説明

カチオン重合性樹脂組成物

潜在的もしくは、直接カルボカチオンを生成する化合物をカチオン開環重合性化合物の重合系に添加することにより、効率よく、開始反応から生長反応へ移行し、重合活性化が付与される事を見出した。すなわち、(A)一分子鎖中に少なくとも1個のカチオン開環重合性官能基を有する化合物と、(B)カチオン重合開始剤と、(C)(B)カチオン重合開始剤に電磁波又は粒子ビームから生成する活性種が作用してカルボカチオンを生成しうる化合物とを含有することを特徴とするカチオン重合性樹脂組成物である。 本発明により、カチオン開環重合性化合物の開始反応について、潜在的もしくは直接カルボカチオンを生成する化合物をカチオン開環重合性化合物の重合系に添加することにより、効率よく、開始反応から生長反応へ移行し、重合活性化が付与されることを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂、積層板用樹脂、コーティング材、接着剤、インキ、各種シーリング材等に有用な、重合時の反応性に優れたカチオン重合性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、耐熱性、接着性、耐水性、機械的強度及び電気特性等に優れており、封止用樹脂、積層板用樹脂、コーティング材、接着剤、インキ、各種シーリング材等に用いられている。そのエポキシ樹脂を硬化させる方法としては、カチオン重合による光・熱硬化システムが知られている。昨今、エポキシ樹脂の他に分子鎖中にオキセタニル基を有するオキセタン樹脂を用いたカチオン重合について、広く検討がなされている。
オキセタン樹脂には、エポキシ樹脂と比較して以下の特徴を有している。1)重合の成長反応が速い為、高分子量化・物性に優れている。2)オキセタニル基には変異原性がない為、作業性・安全性に優れている。3)重合による水酸基の発生が少ない為、電気特性・耐湿性に優れている。以上の特徴のほか、ラジカル重合系と比較して、硬化収縮が低い、皮膚刺激性が低い、酸素阻害を受けない特徴を有する。
【0003】
しかしながら、オキセタン樹脂は、開始反応が遅く、オキセタン樹脂を単独で用いる事は困難であった。三枝らは、工業化学雑誌,66,474(1963)の中でエポキシ樹脂をオキセタン樹脂に添加することで、硬化速度が向上することを報告している。
また、佐々木は、Radtech2000,61(2000)で、エポキシ基で開始反応を起こし、ついで、オキセタニル基による生長反応を進め、結果として速硬化が実現させた報告をしている。
また,青島などは,Journal of Polymer Science Part A:Polymer Chemistry,1719−1728,Volume32,Issue9で、ビニルエーテルとルイス酸触媒であるハロゲン化アルキルアルミ化合物を用いたカチオン重合系に、環状エーテルとしてテトラヒドロフランを添加するとビニルエーテルがリビング的に重合が進行すると報告している。しかし、同じ環状エーテルでも、オキセタニル基やオキシラン環を有する化合物を添加した場合は、ビニルエーテルの重合が起こらず、ポリマーが得られなかったと報告している。
【特許文献1】特開平07−053711号公報
【特許文献2】特開平07−062082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなエポキシ基で開始反応を起こし、ついで、オキセタニル基による成長反応を進める系は、光ラジカル重合に比較して、まだ十分な硬化性は得られていない。また、皮膚刺激性を嫌う用途においては、エポキシ樹脂添加により皮膚刺激性が発現してしまう欠点を有している。
本発明の目的は、前記問題点、すなわち、光ラジカル重合系と同等な十分な硬化性を発現し、尚且つ、皮膚刺激性を有するエポキシ樹脂を使用しない、硬化性に優れたカチオン重合性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、カチオン開環重合性化合物の開始反応について鋭意検討した結果、潜在的もしくは、直接カルボカチオンを生成する化合物をカチオン開環重合性化合物の重合系に添加することにより、効率よく、開始反応から生長反応へ移行し、重合活性化が付与される事を見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、(A)カチオン開環重合性の官能基を少なくとも1つ有する化合物と(B)電磁波あるいは粒子ビームによって活性種を生成するカチオン重合開始剤を有する組成物において、さらに、(C)(B)カチオン重合開始剤に電磁波あるいは粒子ビームによって生成した活性種が作用してカルボカチオンを生成する化合物を、(A)と(C)との合計100重量%中、0.01〜50.0重量%含有してなるカチオン重合性樹脂組成物である。また、前記(C)がビニルエーテルおよび/またはビニルエーテルと有機カルボン酸の反応物であるカチオン重合性樹脂組成物であることが好ましい。
