説明

ガスバリア性プラスチック容器

【課題】本件は、従来の単層の珪素化合物を主体とする薄膜からなるバリア層を有するプラスチック容器では得られなかった高度のガスバリア性を奏するプラスチック容器を提供する。
【解決手段】プラスチック容器はその内面に、プラズマ化学気相成長法によって形成した、複数層の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜からなり、第1層から最上層にかけて各層の酸化度が順次増加した、酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック容器に関し、更に詳しくは容器本体の内面全面にガスバリア性薄膜を有し、酸素ガス、炭酸ガス、水蒸気等の透過を遮断するガスバリア性に優れたプラスチック容器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器の内面に、グラファイト、燐酸塩系誘導体型化合物、カルコゲン化物、粘土鉱物等の無機層状化合物を有する樹脂組成物からなるガスバリア層が積層されたガスバリア性容器が知られている(特許文献1参照)。又、ポリビニルアルコール系コーティング剤、塩化ビニリデン系コーティング剤、或いはエチレンビニル共重合体系コーティング剤の何れかの単体或いはこれらの複合体からなる樹脂被膜、或いはアルコキシド又はアルコキシド加水分解物を含有する樹脂被膜を表面に有する容器が知られている(特許文献2参照)。更に、プラスチックボトルの内壁面に硬質炭素膜(DLC)を形成したボトルが知られている(特許文献3)。更に表面にCVD法により形成した、珪素化合物を主体とする薄膜を一層設けたプラスチック容器が知られている(特許文献4、特許文献5及び特許文献6参照)。
【特許文献1】特開平11−314674号公報
【特許文献2】特開平8−238667号公報
【特許文献3】特開2003−312670号公報
【特許文献4】実開平5−35660号公報
【特許文献5】特開2000−43875号公報
【特許文献6】特開2000−117881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1及び特許文献2に記載の容器には、無機層状化合物を有する樹脂組成物からなるガスバリア層が水に直接暴露されるため、ガスバリア層が崩壊し、ガスバリア性が急激に悪化するという問題がある。又、特許文献2に見られるように塩化ビニリデン系コーティング剤を設けたプラスチック容器の場合には、使用後、これをゴミとして廃棄処理する場合、例えば、焼却処理等により廃棄すると、塩素原子を含んでいることから、焼却廃棄時に、ダイオキシン等の有毒ガス等を発生することによる人体への影響が懸念される。更に特許文献3に記載の容器には、所定のバリア性を得るために、硬質炭素膜の膜厚を厚くせざるを得ず、又、膜厚を厚くすると、容器が黄褐色を帯び、商品の意匠性が損なわれるという問題がある。更に特許文献4、特許文献5及び特許文献6に記載の容器には、珪素化合物を主体とする薄膜が単層であり、単サイクルのCVD加工ではプラズマ化学反応時に生成する副生成物が珪素化合物を主体とする薄膜内に取り込まれ、本来発現すべき高度なガスバリア性を得ることができないという問題がある。又、所定の膜厚を得るために、過剰の材料ガスを導入するため、プラスチック容器の変形や着色が起き、材料ガスの酸化反応が十分に進行せず、又、材料ガスの無機質化が起きないために、十分なガスバリア性を得ることができないという問題がある。
本発明の課題は、従来の単層の珪素化合物を主体とする薄膜からなるバリア層を有するプラスチック容器では得られない高度のガスバリア性を奏するプラスチック容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、上記の課題を解決するもので、プラスチック容器本体の内面に、プラズマ化学気相成長法によって形成した、複数層の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜からなり、第1層から最上層にかけて各層の酸化度が順次増加した、酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜を設けたことを特徴とするガスバリア性プラスチック容器を要旨とするものである。
【0005】
本発明により、CVD法でプラスチック容器本体の内面に、複数層の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜からなる、酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜を形成することにより、プラスチック容器本体の内面に高度に低い酸素透過係数、或いは水蒸気透過係数を有する酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜を堆積、成長させ、従来の単層の珪素化合物を主体とする薄膜からなるバリア層を有するプラスチック容器においては得られない高いガスバリア性を有するプラスチックを提供することができる。又、本発明によれば、従来の単層の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜における、所定の膜厚を得るために、過剰の材料ガスを反応層内に導入するため、プラスチック容器本体の変形や着色が起き、材料ガスの酸化反応が十分に進行せず、又、有機化合物等の材料ガスの無機質化が起きないために、十分なガスバリア性が得られないという問題が解消される。
【0006】
本発明において、酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜を構成する各層として、少なくとも珪素原子、酸素原子及び炭素原子が化学結合した、酸化珪素を主体とする一般式SiOxnyn(但し、1.5<xn≦2.2、0.01≦yn≦0.5)であらわされる酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜を用いることができる。この酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜は緻密で、隙間が少なく、可撓性に富み、高いガスバリア性を有するものである。
【0007】
本発明において、酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜として、プラスチック容器の内面に積層する第1の酸化珪素SiOx1y1を主体とするガスバリア性薄膜乃至第nの酸化珪素SiOxnynを主体とするガスバリア性薄膜の各層のxn値を、x1<x2<x3<・・・<xnと不連続に増加させて積層してなる、酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜を用いることができる。この酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜は、0.1〜10cc.nm/m2・day・atom(23℃/90%RH)の酸素透過係数及び1〜50g/m2・dayの水蒸気透過係数を有し、高い酸素バリア性をプラスチック容器本体に高度な酸素バリア性を付与するものである。
【0008】
