説明

グラフト共重合体、これを含有する樹脂組成物及び成形体

【課題】得られる成形体の耐熱性を向上することができ、保存時の増粘を抑制することができるグラフト共重合体や、これを用いた樹脂組成物及び成形体を提供する。特に、エポキシ樹脂を用いた成形体において、低応力化や低弾性率化を向上させ、靭性の向上を図りクラックの発生を抑制することができるグラフト共重合体や、これを用いた樹脂組成物及び成形体を提供する。
【解決手段】Fox式で求めたガラス転移温度が20℃以下の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の存在下に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体のいずれか1種以上を含有する単量体混合物(B)を重合して得られるグラフト共重合体において、単量体混合物(B)が架橋性単量体を0.01〜10mol%(但し、単量体混合物(B)中に含まれる全単量体を100mol%とする。)含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフト共重合体、これを含有する樹脂組成物及び成形体、より詳しくは、耐衝撃性及び耐熱性を合わせ持ち、半導体封止材や接着剤に好適なグラフト共重合体、樹脂組成物、及びこれを用いて成形した成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子部品、自動車部品、建材等、各種の用途に応じて樹脂成形体が製造されている。それらの樹脂成形体には、目的に応じて要求される性能を発現させるために、1種又は数種の樹脂や添加剤が用いられている。
【0003】
例えば、トランジスタ、IC等の電気・電子部品では、エポキシ樹脂組成物を用いた樹脂封止が主流となってきている。このエポキシ樹脂組成物による樹脂封止は、量産性に優れ、安価な生産が可能となるものの、半導体素子に比べて樹脂の線膨張係数が大きいため、封止後の応力緩和が大きな課題である。
【0004】
また、エポキシ樹脂は、電気絶縁用の積層板やプリント配線板の絶縁層にも多用されており、近年のプリント配線板実装技術の進歩や使用環境の変化に伴い、低弾性率化に関する要望も高くなっている。
【0005】
エポキシ樹脂組成物を低弾性率化するために、ブタジエン系ゴム粒子を改質剤として配合する方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、このようなゴム成分を液状のエポキシ樹脂に配合した場合、樹脂組成物は経時的に増粘するため、貯蔵安定性は十分ではなかった。
【0006】
樹脂組成物の貯蔵安定性を向上するために、配合するグラフト共重合体のグラフト成分に架橋性単量体を共重合させる方法が提案されている(特許文献2、3)。しかしながら、これらの方法で提案された樹脂組成物は、より高い貯蔵安定性が求められる場合には十分ではなかった。
【特許文献1】特開2000−7890号公報
【特許文献2】特開平5−65391号公報
【特許文献3】特開平5−214310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、得られる成形体の耐熱性を向上することができ、保存時の増粘を抑制することができるグラフト共重合体や、これを用いた樹脂組成物及び成形体を提供することにある。特に、エポキシ樹脂に用いてその成形品において、低応力化や低弾性率化を向上させ、靭性の向上を図りクラックの発生を抑制することができるグラフト共重合体や、これを用いた樹脂組成物及び成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らはエポキシ樹脂の低応力化、低弾性率化を向上させることができるグラフト共重合体について鋭意研究を重ねた結果、特定のガラス転移温度を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の存在下に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体のいずれか1種以上及び特定量の架橋性単量体を重合して得られるグラフト共重合体は、樹脂組成物の保存時における増粘を抑制することができ、これを用いて得られる成形体において耐熱性の向上を図ることができることの知見を得た。かかる知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、Fox式で求めたガラス転移温度が20℃以下の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の存在下に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体のいずれか1種以上を含有する単量体混合物(B)を重合して得られるグラフト共重合体において、単量体混合物(B)が架橋性単量体を0.01〜10mol%(但し、単量体混合物(B)中に含まれる全単量体を100mol%とする。)含有することを特徴とするグラフト共重合体に関する。
【0010】
また、本発明は、上記グラフト共重合体を含有する樹脂組成物、半導体封止材用樹脂組成物、接着剤用樹脂組成物や、上記樹脂組成物を用いて得られる成形体に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、得られる成形体の耐熱性を向上することができ、保存時の増粘を抑制することができるグラフト共重合体や、これを用いた樹脂組成物及び成形体を提供することにある。特に、エポキシ樹脂に用いてその成形体において低応力化や低弾性率化を向上させ、靭性の向上を図りクラックの発生を抑制することができるグラフト共重合体や、これを用いた樹脂組成物及び成形体を提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のグラフト共重合体は、Fox式で求めたガラス転移温度(以下「Tg」という。)が20℃以下の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の存在下に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体のいずれか1種以上を含有する単量体混合物(B)を重合して得られるグラフト共重合体において、単量体混合物(B)が架橋性単量体を0.01〜10mol%(但し、単量体混合物(B)中に含まれる全単量体を100mol%とする。)含有することを特徴とする。