さらに、前記(A)のカチオン開環重合性の官能基がオキセタニル基であることが好ましい。また、本発明の組成物からなる封止剤、接着剤、塗料、コーティング材、インキ、シーリング材である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、カチオン開環重合性化合物の開始反応について、潜在的もしくは直接カルボカチオンを生成する化合物をカチオン開環重合性化合物の重合系に添加することにより、効率よく、開始反応から生長反応へ移行し、重合活性化が付与されることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0008】
[図1]図1は、実施例1,2及び比較例1
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を、以下に詳しく説明する。
(A)カチオン開環重合性の官能基を少なくとも1つ有する化合物
本発明で用いられる(A)成分とは、カチオン開環重合性の官能基を少なくとも1つ有する化合物ある。具体的にカチオン開環重合性を有する官能基は、環状エーテル、環状サルファイド、環状イミン、環状ジサルファイド、ラクトン、ラクタム、環状ホルーマル、環状シロキサン等が挙げられ、好ましくは、オキソニウムイオンが生長種であるオキシラン環及び/又はオキセタン環を有する化合物化合物が挙げられ、更に好ましくは、オキセタニル基を有する化合物である。
【0010】
以下に具体的にオキセタニル基を有する化合物を例示する。オキセタニル基を1個有する化合物の具体例としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、4−メトキシ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル〕フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0011】
オキセタニル基を2個有する化合物の具体例としては、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、ビス{〔(1−エチル)3−オキセタニル〕メチル}エーテル、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕ベンゼン、1,3−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕ベンゼン、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、1,2−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕エタン、1,2−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレンビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ブタン、1,6−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ヘキサン、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールFビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0012】
オキセタニル基を3以上有する化合物の具体例としては、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0013】
これらのオキセタニル基を有するカチオン開環重合性化合物は、単独で使用しても2種類以上組み合わせて使用しても構わない。
【0014】
(B)電磁波あるいは粒子ビームによって活性種を生成するカチオン重合開始剤
本発明で用いられる(B)成分とは、電磁波あるいは粒子ビームによって活性種を生成するカチオン重合開始剤である。(B)成分のカチオン重合開始剤は、電磁波又は粒子ビームにより、カチオン重合を開始する化合物であれば特に限定はなく、いずれでも使用することができる。ここで、この電磁波又は粒子ビームとは特に限定されるものではないが、例えばマイクロ波、赤外線、可視光、紫外線、X線、γ線、電子線等が挙げられ、好ましくはその中でも簡便に使用できる紫外線が使用される。また、上記の紫外線の光源は、特に限定されるものではないが、好ましくは水銀灯、メタルハライドランプが使用される
(B)成分のカチオン重合開始剤の好ましい例としてオニウム塩を挙げることができる。このオニウム塩は、光反応し、ルイス酸を放出する化合物である。具体的には下記一般式(1)で表わされるものである。
【0015】
[R1aR2bR3cR4dW]m+[MXn+m]m− (1)
