説明

シフト操作装置

【課題】回転によるシフト操作を基本としつつ、ホームポジションとニュートラルポジションとを識別可能であって、指先で簡単に操作できるシフト操作装置を提供する。
【解決手段】保持体と、保持体へ進出可能に、かつ進出後は保持体に対して回転可能に構成された操作体4とを備え、操作体4には、操作体側係合部40(回転被支持部42、回転被規制部44)が設けられ、保持体には、操作体4の進出を可能にすると共に、操作体4の回転を可能とする保持体側係合部20(回転支持部22、回転規制部24、案内部26)を設け、回転支持部22が操作体4の進出時の回転被支持部42の進行、進行後の回転被支持部42の回転をそれぞれ許容し、回転規制部24が操作体4の非進出時に回転被規制部44を回転不能に規制し、案内部26が操作体4の進出時に回転被規制部44を案内すると共に、保持体には、操作体4の進出に抗する弾性体6を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のバイワイヤーシフトに使用可能なシフト操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の前進や後進などを選択するためのシフト操作装置は、運転者横のフロアに立設されたレバーや、ステアリングコラムに横方向へ突出したレバー、あるいは運転者の斜め前方のコンソールに設けられたレバーなどを操作し、これらのレバーに接続されたワイヤーにより変速装置を駆動する方式が採用されていた。近年、シフト操作装置を変速装置と電子的に接続したいわゆるバイワイヤーシフターの構成が広く採用されるようになってきた。かかるバイワイヤーシフターでは、シフト操作装置全体を電子的に制御する方式や、シフト操作のうち、シフトアップやシフトダウンなどに限って電子的に制御する方式などが採用されており、特にシフトアップ及びシフトダウンは、ステアリングに設けたスイッチにより操作する方式がある。
【0003】
このようなバイワイヤーシフターに関し、基本的なシフト操作に不可欠なホームポジション、ニュートラルポジション、ドライブポジション、及びリバースポジションのみを備え、変速操作は別体のレバーによって行う装置の構成例が特許文献1に開示されている。かかる構成例においては、基本シフト操作を行う操作器をドアの内側に配置しており、操作体である回転操作ドラムを回転操作することでシフト操作(自動車の進行方向の選択操作)を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−52672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された構成例における回転操作ドラムでは、ホームポジション(パーキングポジション)とニュートラルポジションが同一位置に配されているので、これら2つのポジション(状態)を識別するためには、付加的な配慮(別途の機構)が必要となる。そして、回転操作ドラムを指で操作することは別の操作が必要となる。
【0006】
このため、ホームポジションとニュートラルポジションとを識別するための特段の配慮(複雑な機構)を必要とすることなく、これら2つのポジション(状態)を識別して操作することが可能なシフト操作装置の改良が望まれているが、現時点ではこのような要望を十分に満足するシフト操作装置の改良構成は知られていない。
【0007】
また、特許文献1に開示された構成例においては、ニュートラル/パーキングポジションからDポジションあるいはRポジションへの操作が制限無く行える構成なので、その操作が正しいか否かを判定する付加的な配慮(別途の機構)が必要となる。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、回転によるシフト操作を基本としつつ、ホームポジションとニュートラルポジションとを識別して操作可能であり、また誤操作を防止可能であって、かつ指先で簡単かつ連続的に操作でき、例えば、ステアリングパッドに配置するのにも適したシフト操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のシフト操作装置は、保持体と、該保持体内へ進出可能に、かつ進出後は前記保持体に対して回転可能に構成された操作体とを備え、該操作体には、操作体側係合部が設けられ、前記保持体には、該保持体内への前記操作体の進出を可能にするとともに、該操作体の前記保持体に対する回転を可能とする保持体側係合部が設けられており、前記操作体側係合部は、回転被支持部と回転被規制部とを備え、前記保持体側係合部は、前記操作体の前記保持体内への進出時に前記回転被支持部の進行を許容し、進行後は該回転被支持部の回転を許容する回転支持部と、前記操作体の前記保持体内への非進出時は前記回転被規制部を回転不能に規制する回転規制部と、該回転規制部につながり、前記操作体の前記保持体への進出時には前記回転被規制部を案内する案内部とを備え、前記保持体には、該保持体への前記操作体の進出に抗する弾性体を設けたことを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、操作体を基本位置から保持体内へ進出させることにより、該操作体に対して初めて回転操作を加えることが可能な構成とすることができる。従って操作者がシフト操作を意図して操作体を押圧操作しかつ引き続き回転操作を行わない限りシフト操作ができないので、偶発的に操作体が押圧される事態が発生しても誤ってシフト変更が行われることがなく、誤操作を防止できる。そして、操作体を保持体へ進出させる前の基本位置と、該操作体に対して回転操作を加えることが可能な保持体への進出後の位置とを操作者が明確に識別することができるので、基本位置をホームポジション、進出後の位置をニュートラルポジションに設定すると、このふたつのポジションを識別できる。
【0011】
この場合、前記操作体の前記保持体への進出時において、前記回転支持部は、少なくとも2方向への前記回転被支持部の回転を許容するとともに、前記案内部は、少なくとも前記2方向へ前記回転被規制部を案内する。
【0012】
このような構成によれば、操作体を基本位置から保持体へ進出させた後における該操作体の回転方向を少なくとも2方向、確保することができる。したがって、操作体の保持体への進出後に該操作体を回転させる方向、換言すれば、前記進出後に操作体を位置付ける方向を、操作者が少なくとも2方向から選択可能な構成とすることができる。2方向の操作を設定する場合、DポジションとRポジションのポジションを確保できる。
【0013】
本発明において、前記保持体は、固定部と可動部を備え、該可動部が前記固定部に収容され、該固定部に対して回転可能となるように構成し、前記操作体は、前記可動部に収容され、該可動部とともに固定部に対して回転可能となるように構成することができる。
【0014】
このような構成によれば、前記操作部が前記保持部へ進出する時に前記操作部と前記保持部の間に生じる隙間を最小限にすることができるので、前記操作部進出時の隙間への異物侵入による復帰不良を新たな機構を追加せずに実現することができる。また、前記操作部の押圧操作時に操作者に節度感を感じさせる機構を容易に付加することができるので、更なる誤操作防止効果を期待できる。
【0015】
また、本発明のシフト操作装置は、前記保持体への前記操作体の進出、及び前記操作体の前記保持体に対する回転に抗する付勢力を作用させていて、該付勢力に抗する力が前記操作体に作用されない限り、前記回転被規制部を前記回転規制部によって回転不能に規制された状態に保ち続けることを特徴とする。
【0016】
このような構成により、前記弾性体の付勢力に抗する力(例えば、押圧力や回転力)が操作体に対して作用されている場合にのみ、該操作体を保持体へ進出させることが可能となるとともに、進出後の操作体を保持体に対して回転させることができる。また、前記押圧力や回転力が操作体から取り除かれたときは、操作体を保持体へ進出させる前の基本位置に自動的に戻すことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、押圧、回転によるシフト操作を指先(一例として、親指先)のみで簡単に行うことができ、ホームポジションとニュートラルポジションとの識別を指先の感覚で容易に行うことが可能な、かつ誤操作を防止できるシフト操作装置を実現することできる。この結果、シフト操作装置の一層の小型化を図ることができ、例えば、シフト操作装置をステアリングパッドに配置することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るシフト操作装置の構成を示す分解斜視図
