説明

ガンマ線照射したペクチンから製造したペクチンフィルム

ペクチンフィルムを処理して、フィルムの溶解特性を変化させる。より具体的には、出発ペクチンをガンマ線で処理することにより、フィルムをより迅速に溶解するようにすることができる。ペクチンフィルムの用途としては、ドラッグデリバリーや呼吸フィルムが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の分野
本発明は、迅速な溶解速度を有するペクチンフィルムに関する。
発明の背景
水溶性ポリマーから形成されたフィルムは、薬剤やブレスフレッシュナーのような経口活性剤を含む種々の医薬化合物を投与するために使用することができる。かかるポリマーの例は、例えば、米国特許第6,419,903号;第6,284,264号;及び第5,948,430号に開示されている。
【0002】
ポリマー溶液は、適する表面上にキャストされ、次いで乾燥されてフィルムを形成する。より具体的には、フィルムは、高濃度ポリマー溶液又は「ドープ」を混合し、次いで活性剤を可塑剤及び他の試薬と共に添加することにより形成される。薄いフィルム又は型がキャストされ、このフィルム又は型を乾燥することにより最終製品が得られる。
【0003】
ペクチン及び多くの他の水溶性ポリマーの使用は周知である。例えば、米国特許第6,197,331号を参照されたい。ペクチン溶液は、高メトキシル、低メトキシル、及び低メトキシル−アミド化タイプのペクチンのペクチンを含む、多くのタイプのペクチンから形成することができる。通常、ペクチン溶液は、高濃度のペクチン(3重量%〜15重量%のペクチン固形分)では沈殿がみられる。ペクチンは、適する金属又は高分子表面上にキャストされ、空隙のない滑らかなフィルムを堆積する。このフィルムは最小限の損傷で表面からはがすことができる。乾燥は、室温での空気乾燥、加熱ベルト乾燥、及びマイラー(Mylar)又は同様なプラスチックベルト上での屈折ウィンドウ乾燥のような、任意の適する手法により実施することができる。
【0004】
別の方法においては、ペクチンフィルムの品質は、ペクチンの分子量を低減させることにより改良される。例えば、分子量は、pHを7付近に調節することにより低減させてもよい。これにより、ベータ排除と分子量の損失とが引き起こされる。この方法は、フロリダ州タンパにあるアクアフィルム(Aquafilm)により商業的に導入されたものである。また、酵素、機械的せん断、及びHのような酸化剤を使用して、ペクチンの重合度を低減させることも可能である。
【0005】
分子量Mwの低減は、多くの理由から重要である。フィルムとしてキャストすることになる溶液を、高いポリマー配合量にて調製することが可能となる。これは、乾燥の間に除去することが必要となる水がより少なくなることを意味している。このフィルムは、水にさらすとより迅速に溶解する。通常、このフィルムは、低レベルのグリセリン又はソルビトールのような可塑剤を必要とする。低分子量にて製造されるフィルムは、剛性が高い。
【0006】
発明の要旨
ペクチンをガンマ線で照射することにより、ペクチンの分子量が低減され、フィルム特性が改良されることを発見した。また、ガンマ線で処理したペクチンにより製造されたフィルムは、分子量を低減させるためにpH処理を用いたこれまでに製造されたフィルムよりも透明である。
【0007】
本発明は、迅速に溶解する(クイック・リリース)ペクチンフィルムを製造するための方法であって、次の諸工程:ペクチンをガンマ線で処理し、該処理済みペクチンによりペクチン溶液を形成し、そして、該ペクチン溶液からフィルムを形成することを含む前記製造方法に向けられている。別の態様では、この方法は、ペクチン溶液をガンマ線で処理し、そして、該ペクチン溶液からフィルムを形成することを含む。迅速に溶解するペクチンを製造するこれらの方法は容易であり単純である。
【0008】
ガンマ線で処理したペクチンから製造されたペクチン溶液は、フィルムキャスティングに適しており、未処理のペクチンから調製される溶液よりも早い溶解を提供する。その結果として、大きな溶解速度が与えられ、また、経口用途に使用した場合に、良好な味特性と粘着性の少ない口ざわりをもつペクチンが提供される。
【0009】
本発明は、水中で迅速に溶解することができるペクチンフィルム組成物であって、ガンマ線により処理された高又は低メチルエステルペクチンと少なくとも1種の活性剤とを含む組成物に向けられている。
【0010】
迅速に溶解することができるペクチンフィルムは、例えば、ドラッグデリバリーやブレスフィルムに有用である。本発明にしたがって形成されるペクチンフィルムは、調節可能な溶解速度を有し、良好に水和して「ドープ」を放出し、また、においや味を出さない。加えて、かかるフィルムは、一貫して強くて柔軟であり、味や香料を遮断せず、また、活性剤と適合性がある。
