説明

ガラス板のパレットへの積載方法および装置

【課題】パレットの床桟や背板の異なる傾斜角度や、製作誤差、ばらつきに追従してフラットで矩形状のガラス板を背板に密着するように積載させる。
【解決手段】多関節ロボットのハンドに垂直姿勢で設けた主プレートに、水平垂直両方向に複数個の吸着パッドを並設した吸着手段と、該吸着パッドで吸着保持したガラス板を空パレットの傾斜した背板に押し付けた時にオンとなるセンサと、該センサのオンオフによってパレットの背板の傾斜角度を測定する背板角度測定手段と、前記主プレート上にパレットの床桟上面と当接自在な昇降部材を昇降自在に設けた床桟高さ測定手段と、からなり背板角度測定手段によって測定したパレットの背板の角度にハンドの角度を追従し、床桟角度測定手段によって測定したパレットの床桟の傾斜角度にハンドの高さを追従して、2枚目以降のガラス板の厚み分積載位置を補正してパレット上にガラス板を積載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレットへのガラス板の積載において、パレットの床桟の水平面に対する傾斜角度や、背板の垂直面に対する傾斜角度がパレットの種類によって異なったり、同一種類であっても製作誤差やばらつきがあっても、これらに追従してガラス板を床桟や背板に当接するように精度よく積載する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フラットなガラス板の輸送や保管用として、パレットや積載台車等にガラス板を積載する場合には、多関節のロボットや自動機械によってガラス板面の略中央部を吸着パッドで吸着保持してパレット上に移載する方法、装置がよく知られている。
【0003】
しかしながら、ガラス板の寸法の大小により種々の形状寸法のパレットが用いられ、これらのパレットは床桟の水平面に対する傾斜角度や、背板の垂直面に対する傾斜角度が異なるが、同一種類のパレットであっても製作時の誤差やばらつきによって背板や床桟の寸法角度が異なるケースがあったため、積込みロボット側でパレットの形状、大きさ、種類に合わせて異なった制御をしたり、ティーチングを行なったりしていた。
【0004】
例えば、本出願人の出願に係る実開平5−82941号公報には、パレットに立て掛けて積層するガラス板の近傍に動作制御機能を備えたアームとその先端に動作制御機能を備えたフレームを設け、該フレームに位置決めの近接センサーと複数の吸着パッドを装着し、該吸着パッドで前記ガラス板を支持して移載せしめるガラス板の移載装置において、前記近接センサーを三角点状に分散して配設したことを特徴とするガラス板の移載装置が開示されている。
【0005】
該特許文献1は、フレーム前面に三角点状に配設した近接センサーの内一点は基準近接センサーとしてフレームの位置決め、該基準近接センサーの上方あるいは下方にある第1近接センサーと前記基準近接センサーとでフレームの上下縁方向の傾きを修正し、該基準センサーの左右のいずれかに設けた第2近接センサーと前記基準近接センサーとで左右縁方向の傾きを修正して、フレームに装着した吸着パッド面とパレットに縦積みした対面のガラス板とは完全に平行となるようにしたものである(特許文献1)。
【0006】
また、同じく本出願人の出願に係る特開2005−60063号公報には、多関節ロボットのハンドに設けた吸着パッドによって湾曲ガラス板を吸着保持した状態で、ロボット近傍に配設された合紙供給装置より供給されるガラス板用合紙と共にパレット上に同時に立て掛け姿勢で積載する湾曲ガラス板の積載方法および装置が記載されている
(特許文献2)。
【0007】
さらに例えば、本出願人の出願に係る特開2001−139138号公報には、水平姿勢のガラス板と合紙をそれぞれ吸着してパレット上に縦姿勢で同時に積載する装置において、位置決めされたガラス板を吸着支持するガラス板吸着手段と、所定位置に載置された合紙上にガラス板を重ねた状態ではみ出した片端部を吸着する合紙吸着手段と、前記ガラス板吸着手段と合紙吸着手段とを取付け固定したハンドと、該ハンドを全方位に移動かつ旋回自在な移動手段とからなり、ガラス板の反吸着面側に位置する合紙と同時にガラス板をパレット上に縦積みさせることを特徴とするガラス板の積載装置が開示されている(特許文献3)。
【特許文献1】実開平5−82941号公報
【特許文献2】特開2005−60063号公報