【0013】
本発明における(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)は、Fox式で求めたTgが20℃以下である。(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)のFox式で求めたTgが20℃以下であれば、得られる成形体の弾性率を低下させることができる。(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)のFox式で求めたTgは0℃以下であることが好ましい。
【0014】
Fox式を以下に示す。
【0015】
1/(273+Tg)=Σ(wi/(273+Tgi))
式中、Tgは共重合体のTg(℃)、wiは単量体iの質量分率、Tgiは単量体iを重合して得られる単独重合体のTg(℃)である。
【0016】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)は、(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体を重合して得られる重合体であればよく、ゴムであることが好ましい。かかる(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)を構成する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−エトキシエトキシエチル、アクリル酸メトキシトリプロピレングリコール、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
また、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)を構成する単量体として、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)をゴム化するため、また、後述する単量体混合物(B)を重合して得られる重合体間にグラフト交叉を形成するため、架橋性単量体や、グラフト交叉剤を含有することが好ましい。
【0018】
かかる架橋性単量体としては、例えば、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸プロピレングリコール、ジメタクリル酸1,4−ブチレングリコール、ジビニルベンゼン、多官能メタクリル基変性シリコーン等が挙げられる。
【0019】
また、グラフト交叉剤としては、例えば、メタクリル酸アリル、ジアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル等が挙げられる。メタクリル酸アリルは架橋剤として用いることもできる。これら架橋剤及びグラフト交叉剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記架橋単量体及びグラフト交叉剤は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)を構成する単量体全体に対し、15mol%以下の範囲で含まれることが好ましく、より好ましくは0.01〜10mol%の範囲、更に好ましくは0.01〜5mol%の範囲である。
【0021】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)を構成する単量体は、必要に応じてその他の単量体を含有していてもよい。例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;メタクリル基変性シリコーン;フッ素含有ビニル単量体等の各種のビニル単量体が挙げられる。
【0022】
これらは、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)を構成する単量体全体に対し、20mol%以下の範囲で含まれることが好ましい。
【0023】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)を得る重合方法としては、水媒体中での重合が後述する単量体混合物(B)の重合との関連において好適である。水媒体中での重合は、例えば、乳化重合、分散重合、懸濁重合等があるが、これらのうち、乳化重合が好ましい。
【0024】
乳化重合としては、乳化剤を使用する通常の乳化重合の他、重合開始剤を乳化剤として用いるソープフリー重合、ソープフリー重合と乳化重合を組み合わせたソープフリー乳化重合等を使用することができる。水媒体中での重合は、得られる重合体が粒子状であることが特徴であり、それゆえ、グラフト共重合体を改質剤として他の樹脂に添加する場合に、例えば塊状重合によって得られる重合体では得られない良好な分散性が得られるため、有利である。なお、塊状重合によっても、得られた重合体を粉砕、分別等の処理を行ない、目的とする粒子状とすることもできる。
【0025】
上記(メタ)アクリル酸エステルの重合で必要に応じて使用する乳化剤としては、例えば、不均化ロジン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸のアルカリ金属塩やアンモニウム塩;アルキルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸アルカリ金属塩やアンモニウム塩;ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸アルカリ金属塩やアンモニウム塩;アルキルスルホコハク酸アンモニウム等のスルホコハク酸アルカリ金属塩やアンモニウム塩;ポリオキシエチレン(85)モノテトラデシルエーテル等のノニオン系乳化剤が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
