説明

カスプ型皮膚表面内挿入用微細針

【課題】 以前より、薬剤や機能性剤の経皮投与を目的とした皮膚表面内挿入用微細針が金属やプラスチックからなる工業材料である場合、その微細針が体内で折れて残る体内残留事故が問題であり、また、微細針による薬剤投与においては、一般に針表面に薬剤を塗布する方法を用いるが、経皮浸透するに際して量的限界があり、十分な投与量を確保できないという課題がある。
【解決手段】 本発明のカスプ型皮膚表面内挿入用微細針は、基材が皮膚内可溶材であるため、安全、確実、かつ容易に皮膚表面内に挿入でき、また、体内残留事故に際しても微細針が生体内で溶解するという効果を提供できる。さらに、薬剤等を高濃度で含有した微細針の溶解作用により、皮膚表面内に種々の効能、機能を高濃度下で与えることができるという効果をも提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康、美容、治療等を目的として、生体皮膚表面下に栄養機能剤、色素剤、医薬剤等の機能性剤を投与する技術に関するものであり、すなわち経皮投剤に関する技術分野に属するものである。また、本発明は、人の皮膚内に化粧剤を投与したり、あるいはサプリメント等の栄養剤や皮膚栄養補助剤の投与を行うための肌修飾技術に関するものである。さらに、本発明は、蛋白質、DNA、金属、金属酸化物、マイクロカプセル等を、安全かつ確実に経皮投与する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、経皮投薬については、薬剤を金属やプラスチックからなる微細針の表面に塗布し、その微細針を皮膚に挿入して塗布薬剤を皮膚に浸透させる方法をとっていた。しかしながら、生体に適合することが困難な金属やプラスチックのような工業用材料を用いた微細針の場合、折れた針が生体内に残る事故がしばしば報告され、このことが危険視されてきている。
【0003】
また従来、美容技術においては、皮膚表面の塗布、経皮投与のための超音波浸透法、電気泳動等々の技術があるが、外来物に対応する皮膚保護膜のため、十分な量の投与ができないのが現状である。そして、サプリメント等の栄養剤の体内への投与の場合、経口限定であるため、低濃度の水溶性溶解物に限定される。
【0004】
さらに、皮膚内可溶材である多糖類や蛋白質の水溶物等を基材とする微細針の製造方法は、樹脂加工で利用される射出成形方法や、製糸に利用される引き上げ方法では、ほとんど成形が不可能であった。
【0005】
以上に鑑みて、マルトースのような糖質のみを主成分素材とした皮膚用微細針を集合化させたマイクロパイル及びその製造方法を提供したものがあり、例えば、特許文献1があげられる。これは、皮膚用微細針として、皮膚又は皮膚角質層への機能付与の際に、無痛状態にて皮膚機能再生に向けての簡便性、安全性を向上させることを目的としている。
【特許文献1】 特開2003−238347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
経皮投薬用微細針において、素材が金属やプラスチックのような工業材料の場合、微細針が折れて体内に残る事故、すなわち体内残留事故が問題であり、身体に極めて危険な状態を引き起こす場合も少なくない。
【0007】
また、生体に適合容易な素材の代表である糖を微細針に利用する方法があるが、加熱溶解させて成形するので、混在させる医薬剤によっては、薬剤の熱分解等のように薬効特性を損なうという大きな問題がある。
【0008】
さらに、微細針による医薬剤投与において、通常は針表面に医薬剤を塗布する方法をとるが、経皮浸透するに際して量的限界があり、十分な投与量の確保において問題となる。
【0009】
一方、前述のように、皮膚内可溶材である多糖類や蛋白質等からなる微細針の成形加工においては、針先端を如何に鋭利に尖らせることができるかが課題であり、上記の微細針の成型は極めて困難であった。
【0010】
従って、ヒアルロン酸又はコラーゲン等の皮膚内可溶材からなる微細針があれば、ヒアルロン酸又はコラーゲン等の投与も含め、混在させたその他の医薬の投与も可能であるが、微細成形が極めて困難であり、ミクロンサイズの上記微細針の実現が課題となっていた。また従来、特にヒアルロン酸は、溶液に溶かし皮膚に湿布する方法をとっていたので、皮膚浸透性あるいは浸透量に限界があることが問題であった。
