説明

コーティング装置及び遮蔽プレートを有するコーティング装置の操作方法

基板を取り扱う特にコーティングする装置において、プロセスチャンバ1と、その中で処理される基板12を格納するべく搭載開口6,7を介してプロセスチャンバ1に接続された、又は、処理プロセスで用いるマスク10,10'、10"、10'"を格納する少なくとも1つの格納チャンバ2,3と、搭載開口6,7を通して基板又はマスクをプロセスチャンバ1に搭載し又は取り出す搬送装置13と、開始物質をキャリアガスとともにプロセスチャンバ1に導入するべく温度制御可能なガス入口要素4と、処理される基板12を受容するべくガス入口要素4に対向して位置するサセプタ5と、遮蔽位置にあるときガス入口要素4とサセプタ5又はマスク10の間に位置して基板12又はマスク10をガス入口要素4からの熱の影響から遮蔽する遮蔽プレート11と、遮蔽プレート11を基板12の処理前にガス入口要素4に相対する遮蔽位置から格納位置へ移動させ基板12の処理後に格納位置から遮蔽位置に戻す遮蔽プレート移動装置15,16と、を有する。格納位置では遮蔽プレート11が格納チャンバの内部にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板をコーティングする装置に関し、開始物質をキャリアガスとともに導入するための温度制御可能なガス入口要素と、基板を受容するサセプタとが内部に配置されたプロセスチャンバと、基板を搭載するための搭載開口を介してプロセスチャンバに接続されている基板収納チャンバと、プロセスチャンバに基板を搭載しかつ基板を取り出す搬送装置と、を有する装置に関する。
【0002】
本発明はさらに、このタイプの装置を操作する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、ガス入口要素とサセプタを具備するプロセスチャンバを有する装置を開示している。そのプロセスチャンバは、基板収納チャンバから基板を取り出す把持アームを用いて基板を搭載可能である。コーティングプロセスは、プロセスチャンバ内で生じる。このために、ガス状の開始物質が、キャリアガスに補助されてガス入口要素によりプロセスチャンバ内に導入される。基板表面上に薄膜層が堆積する。
【0004】
化学的又は物理的コーティングプロセスが関係する場合もある。特許文献2は、例えば、固体又は液体の開始物質を気化するための気化器を有する装置を開示する。気化した開始物質はキャリアガスとともに、キャリアガスラインを介して熱分解チャンバ内に導入される。開始物質は、ポリマーパラキシレンでもよい。気化したダイマーは、熱分解チャンバ内でモノマーに分解される。キャリアガスを伴うモノマーは、ガス入口要素に導入される。ガス入口要素は、気密態様にて外部に対して密閉されたプロセスチャンバに配置され、スクリーン状態様で配置された多数の開口を設けたガス放出面を有し、これを通して伽利がガスが開始物質をプロセスチャンバ内に搬送する。ガス入口要素は、加熱により温度制御される。冷却されたサセプタは、ガス入口要素の下に配置されている。基板、例えばガラスプレートは、サセプタの冷却された基板ベアリング面上に配置可能である。基板は、ポリマー層によりコーティングされ、ポリマーはプロセスチャンバ内に気体状態で導入され、その中で濃縮される。
【0005】
特許文献3は、マスク機構を開示する。ここに開示されたシャドーマスクは、構造化された態様にて基板をコーティングするために、コーティングされる基板の表面上に配置される。
【0006】
特許文献4は、コーティング装置を開示し、これを用いて、周期表のIV族、III−IV族、及びII−VI族の元素と有機材料からなる半導体層を堆積可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第101 59 702号公報
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2008 026 974号公報
【特許文献3】独国特許出願公開第10 2008 037 387号公報
