説明

カーナビゲーション端末用データの更新方法及びシステム

【課題】 放送された更新データの取り漏らしを補完し、放送による更新データに対する課金を容易にすること。
【解決手段】 暗号化された更新データをディジタル放送網で受信するが、放送送で受信できなかった移動端末110はモバイルIP網141を経由して暗号化された更新データを受信する。放送で受信した場合でもモバイルIP網から受信した場合でも、移動端末110はデータセンタ120に対し、復号化鍵を要求する。この際に、復号化鍵の送信によって課金を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーナビゲーション端末における地図データ等のデータの更新方法及びシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーナビゲーションシステムにおいて利用する道路地図や地点情報は日々変化する実際の道路などに対応するために更新される必要がある。しかし、DVD-ROMなどの販売による最新データの更新は1年単位など更新間隔が長いため、実際に存在しない道路に案内されたりするといった不都合が発生することが多い。
【0003】
これを解決する手段として、下記の特許文献1に開示されているように、ディジタル放送などを利用して道路地図などの更新データを送信するシステムがある。
【特許文献1】特開2001−12957
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ディジタル放送は低コストで多数のカーナビゲーション端末に対しデータ送信を行えるが、放送による更新データの送信は通信帯域が限られているため、同じ更新データを常に放送することはできない。そのため、要求される頻度の多い比較的新しい更新データを放送することになる。
しかし、ディジタル放送受信装置の電源が常に入っていなかったり、長期間電源がOFFのままであった場合、更新データの取り漏らしが発生する。また、ディジタル放送で受信した更新データは放送センタではいつ誰が受信したかが判らず、更新データに対する課金の請求先を特定できないという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、ディジタル放送によって放送された地図データなどの更新データの受信漏れを補完し、放送による更新データに対する課金を容易にすることができるカーナビゲーション端末用データの更新方法及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るカーナビゲーション端末用データの更新方法は、更新データを暗号化してディジタル放送網を介したディジタル放送によってデータセンタ装置からカーナビゲーション端末に向けて送信する第1のステップと、カーナビゲーション端末においてディジタル放送によって送信された更新データを受信し、記憶手段に記憶する第2のステップと、カーナビゲーション端末からモバイルIP網を介して前記データセンタ装置に対し、更新データの一覧を要求し、更新データの一覧を取得する第3のステップと、更新データの一覧中に示された更新データが前記記憶手段に記憶されているかを判定し、記憶されていたならば、当該更新データの復号鍵をカーナビゲーション端末からモバイルIP網を介して前記データセンタ装置に要求する第4のステップと、データセンタ装置から前記復号鍵をモバイルIP網を介して要求元のカーナビゲーション端末に返信する第5のステップと、カーナビゲーション端末において前記受信した復号鍵によって前記記憶手段に記憶した更新データを復号し、その復号データにより更新対象データを更新する第6のステップと、前記更新データの一覧中に示された更新データが前記記憶手段に記憶されていなければ、カーナビゲーション端末からモバイルIP網を介して前記データセンタ装置に対して暗号化された更新データと復号鍵の配信を要求し、モバイルIP網を介して前記データセンタ装置から配信された暗号化更新データと復号鍵を受信し、復号鍵によって復号した更新データによって更新対象データを更新する第7のステップとを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るカーナビゲーション端末用データの更新システムは、データセンタ装置とカーナビゲーション端末とから成り、
前記データセンタ装置が、
更新データを暗号化してディジタル放送網を介したディジタル放送によってカーナビゲーション端末に向けて送信する第1の手段と、前記更新データを復号するための復号鍵をモバイルIP網を介して要求元のカーナビゲーション端末に送信する第2の手段と、カーナビゲーション端末からモバイルIP網を介して受信した暗号化された更新データと復号鍵の配信要求に対し、当該暗号化された更新データと復号鍵を要求元のカーナビゲーション端末にモバイルIP網を介して返信する第3の手段とを備え、
