説明

クロックデータリカバリ回路及び表示装置

【課題】クロックデータリカバリにおいて擬似ロック発生の検出に要する時間を短縮すること。
【解決手段】クロックデータリカバリ回路は、レシーバ回路と、PLL回路と、擬似ロック検出回路とを備える。レシーバ回路は、所定のパターンを含むシリアルデータを受け取り、クロック信号に同期してシリアルデータをサンプリングしてサンプルドデータを生成する。PLL回路は、サンプルドデータに基づいてクロックデータリカバリを行い、クロック信号を生成する。ここで、擬似ロックパターンとは、PLL回路の擬似ロックが発生している場合にレシーバ回路が上記所定のパターンをサンプリングする結果得られるパターンである。擬似ロック検出回路は、サンプルドデータに含まれる擬似ロックパターンを検出することによって、PLL回路の擬似ロックを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロックデータリカバリ(CDR: Clock Data Recovery)に関する。
【背景技術】
【0002】
クロックデータリカバリは、クロック専用線を用いないデジタルデータ伝送において有用な技術である。具体的には、伝送データそのものにクロック信号が重畳され、そのデータを受け取った受信装置が当該受信データからクロック信号を再生する。また、受信装置は、再生されたクロック信号を用いてデータをサンプリングする。このようなクロックデータリカバリは、高速通信インターフェース、表示ドライバ、光ディスク再生装置等で用いられている。
【0003】
クロックデータリカバリでは、典型的にはPLL(Phase Locked Loop)回路が利用される。PLL回路は、VCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発振器)を含んでおり、所望の発振周波数が得られるようにVCOの制御電圧を制御することによってクロック信号を再生することができる。このように入力信号に対して再生クロック信号の周波数及び位相が同期した状態は、PLL回路の「ロック」と呼ばれている。しかしながら、様々な要因によりPLL回路が誤動作してしまい、再生クロックの周波数が所望の周波数とは異なるものにロックされてしまう場合がある。この状態は、PLL回路の「擬似ロック(false lock)」と呼ばれている。擬似ロックが発生すると正常なデータ受信が保証されなくなるため、擬似ロックの発生を早期に検出することが重要である。
【0004】
特許文献1(特開2005−318014号公報)は、擬似ロック検出方法を開示している。具体的には、データレートとクロック周波数との比が1:n(nは2以上の整数)となるような擬似ロックの検出方法は、次の通りである。すなわち、再生クロックに基づいてサンプリングされたデータが所定の期間モニタされ、その所定の期間中の3ビット以上のパターン[0,1,0,…]あるいはパターン[1,0,1,…]の発生確率が算出される。もし、その発生確率が0%であれば、1:nの擬似ロックが発生したとみなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−318014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者は次の点に着目した。上述の特許文献1の場合、パターン[0,1,0,…]あるいはパターン[1,0,1,…]の発生確率を算出する必要がある。発生確率の算出精度が低ければ、擬似ロックが誤って検出されてしまう可能性がある。発生確率の算出精度を高くするためには、かなり多くのデータ入力が必要であり、そのことは擬似ロック発生の検出に要する時間の増大を招く。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの観点において、クロックデータリカバリ回路が提供される。クロックデータリカバリ回路は、レシーバ回路と、PLL回路と、擬似ロック検出回路とを備える。レシーバ回路は、所定のパターンを含むシリアルデータを受け取り、クロック信号に同期してシリアルデータをサンプリングしてサンプルドデータを生成する。PLL回路は、サンプルドデータに基づいてクロックデータリカバリを行い、クロック信号を生成する。ここで、擬似ロックパターンとは、PLL回路の擬似ロックが発生している場合にレシーバ回路が上記所定のパターンをサンプリングする結果得られるパターンである。擬似ロック検出回路は、サンプルドデータに含まれる擬似ロックパターンを検出することによって、PLL回路の擬似ロックを検出する。
【0008】
