説明

シミュレーション装置およびプラズマ放電処理装置支援システム

【課題】大気圧近傍で処理を行うプラズマ放電処理装置におけるプラズマ中の電子エネルギー分布等を時間依存のボルツマン方程式等により正確に算出して制御パラメータを決定するシミュレーション装置およびプラズマ放電処理装置支援システムを提供する。
【解決手段】シミュレーション装置2は、大気圧近傍の圧力下で電極間の電界を周期的または連続的に変化させてプラズマ放電処理を行うプラズマ放電処理装置10を制御する制御パラメータの中から修正する制御パラメータを指定し、シミュレーションの終了条件を設定する入力手段3と、ガスと電子との素反応の衝突断面積が記憶されたデータベース手段5と、指定された制御パラメータを修正しながら衝突断面積に基づいて時間依存のボルツマン方程式を用いてシミュレーションを行う演算手段6と、演算結果が終了条件を満たしているか否かを判断し、制御パラメータの値を決定する制御手段7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシミュレーション装置およびプラズマ放電処理装置支援システムに係り、特に、大気圧近傍の圧力下でプラズマ放電処理を行うプラズマ放電処理装置の制御パラメータを時間依存のボルツマン方程式または時間依存のフォッカー−プランク方程式を用いたシミュレーションにより決定するシミュレーション装置およびプラズマ放電処理装置支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
基材表面に対する薄膜堆積やエッチング、洗浄、親水化、疎水化等の各種処理を行う方法や装置として、キャリアガスと原料ガス、反応性ガス等の混合ガスを放電によりプラズマ化して行うプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いたプラズマ放電処理方法やプラズマ放電処理装置の開発が盛んに進められている。
【0003】
例えば、シリコン表面に対するSiO薄膜形成の場合には、原料ガスとしてテトラエトキシシラン(TEOS)等、反応性ガスとして酸素ガス、キャリアガスとしての窒素ガスをそれぞれ用い、通常、それらの混合ガスを対向する電極間に導入して所定の周波数の電圧を印加してプラズマ化する。そして、プラズマ化した混合ガス中にシリコン基材を曝し、あるいはプラズマ化した混合ガスをシリコン基材に吹き付けて基材表面上にSiOを堆積させてSiO薄膜を形成する。
【0004】
このようなプラズマ放電処理装置では、従来、混合ガスをプラズマ化するためのグロー放電が発生し易くなるようにプラズマ放電処理を行う処理室内を真空ポンプ等でひいて数Pa程度の低圧にして処理を行う装置等が知られていたが(例えば、特許文献1〜4等参照)、近年、大気圧近傍の圧力下でプラズマ放電処理を行うことが可能なプラズマ放電処理装置が開発されている(例えば、特許文献5、6等参照)。
【特許文献1】特開2000−36255号公報
【特許文献2】特開2000−38688号公報
【特許文献3】特開2000−277495号公報
【特許文献4】特開2001−210594号公報
【特許文献5】特開2004−18998号公報
【特許文献6】特開2000−82595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の低圧下でのプラズマ放電処理においては、例えば、ラングミュアプローブ等を用いてプラズマ中の電子密度や電子エネルギー分布等を直接計測することが可能であり、それらの計測値に基づいてプラズマ放電処理装置を制御するための印加電圧や駆動周波数、電極間間隔、ガス種やガス混合比等の制御パラメータの決定や調整を行うことができた。
【0006】
しかし、ラングミュアプローブや他の測定手段を用いて10Pa前後の大気圧近傍の圧力下でのプラズマ中の電子エネルギー分布等を計測することは非常に困難であり、プラズマ放電処理装置の制御パラメータの調整は、低圧下でのプラズマ放電処理における制御値からの推定や設定者の経験に頼らざるを得なかった。
【0007】
そこで、本発明は、大気圧近傍の圧力下でプラズマ放電処理を行うプラズマ放電処理装置におけるプラズマ中の電子エネルギー分布等を時間依存のボルツマン(Boltzmann)方程式や時間依存のフォッカー−プランク(Fokker-Planck)方程式を用いたシミュレーションにより正確に算出し、それに基づいて制御パラメータを決定するシミュレーション装置およびプラズマ放電処理装置支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の問題を解決するために、請求項1に記載のシミュレーション装置は、
大気圧近傍の圧力下で電極間の電界を周期的または連続的に変化させてプラズマ放電処理を行うプラズマ放電処理装置を制御する制御パラメータの中から修正する前記制御パラメータを指定し、シミュレーションの終了条件を設定する入力手段と、
キャリアガス、原料ガスおよび反応性ガスと電子との素反応の衝突断面積が記憶されたデータベース手段と、
前記指定された制御パラメータを修正しながら前記衝突断面積に基づいて時間依存のボルツマン方程式を用いてシミュレーションを行う演算手段と、
前記演算の結果が前記終了条件を満たしているか否かを判断し、前記制御パラメータの値を決定する制御手段と
