットルボディ16とを有し、クランク角センサ12、カム角センサ17、燃料噴射装置13、点火装置14、及び、スロットルボディ16は、自動二輪車の各部を制御するECU15に接続されている。ECU15は、燃焼マップ記憶部15Aを有し、燃焼マップ記憶部15Aには、クランクシャフト11の角度に応じてどの気筒を燃焼させるかが設定された燃焼マップが複数記憶されている。ECU15は、クランク角センサ12の検出値に基づいて燃焼マップ記憶部15Aを参照し、燃焼対象の気筒を特定し、燃料噴射装置13、点火装置14、及び、スロットルボディ16を制御して気筒を燃焼させ、これを連続的に行うことでエンジン10を運転する。
【0022】
第1の実施の形態では、エンジン10は、後述するエンジン燃焼制御装置20(図2)を備えることにより、1番気筒C1から4番気筒C4までが等間隔で爆発(燃焼)する等間隔爆発状態と、気筒の爆発間隔が不等間隔となる不等間隔爆発状態との2つの状態で運転することが可能である。燃焼マップ記憶部15Aは、等間隔爆発状態の燃焼マップを記憶した等間隔マップと、不等間隔爆発状態の燃焼マップを記憶した不等間隔マップとを有している。
第1の実施の形態の自動二輪車は、ECU15に接続された切替えスイッチ8をハンドル(不図示)に備えており、運転者が切替えスイッチ8を操作することで等間隔爆発状態及び不等間隔爆発状態の切り替えが行われる。
【0023】
等間隔爆発状態では、クランクシャフト11の回転角が0°のときに1番気筒C1が爆発し、180°のときに2番気筒C2が爆発し、360°のときに4番気筒C4が爆発し、540°のときに3番気筒C3が爆発し、720°のときに燃焼プロセスが一巡して1番気筒C1が爆発し、爆発が繰り返されていく。すなわち、等間隔爆発状態では、クランクシャフト11の回転角が180°変化する度に各気筒が順に爆発する。
不等間隔爆発状態では、クランクシャフト11の回転角が0°のときに1番気筒C1及び4番気筒C4が同時に爆発し、180°のときに2番気筒C2及び3番気筒C3が同時に爆発し、540°後の720°のときに燃焼プロセスが一巡し、°1番気筒C1及び4番気筒C4が同時に爆発する。すなわち、不等間隔爆発状態では、クランク位相角が同一の一対の気筒が同時に爆発する同爆燃焼となるとともに、爆発間隔が180°と540°とで不等間隔に交互に繰り返されていく。
【0024】
図2は、エンジン燃焼制御装置20を示す平面図である。
エンジン10は、DOHC式の4バルブエンジンであり、各気筒のシリンダヘッド(不図示)に一対の吸気バルブ(不図示)、及び、一対の排気バルブ(不図示)が配置され、計16個のバルブを備えるとともに、これらバルブを開弁する吸気カムシャフト21、及び、排気カムシャフト22を備えている。上記吸気バルブ及び排気バルブは、弁ばね(不図示)によって閉弁方向に付勢されており、吸気カムシャフト21及び排気カムシャフト22のカム山に押圧されることで開弁される。
エンジン燃焼制御装置20は、吸気カムシャフト21、排気カムシャフト22、吸気カムシャフト21、ECU15(図1)、及び、排気カムシャフト22の位相を切替える位相切替え機構30を備えている。
【0025】
吸気カムシャフト21、及び、排気カムシャフト22は、クランクシャフト11と平行に延びて配置され、その軸上には、上記バルブを押圧して駆動する吸気カム23及び排気カム24が形成されている。詳細には、吸気カムシャフト21には、1番気筒C1に対応する吸気カム23A、2番気筒C2に対応する吸気カム23B、3番気筒C3に対応する吸気カム23C、及び、4番気筒C4に対応する吸気カム23Dが設けられている。また、排気カムシャフト22には、1番気筒C1に対応する排気カム24A、2番気筒C2に対応する排気カム24B、3番気筒C3に対応する排気カム24C、及び、4番気筒C4に対応する排気カム24Dが設けられている。
吸気カムシャフト21、及び、排気カムシャフト22は、シリンダヘッド上部のホルダー(不図示)に軸支される。
【0026】
吸気カムシャフト21、及び、排気カムシャフト22は、軸方向の中間部にそれぞれ被動歯車25を有し、クランクシャフト11と被動歯車25との間に掛け渡されるカムチェーン9によってクランクシャフト11に回転駆動される。吸気カムシャフト21、及び、排気カムシャフト22は、クランクシャフト11の半分の回転数で回転され、クランクシャフト11が720°回転すると360°回転する。
被動歯車25は、吸気カム23Bと吸気カム23Cとの間、及び、排気カム24Bと排気カム24Cとの間に配置されている。
【0027】
図2では、等間隔爆発状態にある吸気カムシャフト21、及び、排気カムシャフト22が示されている。吸気カム23は、360°の回転で4気筒分の吸気バルブを等間隔で駆動するように90°の位相間隔で形成されている。すなわち、吸気カム23Aのカム山に対して90°の位置に吸気カム23Bのカム山が位置し、180°の位置に吸気カム23Dのカム山が位置し、270°の位置に吸気カム23Cのカム山が位置する。
また、排気カム24も同様に、排気カム24Aのカム山に対して90°の位置に排気カム24Bのカム山が位置し、180°の位置に排気カム24Dのカム山が位置し、270°の位置に排気カム24Cのカム山が位置する。
【0028】
吸気カムシャフト21は、被動歯車25を境にして一側と他側とに分割されており、この分割部分に位相切替え機構30が設けられている。吸気カムシャフト21は、吸気カム23A,23Bが設けられた一側シャフト26と、吸気カム23C,23Dが設けられた他側シャフト27とを有している。被動歯車25は、一側シャフト26の端部に固定されている。
排気カムシャフト22は、被動歯車25を境にして一側と他側とに分割されており、この分割部分に位相切替え機構30が設けられている。排気カムシャフト22は、排気カム24A,24Bが設けられた一側シャフト28と、排気カム24C,24Dが設けられた他側シャフト29とを有している。被動歯車25は、一側シャフト28の端部に固定されている。
