説明

コーティング適用方法、ボンドコート組成物および被覆物品

【課題】 ボンドコート表面の微細構造を改良することにより耐久性を向上させたサーマルバリアコーティングおよびその適用方法を提供する。
【解決手段】 物品上にコーティングを適用する方法が、物品を用意し(ステップ10)、この物品の少なくとも一つの表面上にボンドコート層を適用し(ステップ12)、このボンドコート層上で少なくとも一つの金属を酸化させて(ステップ14)、ボンドコート層の露出表面上に熱成長酸化物層を形成させ(ステップ16)、このボンドコート層の上にサーマルバリアコーティング層を適用する(ステップ18)ステップを備える。これにより熱膨張係数などの基体特性が改善され、優れた耐久性を持つコーティングが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルバリアコーティングに関し、より詳細には、耐久性が改善されたサーマルバリアコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
例示的な被覆金属基体は、基体上に配設された金属ボンドコート層と、ボンドコート層上に配設された熱成長酸化物層(以下、「TGO層」)と、TGO層上に配設されたサーマルバリアコーティング層(以下、「TBC層」)と、を含む。TGO層(例えばアルミナ)は、通常、ボンドコート層が堆積された後、かつTBCが堆積される前に、ボンドコートが被覆された基体を熱処理し、ボンドコートの外側表面を酸化させ、それによりTGO層を生成させることによって形成される。その後、TBCをこのTGO層上に堆積させることができる。代替実施形態では、TGO層は、ボンドコートやTBCの適用工程の一部として生成される。
【0003】
TGOは、TBC層とボンドコート層とを接着し、さらにTBCから基体に向かう酸素拡散をも低減させる。被覆された金属基体の使用時に、このTGO層は、通常、成長し続ける。
【0004】
TBCは、一般に、電子ビーム物理蒸着法(以下、「EB−PVD法」)、またはエアプラズマ溶射法(以下、「APS法」)によって、ボンドコートが被覆された金属基体上に適用される。稼働時におけるTBC被覆ハードウェアの主な故障形態には、TGOとの界面、すなわちTBC−TGO界面での、またはその付近でのTBCの破損が含まれる。EB−PVD法によって被覆されたハードウェアの場合、破損は、一般に、TGO−ボンドコート界面で生じ得る。APSによって被覆されたハードウェアでは、破損は一般に、TBC内でTBC−TGO界面に近接して生じ得る。
【0005】
こうした破損の原因は、一般に、ボンドコート(または基体)−TGO−TBC間界面領域を跨ぐ諸材料の熱膨張係数の不一致の結果として生じる応力に関連すると考えられる。TBCの特性、例えば弾性率は、こうした不一致をもたらし、焼結作用により時間と共に変化する可能性がある。
【0006】
その結果、ボンドコート(基体)−TGO−TBC界面を跨ぐ応力の管理が重要となる。界面を跨ぐ応力は、現在、様々な要因によって対処される。主に、EB−PVD法またはAPS法によって適用されたTBCの微細構造は、この界面を跨ぐ歪みを最小限に抑えようとするものである。このためセラミック構造が適合するように意図されている。焼結は、熱サイクル中のセラミックコーティング内の粒子間運動を抑制する。したがって、焼結をもたらすいかなる作用も回避されるべきである。
【0007】
別の考慮すべき点は、基体との熱膨張係数(以下、「CTE」)のより良好な一致を実現するために、セラミックの化学的性質を変化させうることである。より良好なCTEの一致を実現するために、潜在的なTBC組成物を、それらの弾性率値に基づいて選択することができる。
【0008】
しかし、TBCの耐久性を改善するための従来の試みはセラミック材料を対象としており、基体−TBC系全体の性能を改善するために、セラミック材料、またはその形成された微細構造の化学的性質に対する調整が行われている。
【特許文献1】米国特許第3,528,861号明細書
【特許文献2】米国特許第3,542,530号明細書
【特許文献3】米国特許第3,649,225号明細書
【特許文献4】米国特許第3,676,085号明細書
【特許文献5】米国特許第3,754,903号明細書