【特許文献4】独国特許出願公開第102 32 731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、一般的な種類のより効率的な装置を設計することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項に記載された本発明により実現される。各請求項はこの目的の独立した成果を表現しており、他のいずれの請求項とも組合せ可能である。
【0010】
本発明による装置は、パラキシリレン又は、例えばOLED及び半導体層などの多成分挿を堆積するために特に適している。開始物質は、プロセスチャンバの外部に配置されたガス混合システム又はガス調製装置で調製され、特に温度制御された供給ラインを通して加熱されたガス入口要素に送られる。ガス入口要素は、少なくとも1つのチャンバを具備する中空体を有し、その中に、開始物質を搬送するキャリアガスが導入される。ガス入口要素は、平面視の外郭が円形の、しかし好適には長方形、特に正方形のガス放出面を有する。平面視の外郭は実質的に基板の表面積に対応する。ガス放出面は、多数のガス放出開口を具備し、それらはスクリーン状に配置されており、それらを通してプロセスガスがプロセスチャンバ内に流入する。プロセスチャンバの底部はサセプタにより形成されている。このガス入口要素は、シャワーヘッド状の形状を有し、200℃〜400℃の温度に加熱される。プロセスチャンバは、0.1mbar〜2mbarの圧力範囲に真空装置を用いて調整される。サセプタは、基板支持面を具備する冷却体である。この支持面は、熱が基板からサセプタに放散可能であるような方式で選択される。サセプタは、−30℃〜80℃の間の温度に温度制御される。コーティング工程は、積極的に冷却された基板により生じ、それにより開始物質が低温の基板上に堆積可能である。
【0011】
本発明による方法においては、プロセスチャンバに対する搭載及び取り出しが、加熱されたガス入口要素により生じることが実現される。基板がサセプタ上に置かれる前に基板が加熱されることを避けるために、遮蔽プレートが、搭載及び取り出しの前にガス入口要素とサセプタの間に導入される。別の例として、遮蔽プレートが、マスクを加熱から保護するために用いられてもよい。マスクは、堆積される層に構造付けするために基板上に置かれるものである。遮蔽プレートは、ガス入口要素のガス放出面の真下に配置される。遮蔽プレートが高い反射率の面を具備することにより、基板又はマスクがガス入口要素からの輻射に対して保護される。遮蔽プレートは、高い反射率を持つコーティングを両面に具備してもよい。遮蔽プレートは、好適には、平行に延在する2枚のガラス又は石英の板から構成され、それらの間に薄い金属箔が配置される。これは、アンバー、金、又はアルミニウムの100μm厚の箔でもよい。箔は、ガラス板と石英ガラス板の間に浮遊状態で設置されている。箔は、熱放射率ε<0.1である。
【0012】
コーティング工程中、プロセスチャンバの外側の遮蔽プレートを保護するために、さらに別の格納チャンバが設けられ、その中に遮蔽プレートが収容される。この格納チャンバは、少なくとも1つのマスクが格納されたマスク格納チャンバとしてもよい。マスクは、基板表面に構造化されたコーティングを行うために基板表面に適用されるものである。本発明の好適な実施例では、遮蔽プレートが、マスクを、マスク格納チャンバからプロセスチャンバへと運ぶための搬送要素である。このために、遮蔽プレートは保持手段を備えている。保持手段は、遮蔽プレートの下面上に配置され、マスクにおける対応する対向保持手段と能動的嵌合方式にて係合する。マスクは、遮蔽プレートに補助されてマスク格納チャンバ内のマスクマガジンから取り出されてもよい。遮蔽プレートを用いることにより、マスク搬送中に、マスクが、加熱されたガス入口要素から遮蔽される。こうしてマスクは、温度上昇から保護される。従って、遮蔽プレートは、温度上昇から基板を保護するのみでなく、マスクも保護する。
【0013】