前記カーナビゲーション端末が、ディジタル放送によって送信された更新データを受信し、記憶手段に記憶する第4の手段と、モバイルIP網を介して前記データセンタ装置に対し、更新データの一覧を要求し、更新データの一覧を取得する第5の手段と、更新データの一覧中に示された更新データが前記記憶手段に記憶されているかを判定し、記憶されていたならば、当該更新データの復号鍵をモバイルIP網を介して前記データセンタ装置に要求する第6の手段と、受信した復号鍵によって前記記憶手段に記憶した更新データを復号し、その復号データにより更新対象データを更新する第7の手段と、前記更新データの一覧中に示された更新データが前記記憶手段に記憶されていなければ、モバイルIP網を介して前記データセンタ装置に対して暗号化された更新データと復号鍵の配信を要求し、モバイルIP網を介して前記データセンタ装置から配信された暗号化更新データと復号鍵を受信し、復号鍵によって復号した更新データによって更新対象データを更新する第8の手段とを備えることを特徴とする。
そして、前記データセンタ装置が、前記復号鍵の送信要求時にカーナビゲーション端末から受信した端末識別情報により要求元のカーナビゲーション装置を特定し、その特定したカーナビゲーション装置に対して更新データの更新にかかる課金処理を行う第9の手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、更新データを暗号化してディジタル放送網を介して送信し、その更新データを復号するための復号鍵についてはモバイルIP網を介して送信するようにし、復号鍵を配信する際に要求元のカーナビゲーション端末を特定して課金するようにしたため、課金漏れをなくすことができる。
また、カーナビゲーション端末が電源OFFなどの原因によってディジタル放送網から更新データを受信していなかった場合には、モバイルIP網を介して更新データを配信するため、更新データの受信漏れをなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の一実施形態を示すシステム構成図である。
本実施の形態に示すシステムは、複数の車両に搭載されたカーナビゲーション装置である移動端末110と、地図データの更新データを記憶したデータセンタ120と、データセンタ120から移動端末110に対して更新データをディジタル放送によって配信する放送送信部130からなる。
移動端末110とデータセンタ120は、携帯電話機や公衆無線LANなどのモバイルIP網141で接続され、放送送信部130は地上ディジタル放送、衛星ディジタル放送等のディジタル放送網140により移動端末110にデータ放送を行う。放送送信部130とデータセンタ120は専用線またはLANによって接続される。
【0010】
カーナビゲーション装置である移動端末110は、放送送信部130からのディジタル放送波を受信する放送受信部111と、ディジタル放送網140やモバイルIP網141を経て送信されてくる暗号化されたデータを復号化する復号化部112と、受信した更新データを記憶するデータ記憶部113と、モバイルIP網141を経由してデータの送受信を行う送受信部114と、ユーザの操作を受け付ける操作部115と、操作結果を表示する表示部116と、それらを制御する制御部117からなる。
データ記憶部113には受信した更新データだけでなく、地図データ、アプリケーション、アプリケーションデータ、音楽データ、映像データなども保存される。
更新データには地図の更新データ、アプリケーションの更新データ、音楽や映像などのマルチメディアコンテンツなどが想定される。
【0011】
更新データの管理と暗号鍵の管理を行うデータセンタ120は、更新データを記憶するデータ記憶部121と、移動端末110とのデータの送受信を行う送受信部122と、更新データの暗号化処理を行う暗号化部123と、それらを制御する制御部124からなる。
【0012】
図2は、更新データの放送処理のフローチャートである。
データセンタ120の制御部124は、データセンタ120の管理者から指定された更新データを選択する(ステップ201)。
次に、データセンタ120の暗号化部123で更新データを暗号化する(ステップ202)。
次に、放送送信部130よりディジタル放送網140を経由してすべての移動端末110に向けて送信される(ステップ203)。このとき、電源の入っていない移動端末110や受信できない場所にある移動端末110は受信できない。
ディジタル放送された更新データを移動端末110の放送受信部111で受信する(ステップ204)と、移動端末110の制御部117は移動端末110のデータ記憶部113に暗号化されたまま保存する(ステップ205)。この時点ではデータは復号化されていないし、課金もされない。
【0013】
図3は、更新処理のフローチャートである。