【0011】
本発明は、更に、少なくとも1種の活性剤を口腔に供給するための経口的に消費可能なフィルム組成物に向けられている。このフィルムは口腔中で迅速に溶解することができ、この組成物はガンマ線により処理された高又は低メチルエステルペクチンを含む。かかるフィルムは、更に、活性剤又は調味助剤を含む。
【0012】
本発明は、更に、皮膚又は毛髪に施用される、迅速に溶解可能なフィルムに向けられている。皮膚又は毛髪は、一般的には、水及びこのフィルムを施用して、また場合に応じてより多くの水を施用して、潤される。別の態様では、このフィルムを施用してから、水で潤してもよい。このフィルムは、水中で迅速に溶解することができ、ガンマ線により処理された高又は低メチルエステルペクチンと、皮膚軟化剤又はヘアカラーのような少なくとも1種の活性剤とを含む。
【0013】
本発明は、更に、皮膚に施用して傷を癒す際に助けとなるフィルムに向けられている。かかるフィルムは、ガンマ線により処理された高又は低メチルエステルペクチンを含む。
発明の具体的な説明
本発明は、ガンマ線により処理されたペクチンを含むフィルムに向けられている。かかるフィルムは、水中で迅速に溶解する。このフィルムは、好ましくは、更に1種又はそれより多い活性試薬を含み、フィルムが溶解したときに活性剤及び/又は調味助剤を放出する。かかる活性剤は、治療薬、医薬剤、及び/又は経口活性剤であってもよい。このフィルムは、口の中で迅速に溶解するので、経口用途に適している。
【0014】
ペクチンをガンマ線により処理した場合、このペクチンを用いて調製されたフィルムは水性媒体中でより迅速に溶解することが発見された。これにより、高湿度条件下でフィルムを粘着性にし、互いにくっつけることができる、ポリエチレングリコール(PEG)やグリセリンのような追加の可塑剤についての必要性が低減される。
【0015】
ペクチンは、USPグレードで入手可能であり、世界中で規制による障壁は殆どない。ゼラチン、化工デンプン、及び合成ポリマーのような競合製品には、規制による障壁が多いものがある。
【0016】
このように本発明の方法は、ペクチンを加工して、フィルムを非常に迅速かつ完全に溶解することを可能とする。より短時間で溶解するフィルムは、フィルム中に含有される活性剤をより迅速に放出することになる。このことは、例えば、初期に強い衝撃を与える味を実現するためブレスフィルムにおいて望ましい。
【0017】
ガンマ線により処理されたペクチンを用いて調製されたペクチンは、未処理のペクチンから調製されたフィルムよりも、はるかに短時間で口の中で溶解し、すぐに味を放出する。迅速な溶解と活性試薬の放出は、ブレスフィルムのような用途において特に重要である。例えば、ガンマ線により処理されたペクチンから調製されたフィルムは、従来技術のフィルムよりも強さの大きい味を有し、この味は貯蔵の間高いレベルで維持される。
【0018】
また、かかるフィルムは即時の湿潤性を有し、これにより、フィルムは湿気や粘膜組織に施用した後すぐに軟化することができる。経口的に供給されるフィルムの場合は、これにより、患者が口の中で持続性の嫌な感覚を経験しなくてすむ。皮膚用途の場合は、この特性により、例えば、皮膚を癒すこと又は乾癬を処置することに向けられたものなど、薬物を短時間で供給する助けにもなるであろう。
【0019】
また、かかるフィルムは、通常のコーティング、カッティング、スリッチング、及びパッケージング操作に適する引張強さを有する。
ペクチンフィルムは、高メトキシル、低メトキシル、及び低メチルエステルアミド化タイプのペクチンを含む、多くのタイプのペクチンから形成することができる。好ましくは、高メトキシルペクチンを使用する。ペクチン中のガラクツロン酸残基は、部分的にエステル化されており、メチルエステルとして存在する。エステル化の度合は、エステル化されたカルボキシル基の割合で定義される。50%を超えるエステル化度(DE)をもつペクチンは、高メチルエステル(HM)ペクチン又は高エステルペクチンと名づけられ、50%より低いDEをもつペクチンは、低メチルエステル(LM)ペクチン又は低エステルペクチンと名づけられる。果物及び野菜においてみられる殆どのペクチンは、HMペクチンである。ひとつの適するHMペクチンは、Dスロー・セット(シーピー・ケルコ・エーピーエス(CP Kelco Aps)から入手可能)である。
【0020】
ペクチンはガンマ線により処理される。ガンマ線は、任意の適する供給源から、典型的には、電子ビーム又はコバルト源から、発生させることができる。電子ビーム源は良好に制御されているが、コバルトにより生成されたガンマ線より透過が少ない。コバルトガンマ線及び電子ビームは、直接互換性があるものではないが、同じ線量で使用した場合にペクチンに対して同様の効果を与える。
