説明

ガスバリア性組成物の製造方法およびガスバリア性積層フィルム

【課題】水酸基含有率の高いアルコキシドの加水分解物を用いたガスバリア性組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】前記アルコキシドと水と反応触媒とからなる原料を、複数のスタティックミキサーと前記複数のスタティックミキサーを連設する配管とからなる所定構造の加水分解物製造装置に導入して前記アルコキシドの加水分解物を得て、これをポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有させ、ゾルゲル法によって重縮合すること特徴とする。効率的な加水分解反応の進行と、重縮合反応の抑制とによって、水酸基含有率の高いアルコキシドの加水分解物を製造することができ、これを用いて、ガスバリア性積層フィルムを製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のアルコキシドと水と反応触媒とを複数のスタティックミキサーと前記複数のスタティックミキサーを連設する配管とからなる加水分解物製造装置に供給して得た水酸基価の高いアルコキシドの加水分解物を使用することを特徴とするガスバリア性組成物の製造方法、および該ガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を積層したガスバリア性積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
金属アルコキシドの加水分解物は、有機/無機ハイブリッドガラスやガスバリア性フィルムなどに多用され、例えば、部分的に有機化された珪素のアルコキシドを加水分解してシリカゾルにしたものは、更にシロキサン結合をゾルゲル法によって加水分解および重縮合してガスバリア性組成物などとして使用されている。
【0003】
このような金属アルコキシドの加水分解物は、通常、回分式の反応装置を使用して製造されているが、金属アルコキシドは加水分解反応が重縮合反応より優勢に起こる条件で反応を進めても、加水分解反応の終了時点では重縮合が優先的に進行してゲルとなりやすい。このため、金属アルコキシドの加水分解液の製造は、使用量に合せたスケールでの調製が余儀なくされ、大量生産に不向きであり、コスト高の一因となっている。
【0004】
このような問題を解決するため、たとえばRSi(OR’)3で示される珪素化合物を、水を主成分とする溶媒に溶解させる溶解ステップと、溶解後の珪素化合物と、塩基性触媒とを連続的に混合する混合ステップと、混合ステップで混合された混合液を流通させる流通ステップとを含む微粒子製造方法がある(特許文献1)。従来の連続合成法では、テトラエトキシシランの溶媒として凝集をおこしやすい水を主成分とする溶媒を避け、エタノールなどの有機溶媒を利用していたが、特許文献1では、メチルトリエトキシシランを原料として用いた場合には、水を主成分とする溶媒に溶解させた場合においても凝集などが認められず、長時間安定して連続合成しうることを見出したものであり、メチルトリエトキシシランを、水を主成分とする溶媒に溶解させたものを原料液として用い、塩基性触媒下でマイクロ反応管で反応させ、サブミクロンサイズ以上のシリカ微粒子を生成するものである。また、上記によれば、従来の金属アルコキシド法では製造できる微粒子のサイズに限界があったが、サブミクロンサイズ以上の微粒子を連続的に製造しうる、という。特許文献1では、このような製造装置として、複数の流体を内部空間に流通させながら混合する混合ユニットを備えるスタティックミキサーであって、前記混合ユニットの入口側には、当該混合ユニットとは別体の入口支持部材が取り付けられ、前記入口支持部材は、表面に、少なくとも2つの流体流入口と、前記混合ユニットの入口に対向する1つの流体流出口とが開設され、内部に、合流箇所と、第1の流体流入口から流入した流体と第2の流体流入口から流入した流体とを合流箇所まで導く個別通路と、合流箇所から流体流出口まで、合流された流体を導く合流通路とを含むスタティックミキサーを開示している。2液合流した後に直線的な流路を流通する際に、管内の中央部と管壁部とでは流速が異なり反応が均一に進行せず、合流管を混合液が流通する距離が長くなると、微粒子生成反応が不均一に進行する期間が長くなり、生成微粒子の大きさが不均一となることに鑑みたものであり、上記によれば原料を十分に混合することができる、という。なお、上記珪素化合物と水などとは、反応液と混合性のない空気や窒素などの分割剤とともにスタティックミキサーに導入され、混合されている。
【特許文献1】特開2007−254176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載の製造方法は、メチルトリエトキシシランを原料として用いた場合には、水を主成分とする溶媒に溶解させた場合においても凝集などが認められず、長時間安定して連続合成しうることを見出したものであり、原料としてRSi(OR’)3で示される珪素化合物に限定するものである。したがって、原料化合物としてテトラエトキシシランを対象とするものではない。
【0006】
また、使用するスタティックミキサーは、原料を混合するマイクロミキサーとして使用されるものであり、その管径は、数十μm〜数mmの範囲のものである。しかしながら、金属アルコキシドは、加水分解反応の終了時点で重縮合が優先的に進行してゲルとなりやすいため、使用量に合せて大規模に調製できることが好ましい。特許文献1では、管径が、数十μm〜数mmの範囲のスタティックミキサーをマイクロミキサーとして使用しているが、金属アルコキシドの加水分解物を工業的に製造する場合には多数のマイクロミキサーが必要となり、ジャストインタイムの製造には実際的でない。
【0007】
また、スタティックミキサーは、管径が短径であるほど撹拌率に優れる。特許文献1では、数十μm〜数mmの管径のスタティックミキサーを使用しているが、より太い管径のスタティックミキサーでは、金属アルコキシドの加水分解物が容易に得られないことを示すものである。
【0008】
特に、金属アルコキシドの中でもテトラエトキシシランは疎水性であり水と混和しない。このため、反応中は絶えず撹拌を行う必要があり、かつ反応を短時間で行うには反応温度を高める必要がある。一方、金属アルコキシドの加水分解反応は、終了時点で重縮合が優先的に進行してゲル化しやすい。従って、短時間で大量の金属アルコキシドの加水分解物を、ゲル化を防止して製造することは容易でない。しかも、金属アルコキシドの加水分解物は経時的に重縮合反応が進行し、加水分解物がゲル化するため、消費量に対応させたジャストインタイムの製造が要求されるが、管径がマイクロオーダーのマイクロ反応装置では、トンスケールの金属アルコキシドの加水分解物の製造は困難である。
【0009】
更に、金属アルコキシドは、更にシロキサン結合をゾルゲル法によって重縮合してガスバリア性組成物などとして使用されるが、加水分解が十分でないとガスバリア性が低下する場合がある。
【0010】
上記現状に鑑み、本発明は、ガスバリア性に優れる金属アルコキシドの加水分解物を含むガスバリア性組成物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、特に、テトラエトキシシランSi(OC254を原料とすることができ、ガスバリア活性に優れるガスバリア性組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、金属アルコキシドの加水分解反応について詳細に検討した結果、疎水性の金属アルコキシドと水と反応触媒とを連続的に撹拌しうる装置としてスタティックミキサーを使用し、原料をアップフローで流すことで均一な撹拌を行うことができること、スタティックミキサーの外周を加熱し、または冷却することで原料液を加熱し、または金属アルコキシドの加水分解物を冷却することができ、金属アルコキシドの加水分解を促進させ、かつ金属アルコキシドの重縮合を防止してゲル化を防止しうること、およびスタティックミキサーの配管径および反応温度を特定し、反応が終了するまでに滞留しうる数のスタティックミキサーを接続することで、原料供給量速度に対応して金属アルコキシドの加水分解物を製造することができること、このようにして得られた金属アルコキシドの加水分解物はガスバリア性が高いことを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
即ち、本発明は、一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物の製造方法であって、前記アルコキシドと水と反応触媒とからなる原料を、複数のスタティックミキサーと前記複数のスタティックミキサーを連設する配管とからなり、前記スタティックミキサーは、前記配管によって前記原料がアップフローで流れるように連設されたアルコキシドの加水分解物製造装置に導入して前記アルコキシドの加水分解物を得て、前記加水分解物に前記ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有させ、ゾルゲル法によって加水分解および重縮合すること特徴とする、ガスバリア性組成物の製造方法を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、基材フィルムの一方の面に有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜を設け、該蒸着膜上に前記製造方法で製造したガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設けたガスバリア性積層フィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のガスバリア性組成物の製造方法によれば、ゲル化が防止された金属アルコキシドの加水分解物およびガスバリア性組成物を消費量に対応して製造することができる。
本発明のガスバリア性組成物の製造方法によれば、製造装置を構成するスタティックミキサーの外周を加熱または冷却することで反応液を加熱し、または冷却することができるため、反応速度の選択を容易に調整することができ、特に重縮合の少ない金属アルコキシドの加水分解物を製造できるため、その後にポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体を含有させ、更に、ゾルゲル法によって十分に重縮合することができ、ガスバリア性を向上させることができる。