本発明の他の観点において、表示装置が提供される。表示装置は、表示パネルを駆動する表示ドライバと、所定のパターンを含むシリアルデータである映像データ信号を生成し、映像データ信号を表示ドライバに送信する制御装置と、を備える。表示ドライバは、レシーバ回路と、PLL回路と、擬似ロック検出回路とを備える。レシーバ回路は、映像データ信号を受け取り、クロック信号に同期して映像データ信号をサンプリングしてサンプルドデータを生成する。PLL回路は、サンプルドデータに基づいてクロックデータリカバリを行い、クロック信号を生成する。ここで、擬似ロックパターンとは、PLL回路の擬似ロックが発生している場合にレシーバ回路が所定のパターンをサンプリングする結果得られるパターンである。擬似ロック検出回路は、サンプルドデータに含まれる擬似ロックパターンを検出することによって、PLL回路の擬似ロックを検出する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、擬似ロック発生を検出するために、サンプルドデータの中から擬似ロックパターンそのものが検出される。所定期間における3ビット以上のパターン[0,1,0,…]あるいはパターン[1,0,1,…]の発生確率を算出する必要はない。従って、擬似ロック発生の検出に要する時間が短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るデータ伝送システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図2は、トレーニングパターンを含むシリアルデータの一例を示している。
【図3】図3は、擬似ロックが発生していない場合のトレーニングパターンのサンプリングを示している。
【図4】図4は、擬似ロックが発生している場合のトレーニングパターンのサンプリングを示している。
【図5】図5は、クロックデータリカバリ回路の構成例を示すブロック図である。
【図6】図6は、擬似ロックパターンの例を示している。
【図7】図7は、2倍パターン検出回路の構成例を示す回路図である。
【図8】図8は、ループフィルタ及び電圧制御回路の構成例を示す回路図である。
【図9】図9は、クロックデータリカバリ回路の動作例を示している。
【図10】図10は、クロックデータリカバリ回路の他の構成例を示すブロック図である。
【図11】図11は、ループフィルタ及び電圧制御回路の他の構成例を示す回路図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態に係る表示装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図13】図13は、表示装置の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
1.データ伝送システム
図1は、本発明の実施の形態に係るデータ伝送システム1の構成を概略的に示している。データ伝送システム1は、シリアルデータ送信回路100及びクロックデータリカバリ回路10を含んでいる。シリアルデータ送信回路100は、シリアルデータDATを生成し、そのシリアルデータDATをクロックデータリカバリ回路10に送信する。
【0013】
クロックデータリカバリ回路10は、シリアルデータDATを受け取る。クロックデータリカバリ回路10は、受け取ったシリアルデータDATからクロック信号CLKを再生し、そのクロック信号CLK(再生クロック)を用いてシリアルデータDATをサンプリングする。より詳細には、クロックデータリカバリ回路10は、レシーバ回路20、PLL回路30、擬似ロック検出回路40、及び周波数補正回路50を含んでいる。
【0014】
レシーバ回路20は、外部から供給されるシリアルデータDATを入力データDinとして受け取る。レシーバ回路20は、クロック信号CLKに同期して入力データDinをサンプリングする。そのサンプリングによりサンプルドデータDsmpが得られる。つまり、レシーバ回路20は、クロック信号CLKに基づいて入力データDinのサンプリングを行い、サンプルドデータDsmpを生成する。レシーバ回路20は、サンプルドデータDsmpを、PLL回路30及び擬似ロック検出回路40に供給し、また、外部に出力する。
【0015】
PLL回路30は、サンプルドデータDsmpを受け取る。PLL回路30は、そのサンプルドデータDsmpに基づいて「クロックデータリカバリ」を行い、クロック信号CLKを再生する。PLL回路30は、得られたクロック信号CLK(再生クロック)をレシーバ回路20に供給する。
【0016】
擬似ロック検出回路40は、サンプルドデータDsmpを受け取る。擬似ロック検出回路40は、そのサンプルドデータDsmpを参照することによって、PLL回路30の「擬似ロック」を検出する。擬似ロック検出処理の詳細は、後述される。擬似ロック検出回路40は、擬似ロックの発生を検出すると、擬似ロック検出信号SDを周波数補正回路50に出力する。
【0017】