【特許文献6】米国特許第4,078,922号明細書
【特許文献7】米国再発行特許発明第32,121号明細書
【特許文献8】米国特許第4,585,481号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、TBCのセラミック材料を改良するのではなく、基体の特性を改良することによって、TBCを改善することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、物品上にコーティングを適用する方法が、概ね、物品の少なくとも1つの表面上に、ボンドコート材料と、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ケイ素、希土類金属、元素周期表の3A族、および4A族からなる群から選択された少なくとも1つの金属と、を概ね含むボンドコート層を適用するステップと、ボンドコート層の露出表面上に、少なくとも1つの表面むら(surface variation)を形成させ、かつボンドコート層上に熱成長酸化物層を形成させるように、少なくとも1つの金属を酸化させるステップと、被覆物品を製造するように前記熱成長酸化物層上にサーマルバリアコーティング層を適用するステップと、を備える。
【0011】
本発明の別の態様によれば、ボンドコート組成物は、概ね、ボンドコート材料と、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ケイ素、希土類金属、元素周期表の3A族、および元素周期表の4A族からなる群から選択された少なくとも1つの酸化金属と、を含む。
【0012】
本発明の別の態様によれば、被覆物品は、概ね、物品の少なくとも1つの表面上に配設されたボンドコート層と、ボンドコート層上に配設された熱成長酸化物層と、前記熱成長酸化物層上に配設されたサーマルバリアコーティング層と、を備え、前記ボンドコート層は、概ね、ボンドコート材料と、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ケイ素、希土類金属、元素周期表の3A族、および4A族からなる群から選択された少なくとも1つの金属と、を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ボンドコートの耐久性を改善するための従来の試みは、TBC層の特性を調整または変更することによる広範な基体−TBC界面領域を跨ぐ熱機械的特性の傾斜の違い(grade differences)に焦点を合わせてきた。本発明は、TGO−TBC界面領域すぐに隣接する、TBC層に近接したボンドコート表面の微細構造を変えることによって、どのように性能を改善することができるかについて説明する。
【0014】
ここで、図1を参照すると、本発明の方法の1つを示すフローチャートが示されている。ステップ10で物品が用意され、ステップ12でボンドコート層が適用される。このボンドコート層は、ボンドコート材料と、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ケイ素、希土類金属、元素周期表の3A族、および元素周期表の4A族からなる群から選択された少なくとも1つの金属と、を含む。
【0015】
ボンドコート材料は、MCrAlY材料を含みうる。MCrAlYは既知の金属コーティング系を指し、Mがニッケル、コバルト、鉄、白金、またはそれらの混合物を示し、Crがクロムを示し、Alがアルミニウムを示し、Yがイットリウムを示す。MCrAlY材料は、所定の組成で付着され、また、堆積工程中に基体とはほとんど相互作用しないため、オーバーレイコーティングとしてよく知られている。MCrAlY材料の、これに限定しないいくつかの例として、FeCrAlYコーティングについて記載している特許文献1、および特許文献2を参照されたい。さらに、特許文献3は、MCrAlYコーティングを堆積する前にクロム層が基体に適用された、複合コーティングについて記載している。特許文献4は、CoCrAlYオーバーレイコーティングについて記載し、特許文献5は、特に延性が高いNiCoCrAlYオーバーレイコーティングについて記載している。特許文献6は、ハフニウムとイットリウムとが共に存在することによって酸化抵抗が改善された、コバルトベースの構造の合金について記載している。本出願人に譲渡され、本願の参照となる特許文献7には、好ましいMCrAlYボンドコート組成物が、約5〜40%(重量パーセント)のCrと、約8〜35%のAlと、約0.1〜2.0%のYと、約0.1〜7%のSiと、約0.1〜2.0%のHfと、Ni、Co、およびそれらの混合物からなる群から選択された残分と、の重量百分率の組成範囲を有するものとして記載されている。また本出願人に譲渡され、本願の参照となる特許文献8も参照されたい。