【0029】
図3は、一側シャフト26と他側シャフト27との連結部を示す断面図であり、図3(a)は一側シャフト26と他側シャフト27とが連結された状態を示し、図3(b)は一側シャフト26と他側シャフト27との連結が解除された状態を示している。
図2及び図3に示すように、位相切替え機構30は、他側シャフト27,29の端にそれぞれ設けられて被動歯車25の軸方向の面25Aに当接する受け部材31と、軸方向に移動可能で、被動歯車25に対して着脱自在に係合するスライド部材32と、スライド部材32を被動歯車25側に付勢するバネ33と、スライド部材32を軸方向に移動させるスライド機構34と、被動歯車25と、ECU15(図1)とを備えている。
【0030】
受け部材31は、有底の円筒形状に形成されており、他側シャフト27,29の端部が圧入固定される筒部31Aと、他側シャフト27,29の端と被動歯車25との間に挟まれる底面部31Bと、径方向に突出する鍔部31Cとを有している。
スライド部材32は、円板状の円板部32Aと、円板部32Aの中央に設けられ、受け部材31の筒部31Aの外周面にスライド自在に嵌合するスライド孔32Bと、円板部32Aから突出して被動歯車25の面25Aに係合する凸部32C(他側のカムシャフトの端部に設けられた係合部)と、円板部32Aの外周面に設けられた溝部32Dとを有している。
【0031】
スライド部材32は、スライド孔32Bが筒部31Aの外周面にスプライン嵌合することで、他側シャフト27,29に対して、軸方向にスライド自在、かつ、相対回転不能に連結されている。凸部32Cは、他側シャフト27,29の軸線を基準に対称となる2カ所に形成されており、先端側にかけて先細る円錐状となっている。被動歯車25には、凸部32Cに対応したテーパー状の凹部25B(一側のカムシャフトの端部に設けられた係合部)が形成されており、凸部32Cが凹部25Bに係合することで、スライド部材32は被動歯車25に固定される。すなわち、他側シャフト27,29は、図3(a)に示すように、凸部32Cが凹部25Bに噛合って係合することで一側シャフト26,28に連結され、一側シャフト26,28と一体に回転するようになる。また、他側シャフト27,29は、図3(b)に示すように、凸部32Cが凹部25Bから離脱することで一側シャフト26,28から外れ、一側シャフト26,28に対して相対回転可能になる。
また、円錐状の凸部32Cをテーパー状の凹部25Bに係合させるため、凸部32Cと凹部25Bとを係合及び離脱させ易いとともに、ガタツキも低減できる。
【0032】
バネ33は、コイルばねであり、受け部材31の鍔部31Cとスライド部材32との間に圧縮された状態で設けられている。
スライド機構34は、電磁ソレノイド式のアクチュエータ38(電磁ソレノイド)と、アクチュエータ38の軸部38Aの端に設けられるアーム39(駆動部材)と、スライド部材32とを有している。
アクチュエータ38は、吸気カムシャフト21と排気カムシャフト22との間においてカムチェーン9を跨いだ反スライド機構側に設けられ、軸部38Aが吸気カムシャフト21及び排気カムシャフト22と平行になるように配置されている。アーム39は、吸気側及び排気側の各スライド部材32の溝部32Dに嵌合されている。アーム39の先端は、軸方向視では溝部32Dに沿う半円状に形成されており、溝部32Dの外周部の略半周に亘って嵌合する。
【0033】
アクチュエータ38はECU15によって制御され、アクチュエータ38に通電されることで軸部38Aが延び、アーム39を介してスライド部材32がバネ33に抗して移動され、スライド部材32の被動歯車25に対する係合が解除され、他側シャフト27,29は一側シャフト26,28に対して相対回転可能になる。
アクチュエータ38に通電されていない状態では、軸部38Aが縮むとともに、バネ33がスライド部材32を付勢しており、この状態でスライド部材32の凸部32Cと被動歯車25の凹部25Bとの回転位置が一致することで、スライド部材32が被動歯車25に係合する。
【0034】
図4は、不等間隔爆発状態とされたエンジン燃焼制御装置20を示す平面図である。
図4に示すように、不等間隔爆発状態では、一側シャフト26,28に対し、他側シャフト27,29は180°だけ相対回転された位置にあり、1番気筒C1の吸気カム23Aのカム山及び4番気筒C4の吸気カム23Dのカム山の位相は一致し、2番気筒C2の吸気カム23Bのカム山及び3番気筒C3の吸気カム23Cのカム山の位相は一致している。また、排気側においても同様に、排気カム24Aのカム山及び排気カム24Dのカム山の位相は一致し、排気カム24Bのカム山及び排気カム24Cのカム山の位相は一致している。
【0035】
このように、1番気筒C1の吸気カム23A及び4番気筒C4の吸気カム23Dの位相、及び、排気カム24A及び排気カム24Dの位相が一致することで、1番気筒C1及び4番気筒C4のバルブタイミングが一致し、加えて、クランクシャフト11は1番気筒C1及び4番気筒C4では同一の位相で回転するように構成されているため、1番気筒C1及び4番気筒C4が同時に爆発するようになる。
同様に、2番気筒C2の吸気カム23B及び3番気筒C3の吸気カム23Cの位相、及び、排気カム24B及び排気カム24Cの位相が一致することで、2番気筒C2及び3番気筒C3のバルブタイミングが一致し、加えて、クランクシャフト11は2番気筒C2及び3番気筒C3では同一の位相で回転するように構成されているため、2番気筒C2及び3番気筒C3が同時に爆発するようになる。
【0036】