【0015】
本発明のガスバリア性積層フィルムは、回分式で製造したアルコキシドの加水分解物を使用する場合と比較して、ガスバリア性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の第一は、一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物の製造方法であって、
前記アルコキシドと水と反応触媒とからなる原料を、
複数のスタティックミキサーと前記複数のスタティックミキサーを連設する配管とからなり、前記スタティックミキサーは、前記配管によって前記原料がアップフローで流れるように連設されたアルコキシドの加水分解物製造装置に導入して前記アルコキシドの加水分解物を得て、
前記加水分解物に前記ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有させ、ゾルゲル法によって重縮合すること特徴とする、ガスバリア性組成物の製造方法である。
【0017】
(1)加水分解物製造装置
まず、本発明で使用するアルコキシドの加水分解物製造装置について説明する。
本発明で使用するアルコキシドの加水分解物製造装置は、複数のスタティックミキサーと前記複数のスタティックミキサーを連設する配管とからなり、前記スタティックミキサーは、前記配管によって前記原料がアップフローで流れるように連設されたアルコキシドの加水分解物製造装置である。より好適には、アルコキシドと水と反応触媒とからなる原料の供給部と、前記原料が導入される複数のスタティックミキサーと前記複数のスタティックミキサーを連設する配管とからなり、前記スタティックミキサーは、前記配管によって前記原料がアップフローで流れるように連設されることを特徴とするアルコキシドの加水分解物製造装置である。アルコキシドと水と反応触媒とからなる原料の供給部は、これら原料混合液の供給口であってもよく、アルコキシド、水、反応触媒のそれぞれの供給口からなるものであってもよく、またはアルコキシドの供給口と、水と反応触媒との供給口とからなるものなどであってもよい。更に、後記するように本発明では、アルコキシドとして、一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドを使用し、更にシランカップリング剤などを使用することもできる。したがって、原料としてシランカップリング剤を装置内に供給する場合には、シランカップリング剤の供給口を別個に設けてもよい。原料の供給部として、各原料の供給口を別個に形成し、それぞれの供給量をセンサーでモニターすれば、原料供給量を制御して生産量を容易に調製することができる。
【0018】
以下、本発明を図面を参照して説明する。なお、図1では、便宜のため、原料の供給部が、アルコキシドの供給口と、水と反応溶媒との供給口とからなる本発明のアルコキシドの加水分解物製造装置の態様の一例を示す。
【0019】
アルコキシドの加水分解物製造装置は、アルコキシドの供給口(10)と水と反応触媒との供給口(20)と、前記アルコキシドと水と反応触媒とからなる原料が導入される複数のスタティックミキサー(40)と前記複数のスタティックミキサーを連設する配管(30)とからなる。本発明では、アルコキシドや水、反応触媒などがスタティックミキサー(40)に導入され、その際、前記スタティックミキサー(40)は、前記アルコキシドと水と反応触媒とからなる原料がアップフローで流れるように配管(30)によって連設されることを特徴とする。エレメントを内蔵するスタティックミキサー(40)内を原料がアップフローで通過することで、疎水性のアルコキシドと水と反応触媒とを含む原料との混合を容易に行うことができ、均一なアルコキシドの加水分解物(60)を製造することができる。
【0020】
本発明では、一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドなどの疎水性化合物と水、反応触媒とをスタティックミキサー(40)内をアップフローで通過させて前記原料を高い効率で混合させるため、例えば図1に示すように、スタティックミキサー(40)の下端にアルコキシドの供給口(10)と水と反応触媒との供給口(20)とを連設し、このスタティックミキサー(40)の上端と次のスタティックミキサー(40)との間を配管(30)で連設することが好ましい。なお、前記アルコキシドの供給口(10)と水と反応触媒との供給口(20)には、アルコキシドや水、反応触媒などの原料をスタティックミキサー(40)に導入するためのポンプ(13)、(23)が配設されている。原料は、上記したポンプ(13)、(23)によってスタティックミキサー(40)内をアップフローで通過し、効率的な撹拌および混合がなされ、かつ、複数のスタティックミキサー(40)を連設する配管(30)では、原料がダウンフローで通過するため、スタティックミキサー(40)の使用量を低減してより効率的な撹拌を行うことができる。
【0021】
本発明では、複数のスタティックミキサー(40)と配管(30)とは、アルコキシド、水、反応触媒とからなる原料の加熱部(43)と、前記加熱された原料が導入され、かつ前記アルコキシドが加水分解される反応部(44)と、前記反応部から排出されるアルコキシド加水分解物が冷却される冷却部(45)とを含むことが好ましい。アルコキシドの加水分解反応速度は反応温度に依存するため、加熱部(43)を設けることで短時間でアルコキシドの加水分解物を製造することができる。また、アルコキシドの加水分解物は反応の終焉でゲル化しやすいが、冷却部を設けることで重縮合反応を抑制しゲル化を防止することができる。
【0022】
前記加水分解物製造装置では、スタティックミキサー(40)の外周を温水を循環して加温し、混合液の加熱部(43)とし、スタティックミキサー(40)の外周を冷水を循環させて冷却し、アルコキシド加水分解物が冷却される冷却部(45)とすることができる。スタティックミキサー(40)は、バッチ式反応器よりも単位容積あたりの表面積が大きいため、冷却や加熱が容易であり、また、本来撹拌装置であるから内容物が効率的にスタティックミキサー内で移動するため外周の低温との接触効率に優れ、冷却効率に優れ、重縮合反応を抑制でき、ゲル化防止を容易に行うことができる。なお、冷却や加熱方法は、上記に限定されるものではない。
【0023】
ここに、加水分解物製造装置を構成するスタティックミキサーは、エレメントを内蔵する円筒形状の管からなり、円筒管の内径(配管径)は4〜100mm、より好ましくは10〜50mmである。4mmを下回ると、大量のアルコキシドの加水分解物をジャストインタイムで製造することが困難となり、一方、100mmを超えると、アルコキシドと水や反応触媒との混合や加水分解反応が均一に行えない場合がある。なお、スタティックミキサー(40)の配管径は、前記加熱部(43)、反応部(44)、冷却部(45)で同じであっても良く、異なっていてもよい。
【0024】
また、スタティックミキサー(40)に内蔵されるエレメントは、特に限定はないが、例えば図2に示すように、長方形の板を約180°ねじった形状で、ねじれの方向により、右エレメント(51)と左エレメント(53)とを使用することができる。一般に、エレメントの長さは、スタティックミキサーの内径に対して、1.2〜2.0倍であり、適宜選択することができる。
【0025】
また、上記エレメントのねじり角度は150〜250°、より好ましくは170〜190°のねじり羽根部分を有する螺旋エレメントを好適に使用することができる。なお、本発明では、図2に示すように、右エレメント(51)と左エレメント(53)とを交互に配設してもよいが、図3に示すように、右エレメント(51)のみを連続して配設してもよい。なお、スタティックミキサー(40)に内蔵されるエレメントは、前記加熱部(43)、反応部(44)、冷却部(45)で同じであっても良く、異なっていてもよい。
【0026】
前記加水分解物製造装置は複数のスタティックミキサーと配管とが連設されるが、水酸基価の高い加水分解物を製造するには、前記アルコキシド、水、反応触媒とからなる原料の単位時間の供給量(L/Hr)と加水分解時間(Hr)との積が、前記反応部の容量(L)の合計の1.0〜1.5倍、より好ましくは1.0〜1.3倍となるように、前記反応部(44)が連設されることが好ましい。1.0倍を下回ると、反応液が装置から排出された後に加水分解反応を進行させる必要があり、未反応物が残存し、不利である。一方、1.5倍を超えてもアルコキシドの加水分解物を製造することができるが、装置内の滞留時間が長くなり、また、重縮合が進行する場合があり、不利である。なお、水酸基価の高い加水分解物とは、未反応物および重縮合物が少ない加水分解物を意味する。
【0027】
上記した原料の単位時間の供給量(L/Hr)と加水分解時間(Hr)との積が、前記反応部の容量(L)の合計の1.0〜1.5倍であるアルコキシドの加水分解装置とするには、以下の方法で調整すればよい。すなわち、アルコキシドの加水分解速度は、添加する触媒の種類や量、反応温度などの反応条件や分散されたアルコキシドの直径、すなわち分散径によって相違する。反応温度が高く、触媒添加量が多いほど反応速度は増加し、また、アルコキシドの分散径が小さいほど表面積が増加するため反応速度が増加する。アルコキシドの分散径は、アルコキシドや原料の流量とスタティックミキサー(40)の配管径が主な支配因子となる。加水分解物の製造量と原料の供給量とは等しいから、原料の供給量を求める生産量に対応させ、スタティックミキサー(40)の配管径を選択することで、アルコキシドの分散径を決定することができ、更に、反応条件を決定することで反応時間(Hr)を推定することができる。これにより、原料の供給量(L/Hr)と加水分解時間(Hr)との積を算出することができ、スタティックミキサー(40)の配管径を勘案して反応終了までに反応液が反応部に滞留しうる配管数のスタティックミキサー(40)を連設して反応部を構成することで、原料の単位時間の供給量(L/Hr)と加水分解時間(Hr)との積を、前記反応部の容量(L)に一致させることができる。これにより、前記加水分解物製造装置によれば、ジャストインタイムでアルコキシドの加水分解物を製造しうる製造装置とすることができる。
【0028】