本発明において、プラスチック容器本体としてポリエステル樹脂のブロー成形容器、又はポリオレフィン樹脂のブロー成形容器を用いることができる。
【0009】
本発明において、酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜の全体の膜厚は20〜100nmの範囲とするのが望ましい。20nmよりも小さな膜厚のときは十分なガスバリア性が得られない。一方100nmよりも膜厚が大きくなるとその膜にクラック等が発生し易くなるので好ましくない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プラスチック容器本体の内面に、プラズマ化学気相成長法によって形成した、複数層の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜からなり、第1層から最上層にかけて各層の酸化度が順次増加した、酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜を設けることにより、プラスチック容器の本体の内面に高度に低い酸素透過係数、或いは水蒸気透過係数を有する酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜を堆積、成長させ、従来の単層の珪素化合物を主体とする薄膜からなるバリア層を有するプラスチック容器においては得られない高いガスバリア性を有するプラスチック容器を提供することができる。特に、酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜として、プラスチック容器の内面に積層する第1の酸化珪素層SiOx1y1乃至第n番目の酸化珪素層SiOxnynの各層のxn値を、x1<x2<x3<・・・<xnと不連続に増加させて積層してなる酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜を備えるガスバリア性プラスチック容器は、極めて高い酸素バリア性を有するという特色を有する。又、本発明によれば、従来の単層の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜における、所定の膜厚を得るために過剰の材料ガスを反応層内に導入するために、プラスチック容器本体の変形や着色が起き、材料ガスの酸化反応が十分に進行せず、又、有機化合物等の材料ガスの無機質化が起きないために、十分なガスバリア性が得られないという問題が解消される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に図面を用いて本発明につき詳細に説明する。図1は本発明のガスバリア性プラスチック容器を示す。このガスバリア性プラスチック容器は、プラスチック性容器本体1の内面に、プラズマ化学気相成長法によって形成した、複数層の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜からなる、酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜2を備える。この酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜2は、図2に示すように、複数層の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜2a、2b、・・・2nからなり、第1層2aから最上層2nにかけて各層2a、2b、・・・2nの酸化度が順次増加しているものである。
【0012】
酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜2は、後述するように極めて高い酸素バリア性及び水蒸気バリア性を有する。又、本発明においてはガスバリア性薄膜は、複数層の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜からなる複層ガスバリア性薄膜であるので、本発明によれば、従来の単層の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜における、所定の膜厚を得るために過剰の材料ガスを反応層内に導入するために、プラスチック容器本体の変形や着色が起き、材料ガスの酸化反応が十分に進行せず、又、有機化合物等の材料ガスの無機質化が起きないために、十分なガスバリア性が得られないという問題が解消される。
【0013】
図3は、本発明のガスバリア性プラスチック容器を製造するための横型低温プラズマ化学気相成長装置の略図である。
【0014】
図3に示す横型低温プラズマ化学気相成長装置は、基盤10と、それに絶縁板11を介して取り付けられた外部電極12からなる。外部電極12は、ガスバリア性薄膜を形成するための真空チャンバーとしての役目を果たすものであり、プラスチック容器本体20を収容するための、プラスチック容器本体1よりやや大きめの相似形の空間部20を有する。又、外部電極は12は本体部12aと蓋体12bからなる。蓋体12bは本体部に着脱自在に取り付けられ、本体部12aを密閉する働きをするものである。この外部電極12には、整合器13を介して高周波電源14が接続されている。又、外部電源12には、その空間部20に通じる排気管15が設けられている。この排気管1は、真空ポンプ(図示せず)につなげられ、矢印P1で示す方向に、真空ポンプによって外部電極12の空間部20内に配置したプラスチック容器本体1の内部の空気が、排気管15を通して排気されるように構成されている。
【0015】
外部電極12に対向して、内部電極16が、外部電極の空間部の中心部に位置するように配置されている。この内部電極16は、外部電極12の空間部20内に取り付けられるプラスチック容器本体1の口部1aから挿入可能な、且つプラスチック容器本体1の内部形状に対応した外形を有する。この内部電極16と外部電極12の間隔は、ガスバリア性薄膜をプラスチック性容器本体1の内面の全面に均一に形成させるために、あらゆる位置において、ほぼ等間隔に保たれるのが望ましい。
【0016】
内部電極16は原料ガス供給管17が連結され、この原料ガス供給管17を通して、矢印Pで示すように、内部電極16に、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガス、酸素ガス、不活性ガス、その他を用いて調製した蒸着用原料ガス組成物が供給されるように構成されている。又、内部電極16には、複数の原料ガス吹き出し16aが設けられ、原料ガス供給孔16aから蒸着用原料ガス組成物がプラスチック容器本体1の内部空間に吹き出されるように構成されている。又、内部電極16は原料ガス供給管17を介してアースされている。
【0017】
次に、図3に示す横型低温プラズマ化学気相成長装置を用いた本発明のガスバリア性プラスチック容器の製造方法について説明する。先ず、外部電極12の蓋体12bを本体部12から取外し、空間部20内にプラスチック容器本体1を挿入し、次いで蓋体12bを本体部12aに取付け、空間部20を密閉する。
【0018】
