説明

カルボキシルエステラーゼにより加水分解可能なアルファアミノ酸エステル−薬剤複合体

複合体のエステル基が1つ又は複数の細胞内カルボキシルエステラーゼ酵素により対応する酸に加水分解可能である、標的細胞内酵素又は受容体の活性のモジュレーターへのアルファアミノ酸エステルの共有結合による複合は、細胞内にカルボン酸加水分解産物の蓄積を導き、複合していないモジュレーターに比べて改善されたか又はより延長された酵素又は受容体の修飾を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞内酵素又は受容体の活性を修飾する化合物の活性を、該モジュレーターへのアルファアミノ酸エステルモチーフの共有結合型複合(covalent conjugation)により増加又は延長する全般的な方法に関する。本発明は、アルファアミノ酸エステルモチーフが共有結合型で複合したモジュレーター、及び親の複合していないモジュレーターに比べてより優れた特性を有するこのような複合体の同定方法に関する。本発明は、さらに、アミノ酸複合体が単球-マクロファージ系列の細胞内部で選択的に蓄積することを可能にする、アミノ酸エステルモチーフを含有するモジュレーターの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多くの細胞内酵素及び受容体は、それらの活性部位に結合することによりそれらの活性を修飾する医薬的に有用な薬剤の標的である。その例を、以下の表1に示す。標的酵素及び受容体に到達するために、モジュレーター化合物は、もちろん、血漿/細胞外流体から細胞膜を横切らなければならない。一般的に、電荷が中性のモジュレーターは、荷電されたものよりも容易に細胞膜を横切る。そして、動的平衡が設定され、それによりモジュレーターは血漿と細胞内部との間で平衡になる。平衡の結果として、細胞内酵素及び受容体の多くのモジュレーターの細胞内の滞留時間及び濃度は、特にモジュレーターが血漿から迅速に一掃される場合に、しばしば非常に低い。よって、モジュレーターの効力は、標的酵素又は受容体に対するそれらの高い結合親和性にもかかわらず、乏しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
よって、細胞内酵素又は受容体の所定のモジュレーターの細胞内濃度を増加させるための利用可能な方法が所望されるであろう。このことは、効力の増加をもたらし、かつ細胞内部でのモジュレーターの滞在を延長することにより薬理動態学的及び薬力学的特性の改善をもたらすであろう。より安定した曝露及び投与頻度の減少が達成されるであろう。薬剤が、治療的作用を担う特定の標的細胞に標的され得るならば、全身曝露を低減し、よって副作用を低減して、さらなる利点を得ることができるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の簡単な説明
本発明は、そのような方法を提供し、該方法が基づく構造的本質を組み込んだ改良されたモジュレーターについて記載する。これは、脂肪親和性(低極性又は電荷が中性)の分子は、比較的容易に細胞膜を通過して細胞に侵入し、親水性(より高い極性、荷電されている)の分子はそうではないという事実を利用する。つまり、脂肪親和性のモチーフが所定のモジュレーターに連結されているならば、モジュレーターが細胞に侵入することを可能にし、該モチーフが細胞内でより高い極性に変換されるならば、より高い極性のモチーフが連結しているモジュレーターが細胞内部に蓄積することが予測される。このようなモチーフが、モジュレーターに、標的酵素又は受容体とのモジュレーターの結合形式を変更しない様式で連結している場合、より高い極性のモチーフが連結したモジュレーターの蓄積は、活性の延長及び/又は増加をもたらすと予測される。
【0005】
本発明は、細胞内にはカルボキシルエステラーゼ酵素があり、これは所定のモジュレーターに結合したアルファアミノ酸エステルモチーフを親の酸に加水分解するのに用いることができるという事実を利用する。よって、モジュレーターは、アルファアミノ酸エステルとの共有結合型複合体(covalent conjugate)として投与でき、これはこの形で細胞に容易に侵入し、そこで1つ又は複数の細胞内カルボキシルエステラーゼにより効率的に加水分解され、得られるアルファアミノ酸-モジュレーター複合体は細胞内に蓄積し、全体的な効力及び/又は活性滞留時間を増加させる。アルファアミノ酸モチーフの修飾、又はそれが複合される様式により、モジュレーターを単球及びマクロファージに標的させ得ることも見出している。本明細書において、「単球」と明記しない限りは、マクロファージの用語は、マクロファージ(腫瘍関連マクロファージを含む)及び/又は単球を意味するために用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
発明の詳細な説明
よって、ある広い態様において、本発明は、アルファアミノ酸エステルと標的細胞内酵素又は受容体の活性のモジュレーターとの共有結合型複合体を提供し、ここで:該複合体のエステル基は、1つ又は複数の細胞内カルボキシルエステラーゼ酵素により対応する酸に加水分解可能であり;アルファアミノ酸エステルは、モジュレーターと標的酵素又は受容体との間の結合界面から離れた位置でモジュレーターに共有結合型で連結するか、及び/又は複合しているモジュレーターと対応する酸との標的酵素又は受容体への結合形式が、複合していないモジュレーターのものと同じであるようにモジュレーターに複合する。
【0007】
別の観点では、本発明は、モジュレーターと標的酵素又は受容体との結合界面から離れた位置での、及び/又は複合しているモジュレーター及び対応する酸の標的酵素又は受容体への結合形式が複合していないモジュレーターのものと同じであるような、アルファアミノ酸エステルのモジュレーターへの共有結合型連結による構造的修飾を含む、標的細胞内酵素又は受容体の活性のモジュレーターの細胞内の効力及び/又は滞留時間を増加又は延長させる方法を提供し、該複合体のエステル基は、1つ又は複数の細胞内カルボキシルエステラーゼ酵素により対応する酸に加水分解可能である。
【0008】
上記のように、本発明は、細胞内酵素又は受容体のモジュレーターの修飾に関する。本発明の原理は一般的に適用されるものであるが、モジュレーターの化学的個性又は標的酵素若しくは受容体の個性により限定されず、モジュレーターが、その効果が標的酵素又は受容体への共有結合によるものとは対照的に、標的酵素又は受容体への可逆的結合によりその効果を奏するものであることが非常に好ましい。
【0009】
実際の利用性のために、カルボキシルエステラーゼにより加水分解された複合体は、親のモジュレーターのその標的酵素又は受容体との細胞内結合活性を維持することが必要であるので、エステルモチーフの連結は、その要件を考慮しなければならず、対応するカルボキシルエステラーゼ加水分解産物(すなわち対応する酸)の標的への結合形式が複合していないモジュレーターと本質的に同じであるように、アルファアミノ酸カルボキシルエステラーゼエステルモチーフがモジュレーターに連結していれば、該要件は充足される。一般的に、このことは、カルボキシルエステラーゼエステルモチーフのモジュレーターへの、モジュレーターと標的酵素又は受容体との結合界面から離れた位置での共有結合型連結により達成される。このようにして、該モチーフは、潜在的に結合形式に干渉するよりもむしろ、溶媒中に伸びるように配置される。
【0010】
さらに、アミノ酸カルボキシルエステラーゼモチーフは、該モチーフがカルボキシルエステラーゼにより細胞内で加水分解されなければならないのであれば、明らかに、カルボキシルエステラーゼの基質でなければならない。細胞内カルボキシルエステラーゼは、一般的に、その加水分解能力がアミノ酸エステル基質の構造的要件に非常に厳格には依存しない、比較的無差別なものである。よって、アミノ酸カルボキシルエステラーゼモチーフのモジュレーターへの共有結合型複合のほとんどの形式は、加水分解を可能にする。フレキシブルリンカー鎖による連結は、通常、これがどのように達成されるかである。
【0011】
薬剤のいずれの化学的修飾は、その結合配置を微妙に変更することができ、かつカルボキシルエステラーゼエステルモチーフの結合のための化学的方策は、標的との付加的な結合相互作用を導入できるか又はそのような相互作用の1つ若しくは複数を置き換えることができることが認識されるであろう。よって、加水分解された複合体の標的への結合形式が複合していないモジュレーターと同じであるという要件は、結合形式の重大な乱れがなく、言い換えると、結合形式が複合していないモジュレーターのものと本質的に同じであることを要求していると解釈される。この要件が満たされる場合、親のモジュレーターの主要な結合特性が維持され、修飾された及び未修飾のモジュレーターが全体的に共通の一連の結合特性を有する。「同じ結合形式」及び「離れた連結」との観点は、類似している。なぜなら、上記のように、「同じ結合形式」の要件を達成する一般的な様式は、カルボキシルエステラーゼモチーフが、阻害剤と標的酵素又は受容体との間の結合界面から離れた、モジュレーター分子内の点で連結することであるからである。しかし、これらの要件は、複合体及び/又はその対応する酸が、親のモジュレーターと同じインビトロ又はインビボ修飾効力を有さなければならないことを意味しないことに注意すべきである。しかし、一般的に、エステラーゼにより加水分解されたカルボン酸は、インビトロの酵素結合アッセイ又は受容体結合アッセイにおいて、該アッセイにおける親のモジュレーターの効力の1/10以上の効力を有することが好ましく、エステルは、細胞での活性のアッセイにおいて、同じアッセイにおける親のモジュレーターのものと少なくとも同程度に高い効力を有することが好ましい。
【0012】
構造−活性の関係をマッピングする従来の薬品化学の方法は、上記の「同じ結合形式」及び「離れた連結」の要件を満たす連結の方策を完璧に同定することができるが、NMR及びX線結晶解析のような最新の技術は、酵素又は受容体の既知のモジュレーターの明らかにされるか又は決定される結合形式について非常に一般的な点まで進歩している。このような情報は、大多数の場合は権利不在状態であるか、或いは構造的に類似のモジュレーターの既知の結合形式又は標的酵素若しくは受容体の活性部位の既知の構造に基づいて、リガンドドッキング又はホモロジーモデリングのようなコンピュータに基づくモデリング法を用いて設計できる。これらの技術により得られたモジュレーターの結合形式についての知見を用いて、通常(上記のように)、阻害剤と標的酵素又は受容体との結合界面から離れたモジュレーター上の点で、カルボキシルエステラーゼエステルモチーフの連結に適する位置を同定できる。
【0013】
複合しているアルファアミノ酸のエステル基を対応する酸に加水分解できる細胞内カルボキシルエステラーゼ酵素は、3つの既知のヒトカルボキシルエステラーゼ(「hCE」)酵素アイソタイプhCE-1 (CES-1としても知られる)、hCE-2 (CES-2としても知られる)、及びhCE-3 を含む(Drug Disc. Today 2005, 10, 313〜325)。これらは主要な酵素であると考えられるが、他のカルボキシルエステル酵素、例えばビフェニルヒドロラーゼ(BPH)も、複合体を加水分解する役割を有し得る。
【0014】
以下に記載する破砕細胞アッセイは、モジュレーターとアルファアミノ酸エステルとの所定の複合体、又は可能性があるカルボキシルエステラーゼエステルモチーフとして評価される所定のアルファアミノ酸エステルが要求されるように加水分解されるかを確認する単純な方法である。これらの酵素は、組換え技術を用いて容易に発現でき、組換え酵素を用いて、加水分解が起こるかを決定又は確認することができる。
【0015】
所望の複合体が、細胞内でカルボキシルエステラーゼにより加水分解されたときに、共有結合型で結合したアルファアミノ酸モチーフを維持していることが、本発明の特徴である。なぜなら、加水分解された複合体の細胞からの除去を防ぐか又は低減させ、それにより細胞内でのその蓄積に寄与するのは、このモチーフの極性カルボキシ基であるからである。実際に、修飾されたモジュレーターの細胞での効力は、主に、酸の蓄積及びそれによる標的活性の修飾による(加水分解されてないエステルも、それが加水分解されないままである限りは、標的へのその活性を発揮するが)。一般的に、細胞は、いくつかの種類のペプチダーゼ酵素を含有するので、複合体、より具体的には加水分解された複合体(対応する酸)は、このようなペプチダーゼの基質でないことが好ましい。特に、アルファアミノ酸エステル基は、複合体中のジペプチドモチーフのC-末端要素でないことが非常に好ましい。しかし、共有結合型連結の形式についてのこの制限とは別に、アルファアミノ酸エステル基は、そのアミノ基又はそのアルファ炭素を介してモジュレーターに共有結合型で連結できる。モジュレーターがカルボキシルエステラーゼエステルモチーフについての連結に簡便な点を有する場合があり、合成方策をその連結のために工夫しなければならない場合もある。
【0016】
カルボキシルエステラーゼhCE-2及び/又はhCE-3並びにこれらの酵素の組換え形のみを発現する細胞は、アルファアミノ酸基の窒素が非置換であるか又はカルボニル基に直接結合しているかのいずれかである場合のみ、アミノ酸エステル複合体をその結果として生じる酸に加水分解するが、hCE-1又は組換えhCE-1を含有する細胞は、窒素上に広い範囲の基を有するアミノ酸複合体を加水分解できる。hCE-2及びhCE-3のこの選択性要件は、モジュレーターがある細胞種のみにおける酵素又は受容体を標的すべきことが要求される場合に、利点となり得る。これらの3種のカルボキシルエステラーゼ酵素の相対量は、細胞種間で変動することが見出されている(図1及びhttp:/symatlas.gnf.org/SymAtlas (このデータベースにおいては、hCE3/CES3が記号FLJ21736で表されている)のデータベースを参照))。モジュレーターが、hCE-1が見出される細胞種でのみ作用することを意図するのであれば、アミノ基がカルボニル基以外の基に直接結合しているカルボキシルエステラーゼエステルモチーフの連結は、加水分解されたモジュレーター複合体がhCE-1の有効量を有する細胞において優先的に蓄積する結果をもたらす。言い換えると、hCE-1発現細胞におけるモジュレーター複合体に由来する酸の特異的蓄積は、アミノ酸エステルの窒素原子がカルボニルに直接結合しない様式で、又は非置換のままである様式で、アミノ酸エステルモチーフをモジュレーターに結合させることにより達成できる。
【0017】
マクロファージは、サイトカイン、特にTNFα及びIL-1の放出により炎症性障害において鍵となる役割を演じることが知られている(van Roonら Arthritis and Rheumatism, 2003, 1229〜1238)。リウマチ性関節炎においては、これらは、関節の炎症及び関節の破壊に主に貢献する(Conell, N.Eng J. Med. 2004, 350, 2591〜2602)。マクロファージは、腫瘍成長及び発生にも参加する(Naldini及びCarraro Curr Drug Targets Inflamm Allergy, 2005, 3〜8)。よって、マクロファージ細胞を選択的に標的する剤は、癌、炎症及び自己免疫疾患の治療において有用であり得る。特定の細胞種を標的することは、副作用の低減を導くことが期待される。本発明は、モジュレーターをマクロファージに標的させる方法を可能にし、これは、カルボキシルエステラーゼエステルモチーフがモジュレーターに結合する様式が、これが特定のカルボキシルエステラーゼにより加水分解されるかを決定し、それにより結果として得られる酸が異なる細胞種において蓄積するかを決定するという上記の知見に基づいている。特に、マクロファージはヒトカルボキシルエステラーゼhCE-1を含有するが、その他の細胞種は含有しないことが見出されている。本発明の複合体において、エステルモチーフの窒素が置換されているがカルボニル基部分には直接結合していない場合、エステルはhCE-1によってのみ加水分解され、そしてエステラーゼに加水分解されたモジュレーター複合体は、マクロファージ内にのみ蓄積する。
【0018】
もちろん、モジュレーターへの連結のためにカルボキシルエステラーゼエステルモチーフの中に原則として存在し得る多くの可能なエステル基が存在する。同様に、アルファ炭素上の側鎖が異なる天然又は非天然の多くのアルファアミノ酸が存在し、これらはカルボキシルエステラーゼエステルモチーフにおいてエステルとして用い得る。いくつかのアルファアミノ酸エステルは、1つ又は複数のhCE-1、-2及び-3アイソタイプ又はこれらの酵素を含有する細胞により迅速に加水分解されるが、よりゆっくりと加水分解されるか又はわずかな程度しか加水分解されないものもある。一般的に、カルボキシルエステラーゼが遊離のアミノ酸エステルを親の酸に加水分解するのであれば、これは、上記で議論したhCE-2及びhCE-3のN-カルボニル依存性に従って、モジュレーターに共有結合型で複合している場合にエステルモチーフを加水分解する。よって、本明細書に記載される破砕細胞アッセイ及び/又は単離カルボキシルエステラーゼアッセイは、所望の加水分解プロフィールを有するエステルについての直接的で迅速で単純な第一スクリーニングを提供する。このようにして選択されたエステルモチーフは、次いで、選択された複合化学を介してモジュレーターに複合されたときに同じカルボキシルエステラーゼにおいて再アッセイして、このバックグラウンドにおいてもまだカルボキシルエステラーゼ基質であることを確認できる。エステルの適切な種類は以下で述べるが、ここでは、アルファアミノ酸のt-ブチルエステルはhCE-1、-2及び-3の比較的乏しい基質であるが、シクロペンチルエステルは効率的に加水分解されることが見出されていることに言及できる。適切なアルファアミノ酸も以下でより詳細に述べるが、ここでは、フェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、フェニルグリシン及びロイシンが一般的に適切であり、第2級アルコールのエステルが好ましいことに言及できる。
【0019】
上記のように、アルファアミノ酸エステルは、アミノ酸エステルのアミノ基又はアミノ酸エステルのアルファ炭素(例えばその側鎖を介して)を介してモジュレーターに複合できる。リンカー基は、カルボキシルエステラーゼエステルモチーフとモジュレーターとの間に存在できる。例えば、アルファアミノ酸エステルは、以下の式(IA)、(IB)又は(IC)の基のようにモジュレーターに複合できる:
【0020】
【化1】

