コンプライアントメカニズム用の製造構造およびプロセス
本発明は、様々な態様において、高速および低電圧で駆動できる、画質を改良および電力消費を低減するMEMS作動式ディスプレイのシステムおよび方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年10月27日出願の米国仮特許出願第61/108,783号、「MEMS Anchors」(参照することによりその全体を本願明細書に援用する)の利益を主張する。本出願はまた、200810月28日出願の米国仮特許出願第61/109,045号、「Manufacturing Structure and Process for Compliant Mechanisms」(参照することによりその全体を本願明細書に援用する)の利益を主張する。
【0002】
概して、本発明は微小電子機械システムの分野に関し;特に、本発明は機械的な光変調器用の作動構造に関する。
【背景技術】
【0003】
機械的な光変調器で構成されたディスプレイは、液晶技術に基づくディスプレイの代替物として魅力的である。機械的な光変調器は、映像内容を良好な視角かつ広範な色およびグレースケールで十分に迅速に表示させる。機械的な光変調器は投射型ディスプレイ応用で成功しており、最近では直視型応用にも提案されている。当該技術分野では、迅速で明るく低出力の機械的作動ディスプレイが必要とされている。特に、高速かつ低電圧で駆動され得る、機械的作動ディスプレイの画質が改善されかつ電力消費が削減されていることが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、一態様では、本発明は、空間の境界を完全に取り囲む第1の細いビームを含むMEMS装置に関する。一部の実施形態では、第1の細いビームはループを形成する。一態様では、MEMS装置は、第1の細いビームによって基板の上側に支持された機械的な光変調器を含む。一態様では、MEMS装置は機械的な光変調器を含み、そこでは、機械的な光変調器を動かすように第1の細いビームがアクチュエータの一部分を形成して、光を変調させる。特定の実施形態では、第1の細いビームはコンプライアントビームである。一態様では、MEMS装置は、第1の細いビームを基板に接続するアンカを含む。一部の実施形態では、MEMS装置は第2の細いビームを含み、第1および第2の細いビームはそれぞれ、交わらない空間を取り囲む。特定の実施形態では、第2の細いビームは、第1の細いビームによって完全に取り囲まれる空間を取り囲む。
【0005】
別の態様では、本発明は、基板に結合された第1の細いビームを形成し、第1の細いビームが空間の境界を完全に取り囲むようにするステップを含むMEMS装置の製造方法に関する。特定の実施形態では、第1の細いビームを形成するステップは、金型材料を犠牲層の上に堆積させるステップ、ある形状を金型材料にエッチングして、少なくとも1つの側壁および少なくとも1つの下部水平面を含む金型を形成するステップ、エッチング形成された金型上に材料を堆積させて、堆積された材料が、エッチング形成された金型の少なくとも側壁および下部水平面に付着するようにするステップ、堆積された材料の一部分をエッチングして、堆積された材料を下部水平面から除去する一方、側壁上に無傷のまま堆積された材料の実質的に全てを残すステップ、および側壁に残る材料が第1の細いビームを形成するように金型を除去するステップを含む。一態様では、側壁は、金型に形成されたメサ型の壁を含み、および第1の細いビームはメサを取り囲む。
【0006】
別の態様では、側壁は、金型に形成された凹型の壁を含み、および第1の細いビームは凹部を取り囲む。一部の実施形態では、金型材料は犠牲材料の層の上に堆積され、および方法がさらに、第1の細いビームを解放するために犠牲材料を除去するステップを含む。
【0007】
一態様では、金型はさらに上部水平面を含み、金型上に堆積された材料が上部水平面に付着し、方法はさらに、堆積された材料をエッチングで除去する前に上部水平面にマスクを塗布して、エッチング後に、上部水平面上に堆積された材料の一部分が上部水平面上に残るようにして、機械的な光変調器を形成するステップを含む。一部の実施形態では、形状を金型にエッチングする前に、金型材料にアンカ用孔をエッチングするステップであって、金型上に堆積された材料がアンカ用孔を埋めてアンカを形成するステップを含む。一態様では、アンカ、第1の細いビーム、および機械的な光変調器の形成に利用する必要があるのは、3つ以下のフォトリソグラフィックマスクである。特定の実施形態では、MEMS装置は、機械的な光変調器およびアンカを含み、第1の細いビームが、基板上に機械的な光変調器を支持し、かつアンカを介して機械的な光を基板に接続し、その方法では3つ以下のフォトリソグラフィックマスクを利用する。
【0008】
上記の説明は、添付の図面を参照する以下の本発明の詳細な説明から容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】本発明の例示的な実施形態によるディスプレイ装置の等角図である。
【図1B】本発明の例示的な実施形態による図1Aのディスプレイ装置のブロック図である。
【図2A】本発明の例示的な実施形態による、図1AのMEMSベースのディスプレイへの組み込みに好適な例示的なシャッターベースの光変調器の斜視図である。
【図2B】本発明の例示的な実施形態による、図1AのMEMSベースのディスプレイへの組み込みに好適なローラーシェードベースの光変調器の断面図である。
【図2C】本発明の例示的な実施形態による、図1AのMEMSベースのディスプレイの代替的な実施形態への組み込みに好適なライトタップベースの光変調器の断面図である。
【図3A】本発明の例示的な実施形態による、図1AのMEMSベースのディスプレイへ組み込まれた光変調器の制御に好適な制御行列の概略図である。
【図3B】本発明の例示的な実施形態による、図3Aの制御行列に接続されたシャッターベースの光変調器のアレイの斜視図である。
【図4A】本発明の例示的な実施形態による、開放状態にあるデュアル作動式シャッターアセンブリの平面図である。
【図4B】本発明の例示的な実施形態による、閉鎖状態にあるデュアル作動式シャッターアセンブリの平面図である。
【図5】本発明の例示的な実施形態によるディスプレイ装置の断面図である。
【図6A】本発明の例示的な実施形態による、図2Aに示すものと類似の複合シャッターセンブリの構成段階の断面図である。
【図6B】本発明の例示的な実施形態による、図2Aに示すものと類似の複合シャッターセンブリの構成段階の断面図である。
【図6C】本発明の例示的な実施形態による、図2Aに示すものと類似の複合シャッターセンブリの構成段階の断面図である。
【図6D】本発明の例示的な実施形態による、図2Aに示すものと類似の複合シャッターセンブリの構成段階の断面図である。
【図6E】本発明の例示的な実施形態による、図2Aに示すものと類似の複合シャッターセンブリの構成段階の断面図である。
【図7A】本発明の例示的な実施形態による、細い側壁ビームを有する代替的なシャッターアセンブリの構成段階の等角図である。
【図7B】本発明の例示的な実施形態による、細い側壁ビームを有する代替的なシャッターアセンブリの構成段階の等角図である。
【図7C】本発明の例示的な実施形態による、細い側壁ビームを有する代替的なシャッターアセンブリの構成段階の等角図である。
【図7D】本発明の例示的な実施形態による、細い側壁ビームを有する代替的なシャッターアセンブリの構成段階の等角図である。
【図8】本発明の例示的な実施形態による、ループ状駆動ビームを組み込むシャッターアセンブリの平面図である。
【図9】本発明の例示的な実施形態による、3−マスクプロセスに従って構築されたシャッターアセンブリの等角図である。
【図10】本発明の例示的な実施形態による、図9のシャッターアセンブリに至る作製プロセスにおける中間ポイントにおいて金型にパターン化された2次元の犠牲材料の等角図である。
【図11】本発明の例示的な実施形態による、3−マスクプロセスに従って構築されたシャッターアセンブリの等角図である。
【図12】本発明の例示的な実施形態による、図11のシャッターアセンブリに至る作製プロセスにおける中間ポイントにおいて金型にパターン化された2次元の犠牲材料の等角図である。
【図13】本発明の例示的な実施形態による、3−マスクプロセスに従って構築された、2つの接続されたシャッターアセンブリの等角図である。
【図14】本発明の例示的な実施形態による、3−マスクプロセスに従って構築された、シャッターアセンブリの等角図である。
【図15】本発明の例示的な実施形態による、3−マスクプロセスに従って構築された、シャッターアセンブリの等角図である。
【図16】本発明の例示的な実施形態による、3−マスクプロセスに従って構築された、シャッターアセンブリの等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を全体的に理解してもらうために、以下、画像を表示するための装置および方法を含め、いくつかの例示的な実施形態を説明する。しかしながら、当業者には、本願明細書で説明するシステムおよび方法を、取り組む応用に適切なように適合および修正し得ること、および本願明細書で説明するシステムおよび方法を他の好適な応用に用いることができ、そのような他の追加例および修正例はこの範囲から逸脱しないことを理解されたい。
【0011】
図1Aは、本発明の例示的な実施形態による直視型MEMSベースのディスプレイ装置100の概略図である。ディスプレイ装置100は、行と列に配置された複数の光変調器102a〜102d(一般的に「光変調器102」)を含む。ディスプレイ装置100では、光変調器102aおよび102dは開放状態にあり、光が通過できるようになっている。光変調器102bおよび102cは閉鎖状態にあり、光の通過を妨害している。光変調器102a〜102dの状態を選択的に設定することによって、1つまたは複数のランプ105によって照明される場合に、ディスプレイ装置100を利用してバックライト付きディスプレイに画像104を形成できる。別の実装例では、装置100は、装置の前面からの周辺光の反射を変調させることによって画像を形成し得る。別の実装例では、装置100は、ディスプレイの前面に位置決めされた1つまたは複数のランプからの光の反射によって、すなわち前面光を使用することによって画像を形成し得る。別の実装例では、装置100は、変調アレイの後ろ側にある光源からの光の透過と、同時に、ディスプレイの前面に位置決めされた光源(1つまたは複数のランプ)からの光の反射(半透過型(transflective)動作と呼ばれる)との双方を変調することによって画像を形成し得る。閉鎖状態または開放状態の一方において、光変調器102は、例えば、限定するものではないが、遮断、反射、吸収、フィルタリング、偏光、回折、またはそうでなければ特性または光の経路を変更するものなどによって、光路において光に干渉する。
【0012】
ディスプレイ装置100では、各光変調器102は、画像104における画素106に対応する。他の実装例では、ディスプレイ装置100は、複数の光変調器を用いて画像104に画素106を形成し得る。例えば、ディスプレイ装置100は3つの色特有光変調器102を含み得る。特定の画素106に対応する色固有光変調器102の1つ以上を選択的に開放することによって、ディスプレイ装置100は画像104に色画素106を生成することができる。別の例では、ディスプレイ装置100は、画素106当たり2つ以上の光変調器102を含んで、画像104にグレースケールをもたらす。画像に関しては、「画素」は、画像の解像度によって規定される最も小さい絵素に対応する。ディスプレイ装置100の構造用部品に関しては、用語「画素」は、画像の単一の画素を形成する光を変調させるために使用される、機械と電気の複合部品を指す。
【0013】
ディスプレイ装置100は、結像光学系を必要としない直視型ディスプレイである。ユーザは、ディスプレイ装置100を直接見ることによって画像を見る。代替的な実施形態では、ディスプレイ装置100を投射型ディスプレイに組み込む。そのような実施形態では、ディスプレイは、光をスクリーン上または壁上に投射することによって画像を形成する。投射型の応用では、ディスプレイ装置100は、投射された画像104よりも実質的に小さい。
【0014】
直視型ディスプレイは透過または反射モードのいずれかで、または双方同時に(半透過型と定義される)動作し得る。透過型ディスプレイでは、光変調器は、ディスプレイの後ろに位置決めされた1つまたは複数のランプからの光をフィルタリングするかまたは選択的に遮断する。複数のランプからの光を任意に光ガイドまたは「バックライト」に入射させる。直視透過型ディスプレイの実施形態は、透明基板やガラス基板に組み込まれることが多く、光変調器を含む1つの基板がバックライトの上に直接位置決めされるサンドイッチ組立方式を容易にする。透過型ディスプレイの一部の実施形態では、色特有の光変調器は、カラーフィルタ材料と各変調器102とを関連付けることによって作製される。透過型ディスプレイの他の実施形態では、以下説明するように、原色の異なるランプを交互に照明することによるフィールド順次式カラー方法を使用して色を生成できる。
【0015】
各光変調器102はシャッター108およびアパーチャ109を含む。画像104の中の画素106を照明するために、アパーチャ109を通ってビューワーの方へ光を通過させるようにシャッター108を位置決めする。画素106に光が当たらない状態を維持するために、光がアパーチャ109を通過しないようにシャッター108を位置決めする。アパーチャ109を、反射性材料または光吸収材料によってパターン化された開口部によって画成する。
【0016】
ディスプレイ装置はまた、シャッターの動作を制御するために、基板および光変調器に接続された制御行列を含む。制御行列は、画素の行ごとに少なくとも1つの書き込み許可相互接続部110(「走査線相互接続部(scan−line interconnect)とも称する」)と、画素の各列に1つのデータ相互接続部112と、全画素にまたはディスプレイ装置100の複数の列および複数の行双方からの少なくとも複数の画素に共通の電圧を供給する1つの共通の相互接続部114とを含む一連の電気相互接続部(例えば、相互接続部110、112、および114)を含む。適切な電圧(「書き込み許可電圧、Vwe」)を印加することに応えて、画素の所与の行の書き込み許可相互接続部110が、その行の画素が新しいシャッターの移動指示を受理するように準備する。データ相互接続部112は、データ電圧パルスの形態で新しい移動指示を通信する。一部の実装例では、データ相互接続部112に適用されたデータ電圧パルスは、シャッターの静電運動に直接寄与する。他の実装例では、データ電圧パルスはスイッチ、例えば、トランジスタ、または一般にデータ電圧よりも高い別個の作動電圧の光変調器102への印加を制御する他の非線形回路素子を制御する。これらの作動電圧を印加すると、シャッター108に静電駆動による運動が生じる。
【0017】
図1Bは、ディスプレイ装置100のブロック図150である。図1Aおよび図1Bを参照すると、ブロック図150に示すような上述のディスプレイ装置100の要素に加えて、ディスプレイ装置100は、複数のスキャンドライバ152(「書き込み許可電圧源」とも称する)および複数のデータドライバ154(「データ電圧源」とも称する)を含む。スキャンドライバ152は書き込み許可電圧を走査線相互接続部110に印加する。データドライバ154はデータ電圧をデータ相互接続部112に印加する。ディスプレイ装置の一部の実施形態では、データドライバ154は、特に画像104のグレースケールがアナログ方式で生成される場合に、アナログデータ電圧を光変調器にもたらすように構成されている。アナログ動作では、光変調器102を、中間の範囲の電圧がデータ相互接続部112を通して印加されるときに、シャッター108に中間の範囲の開放状態が生じるように、それゆえ画像104に中間の範囲の照明状態またはグレースケールが生じるように設計する。
【0018】
他の場合では、データドライバ154を、2、3、または4つの少ないセットのデジタル電圧レベルのみを制御行列に与えるように構成する。これらの電圧レベルを、シャッター108の各々に対して開放状態または閉鎖状態のいずれかにデジタル方式で設定するように設計する。
【0019】
スキャンドライバ152およびデータドライバ154を、デジタル制御回路156(「制御器156」とも称する)に接続する。制御器156は入力処理モジュール158を含み、入力処理モジュール158は、入来する画像信号157を、ディスプレイ100の空間的アドレッシングおよびグレースケール能力に適切なデジタル画像フォーマットにするように、処理する。各画像の画素位置およびグレースケールデータをフレームバッファ159に記憶して、必要に応じてデータをデータドライバ154に供給できるようにしている。データを大抵は、行によっておよび画像フレームによってグループ化された予め定められたシーケンスにまとめて、シリアル式にデータドライバ154に送信する。データドライバ154は、直並列データ変換器、レベルシフティング、および一部の応用では、デジタルアナログ電圧変換器を含み得る。
【0020】
ディスプレイ装置100は、任意に一組の共通のドライバ153(共通の電圧源とも称する)を含む。一部の実施形態では、共通のドライバ153は、例えば一連の共通の相互接続部114に電圧を供給することによって光変調器103のアレイ内の全光変調器に共通のDC電位をもたらす。他の実施形態では、共通のドライバ153は、制御器156からのコマンドに従って、光変調器103のアレイに電圧パルスまたは信号、例えばアレイ103の複数の行列において全てまたは一部の光変調器の同時作動を駆動および/または開始することが可能なグローバルアクチュエーションパルス(global actuation pulse)を出す。
【0021】
異なるディスプレイ機能のための全てのドライバ(例えば、スキャンドライバ152、データドライバ154、および共通のドライバ153)の時間が、制御器156のタイミング制御モジュール160によって同期される。モジュール160からのタイミングコマンドは、ランプドライバ168を介して赤色、緑色、青色および白色のランプ(それぞれ162、164、166、および167)の照明、画素103のアレイ内の特定の行の書き込み許可および順序付け、データドライバ154からの電圧の出力、および光変調器を作動させる電圧の出力を調整する。
【0022】
制御器156は順序付けまたはアドレッシングスキームを決定し、それにより、アレイ103の各シャッター108を、新しい画像104に適切な照明レベルに再設定できる。好適なアドレッシング技術、画像形成技術、およびグレースケール技術の詳細は、米国特許出願第11/326,696号明細書および同第11/643,042号明細書(本願明細書に援用する)で見出される。新しい画像104を周期的な間隔で設定できる。例えば、ビデオディスプレイでは、カラー画像104またはビデオのフレームが、10〜300ヘルツの範囲の周波数でリフレッシュされる。一部の実施形態では、アレイ103への画像フレームの設定はランプ162、164、および166の照明と同期されて、画像フレームが交互に、一連の色、例えば赤、緑、および青などで代わる代わる照明される。各個々の色のための画像フレームをカラーサブフレームと称する。この方法では、フィールド順次式カラー方法と称するが、カラーサブフレームが20Hz超の周波数で交替される場合に、人の脳は、交互にでるフレーム画像を、広範で連続的な色を有する画像として認知するように平均化する。代替的な実装例では、赤、緑、および青以外の原色を用いて、ディスプレイ装置100に、原色を備える4つ以上のランプを用いることができる。
【0023】
一部の実装例では、ディスプレイ装置100がシャッター108の開放状態と閉鎖状態との間のデジタル切り替え用に設計されている場合、制御器156は、アドレッシングシーケンスおよび/または画像フレーム間の時間間隔を決定して、適切なグレースケールで画像104を生成する。シャッター108が特定のフレームにおいて開放している時間を制御することによって様々なレベルのグレースケールを生成するプロセスは、時分割グレースケールと称する。時分割グレースケールの一実施形態では、制御器156は、その画素で望まれる照明レベルまたはグレースケールに従ってシャッター108が開放状態のままとなるように各フレーム内の期間または何分の一かの時間を決定する。他の実装例では、各画像フレームに対して、制御器156はアレイ103の複数の行列に複数のサブフレーム画像を設定し、制御器は、グレースケール用の符号語内で用いられるグレースケール値または有意値(significance value)に比例して各サブフレーム画像が照明される持続期間を変更する。例えば、一連のサブフレーム画像の照明時間を、バイナリ符号化シリーズ1、2、4、8・・・に比例して変更できる。次いで、アレイ103の各画素用のシャッター108を、グレーレベル用の画素のバイナリ符号語内の対応する位置における値に従って、サブフレーム画像内で開放または閉鎖状態のいずれかに設定する。画素に3つ以上のレベル、例えば4つのレベル状態をもたせて、追加的な空間的に変更されたグレーレベルのための部分的な開放状態および部分的な閉鎖状態を含ませることも可能である。
【0024】
他の実装例では、制御器は、特定のサブフレーム画像に望まれるグレースケール値に比例してランプ162、164、および166からの光の強度を変更する。シャッター108のアレイから色およびグレースケールを形成するために多くのハイブリッド技術も利用可能である。例えば、上述の時分割技術は、画素毎の複数のシャッター108の使用と組み合わせることができ、または特定のサブフレーム画像用のグレースケール値は、サブフレームタイミングとランプ強度の双方の組み合わせによって確立できる。これらのおよび他の実施形態の詳細は、上述の米国特許出願第11/643,042号明細書で見出すことができる。
【0025】
一部の実装例では、画像状態104用のデータは制御器156によって、個々の行(走査線とも称する)の順次アドレッシングにより変調器アレイ103にロードされる。順次の各行または走査線のために、スキャンドライバ152は、アレイ103のその行の書き込み許可相互接続部110に書き込み許可電圧を印加し、その後、データドライバ154は、所望のシャッター状態に対応するデータ電圧を、選択した行の各列に供給する。データがアレイの全ての行にロードされるまでこのプロセスを繰り返す。一部の実装例では、データローディングに選択された行のシーケンスは線形であり、アレイの上部から底部へと続いている。他の実装例では、選択された行のシーケンスは擬似ランダム化されて、視覚的なアーティファクトを最小限にする。他の実装例では、順序付けをブロックによって系統立て、各ブロックに、例えば連続するアレイを5行毎にのみアドレッシングすることによって、画像状態104のある一部分のみ用のデータをアレイにロードする。
【0026】
一部の実装例では、画像データをアレイ103にローディングするプロセスは、シャッター108を作動させるプロセスと時間的に分離されている。これらの実装例では、変調器アレイ103は、アレイ103の各画素にデータ記憶素子を含み、かつ制御行列は、共通のドライバ153からトリガ信号を伝送するためにグローバルアクチュエーション相互接続部を含んで、記憶素子に記憶されたデータに従ってシャッター108の同時作動を開始し得る。種々のアドレッシングシーケンス(多くが米国特許出願第11/643,042号明細書に記載されている)は、タイミング制御モジュール160によって調整し得る。
【0027】
代替的な実施形態では、画素103のアレイおよび画素を制御する制御行列を、矩形の行列以外の構成に配置し得る。例えば、画素を六角形のアレイや曲線のある行列に配置できる。概して、ここで使用するように、用語「走査線」は、書き込み許可相互接続部を共有する任意の複数の画素を指す。
【0028】
ディスプレイ100は、タイミング制御モジュール160、フレームバッファ159、スキャンドライバ152、データドライバ154、ならびにドライバ153および168を含む複数の機能ブロックを含む。各ブロックは、区別可能なハードウェア回路および/または実行コードのモジュールのいずれかを指すと理解できる。一部の実装例では、機能ブロックは、回路基板および/またはケーブルによってつながれた別個のチップまたは回路として提供される。あるいは、これらの回路の多くを、ガラスまたはプラスチックの同じ基板上の画素アレイ103と共に作製できる。他の実装例では、ブロック図150からの複数の回路、ドライバ、プロセッサ、および/または制御機能を一緒に、単一のシリコンチップ内に統合してもよく、次いでそのシリコンチップは、透明基板保持画素アレイ103に直接接着される。
【0029】
制御器156はプログラミングリンク180を含み、それにより、制御器156内で実施されるアドレッシング、色、および/またはグレースケールアルゴリズムを、特定の応用への必要性に従って変更できる。一部の実施形態では、プログラミングリンク180は環境センサ、例えば周辺光センサや温度センサから情報を伝え、制御器156が、環境条件に一致して結像モードまたはバックライトパワーを調整できるようにする。制御器156はまた、ランプならびに光変調器作動に必要な電力を提供する電力供給入力182を含む。必要に応じて、ドライバ152、153、154、および/または168は、182の入力電圧を、シャッター108の作動またはランプ、例えばランプ162、164、166、および167の照明に十分な種々の電圧に変換するために、DC−DC変換器を含むかまたはそれと連携し得る。
【0030】
MEMS光変調器
図2Aは、本発明の例示的な実施形態による、図1AのMEMSベースのディスプレイ装置100への組み込みに好適な例示的なシャッターベースの光変調器200の斜視図である。シャッターベースの光変調器200(シャッターアセンブリ200とも称する)は、アクチュエータ204に結合されたシャッター202を含む。アクチュエータ204を2つの別個のコンプライアント電極ビームアクチュエータ205(「アクチュエータ205」)から形成する(2005年10月14日出願の米国特許出願第11/251,035号明細書に記載の通り)。シャッター202は片側でアクチュエータ205に結合する。アクチュエータ205は表面203上で、表面203に対して実質的に平行な運動面においてシャッター202を横方向に移動させる。シャッター202の反対側は、アクチュエータ204によって加えられる力に対抗する復元力をもたらすスプリング207に結合する。スプリング207を別のアクチュエータによって置き換えて、弾性のスプリング力ではなく作動力を使用してシャッター202を表面203上で横方向に、アクチュエータ204の方向とは反対方向に動かすことも可能である。
【0031】
各アクチュエータ205は、シャッター202をロードアンカ208に接続するコンプライアントロードビーム206を含む。ロードアンカ208はコンプライアントロードビーム206とともに、機械的な支持体としての機能を果たし、シャッター202を表面203の近傍に浮かした状態に維持する。ロードアンカ208はコンプライアントロードビーム206およびシャッター202を表面203に物理的に接続し、かつロードビーム206をバイアス電圧点に、一部の例では、地面に電気的に接続する。