擬似ロック検出回路40によって擬似ロックが検出された場合、周波数補正回路50は、PLL回路30を制御してその発振周波数を強制的に下げる。つまり、周波数補正回路50は、擬似ロック検出回路40から出力される擬似ロック検出信号SDに応答して、クロック信号CLKの周波数が低下するようにPLL回路30を制御する。
【0018】
本実施の形態では、擬似ロックを検出するために、シリアルデータDAT中に含まれる「所定のパターン」が利用される。その所定のパターンとして、例えば、PLL回路30用の「トレーニングパターンPAT_TR」が用いられる。トレーニングパターンPAT_TRは、PLL回路30の引き込み(pull-in)、あるいは、ロック状態の維持のために用いられる周知のパターンであり、規定のタイミングでシリアルデータDATに挿入される。例えば図2に示されるように、トレーニングパターンPAT_TRは、電源投入直後、及び、システム動作上問題ない箇所に挿入される。典型的には、トレーニングパターンPAT_TRは、所定ビット数の“0”と“1”の繰り返し(0,1,0,1,0,1・・・)で構成される。
【0019】
シリアルデータ送信回路100は、そのようなトレーニングパターンPAT_TR(所定のパターン)を含むシリアルデータDATを生成し、そのシリアルデータDATをクロックデータリカバリ回路10へ送信する。クロックデータリカバリ回路10は、トレーニングパターンPAT_TR(所定のパターン)を含むシリアルデータDATを入力データDinとして受け取り、その入力データDinに基づいてクロックデータリカバリ及び擬似ロック検出を行う。以下、「0,1,0,1,・・・」のトレーニングパターンPAT_TRを利用して擬似ロックを検出する手法を説明する。
【0020】
図3及び図4は、レシーバ回路20によるトレーニングパターンPAT_TRのサンプリングを示している。より詳細には、レシーバ回路20に入力される入力データDinに含まれるトレーニングパターンPAT_TR、クロック信号CLK、及びそのクロック信号CLKに基づくサンプリング結果であるサンプルドデータDsmpが示されている。
【0021】
図3は、擬似ロックが発生していない場合を示している。この場合、所望の周波数のクロック信号CLKが得られており、入力データレートとクロック周波数が一致している。トレーニングパターンPAT_TRのサンプリング結果であるサンプルドデータDsmpとしては、トレーニングパターンPAT_TRと同じパターン「0,1,0,1,・・・」が得られている。
【0022】
一方、図4は、2倍周波数の擬似ロックが発生している場合を示している。この場合、PLL回路30は所望の周波数の2倍の周波数でロックしており、クロック周波数は所望の周波数の2倍となっている。従って、トレーニングパターンPAT_TRのサンプリング結果であるサンプルドデータDsmpは、各ビットが2回ずつサンプリングされた「0,0,1,1,0,0,1,1・・・」となる。このトレーニングパターンPAT_TRと異なるパターンは、擬似ロックの発生に起因しており、以下「擬似ロックパターンPAT_FL」と参照される。つまり、擬似ロックパターンPAT_FLとは、PLL回路30の擬似ロックが発生している場合にレシーバ回路20がトレーニングパターンPAT_TR(所定のパターン)をサンプリングする結果得られるパターンである。
【0023】
本実施の形態に係る擬似ロック検出回路40は、サンプルドデータDsmpに含まれる擬似ロックパターンPAT_FLを検出することによって、PLL回路30の擬似ロックを検出することができる。つまり、擬似ロック検出回路40は、サンプルドデータDsmpの中に擬似ロックパターンPAT_FLが含まれているか否かを判定する。そして、サンプルドデータDsmpの中に擬似ロックパターンPAT_FLが含まれている場合、擬似ロック検出回路40は、擬似ロック検出信号SDを周波数補正回路50に出力する。
【0024】
このように、本実施の形態によれば、擬似ロック発生を検出するために、サンプルドデータDsmpの中から擬似ロックパターンPAT_FLそのものが検出される。所定期間における3ビット以上のパターン[0,1,0,…]あるいはパターン[1,0,1,…]の発生確率を算出する必要はない。従って、擬似ロック発生の検出に要する時間が短縮される。
【0025】
擬似ロック検出回路40によって擬似ロックが検出された場合、周波数補正回路50は、PLL回路30を制御してクロック信号CLKの周波数を強制的に下げてもよい。これにより、PLL回路30が正常に動作するようになる。
【0026】
尚、シリアルデータ送信回路100は、擬似ロックパターンPAT_FLを含まないシリアルデータDATにトレーニングパターンPAT_TRを挿入する。つまり、クロックデータリカバリ回路10が受け取るシリアルデータDAT(入力データDin)そのものは、擬似ロックパターンPAT_FLを含んでいない。従って、擬似ロックの誤検出は発生しない。