を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、シミュレーション装置では、プラズマ放電処理装置の制御パラメータやキャリアガスや原料ガス、反応性ガスの種類や混合比等の初期条件を入力し、修正すべき制御パラメータを指定し、シミュレーションの終了条件を設定すると、制御手段はデータベース手段から素反応の衝突断面積を読み込み演算手段に送る。演算手段はそれらのデータに基づいて時間依存のボルツマン方程式を解いて電子エネルギー分布の時間平均等の必要な情報を制御手段に送る。制御手段は、演算結果が前記終了条件を満たすまで制御パラメータを修正しながら前記演算を繰り返して終了条件を満たす制御パラメータの値を決定する。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のシミュレーション装置において、前記終了条件は、前記電極間に生じる電子のエネルギー分布において、所定の範囲のエネルギーを有する電子の全電子数に対する割合であることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、シミュレーション装置において行われる時間依存のボルツマン方程式を用いたシミュレーションの終了条件は、電極間に生じるプラズマ中の電子エネルギー分布において、所定の範囲のエネルギーを有する電子、例えば、10eV以上のエネルギーを有する電子が全電子数に対して5%以上という形で指定され、その条件が達成されるとしミュレーションが終了する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のシミュレーション装置において、前記終了条件は、前記電極間に生じる電子の速度分布において、所定の範囲の速度を有する電子の全電子数に対する割合であることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、シミュレーション装置において行われる時間依存のボルツマン方程式を用いたシミュレーションの終了条件は、電極間に生じるプラズマ中の電子の速度分布において、所定の範囲の速度を有する電子、例えば、2×10m/s以上のエネルギーを有する電子が全電子数に対して5%以上という形で指定され、その条件が達成されるとしミュレーションが終了する。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシミュレーション装置において、前記シミュレーション手段は、前記時間依存のボルツマン方程式の代わりに時間依存のフォッカー−プランク方程式を用いることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、シミュレーション装置では、時間依存のボルツマン方程式の代わりに時間依存のフォッカー−プランク方程式を用いてシミュレーションが行われる。
【0016】
請求項5に記載のプラズマ放電処理装置支援システムは、前記請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のシミュレーション装置と、大気圧近傍の圧力下で電極間の電界を周期的または連続的に変化させてプラズマ放電処理を行うプラズマ放電処理装置とを備え、
前記シミュレーション装置は、決定した前記制御パラメータの値を前記プラズマ放電処理装置に送信することを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、シミュレーション装置では、プラズマ放電処理装置の制御パラメータやキャリアガスや原料ガス、反応性ガスの種類や混合比等の初期条件を入力し、修正すべき制御パラメータを指定し、シミュレーションの終了条件を設定すると、制御手段はデータベース手段から素反応の衝突断面積を読み込み演算手段に送る。演算手段はそれらのデータに基づいて時間依存のボルツマン方程式を解いて電子エネルギー分布の時間平均等の必要な情報を制御手段に送る。制御手段は、演算結果が前記終了条件を満たすまで制御パラメータを修正しながら前記演算を繰り返して終了条件を満たす制御パラメータの値を決定し、プラズマ放電処理装置に送信する。プラズマ放電処理装置では、その制御パラメータに基づいて制御が行われる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、ラングミュアプローブ等を用いてプラズマ中の電子エネルギー分布等を計測することが困難である10Pa前後の大気圧近傍の圧力下でプラズマ放電処理を行うプラズマ放電処理装置に対して、シミュレーション装置で時間依存ボルツマン方程式やクーロン散乱を考慮したボルツマン方程式を用いてシミュレーションによりプラズマ放電処理装置におけるプラズマ中の電子エネルギー分布や電子速度分布を再現して装置の制御パラメータを修正しながら最適な制御パラメータの値を見出す。
【0019】