【0021】
照射線量は、約10〜約50KGyの範囲であることができ、好ましくは、約10〜約30KGy、より好ましくは、約10〜約20KGy、最も好ましくは、約15KGyである。一般的には、25〜30KGyより高い線量だと、コヒーレント(干渉性、凝集性)フィルムを形成できない程度まで分子量が低減される。それどころか、フィルムは糖衣と同様に壊れて破片になり得る。一般的には、約10KGy未満の量では、より溶解が遅いフィルムが提供される。約15KGyでの処理により、pH6.5にpH中和して製造された生成物と同様の生成物が提供され、一般的には、最適だと考えられる。
【0022】
ペクチンに対する電子ビーム曝露はかなり短い時間であるが、コバルト源は、使用するコバルト源の強度に依存して、生成物に対して数分の時間曝露される。施用される放射線のレベルを測定するため、パッケージの外部で線量計を使用する。透過は、乾燥粉末ペクチンについて10cm未満であると仮定する。
【0023】
溶液も乾燥生成物も同様に照射することができる。殆どの場合においては、処理すべき材料の重量は少ないことから、乾燥生成物の処理が好ましく、また、一度処理すればペクチン溶液を調製することはより容易である。ガンマ線により処理した後、ペクチンを可塑剤、又は、調味助剤、着色剤、医薬剤、治療薬などのような任意の他の適する試薬と組合わせてもよく、それからフィルムへと形成する。放射線の透過は、乾燥生成物よりも溶液のほうが少ない。
【0024】
適する量の可塑剤を添加して、フィルムの伸展性を高め、その強度を増加させることができる。可塑剤は、通常、存在するペクチンの量に基づいて、約1:10〜2:1の比率で使用される。すなわち、可塑性材料は、ペクチンの重量の10分の1であるか、又はペクチン重量の2倍であることができる。殆どの場合においては、好ましい範囲は、1:4〜1:1.5である。これにより、柔軟であるが、あまりに粘着性でないフィルムが与えられることになる。可塑剤が少ないとフィルムは堅くなり、もろくなる。多すぎる量を使用すると、高いレベルにより、フィルムが軟化する原因となり、また、柔軟になると同時に粘着性になる原因となる。(粘着性フィルムは、一定の場合に接着剤に使用することができる。)分子量が最も低く、非イオン性で溶解性の物質は、可塑剤として使用することができる。好ましい物質は、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリ−エチレングリコール、及び同様の化合物である。
【0025】
ガンマ線処理済みペクチンから製造されたフィルムを使用して、治療薬、医薬品、及びブレス・フレッシュナーなどの種々の医薬化合物を投与することができる。
ブレス・フレッシュニング活性剤を本発明のフィルム組成物中に組み込んで、本発明のブレス・フレッシュニング・ストリップを形成することができる。活性試薬としては、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、及び/又はアルファ・イオノンが挙げられる。これらの薬剤は、口臭を遮断したり、揮発性の臭気の原因となる細菌性の硫黄化合物を低減したりする作用をする。これらの薬剤は、本発明のフィルム組成物中に、約0.1〜約2.0重量%、好ましくは、約0.15〜約0.5重量%の濃度で組み込むことができる。
【0026】
また、メントールやベンゾカインのような、咽喉炎を軽減するための活性試薬も含めることができる。
更に、かかるフィルムは、ひげそりによる切り傷などの傷に施用するために使用することができる。この場合において、皮膚軟化薬のような試薬をフィルム組成物中に組み込むことができる。
【0027】
また、かかるフィルムは、フェースマスク、メーキャップ、アクネ治療、及び皮膚に施用するための日焼け止めに使用することができる。このフィルムを使用して、特にハイライトを付ける場合に、毛髪に色を付けてもよい。皮膚に使用する場合には、クレンジング製品やスキンマスクのためのフィルム組成物に、シリカのような研磨剤を添加してもよい。このフィルムは、例えば、光輝フレークや粒子を含有する特別な化粧品に使用してもよい。
【0028】
更に、かかるフィルムは、子供用のファンスキンフィルム(fun skin film)としても使用することができる。かかるフィルムは、種々の色や色の組合わせがつけられていてもよく、また、クレンジングに使用されてもよい。
【0029】
かかるフィルムは、更に、例えば、水、追加のフィルム形成剤、調味助剤、抗悪臭剤、界面活性剤、乳化剤、着色剤、甘味料、及び芳香剤を含むことができる。