【0011】
さらに、サプリメントの体内への投与は経口に限定されており、その投与は低濃度の水溶性溶解物に限定されるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の目的を達成すべく、課題を解決するための手段として、
(1)基板の上面又は側面に配置され、1又は2以上の尖端部及び向い合う両平面部を有した構造である、皮膚内可溶材からなるカスプ型微細針において、微細尖端部の長幅が0.1μm〜100μm、前記基板の上面又は下面に沿う末端の幅が20μm〜2mm、先端から末端までの長さが50μm〜5mmであることを特徴とするカスプ型皮膚表面内挿入用微細針、並びに、
(2)前記カスプ型微細針において、前記両平面の片面上又は両面上にある、末端又は末端と先端の途中位置から、先端に向かって面取り加工することにより、鋭利な尖端部を有することを特徴とする前記(1)のカスプ型皮膚表面内挿入用微細針、並びに、
(3)前記カスプ型微細針において、1又は2以上の両側面を面取り加工することにより、鋭利な尖端部を有することを特徴とする前記(1)又は(2)のカスプ型皮膚表面内挿入用微細針、並びに、
(4)前記カスプ型微細針において、1又は2以上のくびれ形状部を有することを特徴とする前記(1)から(3)いずれかのカスプ型皮膚表面内挿入用微細針、並びに、
(5)前記基板の基材が、皮膚内可溶材であることを特徴とする前記(1)から(4)いずれかのカスプ型皮膚表面内挿入用微細針、並びに、
(6)前記基板の基材が、糖類、セルロース、固形でんぷん、紙、木、プラスチック、金属から選ばれる1又は2以上の混合物であることを特徴とする前記(1)から(4)いずれかのカスプ型皮膚表面内挿入用微細針、並びに、
(7)前記基板の基材である糖類が、プルラン、又はプルラン及びマルトースの複合糖材であることを特徴とする前記(6)のカスプ型皮膚表面内挿入用微細針、並びに、
(8)前記皮膚内可溶材が、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、セルロース、ケラチン、ゼラチン、コラーゲン、カゼインから選ばれる1又は2以上の混合物であることを特徴とする前記(1)から(7)いずれかのカスプ型皮膚表面内挿入用微細針、並びに、
(9)前記カスプ型微細針が、蛋白質、DNA、医薬剤、栄養剤、栄養補助剤、化粧材、色素材、金属、金属酸化物、マイクロカプセルから選ばれる1又は2以上を含有することを特徴とする前記(1)から(8)いずれかのカスプ型皮膚表面内挿入用微細針、
としたものである。
【0013】
本発明のカスプ型微細針においては、基板の切削加工により微細針をカスプ形状にすれば、その先端を十分に尖らすことができ得るものである。すなわち、笹の葉のように向い合う両平面をもち、その先端が尖るようなV字先端のカスプ形状を1又は2以上有した構造である微細針とし、さらに、上記カスプ型微細針において、その微細尖端部の長幅が0.1μm〜100μm、上記基板の上面又は下面に沿う末端の幅が20μm〜2mm、上記カスプ型微細針の先端から末端までの長さが50μm〜5mmであれば、生体の皮膚にとって安全、確実、かつ容易に微細針を挿入することが可能となる。すなわち、前記長幅が0.1μm以下の場合は針強度が弱く、かつ作成も不可能であり、前記長幅が100μm以上の場合は皮膚表面内への挿入時の抵抗が大きく、かつ挿入時に痛みを感じ易くなるため好ましくない。また、針強度を適度に保つには、前記末端の幅が20μm〜2mmの範囲が好適である。さらに、皮膚表面内への有効な挿入を行うには、前記長さが50μm〜5mmの範囲が好適である。
【0014】
ここで、図1は、皮膚内可溶材であるヒアルロン酸からなる基板側面に配置されたカスプ型微細針の概略立体図であり、ヒアルロン酸からなる微細針が2個のものを示すが、これはヒアルロン酸基板の切削加工により得られる。図において、微細針4は基板の側面3に配置されており、微細針4の先端は尖端部となっており、基板1の上面に沿う末端の幅とは、微細針を真上から見た時に三角形をなす微細針の底辺を意味する。従って、先端から末端までの長さとは、前記三角形の先端の頂点から底辺へ垂線を下ろした線分の長さを意味し、さらに、微細尖端部の長幅とは、微細針の平面(上面)5にある微細針の先端の頂点から同平面(下面)へ垂線を下ろした線分の長さ、すなわち、図では換言すれば基板の厚さを意味する。また、図2は、皮膚内可溶材であるプルランからなる基板上面に配置された複数のカスプ型微細針の概略立体図であり、プルランからなるカスプ型微細針が20個のものを示すが、これはプルラン基板の切削加工により得られたカスプ型微細針を末端で切断して微細針部品として複数の同部品を製作し、それらをプルランの粘着特性を利用してプルラン基板上面に接着させて得られるものである。