これらの(メタ)アクリル酸エステルの重合で使用する重合開始剤としては、例えば、4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシ−ブチル)]−プロピオンアミド}、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)、2,2'−アゾビス{2−[N−(2−カルボキシエチル)アミジノプロパン]}、2,2'−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;過酸化水素水等;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、キュメインハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸過物;前記過硫酸塩又は有機過酸化物を一成分としたレドックス系開始剤等が挙げられる。
【0027】
上記(メタ)アクリル酸エステルの重合を単量体の組成を適宜変更して多段で行い、単層、又は2段以上の多層構造の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)とすることもできる。その場合、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)は、Fox式で求めたTgを2つ以上有するものとなる。
【0028】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の粒子は酸又は塩等によりその粒子径を肥大化することもできる。
【0029】
単量体混合物(B)には芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体のいずれか1種以上が含有される。芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−オクチルスチレン、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0030】
シアン化ビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0031】
芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
単量体混合物(B)中の芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体の含有率は、単量体混合物(B)中に含まれる全単量体を100mol%としたとき、60〜99.9mol%であることが好ましい。
【0033】
単量体混合物(B)には、架橋性単量体が含有される。架橋性単量体としては、不飽和結合を2個以上有するものを使用することができる。かかる架橋性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン及びそれらの誘導体である芳香族ジビニル化合物;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;三個以上のビニル基を有する化合物が挙げられる。その他、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)に用いることができる架橋性単量体や、グラフト交叉剤として例示したものと同様のものも、使用することができる。これらの架橋性単量体は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
単量体混合物(B)中の上記架橋性単量体の含有率は、単量体混合物(B)中に含まれる全単量体を100mol%としたとき、0.01〜10mol%の範囲であり、0.01〜6mol%であることが好ましい。単量体混合物(B)(100mol%)中の架橋性単量体の含有率が、0.01mol%以上であれば、得られる樹脂組成物の保存時の増粘を抑制することができ、10mol%以下であれば、得られる成形体に適度な弾性を付与することができる。
【0035】
上記単量体混合物(B)は、その特性を阻害しない範囲で、その他の単量体を含有していてもよい。その他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。その他の単量体の含有率は単量体混合物(B)(100mol%)中、30mol%以下であることが好ましい。
【0036】
単量体混合物(B)は、必要に応じて、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)を得る重合に用いる重合開始剤として例示したものと同様の重合開始剤、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、α−メチルスチレン等の連鎖移動剤、乳化剤、酸化防止剤等を含有していてもよい。
【0037】
本発明のグラフト共重合体は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)と単量体混合物(B)の合計の質量を100質量%としたとき、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)を20〜95質量%、単量体混合物(B)を80〜5質量%で含有することが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)を60〜95質量%、単量体混合物(B)を40〜5質量%で含有することがより好ましい。グラフト共重合体(100mol%)中の、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)が20〜95質量%、単量体混合物(B)が80〜5質量%であれば、得られる樹脂組成物の保存時の増粘を抑制することができ、得られる成形体の低応力化、低弾性率化を向上することができる。