上記加水分解物製造装置では、複数のスタティックミキサー(40)とそれを連設する配管(30)が、加熱部(43)、反応部(44)および冷却部(45)とを構成することが好ましいのであるが、これらの各容積に限定はなく、加熱温度や冷却温度、反応触媒の配合量、スタティックミキサーの配管径などに応じて適宜選択することができる。一般には、加熱部(43):反応部(44):冷却部(45)の容積は、1:8〜15:0.8〜1.5である。反応部(44)は、原料の滞留時間が長く、装置内で大容量を占めるところである。図4に、複数のスタティックミキサー(40)と配管(30)とを連設した反応部(44)態様の一例を示す。図4(a)は反応部(44)の平面図、図4(b)は側面透視図、図4(c)は右側面透視図である。図4(a)に示すように、反応部(44)は加熱部(43)および冷却部(45)に連設している。図中の太矢印は、原料の流れ方向を示す。図4(b)に示すように、反応部(44)は、加熱部(43)によって加熱された原料が、反応部(44)を構成するスタティックミキサー(40)にアップフローに導入され、配管(30)をダウンフローで流された後に次のスタティックミキサー(40)にアップフローに導入されるように、スタティックミキサー(40)および配管(30)が連設されている。図4では、複数のスタティックミキサー(40)および配管(30)が、順次、方形に連設される態様を示すが、これに限定されるものではない。図4では、反応部(44)を構成する複数のスタティックミキサー(40)および配管(30)がケーシング(44’)内に収納される態様を示すが、図示しない温度制御装置によってケーシング(44’)内の温度を制御すれば、反応部(44)の反応温度を調整することができる。なお、本発明のアルコキシドの加水分解装置は、加熱部(43)および冷却部(45)も反応部(44)と同様に、加熱部(45)のケーシングや冷却部(45)のケーシング内にこれらを収納し、温度制御装置を付設し、これらによって温度制御を行ってもよい。
【0029】
前記加水分解装置は、前記アルコキシドの供給口(10)と水と反応触媒との供給口(20)と、前記アルコキシド、水、反応触媒とからなる原料の加熱部(43)との間に、分散部(47)を有していてもよい。分散部(47)は、スタティックミキサー(40)と配管(30)とからなり、分散部を構成するスタティックミキサー(40)の配管径は、前記加熱部(43)を構成するスタティックミキサーの配管径の0.1〜0.8倍であることを特徴とする。
【0030】
前記したように、所定の供給量で原料をアルコキシドの加水分解物製造装置に供給する場合、スタティックミキサー(40)の配管径と反応条件が決定されると、反応部を構成するスタティックミキサー(40)の必要配管数が決定される。しかしながら、本発明では、加熱部(43)や反応部(44)を構成するスタティックミキサー(40)よりも配管径が短径のスタティックミキサー(40)を加熱部(43)より上流側に配設することで、より撹拌効率を向上させることができ、または分散部(47)に連設される加熱部(43)、反応部(44)、冷却部(45)のスタティックミキサー(40)の配管径を太径とすることができ、または反応時間を短縮しうることを見出した。分散部(47)を構成するスタティックミキサー(40)の配管径は、加熱部(43)を構成するスタティックミキサー(40)の配管径の0.1〜0.8倍であることが好ましく、より好ましくは0.2〜0.5倍である。0.1倍を下回ると、製造効率を低下させたり、分散部(47)での分散が下流の加熱部(43)以降で維持されず、分散部(47)を配設する意義が低減する場合がある。一方、0.8倍を上回ると、加熱部(43)以降の分散性と相違せず、分散部(47)を配設する意義が低減する場合がある。
【0031】
また、分散部(47)としては、上記したエレメント数が6〜16、より好ましくは8〜12であり、圧力損失が0.1〜0.9MPa、より好ましくは0.2〜0.7MPaである。この範囲であれば、反応部を構成するスタティックミキサーの配管径やエレメントの種類、エレメント数に限定されず、効率的な分散を行うことができるからである。
【0032】
本発明では、アルコキシド、水、反応触媒などの原料は、ポンプによって供給部からスタティックミキサー内に導入される。前記したように、原料供給部は、原料混合液の供給口であっても、それぞれの原料の個別の供給口であってもよいが、原料導入のためにポンプが連設されている。本発明では、原料を装置に導入するポンプは、脈動がなく、一定量の原料を供給できるポンプであることが好ましい。このようなポンプとしては、導入量が0〜1000L/H、圧力0.2〜5MPaのものを好適に使用することができる。
【0033】
(2)アルコキシド
本発明で使用するアルコキシドは、一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドである。
【0034】
上記一般式R1nM(OR2m中、R1としては、分岐を有していてもよい炭素数1〜8、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基などを挙げることができる。
【0035】
上記一般式R1nM(OR2m中、R2としては、分岐を有していてもよい炭素数1〜8、より好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、その他等を挙げることができる。なお、同一分子中に複数の(OR2)が存在する場合には、(OR2)は同一であっても、異なってもよい。
【0036】
上記一般式R1nM(OR2m中、Mで表される金属原子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、その他等を例示することができる。
本発明においてケイ素であることが好ましい。この場合、本発明で好ましく使用できるアルコキシドとしては、上記一般式R1nM(OR2mにおいてn=0の場合には、一般式Si(ORa)4(ただし、式中、Raは、炭素数1〜5のアルキル基を表す。)で表されるものである。上記において、Raとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、その他等が用いられる。このようなアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシランSi(OCH34、テトラエトキシシランSi(OC254、テトラプロポキシシランSi(OC374、テトラブトキシシランSi(OC494等を例示することができる。
【0037】
また、nが1以上の場合には、一般式RbnSi(ORc)4-m(ただし、式中、mは、1、2、3の整数を表し、Rb、Rcは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、その他を表わす。)で表されるアルキルアルコキシシランを使用することができる。このようなアルキルアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシランCH3Si(OCH33、メチルトリエトキシシランCH3Si(OC253、ジメチルジメトキシシラン(CH32Si(OCH32、ジメチルジエトキシシラン(CH32Si(OC252、その他等を使用することができる。本発明では、上記のアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン等は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0038】
また、本発明において、上記のアルコキシシランの縮重合物も使用することができ、具体的には、例えば、ポリテトラメトキシシラン、ポリテトラエメトキシシラン、その他等を使用することができる。
【0039】
本発明では、上記一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとして、MがZrであるジルコニウムアルコキシドも好適に使用することができる。例えば、テトラメトキシジルコニウムZr(OCH34、テトラエトキシジルコニウムZr(OC254、テトラiプロポキシジルコニウムZr(iso−OC374、テトラnブトキシジルコニウムZr(OC494、その他等を例示することができる。
【0040】
また、上記一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとして、MがTiであるチタニウムアルコキシドを好適に使用することができ、例えば、テトラメトキシチタニウムTi(OCH34、テトラエトキシチタニウムTi(OC254、テトライソプロポキシチタニウムTi(iso−OC374、テトラnブトキシチタニウムTi(OC494、その他等を例示することができる。
【0041】
また、上記一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとして、MがAlであるアルミニウムアルコキシドを使用することができ、例えば、テトラメトキシアルミニウムAl(OCH34、テトラエトキシアルミニウムAl(OC254、テトライソプロポキシアルミニウムAl(is0−OC374、テトラnブトキシアルミニウムAl(OC494、その他等を使用することができる。
【0042】
本発明では、上記アルコキシドは、2種以上を併用してもよい。例えばアルコキシシランとジルコニウムアルコキシドを混合して用いると、得られるガスバリア性積層フィルムの靭性、耐熱性等を向上させることができ、また、延伸時のフィルムの耐レトルト性などの低下が回避される。この際、ジルコニウムアルコキシドの使用量は、上記アルコキシシラン100質量部に対して10質量部以下の範囲である。10質量部を越えると、形成されるガスバリア性塗布膜が、ゲル化し易くなり、また、その膜の脆性が大きくなり、基材フィルムを被覆した際にガスバリア性塗布膜が剥離し易くなる傾向にあることから好ましくないものである。
【0043】
また、アルコキシシランとチタニウムアルコキシドを混合して用いると、得られるガスバリア性塗布膜の熱伝導率が低くなり、耐熱性が著しく向上する。この際、チタニウムアルコキシドの使用量は、上記のアルコキシシラン100質量部に対して5質量部以下の範囲である。5質量部を越えると、形成されるガスバリア性塗布膜の脆性が大きくなり、基材フィルムを被覆した際に、ガスバリア性塗布膜が剥離し易くなる場合がある。
【0044】
(3)ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体