【特許文献3】特開2001−139138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に記載のものは、パレット上に縦姿勢で積層した複数枚のガラス板の最前列の1枚を多関節ロボットにより順次取出す装置であり、最前列のガラス板を取出す都度、ハンドからガラス板迄の距離および角度を測定演算してハンドの姿勢をガラス面に追従するように調整するものであり、ガラス板を1枚取出すごとに測定と演算、姿勢調整を行なわなければならないため、移載に時間が掛かってしまうという問題点があった。
【0009】
また、パレットの背板は、通常全面がフラットな板状ではなく、垂直方向に立設した複数本の支柱に、帯状の板材を水平方向に複数列平行に配置して固定したものが多いので、移載ロボットに設けた複数のセンサーの一部が背板までの距離を検出できない場合があるという問題点があった。
【0010】
また、前記特許文献2に記載のものは、湾曲したガラス板を合紙と共にパレット上に積載するものであって、フラットなガラス板を対象として発明されたものではなく、ガラス板をパレットの背板に押付け、ガラス板を保持している吸着パッドのスプリングによって過剰な押付け力を吸収することによって背板の傾斜角度のばらつきを補正したものであるが、パレットの床桟の傾斜角度のばらつきについての対応についての記載はなく、ガラス板を積載時にガラス板の下端で床桟上手前から背板側に摺動してしまう恐れがある。
【0011】
さらに、前記特許文献3に記載のものは、フラットなガラス板を合紙と共にパレット上に積載するものであるが、パレットの形状、大きさ、種類によって背板や床桟の傾斜角度が異なったり、あるいは同一種類のパレットであっても製作時の誤差やばらつきによって背板や床桟の寸法角度の異なるケースの対応についての記載はなく、特許文献2と同様に、ガラス板を積載時にガラス板の下端で床桟上手前から背板側に摺動してしまう恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記問題点の解決を図る、すなわちパレットへのガラス板の積載において、パレットの種類が変って、床桟や背板の傾斜角度が異なっても、あるいはパレットの床桟や背板に製作誤差、ばらつきがあっても、移動途中にガラス板のエッジを床桟等に接触させることなくスムーズにガラス板を背板側に密着するように積載できることを目的とする。
【0013】
すなわち、本発明は、吸着パッドで吸着したフラットで矩形状のガラス板をパレット上に積載するガラス板のパレットへの積載方法において、
ロボットハンドの主プレート上に昇降部材を昇降自在に設け、空パレットの床桟上の離れた2点位置で、垂直姿勢の主プレートのそれぞれの高さを同一にして昇降部材を床桟まで下降させて床桟迄の各下降量を測定することによって、パレットの床桟の傾斜角度を演算し、演算した結果に基づいてロボットのコントローラによって積載するガラス板の下端辺を床桟の高さに一致するように前記ハンドを移動させてパレット上に積載することを特徴とするガラス板のパレットへの積載方法である。
【0014】
あるいは、本発明は、吸着パッドで吸着したフラットで矩形状のガラス板をパレット上に積載するガラス板のパレットへの積載方法において、
ロボットハンドの主プレート上に水平、垂直両方向に複数個の吸着パッドを並設し、該吸着パッドで吸着保持した1枚目のガラス板を空パレットの傾斜した背板に押し付け、各吸着パッドの軸部の先端を検出するセンサのいずれか1つがオンとなったとき、該オンとなった吸着パッドを基準とし、その吸着面の中心を通る線を軸としてセンサがオフとなっている吸着パッド群の中心方向に向けて、前記センサのいずれかがオンとなる迄回転させ、
次いで、前記センサがオンとなった吸着パッドの吸着面の各中心を通る線を回転軸として、センサが依然オフとなっている吸着パッドの中心方向に向けて、前記センサがオンとなる迄回転させた時の吸着ハンドの姿勢角度位置を、パレットの背板角度位置として、ガラス板の板厚分だけ積載位置を順次ずらして積載することを特徴とするガラス板のパレットへの積載方法である。
【0015】
あるいはまた、本発明は、前記床桟の傾斜角度に合わせてガラス板の積載高さを追従させ、さらに、ロボットのハンドが吸着保持する1枚目のガラス板の姿勢を前記背板角度の測定方法により測定したパレットの背板角度にあわせて、ガラス板をパレット上に積載することを特徴とするガラス板のパレットへの積載方法である。
【0016】