【0027】
例えば、クロックデータリカバリ回路10は、通信データを処理する非同期通信インターフェースや、表示データを処理する表示ドライバに適用される。そのような通信データや表示データは、送信側において様々な処理が施されており、上記のような擬似ロックパターンPAT_FLを含まない。
【0028】
また、擬似ロック検出のために利用される所定のパターンは、上述の「0,1,0,1,・・・」に限られない。対応する擬似ロックパターンPAT_FLが、シリアルデータDATに含まれておらず、且つ、擬似ロック検出回路40で容易に検出できるものであれば、どのようなものでも所定のパターンとして用いることができる。
【0029】
2.クロックデータリカバリ回路10の様々な例
クロックデータリカバリ回路10の構成としては、様々なものが考えられる。以下、いくつかの例を説明する。
【0030】
2−1.第1の例
図5は、クロックデータリカバリ回路10の構成の一例を示すブロック図である。本例において、擬似ロック検出回路40は2倍パターン検出回路42を含んでいる。
【0031】
2倍パターン検出回路42は、図4で示されたような擬似ロックパターンPAT_FLを検出することにより、2倍周波数での擬似ロックを検出する。但し、電源投入直後など、データの先頭ビットが確定していない場合もあり得る。従って、2倍パターン検出回路42は、サンプリング開始ビットがいずれの場合でも、擬似ロックパターンPAT_FLを検出できることが望ましい。図6は、トレーニングパターンPAT_TRが「0,1,0,1・・・」の場合に2倍パターン検出回路42が検出すべき4種類の擬似ロックパターンPAT_FLを示している。
【0032】
図7は、図6で示された4種類の擬似ロックパターンPAT_FLを検出することができる回路構成例を示している。図7で示される2倍パターン検出回路42は、2段のEXOR回路と、18入力AND回路とを備えている。そのAND回路の出力が、擬似ロック検出信号SDに相当する。この2倍パターン検出回路42には、20ビットのデータ(D<0>〜D<19>)が供給される。その20ビットデータが図6で示されたいずれかの擬似ロックパターンPAT_FLに一致すると、擬似ロック検出信号SDは活性化され、Highレベル(“1”)になる。従って、サンプルドデータDsmpを20ビットずつ順次供給することによって、擬似ロックを検出することが可能となる。サンプルドデータDsmpの供給は、例えば、クロック信号CLKに基づいて動作するシリアル−パラレル変換回路あるいはシフトレジスタを利用することによって可能である。
【0033】
再度図5を参照して、PLL回路30は、位相・周波数検出器(PFD: Phase-Frequency
Detector)31、チャージポンプ32、ループフィルタ33、電圧制御回路34、電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)35、及び分周器36を含んでいる。
【0034】
チャージポンプ32は、ループフィルタ33に電流を供給する。ループフィルタ33の出力電圧は、フィルタ電圧Vlfである。そのフィルタ電圧Vlfは、VCO35に供給される。VCO35の発振周波数fvcoは、フィルタ電圧Vlfに依存して変動する。つまり、VCO35は、フィルタ電圧Vlfに応じたクロック周波数fvcoのクロック信号CLKを生成する。分周器36は、VCO35から出力されるクロック信号CLKを分周し、フィードバッククロックCLKfdを生成する。
【0035】
位相・周波数検出器31は、サンプルドデータDsmp及びフィードバッククロックCLKfdを受け取る。まず、位相・周波数検出器31は、サンプルドデータDsmpとフィードバッククロックCLKfdとの間の周波数の差を検出し、その差がなくなるようにチャージポンプ32の動作を制御する。サンプルドデータDsmpとフィードバッククロックCLKfdの周波数がほぼ合致した後、位相の調整が行われる。詳細には、位相・周波数検出器31は、サンプルドデータDsmpとフィードバッククロックCLKfdとの間の位相の差を検出し、その差がなくなるようにチャージポンプ32の動作を制御する。このようにして、フィルタ電圧Vlf及びクロック周波数fvcoが所望値に制御され、図3で示されたようなサンプリングが実現される。尚、図3の例の場合、分周器36は、1/2分周器である。
【0036】
擬似ロックが発生している場合(図4参照)、クロック周波数fvcoは所望値よりも高くなっている。この場合、VCO35に供給されるフィルタ電圧Vlfが所望値よりも高くなっているため、そのフィルタ電圧Vlfを下げればよい。そのために、図5に示されるように、VCO35の前段に電圧制御回路34が設けられている。この電圧制御回路34は、擬似ロック検出信号SDに応答して、VCO35に供給されるフィルタ電圧Vlfを下げる。その結果、クロック周波数fvcoも低下する。すなわち、この電圧制御回路34は、図1で示された周波数補正回路50に相当しており、擬似ロックが検出された場合にフィルタ電圧Vlfを下げることによってクロック周波数fvcoを低下させる。
