説明

シリコーンパウダーを含む熱硬化性樹脂組成物

【課題】印刷性、タック性、つや消し性および電気特性に優れた熱硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、(A)熱硬化性樹脂および(B)シリコーンパウダーを含有することを特徴とする。前記シリコーンパウダー(B)は、粒子形状が球状または略球状であり、比重が0.95〜1.5であり、粒径が0.01〜10μmであることが好ましい。前記熱硬化性樹脂(A)は、カルボキシル基含有ポリウレタンおよび熱硬化性成分を含むことが好ましい。前記カルボキシル基含有ポリウレタンは、(a)ポリイソシアネート化合物、(b)ポリオール化合物(化合物(c)を除く)および(c)カルボキシル基含有ジヒドロキシ化合物を反応させることにより合成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂、シリコーンパウダーを必須成分として含有する熱硬化性樹脂組成物に関する。より詳しくは、印刷性、タック性、つや消し性および電気絶縁特性などに優れ、ソルダーレジストおよび層間絶縁膜などの保護膜もしくは電気絶縁材料、ICや超LSI封止材料、積層板等の用途に好適に利用できる熱硬化性樹脂組成物、該組成物からなる硬化物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の熱硬化型ソルダーレジストインクでは、ファインピッチ化に対応するための印刷性改良手段として、特開平7−169100号公報(特許文献1)に開示されているように無機フィラーを用いていた。しかしながら、無機フィラー由来の不純物や再凝集物が欠陥となり電気特性が低下するという問題があった。
【0003】
また、生産性を上げるために乾燥・硬化時間を短縮した場合における硬化被膜の表面べたつき(タック性)改良手段として、特開2004−250464号公報(特許文献2)に開示されているように無機フィラーを用いていた。しかしながら、無機フィラーの凝集物は異物として認識され、欠点検知器が作動し、歩留まりが低下するという問題があった。
【特許文献1】特開平7−169100号公報
【特許文献2】特開2004−250464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決しようとするものであり、印刷性、タック性、つや消し性および電気特性に優れた熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った。その結果、シリコーンパウダーは凝集しにくく、かつそれ自身、電気特性を低下させないことに着目し、硬化性樹脂およびシリコーンパウダーを必須成分として含有する熱硬化性樹脂組成物によれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の事項に関する。
【0006】
[1](A)熱硬化性樹脂および(B)シリコーンパウダーを含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
[2]前記シリコーンパウダー(B)の粒子形状が球状または略球状であることを特徴とする[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0007】
[3]前記シリコーンパウダー(B)の比重が0.95〜1.5であり、かつ、粒径が0.01〜10μmであることを特徴とする[1]または[2]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0008】
[4]前記熱硬化性樹脂(A)が、カルボキシル基含有樹脂および熱硬化性成分を含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[5]前記カルボキシル基含有樹脂がカルボキシル基含有ポリウレタンであることを特徴とする[4]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0009】
[6]前記カルボキシル基含有ポリウレタンが、(a)ポリイソシアネート化合物、(b)ポリオール化合物(化合物(c)を除く)および(c)カルボキシル基含有ジヒドロキシ化合物を反応させて得られることを特徴とする[5]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0010】
[7]前記カルボキシル基含有ポリウレタンが、前記化合物(a)、(b)および(c)とともに、(d)モノヒドロキシ化合物および/または(e)モノイソシアネート化合物を反応させて得られることを特徴とする[6]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0011】
[8]前記[1]〜[7]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を含むことを特徴とするソルダーレジストインキ。
[9]前記[1]〜[7]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする硬化物。
【0012】
[10]前記[9]に記載の硬化物からなることを特徴とする絶縁保護皮膜。
[11]前記[9]に記載の硬化物によって一部または全面が被覆されたことを特徴とするプリント配線板。
【0013】
[12]前記[9]に記載の硬化物によって一部または全面が被覆されたことを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
[13]前記[9]に記載の硬化物によって一部または全面が被覆されたことを特徴とするチップオンフィルム(COF)。
【0014】
[14]前記[9]に記載の硬化物を含有することを特徴とする電子部品。
【発明の効果】
【0015】
従来のソルダーレジストでは、フィルム同士のタック性、無機フィラーの再凝集による生産性の低下、無機フィラーによる電気特性の低下が懸念されていた。これに対して、本発明の熱硬化性樹脂組成物によれば、印刷性、タック性、つや消し性とトレードオフの関係にあった電気特性を同時達成し、優れたソルダーレジストや保護膜を低コストで生産性よく形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る熱硬化性樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)熱硬化性樹脂および(B)シリコーンパウダーを含有し、必要に応じて(C)硬化剤や硬化促進剤などを含んでいてもよい。以下、本発明の熱硬化性樹脂組成物を構成する成分について説明する。
【0017】
(A)熱硬化性樹脂
本発明で用いられる熱硬化性樹脂(A)としては、たとえば、カルボキル基含有樹脂と熱硬化性成分の組み合わせ、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂などが挙げられる。可とう性および電気絶縁性の観点から、カルボキル基含有樹脂と熱硬化性成分の組み合わせが好ましく、カルボキシル基含有ポリウレタンと熱硬化性成分の組み合わせがより好ましい。
【0018】
<カルボキシル基含有ポリウレタン>