次に、真空ポンプによって、排気管15を通して空間部20及びプラスチック容器本体1の内部をプラズマ発生可能になるまで排気し、真空度を上昇させる。次いで、プラスチック容器本体1内に、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)等の不活性ガスを原料ガス供給管17を通して供給する。それと共に、外部電極12と内部電極16との間に高周波電圧を印加し、プラズマを発生させる。このプラズマによりプラズマ化した不活性ガスを原料ガス吹き出し孔16aからプラスチック容器本体1の内部空間に吹き出させることにより、プラスチック容器本体1の内面の全面に前処理としてのプラズマエッチングを行い、プラスチック容器本体1の内面の全面にプラズマ処理による微細な凹凸を形成し、表面積を多くしたプラズマ処理面を形成する。
【0019】
次に、再度、真空ポンプにより、排気管15を通して空間部20内をプラズマ発生可能な圧力になるまで排気して空間部20内の真空度を上昇させる。次いで、プラスチック容器本体1内に、原料ガス供給管17を通して、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガス、酸素ガス、不活性ガス、その他を用いて調製した蒸着用原料ガス組成物を供給し、それと共に、外部電極12と内部電極16の間に高周波電圧を印加してプラズマを発生させ、プラズマ化した上記の蒸着用原料ガス組成物を原料吹き出し孔16aからプラスチック容器本体1の内部に吹き出させてプラスチック容器本体1の内面に第1の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜を形成する。
【0020】
第1の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜の形成後、再度、外部電極12の空間部20及びプラスチック容器本体1の内部を真空ポンプにより真空にする。そして、有機珪素化合物等の蒸着用原料ガスの流量、酸素ガスの流量、真空度、放電時間を第1の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜の形成時と同様にして、但しプラズマ放電出力は第1の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜の形成時よりも高くして、プラスチック容器本体1内に、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガス、酸素ガス、不活性ガス、その他を用いて調製した蒸着用原料ガス組成物を供給し、それと共に、外部電極12と内部電極16の間に、第1の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜の形成時の高周波電圧よりも高い高周波電圧を印加してプラズマを発生させ、プラズマ化した上記の蒸着用原料ガス組成物を原料吹き出し孔16aからプラスチック容器本体1の内部に吹き出させて第1の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜上に第2の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜膜を形成する。
【0021】
次いで、第2の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜の形成後、再度、外部電極12の空間部20及びプラスチック容器本体1の内部を真空ポンプにより真空にする。そして、有機化合物等の蒸着用原料ガスの流量、酸素ガスの流量、真空度、放電時間を第2の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜の形成時と同様にして、但しプラズマ放電出力は第2の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜の形成時よりも高くして、プラスチック容器本体1内に、有機化合物等の蒸着用モノマーガス、酸素ガス、その他を用いて調製した蒸着用原料ガス組成物を供給し、それと共に、外部電極12と内部電極16の間に、第2の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜の形成時よりも高いプラズマ放電電圧を印加してプラズマを発生させ、プラズマ化した上記の蒸着用原料ガス組成物を原料吹き出し孔16aからプラスチック容器本体1の内部に吹き出させて第2の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜上に第3の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜を形成する。
【0022】
以後、同様にして、有機化合物等の蒸着用モノマーガスの流量、酸素ガスの流量、真空度、放電時間は変えずに、但しプラズマ放電出力は順次増加させて、第3、第4・・・第nの酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜を形成して、酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜を形成し、最後に第nの酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜の形成に十分な時間の経過後に、原料ガス供給管17からの蒸着用原料ガス組成物の供給を停止し、次いで外部電極12の空間部20内に大気を導入し、図3に示すような酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜2をプラスチック容器の内面に形成し、本発明のガスバリア性プラスチック容器Aを得ることができる。
【0023】
上記のようにして、酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜を構成する各酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜を製膜するとき、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスの流量、酸素ガスの流量、真空度、及び放電時間を一定にして、プラズマ放電出力を順次増加させ、各酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜の酸化度を順次増加させることにより、プラスチック容器の内面に積層する第1の酸化珪素層SiOx1y1乃至第n番目の酸化珪素層SiOxnynの各層のxn値を、x1<x2<x3<・・・<xnと不連続に増加させて積層してなる酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜を形成することができる。この酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜は、プラスチック容器本体1の内面に極めて高い酸素バリア性を付与するものであり、0.1〜10cc・nm/m2・day・atm(23℃/90%RH)の酸素透過係数及び1〜50g/m2・day(40℃/100%RH)の水蒸気透過係数を有する。
【0024】