【0037】
図8は、ループフィルタ33及び電圧制御回路34(周波数補正回路50)の一例を示している。ループフィルタ33としてはRCフィルタが例示されている。ループフィルタ33の出力ノードN1は、電圧制御回路34及びVCO35に接続されている。電圧制御回路34は、その出力ノードN1とグランド線との間に介在するNMOSトランジスタMNを含んでいる。そのNMOSトランジスタMNのゲート電極には、擬似ロック検出信号SDが入力される。擬似ロック発生が検出されると、擬似ロック検出信号SDが活性化されてHighレベルになり、NMOSトランジスタMNがオンする。その結果、ループフィルタ33の出力ノードN1の電圧が減少し、VCO35に入力されるフィルタ電圧Vlfが下がる。これにより、クロック周波数fvcoが低下し、擬似ロックが解消される。
【0038】
図9は、動作の一例を示している。図9において、横軸は、VCO35に入力されるフィルタ電圧Vlfを表し、縦軸は、クロック周波数fvcoを表す。クロック周波数fvcoは、フィルタ電圧Vlfに依存して変動する。周波数f1は所望のクロック周波数であり、周波数f2はf1の2倍である。状態(1)において、2倍周波数f2での擬似ロックが発生している。擬似ロック検出回路40がその擬似ロックを検出すると、電圧制御回路34(周波数補正回路50)がフィルタ電圧Vlfを下げて、クロック周波数fvcoを低下させる(状態(2))。その後、PLL回路30は正常に動作し、所望のクロック周波数f1でロックする(状態(3))。
【0039】
2−2.第2の例
擬似ロック検出回路40が検出する擬似ロックは、2倍周波数での擬似ロックに限られない。擬似ロック検出回路40は、n倍周波数(nは2以上の整数)での擬似ロックを検出してもよい。また、擬似ロック検出回路40は、複数パターンの擬似ロックを検出するように構成されていてもよい。
【0040】
図10に示される例では、擬似ロック検出回路40は、2倍周波数、3倍周波数、及び4倍周波数のそれぞれでの擬似ロックを検出する。具体的には、擬似ロック検出回路40は、2倍パターン検出回路42、3倍パターン検出回路43、及び4倍パターン検出回路44を含んでいる。2倍パターン検出回路42は、第1の例の場合と同様に、2倍周波数での擬似ロックを検出し、擬似ロック検出信号SDを電圧制御回路34に出力する。同様に、3倍パターン検出回路43及び4倍パターン検出回路44は、3倍周波数及び4倍周波数での擬似ロックをそれぞれ検出し、擬似ロック検出信号SDを電圧制御回路34に出力する。
【0041】
例えば、擬似ロック検出信号SDは、第1の例と同じく1ビット信号である。この場合、いずれかの検出回路(42,43,44)で擬似ロックが検出されると、擬似ロック検出信号SDがHighレベル(“1”)になる。その場合の電圧制御回路34の構成は、第1の例と同じである(図8参照)。
【0042】
あるいは、擬似ロック検出信号SDは、多ビット信号であってもよい。この場合、検出された擬似ロックのパターンに応じて、擬似ロック検出信号SDの内容が変わる。図11は、多ビットの擬似ロック検出信号SDに対応した電圧制御回路34(周波数補正回路50)の構成例を示している。電圧制御回路34は、ループフィルタ33の出力ノードN1とグランド線との間に並列に接続された複数のNMOSトランジスタMN1、MN2、MN3を含んでいる。擬似ロック検出信号SDのそれぞれのビットは、NMOSトランジスタMN1、MN2、MN3のそれぞれのゲート電極に入力される。
【0043】
例えば、2倍周波数での擬似ロックが検出された場合、1個のNMOSトランジスタMN1だけがオンする。3倍周波数での擬似ロックが検出された場合、2個のNMOSトランジスタMN1、MN2がオンする。4倍周波数での擬似ロックが検出された場合、3個のNMOSトランジスタMN1〜MN3がオンする。その結果、フィルタ電圧Vlfの制御量が、検出された擬似ロックの種類に応じて変わることになる。具体的には、3倍周波数での擬似ロックが検出された場合、電圧制御回路34は、2倍周波数の場合よりも大きくフィルタ電圧Vlfを低下させる。4倍周波数での擬似ロックが検出された場合、電圧制御回路34は、3倍周波数の場合よりも更に大きくフィルタ電圧Vlfを低下させる。これにより、いずれのパターンの擬似ロックが発生した場合でも、素早く当該擬似ロックを解消することが可能となる。
【0044】
2−3.その他の例