図2の等間隔爆発状態から図4の不等間隔爆発状態にバルブタイミングを変更する場合、ECU15は、エンジン10の回転中において、クランクシャフト11が所定の回転角となったときにアクチュエータ38を駆動することで、図3(b)に示すようにスライド部材32を凹部25Bから離脱させて他側シャフト27,29を一側シャフト26,28に対して相対回転可能にする。アクチュエータ38の駆動はスライド部材32の離脱後に即時解除される。ここで、アクチュエータ38の駆動によって、アーム39がスライド部材32の溝部32Dに対して軸方向に押圧され、アーム39と溝部32Dとの摩擦によって他側シャフト27,29の回転にはブレーキがかけられることになる。
【0037】
そして、カムチェーン9に駆動される一側シャフト26,28は回転が継続され、一方、他側シャフト27,29は、回転が減速されるとともに、バネ33に付勢される凸部32Cが被動歯車25の面25Aに当接した状態で一側シャフト26,28に対して位相が遅れる方向に相対回転し、凸部32Cの係合が解除されてから180°相対回転したところで凹部25Bに再び係合し一側シャフト26,28と一体に回転する。これにより、吸気カムシャフト21及び排気カムシャフト22は、図4のように不等間隔爆発状態に対応した位相に変更される。
【0038】
不等間隔爆発状態から等間隔爆発状態にバルブタイミングを変更する場合は上記と同様であり、ECU15は、エンジン10の回転中において、クランクシャフト11が所定の回転角となったときにアクチュエータ38を駆動し、スライド部材32を凹部25Bから離脱させて他側シャフト27,29を相対回転可能にする。そして、一側シャフト26,28は回転が継続され、一方、他側シャフト27,29は、回転が減速されるとともに、凸部32Cが被動歯車25の面25Aに当接した状態で一側シャフト26,28に対して位相が遅れる方向に相対回転し、凸部32Cの係合が解除されてから180°相対回転したところで凹部25Bに再び係合し一側シャフト26,28と一体に回転する。これにより、吸気カムシャフト21及び排気カムシャフト22は、図2のように等間隔爆発状態に対応した位相に変更される。
【0039】
図5は、クランクシャフト11の回転角に対し、爆発する気筒及びバルブの開閉状態を示した図である。図5では、1番気筒C1が爆発する回転角が0°として示されているが、どの状態を0°とするかは任意である。また、図5では、排気工程は破線で示され、吸入工程は実線で示され、これらの線により示される山形状はバルブのリフト量を示している。
図5に示すように、等間隔爆発状態においては、1番気筒C1は、回転角が0°で点火されて爆発し、次いで、排気カム24A及び吸気カム23Aを介して排気及び吸気が順に行われ、その後、圧縮工程が行われ、720°で再び点火されて爆発する。1番気筒C1に続く他の気筒においては、互いに180°異なる爆発間隔で1番気筒C1と同様の燃焼プロセスが順に実行される。
【0040】
図5では、クランクシャフト11の回転角が1080°から1440°の範囲で、位相切替え機構30によってバルブタイミングの変更が行われ、等間隔爆発状態から不等間隔爆発状態への切替えが行われている。
切替えスイッチ8が操作されて等間隔爆発状態から不等間隔爆発状態への切り替え指示が出されると、ECU15は、クランクシャフト11の現在の回転角を参照し、アクチュエータ38を駆動する所定の回転角P1を決定するとともに、この所定の回転角P1の直前で爆発が行われるステージに位置する気筒の吸入工程(第1の実施の形態では2番気筒C2の吸入工程)における燃料噴射量及び吸入空気量を通常の等間隔爆発状態よりも増量させる増量制御を行い、これにより、2番気筒C2における所定の回転角P1の直前の燃焼工程(第1の実施の形態では900°で点火)の爆発力は通常よりも大きくなる。増量制御は、ECU15が、2番気筒C2の燃料噴射装置13及びスロットルボディ16を制御することで行われる。
【0041】
次いで、ECU15は、所定の回転角P1に達したときにアクチュエータ38を駆動し、他側シャフト27,29を離脱させる。この所定の回転角P1は、吸気側を駆動する他側シャフト27に対応する4番気筒C4及び3番気筒C3の内、最も遅い時期に吸気バルブが閉じる3番気筒C3の吸気バルブの閉弁が完了する角度に設定され、ここでは、1080°である。第1の実施の形態では、連続して爆発が行われる4番気筒C4及び3番気筒C3の吸気工程が完了した直後の回転角を所定の回転角P1に設定するため、切替えのための時間をより長く確保できる。
【0042】
次に、ECU15は、不等間隔爆発状態への切替え中に、他側シャフト27,29に対応する4番気筒C4及び3番気筒C3の各点火装置14の点火を停止する点火停止制御を行うとともに、燃焼マップを上記等間隔マップから不等間隔マップに切り替える。ここでは、1080°から1260°の範囲で点火停止制御が行われ、これにより、位相の切替え中の4番気筒C4及び3番気筒C3の点火が停止され、4番気筒C4及び3番気筒C3内の混合気は、点火されずに圧縮されて次の点火時期まで4番気筒C4及び3番気筒C3内に留まる。なお、4番気筒C4及び3番気筒C3において、他側シャフト27,29が離脱した状態では、吸気バルブ及び排気バルブは弁ばねによって閉じられているため、混合気は密閉されたシリンダ内で外部に排出されることなく圧縮されるだけであり、また、吸気バルブ及び排気バルブがピストンに干渉することはない。
このように、位相の切替えに伴って4番気筒C4及び3番気筒C3の点火を停止したとしても、上記増量制御によって切替え中のクランクシャフト11の回転力が通常よりも増加しているため、位相の切り替えの際のエンジン10の出力低下やストールを防止できる。
【0043】
一側シャフト26,28から離脱して相対回転可能となった他側シャフト27,29は、クランクシャフト11が1080°から360°回転して1440°まで回転することで、クランクシャフト11の回転の半分の180°だけ一側シャフト26,28に対して位相が遅れる方向に相対回転して凸部32Cが凹部25Bに係合し、不等間隔爆発状態に対応した位相角で一側シャフト26,28と一体になる。等間隔爆発状態における4番気筒C4及び3番気筒C3の吸気工程及び排気工程に対し、不等間隔爆発状態における4番気筒C4及び3番気筒C3の吸気工程及び排気工程は360°(他側シャフト27,29では180°に相当)だけ遅れて開始される。