【0015】
本発明のカスプ型微細針においては、前記両平面の片面上又は両面上にある、末端又は末端と先端の途中位置から、先端に向かって面取り加工を施し、より鋭利な尖端部とすることが可能となる。図3は、図1に示すヒアルロン酸からなる基板側面に配置されたカスプ型微細針において、さらに、前記両平面の片面(上面)の末端と先端の途中位置から、先端に向かって所定の面取り加工を施し、より鋭利な尖端部となしたカスプ型微細針の概略立体図である。図において、この面取り加工により切削された面は、前記途中位置における前記末端と平行な線分と微細針の先端を通るものの場合を示す。
【0016】
本発明のカスプ型微細針においては、前記両側面に所定の面取り加工を施し、より鋭利な尖端部とすることが可能となる。図4は、図1に示すヒアルロン酸からなる基板側面に配置されたカスプ型微細針において、さらに、前記両側面に面取り加工を施し、より鋭利な尖端部となしたカスプ型微細針の概略立体図である。図5は、図4に示された上記微細針を裏返しにしたものの概略立体図であり、図において、微細針上部にある平面上にマイクロカプセル等を搭載することが可能である。
【0017】
本発明のカスプ型微細針においては、基板面又は基板側面に配置されたカスプ型微細針を切削加工して前記くびれ形状部を有したカスプ型微細針とすることが可能となる。これにより、皮膚表面内に挿入された微細針が皮膚表面内で折れ易くなり、前記皮膚内可溶材や前記の蛋白質、DNA、医薬剤、栄養剤、栄養補助剤、化粧材、色素材、金属、金属酸化物、マイクロカプセルから選ばれる1又は2以上を含有した微細針を安全、確実、かつ容易に皮膚表面内に挿入することが可能となる。図6は、図1に示すヒアルロン酸からなる基板側面に配置されたカスプ型微細針において、さらに、前記両側面に所定の切削加工を施し、くびれ形状部となしたカスプ型微細針の概略平面図(前記基板平面(上面)の真上方向から見たもの)である。
【0018】
本発明のカスプ型微細針は、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、セルロース、ケラチン、ゼラチン、コラーゲン、カゼインから選ばれる1又は2以上の混合物である皮膚内可溶材からなるものであり、体内に微細針を残す事故が発生しても生体内で溶解する素材であるので問題は解決し得るものである。
【0019】
本発明のカスプ型微細針は、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、セルロース、ケラチン、ゼラチン、コラーゲン、カゼインから選ばれる1又は2以上の混合物である皮膚内可溶材からなるものであり、室温で医薬剤あるいは化粧剤を混在することができるので、混在機能剤の特性を損なう問題を解決することができる。
【0020】
本発明のカスプ型微細針は、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、セルロース、ケラチン、ゼラチン、コラーゲン、カゼインから選ばれる1又は2以上の混合物である皮膚内可溶材からなるものであり、上記皮膚内可溶材中に医薬剤又は化粧剤等を混在することができるので、投与量不足の問題を解決することができる。
【0021】