【0032】
各アクチュエータ205はまた、各ロードビーム206に隣接して位置決めされたコンプライアント駆動ビーム216を含む。駆動ビーム216は一方の端部において、駆動ビーム216間で共有される駆動ビームアンカ218に結合する。各駆動ビーム216の他方の端部は自由に動く。しかしながら、駆動ビーム216の他方の端部が完全に自由に動くわけではなく、部分的に抑制されている実装例もある。各駆動ビーム216を、駆動ビーム216の自由端付近のロードビーム206およびロードビーム206の固定端に最も接近するように、湾曲できる。
【0033】
表面203は、透過型または半透過型の実施形態において光を通過させるように1つ以上のアパーチャ211を含む。シャッターアセンブリ200が、例えばシリコンで作製された不透明な基板上に形成されている場合、表面203は基板の表面であり、およびアパーチャ211は、基板に孔のアレイをエッチングすることによって形成される。シャッターアセンブリ200が、例えばガラスやプラスチックで作製された透明基板上に形成されている場合、表面203は、基板上に堆積された遮光層の表面であり、アパーチャは、表面203に孔のアレイ211をエッチングすることによって形成される。アパーチャ211は一般的に円形、楕円形、多角形、S字曲線、または形状が不規則である。反射型または一部の半透過型の実施形態では、領域211は、周囲の基板よりも反射率の高いまたは反射率の低いエリアを示す場合があり、シャッターアセンブリ200の動きによって、シャッターベースの光変調器200からの全反射光を変調させる。
【0034】
動作中、光変調器200を組み込むディスプレイ装置は、駆動ビームアンカ218を介して駆動ビーム216に電位を与える。第2の電位をロードビーム206に印加し得る。駆動ビーム216とロードビーム206との間に得られる電位差によって、駆動ビーム216の自由端をロードビーム206の固定端の方へ引張り、およびロードビーム206のシャッター端部を駆動ビーム216の固定端の方へ引張り、それにより、シャッター202を駆動アンカ218の方へ横方向に駆動する。コンプライアント部材206はスプリングの機能を果たし、ビーム206および216にわたる電圧が除去されると、ロードビーム206がシャッター202をその初期位置に戻すように押して、ロードビーム206に保持された応力を解放するようにする。
【0035】
シャッターアセンブリ200(弾性シャッターアセンブリとも称する)は、電圧が除去された後にシャッターをその静止または弛緩位置に戻すために、受動的な復元力、例えばスプリングを含む。いくつもの弾性復元メカニズムおよび種々の静電結合を静電アクチュエータにまたはそれと併用して設計することができ、シャッターアセンブリ200に示すコンプライアントビームは一例にすぎない。他の例は米国特許出願第11/251,035号明細書および同第11/326,696号明細書(本願明細書に援用する)に記載されている。例えば、動作の「開放」状態と「閉鎖」状態との間の突然遷移に有利に働き、かつ多くの場合にシャッターアセンブリに双安定のまたはヒステリシス動作特性をもたらす高度な非線形電圧−変位応答を提供できる。他の静電アクチュエータを、アナロググレースケール動作に好ましいとし得るように、より増分的な電圧−変位応答を行いかつ大幅にヒステリシスを低減させて設計できる。
【0036】
弾性シャッターアセンブリ内のアクチュエータ205は、閉鎖または作動位置と弛緩位置との間で動作すると言われる。しかしながら、設計者は、アクチュエータ205がその弛緩位置にあるときはいつでも、シャッターアセンブリ200が「開放」、すなわち光を通過させる状態、または「閉鎖」、すなわち光を遮断する状態のいずれかにあるようにアパーチャ211を配置するように選択できる。例示を目的として、以下、本願明細書で記載される弾性シャッターアセンブリがそれらの弛緩位置において開放しているように設計されていると仮定する。
【0037】
多くの場合では、シャッターアセンブリの一部として「開放」および「閉鎖」アクチュエータの二重のセットを提供し、そのため制御電子回路が、開放状態および閉鎖状態のいずれかにシャッターを静電的に駆動可能であることが好ましい。
【0038】
代替的な実施形態では、ディスプレイ装置100は、横方向シャッターベースの光変調器、例えば上述のシャッターアセンブリ200以外の光変調器を含む。例えば、図2Bは、本発明の例示的な実施形態による、図1AのMEMSベースのディスプレイ装置100の代替的な実施形態への組み込みに好適なローリングアクチュエータシャッターベースの光変調器220の断面図である。さらに米国特許第5,233,459号明細書、「Electric Display Device」、および米国特許第5,784,189号明細書、「Spatial Light Modulator」(これらの全体を本願明細書に援用する)で説明されているように、ローリングアクチュエータベースの光変調器は、固定電極に対向して配置されかつ電界印加時にシャッターを生成するために好ましい方向に移動させるためにバイアスされた可動電極を含む。一実施形態では、光変調器220は、基板228と絶縁層224との間に配置されたプレーナ電極226、および絶縁層224に取り付けられた固定端部230を有する可動電極222を含む。電圧が全く印加されていない場合、可動電極222の可動端部232は固定端部230の方へ自由に転がり、巻かれた状態となる。電極222と226との間に電圧が印加されることによって、可動電極222が広がって絶縁層224に対して平らになり、それにより、基板228を通して伝わる光を遮断するシャッターの機能を果たす。可動電極222は、電圧が除去された後に弾性復元力によって、巻かれた状態に戻る。巻かれた状態の方へのバイアスは、不均一な初期応力または歪み状態を含むように可動電極222を製造することによって達成し得る。
【0039】
図2Cは、例示的な非シャッターベースのMEMS光変調器250の断面図である。本発明の例示的な実施形態による図1AのMEMSベースのディスプレイ装置100の代替的な実施形態への組み込みには、ライトタップ(light tap)変調器250が好適である。さらに米国特許第5,771,321号明細書「Micromechanical Optical Switch and Flat Panel Display」(その全体を本願明細書に援用する)で説明しているように、ライトタップは、減衰内部全反射の原理に従って動く。すなわち、光252が光ガイド254に伝播し、そこでは、干渉なく、光252の大部分が内部全反射のために光ガイド254からその前面または後面を通して出射することができない。ライトタップ250は、十分高い屈折率を有するタップ要素256を含み、光ガイド254と接触しているタップ要素256に応答して、タップ要素256に隣接する光ガイド254の表面に入射する光252が、光ガイド254からタップ要素256を通ってビューワーの方に出射し、それにより画像を形成する。
【0040】
一実施形態では、タップ要素256は、可撓性のある透明材料のビーム258の一部として形成される。電極260は、ビーム258の片面の一部分を被覆している。対向する電極260を光ガイド254に配置する。電極260全体に電圧を印加することによって、光ガイド254に対するタップ要素256の位置を制御して、光ガイド254から選択的に光252を抽出できる。
【0041】
ローラベースの光変調器220およびライトタップ250は、本発明の種々の実施形態に含めるのに好適なMEMS光変調器の唯一の例ではない。他のMEMS光変調器も存在でき、かつ本発明に有用に組み込むことができることを理解されたい。
【0042】
米国特許出願第11/251,035号明細書および同第11/326,696号明細書では、シャッターのアレイを、制御行列を介して制御し、適切なグレースケールで画像、多くの場合は動画を生成できる様々な方法が説明されている。一部の場合には、制御は、ディスプレイの周辺でドライバ回路に接続された行相互接続部および列相互接続部のパッシブマトリックスアレイによって達成される。他の場合には、アレイ(いわゆるアクティブマトリックス)の各画素内にスイッチングおよび/またはデータ記憶素子を含み、ディスプレイの速度、グレースケールおよび/または電力消費性能のいずれかを改善することが適切である。
【0043】
図3Aは、本発明の例示的な実施形態による、図1AのMEMSベースのディスプレイ装置100に組み込まれる、光変調器の制御に好適な制御行列300の概略図である。図3Bは、本発明の例示的な実施形態による、図3Aの制御行列300に接続された、シャッターベースの光変調器のアレイ320の斜視図である。制御行列300は、画素のアレイ320(「アレイ320」)に対処し得る。各画素301は、アクチュエータ303によって制御される弾性シャッターアセンブリ302、例えば図2Aのシャッターアセンブリ200を含む。
【0044】
各画素はまた、アパーチャ324を含むアパーチャ層322を含む。シャッターアセンブリ、例えばシャッターアセンブリ302およびその変形例のさらなる電気的および機械的な説明は、米国特許出願第11/251,035号明細書および同第11/326,696号明細書で見出される。交番制御マトリックスの説明はまた、米国特許出願第11/607,715号明細書で見出される。
【0045】
制御行列300は、シャッターアセンブリ302が形成される基板304の表面上に、拡散または薄膜堆積された電気回路として作製される。制御行列300は、制御行列300の画素301の各行に走査線相互接続部306、および制御行列300の画素301の各列にデータ相互接続部308を含む。各走査線相互接続部306は、画素301の対応する行において書き込み許可電圧源307を画素301に電気的に接続する。各データ相互接続部308は、画素301の対応する列においてデータ電圧源(「Vd源」)309を画素301に電気的に接続する。制御行列300では、データ電圧Vdは、シャッターアセンブリ302の作動に必要なエネルギーの大部分を提供する。それゆえ、データ電圧源309はまた作動電圧源としての機能を果たす。
【0046】
図3Aおよび図3Bを参照すると、画素320のアレイの各画素301または各シャッターアセンブリ302のために、制御行列300は、トランジスタ310およびコンデンサ312を含む。各トランジスタ310のゲートは、画素301があるアレイ320において行の走査線相互接続部306に電気的に接続されている。各トランジスタ310の電源は、その対応するデータ相互接続部308に電気的に接続されている。各シャッターアセンブリ302のアクチュエータ303は2つの電極を含む。各トランジスタ310のドレーンは、対応するコンデンサ312の1つの電極と並列に、および対応するアクチュエータ303の電極の一方と電気的に接続されている。シャッターアセンブリ302におけるコンデンサ312の他方の電極およびアクチュエータ303の他方の電極は、共通または接地電位点に接続されている。代替的な実装例では、トランジスタ310を、半導体ダイオードおよび/または金属−絶縁体−金属のサンドイッチ型のスイッチング素子に置き換えることができる。
【0047】
動作中、画像を形成するために、制御行列300は、Vweを各走査線相互接続部306に印加することによって、連続するアレイ320の各行を書き込み許可する。書き込み許可された行の場合、行において画素301のトランジスタ310のゲートにVweを印加することによって、トランジスタ310によりデータ相互接続部308に電流を流すことができ、シャッターアセンブリ302のアクチュエータ303に電位を印加する。行は書き込み許可される一方、データ相互接続部308にデータ電圧Vdが選択的に印加される。アナロググレースケールをもたらす実装例では、各データ相互接続部308にかけられたデータ電圧は、書き込み許可された走査線相互接続部306とデータ相互接続部308との交差点に配置された画素301の所望の明るさとの関連で変更される。デジタル制御スキームを提供する実装例では、データ電圧は、比較的低い大きさの電圧(すなわち、大地に近い電圧)、またはVat(作動閾値電圧)に適合するかまたはそれを超える電圧のいずれかとなるように選択される。Vatをデータ相互接続部308に印加することに応答して、対応するシャッターアセンブリ302におけるアクチュエータ303は、そのシャッターアセンブリ302にあるシャッターの開口部を作動させる。データ相互接続部308にかけられた電圧は、制御行列300が行へVweを印加することやめた後でも画素301のコンデンサ312に蓄えられたままである。それゆえ、シャッターアセンブリ302を作動させるのに十分な時間、行上の電圧Vweを待機および保持する必要はない;そのような作動は、書き込み許可電圧が行から除去された後に開始できる。コンデンサ312はまた、アレイ320内で記憶素子の機能を果たし、画像フレームの照明に必要な期間作動指示を記憶する。
【0048】
アレイ320の画素301ならびに制御行列300は、基板304上に形成される。アレイは、基板304上に配置されたアパーチャ層322を含み、アパーチャ層は、アレイ320の各画素301に1組のアパーチャ324を含む。アパーチャ324は各画素でシャッターアセンブリ302と整列される。一実装例では、基板304は透明材料、例えばガラスやプラスチックで製造されている。別の実装例では、基板304は不透明材料で製造されているが、そこに孔がエッチングされてアパーチャ324を形成している。反射型または半透過型動作のさらに別の実装例では、領域324が、周囲の基板よりも反射率が高いまたは低いエリアを示すことができ、シャッターアセンブリの動きが、変調面の前側にある光源からの光の反射成分を変調させる働きをする。
【0049】
シャッターアセンブリ302の構成要素を同じ基板上で制御行列300と同時にまたはそれに続く処理ステップのいずれかで処理する。制御行列300の電気部品は、液晶ディスプレイ用の薄膜トランジスタアレイの製造と同じように、多くの薄膜技術を使用して作製される。利用可能な技術は、Den Boer,Active Matrix Liquid Crystal Displays(Elsevier,Amsterdam,2005)(本願明細書に援用する)で説明されている。シャッターアセンブリは、マイクロマシニングの分野と同様のまたはマイクロメカニカル(すなわち、MEMS)装置の製造からの技術を使用して作製される。多くの適用可能な薄膜MEMS技術は、Rai−Choudhury,ed.,Handbook of Microlithography,Micromachining & Microfabrication(SPIE Optical Engineering Press,Bellingham,Wash.1997)(本願明細書に援用する)に記載されている。ガラス基板上に形成されたMEMS光変調器に特有の作製技術は、米国特許出願第11/361,785号明細書および同第11/731,628号明細書(それらの全体を本願明細書に援用する)に記載されている。例えば、これらの特許出願に記載されているように、シャッターアセンブリ302は、化学蒸着プロセスによって堆積された非晶質シリコンの薄膜から形成できる。
【0050】
シャッターアセンブリ302はアクチュエータ303とともに、双安定に作製され得る。すなわち、シャッターは少なくとも2つの均衡位置(例えば開放または閉鎖)で存在することができる一方、それらをいずれかの位置に保持するためには、ほとんどまたは全く電力を必要としない。具体的には、シャッターアセンブリ302は機械的に双安定である。シャッターアセンブリ302のシャッターが適切な位置に設定されたら、その位置に維持するための電気的エネルギーまたは保持電圧を必要としない。シャッターアセンブリ302の物理的要素にかかる機械的応力によってシャッターを適所に保持できる。
【0051】
シャッターアセンブリ302はまたアクチュエータ303とともに電気的に双安定に作製できる。電気的に双安定のシャッターアセンブリでは、シャッターアセンブリの作動電圧未満のさまざまな範囲の電圧が存在し、その電圧が閉鎖アクチュエータにかけられる場合(シャッターは開放または閉鎖のいずれかである)、シャッターに反対向きの力が加えられてもアクチュエータを閉鎖状態に、かつシャッターを適切な位置に保持する。反対向きの力は、スプリング、例えばシャッターベースの光変調器200のスプリング207によって加えられてもよいし、または反対向きの力は、対向するアクチュエータ、例えば「開放」または「閉鎖」アクチュエータによって加えられてもよい。
【0052】
光変調器アレイ320を、画素毎に単一のMEMS光変調器を有するものとして示す。各画素に複数のMEMS光変調器が設けられ、それにより、各画素において単にバイナリの「オン」または「オフ」の光学的状態以上のものを示す可能性をもたらす他の実施形態が可能である。画素に複数のMEMS光変調器が設けられ、かつ各光変調器と関連するアパーチャ324が同じでないエリアを有する場合には、符号化エリア分割グレースケールの一定の形態が可能である。
【0053】
他の実施形態では、ローラベースの光変調器220およびライトタップ250ならびに他のMEMSベースの光変調器を、光変調器アレイ320においてシャッターアセンブリ302に代替できる。
【0054】
図4Aおよび図4Bは、本発明の種々の実施形態に含めるのに好適な代替的なシャッターベースの光変調器(シャッターアセンブリ)400を示す。光変調器400は、デュアルアクチュエータシャッターアセンブリの例であり、図4Aにおいては開放状態で示されている。図4Bは、デュアルアクチュエータシャッターアセンブリ400の閉鎖状態の図である。シャッターアセンブリ400の詳細は、上述の米国特許出願第11/251,035号明細書で説明されている。シャッターアセンブリ200とは対照的に、シャッターアセンブリ400は、シャッター406の各側にアクチュエータ402および404を含む。各アクチュエータ402および404は独立して制御される。第1のアクチュエータ、シャッター開放アクチュエータ402は、シャッター406を開放する働きをする。第2の反対側のアクチュエータ、シャッター閉鎖アクチュエータ404は、シャッター406を閉鎖する働きをする。両アクチュエータ402および404はコンプライアントビーム電極アクチュエータである。アクチュエータ402および404は、実質的にアパーチャ層407に対して平行な、上側にシャッターが浮いた状態で置かれる平面においてシャッター406を駆動することによってシャッター406を開閉する。シャッター406は、アクチュエータ402および404に取り付けられたアンカ408によって、アパーチャ層407から少し離れたところに浮かして置かれる。シャッター406の両端部に取り付けられた支持体をその移動軸に沿って含めることは、シャッター406の面外への動きを低減させ、実質的に基板に対して平行な平面に動きを限定する。図3Aの制御行列300と同様に、シャッターアセンブリ400との使用に好適な制御行列は、対向するシャッター開放アクチュエータ402およびシャッター閉鎖アクチュエータ404のそれぞれに1つのトランジスタおよび1つのコンデンサを含み得る。
【0055】
シャッター406は、光が通過できる2つのシャッターアパーチャ412を含む。アパーチャ層407は、3つ1組のアパーチャ409を含む。図4Aでは、シャッターアセンブリ400は開放状態にあり、そのようなものとして、シャッター開放アクチュエータ402は作動されており、シャッター閉鎖アクチュエータ404はその弛緩位置にあり、アパーチャ412および409の中心線は一致している。図4Bでは、シャッターアセンブリ400は閉鎖状態に動かされており、そのようなものとして、シャッター開放アクチュエータ402はその弛緩位置にあり、シャッター閉鎖アクチュエータ404は作動されており、ここでシャッター406の遮光部分は適切な位置にあって、アパーチャ409(点線で示す)を透過する光を遮断する。
【0056】
各アパーチャはその周辺に少なくとも1つの縁部を有する。例えば、矩形のアパーチャ409は4つの縁部を有する。円形、楕円形、卵形、または他の湾曲したアパーチャがアパーチャ層407に形成されている代替的な実装例では、各アパーチャは、単一の縁部を有するにすぎない。他の実装例では、アパーチャは、数学的な意味では分離または解体される必要はないが、その代わりに接続できる。すなわち、アパーチャの一部分または成形区域は、各シャッターとの対応を維持し得る一方、これらの区域のいくつかを、アパーチャの単一の連続的な周辺が複数のシャッターによって共有されるように接続し得る。
【0057】
開放状態において様々な出射角度の光がアパーチャ412および409を通過できるようにするために、シャッターアパーチャ412の幅またはサイズを、アパーチャ層407のアパーチャ409の対応する幅またはサイズよりも大きくすることが有利である。閉鎖状態において効果的に光の出射を阻止するために、シャッター406の遮光部分がアパーチャ409と重なることが好ましい。図4Bは、シャッター406の遮光部分の縁部と、アパーチャ層407に形成されたアパーチャ409の1つの縁部との間の、予め定められた重なり部分416を示す。
【0058】
静電アクチュエータ402および404は、それらの電圧変位挙動がシャッターアセンブリ400に双安定の特性をもたらすように、設計される。シャッター開放アクチュエータおよびシャッター閉鎖アクチュエータのそれぞれに作動電圧未満の範囲の電圧が存在し、その電圧はアクチュエータが閉鎖状態にあるときに(シャッターは開放または閉鎖のいずれかである)かけられる場合、対向するアクチュエータに作動電圧がかけられた後でも、アクチュエータを閉鎖状態に、およびシャッターを適切な位置に保持する。シャッターの位置を、そのような反対向きの力に対して維持するのに必要な最小電圧を、維持電圧Vmと称する。双安定の動作特性を利用するいくつもの制御マトリックスが、上述の米国特許出願第11/607,715号明細書で説明されている。
【0059】
図5は、本発明の例示的な実施形態による、シャッターベースの光変調器(シャッターアセンブリ)502を組み込んでいるディスプレイ装置500の断面図である。各シャッターアセンブリはシャッター503およびアンカ505を組み込んでいる。アンカ505とシャッター503との間で接続されるときに、シャッターを表面から少し離して浮かした状態にするのを助けるコンプライアントビームアクチュエータは図示していない。シャッターアセンブリ502を、好ましくはプラスチック、石英、またはガラス製の透明基板504上に配置する。基板504に配置された、後面に面した反射層、反射膜506が、シャッターアセンブリ502のシャッター503の閉鎖位置の下側に配置された複数の表面アパーチャ508を画成する。反射膜506は、表面アパーチャ508を通過しない光を反射させて、ディスプレイ装置500の後ろ側に戻す。反射アパーチャ層506を、スパッタリング、蒸発、イオンメッキ、レーザアブレーション、または化学蒸着を含むいくつもの蒸着技術によって薄膜式に形成されたものを含めずに、微粒子金属膜とし得る。別の実装例では、後面に面した反射層506を鏡、例えば誘電体ミラーから形成できる。誘電体ミラーは、屈折率の高い材料と低い材料とを交互にした誘電体薄膜の積層体から作製できる。シャッター503を反射膜506から分離するため、シャッターが自由に動ける垂直方向の間隙は0.5〜10ミクロンの範囲である。垂直方向の間隙の大きさは、好ましくは、図4Bに示す重なり部分416のような閉鎖状態におけるシャッター503の縁部とアパーチャ508の縁部との間の横方向の重なりよりも少ない。
【0060】
ディスプレイ装置500は、様々な考えられる向き(ここでは1つのみを示す)の任意選択の拡散器512および/または任意選択の明るさを高める膜514を含み、それらは、基板504を平面光ガイド516から分離する。光ガイドは、透明な、すなわちガラスまたはプラスチック材料で構成されている。光ガイド516を1つ以上の光源518によって照明し、バックライトを形成する。光源518を、例えば、限定はしないが、白熱ランプ、蛍光ランプ、レーザ、または発光ダイオード(LED)とし得る。反射体519がランプ518からの直接光を光ガイド516へ向けるのに役立つ。前面に面した反射膜520をバックライト516の後ろ側に配置し、光をシャッターアセンブリ502の方へ反射させる。シャッターアセンブリ502の1つを通過しない、バックライトからの光線521のような光線がバックライトに戻されて、再び膜520に反射される。このようにして、第1の通過上で画像を形成するためにディスプレイから出射できない光は再利用されて、シャッターアセンブリ502のアレイの他の開放アパーチャでの透過に利用される。そのような光の再利用は、ディスプレイの照明効率を高めるために示した。
【0061】
光ガイド516は、ランプ518からアパーチャ508の方へ、従ってディスプレイの前側へ光を向け直す1組の幾何学的な光リダイレクタまたはプリズム517を含む。光リダイレクタは、光ガイド516のプラスチック本体に、交互に三角形、台形、または湾曲の断面形状で成形できる。プリズム517の密度は一般的に、ランプ518からの距離とともに増加する。
【0062】
代替的な実施形態では、アパーチャ層506は光吸収材料で作製され、代替的な実施形態では、シャッター503の表面は光吸収材料または光反射材料のいずれかで被覆できる。代替的な実施形態では、アパーチャ層506は光ガイド516の表面上に直接堆積できる。代替的な実施形態では、アパーチャ層506をシャッター503およびアンカ505と同じ基板上に配置する必要はない(以下説明するMEMSダウン構成を参照のこと)。ディスプレイ照明システムのこれらのおよび他の実施形態の詳細は、米国特許出願第11/218,690号明細書および同第11/528,191号明細書(それらの全体を本願明細書に援用する)で説明されている。
【0063】
一実装例では、光源518は、異なる色、例えば赤色、緑色、および青色のランプを含むことができる。人の脳が、異なる色の画像を単一のマルチカラー画像へと平均化するのに十分な速度で、異なる色のランプで連続的に照明することによってカラー画像を形成できる。シャッターアセンブリ502のアレイを使用して様々な色特有の画像が形成される。別の実装例では、光源518は、4色以上を有するランプを含む。例えば、光源518は、赤色、緑色、青色および白色のランプを有しても、または赤色、緑色、青色および黄色のランプを有してもよい。
【0064】
カバープレート522はディスプレイ装置500の前面を形成する。カバープレート522の後面をブラックマトリックス524で被覆して、コントラストを高めることができる。代替的な実装例では、カバープレートは、異なるシャッターアセンブリ502に対応する色フィルタ、例えば別個の赤色、緑色および青色のフィルタを含む。カバープレート522は、シャッターアセンブリ502から予め定められた距離だけ離れて支持されて、間隙526を形成する。間隙526は、機械的な支持体またはスペーサ527によっておよび/またはカバープレート522を基板504に取り付ける接着シール528によって維持される。
【0065】