調味助剤としては、天然及び人工の調味料などの当業者に既知のものが挙げられる。これらの調味料は、合成調味油及び調味香料、及び/又は油、含油樹脂、及び、植物、葉、花、果物などから得られた抽出物、ならびにこれらの混合物から選択することができる。代表的な調味油としては、スペアミント油、シナモン油、ペパーミント油、チョウジ油、ベイ油、タイム油、ニオイヒバ油、ナツメグの油、セージの油、及び苦扁桃油が挙げられる。これらの調味剤は、個別に、又は混合して使用することができる。広く使用される調味料としては、個別に使用するか、又は混合して使用するかにかかわらず、ペパーミントなどのミント、人工バニラ、シナモン誘導品、及び種々の果物調味料が挙げられる。一般的には、Chemicals Used in Food Processing, publication 1274 by the National Academy of Sciences, pages 63-258に記載されているような、任意の調味料又は食品添加剤を使用することができる。使用される調味助剤の量は、通常、望まれる調味のタイプ、個々の調味、及び強さなどの因子にしたがう好みの問題である。一般的には、調味料は、約2.0〜約20重量%、好ましくは、約5〜約10重量%の量で、本発明のフィルム中に組み込まれる。
【0030】
本発明を実施するのに有用な甘味料としては、天然及び人工の甘味料の両方が挙げられる。適する甘味料としては、キシロース、リボース、グルコース(デキストロース)、マンノース、グラトース(glatose)、フルクトース(レブロース)、スクロース(砂糖)、マルトースのような単糖類、二糖類、多糖類などの水溶性甘味料、水溶性サッカリン塩、すなわち、ナトリウム又はカルシウムサッカリン塩のような水溶性人工甘味料、シクラメート塩ジペプチドを基材とする甘味料、L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル(アスパルテーム)のようなL−アスパラギン酸誘導甘味料、又はスクラロース(Sucralose)のような他の甘味料が挙げられる。
【0031】
一般的には、有効量の甘味料を使用して、特定の組成物について、選択される甘味料により変化する、望ましい甘味のレベルを提供する。この量は、通常、組成物の重量基準で約0.01%〜約2%となる。
【0032】
また、本発明の組成物は、着色剤又は着色料を含有することができる。着色剤は、所望の色を生成するのに有効な量で使用され、食品、医薬、及び化粧用途に適する天然食品色素及び染料が含まれる。これらの着色料は、FD&C染料及びレーキとして知られている。前述の使用スペクトルに対して許容可能な材料は、好ましくは、水溶性であり、5,5−インジゴチンジスルホン酸の二ナトリウム塩であるFD&CブルーNo.2が挙げられる。同様に、グリーンNo.3として知られる染料は、15トリフェニルメタン染料を含んでおり、4−[4−N−エチル−p−スルホベンジルアミノ)ジフェニル−メチレン]−[1−N−エチル−N−スルホニウムベンジル)−2,5−シクロ−ヘキサジエニミン]の一ナトリウム塩である。FD&C及びD&C染料のすべてとそれらの対応する化学構造の完全な引用は、the Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, Volume 5, Pages 857-884に見出すことができ、参照により本明細書中に援用される。
【0033】
図1は、フィルム製造操作の一態様を示す。まず、ポリマー溶液又はドープを調製し、よく混合して、高いポリマー配合量を得る。混合槽(1)は、制御された温度であればよく、第二のサージ槽を系につなげて、連続運転を可能にしてもよい。
【0034】
混合工程に続いて、溶液をベルト(2)のような剥離可能な担体上にキャストする。ポリマーをキャストするために、マニホルド、ブレード、ノズル、及び/又は他の適する装置を使用してもよい。担体材料は、浸透してフィルムと担体物質との間に有害な結合を形成することなく、フィルム溶液が意図される担体の幅にわたって平らに広がることができるように、表面張力を有するものでなければならない。適する担体材料の例としては、ガラス、PETプラスチック、ステンレス鋼、テフロン、及びポリエチレン含浸紙が挙げられる。
【0035】
キャスティング溶液又はドープは、ポリマー配合量をできるだけ高くすることが望ましい。これにより、乾燥処理において除去すべき水が少なくなり、フィルムはあまりカールせず、より素早く乾燥することになる。また、素早い乾燥により、風味のような揮発性の試薬を保持することにもなる。ペクチンは、適切に処理する場合は、10%又は更に高い濃度に調製してもよい。フィルムをベルト上にキャストするために使用される系に依存するが、ドープの理想的な粘度は、5,000cP〜80,000cPより高い年度であることができる。好ましくは、50,000〜80,000cPであり、より好ましくは、65,000〜75,000cPである。また、ドープをベルト上にキャストする前に加熱してもよく、これにより粘度が低減し、乾燥時間が短くなり材料の取扱いが簡単になる。