VCO35の発振周波数fvcoは制限されてもよい。例えば、VCO35の発振周波数fvcoは、所望の周波数f1の3倍以上とならないように制限される。この場合、検出すべき擬似ロックの種類が減り、第1の例のように擬似ロック検出回路40の面積が低減される。
【0045】
また、擬似ロック検出回路40は、所定の制御信号によってON/OFF制御されてもよい。例えば、トレーニングパターンPAT_TRの入力タイミングが分かっている場合、その入力タイミングに合わせて擬似ロック検出回路40が活性化されてもよい。その他の期間は擬似ロック検出回路40が非活性化されるため、消費電力が低減される。
【0046】
3.表示装置
本実施の形態に係るクロックデータリカバリ回路10は、表示装置の表示パネルを駆動するための表示ドライバに適用され得る。その場合、クロックデータリカバリ回路10に供給されるシリアルデータDATは、表示ドライバに供給される映像データ信号である。一般に、映像データ信号は、表示パネルに表示される映像に対応する「映像データ」と、表示ドライバにおける映像データの処理を制御する「制御データ」とを含んでいる。よって、映像データに影響を及ぼすことなく、上述のトレーニングパターンPAT_TRを容易に映像データ信号に挿入することが可能である。つまり、トレーニングパターンPAT_TRは、制御データに含まれていればよい。
【0047】
図12は、本実施の形態に係る表示装置の構成例を概略的に示している。表示装置は、制御装置100と、ドライバ200と、表示素子が行列に配置された表示パネル300とを備えている。図13は、図12で示される表示装置の動作を示すタイミングチャートである。図12及び図13を参照して、本実施の形態に係る表示装置を説明する。
【0048】
制御装置100は、図1で示されたシリアルデータ送信回路100に相当している。つまり、制御装置100は、トレーニングパターンPAT_TRを含む映像データ信号DAT(シリアルデータ)を生成し、その映像データ信号DATをドライバ200に対して送信する。詳細には、制御装置100は、映像信号処理回路111と、トレーニングパターン挿入回路112と、スイッチ113と、トランスミッタ114と、PLL回路115と、タイミング制御回路116とを備えている。
【0049】
映像信号処理回路111は、外部映像信号を受け取り、その外部映像信号から映像データ141を生成する。図13に示されているように、各水平期間は、映像データ141に対応するアクティブ期間ACTと、それ以外のブランキング期間BLNKとを含んでいる。後に説明されるように、制御データ144はそのブランキング期間BLNKに挿入される。
【0050】
トレーニングパターン挿入回路112は、映像データ信号DATに挿入される上述のトレーニングパターンPAT_TRを生成する。トレーニングパターンPAT_TRは、PLL回路の引き込み、あるいは、ロック状態の維持のために利用されるパターンであり、典型的には「0,1,0,1,・・・」である。
【0051】
タイミング制御回路116は、外部クロック信号に基づいて、制御装置100及びドライバ200のタイミング制御を行う。詳細には、タイミング制御回路116は、タイミング制御信号131、132を、それぞれ映像信号処理回路111及びPLL回路115に供給し、これらの回路の動作タイミングを制御する。更に、タイミング制御回路116は、スイッチ制御信号133をスイッチ113に供給し、スイッチ113の切り替えタイミングを制御する。更に、タイミング制御回路116は、トランスミッタ制御信号134をトランスミッタ114に供給してトランスミッタ114を制御する。加えて、タイミング制御回路116は、ドライバ200の駆動タイミングを指定する駆動タイミングデータ143を、トランスミッタ114に供給する。
【0052】
スイッチ113は、タイミング制御回路116からのスイッチ制御信号133に応じて、映像信号処理回路111から送られる映像データ141とトレーニングパターン挿入回路112から送られるトレーニングパターンPAT_TRとを選択的にトランスミッタ114に送信する。
【0053】
トランスミッタ114は、図13で示されるような映像データ信号DATを生成して、その映像データ信号DATをドライバ200に対して送信する。より詳細には、映像データ信号DATは、映像データ141と制御データ144を含んでいる。映像データ141は、表示パネル300に表示される映像に対応しており、アクティブ期間ACTに送信される。一方、制御データ144は、アクティブ期間ACT間のブランキング期間BLNKに挿入されている。この制御データ144は、ドライバ200における映像データ141の処理を制御するデータであり、駆動タイミングデータ143を少なくとも含んでいる。更に、制御データ144は、トレーニングパターンPAT_TRをも含んでいる。制御データ144は、駆動タイミングデータ143とトレーニングパターンPAT_TR以外にも、任意データを含んでいてもよい。