本発明のカスプ型微細針は、蛋白質、DNA、医薬剤、栄養剤、栄養補助剤、化粧材、色素材、金属、金属酸化物、マイクロカプセルから選ばれる1又は2以上を含有するものであり、これにより、種々の効能、機能を皮膚や生体に付与することができる。尚、機能性剤及び材料を内包したマイクロカプセルについては、前記カスプ型微細針の上面に搭載されていても良く、また、前記カスプ型微細針の前記両平面上の末端から先端に位置する中腹部に穴を空け、その内部にマイクロカプセルを入れ込んでも良く、さらには、前記カスプ型微細針の前記中腹部に窪みをつくり、その中にマイクロカプセルを入れ込んでも良い。図8には、半球状のマイクロカプセルをカスプ型微細針の上面(平面)に搭載したものの概略立体図を示し、図9には、マイクロカプセルを入れ込むための穴(嵌入用穴)を、前記中腹部に設けた3個の微細針からなるカスプ型微細針の概略平面図(前記基板平面の真上方向から見たもの)を示す。また、機能性剤及び材料を含有したマイクロカプセルについては、その形状がチップ状であっても良く、この場合にはチップ状マイクロカプセルを使用することとなる。さらに、本発明においては、マイクロチップをカスプ型微細針の上面に搭載するという態様もあるが、この場合を含めて「マイクロチップを含有したカスプ型微細針」とする、すなわち「搭載」を広義の含有に含むものとする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のカスプ型皮膚表面内挿入用微細針は、薬剤等を高濃度で含有することができるため、皮膚内可溶材の溶解作用により、皮膚表面内に種々の効能、機能を高濃度下で与えることが可能となる。また、前記皮膚表面内可溶材からなる微細針が皮膚表面内で折れても微細針が溶解するために全く問題とならない。
【0023】
さらに、本発明のカスプ型微細針は、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、セルロース、ケラチン、ゼラチン、コラーゲン、カゼインから選ばれる1又は2以上の混合物である皮膚内可溶材からなるものであるため、室温にて成型加工が容易であり、また、蛋白質、DNA、医薬剤、栄養剤、栄養補助剤、化粧材、色素材、金属、金属酸化物、マイクロカプセルから選ばれる1又は2以上を含有することにより、種々の効能、機能を皮膚や生体に付与することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明におけるカスプ型皮膚表面内挿入用微細針の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではない。
【0025】
厚さ100μmのヒアルロン酸からなる平面状基板を切削加工することにより、微細尖端部の長幅が15μm、前記基板の上面に沿う末端の幅が200μm、先端から末端までの長さが600μm、さらに前記基板の両平面の片面(上面)の末端から200μm先端へ離れた位置から、先端に向かって所定の面取り加工を施して鋭利な尖端部をもたせ、図3に示すような概形を有する2個のカスプ型微細針を得た。
【0026】
上記のヒアルロン酸からなるカスプ型微細針を皮膚に挿入することにより、高濃度ヒアルロン酸の投与ができ、肌に膨潤感を与えることができた。図7は、上記のカスプ型微細針を皮膚表面内に挿入した際の断面を模式図で表したものであり、ヒアルロン酸からなる鋭利な尖端部により、安全、確実、かつ容易に皮膚表面内へ微細針を挿入することができた。
【0027】
上記のヒアルロン酸からなるカスプ型微細針を皮膚に挿入し、血糖値を計るために、皮膚表面に直径100μm弱の穴を開けたところ、無痛で数mgだけ血液を採取することができた。
【0028】
アスコルビン酸リン酸ナトリウムのような加熱分解しやすい特性のあるビタミンCを、上記のヒアルロン酸からなるカスプ型微細針により皮膚表面に穴を多数開け、そこから1重量%のアスコルビン酸リン酸ナトリウム水溶液を皮膚表面に塗布し、効果的に皮膚内に浸透させることができた。
【0029】
上記のヒアルロン酸からなるカスプ型微細針に美白用化粧材として、ビタミンCの一種アスコルビン酸リン酸マグネシウムを重量比1%だけ混在させて、表面より200μm以内皮膚浅くに投与したところ、1ヶ月ほどで、顔面の褐色しみを薄めることができた。
【0030】
厚さ120μmのプルランからなる平面状基板を切削加工することにより、微細尖端部の長幅が75μm、前記基板に沿う末端の幅が75μm、先端から末端までの長さが250μm、さらに前記基板の両平面の片面(上面)の末端から80μm先端へ離れた位置から、先端に向かって所定の面取り加工を施して鋭利な尖端部をもたせ、図3に示すような概形を有する2個のカスプ型微細針を得た。上記のプルランからなるカスプ型微細針に美白用化粧材として、αアルブチンを重量比0.3%だけ混在させて、表面より100μm以内皮膚浅くに投与したところ、1ヶ月ほどで、顔面の褐色しみを薄めることができた。