接着シール528は作動流体530を閉じ込める。作動流体530は、好ましくは約10センチポアズ未満の粘度、好ましくは約2.0超の比誘電率、および約104V/cm超の絶縁破壊強度で処理される。作動流体530はまた潤滑剤の機能も果たし得る。一実装例では、作動流体530は、表面ぬれ性が高い疎水性液体である。代替的な実装例では、作動流体530は、基板504の屈折率よりも高いまたは低い屈折率を有する。
【0066】
シーリング材528をエポキシ、アクリレート、またはシリコーン材料のような高分子接着剤から形成できる。接着シール528は好ましくは約200℃未満の硬化温度を有する必要があり、好ましくは1℃当たり約50ppm未満の熱膨張係数を有する必要があり、かつ耐湿性である必要がある。例示的なシーラント528はEpoxy Technology,Incから販売されているEPO−TEK B9021−1である。代替的な実施形態では、接着剤は、はんだ金属またはガラスフリット化合物のような、熱によりリフロー可能な材料から形成される。
【0067】
接着シール528は作動流体530を閉じ込める。作動流体530は、好ましくは約10センチポアズ未満の粘度、好ましくは約2.0超の比誘電率、および約104V/cm超絶縁破壊強度で処理される。作動流体530はまた潤滑剤の機能も果たし得る。代替的な実装例では、作動流体530は、基板504の屈折率よりも高いまたは低い屈折率を有する。一実装例では、作動流体の屈折率は2.0超である。好適な作動流体530としては、限定はしないが、脱イオン水、メタノール、エタノール、シリコーン油、ヘプタン、オクタン、フッ素化シリコーン油、ジメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、およびジエチルベンゼンが挙げられる。
【0068】
別の実装例では、作動流体530は、表面ぬれ性が高い疎水性液体である。好ましくは、そのぬれ性は、シャッターアセンブリ502の前面および後面をぬらすのに十分である。疎水性流体は、シャッターアセンブリ502の表面から水を排出させることができる。別の実装例では、作動流体530は、直径が0.2〜20ミクロンの範囲の粒子の懸濁液を含有する。そのような粒子は光を散乱させてディスプレイの視角を広くする。別の実装例では、作動流体530は、可視光の周波数の一部または全てを吸収するために溶液中に染料分子を含有して、ディスプレイのコントラストを高める。別の実装例では、流体は、エタノール、イオン流体、BHTなどの添加剤または他の添加剤を含有して、アセンブリの表面上の正電荷をわずかに伝導するかまたは他の方法でその正電荷の増大を回避する。
【0069】
シートメタルまたは成形プラスチックのアセンブリブラケット532が、カバープレート522、基板504、バックライト516および他の構成部品を一緒に縁部の周囲に保持する。アセンブリブラケット532はねじまたは刻みタブ(indent tab)で締結され、複合ディスプレイ装置500に剛性を加える。一部の実施例では、光源518はエポキシ埋込用樹脂によって適所に成形される。反射体536は、光ガイド516の縁部から出射する光を光ガイドに戻すのを助ける。図5には、シャッターアセンブリ502に制御信号およびランプ518に電力をもたらす電気相互接続部は図示しない。
【0070】
それゆえ、製造方法を含むディスプレイ装置500のさらなる詳細および代替的な構成は、米国特許出願第11/361,785号明細書および同第11/731,628号明細書、(それらの全体を本願明細書に援用する)に見出される。
【0071】
ディスプレイ装置500は、MEMSアップ構成と称する。ここで、MEMSベースの光変調器は基板504の前面、すなわちビューワーに向いている側の表面上に形成される。シャッターアセンブリ502は反射アパーチャ層506の上に直接組み立てられる。MEMSダウン構成と称する本発明の代替的な実施形態では、シャッターアセンブリは、反射アパーチャ層が形成される基板とは別の基板上に配置される。複数のアパーチャを画成する、反射アパーチャ層が形成される基板は、本願明細書ではアパーチャプレートと称する。MEMSダウン構成では、MEMSベースの光変調器を担持する基板は、ディスプレイ装置500においてカバープレート522の代わりを務め、かつ、MEMSベースの光変調器が上部の基板の後面、すなわちビューワーとは反対側の方にかつバックライト516の方に向いた表面に位置決めされるように、向けられる。それにより、MEMSベースの光変調器は、反射アパーチャ層からの間隙と直接対向してその間隙全体に位置決めされる。間隙は、アパーチャプレートとMEMS変調器が形成される基板とを接続する一連のスペーサポストによって維持できる。一部の実装例では、スペーサは、アレイの各画素内にまたは各画素間に配置される。MEMS光変調器をそれらの対向するアパーチャから分離させる間隙または距離は、好ましくは10ミクロン未満であり、またはシャッターとアパーチャとの間の重なり、重なり部分416よりも短い距離である。
【0072】
MEMSダウンディスプレイ構成のさらなる詳細および代替的な実施形態は、上述の米国特許出願第11/361,785号明細書、同第11/528,191号明細書、および同第11/731,628号明細書に見出される。
【0073】
他の実施形態では、ローラベースの光変調器220またはライトタップ250、ならびに他のMEMSベースの光変調器は、ディスプレイアセンブリ500内のシャッターアセンブリ502に代替できる。
【0074】
シャッターの製造
シャッターは、機械的、光学的および電気的性質を満たしている必要がある。機械的には、シャッター膜は、動作中の装置の負荷および応力を支持する。電気的には、材料は、静電アクチュエーションを可能とするために少なくとも最小限の導電性を有する必要がある。光学的には、シャッター膜は、遮光するのに十分不透明である必要がある。機械的、電気的および光学的な条件を満たす単一の膜を有することが可能である。しかしながら、複合積層体に複数の膜を使用すると、設計およびプロセスの自由度をより高めることができる。
【0075】
図6A〜図6Eは、図2Aに示すものと同様の、本発明の例示的な実施形態による例示的な複合シャッターセンブリ600の構成段階の断面図である。図6Aは、本発明の例示的な実施形態による複合シャッターセンブリ600の断面図の詳細を示す。シャッターアセンブリ600は、シャッター601、コンプライアントビーム602、および基板603およびアパーチャ層606上に組み立てられたアンカ構造604を含む。複合シャッターセンブリの要素は、第1の機械的層605、導体層607、第2の機械的層609、および封入誘電体(encapsulating dielectric)611を含む。機械的層605または609の少なくとも一方は0.05ミクロン超の厚みで堆積され、機械的層の一方または双方は、シャッターアセンブリに対する主に耐荷重性および機械的作動部材を含む。機械的層605および609の候補材料としては、限定はしないが、Al、Cu、Ni、Cr、Mo、Ti、Ta、Nb、Ndのような金属もしくはそれらの合金;Al2O3、SiO2、Ta2O5、もしくはSixNyなどの誘電材料;またはダイアモンドライクカーボン(diamond−like carbon)、Si、Ge、GaAs、CdTeのような半導体材料もしくはそれらの合金が挙げられる。層の少なくとも1つ、例えば導体層607は、作動要素に電荷を帯びたりそれをなくしたりするために導電性である必要がある。候補材料としては、特に半導体がリン、ヒ素、ホウ素、またはアルミニウムなどの不純物でドープされているときには、限定はしないが、Al、Cu、Ni、Cr、Mo、Ti、Ta、Nb、Nd、もしくはそれらの合金、またはダイアモンドライクカーボン、Si、Ge、GaAs、CdTeのような半導体材料もしくはそれらの合金が挙げられる。図6Aは、機械的層605および609が同様の厚みでありおよび機械的性質が導体層607の両側に堆積されている複合材の3層のサンドイッチ構成を示す。一部の実施形態では、サンドイッチ構造は、堆積後にも残る応力および/または温度変化によって加えられる応力がシャッターアセンブリ600の屈曲または反りの原因とならないように保証する助けとなる。一部の応用では、2層のサンドイッチまたは1層のシャッターアセンブリは、必要とされる性能特性を十分に満たし得る。
【0076】
一部の実装例では、サンドイッチの外側を導電層で構成する一方、サンドイッチの内側を機械的層で構成するなど、複合シャッターセンブリ600での層の順序は逆にすることができる。
【0077】
シャッター601で使用する材料のさらなる説明は、入射光の吸収または反射に選択された材料の組み込みを含め、2006年2月23日出願の米国特許出願第11/361,785号明細書、「Display Apparatus and Methods For Manufacture Thereof」(その全体を本願明細書に援用する)に見出される。
【0078】
シャッターアセンブリ600は、シャッターアセンブリを包み込むかまたは部分的に被覆することができる誘電体層611を含む。接触表面のみを被覆するようにシャッターの底面、上面、および側面全ておよびビームが均一に被覆されるかまたは塗布されるように、誘電体コーティングをコンフォーマルに塗布することができる。そのような薄膜は、熱酸化によって、および/またはAl2O3、Cr2O3、TiO2、HfO2、V2O5、Nb2O5、Ta2O5、SiO2、またはSi3N4のような絶縁体のコンフォーマル化学蒸着によって、または原子層堆積による同様の材料の堆積によって成長できる。誘電体コーティング層を、10nm〜1ミクロンの範囲の厚さで塗布できる。完全にコンフォーマルな誘電体コーティングが常に必要であるとは限らない。場合によっては、スパッタリングおよび蒸発を使用して、装置の下側を被覆することなく、誘電体コーティングを側壁に堆積させる。
【0079】
図6B〜図6Eは、本発明の例示的な実施形態による、シャッターアセンブリ600を構築する例示的なプロセスを示す。多くの実装例では、シャッターアセンブリは、既存の制御行列、例えば薄膜トランジスタのアクティブマトリックスアレイの上部に組み立てられる。アパーチャ層606の上部にまたはそれとともに制御行列を構成するのに使用されるプロセスは、上記で参照されかつ援用される米国特許出願第11/361,785号明細書に記載されている。
【0080】
図6Bは、本発明の例示的な実施形態による、シャッターアセンブリ600を形成するプロセスの第1のステップの断面図である。図6Bに示すように、犠牲層613を堆積しかつパターン化する。犠牲材料としては、ノボラック樹脂、または反応で過剰なフェノールによって作製された熱可塑性フェノール−ホルムアルデヒド樹脂のいずれかが好ましい。他の候補となる犠牲材料としては、ポリイミド、ポリアミド、フルオロポリマー、ベンゾシクロブテン、ポリフェニルキノキシレン(polyphenylquinoxylene)、パリレン、またはポリノルボルネンなどのポリマー材料が挙げられる。これらの材料は、それらが粗面を平坦化できること、250℃を超える処理温度で機械的完全性を維持できること、およびそれらをエッチングしやすいことおよび/または除去中に熱分解できることのために選択される。代替的な犠牲層は、フォトレジスト:ポリ酢酸ビニル、ポリビニルエチレン(polyvinyl ethylene)、ポリイミドおよびフェノール樹脂またはノボラック樹脂から見つけることができるが、それらの使用は、一般に350℃未満の温度に限定される。代替的な犠牲層はSiO2であり、その除去に使用されるフッ化水素酸溶液に他の電子層または構造層が耐性を示す限り、優先的に除去できる(例えば、Si3N4はそのような耐性を有する)。別の代替的な犠牲層はシリコンであり、その除去に使用されるフッ素プラズマまたはXeF2に他の電子層および構造層が耐性を示す限り、優先的に除去できる(例えば、ほとんどの金属および/またはSi3N4はそのような耐性を有する)。さらに別の代替的な犠牲層はアルミニウムであり、他の電子層または構造層が濃縮NaOHのような強塩基溶液に耐性を示す限り、優先的に除去できる(例えば、Cr、Ni、Mo、Ta、およびSiはそのような耐性を有する)。さらに別の代替的な犠牲層は銅であり、他の電子層または構造層が硝酸溶液または硫酸溶液に耐性を示す限り、優先的に除去できる(例えば、Cr、Ni、およびSiはそのような耐性を有する)。
【0081】
次いで、犠牲層613をパターン化してアンカ領域604において孔またはビアを露出させる。好ましいノボラック樹脂材料および他のポリマー樹脂は、光活性剤を含めるように配合できる−UVフォトマスクによって露出された領域を、現像液中で優先的に除去できるようにする。他の犠牲層613を、フォトレジストの追加的な層に犠牲層を被覆し、フォトレジストをフォトパターニングし、最後にフォトレジストをエッチングマスクとして使用することによってパターン化できる。他の犠牲層を、SiO2またはクロムのような金属の薄層とし得るハードマスクで犠牲層を被覆することによってパターン化できる。次いで、フォトパターンをフォトレジストおよび湿式化学エッチングによってハードマスクに移す。ハードマスクに現像されたパターンはドライケミカル、異方性、またはプラズマエッチング(犠牲層に非常に深くて狭いアンカ用孔を形成するために使用され得る技術)に対して非常に耐性を有することができる。
【0082】
アンカ604またはビア領域が犠牲層にあけられた後、露出された下部の導電性表面614を、化学的にまたはプラズマのスパッタリング効果のいずれかによりエッチングでき、表面酸化物層を全て除去する。そのような接触エッチングステップにより、下部の導体とシャッター材料との間のオーミックコンタクトを改善できる。
【0083】
犠牲層をパターニングした後、いずれのフォトレジスト層またはハードマスクも、溶剤清浄または酸エッチングのいずれかを使用することによって除去できる。
【0084】
次に、図6Cに示すように、シャッターアセンブリ600を構築するプロセスでは、シャッター材料を堆積させる。シャッターアセンブリ600は複数の薄膜605、607、および609で構成されている。好ましい実施形態では、第1の機械的層605は、PECVDまたは他の低温法によってまず堆積される非晶質シリコン層であり、それに続いてアルミニウムで構成される導体層607、その後に非晶質シリコンの第2の層609が続いて堆積される。シャッター材料605、607、および609に使用される堆積温度は、犠牲層に物理的劣化が発生する温度よりも低い。例えば、ノバラック(novalac)樹脂は、300℃超の温度で分解することが公知である。シャッター材料605、607および609を、300℃未満の温度で堆積させるので、ノバラック樹脂を犠牲材料として使用することができる。水素化非晶質シリコンは、層605および609に有用な機械的材料である。なぜなら、150〜350℃の範囲の温度においてシランガスからのプラズマ支援化学蒸着(PECVD)によって、比較的応力のない状態において0.05〜3ミクロンの範囲の厚みまで成長できるためである。ホスフェン(Phosphene)ガス(PH3)をドーパントとして使用するので、非晶質シリコンは10メグオーム−cm未満の抵抗率で成長できる。代替的な実施形態では、同様のPECVD技術を、機械的層605としてSi3N4、シリコンに富んだSi3N4、またはSiO2材料の堆積にまたは機械的層605のためのダイアモンドライクカーボン、Ge、SiGe、CdTe、または他の半導体材料の堆積に使用する。PECVD堆積技術の利点は、堆積がかなりコンフォーマルであること、すなわち、さまざまな傾斜面または狭いビア孔の内面を被覆できることである。犠牲材料に切り込みを入れるアンカまたはビア孔が、ほぼ垂直な側壁に存在する場合にも、PECVD技術は、アンカの水平な底面と水平な上面との間に連続的なコーティングをもたらすことができる。
【0085】
PECVD技術に加えて、シャッター層605または609の成長に利用可能な代替的な技術としては、RFまたはDCスパッタリング、金属−有機化学蒸着、蒸発、電気メッキまたは無電界メッキが挙げられる。
【0086】
導電層607のために、Alのような金属薄膜が好ましいが、代わりのもの、例えばCu、Ni、Mo、Ta、Ti、W Cr、または上述の合金も選択できる。そのような導電性材料を含有することは、2つの目的に役立つ。シャッター材料の全体的なシート抵抗を低減し、かつ可視光がシャッター材料を通過することを遮断するのを助ける(非晶質シリコンは、2ミクロン未満の厚みまで成長されると、可視光をある程度透過させ得る)。導電性材料を、スパッタリングまたは、よりコンフォーマルな方法では、化学蒸着技術、電気メッキ、または無電界メッキのいずれかによって堆積できる。
【0087】
シャッターアセンブリ600を構築するプロセスは図6Dに続く。シャッター層605、607、および609はフォトマスクされてエッチングされるが、犠牲層613は依然としてウエハ上にある。まず、フォトレジスト材料を塗布してから、フォトマスクによって露出させ、次いで、エッチングマスクを形成するように現像する。その後、フッ素ベースのプラズマ化学反応において非晶質シリコン、窒化ケイ素、および酸化ケイ素をエッチングする。SiO2機械的層を、HF湿式化学を使用してエッチングできる;および導体層にあるいずれの金属も、湿式化学または塩素ベースのプラズマ化学反応のいずれかを使用してエッチングできる。
【0088】
図6Dにおいてフォトマスクによって付与されるパターン形状は、機械的性質、例えば剛性、コンプライアンス、およびシャッターアセンブリ600のアクチュエータおよびシャッターにおける電圧応答に影響を及ぼす。シャッターアセンブリ600は、コンプライアントビーム602(断面で示す)を含む。コンプライアントビーム602の形状は、幅がシャッター材料の全高または厚みよりも小さいようにされている。ビーム寸法比を少なくとも>1:1に維持し、ビーム602は、面外方向においてそれらの幅よりも高くまたは厚く、所望の移動方向が、望まれない方向よりも柔軟性に富むことが好ましい。
【0089】
シャッターアセンブリ600を構築するプロセスは、図6Eに示すように続く。犠牲層613は除去され、それにより、アンカ点の個所を除いて基板603から全ての可動部分を解放する。ノバラック犠牲材料は、好ましくは酸素プラズマにおいて除去される。犠牲層613に使用される他のポリマー材料もまた、酸素プラズマにおいて除去できるか、または場合によっては熱分解によって除去できる。(SiO2のような)一部の犠牲層613を、湿式化学エッチングまたは気相エッチングによって除去できる。
【0090】
最終プロセスでは(図6Eには示さないが図6Aに示す)、誘電体コーティング611を、シャッターの露出面の一部の上に堆積させる。誘電体コーティング611をコンフォーマルに塗布し、シャッター601の全ての底面、上面、および側面およびビーム602が、化学蒸着を使用して均一にまたは不均一に被覆されるようにする。必要なコンフォーマルさおよび膜の厚さは、以下の適用によって決定される;駆動ビーム上の誘電体膜は、作動表面が動作中に接触するときに作動電圧から離すのに十分な厚さを必要とするのみである。Al2O3およびSiNxは、層611に好ましい誘電体コーティングであり、それらはそれぞれ、原子層堆積またはPECVDによって10〜100ナノメートルの範囲の厚みに堆積される。
【0091】
最後に、シャッター601の表面の一部およびビーム602に耐静摩擦コーティングを塗布できる。これらのコーティングによって、例えばアクチュエータの2つの独立するビーム間の不要な粘性または粘着性を回避できる。利用可能なコーティングとしては、炭素膜(グラファイトおよびダイアモンドライク)ならびにフルオロポリマー、および/または低蒸気圧潤滑剤が挙げられる。これらのコーティングは、分子蒸気への曝露、または化学蒸着による前駆体化合物の分解のいずれかによって塗布できる。耐静摩擦コーティングはまた、絶縁表面のフッ素添加、シラン化、シロキサン化、または水素化におけるような、シャッター表面の化学的変質によって形成できる。
【0092】
側壁ビームプロセス
米国特許出願第11/251,035号明細書には、シャッターアセンブリおよびアクチュエータのいくつもの有用な設計が説明されている。MEMSベースのシャッターディスプレイに使用する好適なアクチュエータの1種類は、ディスプレイ基板に対して直角またはその面内にあるシャッターの動作制御用のコンプライアントアクチュエータビームを含む。そのようなシャッターアセンブリの作動に必要な電圧は、アクチュエータビームがよりコンプライアントになるにつれ、低下する。作動動作の制御もまた、面内動作が好ましいかまたは面外動作に対して促進されるようにビームの形状がされる場合に、改善される。好ましい設計では、コンプライアントアクチュエータビームの断面は、図6Aのビーム602のように矩形であり、ビームがそれらの幅よりも高くまたは厚くなるようにしている。
【0093】
特定の平面内での曲げに関する長い矩形ビームの剛性は、第3の力に対し、そのビームの、その平面における最も細い寸法で決まる。それゆえ、面内動作の作動電圧を低減させるためにコンプライアントビームの幅を可能な限り低減させることが興味深い。しかしながら、シャッターおよびアクチュエータ構造を画成しかつ製造するために従来のフォトリソグラフィ装置を用いる場合、ビームの最小幅は通常光学素子の解像度に限定される。フォトリソグラフィ装置はフォトレジストに、15ナノメートルという細かさでパターンを画成するために開発されたが、そのような装置は高価であり、パターニングを1回の露光で成し遂げることができるエリアは限定されている。大型ガラスパネル上での経済的なフォトリソグラフィために、パターニング解像度または特徴の最小サイズは一般に1ミクロンまたは2ミクロンまたはそれ以上に限定される。
【0094】
図7A〜図7Dは、本発明の例示的な実施形態による、細い側壁ビームを有する例示的なシャッターアセンブリ700の構成段階の等角図である。特に、図7A〜図7Dは、コンプライアントアクチュエータビーム718および720を備えるシャッターアセンブリ700を、大型基板パネル上での従来のリソグラフィの制限値を遙かに下回る寸法で作製できる技術を示す。図7A〜図7Bの技術は、上述の米国特許出願第11/361,785号明細書においてさらに説明されている。図7A〜図7Dのプロセスでは、シャッターアセンブリ700のコンプライアントビームは、犠牲材料から作製された金型上の側壁の特徴として形成される。プロセスを側壁ビームプロセスと称する。
【0095】
図7Aに示すように、側壁ビームを備えるシャッターアセンブリ700を形成するプロセスは、第1の犠牲材料701をアパーチャ層725および基板726の上に堆積させてパターニングすることから始める。第1の犠牲材料において画成されたパターンは開口部またはビア702を形成し、その中にシャッター用のアンカが最終的に形成される。第1の犠牲材料701の堆積およびパターニングは、図6A〜図6Eに関して説明した堆積およびパターニングと概念が類似しており、同様の材料を使用する。シャッターアセンブリを制御回路および金属相互接続部の上に形成することも可能であり、そのような実施形態では、ビア702を基板表面または電気回路の素子に形成して、ビア702を通して回路と電気接触するシャッターアセンブリ700の一部分の電位を制御する。
【0096】
側壁ビームを形成するプロセスは、第2の犠牲材料705の堆積およびパターニングを続ける。図7Bに、第2の犠牲材料705のパターニング後に形成される金型703の形状を示す。金型703はまた、予め画成されたビア702を有する第1の犠牲材料701を含む。図7Bの金型703は、2つの別個の水平レベルを含む:金型703の底部水平レベル708は、第1の犠牲層701の上面によって確立され、第2の犠牲層705がエッチングによって取り除かれたエリアからアクセスできる。金型703の上部水平レベル710は、第2の犠牲層705の上面によって確立される。図7Bに示す金型703はまた、実質的に垂直な側壁709も含む。
【0097】
犠牲材料701および705として使用する材料は、犠牲材料613に関して上記で説明したものである。
【0098】
側壁ビームを形成するプロセスは、図7Cに示すように、犠牲金型703の露出面の全て上にシャッター材料の堆積およびパターニングを続ける。シャッター712に使用する好ましい材料は、シャッター材料605、607、および609に関して上記で説明したものである。代替的なシャッター材料および/またはシャッターコーティングは、上述の米国特許出願第11/361,785号明細書において説明されている。シャッター材料は、約2ミクロン未満の厚さで堆積される。一部の実装例では、シャッター材料は、約1.5ミクロン未満の厚さを有するように堆積される。他の実装例では、シャッター材料は、約1.0ミクロン未満、および約0.10ミクロン程度の厚さを有するように堆積される。堆積後、図7Cに示すように、シャッター材料(上述の複合シャッターとし得る)をパターン化する。フォトレジストに現像されたパターンは、シャッター材料がシャッター712の領域にならびにアンカ714および715に留まるように、設計される。
【0099】
当該技術分野において異方性エッチングとして公知の図7Cに示すステップで使用されるエッチングプロセスに、特定の装置および化学的性質がまた選択される。シャッター材料の異方性エッチングは、基板726、または基板726近傍の電極に電圧バイアスがかけられながらプラズマ雰囲気において実施される。バイアス基板726(基板726の表面に対して垂直な電界)は、基板726に対してほぼ垂直な角度において基板726の方へイオンを加速させる。そのように加速されたイオンはエッチング化学物質と一緒に、基板726に対して平行な方向と比較して、基板726の平面に対して直角な方向において遙かに高速であるエッチング速度をもたらす。それにより、フォトレジストによって保護された領域のシャッター材料のアンダーカット−エッチングが、実質的に排除される。加速されたイオンの軌跡に対して実質的に平行である金型703の側壁面709に沿って、シャッター材料はまた、異方性エッチングから実質的に保護される。そのように保護された側壁のシャッター材料は、後に、シャッター712を支持するためのコンプライアントビーム716、718、および720を形成する。側壁ビーム716、718、および720を形成するために使用される異方性エッチングは、一般にICまたはLCD製造において使用されるRFまたはDCプラズマエッチング装置のいずれかにおいて達成できる。上部水平面710または底部水平面708などの金型の他の(非フォトレジスト保護の)水平面に沿って、シャッター材料はエッチングによって完全に除去される。
【0100】