本発明で使用するポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体としては、ポリビニルアルコール系樹脂、またはエチレン・ビニルアルコ一ル共重合体を単独で各々使用することができ、あるいは、ポリビニルアルコ一ル系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用することができる。本発明では、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体を使用することにより、ガスバリア性、耐水性、耐候性、その他等の物性を著しく向上させることができる。
【0045】
ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用する場合、それぞれの配合割合としては、質量比で、ポリビニルアルコ一ル系樹脂:エチレン・ビニルアルコール共重合体=10:0.05〜10:6位であることが好ましい。
【0046】
また、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体の含有量は、上記のアルコキシドの合計量100質量部に対して5〜500質量部の範囲であり、好ましくは20〜200質量部の配合割合である。500質量部を越えると、ガスバリア性塗布膜の脆性が大きくなり、得られるバリア性フィルムの耐水性および耐候性等が低下する場合がある。一方、5質量部を下回るとガスバリア性が低下する場合がある。
【0047】
前記ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体において、ポリビニルアルコール系樹脂としては、一般に、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるものを使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸基が数十%残存している部分ケン化ポリビニルアルコール系樹脂でも、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコールでも、OH基が変性された変性ポリビニルアルコール系樹脂でもよく、特に限定されるものではない。
【0048】
ポリビニルアルコール系樹脂の具体例としては、株式会社クラレ製PVA110(ケン化度=98〜99%、重合度=1,100)、PVA117(ケン化度=98〜99%、重合度=1,700)、PVA124(ケン化度=98〜99%、重合度=2,400)、PVA135H(ケン化度=99.7%以上、重合度=3,500)、同社製のRSポリマーであるRS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)、同社製のクラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)」、日本合成化学工業株式会社製のゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1,400)およびゴーセノールNM−18(ケン化度=98〜99%、重合度=1,700)」等を使用することができる。
【0049】
また、本発明において、エチレン・ビニルアルコール共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものを使用することができる。このようなケン化物には、酢酸基が数十モル%残存している部分ケン化物から、酢酸基が数モル%しか残存していないかまたは酢酸基が残存しない完全ケン化物までが包含される。特に限定されるものではないが、ガスバリア性の観点から好ましいケン化度が80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上であるものを使用することが好ましい。なお、上記エチレン・ビニルアルコール共重合体中のエチレンに由来する繰り返し単位の含量(以下「エチレン含量」ともいう)は、通常、0〜50モル%、好ましくは、20〜45モル%であるものことが好ましい。このようなエチレン・ビニルアルコール共重合体としては、株式会社クラレ製、「エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)」、日本合成化学工業株式会社製、「ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)」等を使用することができる。
【0050】
(4)シランカップリング剤
本発明では、ガスバリア性組成物を調製するに際し、シランカップリング剤等を添加してもよい。
【0051】
本発明で好適に使用できるシランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを広く使用することができる。例えば、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好適であり、それには、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、あるいは、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を使用することができる。このようなシランカップリング剤は、1種ないし2種以上を混合して用いてもよい。なお、シランカップリング剤の使用量は、上記アルコキシシラン100質量部に対して1〜20質量部の範囲内である。20質量部以上を使用すると、形成されるガスバリア性塗布膜の剛性と脆性とが大きくなり、また、ガスバリア性塗布膜の絶縁性および加工性が低下する場合がある。
【0052】
(5)反応触媒
本発明で使用する反応触媒とは、アルコキシドの加水分解用触媒であり、「酸」や「塩基」を例示することができる。例えば、酸としては、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸、ならびに、酢酸、酒石酸な等の有機酸、その他等を使用することができる。上記酸の使用量は、アルコキシドの総モル量に対し0.001〜0.05モルを使用することが好ましい。また、塩基としては、アンモニアを使用することができる。
【0053】
(6)水
水は、上記したアルコキシドの合計モル量1モルに対して0.1〜100モル、好ましくは、0.8から2モルの割合の水を用いることが好ましい。水の量が2モルを越えると、上記アルコキシドとから得られるポリマーが球状粒子となり、更に、この球状粒子同士が3次元的に架橋し、密度の低い、多孔性のポリマーとなる場合がある。また、上記の水の量が0.8モルを下回ると、加水分解反応が進行しにくくなる場合がある。
【0054】
(7)溶媒
本発明では、前記原料に有機溶媒を配合してもよい。前記したアルコキシド、水、反応触媒とからなる原料に親和性のある有機溶媒を使用することで、アルコキシドを含む原料の混合および撹拌をより効率的に行うことができる。このような有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、その他等を用いることができる。有機溶媒の使用量は、通常、上記アルコキシド100質量に対して1〜100質量部である。
【0055】
(8)アルコキシドの加水分解物
本発明では、上記アルコキシドと水と反応触媒とを含む原料とを前記したアルコキシドの加水分解装置に導入し、アルコキシドを加水分解してアルコキシドの加水分解物を製造することができる。
【0056】
この際、前記加水分解物製造装置の加熱部を温度30〜100℃、より好ましくは40〜80℃に加熱すると原料を反応部に迅速に供給して加水分解を行うことができ、前記反応部を温度30〜100℃、より好ましくは40〜80℃に制御すると重縮合を回避して効率的な加水分解を行うことができ、前記冷却部を温度−5〜20℃、より好ましくは5〜15℃に冷却すると、加水分解物の重縮合を回避し、並びにゲル化を防止することができる。
【0057】
また、前記アルコキシドと水と反応触媒とからなる原料の単位時間の供給量(L/Hr)と加水分解時間(Hr)との積が、前記反応部の容量(L)の合計の1.0〜1.5倍であるように原料を供給すると、水酸基価の高いアルコキシドの加水分解物を製造することができる。このことは、原料の未反応率が低下し、かつ重縮合が防止されたことを意味する。なお、例えば、アルコキシドとしてテトラエトキシシランを使用した場合には、1モルのテトラエトキシシランと4モルの水とが反応して、テトラヒドロキシシランと共に4モルのエチルアルコールが副生する。本発明では、副生物を分離してもよいし、用途によってはアルコキシドの加水分解物と副生物とを混合したまま使用してもよい。
【0058】
(9)ガスバリア性組成物
本発明では、前記アルコキシドの加水分解物と副生物との混合物に、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体、および必要に応じて、シランカップリング剤や有機溶媒、ゾルゲル法触媒等を混合し、ガスバリア性組成物を調製する。
【0059】
配合しうる有機溶媒としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体を混合する際に、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、その他の有機溶媒を使用することができる。なお、上記ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体は、上記アルコキシドやシランカップリング剤などを含む塗工液中で溶解した状態で取り扱われることが好ましく、上記有機溶媒の中から適宜選択することができる。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用する場合には、n−ブタノールを使用することが好ましい。なお、溶媒中に可溶化されたエチレン・ビニルアルコール共重合体を使用することもでき、例えば、日本合成化学工業株式会社製、商品名「ソアノール」などを好適に使用することができる。上記の有機溶媒の使用量は、通常、上記アルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体、酸およびゾルゲル法触媒の合計量100質量に対して30〜500質量部である。
【0060】