このように構成することで、プラズマ中の電子エネルギー分布等を直接計測して制御する場合と同様にプラズマ放電処理装置を正確に制御することができる制御パラメータを決定することが可能となる。また、時間依存のボルツマン方程式を用いることで、非常に高い精度で正確に電界の周波数に依存した電子のエネルギー分布等を求めることが可能となり、制御パラメータの最適値を精度よく見出すことができる。さらに、それによりプラズマ放電処理装置を高精度に制御し得る制御パラメータを見出すことが可能となる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、シミュレーション装置において行われる時間依存のボルツマン方程式を用いたシミュレーションの終了条件を、電極間に生じるプラズマ中の電子エネルギー分布における所定の範囲のエネルギーを有する電子の全電子数に対する割合で指定する。そのため、前記請求項に記載の発明の効果に加え、シミュレーションの結果得られる電子エネルギー確率密度関数から即座に演算される電子エネルギー分布関数を直接判断の対象とすることが可能となるから、演算手段における演算工程および制御手段における判断工程がより迅速になり、シミュレーション装置における制御パラメータの最適値の決定がより高速に行われるようになる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、シミュレーション装置において行われる時間依存のボルツマン方程式を用いたシミュレーションの終了条件を、電極間に生じるプラズマ中の電子の速度分布における所定の範囲の速度を有する電子の全電子数に対する割合で指定する。そのため、前記請求項に記載の発明の効果に加え、シミュレーションの結果得られる電子エネルギー確率密度関数から即座に演算される電子速度分布関数を直接判断の対象とすることが可能となるから、演算手段における演算工程および制御手段における判断工程がより迅速になり、シミュレーション装置における制御パラメータの最適値の決定がより高速に行われるようになる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、シミュレーション装置では、時間依存のボルツマン方程式の代わりに時間依存のフォッカー−プランク方程式を用いてシミュレーションが行われる。そのため、前記各請求項に記載の発明の効果が有効に発揮されるとともに、プラズマ中でクーロン散乱の効果が無視できないような場合にはより正確に電子エネルギー確率密度関数を求めることが可能となり、より正確な電子エネルギー分布関数や電子速度分布関数等に基づいて最適な制御パラメータを決定することが可能となる。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、前記各請求項に記載のシミュレーション装置により決定された制御パラメータの値に基づいて、大気圧近傍の圧力下で電極間の電界を周期的または連続的に変化させてプラズマ放電処理を行うプラズマ放電処理装置の制御を行う。そのため、前記各請求項に記載の発明の効果が効果的に発揮されるとともに、プラズマ中の電子エネルギー分布等を直接計測して制御する場合と同様に正確な制御を行うことが可能となる。また、時間依存のボルツマン方程式やフォッカー−プランク方程式を用いることで、非常に高い精度で正確に電界の周波数に依存した電子のエネルギー分布等を求めることが可能となり、高精度に求められた制御パラメータの最適値に基づいてプラズマ放電処理装置を高い精度で制御することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係るシミュレーション装置およびプラズマ放電処理装置支援システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、本実施形態に係るプラズマ放電処理装置支援システムの構成を示すブロック図である。プラズマ放電処理装置支援システム1は、大気圧近傍の圧力下で電極間の電界を周期的または連続的に変化させてプラズマ放電処理を行うプラズマ放電処理装置10と、プラズマ放電処置装置10を制御するための制御パラメータの値をシミュレーションにより算出するシミュレーション装置2とで構成されている。
【0026】
まず、本実施形態のプラズマ放電処理装置支援システムが適用されるプラズマ放電処理装置について説明する。図2は、プラズマ放電処理装置の構成を示す概略図である。なお、以下に示すプラズマ放電処理装置10は、本実施形態のプラズマ放電処理装置支援システムが適用される最も単純な装置であり、本実施形態のプラズマ放電処理装置支援システムは他の形態のプラズマ放電処理装置にも適用される。
【0027】
本実施形態のプラズマ放電処理装置10は、対向電極とされた第1電極11および第2電極12、および2つの電極11、12に電圧を印加する電圧印加手段を備えている。プラズマ放電処理装置10には、このほかに、図示を省略するが、混合ガスを供給するガス供給手段や電極温度調節手段、制御手段等が設けられている。
【0028】
第1電極11および第2電極12には、それぞれ第1フィルタ13および第2フィルタ14を介して第1電源15および第2電源16が接続されている。第1フィルタ13は、第1電源15から第1電極11への電流を通過し易くし、同時に、第2電源14からの電流をアースして第1電源15への電流が通過し難くなるように設計されている。第2フィルタ14も第2電源16および第2電極12に対して同様に機能するようになっている。
【0029】
第1電極11および第2電極12には、前記第1電源15および第2電源16から周期的または連続的に変化する電圧がそれぞれ供給されるようになっており、それにより、2つの電極間に生じる電界が周期的または連続的に変化するようになっている。
【0030】
本実施形態ではキャリアガスとして窒素ガスが用いられる場合が想定されており、制御パラメータとして、通常、第1電極11には第1電源15から周波数ω=100kHz、電圧V=8kV、出力密度W=1W/cmの電圧が印加され、第2電極12には第2電源16から周波数ω=13.56MHz、電圧V=0.8kV、出力密度W=10W/cmの電圧が印加されるようになっている。