側壁ビームを形成するプロセスは、第2の犠牲層705および第1の犠牲層701の残りを除去することによって完了し、その結果を図7Dに示す。犠牲材料を除去するプロセスは、図6Eに関して説明したものと同様である。金型703の側壁709上に堆積された材料は、コンプライアントビーム716、718、および720として残る。コンプライアントロードビーム716はアンカ714をシャッター712に機械的に接続する。アンカ714はアパーチャ層725に接続する。コンプライアントビーム716、718、および720は背が高くて細い。金型703の表面から形成される側壁ビーム716、718、および720の幅は、堆積されるシャッター材料の厚さと同様である。場合によっては、716におけるビーム幅は712における水平のシャッター材料と同じ厚さとなる;他の場合には、ビーム幅は、シャッター材料の厚さの約1/2のみとなる。側壁ビーム716、718、および720の高さは、第2の犠牲材料705の厚さによって、換言すると、図7Bに関して説明したパターニングステップ中に形成された金型703の深さによって決定される。堆積されたシャッター材料の厚さを2ミクロン未満に選択する限り(多くの応用では厚さの範囲は0.1〜2.0ミクロンが好適である)、図7A〜図7Dに示す方法は、非常に細いビームの生成に好適である。従来のフォトリソグラフィは、図7A、図7B、および図7Cに示すパターン化された特徴を遥かに大きい寸法に制限し、例えば2ミクロンまたは5ミクロン以上の最小の解像された特徴を可能とする。
【0101】
図7Dに、アスペクト比の高い断面のコンプライアントビームを生じる、上述のプロセスの解放ステップ後に形成されたシャッターアセンブリ700の等角図を示す。第2の犠牲層の厚さが、例えば、シャッター材料の厚さの4倍超である限り、得られるビーム高さ対ビーム幅の比は同様の比となる、すなわち比は4超となる。
【0102】
上述していないが図7Cに至るプロセスの一部として含まれる任意選択のステップは、コンプライアントロードビーム720をコンプライアント駆動ビーム718から分離するまたは切り離すために側壁ビーム材料の等方性エッチングを伴う。例えば、ポイント724におけるシャッター材料は、等方性エッチングを使用することによって側壁から除去されている。等方性エッチングは、エッチング速度が全方向において同じであるため、ポイント724のような領域内の側壁材料はもはや保護されない。等方性エッチングは、バイアス電圧が基板にかけられない限り、典型的なプラズマエッチング装置において行われることができる。等方性エッチングはまた、湿式化学技術または気相エッチング技術を使用して達成できる。この任意選択の第4のマスキングおよびエッチングステップの前に、側壁ビーム材料は、金型703の凹部特徴の周囲に実質的に連続的に存在した。第4のマスクおよびエッチングステップを使用して、側壁材料を分離させて分割し、異なるビーム718および720を形成する。ポイント724におけるビームの分離は、フォトレジストの分配およびマスクを通した露出の第4のプロセスによって達成される。この場合、フォトレジストパターンを、分離ポイント724を除いた全ポイントにおいて側壁ビーム材料を等方性エッチングに対して保護するように、設計する。
【0103】
側壁プロセスの最終ステップとして、図6Aの誘電体611のような封入誘電体を、側壁ビームの外表面の周囲に、または、最低でも、動作中に接触するビームの表面に堆積させる。
【0104】
金型703の側壁709に堆積されたシャッター材料を保護し、かつ実質的に均一な断面の側壁ビーム716を形成するために、一部の特定のプロセスのガイドラインが以下に続く。例えば、図7Bでは、側壁709は可能な限り垂直に作製される。側壁709および/または露出面における傾斜は、異方性エッチングの影響を受けやすくなる。垂直な側壁709は、図7Bにおけるパターニングステップ、第2の犠牲材料705のパターニングも異方性式に行われると作製できる。追加的なフォトレジストコーティングまたはハードマスクを第2の犠牲層705のパターニングと併用することによって(図12に関する説明を参照のこと)、フォトレジストが過度に摩耗する恐れなく、第2の犠牲材料705の異方性エッチングにおいて攻撃的なプラズマおよび/または高い基板バイアスを用いることが可能となる。垂直な側壁709はまた、UV露光中に焦点の深さの制御に注意を払い、かつレジストの最終硬化中に縮みすぎを回避する限り、光画像形成犠牲材料において生成できる。
【0105】
側壁ビームプロセス中に助けとなる別のプロセスの説明は、シャッター材料堆積のコンフォーマルさを考慮する。金型703の表面は、垂直や水平の表面の向きに関わらず、好ましくは同様の厚さのシャッター材料で被覆される。そのようなコンフォーマルさは、化学蒸着技術(CVD)によって堆積すると達成できる。特に、以下のコンフォーマル技術を用いることができる:プラズマ促進化学蒸着(PECVD)、低圧化学蒸着(LPCVD)、および原子または自己限定層堆積(ALD)。上述のCVD技術では、薄膜の成長速度を、ソース原子の方向性フラックスに対して表面を露光させるのと対向する表面の反応速度によって限定できる。そのようなコンフォーマル堆積技術では、垂直面に成長する材料の厚さは、水平面に成長する材料の厚さの好ましくは少なくとも50%である。あるいは、シャッター材料は、メッキ前に全表面を被覆する金属シード層が設けられる限り、無電界メッキまたは電気メッキによって溶液からコンフォーマルに堆積できる。
【0106】
3−マスクプロセス
図7Dのシャッターアセンブリ700に至るプロセスは、4−マスクプロセスであった:つまり、プロセスは、フォトマスクを通して所望のパターンを照明することによって感光性ポリマーが露光される、4つの異なるフォトリソグラフィステップを包含した。マスキングステップとしても公知のフォトリソグラフィステップは、MEMS装置の製造において最も高価であり、マスキングステップ数を削減した製造プロセスを生じることが望ましい。
【0107】
3−マスクシャッターアセンブリプロセスを可能とするために、シャッターアセンブリの構造の変形を考慮することが有益である。有用は構造変化を、それぞれ図9、図11、図14および図15の4つの代替的なシャッターアセンブリ900、1100、1400および1500で示す。
【0108】
図7では、シャッターアセンブリ700のロードビーム720は、一方の端部においてシャッター712に取り付けられ、他方の端部においてロードビームアンカ714に取り付けられる。駆動ビーム718は、一方の端部において駆動ビームアンカ715に取り付けられ、他方の端部は取り付けられていないかまたは自由に動くことができる。図7Cのシャッターアセンブリ700に至るプロセスにおける第4のマスクの目的は、駆動ビーム718の自由に動く端部を終端とするかまたはそれを形成することであると言える。駆動ビーム718にこの自由に動く端部を形成することは、このビームのコンプライアント形状が、シャッターの作動に必要な電圧を低減させる働きをするため、有益である。
【0109】
しかしながら、本発明の種々の実施形態では、コンプライアント駆動ビームは、フォトリソグラフィックに終端する自由に動く端部を有する必要はない。図8に示すシャッターアセンブリ852では、例えば、駆動ビーム856および857が、ループ形状にパターン化される。
【0110】
図8は、本発明の例示的な実施形態による、ループ状駆動ビームを組み込む例示的なシャッターアセンブリ852の平面図である。シャッターアセンブリ852は、デュアルコンプライアントアクチュエータアセンブリ854を含み、それは、図4Aおよび図4Bを参照して上述したシャッターアセンブリ400用に設計されたアクチュエータ404に機能的に類似している。アクチュエータアセンブリ854は、コンプライアント駆動ビーム856および857をコンプライアントロードビーム858および859とともに含む。ロードビーム858および859は、一方の端部においてシャッター860を支持し、他方の端部においてロードビームアンカ862および863にそれぞれ取り付けられている。駆動ビーム856および857は各々ループ形状にされ、駆動ビームの各端部は共通のアンカ864に取り付けられている。各ループ用に外向きのビームの区域があり、それは、同じビームの戻り区域に対して実質的に平行である。これら2つのループの区域の長さは実質的に等しい。側壁ビームプロセスにおいて形成される場合、ループ状駆動ビーム856または857の外向きの区域を変形させる傾向のある応力は、ビームの戻り区域に沿った応力に同等またはそれと対抗する応力である。
【0111】
ループ856および857を構成するコンプライアントビームは、シャッターアセンブリ700に関して上述した初めの3つのマスクステップのみを使用して完全に画成できる。駆動ビームがロードビームから分離される第4のフォトリソグラフィステップは、ループ状ビーム856および857の製造には必要ではない。ループは、空間の境界周辺を完全に包み込むかまたはそれを形成する。取り囲まれた空間の周りの境界に予想されるように、ループには終端がないため、第4のフォトリソグラフィステップは必要ではない。
【0112】
第4のマスクを完全に排除するために、構造の他のコンプライアントビームもまたループと同様の形状を包含するように作製される方法が求められる。特に、側壁ビームの終端は、ビームが空間を完全に取り囲む境界を形成するのと同じ長さである必要はない。例えば、シャッターアセンブリ852におけるロードビーム858は、ロードビームアンカ862で終端する。そのため、この実施形態では、アンカ862においてビーム858を終端させるために第4のマスキングステップが必要である。それゆえ、ロードビーム858が、取り囲まれた空間の周りの連続的な境界の一部となる設計が求められる。
【0113】
図9は、本発明の例示的な実施形態による、3−マスクプロセスによって構築された例示的なシャッターアセンブリ900の等角図である。シャッターアセンブリ900を3回のフォトリソグラフィステップのみで製造できる。それらの3−マスキングステップは、アンカ画成ステップ、金型画成ステップ、およびシャッター画成ステップと称し、それぞれ第1の犠牲層、第2の犠牲層、およびシャッター材料にパターンを発現させるために使用される。シャッターアセンブリ700に関して上述したように、コンプライアントビームは、金型の側壁に形成され、第2の犠牲層とも称する。シャッターアセンブリ900は3−マスクプロセス内で製造できる。なぜなら、ビームは、金型の特徴周辺を取り囲む、閉じた境界として設計されるためである。
【0114】
シャッターアセンブリ900は、シャッター902、補強リブ903、ロードビーム904、ロードビームアンカ906、駆動ビーム908、および駆動ビームアンカ910を含む。シャッターアセンブリはさらに、周辺ビーム912および周辺アンカ914を含む。ロードビーム904および駆動ビーム908はともに、1組のコンプライアントアクチュエータビームを形成する。これら2つのビーム904と908との間に電圧がかけられる場合、シャッター902は開放または閉鎖位置の方へ動かされる。
【0115】
駆動ビーム908は各々ループ形状にされ、アンカ910において基板に取り付けられている。駆動ビーム908はループ内の空間を取り囲む。
【0116】
ロードビーム904はシャッター902からロードビームアンカ906まで延在している。周辺ビーム912はロードビームアンカ906から周辺アンカ914まで延在している。周辺ビームはまた、周辺アンカ914をつなぐ。周辺ビーム912は、シャッターアセンブリ900内でアクティブな機械的機能も光学的機能も担わない。周辺ビーム912は、ロードビーム904の幾何学的形状を広げる働きをするので、これらのコンプライアントビーム904および912を接続できる。同時に、ロードビーム904および周辺ビーム912は、空間を完全に取り囲む境界を形成する。
【0117】
図10は、本発明の例示的な実施形態による、図9のシャッターアセンブリ900の製造を可能にするように設計された例示的な金型1000の等角図である。金型1000は、第2の犠牲材料から形成され、かつシャッターアセンブリ900の作製における第2のフォトリソグラフィステップの一部としてパターン化される。図10は、シャッター材料が堆積される前の犠牲金型の概要を示す。それゆえ、シャッター902の概要は図10に図示しない。しかしながら、金型1000は、シャッターアセンブリ900の補強リブ903を成形するために使用されるリブ用窪み1003を含む。
【0118】
金型の形状は一般的に3種類の表面から構成される。金型は、上にコンプライアントビームが形成される側壁、上面および底面を含む。金型の下部面は、第1の犠牲材料と第2の犠牲材料との間の境界面によって形成された水平面である。金型の上部面は、基板から最も離れた平面にある水平面である。
【0119】
金型は一般的に2種類の形状を画成し、その双方とも、コンプライアントビームを上に形成できる側壁によって取り囲まれるかまたは境界される。本願明細書で使用する場合「メサ」は、金型側壁によって取り囲まれた金型材料の存在によって画成される空間である。本願明細書で使用する場合「凹部」は、金型側壁によって取り囲まれる、金型材料のない空間と定義される。
【0120】
金型1000はメサ形状1008を含む。メサ1008を取り囲む側壁を使用して駆動ビーム908を形成する。それにより、駆動ビーム908は、終端のないループ形状を有する。
【0121】
金型1000はまた凹部形状1004を含む。この凹部1004を取り囲む側壁を使用してロードビーム904を形成する。
【0122】
金型1000はまたロードビームアンカ用孔1006を含む。アンカ用孔1006は、第1の犠牲層の一部として前のステップで形成された。金型はまた駆動ビームアンカ用孔1010を含む。
【0123】
それゆえ、シャッターアセンブリ900のロードビーム904および駆動ビーム908の双方とも、空間を完全に取り囲む境界として形成される。空間は、金型1000のメサ形状または凹部形状のいずれか一方から形成される。特に、ロードビーム904および駆動ビーム908は、空間1004および1008をそれぞれ取り囲む境界として形成される。ロードビーム904および駆動ビーム908を形成する形状の境界は交差しない。駆動ビーム908用のループは、ロードビーム904を形成するループ内に完全に取り囲まれる(ビーム904と912の組み合わせである)。
【0124】
図11は、本発明の例示的な実施形態による、3−マスクプロセスに従って構築された例示的なシャッターアセンブリ1100の等角図である。シャッターアセンブリ1100を、それぞれ図7および図9のシャッターアセンブリ700および900に関して説明したものと同様に、3回のフォトリソグラフィステップのみを使用して製造できる。シャッターアセンブリ700に関して上述したように、コンプライアントビームは、第2の犠牲層とも称する金型の側壁に形成される。シャッターアセンブリ1100は3−マスクプロセス内に作製できる。なぜなら、ビームは、金型の特徴の周辺を取り囲む、閉じた境界として設計されるためである。
【0125】
シャッターアセンブリ1100はシャッター1102、ロードビーム1104、ロードビームアンカ1106、駆動ビーム1108、および駆動ビームアンカ1110を含む。ロードビーム1104および駆動ビーム1108はともに、1組のコンプライアントアクチュエータビームを形成する。シャッターアセンブリはさらに、1組の周辺ビーム1112を含む。
【0126】
駆動ビーム1108をループ形状にし、アンカ1110において基板に取り付ける。駆動ビーム1108はループ内の空間を取り囲む。
【0127】
ロードビーム1104はシャッターからロードビームアンカ1106まで延在する。周辺ビーム1112はロードビームアンカ1106間に延在する。周辺ビーム1112は、シャッターアセンブリ1100内でアクティブな機械的機能も光学的機能も担わない。周辺ビーム1112は、ロードビーム1104の幾何学的形状を広げる働きをするため、これらのコンプライアントビーム1104および1112は接触できるようになる。同時に、ロードビーム1104および周辺ビーム1112は、空間を完全に取り囲む境界を形成する。
【0128】
図12は、本発明の例示的な実施形態による、図11のシャッターアセンブリ1100の製造を可能にするように設計された例示的な金型1200の等角図である。金型1200は、第2の犠牲材料から形成されて、シャッターアセンブリ1100の製造における第2のフォトリソグラフィステップの一部としてパターン化される。図12は、シャッター材料が堆積される前の犠牲金型の概要を示す。それゆえ、シャッター1102の概要は図10に図示しない。しかしながら、金型1200は、シャッターアセンブリ1100に示す補強リブ1103を成形するために使用されるリブ用窪み1203を含む。
【0129】
金型1200は凹部1208を含む。凹部形状1208は、金型1000において駆動ビームに用いられたメサ形状1008の逆である。凹部1208を取り囲む側壁を使用して、駆動ビーム1108を形成する。それにより、駆動ビーム1108は、終端のないループ形状を有する。
【0130】
金型1200はまた凹部1204を含む。この凹部の側壁を使用してロードビーム1104を形成する。
【0131】
金型1200はまたロードビームアンカ用孔1206を含む。アンカ用孔は、第1の犠牲層の一部として前のステップで形成された。金型1200はまた駆動ビームアンカ用孔1210を含む。
【0132】
この特定の実施形態では、ロードビーム1104を形成するために使用されたロードビーム用凹部1204は、リブ1103を形成するために使用された凹部1203と接続されるかまたは統合される。
【0133】
ロードビーム1104および駆動ビーム1108を形成する形状の境界は交差しない。駆動ビーム1108のためのループは、ロードビーム1104を形成する形状の外側にある形状を取り囲む(ビーム1104と1112との組み合わせである)。
【0134】
3−マスクプロセスのために、2つの異なるタイプの取り囲まれたエリアを画成する必要がある:ロードビーム904および駆動ビーム908。これらの取り囲まれた境界は、金型ポリマー(メサ)の隔離されたエリアを画成できるか、またはレジストが除去されるエリア(凹部)を画成できるかのいずれかである。選択に依存して、凹部側またはメサ側のいずれかに駆動ビームおよびロードビームを作製する。図14に、孔の側にロードビーム1404および駆動ビーム1408が形成される実施形態1400を示す。図15に、ロードビーム1504および駆動ビーム1508がメサ側に形成される実施形態1500を示す。いずれの実施形態も効果的であるが、ポリマーおよびfab装置の選択は、メサよりも凹部をまたは凹部よりもメサをパターン化するのを容易にし得る。同様に、ディスプレイのアクティブエリアの外側のエリアは、レジストが存在しているかまたはレジストが除去されているかのいずれかとし得る。多くの場合、ディスプレイのアクティブエリアと視界エリアが同一平面にある基板上に第3のマスキングステップを行うのが容易であり、その場合、シャッターアセンブリの周辺に第3の閉じた境界を必要とし得る。この第3の閉じた境界の2つの考えられる実施形態を図14および図15に要素1412および1512としてそれぞれ示す。ある種のポリマーは、加工時の応力が高いかまたは収縮もしくは膨張が大きく、大きな連続的なシートがディスプレイの周辺エリアに残される場合に問題を引き起こす。この場合、金型マスクを使用して周辺エリアにおいてダミーの特徴をパターン化し、レジストの連続的なエリアを壊しかつ膜応力を下げることができる。図16は、応力緩和特徴1616の1つの考えられる実施形態1600を示す。
【0135】
取り囲まれた金型の境界を画成するときにさらに考慮することは、金型レジストが除去されたエリア(凹部の底部)において、シャッターを金型ポリマー(メサ)の上部に作製する必要があるかどうかである。図14および図15は、凹部の底部に作製されたシャッター1402および1502を示す;シャッター902および1102がメサの上部に作製された図9および図11と比較されたい。ここでも、どちらの選択肢も容認できるが、最終的な装置の仕様では一方の実施形態が他方よりも好ましいとし得る。
【0136】
図13は、本発明の例示的な実施形態による、3−マスクプロセスに従って構築された、2つの接続された例示的なシャッターアセンブリ1300の等角図である。シャッターアセンブリ1300は、それぞれ図7および図9のシャッターアセンブリ700および900に関して説明したのと同様に3回のフォトリソグラフィステップのみで製造できる。シャッターアセンブリ700に関して上述したように、コンプライアントビームが、第2の犠牲層とも称する金型の側壁に形成される。シャッターアセンブリ1300を3−マスクプロセス以内に作製できる。なぜなら、ビームは、金型の特徴の周辺を取り囲む、閉じた境界として設計されるためである。
【0137】
シャッターアセンブリ1300は、シャッター1302、ロードビーム1304、ロードビームアンカ1306、駆動ビーム1308、および駆動ビームアンカ1310を含む。ロードビーム1304および駆動ビーム1308はともに1組のコンプライアントアクチュエータビームを形成する。シャッターアセンブリはさらに1組の周辺ビーム1312を含む。
【0138】
駆動ビーム1308はそれぞれループ形状にされ、アンカ1310において基板に取り付けられる。駆動ビーム1308はループ内の空間を取り囲む。
【0139】
ロードビーム1304はシャッター1302からロードビームアンカ1306まで延在する。周辺ビームはロードビームアンカ1306間を延在する。周辺ビーム1312は、シャッターアセンブリ1300内でアクティブな機械的機能も光学的機能も担わない。周辺ビーム1312は、ロードビーム1304の幾何学的形状を広げる働きをするので、これらのコンプライアントビームを接続できるようになる。同時に、ロードビーム1304および周辺ビーム1312は、空間を完全に取り囲む境界を形成する。
【0140】
シャッターアセンブリ1300では、多くの場合、周辺ビーム1312を使用して、2つの異なるまたは隣接するシャッターアセンブリに対応するロードビームアンカ1306間を接続する。ロードビーム1304は周辺ビーム1312とともに、空間を取り囲む連続的な境界を形成する。ビーム1304および1312によって取り囲まれる空間は、2つのシャッターアセンブリを含む。代替的な実施形態では、多数のシャッターアセンブリ(>100)を、単一の連続的なコンプライアントビームによって取り囲むことができる。コンプライアントビームを複数のポイントで、好ましくは少なくとも1つの取付ポイントまたはグループ内のシャッターアセンブリの各々に対応するアンカによって基板に取り付ける。対応するシャッターアセンブリの各々のためのロードビーム1304は、複数のシャッターアセンブリを取り囲む同じループから形成できる。
【0141】
本発明は、趣旨またはその本質的な特徴から逸脱せずに他の特定の形態で供することもできる。それゆえ、上述の実施形態は、本発明を限定するものではなく、あらゆる面で例示的である考慮される。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年10月27日出願の米国仮特許出願第61/108,783号、「MEMS Anchors」(参照することによりその全体を本願明細書に援用する)の利益を主張する。本出願はまた、200810月28日出願の米国仮特許出願第61/109,045号、「Manufacturing Structure and Process for Compliant Mechanisms」(参照することによりその全体を本願明細書に援用する)の利益を主張する。
【0002】
概して、本発明は微小電子機械システムの分野に関し;特に、本発明は機械的な光変調器用の作動構造に関する。
【背景技術】
【0003】
機械的な光変調器で構成されたディスプレイは、液晶技術に基づくディスプレイの代替物として魅力的である。機械的な光変調器は、映像内容を良好な視角かつ広範な色およびグレースケールで十分に迅速に表示させる。機械的な光変調器は投射型ディスプレイ応用で成功しており、最近では直視型応用にも提案されている。当該技術分野では、迅速で明るく低出力の機械的作動ディスプレイが必要とされている。特に、高速かつ低電圧で駆動され得る、機械的作動ディスプレイの画質が改善されかつ電力消費が削減されていることが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、一態様では、本発明は、空間の境界を完全に取り囲む第1の細いビームを含むMEMS装置に関する。一部の実施形態では、第1の細いビームはループを形成する。一態様では、MEMS装置は、第1の細いビームによって基板の上側に支持された機械的な光変調器を含む。一態様では、MEMS装置は機械的な光変調器を含み、そこでは、機械的な光変調器を動かすように第1の細いビームがアクチュエータの一部分を形成して、光を変調させる。特定の実施形態では、第1の細いビームはコンプライアントビームである。一態様では、MEMS装置は、第1の細いビームを基板に接続するアンカを含む。一部の実施形態では、MEMS装置は第2の細いビームを含み、第1および第2の細いビームはそれぞれ、交わらない空間を取り囲む。特定の実施形態では、第2の細いビームは、第1の細いビームによって完全に取り囲まれる空間を取り囲む。
【0005】
別の態様では、本発明は、基板に結合された第1の細いビームを形成し、第1の細いビームが空間の境界を完全に取り囲むようにするステップを含むMEMS装置の製造方法に関する。特定の実施形態では、第1の細いビームを形成するステップは、金型材料を犠牲層の上に堆積させるステップ、ある形状を金型材料にエッチングして、少なくとも1つの側壁および少なくとも1つの下部水平面を含む金型を形成するステップ、エッチング形成された金型上に材料を堆積させて、堆積された材料が、エッチング形成された金型の少なくとも側壁および下部水平面に付着するようにするステップ、堆積された材料の一部分をエッチングして、堆積された材料を下部水平面から除去する一方、側壁上に無傷のまま堆積された材料の実質的に全てを残すステップ、および側壁に残る材料が第1の細いビームを形成するように金型を除去するステップを含む。一態様では、側壁は、金型に形成されたメサ型の壁を含み、および第1の細いビームはメサを取り囲む。
【0006】
別の態様では、側壁は、金型に形成された凹型の壁を含み、および第1の細いビームは凹部を取り囲む。一部の実施形態では、金型材料は犠牲材料の層の上に堆積され、および方法がさらに、第1の細いビームを解放するために犠牲材料を除去するステップを含む。
【0007】
一態様では、金型はさらに上部水平面を含み、金型上に堆積された材料が上部水平面に付着し、方法はさらに、堆積された材料をエッチングで除去する前に上部水平面にマスクを塗布して、エッチング後に、上部水平面上に堆積された材料の一部分が上部水平面上に残るようにして、機械的な光変調器を形成するステップを含む。一部の実施形態では、形状を金型にエッチングする前に、金型材料にアンカ用孔をエッチングするステップであって、金型上に堆積された材料がアンカ用孔を埋めてアンカを形成するステップを含む。一態様では、アンカ、第1の細いビーム、および機械的な光変調器の形成に利用する必要があるのは、3つ以下のフォトリソグラフィックマスクである。特定の実施形態では、MEMS装置は、機械的な光変調器およびアンカを含み、第1の細いビームが、基板上に機械的な光変調器を支持し、かつアンカを介して機械的な光を基板に接続し、その方法では3つ以下のフォトリソグラフィックマスクを利用する。
【0008】
上記の説明は、添付の図面を参照する以下の本発明の詳細な説明から容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】本発明の例示的な実施形態によるディスプレイ装置の等角図である。