【0044】
次に、ECU15は、1番気筒C1及び4番気筒C4の点火装置14を制御し、他側シャフト27,29の位相の切替えの完了とほぼ同時の1440°の回転角で、1番気筒C1及び4番気筒C4を同時に爆発させる。その後、180°後の1620°で2番気筒C2及び3番気筒C3が同時に爆発し、1620°から540°後の2160°で再び1番気筒C1及び4番気筒C4が爆発し、以後、180°及び540°の不等間隔で交互に爆発が行われる。
【0045】
図6は、クランクシャフト11の回転角に対し、爆発する気筒及びバルブの開閉状態を示した図である。ここで、図6では、不等間隔爆発状態から等間隔爆発状態に変更する工程が示されている。
図6では、クランクシャフト11の回転角が1440°から1800°の範囲で、位相切替え機構30によってバルブタイミングの変更が行われ、不等間隔爆発状態から等間隔爆発状態への切替えが行われている。図6では、1番気筒C1及び4番気筒C4が同爆する回転角が0°として示されているが、どの状態を0°とするかは任意である。
【0046】
切替えスイッチ8が操作されて不等間隔爆発状態から等間隔爆発状態への切り替え指示が出されると、ECU15は、クランクシャフト11の現在の回転角を参照し、アクチュエータ38を駆動する所定の回転角P2を決定する。
次いで、ECU15は、所定の回転角P2に達したときにアクチュエータ38を駆動し、他側シャフト27,29を離脱させる。この所定の回転角P2は、吸気側を駆動する他側シャフト27に対応する4番気筒C4及び3番気筒C3の内、最も遅い時期に吸気バルブが閉じる3番気筒C3の吸気バルブの閉弁が完了する角度に設定され、ここでは、1440°である。第1の実施の形態では、連続して爆発が行われる4番気筒C4及び3番気筒C3の吸気工程が完了した直後の回転角を所定の回転角P2に設定するため、切替えのための時間をより長く確保できる。
【0047】
次に、ECU15は、1440°から1800°までの間の等間隔爆発状態への切替え中に、他側シャフト27,29に対応する4番気筒C4及び3番気筒C3の各点火装置14の点火を停止するとともに、一側シャフト26,28に対応する1番気筒C1及び2番気筒C2の点火を行う制御を行い、燃焼マップを上記不等間隔マップから等間隔マップに切り替える。一側シャフト26,28は、他側シャフト27,29が離脱した状態では独立して回転可能であり、1番気筒C1及び2番気筒C2を開弁させることが出来る。これにより、等間隔爆発状態への切替え中にも1番気筒C1及び2番気筒C2の爆発を行うことができ、位相の切り替えの際のエンジン10の出力低下を防止できる。ここで、点火が停止される4番気筒C4及び3番気筒C3において、他側シャフト27,29が離脱した状態では、吸気バルブ及び排気バルブは弁ばねによって閉じられているため、所定の回転角P2より前のステージで充填された混合気は密閉されたシリンダ内で圧縮されて次の点火まで留まることになり、また、吸気バルブ及び排気バルブがピストンに干渉することはない。
【0048】
一側シャフト26,28から離脱して相対回転可能となった他側シャフト27,29は、クランクシャフト11が1440°から360°回転して1800°まで回転することで、クランクシャフト11の回転の半分の180°だけ一側シャフト26,28に対して位相が遅れる方向に相対回転して凸部32Cが凹部25Bに係合し、等間隔爆発状態に対応した位相角で一側シャフト26,28と一体になる。不等間隔爆発状態における4番気筒C4及び3番気筒C3の吸気工程及び排気工程に対し、等間隔爆発状態における4番気筒C4及び3番気筒C3の吸気工程及び排気工程は360°(他側シャフト27,29では180°に相当)だけ遅れて開始される。
【0049】
次に、ECU15は、4番気筒C4及び3番気筒C3の各点火装置14を制御し、他側シャフト27,29の位相の切替えの完了とほぼ同時の1800°の回転角で、4番気筒C4を爆発させ、1980°の回転角で3番気筒C3を爆発させ、以後、180°毎に等間隔で各気筒の爆発を行う。
【0050】
図7は、エンジン10の始動時におけるエンジン燃焼制御装置20の処理を示すフローチャートである。
エンジン燃焼制御装置20では、エンジン10の始動時は、切替えスイッチ8の選択位置に関わらず、等間隔爆発状態となるように制御される。
図7に示すように、エンジン10の始動に伴って、ECU15は、イグニッションスイッチがONとなったことを検出すると(ステップS1)、クランクシャフト11を駆動するスタータモータ(不図示)を回転させてクランキングを行い(ステップS2)、クランキングに伴う吸気カムシャフト21及び排気カムシャフト22の回転をカム角センサ17によって検出し、吸気カム23及び排気カム24の位相が等間隔爆発状態であるか否かを判別する(ステップS3)。ステップS2のクランキングでは、エンジン10が始動しないように、点火及び燃料の供給は行われない。また、クランキングの際は、エンジン10が備えるデコンプ機構(不図示)によって小さい力でクランキングを行うことができる。
【0051】
吸気カム23及び排気カム24の位相が等間隔爆発状態であると判別した場合(ステップS3:YES)、ECU15は始動モードへ移行し(ステップS5)、エンジン10を始動する(ステップS6)。
吸気カム23及び排気カム24の位相が不等間隔爆発状態であると判別した場合(ステップS3:NO)、ECU15は、クランキングを行ってクランクシャフト11を回転させるとともに、アクチュエータ38を駆動し、吸気カム23及び排気カム24の位相を等間隔爆発状態に変更する(ステップS4)。その後、ECU15は、始動モードへ移行し(ステップS5)、エンジン10を始動する(ステップS6)。