【0038】
単量体混合物(B)の重合方法としては、上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)を得る際に使用する重合方法と同様に、乳化重合、分散重合、懸濁重合等を使用することができ、乳化重合、ソープフリー重合、ソープフリー乳化重合が好適である。これらの乳化重合、ソープフリー重合、ソープフリー乳化重合においては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)を得る重合において使用する重合開始剤、乳化剤として例示した重合開始剤や乳化剤を使用することができる。
【0039】
上記重合によって得られるラテックス中のグラフト共重合体の平均粒子径は0.01〜3μmであることが好ましく、分散性の観点から、0.01〜1.5μmであることがより好ましく、更に好ましくは、0.1〜1.5μmである。
【0040】
ここで、グラフト共重合体の平均粒子径は、得られたラテックスを脱イオン水で希釈し、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した、50%体積平均粒子径を採用することができる。
【0041】
上記重合後、グラフト共重合体を含むラテックスからグラフト共重合体を粉体として回収することが好ましい。粉体化の方法としては、噴霧乾燥法、凍結乾燥法、凝固法等を挙げることができる。樹脂に分散させる際の分散性の観点から噴霧乾燥法により回収することが好ましい。
【0042】
噴霧乾燥法は、ラテックスを微小液滴状に噴霧し、これを熱風に当てて乾燥する方法である。使用する装置は、液滴を発生する方法として、回転円盤型式、圧力ノズル式、二流体ノズル式、加圧二流体ノズル式等、乾燥室の規模、乾燥室に設けられる乾燥用加熱ガスの供給口や乾燥用ガス及び乾燥粉末の排出口の位置等、適宜選択することができる。乾燥用加熱ガス温度(ガス供給口温度)、即ちグラフト共重合体に接触し得る熱風の最高温度は、200℃以下が好ましく、より好ましくは、120〜180℃である。
【0043】
また、噴霧乾燥する際に、ブロッキングの抑制、嵩比重の調整等の粉末特性を向上させるために、シリカ等の任意成分を添加して噴霧乾燥を行なうこともできる。また、複数のラテックスを混合して、複数種のグラフト共重合体の混合粉末として得ることもできる。
【0044】
得られたグラフト共重合体の粉体中の含水量は、1.5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。粉体中の含水量が1.5質量%以下であれば、得られる成形体においてクラックの発生を抑制することができる。
【0045】
噴霧乾燥処理を実施して得られる粉体の平均粒子径は10〜200μmであることが好ましく、より好ましくは20〜180μmである。粉体の平均粒子径が200μm以下であれば、樹脂組成物への優れた分散性を有し、一方、10μm以上であれば、樹脂組成物中の凝集を抑制し、得られる成形体において優れた靭性を有し、クラックの発生等を抑制することができる。
【0046】
本発明の樹脂組成物は上記グラフト共重合体を含有する。
【0047】
上記グラフト共重合体は、樹脂に配合して樹脂組成物とすることにより、樹脂の低応力化や低弾性率化を向上させる改質剤として機能する。
【0048】
上記樹脂組成物に含まれる樹脂としては、硬化性樹脂が好ましい。
【0049】
上記硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂があり、例えば、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂等が挙げられる。
【0050】
上記エポキシ系樹脂としては、分子中にエポキシ結合を少なくとも2個以上有するものであれば、分子構造、分子量等に特に制限はない。ジシクロペンタジエン型、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型、ビスフェノール型、ビフェニル型等の各種のエポキシ系樹脂を用いることができる。
【0051】
エポキシ系樹脂の硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂やクレゾールノボラック樹脂等のフェノール系硬化剤、アミン系硬化剤及び酸無水物系硬化剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、その使用量は、エポキシ基硬化の化学量論量を加えることが好ましい。
【0052】
フェノール系樹脂としては、例えば、各種フェノール類とホルムアルデヒド又はC2以上のアルデヒドから誘導されるレゾール型或いはノボラック型フェノール樹脂等を挙げることができる。これらのフェノール系樹脂は、乾性油、キシレン樹脂、メラミン樹脂等で変性されたものであってもよい。
【0053】
フェノール系樹脂の硬化剤としては、ノボラック型フェノール樹脂の場合には、ヘキサアミン等のポリアミン、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、ポリホルムアルデヒド化合物又はレゾール型フェノール樹脂等の硬化剤がさらに併用される。
【0054】