【0036】
キャストフィルムは、均一な厚さであり、最終的なフィルムよりもわずかに厚いものとする。乾燥すると、フィルムは横断面においてより薄くなるので、側面から側面までにおいて収縮しない。例えば、最終的な厚さが0.0015インチ(1.5ミル)(0.0038cm)であり、ドープの固体配合量が10%であるフィルムは、初期のフィルム厚さが約0.012インチ(12ミル)(0.030cm)であるものとする。
【0037】
かかる組成物は、剥離可能な担体上にキャストし、乾燥させる。フィルムの乾燥は、フィルムを構成する試薬に悪影響を与えない、乾燥オーブン、乾燥端子、真空乾燥機、又は任意の他の適する乾燥用装置を用いて、高温で行うことができる。
【0038】
図において、ベルト上のキャストフィルムは加熱セクション(3)を通過する。熱は、蒸気又は赤外線などの任意の適する方法で施用することできる。キャスフィルム及びベルトは、下から、上から、又は両方から加熱することができる。典型的には、ベルト上にフード(4)又は他の配置を使用して、湿気を除去し、乾燥の間の環境を制御する。好ましくは、乾燥を反射赤外装置などによりモニターする。フィルムが貯蔵後にカールする原因となることから、過剰な熱は避けるべきである。乾燥したときの製品の水分活性は、約0.3〜0.5(30%〜50%RH)であるものとする。次いで、ベルト上のキャストフィルムは冷却セクション(5)を通過してもよい。フィルムをベルトから取り外すために、加熱段階の後に冷却してもよい。
【0039】
次いで、フィルムを担体から任意の適する方法で取り外す。図では、フィルムをスクレーパーブレード(6)により担体から取り外す。操作を円滑に行うためには、ベルトからきれいに取り外すことが必須である。取り外しを助けるためには、乾燥を開始する前にベルトに界面活性剤を施用してもよい。また、かかるペクチンは粘度が低く、ポリマー配合量が高いことから、取り外しは比較的容易である。フィルムがベルトに固着する原因となることから、過剰な量の可塑剤は避けるべきである。
【0040】
一旦、取り外したら、フィルムをストリップへと切断して、ロール上に巻いてもよい。一定の場合には、プラスチック又はフィルム産業により「加工(conversion)」と呼ばれることが多い、この中間処理は、まだフィルムに結合している裏材又は担体シートとともに行うことができる。これらの場合には、パッケージに配置する直前にフィルムから裏材を外す。また、フィルムは、打抜き又はスリッチング打抜きにより、単位用量に分けてもよい。小分けにされたフィルムは、一般的には約15〜約30ミリメートルのストリップ幅と、約20〜約50ミリメートルの長さを有する。フィルムは、約10〜約200マイクロメートル、好ましくは約25〜75マイクロメートルの厚さを有する。
【0041】
経口的に使用する場合は、フィルムは、好ましくは、口の中に入れるための形状と大きさに作られる。フィルムは柔軟性であり、口の中の表面、通常は口蓋又は舌にくっつき、短時間、典型的には2分未満、好ましくは15秒〜1分で溶解する。溶解速度は、フィルムの厚さにより制御することができる。
【0042】
本発明に従ったガンマ線により処理されたペクチンから製造されるフィルムは、未処理ペクチンよりも、少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも35%大きい溶解速度を有する。典型的には、改良は、25〜50%の改良である。
【0043】
実施例1
シーピー・ケルコ(CP Kelco)の高メチルペクチン、Dスロー・セットZの2kg試料10個を個別にプラスチック製ジップロックバッグに入れ、電子ビーム源からのガンマ線により処理した。線量レベルは、25KGy(キログレイ)に設定した。これは、試料について、生存する微生物を殺菌するレベルの処理である。これら試料を処理の間、封をしたジップロックバッグに入れておき、実験室に戻るまで開けなかった。
【0044】
物理的な外観において、このペクチンは、未処理試料とは顕著に異なっていた。薄黒くなる兆候を示さず、試料において異常な臭いがなく、また、試料を水中に非常に容易に溶解することが可能であった。13%(重量/重量基準)を超える溶液を容易に調製することができた。
【0045】
以下の配合を使用して、ガンマ線処理の有効性を試験した。このペクチンを、コバルト源からの25KGyレベルの放射線により処理した。