また、ステップS1において、切替えスイッチ8が不等間隔爆発状態に設定されていた場合、ステップS6のエンジン10の始動後に、ECU15が自動で不等間隔爆発状態に移行させても良い。
【0052】
不等間隔爆発状態でエンジン10を始動させる場合、同時に2つの気筒を爆発させるため、等間隔爆発状態で始動する場合よりも大きな回転力が必要になるが、本第1の実施の形態では、切替えスイッチ8の選択位置に関わらず、等間隔爆発状態でエンジン10を始動するため、始動時のクランクシャフト11の回転力が小さくてもエンジン10を始動できる。このため、始動性を向上できるとともに、上記スタータモータを小型化できる。
【0053】
図8は、エンジン10の運転中における爆発状態の切替えの処理を示すフローチャートである。
エンジン燃焼制御装置20では、エンジン10の運転中においては、爆発状態の切替えはアイドリング運転中に行われるように制御される。
図8に示すように、エンジン10の運転中に切替えスイッチ8の切替え指示の信号を受信すると(ステップS11)、ECU15は、エンジン10がアイドリング運転中であるか否かをクランク角センサ12の検出値に基づいて判別し(ステップS12)、エンジン10がアイドリング運転よりも高い回転数で運転されている場合(ステップS12:NO)、切替えを行わず処理を終了する。
【0054】
エンジン10がアイドリング運転中であると判別した場合(ステップS12:YES)、ECU15は、自動二輪車の車速が0あるいは設定車速以下であるか否かを不図示の車速センサに基づいて判別し(ステップS13)、自動二輪車の車速が0あるいは設定車速以下でなく、走行中であると判別した場合(ステップS13:NO)、切替えを行わず処理を終了する。
自動二輪車の車速が0あるいは設定車速以下であると判別した場合(ステップS13:YES)、ECU15は、エンジン10の暖気運転が完了したか否かをエンジン10の油温を検出する油温センサ(不図示)によって判別し(ステップS14)、エンジン10の暖気運転が完了していないと判別した場合(ステップS14:NO)、ECU15は、切替えを行わず処理を終了する。
【0055】
エンジン10の暖気運転が完了していると判別した場合(ステップS14:YES)、ECU15は、切替えスイッチ8の指示が不等間隔爆発状態から等間隔爆発状態への変更であるか否かを判別し(ステップS15)、不等間隔爆発状態から等間隔爆発状態への変更であると判別した場合(ステップS15:YES)、切替えを開始してアクチュエータ38を駆動し(ステップS16)、次に、4番気筒C4及び3番気筒C3の各点火装置14の点火を停止するとともに、1番気筒C1及び2番気筒C2の点火を行う制御をし(ステップS17)、燃焼マップを等間隔マップに切替え(ステップS18)、等間隔爆発状態でエンジン10を運転する(ステップS19)。
【0056】
切替えスイッチ8の指示が不等間隔爆発状態から等間隔爆発状態への変更でないと判別した場合(ステップS15:NO)、ECU15は、アクチュエータ38を駆動して等間隔爆発状態から不等間隔爆発状態への切替えを開始し(ステップS20)、2番気筒C2のスロットルボディ16を制御して吸入空気量を増量し(ステップS21)、2番気筒C2の燃料噴射装置13を制御して燃料噴射量を増量し(ステップS22)、4番気筒C4及び3番気筒C3の各点火装置14の点火を停止し(ステップS23)、燃焼マップを不等間隔マップに切替え(ステップS24)、不等間隔爆発状態でエンジン10を運転する(ステップS25)。
【0057】
このように、エンジン燃焼制御装置20では、切替え機構30による吸気カム23及び排気カム24の位相の切替えを、エンジン10の回転数が低いアイドリング運転中に行うため、切替えのための時間を長く確保でき、確実に爆発状態の切替えを行うことができる。また、車速が0で車両の停車中に爆発状態の切替えを行うため、爆発状態の切替えの動作が走行に影響することを避けることができる。さらに、エンジン10の暖気運転が完了している場合に爆発状態の切替えを行うため、設定通りに切替え機構30を作動させることができ、爆発状態の切替えを確実に行うことができる。
【0058】
以上説明したように、本発明を適用した第1の実施の形態によれば、一本のクランクシャフト11当たりに複数の気筒C1〜C4を備えた自動二輪車のエンジン10の吸気カムシャフト21及び排気カムシャフト22を一側シャフト26,28と他側シャフト27,29とに2分割してその分割部分に位相切替え機構30を設けて一側シャフト26,28と他側シャフト27,29のバルブタイミングを変化可能に構成し、エンジン10の爆発タイミングを変化させるため、エンジン10の鼓動感を切り替えて異なる乗車フィーリングを得ることができるとともに、位相を切り替える前のステージに位置する2番気筒C2の燃料噴射量及び吸入空気量の増量制御を行うため、位相の切り替え中においてもエンジン10を適正に回転させることができ、位相の切り替えの際のエンジン10の出力低下やストールを防止して、スムーズにエンジン10の鼓動感を切り替えできる。
【0059】
また、一本のクランクシャフト11当たりに4つの気筒C1〜C4が備えられ、爆発タイミングが等間隔爆発状態から不等間隔爆発状態に変化されるため、エンジン10の鼓動感を切り替えて異なる乗車フィーリングを得ることができる。
また、一側シャフト26,28に対応する2つの1番気筒C1及び2番気筒C2の爆発は連続して行われ、他側シャフト27,29に対応する2つの4番気筒C4及び3番気筒C3の爆発は連続して行われ、位相切替え機構30によってバルブタイミングが変化される時期は、他側シャフト27,29によるバルブの開弁が行われていない時期であるため、位相切替え機構30によってバルブタイミングを変化させるための時間を長く確保でき、確実にバルブタイミングを変化させてエンジン10の鼓動感を切り替えることができる。