【0016】
ボンドコート材料はまた、Al、PtAlなどを含み、当技術分野において拡散被覆として知られる。さらに、ボンドコート材料はまた、上述のようにAl、PtAl、MCrAlYなどを含んでもよく、これらは、当技術分野では、カソードアークコーティングとして知られている。
【0017】
これらの実施形態全てにおいて、ボンドコート材料は、当業者に周知の少なくとも1つの貴金属を含みうる。
【0018】
ボンドコート材料の粒径は、任意の適切なサイズとすることができ、諸実施形態では、約5ミクロン(0.005mm)〜約60ミクロン(0.060mm)の間で、平均粒径は約25ミクロン(0.025mm)である。ボンドコート30は、任意の適切な厚さで適用することができ、諸実施形態では、約5ミル(0.127mm)〜約10ミル(0.254mm)の厚さである。いくつかの実施形態では、約6ミル(0.152mm)〜約7ミル(0.178mm)の厚さである。
【0019】
図1の適用ステップ12の準備として、ボンドコート材料は、当業者に周知の複数の方法の1つを用いて物品上に堆積されるように調製されうる。例えば、ボンドコート材料は、図2Aのフローチャートに示されるように、ステップ20および22において、溶融ボンドコート材料を形成するために第1のるつぼ中で溶融される。ボンドコート材料は、当業者に周知の任意の技術を用いて溶融することができる。ステップ24で、第2のるつぼが用意され、それにより、ステップ26で、金属を溶融し、溶融金属を形成することができる。金属は、当業者に周知の任意の技術を用いて溶融することができる。次いで、ステップ28で、溶融ボンドコート材料は、物品の少なくとも1つの表面上に堆積される。次いで、ステップ30で、溶融ボンドコート材料の露出表面上に溶融金属が堆積されて、物品の表面上にボンドコート層が形成される。
【0020】
別の例では、図2Bのフローチャートに示されるように、ステップ40で、少なくとも1つの金属で構成されたるつぼが用意される。ステップ42で、このるつぼ中でボンドコート材料が溶融される。ボンドコート材料がるつぼ中で溶融されるに従い、ステップ44で、本発明の所望の効果を得るのに十分な量の金属が、るつぼから分離、剥離などして、溶融ボンドコート材料と組み合わされ、ボンドコート材料と少なくとも1つの金属との溶融混合物を形成する。この所望の結果が得られるように、るつぼを準備および加熱し、ボンドコート材料を当業者に周知の任意の技術を用いて溶融させる。次いで、ステップ46で、ボンドコート層を形成するために、ボンドコート材料と少なくとも1つの金属との溶融混合物を、物品の少なくとも1つの表面上に堆積させる。
【0021】
さらに別の例では、図2Cのフローチャートに示されるように、ステップ50でるつぼが用意され、それにより、ステップ52で、ボンドコート材料を溶融し、溶融ボンドコート材料が形成される。ボンドコート材料は、当業者に周知の任意の技術を用いて溶融される。溶融ボンドコート材料がるつぼ内に残るので、ステップ54で、少なくとも1つの金属を溶融ボンドコート材料に加え、ステップ56で、ボンドコート材料と金属との溶融混合物を形成させる。金属は、当業者に周知の任意の技術を用いて溶融される。次いで、ステップ58で、ボンドコート材料と金属との溶融混合物が、物品の少なくとも1つの表面上に堆積されてボンドコート層が形成される。
【0022】
これらのボンドコート材料は、オーバーレイボンドコート、拡散ボンドコート、カソードアークボンドコートなどの(限定せず)、高密度、均質、かつ接着性のある所望の組成物のコーティングを生成することが可能な任意の方法によって適用すなわち堆積される。かかる技術には、拡散処理法(例えば内方拡散、外方拡散など)、低圧プラズマ溶射、エアプラズマ溶射、スパッタリング、カソードアーク、電子ビーム物理蒸着法、高速プラズマ溶射法(例えば、HVOF、HVAF)、燃焼処理、線材溶射法、レーザビームクラッディング、電子ビームクラッディング、電気めっきなどが含まれ得る。