【0046】
【表1】

【0047】
ドローダウンバーを用いてプラスチックシート上にフィルムをキャストした。初期のフィルム厚さは約0.0075インチ(0.0191cm)であり、フィルムの最終的な厚さは0.002〜0.0015であった。これは、アメリカ合衆国の現在の市場においてブレスストリップの典型である。
【0048】
ガンマ線により処理したペクチンにより製造した製品は、pH処理を用いて製造した製品よりも、透明であり、わずかにもろく、外観が滑らかで光沢がある。しかし、同じレベルのフィルム柔軟性を実現するためには、ガンマ線処理の製品においてpH処理の製品の約2倍のグリセロールレベルが必要となる。可塑剤をこのように増加させると、フィルムは二重に曲げることができ(ヘアピン形状)、折り目がつくが破れないであろう。
【0049】
実施例2
この実施例は、コバルト源を用いて15KGyにて処理したペクチンに関して行った。実施例1で説明したフィルムよりもわずかにゆっくり溶解することが分かった。
【0050】
【表2】

【0051】
試料は、それぞれ0.01%及び0.2%にて添加した重炭酸ナトリウム(緩衝液)及びヘキサメタリン酸ナトリウム(カルシウム金属イオン封鎖剤)を含む水中で、800rpmのプロペラミキサーを用いて、4%のペクチンレベルに調製した。この溶液を2時間混合し、次いで、25℃に調整した。60rpmのブルックフィールド(Brookfield)LVT#3スピンドルにより粘度を測定した。この表は、放射線の線量がペクチン溶液の粘度にどのような影響を与えるかを示している。粘度は、これらの条件下ではすぐれた分子量の指標である。
【0052】
【表3】

【0053】
ガンマ線処理は、処理するためにペクチンを溶解する必要がないことから、これまでに開示された技術よりも実行するのが有意に簡単である。そのうえ、ガンマ線処理により、生成物は本質的に滅菌される。このことは、医薬品や化粧品については重要な特徴である。15KGyの線量は、最適値に近く、pH6.5にpH中和することにより製造された生成物に匹敵する。観察される溶液の粘度から、10KGyで処理した材料は、pH処理された生成物よりわずかに低い。ガンマ線処理したペクチンにより製造されたフィルムは、pH処理された対照よりも、口の中で非常に迅速に溶解し、また、べとべとする又はねばねばする感覚をそれほど与えなかった。いずれの製品も、フィルム溶解と、ねばねばする又は粘着性の口ざわりが無いことに関しては、未処理ペクチンよりもすぐれていた。
【0054】
実施例3
ペクチンマスクフィルムを調製し、まず皮膚を水で湿らせ、次いでマスクフィルムを施用し、更に少しの水で湿らせ皮膚にくっつけることにより、顔に施用する。ペクチンの水分保持特性を使用して、皮膚に潤いを与え、すべすべした感触を与えるのを助ける。
【0055】
【表4】

【0056】
グリセロールを秤量し、水に加える。よく攪拌して、シリカを水/グリセロールブレンド中に分散させる。シリカが完全に分散したら、1200rpmで混合しながら、水の渦上にゆっくりペクチンを振りかけることによりペクチンを添加する。粘度が増加するにつれて、溶液全体が混合しつづけるように攪拌を強くする。最低15分間混合する。遠心分離又は真空などにより過剰な空気を除去する。溶液の一部をプラスチックシート(例えば、ポリスチレン)上に注ぎ、ドローダウンバーを用いて、溶液を薄い平らな層へと延ばす。好ましくは、フィルムは、約40μm(1.5ミル)の最終乾燥フィルムを形成するようにキャストするものとする。典型的な出発点は0.36mm(14ミル)である。このフィルムを、水分活性0.5まで、又は45℃で約4時間、乾燥させる。必要に応じて切断し、包装する。
【0057】
実施例4
ペクチン及び光輝顔料を用いて、特別なメーキャップフィルムを調製する。このフィルムは、水中ですぐに溶解することができ、輝きのある分散物を与える。
【0058】
【表5】

【0059】
グリセロールを秤量し、水に加える。ペクチンを秤量し、1200rpmで混合しながら、水の渦上にゆっくりペクチンを振りかける。粘度が増加するにつれて、溶液全体が混合しつづけるように混合速度を速くする。最低15分間混合する。ペクチンの水和の後で光輝顔料を添加する。遠心分離又は真空などにより過剰な空気を除去する。溶液の一部をプラスチックシート(例えば、ポリスチレン)上に注ぎ、ドローダウンバーを用いて、溶液を薄い平らな層へと延ばす。好ましくは、フィルムは、約40μm(1.5ミル)の最終乾燥フィルムを形成するようにキャストするものとする。典型的な出発点は0.36mm(14ミル)である。このフィルムを、水分活性0.5まで、又は45℃で約4時間、乾燥させる。必要に応じて切断し、包装する。