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るシフト操作装置における操作体の位置変動を説明するための図であって、(a)は、操作体がホームポジションに位置付けられた状態を示す図、(b)は、操作体がニュートラルポジションに位置付けられた状態を示す図、(c)は、操作体がドライブポジションに位置付けられた状態を示す図、(d)は、操作体がリバースポジションに位置付けられた状態を示す図
【図3】本発明の変形例に係るシフト操作装置の構成を示す斜視図
【図4】本発明の変形例に係るシフト操作装置の構成を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
なお、本発明に係るシフト操作装置は、所定の動力源から出力された回転動力の回転方向や回転速度を変化させる回転制御機構への組込装置の一つとして構成することが可能である。本実施形態においては、シフト操作装置が変速装置と電子的に接続されてなる自動車のバイワイヤーシフト操作用の装置である場合を一例として想定し、以下、その構成について説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係るシフト操作装置の構成を示す分解斜視図であり、図2(a)〜(d)は動作状態の異なるシフト操作装置の上面図である。
本実施の形態に係るシフト操作装置1は、保持体2と、該保持体2へ進出可能に、かつ進出後は前記保持体に対して回転可能に構成された操作体4を備えている。図1に示すように、保持体2は、一方を蓋部2a、他方を底部2bとし、これらを組み合わせることで内部に所定空間が形成される矩形状のケースとなっており、蓋部2aには、長手方向の一方側面の一部を切り欠いて開口部28が形成されている。操作体4は、その直径が保持体2の開口部28の開口幅よりも大寸で、その肉厚が前記開口部28の開口高さよりも小寸に設定された略円板状をなしており、図2に示すように、その一部を前記開口部28から露出させた状態で上記保持体2の内部空間に収容されている。
【0021】
保持体2と操作体4には相互に係合し、保持体2への操作体4の進出を可能にするとともに、保持体2への進出後における操作体4の該保持体2に対する回転を可能とするため、保持体2側に保持体側係合部20が設けられ、操作体4側に操作体側係合部40が設けられている。
【0022】
操作体側係合部40は、回転被支持部42と回転被規制部44を備えている。図1には、回転被支持部42として、略円板状をなす操作体4の中心部から円柱状の突起を一方側へ突設し、回転被規制部44として、操作体4の板面から円弧状に湾曲した四辺形の突起を前記円柱状突起(回転被支持部42)と同一側へ突設した操作体4(操作体側係合部40)の構成を一例として示す。操作体側係合部40(回転被支持部42及び回転被規制部44)の形状は、図1に示すような円柱状や湾曲した四辺形には限定されず、保持体側係合部20と係合し、保持体2への操作体4の進出を可能とするとともに、保持体2への進出後における操作体4の該保持体2に対する回転を可能とする形状であれば任意に設定して構わない。
【0023】
これに対し、保持体側係合部20は、操作体4の保持体2への進出時に回転被支持部42の進行を許容し、進行後は該回転被支持部42の回転を許容する回転支持部22と、操作体44の保持体2への非進出時は回転被規制部42を回転不能に規制する回転規制部24と、該回転規制部24につながり、操作体4の保持体2への進出時には回転被規制部42を案内する案内部26とを備えている。図1には、回転支持部22、回転規制部24、及び案内部26として、いずれも貫通孔が蓋部2aに穿孔された保持体2(保持体側係合部20)の構成を一例として示す。なお、保持体2には、上記貫通孔(回転支持部22、回転規制部24、及び案内部26)が外部へ露出されることを防止するために、蓋部2aを覆うためのカバー2cが取り付けられている。
【0024】
この場合、回転支持部22は、回転被支持部42を挿通可能で、開口が略楕円形状をなす長孔であり、該長孔の最小口径(短尺口径)が回転被支持部42の柱径よりも僅かに大寸に設定され、最大口径(長尺口径)は前記柱径の倍程度の寸法に設定された孔となっており、その長手方向は回転被支持部42の進行方向に設定されている。したがって、回転被支持部42を回転支持部22の長手方向の一端側へ挿通することにより、その回転被支持部42を前記長手方向の一端側から他端側へ移動させることができ、移動後は該回転被支持部42を前記他端側に沿って回転させることができる。すなわち、回転被支持部42と回転支持部22を係合させることで、操作体4を保持体2へ進出させることが可能となるとともに、保持体2への進出後において操作体4を該保持体2に対して回転させることが可能となる。
【0025】
回転規制部24は、回転被規制部44を挿通可能で、開口が該回転被規制部44より一回り大きな円弧状に湾曲した四辺形の孔となっており、案内部26は、前記回転規制部24の内周側に連続するとともに、その連続部位の両端から対称をなして該連続部位と同一曲率で、回転被規制部44の円弧長よりも僅かに短寸の円弧長でそれぞれ延出し、全体が円弧状に湾曲した四辺形の孔となっている。案内部26の曲率は、操作体4の回転被支持部42が保持体2の回転支持部42の他端側に沿って回転するときに回転規制部24が精度良く案内されるように設定されている。このように、回転規制部24と案内部26は、相互に連続し、その全体が略T字状となる一つの孔を形成している。したがって、回転被規制部44を回転規制部24へ挿通することにより、その状態においては回転被規制部44を回転規制部24に対して周方向移動不能に維持することができる一方で、その状態から回転被規制部44を回転規制部24と連続する案内部26へ径方向移動させることで、該案内部26の湾曲した円弧に沿って周方向移動させることができる。すなわち、回転被規制部44と回転規制部24及び案内部26を係合させることで、操作体4の保持体2への非進出時(つまり、操作体4に対して何ら操作を加えない時)は該操作体4を回転不能に規制することが可能となるとともに、操作体4の保持体2への進出時には該操作体4を案内部26に沿って案内すること(回転被規制部44を進行させ、進行後に該回転被規制部44を回転被支持部42の回転方向へ回転させること)が可能となる。
【0026】
なお、操作体4の回転被支持体42が設けられた面と反対側には回転被支持体4と同心の突起(図示せず)が設けられ、この突起は後述するプリント基板8に穿設された逃がし長孔8aに挿通され、底部2bに穿設され、前述した回転支持部22と相似形の長孔2eに挿通され、回転被支持部42の移動時に動作を補助している。
【0027】
保持体側係合部20(回転支持部22、回転規制部24及び案内部26)の形状は、操作体側係合部40(回転被支持部42及び回転被規制部44)の形状に合わせて任意の形状とすることが可能であり、図1に示すような略楕円形状や湾曲した四辺形に限定されない。また、操作体側係合部40(回転被支持部42及び回転被規制部44)を図1に示す構成とは逆側に突設するとともに、保持体側係合部20(回転支持部22、回転規制部24及び案内部26)を保持体2の底部2bに穿孔し、これらを相互に係合させる構成とすることも可能である。
【0028】
なお、本実施形態においては、操作体側係合部40(回転被支持部42及び回転被規制部44)を突起(凸側)、保持体側係合部20(回転支持部22、回転規制部24及び案内部26)を貫通孔(凹側)として構成しているが、操作体側係合部40を貫通孔(凹側)、保持体側係合部20を突起(凸側)とした構成としてもよいし、これらを任意に組み合わせた構成であっても構わない。また、貫通孔でなく、有底の溝であっても良い。
【0029】
このように、本実施形態に係るシフト操作装置においては、操作体4が保持体2へ進出可能に、かつ進出後は保持体2に対して回転可能に構成されているが、その一方で、保持体2には、該保持体2への操作体4の進出、及び操作体4の保持体2に対する回転に抗する弾性体6が設けられている。弾性体6は、操作体4が保持体2へ進出する際に、その進出方向とは反対方向へ所定の付勢力(押圧力)を作用させることが可能であれば、任意の構成とすることができる。図1には、弾性体6がバネ62とカムアクチュエータ64を備えた構成例を示す。弾性体6は、保持体2の蓋部2aの内面に設けられた操作体4の側面に向かって開口する有底の穴に収容されたバネ62とカムアクチュエータ64とから構成されており、カムアクチュエータ64はバネ62によって開口から突出する方向に付勢されており、その結果、操作体4に付勢力を作用させる。この場合、弾性体6は、その付勢力に抗する力が操作体4に作用されない限り、回転被規制部44を回転規制部24によって回転不能に規制された状態に保ち続ける構成となっている。
【0030】