【0023】
図1を再度参照すると、ステップ14に示されるように、少なくとも1つの金属が酸化される。この酸化は、同時に、または、個別の工程ステップで、ボンドコートに表面むらを生成させ、ボンドコート上にTGO層を生成することができる。この酸化は、ボンドコート層の堆積中、ボンドコート層の堆積後(すなわち、熱処理によって)、あるいはTBCの堆積中に生じる。本明細書に記載の金属は、アルミナと反応して中間体の金属酸化物粒子を形成する傾向が強い単一の酸化物である。こうした酸化物粒子の成長は、当業者に周知の特定の処理条件を用いて制御することができる(すなわち、酸化物の生成は、時間、温度、大気露点などの関数として制御することができる)。好ましくは、酸化物粒子の成長は、いったんTGO層が形成されると、TGO層が、表面むらを含めてボンドコート層全体を覆う連続した保護層として存在するように制御される。
【0024】
これらの酸化物粒子は、ボンドコート層の露出表面まで移動し、その結果、粒子は、物品の表面に対して実質的に水平に、あるいは実質的に垂直に配向される。酸化物粒子は、ボンドコート層の露出表面に向かって移動して酸化され、また、酸化され続けて複数の表面むらを形成する。これらの表面むらは、TGO−TBC界面領域に隣接し、TBC層に近接するボンドコート層の機械的特性を徐々に変化させる(grade)働きをする。実質的に、酸化物粒子は、より適合性のある、より低い弾性率を有するボンドコート層を提供し、そのボンドコート層上に、後にTBC層が堆積される。この酸化物粒子は、当業者に認識されているように、有益な酸化物スケール(oxide scale)の接着効果を示す。
【0025】
図2Bのフローチャートに戻ると、以下の例は、要求されている有益な酸化物スケールの接着効果を実証する。ボンドコート材料は、酸化マグネシウム安定化ジルコニアで構成されたるつぼ内で溶融される。第1に、マグネシウムとジルコニウムはどちらもボンドコート材料中に含まれるある量の硫黄と反応し、結果として得られるボンドコート層の硫黄含有量は減少して、後に続く酸化におけるTGOの優れた酸化スケールの接着性を促進する。第2に、追加のイットリウムとジルコニウムは、当業者に理解されるように、ボンドコート材料中で、潜在的に流動的な(mobile)形態、すなわち耐火性硫化物粒子ではなく低融点共晶として存在すると考えられる。
【0026】
次に、図3を参照すると、ボンドコート層64を、例えばカソードアーク処理によって適用するとき、衝突する粒子が、被覆される物品60のすぐ隣接する領域を局所的に加熱するのに十分なエネルギーを与える。十分な熱がある場合、低融点相は溶融し、コーティング層の厚さが増すに従い、低融点相がボンドコート層64の表面まで連続的に引き寄せられる。金属粒子がボンドコート層64の表面に達すると、優先的に酸化されて、酸化粒子66および結果として得られる表面むらを形成する。カソードアーク処理を使用すると、結果として得られる表面むら、すなわち酸化粒子66は、図3に示されるように、物品60の表面62に対して、ほぼ垂直に現れることが観察されている。
【0027】
この例はカソードアーク処理を含むが、本発明の方法は、本明細書に記載の他の方法を利用するように変更してもよい。例えば、当業者に周知のパックアルミナイジング(pack aluminization)処理を用いて、PtAlボンドコート層を適用してもよい。当業者に周知の物理蒸着法(PVD)を用いて、少なくとも1つの金属を適用してもよい。次に、図4を参照すると、堆積された被膜84,90は金属を含み、その金属は、酸化された後、処理されたボンドコート層内に、広範囲にわたる酸化堆積物86を形成する。PVD処理を使用すると、得られる表面むら、すなわち酸化粒子86は、図4に示されるように、物品80の表面82に対して、ほぼ水平に現れることが観察されている。
【0028】