あるいはまた、本発明は、ガラス板を合紙と共にパレット上に積載するにあたり、ガラス板の下端辺からはみ出した合紙の高さより高い位置で床桟上を移動し、床桟上の載置位置よりはみ出した合紙の幅相当の距離だけ手前で載置位置に向けて接近させ、既に載置した合紙と載置しようとする合紙に皺を発生させないようにして、ガラス板および合紙をパレット上に積載することを特徴とする上述のいずれかに記載のガラス板のパレットへの積載方法。
【0017】
あるいはまた、本発明は、フラットで矩形状のガラス板を吸着手段の吸着によって支持し、パレット上に積載するガラス板のパレットへの積載装置において、
多関節ロボットのハンドに垂直姿勢で設けた主プレートに、水平垂直両方向に複数個の吸着パッドを並設した吸着手段と、
該吸着パッドで吸着保持したガラス板を空パレットの傾斜した背板に押し付けた時にオンとなるセンサと、該センサのオンオフによってパレットの背板の傾斜角度を測定する背板角度測定手段と、
前記主プレート上にパレットの床桟上面と当接自在な昇降部材を昇降自在に設けた床桟高さ測定手段とからなり、
背板角度測定手段によって測定したパレットの背板の角度にハンドの角度を追従させ、床桟角度測定手段によって測定したパレットの床桟の位置および傾斜角度にハンドの高さを追従して、パレット上の所定位置にガラス板を積載することを特徴とするガラス板のパレットへの積載装置である。
【0018】
あるいはまた、本発明は、前記ガラス板のパレットへの積載装置のハンドの上方側にガラス板間に挿入する合紙の上端部を把持する合紙把持手段を設け、ガラス板を吸着パッドにより吸着支持時に該ガラス板の外側面でガラス板を被うように合紙を吊下げ支持して、パレット上にガラス板と合紙を同時に移載することを特徴とする上述のガラス板のパレットへの積載装置である。
【0019】
あるいはまた、本発明は、前記合紙把持手段によって把持され吊下げられた合紙によって、吸着パッドにより吸着支持したガラス板の外側面を被うようにし、パレット上に合紙とガラス板を同時に積載することを特徴とする上述のガラス板のパレットへの積載装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡易な構成にしてガラス板をパレット上に縦姿勢で積載するにあたり、ガラス板のサイズ変更に伴うパレットの寸法、形状の変更により床桟の位置、および水平面に対する傾斜角度や、背板の位置および垂直面に対する傾斜角度が異なっても、あるいは同一のパレットであっても床桟や背板の製作誤差、ばらつきによる位置および傾斜角度の相違があっても、スムーズにガラス板を床桟上の所定の位置に載置できる。
【0021】
また、ガラス板をパレットの背板に密着させて、順次積込みを行なってもガラス板同士を接触させず、ガラス板面やエッジ部に隣接するガラス板間の隙間を発生させない。
【0022】
また、ガラス板を合紙と共にパレット上に積載するにあたり、ガラス板の下端辺からはみ出した合紙の高さより高い位置で床桟上を移動し、床桟上の載置位置よりはみ出した合紙の幅相当の距離だけ手前で載置位置に向けて接近させることによって、既に載置した合紙と載置しようとする合紙に皺を発生させないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、吸着パッド21によって吸着して支持するガラス板Gを、合紙2と共にパレット6上に積載する積載方法と積載装置であり、図1に示すように、全方位に移動および回転自在な多関節のロボット10のアーム11の先端に設けたハンド13に主プレート14を略垂直姿勢に設け、該主プレート14にガラス板Gを吸着支持する為の複数個の吸着パッド21、21、・・を配設した吸着手段20と、
該吸着パッド21、21、・・で吸着保持したガラス板Gを空パレット6の傾斜した背板6dに押し付けた時に吸着パッド21、21、・・と主プレート14間の間隔を伸縮自在とし、吸着パッド21、21、・・の軸部先端との接近離反によりオンオフとなるセンサ41、41、・・によって、各センサ41、41、・・がオンとなったとき、ガラス板Gが背板6dと密着し平行となり、ロボットハンド13の位置座標と角度情報によってパレット6の背板6dの傾斜角度を測定演算する背板角度測定手段40と、
前記主プレート14に昇降部材31を昇降自在に設け、該昇降部材31をパレット6の床桟6bの上面に当接させることによって、床桟6bの高さおよび傾斜角度を測定演算する床桟高さ測定手段30とからなる。
【0024】
さらに、前記ハンド13の上部位置には、ガラス板G面の保護及び変質防止用の合紙2の上端両隅部をシリンダー又は保持チャック等の把持部51、51によって把持し、合紙2の上辺2箇所を把持部51、51で吊下げ支持する合紙把持手段50を設けて、該ガラス板Gを吸着パッド21、21・・で吸着する面とは反対面側で、ガラス板Gの片面全面が被われるように把持部51、51の位置を調整して、合紙2を吊下げ支持する。