マスクマガジンは、格納チャンバ内でエレベータのように鉛直に移動可能である。種々の設計のマスクをマガジンの鉛直に重ねられたポケット内に格納できる。さらにこのマガジンは、遮蔽プレートを入れることができる区画を有する。遮蔽プレートは、マスクも収容可能であるマガジンのマガジン区画の各々に収容可能であることが好適である。遮蔽プレート移動装置は、マガジン格納チャンバ内に設置可能である。遮蔽プレート移動装置は、レールシステムであってもよい。このレールシステムは、2対のレールを備えてもよく、第1の一対のレールはマガジン内に配置され、そして第2の一対のレールはプロセスチャンバ内に配置される。遮蔽プレートは、ローラガイドを備えてもよく、それにより、遮蔽プレートが一対のレール上を案内される。遮蔽プレートを、ガス入口要素の真下の遮蔽位置とマガジン内部の格納位置との間で移動させるための水平移動駆動は、空圧駆動でも電気式リニア駆動でもよい。さらにこれは、軸駆動でもよい。
【0014】
基板格納チャンバが、同様にマガジンを備えてもよく、その中では、種々の基板が鉛直に重ねられたポケット内に置かれる。基板は、特にフォーク形状の基板ホルダ上に載置されてもよい。基板ホルダも、基板をプロセスチャンバに運び込むために用いられる。
【0015】
各格納チャンバは、気密性をもって閉鎖可能である搭載/取り出し開口を介してプロセスチャンバに接続されている。マスク格納チャンバ及び基板格納チャンバは、真空装置を用いて排気可能である。基板格納チャンバは、全体装置から基板を取り出すために大気圧とすることができる。サセプタは水冷してもよい。サセプタは、鉛直方向に移動可能である。搭載/取り出し位置においては、サセプタは降下位置にある。この位置では、サポートピンが、サセプタの基板支持面から突出する。
【0016】
基板は、例えばフォーク形状の基板ホルダである搬送装置を用いることにより、これらのサポートピン上に設置することができる。これは、搭載開口を通して行うことができる。遮蔽プレートは、上述した遮蔽プレートの移動によって、前もってガス入口要素の下方に運ばれている。サセプタは、基板の下面と面接触するように上昇させられる。しかしながら、基板は、引っ込み可能なサポートピンに補助されて固定されたサセプタ上に降ろされれてもよい。
【0017】
本発明による方法においては、1又は複数の基板の、プロセスチャンバへの搭載又はプロセスチャンバからの取り出しが、加熱されたガス入口要素及び冷却されたサセプタにより実行される。搭載/取り出し工程の間、キャリアガスのみがガス入口要素を通してプロセスチャンバ内に送られる。最初、基板を搭載されていないサセプタは、ガス入口要素から最長の距離にある。マスク格納チャンバの搭載ゲートが開かれる。遮蔽プレート移動装置に補助されて、遮蔽プレートがプロセスチャンバ内に移動し、ガス入口要素の下方に配置される。この配置は、遮蔽プレートがガス入口要素から放出される熱放射を反射するように行う。遮蔽プレートは、絶縁効果を有し、ガス入口要素から基板への熱の流れを遮断する、少なくとも抑制するために用いられる。その後、マガジンは、鉛直方向に移動され、それにより、使用されるマスクが直接搭載開口の前に配置されることとなる。遮蔽プレート移動装置に補助されて、遮蔽プレートがマガジンへ戻され、使用されるマスクの真上、又は、マスクを保持するマスクフレームの真上に配置される。マスクフレーム又はマスクは、保持具を用いて遮蔽プレートの下面に固定され、そして遮蔽プレートによりプロセスチャンバ内に運ばれる。それから基板格納チャンバへの搭載開口が開かれ、基板が、搬送装置を用いて上述したピン上に運ばれる。ここで基板は、サセプタと遮蔽プレートの間に位置する。遮蔽プレートの反射又は絶縁の効果の結果、ガス入口要素により放射される熱により生じる基板に対する有害な加熱を生じない。基板は、ピンを降下させるかサセプタを上昇させることにより、サセプタの基板設置面上に配置される。それにより、基板がサセプタにより冷却される。その後、マスクが、サセプタの上昇又は遮蔽プレートの降下のいずれかの移動により、基板上に配置される。続いて、遮蔽プレートは、マスク格納チャンバ内のマガジンに戻される。搭載開口のゲートが気密性をもって閉鎖された後、プロセスガスがプロセスチャンバ内に導入されることにより、基板上に層が堆積される。基板がサセプタ上に配置される前に、基板及びマスクとともにサセプタもまた連動して降下させてもよい。サセプタが降下するとき、マスクは、サセプタと接触していない。
【0018】
上述した有機又は無機の化合物を開始物質として用いることができる。好適には、本装置を用いてパラキシリレンが基板上に堆積される。しかしながら、OLED層を堆積してもよい。原理的に、本装置は、MOCVDにも適している。