上記したような方法に代えて、酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜を構成する各酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜を製膜するとき、放電時間、真空度及びプラズマ放電出力を一定にして、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスの流量及び酸素ガス流量を順次減少させ、各酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜の酸化度を順次増加させることにより、プラスチック容器の内面に積層する第1の酸化珪素層SiOx1y1乃至第n番目の酸化珪素層SiOxnynの各層のxn値を、x1<x2<x3<・・・<xnと不連続に増加させて積層してなる酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜を形成することができる。このようにして得られた酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜は、各層に含まれる酸化珪素を主体する化合物の含有量がその表面から深さ方向に向かって減少していることにより、高い耐衝撃性を有し、且つ酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜とプラスチック容器本体の表面の界面においては酸化珪素を主体とする化合物の含有量が少ないためにプラスチック容器本体の表面に対する密着性が高いという利点を有する。
【0025】
又、酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜を構成する各酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜を製膜するとき、放電時間及び真空度を一定にして、有機珪素化合物の蒸着モノマーガス流量及び酸素ガス流量順次減少させると共に、それによる各層の酸化度の増加を調整するために必要に応じてプラズマ放電出力を調整することによっても、プラスチック容器の内面に積層する第1の酸化珪素層SiOx1y1乃至第n番目の酸化珪素層SiOxnynの各層のxn値を、x1<x2<x3<・・・<xnと不連続に増加させて積層してなる酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜を形成することができる。この方法は四層以上の層からなる酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜を製膜するときに有効に活用することができる。
【0026】
又、原料である有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスは、原料揮発装置等を用いて揮発させ、又他のガス供給装置から供給される酸素ガス、不活性ガス等と混合して蒸着用原料ガスが調製され、この蒸着用原料ガス組成物は、原料ガス供給管17を通して外部電極12の空間部20内に導入される。この場合、蒸着用原料ガス組成物中の有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスの含有量は1〜40%位、酸素ガスの含有量は10〜70%位、不活性ガスの含有量は、10〜60%位の範囲とすることが望ましい。例えば、有機珪素化合物等の蒸着量モノマーガス:酸素ガス:不活性ガスの混合比を1:6:5〜1:17:14程度とすることが望ましい。この場合、不活性ガスは必ずしも必要と限らず、有機原料ガスと酸素ガスの二種類からなる反応ガスを使用して蒸着を行って良い、又、有機珪素化合物と酸素ガスの流量比は1:5〜1:20の範囲とすることが望ましい。この場合、ガス導入量は、有機珪素化合物は1〜50sccm、酸素ガスは5〜500sccm、より好ましくは有機珪素化合物は2〜6sccm、酸素ガスは20〜100scmが望ましい。
【0027】
又、上記したように、外部電極12と内部電極16の間に電源から所定の電圧が印加されるため、内部電極16の原料ガス吹き出し孔16aの近傍でグロー放電プラズマが生成される。このグロー放電プラズマは蒸着用原料ガス組成物中の1つ以上のガス成分から導出されるものであり、このグロー放電プラズマによって、プラズマ容器本体1の内面の全面に酸化珪素等の無機酸化物を主体とするガスバリア性薄膜を形成することができる。このときの外部電極12の中空部20内の真空度は1〜100Pa位、好ましくは真空度10〜70Pa位に調整することが望ましい。又、蒸着膜を形成する処理時間としては、1〜300秒間、好ましくは5〜30秒間位に調整することが望ましい。
【0028】
又、酸化珪素等の無機酸化物を主体とするガスバリア性薄膜は、プラスチック容器本体の内面の全面に、プラズマ化した原料ガスを酸素ガスで酸化しながらSiOxnynの形で薄膜状に形成される。この酸化珪素等の無機酸化物を主体とするガスバリア性薄膜は、緻密で、隙間の少ない、可撓性に富む連続層となるものである。従って、この酸化珪素等の無機酸化物を主体とするガスバリア性薄膜のバリア性は、従来の真空蒸着法によって形成されるガスバリア性薄膜と比較してはるかに高いものとなり、薄い膜厚で十分なバリア性を得ることができる。又、従来の珪素と酸素からなるSiOXと異なり、膜中に炭素成分が含まれるため柔軟性のある膜質が得られる。
【0029】
又、本発明において、SiOXプラズマによりプラスチック容器本体1の内面の表面が、清浄化され、プラスチック容器本体1の内面の表面に極性基やフリーラジカル等が発生するのでガスバリア性薄膜のプラスチック容器本体1の内面の表面との密着性が高い。更に、上記のように酸化珪素等の無機酸化物を主体とするガスバリア性薄膜形成時の外部電極12の空間部20内の真空度が1〜100Pa位、好ましくは10〜70Pa位に調整されることから、従来の真空蒸着法による酸化珪素武藤の無機酸化物を主体とするガスバリア性薄膜を形成するときの真空度(0.1Pa以下)に比較して低真空度であることから、プラスチック性容器本体の交換時の真空状態設定時間を短くすることができ、真空度を安定させ易いので、製膜プロセスが安定する。
【0030】
本発明において、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスを用いて形成される酸化珪素等の無機酸化物を主体とするガスバリア性薄膜は、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスと酸素ガスが化学反応し、その反応生成物が、プラスチック容器本体1の内面の表面に密着し、緻密な、柔軟性に富む薄膜が形成されるものである。この薄膜は、一般式SiOXY(但し1.5<X≦2.2、0.1≦Y≦0.5)で表される酸化珪素を主体とする薄膜である。xの値は、蒸着モノマーガス:酸素ガスのモル比、プラズマのエネルギー等により変化するが、一般的にxの値が小さくなればなるほどガス透過度は小さくなり、膜自身は黄色味を帯び、透明性が悪くなる。それ故xは1.5より大であることが望まれる。
【0031】