ユーザは移動端末110の表示部116に表示される案内に従って、移動端末110の操作部115より更新コマンドを選択する(ステップ301)。
更新コマンドが選択されると、移動端末110の送受信部114よりモバイルIP網141を通してデータセンタ120に更新可能な更新データの名称一覧の送信を要求する。この要求をデータセンタ120の送受信部122が受けると、データセンタ120の制御部124はデータセンタ120のデータ記憶部121より更新可能な更新データの名称一覧を検索し、データセンタ120の送受信部122よりモバイルIP網141を通して移動端末110に更新データの名称一覧を送信する。
【0014】
更新データの名称一覧を移動端末110の送受信部114が受け取ると、移動端末110の制御部117は移動端末の表示部116に更新データの名称一覧を表示する(ステップ302)。
次に、ユーザは表示された更新データの名称一覧から更新したい更新データを選択する(ステップ303)。
次に、移動端末110の制御部117はユーザの選択した更新データが移動端末110のデータ記憶部113に存在するかどうか検索を行う(ステップ304)。
移動端末110のデータ記憶部113に該当する更新データが存在しない場合、移動端末110の送受信部114よりモバイルIP網141を通してデータセンタ120に該当する更新データの送信を要求する。
【0015】
データセンタ120の送受信部122がこの要求を受信すると、データセンタ120の制御部124はデータセンタ120のデータ記憶部121より該当する更新データを検索し、データセンタ120の暗号化部123で暗号化したのち、送受信部122よりモバイルIP網141を通して移動端末110に送信する。
【0016】
移動端末110の送受信部114で暗号化された更新データを受信すると、移動端末110の制御部117は受信した暗号化更新データを移動端末110のデータ記憶部113に保存する(ステップ305)。
なお、ステップ304で更新データがすでに存在する場合はステップ305の処理は行わない。
【0017】
次に、移動端末110の送受信部114よりモバイルIP網141を通して暗号化された更新データを復号化するための復号鍵の送信を要求する。この要求をデータセンタ120の送受信部122で受信すると、データセンタ120の制御部124はデータセンタ122のデータ記憶部121より該当更新データの復号鍵を検索し、その復号鍵をデータセンタ120の送受信部122よりモバイルIP網141を通して移動端末110に送信し、データセンタ120のデータ記憶部121の課金テーブルに課金レコードを挿入する。課金レコードついては後述する。
【0018】
移動端末110の送受信部114で復号鍵を受信すると、移動端末110の制御部117は受信した復号鍵を移動端末110のデータ記憶部113に保存する(ステップ306)。
次に、移動端末110の制御部117は、移動端末110のデータ記憶部113より暗号化された更新データを検索し、ステップ306で受信した復号鍵を用いて復号し、更新を適用する(ステップ307)。
【0019】
図4は、データセンタ120のデータ記憶部121におけるデータ構造である。
データセンタ120のデータ記憶部121は、更新データ管理テーブル400と課金管理テーブル410を備えている。
更新データ管理テーブル400は、更新データの一意に識別するインデックスである更新データID401と、ステップ302で使用されるユーザが見て内容を理解できるような更新データ名称402と、その更新データのデータセンタ120のデータ記憶部内121での位置(例えばファイル名)を格納する更新データ位置403と、更新データの暗号化/復号に使用する鍵404と、更新データの課金する場合の価格である課金金額405を記憶している。
【0020】
課金管理テーブル410は、課金対象のユーザを一意に識別するインデックスであるユーザID411と更新データの一意に識別するインデックスである更新データID412を備えている。
ステップ306で移動端末110から復号鍵の要求を受けたとき、データセンタ120の制御部124は課金管理テーブル410より要求元のユーザIDと要求対象の更新データのIDのペアとなるレコードが存在するか検索する。存在するならば、既に購入済みと判断し、復号鍵を移動端末110に送信する。存在しない場合は、課金管理テーブル410に新しい課金レコードを追加する。ユーザID411には要求元のユーザIDを、更新データID412には要求された更新データIDを格納する。その後に、復号鍵を移動端末110に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態を示すシステム構成図である。
【図2】更新データの放送処理のフローチャートである。
【図3】更新処理のフローチャートである。
【図4】データセンタのデータ記憶部におけるデータ構造である。
【符号の説明】
【0022】