【0025】
前記吸着手段20は、吸着パッド21、21、・・を縦横に並設し、三角形状、四角
形状等の多角形状のコーナー位置に配設し、該吸着パッド21、21、・・はそれぞれスプリングを介して主プレートに固定されるが、吸着パッド21、21、・・の軸部は主プレート14の貫通孔内を遊挿し、吸着面と主プレート14間にスプリングを設けたので、吸着パッド21、21、・・をガラス板G等に押付けた時に吸着パッド21、21、・・の軸部が圧縮されたスプリングの復元によって移動復帰が自在となる。
【0026】
また、前記床桟高さ測定手段30は、前記主プレート14に測長機能付きの昇降シリンダ32を取付け、該昇降シリンダ32のロッドの先端に図示しない取付部材を介して横長にした昇降部材31を設けて、該昇降部材31の長手方向がパレット6の幅方向で水平方向になるように配設する。
【0027】
また、前記昇降シリンダ32の両側にかつ平行にガイド35、35とガイド内を摺動するガイドロッド34、34を設け、該ガイドロッド34、34の下端を前記昇降部材31に接続し、ガイド35、35とガイドロッド34、34の摺動によって昇降部材31の昇降は滑らかとなる。
【0028】
さらに、前記背板角度測定手段40は、主プレート14に配設した複数個の吸着パッド21、21、・・の各軸部の先端部に近接するセンサ41、41、・・を設け、ガラス板Gを吸着パッド21で吸着した状態で、吸着したガラス板Gを空パレット6の傾斜した背板6dに押し付けた時に吸着パッド21の軸部が主プレート14側に押し戻され、センサ41の検出端を吸着パッド21の軸端部の凹溝部が横切ることによってセンサ41がオン、オフとなるが、軸端部をセンサが検出している状態ではオン、軸端部位置とセンサがずれた時はオフとなる。
【0029】
さらにまた、前記合紙把持手段50は、ハンド13の上方部位置より水平方向に延ばした横フレーム53に沿って左右移動調整自在に設けたガイドに、把持部進退シリンダ52を固設し、該把持部進退シリンダ52のロッドの先端に把持用チャック等の把持部51を設けた。該把持用チャックのフィンガーによって合紙2の上端辺の両隅端部を挟んで把持し、合紙2を吊下げ支持する。
【0030】
該合紙2は、パレット6上に積載するガラス板G間に挿入し、ガラス板面同士の接触によるキズの発生や湿気等によるガラス板Gの変質を防止するため、ガラス板Gをパレット6に積載時に、該ガラス板Gを吸着パッド21、21・・で支持する面とは反対面側にガラス板Gの片面全面を覆えるように合紙2を吊下げ支持するものである。
【0031】
また、本発明は、前記構成のパレット6へのガラス板Gの積載装置を用いてガラス板をパレット上に自動的に積載する方法でもある。
【0032】
本発明の積載方法としては、空パレット上にガラス板Gを積載するにあたり、パレット6の床桟6bの高さを測定し、水平面に対して傾斜角度θを演算によって算出し、ガラス板Gをパレット6上に積載するために移動する場合に、ガラス板Gの下端が積載位置とは異なる位置で床桟6bに接触したりすることなく、床桟6bから適度な距離を保って背板側に向けて移動させることができ、床桟6b上の所定の位置でガラス板Gを床桟に無理な力で押付けたり、床桟6bより上部位置でガラス板Gの吸着解放により落下させることもなく、ガラス板Gをスムーズに床桟6b上に載置でき、床桟6bの高さと傾斜角度に合わせてガラス板Gを順次隙間なく、ガラスエッジにキズをつけることもなく積載することのできる方法である。
【0033】
すなわち、図6に示すようなロボットハンド13の主プレート14上に測長機能付きの昇降シリンダ32の駆動によって昇降自在に設けた昇降部材31を、空パレット6の背板6dの近くに設定された床桟6b上の位置(B点)と、図7に示すような背板6dから所定間隔離れた床桟6b上の位置(A点)で、垂直姿勢の主プレート14の高さをそれぞれ同一高さにして、昇降部材31を下降させて床桟6bに当接した時点の昇降部材の下降量を測定し、2点間の水平方向の距離と合わせて、パレット6の床桟の水平面に対する傾斜角度θを演算によって求めることができ、ガラス板Gをパレット6上に積載時に、ガラス板Gを床桟6b上の所望の位置まで移動途中でガラス板Gの下端を床桟に接触させてキズをつけたりすることなくガラス板Gを移動でき、床桟6b上の所望の位置でガラス板Gを載置する時も、床桟6b上に当接するまでスムーズに移動できる。