又、酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜は、少なくとも珪素原子、酸素原子、及び炭素原子が化学結合した酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜である。更には、詳しくは、このガスバリア性薄膜は、酸化珪素を主体とし、これに更に炭素、水素、珪素又は酸素の1種類、又は2種類以上の元素の化合物を少なくとも1種類を含有するものである。例えば、酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜として、C−H結合を有する化合物、Si−H結合を有する化合物、又はグラファイト状、ダイヤモンド状又はフラーレン状の炭素を含むもの、更には原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を含むもの等がある。具体的に挙げると、CH3部位を持つハイドロカーボン、SiH3シリル、SiH2シリレン等のハイドロシリカ、SiH2OHシラノール等の水酸基誘導体等を挙げることができる。又、蒸着過程の条件を変化させることにより、酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜中に含まれる化合物の種類、含有量等を変化させることができる。而して、酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜に含まれる酸化珪素以外の化合物の含有量は、0.1〜50%位、好ましくは、5〜30%位が望ましい。酸化珪素以外の化合物の含有量が0.1%未満であると、酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜の耐衝撃性、延展性、柔軟性等が不十分となり、曲げ等により、擦り傷、クラック等が発生し易く、高いガスバリア性を安定して維持することが困難になる。又、50%を越えると、ガスバリア性が低下して好ましくない。従って一般式SiOXYで表される酸化珪素のY値は0.01〜0.5、より好ましくは0.05〜0.3の範囲が望ましい。
【0032】
又、本発明において、酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜は、少なくとも珪素原子、酸素原子及び炭素原子が化学結合し、更に炭素原子量が珪素原子量100部に対し100〜190%、好ましくは130〜180%の割合で含有し、且つプラスチック容器本体の成形直後の表面積の収縮率3%から、プラスチック容器本体内に内容物を充填した直後のプラスチック容器本体の膨張率5%まで収縮及び膨張に追随し得るものである。
【0033】
而して、本発明において、酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜について、例えば、X線光電子分光装置(Xray Photoelectron Spectroscopy、XPS)、二次イオン質量分光装置(Secondary Ion Mass Spectroscopy、SIMS)等の表面分析装置を用い、深さ方向にイオンエッチングして分析する方法を利用して、酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜の元素分析を行うことにより、その物性を確認することができる。
【0034】
又、本発明において、酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜の膜厚は、5〜400nm、望ましくは20〜100nm位が望ましい。膜厚が100nmを越え、更には400nmより厚くなると、その膜にクラック性が発生し易くなるので好ましくない。又、20nmより小さくなり、更には5nm未満であると、バリア性の効果を奏することが著しく困難になることから好ましくない。
【0035】
本発明において、蒸着用モノマーガスとして、例えば、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジメチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサンその他の有機珪素化合物を利用することができる。その中でも、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサン及びヘキサメチルジシロキサンが、その取り扱い易さ及び形成された連続膜の特性等の点から、特に好ましい材料である。又、不活性ガスとしてはアルゴンガス、ヘリウムガス等を適用し得る。更に、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガス、酸素ガス、不活性ガス等を使用して調製した蒸着用原料ガス組成物における、炭素原子供給源として、メタンガス、プロパンガス、二酸化炭素、アセチレンガスその他のガスを添加することもできる。
【0036】
本発明において、プラスチック容器本体として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアクリル系趣旨、ポリメタクリル系樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂又はリサイクルポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂その他の樹脂の一種乃至二種以上を成形樹脂材料として使用し、これを、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、キャスト成形、熱成形その他の成形法によって成形してなる、カップ、ボトル、碗その他の形態の成形容器を適用することができる。而して、本発明において、プラスチック容器本体として、液体飲料、調味料、酒。ビールその他の液体を充填包装するのに適したポリエステル系樹脂或いはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂からなるブロー成形容器が特に望ましい。
【0037】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明につき詳細に説明する。
【実施例1】
【0038】
プラスチック容器本体として、容量が220mlのポリエチレンテレフタレート(PET)製ブロー成形ボトルを用意した。このプラスチック容器本体の平均肉厚は550μm、ガス透過有効面積は230cm2であり、酸素透過度は0.080cc/pkg・day(0.21atm)であり、水蒸気透過度は0.0130g/pkg・dayであった。
【0039】
図3に示す横型低温プラズマ化学気相成長装置の外部電極12の空間部20にプラスチック本体を装着し、蓋体12bで空間部20を密閉した。次いでプラスチック容器本体内の気圧を30Paまで下げた。
【0040】
内部電極16と外部電極12の間に13.56MHz、200Wの高周波電圧を印加し、次いでヘキサメチルジシロキサン2sccmと酸素ガス20sccmからなる原料組成物を、ガス流量を22ml/minを維持しながら、内部電極16の吹き出し孔16aからプラスチック容器本体の内部に供給して、プラスチック容器本体の内部に原料ガスのプラズマを発生させた。そして原料ガスのプラズマを発生させながら15秒間保持し、プラスチック容器本体の内面に第1の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜を形成した。このガスバリア性薄膜の膜厚は11nmであった。
