説明

ケーブル分岐接続体及びその製造方法

【課題】 充填された絶縁樹脂を保護するケースをコンパクト化することができるケーブル分岐接続体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 複数本の分岐リード線の一部を接続し且つ分岐リード線の絶縁被覆部が除去された芯線を互いに電気的に導通状態とするケーブル分岐接続体17において、前記各分岐リード線12a,12b,12cの一部の絶縁被覆部が除去された各芯線を導電性圧縮コネクタ10(13)によって、所定の間隔を有する状態で圧縮接続し、導通状態とすると共に、該導電性圧縮コネクタ10(13)の周囲を硬化した絶縁樹脂で一体化した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブル等のケーブルの分岐に用いるケーブル分岐接続体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のケーブル分岐接続体として、図7に示すように、各分岐リード線1A,1Bの中間部の露呈された各芯線2a,2bをC型圧縮金具3により一体に結束すると共に、芯線2,2の露呈部周囲を絶縁樹脂モールド4で一体化したものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−98675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のケーブル分岐接続体1では、複数の芯線2a,2bをC型圧縮金具3によって結束しているので、各芯線2a,2bの側面同士が接触した状態で絶縁樹脂モールド4が充填されることとなり、一方の端部にスペーサ板5を必要とするため、円筒保護ケース6が長尺なものとなっていた。
【0004】
本発明は上記点に鑑み、充填された絶縁樹脂を保護するケースをコンパクト化することができるケーブル分岐接続体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、複数本の分岐リード線の一部を接続し且つ分岐リード線の絶縁被覆部が除去された芯線を互いに電気的に導通状態とするケーブル分岐接続体において、前記各分岐リード線の一部の絶縁被覆部が除去された各芯線を導電性圧縮コネクタによって、所定の間隔を有する状態で圧縮接続し、導通状態とすると共に、該導電性圧縮コネクタの周囲を硬化した絶縁樹脂で一体化したことに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、導電性圧縮コネクタの周囲を保護ケースで覆い、該保護ケースと前記導電性圧縮コネクタの間に形成される空間に絶縁樹脂を充填し硬化させることによって一体化したことに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、側面から内部に向かって分岐リード線が挿入される挿入溝を複数有する導電性圧縮コネクタであって、前記挿入溝の挿入口は分岐リード線が挿入されて圧縮されたときに、挿入された該分岐リード線の芯線の側面を覆うようにして塞がれる凸部を有し且つ各々の芯線が所定の間隔を保った状態で圧縮されるようにしていることに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、複数の分岐リード線の一部の絶縁被覆部を各々除去して芯線を露出させる工程と、前記各分岐リード線の一部の絶縁被覆部が除去された各芯線を導電性圧縮コネクタによって、所定の間隔を有する状態で圧縮接続し、導通状態とする工程と、芯線の露出部及び導電性圧縮コネクタ全体を硬化した絶縁樹脂で一体化する工程とを有することに特徴を有する。
【0009】
請求項5の発明は、芯線の露出部及び導電性圧縮コネクタ全体を硬化した絶縁樹脂で一体化する工程は、保護ケースである樹脂一体型キャップに複数の分岐リード線の各々を挿入する工程と、該樹脂一体型キャップの一方の端部を液漏れ防止治具によって挟持する工程と、前記樹脂一体型キャップの他方の端部から絶縁樹脂を充填して硬化させる工程とからなることに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明は、複数本の分岐リード線の一部を接続し且つ分岐リード線の絶縁被覆部が除去された芯線を互いに電気的に導通状態とするケーブル分岐接続体において、前記各分岐リード線の一部の絶縁被覆部が除去された各芯線を導電性圧縮コネクタによって、所定の間隔を有する状態で圧縮接続し、導通状態とすると共に、該導電性圧縮コネクタの周囲を硬化した絶縁樹脂で一体化したことに特徴を有する。したがって、導電性圧縮コネクタ内部の各芯線が接触することなく、所定の間隔を有する状態で接続しているので、樹脂が硬化した後に割れが生じるのを防ぐことができる。
【0011】