【0021】
式中、
R1は、1つ又は複数の細胞内カルボキシルエステラーゼ酵素によりカルボン酸基に加水分解可能なエステル基であり;
R2は、天然又は非天然のアルファアミノ酸の側鎖であり;
R4は、水素;又は任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキル、C3〜C7シクロアルキル、アリール若しくはヘテロアリール、又は-(C=O)R3、-(C=O)OR3若しくは-(C=O)NR3(ここで、R3は、水素又は任意に置換されていてもよい(C1〜C6)アルキルである)であり、
Bは、5又は6個の環原子の単環式で複素環式の環であり、ここでR1は、示される環窒素に隣接する環原子に結合し、環Bは、5又は6個の環原子の第二の炭素環式又は複素環式の環に任意に縮合していてもよく、この場合、Lへの結合は、該第二の環中の環原子からであり得る、
【0022】
Yは、結合手、-C(=O)-、-S(=O)2-、-C(=O)O-、-C(=O)NR3-、-C(=S)-NR3-、-C(=NH)NR3-又は-S(=O)2NR3-(ここで、R3は、水素又は任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキルである)であり、
Y1は、結合手、-(C=O)-、-S(O2)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-(C=O)NR3-、-NR3(C=O)-、-S(O2)NR3-、-NR3S(O2)-又は-NR3(C=O)NR5-(ここで、R3及びR5は独立して、水素又は任意に置換されていてもよい(C1〜C6)アルキルである)であり、
Lは、式-(Alk1)m(Q)n(Alk2)p-の二価の基であり、ここで、
m、n及びpは独立して0又は1であり、
Qは、(i) 任意に置換されていてもよい二価の単環式若しくは二環式の5〜13員環の炭素環式又は複素環式の基、或いは(ii) m及びpがともに0である場合、式-X2-Q1-、又は-Q1-X2-(ここで、X2は、-O-、-S-又はNRA-(ここで、RAは、水素又は任意に置換されていてもよいC1〜C3アルキルである)であり、Q1は、任意に置換されていてもよい二価の単環式若しくは二環式の5〜13員環の炭素環式又は複素環式の基である)の二価の基であり、
Alk1及びAlk2は独立して、任意に置換されていてもよい二価のC3〜C7シクロアルキル基、又は任意に置換されていてもよい直鎖若しくは分岐鎖のC1〜C6アルキレン、C2〜C6アルケニレン、若しくはC2〜C6アルキニレン基であって、エーテル(-O-)、チオエーテル(-S-)又はアミノ(-NRA-)結合(ここで、RAは、水素又は任意に置換されていてもよいC1〜C3アルキルである)を任意に含むか又はこれらの基が末端をなしていてもよい基を表し、
【0023】
Xは、結合手、-C(=O)-;-S(=O)2-;-NR3C(=O)-、-C(=O)NR3-、-NR3C(=O)NR5-、-NR3S(=O)2-、又は-S(=O)2NR3-(ここで、R3及びR5は独立して、水素又は任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキルである)を表し、
zは、0又は1であり、
sは、0又は1であり、
Alk3は、任意に置換されていてもよい二価のC3〜C7シクロアルキル基、或いは任意に置換されていてもよい直鎖若しくは分岐鎖のC1〜C6アルキレン、C2〜C6アルケニレン又はC2〜C6アルキニレン基であって、エーテル(-O-)、チオエーテル(-S-)又はアミノ(-NRA-)結合(ここで、RAは、水素又は任意に置換されていてもよいC1〜C3アルキルである)を任意に含むか又はこれらの基が末端をなしていてもよい基を表す。
【0024】
用語「エステル」又は「エステル化されたカルボキシ基」は、R9O(C=O)-基(ここで、R9は、概念的にはアルコールR9OHに由来するエステルを特徴付ける基である)を意味する。
本明細書において、用語「(Ca〜Cb)アルキル」(ここで、a及びbは整数である)は、a〜b個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基のことである。つまり、例えばaが1でbが6である場合、該用語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル及びn-ヘキシルを含む。
【0025】
本明細書において、用語「二価の(Ca〜Cb)アルキレン基」(ここで、a及びbは整数である)は、a〜b個の炭素原子と2つの不飽和原子価(unsatisfied valences)を有する飽和炭化水素鎖のことである。
【0026】
本明細書において、用語「(Ca〜Cb)アルケニル」(ここで、a及びbは整数である)は、a〜b個の炭素原子を有し、適用可能である場合にE又はZの立体化学の少なくとも1つの二重結合をする直鎖又は分岐鎖のアルケニル部分のことである。この用語は、例えばビニル、アリル、1-及び2-ブテニル及び2-メチル-2-プロペニルを含む。
本明細書において、用語「二価の(Ca〜Cb)アルケニレン基」は、a〜b個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合、及び2つの不飽和原子価を有する炭化水素鎖のことである。
【0027】
本明細書において、用語「Ca〜Cbアルキニル」(ここで、a及びbは整数である)は、2〜6個の炭素原子を有し、さらに1つの三重結合を有する直鎖又は分岐鎖の炭化水素基のことである。この用語は、例えばエチニル、1-プロピニル、1-及び2-ブチニル、2-メチル-2-プロピニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル及び5-ヘキシニルを含み得る。
本明細書において、用語「二価の(Ca〜Cb)アルキニレン基」(ここで、a及びbは整数である)は、2〜6個の炭素原子及び少なくとも1つの三重結合を有する二価の炭化水素鎖である。
【0028】
本明細書において、用語「炭素環式」は、全て炭素の16個までの環原子を有する単環式、二環式又は三環式の基のことであり、アリール及びシクロアルキルを含む。
本明細書において、用語「シクロアルキル」は、3〜8個の炭素原子を有する単環式の飽和炭素環式基のことであり、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルを含む。
【0029】
本明細書において、限定されていない用語「アリール」は、単環式、二環式又は三環式の炭素環式芳香族基のことであり、共有結合により直接結合された2つの単環式の炭素環式芳香族環を有する基を含む。このような基の例は、フェニル、ビフェニル及びナフチルである。
【0030】
本明細書において、限定されていない用語「ヘテロアリール」は、S、N及びOから選択される1又は複数のヘテロ原子を含む単環式、二環式又は三環式の芳香族基のことであり、そのような単環式環を2つ有する基、又はそのような単環式環1つと1つの単環式アリール環とが共有結合により直接結合された基を含む。そのような基の例は、チエニル、ベンズチエニル、フリル、ベンズフリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、チアゾリル、ベンズチアゾリル、イソチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、ベンズオキサゾリル、イソキサゾリル、ベンズイソキサゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、ベンズトリアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリル及びインダゾリルである。
【0031】
本明細書において、限定されていない用語「ヘテロシクリル」又は「複素環式」は、上記で定義される「ヘテロアリール」を含み、その非芳香族の意味は、S、N及びOから選択される1又は複数のヘテロ原子を含む単環式、二環式又は三環式の非芳香族基、及びこのような1又は複数のへテロ原子を含む単環式の非芳香族基からなり、該非芳香族基が別のそのような基又は単環式の炭素環式基に共有結合した基に関する。そのような基の例は、ピロリル、フラニル、チエニル、ピペリジニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピロリジニル、ピリミジニル、モルホリニル、ピペラジニル、インドリル、モルホリニル、ベンズフラニル、ピラニル、イソキサゾリル、ベンズイミダゾリル、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシフェニル、マレイミド及びスクシンイミド基である。
【0032】
その用語を用いるときの関係において特に言及しない限りは、いずれの部分に適用される用語「置換」は、4つまでの適合性の置換基で置換されることを意味する。該置換基はそれぞれ独立して、例えば(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシ(C1〜C6)アルキル、メルカプト、メルカプト(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルキルチオ、フェニル、ハロ (フルオロ、ブロモ及びクロロを含む)、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ニトロ、ニトリル(-CN)、オキソ、-COOH、-COORA、-CORA、-SO2RA、-CONH2、-SO2NH2、-CONHRA、-SO2NHRA、-CONRARB、-SO2NRARB、-NH2、-NHRA、-NRARB、-OC
ONH2、-OCONHRA、-OCONRARB、-NHCORA、-NHCOORA、-NRBCOORA、-NHSO2ORA、-NRBSO2OH、-NRBSO2ORA、-NHCONH2、-NRACONH2、-NHCONHRB、-NRACONHRB、-NHCONRARB、又は-NRACONRARB (ここで、RA及びRBは独立して(C1〜C6)アルキル、(C3〜C6)シクロアルキル、フェニル又は5若しくは6個の環原子を有する単環式ヘテロアリールである)であり得る。「任意の置換基」は、上記の置換基の1つであり得る。
【0033】
用語「天然又は非天然のアルファ-アミノ酸の側鎖」は、式NH2-CH(R1)-COOHの天然又は非天然アミノ酸のR1基のことをいう。
天然のアルファアミノ酸の側鎖の例は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、グルタミン酸、ヒスチジン、5-ヒドロキシリジン、4-ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、α-アミノアジピン酸、α-アミノ-n-酪酸、3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン、ホモセリン、α-メチルセリン、オルニチン、ピペコリン酸、及びチロキシンのものを含む。
【0034】
それらの特徴的な側鎖中に機能的置換基、例えばアミノ、カルボキシ、ヒドロキシ、メルカプト、グアニジル、イミダゾリル、又はインドリル基を含む天然のアルファ-アミノ酸は、アルギニン、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、トリプトファン、ヒスチジン、セリン、スレオニン、チロシン及びシステインを含む。本発明の化合物のR2がこれらの側鎖の一つである場合に、機能的置換基は任意に保護されていてもよい。
【0035】
天然アルファ-アミノ酸の側鎖における機能的官能基の関係において用いる場合の用語「保護された」は、実質的に機能的でないこのような置換基の誘導体を意味する。例えば、カルボキシ基はエステル化されることができ(例えばC1〜C6アルキルエステルとして)、アミノ基はアミド(例えばNHCOC1〜C6アルキルアミドとして)、又はカルバメート(例えばNHC(=O)OC1〜C6アルキルカルバメート又はNHC(=O)OCH2Phカルバメートとして)に変換でき、ヒドロキシ基は、エーテル(例えばOC1〜C6アルキルエーテル又はO(C1〜C6アルキル)フェニルエーテル)又はエステル(例えばOC(=O)C1〜C6アルキルエステル)に変換でき、チオール基は、チオエーテル(例えばtert-ブチルチオエーテル又はベンジル チオエーテル)又はチオエステル(例えばSC(=O)C1〜C6アルキルチオエステル)に変換できる。
【0036】
非天然アルファアミノ酸の側鎖の例は、本発明の化合物に用いるための適切なR2基の説明において以下で述べるものを含む。
【0037】
エステル基R1
エステル基が1つ又は複数の細胞内酵素により加水分解可能でなければならないという要件に加えて、いくつかの用途について(例えば複合体の全身投与用)、血漿中のカルボキシルエステル-加水分解酵素による加水分解に安定であることが好ましいだろう。なぜなら、このことが、複合されたモジュレーターが全身投与後も細胞にエステルとして浸透するのに充分長く生き延びることを確実にするからである。いずれの所定の複合体を試験して、エステルとしてのその血漿中の半減期を、血漿中のインキュベーションにより測定することは、単純なことである。しかし、第2級アルコールに概念的に由来するエステルは、第1級アルコールに由来するものよりも、血漿カルボキシルエステル加水分解酵素に対してより安定であることが見出されている。さらに、第3級アルコールに概念的に由来するエステルは、血漿カルボキシルエステル加水分解酵素に対して一般的に安定であるが、これらは、しばしば、細胞内カルボキシルエステラーゼに対しても比較的安定であることも見出されている。これらの知見を考慮に入れて、現在のところ、上記の式(IA)、(IB)及び(IC)中のR1は、式-(C=O)OR9(ここで、R9は、(i) R7R8CH-(ここで、R7は、任意に置換されていてもよい(C1〜C3)アルキル-(Z1)a-(C1〜C3)アルキル-又は(C2〜C3)アルケニル-(Z1)a-(C1〜C3)アルキル-(ここで、aは0又は1であり、Z1は、-O-、-S-又は-NH-である)
であり、R8は、水素又は(C1〜C3)アルキル-であるか、或いはR7及びR8は、それらが連結している炭素と一緒に、任意に置換されていてもよいC3〜C7シクロアルキル環又は任意に置換されていてもよい5-若しくは6-環原子の複素環式環を形成する);(ii) 任意に置換されていてもよいフェニル、又は5若しくは6個の環原子を有する単環式の複素環式環である)のエステル基であることが好ましい。これらのクラスのうち、R9は、例えば、メチル、エチル、n-若しくはイソ-プロピル、n-若しくはsec-ブチル、シクロヘキシル、アリル、フェニル、ベンジル、2-、3-若しくは4-ピリジルメチル、N-メチルピペリジン-4-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、又はメトキシエチルであり得る。現在のところ、R9はシクロペンチルであるものが好ましい。
【0038】
アミノ酸側鎖R2
エステル基R1が細胞内カルボキシルエステラーゼ酵素により加水分解可能であるという要件に従って、側鎖基R2の選択は、加水分解速度を決定できる。例えば、R2中のアルファアミノ酸炭素に隣接する炭素は、分岐を含まず、例えば、R2がエチル、イソブチル又はベンジルである場合、エステルは、R2が分岐、例えばイソプロピル又はt-ブチルである場合よりも、より容易に加水分解される。
【0039】
アミノ酸側鎖の例は、以下のものを含む。
C1〜C6アルキル、フェニル、2-、3-若しくは4-ヒドロキシフェニル、2-、3-若しくは4-メトキシフェニル、2-、3-若しくは4-ピリジルメチル、ベンジル、フェニルエチル、2-、3-若しくは4-ヒドロキシベンジル、2-、3-若しくは4-ベンジルオキシベンジル、2-、3-若しくは4- C1〜C6 アルコキシベンジル、及びベンジルオキシ(C1〜C6アルキル)-基;
いずれの官能基が保護されていてもよい天然αアミノ酸の特徴的な基;
-[Alk]nR6基(ここで、Alkは、1つ又は複数の-O-若しくは-S-原子で任意にさえぎられていてもよい(C1〜C6)アルキル又は(C2〜C6)アルケニル基、或いは-N(R7)-基[ここで、R7は、水素原子又は(C1〜C6)アルキル基である]であり、nは0又は1であり、R6は、任意に置換されていてもよいシクロアルキル又はシクロアルケニル基である);
【0040】
フェニル環において、式-OCH2COR8(ここで、R8は、ヒドロキシ、アミノ、(C1〜C6)アルコキシ、フェニル(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルキルアミノ、ジ((C1〜C6)アルキル)アミノ、フェニル(C1〜C6)アルキルアミノ、アミノ酸又は酸ハロゲン化物、それらのエステル若しくはアミド誘導体の残基であり、該残基はアミド結合を介して結合され、該アミノ酸はグリシン、α若しくはβアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン,、チロシン、トリプトファン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、リジン、ヒスチジン、アルギニン、グルタミン酸及びアスパラギン酸から選択される)の基で置換されているベンジル基;
【0041】
非置換であるか、又は複素環式環においてハロ、ニトロ、カルボキシ、(C1〜C6)アルコキシ、シアノ、(C1〜C6)アルカノイル、トリフルオロメチル (C1〜C6)アルキル、ヒドロキシ、ホルミル、アミノ、(C1〜C6)アルキルアミノ、ジ-(C1〜C6)アルキルアミノ、メルカプト、(C1〜C6)アルキルチオ、ヒドロキシ(C1〜C6)アルキル、メルカプト(C1〜C6)アルキル、又は(C1〜C6)アルキルフェニルメチルで一置換若しくは二置換された複素環式(C1〜C6)アルキル基;
-CRaRbRc基、ここで:
Ra、Rb及びRcはそれぞれ独立して、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、フェニル(C1〜C6)アルキル、(C3〜C8)シクロアルキルであるか、又は
Rcは、水素であり、Ra及びRbは独立して、フェニル又はヘテロアリール、例えばピリジルであるか、又は
Rcは、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、フェ
ニル(C1〜C6)アルキル又は(C3〜C8)シクロアルキルであり、Ra及びRbは、それらが連結している炭素と一緒に、3〜8員のシクロアルキル又は5-若しくは6-員の複素環式環を形成するか、又は
Ra、Rb及びRcは、それらが連結している炭素原子と一緒に、三環式環(例えばアダマンチル)を形成するか、又は
【0042】
Ra及びRbはそれぞれ独立して、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、フェニル(C1〜C6)アルキル、又は以下のRcについて定義される基の水素以外の基であるか、又はRa及びRbは、それらが連結している炭素原子と一緒に、シクロアルキル又は複素環式環を形成し、Rcは、水素、-OH、-SH、ハロゲン、-CN、-CO2H、(C1〜C4)ペルフルオロアルキル、-CH2OH、-CO2(C1〜C6)アルキル、-O(C1〜C6)アルキル、-O(C2〜C6)アルケニル、-S(C1〜C6)アルキル、-SO(C1〜C6)アルキル、-SO2(C1〜C6)アルキル、-S(C2〜C6)アルケニル、-SO(C2〜C6)アルケニル、-SO2(C2〜C6)アルケニル、又は-Q-W基(ここで、Qは、結合手、又は-O-、-S-、-SO-若しくは-SO2-を表し、Wは、フェニル、フェニルアルキル、(C3〜C8)シクロアルキル、(C3〜C8)シクロアルキルアルキル、(C4〜C8)シクロアルケニル、(C4〜C8)シクロアルケニルアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキル基を表し、W基は、ヒドロキシ、ハロゲン、-CN、-CO2H、-CO2(C1〜C6)アルキル、-CONH2、-CONH(C1〜C6)アルキル、-CONH(C1〜C6アルキル)2、-CHO、-CH2OH、(C1〜C4)ペルフルオロアルキル、-O(C1〜C6)アルキル、-S(C1〜C6)アルキル、-SO(C1〜C6)アルキル、-SO2(C1〜C6)アルキル、-NO2、-NH2、-NH(C1〜C6)アルキル、-N((C1〜C6)アルキル)2、-NHCO(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C3〜C8)シクロアルキル、(C4〜C8)シクロアルケニル、フェニル又はベンジルから独立して選択される1つ又は複数の置換基で任意に置換されていてもよい)である。
【0043】
具体的なR2基の例は、ベンジル、フェニル、シクロヘキシルメチル、ピリジン-3-イルメチル、tert-ブトキシメチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、1-ベンジルチオ-1-メチルエチル、1-メチルチオ-1-メチルエチル、及び1-メルカプト-1-メチルエチル、フェニルエチルを含む。現在好ましいR2基は、フェニル、ベンジル、tert-ブトキシメチル、フェニルエチル及びイソ-ブチルを含む。
【0044】
R4
上記のように、モジュレーターが、hCE-1が存在する細胞種、例えばマクロファージにおいてのみ作用することを意図するのであれば、カルボキシルエステラーゼエステルモチーフのアミノ基は、それがカルボニル以外の基に直接結合するように置換されるべきである。このような場合に、R4は、任意に置換されていてもよいC1〜C6アルキル、C3〜C7シクロアルキル、アリール又はヘテロアリール、例えばメチル、エチル、n-若しくはイソ-プロピル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、又はピリジルであり得る。マクロファージ特異性が要求されない場合、R4は、H、-(C=O)R3、-(C=O)OR3、又は-(C=O)NR3(ここで、R3は、水素又は任意に置換されていてもよい(C1〜C6)アルキル、例えばメチル、エチル、n-又はイソ-プロピルである)及びCH2CH2OHであり得る。
【0045】
環又は環系B
環又は環系Bは、例えば以下から選択される1つであり得る:
【化2】

【0046】
-Y-L-X-[CH2]z-基
アルファアミノ酸エステルが、式(IA)の基として阻害剤に複合する場合、この基(又は結合)は、アミノ酸エステルモチーフR1CH(R2)NH-をモジュレーターに結合するように選択される特定の化学的方策から明らかになる。明らかに、この結合についての化学的方策は広く変動でき、よって可変部Y、L、X及びzの多くの組み合わせが可能である。
【0047】
上記のアミノ酸エステルカルボキシルエステラーゼモチーフの利点(細胞内への容易な侵入、細胞内でのカルボキシルエステラーゼ加水分解、及び活性なカルボン酸加水分解産物の細胞内での蓄積)は、アミノ酸エステルモチーフとモジュレーターとの間の結合が、細胞内のペプチダーゼ活性の基質でない場合(これは分子からのアミノ酸の開裂をもたらすであろう)に最良に達成される。もちろん、細胞内ペプチダーゼに対する安定性は、化合物を破砕細胞内容物とインキュベートし、いずれのこのような開裂について分析することにより、簡単に試験できる。
【0048】
上記の一般的な知見を念頭において、-Y-L-X-[CH2]z-基をつくる可変部を順に決定する:
zは0又は1であり得るので、モジュレーターに結合するメチレン基は必須でない。
Yの特に好ましい例は、結合手、-(C=O)-、-(C=O)NH-、及び-(C=O)O-を含む。しかし、hCE-1特異性のために、アルファアミノ酸エステルが式(IA)の基として阻害剤に複合する場合は、Yは結合手であるべきである。
【0049】
L基において、存在する場合に、Alk1及びAlk2基の例は、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-、-CH=CH-、-CH=CHCH2-、-CH2CH=CH-、CH2CH=CHCH2-、-C≡C-、-C≡CCH2-、CH2C≡C-、及びCH2C≡CCH2を含む。Alk1及びAlk2の付加的な例は、-CH2W-、-CH2CH2W-、-CH2CH2WCH2-、-CH2CH2WCH(CH3)-、-CH2WCH2CH2-、-CH2WCH2CH2WCH2-、及び-WCH2CH2- (ここで、Wは、-O-、-S-、-NH-、-N(CH3)-、又は-CH2CH2N(CH2CH2OH)CH2-である)を含む。Alk1及びAlk2のさらなる例は、二価のシクロプロピル、シクロペンチル及びシクロヘキシル基を含む。
【0050】
Lにおいて、nが0である場合、該基は炭化水素鎖である(任意に置換されていてもよく、エーテル、チオエーテル又はアミノ結合を有するかもしれない)。現在のところ、Lには任意の置換基が存在しないことが好ましい。m及びpがともに0である場合、Lは、二価の単環式若しくは二環式の5〜13個の環原子の炭素環式又は複素環式基である(任意に置換されていてもよい)。nが1であり、m及びpの少なくとも一方が1である場合、Lは、炭化水素鎖、及び単環式若しくは二環式の5〜13個の環原子の炭素環式又は複素環式基(任意に置換されていてもよい)を含む二価の基である。存在する場合に、Qは、例えば二価のフェニル、ナフチル、シクロプロピル、シクロペンチル若しくはシクロヘキシル基、又は単環式若しくは二環式の5〜13員環の複素環式基、例えばピペリジニル、ピペラジニル、インドリル、ピリジル、チエニル若しくはピロリル基であり得るが、1,4-フェニレンが、現在のところ好ましい。
【0051】
特に、本発明のある実施形態においては、m及びpが0であり、nが1であり得る。別の実施形態においては、n及びpが0であり、mが1であり得る。さらに別の実施形態においては、m、n及びpは全て0であり得る。さらに別の実施形態においては、mが0であり、nが1であり、Qが単環式の複素環式基であり、pが0又は1であり得る。存在する場合に、Alk1及びAlk2は、-CH2-、-CH2CH2-、及び-CH2CH2CH2-から選択され、Qが1,4-フェニレンであり得る。
【0052】
-Y-L-X-[CH2]z-基の具体例は、-C(=O)-及び-C(=O)NH-、並びに-(CH2)v-、-(CH2)vO-、-C(=O)-(CH2)v-、-C(=O)-(CH2)vO-、-C(=O)-NH-(CH2)w-、-C(=O)-NH-(CH2)wO-
【化3】