【0019】
本発明の実施例は、添付の図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、プロセスチャンバ1,マスク格納チャンバ2及び基板格納チャンバ3から構成された装置の主要な要素であって、搭載ゲート8が閉鎖されかつプロセスチャンバ1が空である開始位置における鉛直断面形態を概略的に示している。
【図2】図2は、遮蔽プレート11がマスク格納チャンバ2のマガジン9から搭載開口8を通ってプロセスチャンバ1内に運ばれる、図1に対応する図を示している。
【図3】図3は、遮蔽プレート11がガス入口要素4の下方に配置されかつマガジン9が矢印Pの方向に降下したことにより、マスク10が搭載開口6の前に配置された、図2に続く図を示している。
【図4】図4は、遮蔽プレート11が搭載開口6を通って、搭載開口6の前に配置されたマスク10の上方に運ばれた、図3に続く図を示している。
【図5】図5は、マスク10が保持具により遮蔽プレート11の下に固定された、図4に続く図を示している。
【図6】図6は、マスク10が遮蔽プレート11とともに搭載開口6を通ってプロセスチャンバ1内に運ばれた、図5に続く図を示している。
【図7】図7は、遮蔽プレート11が、保持しているマスク10とともに、ガス入口要素4の下方に配置された、図6に続く図を示している。
【図8】図8は、搭載開口6のゲートが閉じられ、搭載開口7のゲート8が開かれ、コーティングされる基板12が基板ホルダ13によりプロセスチャンバ1内に運ばれ、サセプタ5の上方であってマスク10の下方に配置された、図7に続く図を示している。
【図9】図9は、マスク10が、サポートピン14上に載置された基板12の上に降下し、かつ基板ホルダ13がプロセスチャンバ1から基板格納チャンバ3に後退した、図8に続く図を示している。
【図10】図10は、サセプタが上昇した後、サセプタ5の上面に基板が載置された、図9に続く図を示している。
【図11】図11は、遮蔽プレート11がプロセスチャンバ1からマガジン9に移動し、コーティング工程を実行可能となった、図10に続く図を示している。
【図12】図12は、図1のXII−XII線による概略断面を示している。
【図13】図13は、遮蔽プレート11の側断面図を示している。
【図14】図14は、遮蔽プレート11及び基板12の搬送装置を示すためにプロセスチャンバの断面を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図に示された装置は、周囲に対して気密性をもって閉鎖されたプロセスチャンバ1と、プロセスチャンバ1の上方に配置されたガス供給ユニット21と、プロセスチャンバ1内に配置され、キャリアガスを介してプロセスチャンバ内に搬送可能なプロセスガスを供給されるガス入口要素4とから構成されている。プロセスチャンバ1は、図示しない真空ポンプを用いて排気される。
【0022】
図1は、プロセスチャンバ1の右側に、ゲート8により閉鎖可能な搭載開口7を介してプロセスチャンバ1に接続された基板格納チャンバ3を示している。両矢印Pの方向に鉛直に配置可能なマガジン24が、基板格納チャンバ3の内部に設置されている。図示されたマガジン24は、2つの高さ位置を有し、2つの高さ位置の各々にそれぞれ基板搬送装置として機能することができる基板ホルダ13、13’が載置されている。大面積基板12、12’が、基板ホルダ13、13’の各々の上にそれぞれ載置されている。図示しない実施例においては、マガジン24が非常に多くの高さ位置を有し、よって、非常に多くの基板12、12’を格納することができる。マガジン24のマガジンポケットは、搭載開口22を通して搭載したり、取り出したりすることができ、同様にゲート8により閉鎖可能である。基板格納チャンバ3は、同様に、真空装置により排気できる。加えて、ガス供給ライン(図示せず)が、基板格納チャンバ3を大気圧の不活性ガスで満たすために基板格納チャンバ3内に開口しており、それにより、搭載開口22を介して搭載工程を行うことができる。
【0023】