【0031】
局部麻酔材の一種であるリドカインを重量比1%で上記のプルランからなるカスプ型微細針内にあらかじめ含有させておき、ラットの皮膚に投与する実験を行ったところ、血漿中にリドカインが存在することによって、ラット全身へのリドカインの浸透が確認できた。
【0032】
直径25μm以下を含む鉄粒子を上記のプルランからなるカスプ型微細針に混在させて、皮膚内にそのマイクロカンチレバーを挿入すると、高感度時期センサーによってその鉄粒子を数えることができ、番号対応がとれることができたので、入院患者の番号付けに使用し得ることを確認した。
【0033】
人IgG抗体を重量比0.25%だけマルトースとプルランの混合素材(重量比50:50)のチップ状マイクロカプセル内に混在させて、そのチップを上記のプルランからなるカスプ型微細針上面に搭載し、そのカスプ型微細針を用いて、ラットの皮膚に投与するIn−Vivo.実験を行ったところ、皮膚内に人IgGの投与の可能性が確認できた。
【0034】
DNAの一部をプルランと非結晶性純粋マルトースの混合素材(重量比50:50)のチップ状マイクロカプセル内に混在させて、上記のプルランからなるカスプ型微細針に混入させ、そのカスプ型微細針を皮膚内に挿入すると、そのDNAが、角質層内に留まっていることが確認できた。
【0035】
蛋白質の一種であるアルブミンをプルランと非結晶性純粋マルトースの混合素材(重量比50:50)のチップ状マイクロカプセル内に重量比3%だけ混在させて、上記のプルランからなるカスプ型微細針に混入させ、そのカスプ型微細針を皮膚内に挿入すると、アルブミンが、角質層内に留まっていることが確認できた。
【0036】
肌色基調の化粧材標準である酸化チタンと酸化的鉄の混合材(重量比30:70)を、上記のプルランからなるカスプ型微細針に重量比5%で混在して皮膚に挿入したところ、上記混合材を角質層に残すことができ、顔面の一部にできたしみを薄めて肌色に覆うことができた。
【0037】
赤色素を上記のプルランからなるカスプ型微細針に重量比5%で混在させて皮膚に挿入したところ、皮膚角質層にその色素を残すことができたので、簡易で安全な刺青が可能ないり、色素によって任意形状の皮膚内の表記が可能になった。
【0038】
浸透性の強いオレンジ色素、タータルジンを上記のプルランからなるカスプ型微細針に重量比1%で混在させてラット皮膚に挿入したところ、皮膚切り抜いて断面を観察した結果、タータルジン色が皮膚深く浸透していることが確認できた。
【0039】
蛋白質に付着性の強い青色素、クーマシーブリリアンブルー(CBB)を上記のプルランからなるカスプ型微細針に重量比で1%混在させてラット皮膚に挿入したところ、皮膚切り抜いて断面を観察したところ、CBB色がカスプ微細針の挿入部の断面形状を映し出すことができた。
【0040】
ビタミンAの一種カロテノイドをプルランと非結晶マルトースの混合材(重量比40:60)に重量比1%だけ混合してチップ状マイクロカプセルを製作し、そのチップを上記のプルランからなるカスプ型微細針に混入して皮膚表面に搭載した。これを皮膚表面内に挿入したところ、皮膚角質層にカロテノイドを残留させることができた。
【0041】
インスリンを上記のプルランからなるカスプ型微細針に重量比1%で混入させ、これを皮膚表面に挿入したところ、皮膚角質層にインスリンを分解することなく残留させることができた。
【0042】
上記のプルランからなるカスプ型微細針で、皮膚表面を数回当たることによって多数の穴を開け、比較的に不安定な化学物質であるハイドロキノン1重量%水溶液を肌に刷り込むことによって皮膚角質層にハイドロキノンを浸透させることができた。
【0043】
上記のプルランからなるカスプ型微細針で、皮膚表面を数回当たることによって多数の穴を開け、比較的に不安定な化学物質であるアスコルビン酸リン酸ナトリウム又はマグネシウムの1重量%水溶液を肌に刷り込むことによって、皮膚にアスコルビン酸リン酸ナトリウム又はマグシウムを皮膚角質層に浸透させることができた。
【0044】