(ここで、vは1、2、3又は4であり、wは1、2又は3である)、例えば-CH2-、-CH2O-、-C(=O)-CH2-、- C(=O)-CH2O-、-C(=O)-NH-CH2-及び-C(=O)-NH-CH2O-を含む。
【0053】
-L-Y1-基
アルファアミノ酸エステルが式(IB)の基として阻害剤に複合する場合に、この基(又は結合)は、式(IB)又は(IC)中のアミノ酸エステルモチーフのアルファ炭素がモジュレーターに結合するように選択される特定の化学的方策から明らかになる。(後者の場合、-L-Y1-基は、環系Bの介在環原子を介してアルファ炭素に間接的に結合する)。明らかに、この結合についての化学的方策は、広く変動でき、よって、可変部L及びY1の多くの組み合わせが可能である。
【0054】
例えば、Lは、-Y-L-X-[CH2]z-基に関して上記で述べたものであり得る。例えば、ある実施形態において、m及びnは1であり、pは0であり;Qは、-O-であり;Alk1は、任意に置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖のC1〜C6アルキレン、C2〜C6アルケニレン又はC2〜C6アルキニレン基であって、エーテル(-O-)、チオエーテル(-S-)又はアミノ(-NRA-)結合(ここで、RAは、水素又は任意に置換されていてもよいC1〜C4アルキルである)を任意に含むか又は該結合が末端をなしていてもよい基である。別の実施形態において、m、n及びpはそれぞれ1であり得、この場合、Qは、例えば1,4-フェニレン基、又はシクロペンチル、シクロヘキシル、ピペリジニル若しくはピペラジニル基であり得る。すべての実施形態において、Y1は、例えば結合手、又は-(C=O)-、-(C=O)NH-及び-(C=O)O-であり得る。
【0055】
全身的に投与される本発明の化合物について、カルボキシルエステラーゼ開裂の速度が遅いエステルが好ましい。なぜなら、これらは前全身性代謝(pre-systemic metabolism)に影響されにくいからである。それらの標的組織に無傷で到達するそれらの能力は、よって、増加し、エステルは、標的組織の細胞の内部で酸生成物に変換され得る。しかし、エステルが標的組織に直接適用されるか又は例えば吸入により指向される局所投与について、エステルのエステラーゼ開裂速度が迅速であり、全身の曝露及びその結果としての望ましくない副作用を最小限にすることがしばしば所望される。エステラーゼモチーフがモジュレーターにそのアミノ基を介して、例えば上記の式(IA)におけるようにして結合する場合、アルファアミノ酸エステルのアルファ炭素に隣接する炭素が一置換されているならば、すなわちR2がCH2Rz (Rzは一置換基)である場合、エステルは、その炭素が、R2が例えばフェニル又はシクロヘキシルである場合のように二置換又は三置換である場合よりも、より迅速に開裂される傾向がある。同様に、エステラーゼモチーフがモジュレーターに、式(IB)及び(IC)のように炭素原子を介して結合される場合、R4NHCH(R1)-又はR1-(環B)-エステラーゼモチーフが連結している炭素原子が非置換であれば、すなわちR4NHCH(R1)-又はR1-(環B)-がメチレン(-CH2)-基に連結していれば、エステルは、その炭素が置換されているか又はフェニル若しくはシクロヘキシル環のような環系の一部分である場合よりも、より迅速に開裂される傾向がある。
【0056】
細胞内酵素及び受容体のモジュレーター
本発明の原理は、広い範囲の疾患に関連する広い範囲の細胞内標的のモジュレーターに適用可能である。上記のように、既知のモジュレーターのそれらの標的への結合形式は、モジュレーター自体が知られるようになれば、すぐに既知である。さらに、X線結晶解析及びNMRのような最新技術は、構造−活性の関係を特徴付ける従来の薬品化学の方法と同様に、このような結合トポロジー及び幾何的配置を明らかにすることができる。このような知見を用いて、所定のモジュレーターの構造において、モジュレーターの酵素又は受容体への結合を破壊することなく、どこにカルボキシルエステラーゼエステルモチーフを連結させることができるかを、構造データを用いて同定することが直接的である。例えば、表1は、発表された結晶構造データがあるいくつかの細胞内酵素又は受容体標的を列挙する。
【0057】
【表1−1】

【0058】
【表1−2】

【0059】
【表1−3】

【0060】
説明の目的で、標的へのその結合形式が知られている上記の細胞内標的のうちの5つの既知の阻害剤に言及する。これらの例は、このような構造データをどのようにして用いてカルボキシルエステラーゼエステルモチーフの連結のための適切な位置を決定できるかを説明する。活性部位の模式図を、その代表的な阻害剤とともに示す。一般的に、モジュレーターと標的との間の結合界面から離れた位置、よって酵素結合界面から溶媒の方へ離れる方向に向ける位置が、カルボキシルエステラーゼエステルモチーフの連結に適する位置であり、これらを図に示す。
【0061】
【化4】

【0062】
【化5】

【0063】
表1に同定するその他の例についても同様のアプローチを用いることができる。標的細胞内酵素又は受容体の活性のモジュレーターの細胞での効力及び/又は細胞内滞留時間を増加させるための本発明の方法は、いくつかの工程を含むことができる。
工程1:標的酵素又は受容体について同じ結合形式を共有する1つ又は複数のモジュレーター分子上の、モジュレーターと標的酵素又は受容体との間の結合界面から離れた位置を決定する。
【0064】
通常、このような位置は、標的酵素又は受容体に結合した既知のモジュレーター(又は構造が近いそのアナログ)と酵素又は受容体とのX線共結晶構造(又はnmrによる構造)から、構造の検分により同定される。或いは、標的酵素又は受容体の活性部位にドッキングしたモジュレーターと酵素又は受容体とのX線結晶構造を、コンピュータグラフィック法により模型にし、この模型を検分する。結合界面から離れた位置でのモジュレーターの構造的修飾が、モジュレーターの酵素又は受容体の活性部位への結合を大きく妨げることはありそうにないらしい。適切な位置は、共結晶構造又は溶媒の方に方向付けられるドッキングした模型から、通常、明らかになる。
【0065】
工程2:アルファアミノ酸エステル基、又は一連の異なるアルファアミノ酸エステル基の工程1で同定された1つ又は複数の位置での連結により、モジュレーターを共有結合型で修飾する。
アルファアミノ酸エステル基(すなわち、潜在的なカルボキシルエステラーゼモチーフ)の連結は、モジュレーター上に存在する共有結合している官能基を介するか、又はこの目的のために特別に導入された適切な官能基を介して行い得る。カルボキシルエステラーゼモチーフは、スペーサ又はリンカー要素により主要な分子の塊から空間を空けて配置して、モチーフを溶媒中深くに位置させ、それによりモチーフがモジュレーターの結合形式にいずれの小さい影響を与えることをさらに低減させ、及び/又はモジュレーターの主要な分子の塊に起因するであろう立体的妨げを低減することにより、モチーフがカルボキシルエステラーゼに接近できることを確実にする。
【0066】
工程2を行うことにより、1つの候補モジュレーター、又はより一般的には小さいライブラリーとしての候補モジュレーターが製造され、該モジュレーターはそれぞれ、工程1で同定された1つ又は複数の連結位置での種々のアミノ酸エステル基の導入により、その親の阻害剤に比べて共有結合型で修飾されている。
【0067】
工程3:工程2で作製したアルファアミノ酸複合モジュレーターを、標的酵素又は受容体に対するそれらの活性を決定するために試験する。
薬品化学では通常であるが、工程1及び2を行うことにより作製した親のモジュレーターのカルボキシルエステラーゼモチーフバージョンは、モジュレーター活性の期待される維持が実際に維持されているか、並びにどの程度及びどの効力プロフィールで維持されているかを決定するのに適切なアッセイにおいて試験されることが好ましい。細胞内にモジュレーター活性を蓄積させるという本発明の根底にある目的によると、適切なアッセイは、修飾されたモジュレーターの細胞での活性の程度及び効力プロフィールを評価する細胞系統でのアッセイを通常は含む。工程3で用いることができるその他のアッセイは、修飾されたモジュレーター及びその推定のカルボキシルエステラーゼ加水分解産物の固有の活性を決定するインビトロ酵素アッセイ又は受容体修飾アッセイ;カルボキシルエステラーゼによる修飾されたモジュレーターの対応するカルボン酸への変換の速度を決定するアッセイ;及び細胞内のカルボキシルエステラーゼ加水分解産物(カルボン酸)の蓄積の速度及び/又はレベルを決定するアッセイを含む。このようなアッセイにおいて、単球及び非単球細胞の両方、及び/又は単離された一連のカルボキシルエステラーゼを、細胞選択性を示す化合物を同定するために用いることができる。
【0068】
必要であれば又は所望により、工程3は、親のモジュレーターの異なる組の候補アルファアミノ酸エステル複合バージョンを用いて繰り返すことができる。
【0069】
工程4:工程3で得られたデータから、細胞内部での酵素又は受容体活性の修飾を引き起こし、細胞内部で対応するカルボン酸に変換されかつ蓄積され、かつ細胞での効力が増加又は延長される、試験した親のモジュレーターのアルファアミノ酸エステル複合バージョンの1つ又は複数を選択する。
【0070】
上記の工程1〜4は、本発明の原理の実行のための一般的なアルゴリズムを表す。このアルゴリズムの適用は、細胞内酵素ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)の既知の阻害剤に適用した、以下の実施例Aに示す。
【0071】
実施例A
葉酸(プテロイルグルタミン酸)は、プリン及びピリミジンヌクレオチドの生合成における鍵となる成分であるビタミンである。吸収の後に、食餌性葉酸は、ジヒドロ葉酸に還元され、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)によりテトラヒドロ葉酸にさらに還元される。DHFRの阻害は、ヌクレオチド生合成の低減を導き、DNA生合成の阻害及び細胞分裂の低下をもたらす。DHFR阻害剤は、癌(Bertino J, J.Cin. Oncol. 11, 5〜14, 1993)、リウマチ性関節炎のような細胞増殖性疾患(Cronstein N., Pharmacol. Rev. 57, 163〜1723)、乾癬及び移植拒絶の治療において広く用いられている。DHFR阻害剤は、抗感染剤(Salter A., Rev.
Infect. Dis. 4,196〜236, 1982)及び抗寄生虫剤(Plowe C. BMJ 328, 545〜548, 2004)としての使用も見出されている。
【0072】
多くの種類のDHFR阻害剤化合物が提案されており、このような化合物のいくつかは、抗癌剤、抗炎症剤、抗感染剤及び抗寄生虫剤として用いられる。既知のDHFR阻害剤の一般的な鋳型は、以下のとおりである。
【化6】

【0073】
メトトレキセート (S)-2-(4-(((2,4-ジアミノプテリジン-6-イル)メチル)メチルアミノ)-ベンズアミド)ペンタンジオン酸は、最も広く用いられているDHFR阻害剤であり、細胞内に能動的に輸送され、細胞内で維持されることを可能にするグルタミン酸官能基を含有する。しかし、癌細胞は、その能動輸送機構を修飾することにより、メトトレキセートに抵抗性になり得る。さらに、非哺乳動物細胞は、能動輸送機構を欠き、メトトレキセートは、抗感染剤としての使用が限定される。受動拡散により取り込まれ得る脂肪親和性DHFR阻害剤、例えばトリメトレキセート(2,4-ジアミノ-5-メチル-6-[(3,4,5-トリメトキシアニリノ)メチル]キナゾリン) (2 G = CH) (英国特許第1345502号)及び(2 G = N)のようなアナログ(Gangjeeら J.Med.Chem. 1993, 36, 3437〜3443)は、よって、癌細胞の抵抗性を回避し、抗感染剤として用いるために開発されている。
【0074】
【化7】

【0075】
しかし、細胞内に受動的に拡散する作用物質は、また、細胞を容易に出て行き、細胞内部に容易には維持されない。よって、脂肪親和性であるがその活性が細胞内に蓄積する本発明に従って修飾されたDHFR阻害剤は、著しい利点を有することができるはずである。さらに、両方のクラスのDHFR阻害剤は、臨床上用いることができる用量を限定する副作用を有する。マクロファージはサイトカインの産生を介して炎症性障害において鍵となる役割を演じることが知られているので、その活性がマクロファージにおいて選択的に蓄積するDHFR阻害剤は価値を有することができ、それらが癌において負の役割(negative role)を有するという証拠が増加している。
【0076】
上記の一般的なアルゴリズムの工程1
活性部位にドッキングしたトリメトレキセートを有するDHFR (2 G = CH)のnmrの構造は発表されており(Polshakov, V.I.ら, Protein Sci. 1999, 8,467〜481)、本発明に従ってカルボキシルエステラーゼモチーフを付け加えるのに最も適する位置が、以下に示すようにフェニル環であったことが明らかである。トリメトレキセートの既知の構造的に近いアナログ、例えば(2 G = N)においてもこの点での連結が適するであろうことが推断された。図2は、DHFRにドッキングした(2 G = N)を示し、連結に適する点が芳香環の4位であることを示す。なぜなら、この点が酵素の活性部位から離れた点であるからである。
【0077】
上記の一般的なアルゴリズムの工程2
カルボキシルエステラーゼモチーフがそのアルファアミノ酸窒素を介して結合している化合物を、スキームI及びIIに示すようにして製造した。この系列において、カルボニルを有するものと有さないものとを作製して、可能性のあるマクロファージ選択的化合物を同定した。
【0078】
【化8】

【0079】
【化9】

【0080】
エステラーゼモチーフがモジュレーターにアルファアミノ酸側鎖を介して結合している化合物を、スキームIII及びIVのように製造した。この系列において、窒素上にアルキル置換を有する化合物も作製して、マクロファージ選択的化合物を同定した(スキームIV)。
【0081】
【化10】

【0082】
【化11】

【0083】
上記の一般的なアルゴリズムの工程3
トリメトレキセートアナログ(2 G = N)を含む化合物を、DHFR酵素アッセイ、単球又は非単球細胞系統の両方を用いる細胞増殖アッセイ、及び単球及び非単球細胞系統によるエステルの開裂を評価するための破砕細胞アッセイにおいて、試験した。これらの全てのアッセイの詳細は、以下に記載する。
【0084】
上記の一般的なアルゴリズムの工程4
表2に示すように、その酸がトリメトレキセートアナログ(2 G = N)に匹敵する酵素に対する活性を有する化合物を同定した。エステラーゼモチーフが結合する様式を変えることにより、未修飾のアナログ(2 G=N)に比べてU937細胞において100倍高い効力があり、かつHCT116において15倍高い効力がある化合物(6)を導くことができた。
さらに、エステラーゼモチーフ窒素上のリンカー又は置換基の修飾は、単球細胞系統において選択的開裂を示すが非単球細胞系統においては示さず、単球細胞系統において、非単球細胞系統よりも著しくより増殖抑制的である化合物4及び5の同定を可能にした(表2を参照)。
【0085】
【表2】

【0086】
同様の方策を用いて、この概念を、以下の実施例に概説するように一連の細胞内標的に適用するのに成功している。
本発明の原理のさらなる説明のために、以下の実施例を示す。以下に記載する化合物の合成において:
市販で入手可能な試薬及び溶媒(HPLCグレード)は、さらなる精製を行わずに用いた。
マイクロ波照射は、CEM Discover集束(focused)マイクロ波反応器を用いて行った。
溶媒は、加熱せずにGeneVac Series Iを用いるか、又は30℃にてVacRampを備えるGenevac Series IIを用いて除去した。
フラッシュクロマトグラフィーカラムによる化合物の精製は、Silicycleから得た粒子サイズ40〜63μm (230〜400メッシュ)のシリカゲルを用いて行った。分取(preparative) HPLCによる化合物の精製は、逆相ThermoHypersil-Keystone Hyperprep HS C18カラム(12μm、100×21.2 mm)、9.5分かけてのグラジエント20〜100% B (A= 水/ 0.1% TFA、B= アセトニトリル/ 0.1% TFA)、流速= 30 ml/分、注入溶媒2:1 DMSO:アセトニトリル (1.6 ml)、215 nmでのUV検出を用いるGilsonシステムで行った。
【0087】
1H NMRスペクトルは、重水素化溶媒中でのBruker 400 MHz AV分光計で記録した。ケミカルシフト(δ)は、百万分率である。薄層クロマトグラフィー(TLC)分析は、Kieselgel 60 F254 (Merck)プレートで行い、UV光を用いて視覚化した。
【0088】
分析HPLCMSは、Agilent HP1100, Waters 600又はWaters 1525 LCシステムで、逆相Hypersil BDS C18カラム(5μm, 2.1×50 mm)、2.10分かけてのグラジエント0〜95% B (A= 水/0.1% TFA, B= アセトニトリル/0.1% TFA)、流速= 1.0 ml/分を用いて行った。UVスペクトルは、215 nmにて、Gilson G1315Aダイオードアレイ検出器、G1214A単一波長UV検出器、Waters 2487二波長UV検出器、Waters 2488二波長UV検出器、又はWaters 2996ダイオードアレイUV検出器を用いて記録した。質量スペクトルは、1秒当たり2スキャン又は1.2秒当たり1スキャンのサンプリング速度にてm/z 150〜850の範囲で、Z-スプレーインターフェースを有するMicromass LCT、又はZ-スプレー若しくはMUXインターフェースを有するMicromass LCTを用いて得た。データは、OpenLynx及びOpenLynx Browserソフトウェアを用いて積分して報告した。
【0089】
以下の略称を用いる。
MeOH = MeOH
EtOH = EtOH
EtOAc = EtOAc
Boc = tert-ブトキシカルボニル
DCM = DCM
DMF = ジメチルホルムアミド
DMSO = ジメチルスルホキシド
TFA = トリフルオロ酢酸
THF = テトラヒドロフラン
Na2CO3 = 炭酸ナトリウム
HCl = 塩化水素酸
DIPEA = ジイソプロピルエチルアミン
NaH = 水素化ナトリウム
NaOH = 水酸化ナトリウム
NaHCO3 = 炭酸水素ナトリウム
【0090】
Pd/C = パラジウムカーボン
TBME = tert-ブチルメチルエーテル
N2 = 窒素
PyBop = ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
Na2SO4 = 硫酸ナトリウム
Et3N = トリエチルアミン
NH3 = アンモニア
TMSCl = トリメチルクロロシラン
NH4Cl = 塩化アンモニウム
LiAlH4 =水素化リチウムアルミニウム
PyBrOP = ブロモ-トリス-ピロリジノ ホスホニウムヘキサフルオロリン酸
MgSO4 = MgSO4
nBuLi = n-ブチルリチウム
CO2 = 二酸化炭素
EDCI = N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド塩酸塩
Et2O = ジエチルエーテル
LiOH = 水酸化リチウム
HOBt = 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
【0091】
ELS =蒸発光散乱
TLC = 薄層クロマトグラフィー
ml = ミリリットル
g = グラム
mg = ミリグラム
mol = モル
mmol = ミリモル
LCMS = 高性能液体クロマトグラフィー/質量分析
NMR = 核磁気共鳴
r.t. = 室温
min = 分
h = 時間
【0092】
中間体
以下の構成要素を、修飾されたモジュレーターの合成のために用いた。
【化12】

【0093】
(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-4-ヒドロキシ-酪酸 シクロペンチルエステル及び(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-4-ヒドロキシ-酪酸 1-tert-ブチルエステルの合成
【化13】