図1において、マスク格納チャンバ2は、プロセスチャンバ1の左側に示されている。基板格納チャンバ3と同様に、マスク格納チャンバ2は、気密性のハウジングを有し、図示しない真空装置を用いて排気可能である。ここで同様に、マスク格納チャンバ2を不活性ガスで満たすためにガス供給ラインが設けられる。多数のマガジンポケットを有しかつエレベータの方式で両矢印Pの方向に移動可能なマガジン9が、マスク格納チャンバ2内に設置されている。これらのマガジンポケットは、建物の床の方式で互いに重なって配置されており、マスク10、10'、10"、10'"を搭載可能である。マスク10、10'、10"、10'"は、マウンティング(図示せず)に固定されることにより、後に詳述するように、最下ポケットに配置された遮蔽プレート11により搭載開口6を通してプロセスチャンバ1内に搬送される。マスク格納チャンバ2は、搭載開口6を介してプロセスチャンバ1に接続されている。搭載開口6は、搭載開口7の反対側に位置する。気密性のゲート8により閉鎖可能な搭載開口6の反対側には、同じくゲート8により気密性をもって閉鎖可能な搭載開口23が配置されている。この搭載開口23は、図示しない別のマスク格納チャンバ2に接続され、鉛直方向に移動可能なマガジン9にさらに別のマスクを同様に格納している。マスクは、2つのマスク格納チャンバ2の間で搭載開口23を介して交換可能である。
【0024】
図11は、プロセスチャンバの領域における装置の鉛直断面を概略的に示している。マガジン24が、多数の高さ位置を有するラックから構成され、右側に示された基板格納チャンバ3内に設置されている。各高さ位置に、フォーク形状の基板ホルダ13を保持し、基板ホルダ13により、その上に載置された基板12を搭載開口7を通して左に、プロセスチャンバ1内に移動できる。平面視にて長方形状を有しかつ図1に示した両矢印P1の方向に鉛直に移動可能なサセプタ5が、プロセスチャンバ内のガス入口要素4の下方に配置されている。基板12を載せたサセプタ5の表面を超えてサセプタ5の下方の位置まで突出するサポートピン14は、サセプタ5の縦孔に設置される。基板12は、サセプタ5を図10又は図11に示した位置に上昇させることにより、ガス入口要素4に対向するサセプタ5の上面の上に載置可能である。
【0025】
図12はさらに、図1に点線でのみ示したレール15を示している。レール15上を、遮蔽プレート11に取り付けられたローラ16に補助されて遮蔽プレート11が移動可能である。全部で2対のレール15が設けられる。一対のレール15は、プロセスチャンバ1内に配置され、ガス入口要素4のほぼ真下の位置に配置されている。もう一対のレールは、マガジン9内又はマスク格納チャンバ2内に配置され、少なくとも搭載位置においては、プロセスチャンバ1に配置された一対のレール15と同一面内に揃えられるように配置されている。このために、遮蔽プレート11に係合する駆動装置25が設けられる。これは例えば、空圧シリンダ若しくは液圧シリンダを用いた軸駆動による。
【0026】
図14は、プロセスチャンバの断面を概略的に示している。プロセスチャンバ1の天井は、ガス入口要素4の下面4’により形成される。下面4’は、図示しない多数のガス放出開口を有し、表面上に均一に分布している。コーティング工程の間、実施例では平面視で長方形を有するガス放出面4’を介してプロセスチャンバ1内にプロセスガスが流入することができる。不活性ガスが、マスク交換若しくは基板交換の間に、又はアイドル位置の間にガス放出面4’を通ってプロセスチャンバ1内に流れることができる。
【0027】
図12に示した駆動装置25を用いることにより、遮蔽プレート11を、図12に示した格納位置から図14に示した作業位置まで運ぶことができ、その場合、遮蔽プレート11が、ガス入口要素4のガス放出面4’の下方に位置する。
【0028】
ガス入口要素は、図示しないヒーターを用いて200℃〜400℃の間の温度に加熱される。しかしながら、他の工程においては、ガス入口要素4がさらに高いプロセス温度に加熱されてもよい。実施例においては、遮蔽プレート11が3層構造を有する。ガス入口要素4に対向するプレート18は、1mm厚のガラス板である。高反射材料、特に金属、特にアンバー、金又はアルミニウムからなる100μm厚の箔が、このガラス板18と下の石英ガラス板20の間に配置される。この箔19は、異なる熱膨張特性のために、ガラス板と石英ガラス板20の間に浮遊するように装着されている。熱放射領域における箔の放射率は、0.1未満である。