不飽和ポリエステル系樹脂としては、例えば、イソフタル酸、オルソフタル酸、無水フタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等の飽和二塩基酸と、エチレングリコールジプロピレングリコール、1,3―ブタンジオール、水素化ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、イソペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等の多価アルコールと、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和二塩基酸とを180〜250℃で反応させて得られるものが挙げられる。不飽和ポリエステル系樹脂を構成するこれらの単量体に共重合可能な単量体としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ビニルトルエン、アクリル酸エステル等が挙げられる。これらの単量体は予めオリゴマー等のプレポリマーとして用いることができる。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
上記樹脂組成物には、上記グラフト共重合体や樹脂の機能を阻害しない範囲で添加剤が含有されていてもよい。添加剤としては、例えば、種々の硬化促進剤、シリコーンオイル、天然ワックス類、合成ワックス類等の離型剤、結晶質シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナ等の粉体やガラス繊維、炭素繊維等の無機充填剤、三酸化アンチモン等の難燃剤、ハイドロタルサイト類、希土類酸化物等のハロゲントラップ剤、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0056】
上記樹脂組成物中のグラフト共重合体と樹脂の含有割合は、適宜必要に応じて選択することができる。
【0057】
上記樹脂組成物の調製方法としては、例えば、樹脂組成物を溶液状態で混合するか、ミキシングロールやニーダー等を用いて溶融混合し、冷却した後、粉砕又は打錠する方法が挙げられる。
【0058】
上記樹脂組成物は半導体封止材用樹脂組成物とすることが好ましい。半導体封止材用樹脂組成物は、樹脂としてエポキシ樹脂等を使用し、上記グラフト共重合体を1〜50質量%(但し、半導体封止材用樹脂組成物を100質量%とする。)含有することが好ましい。本発明の半導体封止材用樹脂組成物を使用することにより、プリント基板において、環境変化に伴う基板と封止材間の変形、歪を抑制することができ、クラックの発生を抑制することができ、その上、耐熱性に優れたものとなる。
【0059】
また、上記樹脂組成物は接着剤用樹脂組成物とすることが好ましい。接着剤用樹脂組成物は、樹脂として、エポキシ樹脂等を用い、上記グラフト共重合体を含有することが好ましい。本発明の接着剤用樹脂組成物は、金属、樹脂等いずれの材質のものにも適用することができ、クラックの発生を抑制し、耐熱性に優れた接着剤となる。
【0060】
本発明の成形体は上記樹脂組成物を用いて得られるものである。電気及び電子機器部品、自動車部品、建材等の成形体に適用することができ、耐熱性に優れ、環境変化による変形、歪や、クラックの発生を抑制することができる。
【0061】
上記成形体の成形方法としては、トランスファー成形、シートコンパウンドモールティング成形、バルクモールティング成形等を挙げることができる。
【実施例】
【0062】
以下に、本発明のグラフト共重合体、樹脂組成物、成形体について、具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。以下、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を示す。
【0063】
[ラテックスにおける重合体の平均粒子径の測定]
重合体のラテックスを脱イオン水で希釈し、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製:LA−910)を用い、50%体積平均粒子径を測定した。
【0064】
[耐熱性試験(熱重量天秤試験:TGA法)]
グラフト共重合体の粉体を示差熱熱重量同時測定装置((株)セイコーインスツル製:TG/DTA6200)を用い、窒素雰囲気下、15℃/分で昇温し、10%質量減少温度を求めた。
【0065】
[製造例1](メタ)アクリル酸エステル系重合体(A1)ラテックスの製造
温度計、窒素導入管、冷却管及び攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、下記の原料(a1)を投入し、窒素雰囲気中、250rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。
【0066】
原料(a1)
アクリル酸n−ブチル 9.9部
メタクリル酸アリル 0.1部
脱イオン水 192.5部。
【0067】
次いで、予め調整した過硫酸アンモニウム0.08部、脱イオン水8.3部の溶液を一括投入し、60分間保持し第一段目のソープフリー重合を行った。
【0068】
次に、下記の原料(a2)の混合液を150分かけて滴下した。
【0069】
原料(a2)
アクリル酸n−ブチル 87.8部
メタクリル酸アリル 2.2部
ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム 1.4部
脱イオン水 45.0部。
【0070】
60分保持して第二段目の乳化重合を行い、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A1)のラテックスを得た。
【0071】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A1)の、Fox式で求めたTgは−53℃であった。
【0072】
ラテックス中の重合体(A1)の平均粒子径は600nmであった。得られたラテックスを180℃で乾燥して固形分を求めたところ、固形分は34.0%であった。
【0073】
[実施例1]グラフト共重合体(1)の製造