【0094】
段階1 - (S)-2-アミノ-4-(tert-ブチル-ジメチル-シラニルオキシ)-酪酸の合成
【化14】

【0095】
L-ホモセリン(1g, 8.4mmol)のアセトニトリル(10ml)中の懸濁液に、0℃にて、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ-7-エン(1.32ml, 8.8mmol, 1.05eq)を加えた。次いで、Tert-ブチル-ジメチル-シリルクロリド(1.33g, 8.8mmol, 1.05eq)を5分間かけて少しずつ加え、反応混合物をr. t.まで温め、16時間撹拌した。白色の沈殿物が形成され、これをろ過してアセトニトリルで洗浄した後に、真空下で乾燥させた。表題化合物を白色固体として単離した(1.8g, 92%)。 1H NMR (500 MHz, DMSO), δ: 7.5 (1H, bs), 3.7 (1H, m), 3.35 (4H, bm), 1.95 (1H, m), 1.70 (1H, m), 0.9 (9H, s), 0.1 (6H, s).
【0096】
段階2 - (S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-4-(tert-ブチル-ジメチル-シラニルオキシ)-酪酸の合成
【化15】

【0097】
段階1の生成物(1.8g, 7.7mmol)のDCM (100ml)中の懸濁液を、0℃にて、トリエチルアミン(2.15ml, 15.4mmol, 2eq)及びジ-tert-ブチルジカーボネート(1.77g, 8.1mmol, 1.05eq)で処理した。反応混合物を、反応完結のためにr. t.にて16時間撹拌した。DCMを減圧下に除去し、混合物をEtOAc / 塩水で処理した。EtOAc層をMgSO4で乾燥させ、減圧下で蒸発させた。粗生成物をさらなる精製を行わずに用いた(2.53g, 99%)。 1H NMR (500 MHz, CDCl3), δ: 7.5 (1H, bs), 5.85 (1H, d, J = 6.5Hz), 4.3 (1H, m), 3.75 (2H, m), 1.95
(2H, m), 1.40 (9H, s), 0.85 (9H, s), 0.1 (6H, s).
【0098】
段階3 - (S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-4-(tert-ブチル-ジメチル-シラニルオキシ)-酪酸 シクロペンチルエステルの合成
【化16】

【0099】
段階2の生成物(2.53g, 7.6mmol)のDCM (50ml)溶液に、0℃にて、シクロペンタノール(1.39ml, 15.3ml, 2eq)、EDCI (1.61g, 8.4mmol, 1.1eq)及びDMAP (0.093g, 0.76mmol, 0.1eq)を加えた。反応混合物をr. t.にて16時間撹拌した後に、減圧下で蒸発させた。粗残渣をEtOAc (100ml)に溶解し、1M HCl、1M Na2CO3及び塩水で洗浄した。次いで、有機層をMgSO4で乾燥させ、減圧下に蒸発させた。生成物をEtOAc / ヘプタン(1:4)を用いるカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物を得た(2.24g, 73%)。 LCMS純度 100%, m/z 402.5 [M++H], 1H NMR (250 MHz, CDCl3), δ: 5.2 (1H, d, J = 6.3Hz), 5.15 (1H,m), 4.2 (1H, m), 3.6 (2H, m), 2.0 (1H, m), 1.95-1.55 (9H, bm), 1.4 (9H,s), 0.85 (9H,s), 0.1 (6H,s).
【0100】
段階4 - (S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-4-ヒドロキシ-酪酸 シクロペンチルエステルの合成
【化17】

【0101】
段階3の生成物(1.57g, 3.9mmol)を、酢酸:THF:水(3:1:1, 100ml)に溶解した。反応混合物を、反応完結のために30℃にて16時間撹拌した。EtOAc (200ml)を加え、1M Na2CO3、1M
HCl及び塩水で洗浄した。EtOAc抽出物をMgSO4で乾燥させ、減圧下に蒸発させて、生成物を透明な油として得たが、これは放置すると結晶化した(1.0g, 95%)。 LCMS純度 100%, m/z 310.3 [M++Na], 1H NMR (250 MHz, CDCl3), δ: 5.4 (1H, d, J = 6.5Hz), 5.2 (1H, m), 4.4 (1H, m), 3.65 (2H, m), 2.15 (1H, m), 1.9-1.55 (9H, bm), 1.45 (9H, s).
【0102】
段階5 - (S)-4-ブロモ-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-酪酸 シクロペンチルエステルの合成
【化18】

【0103】
N-ブロモスクシンイミド(1.86g, 10.4mmol)のDCM (16.2ml)中のスラリーに、トリフェニルホスフィン(2.56g, 9.74mmol)のDCM (7.2ml)溶液を加えた。溶液を、添加の後さらに5分間撹拌した。ピリジン(338μl, 4.18mmol)、続いて段階4の生成物(1.00g, 3.48mmol)のDCM (8.8ml)溶液を加えた。溶液を18時間撹拌し、減圧下に濃縮し、残存溶媒をトルエン(3×16ml)と共沸させた。残渣をジエチルエーテル(10ml)及び酢酸エチル:ヘプタン(1:9, 2×10ml)で粉砕した。合わせたエーテル及びヘプタン溶液を、シリカで濃縮させ、EtOAc / ヘプタン(1:9〜2:8)で溶出するカラムクロマトグラフィーで精製して、表題化合物を得た(1.02g, 84%)。 1H NMR (300 MHz, CDCl3), δ: 5.30-5.05 (2H, m), 4.45-4.30(1H, m), 3.45 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.50-2.30 (1H, m), 2.25- 2.10 (1H, m), 1.95- 1.60 (8H, br m), 1.47 (9H, s).
【0104】
(S)-2-アミノ-4-メチル-ペンタン酸 シクロペンチルエステルの合成
【化19】

【0105】
段階1 - (S)-2-アミノ-4-メチル-ペンタン酸 シクロペンチルエステル トルエン-4-スルホン酸の合成
【化20】

【0106】
(S)-ロイシン(15g, 0.11mol)のシクロヘキサン(400ml)中の懸濁液に、シクロペンタノール(103.78ml, 1.14mmol)及びp-トルエンスルホン酸(23.93g, 0.13mol)を加えた。懸濁物を還流にて加熱して、サルフェート化を行った。溶液を16時間還流させた後に、これを冷却して、白色の懸濁物を得た。混合物にヘプタン(500ml)を加え、懸濁物をろ過して、生成物を白色固体として得た(35g, 85%)。 1H NMR (300 MHz, MeOD), δ: 1.01 (6H, t, J = 5.8Hz), 1.54-2.03 (11H, m), 2.39 (3H, s), 3.96 (1H, t, J = 6.5Hz), 5.26-5.36
(1H, m), 7.25 (2H, d, J = 7.9Hz), 7.72 (2H, d, J = 8.3Hz).
【0107】
段階2 - (S)-2-アミノ-4-メチル-ペンタン酸 シクロペンチルエステルの合成
【化21】

【0108】
段階1の生成物(2.57g, 0.013mol)のDCM (5ml)溶液を、NaHCO3飽和水溶液(2×3ml)で洗浄した。合わせた水層をDCM (3×4ml)で逆抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(MgSO4)、溶媒を真空除去して、表題化合物を無色の油として得た(1.10g, 80%)。 1H NMR (300 MHz, CDCl3), δ: 0.90 (6H, t, J = 6.4Hz), 1.23-1.94 (11H, m), 3.38 (1H, dd, J = 8.4, 5.9Hz), 5.11-5.22 (1H, m).
【0109】
(S)-アミノ-フェニル-酢酸 シクロペンチルエステルの合成
【化22】

【0110】
(S)-アミノ-フェニル-酢酸 シクロペンチルエステルは、(S)-アミノ-フェニル-酢酸から、(S)-2-アミノ-4-メチル-ペンタン酸 シクロペンチルエステルの合成に用いたのと同じ手順に従って製造した。
【0111】
(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ペンタンジオン酸 1-シクロペンチルエステルの合成
【化23】

【0112】
段階1 - (S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ペンタンジオン酸 5-ベンジルエステル1-シクロペンチルエステルの合成
【化24】

【0113】
(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ペンタンジオン酸 5-ベンジルエステル(5g, 14.8mmol)の、DCM (50ml)及びDMF (30ml)混液中の撹拌溶液に、0℃にて、シクロペンタノール(2.7ml, 29.6mmol)、EDCI (4.25g, 22.2mmol)及びDMAP (0.18g, 1.48mmol)を加えた。撹拌をr. t.にて一晩継続した後に、LCMSは反応の完結を示した。DCMを減圧下に除去した。反応混合物をEtOAc (200ml)で希釈し、水(100ml)、1M HCl水溶液(50ml)、続いてNaHCO3飽和水溶液(50ml)で洗浄した。EtOAc層を乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し、真空濃縮して、粘性の油を得たが、これは一晩放置すると固化した。Et2O (2×10ml)での粉砕により、表題化合物を白色固体として得た(43.78g, 80%)。LCMS純度 94%.
【0114】
段階2 - (S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ペンタンジオン酸 1-シクロペンチルエステルの合成
【化25】

【0115】
段階1の生成物(1.3g, 3.20mmol)及び10% Pd/ C (0.5g)のEtOH (150ml)中の混合物を、H2 (バルーン)の下でr. t.にて4時間撹拌した後に、LCMSは反応完結を示した。反応混合物をセライトパッドを通してろ過し、EtOH (20ml)で洗浄し、真空濃縮して白色固体を得た。残存EtOHを除去するために、固体をトルエン/ THF混液(5/1) (20ml)に溶解し、真空濃縮して、表題化合物を得た(0.8g, 79%)。 1H NMR (400 MHz, MeOD), δ: 1.35 (9H, s), 1.60-2.10 (10H, m), 4.05 (1 H, m), 5.20 (1H, m).
【0116】
(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ペンタンジオン酸 1-tert-ブチルエステルの合成
【化26】

【0117】
(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ペンタンジオン酸 1-tert-ブチルエステルを、(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ペンタンジオン酸 5-ベンジルエステルから、(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ペンタンジオン酸 1-シクロペンチルエステルの合成に用いたのと同じ手順に従って製造した。
【0118】
(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-4-ブロモ-酪酸 tert-ブチルエステルの合成
【化27】

【0119】
段階1 - (S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-コハク酸 1-tert-ブチルエステルの合成
【化28】

【0120】
(S)-2-アミノ-コハク酸 1-tert-ブチルエステル(0.9g, 4.75mmol)及び水酸化ナトリウム(0.28g, 7.13mmol, 1.5eq)を、ジオキサン中の25%の水(50ml)に溶解した。溶液を5℃にて撹拌し、ジオキサン(10ml)中のジベンジルジカーボネート(2g, 4.13mmol, 1.5eq)をゆっくりと加えた。混合物を0℃にて1時間、次いでr. t.にて一晩撹拌した。水(10ml)を加え、混合物をEtOAc (2×20ml)で抽出した。有機層を重炭酸ナトリウムの飽和水溶液(2×10ml)で逆抽出した。合わせた水層を、pH 1まで1M HClを用いて酸性にし、EtOAc (3×10ml)で抽出した。合わせた有機画分をMgSO4で乾燥させ、減圧下に濃縮した。生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して(ヘプタン中の35% EtOAc)、表題化合物を無色の油として得た(0.76g, 50%)。 m/z 346 [M+23]+, 1H NMR (300 MHz, CDCl3), δ: 7.39-7.32 (5H, m), 5.72 (1H, d, J = 8.1Hz), 5.13 (2H, s), 4.58-4.50 (1H, m), 3.10-2.99 (1H, m), 2.94-2.83 91H, m), 1.45 (9H, s).
【0121】
段階2 - (S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-4-ヒドロキシ-酪酸 tert-ブチルエステルの合成
【化29】

【0122】
段階1の生成物(0.6g, 1.87mmol)の無水THF (20ml)溶液に、-20℃にて、トリエチルアミン(0.032ml, 2.24mmol, 1.2eq)及びエチルクロロホルメート(0.021ml, 2.24mmol, 1.2eq)をゆっくりと加えた。混合物を-20℃にて2時間撹拌した。形成された固体をろ過し、THF (2×10ml)で洗浄した。ろ過物を、水素化ホウ素ナトリウム(0.2g, 5.61mmol, 3eq)の溶液に0℃にて滴下し、r. t.にて4時間撹拌した。溶媒を減圧下に除去し、残渣を水(10ml)で希釈し、pH 5まで1M HClを用いて酸性にし、EtOAcで抽出した。有機画分を合わせ、10%水酸化ナトリウム水溶液、水及び塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧下に濃縮して、表題化合物を透明な油として得た(0.3g, 51%)。 m/z 332 [M+23]+.
【0123】
段階3 - (S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-4-ブロモ-酪酸 tert-ブチルエステルの合成
【化30】

【0124】
N-ブロモスクシンイミド(0.52g, 2.91mmol, 3eq)のDCM (10ml)溶液に、トリフェニルホスフィン(0.71g, 2.72mmol, 2.8eq)のDCM (10ml)溶液をゆっくりと加えた。混合物をr. t.にて5分間撹拌した。ピリジン(0.094ml, 1.16mmol, 1.2eq)と、段階2の生成物(0.3g, 0.97mmol, 1eq)のDCM (20ml)溶液とを滴下し、混合物をr. t.にて一晩撹拌した。
溶媒を減圧下に除去し、残渣をトルエン(2×15ml)と共沸させ、ジエチルエーテル(2×25ml)及びヘプタン中の10% EtOAc中で粉砕した。粉砕からの溶液を合わせ、蒸発乾燥した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して(ヘプタン中の15% EtOAc)、表題化合物を透明な油として得た(0.16g, 44%)。 m/z 395 [M+23]+, 1H NMR (300 MHz, CDCl3), δ: 7.39-7.30 (5H, m), 5.40 (1H, d, J = 6.8Hz), 5.12 (2H, s), 4.38 (1H, q, J = 7.7Hz), 3.47-3.38 (2H, m), 5.49-2.33 (1H, m), 2.28-2.13 (1H, m), 1.48 (9H, s).
【0125】
実施例1
この実施例は、既知のHDAC (ヒストン脱アセチル化酵素)阻害剤であるスベロイルアニリドヒドロキサム酸(化合物7) (本明細書において、「SAHA」という)の、その結合形式を妨げない、標的との結合界面から離れた点でのアミノ酸エステルモチーフの連結による修飾について記載する。
【0126】
化合物7:スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)
【化31】

【0127】
SAHAは、BioCat GmbH, Heidelberg, Germanyから購入した。
【0128】
樹脂化学のための標準的洗浄手順
樹脂は、次の順序で洗浄した:DMF、MeOH、DMF、MeOH、DCM、MeOH、DCM、MeOH×2、TBME×2。
【0129】
樹脂試験開裂
少量の官能化したヒドロキシルアミン2-クロロトリチル樹脂(約0.3mlの反応混合物、約10mg樹脂)を、2% TFA/DCM (0.5ml)でr. t.にて10分間処理した。樹脂をろ過し、ろ過物を、N2ガス流を吹き付けることにより濃縮した。残渣のLCMSを得た。
【0130】
スベリン酸誘導体化ヒドロキシルアミン2-クロロトリチル樹脂の製造
段階1 - 2-クロロトリチル-O-NH2樹脂への固定化
【化32】

【0131】
2-クロロトリチル-O-NH2樹脂(6g, ローディング1.14mmol/g, 6.84mmol)及びDCM (60ml)を入れた丸底フラスコに、DIPEA (5.30g, 41.0mmol, 6eq)を加えた。メチル8-クロロ-8-オキソオクタノエート(4.2g, 20.5mmol, 3eq)を反応混合物に旋回撹拌しながらゆっくりと加え、反応混合物を48時間振とうした。樹脂をろ過し、標準的洗浄手順を用いて洗浄した。樹脂を真空下に乾燥させた。LCMS純度は、ELS検出により決定して100%であった。 m/z 204 [M++H]+.
【0132】
段階2 - けん化
【化33】

【0133】
段階1の樹脂(4g, ローディング1.14mmol/g, 4.56mmol)を入れた丸底フラスコに、THF (16ml)及びMeOH (16ml)を加えた。反応物に、NaOH (0.91g, 22.8mmol, 5eq)の水(16ml)溶液を加えた。反応混合物を48時間振とうした。樹脂をろ過し、水×2、MeOH×2、続いて標準的洗浄手順で洗浄した。樹脂を真空下に乾燥させた。LCMS純度は、ELS検出により決定して100%であった。 m/z 190 [M++H]+.
【0134】
SAHA誘導体の製造
SAHAに基づく化合物は、以下に概説する方法により製造した。
化合物(8)、(9)及び(10)は、次のスキームに記載する方法により製造した。
【化34】

【0135】
段階1〜5は、R = シクロペンチルについて例示する。
段階1 - (S)-(3-ニトロ-ベンジルアミノ)-フェニル-酢酸 シクロペンチルエステルの合成
【化35】

【0136】
3-ニトロベンジルブロミド(46mmol)をDMF (180ml)に溶解し、炭酸カリウム(92mmol)、次いで(S)-フェニルグリシンエステル(10.6g, 46mmol)を加えた。反応物をr. t.にて17時間撹拌した後に、蒸発させて乾燥した。残渣をEtOAc (150ml)に再溶解し、水(3×80ml)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し、濃縮乾燥させた。フラッシュカラムクロマトグラフィーによる精製の後に(30% EtOAc / ヘキサン)、エステルを得て、段階2において直ちに用いた。
【0137】
段階2 - (S)-[tert-ブトキシカルボニル-(3-ニトロ-ベンジル)-アミノ]-フェニル-酢酸
シクロペンチルエステルの合成
【化36】

【0138】
段階1の生成物(40.9mmol)をTHF (250ml)に溶解した後に、炭酸カリウム(61.4mmol)及び水(150ml)を加えた。ジ-tert-ブチル-ジカーボネート (163mmol)を加え、反応混合物を50℃にて18時間加熱した。DCMを加え、得られた混合物を、0.1 M HCl (150ml)、NaHCO3飽和水溶液及び水(150 ml)で連続的に洗浄した。DCM層を乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し、濃縮乾燥させた。フラッシュカラムクロマトグラフィーによる精製の後に(5% EtOAc / ヘキサン)、表題の□ulphateを単離して、段階3において直ちに用いた。
【0139】
段階3 - (S)-[(3-アミノ-ベンジル)-tert-ブトキシカルボニル-アミノ]-フェニル-酢酸 シクロペンチルエステルの合成
【化37】

【0140】
段階2の生成物(11.5mmol)をEtOAc (150ml)に溶解した後に、Pd/C (10%湿潤)触媒(0.8g)を加え、バルーン圧力の下でr. t.にて18時間水素化した。反応混合物を、セライトパッドを通してろ過し、蒸発乾燥させて、固体を得た。
【0141】
段階4 - 樹脂結合
【化38】

【0142】
スベリン酸で誘導体化したヒドロキシルアミン2-クロロトリチル樹脂(1.0 g, ローディング0.83mmol/g)を、DMF (15ml)中で膨潤させ、PyBOP (1.36g, 2.61mmol)、続いてDIPEA (1.5ml, 8.7mmol)を加えた。段階3の生成物(2.61mmol)をDCM (15ml)中に溶解し、反応混合物に加えた。反応物をr. t.にて24時間振とうした。樹脂をろ過し、標準的洗浄手順を用いて洗浄した。樹脂を、真空下に乾燥させた。
【0143】
段階5 - (S)-[3-(7-ヒドロキシカルバモイル-ヘプタノイルアミノ)-ベンジルアミノ]-フェニル-酢酸 シクロペンチルエステル化合物(8)の合成
【化39】