また、ゾルゲル法触媒とは、主として、重縮合触媒として使用される触媒であり、水に実質的に不溶であり、かつ有機溶媒に可溶な第三アミンなどの塩基性物質が用いられる。例えば、N、N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、その他等を使用することができる。本発明においては、特に、N、N−ジメチルベンジルアミンが好適である。その使用量は、アルコキシド、および、シランカップリング剤の合計量100質量部当り、0.01〜1.0質量部である。
【0061】
また、シランカップリング剤としては、前記したものを適宜配合することができる。本発明では、上記化合物の混合により、重縮合反応が開始および進行してガスバリア性組成物を製造することができる。
【0062】
以下、アルコキシドとしてアルコキシシランを使用し、より詳細に説明する。
ガスバリア性組成物として配合されたアルコキシドの加水分解物は、ゾルゲル法触媒の働きによって、加水分解によって生じた水酸基からプロトンが奪取され、加水分解物同士が脱水重縮合する。このとき、アルコキシドと共にシランカップリング剤が加水分解製造装置に供給されている場合には、このシランカップリング剤も加水分解されて、アルコキシ基が水酸基となり、また、塩基触媒の働きによりエポキシ基の開環も起こり、水酸基が生じる。よって、アルコキシドの加水分解物同士のほか、加水分解されたシランカップリング剤と加水分解されたアルコキシドとの重縮合反応も進行する。反応系にはポリビニルアルコール系樹脂、または、エチレン・ビニルアルコール共重合体、または、ポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体も存在するため、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体が有する水酸基との反応も生じる。なお、生成する重縮合物は、例えば、Si−O−Si、Si−O−Zr、Si−O−Ti、その他等の結合からなる無機質部分と、シランカップリング剤に起因する有機部分とを含有する複合ポリマーである。
【0063】
上記反応において、例えば、下記の式(III)に示される部分構造式を有し、更に、シランカップリング剤に起因する部分を有する直鎖状のポリマーがまず生成する。
【0064】
【化1】

このポリマーは、OR基(エトキシ基などのアルコキシ基)が、直鎖状のポリマーから分岐した形で有する。このOR基は、存在する酸が触媒となって加水分解されてOH基となり、ゾルゲル法触媒(塩基触媒)の働きにより、まず、OH基が、脱プロトン化し、次いで、重縮合が進行する。すなわち、このOH基が、下記の式(I)に示されるポリビニルアルコール系樹脂、または、下記の式(II)に示されるエチレン・ビニルアルコール共重合体と重縮合反応し、Si−O−Si結合を有する、例えば、下記の式(IV)に示される複合ポリマー、あるいは、下記の式(V)及び(VI)に示される共重合した複合ポリマーを生じると考えられる。
【0065】
【化2】

【0066】
【化3】

【0067】
【化4】

【0068】
【化5】

【0069】
【化6】

本発明では、添加される水の量をアルコキシド類1モルに対して0.8〜2モル、好ましくは1.0〜1.7モルに調節した場合には、上記直鎖状のポリマーが形成される。このような直鎖状ポリマーは結晶性を有し、非晶質部分の中に多数の微小の結晶が埋包された構造をとる。このような結晶構造は、結晶性有機ポリマー(例えば、塩化ビニリデンやポリビニルアルコール)と同様であり、さらに極性基(OH基)が部分的に分子内に存在し、分子の凝集エネルギーが高く分子鎖剛性も高いため、特にガスバリア性(O2、N2、H2O、CO2、その他等の透過を遮断、阻止する)に優れる。更に、この水酸基によって接着性樹脂層と化学的に結合し、強固な積層構造を形成することができる。
【0070】
なお、上記の反応は常温で進行し、ガスバリア性組成物は、調製中に粘度が増加する。
このガスバリア性組成物は、ガスバリア性に優れるため、所定の基材フィルムの上に積層することで、ガスバリア性フィルムを製造することができる。
【0071】
(10)ガスバリア性積層フィルム
本発明のガスバリア性積層フィルムは、基材フィルムの一方の面に有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜を設け、該蒸着膜上に上記したガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設けたガスバリア性積層フィルムである。
【0072】
前記したように、ガスバリア性組成物のゾルゲル反応は常温で進行し、調製中に粘度が増加する。このガスバリア性組成物を、有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜を有する基材フィルム上の前記蒸着膜の上に塗布し、加熱して溶媒および重縮合反応により生成したアルコールを除去すると重縮合反応が完結し、基材フィルム上の前記蒸着膜の上に透明な塗布膜が形成させることができる。なお、上記の塗布膜を複数層積層する場合には、層間の塗布膜中の複合ポリマー同士も縮合し、層と層との間が強固に結合する。
【0073】
更に、シランカップリング剤の有機反応性基や、加水分解によって生じた水酸基が、基材フィルム、または、基材フィルム上の有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜の表面の水酸基等と結合するため、基材フィルム、または前記蒸着膜表面と、塗布膜との接着性も良好なものとなる。このように、本発明においては、有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜とガスバリア性塗布膜とが、例えば、加水分解・共縮合反応による化学結合、水素結合、あるいは、配位結合などを形成するため、蒸着膜とガスバリア性塗布膜との密着性が向上し、その2層の相乗効果により、より良好なガスバリア性の効果を発揮し得る。
【0074】
(i)基材フィルム
ガスバリア性積層フィルムを構成する基材フィルムとしては、有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜やガスバリア性塗布膜を設けるに足る機械的、物理的、化学的強度を有し、特に前記蒸着膜を形成する条件に耐え、前記蒸着膜の特性を損なうことなく良好に保持し得る樹脂フィルムを使用することが好ましい。
【0075】
このような基材フィルムとしては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、その他等の各種の樹脂からなるフィルムを使用することができる。特に、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、または、ポリアミド系樹脂のフィルムが好ましい。
【0076】
上記樹脂は、上記樹脂の1種または2種以上を使用し、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法、その他等の製膜化法を用いて単層で製膜化したもの、または2種以上の樹脂を使用して共押し出しなどで多層製膜したもの、または2種以上の樹脂を混合使用して製膜し、テンター方式やチューブラー方式等で1軸ないし2軸方向に延伸してなる各種の樹脂フィルムを使用することができる。
【0077】
本発明において、基材フィルムの膜厚としては、6〜100μm位、より好ましくは、9〜50μm位が好ましい。
なお、本発明では、上記の基材フィルムの一方の面に有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜を形成するが、予め基材フィルムに表面処理をおこなってもよい。これによって前記蒸着膜やガスバリア性塗布膜との密着性を向上させることができる。このような表面処理としては、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理などがある。このような表面処理の中でも、特に、コロナ処理やプラズマ処理を行うことが好適である。
【0078】
(ii)有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜
本発明で使用するガスバリア性積層フィルムにおける蒸着膜としては、例えば、化学気相成長法、物理気相成長法またはこれらを複合して、有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜である。
【0079】
化学気相成長法としては、例えば、プラズマ化学気相成長法、低温プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等がある。具体的には、基材フィルムの一方の面に、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて酸化珪素等の蒸着膜を形成することができる。
【0080】
上記において、低温プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用することができる。高活性の安定したプラズマが得られる点で、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが好ましい。
【0081】
上記の低温プラズマ化学気相成長法による蒸着膜の形成法の一例を低温プラズマ化学気相成長装置の概略的構成図である図6を用いて説明する。