【0060】
実施例5
アクネ阻害剤を含有するフィルムを調製し、吹き出物を治療し、隠すために使用する。フィルムを湿らせた皮膚に乾燥した指で施用し、やさしくこすって皮膚の中にブレンドする。ペクチンは、皮膚を和らげる助けとなり、サリチル酸は吹き出物を癒す助けとなる。
【0061】
【表6】

【0062】
グリセロールを秤量し、1000mlビーカー中の水に加える。ペクチンを秤量し、1200rpmで混合しながら、水の渦上にゆっくりペクチンを振りかける。粘度が増加するにつれて、溶液全体が混合しつづけるように攪拌速度を速くする。最低15分間混合する。ペクチンの水和の後に色を添加する。サリチル酸を添加する。遠心分離又は真空などにより過剰な空気を除去する。溶液の一部をプラスチックシート(例えば、ポリスチレン)上に注ぎ、ドローダウンバーを用いて、溶液を薄い平らな層へと延ばす。好ましくは、フィルムは、約40μm(1.5ミル)の最終乾燥フィルムを形成するようにキャストするものとする。典型的な出発点は0.36mm(14ミル)である。このフィルムを、水分活性0.5まで、又は45℃で約4時間、乾燥させる。必要に応じて切断し、包装する。
【0063】
実施例6
種々の形状に切断して、湿らせた皮膚に施用することができるフィルムを調製する。このフィルムは、すぐに皮膚にくっつくが、容易に洗い落とすことができる。ペクチンにより、このフィルムは皮膚に対して安全になり、刺激を与えなくなる。
【0064】
【表7】

【0065】
グリセロールを秤量し、1000mlビーカー中の水に加える。ペクチンを秤量し、1200rpmで混合しながら、水の渦上にゆっくりペクチンを振りかける。粘度が増加するにつれて、溶液全体が混合しつづけるように攪拌速度を速くする。最低15分間混合する。完全にブレンドした(モーター及び乳棒により)顔料及び二酸化チタンは、ペクチンの水和の後に添加するものとする。(注:見栄えのために、5%までの光輝顔料も添加することができる。)遠心分離又は真空などにより過剰な空気を除去する。溶液の一部をプラスチックシート(例えば、ポリスチレン)上に注ぎ、ドローダウンバーを用いて、溶液を薄い平らな層へと延ばす。好ましくは、フィルムは、約40μm(1.5ミル)の最終乾燥フィルムを形成するようにキャストするものとする。典型的な出発点は0.36mm(14ミル)である。このフィルムを、水分活性0.5まで、又は45℃で約4時間、乾燥させる。必要に応じて切断し、包装する。
【0066】
実施例7
皮膚の日光に敏感な領域に施用することができるフィルムを調製する。このフィルムは、湿らせた皮膚に容易に施用され、使用後に容易に洗い落とすことができる。
【0067】
【表8】

【0068】
グリセロールを秤量し、1000mlビーカー中の水に加える。ペクチンを秤量し、1200rpmで混合しながら、水の渦上にゆっくりペクチンを振りかける。粘度が増加するにつれて、溶液全体が混合しつづけるように攪拌速度を速くする。最低15分間混合する。ペクチンを水和させた後に、二酸化チタンを添加する。遠心分離又は真空などにより過剰な空気を除去する。溶液の一部をプラスチックシート(例えば、ポリスチレン)上に注ぎ、ドローダウンバーを用いて、溶液を薄い平らな層へと延ばす。好ましくは、フィルムは、約40μm(1.5ミル)の最終乾燥フィルムを形成するようにキャストするものとする。典型的な出発点は0.36mm(14ミル)である。このフィルムを、水分活性0.5まで、又は45℃で約4時間、乾燥させる。必要に応じて切断し、包装する。
【0069】
実施例8
ペクチン及びキサンタンガムフィルムを使用して、正確な位置にヘアカラーを提供することできる。種々の色を使用することができる。毛髪を湿らせて、乾燥した手でフィルムを施用するものとする。毛髪とフィルムを水で湿らせて、フィルムを溶解し、色を放出させる。迅速の色の初期放出が達成される。キサンタンは、フィルムの完全な溶解を遅らせて、より長い浸透時間を与える。
【0070】
【表9】

【0071】
グリセロールを秤量し、1000mlビーカー中の水に加える。ペクチン及びキサンタンガムを秤量し、1200rpmで混合しながら、水の渦上にゆっくりキサンタンガムを振りかける。粘度が増加するにつれて、溶液全体が混合しつづけるように攪拌速度を速くする。最低15分間混合する。遠心分離又は真空などにより過剰な空気を除去する。溶液の一部をプラスチックシート(例えば、ポリスチレン)上に注ぎ、ドローダウンバーを用いて、溶液を薄い平らな層へと延ばす。好ましくは、フィルムは、約40μm(1.5ミル)の最終乾燥フィルムを形成するようにキャストするものとする。典型的な出発点は0.36mm(14ミル)である。このフィルムを、水分活性0.5まで、又は45℃で約4時間、乾燥させる。必要に応じて切断し、包装する。