【0144】
段階4の生成物(ローディング0.83mmol)を、2% TFA/DCM (10ml)中で20分間、穏やかに振とうした。樹脂をろ過した。ろ過物を、r. t.にて減圧下で蒸発させた。樹脂を2% TFA/DCM (10ml)で再び処理し、20分後にろ過した。合わせたろ過物を減圧下にr. t.にて蒸発乾燥させて、油状の残渣を得た。残渣を20% TFA/DCM中に40分間放置した。r. t.にて減圧下で蒸発乾燥させた後に、粗生成物を分取HPLCにより精製した。
【0145】
化合物8についての分析データ
LCMS純度 100%, m/z 496 [M++H]+, 1H NMR (400MHz, MeOD), δ: 1.30-1.70 (16H, m),
2.00 (2H, t), 2.30 (2H, t), 4.05 (2H, dd), 5.00 (1H, m), 5.15 (1H, m), 7.05 (1H, m), 7.30 (2H, m), 7.40 (5H, m), 7.75 (1H, m).
化合物(10)についての分析データ
LCMS純度 97%, m/z 484 [M++H]+, 1H NMR (400 MHz, MeOD), δ: 1.30 (13H, m), 1.45-1.65 (4H, m), 1.93-2.05 (2H, m), 2.20-2.40 (2H, m), 3.99 (2H, q), 4.65-4.95 (1H, m) 7.05 (1H, d), 7.25-7.33 (2 H, m), 7.35-7.50 (5H, m), 7.75 (1H, s).
【0146】
段階6 - けん化
【化40】

【0147】
R = Etである段階5の生成物(1.4g, ローディング0.83mmol)を、THF (8.6ml)及びMeOH (8.6ml)に懸濁し、1.4M 水酸化ナトリウム溶液(5.98mmol)を加えた。混合物を24時間振とうし、樹脂をろ過し、水×2、MeOH×2、続いて標準的洗浄手順を用いて洗浄した。樹脂を真空下に乾燥させた。
【0148】
段階7 - (S)-[3-(7-ヒドロキシカルバモイル-ヘプタノイルアミノ)-ベンジルアミノ]-フェニル-酢酸(9)の合成
【化41】

【0149】
段階6の生成物(1.44g, ローディング0.83mmol)を、2% TFA/DCM (10ml)中で20分間穏やかに振とうした。樹脂をろ過し、ろ過物をr. t.にて減圧下に蒸発させた。樹脂を2% TFA/DCM (10ml)で再び処理し、20分後にろ過した。合わせたろ過物は、r. t.にて減圧下に蒸発乾燥させて、油状の残渣を得た。残渣を20% TFA/DCM中に40分間放置した。r. t.にて減圧下に蒸発乾燥させた後に、粗生成物を分取HPLCにより精製して、化合物(9)を得た。LCMS純度 100%, m/z 428 [M++H]+, 1H NMR (400MHz, MeOD), δ: 1.20-1.35 (4H, m), 1.50-1.65 (4H, m), 2.00 (2H, m), 2.30 (2H, m), 4.00 (2H, dd), 4.90 (1H, m), 7.05 (1H,
m), 7.25-7.50 (7H, m), 7.70 (1H, m).
【0150】
化合物(24)を、化合物(8)の合成について記載したのと同じ方法に従って製造した。
([(R)-[4-7-ヒドロキシカルバモイル-ヘプタノイルアミノ)-フェニル]-フェニル-メチル]-アミノ)酢酸 シクロペンチルエステル(24)
【化42】

【0151】
LCMS純度 95%, m/z 496 [M++H]+, 1H NMR (400 MHz, DMSO), δ: 1.30-1.50 (6H, m), 1.50-1.70 (8H, m), 1.80 (2H, m), 2.10 (2H, t), 2.45 (2H, t), 4.1 (2H, dd), 5.25 (1H, m), 5.35 (1H, m), 7.45 (2H, d), 7.60 (5H, m), 7.80 (2H, d), 10.00-10.10 (2H, br s), 10.50 (1H, s).
【0152】
実施例2
この実施例は、既知のオーロラキナーゼA (「オーロラA」)阻害剤であるN-[4-(7-メトキシ-6-メトキシ-キノリン-4-イルオキシ)-フェニル]-ベンズアミド(化合物(11))の、その結合形式を妨げない点でのアミノ酸エステルモチーフの連結による修飾について記載する。
【0153】
化合物(11):N-[4-(7-メトキシ-6-メトキシ-キノリン-4-イルオキシ)-フェニル]-ベンズアミド
【化43】

【0154】
化合物(11)は、米国特許第6,143,764号に記載されるようにして製造した。
化合物(11)に基づく化合物は、以下に概説する方法により製造した。
化合物(12)及び(13)は、以下のスキームに記載する方法により製造した。
【化44】

【0155】
段階1 - N-(4-ヒドロキシ-フェニル)-ベンズアミドの合成
【化45】

【0156】
4-アミノフェノール(4.27g, 39.1mmol)のDMF (50ml)溶液に、0℃にて、アルゴン雰囲気下にトリエチルアミン(7.44ml, 53.4mmol, 1.5eq)を加えた。反応物を10分間撹拌した後に、塩化ベンゾイル(5g, 35.6mmol, 1eq)を5分かけてゆっくりと加えた。反応混合物をr.
t.まで温め、18時間かけて撹拌した。DMFを減圧下に除去し、混合物をEtOAc / 水で処理した。白色固体の沈殿物が得られ、これをろ過し、減圧下に乾燥させて、表題化合物を得た(8.0g, 96%)。 1H NMR (270 MHz, DMSO), δ: 10.0 (1H, s), 9.35 (1H, s), 7.9 (2H,
d, J = 7.2Hz), 7.5 (5H, m), 6.75 (2H, d, J = 7.4Hz).
【0157】
段階2 - N-[4-(7-ベンジルオキシ-6-メトキシ-キノリン-4-イルオキシ)-フェニル]-ベンズアミドの合成
【化46】

【0158】
4-クロロ-6-メトキシ-7-ベンジルオキシキノリン[合成方法についてはOrg. Synth. Col. Vol. 3, 272 (1955)及びUS006143764A (Kirin Beer Kabushiki Kaisha)を参照] (1.09g, 3.6mmol)を入れた丸底フラスコに、段階1の生成物(2.33g, 10.9 mmol, 3 eq)を加えた。反応物を140℃にて3時間加熱した。r. t.まで冷却した後に、水を反応混合物に加えて、混合物をEtOAcで3回抽出した。合わせたEtOAc層を5% NaOH水溶液、塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させた。溶媒を減圧下に除去し、EtOAc / ヘプタン (2:1)で溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物を得た。(0.56g, 32%)。 m/z 477 [M++H].
【0159】
段階3 - N-[4-(7-ヒドロキシ-6-メトキシ-キノリン-4-イルオキシ)-フェニル]-ベンズアミドの合成
【化47】

【0160】
段階2の生成物(0.56g, 1.17mmol)と10% Pd/C (0.08g)の10% シクロヘキセン / EtOH (80ml)中の混合物を、還流下で3時間加熱した。Pd/C触媒をセライトパッドを通してろ過し、MeOHで2回洗浄した。ろ過物を減圧下に濃縮して、表題化合物を黄色の固体として得た(0.34g, 75%)。 m/z 387 [M++H].
【0161】
段階4 - (S)-4-[4-(4-ベンゾイルアミノ-フェノキシ)-6-メトキシ-キノリン-7-イルオキシ]-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-酪酸 シクロペンチルエステルの合成
【化48】

【0162】
段階3の生成物(0.2g, 0.52mmol)の無水DCM (30ml)溶液に、0℃にて、5mlのDCM中の(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-4-ヒドロキシ-酪酸 シクロペンチルエステル(0.223g,
0.78mmol, 1.5eq)を加えた。次いで、Ph3P (0.557g, 2.1mmol, 4.1eq)及びDIAD (0.412ml, 2.1mmol, 4.1eq)を加え、反応混合物をr. t.まで温め、16時間撹拌した。粗反応混合物を減圧下に蒸発させ、カラムクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物を得た(0.135g, 46%)。 m/z 656.3 [M++H].
【0163】
段階5 - ((S)-2-アミノ-4-[4-(4-ベンゾイルアミノ-フェノキシ)-6-メトキシ-キノリン-7-イルオキシ]-酪酸 シクロペンチルエステル) (12)の合成
【化49】

【0164】
段階4の生成物(5.8mg, 0.009mmol)のDCM (1ml)溶液に、TFA (1ml)を加えた。反応混合物を16時間撹拌した後に、減圧下に蒸発させ、トルエンと共沸させて微量のTFAを除去した。化合物(12)を、オフホワイトの固体として単離した(4.7mg)。 LCMS純度 95%, m/z 556.2 [M++H], 1H NMR (270 MHz, DMSO), δ: 10.4 (1H, s), 8.8 (1H, d, J = 6.5Hz), 8.55 (2H,bs), 8.01 (4H, m), 7.65 (4H, m), 7.35 (1H, d, J = 7.6Hz), 6.75 (1H, d, J
= 6.5Hz), 5.25 (1H, m), 4.35 (3H, m), 4.0 (3H, s), 2.4 (2H, m), 1.85-1.4 (8H, bm).
【0165】
段階6 - (S)-4-[4-(4-ベンゾイルアミノ-フェノキシ)-6-メトキシ-キノリン-7-イルオキシ]-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-酪酸の合成
【化50】

【0166】
段階4の生成物(17mg, 0.02mmol)のTHF (1ml)溶液に、2M NaOH (0.026ml, 0.046mmol, 2eq)を加えた。16時間後に、反応は未完結であったので、さらに2等量のNaOHを加えた。撹拌は6時間後に終了し、THFを減圧下に除去した。水層を3mlの水で希釈し、pH 6まで1M HClを用いて酸性にした。表題化合物をEtOAcに抽出し、MgSO4で乾燥させ、白色固体として単離した。これを、さらなる精製を行わずに段階7で直ちに用いた。
【0167】
段階7 - (S)-4-[4-(4-ベンゾイルアミノ-フェノキシ)-6-メトキシ-キノリン-7-イルオキシ]-2-tert-ブチルカルボニルアミノ-酪酸 (13)の合成
【化51】

【0168】
段階6の生成物(6.5mg, 0.011mmol)のDCM (1ml)溶液に、TFA (1ml)を加えた。反応物を6時間撹拌し、次いで減圧下に蒸発させて、表題化合物(13)をオフホワイトの固体として得た(90%)。 LCMS純度 100%, m/z 488.2 [M++H], 1H NMR (300 MHz, MeOD), δ: 8.75 (1H,
d, J = 7.8Hz), 8.00 (4H, m), 7.65 (4H, m), 7.4 (1H, d, J = 7.6Hz), 6.95 (1H, d,
J = 8.0Hz), 4.6 (2H, m), 4.3 (1H, m), 4.2 (3H, s), 2.6 (2H, m).
【0169】
化合物(14)は、以下のスキームに記載する方法により製造した。
【化52】

【0170】
段階1、2及び3は、化合物(12)の合成について上記で記載したことと同じである。
段階4 - (S)-4-[4-(4-ベンゾイルアミノ-フェノキシ)-6-メトキシ-キノリン-7-イルオキシ]-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-酪酸 tert-ブチルエステルの合成
【化53】

【0171】
段階3の生成物(0.15g, 0.39mmol)、(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-4-ブロモ-酪酸 tert-ブチルエステル(0.16g, 0.43mmol, 1.1eq)、及びK2CO3 (0.11g, 0.78mmol, 2eq)を、無水DMF (10ml)中に窒素雰囲気下で溶解した。反応物を35℃にて一晩撹拌した後に、DMFを減圧下に除去した。残渣をDCMに溶解し、水、続いて塩水で洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥させ、減圧下で蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(1% MeOH/ DCMで溶出する)により、表題化合物を得た(0.16g, 60%)。 m/z 678 [M+H]+,1H NMR (300 MHz, CDCl3), δ: 8.49 (1H, d, J = 5.3Hz), 7.98 (1H, s), 7.92 (2H, dd, J = 8.2, 1.4Hz), 7.80-7.72 (2H, m), 7.63-7.48 (4H, m), 7.43-7.29 (4H, m), 7.24-7.17 (2H, m), 6.64 (1H, d, J = 8.9Hz), 6.49 (1H, d, J = 5.3Hz), 5.15 (2H, s), 4.66-4.57 (1H, m), 4.43-4.34 (1H, m), 3.85 (3H, s), 2.55-2.33 (2H, m), 1.41 (9H, m).
【0172】
段階5 - -(S)-2-アミノ-4-[4-(4-ベンゾイルアミノ-フェノキシ)-6-メトキシ-キノリン-7-イルオキシ]-酪酸 tert-ブチルエステル(14)の合成
【化54】

【0173】
段階4の生成物(0.045g, 0.066mmol)を無水EtOAc (5ml)に溶解し、Pd(OH)2/Cを窒素雰囲気下に加えた。反応物を脱気し、水素雰囲気下でr. t.にて一晩撹拌した。触媒をセライトパッドを通してろ過し、溶媒を減圧下に除去した。化合物(14)を分取HPLCにより精製した。 m/z 544 [M+H]+,1H NMR (300 MHz, CD3OD), δ: 8.67 (1H, d, J = 6.8Hz), 7.98 (4H,d, J = 8.7Hz), 7.90 (1H,s), 7.68-7.51 (4H, m), 7.42-7.36 (2H, m), 6.97 (1H, d, J = 6.6Hz), 4.52 (2H, t, J = 5.7Hz), 4.28 (1H, t, J = 6.5Hz), 4.13 (3H, s), 2.69-2.45 (2H,m ), 1.53 (9H, s).
【0174】
化合物(25)は、以下のスキームに記載する方法により製造した。
【化55】

【0175】
段階1 - (S)-4-[4-(4-ベンゾイルアミノ-フェノキシ)-6-メトキシ-キノリン-7-イルオキシ]-2-シクロヘキシルアミノ-酪酸 シクロペンチルエステル(25)の合成
【化56】

【0176】
無水MeOH (1ml)中の化合物(12) (37mg, 0.066mmol)に、100μLの1MシクロヘキサノンのMeOH溶液と1滴の酢酸とを加えた。反応混合物をr. t.にて3時間撹拌した。シアノ水素化ホウ素ナトリウム(10.3mg, 0.165mmol)を加え、反応物をr. t.にて4時間撹拌したまま放置した後に、真空下で濃縮した。分取HPLCによる精製により、表題化合物(25)を2-TFA塩として得た。 m/z 638 [M+H]+. 1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ: 8.72 (1H, d, J = 6.8 Hz), 8.02-7.98 (4H, m), 7.93 (1H, s), 7.67 (1H, s), 7.66-7.53 (3H, m), 7.42 (2H, m), 6.99 (1H, d, J = 6.8 Hz), 5.38 (1H, m), 4.49 (3H, m), 4.14 (3H, s), 3.27 (11H, m), 2.66 (2H, m), 2.20 (2H, m), 12.05-1.46 (16H, m).
【0177】
実施例3
この実施例は、既知のP38キナーゼ阻害剤である6-アミノ-5-(2,4-ジフルオロ-ベンゾイル)-1-(2,6-ジフルオロ-フェニル)-1H-ピリジン-2-オン(化合物3258)の、その結合形式を妨げない点でのアミノ酸エステルモチーフの連結による修飾について記載する。
化合物(15):6-アミノ-5-(2,4-ジフルオロ-ベンゾイル)-1-(2,6-ジフルオロ-フェニル)-1H-ピリジン-2-オン
【化57】

【0178】
化合物(15)は、WO03/076405に記載されるようにして製造した。
化合物(15)に基づく化合物は、以下に概説する方法により製造した。
化合物(16)及び(17)は、以下のスキームに記載する方法により製造した。
【化58】

【0179】
段階1 - シクロペンチル (S)-4-[4-[6-アミノ-5-(2,4-ジフルオロベンゾイル)-2-オキソ-2H-ピリジン-1-イル]-3,5-ジフルオロフェノキシ]-2-tert-ブトキシカルボニルアミノブチレートの合成
【化59】

【0180】
6-アミノ-5-(2,4-ジフルオロベンゾイル)-1-(2,6-ジフルオロ-4-ヒドロキシ-フェニル)-1H-ピリジン-2-オン[WO03/076405に記載の方法により製造] (100mg, 0.265mmol)及びK2CO3のDMF (1.5 ml)中の撹拌混合物に、(L)-5-ブロモ-2-tert-ブトキシカルボニルアミノペンタン酸 シクロペンチルエステル(96mg, 0.265 mmol)を加えた。反応混合物を、60℃にて2時間撹拌した。反応混合物をEtOAc (15ml)で希釈し、NaHCO3飽和水溶液(3ml)及び水(10ml)で洗浄した。EtOAc層を乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し、濃縮乾燥させた。フラッシュクロマトグラフィーによる精製により(20% EtOAc / ヘプタン)、表題化合物を白色固体として得た(50mg, 29%)。 LCMS純度 100%, m/z 648 [M++H], 1H NMR (400 MHz, MeOD), δ: 1.30 (9H, s), 1.40-1.65 (6H, m), 1.70-1.85 (2H, m), 1.95-2.30 (2H, m), 4.00-4.10 (2H, m), 4.15-4.20 (1H, m), 5.05-5.10 (1H, m), 5.65 (1H, d), 6.70-6.80 (2H, m), 6.95-7.05 (2H, m), 7.25-7.45 (2H, m).
【0181】
段階2 -シクロペンチル (S)-2-アミノ-4-[4-[6-アミノ-5-(2,4-ジフルオロベンゾイル)-2-オキソ-2H-ピリジン-1-イル]-3,5-ジフルオロフェノキシ]ブタノエート トリフルオロ酢酸塩(16)の合成
【化60】

【0182】
段階1の生成物(10mg)と20% TFA / DCM (0.5ml)との混合物を、r. t.で3時間放置した。反応混合物をN2を吹き付けることにより濃縮乾燥させた。残渣をEt2O (0.3ml×2)で粉砕して、化合物(16)を白色固体として得た(9.3mg, 91%)。LCMS純度 100%, m/z 548 [M++H],
1H NMR (400 MHz, MeOD), δ: 1.55-1.80 (6H, m), 1.85-2.00 (2H, m), 2.30-2.50 (2H, m), 4.15-4.30 (3H, m), 5.25-5.35 (1H, m), 5.75 (1H, d), 6.85-6.95 (2H, m), 7.05-7.15 (2H, m), 7.40-7.55 (2H, m).
【0183】
段階3 - (S)-2-アミノ-4-[4-[6-アミノ-5-(2,4-ジフルオロベンゾイル)-2-オキソ-2H-ピリジン-1-イル]-3,5-ジフルオロフェノキシ]ブタン酸(17)の合成
【化61】

【0184】
化合物(16) (20mg, 0.0317mmol)の、MeOH (0.3ml)とTHF (0.3ml)との混液中の溶液に、2M NaOH水溶液(0.3ml)を加えた。反応混合物をRTにて3時間放置した。反応の完結において、反応混合物をN2流を吹き付けることにより蒸発乾燥させ、pH 1〜2まで、2M HCl水溶液の滴下により酸性にした。得られた白色固体をろ過により回収した。収率= 9mg, 48%.,
LCMS純度 97%, m/z 480 [M++H], 1H NMR (400 MHz, MeOD), δ: 2.35-2.55 (2H, m, CH2), 4.15-4.20 (1H, m, CH), 4.25-4.35 (2H, m, CH2), 5.75 (1H, d, CH), 6.85-7.00 (2H, m, Ar), 7.05-7.20 (2H, m, Ar), 7.40-7.55 (2H, m, Ar).
【0185】
化合物(18)は、以下のスキームに記載する方法により製造した。
【化62】

【0186】
段階1 - (S)-4-[4-[6-アミノ-5-(2,4-ジフルオロ-ベンゾイル)-2-オキソ-2H-ピリジン-1-イル]-3,5-ジフルオロ-フェノキシ]-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-酪酸 tert-ブチルエステルの合成
【化63】

【0187】
6-アミノ-5-(2,4-ジフルオロベンゾイル)-1-(2,6-ジフルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-1H-ピリジン-2-オン(100mg, 0.26mmol)及び(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-4-ブロモ-酪酸 t-ブチルエステル(108mg, 0.29mmol)のアセトン(2mL)溶液に、ヨウ化ナトリウム(79mg, 0.53mmol)及び炭酸カリウム(146mg, 1.06mmol)を加えた。反応物を還流にて12時間加熱し、冷却し、水(20mL)と酢酸エチル(20mL)に分配した。水層を酢酸エチル(2×10mL)で再抽出し、合わせた有機抽出物を塩水(20mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下に濃縮して、黄色の油を得た。この残渣をカラムクロマトグラフィーに付し[シリカゲル, 40%酢酸エチル-ヘプタン]、所望の生成物(186mg, 79%)を、無色の固体として得た。 m/z 670 [M+H].
【0188】
段階2 - (S)-2-アミノ-4-[4-[6-アミノ-5-(2,4-ジフルオロ-ベンゾイル)-2-オキソ-2H-ピリジン-1-イル]-3,5-ジフルオロ-フェノキシ]-酪酸 tert-ブチルエステルの合成
【化64】

