説明

シャフトの変形を測定するための装置及び方法

【課題】 シャフトの変形を測定するための装置及び方法を提供する。
【解決手段】 デバイスによってシャフト2の変形を測定するための方法が、変形が加えられる前に、シャフト2に付加されたパターン3を照明するステップと、パターン3によって反射された放射線を検出することによって第1基準位置を検出するステップとから成り、変形が加えられた後に、パターン3を照明するステップと、パターン3によって反射された放射線を検出することによって第2基準位置を検出するステップとから成る。これにより、第1基準位置と第2基準位置との間の距離に基づいて、シャフトの円周方向の変形及び/又はトルクが求められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトの変形を測定するための装置及び方法に関する。
【0002】
特に、シャフトは、ガスタービン、蒸気タービン、又は電動機のシャフトである。
【背景技術】
【0003】
ガスタービン、蒸気タービン、又は電動機のシャフトなど、シャフトの変形を測定するための複数の方法が知られている。
【0004】
特許文献1に、長手方向で離された2つのマークを付けられたシャフトが開示されている。マークによって反射される光のための光源と検出器が、角度変形を計算する回路に接続される。
【0005】
特許文献2に、離れた位置にある第1反射面と第2反射面を有するシャフトが開示されている。反射面によって反射される光のための光源と検出器が提供され、トルクを計算する回路に接続される。
【0006】
これらの既知のシステムは、シャフト変形を直接測定する(すなわち変形角度を直接検出する)ことを試みるが、変形は通常非常に小さいので、この測定が不正確になる場合もあり得ることは明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4995257号明細書
【特許文献2】米国特許第4347748号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の一態様は、シャフト変形を非常に正確に求めることができる装置及び方法を提供することを含む。
【0009】
本発明の別の態様は、単純であり高信頼性の装置及び方法を提供することを含む。
【課題を解決するための手段】
【0010】
当該技術的な課題は、本発明にしたがって添付の特許請求の範囲による装置及び方法を提供することによって達成される。
【0011】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付図面での非限定的な例によって示される、好ましいが排他的ではない装置及び方法の実施形態の説明からより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態での方法の様々なステップを示す図である。
【図2】本発明の一実施形態での方法の様々なステップを示す図である。
【図3】本発明の一実施形態での方法の様々なステップを示す図である。
【図4】図2のパターン(第1ステップ、実線)を図3のパターン(第2ステップ、破線)に重ね合わせて示す図である。
【図5】放射線源及びセンサを有するキャリアの一例を示す図である。
【図6】装置の別の実施形態を示す図である。
【図7】曲線パターンの特定の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
装置1は、例えばガスタービン、蒸気タービン、又は発電機のシャフト2を備える。しかし、別の機械のシャフトでもよいことは明らかである。また、この装置は、シャフト2の変形を測定するためのデバイスも備える。
【0014】
このデバイスは、シャフト2に付加された曲線パターン3と、パターン3を照明するための放射線源4と、パターン3によって反射された放射線を検出するためのセンサ5とを備える。
【0015】
曲線パターン3は、様々な技法でシャフトに付加された曲線でよい。例えば、シャフト表面を削ることができ、又はシャフト表面に印刷することができ、又は板片などの積層体にパターンを印刷し、もしくは積層体を削り、もしくは任意の他の技法で積層体にパターンを付加し、次いでそれをシャフト2に取り付けることができる。
【0016】
放射線源4は、好ましくは光源であり、指向性光源又はレーザでよいが、必ずしもそうである必要はない。放射線源4は、特定の周波数又は所与の周波数範囲で光を放出することができる。当然、他のタイプの放射線源も可能である。
【0017】
センサ5は、放射線源4によって放出され、パターン3によって反射された光によって作動されるフォトダイオードでよい。
【0018】