ボンドコート層中の少なくとも1つの金属は、ボンドコート層が適用される間、ボンドコート層が適用された後、もしくはTBCが適用される間のいずれかで酸化される。図2Aに示されるような諸実施形態では、少なくとも1つの金属を、約0.010トル〜0.020トル(torr)の圧力で金属を堆積させながら、低真空下で酸化することができる。
【0029】
図2A,2B,2Cの諸工程に対する他の代替として、溶射処理によってボンドコート層を堆積させた後に、少なくとも1つの金属が、微細な酸化物粒子として導入されてもよい。別の代替実施形態では、少なくとも1つの金属は、ボンドコート層の露出表面に所望の表面むらを生成するようにバーンオフされる微細な有機樹脂粒子を含んでもよい。さらに別の実施形態では、少なくとも1つの金属は、ボンドコート層に電気めっきすることができる、導電性の微細な酸化物粒子を含んでもよい。
【0030】
図1に戻ると、ステップ16で示されるように、TGO層は、表面むらが生成される間、またはその後に、ボンドコート層上に形成される。TGOは、当業者に周知のように、ボンドコート層を適用させる間、ボンドコート層を適用させた後(すなわち、熱処理によって)、あるいはTBC層を適用させる間に形成される。例えば、アルミナをベースとする層、すなわち、TGO層は、TBCが適用される前に、約1500°F〜約2100°Fで約5分〜約4時間熱処理することにより、ボンドコート層上に形成される。好ましくは、TGO層は、表面むらを含めたボンドコート層上の連続保護層として形成される。
【0031】
任意選択的に、物品は、TGO層が形成された後に、ステップ18で、TBC層を形成するようにサーマルバリア化合物で被覆される。TBCは、当業者に周知のように、ターボ機械応用例に使用されるセラミックをベースとする化合物を含みうる。代表的なサーマルバリア化合物には、任意の安定化ジルコン酸塩、任意の安定化ハフニウム酸塩、前述の化合物のうち少なくとも1つを含む組合せなど、例えば、イットリア安定化ジルコニア、カルシア安定化ジルコニア、マグネシア安定化ジルコニア、イットリア安定化ハフニア、カルシア安定化ハフニア、およびマグネシア安定化ハフニアなどが含まれる(限定せず)。イットリア安定化ジルコニアは、7YSZ(登録商標)として市販されている。
【0032】
サーマルバリア化合物は、当業者に周知の任意の工程を用いて物品に適用される。適切な適用工程には、物理蒸着法(例えば電子ビーム)、溶射法(例えば、エアプラズマ溶射、高速フレーム溶射)、スパッタリング、ゾル‐ゲル法、スラリ法、前述の適用法のうち少なくとも1つを含む組合せなどが含まれる(限定せず)。TBC層の適用後、得られる被覆物品は、約1250°F〜約2100°Fで約5分〜約4時間熱処理される。
【0033】
物品は、エーロフォイルを有する任意の部品、シールを有する任意の部品、エーロフォイル、シールなど(限定せず)、ターボ機械応用例で使用される部品を含みうる。当業者に周知のように、シールを有するターボ機械部品またはシール全般のTBCコーティングは、通常、エーロフォイルを有するターボ機械部品またはエーロフォイル全般のTBCコーティングよりも厚い。同様に、本発明のTBCコーティングは、当業者に周知のようにこれらの工業規格に準拠する。例えば、物品は、ブレード、ベーン、ステータ、および中間タービンフレームが含まれ得る(限定せず)。また、さらに別の例では、物品には、シール、燃焼器パネル、燃焼室、燃焼器隔壁パネル、ディスク側板、燃料ノズルガイドが含まれ得る(限定せず)。
【0034】
次に、図3を参照すると、物品60は、少なくとも1つの表面62を有する。複数の酸化粒子66を有するボンドコート層64が、表面62上に配設される。TGO層68は、ボンドコート層64上に酸化粒子66に近接して配設される。TBC層70は、TGO68上に配設される。ボンドコート層64は、酸化粒子が物品の表面に対して実質的に垂直に配向されたオーバーレイ型(overlay‐type)のボンドコートである。
【0035】
次に、図4を参照すると、物品80は少なくとも1つの表面82を有する。複数の酸化粒子86を有するボンドコート層84が、表面82上に配設される。TGO層88は、ボンドコート層84上に酸化粒子86に近接して配設される。TBC層90は、TGO88上に配設される。このボンドコート層は、酸化粒子が物品の表面に対して実質的に水平に配向されたパック型(pack‐type)のボンドコートである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の方法を示すフローチャートである。