【0041】
再度プラスチック容器本体の内部圧力を真空ポンプにより真空度30Paまで下げた。
【0042】
内部電極16と外部電極12の間に13.56MHz、300Wの高周波電圧を印加し、次いでヘキサメチルジシロキサン2sccmと酸素ガス20sccmからなる原料ガス組成物を、ガス流量を22ml/minに維持しながら内部電極16の吹き出し孔16aからプラスチック容器本体の内部に供給して、プラスチック容器本体の内部に原料ガスのプラズマを発生させた。そして原料ガスのプラズマを発生させながら、15秒間保持し、第2の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜を形成した。第1のガスバリア性薄膜と第2のガスバリア性薄膜の総膜厚は19nmであった。
【0043】
再度プラスチック容器本体の内部圧力を真空ポンプにより真空度30Paまで下げた。
【0044】
内部電極16と外部電極12の間に13.56MHz、400Wの高周波電圧を印加し、次いでヘキサメチルジシロキサン2sccmと酸素ガス20sccmからなる原料ガス組成物を、ガス流量を22ml/minに維持しながら内部電極16の吹き出し孔16aからプラスチック容器本体の内部に供給して、プラスチック容器本体の内部に原料ガスのプラズマを発生させた。そして原料ガスのプラズマを発生させながら、15秒間保持し、第3の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜を形成し、第1のガスバリア性薄膜、第2のガスバリア性薄膜及び第3のガスバリア性薄膜の積層体を得た。この積層体の総膜厚は27nmであった。
【実施例2】
【0045】
実施例1と同様のプラスチック容器本体を用いた。このプラスチック容器本体を、図3に示す横型低温プラズマ化学気相成長装置の外部電極12の空間部20に装着し、蓋体12bで空間部20を密閉した。次いでプラスチック容器本体内の気圧を30Paまで下げた。
【0046】
内部電極16と外部電極12の間に13.56MHz、400Wの高周波電圧を印加し、次いでヘキサメチルジシロキサン3sccmと酸素ガス30sccmからなる原料組成物を、ガス流量を33ml/minを維持しながら、内部電極16の吹き出し孔16aからプラスチック容器本体の内部に供給して、プラスチック容器本体の内部に原料ガスのプラズマを発生させた。そして原料ガスのプラズマを発生させながら15秒間保持し、プラスチック容器本体の内面に第1の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜を形成した。このガスバリア性薄膜の膜厚は15nmであった。
【0047】
再度プラスチック容器本体の内部圧力を真空ポンプにより真空度30Paまで下げた。
【0048】
内部電極16と外部電極12の間に13.56MHz、400Wの高周波電圧を印加し、次いでヘキサメチルジシロキサン2sccmと酸素ガス20sccmからなる原料ガス組成物を、ガス流量を22ml/minに維持しながら内部電極16の吹き出し孔16aからプラスチック容器本体の内部に供給して、プラスチック容器本体の内部に原料ガスのプラズマを発生させた。そして原料ガスのプラズマを発生させながら、15秒間保持し、第2の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜を形成した。第1のガスバリア性薄膜と第2のガスバリア性薄膜の総膜厚は25nmであった。
【0049】
再度プラスチック容器本体の内部圧力を真空ポンプにより真空度30Paまで下げた。
【0050】
内部電極16と外部電極12の間に13.56MHz、400Wの高周波電圧を印加し、次いでヘキサメチルジシロキサン1sccmと酸素ガス10sccmからなる原料ガス組成物を、ガス流量を11ml/minに維持しながら内部電極16の吹き出し孔16aからプラスチック容器本体の内部に供給して、プラスチック容器本体の内部に原料ガスのプラズマを発生させた。そして原料ガスのプラズマを発生させながら、15秒間保持し、第3の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜を形成し、第1のガスバリア性薄膜、第2のガスバリア性薄膜及び第3のガスバリア性薄膜の積層体を得た。この積層体の総膜厚は33nmであった。
【実施例3】
【0051】
実施例1と同様のプラスチック容器本体を用いた。このプラスチック容器本体を、図3に示す横型低温プラズマ化学気相成長装置の外部電極12の空間部20に装着し、蓋体12bで空間部20を密閉した。次いでプラスチック容器本体内の気圧を20Paまで下げた。
【0052】
内部電極16と外部電極12の間に13.56MHz、500Wの高周波電圧を印加し、次いでヘキサメチルジシロキサン4sccmと酸素ガス50sccmからなる原料組成物を、ガス流量を54ml/minを維持しながら、内部電極16の吹き出し孔16aからプラスチック容器本体の内部に供給して、プラスチック容器本体の内部に原料ガスのプラズマを発生させた。そして原料ガスのプラズマを発生させながら10秒間保持し、プラスチック容器本体の内面に第1の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜を形成した。このガスバリア性薄膜の膜厚は12nmであった。
【0053】
再度プラスチック容器本体の内部圧力を真空ポンプにより真空度20Paまで下げた。
【0054】
内部電極16と外部電極12の間に13.56MHz、450Wの高周波電圧を印加し、次いでヘキサメチルジシロキサン3sccmと酸素ガス40sccmからなる原料ガス組成物を、ガス流量を43ml/minに維持しながら内部電極16の吹き出し孔16aからプラスチック容器本体の内部に供給して、プラスチック容器本体の内部に原料ガスのプラズマを発生させた。そして原料ガスのプラズマを発生させながら、10秒間保持し、第2の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜を形成した。第1のガスバリア性薄膜と第2のガスバリア性薄膜の総膜厚は20nmであった。
【0055】
再度プラスチック容器本体の内部圧力を真空ポンプにより真空度20Paまで下げた。
【0056】
内部電極16と外部電極12の間に13.56MHz、400Wの高周波電圧を印加し、次いでヘキサメチルジシロキサン2sccmと酸素ガス30sccmからなる原料ガス組成物を、ガス流量を32ml/minに維持しながら内部電極16の吹き出し孔16aからプラスチック容器本体の内部に供給して、プラスチック容器本体の内部に原料ガスのプラズマを発生させた。そして原料ガスのプラズマを発生させながら、10秒間保持し、第3の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜を形成した。第1のガスバリア性薄膜、第2のガスバリア性薄膜及び第3のガスバリア性薄膜の総膜厚は28nmであった。
【0057】
再度プラスチック容器本体の内部圧力を真空ポンプにより真空度20Paまで下げた。
【0058】