【0060】
さらに、エンジン10の始動時は爆発タイミングが等間隔爆発となるように制御されるため、クランクシャフト11を容易に回転させることができ、エンジン10の始動性が向上する。
さらにまた、他側シャフト27,29の位相を180°変化させるだけで爆発タイミングを変化させることができるとともに、位相が遅れるように切り替えられるため、切り替えのための時間をより長く確保でき、確実にバルブタイミングを変化させることができる。
また、位相切替え機構30による切り替えは、エンジン10のアイドリング回転中に行われ、エンジン10の回転数が低い状態で切り替えが行われるため、切り替えのための時間をより長く確保でき、確実にバルブタイミングを変化させてエンジン10の鼓動感を切り替えることができる。また、エンジン10の回転を利用して位相の切替えを行うため、切替えを行うための動力が不要となり、簡単な構造でエンジン10の鼓動感を変更できる。
【0061】
また、位相切替え機構30は、一側シャフト26,28の端部に設けられた凹部25Bに対して他側シャフト27,29の端部に設けられた凸部32Cが係合離脱するスライド機構34を有し、カムチェーン9により駆動される一側シャフト26,28に対して他側シャフト27,29の端部に設けられたスライド部材32が移動して噛合う構造であるため、スライド部材32をスライドさせる簡単な構造でエンジン10の爆発タイミングを変化させることができ、エンジン10の鼓動感を切り替えることができる。
また、一側シャフト26,28の端部の凹部25Bからスライド部材32が離脱する際に、スライド部材32がアーム39によって軸方向に押圧され、スライド部材32とアーム39との摩擦によって他側シャフト27,29の回転にブレーキをかけることができるため、切り替えにかかる時間を短縮でき、確実にバルブタイミングを変化させてエンジン10の鼓動感を切り替えることができる。
【0062】
さらに、位相切替え機構30は、吸気カムシャフト21と排気カムシャフト22との間でカムチェーン9を跨いだ反スライド機構側に設けられた電磁ソレノイド式のアクチュエータ38によって制御されるため、吸気カムシャフト21と排気カムシャフト22との間のスペースを利用してコンパクトにアクチュエータ38を配置でき、エンジン10の大型化を防止できる。
【0063】
[第2の実施の形態]
以下、図9を参照して、本発明を適用した第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
上記第1の実施の形態では、位相切替え機構30は電磁ソレノイド式のアクチュエータ38によって駆動されるものとして説明したが、第2の実施の形態では、位相切替え機構230が誘導コイル238で駆動される点が上記第1の実施の形態と異なっている。
【0064】
図9は、第2の実施の形態のエンジン燃焼制御装置220を示す平面図である。
自動二輪車のエンジン10に搭載されるエンジン燃焼制御装置220は、吸気カムシャフト21、排気カムシャフト22、吸気カムシャフト21、ECU15、及び、排気カムシャフト22の位相を切替える位相切替え機構230を備えている。
位相切替え機構230は、受け部材31と、軸方向に移動可能で、被動歯車25に対して着脱自在に係合するインナー部材232と、インナー部材232を被動歯車25側に付勢するバネ33と、インナー部材232を軸方向に移動させるスライド機構234と、被動歯車25と、ECU15とを備えている。
【0065】
インナー部材232は、円板状の円板部232Aと、円板部232Aの中央に設けられ、受け部材31の筒部31Aの外周面にスライド自在に嵌合するスライド孔232Bと、円板部232Aから突出して被動歯車25の凹部25Bに係合するスライドピン部232C(他側のカムシャフトの端部に設けられた係合部)とを有している。
【0066】
インナー部材232は、スライド孔232Bが筒部31Aの外周面にスプライン嵌合することで、他側シャフト27,29に対して、軸方向にスライド自在、かつ、相対回転不能に連結されている。スライドピン部232Cは、他側シャフト27,29の軸線を基準に対称となる2カ所に形成されており、先端側にかけて先細る円錐状となっている。
スライド機構234は、インナー部材232と、インナー部材232の外周側に配置される誘導コイル238とを備えている。誘導コイル238は回転しないようにシリンダヘッド(不図示)に固定され、各他側シャフト27,29にそれぞれ設けられる。誘導コイル238は、ECU15の制御によって通電され、誘導コイル238に通電されるとインナー部材232が磁力によってバネ33に抗して軸方向に移動し、誘導コイル238に通電されていない状態では、インナー部材232はバネ33に付勢されて被動歯車25に係合している。
【0067】
他側シャフト27,29は、誘導コイル238が通電されて、スライドピン部232Cが凹部25Bから離脱することで一側シャフト26,28から外れ、一側シャフト26,28に対して相対回転可能になる。
第2の実施の形態では、ECU15が誘導コイル238に通電することで位相切替え機構230が作動し、エンジン10の爆発タイミングが変更される。また、位相切替え機構230の制御は、図7及び図8に示した上記第1の実施の形態の位相切替え機構30の制御と同様に行われる。
【0068】
以上説明したように、本発明を適用した第2の実施の形態によれば、誘導コイル238の磁力によってインナー部材232を直接駆動してスライドさせることでインナー部材232が被動歯車25から離脱するため、位相切替え機構230を簡単な構成で設けることができるとともに位相切替え機構230の応答性を向上できる。また、インナー部材232をバネ33の付勢によって一側シャフト26,28に連結させておくことができるため、連結時の消費電力を低減できる。
【0069】
[第3の実施の形態]