また、操作体4には、その外周部の一部を縮径して凹曲状に窪ませた凹部46a,46b,46cと、該凹部46a,46b,46cよりも僅かに拡径して凸曲状に突出させた凸部48a,48bが設けられている。図1及び図2に示す構成において、3つの凹部46a,46b,46cは、1つの凹部46aを起点として周方向の両側へ1つずつ凹部46b,46cが対称に配され、2つの凸部48a,48bは、凹部46aと凹部46bの間、及び凹部46aと凹部46cの間にそれぞれ1つずつ配されており、これらの凹部46a,46b,46cと凸部48a,48bが周方向へ交互に滑らかに連続している。すなわち、操作体4は、凹部46aを起点として周方向の両側へ凸部48aと凹部46b、凸部48bと凹部46cが対称に配設された、カム45として構成されている。
【0031】
そして、操作体4は、図2に示すように、操作体側係合部40を保持体側係合部20と係合させるとともに、カムアクチュエータ64の先端部64aをカム45の凹部46aに当接させた状態で、該凹部46aとは径方向に対して反対側の外周部を蓋部2aの開口部28から露出するように保持体2の内部空間に収容される。この状態においては操作体4の凹部46aに対し、バネ62の付勢力が操作体4を開口部28から露出させる方向(図2における左方向)へカムアクチュエータ64を介して作用されている。換言すれば、上記状態において操作体4の凹部46aに対し、バネ62の付勢力をカムアクチュエータ64を介して上記露出方向へ作用させることが可能となるように、弾性体6(バネ62及びカムアクチュエータ64)が保持体2に位置付けられている。なお、操作体4には、蓋部2aの開口部28から露出された状態となる凹部46aとは径方向の反対側の外周部に対し、中心軸方向に延設された複数の突起4aが所定間隔で備えられている。これらの突起4aは、操作者が操作体4に対して後述するような操作を行う際に滑り止めやガイドとして機能する。
【0032】
このような構成をなすシフト操作装置1において、操作者(本実施形態においては、自動車の運転者を想定)は、シフト操作を行うために操作体4に対して所定の操作(例えば、指先による操作など)を加える。以下、かかる操作時における操作体4の保持体2に対する位置の変化状態(位置変動)について説明する。
【0033】
本実施形態に係るシフト操作装置において、保持体2に対して基準となる操作体4の位置を図2(a)に示す。この位置においては、操作体4の凹部46aに対し、バネ62の付勢力がカムアクチュエータ64を介して作用され、操作体4が凹部46aとは径方向の反対側の外周部を保持体2の開口部28から露出させた状態となっている。以下、操作体4がこの状態となる保持体2に対する操作体4の位置(図2(a)に示す位置)をホームポジションと呼び、操作体4をホームポジションに位置付けるべくバネ62の付勢力が作用される方向(同図の左方向)をホームポジション方向と呼ぶ。
【0034】
図2(a)に示すように、ホームポジションにおいては、操作体4の回転被支持部42が保持体2の回転支持部22のホームポジション方向端部で該回転支持部22と係合しているとともに、回転被規制部44が回転規制部24と係合している。したがって、この状態(ホームポジション)にあっては、回転規制部24と係合した回転被規制部44が該回転規制部24と干渉するため、操作体4(具体的には開口部28から露出した外周部)に対して周方向のいずれに回転力を作用させたとしても、該操作体4を回転被支持部42を中心として周方向(前記回転力の作用方向)へ回転させることはできない。これにより、操作体4に対する誤操作の防止を図っている。
【0035】
ホームポジションにある操作体4に対して操作を行う場合、操作者である運転者は、ホームポジション方向に作用されているバネ62の付勢力に抗するだけの押圧力を、操作体4に対してホームポジション方向とは反対方向へ作用させる。このようにバネ62の付勢力に抗するだけの押圧力が上記方向へ作用されると、操作体4は、回転支持部22のホームポジション方向端部で係合していた回転被支持部42が進行して回転支持部22の反ホームポジション方向端部に当接するまで、該回転支持部22に沿って前記反ホームポジション方向へ進出(移動)する。この時、操作体4の回転被規制部44は、回転規制部24と連続する案内部26へ進行し、この状態においては、回転被規制部44と回転規制部24の係合状態は解除され、これらが干渉することはない(図2(b)に示す状態)。以下、操作体4がこの状態となる保持体2に対する操作体4の位置(図2(b)に示す位置)をニュートラルポジションと呼び、操作体4をホームポジションからニュートラルポジションに位置付けるべく、運転者から押圧力が加えられる方向(上記反ホームポジション方向(同図の右方向))をニュートラルポジション方向と呼ぶ。
【0036】
ニュートラルポジションにおいては、回転被規制部44と回転規制部24が干渉しないため、操作体4に対して周方向のいずれかに回転力を作用させた場合、該操作体4を回転被支持部42を中心として周方向(前記回転力の作用方向)へ回転させることが可能となる。なお、操作体4をニュートラルポジションに位置付けるために作用させている押圧力を解除した場合(例えば、操作体4に触れていた指先を離した場合)、該操作体4にはホームポジション方向へのバネ62の付勢力のみが作用されることとなり、該付勢力によって操作体4はホームポジションに戻される。換言すれば、操作体4に対してバネ62の付勢力に抗するだけの押圧力をニュートラルポジション方向へ作用させている状態においてのみ、該操作体4をニュートラルポジションへ位置付けることが可能となる。
【0037】
このように、本実施形態においては、運転者が操作体4への操作を行う際に、その時点で該操作体4がホームポジションとニュートラルポジションのいずれにあるのかを、例えば、力の加減による指先の感覚などによって明確に識別することができる。
【0038】
ニュートラルポジションに位置付けた操作体4は、この状態からホームポジション方向に作用されているバネ62の付勢力に抗する押圧力に加えて回転力を周方向のいずれかに作用させることで、回転被支持部42を中心として前記回転力の作用方向へ回転させることができる。
【0039】
例えば、操作体4を回転被支持部42を中心として上記周方向の一方側(一例として、図2(b)に示す矢印Cの方向)へ回転させると、回転被規制部44が案内部26に沿って案内される。そして、上記周方向の一方側へ向けてバネ62の付勢力に抗するだけの回転力をニュートラルポジションにある操作体4に対して作用させ続けると、該操作体4は、回転被規制部44が案内部26の前記一方側の端部まで案内され、該端部で前記案内部26と係合するまで、回転被支持部42を中心として前記一方側へ回転する。回転被規制部44が案内部26の上記一方側の端部で該案内部26と係合すると、これらの相互干渉によって、操作体4が前記周方向の一方側へそれ以上回転することはない(図2(c)に示す状態)。以下、操作体4がこの状態となる保持体2に対する操作体4の位置(図2(c)に示す位置)をドライブポジションと呼び、操作体4をニュートラルポジションからドライブポジションに位置付けるべく、運転者から回転力が加えられる方向(同図(b)の矢印Cの方向)をドライブポジション方向と呼ぶ。
【0040】
回転力をニュートラルポジションにある操作体4に対して作用させてドライブポジション方向に回転させる時、操作体4とカムアクチュエータ64の先端部64aとの当接部位は、凹部46aから凸部48aへ、さらに該凸部48aを越えて凹部46bの前記凸部48aのある側とは反対側の凹部斜面まで、操作体4の外周部のカム45の凹凸に沿って移動する。カムアクチュエータ64を介して操作体4に付勢力を作用させるバネ62は、該カムアクチュエータ64の先端部64aが凹部46aに当接した状態から凸部48aに当接した状態となるまで徐々に収縮されていき、前記先端部64aが凸部48aと当接した状態で最も収縮され、その後、該先端部64aが凹部46bに当接した状態となるまで徐々に伸長されていき、その後凹部斜面に位置するまで再度収縮されていく。したがって、カムアクチュエータ64を介して操作体4に作用されるバネ62の付勢力は、該カムアクチュエータ64の先端部64aが凹部46aに当接した状態から凸部48aに当接した状態となるまで徐々に増大されていき、前記先端部64aが凸部48aと当接した状態で最大となり、その後、該先端部64aが凹部46bの底部に当接した状態となるまで徐々に減少されていき、その後はまた増大していく。
【0041】