【0029】
遮蔽プレート11により、ガス入口要素4により放射される熱放射は、サセプタ5の方向すなわちサセプタ上に載置された基板12の方向において遮蔽される。
【0030】
サセプタ5は、冷却装置を有しており、これを用いてサセプタ5の表面温度を−80℃と20℃の間の温度に冷却可能である。基板12は、サセプタ5の冷却された表面上に載置されている結果、冷却された温度に保持される。
【0031】
上述した通り、遮蔽プレート11が、輸送要素を形成しており、それによりマスク10、10'、10"、10'"を、マスク格納チャンバ2のマガジン9からプロセスチャンバ1内に運ぶことができる。このために、マスク10又は図示しないマスクフレームが、遮蔽プレート11のクランプ要素17と協働することができる対向する保持具を有する。これは、図13及び図14に概略的にのみ図示されている。クランプ要素17は、マスク10を把持しかつ開放するために用いられるように構成されている。
【0032】
本装置の動作のモードは、以下の通りである。
図1は、アイドル位置にある装置を示しており、この位置では、サセプタ5が降下位置にあり、搭載開口6、7、22及び23のゲート8は閉鎖され、そしてプロセスチャンバ1内には基板12もマスク10も無く、遮蔽プレート11も無い。プロセスチャンバ内の全圧は、0.1mbar〜2mbarの間でよい。プロセスチャンバ1は、不活性ガスにより清浄化される。基板格納チャンバ3及びマスク格納チャンバ2は、同じ全圧とされている。
【0033】
図2は、プロセスチャンバ1を搭載するための第1ステップを示す。駆動装置25を用いて、遮蔽プレート11がマガジン9の最下位置から搭載開口6の前であってレール15の上に位置し、搭載開口6を通してプロセスチャンバ1内に移動させられる。
【0034】
同時に、マガジン9は図3の矢印Pの方向に降下させられる。同様に、マガジン24は、矢印Pの方向に図3に示した位置に降下させられる。遮蔽プレート11は、図3に示した動作位置、ガス入口要素4の下方にある。
【0035】
次のステップにおいて、遮蔽プレート11が、駆動装置25により駆動されてレール15上に移動し、搭載開口6を通して、マスク格納チャンバ2内に戻る。そこで、マスク10が存在するポケットに移動する。
【0036】
遮蔽プレート11は、その後、図5に示された位置に到達する。そこで、マスク10が、クランプ要素17により遮蔽プレート11の下面に固定される。
【0037】
図6は、遮蔽プレート11が、どのようにして、その下面に固定されたマスク10を搭載開口6を通ってプロセスチャンバ1の図7に示した位置に到達するまで運ぶかを示している。図7では、遮蔽プレート11及びこれが保持するマスク10は、ガス入口要素4の下方に位置している。ガス入口要素4により放射される熱は、ここで、サセプタ5に対して遮蔽される。
【0038】
図8は、次のステップを示しており、搭載開口7が開かれた後、搬送装置13を用いて基板12がプロセスチャンバ1内に導入される。基板12は、サセプタ5の上面に対して間隙を設けるように、サポートピン14上に設置される。実施例では基板ホルダーである搬送装置13は、その後、マガジン24に戻され、搭載開口7はゲート8を閉鎖することにより閉鎖される。
【0039】
サセプタ5は、その後、図10の矢印Pの方向に、基板12がその上に載置されるまで上昇する。
【0040】
最後に、遮蔽プレート11は、プロセスチャンバ1から格納チャンバ2へ移動させられ、それにより図11に示したプロセス位置に到達させられる。このプロセス位置において、ガス供給ユニット21で混合又は生成されたプロセスガスが、0.1mbar〜0.2mbarの全圧にてガス入口要素4を通してプロセスチャンバ1内に導入される。プロセスガスは、プロセスチャンバ1の内部で、例えば基板12の基板表面上で、その表面上に層を堆積するために化学的に反応することができる。マスク10は、シャドウマスクであり、それにより、影になっていない箇所でのみ成長が生じる。
【0041】