【0189】
(S)-4-[4-[6-アミノ-5-(2,4-ジフルオロ-ベンゾイル)-2-オキソ-2H-ピリジン-1-イル]-3,5-ジフルオロ-フェノキシ]-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-酪酸 tert-ブチルエステル(140mg, 0.2mmol)を、10%水酸化パラジウムカーボン(20mg)を含む酢酸エチル(15mL)に溶解し、水素雰囲気下(1atm)に1時間撹拌した。反応混合物をN2でパージし、セライト(登録商標)を通してろ過し、さらに酢酸エチルで洗浄した。ろ過物を減圧下に濃縮して固体を得て、これをカラムクロマトグラフィーに付した[シリカゲル: ジクロロメタン中の5%MeOH]。これにより、所望の生成物(60mg, 54%)を灰色の固体として得た: LCMS純度 98%,
m/z 536 [M+H]+, 1H NMR (300 MHz, CDCl3) 7.65-7.44 (1H, m), 7.39-7.29 (2H, m), 6.96-6.82 (2H, m), 6.66 (2H, br d, J=8.1 Hz), 5.82 (1H, d, J=9.9 Hz), 4.20-4.07 (3H, m), 3.48 (1H, dd, J=4.8, 8.7 Hz), 2.22-2.15 (1H, m), 1.91-1.84 (1H, m), 1.62
(2H, br s), 1.43 (9H, s).
【0190】
実施例4
この実施例は、既知のDHFR阻害剤である5-メチル-6-((3,4,5-トリメトキシフェニルアミノ)メチル)ピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4-ジアミン(化合物(2 G=N))の、その結合形式を妨げない点でのアミノ酸エステルモチーフの連結による修飾について記載する。
化合物(2 G=N):5-メチル-6-((3,4,5-トリメトキシフェニルアミノ)メチル)ピリド[2,3-d]ピリミジン-2,4-ジアミン
【化65】

【0191】
化合物(2 G=N)は、J.Med.Chem. 1993, 36, 3437〜3443に記載される方法の変法により製造した。
酢酸(20ml)中の2,4-ジアミノ-5-メチルピリド[2,3-d]ピリミジン-6-カルボニトリル (0.10g, 0.5mmol)、3,4,5-トリメトキシアニリン(0.10g, 0.55mmol)及びラネーニッケル(0.7g, 湿潤)を、r. t.にて水素雰囲気下に撹拌した。2時間後に、反応混合物をセライトを通してろ過し、溶媒を減圧下に蒸発させた。粗残渣を逆相HPLCにより精製して、化合物(2 G=N)を固体として得た(22mg, 16%)。 LCMS純度 94%, m/z 371.1 [M+H]+, 1H NMR (400 MHz, DMSO), δ: 8.5 (1H, s), 7.0 (2H, bs), 6.2 (2H, bs), 6.0 (2H, s), 5.7 (1H, m), 4.2 (2H, d), 3.7 (6H, s), 3.5 (3H, s), 2.7 (3H, s).
【0192】
化合物(2 G=N)に基づく化合物は、以下に概説する方法により製造した。
化合物(6)及び(19)は、以下のスキームに記載する方法により製造した。
【化66】

【0193】
段階1 - (S)-シクロペンチル4-メチル-2-(4-ニトロベンズアミド)ペンタノエートの合成
【化67】

【0194】
DCM (2ml)中の4-ニトロ塩化ベンゾイル(0.60g, 3.9mmol)を、(S)-シクロペンチル2-アミノ-4-メチルペンタノエート(0.70g, 3.5 mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(0.94m
l, 5.3mmol)のDCM (10ml)溶液に、-5℃にて窒素雰囲気下に10分かけて滴下した。添加の完了後、反応混合物をr. t.まで温め、さらに30分間撹拌した。反応混合物をNaHCO3飽和水溶液に注ぎ、水層をDCMで抽出した。有機抽出物を合わせ、塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧下に蒸発させて、表題化合物を量的収率の油状の固体として得た。 LCMS純度 92%, m/z 347.1 [M+H]+.
【0195】
段階2 - (S)-シクロペンチル 2-(4-アミノベンズアミド)-4-メチルペンタノエートの合成
【化68】

【0196】
トリエチルアミン(1.09g, 10.8mmol)及びギ酸(0.50g, 10.8mmol)をEtOH (10ml)に溶解し、段階1の生成物(1.2g, 3.4mmol)のEtOH (10ml)溶液に加えた。10% Pd/C (約10 mol%)を加え、混合物を還流まで加熱した。1時間後に、熱い反応混合物を、セライトを通してろ過し、残渣をMeOHで洗浄した。ろ過物及び洗浄液を合わせ、蒸発させ、残渣をDCM及びNaHCO3飽和水溶液に分配した。有機層を塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧下に蒸発させて、表題化合物を白色固体として得た(0.80g, 73%)。 LCMS純度 97%, m/z 319.2 [M+H]+, 1H NMR (400 MHz, CDCl3), δ: 7.6 (2H, dd), 6.6 (2H, dd), 5.2 (1H, m), 6.4 (1H, d) 4.7 (1H, m), 4.0 (2H, s), 1.9 (2H, m), 1.7 (5H, m), 1.6 (4H, m), 0.9 (6H, dd).
【0197】
段階3 - (S)-2-[4-[(2,4-ジアミノ-5-メチル-ピリド[2,3-d]ピリミジン-6-イルメチル)-アミノ]-ベンゾイルアミノ]-4-メチル-ペンタン酸 シクロペンチル エステル(6)の合成
【化69】

【0198】
酢酸(40ml)中の2,4-ジアミノ-5-メチルピリド[2,3-d]ピリミジン-6-カルボニトリル(0.47g, 2.4mmol)、段階2の生成物(300mg, 0.94mmol)及びラネーニッケル(1g, damp)を、水素雰囲気下にr. t.にて撹拌した。48時間後に、反応混合物を、セライトを通してろ過し、溶媒を減圧下に蒸発させた。物質をMeOH中でSCXカラムに装填し、1%アンモニアのMeOH溶液で溶出した。粗生成物をシリカに吸着させ、カラムクロマトグラフィーにより精製して(10% MeOH/DCM)、化合物(6) (60mg,13%)を得た。 LCMS純度 95 %, m/z 506.1 [M+H]+, 1H NMR (400 MHz, DMSO), δ: 8.5 (1H, s), 8.2 (1H, d), 7.7 (2H, d), 7.0 (2H, bs), 6.7 (2H, d), 6.5 (1H, m), 6.2 (2H, bs), 5.1 (1H, m), 4.4 (1H, m), 4.3 (2H, d), 2.7 (3H, s), 1.7 (11H, m), 0.9 (6H, dd).
【0199】
段階4 - (S)-2-(4-((2,4-ジアミノ-5-メチルピリド[2,3-d]ピリミジン-6-イル)メチルアミノ)ベンズアミド)-4-メチルペンタン酸 (19)の合成
【化70】

【0200】
段階3の生成物(39μM)を、EtOH (1.0ml)に懸濁した。1M水酸化リチウム溶液(156μl)をこれに加え、懸濁液を48時間撹拌した。その後、EtOHを減圧下に除去し、残渣を水で希釈し、希酢酸を用いてpH 4にした。溶液をDCMで洗浄し、蒸発させ、SCX精製に付して、化合物(19)を得た。 LCMS純度 92%, m/z 438 [M+H]+; 1H NMR (400 MHz, DMSO) δ: 8.5 (1H,
s), 8.1 (1H, d), 7.7 (2H, d), 7.2 (2H, br s), 6.7 (2H, d), 6.5 (1H, t), 6.4 (2H, br s), 4.4 (1H, m), 4.3 (2H, d), 2.7 (3H, s), 1.8 − 1.6 (2H, m), 1.6 − 1.5 (1H, m), 0.9 (6H, dd).
【0201】
化合物(5)及び対応する酸は、以下のスキームに記載する方法により製造した。
【化71】

【0202】
段階1 - (S)-シクロペンチル 4-メチル-2-(4-ニトロベンジルアミノ)ペンタノエートの合成
【化72】

【0203】
(S)-シクロペンチル 2-アミノ-4-メチルペンタノエート(2.00g, 10.0mmol)及び4-ニトロベンズアルデヒド(3.04g, 20.0mmol)のDCM (40ml)溶液に、氷酢酸(2滴)を加えた。溶液をr. t.にて1時間撹拌し、その間にナトリウムトリアセトキシボロハイドライド(6.40g, 30.2mmol)を一度に加えた。3時間撹拌した後に、溶液を1M HCl水溶液に注ぎ、30分撹拌し
、1M NaOH水溶液で中和し、DCMで抽出した。合わせた有機物を水及び塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧下に蒸発させた。粗物質をクロマトグラフィーにより精製して(5% EtOAc / イソヘキサン)、表題化合物を油として得た(1.51g)。これを、さらなる精製を行わずに次の工程で用いた。 LCMS純度 71%, m/z 335.1 [M-H]+.
【0204】
段階2 - (S)-2-(4-アミノ-ベンジルアミノ)-4-メチル-ペンタン酸 シクロペンチルエステルの合成
【化73】

【0205】
段階1の生成物(0.90g, 2.7mmol)をEtOH (5ml)に溶解し、ラネーニッケル(約0.5g)及びヒドラジン一水和物(0.38ml, 8.1mmol)のEtOH (5ml)中の懸濁液に加えた。還流下で1時間撹拌した後に、熱い反応混合物をセライトを通してろ過し、残渣をMeOHで洗浄した。ろ過物及び洗浄液を合わせ、蒸発させ、残渣をDCM及び炭酸水素ナトリウム飽和水溶液に分配した。有機層を塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧下に蒸発させた。粗物質をクロマトグラフィーにより精製して(20% EtOAc / イソヘキサン)、表題化合物を油として得た(0.50g, 61%)。 LCMS純度 99%, m/z 305.2 [M+H]+, 1H NMR (400 MHz, CDCl3), δ: 7.1 (2H, d), 6.6 (2H, d), 5.2 (1H, m), 3.7 (1H, d), 3.5 (1H, d), 3.2 (1H, t), 1.9 (2H, m), 1.7 (5H, m), 1.6 (4H, m), 0.9 (6H, dd).
【0206】
段階3 - (S)-2-[4-[(2,4-ジアミノ-5-メチル-ピリド[2,3-d]ピリミジン-6-イルメチル)-アミノ]-ベンジルアミノ]-4-メチル-ペンタン酸 シクロペンチル エステル(5)の合成
【化74】

【0207】
酢酸(10ml)中の2,4-ジアミノ-5-メチルピリド[2,3-d]ピリミジン-6-カルボニトリル(0.16g, 0.83mmol)、段階2の生成物(100mg, 0.33mmol)及びラネーニッケル (1g, 湿潤)を、水素雰囲気下でr. t.にて撹拌した。5時間後に、反応混合物をセライトを通してろ過し、溶媒を減圧下に蒸発させた。物質をMeOH中でSCXカラムに装填し、1%アンモニアのMeOH溶液で溶出した。次いで、粗生成物をシリカに吸着させ、カラムクロマトグラフィーにより精製して(10% MeOH/DCM)、表題化合物(5)を得た(30mg, 19%)。 LCMS純度 95 %, m/z 492.1 [M+H]+, 1H NMR (400 MHz, DMSO), δ: 8.5 (1H, s), 7.2 (2H, bs), 7.0 (2H, d), 6.6 (2H, d), 6.2 (2H, bs), 5.8 (1H, m), 5.1 (1H, m), 4.2 (2H, s), 3.6 (1H, m), 3.4 (1H, m), 3.1 (1H, m), 2.7 (3H, s), 1.5 (11H, m), 0.8 (6H, dd).
【0208】
段階4 - (S)-2-[4-[(2,4-ジアミノ-5-メチル-ピリド[2,3-d]ピリミジン-6-イルメチル)-アミノ]-ベンジルアミノ]-4-メチル-ペンタン酸の合成
【化75】

【0209】
段階3の生成物(39μM)を、EtOH (1.0ml)に懸濁した。1M水酸化リチウム(156μl)溶液をこれに加え、懸濁物を48時間撹拌した。その後、EtOHを減圧下に除去し、残渣を水で希釈し、希酢酸を用いてpH 4にした。溶液をDCMで洗浄し、蒸発させ、SCX精製に付して、表題化合物を得た。 LCMS : 95%純度 Rt 0.52及び1.91分において, m/z (ES+) 424 [M+H]+; 1H NMR (400 MHz, DMSO) δ: 8.5 (1H, s), 7.1 (2H, d), 7.0 (2H, br s), 6.6 (2H, d),
6.2 (2H, br s), 5.7 (1H, t), 4.3 (2H, d), 3.6 (1H, m), 3.3 (2H, 水により不明瞭), 2.7 (3H, s), 1.8 (1H, m), 1.3 (1H, m), 1.2 (1H, m).
【0210】
化合物(3)は、以下のスキームに記載の方法により製造した。
【化76】

【0211】
段階1 - (S)-シクロペンチル-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-4-(4-ニトロフェノキシ)ブタノエートの合成
【化77】

【0212】
4-ニトロフェノール(2.18g, 15.7mmol)のテトラヒドロフラン (100ml)溶液に、0℃にて、窒素の下で水素化ナトリウム(0.63g, 15.7mmol)を加えた。r. t.まで温めて10分間撹拌した後に、(S)-シクロペンチル-4-ブロモ-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)ブタノエート(5.0g, 14.3mmol)のDMF (20ml)溶液を加えた。反応物を60℃に10時間加熱し、その後、反応物をr. t.に冷却して、エーテル/炭酸ナトリウムに注いだ。有機層を回収し、2M 炭酸ナトリウム水溶液、1M HCl及び塩水で洗浄した後に、MgSO4で乾燥させ、減圧下に濃縮して油を得たが、これは放置すると固化して、表題化合物となった(4.0g, 69%)。 LCMS純度 97%, m/z 407.1 [M+H]+, 1H NMR (400 MHz, CDCl3), δ: 8.2 (2H, d), 7.4 (1H, d), 7.1 (2H, d), 5.1 (1H, m), 4.1 (3H, m), 2.1 (2H, m), 1.8 (2H, m), 1.6 (6H, m), 1.4 (9H, s).
【0213】
段階2 - (S)-シクロペンチル-4-(4-アミノフェノキシ)-2-(tertブトキシカルボニルアミノ)ブタノエートの合成
【化78】

【0214】
トリエチルアミン(0.77ml, 5.2 mmol)及びギ酸(0.19ml, 5.2 mmol)をEtOH (4ml)に溶解し、段階1の生成物(0.7g, 1.7mmol)のEtOH (4ml)溶液に加えた。10% Pd/C (約10 mol%)を加え、混合物を還流まで加熱した。2時間後に、熱い反応混合物をセライトを通してろ過し、残渣をMeOHで洗浄した。ろ過物及び洗浄物を合わせて蒸発させ、残渣をDCM及び炭酸水素ナトリウム飽和水溶液に分配した。有機層を塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧下に濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製して(勾配溶出, ヘキサン中の10〜40% EtOAc)、表題化合物を得た(0.3g, 46%)。 LCMS純度 93%, m/z 379.1 [M+H]+, 1H NMR (400 MHz, CDCl3), δ: 6.9 (2H, d), 6.8 (2H, d), 5.3 (2H, m), 4.4 (1H, m) 4.0 (2H, m), 2.3 (1H, m), 2.2 (1H, m), 1.9 (2H, m), 1.7 (4H, m), 1.6 (2H, m), 1.4 (9H, s).
【0215】
段階3 - (S)-シクロペンチル-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-4-(4-((2,4-ジアミノ-5-メチルピリド[2,3-d]ピリミジン-6-イル)メチルアミノ)フェノキシ)ブタノエートの合成
【化79】

【0216】
酢酸(40ml)中の2,4-ジアミノ-5-メチルピリド[2,3-d]ピリミジン-6-カルボニトリル(0.50g, 2.5mmol)、段階2の生成物(0.38g, 1.0mmol)及びラネーニッケル(3g, 湿潤)を、r. t.にて、水素雰囲気下に撹拌した。16時間後に反応混合物をセライトを通してろ過し、溶媒を減圧下に蒸発させた。物質をMeOH中でSCXカラムに装填し、1%アンモニアのMeOH溶液で溶出した。次いで、粗生成物をシリカに吸着させ、カラムクロマトグラフィーにより精製して(5% MeOH/DCM)、表題化合物を得た(145mg, 26%)。 LCMS純度 95 %, m/z 566.2 [M+H]+, 1H NMR (400 MHz, DMSO), δ: 8.5 (1H, s), 7.3 (2H, m), 7.0 (2H, m), 6.7 (2H, d), 6.6 (2H, d), 6.2 (2H, bs), 5.5 (1H, bs), 5.1 (1H, m), 4.1 (3H, m), 3.9 (2H, m), 2.6 (3H, s), 2.0 (1H, m), 1.8 (3H, m), 1.6 (6H, m), 1.4 (9H, s).
【0217】
段階4 - (S)-2-アミノ-4-[4-[(2,4-ジアミノ-5-メチル-ピリド[2,3-d]ピリミジン-6-イルメチル)-アミノ]-フェノキシ]-酪酸 シクロペンチルエステル(3)の合成
【化80】

【0218】
段階3の生成物(145mg, 0.26mmol)のDCM (3ml)溶液に、トリフルオロ酢酸(3ml)を加え、反応物をr. t.にて30分間撹拌した。溶媒を減圧下に蒸発させ、粗残渣をMeOH中でSCXカラムに装填し、1%アンモニアのMeOH溶液で溶出することにより精製して、化合物(3)を得た(39mg, 33%)。 LCMS純度 94 %, m/z 466.1 [M+H]+, 1H NMR (400 MHz, DMSO), δ: 8.5 (1H, s), 7.0 (2H, bs), 6.7 (2H, d), 6.6 (2H, d), 6.2 (2H, bs), 5.5 (1H, bs), 5.1 (1H, m), 4.1 (2H, s), 3.9 (2H, m), 3.4 (1H, m), 2.7 (3H, s), 2.0 (2H, m), 1.8 (3H, m), 1.6 (6H, m).
【0219】
化合物(4)は、以下のスキームに記載する方法により製造した。
【化81】

【0220】
段階1は、化合物(3)について記載したものと同じである。
段階2 - (S)-シクロペンチル 2-アミノ-4-(4-ニトロフェノキシ)ブタノエートの合成
【化82】

【0221】
段階1の生成物(4.0g, 9.8mmol)のDCM (12ml)溶液に、トリフルオロ酢酸(12ml)を加えた。r. t.にて1時間撹拌した後に、反応物をDCMで希釈し、氷中で冷却し、アンモニア水の添加により中和した。有機層を回収し、水、炭酸水素ナトリウム水溶液及び塩水で洗浄し、次いでMgSO4で乾燥させ、減圧下に濃縮して、表題化合物を黄色の油として得た(3.0g, 100%)。 LCMS純度 97%, m/z 309.1 [M+H]+, 1H NMR (400 MHz, CDCl3), δ: 8.2 (2H, d), 7.0 (2H, d), 5.2 (1H, m), 4.2 (2H, m), 3.6 (1H, dd), 1.7-1.5 (10H, m).
【0222】
段階3 - (S)-シクロペンチル 2-(シクロヘキシルアミノ)-4-(4-ニトロフェノキシ)ブタノエートの合成
【化83】

【0223】
段階2の生成物(1.0g, 3.3mmol)及びシクロヘキサノン(0.34ml, 3.3mmol)を入れたフラスコに、窒素の下で、無水MeOH (10ml)を加えた。r. t.にて12時間撹拌した後に、ナトリウムトリアセトキシボロハイドライド(2.07g, 9.75mmol)を加えた。4時間後に、反応物をDCM / HCl水溶液(1M)の混液にゆっくりと注いだ。10分間撹拌した後に、有機層を回収し、炭酸水素ナトリウム及び塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧下に濃縮して、表題化合物を黄色の油状固体として得た(1.21g, 95%)。 LCMS純度 92%, m/z 391.1 [M+H]+.
【0224】
段階4 - (S)-シクロペンチル 4-(4-アミノフェノキシ)-2-(シクロヘキシルアミノ)ブタノエートの合成
【化84】