温度計、窒素導入管、冷却管及び攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、製造例1で得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A1)ラテックス147.0部(固形分換算50.0部)を投入し、その存在下に、下記の単量体混合物(B)及び乳化剤等水溶液を混合し、210分かけて滴下した。滴下終了後120分間保持して重合を終了し、グラフト共重合体(1)のラテックスを得た。
【0074】
単量体混合物(B):
スチレン 49.69部
ジビニルベンゼン 0.31部
(単量体混合物(B)に対して0.5mol%)
乳化剤等水溶液:
ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム 0.5部
2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン] 1.0部
脱イオン水 25.0部
ラテックス中のグラフト共重合体(1)の平均粒子径は621nmであった。
【0075】
得られたグラフト共重合体(1)のラテックスを、噴霧乾燥機(圧力ノズル式で微小液滴状に噴霧、熱風入口温度180℃)で乾燥し、グラフト共重合体(1)の粉体として回収した。
【0076】
グラフト共重合体(1)の粉体について、耐熱性試験を行なった。結果を表1に示す。
【0077】
[実施例2]グラフト共重合体(2)の製造
温度計、窒素導入管、冷却管及び攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、製造例1で得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A1)ラテックス205.8部(固形分換算70.0部)を投入し、その存在下に、下記の単量体混合物(B)及び乳化剤等水溶液を混合し、180分かけて滴下した。滴下終了後120分間保持して重合を終了し、グラフト共重合体(2)のラテックスを得た。
【0078】
単量体混合物(B):
スチレン 29.81部
ジビニルベンゼン 0.19部
(単量体混合物(B)に対して0.5mol%)
乳化剤等水溶液:
ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム 0.3部
2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン] 0.6部
脱イオン水 15.0部
ラテックス中のグラフト共重合体(2)の平均粒子径は687nmであった。これ以降の操作は実施例1と同様にして、グラフト共重合体(2)の粉体を回収した。
【0079】
[実施例3]グラフト共重合体(3)の製造
単量体混合物(B)の組成を下記のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして、クラフト共重合体(3)を製造した。
【0080】
単量体混合物(B)
スチレン 29.63部
ジビニルベンゼン 0.37部
(単量体混合物(B)に対して1.0mol%)
ラテックス中のグラフト共重合体(3)の平均粒子径は702nmであった。
【0081】
[実施例4]グラフト共重合体(4)の製造
単量体混合物(B)の組成を下記のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして、クラフト共重合体(4)を製造した。
【0082】
単量体混合物(B)
スチレン 28.16部
ジビニルベンゼン 1.84部
(単量体混合物(B)に対して5.0mol%)
ラテックス中のグラフト共重合体(4)の平均粒子径は686nmであった。
【0083】
[実施例5]グラフト共重合体(5)の製造
単量体混合物(B)の組成を下記のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして、クラフト共重合体(5)を製造した。
【0084】
単量体混合物(B)
スチレン 22.37部
アクリロニトリル 7.40部
ジビニルベンゼン 0.23部
(単量体混合物(B)に対して0.5mol%)
ラテックス中のグラフト共重合体(5)の平均粒子径は620nmであった。
【0085】
[実施例6]グラフト共重合体(6)の製造
単量体混合物(B)の組成を下記のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして、クラフト共重合体(6)を製造した。
【0086】
単量体混合物(B)
スチレン 22.25部
アクリロニトリル 7.30部
ジビニルベンゼン 0.45部
(単量体混合物(B)に対して1.0mol%)
ラテックス中のグラフト共重合体(6)の平均粒子径は945nmであった。
【0087】
[実施例7]グラフト共重合体(7)の製造
温度計、窒素導入管、冷却管及び攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、製造例1で得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A1)ラテックス235.2部(固形分換算80.0部)を投入し、その存在下に、下記の単量体混合物(B)及び乳化剤等水溶液を混合し、150分かけて滴下した。滴下終了後120分間保持して重合を終了し、グラフト共重合体(7)のラテックスを得た。
【0088】
単量体混合物(B):
スチレン 19.88部
ジビニルベンゼン 0.12部
(単量体混合物(B)に対して0.5mol%)
乳化剤等水溶液:
ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム 0.2部
2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン] 0.4部
脱イオン水 10.0部
ラテックス中のグラフト共重合体(7)の平均粒子径は659nmであった。これ以降の操作は実施例1と同様にして、グラフト共重合体(7)の粉体を回収した。
【0089】
[実施例8]グラフト共重合体(8)の製造
単量体混合物(B)の組成を下記のように変更したこと以外は、実施例7と同様にして、クラフト共重合体(8)を製造した。