ガス供給ユニット21は、特に、ガス入口要素4にモノマーを供給でき、キャリアガスにより搬送される。このモノマーは、低温で濃縮される特性を有する。モノマーが、基板12の冷却された基板表面に出会うと、そこで濃縮されて重合しポリマーを形成する。
【0042】
ガス入口要素の冷却を行うことなく、コーティングプロセスが完了した後、遮蔽プレート11は、図11に示したプロセス位置から図10に示した位置に運ばれる。サセプタ5は、図9に示した位置に降下される。マスク10は、遮蔽プレート11により基板12の基板表面から持ち上げられる。または、基板12が、サポートピン14を降下させることにより、マスク10から取り出される。基板12は、基板ホルダ13に補助されてプロセスチャンバからマガジン24に戻される。
【0043】
その後、別の基板12’が、上述した方式でコーティングされるために、基板ホルダ13’に補助されてプロセスチャンバ1に運び込まれる。
【0044】
この装置はさらに、例えばMOCVDプロセスを用いてOLED又は半導体層を堆積するために適している。
【0045】
開示された全ての特徴は(それ自体)本発明に関係する。関連/添付の優先書類(先の出願の複写)の開示内容はまた、その出願の開示の全体が、本願の請求の範囲にこれらの書類の特徴を統括させる目的も含め、ここに包含される。それらの任意の従属形式における従属項は、特にこれらの請求の範囲に基づく分割出願を行うために従来技術の独立した進歩性ある改良を特徴付ける。
【符号の説明】
【0046】
1:プロセスチャンバ、2:マスク格納チャンバ、3:基板格納チャンバ、4:ガス入口要素、5:サセプタ、6:搭載開口、7:搭載開口、8:ゲート、9:マガジン、10:マスク、11:遮蔽プレート、12:基板、13:基板ホルダ、基板搬送装置、14:サポートピン、15:レール、16:ローラガイド、17:クランプ要素、18:石英ガラス板、19:反射箔、20:石英ガラス板、21:ガス供給装置、22:搭載開口、23:搭載開口、24:マガジン、25:駆動装置、P:矢印、P:矢印、P:矢印、P:矢印


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングを含む基板(12)の処理を行うための装置であって、
プロセスチャンバ(1)と、
搭載開口(6,7)を介してプロセスチャンバ(1)に接続されプロセスチャンバ(1)内で処理される基板(12)を格納するための、又は、処理プロセスで用いるマスク(10、10’、10”、10’”)を格納するための、少なくとも1つの格納チャンバ(2,3)と、
搭載開口(6,7)を通して基板(12)又はマスク(10、10’、10”、10’”)をプロセスチャンバ(1)に搭載し又は取り出すための搬送装置(13)と、
開始物質をキャリアガスとともにプロセスチャンバ(1)に導入するための温度制御可能なガス入口要素(4)と、
ガス入口要素(4)に対向して配置されており、処理される基板(12)を受容するためのサセプタ(5)と、
遮蔽位置にあるとき、ガス入口要素(4)とサセプタ(5)又はマスク(10)との間に位置して基板(12)又はマスク(10)をガス入口要素(4)からの熱の影響から遮蔽するための遮蔽プレート(11)と、
遮蔽プレート(11)を、基板(12)の処理前にガス入口要素(4)に相対する遮蔽位置から格納位置へ移動させるとともに、基板(12)の処理後に格納位置から遮蔽位置に戻す遮蔽プレート移動装置(15、16)と、を有する前記装置において、
格納位置にあるとき、遮蔽プレート(11)が、格納チャンバ(2、3)のうちの1つの内部に位置することを特徴とする、装置。
【請求項2】
少なくとも1つの基板(12)を格納するための第1の格納チャンバ(3)と、処理工程の間に遮蔽プレート(11)が収容される第2の格納チャンバ(2)と、を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第2の格納チャンバが、少なくとも1つのマスク(10、10’、10”、10’”)を格納するためのマスク格納チャンバ(2)であり、マスク(10,10’、10”、10’”)は、遮蔽プレート移動装置(15、16)に補助されて、又は、遮蔽プレート(11)に補助されてマスク格納チャンバ(2)からプロセスチャンバ(1)に搬送可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
