説明

グラフェンを含む電極構造体及び電界効果トランジスタ

【課題】グラフェンを含む電極構造体及び電界効果トランジスタを提供する。
【解決手段】半導体層上のグラフェンと、グラフェン上の電極メタルと、を備え、該グラフェンは、半導体層と直接的に接触し、電極メタルは、グラフェンと直接的に接触する電極構造体である。半導体層は、シリコン、ゲルマニウム、シリコン・ゲルマニウム、III−V族半導体、及びII−VI族半導体を含むグループから選択された一つで形成される。グラフェンは、単層または二層のグラフェンで形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェンを半導体基板と電極メタルとの間に介在させて、その間のエネルギー障壁を減少させた、グラフェンを含む電極構造体及び半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
二次元の六方晶系の炭素構造を有するグラフェンは、半導体を代替可能な新たな物質であって、最近、全世界的に活発に研究が進められている。特に、グラフェンは、ゼロギャップ半導体であって、チャネル幅を10nm以下にグラフェンナノリボン(graphene nanoribbon:GNR)を製作する場合、サイズ効果によりバンドギャップが形成されて、常温で作動が可能な電界効果トランジスタを製作できる。
【0003】
半導体素子において、半導体層の真上に金属を使用して電極を形成する場合、金属・半導体接合構造が形成される。かかる構造では、ショットキーエネルギー障壁が金属と半導体との間に形成されて、半導体素子で駆動電圧を上昇させる要因となる。特に、半導体素子の大きさが30nm以下である場合、全体の抵抗で接触抵抗が占める比率が上昇する。
【0004】
従来には、接触抵抗を低減させるために、半導体界面のドーピング、異種結合の仕事関数の制御、シリサイドの形成を試みた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、半導体及び金属の中間性質を有するグラフェンを半導体・金属結合の中間に配置して、半導体・金属の接合構造のエネルギー障壁を減少させた電極構造体を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、前記電極構造体を備える電界効果トランジスタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の一実施形態による半導体バリヤーを備えるグラフェン電界効果トランジスタは、半導体層上のグラフェンと、前記グラフェン上の電極メタルと、を備える。
【0008】
前記半導体層は、シリコン、ゲルマニウム、シリコン・ゲルマニウム、III−V族半導体、及びII−VI族半導体を含むグループから選択された一つで形成される。
【0009】
前記グラフェンは、単層または二層のグラフェンで形成される。
【0010】
前記電極メタルは、30nm以下の大きさに形成される。
【0011】
前記グラフェンは、前記半導体層と直接的に接触し、前記電極メタルは、前記グラフェンと直接的に接触する。
【0012】
前記他の目的を達成するために、本発明の他の実施形態による電界効果トランジスタは、第1不純物でドーピングされた半導体基板と、前記基板上で互いに離隔されて配置された第1グラフェン及び第2グラフェンと、前記第1グラフェン及び第2グラフェン上にそれぞれ形成されたソース電極及びドレイン電極と、前記基板で、前記第1グラフェン及び第2グラフェンの下部に、それぞれ前記第1不純物と逆極性の第2不純物でドーピングされたソース領域及びドレイン領域と、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間のゲート絶縁層と、前記ゲート絶縁層上のゲート電極と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、半導体・金属結合の中間にグラフェンを配置して、半導体・金属結合におけるエネルギー障壁を減少させる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態によるグラフェンを含む電極構造体を示す断面図である。
【図2】金属と半導体との間のエネルギー障壁を示すエネルギーバンド図である。
【図3】本発明の実施形態による電極構造体のエネルギー障壁を示すエネルギーバンド図である。
【図4】本発明の他の実施形態による電界効果トランジスタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付された図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。この過程で、図面に示した層や領域の厚さは、明細書の明確性のために誇張されて示されたものである。明細書を通じて、実質的に同じ構成要素には、同じ参照番号を使用し、詳細な説明は省略する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態によるグラフェンを含む電極構造体100を示す断面図である。
【0017】
図1を参照すれば、半導体基板110上にグラフェン120が形成され、グラフェン120上に電極メタル130が形成される。グラフェン120は、半導体基板110と直接的に接触する。電極メタル130は、30nm以下の大きさ、すなわち、四角形である場合に長辺、円形である場合に長径が、30nm以下に形成される。
【0018】
半導体基板110は、シリコン、ゲルマニウム、シリコン・ゲルマニウム、III−V族半導体及びII−VI族半導体などで形成される。
【0019】