カムアクチュエータ64を介して操作体4に作用されるバネ62の付勢力は、該カムアクチュエータ64の先端部64aが凸部48aを越える際に増大状態から減少状態へ変化するため、かかる付勢力に抗して運転者が操作体4へ作用させる回転力もその際に増大状態から減少状態へ変化する。これにより、運転者は、操作体4がカムアクチュエータ64の先端部64aとの当接部位を凹部46aから凸部48aへ、さらに該凸部48aを越えて凹部46bまで移動させて回転したことを操作した操作体4から伝わる感触(触覚)で把握できる。
【0042】
また、操作体4を回転の終点まで操作し、カムアクチュエータ64の先端部64aが凹部46bの凹部斜面に位置している状態で操作力を解除すると、凹部斜面に作用するカムアクチュエータ64の弾性力は操作体4を回転操作力と反対の方向に回転させる付勢力として作用するので、操作体4は回転前の位置に自動的に復帰する。
【0043】
これに対し、操作体4を回転被支持部42を中心として上記周方向の他方側(一例として、図2(b)に示す矢印Dの方向)へ回転させると、回転被規制部44が案内部26に沿って案内される。そして、上記周方向の他方側へ向けて回転力をニュートラルポジションにある操作体4に対して作用させ続けると、該操作体4は、回転被規制部44が案内部26の前記他方側の端部まで案内され、該端部で前記案内部26と係合するまで、回転被支持部42を中心として前記他方側へ回転する。回転被規制部44が案内部26の上記他方側の端部で該案内部26と係合すると、これらの相互干渉によって、操作体4が前記周方向の他方側へそれ以上回転することはない(図2(d)に示す状態)。以下、操作体4がこの状態となる保持体2に対する操作体4の位置(図2(d)に示す位置)をリバースポジションと呼び、操作体4をニュートラルポジションからリバースポジションに位置付けるべく、運転者から回転力が加えられる方向(同図(b)の矢印Dの方向)をリバースポジション方向と呼ぶ。
【0044】
回転力をニュートラルポジションにある操作体4に対して作用させてリバース方向に回転させる時、操作体4とカムアクチュエータ64の先端部64aとの当接部位は、凹部46aから凸部48bへ、さらに該凸部48bを越えて凹部46cの前記凸部48bのある側とは反対側の凹部斜面まで、操作体4の外周部のカム45の凹凸に沿って移動する。カムアクチュエータ64を介して操作体4に付勢力を作用させるバネ62は、該カムアクチュエータ64の先端部64aが凹部46aに当接した状態から凸部48bに当接した状態となるまで徐々に収縮されていき、前記先端部64aが凸部48bと当接した状態で最も収縮され、その後、該先端部64aが凹部46cに当接した状態となるまで徐々に伸長されていき、その後凹部斜面に位置するまで再度収縮されていく。したがって、カムアクチュエータ64を介して操作体4に作用されるバネ62の付勢力は、該カムアクチュエータ64の先端部64aが凹部46aに当接した状態から凸部48bに当接した状態となるまで徐々に増大されていき、前記先端部64aが凸部48bと当接した状態で最大となり、その後、該先端部64aが凹部46cの底部に当接した状態となるまで徐々に減少されていき、その後はまた増大していく。
【0045】
カムアクチュエータ64を介して操作体4に作用されるバネ62の付勢力は、該カムアクチュエータ64の先端部64aが凸部48bを越える際に増大状態から減少状態へ変化するため、かかる付勢力に抗して運転者が操作体4へ作用させる回転力もその際に増大状態から減少状態へ変化する。これにより、運転者は、操作体4がカムアクチュエータ64の先端部64aとの当接部位を凹部46aから凸部48bへ、さらに該凸部48bを越えて凹部46cまで移動させて回転したことを操作した操作体4から伝わる感触(触覚)で把握することができる。
【0046】
また、操作体4を回転の終点まで操作し、カムアクチュエータ64の先端部64aが凹部46cの凹部斜面に位置している状態で操作力を解除すると、凹部斜面に作用するカムアクチュエータ64の弾性力は操作体4を回転操作力と反対の方向に回転させる付勢力として作用するので、操作体4は回転前の位置に自動的に復帰する。
【0047】
このように、ニュートラルポジションにある操作体4は、周方向のいずれ(ドライブポジション方向もしくはリバースポジション方向)へ向けて回転力を作用させるかを運転者が選択すること、すなわち該回転力の作用方向を選択することで、ドライブポジションもしくはリバースポジションへ選択的に位置付けることができる。なお、本実施形態においては、ニュートラルポジションにある操作体4の操作可能な方向を周方向のいずれか2方向(ドライブポジション方向もしくはリバースポジション方向)に設定しているが、かかる操作体4の操作方向を3方向以上に設定することも可能であるし、周方向以外の方向に設定することも可能である。
【0048】
また、運転者は、操作体4がニュートラルポジションからドライブポジションもしくはリバースポジションへ位置付けられたことを、操作した操作体4から伝わる感触(触覚)で把握することができる。この場合、例えば、ドライブポジション方向が自動車の前進方向、リバースポジション方向が自動車の後進方向とそれぞれ一致するようにシフト操作装置を自動車に搭載することで、操作体4に対する操作方向と自動車の進行方向が一致し、運転者の操縦感覚とのずれが生じることがなく、運転者は操作体4に対して容易かつ正確に操作を行うことが可能となる。
【0049】
なお、上述したように、ニュートラルポジションにある操作体4に対してバネ62とカム45との係合に基づく回転方向の付勢力に抗するだけの回転力を周方向のいずれか(ドライブポジション方向もしくはリバースポジション方向)へ向けて作用させることで、操作体4は、ドライブポジションもしくはリバースポジションに位置付けられる。その一方で、操作体4をドライブポジションもしくはリバースポジションに位置付けるために作用させている回転力を解除した場合(例えば、操作体4に触れていた指先を離した場合)、該操作体4にはバネ62の付勢力のみによる回転方向の戻し力が作用されることとなり、該戻し力によって操作体4はニュートラルポジションに戻され、さらにニュートラルポジションからホームポジションに戻される。換言すれば、操作体4に対してバネ62の付勢力に抗するだけの押圧力をニュートラルポジション方向へ作用させつつ、上記回転力をドライブポジション方向へ作用させている状態においてのみ、該操作体4をドライブポジションへ位置付けることが可能となり、前記押圧力及び回転力をニュートラルポジション方向及びリバースポジション方向へ作用させている状態においてのみ、該操作体4をリバースポジションへ位置付けることが可能となる。
【0050】
このような構成においては、ドライブポジションもしくはリバースポジションに位置付けられている操作体4に作用している回転力が解除された場合(例えば、操作体4に触れていた指先を離した場合)、該操作体4をバネ62の付勢力のみによってニュートラルポジション、さらにはホームポジションまで戻す必要がある。すなわち、ドライブポジションからニュートラルポジション、そしてホームポジションまで操作体4を戻す場合、該操作体4とカムアクチュエータ64の先端部64aとの当接部位が凹部46bから凸部48aへ、さらに該凸部48aを越えて凹部46aまで、操作体4の外周部の凹凸に沿って移動するように、バネ62の付勢力のみによって操作体4を周方向に対してドライブポジション方向とは反対方向へ回転させる必要がある。同様に、リバースポジションからニュートラルポジション、そしてホームポジションまで操作体4を戻す場合、該操作体4とカムアクチュエータ64の先端部64aとの当接部位が凹部46cから凸部48bへ、さらに該凸部48bを越えて凹部46aまで、外周部の凹凸に沿って移動するように、バネ62の付勢力のみによって操作体4を周方向に対してドライブポジション方向とは反対方向へ回転させる必要がある。
【0051】
したがって、操作体4に設けるカム45の凹部46a,46b,46c、凸部48a,48bの形状、高さや深さなどの構成、バネ62の付勢力、大きさやピッチなどの構成、及びカムアクチュエータ64の材質、形状や大きさなどの構成は、ホームポジションからニュートラルポジション、そしてドライブポジションもしくはリバースポジションへ操作体4をスムーズに進出させるとともに回転させることが可能であるのみならず、ドライブポジションもしくはリバースポジションからニュートラルポジション、さらにホームポジションまで操作体4をスムーズに戻すことが可能となるように、相互に調整することを要する。ただし、かかる調整がなされている限りどのような構成であっても構わない。
【0052】