シャフト2が長手方向軸6を有し、またデバイスはキャリア7も備えており、このキャリア7は、シャフト軸6に対して所定の方向8に沿って、少なくとも曲線パターンに面する区域にわたって移動可能である。例えば図3では、キャリア7が移動することができる曲線パターン3に面するこの区域が、参照番号20によって識別されている。
【0019】
好ましくは、曲線パターン3は、シャフト軸6に平行な軸と共に、曲線パターン3にわたって変化する角度を決定する。
【0020】
キャリア7は、センサ5を担持し、図示される実施形態では放射線源4も担持する。
【0021】
好ましい実施形態では、所定の方向8は、(両方の向き8a、8bで)シャフト軸6に対してほぼ平行な方向である。
【0022】
これに関して、デバイスは、シャフト軸6に平行に延びるレール9を含み、キャリア7がこのレール9上で摺動する。
【0023】
また、デバイスは、好ましくはキャリア7に搭載した制御ユニット10も含む。制御ユニット10は、放射線源4及びセンサ5に接続され、また好ましくはディスプレイなど出力要素21に接続される。
【0024】
加えて、デバイスは、シャフト2の軸方向位置を感知するセンサ11をさらに含む。このセンサ11も制御ユニット10に接続される。
【0025】
有利には、制御ユニット10は、パターン3が放射線源4に面するとき時だけ放射線源4を作動させるために配置され得る。これに関して角度センサ12が提供される。角度センサ12は、シャフト2に関連付けられ、制御ユニット10に接続される。
【0026】
この装置の動作は、本明細書の説明及び図面から明らかであり、実質的に以下のようなものである。
【0027】
図1は、キャリア7の第1基準位置が測定される第1操作ステップを示す。例えば、第1基準位置は、不動の(すなわち静止している)シャフトを用いて、又は所与の条件下で回転するシャフトを用いて測定することができる。
【0028】
キャリア7が方向8に沿って移動され、放射線源4が作動される。
【0029】
シャフトが回転するとき、放射線源4は、好ましくは、パターン3が放射線源4に面する時だけ作動される。これは、センサ11によってシャフト2の角度位置を測定し、この情報を制御ユニット10に伝送し、制御ユニット10がそれに従って放射線源4を作動することによって実現される。
【0030】
放射線源4によって発生された光ビーム15は、ある角度aでシャフト2及びパターン3に当たり、ビームがパターン3に当たった位置で、パターン3に垂直な軸17に対して同じ角度aで反射されて返される(参照番号16が、反射されたビームを示す)。
【0031】
図1に示されるように、位置P1でパターン3が、ビーム15に対して十分に垂直でない場合、反射されたビーム16は、キャリア7及びセンサ5に向けて反射されず、センサ5は信号を何も検出しない。
【0032】
キャリア7が移動され、パターン3とビーム15とが、互いにほぼ垂直な位置P2でビーム15がパターン3に当たるとき、反射されたビーム16は、ビーム15に対してほぼ平行に、センサ5に向けて反射される。したがって、反射されたビーム16をセンサ5によって検出することができ、センサ5(又はキャリア7)の第1基準位置が確定される。
【0033】
したがって、トルクが加えられ、シャフトは、求めなければならない変形に耐える。
【0034】
この変形によりパターン3も変形される。例えば図3に、シャフト変形により変形されたパターン3が示されている。この変形後には、第1基準位置にあるセンサ5は反射されたビーム16をもはや受け取らないことは明らかである。
【0035】
したがって、第1基準位置の検出に関して上述したのと同じステップで、変形されたパターン3がビーム15に対してほぼ垂直である位置P3が求められ、センサ5(又はキャリア7)の第2基準位置が確定される。
【0036】
この軸方向距離(すなわち、シャフト軸6に沿った第1基準位置と第2基準位置との間の距離)が、シャフト変形を示唆する。
【0037】
これに関して、パターン3は、シャフトの所与の変形(トルク)が第1基準位置と第2基準位置との間の所与の距離に対応するような形状にすることができる。これにより、有利には、この間接的な検出によってシャフトの変形を増幅することができ、検出が容易になるので、小さい変形も非常に正確に求めることができるようになる。
【0038】
操作中、シャフト2は、軸方向のずれに耐えることもできる。そのため、シャフト2の軸方向位置を測定して、生じていることがあるシャフト2のずれを検出する。次いで、この情報が制御ユニット10に伝送されて、第1基準位置と第2基準位置との間の距離の差の値を補償し、すなわちシャフト変形を補償する。
【0039】
図6は、この装置の異なる実施形態を示す。この図で、上述したものと同一又は同様の要素は同様の参照番号で示されている。
【0040】
図示されるように、この実施形態での装置も、曲線パターン3を有するシャフト2を含み、この曲線パターン3は、例えば前の実施形態を参照して上述したパターンと同じ形状である。