【図2A】図1の方法の一ステップの一実施形態を示すフローチャートである。
【図2B】前記ステップの別の実施形態を示すフローチャートである。
【図2C】前記ステップのさらに別の実施形態を示すフローチャートである。
【図3】本発明のオーバーレイ型のボンドコートを備えた被覆物品の一部を示す図である。
【図4】本発明の改変されたパック型のボンドコートを備えた別の被覆物品の一部を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の少なくとも1つの表面上に、ボンドコート材料と、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ケイ素、希土類金属、元素周期表の3A族、および4A族からなる群から選択された少なくとも1つの金属と、を含むボンドコート層を適用するステップと、
前記ボンドコート層の露出表面上に少なくとも1つの表面むらを形成させ、かつ前記ボンドコート層上に熱成長酸化物層を形成させるように、前記少なくとも1つの金属を酸化させるステップと、
被覆物品を製造するように前記熱成長酸化物層上にサーマルバリアコーティング層を適用するステップと、
を備えてなる物品へのコーティング適用方法。
【請求項2】
前記酸化ステップが、前記ボンドコート層の露出表面に近接するとともに前記物品の前記少なくとも1つの表面に対して実質的に水平に配向された複数の酸化粒子金属を形成させるように、前記少なくとも1つの金属を酸化させるステップを備えることを特徴とする請求項1に記載のコーティング適用方法。
【請求項3】
前記酸化ステップが、前記ボンドコート層の露出表面に近接するとともに前記物品の前記少なくとも1つの表面に対して実質的に垂直に配向された複数の酸化粒子金属を形成させるように、前記少なくとも1つの金属を酸化させるステップを備えることを特徴とする請求項1に記載のコーティング適用方法。
【請求項4】
前記酸化ステップが、前記少なくとも1つの金属を、約0.010〜0.020トルの圧力で酸化させるステップを備えることを特徴とする請求項1に記載のコーティング適用方法。
【請求項5】
前記酸化ステップが、前記サーマルバリアコーティングが適用される前に前記ボンドコート層上にアルミナをベースとする層を形成させるように、前記ボンドコートで被覆された物品を約1500°F〜2150°Fで約5分〜4時間熱処理するステップを備えることを特徴とする請求項1に記載のコーティング適用方法。
【請求項6】
前記ボンドコート層を適用するステップが、
第1のるつぼ中で前記ボンドコート材料を溶融させるステップと、
第2のるつぼ中で前記少なくとも1つの金属を溶融させるステップと、
前記物品の前記少なくとも1つの表面上に前記ボンドコート材料を適用するステップと、
前記ボンドコート材料の露出表面上に前記少なくとも1つの金属を適用するステップと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のコーティング適用方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの金属が、約0.010トル〜0.020トルの圧力で適用されることを特徴とする請求項6に記載のコーティング適用方法。
【請求項8】
前記ボンドコート層の適用ステップが、拡散処理、低圧プラズマ溶射、エアプラズマ溶射、スパッタリング、カソードアーク、電子ビーム物理蒸着法、高速プラズマ溶射法、燃焼処理、線材溶射法、レーザビームクラッディング、電子ビームクラッディング、電気めっき法よりなる群から選択された堆積処理を用いることを特徴とする請求項1に記載のコーティング適用方法。
【請求項9】
前記ボンドコート層の適用ステップが、
前記ボンドコート材料を、少なくとも1つの金属から構成されるるつぼ中で溶融させるステップと、
前記ボンドコート材料と前記少なくとも1つの金属との溶融混合物を形成させるステップと、
前記ボンドコート層を形成するように前記少なくとも1つの表面上に前記溶融混合物を堆積させるステップと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のコーティング適用方法。