グラフェン120は、化学気相蒸着(chemical vapor deposition:CVD)法で製造されたグラフェンを半導体基板110上に転写した後でパターニングして形成される。また、あらかじめパターニングされたグラフェンを半導体基板110上に配置してもよい。
【0020】
グラフェン120は、単層または二層で形成されたグラフェンであってもよい。グラフェン120は、半金属性質を有する物質であり、グラフェンが三層以上の構造を有するほど、かかる半金属性質が低減する。
【0021】
グラフェン120上の電極メタル130は、一般の電極物質で形成される。例えば、アルミニウム、金、銀、パラジウムなどで形成される。電極メタル130は、電子ビーム蒸着またはスパッタリング法により、基板110上のグラフェン120を覆うように蒸着される。
【0022】
電極構造体100は、小さい領域、例えば、ナノスケールのグラフェン及び電極メタルを有する構造であって、接触抵抗が低減するので、電極領域を小さく形成でき、したがって、電子素子及び半導体素子などで広く使われる。
【0023】
以下では、本発明の実施形態による電極構造体100の作用を、図面を参照して説明する。
【0024】
図2は、金属と半導体との間のエネルギー障壁を示すエネルギーバンド図である。すなわち、図2は、n型の半導体基板上に電極メタルが形成された電極構造体のエネルギーバンド図である。
【0025】
図2を参照すれば、電子が電極メタルから半導体層に移動するためには、ショットキーエネルギー障壁q(φ−χ)を克服せねばならない。同様に、n型半導体の伝導帯にある電子が電極メタル側に移動しようとすれば、q(φ−φ)ほどのエネルギーが必要である。ここで、qφは、電極メタルの仕事関数、χは、電子親和力、qφは、半導体の仕事関数を指す。
【0026】
図3は、本発明の実施形態による電極構造体のエネルギー障壁を示すエネルギーバンド図である。図3は、n型半導体上にグラフェン及び電極メタルが順次に形成された電極構造体のエネルギーバンド図である。
【0027】
図3を参照すれば、グラフェンは、バンドギャップがないので、電極メタルとグラフェンとの間のフェルミレベルの変化がない。しかし、グラフェンと半導体との接合では、グラフェンがn型半導体から電子を受けて、フェルミレベルが、エネルギー障壁が小さくなる方向にグラフェンの仕事関数が変わる。すなわち、グラフェンがnドーピングとなる。グラフェンの仕事関数が半導体と接合した後でqφほど減少して、結局、ショットキーエネルギー障壁が減少する。これは、電極メタルと半導体の中間性質を有するグラフェンの特性のためであり、かかる現象は、半導体・金属の結合構造にいずれも適用される。
【0028】
電子が電極メタルから半導体層に移動するためには、ショットキーエネルギー障壁qφ=q(φ−φ−χ)を克服せねばならない。従来の金属・半導体構造の電極に比べて、qφほどのエネルギーが減少する。同様に、n型半導体の伝導帯にある電子が電極メタル側に移動しようとすれば、q(φ−φ−φ)ほどのエネルギーが必要であるので、従来の金属・半導体構造の電極に比べて、qφほどのエネルギーが減少する。ここで、qφは、グラフェンを指す。
【0029】
図3では、n型半導体を使用して、電子のエネルギー障壁を説明したが、p型半導体を使用して、正孔をキャリアとして使用する場合のエネルギー障壁も、前述したように、半導体と電極との間のエネルギー障壁がグラフェンを介在してqφほど減少し、詳細な説明は省略する。
【0030】
図4は、本発明の他の実施形態による電界効果トランジスタ200の断面図である。
【0031】
図4を参照すれば、第1不純物でドーピングされた半導体基板210に、第1不純物と逆極性の第2不純物でドーピングされたソース領域221及びドレイン領域222が形成される。ソース領域221及びドレイン領域222は、半導体基板210で離隔されて形成される。第1不純物及び第2不純物は、p型不純物及びn型不純物のうち相異なる一つである。
【0032】
半導体基板210は、シリコン、ゲルマニウム、シリコン・ゲルマニウム、III−V族半導体、及びII−VI族半導体などで形成される。
【0033】
半導体基板210上には、絶縁層(図示せず)が形成される。絶縁層は、酸化シリコンまたは窒化シリコンで形成される。基板210上で、ソース領域221及びドレイン領域222に対応する絶縁層の領域が除去されて、絶縁層250が形成され、したがって、ソース領域221及びドレイン領域222が露出される。
【0034】
露出されたソース領域221及びドレイン領域222には、それぞれ第1グラフェン231及び第2グラフェン232が配置される。第1グラフェン231及び第2グラフェン232は、半導体基板210と直接的に接触する。第1グラフェン231及び第2グラフェン232は、単層または二層で形成されたグラフェンであってもよい。第1グラフェン231及び第2グラフェン232は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により製造されたグラフェンを転写して形成する。第1グラフェン231及び第2グラフェン232は、基板210上にグラフェン(図示せず)を転写した後でパターニングして形成される。また、あらかじめパターニングされたグラフェンを半導体基板210上に配置してもよい。
【0035】
第1グラフェン231及び第2グラフェン232上には、それぞれソース電極241及びドレイン電極242が形成される。ソース電極241及びドレイン電極242は、通常の電極メタル、例えば、アルミニウム、金、白金、銀、パラジウムなどで、基板210上の第1グラフェン231及び第2グラフェン232上に電子ビーム蒸着またはスパッタリングにより形成する。ソース電極241及びドレイン電極242は、それぞれ30nm以下の大きさ、すなわち、四角形である場合に長辺、円形である場合に長径が、30nm以下に形成される。