(式中、カチオンはオニウムイオンであり、Wは、S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、Cl、または、N≡Nである。R1、R2、R3、およびR4は同一または異なる有機基であり、a、b、cおよびdはそれぞれ0〜3の整数であって、(a+b+c+d)はWの価数に等しい。Mは、ハロゲン化錯体[MXn+m]の中心原子を構成する金属またはメタロイドであり、例えば、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Co等である。Xは例えば、F、Cl、Br等のハロゲン原子であり、mはハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷であり、nはMの原子価である。)、更に好ましくは、ヨードニウム塩である。
【0016】
具体的に例示すると、ジフェニルヨードニウム、4−メトキシジフェニルヨードニウム、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム等のオニウムイオンと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサクロロアンチモネート等の陰イオンとの組み合わせからなる化合物が挙げられる。また、市販のヨードニウム塩としては、CGI552(ユニオンカーバイド社製、商品名)、WPI−113(和光純薬社製、商品名)、2074(ローディア社製、商品名)等が挙げられる。
【0017】
以上のカチオン重合開始剤は、単独で使用しても2種類以上組み合わせて使用しても構わない。また、本発明カチオン重合性樹脂組成物を電磁波又は粒子ビームで重合させる場合は、増感剤、光ラジカル開始剤等を添加して用いる事もできる。更に、電磁波又は粒子ビームと熱を併用して重合する事も可能で有る。
【0018】
(C)(B)カチオン重合開始剤に電磁波あるいは粒子ビームによって生成した活性種が作用してカルボカチオンを生成する化合物
本発明で用いられる(C)成分とは、カチオン重合開始剤に電磁波あるいは粒子ビームによって生成した活性種が作用してカルボカチオンを生成する化合物である。(C)成分は、カルボカチオンを生成する化合物であれば何でも良い。カルボカチオンの生成方法としては、カチオン重合に用いられる酸発生剤、ルイス酸等によりカルボカチオンを生成する化合物や、自らカルボカチオンを生成する化合物であればよいが、好ましくは、ビニル化合物、及び/又は、ビニル化合物にプロトン酸が付加して生成するカルボカチオンを生成しうる構造が挙げられる。例えばスチレン類、ビニルエーテル類、ジエン類が挙げられる。更に好ましくは、ビニルエーテルおよび/またはビニルエーテルと有機カルボン酸の反応物が本発明に供する。
【0019】
ビニルエーテルとして具体的には、単官能のビニルエーテル基を有する化合物として、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ターシャリブチルビニルエーテル、ノルマルオクタデシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等のアルキル置換ビニルエーテルが挙げられる。
【0020】
また、2−クロロエチルビニルエーテルと、アルコールと金属ナトリウム等が反応して得られるアルコラートを4級ブチルアンモニウムアイオダイド等の相間移動触媒を用いて脱塩反応して得られるビニルエーテルが挙げられる。水酸基を有するビニルエーテルとしては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルが挙げられる。
【0021】
特殊な構造を有するビニルエーテルとしては、2,3−ジヒドロフランの様に分子鎖中に重合性のビニルエーテル基と環状エーテル基を含む化合物も、本発明に供する。また、多官能のビニルエーテル基を有する化合物としては、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0022】
本発明の(C)成分としては、これらのビニルエーテルをそのまま単独、もしくは、混合して用いる事ができる。この場合、カチオン重合開始剤が電磁波又は粒子ビームによって活性化することにより、ビニルエーテルは、共触媒になる樹脂組成物中の水分と反応し、速やかにカルボカチオンを生成し、開始反応が起こり、カチオン開環重合性官能基を有する化合物の生長反応に移行し、重合が進行する。
【0023】