【0090】
単量体混合物(B)
スチレン 19.75部
ジビニルベンゼン 0.25部
(単量体混合物(B)に対して1.0mol%)
ラテックス中のグラフト共重合体(8)の平均粒子径は626nmであった。
【0091】
[実施例9]グラフト共重合体(9)の製造
単量体混合物(B)の組成を下記のように変更したこと以外は、実施例7と同様にして、クラフト共重合体(9)を製造した。
【0092】
単量体混合物(B)
スチレン 18.77部
ジビニルベンゼン 1.23部
(単量体混合物(B)に対して5.0mol%)
ラテックス中のグラフト共重合体(9)の平均粒子径は627nmであった。
【0093】
[実施例10]グラフト共重合体(10)の製造
温度計、窒素導入管、冷却管及び攪拌装置を備えたセパラブルフラスコに、製造例1で得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A1)ラテックス235.2部(固形分換算80.0部)を投入し、その存在下に、下記の単量体混合物(B)及び乳化剤等水溶液を混合し、150分かけて滴下した。滴下終了後120分間保持して重合を終了し、グラフト共重合体(10)のラテックスを得た。
【0094】
単量体混合物(B):
スチレン 14.91部
アクリロニトリル 4.93部
ジビニルベンゼン 0.16部
(単量体混合物(B)に対して0.5mol%)
乳化剤等水溶液:
ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム 0.2部
2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン] 0.4部
脱イオン水 10.0部
ラテックス中のグラフト共重合体(10)の平均粒子径は709nmであった。これ以降の操作は実施例1と同様にして、グラフト共重合体(10)の粉体を回収した。
【0095】
[実施例11]グラフト共重合体(11)の製造
単量体混合物(B)の組成を下記のように変更したこと以外は、実施例10と同様にして、クラフト共重合体(11)を製造した。
【0096】
単量体混合物(B)
スチレン 14.83部
アクリロニトリル 4.87部
ジビニルベンゼン 0.3部
(単量体混合物(B)に対して1.0mol%)
ラテックス中のグラフト共重合体(11)の平均粒子径は685nmであった。
【0097】
[比較例1]グラフト共重合体(12)の製造
単量体混合物(B)の組成を下記のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして、クラフト共重合体(12)を製造した。
【0098】
単量体混合物(B)
スチレン 30.0部
ラテックス中のグラフト共重合体(12)の平均粒子径は622nmであった。
【0099】
[比較例2]グラフト共重合体(13)の製造
単量体混合物(B)の組成を下記のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして、クラフト共重合体(13)を製造した。
【0100】
単量体混合物(B)
スチレン 22.5部
アクリロニトリル 7.5部
ラテックス中のグラフト共重合体(13)の平均粒子径は880nmであった。
【0101】
[比較例3]グラフト共重合体(14)の製造
単量体混合物(B)の組成を下記のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして、クラフト共重合体(14)を製造した。
【0102】
単量体混合物(B)
メタクリル酸メチル 29.75部
アクリル酸n−ブチル 0.25部
ラテックス中のグラフト共重合体(14)の平均粒子径は704nmであった。
【0103】
[比較例4]グラフト共重合体(15)の製造
単量体混合物(B)の組成を下記のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして、クラフト共重合体(15)を製造した。
【0104】
単量体混合物(B)
メタクリル酸メチル 29.55部
アクリル酸n−ブチル 0.25部
メタクリル酸アリル 0.20部
(単量体混合物(B)に対して0.5mol%)
ラテックス中のグラフト共重合体(15)の平均粒子径は657nmであった。
【0105】
[比較例5]グラフト共重合体(16)の製造
単量体混合物(B)の組成を下記のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして、クラフト共重合体(16)を製造した。
【0106】
単量体混合物(B)
メタクリル酸メチル 29.36部
アクリル酸n−ブチル 0.25部
メタクリル酸アリル 0.39部
(単量体混合物(B)に対して1.0mol%)
ラテックス中のグラフト共重合体(16)の平均粒子径は725nmであった。
【0107】
[比較例6]グラフト共重合体(17)の製造
単量体混合物(B)の組成を下記のように変更したこと以外は、実施例7と同様にして、クラフト共重合体(17)を製造した。
【0108】
単量体混合物(B)
スチレン 20.0部
ラテックス中のグラフト共重合体(17)の平均粒子径は628nmであった。
【0109】
[比較例7]グラフト共重合体(18)の製造
単量体混合物(B)の組成を下記のように変更したこと以外は、実施例7と同様にして、クラフト共重合体(18)を製造した。
【0110】
単量体混合物(B)
スチレン 15.0部
アクリロニトリル 5.0部
ラテックス中のグラフト共重合体(18)の平均粒子径は638nmであった。
【0111】
【表1】

【0112】
表中の略語
St :スチレン
AN :アクリロニトリル
MMA:メタクリル酸メチル
BA :アクリル酸n−ブチル
DVB:ジビニルベンゼン
AMA:メタクリル酸アリル。
【0113】