本発明では、プラズマ化学気相成長装置221の真空チャンバー222内に配置された巻き出しロール223から基材フィルム201を繰り出し、更に、該基材フィルム201を、補助ロール224を介して所定の速度で冷却・電極ドラム225周面上に搬送する。一方、ガス供給装置226、227および、原料揮発供給装置228等から酸素ガス、不活性ガス、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスその他等を供給して蒸着用混合ガス組成物を調製し、これを原料供給ノズル229を通して真空チャンバー222内に導入する。該蒸着用混合ガス組成物を上記冷却・電極ドラム225周面上に搬送された基材フィルム201の上に供給し、グロー放電プラズマ230によってプラズマを発生させ照射し、蒸着膜を製膜化する。次いで、上記で蒸着膜を形成した基材フィルム201を補助ロール233を介して巻き取りロール234に巻き取れば、プラズマ化学気相成長法による有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着膜を形成することができる。なお、冷却・電極ドラム225は、真空チャンバー222の外に配置されている電源231から所定の電力が印加され、冷却・電極ドラム225の近傍には、マグネット232を配置してプラズマの発生が促進されている。このように冷却・電極ドラムに電源から所定の電圧が印加されているため、真空チャンバー内の原料供給ノズルの開口部と冷却・電極ドラムとの近傍でグロー放電プラズマが生成される。このグロー放電プラズマは、混合ガスなかの1つ以上のガス成分から導出されるものであり、この状態で基材フィルムを一定速度で搬送させると、グロー放電プラブマによって、冷却・電極ドラム周面上の基材フィルムの上に、有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着膜を形成することができる。なお、図6中、符号235は真空ポンプを表す。
【0082】
本発明では、真空チャンバー内を真空ポンプにより減圧し、真空度1×10-1〜1×10-8Torr位、好ましくは、真空度1×10-3〜1×10-7Torr位に調整することが好ましい。
【0083】
原料揮発供給装置は、原料である有機珪素化合物を揮発させ、ガス供給装置から供給される酸素ガス、不活性ガス等と混合させ、この混合ガスを原料供給ノズルを介して真空チャンバー内に導入させる。この際、混合ガス中の有機珪素化合物の含有量は、1〜40%、酸素ガスの含有量は10〜70%、不活性ガスの含有量は10〜60%の範囲とすることが好ましく、例えば、有機珪素化合物:酸素ガス:不活性ガスの混合比を1:6:5〜1:17:14程度とすることができる。なお、上記有機珪素化合物、不活性ガス、酸素ガスなどを供給する際の真空チャンバー内の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr、好ましくは真空度1×10-1〜1×10-2Torrであることが好ましく、また、基材フィルムの搬送速度は、10〜300m/分、好ましくは50〜150m/分である。このようにして得られる有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着膜の形成は、基材フィルムの上に、プラズマ化した原料ガスを酸素ガスで酸化しながらSiOXの形で薄膜状に形成されるので、当該形成される蒸着膜は、緻密で隙間の少ない、可撓性に富む連続層となり、従って、蒸着膜のバリア性は、従来の真空蒸着法等によって形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜と比較してはるかに高く、薄い膜厚で十分なバリア性を得ることができる。また、SiOXプラズマにより基材フィルムの表面が清浄化され、基材フィルムの表面に、極性基やフリーラジカル等が発生するので、形成される蒸着膜と基材フィルムとの密接着性が高いものとなる。更に、蒸着膜の形成時の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr、好ましくは、1×10-1〜1×10-2Torrであって、従来の真空蒸着法により酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成する時の真空度、1×10-4〜1×10-5Torrに比較して低真空度であるから、基材フィルムの原反交換時の真空状態設定時間を短くすることができ、真空度が安定しやすく製膜プロセスも安定化する。
【0084】
本発明において、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスを使用して形成される蒸着膜は、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスと酸素ガス等とが化学反応し、その反応生成物が、基材フィルムの一方の面に密接着し、緻密な、柔軟性等に富む薄膜を形成するものであり、通常、一般式SiOX(ただし、Xは、0〜2の数を表す)で表される酸化珪素を主体とする連続状の薄膜である。上記酸化珪素の蒸着膜としては、透明性、バリア性等の点から、一般式SiOX(ただし、Xは、1.3〜1.9の数を表す。)で表される酸化珪素の蒸着膜を主体とする薄膜であることが好ましい。なお、Xの値は、蒸着モノマーガスと酸素ガスのモル比、プラズマのエネルギー等により変化するが、一般的に、Xの値が小さくなればガス透過度は小さくなるが、膜自身が黄色性を帯び、透明性が悪くなる。
【0085】
本発明において、上記酸化珪素の蒸着膜は、酸化珪素を主体とし、更に、炭素、水素、珪素または酸素の1種類、または2種類以上の元素からなる化合物の少なくとも1種類を化学結合等により含有する蒸着膜からなることを特徴とするものである。例えば、C−H結合を有する化合物、Si−H結合を有する化合物、または、炭素単位がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラーレン状等になっている場合、更に、原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を化学結合等によって含有する場合があるものである。例えば、CH3部位を持つハイドロカーボン、SiH3シリル、SiH2シリレン等のハイドロシリカ、SiH2OHシラノール等の水酸基誘導体等を挙げることができる。本発明では、上記蒸着膜として、有機珪酸化合物を含有する蒸着膜であることが好ましい。なお、上記以外でも、蒸着過程の条件等を変化させることにより、蒸着膜中に含有される化合物の種類、量等を変化させることができる。この際、上記の化合物が蒸着膜中に含有する含有量としては、0.1〜50%、好ましくは5〜20%である。含有率が0.1%未満であると、蒸着膜の耐衝撃性、延展性、柔軟性等が不十分となり、曲げなどにより、擦り傷、クラック等が発生し易く、高いバリア性を安定して維持することが困難になる場合があり、一方、50%を越えるとバリア性が低下する場合がある。
【0086】
更に、本発明では、有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着膜において、上記の化合物の含有量が蒸着膜の表面から深さ方向に向かって減少していることが好ましい。これにより、蒸着膜の表面では上記化合物等により耐衝撃性等が高められ、他方、基材フィルムとの界面では、上記化合物の含有量が少ないために基材フィルムと蒸着膜との密接着性が強固なものとなる。
【0087】
本発明において、上記の蒸着膜は、例えばX線光電子分光装置(Xray Photoelectron Spectroscopy、XPS)、二次イオン質量分析装置(Secondary Ion Mass Spectroscopy、SIMS)等の表面分析装置を用い、深さ方向にイオンエッチングする等して分析し、蒸着膜の元素分析を行うことで、上記の物性を確認することができる。
【0088】
本発明において、上記蒸着膜の膜厚は、50Å〜4000Å位であることが好ましく、より好ましくは100〜1000Åである。4000Åより厚くなると、その膜にクラック等が発生する場合があり、一方、50Å未満であると、バリア性の効果を奏することが困難になる場合がある。なお、膜厚は、例えば、株式会社理学製の蛍光X線分析装置(機種名、RIX2000型)を用いて、ファンダメンタルパラメーター法で測定することができる。また、蒸着膜の膜厚を変更する手段としては、蒸着膜の体積速度を大きくする方法、すなわち、モノマーガスと酸素ガス量を多くする方法や蒸着する速度を遅くする方法等によって行うことができる。
【0089】
本発明において、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスとしては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、その他等を使用することができる。これらの中でも、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、または、ヘキサメチルジシロキサンを原料として使用することが、その取り扱い性、形成された連続膜の特性等から、特に好ましい。なお、上記において、不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス等を使用することができる。
【0090】
一方、本発明では、物理気相成長法によっても有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜を形成することができる。このような物理気相成長法として、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)などにより有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜を形成することができる。
【0091】
具体的には、有機珪素化合物、金属または金属の酸化物を原料とし、これを加熱して蒸気化し、これを基材フィルムの一方の上に蒸着する真空蒸着法、または、原料として金属または金属の酸化物を使用し、酸素を導入して酸化させて基材フィルムの一方の上に蒸着する酸化反応蒸着法、更に酸化反応をプラズマで助成するプラズマ助成式の酸化反応蒸着法等を用いて蒸着膜を形成することができる。なお、蒸着材料の加熱方式としては、例えば、抵抗加熱方式、高周波誘導加熱方式、エレクトロンビーム加熱方式(EB)等にて行うことができる。物理気相成長法による蒸着膜を形成する方法について、巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略的構成図を示す図7を参照して説明する。
【0092】