なお、本実施形態においては、ニュートラルポジションに位置付けられている操作体4に作用している押圧力が解除された場合、該操作体4をホームポジションまで戻すとともに、ドライブポジションもしくはリバースポジションに位置付けられている操作体4に作用している回転力が解除された場合、該操作体4をニュートラルポジション、さらにはホームポジションまで戻す構成を想定しているが、前記押圧力や回転力が解除された場合であっても、操作体4をニュートラルポジション、及びドライブポジションやリバースポジションにそのまま位置付けた状態に維持する構成とすることも可能である。この場合、上記操作体4のカム45(凹部46a,46b,46c、凸部48a,48b)、バネ62及びカムアクチュエータ64の各構成を、ホームポジションからニュートラルポジション、そしてドライブポジションもしくはリバースポジションへ操作体4をスムーズに進出させるとともに回転させ、進出後及び回転後は操作体4をその状態のまま維持することが可能となるように、相互に調整すればよい。
【0053】
シフト操作装置には、上述したような操作が加えられた操作体4の保持体2に対する位置変化(動作変化)に基づいてシフト操作を制御するためのプリント基板8が備えられている。図1に示す構成において、プリント基板8は、その平面形状が保持体2の蓋部2a及び底部2bと略同一矩形の板状体をなしており、これら蓋部2aと底部2bの間に介在され、該蓋部2aとの間で操作体4を挟み込んでいる。これにより、操作体4は、蓋部2aとプリント基板8の間に挟み込まれた状態で、操作体側係合部40を保持体側係合部20と係合させること、具体的には回転被支持部42を回転支持部22と係合させるとともに、回転被規制部44を回転規制部24及び案内部26と係合させることで、保持体2に対して進出可能にかつ進出後回転可能に支持される。なお、プリント基板8を蓋部2aと底部2bの間に介在させる際の固定方法は特に限定されず、例えば、ネジ止めやビス止め、接着、嵌合など公知の各種方法を適用すればよい。
【0054】
プリント基板8には、図1及び図2に示すように、操作体4に対して操作が行われた際、その操作による該操作体4の保持体2に対する位置変化(動作変化)を計測するためのセンサ10が設けられている。ここで、センサ10としては、例えば、磁界の変化を直接検出する磁気センサ、あるいは照射光に対する反射光の状態変化を検出する光学センサなどを任意に選択して用いることができるが、本実施形態においては、センサ10が磁界の変化を直接検出する磁気抵抗効果センサである場合を一例として想定する。この場合、センサ10の検出体としては、磁界の変化を検出する磁気抵抗効果センサ(例えば、GMR素子)を適用すればよい。なお、プリント基板8には、センサ10に所定の電源装置(図示しない)から電力を供給するとともに、前記センサ10が検出した操作体4の位置変化(動作変化)を電気信号に変換し、該電気信号(データ)を所定の信号処理部(図示しない)にコネクタ8bを介して送信するための回路が配線されている。また、保持体2には、プリント基板8のコネクタ8bを嵌合させ、前記信号処理部(図示しない)と接続するための貫通孔2dが底部2bに穿孔されている。
【0055】
一方、操作体4には、プリント基板8に配設されたセンサ10の被検出体として、磁石(エンコーダ)12が設けられている。この場合、操作体4は、磁石12(具体的には、その磁極面)がセンサ10(同、その磁気検出素子)と所定間隔を空けて対向可能(非接触状態)となるように、保持体2に対して位置付けられている。
【0056】
これらのセンサ10と磁石12は、操作体4がホームポジションからニュートラルポジション、続いてドライブポジションもしくはリバースポジションへ位置付けられる際、そして、ドライブポジションもしくはリバースポジションからニュートラルポジション、さらにホームポジションへ位置付けられる際における、該操作体4の保持体2に対する位置変化の軌跡に沿って並ぶように配される。図1に示す構成において、プリント基板8には、保持体2の蓋部2a側の平面部にセンサ10が設けられ、操作体4には、操作体側係合部40(回転被支持部42及び回転被規制部44)の突設側とは反対側の板面に磁石12が設けられており、操作体4が保持体2に対して上記のように位置変化する際、該操作体4とともに保持体2に対して位置変動する磁石12の軌跡を追随することが可能となるように、前記軌跡に沿って4つのセンサ10がプリント基板8に配されている。なお、センサ10の個数を3つ以下あるいは5つ以上とした構成とすることも可能であり、センサ10を操作体4へ、磁石12をプリント基板8へそれぞれ設けた構成とすることも可能である。
【0057】
検出体であるセンサ10と被検出体である磁石12をこのように配設することで、磁石12がセンサ10と対向した状態、具体的には、磁石12の磁極面がセンサ10の磁気検出素子と対向した状態で、保持体2に対する操作体4の位置変化の軌跡に沿って、磁石12がセンサ10に対して位置変動する構造とすることができる。すなわち、シフト操作装置において、操作体4に対して操作が行われ、その操作によって該操作体4の保持体2に対する位置変化(動作変化)が発生すると、これとともに磁石(エンコーダ)12もプリント基板8に対して位置変動し、該プリント基板8のセンサ10に対する磁極の位置が連続して変動する。
【0058】
この時、センサ(磁気検出素子)10を通過する磁界の向きが連続的に変化し、かかる変化をセンサ10により検出することで、磁石12の位置情報を得ることができる。そして、センサ10によって検出された磁界の変化をプリント基板8の回路で電気信号に変換するとともに、該電気信号(データ)を信号処理部(図示しない)に送信し、該信号処理部において、例えば、所定時間内における磁石12の位置変動を演算処理することで、操作体4の位置変化(現在位置や位置推移など)を計測することが可能となる。具体的には、保持体2に対する操作体4の位置がホームポジションからニュートラルポジション、続いてドライブポジションもしくはリバースポジションへと変化していく各段階における位置情報や、ドライブポジションもしくはリバースポジションからニュートラルポジション、さらにホームポジションへと変化していく各段階における位置情報を取得することができる。そして、取得した操作体4の位置情報に基づいて、上記信号処理部(図示しない)で変速制御などを行うことで、自動車のバイワイヤーシフト操作を実現することができる。
【0059】
図3及び図4には、上記実施の形態に係るシフト操作装置の変形例の構成が示されている。上述した実施の形態(図1及び図2)に係るシフト操作装置と同一もしくは類似する構成部材については、図面上で同一符号を付してその説明を省略もしくは簡略する。
【0060】
本変形例において、保持体2は固定部21と可動部23を備えており、該可動部23が前記固定部21に収容され、該固定部21に対して回転可能に構成されている。そして、操作体4が可動部23に収容され、該操作体4が可動部23とともに固定部21に対して回転可能な構成となっている。
【0061】
固定部21は、所定の開口を介して外部に臨む略円形の凹部を有する平板状をなしており、前記開口が回転規制部24、前記凹部が案内部26として構成されている。すなわち、上記凹部の開口である回転規制部24が操作体4の非進出時(つまり、操作体4に対して何ら操作を加えない時)に該操作体4の回転被規制部42を回転不能に規制し、前記凹部である案内部26が操作体4の進出時に可動部23に収容された操作体4の回転被規制部42を案内する。可動部23は、その直径が案内部26の直径よりも小寸で、その肉厚が前記案内部26の深さよりも小寸に設定された略円板状をなしており、その一部を回転規制部24から外部へ露出させた状態で前記案内部26に対して回転可能に収容されている。
【0062】
可動部23には、その外周部の一部を縮径して凹曲状に窪ませた3つの凹部32a,32b,32cと、該凹部32a,32b,32cよりも僅かに拡径して凸曲状に突出させた2つの凸部34a,34bが設けられている。3つの凹部32a,32b,32cは、1つの凹部32aを起点として周方向の両側へ1つずつ凹部32b,32cが対称に配され、2つの凸部34a,34bは、凹部32aと凹部32bの間、及び凹部32aと凹部32cの間にそれぞれ1つずつ配されており、これらの凹部32a,32b,32cと凸部34a,34bが周方向へ交互に滑らかに連続している。すなわち、可動部23は、凹部32aを起点として周方向の両側へ凸部34aと凹部32b、凸部34bと凹部32cが対称に配設された、カム31として構成されている。
【0063】