結果から明らかなように、単量体混合物(B)としてスチレンを用いた実施例1〜4及び7〜9は、単量体混合物(B)として(メタ)アクリル酸エステルを用いた比較例3〜5に比べて、耐熱性が向上することが確認された。単量体混合物(B)としてスチレン及びアクリロニトリルを用いた実施例5、6及び10、11も同様に、比較例3〜5に比べて耐熱性が向上することが確認された。
【0114】
また、単量体混合物(B)に架橋性単量体を含有する実施例1〜11は、単量体混合物(B)に架橋性単量体を含有しない比較例1、2及び6、7に比べて、耐熱性が向上することが確認された。
【0115】
[実施例12〜22、比較例8〜15]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「JER828」、ジャパンエポキシレジン(株)製)100部に対して、実施例1〜11及び比較例1〜7で得たグラフト共重合体(1)〜(18)を表2に記載した比率で配合し、3本ロールで3パスし混練して、エポキシ樹脂組成物を得た。比較例8については、グラフト共重合体を配合せずに同様の操作を行った。
【0116】
得られたエポキシ樹脂組成物について以下のように貯蔵安定性の評価を行なった。結果を表2に示す。
【0117】
[貯蔵安定性測定]
得られたエポキシ樹脂組成物を40℃の恒温槽で温度一定にし、B型粘度計により粘度を測定(初期粘度)した。測定後、再度40℃の恒温槽に浸し、100時間静置した後、B型粘度計により粘度を測定(100時間後の粘度)した。100時間後の粘度/初期粘度を貯蔵安定性の指標とし、以下の基準に従い評価した。
【0118】
○:100時間後の粘度/初期粘度<1.2
△:1.2≦100時間後の粘度/初期粘度<1.5
×:1.5≦100時間後の粘度/初期粘度
【0119】
【表2】

【0120】
結果から明らかなように、単量体混合物(B)に架橋性単量体を含有するグラフト共重合体(1)〜(11)を配合した実施例12〜22は、単量体混合物(B)に架橋性単量体を含有しないグラフト共重合体(12)〜(14)及び(17)、(18)を配合した比較例9〜11及び14、15に比べて、貯蔵安定性が向上することが確認された。
【0121】
[実施例23〜37、比較例16〜23]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「JER828」、ジャパンエポキシレジン(株)製)100部に対して、酸無水物系硬化剤(商品名「リカシッドMH−700」、新日本理化学(株)製)、硬化促進剤としてN−ベンジル−2−メチルイミダゾール(東京化成工業(株)製)、実施例1〜11及び比較例1〜7で得たグラフト共重合体(1)〜(18)を表3に記載した比率で配合し、3本ロールで3パスし混練して、エポキシ樹脂組成物を得た。比較例16については、グラフト共重合体を配合せずに同様の操作を行った。
【0122】
このエポキシ樹脂組成物を、150mm×150mm×3mm寸法の型に注型後、ギアオーブンにて80℃で2時間保持して予備硬化させ、その後120℃で6時間保持して硬化させ、成形体を得た。
【0123】
得られた成形体について、以下の方法により、耐衝撃性及び弾性率の評価を行った。結果を表3に示す。
【0124】
[アイゾット衝撃試験]
得られた成形体を12.7mm×63.6mm×3mmに切断し、自動ノッチングマシーン((株)東洋精機製作所製 ノッチングツールA)によって、ノッチ残が10.16±0.05mmとなるようにノッチを付けた(JIS K−7110)。
【0125】
その後、デジタル衝撃試験機((株)東洋精機製作所製 DG−UB)によりアイゾット衝撃値を測定した。ハンマーは2.75Jを使用した。
【0126】
[弾性率の測定]
得られた成形体を10mm×60mm×3mmに切断(JIS K−7171)し、恒温恒湿室(温度:23℃、湿度:50%)で24時間以上静置した後、分析装置STROGRAPH−T((株)東洋精機製作所製)で荷重レンジ50kgf、試験速度1mm/分で測定した。
【0127】
【表3】

【0128】
結果から明らかなように、グラフト共重合体(1)〜(11)を配合した実施例23〜37は、グラフト共重合体を配合していない比較例16に比べて、アイゾット衝撃値が向上し、曲げ弾性率が低下することが確認された。
【0129】
以上のことから、本発明のグラフト共重合体を用いることにより、耐熱性、貯蔵安定性及びアイゾット衝撃値が向上し、曲げ弾性率が低下することが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fox式で求めたガラス転移温度が20℃以下の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の存在下に、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体のいずれか1種以上を含有する単量体混合物(B)を重合して得られるグラフト共重合体において、
単量体混合物(B)が架橋性単量体を0.01〜10mol%(但し、単量体混合物(B)中に含まれる全単量体を100mol%とする。)含有することを特徴とするグラフト共重合体。
【請求項2】
請求項1記載のグラフト共重合体と樹脂とを含有する樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1記載のグラフト共重合体と樹脂とを含有する半導体封止材用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1記載のグラフト共重合体と樹脂とを含有する接着剤用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項2又は3記載の樹脂組成物を用いて得られる成形体。

【公開番号】特開2010−59245(P2010−59245A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223792(P2008−223792)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】