【0034】
また、パレット6の背板6dの位置および傾斜角度を測定し、測定結果に基づいてガラス板Gを吸着支持するハンド13を背板6dの傾斜角度に合わせて無理に押付けることもなくパレット6の背板6d側より順次積載することができる。
【0035】
すなわち、ロボットハンド13の主プレート14上に水平、垂直両方向に複数個の吸着パッド21、21、・・を並設し、該吸着パッド21、21、・・で吸着保持した1枚目のガラス板Gを空パレット6の傾斜した背板に押し付け、各吸着パッド21、21、・・の軸部の先端を検出するセンサ41、41、・・のいずれか1つがオンとなったとき、該オンとなった吸着パッド21を基準とし、その吸着面の中心を通る線を回転軸としてセンサ41がオフとなっている吸着パッド21、21、・・群の中心方向に向けて、前記センサ41、41、・・のいずれかがオンとなる迄回転させる。
【0036】
次いで、前記センサ41がオンとなった吸着パッド21の吸着面の各中心を通る線を回転軸として、センサ41が依然オフとなっている吸着パッド21の中心方向に向けて、前記センサ41がオンとなる迄回転させた時の吸着ハンド13の姿勢角度位置を、パレット6の背板角度位置として、ガラス板Gの板厚分だけ積載位置を順次ずらして積載する。
【0037】
次いで、本発明の積載装置1を用いて、合紙2と共にガラス板Gをパレット6上に積載する動作手順を詳述する。
【0038】
空パレット上にガラス板を積載するに先立って、まず、図6に示すようなパレット6の床桟の背板に近い位置(B点)と、図7に示すような背板側から一定の距離にある床桟上の位置(A点)の2箇所の高さを測定し、床桟6bの傾斜角度θを演算によって算出する。
【0039】
前記床桟6b上の2点は、互いに離れているほど精度よくなるため、B点はパレット6の床桟6bの背板6dになるべく近い位置とし、A点は床桟6b上のなるべく背板6dから離れた位置とするのが望ましい。
【0040】
[床桟のA点の測定]
パレット6の床桟6b上の離れた各2点の高さを測定するには、図1に示したような多関節ロボット10のハンド13の主プレート14を垂直姿勢に保って、ハンド13を図6に示すようなパレット6の床桟6bの背板6dに近い位置(B点)の上部近傍位置で停止させる。
【0041】
前記主プレート14上に設けた測長機能付きの昇降シリンダ32の駆動動作により昇降部材31を下降させ、床桟6bに昇降部材31が当接して停止した時点の昇降部材31の下降量を測定後、昇降シリンダ32の復帰動作により昇降部材31を上昇させる。
【0042】
[床桟のB点の測定]
続いて、垂直姿勢の主プレート14の高さをB点測定時と同一の高さのまま、ハンド13を図7に示すような背板6dから所定距離離れた床桟6b上の位置(A点)の上部近傍位置で停止させる。
【0043】
前記A点の測定と同様に、前記主プレート14上に設けた昇降シリンダ32の駆動により昇降部材31を下降させ、床桟6bに昇降部材31が当接して停止した時点の昇降部材31の下降量を測定する。
【0044】
図8に示したように、前記床桟6b上の位置(B点)と、背板6dから所定距離離れた床桟6b上の位置(A点)の2点の各高さと、2点間の水平距離により、パレット6の床桟6bの傾斜角度θと床桟6bの任意の点の高さを演算によって求めることができ、演算結果に基づいてロボットのコントローラの制御によってハンド13を駆動させ、該ハンド13によって吸着支持したガラス板Gの下端を床桟6bの所定位置まで移動途中に床桟6bに接触させることなく載置位置まで移動でき、床桟6bの載置位置までガラス板Gをロボットでスムーズに移載可能である。
【0045】
[背板の位置の測定と傾斜角度αの算出]
前記床桟6bの高さを測定して、その結果により水平面に対する床桟6bの傾斜角度θを演算によって求めた後、背板の位置および垂直面に対する傾斜角度αの測定を行なう。
【0046】
図示しない搬送手段によって搬送され、図示しない位置決め手段によって位置決めされた縦姿勢または水平姿勢のガラス板Gを、図1、図2に示したような多関節ロボットのハンド13に設けた主プレート14に水平、垂直両方向に並設した4個の吸着パッド21、21、・・によって吸着保持した状態で、さらに図示しない合紙供給装置の合紙吊下保持部62によってガラス板Gの外側面側で吊下げ状態の合紙2の上端辺の両端側2箇所を合紙把持手段50の把持部51、51によって把持し、予め設定入力した情報に基づいて、ガラス板Gを吸着保持したハンド13をパレット6の背板6dに接近させる。
【0047】