内部電極16と外部電極12の間に13.56MHz、450Wの高周波電圧を印加し、次いでヘキサメチルジシロキサン1sccmと酸素ガス15sccmからなる原料ガス組成物を、ガス流量を16ml/minに維持しながら内部電極16の吹き出し孔16aからプラスチック容器本体の内部に供給して、プラスチック容器本体の内部に原料ガスのプラズマを発生させた。そして原料ガスのプラズマを発生させながら、10秒間保持し、第4の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜を形成し、第1のガスバリア性薄膜、第2のガスバリア性薄膜、第3のガスバリア性薄膜及び第4のガスバリア性薄膜の積層体を得た。この積層体の総膜厚は35nmであった。
【0059】
[比較例1]
実施例1と同様のプラスチック容器本体を用いた。このプラスチック容器本体を、図3に示す横型低温プラズマ化学気相成長装置の外部電極12の空間部20に装着し、蓋体12bで空間部20を密閉した。次いでプラスチック容器本体内の気圧を30Paまで下げた。
【0060】
内部電極16と外部電極12の間に13.56MHz、200Wの高周波電圧を印加し、次いでヘキサメチルジシロキサン3sccmと酸素ガス30sccmからなる原料組成物を、ガス流量を22ml/minを維持しながら、内部電極16の吹き出し孔16aからプラスチック容器本体の内部に供給して、プラスチック容器本体の内部に原料ガスのプラズマを発生させた。そして原料ガスのプラズマを発生させながら45秒間保持し、プラスチック容器本体の内面に酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜を形成した。このガスバリア性薄膜の膜厚は60nmであった。
【0061】
[比較例2]
比較例1と同様にして、但し印加電圧を400Wに変更してプラスチック容器本体の内面に酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜を形成した。このガスバリア性薄膜の膜厚は70nmであった。
【0062】
[比較例3]
実施例1と同様のプラスチック容器本体を用いた。このプラスチック容器本体を、図3に示す横型低温プラズマ化学気相成長装置の外部電極12の空間部20に装着し、蓋体12bで空間部20を密閉した。次いでプラスチック容器本体内の気圧を30Paまで下げた。
【0063】
内部電極16と外部電極12の間に13.56MHz、200Wの高周波電圧を印加し、次いでヘキサメチルジシロキサン2sccmと酸素ガス20sccmからなる原料組成物を、ガス流量を22ml/minを維持しながら、内部電極16の吹き出し孔16aからプラスチック容器本体の内部に供給して、プラスチック容器本体の内部に原料ガスのプラズマを発生させた。そして原料ガスのプラズマを発生させながら15秒間保持し、プラスチック容器本体の内面に第1の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜を形成した。このガスバリア性薄膜の膜厚は15nmであった。
【0064】
再度プラスチック容器本体の内部圧力を真空ポンプにより真空度30Paまで下げた。
【0065】
第1のガスバリア性薄膜の製造条件と同条件で第1の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜の上に第2の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜を形成した。第1の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜と第2の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜の総膜厚は30nmであった。
【0066】
[比較例4]
実施例1と同様のプラスチック容器本体を用いた。このプラスチック容器本体を、図3に示す横型低温プラズマ化学気相成長装置の外部電極12の空間部20に装着し、蓋体12bで空間部20を密閉した。次いでプラスチック容器本体内の気圧を30Paまで下げた。
【0067】
内部電極16と外部電極12の間に13.56MHz、400Wの高周波電圧を印加し、次いでヘキサメチルジシロキサン1sccmと酸素ガス10sccmからなる原料組成物を、ガス流量を11ml/minを維持しながら、内部電極16の吹き出し孔16aからプラスチック容器本体の内部に供給して、プラスチック容器本体の内部に原料ガスのプラズマを発生させた。そして原料ガスのプラズマを発生させながら15秒間保持し、プラスチック容器本体の内面に第1の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜を形成した。このガスバリア性薄膜の膜厚は10nmであった。
【0068】
再度プラスチック容器本体の内部圧力を真空ポンプにより真空度30Paまで下げた。
【0069】
内部電極16と外部電極12の間に13.56MHz、400Wの高周波電圧を印加し、次いでヘキサメチルジシロキサン2sccmと酸素ガス20sccmからなる原料ガス組成物を、ガス流量を22ml/minに維持しながら内部電極16の吹き出し孔16aからプラスチック容器本体の内部に供給して、プラスチック容器本体の内部に原料ガスのプラズマを発生させた。そして原料ガスのプラズマを発生させながら、15秒間保持し、第2の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜を形成した。第1のガスバリア性薄膜と第2のガスバリア性薄膜の総膜厚は22nmであった。
【0070】
再度プラスチック容器本体の内部圧力を真空ポンプにより真空度30Paまで下げた。
【0071】
内部電極16と外部電極12の間に13.56MHz、400Wの高周波電圧を印加し、次いでヘキサメチルジシロキサン3sccmと酸素ガス30sccmからなる原料ガス組成物を、ガス流量を33ml/minに維持しながら内部電極16の吹き出し孔16aからプラスチック容器本体の内部に供給して、プラスチック容器本体の内部に原料ガスのプラズマを発生させた。そして原料ガスのプラズマを発生させながら、15秒間保持し、第3の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜を形成し、第1のガスバリア性薄膜、第2のガスバリア性薄膜及び第3のガスバリア性薄膜の積層体を得た。この積層体の総膜厚は38nmであった。
【0072】
上記の実施例1〜3及び比較例1〜4で製造した、ガスバリア性薄膜を製膜したプラスチック容器本体について酸素透過度を測定した。酸素透過度の測定は、温度23℃、湿度90%Rhの条件下で、米国、モコン(MOCON)社製測定機[機種名、オクストラン(OXTRAN、2/20)]を用いて行った。酸素透過係数(単層のガスバリア性薄膜及び複層ガスバリア性薄膜の透過透過係数)は下記の式によって求めた。尚、式においてXbはブランクのプラスチック容器本体の酸素透過度cc/pkg・0.21atm・day、Xsはガスバリア性薄膜を製膜したプラスチック容器本体の酸素透過度cc/m2・0.21atm・day、Tcは酸素透過係数cc・nm/m2・day・atm、Aはプラスチック容器本体の表面積m2、tは単層のガスバリア性薄膜及び複層ガスバリア性薄膜の平均膜厚mmを示す。尚、ガスバリア性薄膜の膜厚はリガク製蛍光X線分光装置(RIX2000)に用いて行い、既知の40nmの酸化珪素量を基準として酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜の膜厚に換算して求めた。