まず、巻き取り式真空蒸着装置241の真空チャンバー242の中で、巻き出しロール243から繰り出す基材フィルム201は、ガイドロール244、245を介して、冷却したコーティングドラム246に案内される。上記の冷却したコーティングドラム246上に案内された基材フィルム201の上に、るつぼ247で熱せられた蒸着源248、例えば、金属アルミニウム、あるいは、酸化アルミニウム等を蒸発させ、更に、必要ならば、酸素ガス吹出口249より酸素ガス等を噴出し、これを供給しながら、マスク250、250を介して、例えば、酸化アルミニウム等を蒸着してなる蒸着膜を成膜化し、次いで、上記において、例えば、前記蒸着膜を形成した基材フィルム201を、ガイドロール251、252を介して送り出し、巻き取りロール253に巻き取ると物理気相成長法による蒸着膜を形成することができる。なお、上記巻き取り式真空蒸着装置を用いて、まず第1層の蒸着膜を形成し、次いで、その上に蒸着膜を更に形成し、または、上記巻き取り式真空蒸着装置を2連に連接し、連続的に蒸着膜を形成して、2層以上の多層膜からなる前記蒸着膜を形成してもよい。
【0093】
金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜としては、基本的には、金属の酸化物を蒸着した薄膜であればよく、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の金属の酸化物の蒸着膜を使用することができる。好ましくは、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)等の金属の酸化物の蒸着膜を挙げることができる。よって、上記の金属の酸化物の蒸着膜は、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物等のように金属酸化物と称することができ、その表記は、例えば、SiOX、AlOX、MgOX等のようにMOX(ただし、式中、Mは、金属元素を表し、Xの値は、金属元素によってそれぞれ範囲がことなる。)で表される。
【0094】
また、上記のXの値の範囲としては、ケイ素(Si)は0を超え2以下、アルミニウム(Al)は0を超え1.5以下、マグネシウム(Mg)は0を超え1以下、カルシウム(Ca)は0を超え1以下、カリウム(K)は0を超え0.5以下、スズ(Sn)は0を超え2以下、ナトリウム(Na)は0を超え0.5以下、ホウ素(B)は0を超え1、5以下、チタン(Ti)は0を超え2以下、鉛(Pb)は0を超え1以下、ジルコニウム(Zr)は0を超え2以下、イットリウム(Y)は0を超え1.5以下の範囲である。上記においてX=0の場合は完全な金属であり、Xの範囲の上限は、完全に酸化した値である。一般的に、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)以外は、使用される例に乏しい。このため、本発明において、Mとしてケイ素やアルミニウムが好ましく、その際これらのXの値は、ケイ素(Si)は1.0〜2.0、アルミニウム(Al)は0.5〜1.5の範囲である。なお、前記蒸着膜の膜厚は、使用する金属や金属の酸化物の種類等によって異なるが、例えば、50〜2000Å、好ましくは、100〜1000Åの範囲内で任意に選択することができる。また、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜は、使用する金属または金属の酸化物としては、1種または2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した蒸着膜を構成することもできる。
【0095】
更に、本発明では、例えば物理気相成長法と化学気相成長法の両者を併用して異種の前記蒸着膜の2層以上からなる複合膜を形成して使用することもできる。
上記の異種の蒸着膜の2層以上からなる複合膜としては、まず、基材フィルムの上に、化学気相成長法により、緻密で柔軟性に富み、比較的にクラックの発生を防止し得る有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着膜を設け、次いで、該蒸着膜の上に、物理気相成長法による金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜を設けて、2層以上からなる複合膜からなる蒸着膜を構成することが好ましいものである。上記とは逆くに、基材フィルムの上に、先に、物理気相成長法により、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜を設け、次に、化学気相成長法により、緻密で、柔軟性に富み、比較的にクラックの発生を防止し得る有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着膜を設けて、2層以上からなる複合膜からなる蒸着膜を構成することもできる。
【0096】
(iii)ガスバリア性組成物の塗工
本発明のガスバリア性組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアロールコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコート、デイツピング、刷毛、バーコード、アプリケータ等の塗布手段により、1回あるいは複数回の塗布で、乾燥膜厚が、0.01〜30μm、好ましくは、0.1〜10μm位の塗布膜を形成することができ、更に、通常の環境下、50〜300℃、好ましくは、70〜200℃の温度で、0.005〜60分間、好ましくは、0.01〜10分間、加熱・乾操することにより、縮合が行われ、本発明のガスバリア性塗布膜を形成することができる。
【0097】
なお、エチレン・ビニルアルコール共重合体単独、またはポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体との両者を用いて得られたバリア性フィルムは、熱水処理後のガスバリア性に優れる。一方、ポリビニルアルコール系樹脂のみを使用してバリア性フィルムを製造した場合には、予め、ポリビニルアルコール系樹脂を使用したガスバリア性組成物を塗工して第1の塗布膜を形成し、次いで、その塗布膜の上に、エチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するガスバリア性組成物を塗工して第2の塗布膜を形成し、それらの複合層を形成すると、熱水処理後のガスバリア性が向上したバリア性フィルムを製造することができる。
【0098】
更に、上記エチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するガスバリア性組成物により塗布膜を形成し、または、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて含有するガスバリア性組成物により塗布膜を形成し、これらを複数積層しても、バリア性フィルムのガスバリア性の向上に有効な手段となる。
【0099】
本発明のガスバリア性積層フィルムは、複数のスタティックミキサーと前記複数のスタティックミキサーを連設する配管とからなり、前記スタティックミキサーは、前記配管によって前記原料がアップフローで流れるように連設されたアルコキシドの加水分解物製造装置に原料を導入して得たアルコキシドの加水分解物を使用して調製したガスバリア性組成物を使用するため、従来の回分式で調製したアルコキシドの加水分解物を使用するよりも、水酸基の含有率が高く、その結果、特に水蒸気透過性を効率的に低下し、ガスバリア活性が高い。
【実施例】
【0100】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
製造例1
図5に示す、分散部、加熱部、反応部および冷却部を有する装置を使用してアルコキシドの加水分解物を製造した。なお、分散部を構成するスタティックミキサーは、右エレメントと左エレメントを合計12内蔵する配管径が6mm、長さ120mmのスタティックミキサーであり、加熱部を構成するスタティックミキサーは、右エレメントと左エレメントを交互に合計48内蔵する配管径が17.5mm、長さ1350mm、外周をジャケットで60℃に昇温したスタティックミキサーを管径が10mm、長さ1400mmの配管で連設したものを各3基連設したものであり、反応部を構成するスタティックミキサーは、右エレメントと左エレメントを交互に合計47内蔵する配管径が17.5mm、長さ1250mmのスタティックミキサーを管径が10mm、長さ1300mmの配管で連設したものを各32基連設したものであり、冷却部を構成するスタティックミキサーは、右エレメントと左エレメントを交互に合計48内蔵する配管径が17.5mm、長さ1350mm、外周をジャケットで10℃に冷却したスタティックミキサーを管径が10mm、長さ1400mmの配管で連設したものを各3基連設したものである。
【0101】
この製造装置に、下記表1に示す原料組成で、アルコキシドの供給部に疎水性のエチルシリケート(テトラエトキシシラン)とシランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)とを供給し、水と塩酸およびイソプロピルアルコールとの混合用液を原料の供給部に供給した。なお、下記原料は、流速100L/Hrになるように脈動のないポンプにて供給した。なお、上記スタティックミキサーには、供給原料をアップフローで供給し、原料供給量と同じ流速100L/Hrでエチルシリケートの加水分解物を製造することができた。
【0102】
また、得られた加水分解物について、970cm-1に現れるSi−OHの伸縮振動に帰属する吸収を測定した。なお、装置は、日本電子株式会社製、JIR−WINSPEC50を使用した。結果を表2に示す。
【0103】
【表1】

製造例2
縦15mm、横30mm、容量5Lの回分式装置に、実施例1と同様の原料を添加し、撹拌翼を備えた撹拌装置によって原料液を撹拌しつつ、温度60℃に加温して加水分解物を得た。
【0104】
また、得られた加水分解物について、970cm-1に現れるSi−OHの伸縮振動に帰属する吸収を測定した。結果を表2に示す。
【0105】
【表2】

(結果)
表2に示されるように、製造例1の加水分解物は、製造例2の加水分解物よりも970cm-1の吸光度が高いため、Si−OHの伸縮振動に帰属する吸収度が高く、原料化合物が効率的に加水分解され、または加水分解物の重縮合が抑制されていることが判明した。
【0106】
実施例1
(1) 基材フィルムとして、片面をコロナ処理した厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、この2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを巻き取り式の真空蒸着装置の送り出しロールに装着し、ついでこれを繰り出し、その2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面に、アルミニウムを蒸着源に用いて酸素ガスを供給しながら、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法により、下記の蒸着条件で膜厚200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成した。