【0031】
しかし、これらの制御パラメータの値は、シミュレーション装置2から送信されてくる値に修正することが可能とされており、第1電極11および第2電極12には、第1電源15および第2電源16からその修正された電圧値や駆動周波数の電圧が印加されるようになっている。送信されてきた制御パラメータの値は、装置内の図示しない記憶手段に記憶されるようになっている。
【0032】
また、第1電極11と第2電極12との電極間距離は、通常、1mmに設定されているが、図示しない移動手段により電極間距離は可変とされている。両電極の上方には、キャリアガス、原料ガスおよび反応性ガスよりなる混合ガスGを両電極間の放電空間17に供給するための図示しないガス供給手段が配設されており、第1電極11と第2電極12との間で高周波の電界が生じている放電空間17にガス供給手段から混合ガスGが導入されると、混合ガスGを介して両電極間で放電が生じ、混合ガスGがプラズマ化されるようになっている。
【0033】
プラズマ化された混合ガスG°は、放電空間17の下方にジェット状に吹き出され、第1電極11および第2電極12の各下面と支持板18に裏面側から支持された基材Fとで構成される処理空間がプラズマ化された混合ガスG°で満たされ、基材Fの表面の処置位置19付近で薄膜が形成され或いはエッチングされる等の表面処理が行われるようになっている。放電処理済みの処理排ガスは、図示しない排気口より排出されるようになっている。
【0034】
なお、第1電極11、第2電極12および支持板18の少なくとも混合ガスGやプラズマ化された混合ガスG°に接する面は、それぞれ誘電体20、21、22で被覆されている。誘電体20、21、22としては、アルミナ、窒化ケイ素等のセラミックス或いはケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等が好ましく用いられる。また、支持板18に電圧が印加され、或いは支持板18が接地されるように構成することも可能である。
【0035】
次に、シミュレーション装置2について説明する。
【0036】
シミュレーション装置2は、本実施形態では、CPUやRAM、ROM、入出力インターフェース等がBUSにより接続されて構成されたコンピュータが用いられている。また、シミュレーション装置2は、機能的に見た場合、図1に示したように、入力手段3と、表示手段4と、データベース手段5と、演算手段6と、制御手段7とを備えている。
【0037】
入力手段3は、マウスやキーボードのほか、これらの指定等が記憶媒体から入力される場合にはそれらのドライバ、LAN等を介して外部コンピュータ等から行われる場合は外部装置等で構成されている。入力手段3から、キャリアガス、原料ガスおよび反応性ガスの種類および混合比やプラズマ放電処理装置10の装置形状、印加電圧や駆動周波数等の初期条件が入力されるようになっている。
【0038】
また、印加電圧V、V、駆動周波数ω、ω、電極間間隔、ガス種とガス混合比、装置形状、電極等を被覆する誘電体20、21、22の比誘電率およびそれらの厚さ等の種々の制御パラメータの中からシミュレーションにおいて修正される制御パラメータが入力手段3を介して指定され、シミュレーションの終了条件が設定されるようになっている。
【0039】
本実施形態では、入力手段3から、修正される制御パラメータの指定とともに、制御パラメータの修正の範囲を表す制約条件が設定されるようになっている。具体的には、例えば、第2電源16から第2電極に印加される電圧の周波数ωを13.56MHzから上昇させていく場合の上限として制約条件を150MHzまでと設定できるようになっている。
【0040】
また、本実施形態では、前記シミュレーションの終了条件は、電極間に生じる電子のエネルギー分布における所定の範囲のエネルギーを有する電子の全電子数に対する割合、例えば、電極間の放電空間17に生じる電子のエネルギー分布において10eV以上の電子が全電子数に対して5%以上という形で設定されるようになっている。
【0041】
なお、エッチング等でエネルギーが大きい電子が多すぎては困るというような場合には、例えば、3eV以下の電子が全電子数に対して90%以上という形で終了条件を設定することも可能とされており、プラズマ放電処理装置10における放電処理の内容および処理において必要とされる電子のエネルギー状態にあわせて終了条件の設定のしかたを変更できるようになっている。
【0042】
表示手段4は、CRTや液晶モニタ等よりなり、表示手段4には、シミュレーションの結果が表示されるとともに、前記入力手段3からの入力において指定された制御パラメータや設定されたシミュレーションの終了条件等が表示されるようになっている。
【0043】
データベース手段5は、ハードディスク等の記憶装置よりなり、データベース手段5には、キャリアガス、原料ガスおよび反応性ガスの素反応の衝突断面積が記憶されている。
【0044】
演算手段6は、入力手段3により指定された制御パラメータを修正しながら衝突断面積に基づいて時間依存のボルツマン方程式を用いてシミュレーションを行い、電子のエネルギー分布を演算により求めるように構成されている。
【0045】
ここで、演算手段6により行われる時間依存のボルツマン方程式を用いたシミュレーションについて説明する。
【0046】
プラズマ放電処理装置10の電極間の放電空間17では、電子が関与する素反応としては下記(1)〜(9)式に示すような素反応が生じている。