【図1B】本発明の例示的な実施形態による図1Aのディスプレイ装置のブロック図である。
【図2A】本発明の例示的な実施形態による、図1AのMEMSベースのディスプレイへの組み込みに好適な例示的なシャッターベースの光変調器の斜視図である。
【図2B】本発明の例示的な実施形態による、図1AのMEMSベースのディスプレイへの組み込みに好適なローラーシェードベースの光変調器の断面図である。
【図2C】本発明の例示的な実施形態による、図1AのMEMSベースのディスプレイの代替的な実施形態への組み込みに好適なライトタップベースの光変調器の断面図である。
【図3A】本発明の例示的な実施形態による、図1AのMEMSベースのディスプレイへ組み込まれた光変調器の制御に好適な制御行列の概略図である。
【図3B】本発明の例示的な実施形態による、図3Aの制御行列に接続されたシャッターベースの光変調器のアレイの斜視図である。
【図4A】本発明の例示的な実施形態による、開放状態にあるデュアル作動式シャッターアセンブリの平面図である。
【図4B】本発明の例示的な実施形態による、閉鎖状態にあるデュアル作動式シャッターアセンブリの平面図である。
【図5】本発明の例示的な実施形態によるディスプレイ装置の断面図である。
【図6A】本発明の例示的な実施形態による、図2Aに示すものと類似の複合シャッターセンブリの構成段階の断面図である。
【図6B】本発明の例示的な実施形態による、図2Aに示すものと類似の複合シャッターセンブリの構成段階の断面図である。
【図6C】本発明の例示的な実施形態による、図2Aに示すものと類似の複合シャッターセンブリの構成段階の断面図である。
【図6D】本発明の例示的な実施形態による、図2Aに示すものと類似の複合シャッターセンブリの構成段階の断面図である。
【図6E】本発明の例示的な実施形態による、図2Aに示すものと類似の複合シャッターセンブリの構成段階の断面図である。
【図7A】本発明の例示的な実施形態による、細い側壁ビームを有する代替的なシャッターアセンブリの構成段階の等角図である。
【図7B】本発明の例示的な実施形態による、細い側壁ビームを有する代替的なシャッターアセンブリの構成段階の等角図である。
【図7C】本発明の例示的な実施形態による、細い側壁ビームを有する代替的なシャッターアセンブリの構成段階の等角図である。
【図7D】本発明の例示的な実施形態による、細い側壁ビームを有する代替的なシャッターアセンブリの構成段階の等角図である。
【図8】本発明の例示的な実施形態による、ループ状駆動ビームを組み込むシャッターアセンブリの平面図である。
【図9】本発明の例示的な実施形態による、3−マスクプロセスに従って構築されたシャッターアセンブリの等角図である。
【図10】本発明の例示的な実施形態による、図9のシャッターアセンブリに至る作製プロセスにおける中間ポイントにおいて金型にパターン化された2次元の犠牲材料の等角図である。
【図11】本発明の例示的な実施形態による、3−マスクプロセスに従って構築されたシャッターアセンブリの等角図である。
【図12】本発明の例示的な実施形態による、図11のシャッターアセンブリに至る作製プロセスにおける中間ポイントにおいて金型にパターン化された2次元の犠牲材料の等角図である。
【図13】本発明の例示的な実施形態による、3−マスクプロセスに従って構築された、2つの接続されたシャッターアセンブリの等角図である。
【図14】本発明の例示的な実施形態による、3−マスクプロセスに従って構築された、シャッターアセンブリの等角図である。
【図15】本発明の例示的な実施形態による、3−マスクプロセスに従って構築された、シャッターアセンブリの等角図である。
【図16】本発明の例示的な実施形態による、3−マスクプロセスに従って構築された、シャッターアセンブリの等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を全体的に理解してもらうために、以下、画像を表示するための装置および方法を含め、いくつかの例示的な実施形態を説明する。しかしながら、当業者には、本願明細書で説明するシステムおよび方法を、取り組む応用に適切なように適合および修正し得ること、および本願明細書で説明するシステムおよび方法を他の好適な応用に用いることができ、そのような他の追加例および修正例はこの範囲から逸脱しないことを理解されたい。
【0011】
図1Aは、本発明の例示的な実施形態による直視型MEMSベースのディスプレイ装置100の概略図である。ディスプレイ装置100は、行と列に配置された複数の光変調器102a〜102d(一般的に「光変調器102」)を含む。ディスプレイ装置100では、光変調器102aおよび102dは開放状態にあり、光が通過できるようになっている。光変調器102bおよび102cは閉鎖状態にあり、光の通過を妨害している。光変調器102a〜102dの状態を選択的に設定することによって、1つまたは複数のランプ105によって照明される場合に、ディスプレイ装置100を利用してバックライト付きディスプレイに画像104を形成できる。別の実装例では、装置100は、装置の前面からの周辺光の反射を変調させることによって画像を形成し得る。別の実装例では、装置100は、ディスプレイの前面に位置決めされた1つまたは複数のランプからの光の反射によって、すなわち前面光を使用することによって画像を形成し得る。別の実装例では、装置100は、変調アレイの後ろ側にある光源からの光の透過と、同時に、ディスプレイの前面に位置決めされた光源(1つまたは複数のランプ)からの光の反射(半透過型(transflective)動作と呼ばれる)との双方を変調することによって画像を形成し得る。閉鎖状態または開放状態の一方において、光変調器102は、例えば、限定するものではないが、遮断、反射、吸収、フィルタリング、偏光、回折、またはそうでなければ特性または光の経路を変更するものなどによって、光路において光に干渉する。
【0012】
ディスプレイ装置100では、各光変調器102は、画像104における画素106に対応する。他の実装例では、ディスプレイ装置100は、複数の光変調器を用いて画像104に画素106を形成し得る。例えば、ディスプレイ装置100は3つの色特有光変調器102を含み得る。特定の画素106に対応する色固有光変調器102の1つ以上を選択的に開放することによって、ディスプレイ装置100は画像104に色画素106を生成することができる。別の例では、ディスプレイ装置100は、画素106当たり2つ以上の光変調器102を含んで、画像104にグレースケールをもたらす。画像に関しては、「画素」は、画像の解像度によって規定される最も小さい絵素に対応する。ディスプレイ装置100の構造用部品に関しては、用語「画素」は、画像の単一の画素を形成する光を変調させるために使用される、機械と電気の複合部品を指す。
【0013】
ディスプレイ装置100は、結像光学系を必要としない直視型ディスプレイである。ユーザは、ディスプレイ装置100を直接見ることによって画像を見る。代替的な実施形態では、ディスプレイ装置100を投射型ディスプレイに組み込む。そのような実施形態では、ディスプレイは、光をスクリーン上または壁上に投射することによって画像を形成する。投射型の応用では、ディスプレイ装置100は、投射された画像104よりも実質的に小さい。
【0014】
直視型ディスプレイは透過または反射モードのいずれかで、または双方同時に(半透過型と定義される)動作し得る。透過型ディスプレイでは、光変調器は、ディスプレイの後ろに位置決めされた1つまたは複数のランプからの光をフィルタリングするかまたは選択的に遮断する。複数のランプからの光を任意に光ガイドまたは「バックライト」に入射させる。直視透過型ディスプレイの実施形態は、透明基板やガラス基板に組み込まれることが多く、光変調器を含む1つの基板がバックライトの上に直接位置決めされるサンドイッチ組立方式を容易にする。透過型ディスプレイの一部の実施形態では、色特有の光変調器は、カラーフィルタ材料と各変調器102とを関連付けることによって作製される。透過型ディスプレイの他の実施形態では、以下説明するように、原色の異なるランプを交互に照明することによるフィールド順次式カラー方法を使用して色を生成できる。
【0015】
各光変調器102はシャッター108およびアパーチャ109を含む。画像104の中の画素106を照明するために、アパーチャ109を通ってビューワーの方へ光を通過させるようにシャッター108を位置決めする。画素106に光が当たらない状態を維持するために、光がアパーチャ109を通過しないようにシャッター108を位置決めする。アパーチャ109を、反射性材料または光吸収材料によってパターン化された開口部によって画成する。
【0016】
ディスプレイ装置はまた、シャッターの動作を制御するために、基板および光変調器に接続された制御行列を含む。制御行列は、画素の行ごとに少なくとも1つの書き込み許可相互接続部110(「走査線相互接続部(scan−line interconnect)とも称する」)と、画素の各列に1つのデータ相互接続部112と、全画素にまたはディスプレイ装置100の複数の列および複数の行双方からの少なくとも複数の画素に共通の電圧を供給する1つの共通の相互接続部114とを含む一連の電気相互接続部(例えば、相互接続部110、112、および114)を含む。適切な電圧(「書き込み許可電圧、Vwe」)を印加することに応えて、画素の所与の行の書き込み許可相互接続部110が、その行の画素が新しいシャッターの移動指示を受理するように準備する。データ相互接続部112は、データ電圧パルスの形態で新しい移動指示を通信する。一部の実装例では、データ相互接続部112に適用されたデータ電圧パルスは、シャッターの静電運動に直接寄与する。他の実装例では、データ電圧パルスはスイッチ、例えば、トランジスタ、または一般にデータ電圧よりも高い別個の作動電圧の光変調器102への印加を制御する他の非線形回路素子を制御する。これらの作動電圧を印加すると、シャッター108に静電駆動による運動が生じる。
【0017】
図1Bは、ディスプレイ装置100のブロック図150である。図1Aおよび図1Bを参照すると、ブロック図150に示すような上述のディスプレイ装置100の要素に加えて、ディスプレイ装置100は、複数のスキャンドライバ152(「書き込み許可電圧源」とも称する)および複数のデータドライバ154(「データ電圧源」とも称する)を含む。スキャンドライバ152は書き込み許可電圧を走査線相互接続部110に印加する。データドライバ154はデータ電圧をデータ相互接続部112に印加する。ディスプレイ装置の一部の実施形態では、データドライバ154は、特に画像104のグレースケールがアナログ方式で生成される場合に、アナログデータ電圧を光変調器にもたらすように構成されている。アナログ動作では、光変調器102を、中間の範囲の電圧がデータ相互接続部112を通して印加されるときに、シャッター108に中間の範囲の開放状態が生じるように、それゆえ画像104に中間の範囲の照明状態またはグレースケールが生じるように設計する。
【0018】
他の場合では、データドライバ154を、2、3、または4つの少ないセットのデジタル電圧レベルのみを制御行列に与えるように構成する。これらの電圧レベルを、シャッター108の各々に対して開放状態または閉鎖状態のいずれかにデジタル方式で設定するように設計する。
【0019】
スキャンドライバ152およびデータドライバ154を、デジタル制御回路156(「制御器156」とも称する)に接続する。制御器156は入力処理モジュール158を含み、入力処理モジュール158は、入来する画像信号157を、ディスプレイ100の空間的アドレッシングおよびグレースケール能力に適切なデジタル画像フォーマットにするように、処理する。各画像の画素位置およびグレースケールデータをフレームバッファ159に記憶して、必要に応じてデータをデータドライバ154に供給できるようにしている。データを大抵は、行によっておよび画像フレームによってグループ化された予め定められたシーケンスにまとめて、シリアル式にデータドライバ154に送信する。データドライバ154は、直並列データ変換器、レベルシフティング、および一部の応用では、デジタルアナログ電圧変換器を含み得る。
【0020】
ディスプレイ装置100は、任意に一組の共通のドライバ153(共通の電圧源とも称する)を含む。一部の実施形態では、共通のドライバ153は、例えば一連の共通の相互接続部114に電圧を供給することによって光変調器103のアレイ内の全光変調器に共通のDC電位をもたらす。他の実施形態では、共通のドライバ153は、制御器156からのコマンドに従って、光変調器103のアレイに電圧パルスまたは信号、例えばアレイ103の複数の行列において全てまたは一部の光変調器の同時作動を駆動および/または開始することが可能なグローバルアクチュエーションパルス(global actuation pulse)を出す。
【0021】
異なるディスプレイ機能のための全てのドライバ(例えば、スキャンドライバ152、データドライバ154、および共通のドライバ153)の時間が、制御器156のタイミング制御モジュール160によって同期される。モジュール160からのタイミングコマンドは、ランプドライバ168を介して赤色、緑色、青色および白色のランプ(それぞれ162、164、166、および167)の照明、画素103のアレイ内の特定の行の書き込み許可および順序付け、データドライバ154からの電圧の出力、および光変調器を作動させる電圧の出力を調整する。
【0022】
制御器156は順序付けまたはアドレッシングスキームを決定し、それにより、アレイ103の各シャッター108を、新しい画像104に適切な照明レベルに再設定できる。好適なアドレッシング技術、画像形成技術、およびグレースケール技術の詳細は、米国特許出願第11/326,696号明細書および同第11/643,042号明細書(本願明細書に援用する)で見出される。新しい画像104を周期的な間隔で設定できる。例えば、ビデオディスプレイでは、カラー画像104またはビデオのフレームが、10〜300ヘルツの範囲の周波数でリフレッシュされる。一部の実施形態では、アレイ103への画像フレームの設定はランプ162、164、および166の照明と同期されて、画像フレームが交互に、一連の色、例えば赤、緑、および青などで代わる代わる照明される。各個々の色のための画像フレームをカラーサブフレームと称する。この方法では、フィールド順次式カラー方法と称するが、カラーサブフレームが20Hz超の周波数で交替される場合に、人の脳は、交互にでるフレーム画像を、広範で連続的な色を有する画像として認知するように平均化する。代替的な実装例では、赤、緑、および青以外の原色を用いて、ディスプレイ装置100に、原色を備える4つ以上のランプを用いることができる。
【0023】
一部の実装例では、ディスプレイ装置100がシャッター108の開放状態と閉鎖状態との間のデジタル切り替え用に設計されている場合、制御器156は、アドレッシングシーケンスおよび/または画像フレーム間の時間間隔を決定して、適切なグレースケールで画像104を生成する。シャッター108が特定のフレームにおいて開放している時間を制御することによって様々なレベルのグレースケールを生成するプロセスは、時分割グレースケールと称する。時分割グレースケールの一実施形態では、制御器156は、その画素で望まれる照明レベルまたはグレースケールに従ってシャッター108が開放状態のままとなるように各フレーム内の期間または何分の一かの時間を決定する。他の実装例では、各画像フレームに対して、制御器156はアレイ103の複数の行列に複数のサブフレーム画像を設定し、制御器は、グレースケール用の符号語内で用いられるグレースケール値または有意値(significance value)に比例して各サブフレーム画像が照明される持続期間を変更する。例えば、一連のサブフレーム画像の照明時間を、バイナリ符号化シリーズ1、2、4、8・・・に比例して変更できる。次いで、アレイ103の各画素用のシャッター108を、グレーレベル用の画素のバイナリ符号語内の対応する位置における値に従って、サブフレーム画像内で開放または閉鎖状態のいずれかに設定する。画素に3つ以上のレベル、例えば4つのレベル状態をもたせて、追加的な空間的に変更されたグレーレベルのための部分的な開放状態および部分的な閉鎖状態を含ませることも可能である。
【0024】
他の実装例では、制御器は、特定のサブフレーム画像に望まれるグレースケール値に比例してランプ162、164、および166からの光の強度を変更する。シャッター108のアレイから色およびグレースケールを形成するために多くのハイブリッド技術も利用可能である。例えば、上述の時分割技術は、画素毎の複数のシャッター108の使用と組み合わせることができ、または特定のサブフレーム画像用のグレースケール値は、サブフレームタイミングとランプ強度の双方の組み合わせによって確立できる。これらのおよび他の実施形態の詳細は、上述の米国特許出願第11/643,042号明細書で見出すことができる。
【0025】
一部の実装例では、画像状態104用のデータは制御器156によって、個々の行(走査線とも称する)の順次アドレッシングにより変調器アレイ103にロードされる。順次の各行または走査線のために、スキャンドライバ152は、アレイ103のその行の書き込み許可相互接続部110に書き込み許可電圧を印加し、その後、データドライバ154は、所望のシャッター状態に対応するデータ電圧を、選択した行の各列に供給する。データがアレイの全ての行にロードされるまでこのプロセスを繰り返す。一部の実装例では、データローディングに選択された行のシーケンスは線形であり、アレイの上部から底部へと続いている。他の実装例では、選択された行のシーケンスは擬似ランダム化されて、視覚的なアーティファクトを最小限にする。他の実装例では、順序付けをブロックによって系統立て、各ブロックに、例えば連続するアレイを5行毎にのみアドレッシングすることによって、画像状態104のある一部分のみ用のデータをアレイにロードする。
【0026】
一部の実装例では、画像データをアレイ103にローディングするプロセスは、シャッター108を作動させるプロセスと時間的に分離されている。これらの実装例では、変調器アレイ103は、アレイ103の各画素にデータ記憶素子を含み、かつ制御行列は、共通のドライバ153からトリガ信号を伝送するためにグローバルアクチュエーション相互接続部を含んで、記憶素子に記憶されたデータに従ってシャッター108の同時作動を開始し得る。種々のアドレッシングシーケンス(多くが米国特許出願第11/643,042号明細書に記載されている)は、タイミング制御モジュール160によって調整し得る。
【0027】
代替的な実施形態では、画素103のアレイおよび画素を制御する制御行列を、矩形の行列以外の構成に配置し得る。例えば、画素を六角形のアレイや曲線のある行列に配置できる。概して、ここで使用するように、用語「走査線」は、書き込み許可相互接続部を共有する任意の複数の画素を指す。
【0028】
ディスプレイ100は、タイミング制御モジュール160、フレームバッファ159、スキャンドライバ152、データドライバ154、ならびにドライバ153および168を含む複数の機能ブロックを含む。各ブロックは、区別可能なハードウェア回路および/または実行コードのモジュールのいずれかを指すと理解できる。一部の実装例では、機能ブロックは、回路基板および/またはケーブルによってつながれた別個のチップまたは回路として提供される。あるいは、これらの回路の多くを、ガラスまたはプラスチックの同じ基板上の画素アレイ103と共に作製できる。他の実装例では、ブロック図150からの複数の回路、ドライバ、プロセッサ、および/または制御機能を一緒に、単一のシリコンチップ内に統合してもよく、次いでそのシリコンチップは、透明基板保持画素アレイ103に直接接着される。
【0029】
制御器156はプログラミングリンク180を含み、それにより、制御器156内で実施されるアドレッシング、色、および/またはグレースケールアルゴリズムを、特定の応用への必要性に従って変更できる。一部の実施形態では、プログラミングリンク180は環境センサ、例えば周辺光センサや温度センサから情報を伝え、制御器156が、環境条件に一致して結像モードまたはバックライトパワーを調整できるようにする。制御器156はまた、ランプならびに光変調器作動に必要な電力を提供する電力供給入力182を含む。必要に応じて、ドライバ152、153、154、および/または168は、182の入力電圧を、シャッター108の作動またはランプ、例えばランプ162、164、166、および167の照明に十分な種々の電圧に変換するために、DC−DC変換器を含むかまたはそれと連携し得る。
【0030】
MEMS光変調器
図2Aは、本発明の例示的な実施形態による、図1AのMEMSベースのディスプレイ装置100への組み込みに好適な例示的なシャッターベースの光変調器200の斜視図である。シャッターベースの光変調器200(シャッターアセンブリ200とも称する)は、アクチュエータ204に結合されたシャッター202を含む。アクチュエータ204を2つの別個のコンプライアント電極ビームアクチュエータ205(「アクチュエータ205」)から形成する(2005年10月14日出願の米国特許出願第11/251,035号明細書に記載の通り)。シャッター202は片側でアクチュエータ205に結合する。アクチュエータ205は表面203上で、表面203に対して実質的に平行な運動面においてシャッター202を横方向に移動させる。シャッター202の反対側は、アクチュエータ204によって加えられる力に対抗する復元力をもたらすスプリング207に結合する。スプリング207を別のアクチュエータによって置き換えて、弾性のスプリング力ではなく作動力を使用してシャッター202を表面203上で横方向に、アクチュエータ204の方向とは反対方向に動かすことも可能である。
【0031】
各アクチュエータ205は、シャッター202をロードアンカ208に接続するコンプライアントロードビーム206を含む。ロードアンカ208はコンプライアントロードビーム206とともに、機械的な支持体としての機能を果たし、シャッター202を表面203の近傍に浮かした状態に維持する。ロードアンカ208はコンプライアントロードビーム206およびシャッター202を表面203に物理的に接続し、かつロードビーム206をバイアス電圧点に、一部の例では、地面に電気的に接続する。
【0032】
各アクチュエータ205はまた、各ロードビーム206に隣接して位置決めされたコンプライアント駆動ビーム216を含む。駆動ビーム216は一方の端部において、駆動ビーム216間で共有される駆動ビームアンカ218に結合する。各駆動ビーム216の他方の端部は自由に動く。しかしながら、駆動ビーム216の他方の端部が完全に自由に動くわけではなく、部分的に抑制されている実装例もある。各駆動ビーム216を、駆動ビーム216の自由端付近のロードビーム206およびロードビーム206の固定端に最も接近するように、湾曲できる。
【0033】
表面203は、透過型または半透過型の実施形態において光を通過させるように1つ以上のアパーチャ211を含む。シャッターアセンブリ200が、例えばシリコンで作製された不透明な基板上に形成されている場合、表面203は基板の表面であり、およびアパーチャ211は、基板に孔のアレイをエッチングすることによって形成される。シャッターアセンブリ200が、例えばガラスやプラスチックで作製された透明基板上に形成されている場合、表面203は、基板上に堆積された遮光層の表面であり、アパーチャは、表面203に孔のアレイ211をエッチングすることによって形成される。アパーチャ211は一般的に円形、楕円形、多角形、S字曲線、または形状が不規則である。反射型または一部の半透過型の実施形態では、領域211は、周囲の基板よりも反射率の高いまたは反射率の低いエリアを示す場合があり、シャッターアセンブリ200の動きによって、シャッターベースの光変調器200からの全反射光を変調させる。
【0034】
動作中、光変調器200を組み込むディスプレイ装置は、駆動ビームアンカ218を介して駆動ビーム216に電位を与える。第2の電位をロードビーム206に印加し得る。駆動ビーム216とロードビーム206との間に得られる電位差によって、駆動ビーム216の自由端をロードビーム206の固定端の方へ引張り、およびロードビーム206のシャッター端部を駆動ビーム216の固定端の方へ引張り、それにより、シャッター202を駆動アンカ218の方へ横方向に駆動する。コンプライアント部材206はスプリングの機能を果たし、ビーム206および216にわたる電圧が除去されると、ロードビーム206がシャッター202をその初期位置に戻すように押して、ロードビーム206に保持された応力を解放するようにする。
【0035】
シャッターアセンブリ200(弾性シャッターアセンブリとも称する)は、電圧が除去された後にシャッターをその静止または弛緩位置に戻すために、受動的な復元力、例えばスプリングを含む。いくつもの弾性復元メカニズムおよび種々の静電結合を静電アクチュエータにまたはそれと併用して設計することができ、シャッターアセンブリ200に示すコンプライアントビームは一例にすぎない。他の例は米国特許出願第11/251,035号明細書および同第11/326,696号明細書(本願明細書に援用する)に記載されている。例えば、動作の「開放」状態と「閉鎖」状態との間の突然遷移に有利に働き、かつ多くの場合にシャッターアセンブリに双安定のまたはヒステリシス動作特性をもたらす高度な非線形電圧−変位応答を提供できる。他の静電アクチュエータを、アナロググレースケール動作に好ましいとし得るように、より増分的な電圧−変位応答を行いかつ大幅にヒステリシスを低減させて設計できる。
【0036】
弾性シャッターアセンブリ内のアクチュエータ205は、閉鎖または作動位置と弛緩位置との間で動作すると言われる。しかしながら、設計者は、アクチュエータ205がその弛緩位置にあるときはいつでも、シャッターアセンブリ200が「開放」、すなわち光を通過させる状態、または「閉鎖」、すなわち光を遮断する状態のいずれかにあるようにアパーチャ211を配置するように選択できる。例示を目的として、以下、本願明細書で記載される弾性シャッターアセンブリがそれらの弛緩位置において開放しているように設計されていると仮定する。
【0037】
多くの場合では、シャッターアセンブリの一部として「開放」および「閉鎖」アクチュエータの二重のセットを提供し、そのため制御電子回路が、開放状態および閉鎖状態のいずれかにシャッターを静電的に駆動可能であることが好ましい。
【0038】