請求項2の発明は、導電性圧縮コネクタの周囲を保護ケースで覆い、該保護ケースと前記導電性圧縮コネクタの間に形成される空間に絶縁樹脂を充填し硬化させることによって一体化したことに特徴を有する。したがって、保護ケースによって、樹脂が外部に漏れるのを防ぐことができる。
【0012】
請求項3の発明は、側面から内部に向かって分岐リード線が挿入される挿入溝を複数有する導電性圧縮コネクタであって、前記挿入溝の挿入口は分岐リード線が挿入されて圧縮されたときに、挿入された該分岐リード線の芯線の側面を覆うようにして塞がれる凸部を有し且つ各々の芯線が所定の間隔を保った状態で圧縮されるようにしていることに特徴を有する。したがって、分岐リード線の芯線の各々が直接接触することなく、電気的導通状態とすることができる。また、凸部によって挿入口が塞がれるので、芯線が挿入溝から外れることはない。
【0013】
請求項4の発明は、複数の分岐リード線の一部の絶縁被覆部を各々除去して芯線を露出させる工程と、前記各分岐リード線の一部の絶縁被覆部が除去された各芯線を導電性圧縮コネクタによって、所定の間隔を有する状態で圧縮接続し、導通状態とする工程と、芯線の露出部及び導電性圧縮コネクタ全体を硬化した絶縁樹脂で一体化する工程とを有することに特徴を有する。したがって、導電性圧縮コネクタ内部の各芯線が接触することなく、所定の間隔を有する状態のケーブル分岐接続体を製造することができる。
【0014】
請求項5の発明は、芯線の露出部及び導電性圧縮コネクタ全体を硬化した絶縁樹脂で一体化する工程は、保護ケースである樹脂一体型キャップに複数の分岐リード線の各々を挿入する工程と、該樹脂一体型キャップの一方の端部を液漏れ防止治具によって挟持する工程と、前記樹脂一体型キャップの他方の端部から絶縁樹脂を充填して硬化させる工程とからなることに特徴を有する。したがって、分岐リード線と樹脂一体型キャップとの隙間を無くすようにしていることから、硬化する前の樹脂が漏れ出すのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る導電性圧縮コネクタの一例を示した図である。この図に示すように導電性圧縮コネクタ10は、側面から内部に向かって分岐リード線が挿入される挿入溝10a,10b,10cを複数有し、所定の厚みを有するものである。そして、挿入溝の挿入口は分岐リード線の芯線が挿入され、ダイス20によって六角形状に圧縮されたときに、挿入された分岐リード線の芯線の側面を覆うようにして塞がれるのであり、このために、挿入口には凸部11a,11b,11c,11dが形成されているのである。また、圧縮された状態では、圧縮コネクタ10が導電性を有することから、各分岐線12a,12b,12cが導通状態となるのであるが、各々の分岐線12a,12b,12cは接触してはおらず、所定の距離を保った状態となるのである。
【0016】
図2は本発明に係る導電性圧縮コネクタの他例を示した図である。図1とは導電性圧縮コネクタ13の形状が若干異なっており、ダイス20が圧縮する方向も異なっている。しかし、導電性圧縮コネクタ13が挿入された分岐リード線の芯線12a,12b,12cの側面を覆うようにして塞がれるのは図1で示したものと同じであり、挿入口には凸部14a,14b,14c,14dが形成されているのである。
【0017】
図3は保護ケースである樹脂一体型キャップ15を示した図である。この図に示すように、樹脂一体型キャップ15の一方の端部15aは開口されているため、分岐リード線を容易に挿入することができる。また、他方の端部15bは予め挿入される分岐リード線の径に合わせて加工されているので、後述する液漏れ防止治具の使用も相まって絶縁樹脂の充填時に液もれを防ぐことができるようになっているのである。
【0018】
図4は本発明に使用する液漏れ防止治具16を示した図である。この液漏れ防止治具16は上述した樹脂一体型キャップ15の他方の端部15bを治具の挿入穴16aに挿入し、ネジ16b,16bを回して上下方向から端部を挟持することによって、分岐リード線と樹脂一体型キャップ15との隙間を無くすようにしているのである。
【0019】
図5は本発明に係るケーブル分岐接続体17を示した断面図である。この図を用いてケーブル分岐接続体17の製造方法について説明する。先ず、複数の分岐リード線12a,12b,12cの一部の絶縁被覆部を各々除去して芯線を露出させ、この露出した各芯線部分を導電性圧縮コネクタ10(13)の各々の挿入孔に挿入する。次に、所定の間隔を有する状態で圧縮接続し、導通状態とするのである。さらに、保護ケースである樹脂一体型キャップ15に複数の分岐リード線の各々を挿入した後、樹脂一体型キャップの一方の端部15bを図4で示した液漏れ防止治具16によって挟持するのである。その後、樹脂一体型キャップの他方の端部15aから絶縁樹脂Aを常温で充填して常温で3時間放置し、さらに60℃の恒温槽で3時間加熱することによって硬化させ、芯線の露出部及び導電性圧縮コネクタ全体を絶縁樹脂Aで一体化させることによって、ケーブル分岐接続体17が完成するのである。