【0225】
トリエチルアミン(1.29ml, 9.3mmol)及びギ酸(348μl, 9.3mmol)をEtOH (10ml)に溶解し、段階3の生成物(1.2g, 3.1mmol)のEtOH (10ml)溶液に加えた。10% Pd/C (約10 mol%)を加え、混合物を還流まで加熱した。30分後に、熱い反応混合物を、セライトを通してろ過し、残渣をMeOHで洗浄した。ろ過物及び洗浄物を合わせて蒸発させ、残渣をDCM及びNaHCO3飽和水溶液に分配した。有機層を塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧下に濃縮して、表題化合物を得た(1.01g, 92%)。 LCMS純度 94%, m/z 361.1 [M+H]+, 1H NMR (400 MHz, CDCl3), δ: 6.7 (2H, d), 6.6 (2H, d), 5.2 (1H, m), 4.0 (1H, m), 3.9 (1H, m), 3.5 (1H, dd), 2.3 (1H, m), 2.1 (1H, m), 1.9 (4H, m), 1.7 (7H, m), 1.6 (3H, m), 1.3-0.9 (5H, m).
【0226】
段階5 - (S)-2-シクロヘキシルアミノ-4-[4-[(2,4-ジアミノ-5-メチル-ピリド[2,3-d]ピリミジン-6-イルメチル)-アミノ]-フェノキシ]-酪酸 シクロペンチルエステル(4)の合成
【化85】

【0227】
酢酸(40ml)中の2,4-ジアミノ-5-メチルピリド[2,3-d]ピリミジン-6-カルボニトリル(0.50g, 2.5mmol)、段階4の生成物(0.36g, 1.0mmol)及びラネーニッケル(3g, 湿潤)を、水素雰囲気下にr. t.にて撹拌した。48時間後に、反応混合物をセライトを通してろ過し、溶媒を減圧下に蒸発させた。物質を、MeOH中でSCXカラムに装填し、1%アンモニアのMeOH溶液で溶出させた。粗生成物をシリカに吸着させ、カラムクロマトグラフィーにより精製して(10% MeOH/DCM)、表題化合物を得た(76 mg, 14%)。 LCMS純度 90 %, m/z 548.2 [M+H]+, 1H NMR (400 MHz, DMSO), δ: 8.5 (1H, s), 7.0 (2H, bs), 6.7 (2H, d), 6.6 (2H, d), 6.2 (2H, bs), 5.5 (1H, m), 5.1 (1H, m), 4.1 (2H, s), 3.9 (2H, m), 3.4 (1H, m), 2.7 (3H, s), 2.3 (1H, m), 1.9 (1H, m), 1.8 (4H, m), 1.6 (11H, m), 1.1 (5H, m).
【0228】
実施例5
この実施例は、既知のPI3キナーゼ阻害剤であるN-[5-(4-クロロ-3-メタンスルホニル-フェニル)-4-メチル-チアゾール-2-イル]-アセトアミド(化合物(20))の、その結合形式を妨げない点でのアミノ酸エステルモチーフの連結による修飾について記載する。
化合物(20):N-[5-(4-クロロ-3-メタンスルホニル-フェニル)-4-メチル-チアゾール-2-イル]-アセトアミド
【化86】

【0229】
化合物(20)は、WO03072552に記載されるようにして製造した。
化合物(20)に基づく化合物は、以下に概説する方法により製造した。
化合物(21)及び(22)は、以下のスキームに記載する方法により製造した。
【化87】

【0230】
段階1 - 2-クロロ-5-(2-オキソ-プロピル)-ベンゼンスルホニルクロリドの合成
【化88】

【0231】
4-クロロフェニルアセトン(4g, 0.023mol)を、クロロスルホン酸(30ml, 0.45mol)に、-10℃にてN2の下で穏やかに撹拌しながら滴下した。反応混合物をr. t.まで温め、撹拌を18時間継続した。反応混合物を、砕いた氷(500ml)の滴下により注意深くクエンチした。水溶液をEtOAc (3×250ml)で抽出した。EtOAc層を合わせ、乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し、真空で濃縮乾燥して、粗表題化合物を得て(6.3g, 65%)、これをさらなる精製を行わずに次の工程で用いた。 LCMS純度 92%. 1H NMR (400 MHz, CDCl3), δ: 2.30 (3H, s), 3.85 (2H, s), 7.50 (1H, d), 7.65 (1H, d), 7.95 (1H, s).
【0232】
段階2 - 1-(4-クロロ-3-メタンスルホニル-フェニル)-プロパン-2-オンの合成
【化89】

【0233】
Na2SO3 (3.79g, 0.030mol)及びNaHCO3 (2.53g, 0.030mol)の水(90ml)中の混合物を、70℃にて撹拌した。この溶液に、段階1の生成物(4.65g, 0.015mol)のジオキサン(190ml)溶液を加えた。撹拌を70℃にて1時間継続した。r. t.まで冷却すると、反応混合物を真空で濃縮乾燥させ、茶色の固体を得た。DMF (190ml)、続いてMeI (1.88ml, 0.030mol)を加えた。反応混合物を40℃にて1時間撹拌した。完結した後に反応混合物を水(90ml)に注ぎ、EtOAc (500ml)で抽出した。EtOAcを乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し、真空濃縮して、表題化合物を茶色の固体として得て(2.49g, 67%)、これを、さらなる精製を行わずに次の工程で用いた。 LCMS純度 81%, m/z 247 [M++H]; 1H NMR (400 MHz, CDCl3), δ: 2.15 (3H, s), 3.20 (3H, s), 3.75 (2H, s), 7.35 (1H, d), 7.45 (1H, d), 7.85 (1H, s).
【0234】
段階3 - 1-ブロモ-1-(4-クロロ-3-メタンスルホニル-フェニル)-プロパン-2-オンの合成
【化90】

【0235】
段階2の生成物(1.88g, 7.60mmol)の1,4-ジオキサン(120ml)中の撹拌溶液に、臭素(0.292ml, 5.72mmol)をr. t.にて滴下して、濃いオレンジ色の溶液を得た。撹拌を18時間継続した。反応混合物を、蒸発の間に30℃を超えないようにして真空で蒸発乾燥させた。残渣をEtOAc (100ml)に再溶解し、NaHCO3飽和水溶液(20ml)、続いて水(20ml)で洗浄した。EtOAc層を乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し、真空濃縮させた。フラッシュクロマトグラフィーによる精製により(50% EtOAc / ヘプタン)、表題化合物を黄色の油として得た(2.0g, 80%)。 LCMS純度 74%, m/z 325/327 [M++H]; 1H NMR (400 MHz, CDCl3), δ: 2.35 (3H, s), 3.25 (3H, s), 5.35 (1H, s), 7.50 (1H, d), 7.65 (1H, dd), 8.05 (1H, s).
【0236】
段階4 - 5-(4-クロロ-3-メタンスルホニル-フェニル)-4-メチル-チアゾール-2-イルアミンの合成
【化91】

【0237】
段階3の生成物(2g, 6.15mmol)及びチオ尿素(468mg, 6.15mmol)のEtOH (65ml)中の混合物を、70℃にて1.5時間撹拌した。反応物をr. t.に冷却し、沈殿が発生した。クリーム状の固体をろ過により回収して、表題化合物を得た(1.2g, 64%)。 LCMS純度 91%, m/z 303 [M++H], 1H NMR (400 MHz, MeOD), δ: 2.35 (3H, s), 3.35 (3H, s), 7.75-7.85 (2H, m), 8.15 (1H, s).
【0238】
段階5 - (S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-4-[5-(4-クロロ-3-メタンスルホニル-フェニル)-4-メチル-チアゾール-2-イルカルバモイル]-酪酸 シクロペンチルエステルの合成
【化92】

【0239】
2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ペンタンジオン酸 1-シクロペンチルエステル(208mg, 0.66mmol)、EDCI (190mg, 0.99mmol)及びHOBt (107mg, 0.79mmol)のDMF (1.5ml)中の撹拌混合物に、段階4の生成物(200mg, 0.66mmol)のDMF (1.5ml)溶液をr. t.にて滴下した。トリエチルアミン(0.138ml,0.99mmol)を加え、撹拌を18時間継続した。反応混合物を水(10ml)で希釈し、EtOAc (15ml)で抽出した。EtOAc層を水(10ml)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し、真空濃縮させた。分取TLCによる精製により(70% EtOAc/ ヘプタン, Rf 0.5)、表題化合物を得た(160mg, 40%)。 LCMS純度 91%, m/z 600/602 [M++H], 1H NMR (400 MHz, DMSO), δ: 1.45-1.55 (9H, s), 1.65-2.15 (10H, m), 2.45 (3H, s), 2.70 (2H, m), 3.45 (3H, s), 4.10-4.25 (1H, m), 5.25 (1H, m), 7.75-7.90 (2H, m), 8.25 (1H, s).
【0240】
段階6 - (S)-2-アミノ-4-[5-(4-クロロ-3-メタンスルホニル-フェニル)-4-メチル-チアゾール-2-イルカルバモイル]-酪酸 シクロペンチルエステル(21)の合成
【化93】

【0241】
段階5の生成物(140mg, 0.233mmol)の20% TFA / DCM (2ml)溶液を、r. t.にて3時間放置した。完了の後に、反応混合物を真空濃縮して、化合物(21)を得た(143mg, 100%)。 LCMS純度 97%, m/z 500/502 [M++H], 1H NMR (400 MHz, MeOD), δ: 1.35-1.85 (8H, m), 2.00-2.20 (2H, m), 2.25 (3H, s), 2.60 (2H, m), 3.20 (3H, s), 3.85-4.00 (1H, m), 5.10 (1H, m), 7.50-7.65 (2H, m), 7.95 (1H, s).
【0242】
段階7 - (S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-4-[5-(4-クロロ-3-メタンスルホニル-フェニル)-4-メチル-チアゾール-2-イルカルバモイル]-酪酸の合成
【化94】

【0243】
段階5の生成物(20mg, 0.033mmol)の、THF (0.5ml)及びMeOH (0.5ml)の混液中の溶液に、2M NaOH水溶液(0.5ml)を加えた。混合物をr. t.にて3時間放置した。完了すると、反応混合物を濃縮してほぼ乾燥させ、1M HClをpH 1〜2まで滴下した。得られた沈殿物を、わずかな圧力の下でのろ過により回収した。固体を水(0.5ml)で洗浄し、真空で充分に乾燥させて、表題化合物を得た(12mg, 68%)。 LCMS純度 94%, m/z 532/534 [M++H], 1H NMR (400 MHz, CDCl3), δ: 1.55-1.70 (9H, s), 2.15-2.55 (2H, m), 2.60 (3H, s), 2.75-2.90 (2H, m), 3.55 (3H, s), 4.25-4.45 (1H, m), 7.85-8.00 (2H, m), 8.35 (1H, s).
【0244】
段階8 - (S)-2-アミノ-4-[5-(4-クロロ-3-メタンスルホニル-フェニル)-4-メチル-チアゾール-2-イルカルバモイル]-酪酸 (22)の合成
【化95】

【0245】
段階7の生成物(12mg, 0.0225mmol)の20% TFA / DCM (0.3ml)溶液を、r. t.にて3時間放置した。完了の後に、反応混合物を真空濃縮して、表題化合物(22)を得た(12mg, 100%)。
LCMS純度 94%, m/z 432/434 [M++H], 1H NMR (400 MHz, MeOD), δ: 2.10-2.25 (2H, m), 2.30 (3H, s), 2.65-2.75 (2H, m), 3.25 (3H, s), 3.95-4.05 (1H, m), 7.60-7.80 (2H, m), 8.05 (1H, s).
【0246】
化合物(23)は、以下のスキームに記載する方法により製造した。
【化96】

【0247】
段階1、2、3及び4は、化合物(21)及び(22)の製造について記載したことと同じである。段階5 - (S)-2-アミノ-4-[5-(4-クロロ-3-メタンスルホニル-フェニル)-4-メチル-チアゾール-2-イルカルバモイル]-酪酸 tert-ブチルエステルの合成
【化97】

【0248】
この化合物は、2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ペンタンジオン酸 1-tert-ブチルエステル及び5-(4-クロロ-3-メタンスルホニル-フェニル)-4-メチル-チアゾール-2-イルア
ミン(段階4の生成物)から、化合物(21)の合成について記載した手順に従って製造した。
【0249】
段階6 - (S)-2-アミノ-4-[5-(4-クロロ-3-メタンスルホニル-フェニル)-4-メチル-チアゾール-2-イルカルバモイル]-酪酸 tert-ブチル エステル(23)の合成
【化98】

【0250】
段階5の生成物(50mg, 0.085mmol)のEtOAc (0.25ml)溶液に、2M HCl / エーテル溶液(0.25ml)を、r. t.にて加えた。反応混合物を4時間激しく撹拌した。反応物を、EtOAc (0.25ml)と2M HCl / エーテル (0.25ml)の混液で再び処理した。撹拌を1時間継続した。形成された沈殿物を重力の下でのろ過により回収し、EtOAc (3ml)及びNaHCO3飽和水溶液(0.5ml)に分配した。EtOAc層を水(1ml)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、ろ過し、真空濃縮して、化合物(23)を得た(6.5mg, 16%)。 LCMS純度 95%, m/z 488/490 [M++H], 1H NMR (400 MHz, MeOD), δ: 1.35-1.40 (9H, s), 1.80-2.05 (2H, m), 2.30 (3H, s), 2.45-2.55 (2H, m), 3.25 (3H, s), 3.30-3.35 (1H, m), 7.60-7.70 (2H, m), 8.05 (1H, s).
【0251】
生物学的アッセイ
ヒストン脱アセチル化酵素阻害活性アッセイ
化合物がヒストン脱アセチル化酵素の活性を阻害する能力を、Biomolから市販で入手可能なHDAC蛍光活性アッセイを用いて測定した。簡単に、イプシロンアミノがアセチル化されたリジンであるFluor de LysTM基質を、ヒストン脱アセチル化酵素活性の源(HeLa細胞核抽出物)と、阻害剤の存在下又は非存在下でインキュベートする。基質の脱アセチル化は、基質をFluor de LysTMデベロッパーに高感度化し、これが蛍光体を生じる。よって、基質をHDAC活性の源とインキュベートすることにより、シグナルが増加し、これはHDAC阻害剤の存在下では低減される。
【0252】
データは、以下のように、全てのサンプルからバックグラウンドシグナルを減じて、阻害剤の非存在下で測定したコントロールのパーセンテージとして表す。
%活性 = ((Si − B) / (S0 − B)) × 100
(式中、Siは、基質、酵素及び阻害剤の存在下でのシグナルであり、S0は基質、酵素及び阻害剤を溶解するビヒクルの存在下でのシグナルであり、Bは、酵素の非存在下で測定されたバックグラウンドシグナルである)
【0253】
IC50値は、Graphpad Prismソフトウェアを用いて、8個のデータ点の結果を可変の傾きを有するシグモイドの用量応答の等式に適合させた後に(化合物のlog濃度に対する%活性)、非線形回帰分析により決定した。
【0254】
HeLa細胞由来の核粗抽出物からのヒストン脱アセチル化酵素活性を、スクリーニングに用いた。4C (Seneffe, Belgium)から購入した調製物は、対数増殖期に回収したHeLa細胞から調製した。核抽出物は、Dignam JD1983 Nucl. Acid. Res. 11, 1475〜1489に従って調製し、液体窒素中で素早く凍結させ(snap frozen)、-80℃にて保存した。最終のバッファーの組成は、20 mM Hepes、100 mM KCl、0.2 mM EDTA、0.5 mM DTT、0.2 mM PMSF及び20 % (v/v) グリセロールであった。
【0255】
オーロラキナーゼA阻害活性アッセイ
化合物がオーロラキナーゼA活性を阻害する能力を、マイクロプレートアッセイを用いて測定した。簡単に、96-ウェルFlashplates (登録商標) (PerkinElmer Life Sciences)を、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)で予め被覆した。MBP (PBS中に100 mg/mlを100μl)を37℃にて1時間、続いて4℃にて一晩インキュベートした。次いで、プレートをPBSで洗浄し、風乾させた。
【0256】
オーロラキナーゼAの活性を決定するために、40 ngの酵素(ProQuinase: 組換え, 全長ヒトオーロラキナーゼA, N-末端でGSTに融合し、Sf21昆虫細胞中のバキュロウイルスにより発現される)を、アッセイバッファー(50 mM Tris (pH7.5), 10 mM NaCl, 2.5 mM MgCl2, 1 mM DTT, 0.4 % DMSO)、10μM ATP (酵素のKm)及び0.5μCiの[γ-33P]-ATP中で、種々の濃度の阻害剤とともにインキュベートした。阻害剤を欠くウェルをビヒクルコントロールとして用い、酵素を含まないウェルを「バックグラウンド」シグナルを測定するために用いた。プレートを、30℃にて一晩インキュベートした。インキュベーションの後に、ウェルの内容物を除去し、プレートを10 mMピロリン酸4ナトリウムを含むPBSで3回洗浄した後に、Wallac MicroBeta TriLuxを用いてシンチレーション計測を行った。
【0257】
用量応答曲線を、3重のウェルを用いて、10の濃度(最大の最終濃度10μM、3倍希釈)から作成した。
IC50値は、Xlfitソフトウェアを用いて、データ点の結果を可変の傾きを有するシグモイドの容量応答の等式に適合させた後に(化合物のlog濃度に対する%活性)、非線形回帰分析により決定した。
【0258】
ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)阻害活性アッセイ
化合物がDHFR活性を阻害する能力を、DHFRがジヒドロ葉酸のテトラヒドロ葉酸への可逆性NADPH-依存性還元を触媒する能力に基づくアッセイにおいて、Sigmaキット(カタログ番号CS0340)を用いて測定した。これは、独自開発のアッセイバッファー及び反応当たり7.5×10-4ユニットの組換えヒトDHFR、60μMのNADPH及び50μMのジヒドロ葉酸を用いる、反応は、340 nmでの吸光度の減少を2分間室温にて追跡し、酵素活性は、吸光度の減少の速度として算出した。阻害剤の存在下での酵素活性は、阻害剤フリーの活性のパーセンテージとして表し、阻害剤のIC50は、Xlfitソフトウェアを用いて、シグモイドの用量応答曲線から決定した(化合物のlog濃度に対する%活性)。各サンプルは、3重に試験し、各用量応答曲線は、阻害剤の10の希釈からなる。
【0259】
P38 MAPキナーゼα阻害活性アッセイ
化合物がp38 MAPキナーゼα(N-末端でGSTタグを付加したタンパク質として大腸菌で発現された全長ヒト酵素)活性を阻害する能力を、Upstate (Dundee UK)により行われるアッセイにおいて測定した。25μlの最終反応容量において、p38 MAPキナーゼα(5〜10 mU)を、25 mM Tris pH 7.5、0.02 mM EGTA、0.33 mg/mlミエリン塩基性タンパク質、10 mM酢酸マグネシウム、ATP 90μM (Km 97μM)及び[γ-33P]-ATP (比活性約500 cpm/pmol)とインキュベートした。反応は、MgATPミックスの添加により開始した。室温にて40分間のインキュベーションの後に、反応を、5μlの3 %リン酸溶液の添加により停止した。10μlの反応物を、P30ろ紙にスポットし、75 mMリン酸中に5分間で3回、及びメタノール中で1回洗浄した後に、乾燥させてシンチレーション計測を行った。
【0260】
用量応答曲線を、DMSO中でのストック阻害剤溶液の1/2 log希釈系列から作成した。最高の最終濃度10μMから9段階の希釈を作成し、「化合物なし」のブランクを含めた。サンプルは、二重に試験した。シンチレーション計測からのデータを収集して、Graphpad Prismソフトウェアによるフリーフィット分析に供した。作成した曲線から、50 %阻害を与える濃度を決定した。
【0261】
PI 3-キナーゼγ阻害活性
PI 3-キナーゼγ活性の測定は、GRP1プレクストリンホモロジー(PH)ドメインの、PI 3-キナーゼ活性の産物であるPIP3への特異的かつ高度に親和性のある結合に依存する。複合体は、ユーロピウム標識抗GSTモノクローナル抗体、GSTタグ付加GRP1 PHドメイン、ビオチン標識PIP3及びストレプトアビジンアロフィコシアニン(APC)の間で形成される。この複合体は、安定な時間分割蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)シグナルを生じ、これは、PI 3-キナーゼアッセイにおいて生じるPIP3のビオチン標識PIP3との競合により低減される。
【0262】
Upstate (Dundee, UK)にて行われたアッセイは、次のとおりであった。20μlの最終容量中で、PI 3-キナーゼγ(組換えN-末端His6-タグ付加全長ヒト酵素、Sf21昆虫細胞中でバキュロウイルスにより発現される)を、10μM ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスホスフェート及び100μM MgATPを含むアッセイバッファー中でインキュベートした(酵素のKm 117μM)。反応は、MgATPミックスの添加により開始した。室温にて30分間のインキュベーションの後に、反応を、EDTA及びビオチン標識ホスファチジルイノシトール-3,4,5-トリホスフェートを含む5μlの停止溶液の添加により停止した。最後に、5μlの検出バッファーを加え、これはユーロピウム標識抗GSTモノクローナル抗体、GST-タグ付加GRP1 PHドメイン及びストレプトアビジン-APCを含んでいた。次いで、プレートを時間分解蛍光モードで読み取り、均一時間分解蛍光(HTRF)シグナルを、式HTRF = 10000×(Em665nm/Em620nm)に従って決定した。
【0263】
二重のデータ点を、DMSO中での化合物のストック溶液の1/2 log希釈系列から作成した。最高の最終濃度10μMから9段階の希釈を作成し、「化合物なし」のブランクを含めた。HTRF比のデータを、コントロールの%活性に変換し、4パラメータシグモイド用量応答(可変傾き)アプリケーションを用いて分析した。50 %阻害を与える濃度(IC50)を決定した。
【0264】
細胞増殖阻害アッセイ
対数増殖している癌細胞系統(U937及びHCT 116)を回収し、1000〜2000細胞/ウェル(最終容量100μl)で96ウェル組織培養プレートに播種した。細胞増殖24時間後に、細胞を化合物で処理した。次いで、プレートをさらに72〜96時間、再びインキュベートした後に、WST-1細胞生存アッセイを、供給業者(Roche Applied Science)の指示に従って行った。
【0265】
データは、以下のようにして、阻害剤の非存在下で測定したコントロールのパーセンテージ阻害として表した。
%阻害 = 100−((Si/S0)×100)
(式中、Siは阻害剤の存在下でのシグナルであり、S0はDMSOの存在下でのシグナルである)
用量応答曲線は、6つの重複を用いて、8つの濃度(最高の最終濃度10μM、3倍希釈)から作成した。
IC50値は、Graphpad Prismソフトウェアを用いて、結果を可変の傾きを有するシグモイドの用量応答の等式に適合させた後に(化合物のlog濃度に対する%活性)、非線形回帰分析により決定した。
【0266】
ヒト全血のLPS刺激
全血を、ヘパリン添加ヴァキュテイナー(Becton Dickinson)を用いて静脈穿刺により採取し、等容量のRPMI1640組織培養培地で希釈した。100μlをV底96ウェル組織培養プレートに入れた。阻害剤を100μlのRPMI1640培地中に加え、2時間後に血液を最終濃度100 ng/mlのLPS (大腸菌005:B5株, Sigma)で刺激し、5 % CO2中で37℃にて6時間インキュベートした。TNF-αのレベルを、無細胞上清から、サンドイッチELISA (R&D Systems #QTA00B)により測定した。
【0267】
破砕細胞カルボキシルエステラーゼアッセイ
細胞抽出物の調製
U937又はHCT 116腫瘍細胞(約109)を、4容量のDulbeccos PBS (約1リットル)で洗浄し、525 gで10分間、4℃にてペレットにした。これを2回繰り返し、最後の細胞ペレットを35 mlの冷たいホモジナイズバッファー(Trizma 10 mM, NaCl 130 mM, CaCl2 0.5 mM 25℃におけるpH 7.0)に再懸濁した。ホモジネートを、窒素キャビテーション(700 psiを50分、4℃)により調製した。ホモジネートを氷上に維持し、以下の最終濃度の阻害剤のカクテルを補った。
ロイペプチン 1μM
アプロチニン 0.1μM
E64 8μM
ペプスタチン 1.5μM
ベスタチン 162μM
キモスタチン 33μM
【0268】
525 gにて10分間の遠心分離により細胞ホモジネートを清澄にした後に、得られた上清をエステラーゼ活性の源として用い、これは必要になるまで-80℃にて貯蔵した。
【0269】
エステル開裂の測定
対応するカルボン酸へのエステルの加水分解は、上記のようにして調製した細胞抽出物を用いて測定できる。このために、細胞抽出物(約30μg / 全アッセイ容量 0.5ml)を、37℃にて、Tris-HCl 25mM、125mM NaClバッファー、25℃のpH 7.5中でインキュベートした。ゼロ時間に、2.5μMの最終濃度のエステル(基質)を加え、サンプルを37℃にて適切な時間(通常、0〜80分)インキュベートした。反応は、3×容量のアセトニトリルの添加により停止した。ゼロ時間のサンプルのために、アセトニトリルをエステル化合物より前に加えた。12000gで5分間の遠心分離の後に、サンプルを、エステル及び対応するカルボン酸について、室温にてLCMS (Sciex API 3000, HP1100 バイナリポンプ, CTC PAL)により分析した。クロマトグラフィーは、AcCN (75×2.1mm)カラム及び水/0.1% ギ酸中の5〜95%アセトニトリルの移動相に基づいた。
【0270】
単球及び非単球細胞系統におけるhCE-1、hCE-2及びhCE-3発現の定量
遺伝子特異的プライマを用いて、PCRによりhCE-1、-2及び-3をヒトcDNAから増幅した。PCR産物をプラスミドベクターにクローニングし、配列を確認した。次いで、これらを、リアルタイムPCR反応における標準曲線として用いるために連続希釈した。トータルRNAを、種々のヒト細胞系統から抽出し、cDNAを調製した。細胞系統におけるhCEの絶対レベルを定量するために、リアルタイムSYBR Green PCRアッセイにおいて、遺伝子発現レベルをクローニングされたPCR産物スタンダードと比較した。図1は、hCE-1のみが単球細胞系統においてかなりの量で発現されることを示す。
【0271】
生物学的結果
上記の実施例1〜5に記載する化合物を、上記の酵素阻害、細胞増殖及びエステル開裂アッセイにおいて調べ、結果を表3及び4に示す。
【0272】
効力
【表3】