そして、可動部23は、カムアクチュエータ64の先端部64aを凹部32aに当接させた状態で、該凹部32aとは径方向に対して反対側の外周部が回転規制部24(案内部26の開口)から露出されるとともに、案内部26とその中心位置が略一致するように固定部21に収容される。この状態においては可動部23の凹部32aに対し、カムアクチュエータ64を介してバネ62の付勢力が可動部23を回転規制部24(案内部26の開口)から露出させる方向(図4における上方向)へ作用され、該可動部23と回転規制部24(案内部26の開口)が係合して相互に干渉しており、可動部23(さらにはこれに収容された操作体4)は固定部21に対して回転不能に規制されている。換言すれば、上記状態において可動部23の凹部32aに対し、バネ62の付勢力をカムアクチュエータ64を介して上記露出方向へ作用させることが可能となるように、弾性体6(バネ62及びカムアクチュエータ64)が保持体2の固定部21に位置付けられている。なお、可動部23と回転規制部24(案内部26の開口)を係合させることなく、可動部23を固定部21に対して常に回転可能な構成とすることも想定可能である。
【0064】
可動部23は、その円板部に開口部25aを介して外部に臨むように凹設された操作体収容部25を有している。操作体収容部25は、その開口部25aの開口幅と略同一の幅で可動部23の径方向に沿って拡がり、両側へ対称に拡幅された後、さらに径方向に沿って底部25bまで拡がった略T字状をなしている。
【0065】
操作体4は、回転被支持部42と回転被規制部44を備え、可動部23の操作体収容部25に収容可能、かつ前記可動部23へ進出可能となるように、該操作体収容部25よりも一回り小さな略T字状をなしている。回転被規制部44は、その幅が可動部23の開口部25aの開口幅よりも小寸で、その肉厚が前記開口部25aの開口高さよりも小寸に設定された平板状をなし、回転被支持部42は、前記回転被規制部44を両側へ対称に拡幅した平板状をなしている。操作体4は、その進出方向とは反対側の端縁部(具体的には、回転被規制部44の端縁部)が可動部23と同一曲率の円弧状に構成されており、可動部23への進出状態においては前記端縁部が該可動部23の外周縁と略重なった状態となる。これにより、可動部23へ進出した操作体4は、回転被規制部44が案内部26の内周に沿うように該案内部26に案内される。なお、かかる案内時に支障がない限り、上記操作体4の端縁部には、操作者が操作体4に対して後述するような操作を行う際に滑り止めやガイドとして機能する複数の突起を設けることが可能である。
【0066】
操作体4には、該操作体4が可動部23へ進出する際、その進出方向とは反対方向へ所定の付勢力(押圧力)を作用させ、操作体4の可動部23への進出に抗する弾性部50が設けられている。弾性部50は、前記付勢力(押圧力)を作用させ、操作体4の可動部23への進出に抗することが可能であれば、バネやゴムなど任意の構成とすることができる。
【0067】
図4に示す構成において、弾性部50は、回転被支持部42に突設され、可動部23(操作体収容部25)の底部25bへ向けて突出し、該底部25bと当接している。なお、図4には、弾性部50を操作体4へ設けた構成を示しているが、弾性部50を可動部23へ設けた構成とすることも可能である。
【0068】
そして、操作体4は、図4に示すように、弾性部50を可動部23の操作体収容部25の底部25bに当接させつつ、回転被規制部44の一部を前記操作体収容部25の開口部25a、さらには固定部21の回転規制部24(案内部26の開口)からそれぞれ露出させた状態で、前記可動部23の操作体収容部25に収容されている。
【0069】
このように操作体4を可動部23の操作体収容部25に収容した状態においては、回転被規制部44が固定部21の回転規制部24と係合し、該回転規制部24と干渉するため、前記回転被規制部44を保持体2に対して回転不能に維持することができる一方で、その状態から回転被規制部44を可動部23(操作体収容部25)へ進行させることで、前記可動部23が収容された案内部26の内周に沿って該可動部23とともに周方向移動させる(案内する)ことができる。
【0070】
また、操作体4の回転被支持部42には、前記操作体4の可動部23への進出方向と交差する方向の両側部の一部を狭幅して凹状に窪ませた2つの凹部41a,41bが、凸部43を挟んで対称をなすとともに、前記交差方向の両側で対称をなして配されている。
【0071】
可動部23には、回転支持部22として弾性体が設けられており、該弾性体は、操作体収容部25に収容された操作体4の回転被支持部42に対し、前記操作体4の進出方向と交差する方向(図4の左右方向)へ所定の付勢力(押圧力)を作用させつつ、操作体4の可動部23への進出時に回転被支持部42の進行を許容し、進行後は該回転被支持部42の回転を許容する。図4には、バネ22aとカムアクチュエータ22bを備えた回転支持部22の構成を一例として示すが、回転支持部22は、上記付勢力(押圧力)を作用させることが可能であれば、任意の構成とすることができる。なお、回転支持部22が操作体4に対して付勢力(押圧力)を作用させる方向は、必ずしも前記操作体4の進出方向と交差する方向(図4の左右方向)と一致していなくともよく、該交差方向から多少傾いていても構わない。
【0072】
そして、操作体4は、弾性部50を可動部23(操作体収容部25)の底部25bに当接させるとともに、回転支持部22を回転被支持部42に係合させた状態、具体的には、カムアクチュエータ22bの先端部22cを凹部41aに当接させた状態で、回転被規制部44の一部が操作体収容部25の開口部25a、さらには固定部21の回転規制部24からそれぞれ露出されるように前記可動部23の操作体収容部25に収容される。この状態においては回転被支持部42の凹部41aに対し、カムアクチュエータ22bを介してバネ22aの付勢力が操作体4の可動部23への進出方向と交差する方向の双方(図4の左方及び右方)から作用されており、操作体収容部25における操作体4の姿勢が前記進出方向(同図の下方向)に沿った状態に保たれている。換言すれば、操作体4をこのような状態に保つことが可能となるように、回転支持部22(バネ22a及びカムアクチュエータ22b)が保持体2の可動部23に位置付けられている。
【0073】
なお、可動部23の操作体収容部25に収容された操作体4に対しては、該操作体収容部25への進出方向とは反対方向へ所定の付勢力(押圧力)が弾性部50から作用されるが、図4に示すように、回転被規制部44から回転被支持部42への拡幅部位と可動部23(操作体収容部25)の拡幅部位とが係合して相互に干渉するため、前記操作体4が操作体収容部25から脱落することはない。
【0074】
このような構成をなすシフト操作装置において、操作者(本実施形態においても、自動車の運転者を想定)は、上述した第1の実施の形態と同様に、シフト操作を行うために操作体4に対して所定の操作(例えば、指先による操作など)を加える。以下、かかる操作時における操作体4の保持体2に対する位置の変化状態(位置変動)について説明する。
【0075】
本実施形態に係るシフト操作装置において、保持体2(固定部21及び可動部23)に対して基準となる操作体4の位置を図4に示す。この位置においては、操作体4の回転被支持部42に対し、弾性部50の付勢力が作用されるとともに、この操作体4を収容した可動部23に対し、バネ62の付勢力が作用され、操作体4の回転被規制部44の一部を可動部23(操作体収容部25)の開口部25a、さらには固定部21の回転規制部24から露出させた状態となっている。以下、操作体4がこの状態となる保持体2に対する操作体4の位置(図4に示す位置)をホームポジションと呼び、操作体4をホームポジションに位置付けるべくバネ62及び弾性部50の付勢力が作用される方向(同図の上方向)をホームポジション方向と呼ぶ。
【0076】
図4に示すように、ホームポジションにおいては、操作体4の回転被規制部44が固定部21の回転規制部24と係合し、該回転規制部24と干渉するため、操作体4(具体的には、可動部23の開口部25a、さらには固定部21の回転規制部24から露出させた回転被規制部44の一部)に対して周方向のいずれに回転力を作用させたとしても、該操作体4を周方向(前記回転力の作用方向)へ回転させることはできない。なお、ホームポジションにおいては、操作体4を収容した可動部23も回転規制部24(案内部26の開口)が係合し、該回転規制部24と干渉するため、固定部21に対して回転させることはできない。これにより、操作体4に対する誤操作のより一層の防止を図っている。
【0077】
ホームポジションにある操作体4に対して操作を行う場合、操作者である運転者は、ホームポジション方向に作用されているバネ62及び弾性部50の付勢力に抗するだけの押圧力を、操作体4に対してホームポジション方向とは反対方向へ作用させる。このようにバネ62及び弾性部50の付勢力に抗するだけの押圧力が上記方向へ作用されると、操作体4は、固定部21の回転規制部24と係合していた回転被規制部44が可動部23の操作体収容部25に完全に収容された状態、すなわち、操作体4の全体が操作体収容部25に完全に収容された状態となるまで、該操作体収容部25に沿って前記方向へ進出(移動)する。この状態においては、回転被規制部44と回転規制部24の係合状態は解除され、これらが干渉することはない。また、操作体4を収容した可動部23と回転規制部24の係合状態も解除され、これらが干渉することはない。以下、操作体4がこの状態となる保持体2に対する操作体4の位置をニュートラルポジションと呼び、操作体4をホームポジションからニュートラルポジションに位置付けるべく、運転者から押圧力が加えられる方向(同図の下方向)をニュートラルポジション方向と呼ぶ。