以下、図10を参照して、本発明を適用した第3の実施の形態について説明する。この第3の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
上記第1の実施の形態では、エンジン10は直列4気筒の4サイクルエンジンであり、一本のクランクシャフト11当たりに、4つの気筒を備えて構成されているものとして説明したが、第3の実施の形態では、エンジン310は直列2気筒の4サイクルエンジンであり、一本のクランクシャフト311当たりに、2つの気筒を備えて構成される点が上記第1の実施の形態と異なっている。
【0070】
図10は、第3の実施の形態のエンジン310において、クランクシャフト311の回転角に対し、爆発する気筒及びバルブの開閉状態を示した図である。
エンジン310は、第1の実施の形態のエンジン10の2番気筒C2及び3番気筒C3を削除し、1番気筒C1及び4番気筒C4のみで構成するようにしたエンジンである。第3の実施の形態の4番気筒C4は2番目の気筒であるが、説明を分かり易くするため、4番気筒C4として説明する。
【0071】
エンジン310はクランクシャフト311を有し、クランクシャフト311における1番気筒C1及び4番気筒C4のクランク位相角は等しく形成されている。
また、エンジン310のカムシャフトは、第1の実施の形態の吸気カムシャフト21及び排気カムシャフト22から、2番気筒C2及び3番気筒C3に対応するカムを削除するようにして構成され、一側シャフトに1番気筒C1に対応するカムが設けられ、他側シャフトに4番気筒C4に対応するカムが設けられ、アクチュエータ38の駆動によって他側シャフトが一側シャフトから離脱して相対回転可能となり、爆発間隔の切替えが行われる。
【0072】
図10に示すように、等間隔爆発状態においては、1番気筒C1及び4番気筒C4は、360°毎に交互に爆発する。
図10では、クランクシャフト311の回転角が1080°から1440°の範囲で、位相切替え機構30によってバルブタイミングの変更が行われ、等間隔爆発状態から同時爆発状態への切替えが行われている。
切替えスイッチ8が操作されて等間隔爆発状態から同時爆発状態への切り替え指示が出されると、ECU15は、クランクシャフト311の回転角を参照し、アクチュエータ38を駆動する所定の回転角P3を決定するとともに、この所定の回転角P3の直前で爆発が行われるステージに位置する気筒の吸入工程(第3の実施の形態では1番気筒C1の吸入工程)における燃料噴射量及び吸入空気量を通常の等間隔爆発状態よりも増量させる増量制御を行い、これにより、4番気筒C4における所定の回転角P3の直前の燃焼工程(第3の実施の形態では720°で点火)の爆発力は通常よりも大きくなる。
【0073】
次いで、ECU15は、所定の回転角P3に達したときにアクチュエータ38を駆動し、他側シャフトを離脱させる。この所定の回転角P3は、他側シャフトに対応する4番気筒C4の吸気バルブが閉じる角度近傍に設定され、ここでは、1080°である。
次に、ECU15は、同時爆発状態への切替え中に、4番気筒C4の点火装置14の点火を停止する点火停止制御を行うとともに、ECU15の燃焼マップを等間隔マップから同時爆発マップに切り替える。ここでは、1080°の点火の停止制御が行われる。このように、位相の切替えに伴って4番気筒C4の点火を停止したとしても、上記増量制御によって切替え中のクランクシャフト311の回転力が通常よりも増加しているため、位相の切り替えの際のエンジン310の出力低下やストールを防止できる。
【0074】
一側シャフトから離脱して相対回転可能となった他側シャフトは、クランクシャフト311が1080°から360°回転して1440°まで回転することで、クランクシャフト311の回転の半分の180°だけ一側シャフトに対して位相が遅れる方向に相対回転して凸部32Cが凹部25Bに係合し、同時爆発状態に対応した位相角で一側シャフトと一体になる。
【0075】
次に、ECU15は、1番気筒C1及び4番気筒C4の点火装置14を制御し、他側シャフトの位相の切替えの完了とほぼ同時の1440°の回転角で、1番気筒C1及び4番気筒C4を同時に爆発させる。その後、720°後の2160°で再び1番気筒C1及び4番気筒C4が同時に爆発し、以後、720°毎に1番気筒C1及び4番気筒C4が同時に爆発する。
【0076】
以上説明したように、本発明を適用した第3の実施の形態によれば、一本のクランクシャフト311当たりに2つの1番気筒C1及び4番気筒C4が備えられ、爆発タイミングが、等間隔爆発状態から同時爆発状態に変化されるため、エンジン310の鼓動感を切り替えて異なる乗車フィーリングを得ることができる。
【0077】
なお、上記第3の実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記第3の実施の形態に限定されるものではない。
第3の実施の形態の構成においても、上記第2の実施のように、誘導コイル238の磁力によってインナー部材232を離脱させる構成としてもよい。
また、第3の実施の形態の構成においても、エンジン310の始動時は爆発タイミングの選択位置に関わらず等間隔爆発となるように制御しても良く、さらに、位相切替え機構30による切り替えを、エンジン310のアイドリング回転中に行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0078】
9 カムチェーン
C1 1番気筒(気筒)
C2 2番気筒(気筒)
C3 3番気筒(気筒)
C4 4番気筒(気筒)
10,310 エンジン(車両用エンジン)
11,311 クランクシャフト
20,220 エンジン燃焼制御装置
21 吸気カムシャフト(カムシャフト)
22 排気カムシャフト(カムシャフト)
25B 凹部(一側のカムシャフトの端部に設けられた係合部)
26,28 一側シャフト(一側のカムシャフト)