【0036】
ソース電極241とドレイン電極242との間の絶縁層250は、ゲート絶縁層250と呼ばれる。ゲート絶縁層250上には、ゲート電極260が形成される。ゲート電極260は、ソース電極241及びドレイン電極242と同じ物質で形成される。
【0037】
本発明の他の実施形態による電界効果トランジスタは、基板に直接グラフェンを形成し、その上に電極メタルを形成して、半導体で形成された基板と電極メタルとの間にグラフェンを配置することで、電極構造体のエネルギー障壁を低減させる。かかる電極構造体の作用は、前述した実施形態で詳述したので、詳細な説明は省略する。
【0038】
前記電極構造体を採用した電界効果トランジスタは、コンタクト抵抗の減少によって駆動電圧が低下し、かつ、コンタクト抵抗の減少によって電極領域を縮小させるので、トランジスタの小型化をなすことができる。
【0039】
前記実施形態では、グラフェン電極構造体を備えた電界効果トランジスタを説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、半導体基板を使用し、半導体基板と直接的に接触するグラフェンを含む電極構造体を有する半導体素子に適用してもよい。
【0040】
以上、添付された図面を参照して説明された本発明の実施形態は、例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これから多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であることを理解できるであろう。したがって、本発明の真の保護範囲は、特許請求の範囲により決まらねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、トランジスタ関連の技術分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
100 電極構造体
110、210 半導体基板
120 グラフェン
130 電極メタル
200 電界効果トランジスタ
221 ソース領域
222 ドレイン領域
231 第1グラフェン
232 第2グラフェン
241 ソース電極
242 ドレイン電極
250 ゲート絶縁層
260 ゲート電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層上のグラフェンと、
前記グラフェン上の電極メタルと、を備えるグラフェン層を備えることを特徴とする、電極構造体。
【請求項2】
前記半導体層が、シリコン、ゲルマニウム、シリコン・ゲルマニウム、III−V族半導体、及びII−VI族半導体を含むグループから選択された一つで形成されることを特徴とする、請求項1に記載の電極構造体。
【請求項3】
前記グラフェンが、単層または二層のグラフェンで形成されることを特徴とする、請求項1に記載の電極構造体。
【請求項4】
前記電極メタルが、30nm以下の大きさに形成されることを特徴とする、請求項1に記載の電極構造体。
【請求項5】
前記グラフェンが、前記半導体層と直接的に接触し、前記電極メタルが、前記グラフェンと直接的に接触することを特徴とする、請求項1に記載の電極構造体。
【請求項6】
第1不純物でドーピングされた半導体基板と、
前記基板上で互いに離隔されて配置された第1グラフェン及び第2グラフェンと、
前記第1グラフェン及び第2グラフェン上にそれぞれ形成されたソース電極及びドレイン電極と、
前記基板で、前記第1グラフェン及び第2グラフェンの下部に、それぞれ前記第1不純物と逆極性の第2不純物でドーピングされたソース領域及びドレイン領域と、
前記半導体基板上で、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間のゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層上のゲート電極と、を備えることを特徴とする、電界効果トランジスタ。
【請求項7】
前記半導体基板が、シリコン、ゲルマニウム、シリコン・ゲルマニウム、III−V族半導体、及びII−VI族半導体を含むグループから選択された一つで形成されることを特徴とする、請求項6に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項8】
前記グラフェンが、単層または二層のグラフェンで形成されることを特徴とする、請求項6に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項9】
前記ソース電極及び前記ドレイン電極が、それぞれ30nm以下の大きさに形成されることを特徴とする、請求項6に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項10】
前記第1グラフェン及び前記第2グラフェンが、前記半導体層と直接的に接触し、前記ソース電極及び前記ドレイン電極が、それぞれ前記第1グラフェン及び前記第2グラフェンと直接的に接触することを特徴とする、請求項6に記載の電界効果トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−70051(P2013−70051A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−201265(P2012−201265)
【出願日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】