【0072】
本発明の範囲内の適するペクチンフィルムは、前述の実施例において使用したものの代わりに、一般的かつ具体的に説明した本発明の構成要素及び/又は操作条件を用いることにより得てもよい。
【0073】
本発明を実施する現在の好ましい態様を含む具体的な実施例に関して、本発明を説明してきたが、当業者であれば、これまでに説明した系及び手法については、本発明の精神及び範囲内に含まれる数多くの変更及び入替えが存在することを認識するだろう。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、ペクチンフィルムを製造するための一態様を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程:ペクチンをガンマ線で照射し;そして、該ガンマ線照射処理済みペクチンからフィルムを形成することを含む、迅速に溶解するペクチンフィルムを製造するための方法。
【請求項2】
更に、乾燥ペクチンをガンマ線で照射し、該ガンマ線照射済みペクチンにより溶液を形成し、そして、該溶液からフィルムを形成することを含む、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
更に、ペクチンから溶液を形成し、該ペクチン溶液をガンマ線で照射し、該溶液からフィルムを形成することを含む、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
ガンマ線が、電子ビーム又はコバルト供給源からもたらされる、請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
ガンマ線の線量が、約10〜約30kGyである、請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
ガンマ線の線量が、約10〜約20kGyである、請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
更に、ペクチンを活性試薬又は調味助剤と組み合わせることを含む、請求項1記載の製造方法。
【請求項8】
更に、ペクチンを可塑剤と組み合わせることを含む、請求項1記載の製造方法。
【請求項9】
ガンマ線により処理されたペクチンを含む、迅速に溶解するペクチンフィルム。
【請求項10】
更に、少なくとも1種の活性剤を含む、請求項9記載のペクチンフィルム。
【請求項11】
ペクチンが、約10〜約30kGyの線量のガンマ線により処理されている、請求項9記載のフィルム。
【請求項12】
線量が約10〜約20kGyである、請求項11記載のフィルム。
【請求項13】
更に、有効量の可塑剤を含む、請求項9記載のフィルム。
【請求項14】
ペクチンが高メチルエステルペクチンである、請求項9記載のフィルム。
【請求項15】
ペクチンが低メチルエステルペクチンである、請求項9記載のフィルム。
【請求項16】
ペクチンが、フィルムの乾燥重量基準で、約20〜約80重量%の濃度で存在する、請求項9記載のフィルム。
【請求項17】
更に、調味助剤をふくむ、請求項9記載のフィルム。
【請求項18】
活性剤が医薬である、請求項10記載のフィルム。
【請求項19】
活性化剤が、メントール、ベンゾカイン、又はこれらの混合物である、請求項10記載のフィルム。
【請求項20】
水中において迅速に溶解することができるフィルムを製造するための組成物であって、ガンマ線で処理したペクチンを含む、前記組成物。
【請求項21】
更に、少なくとも1種の活性剤又は調味助剤を含む、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
ペクチンが、約10〜約30kGyの線量のガンマ線により処理されている、請求項20記載の組成物。
【請求項23】
線量が約10〜約20kGyである、請求項22記載の組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2007−511388(P2007−511388A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535506(P2006−535506)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/030919
【国際公開番号】WO2005/037895
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(506128352)シーピー・ケルコ・ユーエス・インコーポレーテッド (18)
【Fターム(参考)】