【0020】
図6は本発明に係るケーブル分岐接続体の端末部18を示した図である。この図に示すように分岐リード線の端末部18には内端末キャップ18aと外端末キャップ18bとが接着剤によって接着されている。そして、作業時には、外端末キャップ18bの端末部においてケーブル被覆を剥ぎ取ると芯線が所定の長さだけ露出するようになっている。この外端末キャップ18bの長さを予めリード線同士を直線的に接続する接続スリーブの長さの約半分としておけば、現場での作業時に露出させる芯線の測定作業を省略することができ便利である。
【0021】
尚、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の実施形態をとることができることは言うまでもない。例えば、樹脂一体型キャップに絶縁樹脂Aを充填する前に、別のペースト状の樹脂Bを圧縮コネクタの隙間、各分岐リード線の隙間、芯線と絶縁被覆部との隙間、及び分岐リード線と樹脂一体型キャップとの隙間に一様に塗布する漏れ止め措置を行っておけば絶縁樹脂Aを充填した時に漏れることなく硬化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る導電性圧縮コネクタの一例を示した図である。
【図2】本発明に係る導電性圧縮コネクタの他例を示した図である。
【図3】本発明に使用する樹脂一体型キャップを示した図である。
【図4】本発明に使用する液漏れ防止治具を示した図である。
【図5】本発明に係るケーブル分岐接続体を示した断面図である。
【図6】本発明に係るケーブル分岐接続体の端末部を示した図である。
【図7】従来のケーブル分岐接続体を示した断面図である。
【符号の説明】
【0023】
10,13 導電性圧縮コネクタ
10a,10b,10c 挿入溝
11a,11b,11c,11d 凸部
12a,12b,12c 14a,14b,14c,14d 分岐リード線
15 樹脂一体型キャップ
16 液漏れ防止治具
17 ケーブル分岐接続体
18 端末部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の分岐リード線の一部を接続し且つ分岐リード線の絶縁被覆部が除去された芯線を互いに電気的に導通状態とするケーブル分岐接続体において、前記各分岐リード線の一部の絶縁被覆部が除去された各芯線を導電性圧縮コネクタによって、所定の間隔を有する状態で圧縮接続し、導通状態とすると共に、該導電性圧縮コネクタの周囲を硬化した絶縁樹脂で一体化したことを特徴とするケーブル分岐接続体。
【請求項2】
導電性圧縮コネクタの周囲を保護ケースで覆い、該保護ケースと前記導電性圧縮コネクタの間に形成される空間に絶縁樹脂を充填し硬化させることによって一体化したことを特徴とする請求項1に記載のケーブル分岐接続体。
【請求項3】
側面から内部に向かって分岐リード線が挿入される挿入溝を複数有する導電性圧縮コネクタであって、前記挿入溝の挿入口は分岐リード線が挿入されて圧縮されたときに、挿入された該分岐リード線の側面の芯線を覆うようにして塞がれる凸部を有し且つ各々の芯線が所定の間隔を保った状態で圧縮されるようにしていることを特徴とする導電性圧縮コネクタ。
【請求項4】
複数の分岐リード線の一部の絶縁被覆部を各々除去して芯線を露出させる工程と、前記各分岐リード線の一部の絶縁被覆部が除去された各芯線を導電性圧縮コネクタによって、所定の間隔を有する状態で圧縮接続し、導通状態とする工程と、芯線の露出部及び導電性圧縮コネクタ全体を硬化した絶縁樹脂で一体化する工程とを有することを特徴とするケーブル分岐接続体の製造方法。
【請求項5】
芯線の露出部及び導電性圧縮コネクタ全体を硬化した絶縁樹脂で一体化する工程は、保護ケースである樹脂一体型キャップに複数の分岐リード線の各々を挿入する工程と、該樹脂一体型キャップの一方の端部を液漏れ防止治具によって挟持する工程と、前記樹脂一体型キャップの他方の端部から絶縁樹脂を充填して硬化させる工程とからなることを特徴とする請求項4に記載のケーブル分岐接続体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−50847(P2006−50847A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230898(P2004−230898)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000221409)東神電気株式会社 (29)
【出願人】(000117010)旭電機株式会社 (127)
【Fターム(参考)】