【請求項10】
前記ボンドコート層の適用ステップが、
溶融ボンドコート材料を形成するために、るつぼ中で前記ボンドコート材料を溶融させるステップと、
前記少なくとも1つの金属を、前記溶融ボンドコート材料中に添加するステップと、
前記ボンドコート材料と前記少なくとも1つの金属との溶融混合物を形成させるステップと、
前記ボンドコート層を形成するように前記少なくとも1つの表面上に前記溶融混合物を堆積させるステップと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のコーティング適用方法。
【請求項11】
前記サーマルバリアコーティングの適用ステップが、物理蒸着法、溶射法、スパッタリング法、ゾル‐ゲル法、スラリ法よりなる群から選択された堆積処理を用いることを特徴とする請求項1に記載のコーティング適用方法。
【請求項12】
ボンドコート材料と、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ケイ素、希土類金属、元素周期表の3A族、および4A族からなる群から選択された少なくとも1つの酸化金属と、を含むボンドコート組成物。
【請求項13】
前記ボンドコート材料が、任意選択的な貴金属と、MCrAlY材料と、を含み、前記Mが、ニッケル、コバルト、鉄、およびこれらの混合物からなる群から選択された金属であることを特徴とする請求項12に記載のボンドコート組成物。
【請求項14】
前記ボンドコート材料が、任意選択的な貴金属と、アルミニウム、白金、およびこれらの混合物からなる群から選択された材料と、を含むことを特徴とする請求項12に記載のボンドコート組成物。
【請求項15】
前記ボンドコート材料が、任意選択的な貴金属と、アルミニウム、白金、およびMCrAlYからなる群から選択された材料と、を含み、前記MCrAlYの前記Mが、ニッケル、コバルト、鉄、およびこれらの混合物からなる群から選択された金属であることを特徴とする請求項12に記載のボンドコート組成物。
【請求項16】
前記物品の少なくとも1つの表面上に配設されたボンドコート層と、
前記ボンドコート層上に配設された熱成長酸化物層と、
前記熱成長酸化物層上に配設されたサーマルバリアコーティング層と、
を備えた被覆物品であって、
前記ボンドコート層が、ボンドコート材料と、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ケイ素、希土類金属、元素周期表の3A族、および4A族からなる群から選択された少なくとも1つの金属と、を含む被覆物品。
【請求項17】
前記少なくとも1つの金属が、前記少なくとも1つの表面に対して実質的に水平に配向された複数の酸化粒子金属を備えることを特徴とする請求項16に記載の被覆物品。
【請求項18】
前記少なくとも1つの金属が、前記少なくとも1つの表面に対して実質的に垂直に配向された複数の酸化粒子金属を備えることを特徴とする請求項16に記載の被覆物品。
【請求項19】
前記ボンドコート材料が、任意選択的な貴金属と、アルミニウム、白金、およびMCrAlYからなる群から選択された材料と、を含み、前記MCrAlYの前記Mが、ニッケル、コバルト、鉄、およびこれらの混合物からなる群から選択された金属であることを特徴とする請求項16に記載の被覆物品。
【請求項20】
前記サーマルバリアコーティングが、
安定化ジルコン酸塩と、
安定化ハフニウム酸塩と、
のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項16に記載の被覆物品。
【請求項21】
前記物品が、タービンエンジン部品を備えることを特徴とする請求項16に記載の被覆物品。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−277722(P2007−277722A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97008(P2007−97008)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】