図3に示すように、ガラス板Gを吸着保持したハンド13をパレット6の背板6dに接近させる場合には、保持しているガラス板Gの下端と床桟6bとが所定の距離をおいて、当接しないように移動させるのはもちろん、ハンド13の上端部で合紙2の上端辺2点を把持している把持部51をガラス板面よりもハンド13側に戻した待機位置とした。
【0048】
図4に示すように、ガラス板Gをパレット6の傾斜した背板6dに押し付けて、各吸着パッド21、21、・・の軸部の先端を検出するセンサ41のいずれか1つがオンとなったとき、該オンとなった吸着パッド21を基準とし、その吸着面の中心を通る面上の線を軸としてセンサ41がオフとなっている吸着パッド群21、21、・・の中心方向に向けて、前記センサ41のいずれかがオンとなる迄回転させる。
【0049】
さらに、前記センサがオンとなった吸着パッドの吸着面の各中心を通る線を回転軸として、センサが依然オフとなっている吸着パッドの中心方向に向けて、前記センサがオンとなる迄回転させた時の吸着ハンドの姿勢角度および位置によって、パレット6の背板の位置および傾斜角度を把握できる。
【0050】
[吸着パッドを4個としたハンドの場合]
すなわち、図9は、ハンド13上に4個の吸着パッド21、21、・・を設けた場合に、吸着パッド21、21、・・の軸部の先端を検出するセンサー41がオンの場合を黒丸、オフの場合を白丸で示している。
【0051】
図9(a)の左上の黒丸は、該部の吸着パッド21の軸部先端を検出するセンサー41がオンであり、該吸着パッド21の中心を斜めに横切る実線を回転軸として右下部側の吸着パッド21を背板6dに近づくように回転させて近づけると、図9(b)上部2つのセンサーがオン、(c)左側の2つのセンサーがオン、(d)左側の2つと右上の合わせて3つのセンサーがオン、(e)左上と右下のセンサーがオン、のいづれかの場合となる。
【0052】
図9(b)のような場合は、上部2つの吸着パッド21、21の中心を結んだ線を回転軸として、下方の吸着パッド21、21を背板6dに接近するように回転させると、図9(f)〜(h)のようになった段階でハンド13が吸着しているガラス板Gが背板6dと平行になったと見なして、この状態のロボットの姿勢座標より背板6dの位置と、垂直面に対する角度を演算によって求めることができる。
【0053】
同様に、図9(c)のような場合は、左側2つの吸着パッド21、21の中心を結んだ線を回転軸として、右側の吸着パッド21、21を背板6dに接近するように回転させると、図9(i)〜(k)のようになった段階でハンド13が吸着しているガラス板Gが背板6dと平行になったと見なして、背板6dの位置と、垂直面に対する角度を演算によって求めることができる。
【0054】
さらに、図9(d)、(e)のような場合は、この段階でハンド13が吸着しているガラス板Gが背板6dと平行になったと見なして、背板6dの位置と、垂直面に対する角度を演算によって求めることができる。
【0055】
[吸着パッドを3個としたハンドの例]
図10は、ハンド13上に3個の吸着パッド21、21、・を設けた場合であり、前記吸着パッド21、21、・を4個とした場合と同様に吸着パッドの軸部の先端を検出するセンサー41がオンの場合を黒丸、オフの場合を白丸で示している。
【0056】
図10(a)の左上の黒丸は、該部の吸着パッドの軸部先端を検出するセンサーがオンであり、該吸着パッドの中心を斜めに横切る実線を回転軸として右下部側の吸着パッドが背板に近づくように回転させると、図10(b)上部2つのセンサーがオン、(c)左側の2つのセンサーがオンのいづれかの場合となる。
【0057】
図10(b)のような場合は、上部2つの吸着パッド21、21の中心を結んだ線を回転軸として、下方の吸着パッド21を背板6dに接近するように回転させると、図10(d)のようになった段階でハンド13が吸着しているガラス板Gが背板6dと平行になったと見なして、この状態のロボットの姿勢座標より背板6dの位置と、垂直面に対する角度を演算によって求めることができる。
【0058】
同様に、図10(c)のような場合は、左側2つの吸着パッド21、21の中心を結んだ線を回転軸として、右側の吸着パッド21、21を背板6dに接近するように回転させると、図10(e)のようになった段階でハンド13が吸着しているガラス板Gが背板6dと平行になったと見なして、背板6dの位置と、垂直面に対する角度を演算によって求めることができる。
【0059】