【0273】
上記の結果は、次のことを示す。
(i) アミノ酸エステル修飾された化合物(化合物8及び10)、及びエステルモチーフの開裂により得ることができる酸(化合物9)は、酵素アッセイにおいて、未修飾のHDAC阻害剤(SAHA - 化合物7)についての値に匹敵するIC50を有し、このことは、アルファアミノ酸エステルモチーフが、SAHAに、その結合形式を妨げない点で連結することを示す。
(ii) エステル(化合物8及び10)及び酸(化合物9)は未修飾の阻害剤(SAHA - 化合物7)に匹敵する活性を有するが、未修飾の阻害剤(化合物7)に比べてエステラーゼ開裂可能なシクロペンチルエステル(化合物8)の細胞での効力が著しく増加したが、エステラーゼ安定t-ブチルエステル(化合物10)の場合は細胞での効力が実質的に減少し、このことは、後者が細胞内に細胞での効力を増加させる酸を蓄積しないことを示す。
(iii) 細胞増殖アッセイにおいて化合物8の活性が、未修飾の対応物である化合物7 (又は加水分解できないエステル誘導体である化合物10)よりも大きいことは、エステルが細胞内で親の酸である化合物9に加水分解され、そこでこれが蓄積して、より大きい阻害効果を奏することを示す。
【0274】
【表4】

【0275】
上記の結果は、次のことを示す。
(i) 化合物12におけるエステルモチーフの開裂により得ることができるアルファアミノ酸修飾された阻害剤である化合物13は、酵素アッセイにおいて、未修飾のオーロラキナーゼ阻害剤(化合物11)のものに匹敵するIC50値を有し、このことは、アルファアミノ酸エステルモチーフを、オーロラキナーゼAの結合を妨げない点で連結させることができることを示す。
(ii) 酸(化合物13)は未修飾の阻害剤(化合物11)に匹敵する酵素活性を有し、エステル(化合物12)はより弱い阻害剤であるが、化合物12の細胞での効力は、未修飾の阻害剤(化合物11)に比べて著しく増加している。より開裂されにくいt-ブチルエステル(化合物14)は、開裂可能なシクロペンチルエステル(化合物12)に匹敵する酵素活性を有するが、細胞アッセイにおいては20倍程度少ない活性である。
(iii) 細胞増殖アッセイにおいて化合物12の活性が、未修飾の対応物(化合物11)及びより開裂されにくいt-ブチルエステル(化合物14)よりも大きいことは、シクロペンチルエステルが細胞内で親の酸に加水分解され、そこでこれが蓄積してより大きい阻害効果を奏することを示す。
【0276】
【表5】

【0277】
上記の結果は、次のことを示す。
(i) アルファアミノ酸修飾された阻害剤である化合物16、及び化合物16のエステルモチーフの開裂により得ることができる酸化合物17は、酵素アッセイにおいて、未修飾のP38 MAPキナーゼ阻害剤(化合物15)についての値に匹敵するIC50値を有し、このことは、アルファアミノ酸エステルモチーフを、P38 MAPキナーゼへの結合を妨げない点で連結させることができることを示す。
(ii) 酸である化合物17は、酵素に対して、未修飾の阻害剤(化合物15)及びt-ブチルエステル(化合物18)に匹敵する活性を有する。しかし、シクロペンチルエステル(化合物16)が全血に存在する単球細胞の内部でTNF産生を阻害する能力は、未修飾の阻害剤(化合物15)及びより開裂されにくいt-ブチルエステル(化合物18)に比べて著しく増加する。
(iii) 全血アッセイにおいて化合物16の活性が、未修飾の対応物である化合物15及びより開裂されにくいt-ブチルエステル化合物18よりも大きいことは、シクロペンチルエステルが細胞内で親の酸に加水分解され、そこでこれが蓄積して、より大きい阻害効果を奏することを示す。
【0278】
【表6】

【0279】
上記の結果は、次のことを示す。
(i) 化合物6におけるエステルモチーフの開裂により得ることができるアルファアミノ酸修飾された阻害剤である化合物19は、酵素アッセイにおいて、未修飾のDHFR阻害剤(化
合物2 (G=N))のものに匹敵するIC50値を有し、このことは、アルファアミノ酸エステルモチーフを、DHFRへの結合を妨げない点で連結させることができることを示す。
(ii) 酸(化合物19)は、未修飾の阻害剤(化合物2 (G=N))に匹敵する酵素阻害活性を有するが、エステル(化合物6)は、未修飾の阻害剤(化合物2 (G=N))に比べて、細胞増殖の阻害において著しくより効力が高い。
(iii) 細胞増殖アッセイにおいて化合物6の活性が、未修飾の対応物(化合物2 (G=N))よりも大きいことは、シクロペンチルエステルが細胞内で親の酸に加水分解され、そこでこれが蓄積してより大きい阻害効果を奏することを示す。
【0280】
【表7】

【0281】
上記の結果は、次のことを示す。
(i) アルファアミノ酸エステル修飾された阻害剤である化合物21、及び化合物21のエステルモチーフの開裂により得ることができる酸である化合物22は、酵素アッセイにおいて、未修飾のPI 3-キナーゼ阻害剤(化合物20)についての値の10の係数以内のIC50値を有し、このことは、アルファアミノ酸エステルモチーフを、PI 3-キナーゼへの適度な結合を維持する点で連結させることができることを示す。
(ii) 酸である化合物22は、未修飾の阻害剤(化合物20)及びエステル(化合物21)に匹敵する活性を有するが、エステルが全血に存在する単球細胞中でTNF産生を阻害する効力は、未修飾の阻害剤(化合物20)及びより開裂されにくいt-ブチルエステル(化合物23)に比べて著しく増加する。
(iii) 全血アッセイにおいて化合物21の活性が、未修飾の対応物である化合物20及びより開裂されにくいt-ブチルエステル化合物23よりも大きいことは、シクロペンチルエステルが細胞内で親の酸に加水分解され、そこでこれが蓄積して、より大きい阻害効果を奏することを示す。
【0282】
選択性
【表8】

【0283】
上記の結果は、次のことを示す。
i) 未修飾の化合物(化合物7)は、単球細胞系統と非単球細胞系統との間の選択性を示さないが、このことは、化合物24のように適切なエステルモチーフを連結させることにより達成できる。
ii) この選択性は、単球細胞系統によるエステルの酸への開裂の改善と関連する。
iii) 改善された細胞での活性は、酸が産生される細胞系統でのみ見られ、このことは、細胞での効力の改善が、酸の蓄積によることを示す。
【0284】
【表9】

【0285】
上記の結果は、次のことを示す。
i) 未修飾の化合物(化合物(10)は、単球細胞系統と非単球細胞系統との間の選択性を示さないが、このことは、化合物25のように適切なエステルモチーフを連結させることにより達成できる。
ii) この選択性は、単球細胞系統によるエステルの酸への開裂の改善と関連する。
iii) 改善された細胞での活性は、酸が産生される細胞系統でのみ見られ、このことは、
細胞での効力の改善が、酸の蓄積によることを示す。
【0286】
【表10】

【0287】
上記の結果は、次のことを示す。
(i) 未修飾の化合物(化合物2 G = N)は、単球細胞系統と非単球細胞系統との間の選択性を示さないが、このことは、化合物5のように適切なエステルモチーフを連結させることにより達成できる。
(ii) この選択性は、単球細胞系統によるエステルの酸への開裂の改善と関連する。
(iii) 改善された細胞での活性は、酸が産生される細胞系統でのみ見られ、このことは、細胞での効力の改善が、酸の蓄積によることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0288】
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルファアミノ酸エステルと標的細胞内酵素又は受容体の活性のモジュレーターとの共有結合型複合体であって、
該複合体のエステル基が、1つ又は複数の細胞内カルボキシルエステラーゼ酵素により対応する酸に加水分解可能であり、かつ
前記アルファアミノ酸エステルが、阻害剤と標的酵素又は受容体との間の結合界面から離れた位置で前記モジュレーターに複合している共有結合型複合体。
【請求項2】
アルファアミノ酸エステルと標的細胞内酵素又は受容体の活性のモジュレーターとの共有結合型複合体であって、
該複合体のエステル基が、1つ又は複数の細胞内カルボキシルエステラーゼ酵素により対応する酸に加水分解可能であり、かつ
前記アルファアミノ酸エステルが、複合したモジュレーターと前記対応する酸とが標的酵素又は受容体に結合する形式が複合していないモジュレーターのものと同じであるように前記モジュレーターに複合している共有結合型複合体。
【請求項3】
阻害剤と標的酵素又は受容体との間の結合界面から離れた位置で、標的細胞内酵素又は受容体の活性のモジュレーターにアルファアミノ酸エステルを共有結合型で連結させることにより該モジュレーターを構造的に修飾することを含み、複合体のエステル基が、1つ又は複数の細胞内カルボキシルエステラーゼ酵素により対応する酸に加水分解可能である、標的細胞内酵素及び/又は受容体の活性のモジュレーターの細胞内の効力及び/又は滞留時間を増加又は延長する方法。
【請求項4】
複合しているモジュレーターと対応する酸とが標的酵素又は受容体に結合する形式が複合していないモジュレーターのものと同じであるように、標的細胞内酵素又は受容体の活性のモジュレーターにアルファアミノ酸エステルを共有結合型で連結させることにより該モジュレーターを構造的に修飾することを含み、該複合体のエステル基が、1つ又は複数の細胞内カルボキシルエステラーゼ酵素により対応する酸に加水分解可能である、標的細胞内酵素又は受容体の活性のモジュレーターの細胞内の効力及び/又は滞留時間を増加又は延長する方法。
【請求項5】
前記共有結合型で複合しているアルファアミノ酸エステルが、複合しているモジュレーターのジペプチドモチーフのC-末端要素ではない、請求項1若しくは2に記載の複合体又は請求項3若しくは4に記載の方法。
【請求項6】
前記モジュレーターが、前記標的細胞内酵素又は受容体に非共有結合型で結合するものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合体又は方法。
【請求項7】
前記アルファアミノ酸エステルが、リンカー基を介して前記モジュレーターに共有結合型で複合している請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合体又は方法。
【請求項8】
前記アルファアミノ酸エステルが、該アミノ酸エステルのアミノ基を介して前記モジュレーターに複合している請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合体又は方法。
【請求項9】
前記アルファアミノ酸エステルが、該アミノ酸エステルのアルファ炭素を介して前記モジュレーターに複合している請求項1〜8のいずれか1項に記載の複合体又は方法。
【請求項10】
前記エステルが、細胞内カルボキシルエステラーゼ酵素hCE-1、hCE-2及びhCE-3の1つ又は複数を含む細胞により、対応するアルファアミノ酸に加水分解可能である請求項1〜9のいずれか1項に記載の複合体又は方法。
【請求項11】
前記エステルが、細胞内カルボキシルエステラーゼ酵素hCE-1を含む細胞により、対応するアルファアミノ酸に加水分解可能であるが、hCE-2又はhCE-3を含む細胞によっては加水分解されない請求項1〜8のいずれか1項に記載の複合体又は方法。
【請求項12】
前記アミノ酸エステルのアミノ基の窒素が置換されているが、カルボニル部分に直接結合していない請求項11に記載の複合体又は方法。
【請求項13】
請求項1、2及び5〜12のいずれか1項に記載の複合体と医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項14】
局所投与に適合され、複合体において、(a) アルファアミノ酸エステルがそのアミノ基を介してモジュレーターに結合する場合に該アルファアミノ酸エステルのアルファ炭素に隣接する炭素が一置換されているか、又は(b) アルファアミノ酸エステルがアミノ酸の炭素原子を介してモジュレーターに結合する場合にアミノ酸の該炭素原子に隣接する炭素原子が非置換である請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
細胞の混合集団を請求項12に記載のモジュレーターの複合体でインビトロ又はインビボにて処理することを含む、他の細胞種に比べてマクロファージ及び/又は単球において標的細胞内酵素又は受容体の活性のモジュレーターの細胞内の効力又は滞留時間を選択的に増加又は延長する方法。
【請求項16】
(iv) 標的細胞内酵素若しくは受容体の活性のモジュレーター上、又は標的酵素若しくは受容体について同じ結合形式を共有する複数の標的細胞内酵素又は受容体の活性のモジュレーター上の、該モジュレーターと標的酵素又は受容体との間の結合界面から離れた位置を同定し、
(iv) (i)で同定された1つ又は複数の位置にてアルファアミノ酸エステル基又は一連の異なるアルファアミノ酸エステル基を連結させることにより前記モジュレーターを共有結合型で修飾し、
(iv) (ii)で作製したアルファアミノ酸が複合しているモジュレーターを試験して、標的酵素又は受容体に対するそれらの活性を決定し、そして
(iv) (iii)で得たデータに基づいて、細胞内部の酵素又は受容体の活性の修飾をもたらし、細胞内部で対応するカルボン酸に変換されかつ該カルボン酸として蓄積し、かつ細胞での効力が増加又は延長している1つ又は複数の試験したモジュレーターのアルファアミノ酸エステルが複合した形を選択する
ことを含む、標的細胞内酵素又は受容体の活性のモジュレーターに比べて増加又は延長された細胞での効力を有する該モジュレーターのアルファアミノ酸エステルとの共有結合型複合体を同定する方法。

【公表番号】特表2008−542196(P2008−542196A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509506(P2008−509506)
【出願日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【国際出願番号】PCT/GB2006/001635
【国際公開番号】WO2006/117567
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(507288718)クロマ セラピューティクス リミテッド (18)
【氏名又は名称原語表記】CHROMA THERAPEUTICS LTD
【住所又は居所原語表記】93 Milton Park,Abingdon,Oxfordshire OX14 4RY,UNITED KINGDOM
【Fターム(参考)】