代替的な実施形態では、ディスプレイ装置100は、横方向シャッターベースの光変調器、例えば上述のシャッターアセンブリ200以外の光変調器を含む。例えば、図2Bは、本発明の例示的な実施形態による、図1AのMEMSベースのディスプレイ装置100の代替的な実施形態への組み込みに好適なローリングアクチュエータシャッターベースの光変調器220の断面図である。さらに米国特許第5,233,459号明細書、「Electric Display Device」、および米国特許第5,784,189号明細書、「Spatial Light Modulator」(これらの全体を本願明細書に援用する)で説明されているように、ローリングアクチュエータベースの光変調器は、固定電極に対向して配置されかつ電界印加時にシャッターを生成するために好ましい方向に移動させるためにバイアスされた可動電極を含む。一実施形態では、光変調器220は、基板228と絶縁層224との間に配置されたプレーナ電極226、および絶縁層224に取り付けられた固定端部230を有する可動電極222を含む。電圧が全く印加されていない場合、可動電極222の可動端部232は固定端部230の方へ自由に転がり、巻かれた状態となる。電極222と226との間に電圧が印加されることによって、可動電極222が広がって絶縁層224に対して平らになり、それにより、基板228を通して伝わる光を遮断するシャッターの機能を果たす。可動電極222は、電圧が除去された後に弾性復元力によって、巻かれた状態に戻る。巻かれた状態の方へのバイアスは、不均一な初期応力または歪み状態を含むように可動電極222を製造することによって達成し得る。
【0039】
図2Cは、例示的な非シャッターベースのMEMS光変調器250の断面図である。本発明の例示的な実施形態による図1AのMEMSベースのディスプレイ装置100の代替的な実施形態への組み込みには、ライトタップ(light tap)変調器250が好適である。さらに米国特許第5,771,321号明細書「Micromechanical Optical Switch and Flat Panel Display」(その全体を本願明細書に援用する)で説明しているように、ライトタップは、減衰内部全反射の原理に従って動く。すなわち、光252が光ガイド254に伝播し、そこでは、干渉なく、光252の大部分が内部全反射のために光ガイド254からその前面または後面を通して出射することができない。ライトタップ250は、十分高い屈折率を有するタップ要素256を含み、光ガイド254と接触しているタップ要素256に応答して、タップ要素256に隣接する光ガイド254の表面に入射する光252が、光ガイド254からタップ要素256を通ってビューワーの方に出射し、それにより画像を形成する。
【0040】
一実施形態では、タップ要素256は、可撓性のある透明材料のビーム258の一部として形成される。電極260は、ビーム258の片面の一部分を被覆している。対向する電極260を光ガイド254に配置する。電極260全体に電圧を印加することによって、光ガイド254に対するタップ要素256の位置を制御して、光ガイド254から選択的に光252を抽出できる。
【0041】
ローラベースの光変調器220およびライトタップ250は、本発明の種々の実施形態に含めるのに好適なMEMS光変調器の唯一の例ではない。他のMEMS光変調器も存在でき、かつ本発明に有用に組み込むことができることを理解されたい。
【0042】
米国特許出願第11/251,035号明細書および同第11/326,696号明細書では、シャッターのアレイを、制御行列を介して制御し、適切なグレースケールで画像、多くの場合は動画を生成できる様々な方法が説明されている。一部の場合には、制御は、ディスプレイの周辺でドライバ回路に接続された行相互接続部および列相互接続部のパッシブマトリックスアレイによって達成される。他の場合には、アレイ(いわゆるアクティブマトリックス)の各画素内にスイッチングおよび/またはデータ記憶素子を含み、ディスプレイの速度、グレースケールおよび/または電力消費性能のいずれかを改善することが適切である。
【0043】
図3Aは、本発明の例示的な実施形態による、図1AのMEMSベースのディスプレイ装置100に組み込まれる、光変調器の制御に好適な制御行列300の概略図である。図3Bは、本発明の例示的な実施形態による、図3Aの制御行列300に接続された、シャッターベースの光変調器のアレイ320の斜視図である。制御行列300は、画素のアレイ320(「アレイ320」)に対処し得る。各画素301は、アクチュエータ303によって制御される弾性シャッターアセンブリ302、例えば図2Aのシャッターアセンブリ200を含む。
【0044】
各画素はまた、アパーチャ324を含むアパーチャ層322を含む。シャッターアセンブリ、例えばシャッターアセンブリ302およびその変形例のさらなる電気的および機械的な説明は、米国特許出願第11/251,035号明細書および同第11/326,696号明細書で見出される。交番制御マトリックスの説明はまた、米国特許出願第11/607,715号明細書で見出される。
【0045】
制御行列300は、シャッターアセンブリ302が形成される基板304の表面上に、拡散または薄膜堆積された電気回路として作製される。制御行列300は、制御行列300の画素301の各行に走査線相互接続部306、および制御行列300の画素301の各列にデータ相互接続部308を含む。各走査線相互接続部306は、画素301の対応する行において書き込み許可電圧源307を画素301に電気的に接続する。各データ相互接続部308は、画素301の対応する列においてデータ電圧源(「Vd源」)309を画素301に電気的に接続する。制御行列300では、データ電圧Vdは、シャッターアセンブリ302の作動に必要なエネルギーの大部分を提供する。それゆえ、データ電圧源309はまた作動電圧源としての機能を果たす。
【0046】
図3Aおよび図3Bを参照すると、画素320のアレイの各画素301または各シャッターアセンブリ302のために、制御行列300は、トランジスタ310およびコンデンサ312を含む。各トランジスタ310のゲートは、画素301があるアレイ320において行の走査線相互接続部306に電気的に接続されている。各トランジスタ310の電源は、その対応するデータ相互接続部308に電気的に接続されている。各シャッターアセンブリ302のアクチュエータ303は2つの電極を含む。各トランジスタ310のドレーンは、対応するコンデンサ312の1つの電極と並列に、および対応するアクチュエータ303の電極の一方と電気的に接続されている。シャッターアセンブリ302におけるコンデンサ312の他方の電極およびアクチュエータ303の他方の電極は、共通または接地電位点に接続されている。代替的な実装例では、トランジスタ310を、半導体ダイオードおよび/または金属−絶縁体−金属のサンドイッチ型のスイッチング素子に置き換えることができる。
【0047】
動作中、画像を形成するために、制御行列300は、Vweを各走査線相互接続部306に印加することによって、連続するアレイ320の各行を書き込み許可する。書き込み許可された行の場合、行において画素301のトランジスタ310のゲートにVweを印加することによって、トランジスタ310によりデータ相互接続部308に電流を流すことができ、シャッターアセンブリ302のアクチュエータ303に電位を印加する。行は書き込み許可される一方、データ相互接続部308にデータ電圧Vdが選択的に印加される。アナロググレースケールをもたらす実装例では、各データ相互接続部308にかけられたデータ電圧は、書き込み許可された走査線相互接続部306とデータ相互接続部308との交差点に配置された画素301の所望の明るさとの関連で変更される。デジタル制御スキームを提供する実装例では、データ電圧は、比較的低い大きさの電圧(すなわち、大地に近い電圧)、またはVat(作動閾値電圧)に適合するかまたはそれを超える電圧のいずれかとなるように選択される。Vatをデータ相互接続部308に印加することに応答して、対応するシャッターアセンブリ302におけるアクチュエータ303は、そのシャッターアセンブリ302にあるシャッターの開口部を作動させる。データ相互接続部308にかけられた電圧は、制御行列300が行へVweを印加することやめた後でも画素301のコンデンサ312に蓄えられたままである。それゆえ、シャッターアセンブリ302を作動させるのに十分な時間、行上の電圧Vweを待機および保持する必要はない;そのような作動は、書き込み許可電圧が行から除去された後に開始できる。コンデンサ312はまた、アレイ320内で記憶素子の機能を果たし、画像フレームの照明に必要な期間作動指示を記憶する。
【0048】
アレイ320の画素301ならびに制御行列300は、基板304上に形成される。アレイは、基板304上に配置されたアパーチャ層322を含み、アパーチャ層は、アレイ320の各画素301に1組のアパーチャ324を含む。アパーチャ324は各画素でシャッターアセンブリ302と整列される。一実装例では、基板304は透明材料、例えばガラスやプラスチックで製造されている。別の実装例では、基板304は不透明材料で製造されているが、そこに孔がエッチングされてアパーチャ324を形成している。反射型または半透過型動作のさらに別の実装例では、領域324が、周囲の基板よりも反射率が高いまたは低いエリアを示すことができ、シャッターアセンブリの動きが、変調面の前側にある光源からの光の反射成分を変調させる働きをする。
【0049】
シャッターアセンブリ302の構成要素を同じ基板上で制御行列300と同時にまたはそれに続く処理ステップのいずれかで処理する。制御行列300の電気部品は、液晶ディスプレイ用の薄膜トランジスタアレイの製造と同じように、多くの薄膜技術を使用して作製される。利用可能な技術は、Den Boer,Active Matrix Liquid Crystal Displays(Elsevier,Amsterdam,2005)(本願明細書に援用する)で説明されている。シャッターアセンブリは、マイクロマシニングの分野と同様のまたはマイクロメカニカル(すなわち、MEMS)装置の製造からの技術を使用して作製される。多くの適用可能な薄膜MEMS技術は、Rai−Choudhury,ed.,Handbook of Microlithography,Micromachining & Microfabrication(SPIE Optical Engineering Press,Bellingham,Wash.1997)(本願明細書に援用する)に記載されている。ガラス基板上に形成されたMEMS光変調器に特有の作製技術は、米国特許出願第11/361,785号明細書および同第11/731,628号明細書(それらの全体を本願明細書に援用する)に記載されている。例えば、これらの特許出願に記載されているように、シャッターアセンブリ302は、化学蒸着プロセスによって堆積された非晶質シリコンの薄膜から形成できる。
【0050】
シャッターアセンブリ302はアクチュエータ303とともに、双安定に作製され得る。すなわち、シャッターは少なくとも2つの均衡位置(例えば開放または閉鎖)で存在することができる一方、それらをいずれかの位置に保持するためには、ほとんどまたは全く電力を必要としない。具体的には、シャッターアセンブリ302は機械的に双安定である。シャッターアセンブリ302のシャッターが適切な位置に設定されたら、その位置に維持するための電気的エネルギーまたは保持電圧を必要としない。シャッターアセンブリ302の物理的要素にかかる機械的応力によってシャッターを適所に保持できる。
【0051】
シャッターアセンブリ302はまたアクチュエータ303とともに電気的に双安定に作製できる。電気的に双安定のシャッターアセンブリでは、シャッターアセンブリの作動電圧未満のさまざまな範囲の電圧が存在し、その電圧が閉鎖アクチュエータにかけられる場合(シャッターは開放または閉鎖のいずれかである)、シャッターに反対向きの力が加えられてもアクチュエータを閉鎖状態に、かつシャッターを適切な位置に保持する。反対向きの力は、スプリング、例えばシャッターベースの光変調器200のスプリング207によって加えられてもよいし、または反対向きの力は、対向するアクチュエータ、例えば「開放」または「閉鎖」アクチュエータによって加えられてもよい。
【0052】
光変調器アレイ320を、画素毎に単一のMEMS光変調器を有するものとして示す。各画素に複数のMEMS光変調器が設けられ、それにより、各画素において単にバイナリの「オン」または「オフ」の光学的状態以上のものを示す可能性をもたらす他の実施形態が可能である。画素に複数のMEMS光変調器が設けられ、かつ各光変調器と関連するアパーチャ324が同じでないエリアを有する場合には、符号化エリア分割グレースケールの一定の形態が可能である。
【0053】
他の実施形態では、ローラベースの光変調器220およびライトタップ250ならびに他のMEMSベースの光変調器を、光変調器アレイ320においてシャッターアセンブリ302に代替できる。
【0054】
図4Aおよび図4Bは、本発明の種々の実施形態に含めるのに好適な代替的なシャッターベースの光変調器(シャッターアセンブリ)400を示す。光変調器400は、デュアルアクチュエータシャッターアセンブリの例であり、図4Aにおいては開放状態で示されている。図4Bは、デュアルアクチュエータシャッターアセンブリ400の閉鎖状態の図である。シャッターアセンブリ400の詳細は、上述の米国特許出願第11/251,035号明細書で説明されている。シャッターアセンブリ200とは対照的に、シャッターアセンブリ400は、シャッター406の各側にアクチュエータ402および404を含む。各アクチュエータ402および404は独立して制御される。第1のアクチュエータ、シャッター開放アクチュエータ402は、シャッター406を開放する働きをする。第2の反対側のアクチュエータ、シャッター閉鎖アクチュエータ404は、シャッター406を閉鎖する働きをする。両アクチュエータ402および404はコンプライアントビーム電極アクチュエータである。アクチュエータ402および404は、実質的にアパーチャ層407に対して平行な、上側にシャッターが浮いた状態で置かれる平面においてシャッター406を駆動することによってシャッター406を開閉する。シャッター406は、アクチュエータ402および404に取り付けられたアンカ408によって、アパーチャ層407から少し離れたところに浮かして置かれる。シャッター406の両端部に取り付けられた支持体をその移動軸に沿って含めることは、シャッター406の面外への動きを低減させ、実質的に基板に対して平行な平面に動きを限定する。図3Aの制御行列300と同様に、シャッターアセンブリ400との使用に好適な制御行列は、対向するシャッター開放アクチュエータ402およびシャッター閉鎖アクチュエータ404のそれぞれに1つのトランジスタおよび1つのコンデンサを含み得る。
【0055】
シャッター406は、光が通過できる2つのシャッターアパーチャ412を含む。アパーチャ層407は、3つ1組のアパーチャ409を含む。図4Aでは、シャッターアセンブリ400は開放状態にあり、そのようなものとして、シャッター開放アクチュエータ402は作動されており、シャッター閉鎖アクチュエータ404はその弛緩位置にあり、アパーチャ412および409の中心線は一致している。図4Bでは、シャッターアセンブリ400は閉鎖状態に動かされており、そのようなものとして、シャッター開放アクチュエータ402はその弛緩位置にあり、シャッター閉鎖アクチュエータ404は作動されており、ここでシャッター406の遮光部分は適切な位置にあって、アパーチャ409(点線で示す)を透過する光を遮断する。
【0056】
各アパーチャはその周辺に少なくとも1つの縁部を有する。例えば、矩形のアパーチャ409は4つの縁部を有する。円形、楕円形、卵形、または他の湾曲したアパーチャがアパーチャ層407に形成されている代替的な実装例では、各アパーチャは、単一の縁部を有するにすぎない。他の実装例では、アパーチャは、数学的な意味では分離または解体される必要はないが、その代わりに接続できる。すなわち、アパーチャの一部分または成形区域は、各シャッターとの対応を維持し得る一方、これらの区域のいくつかを、アパーチャの単一の連続的な周辺が複数のシャッターによって共有されるように接続し得る。
【0057】
開放状態において様々な出射角度の光がアパーチャ412および409を通過できるようにするために、シャッターアパーチャ412の幅またはサイズを、アパーチャ層407のアパーチャ409の対応する幅またはサイズよりも大きくすることが有利である。閉鎖状態において効果的に光の出射を阻止するために、シャッター406の遮光部分がアパーチャ409と重なることが好ましい。図4Bは、シャッター406の遮光部分の縁部と、アパーチャ層407に形成されたアパーチャ409の1つの縁部との間の、予め定められた重なり部分416を示す。
【0058】
静電アクチュエータ402および404は、それらの電圧変位挙動がシャッターアセンブリ400に双安定の特性をもたらすように、設計される。シャッター開放アクチュエータおよびシャッター閉鎖アクチュエータのそれぞれに作動電圧未満の範囲の電圧が存在し、その電圧はアクチュエータが閉鎖状態にあるときに(シャッターは開放または閉鎖のいずれかである)かけられる場合、対向するアクチュエータに作動電圧がかけられた後でも、アクチュエータを閉鎖状態に、およびシャッターを適切な位置に保持する。シャッターの位置を、そのような反対向きの力に対して維持するのに必要な最小電圧を、維持電圧Vmと称する。双安定の動作特性を利用するいくつもの制御マトリックスが、上述の米国特許出願第11/607,715号明細書で説明されている。
【0059】
図5は、本発明の例示的な実施形態による、シャッターベースの光変調器(シャッターアセンブリ)502を組み込んでいるディスプレイ装置500の断面図である。各シャッターアセンブリはシャッター503およびアンカ505を組み込んでいる。アンカ505とシャッター503との間で接続されるときに、シャッターを表面から少し離して浮かした状態にするのを助けるコンプライアントビームアクチュエータは図示していない。シャッターアセンブリ502を、好ましくはプラスチック、石英、またはガラス製の透明基板504上に配置する。基板504に配置された、後面に面した反射層、反射膜506が、シャッターアセンブリ502のシャッター503の閉鎖位置の下側に配置された複数の表面アパーチャ508を画成する。反射膜506は、表面アパーチャ508を通過しない光を反射させて、ディスプレイ装置500の後ろ側に戻す。反射アパーチャ層506を、スパッタリング、蒸発、イオンメッキ、レーザアブレーション、または化学蒸着を含むいくつもの蒸着技術によって薄膜式に形成されたものを含めずに、微粒子金属膜とし得る。別の実装例では、後面に面した反射層506を鏡、例えば誘電体ミラーから形成できる。誘電体ミラーは、屈折率の高い材料と低い材料とを交互にした誘電体薄膜の積層体から作製できる。シャッター503を反射膜506から分離するため、シャッターが自由に動ける垂直方向の間隙は0.5〜10ミクロンの範囲である。垂直方向の間隙の大きさは、好ましくは、図4Bに示す重なり部分416のような閉鎖状態におけるシャッター503の縁部とアパーチャ508の縁部との間の横方向の重なりよりも少ない。
【0060】
ディスプレイ装置500は、様々な考えられる向き(ここでは1つのみを示す)の任意選択の拡散器512および/または任意選択の明るさを高める膜514を含み、それらは、基板504を平面光ガイド516から分離する。光ガイドは、透明な、すなわちガラスまたはプラスチック材料で構成されている。光ガイド516を1つ以上の光源518によって照明し、バックライトを形成する。光源518を、例えば、限定はしないが、白熱ランプ、蛍光ランプ、レーザ、または発光ダイオード(LED)とし得る。反射体519がランプ518からの直接光を光ガイド516へ向けるのに役立つ。前面に面した反射膜520をバックライト516の後ろ側に配置し、光をシャッターアセンブリ502の方へ反射させる。シャッターアセンブリ502の1つを通過しない、バックライトからの光線521のような光線がバックライトに戻されて、再び膜520に反射される。このようにして、第1の通過上で画像を形成するためにディスプレイから出射できない光は再利用されて、シャッターアセンブリ502のアレイの他の開放アパーチャでの透過に利用される。そのような光の再利用は、ディスプレイの照明効率を高めるために示した。
【0061】
光ガイド516は、ランプ518からアパーチャ508の方へ、従ってディスプレイの前側へ光を向け直す1組の幾何学的な光リダイレクタまたはプリズム517を含む。光リダイレクタは、光ガイド516のプラスチック本体に、交互に三角形、台形、または湾曲の断面形状で成形できる。プリズム517の密度は一般的に、ランプ518からの距離とともに増加する。
【0062】
代替的な実施形態では、アパーチャ層506は光吸収材料で作製され、代替的な実施形態では、シャッター503の表面は光吸収材料または光反射材料のいずれかで被覆できる。代替的な実施形態では、アパーチャ層506は光ガイド516の表面上に直接堆積できる。代替的な実施形態では、アパーチャ層506をシャッター503およびアンカ505と同じ基板上に配置する必要はない(以下説明するMEMSダウン構成を参照のこと)。ディスプレイ照明システムのこれらのおよび他の実施形態の詳細は、米国特許出願第11/218,690号明細書および同第11/528,191号明細書(それらの全体を本願明細書に援用する)で説明されている。
【0063】
一実装例では、光源518は、異なる色、例えば赤色、緑色、および青色のランプを含むことができる。人の脳が、異なる色の画像を単一のマルチカラー画像へと平均化するのに十分な速度で、異なる色のランプで連続的に照明することによってカラー画像を形成できる。シャッターアセンブリ502のアレイを使用して様々な色特有の画像が形成される。別の実装例では、光源518は、4色以上を有するランプを含む。例えば、光源518は、赤色、緑色、青色および白色のランプを有しても、または赤色、緑色、青色および黄色のランプを有してもよい。
【0064】
カバープレート522はディスプレイ装置500の前面を形成する。カバープレート522の後面をブラックマトリックス524で被覆して、コントラストを高めることができる。代替的な実装例では、カバープレートは、異なるシャッターアセンブリ502に対応する色フィルタ、例えば別個の赤色、緑色および青色のフィルタを含む。カバープレート522は、シャッターアセンブリ502から予め定められた距離だけ離れて支持されて、間隙526を形成する。間隙526は、機械的な支持体またはスペーサ527によっておよび/またはカバープレート522を基板504に取り付ける接着シール528によって維持される。
【0065】
接着シール528は作動流体530を閉じ込める。作動流体530は、好ましくは約10センチポアズ未満の粘度、好ましくは約2.0超の比誘電率、および約104V/cm超の絶縁破壊強度で処理される。作動流体530はまた潤滑剤の機能も果たし得る。一実装例では、作動流体530は、表面ぬれ性が高い疎水性液体である。代替的な実装例では、作動流体530は、基板504の屈折率よりも高いまたは低い屈折率を有する。
【0066】
シーリング材528をエポキシ、アクリレート、またはシリコーン材料のような高分子接着剤から形成できる。接着シール528は好ましくは約200℃未満の硬化温度を有する必要があり、好ましくは1℃当たり約50ppm未満の熱膨張係数を有する必要があり、かつ耐湿性である必要がある。例示的なシーラント528はEpoxy Technology,Incから販売されているEPO−TEK B9021−1である。代替的な実施形態では、接着剤は、はんだ金属またはガラスフリット化合物のような、熱によりリフロー可能な材料から形成される。
【0067】
接着シール528は作動流体530を閉じ込める。作動流体530は、好ましくは約10センチポアズ未満の粘度、好ましくは約2.0超の比誘電率、および約104V/cm超絶縁破壊強度で処理される。作動流体530はまた潤滑剤の機能も果たし得る。代替的な実装例では、作動流体530は、基板504の屈折率よりも高いまたは低い屈折率を有する。一実装例では、作動流体の屈折率は2.0超である。好適な作動流体530としては、限定はしないが、脱イオン水、メタノール、エタノール、シリコーン油、ヘプタン、オクタン、フッ素化シリコーン油、ジメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、およびジエチルベンゼンが挙げられる。
【0068】
別の実装例では、作動流体530は、表面ぬれ性が高い疎水性液体である。好ましくは、そのぬれ性は、シャッターアセンブリ502の前面および後面をぬらすのに十分である。疎水性流体は、シャッターアセンブリ502の表面から水を排出させることができる。別の実装例では、作動流体530は、直径が0.2〜20ミクロンの範囲の粒子の懸濁液を含有する。そのような粒子は光を散乱させてディスプレイの視角を広くする。別の実装例では、作動流体530は、可視光の周波数の一部または全てを吸収するために溶液中に染料分子を含有して、ディスプレイのコントラストを高める。別の実装例では、流体は、エタノール、イオン流体、BHTなどの添加剤または他の添加剤を含有して、アセンブリの表面上の正電荷をわずかに伝導するかまたは他の方法でその正電荷の増大を回避する。
【0069】
シートメタルまたは成形プラスチックのアセンブリブラケット532が、カバープレート522、基板504、バックライト516および他の構成部品を一緒に縁部の周囲に保持する。アセンブリブラケット532はねじまたは刻みタブ(indent tab)で締結され、複合ディスプレイ装置500に剛性を加える。一部の実施例では、光源518はエポキシ埋込用樹脂によって適所に成形される。反射体536は、光ガイド516の縁部から出射する光を光ガイドに戻すのを助ける。図5には、シャッターアセンブリ502に制御信号およびランプ518に電力をもたらす電気相互接続部は図示しない。
【0070】
それゆえ、製造方法を含むディスプレイ装置500のさらなる詳細および代替的な構成は、米国特許出願第11/361,785号明細書および同第11/731,628号明細書、(それらの全体を本願明細書に援用する)に見出される。
【0071】
ディスプレイ装置500は、MEMSアップ構成と称する。ここで、MEMSベースの光変調器は基板504の前面、すなわちビューワーに向いている側の表面上に形成される。シャッターアセンブリ502は反射アパーチャ層506の上に直接組み立てられる。MEMSダウン構成と称する本発明の代替的な実施形態では、シャッターアセンブリは、反射アパーチャ層が形成される基板とは別の基板上に配置される。複数のアパーチャを画成する、反射アパーチャ層が形成される基板は、本願明細書ではアパーチャプレートと称する。MEMSダウン構成では、MEMSベースの光変調器を担持する基板は、ディスプレイ装置500においてカバープレート522の代わりを務め、かつ、MEMSベースの光変調器が上部の基板の後面、すなわちビューワーとは反対側の方にかつバックライト516の方に向いた表面に位置決めされるように、向けられる。それにより、MEMSベースの光変調器は、反射アパーチャ層からの間隙と直接対向してその間隙全体に位置決めされる。間隙は、アパーチャプレートとMEMS変調器が形成される基板とを接続する一連のスペーサポストによって維持できる。一部の実装例では、スペーサは、アレイの各画素内にまたは各画素間に配置される。MEMS光変調器をそれらの対向するアパーチャから分離させる間隙または距離は、好ましくは10ミクロン未満であり、またはシャッターとアパーチャとの間の重なり、重なり部分416よりも短い距離である。
【0072】
MEMSダウンディスプレイ構成のさらなる詳細および代替的な実施形態は、上述の米国特許出願第11/361,785号明細書、同第11/528,191号明細書、および同第11/731,628号明細書に見出される。