また、本発明では(C)成分として、ルイス酸等の救電子試薬によりカルボカチオンを生成する化合物も、本発明に供する。すなわち、予め、ビニルエーテルと有機カルボン酸の反応物具体的には、有機カルボン酸の1−アルコキシエチルエステルの構造を有する化合物も本発明の(C)成分に供する。このビニルエーテルと有機カルボン酸の反応物を得る方法としては、Sadahito Aoshima and Toshinobu Higashimura,Macromolecules,1989,22,1009記載の方法や、電子吸引性の置換基を有するトリフルオロ酢酸の様な有機カルボン酸の場合、室温でビニルエーテルと混合するだけで、ビニルエーテルと有機カルボン酸の反応物を得る事ができる。
【0024】
更にビニルエーテルと付加反応する有機カルボン酸を例示すると、単官能の有機カルボン酸としては、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、モノクロロ酢酸、安息香酸、サリチル酸、プロピオン酸、ピバリン酸、酪酸、脂肪酸、ケイヒ酸、ピルビン酸、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。また、2官能性の有機カルボン酸としては、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、マロン酸、フタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。更に、3官能性の有機カルボン酸としては、クエン酸、トリメリット酸等が挙げられる。4官能性の有機カルボン酸としては、ピロメリット酸が挙げられる。また、ポリマー中に有機カルボン酸を有する物も用いることが可能である。具体的には(メタ)アクリル酸を共重合成分に含む重合体や、無水マレイン酸をポリオレフィンにグラフトしたマレイン化ポリオレフィン等が挙げられる。
【0025】
これら有機カルボン酸類は、先に挙げたビニルエーテルに対して、当量比で、ビニルエーテル過剰で混合し、加熱混合する事により、ビニルエーテルに有機カルボン酸が付加し、更に、未反応のビニルエーテルを留去等により分離精製することにより本発明の(C)成分である化合物を得ることができる。
【0026】
本発明のカチオン重合性樹脂組成物は、電磁波又は粒子ビームにて(B)カチオン重合開始剤が活性化され、光カチオン重合開始物質を発生して、重合が開始する。
【0027】
本発明の組成比は、(A)カチオン開環重合性の官能基を少なくとも1つ有する化合物と(B)電磁波あるいは粒子ビームによって活性種を生成するカチオン重合開始剤を有する組成物、(C)(B)カチオン重合開始剤に電磁波あるいは粒子ビームによって生成した活性種が作用してカルボカチオンを生成する化合物において、(A)と(C)との合計100重量%中、(C)が0.01〜50.0重量%含有され、(B)が(A)と(C)との合計100重量部に対して0.5〜10.0重量部含有されているカチオン重合性樹脂組成物である。(A)(B)(C)の組成比がこの範囲であると十分な硬化性が発現し、実用的用途において耐水性の低下や樹脂の着色が起こらない。
【0028】
また好ましくは、(A)と(C)との合計100重量%に対して(C)が0.01〜10.0重量%含有され、(B)が(A)と(C)の合計100重量部に対して1.0〜5.0重量部である。
【0029】
本発明の組成物には、必要に応じてその他の樹脂を共重合成分及びブレンド成分として併用することができる。共重合可能な成分としては、他のカチオン開環重合性化合物との併用が可能である。他のカチオン開環重合性化合物としては、先に挙げた環状エーテル、環状サルファイド、環状イミン、環状ジサルファイド、ラクトン、ラクタム、環状ホルーマル、環状シロキサン等を有する化合物が挙げられる。
【0030】
皮膚刺激性を問わない用途においては、オキセタン環と同じ環状エーテルであるオキシラン環を有する化合物を用いることができる。オキシラン環を1個有する化合物の具体例としては、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル等があり、オキシラン環を2個以上有する化合物としては、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチルカルボキシレート、トリグリシジルイソシアヌレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、ポリプロピレンジグリシジルエーテル、ポリブタジエン又はポリスルフィドの両末端ジグリシジルエーテル修飾物等のグリシジルエーテル等が挙げられる。また、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等の脂環式エポキシも挙げられる。これらのカチオン開環重合性化合物は、単独で使用しても2種類以上組み合わせて使用しても構わない。
【0031】