【0041】
さらに、曲線パターン3に面する区域20にわたって移動することができるキャリア7に放射線源4及びセンサ5を取り付けるのではなく、複数の放射線源4及びセンサ5を備えるアレイ22が提供される。
【0042】
好ましくは、放射線源4とセンサ5は対として構成され、すなわち放射線源4がそれに対応するセンサ5を有する。
【0043】
さらに、好ましくは、アレイ22が、曲線パターン3に面する区域20にわたって延在している。
【0044】
すべての放射線源4及びセンサ5(それらは第1実施形態に関して上述したのと同じ特徴を有することができる)が、制御ユニット10に接続される。制御ユニット10は、次にシャフト2の軸方向位置を感知するセンサ11及び角度を感知するセンサ12に接続される。
【0045】
好ましくは、曲線パターン3は、シャフト軸6に平行な軸と共に、曲線パターン3にわたって変化する角度b1、b2を決定する。
【0046】
この装置には、可動部を有さないという利点がある。
【0047】
この実施形態での装置の動作は、上述したものと同様である。
【0048】
測定すべきトルク(又はそれにより引き起こされる変形)が加えられる前に、(すべての)放射線源4が作動される。それらがビーム15を発生し、ビーム15がパターン3によって反射される。特に、上述したように、パターン3がビーム15に対してほぼ垂直である時だけ、反射されたビーム16がセンサ5に当たる。
【0049】
特に、ビーム15は、シャフト軸6に垂直な軸23に対して非常に小さな角度で放出される。そのため、ビーム15が放射線源4aによって放出される場合、ビーム15に対してほぼ垂直な位置でパターン3によって反射された対応するビーム16は、その放射線源4aに隣接するセンサ5aに当たり、ビーム15の傾きの方向にずれる。このようにして、第1基準位置を確定することができる。
【0050】
その後、測定すべきトルクが加えられ、測定が再び行われ、第2基準位置が確定される。
【0051】
第1基準位置と第2基準位置との間の距離(又は差)により、トルク及び/又は円形変形を確定することができるようになる。
【0052】
別の実施形態(図7)では、曲線パターン3が、角度の付いた複数の離散した線からなることもあり、連続的なアナログの尺度ではなくデジタルの尺度を有する。
【0053】
また、本発明は、シャフトの変形を測定するための方法にも言及する。
【0054】
この方法は、変形が加えられる前に、パターン3を照明するステップと、パターン3によって反射された放射線を検出することによって第1基準位置を検出するステップとを有する。
【0055】
次いで、変形が加えられ、パターンを照明するステップと、パターン3によって反射された放射線を検出することによって第2基準位置を検出するステップとがさらに行われる。
【0056】
次いで、第1基準位置と第2基準位置との間の距離に基づいて、シャフトの円周方向の変形及び/又はトルクを求めることができる。
【0057】
有利には、第1基準位置と第2基準位置との間の距離は、シャフト軸に平行な方向に沿って確定される。
【0058】
当然、説明した特徴を互いに別々に提供することもできる。
【0059】
実際、使用される材料及び寸法は、要件及び現況技術に応じて任意に選択することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 装置
2 シャフト
3 パターン
4、4a 放射線源
5、5a センサ
6 シャフト2の軸
7 キャリア
8 方向
8a、8b 方向8の向き
9 レール
10 制御ユニット
11 シャフト2の軸方向位置を感知するセンサ
12 シャフト2の角度を感知するセンサ
15 放射線源4によって発生される光ビーム
16 パターン3によって反射された光ビーム
17 パターン3に垂直な軸
20 パターンに面する区域
21 ディスプレイ
22 アレイ
23 軸6に垂直な軸
a 角度
P1、P2、P3 パターン3上での位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト(2)の変形を測定するためのデバイスを備える、シャフト(2)の装置(1)であって、前記デバイスは、
前記シャフト(2)に付加された曲線パターン(3)、
前記パターン(3)を照明するための放射線源(4)、及び
前記パターン(3)によって反射された前記放射線を検出するためのセンサ(5)を備える当該装置において、
当該装置は、前記パターン(3)に面する区域(20)にわたって前記シャフト軸(6)に対して所定の方向(8)に移動可能なキャリア(7)をさらに備え、このキャリア(7)は、少なくとも前記センサ(5)を担持することを特徴とする装置(1)。
【請求項2】
シャフト(2)の変形を測定するためのデバイスを備える、シャフト(2)の装置(1)であって、前記デバイスは、