【0054】
尚、トランスミッタ114は、PLL回路115から送られてくるクロック信号135に同期して、映像データ信号DATをドライバ200に送信する。即ち、映像データ信号DATにはクロック信号が重畳されている。
【0055】
ドライバ200は、制御装置100から映像データ信号DATを受け取り、その映像データ信号DATに応答して表示パネル300の表示素子を駆動する。より詳細には、ドライバ200は、クロックデータリカバリ回路210、表示素子駆動回路260、及び信号処理回路270を備えている。
【0056】
クロックデータリカバリ回路210は、レシーバ回路220、PLL回路230、擬似ロック検出回路240、及び周波数補正回路250を備えている。クロックデータリカバリ回路210、レシーバ回路220、PLL回路230、擬似ロック検出回路240、及び周波数補正回路250は、それぞれ、図1で示されたクロックデータリカバリ回路10、レシーバ回路20、PLL回路30、擬似ロック検出回路40、及び周波数補正回路50と同じである。このクロックデータリカバリ回路210は、映像データ信号DAT中の制御データ144に含まれているトレーニングパターンPAT_TR(所定のパターン)を利用して、擬似ロックの検出を行う。擬似ロックが検出された場合、クロックデータリカバリ回路210は速やかにクロック周波数を低下させ、それにより、PLL回路230が正常にロックする。
【0057】
また、レシーバ回路220は、受け取った映像データ信号DATを元に、クロック信号CLKを再生し、映像データ信号DATを取り込む。その後、信号処理回路270は、映像データ141及び駆動タイミング信号を復元し、それら映像データ141、駆動タイミング信号及びクロック信号CLKを表示素子駆動回路260に出力する。駆動タイミング信号は、表示素子駆動回路260の駆動タイミングを指定するための信号であり、駆動タイミングデータ143に基づいて生成される。具体的には、図13に示されるように、ブランキング期間BLNKにおける1回目の駆動タイミングデータ143に応答して駆動タイミング信号が活性化され、2回目の駆動タイミングデータ143に応答して駆動タイミング信号が非活性化される。
【0058】
表示素子駆動回路260は、駆動タイミング信号の活性化を検知すると、表示パネル300の選択ラインの表示素子の駆動を開始する。より詳細には、表示素子駆動回路260は、直前のアクティブ期間ACTに転送されてきた映像データ141に応じた表示素子駆動信号を生成し、その表示素子駆動信号を表示パネル300のデータ線に供給する。これにより、表示パネル300の選択ラインの表示素子が駆動される。
【0059】
表示パネル300としては、例えば、LCDパネルや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイパネル、電界放射ディスプレイパネルが使用され得る。表示パネル300としてLCDパネルが使用される液晶表示装置では、制御装置100はLCDコントローラに相当し、ドライバ200はソースドライバ(又はデータ線ドライバ)に相当する。
【0060】
以上、本発明の実施の形態が添付の図面を参照することにより説明された。但し、本発明は、上述の実施の形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で当業者により適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0061】
1 データ伝送システム
10 クロックデータリカバリ回路
20 レシーバ回路
30 PLL回路
31 位相・周波数検出器
32 チャージポンプ
33 ループフィルタ
34 電圧制御回路
35 VCO
36 分周器
40 擬似ロック検出回路
42 2倍パターン検出回路
43 3倍パターン検出回路
44 4倍パターン検出回路
50 周波数補正回路
100 シリアルデータ送信回路(制御回路)
200 ドライバ
210 クロックデータリカバリ回路
220 レシーバ回路
230 PLL回路
240 擬似ロック検出回路
250 周波数補正回路
260 表示素子駆動回路
270 信号処理回路
300 表示パネル
CLK クロック信号
DAT シリアルデータ
Din 入力データ
Dsmp サンプルドデータ
PAT_TR トレーニングパターン
PAT_FL 擬似ロックパターン
SD 擬似ロック検出信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパターンを含むシリアルデータを受け取り、クロック信号に同期して前記シリアルデータをサンプリングしてサンプルドデータを生成するレシーバ回路と、
前記サンプルドデータに基づいてクロックデータリカバリを行い、前記クロック信号を生成するPLL回路と、