前記背板6dの位置座標の測定が完了し、その結果に基づいて傾斜角度の算出が完了した後、ガラス板Gおよび合紙2を保持したハンド13は、一旦パレット6の背板6dから数10cm程度離れ、床桟6bの上面から離れて床桟6bの高さとその水平面に対する傾斜角度θの情報に基づいて床桟6bから適度な距離を保ちながら移動する。
【0060】
前記床桟6b上を移動するガラス板Gの下端辺と床桟6bとの距離は、ガラス板Gの下端辺からはみ出した合紙2の長さより高い位置とする。
【0061】
床桟6b上の載置位置に接近した時点、すなわちガラス板Gの下端からはみ出した合紙2の高さ相当の距離だけ手前の位置で載置位置に向けてハンド13を徐々に下降させて接近させ、ハンド13が吸着しているガラス板Gの姿勢角度を背板6dの傾斜角度に近づけながら、ガラス板Gを床桟6b上の所定の位置に載置させる。
【0062】
積載しようとするガラス板Gと合紙2を床桟6bに接近させすぎると、既に載置した合紙2の下端部を背板側に押し込む為に皺を発生させてガラス板を整然と積載できなくなることになり、積載しようとするガラス板Gと合紙2を床桟6bから離し過ぎて、既に積載したガラス板Gに接近させすぎると、床桟6bに載置する時に同時に吊下げしている合紙2を下方に押しつぶして皺を発生させてしまう。
【0063】
このため、ガラス板Gおよび合紙2をパレット6上の床桟の所定の載置位置に近づいた段階で、移載しようとする合紙2の下端が床桟6b上でL字状に折り曲がるようにして徐々に床桟6b上に載置させる。
【0064】
積載しようとするガラス板Gをパレット6の背板6dに接近させる段階で、ガラス板Gの上部位置に設けた合紙2を支持する把持部51、51を把持部進退シリンダ52、52によってガラス板の上端辺近傍まで突出させ、ガラス板Gをパレット6上に載置した後に把持部51、51の釈放により合紙の把持を解除する。
【0065】
2枚目以降に積載するガラス板Gの積載位置については、予め設定入力したガラス板Gの厚み分だけ背板6dから離れた位置に順次シフトして積載すれば良いが、床桟6bの傾斜角度を考慮してガラス板を1枚積載の都度、床桟6bの高さを徐々に変化させればよい。
【0066】
このように、ガラス板を傾斜面を有する背板に密着させると共に、ガラス板の積載が進むにつれてガラス板の積載高さを傾斜した床桟に合わせて順次変化するようにして、ガラス板をパレット上に立て掛け姿勢で隙間なくスムーズに載置することができる。
【0067】
尚、パレットの形状が変った時、およびパレット上に所定枚数のガラス板を積載完了後、同一形状の空のパレットが載置される時であっても、前記パレットの床桟の高さ、傾斜角度、および背板の位置、傾斜角度の測定を行なう。
【0068】
以上好適な実施の形態について述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の応用が考えられるものである。
【0069】
尚、吸着手段の吸着パッドを3個とし、三角形状に配置する場合も上記と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の積載装置の全体側面図。
【図2】本発明の積載装置のハンドの正面図。
【図3】パレットの背板の傾斜角度の測定前の状態を示す側面図。
【図4】パレットの背板にガラス板を押付け、吸着ハンドのセンサーがオンした状態を示す側面図。
【図5】パレットの背板の傾斜角度に合わせてガラス板の載置状態を示した側面図。
【図6】パレットの床桟の傾斜角度を測定にあたり、床桟のB点の高さを測定する状態を示す側面図。
【図7】パレットの床桟の傾斜角度を測定にあたり、床桟のA点の高さを測定する状態を示す側面図。
【図8】パレットの床桟と背板の各傾斜角度の測定方法を説明する図。
【図9】吸着パッドを4個とした時のセンサーのオン、オフ状態とハンドの回転方向を説明する図。
【図10】吸着パッドを3個とした時のセンサーのオン、オフ状態とハンドの回転方向を説明する図。
【符号の説明】
【0071】
G ガラス板
1 積載装置
2 合紙
6 パレット
6b 床桟
6c 背枠
6d 背板
10 ロボット
11 アーム
13 ハンド
14 主プレート
20 吸着手段
21 吸着パッド
22 取付部材
30 床桟高さ測定手段
31 昇降部材
32 昇降シリンダ
33 取付ブラケット
34 ガイドロッド
35 ガイド
40 背板角度測定手段
41 センサ
50 合紙把持手段
51 把持部(保持チャック)
52 把持部進退シリンダ
53 合紙把持水平部材
60 合紙供給装置