前記シャフト(2)に付加された曲線パターン(3)、
前記パターン(3)を照明するための放射線源(4)、及び
前記パターン(3)によって反射された前記放射線を検出するためのセンサ(5)を備え、
前記装置(1)は、前記パターン(3)に面する区域(20)にわたって延在しているアレイ(22)を画定する複数の放射線源(4)と複数のセンサ(5)とを有し、
前記曲線パターン(3)が、前記シャフト軸(6)に対して平行な軸と共に角度(b1、b2)を決定する当該装置(1)において、
前記角度(b1、b2)は、前記曲線パターン(3)にわたって変化することを特徴とする装置(1)。
【請求項3】
前記キャリア(7)は、前記放射線源(4)も担持することを特徴とする請求項1に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記所定の方向(8)は、前記シャフト軸(6)対してほぼ平行な方向であることを特徴とする請求項1に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記曲線パターン(3)は、前記シャフト軸(6)に対して平行な軸と共に前記曲線パターン(3)にわたって変化する角度を決定することを特徴とする請求項1に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記装置(1)は、前記シャフト(2)の軸方向の位置を感知するセンサ(11)をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記装置(1)は、前記パターン(3)が前記放射線源(4)に面する時だけ前記放射線源(4)を作動させるために配置された制御ユニット(10)をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記装置(1)は、前記シャフト(2)に関連付けられ且つ前記制御ユニット(10)に接続された角度センサ(12)をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記放射線源(4)は、光源であることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記光源は、レーザであることを特徴とする請求項9に記載の装置(1)。
【請求項11】
前記パターン(3)は、角度の付いた複数の離散した線から成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置(1)。
【請求項12】
デバイスによってシャフト(2)の変形を測定するための方法であって、
前記デバイスは、
前記シャフト(2)に付加された曲線パターン(3)、
前記パターン(3)を照明するための放射線源(4)、
前記パターン(3)によって反射された前記放射線を検出するためのセンサ(5)、及び
前記パターン(3)に面する区域(20)にわたって前記シャフト軸(6)に対して所定の方向(8)に移動可能なキャリア(7)を備え、
前記キャリア(7)が、少なくとも前記センサ(5)を担持するか、又は、前記センサ(5)が、前記パターン(3)に面する区域(20)にわたって延在しているアレイ(22)を画定する複数のセンサ(5)を有する当該方法において、
当該方法は、変形が加えられる前に、
前記パターン(3)を照明するステップと、
前記パターン(3)によって反射された前記放射線を検出することによって第1基準位置を検出するステップとを有し、
前記変形が加えられた後に、
前記パターン(3)を照明するステップと、
前記パターン(3)によって反射された前記放射線を検出することによって第2基準位置を検出するステップと有し、
前記第1基準位置と前記第2基準位置との間の距離に基づいて、前記シャフトの円周方向の変形及び/又はトルクを求めるステップを有する方法。
【請求項13】
前記キャリア(7)は、前記放射線源(4)も担持することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1基準位置と前記第2基準位置との間の距離は、前記シャフト軸に対して平行な方向に沿って確定されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記アレイ(22)は、複数の放射線源(4)も備えることを特徴とする請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−159507(P2012−159507A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−17440(P2012−17440)
【出願日】平成24年1月31日(2012.1.31)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】