弾性衝突: e+A→e+A (1)
電子励起: e+A→e+A (2)
振動励起: e+A→e+A(vib) (3)
回転励起: e+A→e+A(rot) (4)
解離: e+AB→e+A+B (5)
電離: e+A→e+e+A (6)
電子付着: e+A→A (7)
解離付着: e+AB→A+B (8)
超弾性衝突: e+A→e+A (9)
【0047】
ここで、Aはキャリアガスや原料ガス等の中性ガス分子もしくはそれに由来する原子であり、Aはそれらの分子または原子が電子励起状態にあることを示している。
【0048】
これらの素反応の各衝突断面積σは、文献値または実験値から得ることができ、それらの値がすべて前記データベース手段5に記憶されている。また、これらの衝突断面積のデータがない場合には、スオーム実験や成膜結果と一致するように人為的に決められた値を用いてもよく、また、前記文献値等も必要に応じて適宜修正した値を用いてもよい。
【0049】
例えば、電子と窒素分子との気相反応データとしては、Y. Itikawa et al., “Cross Sections for Collisions of Electrons and Photons with Nitrogen Molecules”, Journal of Physical and Chemical Reference Data, 米国, American Chemical Society発行, 1986, vol.15, No.3の文献値を用いることができる。また、窒素およびその他のガスについては以下の技術報告にまとめられている。電気学会「放電プラズマ中電子,イオン,励起粒子反応調査専門委員会」編、「低エネルギー電子・イオンダイナミックスとシミュレーション技法II」、電気学会技術報告第853号、電気学会 基礎・材料・共通部門 放電技術委員会発行、2001年9月。
【0050】
本実施形態においては、前記電極間の放電空間17内では電子エネルギー分布は一様であると仮定して、0次元の時間依存ボルツマン方程式を解くようになっている。
【0051】
ある時刻tにおける位置r、速度vからなる位相空間における位置rとr+dr、速度vとv+dv内に存在する電子の個数dn(r,v,t)は下記(10)式で表すことができる。なお、位置rおよび速度vは3次元ベクトルである。
【0052】
【数1】

【0053】
ここで、確率密度関数Fは電子の速度分布関数であり、Fと電子エネルギー分布関数Fとは下記(11)式で関係つけられる。
【0054】
【数2】

【0055】
さらに、電子エネルギー確率密度関数fは電子エネルギー分布関数Fを用いて下記(12)式で定義される。
【0056】
【数3】

【0057】
この電子エネルギー確率密度関数fは下記(13)式に示す時間依存のボルツマン方程式を解くことによって得られる。
【0058】
【数4】

【0059】
(13)式において、左辺第1項は時間変化項、第2項は粒子の拡散による移動、第3項は外力による移動、右辺は衝突項を意味する。なお、クーロン散乱が無視できない場合には(13)式の代わりにフォッカー−プランク方程式もしくはクーロン散乱を考慮したボルツマン方程式を用いることができる。
【0060】
一般に、十分に等方的なプラズマではfは球面調和関数で展開することができ、第2項までの近似で十分な場合が多い。さらに、高周波電界の角周波数ωの変化が電子のエネルギー緩和周波数νに比べて十分速い場合、すなわちω≫νである場合、fを球面調和関数で展開した場合の第1項、すなわち等方的部分fは時間に依存しなくなる。このとき、等方的部分fは下記(14)式で与えられる。
【0061】
【数5】

【0062】
ここで、高周波による加熱に対応する電場の項は、実効電場Eeffと呼ばれ、下記(15)式で表される。
【0063】
【数6】

【0064】
(15)式において、νは電子運動量移行衝突周波数と呼ばれ、電子の運動量が移行するような衝突が単位時間内に何回生じるかを表す。
【0065】
従来の低圧環境下でのプラズマ放電処理においては、一般に、電子エネルギー確率密度関数fあるいは電子エネルギー分布関数Fの計算では、高周波加熱は(15)式の実効電場Eeffを用いて計算される。
【0066】
しかしながら、実効電場Eeffを用いると、本発明のようにガス圧力が大気圧近傍かそれ以上の高い領域ではν≫ωとなり、その結果、
【0067】
【数7】

【0068】
となり,周波数依存性が見かけ上なくなるばかりでなく、ガス圧力が高い環境下では前記とは逆に電子のエネルギー緩和周波数νが高周波電界の角周波数ωの変化に比べて十分速くなり、すなわちν≫ωとなる。
【0069】
そのため、高周波による加熱に対応する電場の項として前記のような実効電場Eeffを用いることができず、時間依存の瞬時電界E(t)を用いることが必要となり、電子エネルギー確率密度関数fを求めるために解くべきボルツマン方程式も時間依存項、すなわち時間微分項を含んだ時間依存のボルツマン方程式
【0070】
【数8】

【0071】
を解くことが必要となる。
【0072】
本実施形態では、(17)式の右辺の衝突項を、前記データベース手段5に保存された素反応の各衝突断面積σを用いて下記(18)式のように表して計算する。
【0073】
【数9】

【0074】