遮蔽プレート(11)におけるガス入口要素(4)に対向する面及びサセプタ又はマスク(10)に対向する面の、一方又は双方が高い反射率を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
遮蔽プレート(11)が、2枚のガラス又は石英ガラスの板(18、20)の間に配置された高い反射率の箔(19)を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
マスク格納チャンバ(2)がマガジン(9)を有し、マガジン(9)は、遮蔽プレート(11)及び少なくとも1つのマスク(10)を収容するために鉛直方向に移動可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
遮蔽プレート移動装置(15、16)が、マスク格納チャンバ(2)内に配置された駆動装置(25)と、プロセスチャンバ(1)内に延びているレール機構(15)と、を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
プロセスチャンバ(1)における、プロセスチャンバ(1)をマスク格納チャンバ(2)に接続する搭載開口(6)が、プロセスチャンバ(1)を基板格納チャンバ(3)に接続する搭載開口(7)の反対側に配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
フォーク形状である基板搬送装置(13)を用いて基板(12)を設置するために、サセプタ(5)からガス入口要素(4)の方向に突出するサポートピン(14)を有し、サセプタ(5)は、上昇により基板(12)と熱伝導的な接触を行うために鉛直方向に移動可能であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
コーティングを含む基板(12)の処理を行う方法であって、プロセスチャンバ(1)と、キャリアガスとともに開始物質を導入するために温度制御されたガス入口要素(4)と基板(12)を受容するためのサセプタ(5)との間の遮蔽位置に遮蔽プレート移動装置(15、16)に補助されて運ばれる遮蔽プレート(11)と、を有し、続いて、基板(12)がプロセスチャンバ(1)内の遮蔽位置に搬送装置(13)に補助されて運ばれてサセプタ(5)上に設置された後、遮蔽プレート(11)が遮蔽位置から格納位置へ運ばれ、その後、ガス状の開始物質が温度制御されたガス入口要素(4)を通して導入されることにより基板(12)が処理されて基板(12)上に層が堆積された後、遮蔽プレート(11)が遮蔽プレート移動装置(15、16)を用いて格納位置から遮蔽位置に戻され、最後に、基板(12)が搬送装置(13)に補助されてプロセスチャンバ(1)から格納チャンバ(3)に運ばれる前記方法において、
格納位置における遮蔽プレート(11)が格納チャンバ(2、3)内にあることを特徴とする方法。
【請求項11】
格納位置にあるマスクが、マスク格納チャンバ(2)内にあり、搭載開口(6)を通って遮蔽位置に運ばれることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
マスク(10)が、遮蔽プレート移動装置(15、16)を用いて、又は、遮蔽プレート(11)に補助されて、マスク格納チャンバ(2)からプロセスチャンバ(1)に運ばれることを特徴とする請求項10又は11に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2013−519794(P2013−519794A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553260(P2012−553260)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051793
【国際公開番号】WO2011/101273
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(502010251)アイクストロン、エスイー (36)
【Fターム(参考)】