【0073】
[数1]
Tc=t×1/[(Xs/0.21)/A−(Xb/0.21)/A]
【0074】
水蒸気透過度の測定は、温度40℃、湿度90%RHの条件下で、米国、モコン(MOCON)社製測定機[機種名、パーマトラン(Permtran、C−200)]を用いて行った。そして得られた水蒸気透過度の値に基づいて上記と同様にしてフィルム換算酸素透過度及び酸素透過係数を算出した。
【0075】
表1に酸素及び水蒸気の透過度及び透過係数を示す。
【0076】
【表1】

【0077】
上記の実施例1〜3及び比較例1〜4のガスバリア性薄膜を有するプラスチック容器本体について、それぞれにミネラルウォーター200mLを充填し、口部をアルミニウムでシールした後キャッピングした。次いで50℃/dryの恒温槽内に1ヶ月間保管後、再度、酸素透過度を測定し、下記の式を用いて保存前の酸素透過度と保存後の酸素透過度の比で酸素ガスバリア性の劣化率を評価した。その結果を表2に示す。
【0078】
[数2]
劣化率=[保存後の酸素透過度/保存前の透過度]×100%−100%
【0079】
【表2】

【0080】
ガスバリア性薄膜の酸化度の測定はESCA(Electron Spectroscopy For Chemical Analysis)法に基づく表面分析を行うことにより行った。具体的には、株式会社島津製作所製、X線光電子分析装置(機種名、ESCA850型)を用いて測定を行った。その結果を表3に示す。
【0081】
【表3】

【0082】
表1に示すように実施例1〜3は、酸素透過係数は1.5〜2.2cc・nm/m2・day・atmと極めて低く、水蒸気透過係数も2.7〜7.2g・nm/m2・day・atmと極めて低く、ガスバリア性が極めて高いことが分かった。此れに対し比較例1〜4においては酸素透過係数は37〜175cc・nm/m2・day・atm、水蒸気透過係数は57〜203g・nm/m2・day・atmと実施例1〜3のようには優れたガスバリア性は見られなかった。
【0083】
又、酸素透過度の劣化に関しては実施例1は劣化率は0%であり、劣化が全く見られなかった。実施例2及び3についても33%、50%と劣化が少ないことがわかった。此れに対し、比較例1〜4においては371%〜448%と劣化率は高く、日数が立つと酸素透過度は大きく低下することが分かった。
【0084】
又、実施例1〜3の複層ガスバリア性薄膜を構成する各層の酸化度は高く、特に最上層の酸化度は1.81〜1.92が高い。これに対し比較例1、2については酸化度は1.34、0.38と低い。比較例3については第1層及び第2層の酸化度は低い。又比較例4については第1層の酸化度は高いが最上層に行くにつれて各層の酸化度が段階的に低くなっており、最上層の酸化度は1.44と実施例1〜3の最上層の酸化度1.81〜1.92と比べて低い。これにより本発明の複層ガスガスバリア性薄膜の優れた酸素バリア性、水蒸気バリア性は第1層から最上層に向かって各層の酸化度が順次高くなっていることによるものであることが実証された。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明のガスバリア性プラスチック容器は、液体飲料、調味料、酒、ビールその他の液体等の内容物の包装容器として有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明のガスバリア性プラスチック容器の略図である。
【図2】酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜の略図である。
【図3】本発明のガスバリア性プラスチック容器を製造するための横型低温プラズマ化学気相成長装置の略図である。
【符号の説明】
【0087】
1 プラスチック容器本体
1a プラスチック容器本体の口部
2 酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜
10 基盤
11 絶縁板
12 外部電極
12a 外部電極の本体部
12b 外部電極の蓋体
13 整合器
14 高周波電源
15 排気管
16 内部電極
16a 原料ガス供給管
17 原料ガス供給管
20 外部電源の空間部
P1 矢印
P2 矢印


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック容器本体の内面に、プラズマ化学気相成長法によって形成した、複数層の酸化珪素を主体とするガスバリア性薄膜からなり、第1層から最上層にかけて各層の酸化度が順次増加した、酸化珪素を主体とする複層ガスバリア性薄膜を設けたことを特徴とするガスバリア性プラスチック容器。
【請求項2】
複層ガスバリア性薄膜を構成する各層は少なくとも珪素原子、酸素原子及び炭素原子が化学結合した酸化珪素SiOxnynを主体とするガスバリア性薄膜であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性プラスチック容器。
【請求項3】
複層ガスバリア性薄膜は、プラスチック容器の内面に積層する第1の酸化珪素SiOx1y1を主体とするガスバリア性薄膜乃至第nの酸化珪素SiOxnynを主体とするガスバリア性薄膜の各層のxn値を、x1<x2<x3<・・・<xnと不連続に増加させて積層してなるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスバリア性プラスチック容器。
【請求項4】
複層ガスバリア性薄膜を構成する各酸化珪素単層が、0.1〜10cc.nm/m2・day・atom(23℃/90%RH)の酸素透過係数及び1〜50g/m2・day(40℃/100%RH)の水蒸気透過係数を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のガスバリア性プラスチック容器。
【請求項5】
プラスチック容器がポリエステル樹脂のブロー成形容器であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のガスバリア性プラスチック容器。
【請求項6】
プラスチック容器がポリオレフィン樹脂のブロー成形容器であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のガスバリア性プラスチック容器。
【請求項7】
有機珪素化合物の全体の膜厚は20〜100nmの範囲にあることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載のガスバリア性プラスチック容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−82814(P2006−82814A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266927(P2004−266927)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】