ここで、vは電子の速度、nは電子の密度、Nは前記(1)〜(9)式に示した電子との素反応における相手方の分子や原子、イオン等の密度である。すなわち、衝突断面積σには、前記(2)〜(4)式に示される電子励起反応や振動励起反応、回転励起反応における衝突断面積であるσexcitationや前記(6)式に示される電離反応における衝突断面積であるσionization等が含まれる。
【0075】
なお、電子と衝突する相手方の分子等は、分解やイオン化を受けていない生のキャリアガスや原料ガス、反応性ガスである場合がほとんどであるから、前記(18)式において、Nとしてキャリアガス等を構成する分子等のみとして計算を行うことも可能である。また、電子密度nは、下記(19)式で求められる。
【0076】
【数10】

【0077】
また、前記(17)式において、時間依存の瞬時電界E(t)はベクトルであり、本実施形態では、E(t)の絶対値として下記(20)式に示すように電極への印加電圧V(t)を電極間距離dで除した値を用いている。
【0078】
【数11】

【0079】
なお、実際には、プラズマの遮蔽効果により電極間の放電空間17では、電極平面近傍における電界より電極平面から離れた放電空間17の中央領域で電界が弱くなることが知られているから、放電空間17を電極近傍領域と中央領域とに区画し、それぞれの領域での電界を予測して電界E(t)をそれぞれ修正して、別々に前記(17)式の時間依存ボルツマン方程式を解くように構成することも可能である。
【0080】
前記時間依存のボルツマン方程式の解法としては、本実施形態では、入力手段3から入力された前記初期条件からスタートし、前記(17)式を差分法により時間進展させながら電子エネルギー確率密度関数fを求める手法が採用されている。なお、前記(17)式の解法として差分法以外に、例えば、プロパゲータ法等の他の手法を用いるように構成することも可能である。
【0081】
このようにして求められた電子エネルギー確率密度関数fは、入力手段3で設定されたシミュレーションの終了条件を満たすか否かの判断のために、前記(12)式に基づいて電子エネルギー分布関数Fに変換され、あるいは、さらに前記(11)式に基づいて電子速度分布関数Fに変換される。そして、電子エネルギー分布関数Fや電子速度分布関数Fが駆動周波数1周期で積分され、それを周期Tで除することで時間平均が求められるようになっている。
【0082】
演算手段6は、制御手段7からの再演算の指示を受けると、前記入力手段3で指定された制御パラメータを修正して再度前記演算を行うようになっている。その場合、演算手段6は、例えば、制御パラメータの値を上昇させていく場合には制御パラメータの現在値と制約条件の最高値との差を10等分し、10段階に分けて制御パラメータの値を上昇させながら演算を行うようになっている。
【0083】
具体的には、前述したように、例えば、第2電源16から第2電極に印加される電圧の周波数ωを13.56MHzから上昇させていき、制約条件を150MHzまでの場合には、(150−13.56)/10=13.644MHzずつ再演算ごとに上昇させていきながら前記電子エネルギー分布関数Fや電子速度分布関数Fの時間平均がシミュレーションの終了条件を満たすまで演算が繰り返されるようになっている。
【0084】
制御手段7は、演算手段6による演算結果を演算が終了するごとにデータベース手段5にデータとして保存させるとともに、表示手段4に表示させるようになっている。また、制御手段7は、演算結果が前記シミュレーションの終了条件を満たしているか否かを判断し、終了条件を満たしていないと判断した場合には、演算手段6に対して再演算の指示を発信するようになっている。
【0085】
さらに、制御手段7は、演算結果が前記終了条件を満たしていると判断した場合には、修正された制御パラメータをプラズマ放電処理装置10に送信するようになっている。なお、制御パラメータの送信方法としては、オンラインでプラズマ放電処理装置10に直接伝送する場合のほか、いったん記憶媒体に記憶させておく方法など修正された制御パラメータがプラズマ放電処理装置10に伝達される方法であればよい。
【0086】
次に、本実施形態のシミュレーション装置2およびプラズマ放電処理装置支援システム1の作用について説明する。
【0087】
図3は、本実施形態のシミュレーション装置における処理手順を示すフローチャートである。
【0088】
シミュレーション装置2には、まず、入力手段3から、印加電圧V、V、駆動周波数ω、ω、電極間間隔、装置形状、電極等を被覆する誘電体20、21、22の比誘電率およびそれらの厚さなどプラズマ放電処理装置10の制御パラメータの初期設定値と、キャリアガス、原料ガスおよび反応性ガスの種類や混合比等の混合ガスの初期値との初期条件が入力される(ステップS1)。
【0089】
例えば、シリコン表面に対するSiO薄膜形成の場合には、キャリアガスとして窒素ガス、原料ガスとしてシランガス(SiH)、反応性ガスとして酸素ガス等のガスの種類と、それぞれの混合比、例えば、95体積%:4.5体積%:0.5体積%等の混合比が入力される。
【0090】
初期条件の入力が終了すると、制御手段7は、データベース手段5から混合ガスの種類から予想される各素反応の衝突断面積σを読み込み(ステップS2)、シミュレーションにおいて修正させるべき制御パラメータを指定するように表示手段4に表示させて指定を促す。
【0091】