【0078】
ホームポジションにおいて、操作体4は、回転被支持部42が回転支持部22に係合された状態、具体的には、カムアクチュエータ22bの先端部22cを凹部41aに当接させた状態となっている。この状態から、ホームポジション方向に作用されているバネ62及び弾性部50の付勢力に抗するだけの押圧力を、操作体4に対してニュートラルポジション方向へ作用させると、該操作体4は、回転被規制部44が可動部23の操作体収容部25に完全に収容された状態となるまで、該操作体収容部25に沿ってニュートラルポジション方向へ進出(移動)する。この時、操作体4とカムアクチュエータ22bの先端部22cとの当接部位は、凹部41aから凸部43へ、さらに該凸部43を越えて凹部41bまで、操作体4(回転被支持部42)の両側部の凹凸に沿って移動する。カムアクチュエータ22bを介して操作体4に付勢力を作用させるバネ22aは、該カムアクチュエータ22bの先端部22cが凹部41aに当接した状態から凸部43に当接した状態となるまで徐々に収縮されていき、前記先端部22cが凸部43と当接した状態で最も収縮され、その後、該先端部22cが凹部41bに当接した状態となるまで徐々に伸長されていく。したがって、カムアクチュエータ22bを介して操作体4に作用されるバネ22aの付勢力は、該カムアクチュエータ22bの先端部22cが凹部41aに当接した状態から凸部43に当接した状態となるまで徐々に増大されていき、前記先端部22cが凸部43と当接した状態で最大となり、その後、該先端部22cが凹部41bに当接した状態となるまで徐々に減少されていく。
【0079】
このように、カムアクチュエータ22bを介して操作体4に作用されるバネ22aの付勢力は、該カムアクチュエータ22bの先端部22cが凸部43を越える際に増大状態から減少状態へ変化するため、運転者が操作体4へ作用させるニュートラル方向への押圧力もその際に増大状態から減少状態へ変化する。これにより、運転者は、回転被支持部42が可動部23の操作体収容部25に完全に収容された状態となるまで操作体4がニュートラルポジション方向へ進出(移動)したこと、すなわち、操作体4がニュートラルポジションに位置付けられたことを操作した操作体4から伝わる感触(触覚)で確実に把握することができる。
【0080】
ニュートラルポジションにおいては、操作体4が可動部23の操作体収容部25に完全に収容された状態となるので、回転被規制部44と回転規制部24、さらには可動部23と前記回転規制部24が干渉しなくなり、操作体4に対して周方向のいずれかに回転力を作用させることで、操作体4を前記可動部23とともに固定部21に対して周方向(前記回転力の作用方向)へ回転させることが可能となる。なお、操作体4をニュートラルポジションに位置付けるために作用させている押圧力を解除した場合(例えば、操作体4に触れていた指先を離した場合)、該操作体4にはホームポジション方向に対してバネ62及び弾性部50の付勢力のみが作用されることとなり、該付勢力によって操作体4はホームポジションに戻される。換言すれば、操作体4に対してバネ62及び弾性部50の付勢力に抗するだけの押圧力をニュートラルポジション方向へ作用させている状態においてのみ、該操作体4をニュートラルポジションへ位置付けることが可能となる。このように、本実施形態においては、運転者が操作体4への操作を行う際に、その時点で該操作体4がホームポジションとニュートラルポジションのいずれにあるのかを、例えば、力の加減による指先の感覚などによって明確に識別することができる。
【0081】
ニュートラルポジションに位置付けた操作体4は、この状態から回転力を周方向のいずれかに作用させることで、操作体4を可動部23と共に前記回転力の作用方向へ回転させることができ、ドライブポジションもしくはリバースポジションに位置付けることができる。
【0082】
すなわち、操作体4が、可動部23に完全に収容された操作体4を固定部21に対して周方向のいずれかへ回転操作すると、前記可動部23が案内部26に沿って案内される。そして、回転力をニュートラルポジションにある操作体4に対して作用させ続けると、該操作体4を収容した可動部23は、可動部側係合部23a(又は23b)が固定部側係合部21aと係合するまで固定部21に対して回転する。可動部側係合部23a(又は23b)が固定部側係合部21aと係合すると、これらの相互干渉によって、操作体4を収容した可動部23が前記周方向のいずれかへそれ以上回転することはない。
【0083】
ここで、ニュートラルポジションにある操作体4を前記周方向へ回転してドライブポジションに位置付ける過程では、カムアクチュエータ64の先端部64aの当接部位は、カム31の凹部32aから凸部34aへ、さらに該凸部34aを越えて凹部32aのある側とは反対側の凹部32b斜面までカム31の凹凸に沿って移動する。この状態をドライブポジションとする。また、ニュートラルポジションにある操作体4を前記周方向へ回転してリバースポジションに位置付ける過程では先端部64aの当接部位は、カム31の凹部32aから凸部34bへ、さらに該凸部34bを越えて凹部32aとは反対側の凹部32c斜面まで、カム31の凹凸に沿って移動する。この状態をリバースポジションとする。操作体4が完全に収容された可動部23にカムアクチュエータ64を介して付勢力を作用させるバネ62は、該カムアクチュエータ64の先端部64aが凹部32aに当接した状態から凸部34a(34b)に当接した状態となるまで徐々に収縮されていき、前記先端部64aが凸部34a,34bと当接した状態で最も収縮され、その後、該先端部64aが凹部32b,32cに当接した状態となるまで徐々に伸長されていき、その後凹部斜面に位置するまで再度収縮されていく。したがって、操作体4が収容された可動部23にカムアクチュエータ64を介して作用されるバネ62の付勢力は、該カムアクチュエータ64の先端部64aが凹部32aに当接した状態から凸部34a,34bに当接した状態となるまで徐々に増大されていき、前記先端部64aが凸部34a,34bと当接した状態で最大となり、さらに該先端部64aが凹部32b,32cの底部に当接した状態となるまで徐々に減少されていき、その後また増大する。
【0084】
操作体4が収容された可動部23にカムアクチュエータ64を介して作用されるバネ62の付勢力は、該カムアクチュエータ64の先端部64aが凸部34a,34bを越える際に増大状態から減少状態へ変化するため、かかる付勢力に抗して運転者が操作体4へ作用させる回転力もその際に増大状態から減少状態へ変化する。これにより、運転者は、操作体4がニュートラルポジションからドライブポジションもしくはリバースポジションへ位置付けられたことを、操作した操作体4から伝わる感触(触覚)で把握することができる。また、操作体4を回転の終点まで操作し、カムアクチュエータ64の先端部64aが凹部32c(32b)の凹部斜面に位置している状態で操作力を解除すると、凹部斜面に作用するカムアクチュエータ64の弾性力は操作体4を回転操作力と反対の方向に回転させる付勢力として作用するので、操作体4は回転前の位置に自動的に復帰する。すなわち、操作体4に触れていた指先を離して、操作体4をドライブポジションもしくはリバースポジションに位置付けるために作用させている力を解除すると、該操作体4に作用しているバネ62の付勢力によって、操作体4がニュートラルポジションに戻され、さらにニュートラルポジションからホームポジションに戻される。
【0085】
このように、運転者が、ニュートラルポジションにある操作体4を周方向のいずれか(すなわち、ドライブポジション方向もしくはリバースポジション方向)へ向けて回転力を作用させるか選択すること、すなわち該回転力の作用方向を選択することで、ドライブポジションもしくはリバースポジションへ選択的に位置付けることができる。なお、ニュートラルポジションにある操作体4の操作可能な方向を3方向以上に設定することや周方向以外の方向に設定することが可能であることは、上述した第1の実施の形態(図1及び図2)と同様である。
【0086】