【0073】
他の実施形態では、ローラベースの光変調器220またはライトタップ250、ならびに他のMEMSベースの光変調器は、ディスプレイアセンブリ500内のシャッターアセンブリ502に代替できる。
【0074】
シャッターの製造
シャッターは、機械的、光学的および電気的性質を満たしている必要がある。機械的には、シャッター膜は、動作中の装置の負荷および応力を支持する。電気的には、材料は、静電アクチュエーションを可能とするために少なくとも最小限の導電性を有する必要がある。光学的には、シャッター膜は、遮光するのに十分不透明である必要がある。機械的、電気的および光学的な条件を満たす単一の膜を有することが可能である。しかしながら、複合積層体に複数の膜を使用すると、設計およびプロセスの自由度をより高めることができる。
【0075】
図6A〜図6Eは、図2Aに示すものと同様の、本発明の例示的な実施形態による例示的な複合シャッターセンブリ600の構成段階の断面図である。図6Aは、本発明の例示的な実施形態による複合シャッターセンブリ600の断面図の詳細を示す。シャッターアセンブリ600は、シャッター601、コンプライアントビーム602、および基板603およびアパーチャ層606上に組み立てられたアンカ構造604を含む。複合シャッターセンブリの要素は、第1の機械的層605、導体層607、第2の機械的層609、および封入誘電体(encapsulating dielectric)611を含む。機械的層605または609の少なくとも一方は0.05ミクロン超の厚みで堆積され、機械的層の一方または双方は、シャッターアセンブリに対する主に耐荷重性および機械的作動部材を含む。機械的層605および609の候補材料としては、限定はしないが、Al、Cu、Ni、Cr、Mo、Ti、Ta、Nb、Ndのような金属もしくはそれらの合金;Al2O3、SiO2、Ta2O5、もしくはSixNyなどの誘電材料;またはダイアモンドライクカーボン(diamond−like carbon)、Si、Ge、GaAs、CdTeのような半導体材料もしくはそれらの合金が挙げられる。層の少なくとも1つ、例えば導体層607は、作動要素に電荷を帯びたりそれをなくしたりするために導電性である必要がある。候補材料としては、特に半導体がリン、ヒ素、ホウ素、またはアルミニウムなどの不純物でドープされているときには、限定はしないが、Al、Cu、Ni、Cr、Mo、Ti、Ta、Nb、Nd、もしくはそれらの合金、またはダイアモンドライクカーボン、Si、Ge、GaAs、CdTeのような半導体材料もしくはそれらの合金が挙げられる。図6Aは、機械的層605および609が同様の厚みでありおよび機械的性質が導体層607の両側に堆積されている複合材の3層のサンドイッチ構成を示す。一部の実施形態では、サンドイッチ構造は、堆積後にも残る応力および/または温度変化によって加えられる応力がシャッターアセンブリ600の屈曲または反りの原因とならないように保証する助けとなる。一部の応用では、2層のサンドイッチまたは1層のシャッターアセンブリは、必要とされる性能特性を十分に満たし得る。
【0076】
一部の実装例では、サンドイッチの外側を導電層で構成する一方、サンドイッチの内側を機械的層で構成するなど、複合シャッターセンブリ600での層の順序は逆にすることができる。
【0077】
シャッター601で使用する材料のさらなる説明は、入射光の吸収または反射に選択された材料の組み込みを含め、2006年2月23日出願の米国特許出願第11/361,785号明細書、「Display Apparatus and Methods For Manufacture Thereof」(その全体を本願明細書に援用する)に見出される。
【0078】
シャッターアセンブリ600は、シャッターアセンブリを包み込むかまたは部分的に被覆することができる誘電体層611を含む。接触表面のみを被覆するようにシャッターの底面、上面、および側面全ておよびビームが均一に被覆されるかまたは塗布されるように、誘電体コーティングをコンフォーマルに塗布することができる。そのような薄膜は、熱酸化によって、および/またはAl2O3、Cr2O3、TiO2、HfO2、V2O5、Nb2O5、Ta2O5、SiO2、またはSi3N4のような絶縁体のコンフォーマル化学蒸着によって、または原子層堆積による同様の材料の堆積によって成長できる。誘電体コーティング層を、10nm〜1ミクロンの範囲の厚さで塗布できる。完全にコンフォーマルな誘電体コーティングが常に必要であるとは限らない。場合によっては、スパッタリングおよび蒸発を使用して、装置の下側を被覆することなく、誘電体コーティングを側壁に堆積させる。
【0079】
図6B〜図6Eは、本発明の例示的な実施形態による、シャッターアセンブリ600を構築する例示的なプロセスを示す。多くの実装例では、シャッターアセンブリは、既存の制御行列、例えば薄膜トランジスタのアクティブマトリックスアレイの上部に組み立てられる。アパーチャ層606の上部にまたはそれとともに制御行列を構成するのに使用されるプロセスは、上記で参照されかつ援用される米国特許出願第11/361,785号明細書に記載されている。
【0080】
図6Bは、本発明の例示的な実施形態による、シャッターアセンブリ600を形成するプロセスの第1のステップの断面図である。図6Bに示すように、犠牲層613を堆積しかつパターン化する。犠牲材料としては、ノボラック樹脂、または反応で過剰なフェノールによって作製された熱可塑性フェノール−ホルムアルデヒド樹脂のいずれかが好ましい。他の候補となる犠牲材料としては、ポリイミド、ポリアミド、フルオロポリマー、ベンゾシクロブテン、ポリフェニルキノキシレン(polyphenylquinoxylene)、パリレン、またはポリノルボルネンなどのポリマー材料が挙げられる。これらの材料は、それらが粗面を平坦化できること、250℃を超える処理温度で機械的完全性を維持できること、およびそれらをエッチングしやすいことおよび/または除去中に熱分解できることのために選択される。代替的な犠牲層は、フォトレジスト:ポリ酢酸ビニル、ポリビニルエチレン(polyvinyl ethylene)、ポリイミドおよびフェノール樹脂またはノボラック樹脂から見つけることができるが、それらの使用は、一般に350℃未満の温度に限定される。代替的な犠牲層はSiO2であり、その除去に使用されるフッ化水素酸溶液に他の電子層または構造層が耐性を示す限り、優先的に除去できる(例えば、Si3N4はそのような耐性を有する)。別の代替的な犠牲層はシリコンであり、その除去に使用されるフッ素プラズマまたはXeF2に他の電子層および構造層が耐性を示す限り、優先的に除去できる(例えば、ほとんどの金属および/またはSi3N4はそのような耐性を有する)。さらに別の代替的な犠牲層はアルミニウムであり、他の電子層または構造層が濃縮NaOHのような強塩基溶液に耐性を示す限り、優先的に除去できる(例えば、Cr、Ni、Mo、Ta、およびSiはそのような耐性を有する)。さらに別の代替的な犠牲層は銅であり、他の電子層または構造層が硝酸溶液または硫酸溶液に耐性を示す限り、優先的に除去できる(例えば、Cr、Ni、およびSiはそのような耐性を有する)。
【0081】
次いで、犠牲層613をパターン化してアンカ領域604において孔またはビアを露出させる。好ましいノボラック樹脂材料および他のポリマー樹脂は、光活性剤を含めるように配合できる−UVフォトマスクによって露出された領域を、現像液中で優先的に除去できるようにする。他の犠牲層613を、フォトレジストの追加的な層に犠牲層を被覆し、フォトレジストをフォトパターニングし、最後にフォトレジストをエッチングマスクとして使用することによってパターン化できる。他の犠牲層を、SiO2またはクロムのような金属の薄層とし得るハードマスクで犠牲層を被覆することによってパターン化できる。次いで、フォトパターンをフォトレジストおよび湿式化学エッチングによってハードマスクに移す。ハードマスクに現像されたパターンはドライケミカル、異方性、またはプラズマエッチング(犠牲層に非常に深くて狭いアンカ用孔を形成するために使用され得る技術)に対して非常に耐性を有することができる。
【0082】
アンカ604またはビア領域が犠牲層にあけられた後、露出された下部の導電性表面614を、化学的にまたはプラズマのスパッタリング効果のいずれかによりエッチングでき、表面酸化物層を全て除去する。そのような接触エッチングステップにより、下部の導体とシャッター材料との間のオーミックコンタクトを改善できる。
【0083】
犠牲層をパターニングした後、いずれのフォトレジスト層またはハードマスクも、溶剤清浄または酸エッチングのいずれかを使用することによって除去できる。
【0084】
次に、図6Cに示すように、シャッターアセンブリ600を構築するプロセスでは、シャッター材料を堆積させる。シャッターアセンブリ600は複数の薄膜605、607、および609で構成されている。好ましい実施形態では、第1の機械的層605は、PECVDまたは他の低温法によってまず堆積される非晶質シリコン層であり、それに続いてアルミニウムで構成される導体層607、その後に非晶質シリコンの第2の層609が続いて堆積される。シャッター材料605、607、および609に使用される堆積温度は、犠牲層に物理的劣化が発生する温度よりも低い。例えば、ノバラック(novalac)樹脂は、300℃超の温度で分解することが公知である。シャッター材料605、607および609を、300℃未満の温度で堆積させるので、ノバラック樹脂を犠牲材料として使用することができる。水素化非晶質シリコンは、層605および609に有用な機械的材料である。なぜなら、150〜350℃の範囲の温度においてシランガスからのプラズマ支援化学蒸着(PECVD)によって、比較的応力のない状態において0.05〜3ミクロンの範囲の厚みまで成長できるためである。ホスフェン(Phosphene)ガス(PH3)をドーパントとして使用するので、非晶質シリコンは10メグオーム−cm未満の抵抗率で成長できる。代替的な実施形態では、同様のPECVD技術を、機械的層605としてSi3N4、シリコンに富んだSi3N4、またはSiO2材料の堆積にまたは機械的層605のためのダイアモンドライクカーボン、Ge、SiGe、CdTe、または他の半導体材料の堆積に使用する。PECVD堆積技術の利点は、堆積がかなりコンフォーマルであること、すなわち、さまざまな傾斜面または狭いビア孔の内面を被覆できることである。犠牲材料に切り込みを入れるアンカまたはビア孔が、ほぼ垂直な側壁に存在する場合にも、PECVD技術は、アンカの水平な底面と水平な上面との間に連続的なコーティングをもたらすことができる。
【0085】
PECVD技術に加えて、シャッター層605または609の成長に利用可能な代替的な技術としては、RFまたはDCスパッタリング、金属−有機化学蒸着、蒸発、電気メッキまたは無電界メッキが挙げられる。
【0086】
導電層607のために、Alのような金属薄膜が好ましいが、代わりのもの、例えばCu、Ni、Mo、Ta、Ti、W Cr、または上述の合金も選択できる。そのような導電性材料を含有することは、2つの目的に役立つ。シャッター材料の全体的なシート抵抗を低減し、かつ可視光がシャッター材料を通過することを遮断するのを助ける(非晶質シリコンは、2ミクロン未満の厚みまで成長されると、可視光をある程度透過させ得る)。導電性材料を、スパッタリングまたは、よりコンフォーマルな方法では、化学蒸着技術、電気メッキ、または無電界メッキのいずれかによって堆積できる。
【0087】
シャッターアセンブリ600を構築するプロセスは図6Dに続く。シャッター層605、607、および609はフォトマスクされてエッチングされるが、犠牲層613は依然としてウエハ上にある。まず、フォトレジスト材料を塗布してから、フォトマスクによって露出させ、次いで、エッチングマスクを形成するように現像する。その後、フッ素ベースのプラズマ化学反応において非晶質シリコン、窒化ケイ素、および酸化ケイ素をエッチングする。SiO2機械的層を、HF湿式化学を使用してエッチングできる;および導体層にあるいずれの金属も、湿式化学または塩素ベースのプラズマ化学反応のいずれかを使用してエッチングできる。
【0088】
図6Dにおいてフォトマスクによって付与されるパターン形状は、機械的性質、例えば剛性、コンプライアンス、およびシャッターアセンブリ600のアクチュエータおよびシャッターにおける電圧応答に影響を及ぼす。シャッターアセンブリ600は、コンプライアントビーム602(断面で示す)を含む。コンプライアントビーム602の形状は、幅がシャッター材料の全高または厚みよりも小さいようにされている。ビーム寸法比を少なくとも>1:1に維持し、ビーム602は、面外方向においてそれらの幅よりも高くまたは厚く、所望の移動方向が、望まれない方向よりも柔軟性に富むことが好ましい。
【0089】
シャッターアセンブリ600を構築するプロセスは、図6Eに示すように続く。犠牲層613は除去され、それにより、アンカ点の個所を除いて基板603から全ての可動部分を解放する。ノバラック犠牲材料は、好ましくは酸素プラズマにおいて除去される。犠牲層613に使用される他のポリマー材料もまた、酸素プラズマにおいて除去できるか、または場合によっては熱分解によって除去できる。(SiO2のような)一部の犠牲層613を、湿式化学エッチングまたは気相エッチングによって除去できる。
【0090】
最終プロセスでは(図6Eには示さないが図6Aに示す)、誘電体コーティング611を、シャッターの露出面の一部の上に堆積させる。誘電体コーティング611をコンフォーマルに塗布し、シャッター601の全ての底面、上面、および側面およびビーム602が、化学蒸着を使用して均一にまたは不均一に被覆されるようにする。必要なコンフォーマルさおよび膜の厚さは、以下の適用によって決定される;駆動ビーム上の誘電体膜は、作動表面が動作中に接触するときに作動電圧から離すのに十分な厚さを必要とするのみである。Al2O3およびSiNxは、層611に好ましい誘電体コーティングであり、それらはそれぞれ、原子層堆積またはPECVDによって10〜100ナノメートルの範囲の厚みに堆積される。
【0091】
最後に、シャッター601の表面の一部およびビーム602に耐静摩擦コーティングを塗布できる。これらのコーティングによって、例えばアクチュエータの2つの独立するビーム間の不要な粘性または粘着性を回避できる。利用可能なコーティングとしては、炭素膜(グラファイトおよびダイアモンドライク)ならびにフルオロポリマー、および/または低蒸気圧潤滑剤が挙げられる。これらのコーティングは、分子蒸気への曝露、または化学蒸着による前駆体化合物の分解のいずれかによって塗布できる。耐静摩擦コーティングはまた、絶縁表面のフッ素添加、シラン化、シロキサン化、または水素化におけるような、シャッター表面の化学的変質によって形成できる。
【0092】
側壁ビームプロセス
米国特許出願第11/251,035号明細書には、シャッターアセンブリおよびアクチュエータのいくつもの有用な設計が説明されている。MEMSベースのシャッターディスプレイに使用する好適なアクチュエータの1種類は、ディスプレイ基板に対して直角またはその面内にあるシャッターの動作制御用のコンプライアントアクチュエータビームを含む。そのようなシャッターアセンブリの作動に必要な電圧は、アクチュエータビームがよりコンプライアントになるにつれ、低下する。作動動作の制御もまた、面内動作が好ましいかまたは面外動作に対して促進されるようにビームの形状がされる場合に、改善される。好ましい設計では、コンプライアントアクチュエータビームの断面は、図6Aのビーム602のように矩形であり、ビームがそれらの幅よりも高くまたは厚くなるようにしている。
【0093】
特定の平面内での曲げに関する長い矩形ビームの剛性は、第3の力に対し、そのビームの、その平面における最も細い寸法で決まる。それゆえ、面内動作の作動電圧を低減させるためにコンプライアントビームの幅を可能な限り低減させることが興味深い。しかしながら、シャッターおよびアクチュエータ構造を画成しかつ製造するために従来のフォトリソグラフィ装置を用いる場合、ビームの最小幅は通常光学素子の解像度に限定される。フォトリソグラフィ装置はフォトレジストに、15ナノメートルという細かさでパターンを画成するために開発されたが、そのような装置は高価であり、パターニングを1回の露光で成し遂げることができるエリアは限定されている。大型ガラスパネル上での経済的なフォトリソグラフィために、パターニング解像度または特徴の最小サイズは一般に1ミクロンまたは2ミクロンまたはそれ以上に限定される。
【0094】
図7A〜図7Dは、本発明の例示的な実施形態による、細い側壁ビームを有する例示的なシャッターアセンブリ700の構成段階の等角図である。特に、図7A〜図7Dは、コンプライアントアクチュエータビーム718および720を備えるシャッターアセンブリ700を、大型基板パネル上での従来のリソグラフィの制限値を遙かに下回る寸法で作製できる技術を示す。図7A〜図7Bの技術は、上述の米国特許出願第11/361,785号明細書においてさらに説明されている。図7A〜図7Dのプロセスでは、シャッターアセンブリ700のコンプライアントビームは、犠牲材料から作製された金型上の側壁の特徴として形成される。プロセスを側壁ビームプロセスと称する。
【0095】
図7Aに示すように、側壁ビームを備えるシャッターアセンブリ700を形成するプロセスは、第1の犠牲材料701をアパーチャ層725および基板726の上に堆積させてパターニングすることから始める。第1の犠牲材料において画成されたパターンは開口部またはビア702を形成し、その中にシャッター用のアンカが最終的に形成される。第1の犠牲材料701の堆積およびパターニングは、図6A〜図6Eに関して説明した堆積およびパターニングと概念が類似しており、同様の材料を使用する。シャッターアセンブリを制御回路および金属相互接続部の上に形成することも可能であり、そのような実施形態では、ビア702を基板表面または電気回路の素子に形成して、ビア702を通して回路と電気接触するシャッターアセンブリ700の一部分の電位を制御する。
【0096】
側壁ビームを形成するプロセスは、第2の犠牲材料705の堆積およびパターニングを続ける。図7Bに、第2の犠牲材料705のパターニング後に形成される金型703の形状を示す。金型703はまた、予め画成されたビア702を有する第1の犠牲材料701を含む。図7Bの金型703は、2つの別個の水平レベルを含む:金型703の底部水平レベル708は、第1の犠牲層701の上面によって確立され、第2の犠牲層705がエッチングによって取り除かれたエリアからアクセスできる。金型703の上部水平レベル710は、第2の犠牲層705の上面によって確立される。図7Bに示す金型703はまた、実質的に垂直な側壁709も含む。
【0097】
犠牲材料701および705として使用する材料は、犠牲材料613に関して上記で説明したものである。
【0098】
側壁ビームを形成するプロセスは、図7Cに示すように、犠牲金型703の露出面の全て上にシャッター材料の堆積およびパターニングを続ける。シャッター712に使用する好ましい材料は、シャッター材料605、607、および609に関して上記で説明したものである。代替的なシャッター材料および/またはシャッターコーティングは、上述の米国特許出願第11/361,785号明細書において説明されている。シャッター材料は、約2ミクロン未満の厚さで堆積される。一部の実装例では、シャッター材料は、約1.5ミクロン未満の厚さを有するように堆積される。他の実装例では、シャッター材料は、約1.0ミクロン未満、および約0.10ミクロン程度の厚さを有するように堆積される。堆積後、図7Cに示すように、シャッター材料(上述の複合シャッターとし得る)をパターン化する。フォトレジストに現像されたパターンは、シャッター材料がシャッター712の領域にならびにアンカ714および715に留まるように、設計される。
【0099】
当該技術分野において異方性エッチングとして公知の図7Cに示すステップで使用されるエッチングプロセスに、特定の装置および化学的性質がまた選択される。シャッター材料の異方性エッチングは、基板726、または基板726近傍の電極に電圧バイアスがかけられながらプラズマ雰囲気において実施される。バイアス基板726(基板726の表面に対して垂直な電界)は、基板726に対してほぼ垂直な角度において基板726の方へイオンを加速させる。そのように加速されたイオンはエッチング化学物質と一緒に、基板726に対して平行な方向と比較して、基板726の平面に対して直角な方向において遙かに高速であるエッチング速度をもたらす。それにより、フォトレジストによって保護された領域のシャッター材料のアンダーカット−エッチングが、実質的に排除される。加速されたイオンの軌跡に対して実質的に平行である金型703の側壁面709に沿って、シャッター材料はまた、異方性エッチングから実質的に保護される。そのように保護された側壁のシャッター材料は、後に、シャッター712を支持するためのコンプライアントビーム716、718、および720を形成する。側壁ビーム716、718、および720を形成するために使用される異方性エッチングは、一般にICまたはLCD製造において使用されるRFまたはDCプラズマエッチング装置のいずれかにおいて達成できる。上部水平面710または底部水平面708などの金型の他の(非フォトレジスト保護の)水平面に沿って、シャッター材料はエッチングによって完全に除去される。
【0100】
側壁ビームを形成するプロセスは、第2の犠牲層705および第1の犠牲層701の残りを除去することによって完了し、その結果を図7Dに示す。犠牲材料を除去するプロセスは、図6Eに関して説明したものと同様である。金型703の側壁709上に堆積された材料は、コンプライアントビーム716、718、および720として残る。コンプライアントロードビーム716はアンカ714をシャッター712に機械的に接続する。アンカ714はアパーチャ層725に接続する。コンプライアントビーム716、718、および720は背が高くて細い。金型703の表面から形成される側壁ビーム716、718、および720の幅は、堆積されるシャッター材料の厚さと同様である。場合によっては、716におけるビーム幅は712における水平のシャッター材料と同じ厚さとなる;他の場合には、ビーム幅は、シャッター材料の厚さの約1/2のみとなる。側壁ビーム716、718、および720の高さは、第2の犠牲材料705の厚さによって、換言すると、図7Bに関して説明したパターニングステップ中に形成された金型703の深さによって決定される。堆積されたシャッター材料の厚さを2ミクロン未満に選択する限り(多くの応用では厚さの範囲は0.1〜2.0ミクロンが好適である)、図7A〜図7Dに示す方法は、非常に細いビームの生成に好適である。従来のフォトリソグラフィは、図7A、図7B、および図7Cに示すパターン化された特徴を遥かに大きい寸法に制限し、例えば2ミクロンまたは5ミクロン以上の最小の解像された特徴を可能とする。
【0101】
図7Dに、アスペクト比の高い断面のコンプライアントビームを生じる、上述のプロセスの解放ステップ後に形成されたシャッターアセンブリ700の等角図を示す。第2の犠牲層の厚さが、例えば、シャッター材料の厚さの4倍超である限り、得られるビーム高さ対ビーム幅の比は同様の比となる、すなわち比は4超となる。
【0102】
上述していないが図7Cに至るプロセスの一部として含まれる任意選択のステップは、コンプライアントロードビーム720をコンプライアント駆動ビーム718から分離するまたは切り離すために側壁ビーム材料の等方性エッチングを伴う。例えば、ポイント724におけるシャッター材料は、等方性エッチングを使用することによって側壁から除去されている。等方性エッチングは、エッチング速度が全方向において同じであるため、ポイント724のような領域内の側壁材料はもはや保護されない。等方性エッチングは、バイアス電圧が基板にかけられない限り、典型的なプラズマエッチング装置において行われることができる。等方性エッチングはまた、湿式化学技術または気相エッチング技術を使用して達成できる。この任意選択の第4のマスキングおよびエッチングステップの前に、側壁ビーム材料は、金型703の凹部特徴の周囲に実質的に連続的に存在した。第4のマスクおよびエッチングステップを使用して、側壁材料を分離させて分割し、異なるビーム718および720を形成する。ポイント724におけるビームの分離は、フォトレジストの分配およびマスクを通した露出の第4のプロセスによって達成される。この場合、フォトレジストパターンを、分離ポイント724を除いた全ポイントにおいて側壁ビーム材料を等方性エッチングに対して保護するように、設計する。
【0103】
側壁プロセスの最終ステップとして、図6Aの誘電体611のような封入誘電体を、側壁ビームの外表面の周囲に、または、最低でも、動作中に接触するビームの表面に堆積させる。
【0104】
金型703の側壁709に堆積されたシャッター材料を保護し、かつ実質的に均一な断面の側壁ビーム716を形成するために、一部の特定のプロセスのガイドラインが以下に続く。例えば、図7Bでは、側壁709は可能な限り垂直に作製される。側壁709および/または露出面における傾斜は、異方性エッチングの影響を受けやすくなる。垂直な側壁709は、図7Bにおけるパターニングステップ、第2の犠牲材料705のパターニングも異方性式に行われると作製できる。追加的なフォトレジストコーティングまたはハードマスクを第2の犠牲層705のパターニングと併用することによって(図12に関する説明を参照のこと)、フォトレジストが過度に摩耗する恐れなく、第2の犠牲材料705の異方性エッチングにおいて攻撃的なプラズマおよび/または高い基板バイアスを用いることが可能となる。垂直な側壁709はまた、UV露光中に焦点の深さの制御に注意を払い、かつレジストの最終硬化中に縮みすぎを回避する限り、光画像形成犠牲材料において生成できる。
【0105】
側壁ビームプロセス中に助けとなる別のプロセスの説明は、シャッター材料堆積のコンフォーマルさを考慮する。金型703の表面は、垂直や水平の表面の向きに関わらず、好ましくは同様の厚さのシャッター材料で被覆される。そのようなコンフォーマルさは、化学蒸着技術(CVD)によって堆積すると達成できる。特に、以下のコンフォーマル技術を用いることができる:プラズマ促進化学蒸着(PECVD)、低圧化学蒸着(LPCVD)、および原子または自己限定層堆積(ALD)。上述のCVD技術では、薄膜の成長速度を、ソース原子の方向性フラックスに対して表面を露光させるのと対向する表面の反応速度によって限定できる。そのようなコンフォーマル堆積技術では、垂直面に成長する材料の厚さは、水平面に成長する材料の厚さの好ましくは少なくとも50%である。あるいは、シャッター材料は、メッキ前に全表面を被覆する金属シード層が設けられる限り、無電界メッキまたは電気メッキによって溶液からコンフォーマルに堆積できる。
【0106】
3−マスクプロセス
図7Dのシャッターアセンブリ700に至るプロセスは、4−マスクプロセスであった:つまり、プロセスは、フォトマスクを通して所望のパターンを照明することによって感光性ポリマーが露光される、4つの異なるフォトリソグラフィステップを包含した。マスキングステップとしても公知のフォトリソグラフィステップは、MEMS装置の製造において最も高価であり、マスキングステップ数を削減した製造プロセスを生じることが望ましい。