修正される制御パラメータが指定されると(ステップS3)、制御手段7は、シミュレーションの終了条件と制御パラメータの修正の制約条件とを設定するように表示手段4に表示させて設定を促す。終了条件と制約条件とが設定されると(ステップS4)、制御手段7は、演算手段6に前記初期条件、各素反応の衝突断面積σ、制御パラメータの指定および設定された終了条件等の各種データを送信する。
【0092】
前記制御パラメータの指定においては、例えば、第2電源16から第2電極に印加される電圧の周波数ωという形で指定され、前記シミュレーションの終了条件の設定においては、例えば、電極間の放電空間17に生じる電子のエネルギー分布において10eV以上の電子が全電子数に対して5%以上という形で設定され、前記制御パラメータの修正の制約条件の設定においては、例えば、周波数ωを150MHzまでという形で設定される。
【0093】
演算手段6は、送信されてきた各種データのうち装置に関する事項、すなわち印加電圧V、V、駆動周波数ω、ω、電極間間隔、装置形状、電極等を被覆する誘電体20、21、22の比誘電率およびそれらの厚さなどから前記(20)式等に基づいて電極間の放電空間17における時間依存の瞬時電界E(t)を求め、前記(17)式の時間依存ボルツマン方程式を差分法により時間進展させながら解いて電子エネルギー確率密度関数fを求める(ステップS5)。演算式としてフォッカー−プランク方程式もしくはクーロン散乱を考慮したボルツマン方程式を用いる場合には、それらの方程式を差分法により時間進展させながら解いて電子エネルギー確率密度関数fを求める。
【0094】
そして、演算手段6は、前記終了条件の設定例の場合には、電子エネルギー確率密度関数fを前記(12)式に基づいて電子エネルギー分布関数Fに変換し、駆動周波数1周期で積分してそれを周期Tで除することで時間平均を算出する。電子速度分布関数Fが必要な場合には(11)式に基づいて電子エネルギー分布関数Fから電子速度分布関数Fに変換され、時間平均が算出される。
【0095】
演算手段6は、演算の結果得られた電子エネルギー確率密度関数fや電子エネルギー分布関数F、電子速度分布関数Fやそれらの時間平均等を制御手段7に送信し、演算を終了する。制御手段7は、送信されてきた演算結果をデータベース手段5に保存するとともに表示手段4に表示させる(ステップS6)。
【0096】
また、制御手段7は、同時に、演算結果が前記シミュレーションの終了条件を満たしているか否かを判断する(ステップS7)。例えば、前記設定例で言えば、制御手段7は、演算手段6から送信されてきた電子エネルギー分布関数Fの時間平均に基づいて、電極間の放電空間17に生じる電子のエネルギー分布において10eV以上の電子が全電子数に対して5%以上であり終了条件を満たしていると判断すると、その修正された制御パラメータおよびそれ以外の初期設定値の制御パラメータをデータベース手段5に保存させ、表示手段4に表示させる(ステップS8)。
【0097】
そして、制御手段7は、修正された制御パラメータ等をプラズマ放電処理装置10に送信し(ステップS9)、プラズマ放電処理装置10は、その制御パラメータに従って印加電圧等を設定して処理を行う。
【0098】
また、演算手段7による演算結果がシミュレーションの終了条件を満たしていないと判断すると、制御手段7は、指定された制御パラメータの値を修正し(ステップS10)、その修正値が設定された制約条件を満たしているか否かをチェックしたうえで(ステップS11)、その制御パラメータの修正された値と再演算の指示を演算手段6に送信する。
【0099】
演算手段7は、その修正された制御パラメータに基づいて、改めて電極間の放電空間17における時間依存の瞬時電界E(t)を求め、前記(17)式の時間依存ボルツマン方程式等を差分法により時間進展させながら解いて電子エネルギー確率密度関数fを求める(ステップS5)。
【0100】
制御手段7は、シミュレーションの終了条件を満たすまで繰り返し指定された制御パラメータを修正して演算手段6に演算を行わせて、指定された制御パラメータの最適値を求める。また、制御手段7は、制御パラメータの修正についての制約条件を満たさないと判断すると(ステップS11)、指定された制御パラメータを修正しても制約条件の範囲内ではシミュレーションの終了条件を満たす最適値が見出されない旨を表示手段4に表示させて(ステップS12)処理を終了する。
【0101】
以上のように、本実施形態のシミュレーション装置2およびプラズマ放電処理装置支援システム1によれば、ラングミュアプローブ等を用いてプラズマ中の電子エネルギー分布等を計測することができない10Pa前後の大気圧近傍の圧力下でプラズマ放電処理を行うプラズマ放電処理装置10に対して、シミュレーション装置2で時間依存ボルツマン方程式やフォッカー−プランク方程式、クーロン散乱を考慮したボルツマン方程式を用いてシミュレーションにより電極間の放電空間17におけるプラズマ中の電子エネルギー分布や電子速度分布を再現して装置の制御パラメータを修正しながら最適な制御パラメータの値を見出し、その制御パラメータの最適値をプラズマ放電処理装置10に送り、その制御パラメータに基づいて装置を制御する。このように構成することで、プラズマ中の電子エネルギー分布等を直接計測して制御する場合と同様に正確な制御を行うことが可能となる。
【0102】
また、時間依存のボルツマン方程式やフォッカー−プランク方程式を用いることで、非常に高い精度で正確に電界の周波数に依存した電子のエネルギー分布等を求めることが可能となり、制御パラメータの最適値を精度よく見出すことができる。また、それによりプラズマ放電処理装置10を高精度に制御することが可能となる。