前記サンプルドデータに含まれる擬似ロックパターンを検出することによって、前記PLL回路の擬似ロックを検出する擬似ロック検出回路と
を備え、
前記擬似ロックパターンは、前記PLL回路の擬似ロックが発生している場合に前記レシーバ回路が前記所定のパターンをサンプリングする結果得られるパターンである
クロックデータリカバリ回路。
【請求項2】
請求項1に記載のクロックデータリカバリ回路であって、
前記擬似ロック検出回路によって前記擬似ロックが検出された場合に、前記クロック信号の周波数が低下するように前記PLL回路を制御する周波数補正回路を更に備える
クロックデータリカバリ回路。
【請求項3】
請求項2に記載のクロックデータリカバリ回路であって、
前記PLL回路は、ループフィルタの出力電圧に応じた周波数の前記クロック信号を生成する電圧制御発振器を含み、
前記周波数補正回路は、前記擬似ロック検出回路によって前記擬似ロックが検出された場合、前記電圧制御発振器に供給される前記出力電圧を低下させる
クロックデータリカバリ回路。
【請求項4】
請求項3に記載のクロックデータリカバリ回路であって、
前記擬似ロック検出回路は、
所望の周波数よりも高い第1周波数での前記擬似ロックである第1擬似ロックを検出する第1擬似ロック検出回路と、
前記第1周波数よりも更に高い第2周波数での前記擬似ロックである第2擬似ロックを検出する第2擬似ロック検出回路と
を含み、
前記周波数補正回路は、前記第1擬似ロックが検出された場合よりも前記第2擬似ロックが検出された場合により大きく、前記出力電圧を低下させる
クロックデータリカバリ回路。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のクロックデータリカバリ回路であって、
前記所定のパターンは、前記PLL回路の引き込み、あるいは、ロック状態の維持のために前記シリアルデータに挿入されるトレーニングパターンである
クロックデータリカバリ回路。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のクロックデータリカバリ回路であって、
前記シリアルデータは、表示装置用の表示ドライバに供給される映像データ信号であり、
前記映像データ信号は、
前記表示装置に表示される映像に対応する映像データと、
前記表示ドライバにおける前記映像データの処理を制御する制御データと
を含み、
前記所定のパターンは、前記制御データに含まれている
クロックデータリカバリ回路。
【請求項7】
表示パネルを駆動する表示ドライバと、
所定のパターンを含むシリアルデータである映像データ信号を生成し、前記映像データ信号を前記表示ドライバに送信する制御装置と
を具備し、
前記表示ドライバは、
前記映像データ信号を受け取り、クロック信号に同期して前記映像データ信号をサンプリングしてサンプルドデータを生成するレシーバと、
前記サンプルドデータに基づいてクロックデータリカバリを行い、前記クロック信号を生成するPLL回路と、
前記サンプルドデータに含まれる擬似ロックパターンを検出することによって、前記PLL回路の擬似ロックを検出する擬似ロック検出回路と
を備え、
前記擬似ロックパターンは、前記PLL回路の擬似ロックが発生している場合に前記レシーバが前記所定のパターンをサンプリングする結果得られるパターンである
表示装置。
【請求項8】
請求項7に記載の表示装置であって、
前記表示ドライバは、周波数補正回路を更に備え、
前記擬似ロック検出回路によって前記擬似ロックが検出された場合、前記周波数補正回路は、前記クロック信号の周波数が低下するように前記PLL回路を制御する
表示装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の表示装置であって、
前記映像データ信号は、
前記表示パネルに表示される映像に対応する映像データと、
前記表示ドライバにおける前記映像データの処理を制御する制御データと
を含み、
前記所定のパターンは、前記制御データに含まれている
表示装置。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれか一項に記載の表示装置であって、
前記所定のパターンは、前記PLL回路の引き込み、あるいは、ロック状態の維持のために前記シリアルデータに挿入されるトレーニングパターンである
表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−30058(P2011−30058A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175228(P2009−175228)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】