上記のプルランからなるカスプ型微細針の上面に、リドカインを内包した直径50μmの半球状マイクロカプセルを搭載し、これを皮膚表面に挿入したところ、リドカインが体内に存在することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のカスプ型皮膚表面内挿入用微細針は、生体において安全な皮膚内可溶材からなり、かつカスプ型微細針の構造がシンプルなため工業的量産が可能であり、産業上の利用可能性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】 ヒアルロン酸基板側面に配置されたカスプ型微細針の概略立体図である。
【図2】 プルラン基板上面に配置された複数のカスプ型微細針の概略立体図である。
【図3】 微細針の上面が面取り加工されたカスプ型微細針の概略立体図である。
【図4】 微細針の両側面が面取り加工されたカスプ型微細針の概略立体図である。
【図5】 図4に示されたカスプ型微細針を裏返しにしたものの概略立体図である。
【図6】 くびれ形状部を有するカスプ型微細針の概略平面図である。
【図7】 カスプ型微細針を皮膚表面内に挿入した際の断面模式図である。
【図8】 マイクロカプセルを搭載したカスプ型微細針の概略立体図である。
【図9】 マイクロカプセル嵌入用穴を有したカスプ型微細針の概略平面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 基板
2 基板の上面
3 基板の側面
4 微細針
5 微細針の平面(上面)
6 微細針の側面
7 面取り加工を施された面
8 くびれ形状部
9 皮膚表面
10 皮膚表面内
11 半球状マイクロカプセル
12 マイクロカプセル嵌入用穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上面又は側面に配置され、1又は2以上の尖端部及び向い合う両平面部を有した構造である、皮膚内可溶材からなるカスプ型微細針において、微細尖端部の長幅が0.1μm〜100μm、前記基板の上面又は下面に沿う末端の幅が20μm〜2mm、先端から末端までの長さが50μm〜5mmであることを特徴とするカスプ型皮膚表面内挿入用微細針。
【請求項2】
前記カスプ型微細針において、前記両平面の片面上又は両面上にある、末端又は末端と先端の途中位置から、先端に向かって面取り加工することにより、鋭利な尖端部を有することを特徴とする請求項1記載のカスプ型皮膚表面内挿入用微細針。
【請求項3】
前記カスプ型微細針において、1又は2以上の両側面を面取り加工することにより、鋭利な尖端部を有することを特徴とする請求項1又は2記載のカスプ型皮膚表面内挿入用微細針。
【請求項4】
前記カスプ型微細針において、1又は2以上のくびれ形状部を有することを特徴とする請求項1から3いずれか一項記載のカスプ型皮膚表面内挿入用微細針。
【請求項5】
前記基板の基材が、皮膚内可溶材であることを特徴とする請求項1から4いずれか一項記載のカスプ型皮膚表面内挿入用微細針。
【請求項6】
前記基板の基材が、糖類、セルロース、固形でんぷん、紙、木、プラスチック、金属から選ばれる1又は2以上の混合物であることを特徴とする請求項1から4いずれか一項記載のカスプ型皮膚表面内挿入用微細針。
【請求項7】
前記基板の基材である糖類が、プルラン、又はプルラン及びマルトースの複合糖材であることを特徴とする請求項6記載のカスプ型皮膚表面内挿入用微細針。
【請求項8】
前記皮膚内可溶材が、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、セルロース、ケラチン、ゼラチン、コラーゲン、カゼインから選ばれる1又は2以上の混合物であることを特徴とする請求項1から7いずれか一項記載のカスプ型皮膚表面内挿入用微細針。
【請求項9】
前記カスプ型微細針が、蛋白質、DNA、医薬剤、栄養剤、栄養補助剤、化粧材、色素材、金属、金属酸化物、マイクロカプセルから選ばれる1又は2以上を含有することを特徴とする請求項1から8いずれか一項記載のカスプ型皮膚表面内挿入用微細針。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−279237(P2008−279237A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154514(P2007−154514)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(507192769)
【Fターム(参考)】