他のブレンド成分用の樹脂成分としては、例えば、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリエーテル、ポリエステル、スチレン−ブタジェン−スチレンブロック共重合体、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、セルロース樹脂、フッ素系オリゴマー、シリコン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマー等が挙げられる。これらは、単独でも複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
改質剤としては、例えば、重合開始助剤(光増感剤)、老化防止剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、密着付与剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、光ラジカル開始剤等が挙げられる。これらは、1種単独でも複数種を組み合わせて使用してもよい。
希釈剤は、塗布性付与又はその向上のために用いることができる。希釈剤としては通常の有機溶剤が用いられる。
【0033】
また、本発明の組成物は液晶シール材、有機EL用シール材等の各種フラットパネルディスプレー用封止剤等の封止剤に有用である。更に、本発明の組成物は金属、ガラスやセラミックスをはじめとする無機物、プラスチック用の各種接着剤に有用である。同様に、用いる形態が異なる塗料、コーティング材、インキ、シーリング材としても有用である。
【実施例】
【0034】
以下、実施例と比較例により本発明を具体的に説明する。
(硬化性)100μmのフッソ性フィルムをスペーサーとして配したガラス板(4.5cm×2.0cm×0.1cm)上に実施例及び比較例で得られるカチオン重合性樹脂組成物を滴下し、更に、ガラス板(4.5cm×2.0cm×0.1cm)を乗せ、評価用サンプルを得た。この評価用サンプルを、メタルハライドランプにて、ガラス板透過光で1.0J/cm照射し、照射直後に一方のガラス板を剥離し、ガラス板表面硬化度合いを目視評価した。硬化度合いは、硬化しベトつき(タック)の無いものを○、表面のみ硬化したもの、又は表面にベトつき(タック)のあるものを△、全く硬化しなかったものを×とした。(イソブチルビニルエーテル酢酸付加体[イソブトキシエチルアセテート]の合成)
温度計、攪拌機、精留塔、冷却器、窒素ガス導入管、及び滴下ロートを備えた内容積2L(リットル)の四つ口フラスコに、イソブチルビニルエーテル500.0g(5.0モル)を入れ、窒素ガス雰囲気下で、室温で、酢酸199.7g(3.3モル)を滴下ロートから滴下した。その後、60℃に昇温し、3時間反応を続けて反応を終了させた。
【0035】
次に、生成物をカルシウムハイドライド上で蒸留精製(61℃/20mmHg)して、この物のガスクロマトグラフィー分析よる純度(面積百分率)は99.9%で、1H−NMRで構造を確認し、生成物を得、本発明の(C)成分として用いた。
【0036】
[実施例1]
遮光性の褐色ビンに(A)一分子鎖中に少なくとも1個の力チオン開環重合性官能基を有する化合物として、3−エチル−3フェノキシメチルオキセタン(東亞合成社製、アロンオキセタンOXT−211)94.0重量部と(B)カチオン重合開始剤として(tolylcumyl)iodonium tetrakis(pentafluorophenyl)borate(Rhodia社製、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074)1.6重量部混合溶解した。この溶解液に(C)ビニルエーテル基を有する化合物として、イソブチルビニルエーテル6.0重量部を添加し、更に混合溶解し、本発明、カチオン重合性樹脂組成物を得た。
このカチオン重合性樹脂組成物を前記評価方法に従い評価し、その結果を表3に示す。
【0037】
[実施例2]
遮光性の褐色ビンに(A)一分子鎖中に少なくとも1個のカチオン開環重合性官能基を有する化合物として、3−エチル−3フェノキシメチルオキセタン(東亞合成社製、OXT−211)94.0重量部と(B)カチオン重合開始剤として(tolylcumyl)iodonium tetrakis(pentafluorophenyl)borate(Rhodia社製、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074)1.6重量部混合溶解した。この溶解液に(C)ビニルエーテルと有機カルボン酸の反応物として、前記方法で合成したイソブトキシエチルアセテート6.0重量部を添加し、更に混合溶解し、本発明、カチオン重合性樹脂組成物を得た。
このカチオン重合性樹脂組成物を前記評価方法に従い評価し、その結果を表3に示す。
【0038】
[実施例3〜10]
表1に示す(A)一分子鎖中に少なくとも1個のカチオン開環重合性官能基を有する化合物、(C)ビニルエーテルおよび/またはビニルエーテルと有機カルボン酸の反応物、(B)カチオン重合開始剤の種類及び量を変化させた以外は、実施例1又は2と同様に配合し、評価を行い、結果を表3に示す。