【0107】
3−マスクシャッターアセンブリプロセスを可能とするために、シャッターアセンブリの構造の変形を考慮することが有益である。有用は構造変化を、それぞれ図9、図11、図14および図15の4つの代替的なシャッターアセンブリ900、1100、1400および1500で示す。
【0108】
図7では、シャッターアセンブリ700のロードビーム720は、一方の端部においてシャッター712に取り付けられ、他方の端部においてロードビームアンカ714に取り付けられる。駆動ビーム718は、一方の端部において駆動ビームアンカ715に取り付けられ、他方の端部は取り付けられていないかまたは自由に動くことができる。図7Cのシャッターアセンブリ700に至るプロセスにおける第4のマスクの目的は、駆動ビーム718の自由に動く端部を終端とするかまたはそれを形成することであると言える。駆動ビーム718にこの自由に動く端部を形成することは、このビームのコンプライアント形状が、シャッターの作動に必要な電圧を低減させる働きをするため、有益である。
【0109】
しかしながら、本発明の種々の実施形態では、コンプライアント駆動ビームは、フォトリソグラフィックに終端する自由に動く端部を有する必要はない。図8に示すシャッターアセンブリ852では、例えば、駆動ビーム856および857が、ループ形状にパターン化される。
【0110】
図8は、本発明の例示的な実施形態による、ループ状駆動ビームを組み込む例示的なシャッターアセンブリ852の平面図である。シャッターアセンブリ852は、デュアルコンプライアントアクチュエータアセンブリ854を含み、それは、図4Aおよび図4Bを参照して上述したシャッターアセンブリ400用に設計されたアクチュエータ404に機能的に類似している。アクチュエータアセンブリ854は、コンプライアント駆動ビーム856および857をコンプライアントロードビーム858および859とともに含む。ロードビーム858および859は、一方の端部においてシャッター860を支持し、他方の端部においてロードビームアンカ862および863にそれぞれ取り付けられている。駆動ビーム856および857は各々ループ形状にされ、駆動ビームの各端部は共通のアンカ864に取り付けられている。各ループ用に外向きのビームの区域があり、それは、同じビームの戻り区域に対して実質的に平行である。これら2つのループの区域の長さは実質的に等しい。側壁ビームプロセスにおいて形成される場合、ループ状駆動ビーム856または857の外向きの区域を変形させる傾向のある応力は、ビームの戻り区域に沿った応力に同等またはそれと対抗する応力である。
【0111】
ループ856および857を構成するコンプライアントビームは、シャッターアセンブリ700に関して上述した初めの3つのマスクステップのみを使用して完全に画成できる。駆動ビームがロードビームから分離される第4のフォトリソグラフィステップは、ループ状ビーム856および857の製造には必要ではない。ループは、空間の境界周辺を完全に包み込むかまたはそれを形成する。取り囲まれた空間の周りの境界に予想されるように、ループには終端がないため、第4のフォトリソグラフィステップは必要ではない。
【0112】
第4のマスクを完全に排除するために、構造の他のコンプライアントビームもまたループと同様の形状を包含するように作製される方法が求められる。特に、側壁ビームの終端は、ビームが空間を完全に取り囲む境界を形成するのと同じ長さである必要はない。例えば、シャッターアセンブリ852におけるロードビーム858は、ロードビームアンカ862で終端する。そのため、この実施形態では、アンカ862においてビーム858を終端させるために第4のマスキングステップが必要である。それゆえ、ロードビーム858が、取り囲まれた空間の周りの連続的な境界の一部となる設計が求められる。
【0113】
図9は、本発明の例示的な実施形態による、3−マスクプロセスによって構築された例示的なシャッターアセンブリ900の等角図である。シャッターアセンブリ900を3回のフォトリソグラフィステップのみで製造できる。それらの3−マスキングステップは、アンカ画成ステップ、金型画成ステップ、およびシャッター画成ステップと称し、それぞれ第1の犠牲層、第2の犠牲層、およびシャッター材料にパターンを発現させるために使用される。シャッターアセンブリ700に関して上述したように、コンプライアントビームは、金型の側壁に形成され、第2の犠牲層とも称する。シャッターアセンブリ900は3−マスクプロセス内で製造できる。なぜなら、ビームは、金型の特徴周辺を取り囲む、閉じた境界として設計されるためである。
【0114】
シャッターアセンブリ900は、シャッター902、補強リブ903、ロードビーム904、ロードビームアンカ906、駆動ビーム908、および駆動ビームアンカ910を含む。シャッターアセンブリはさらに、周辺ビーム912および周辺アンカ914を含む。ロードビーム904および駆動ビーム908はともに、1組のコンプライアントアクチュエータビームを形成する。これら2つのビーム904と908との間に電圧がかけられる場合、シャッター902は開放または閉鎖位置の方へ動かされる。
【0115】
駆動ビーム908は各々ループ形状にされ、アンカ910において基板に取り付けられている。駆動ビーム908はループ内の空間を取り囲む。
【0116】
ロードビーム904はシャッター902からロードビームアンカ906まで延在している。周辺ビーム912はロードビームアンカ906から周辺アンカ914まで延在している。周辺ビームはまた、周辺アンカ914をつなぐ。周辺ビーム912は、シャッターアセンブリ900内でアクティブな機械的機能も光学的機能も担わない。周辺ビーム912は、ロードビーム904の幾何学的形状を広げる働きをするので、これらのコンプライアントビーム904および912を接続できる。同時に、ロードビーム904および周辺ビーム912は、空間を完全に取り囲む境界を形成する。
【0117】
図10は、本発明の例示的な実施形態による、図9のシャッターアセンブリ900の製造を可能にするように設計された例示的な金型1000の等角図である。金型1000は、第2の犠牲材料から形成され、かつシャッターアセンブリ900の作製における第2のフォトリソグラフィステップの一部としてパターン化される。図10は、シャッター材料が堆積される前の犠牲金型の概要を示す。それゆえ、シャッター902の概要は図10に図示しない。しかしながら、金型1000は、シャッターアセンブリ900の補強リブ903を成形するために使用されるリブ用窪み1003を含む。
【0118】
金型の形状は一般的に3種類の表面から構成される。金型は、上にコンプライアントビームが形成される側壁、上面および底面を含む。金型の下部面は、第1の犠牲材料と第2の犠牲材料との間の境界面によって形成された水平面である。金型の上部面は、基板から最も離れた平面にある水平面である。
【0119】
金型は一般的に2種類の形状を画成し、その双方とも、コンプライアントビームを上に形成できる側壁によって取り囲まれるかまたは境界される。本願明細書で使用する場合「メサ」は、金型側壁によって取り囲まれた金型材料の存在によって画成される空間である。本願明細書で使用する場合「凹部」は、金型側壁によって取り囲まれる、金型材料のない空間と定義される。
【0120】
金型1000はメサ形状1008を含む。メサ1008を取り囲む側壁を使用して駆動ビーム908を形成する。それにより、駆動ビーム908は、終端のないループ形状を有する。
【0121】
金型1000はまた凹部形状1004を含む。この凹部1004を取り囲む側壁を使用してロードビーム904を形成する。
【0122】
金型1000はまたロードビームアンカ用孔1006を含む。アンカ用孔1006は、第1の犠牲層の一部として前のステップで形成された。金型はまた駆動ビームアンカ用孔1010を含む。
【0123】
それゆえ、シャッターアセンブリ900のロードビーム904および駆動ビーム908の双方とも、空間を完全に取り囲む境界として形成される。空間は、金型1000のメサ形状または凹部形状のいずれか一方から形成される。特に、ロードビーム904および駆動ビーム908は、空間1004および1008をそれぞれ取り囲む境界として形成される。ロードビーム904および駆動ビーム908を形成する形状の境界は交差しない。駆動ビーム908用のループは、ロードビーム904を形成するループ内に完全に取り囲まれる(ビーム904と912の組み合わせである)。
【0124】
図11は、本発明の例示的な実施形態による、3−マスクプロセスに従って構築された例示的なシャッターアセンブリ1100の等角図である。シャッターアセンブリ1100を、それぞれ図7および図9のシャッターアセンブリ700および900に関して説明したものと同様に、3回のフォトリソグラフィステップのみを使用して製造できる。シャッターアセンブリ700に関して上述したように、コンプライアントビームは、第2の犠牲層とも称する金型の側壁に形成される。シャッターアセンブリ1100は3−マスクプロセス内に作製できる。なぜなら、ビームは、金型の特徴の周辺を取り囲む、閉じた境界として設計されるためである。
【0125】
シャッターアセンブリ1100はシャッター1102、ロードビーム1104、ロードビームアンカ1106、駆動ビーム1108、および駆動ビームアンカ1110を含む。ロードビーム1104および駆動ビーム1108はともに、1組のコンプライアントアクチュエータビームを形成する。シャッターアセンブリはさらに、1組の周辺ビーム1112を含む。
【0126】
駆動ビーム1108をループ形状にし、アンカ1110において基板に取り付ける。駆動ビーム1108はループ内の空間を取り囲む。
【0127】
ロードビーム1104はシャッターからロードビームアンカ1106まで延在する。周辺ビーム1112はロードビームアンカ1106間に延在する。周辺ビーム1112は、シャッターアセンブリ1100内でアクティブな機械的機能も光学的機能も担わない。周辺ビーム1112は、ロードビーム1104の幾何学的形状を広げる働きをするため、これらのコンプライアントビーム1104および1112は接触できるようになる。同時に、ロードビーム1104および周辺ビーム1112は、空間を完全に取り囲む境界を形成する。
【0128】
図12は、本発明の例示的な実施形態による、図11のシャッターアセンブリ1100の製造を可能にするように設計された例示的な金型1200の等角図である。金型1200は、第2の犠牲材料から形成されて、シャッターアセンブリ1100の製造における第2のフォトリソグラフィステップの一部としてパターン化される。図12は、シャッター材料が堆積される前の犠牲金型の概要を示す。それゆえ、シャッター1102の概要は図10に図示しない。しかしながら、金型1200は、シャッターアセンブリ1100に示す補強リブ1103を成形するために使用されるリブ用窪み1203を含む。
【0129】
金型1200は凹部1208を含む。凹部形状1208は、金型1000において駆動ビームに用いられたメサ形状1008の逆である。凹部1208を取り囲む側壁を使用して、駆動ビーム1108を形成する。それにより、駆動ビーム1108は、終端のないループ形状を有する。
【0130】
金型1200はまた凹部1204を含む。この凹部の側壁を使用してロードビーム1104を形成する。
【0131】
金型1200はまたロードビームアンカ用孔1206を含む。アンカ用孔は、第1の犠牲層の一部として前のステップで形成された。金型1200はまた駆動ビームアンカ用孔1210を含む。
【0132】
この特定の実施形態では、ロードビーム1104を形成するために使用されたロードビーム用凹部1204は、リブ1103を形成するために使用された凹部1203と接続されるかまたは統合される。
【0133】
ロードビーム1104および駆動ビーム1108を形成する形状の境界は交差しない。駆動ビーム1108のためのループは、ロードビーム1104を形成する形状の外側にある形状を取り囲む(ビーム1104と1112との組み合わせである)。
【0134】
3−マスクプロセスのために、2つの異なるタイプの取り囲まれたエリアを画成する必要がある:ロードビーム904および駆動ビーム908。これらの取り囲まれた境界は、金型ポリマー(メサ)の隔離されたエリアを画成できるか、またはレジストが除去されるエリア(凹部)を画成できるかのいずれかである。選択に依存して、凹部側またはメサ側のいずれかに駆動ビームおよびロードビームを作製する。図14に、孔の側にロードビーム1404および駆動ビーム1408が形成される実施形態1400を示す。図15に、ロードビーム1504および駆動ビーム1508がメサ側に形成される実施形態1500を示す。いずれの実施形態も効果的であるが、ポリマーおよびfab装置の選択は、メサよりも凹部をまたは凹部よりもメサをパターン化するのを容易にし得る。同様に、ディスプレイのアクティブエリアの外側のエリアは、レジストが存在しているかまたはレジストが除去されているかのいずれかとし得る。多くの場合、ディスプレイのアクティブエリアと視界エリアが同一平面にある基板上に第3のマスキングステップを行うのが容易であり、その場合、シャッターアセンブリの周辺に第3の閉じた境界を必要とし得る。この第3の閉じた境界の2つの考えられる実施形態を図14および図15に要素1412および1512としてそれぞれ示す。ある種のポリマーは、加工時の応力が高いかまたは収縮もしくは膨張が大きく、大きな連続的なシートがディスプレイの周辺エリアに残される場合に問題を引き起こす。この場合、金型マスクを使用して周辺エリアにおいてダミーの特徴をパターン化し、レジストの連続的なエリアを壊しかつ膜応力を下げることができる。図16は、応力緩和特徴1616の1つの考えられる実施形態1600を示す。
【0135】
取り囲まれた金型の境界を画成するときにさらに考慮することは、金型レジストが除去されたエリア(凹部の底部)において、シャッターを金型ポリマー(メサ)の上部に作製する必要があるかどうかである。図14および図15は、凹部の底部に作製されたシャッター1402および1502を示す;シャッター902および1102がメサの上部に作製された図9および図11と比較されたい。ここでも、どちらの選択肢も容認できるが、最終的な装置の仕様では一方の実施形態が他方よりも好ましいとし得る。
【0136】
図13は、本発明の例示的な実施形態による、3−マスクプロセスに従って構築された、2つの接続された例示的なシャッターアセンブリ1300の等角図である。シャッターアセンブリ1300は、それぞれ図7および図9のシャッターアセンブリ700および900に関して説明したのと同様に3回のフォトリソグラフィステップのみで製造できる。シャッターアセンブリ700に関して上述したように、コンプライアントビームが、第2の犠牲層とも称する金型の側壁に形成される。シャッターアセンブリ1300を3−マスクプロセス以内に作製できる。なぜなら、ビームは、金型の特徴の周辺を取り囲む、閉じた境界として設計されるためである。
【0137】
シャッターアセンブリ1300は、シャッター1302、ロードビーム1304、ロードビームアンカ1306、駆動ビーム1308、および駆動ビームアンカ1310を含む。ロードビーム1304および駆動ビーム1308はともに1組のコンプライアントアクチュエータビームを形成する。シャッターアセンブリはさらに1組の周辺ビーム1312を含む。
【0138】
駆動ビーム1308はそれぞれループ形状にされ、アンカ1310において基板に取り付けられる。駆動ビーム1308はループ内の空間を取り囲む。
【0139】
ロードビーム1304はシャッター1302からロードビームアンカ1306まで延在する。周辺ビームはロードビームアンカ1306間を延在する。周辺ビーム1312は、シャッターアセンブリ1300内でアクティブな機械的機能も光学的機能も担わない。周辺ビーム1312は、ロードビーム1304の幾何学的形状を広げる働きをするので、これらのコンプライアントビームを接続できるようになる。同時に、ロードビーム1304および周辺ビーム1312は、空間を完全に取り囲む境界を形成する。
【0140】
シャッターアセンブリ1300では、多くの場合、周辺ビーム1312を使用して、2つの異なるまたは隣接するシャッターアセンブリに対応するロードビームアンカ1306間を接続する。ロードビーム1304は周辺ビーム1312とともに、空間を取り囲む連続的な境界を形成する。ビーム1304および1312によって取り囲まれる空間は、2つのシャッターアセンブリを含む。代替的な実施形態では、多数のシャッターアセンブリ(>100)を、単一の連続的なコンプライアントビームによって取り囲むことができる。コンプライアントビームを複数のポイントで、好ましくは少なくとも1つの取付ポイントまたはグループ内のシャッターアセンブリの各々に対応するアンカによって基板に取り付ける。対応するシャッターアセンブリの各々のためのロードビーム1304は、複数のシャッターアセンブリを取り囲む同じループから形成できる。
【0141】
本発明は、趣旨またはその本質的な特徴から逸脱せずに他の特定の形態で供することもできる。それゆえ、上述の実施形態は、本発明を限定するものではなく、あらゆる面で例示的である考慮される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間の境界を完全に取り囲む第1の細いビーム
を含むMEMS装置。
【請求項2】
前記第1の細いビームがループを形成する、請求項1に記載のMEMS装置。
【請求項3】
前記第1の細いビームによって基板に支持される機械的な光変調器を含む、請求項1に記載のMEMS装置。
【請求項4】
機械的な光変調器を含み、前記機械的な光変調器を動かすように前記第1の細いビームがアクチュエータの一部分を形成して、光を変調させる、請求項1に記載のMEMS装置。
【請求項5】
前記第1の細いビームがコンプライアントビームである、請求項4に記載のMEMS装置。
【請求項6】
前記第1の細いビームを前記基板に接続するアンカを含む、請求項1に記載のMEMS装置。
【請求項7】
第2の細いビームを含み、前記第1および第2の細いビームがそれぞれ、交わらない空間を取り囲む、請求項1に記載のMEMS装置。
【請求項8】
前記第2の細いビームが、前記第1の細いビームによって完全に取り囲まれる空間を取り囲む、請求項7に記載のMEMS装置。
【請求項9】
基板に結合された第1の細いビームを形成して、前記第1の細いビームが空間の境界を完全に取り囲むようにするステップ
を含む、MEMS装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1の細いビームを形成するステップが、
金型材料を犠牲層上に堆積させるステップ;
前記金型材料にある形状をエッチングして、少なくとも1つの側壁および少なくとも1つの下部水平面を有する金型を形成するステップ;
前記エッチング形成された金型上に材料を堆積させて、前記堆積された材料が前記エッチング形成された金型の少なくとも前記側壁および前記下部水平面に付着するようにするステップ;
前記堆積された材料の一部分をエッチングして、前記堆積された材料を前記下部水平面から除去する一方、前記側壁上に無傷のまま堆積された前記材料の実質的に全てを残すステップ;および
前記側壁に残る材料が前記第1の細いビームを形成するように前記金型を除去するステップ
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記側壁が、前記金型に形成されたメサ型の壁を含み、および前記第1の細いビームが前記メサを取り囲む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記側壁が、前記金型に形成された凹型の壁を含み、および前記第1の細いビームが前記凹部を取り囲む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記金型材料が犠牲材料の層の上に堆積され、前記方法がさらに、前記第1の細いビームを解放するために前記犠牲材料を除去するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記金型がさらに上部水平面を含み、および前記金型上に堆積された前記材料が前記上部水平面に付着し、前記方法がさらに、
前記堆積された材料をエッチングで除去する前に前記上部水平面にマスクを塗布して、前記エッチング後に、前記上部水平面上に堆積された前記材料の一部分が前記上部水平面上に残るようにして、機械的な光変調器を形成するステップ
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
さらに、前記金型に前記形状をエッチングする前に、前記金型材料にアンカ用孔をエッチングするステップであって、前記金型上に堆積された前記材料が前記アンカ用孔を埋めてアンカを形成するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アンカ、第1の細いビーム、および前記機械的な光変調器の形成に利用する必要があるのは、3つ以下のフォトリソグラフィックマスクである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記MEMS装置が機械的な光変調器およびアンカを含み、前記第1の細いビームが、基板上に前記機械的な光変調器を支持し、かつ前記アンカを介して前記機械的な光を前記基板に接続し、前記方法が、3つ以下のフォトリソグラフィックマスクの利用を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項1】
空間の境界を完全に取り囲む第1の細いビーム
を含むMEMS装置。
【請求項2】
前記第1の細いビームがループを形成する、請求項1に記載のMEMS装置。
【請求項3】
前記第1の細いビームによって基板に支持される機械的な光変調器を含む、請求項1に記載のMEMS装置。
【請求項4】
機械的な光変調器を含み、前記機械的な光変調器を動かすように前記第1の細いビームがアクチュエータの一部分を形成して、光を変調させる、請求項1に記載のMEMS装置。
【請求項5】
前記第1の細いビームがコンプライアントビームである、請求項4に記載のMEMS装置。
【請求項6】
前記第1の細いビームを前記基板に接続するアンカを含む、請求項1に記載のMEMS装置。
【請求項7】
第2の細いビームを含み、前記第1および第2の細いビームがそれぞれ、交わらない空間を取り囲む、請求項1に記載のMEMS装置。
【請求項8】
前記第2の細いビームが、前記第1の細いビームによって完全に取り囲まれる空間を取り囲む、請求項7に記載のMEMS装置。
【請求項9】
基板に結合された第1の細いビームを形成して、前記第1の細いビームが空間の境界を完全に取り囲むようにするステップ
を含む、MEMS装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1の細いビームを形成するステップが、
金型材料を犠牲層上に堆積させるステップ;
前記金型材料にある形状をエッチングして、少なくとも1つの側壁および少なくとも1つの下部水平面を有する金型を形成するステップ;
前記エッチング形成された金型上に材料を堆積させて、前記堆積された材料が前記エッチング形成された金型の少なくとも前記側壁および前記下部水平面に付着するようにするステップ;
前記堆積された材料の一部分をエッチングして、前記堆積された材料を前記下部水平面から除去する一方、前記側壁上に無傷のまま堆積された前記材料の実質的に全てを残すステップ;および
前記側壁に残る材料が前記第1の細いビームを形成するように前記金型を除去するステップ
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記側壁が、前記金型に形成されたメサ型の壁を含み、および前記第1の細いビームが前記メサを取り囲む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記側壁が、前記金型に形成された凹型の壁を含み、および前記第1の細いビームが前記凹部を取り囲む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記金型材料が犠牲材料の層の上に堆積され、前記方法がさらに、前記第1の細いビームを解放するために前記犠牲材料を除去するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記金型がさらに上部水平面を含み、および前記金型上に堆積された前記材料が前記上部水平面に付着し、前記方法がさらに、
前記堆積された材料をエッチングで除去する前に前記上部水平面にマスクを塗布して、前記エッチング後に、前記上部水平面上に堆積された前記材料の一部分が前記上部水平面上に残るようにして、機械的な光変調器を形成するステップ
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
さらに、前記金型に前記形状をエッチングする前に、前記金型材料にアンカ用孔をエッチングするステップであって、前記金型上に堆積された前記材料が前記アンカ用孔を埋めてアンカを形成するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アンカ、第1の細いビーム、および前記機械的な光変調器の形成に利用する必要があるのは、3つ以下のフォトリソグラフィックマスクである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記MEMS装置が機械的な光変調器およびアンカを含み、前記第1の細いビームが、基板上に前記機械的な光変調器を支持し、かつ前記アンカを介して前記機械的な光を前記基板に接続し、前記方法が、3つ以下のフォトリソグラフィックマスクの利用を含む、請求項10に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2012−507050(P2012−507050A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533428(P2011−533428)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/062252
【国際公開番号】WO2010/062616
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(507276092)ピクストロニクス,インコーポレイテッド (35)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/062252
【国際公開番号】WO2010/062616
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(507276092)ピクストロニクス,インコーポレイテッド (35)
【Fターム(参考)】
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