また、運転者は、操作体4がニュートラルポジションからドライブポジションもしくはリバースポジションへ位置付けられたことを、操作した操作体4から伝わる感触(触覚)で把握することができる。この場合、例えば、ドライブポジション方向が自動車の前進方向、リバースポジション方向が自動車の後進方向とそれぞれ一致するようにシフト操作装置を自動車に搭載することで、操作体4に対する操作方向と自動車の進行方向が一致し、運転者の操縦感覚とのずれが生じることがなく、運転者は操作体4に対して容易かつ正確に操作を行うことが可能となることは、上述した第1の実施の形態(図1及び図2)と同様である。
【0087】
また、操作体4に設ける弾性部50の付勢力、大きさやピッチなどの構成、凹部41a,41b、凸部43の形状、高さや深さなどの構成、固定部21に設けるバネ62の付勢力、大きさやピッチなどの構成、及びカムアクチュエータ64の材質、形状や大きさなどの構成、可動部23に設けるバネ22aの付勢力、大きさやピッチなどの構成、及びカム31の形状、高さや深さなどの構成は、ホームポジションからニュートラルポジション、そしてドライブポジションもしくはリバースポジションへ操作体4を可動部23へスムーズに進出させることが可能であるとともに、該操作体4を収容した可動部23を固定部21に対してスムーズに回転させることが可能であるのみならず、ドライブポジションもしくはリバースポジションからニュートラルポジション、さらにホームポジションまで操作体4及び該操作体4を収容した可動部23をスムーズに戻すことが可能となるように、これらを相互に調整することを要する。ただし、かかる調整がなされている限りこれらはどのような構成であっても構わない。
【0088】
なお、本実施形態においては、ニュートラルポジションに位置付けられている操作体4に作用している押圧力が解除された場合、該操作体4をホームポジションまで戻すとともに、ドライブポジションもしくはリバースポジションに位置付けられている操作体4に作用している回転力が解除された場合、該操作体4をニュートラルポジション、さらにはホームポジションまで戻す構成を上述した第1の実施の形態(図1及び図2)と同様に想定しているが、前記押圧力や回転力が解除された場合であっても、操作体4をニュートラルポジション、及びドライブポジションやリバースポジションにそのまま位置付けた状態に維持する構成とすることも同様に可能である。この場合、上記操作体4(弾性部50、凹部41a,41b、凸部43)、固定部21(バネ62、カムアクチュエータ64)、可動部23(バネ22a、凹部32a,32b,32c、凸部34a,34b)の各構成を、ホームポジションからニュートラルポジション、そしてドライブポジションもしくはリバースポジションへ操作体4をスムーズに進出させるとともに回転させ、進出後及び回転後は操作体4をその状態のまま維持することが可能となるように、相互に調整すればよい。
【0089】
本変形例に係るシフト操作装置には、上述したような操作が加えられた操作体4の保持体2に対する位置変化(動作変化)に基づいてシフト操作を制御するためのプリント基板8が備えられており、該プリント基板8は、固定部21の案内部26及び可動部23の操作体収容部25を覆うように保持体2に設けられている。
【0090】
図3及び図4に示すように、本実施形態においても、プリント基板8には、操作体4に対して操作が行われた際、その操作による該操作体4の保持体2に対する位置変化(動作変化)を計測するためのセンサ10が設けられ、操作体4には、プリント基板8に配設されたセンサ10の被検出体として、磁石(エンコーダ)12が設けられている。これらのセンサ10と磁石12は、操作体4がホームポジションからニュートラルポジション、続いてドライブポジションもしくはリバースポジションへ位置付けられる際、そして、ドライブポジションもしくはリバースポジションからニュートラルポジション、さらにホームポジションへ位置付けられる際における、該操作体4の保持体2に対する位置変化の軌跡に沿って並ぶように配されている。
【0091】
これにより、上述した第1の実施の形態(図1及び図2)と同様に、保持体2に対する操作体4の位置がホームポジションからニュートラルポジション、続いてドライブポジションもしくはリバースポジションへと変化していく各段階における位置情報や、ドライブポジションもしくはリバースポジションからニュートラルポジション、さらにホームポジションへと変化していく各段階における位置情報を取得することができ、取得した操作体4の位置情報に基づいて、上記信号処理部(図示しない)で変速制御などを行うことで、自動車のバイワイヤーシフト操作を実現することができる。
【0092】
以上、本発明の第1の実施形態(図1及び図2)、及び第2の実施形態(図3及び図4)によれば、回転によるシフト操作を指先(一例として、親指先)のみで簡単に行うことができ、ホームポジションとニュートラルポジションとの識別、さらにはこれらとドライブポジション及びリバースポジションとの識別を指先の感覚のみでも容易に行うことが可能なシフト操作装置を実現することできる。この結果、シフト操作装置の一層の小型化を図ることができ、例えば、シフト操作装置をステアリングパッドに配置することも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、所定の動力源から出力された回転動力の回転方向や回転速度を変化させる回転制御機構への組込装置の一つ、例えば、変速装置と電子的に接続されてなる自動車のバイワイヤーシフト操作用の装置として適用可能である。
【符号の説明】
【0094】
2…保持体
2a…蓋部
2b…底部
2c…カバー
2d…貫通孔
4…操作体
4a…操作体突起
6…弾性体
8…プリント基板
8a…長孔
10…センサ
12…磁石
20…保持体側係合部
21…保持体固定部
21a…保持体固定部側係合部
22…回転支持部
22a,62…バネ
22b,64…カムアクチュエータ
22c,64a…カムアクチュエータ先端部
23…保持体可動部
23a,23b…保持体可動部側係合部
24…回転規制部
25…操作体収容部
25a…操作体収容部開口部
25b…操作体収容部底部
26…案内部
28…保持体開口部
31,45…カム
32a,32b,32c,41a,41b,46a,46b,46c…凹部
34a,34b,43,48a,48b…凸部
40…操作体側係合部
42…回転被支持部
42a…脱落防止具
44…回転被規制部
50…弾性部
62…バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持体と、該保持体内へ進出可能に、かつ進出後は前記保持体に対して回転可能に構成された操作体とを備え、該操作体には、操作体側係合部が設けられ、前記保持体には、該保持体内への前記操作体の進出を可能にするとともに、該操作体の前記保持体に対する回転を可能とする保持体側係合部が設けられており、
前記操作体側係合部は、回転被支持部と回転被規制部とを備え、前記保持体側係合部は、前記操作体の前記保持体内への進出時に前記回転被支持部の進行を許容し、進行後は該回転被支持部の回転を許容する回転支持部と、前記操作体の前記保持体内への非進出時は前記回転被規制部を回転不能に規制する回転規制部と、該回転規制部につながり、前記操作体の前記保持体への進出時には前記回転被規制部を案内する案内部とを備え、
前記保持体には、該保持体への前記操作体の進出に抗する弾性体を設けたことを特徴とするシフト操作装置。
【請求項2】
前記操作体の前記保持体内への進出時において、前記回転支持部は、少なくとも2方向への前記回転被支持部の回転を許容するとともに、前記案内部は、少なくとも前記2方向へ前記回転被規制部を案内することを特徴とする請求項1に記載のシフト操作装置。
【請求項3】
前記保持体は、固定部と可動部を備え、該可動部が前記固定部に収容され、該固定部に対して回転可能に構成されており、前記操作体は、前記可動部に収容され、該可動部とともに固定部に対して回転可能に構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシフト操作装置。
【請求項4】
前記保持体への前記操作体の進出、及び前記操作体の前記保持体に対する回転に抗する付勢力を作用させていて、
該付勢力に抗する力が前記操作体に作用されない限り、前記回転被規制部を前記回転規制部によって回転不能に規制された状態に保ち続けることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかにシフト操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−173458(P2011−173458A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37455(P2010−37455)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】