62 合紙吊下保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着パッドで吸着したフラットで矩形状のガラス板をパレット上に積載するガラス板のパレットへの積載方法において、
ロボットハンドの主プレート上に昇降部材を昇降自在に設け、空パレットの床桟上の離れた2点位置で、垂直姿勢の主プレートのそれぞれの高さを同一にして昇降部材を床桟まで下降させて床桟迄の各下降量を測定することによって、パレットの床桟の傾斜角度を演算し、演算した結果に基づいてロボットのコントローラによって積載するガラス板の下端辺を床桟の高さに一致するように前記ハンドを移動させてパレット上に積載することを特徴とするガラス板のパレットへの積載方法。
【請求項2】
吸着パッドで吸着したフラットで矩形状のガラス板をパレット上に積載するガラス板のパレットへの積載方法において、
ロボットハンドの主プレート上に水平、垂直両方向に複数個の吸着パッドを並設し、該吸着パッドで吸着保持した1枚目のガラス板を空パレットの傾斜した背板に押し付け、各吸着パッドの軸部の先端を検出するセンサのいずれか1つがオンとなったとき、該オンとなった吸着パッドを基準とし、その吸着面の中心を通る面上の線を軸としてセンサがオフとなっている吸着パッド群の中心方向に向けて、前記センサのいずれかがオンとなる迄回転させ、
次いで、前記センサがオンとなった吸着パッドの吸着面の各中心を通る線を回転軸として、センサが依然オフとなっている吸着パッドの中心方向に向けて、前記センサがオンとなる迄回転させた時の吸着ハンドの姿勢位置および角度を、パレットの背板の位置角度として、ガラス板の板厚分だけ積載位置を順次ずらして積載することを特徴とするガラス板のパレットへの積載方法。
【請求項3】
請求項1の床桟の傾斜角度に合わせてガラス板の積載高さを追従させ、さらに、ロボットのハンドが吸着保持する1枚目のガラス板の姿勢を前記請求項2の測定方法により測定したパレットの背板角度にあわせて、ガラス板をパレット上に積載することを特徴とするガラス板のパレットへの積載方法。
【請求項4】
ガラス板を合紙と共にパレット上に積載するにあたり、ガラス板の下端辺からはみ出した合紙の高さより高い位置で床桟上を移動し、床桟上の載置位置よりはみ出した合紙の幅相当の距離だけ手前で載置位置に向けて接近させ、既に載置した合紙と載置しようとする合紙に皺を発生させないようにして、ガラス板および合紙をパレット上に積載することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のガラス板のパレットへの積載方法。
【請求項5】
フラットで矩形状のガラス板を吸着手段の吸着によって支持し、パレット上に積載するガラス板のパレットへの積載装置において、
多関節ロボットのハンドに垂直姿勢で設けた主プレートに、水平垂直両方向に複数個の吸着パッドを並設した吸着手段と、
該吸着パッドで吸着保持したガラス板を空パレットの傾斜した背板に押し付けた時にオンとなるセンサと、該センサのオンオフによってパレットの背板の傾斜角度を測定する背板角度測定手段と、
前記主プレート上にパレットの床桟上面と当接自在な昇降部材を昇降自在に設けた床桟高さ測定手段とからなり、
背板角度測定手段によって測定したパレットの背板の角度にハンドの角度を追従させ、床桟角度測定手段によって測定したパレットの床桟の位置および傾斜角度にハンドの高さを追従して、パレット上の所定位置にガラス板を積載することを特徴とするガラス板のパレットへの積載装置。
【請求項6】
前記ガラス板のパレットへの積載装置のハンドの上方側にガラス板間に挿入する合紙の上端部を把持する合紙把持手段を設け、ガラス板を吸着パッドにより吸着支持時に該ガラス板の外側面でガラス板を被うように合紙を吊下げ支持して、パレット上にガラス板と合紙を同時に移載することを特徴とする請求項5記載のガラス板のパレットへの積載装置。
【請求項7】
前記合紙把持手段によって把持され吊下げられた合紙によって、吸着パッドにより吸着支持したガラス板の外側面を被うようにし、パレット上に合紙とガラス板を同時に積載することを特徴とする請求項6記載のガラス板のパレットへの積載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−940(P2007−940A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−180788(P2005−180788)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】