27,29 他側シャフト(他側のカムシャフト)
30,230 位相切替え機構
32 スライド部材
32C 凸部(他側のカムシャフトの端部に設けられた係合部)
33 バネ
34,234 スライド機構
38 アクチュエータ(電磁ソレノイド)
39 アーム(駆動部材)
232 インナー部材
232C スライドピン部(他側のカムシャフトの端部に設けられた係合部)
238 誘導コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一本のクランクシャフト(11,311)当たりに複数の気筒(C1,C2,C3,C4)を備えた車両用エンジン(10,310)のエンジン燃焼制御装置において、
カムシャフト(21,22)を一側と他側とに2分割してその分割部分に位相切替え機構(30,230)を設けて一側と他側のバルブタイミングを変化可能に構成し、エンジンの爆発タイミングを変化させる場合に、切り替える前のステージに位置する気筒の燃料噴射量及び吸入空気量の増量制御を行うことを特徴とするエンジン燃焼制御装置。
【請求項2】
前記一本のクランクシャフト(11)当たりに4つの気筒(C1,C2,C3,C4)が備えられ、前記爆発タイミングは、等間隔爆発状態から不等間隔爆発状態に変化されることを特徴とする請求項1記載のエンジン燃焼制御装置。
【請求項3】
前記一側のカムシャフト(26,28)に対応する2つの気筒(C1,C2)の爆発は連続して行われ、前記他側のカムシャフト(27,29)に対応する2つの気筒(C3,C4)の爆発は連続して行われ、前記位相切替え機構(30)によってバルブタイミングが変化される時期は、前記他側のカムシャフト(27,29)によるバルブの開弁が行われていない時期であることを特徴とする請求項2記載のエンジン燃焼制御装置。
【請求項4】
前記一本のクランクシャフト(311)当たりに2つの気筒(C1,C4)が備えられ、前記爆発タイミングは、等間隔爆発状態から同時爆発状態に変化されることを特徴とする請求項1記載のエンジン燃焼制御装置。
【請求項5】
前記車両用エンジン(10,310)の始動時は爆発タイミングの選択位置に関わらず等間隔爆発となるように制御されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のエンジン燃焼制御装置。
【請求項6】
他側の前記カムシャフト(27,29)は、前記位相切替え機構によって回転の位相が180°遅れるように切り替えられることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のエンジン燃焼制御装置。
【請求項7】
前記位相切替え機構(30,230)による切り替えは、前記車両用エンジン(10,310)のアイドリング回転中に行われることを特徴とする請求項1または6のいずれかに記載のエンジン燃焼制御装置。
【請求項8】
前記位相切替え機構(30)は、一側のカムシャフト(26,28)の端部に設けられた係合部(25B)に対して他側のカムシャフト(27,29)の端部に設けられた係合部(32C)が係合離脱するスライド機構(34)を有し、カムチェーン(9)により駆動される前記一側のカムシャフト(26,28)に対して前記他側のカムシャフト(27,29)の端部に設けられたスライド部材(32)が移動して噛合う構造であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のエンジン燃焼制御装置。
【請求項9】
前記スライド部材(32)は、該スライド部材(32)を移動させる駆動部材(39)に連結され、前記一側のカムシャフト(26,28)の端部の前記係合部(25B)から離脱する際に、前記駆動部材(39)によって軸方向に押圧されることを特徴とする請求項8記載のエンジン燃焼制御装置。
【請求項10】
前記位相切替え機構(30)は、吸気カムシャフト(21)と排気カムシャフト(22)との間でカムチェーン(9)を跨いだ反スライド機構側に設けられた電磁ソレノイド(38)によって制御されることを特徴とする請求項8または9記載のエンジン燃焼制御装置。
【請求項11】
前記位相切替え機構(230)は、一側のカムシャフト(26,28)の端部に設けられた係合部(25B)に対して他側のカムシャフト(27,29)の端部に設けられた係合部(232C)が係合離脱するスライド機構(234)を有し、カムチェーン(9)により駆動される前記一側のカムシャフト(26,28)に対して前記他側のカムシャフト(27,29)の端部に設けられたインナー部材(232)が移動して噛合う構造であり、前記インナー部材(232)はバネ(33)により連結方向に付勢されたスライドピン部(232C)を有し、前記インナー部材(232)は、外周に配置された誘導コイル(238)で離脱方向にスライドされることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のエンジン燃焼制御装置。
【請求項12】
車両用エンジン(10,310)の一本のクランクシャフト(11,311)当たりに複数の気筒(C1,C2,C3,C4)を備えた自動二輪車において、
カムシャフト(21,22)を一側と他側とに2分割してその分割部分に位相切替え機構(30,230)を設けて一側と他側のバルブタイミングを変化可能に構成し、エンジンの爆発タイミングを変化させる場合に、切り替える前のステージに位置する気筒の燃料噴射量及び吸入空気量の増量制御を行うことを特徴とする自動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−197721(P2012−197721A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62453(P2011−62453)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】