110 移動端末
111 放送受信部
112 復号化部
113 データ記憶部
114 送受信部
120 データセンタ
121 データ記憶部
122 送受信部
123 暗号化部
130 放送送信部
140 ディジタル放送網
141 モバイルIP網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
更新データを暗号化してディジタル放送網を介したディジタル放送によってデータセンタ装置からカーナビゲーション端末に向けて送信する第1のステップと、カーナビゲーション端末においてディジタル放送によって送信された更新データを受信し、記憶手段に記憶する第2のステップと、カーナビゲーション端末からモバイルIP網を介して前記データセンタ装置に対し、更新データの一覧を要求し、更新データの一覧を取得する第3のステップと、更新データの一覧中に示された更新データが前記記憶手段に記憶されているかを判定し、記憶されていたならば、当該更新データの復号鍵をカーナビゲーション端末からモバイルIP網を介して前記データセンタ装置に要求する第4のステップと、データセンタ装置から前記復号鍵をモバイルIP網を介して要求元のカーナビゲーション端末に返信する第5のステップと、カーナビゲーション端末において前記受信した復号鍵によって前記記憶手段に記憶した更新データを復号し、その復号データにより更新対象データを更新する第6のステップと、前記更新データの一覧中に示された更新データが前記記憶手段に記憶されていなければ、カーナビゲーション端末からモバイルIP網を介して前記データセンタ装置に対して暗号化された更新データと復号鍵の配信を要求し、モバイルIP網を介して前記データセンタ装置から配信された暗号化更新データと復号鍵を受信し、復号鍵によって復号した更新データによって更新対象データを更新する第7のステップとを備えることを特徴とするカーナビゲーション端末用データの更新方法。
【請求項2】
前記データセンタ装置において、前記復号鍵の送信要求時にカーナビゲーション端末から受信した端末識別情報により要求元のカーナビゲーション装置を特定し、その特定したカーナビゲーション装置に対して更新データの更新にかかる課金処理を行う第8のステップを備えることを特徴とする請求項1に記載のカーナビゲーション端末用データの更新方法。
【請求項3】
データセンタ装置とカーナビゲーション端末とから成り、
前記データセンタ装置が、
更新データを暗号化してディジタル放送網を介したディジタル放送によってカーナビゲーション端末に向けて送信する第1の手段と、前記更新データを復号するための復号鍵をモバイルIP網を介して要求元のカーナビゲーション端末に送信する第2の手段と、カーナビゲーション端末からモバイルIP網を介して受信した暗号化された更新データと復号鍵の配信要求に対し、当該暗号化された更新データと復号鍵を要求元のカーナビゲーション端末にモバイルIP網を介して返信する第3の手段とを備え、
前記カーナビゲーション端末が、
ディジタル放送によって送信された更新データを受信し、記憶手段に記憶する第4の手段と、モバイルIP網を介して前記データセンタ装置に対し、更新データの一覧を要求し、更新データの一覧を取得する第5の手段と、更新データの一覧中に示された更新データが前記記憶手段に記憶されているかを判定し、記憶されていたならば、当該更新データの復号鍵をモバイルIP網を介して前記データセンタ装置に要求する第6の手段と、受信した復号鍵によって前記記憶手段に記憶した更新データを復号し、その復号データにより更新対象データを更新する第7の手段と、前記更新データの一覧中に示された更新データが前記記憶手段に記憶されていなければ、モバイルIP網を介して前記データセンタ装置に対して暗号化された更新データと復号鍵の配信を要求し、モバイルIP網を介して前記データセンタ装置から配信された暗号化更新データと復号鍵を受信し、復号鍵によって復号した更新データによって更新対象データを更新する第8の手段とを備えることを特徴とするカーナビゲーション端末用データの更新システム。
【請求項4】
前記データセンタ装置が、前記復号鍵の送信要求時にカーナビゲーション端末から受信した端末識別情報により要求元のカーナビゲーション装置を特定し、その特定したカーナビゲーション装置に対して更新データの更新にかかる課金処理を行う第9の手段を備えることを特徴とする請求項3に記載のカーナビゲーション端末用データの更新システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−163357(P2007−163357A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−361818(P2005−361818)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】