【0107】
(蒸着条件)
蒸着チャンバー内の真空度:2×10-4mbar
巻き取りチャンバー内の真空度:2×10-2mbar
電子ビーム電力:25kW
フィルムの搬送速度:240m/分
蒸着面:コロナ処理面
(2)次いで、下記表3に示す組成に従って、組成a.のポリビニルアルコールと、イソプロピルアルコールおよびイオン交換水からなる混合液に、組成b.として製造例1で調製したエチルシリケート、シランカップリング剤、塩酸、イソプロピルアルコール、イオン交換水からなる加水分解液を加えて撹拌し、無色透明のガスバリア性組成物を得た。
【0108】
【表3】

次に、酸化アルミ蒸着面に、上記で製造したガスバリア性組成物をコーティングし、乾燥温度180℃、ライン速100m/minで加熱処理し、厚さ0.3μm(乾操状態)のガスバリア性コート層を形成し、ガスバリア性積層フィルムを製造した。
【0109】
このガスバリア積層フィルムを使って、下記方法によって酸素透過度および水蒸気透過度を測定した。
(1) 酸素透過度の測定
温度23℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、オクストラン(OXTRAN)〕にて測定した。
【0110】
(2) 水蒸気透過度の測定
温度40℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、パーマトラン(PERMATRAN3/31)〕にて測定した。
【0111】
結果を表5に示す。
実施例2
(1) 基材フィルムとして、片面をコロナ処理した厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、これをプラズマ化学気相成長装置の送り出しロールに装着し、ついで、下記に示す条件で、上記の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面に、厚さ120Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した。
【0112】
(蒸着条件)
蒸着面:コロナ処理面
導入ガス量:ヘキサメチレンジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1.0:3.0:3.0(単位:slm)
真空チャンバ内の真空度:2〜6×10-6mbar
蒸着チャンバー内の真空度:2〜5×10-3mbar
冷却・電極ドラム供給電力:10kW
ライン速度:100m/分
(2)次いで、上記で膜厚120Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した直後に、その酸化珪素の蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kW、酸素ガス(O2):アルゴンガス(Ar)=7.0:2.5(単位:slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10-5Torr、処理速度420m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、酸化珪素の蒸着膜面の表面張力を54dyn/cm以上に向上させたプラズマ処理面を形成した。
【0113】
(3)次に、下記の表4に示す組成に従って、組成a.のポリビニルアルコールと、イソプロピルアルコールおよびイオン交換水からなる混合液に、組成b.として製造例1で調製したエチルシリケート、シランカップリング剤、塩酸、イソプロピルアルコール、イオン交換水からなる加水分解液を加えて撹拌し、無色透明のガスバリア性組成物を得た。
【0114】
【表4】

次に、上記の(2)で形成したプラズマ処理面の上に、上記で製造したガスバリア性組成物をコーティングし、乾燥温度180℃、ライン速100m/minで加熱処理し、厚さ0.3μm(乾操状態)のガスバリア性コート層を形成し、ガスバリア性積層フィルムを製造した。
【0115】
このガスバリア積層フィルムを使って、実施例1と同様にして、酸素透過度および水蒸気透過度を測定した。結果を表5に示す。
【0116】
【表5】

比較例1
製造例1の加水分解物に代えて、製造例2の加水分解物を使用した以外は、実施例1と同様に操作し、ガスバリア性積層フィルムを製造し、実施例1と同様にして酸素透過度および水蒸気透過度を測定した。結果を表5に示す。
【0117】
比較例2
製造例1の加水分解物に代えて、製造例2の加水分解物を使用した以外は、実施例2と同様に操作し、ガスバリア性積層フィルムを製造し、実施例2と同様にして酸素透過度および水蒸気透過度を測定した。結果を表5に示す。
【0118】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明のガスバリア性組成物の製造方法は、アルコキシドの加水分解を効率的に行うため、水酸基含有量が高く、これをガスバリア性組成物として使用すると、ガスバリア性積層フィルムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明のアルコキシドの加水分解物製造装置を説明する図である。
【図2】本発明のアルコキシドの加水分解物製造装置を構成するスタティックミキサーに内蔵されるエレメントを説明する図である。
【図3】本発明のアルコキシドの加水分解物製造装置を構成するスタティックミキサーに内蔵されるエレメントを説明し、および右エレメントのみが連設して内蔵されるスタティックミキサーを説明する図である。
【図4】本発明のアルコキシドの加水分解物製造装置を構成する反応部(44)を説明する図であり、複数のスタティックミキサー(40)並びに配管(40)が、原料がスタティックミキサー(40)内をアップフローで流れ、配管(30)内をダウンフローで流れるように連設される態様を示す図である。なお、図4(a)は平面図、図4(b)は側面透視図、図4(c)は右側面透視図である。
【図5】本発明のアルコキシドの加水分解物製造装置を説明する図であり、加熱部、反応部、冷却部に加えて、分散部が連設される態様を示す図である。また、太矢印は、原料の流れ方向を示す。
【図6】低温プラズマ化学蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。
【図7】巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。
【符号の説明】
【0121】
10・・・アルコキシドの供給部、
20・・・水と反応触媒との供給部、
30・・・配管、
40・・・スタティックミキサー、
43・・・アルコキシドと原料との混合液の加熱部、
44・・・加熱された混合液が導入され、かつアルコキシドが加水分解される反応部、
44’・・・反応部のケーシング、
45・・・反応部から排出されるアルコキシド加水分解物が冷却される冷却部、
47・・・分散部
51・・・右エレメント、
53・・・左エレメント、
60・・・アルコキシドの加水分解物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物の製造方法であって、
前記アルコキシドと水と反応触媒とからなる原料を、
複数のスタティックミキサーと前記複数のスタティックミキサーを連設する配管とからなり、前記スタティックミキサーは、前記配管によって前記原料がアップフローで流れるように連設されたアルコキシドの加水分解物製造装置に導入して前記アルコキシドの加水分解物を得て、
前記加水分解物に前記ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有させ、ゾルゲル法によって加水分解および重縮合すること特徴とする、ガスバリア性組成物の製造方法。
【請求項2】
前記加水分解製造装置は、
前記アルコキシドと水と反応触媒とからなる原料の加熱部と、前記加熱された原料が導入され、前記アルコキシドが加水分解される反応部と、前記反応部から排出されるアルコキシド加水分解物が冷却される冷却部とを含み、
前記加熱部を温度30〜100℃に加熱し、前記反応部を温度30〜100℃に制御し、前記冷却部を温度−5〜20℃に冷却することを特徴とする、請求項1記載のガスバリア性組成物の製造方法。
【請求項3】
前記アルコキシドと水と反応触媒とからなる原料の単位時間の供給量(L/Hr)と加水分解時間(Hr)との積が、前記反応部の容量(L)の合計の1.0〜1.5倍であるように原料を供給することを特徴とする、請求項2記載のガスバリア性組成物の製造方法。
【請求項4】
前記アルコキシドと水と反応触媒とからなる原料は、更に溶媒を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性組成物の製造方法。
【請求項5】
前記アルコキシドは、更にシランカップリング剤を含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性組成物の製造方法。
【請求項6】
前記アルコキシドが、テトラエトキシシランSi(OC254であり、
前記反応触媒が塩酸であり、
前記溶媒が、イソプロピルアルコールである、請求項5記載のガスバリア性組成物の製造方法。
【請求項7】
基材フィルムの一方の面に有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜を設け、該蒸着膜上に請求項1〜7で製造したガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設けたガスバリア性積層フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−275111(P2009−275111A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127486(P2008−127486)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】