【0103】
さらに、修正する制御パラメータとして、プラズマ放電処理装置10の電極11等の表面を被覆する誘電体20等の厚さや比誘電率を指定すれば、シミュレーションにより最適な厚さや比誘電率を求めることができ、これに基づいて好適なプラズマ放電処理装置10を設計することが可能となる。このように、プラズマ放電処理装置支援システム1は、プラズマ放電処理装置10の装置設計に用いることも可能である。
【0104】
なお、本実施形態では、修正されるプラズマ放電処理装置10の制御パラメータとして1つの制御パラメータを指定してシミュレーションを行う場合について述べたが、複数の制御パラメータを指定するように構成することも可能であり、その場合、指定された複数の制御パラメータを変数とする多次元的な位相空間全域を網羅するように修正しながらシミュレーションを行うように構成してもよいし、各制御パラメータを関連付けてそれらの値を同時に変更しながらシミュレーションを行うように構成してもよい。
【0105】
また、前記シミュレーションの終了条件の幅を持たせ、例えば、電極間の放電空間17に生じる電子のエネルギー分布において10eV以上の電子が全電子数に対して5%±2%以上という形で設定するように構成することも可能である。
【0106】
また、本実施形態では、シミュレーションにおいて、0次元の時間依存ボルツマン方程式あるいは0次元の時間依存フォッカー−プランク方程式を用いる場合を示したが、多次元の時間依存ボルツマン方程式やフォッカー−プランク方程式を用いるように構成することも可能である。また、多次元の時間依存ボルツマン方程式やフォッカー−プランク方程式で電子エネルギー分布を算出し多次元粒子法でイオンの流れを求めたり、あるいは多次元の時間依存ボルツマン方程式やフォッカー−プランク方程式で求めた電子の輸送係数をプラズマ流体方程式に適用して最適な制御パラメータの値を求めるように構成することも可能である。本発明にはこれら多次元の時間依存ボルツマン方程式やフォッカー−プランク方程式を用いてシミュレーションを行う場合も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本実施形態に係るプラズマ放電処理装置支援システムの構成を示すブロック図である。
【図2】プラズマ放電処理装置の構成を示す概略図である。
【図3】本実施形態のシミュレーション装置における処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0108】
1 プラズマ放電処理装置支援システム
2 シミュレーション装置
3 入力手段
5 データベース手段
6 演算手段
7 制御手段
10 プラズマ放電処理装置
G 混合ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧近傍の圧力下で電極間の電界を周期的または連続的に変化させてプラズマ放電処理を行うプラズマ放電処理装置を制御する制御パラメータの中から修正する前記制御パラメータを指定し、シミュレーションの終了条件を設定する入力手段と、
キャリアガス、原料ガスおよび反応性ガスと電子との素反応の衝突断面積が記憶されたデータベース手段と、
前記指定された制御パラメータを修正しながら前記衝突断面積に基づいて時間依存のボルツマン方程式を用いてシミュレーションを行う演算手段と、
前記演算の結果が前記終了条件を満たしているか否かを判断し、前記制御パラメータの値を決定する制御手段と
を備えることを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項2】
前記終了条件は、前記電極間に生じる電子のエネルギー分布において、所定の範囲のエネルギーを有する電子の全電子数に対する割合であることを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項3】
前記終了条件は、前記電極間に生じる電子の速度分布において、所定の範囲の速度を有する電子の全電子数に対する割合であることを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項4】
前記シミュレーション手段は、前記時間依存のボルツマン方程式の代わりに時間依存のフォッカー−プランク方程式を用いることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシミュレーション装置。
【請求項5】
前記請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のシミュレーション装置と、
大気圧近傍の圧力下で電極間の電界を周期的または連続的に変化させてプラズマ放電処理を行うプラズマ放電処理装置と
を備え、
前記シミュレーション装置は、決定した前記制御パラメータの値を前記プラズマ放電処理装置に送信することを特徴とするプラズマ放電処理装置支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−179407(P2006−179407A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373624(P2004−373624)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】