【0039】
[比較例1]
前記実施例1において(C)ビニルエーテルおよび/またはビニルエーテルと有機カルボン酸の反応物を含まないカチオン重合性樹脂組成物を得たあと、このカチオン重合性樹脂組成物を実施例1と同様な評価方法に従い評価し、その結果を表3に示す。
【0040】
[比較例2]
前記実施例3において(C)ビニルエーテルおよび/またはビニルエーテルと有機カルボン酸の反応物を含まないカチオン重合性樹脂組成物を得たあと、このカチオン重合性樹脂組成物を実施例3と同様な評価方法に従い評価し、その結果を表3に示す。
【0041】
[比較例3]
遮光性の褐色ビンに(A)一分子鎖中に少なくとも1個のカチオン開環重合性官能基を有する化合物として、3−エチル−3フェノキシメチルオキセタン(東亞合成社製、アロンオキセタンOXT−211)94.0重量部とフェニルグリシジルエーテル6.0部と(B)カチオン重合開始剤として(tolylcumyl)iodonium tetrakis(pentafluorophenyl)borate(Rhodia社製、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074)1.6重量部混合溶解し、カチオン重合性樹脂組成物を得た。
【0042】
このカチオン重合性樹脂組成物を前記評価方法に従い評価し、その結果を表3に示す。
【0043】
[表1]
【表1】

【0044】
[表2]
【表2】

【0045】
[表3]
【表3】

【0046】
硬化性の差異を明確化するために、実施例1、実施例2、比較例1に関して、紫外線照射1時間後のガラス板をテトラヒドロフラン(THF)に浸漬し、可溶分の分子量を測定した。なお、実施例2に関してはTHF不溶分も存在した。測定方法は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた。GPCは、高速液体クロマトグラフ(昭和電工社製のSYSTEM11、GPC KF806L×3、溶離液はテトラヒドロフラン)を用いて行い、示唆屈折率計のクロマトグラムを図1に示す。
実施例1及び実施例2は、高分子化が明らかに確認され一方、比較例1においては高分子体の生成は、僅かであり、単量体である3−エチル−3フェノキシメチルオキセタンが多量に残っている事が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、硬化性が良好なカチオン開環重合性組成物を提供し、本発明のカチオン重合性樹脂組成物を用いて、封止用樹脂、積層板用樹脂、コーティング材、接着剤、インキ、各種シーリング材等に利用できる。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カチオン開環重合性の官能基を少なくとも1つ有する化合物と(B)電磁波あるいは粒子ビームによって活性種を生成するカチオン重合開始剤を有する組成物において、さらに、(C)(B)カチオン重合開始剤に電磁波あるいは粒子ビームによって生成した活性種が作用してカルボカチオンを生成する化合物を、(A)と(C)との合計100重量%中、0.01〜50.0重量%含有してなるカチオン重合性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)と前記(C)との合計100重量部に対して、前記(B)を0.5〜10.0重量部含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(C)がビニルエーテルおよび/またはビニルエーテルと有機カルボン酸の反応物である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
(A)のカチオン開環重合性の官能基がオキセタニル基である請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1の組成物からなる封止剤。
【請求項6】
請求項1の組成物からなる接着剤。
【請求項7】
請求項1の組成物からなる塗料。
【請求項8】
請求項1の組成物からなるコーティング材。
【請求項9】
請求項1の組成物からなるインキ。
【請求項10】
請求項1の組成物からなるシーリング材。

【国際公開番号】WO2005/061583
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【発行日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516434(P2005−516434)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017508
【国際出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】