本発明において好ましく用いられるカルボキル基含有ポリウレタンは、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有し、かつ、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とが反応して形成されるウレタン結合を有する。このようなカルボキル基含有ポリウレタンは、たとえば、(a)ポリイソシアネート化合物、(b)ポリオール化合物および(c)カルボキシル基含有ジヒドロキシ化合物を反応させることにより合成することができる。反
応に際しては末端封止剤として(d)モノヒドロキシ化合物および/または(e)モノイソシアネート化合物を加えてもよい。
【0019】
上記ポリイソシアネート化合物(a)としては、たとえば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,9−ノナメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、2,2’−ジエチルエーテルジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、(o,mまたはp)−キシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジメチレレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−メチレンジトリレン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、テトラクロロフェニレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素化(1,3−または1,4−)キシリレンジイソシアネートなどのジイソシアネートが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
上記ポリオール化合物(b)(化合物(c)を除く)としては、たとえば、低分子量ジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエーテルジオール、両末端水酸基化ポリブタジエン、ポリエステルジオールなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、柔軟性や電気特性耐熱性の観点から、ポリカーボネートジオールを用いることが好ましい。
【0021】
上記カルボキシル基含有ジヒドロキシ化合物(c)としては、たとえば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、N,N−ビスヒドロキシエチルグリシン、N,N−ビスヒドロキシエチルアラニンなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、溶媒への溶解度の観点から、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸が好ましい。
【0022】
上記モノヒドロキシ化合物(d)としては、たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、前記各(メタ)アクリレートのカプロラクトンまたは酸化アルキレン付加物、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリルレート、アリルアルコール、アリロキシエタノール、グリコール酸、ヒドロキシピバリン酸、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコールなどが挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
上記モノイソシアネート化合物(e)としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、ドデシルイソシアネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
上記カルボキル基含有ポリウレタンの数平均分子量は、好ましくは500〜100,0
00、より好ましくは8,000〜30,000である。ここで、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の値である。カルボキル基含有ポリウレタンの数平均分子量が前記範囲よりも低いと、硬化膜の伸度、可撓性および強度を損なうことがあり、一方、前記範囲を超えると硬くなり可撓性を低下させるおそれがある。
【0025】
上記カルボキル基含有ポリウレタンの酸価は、好ましくは5〜150mgKOH/g、より好ましくは30〜120mgKOH/gである。酸価が前記範囲よりも低いと、硬化性成分との反応性が低下し耐熱性を損ねることがあり、一方、前記範囲を超えると硬化膜の耐アルカリ性や電気特性などのレジストとしての特性が低下する場合がある。なお、樹脂の酸価はJISK5407に準拠して測定した値である。
【0026】
<熱硬化性成分>
上記熱硬化性成分としては、上記カルボキル基含有ポリウレタン成分と反応するエポキシ樹脂などを用いることができる。このようなエポキシ樹脂としては、たとえば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、N−グリシジル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂などの一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物などが挙げられる。また、難燃性付与のために、塩素、臭素等のハロゲン原子や燐等の原子がその構造中に導入されたものを用いてもよい。さらに、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、ヘテロサイクリックエポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂およびテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂等を使用してもよい。
【0027】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、上記熱硬化性成分は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その配合量は、上記カルボキル基含有ポリウレタンのカルボキシル基当量に対する硬化性成分のエポキシ当量の比が1.0〜3.0となる量であることが望ましい。エポキシ当量の比が前記範囲よりも低いと、熱硬化性樹脂組成物からなる硬化膜の電気絶縁性が不十分となる場合があり、一方、前記範囲を超えると硬化膜の収縮量が多くなり、フレキシブルプリント配線基板(FPC)の絶縁保護膜として使用した場合に低反り性が悪化する傾向にある。
【0028】
(B)シリコーンパウダー
本発明で用いられるシリコーンパウダー(B)としては、たとえば、無機担持体にシリコーンオイルを配合させてパウダー化したもの、シリコーンオイルを三次元架橋させてなるシリコーンレジンを粉末化したもの、あるいは、シリコーンゴムを粉末化したものなどを用いることができる。このようなシリコーンパウダーは凝集しにくく、電気特性を低下させないことから、該シリコーンパウダーを用いることにより、印刷性、タック性、艶消し性、電気絶縁特性などに優れた熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0029】
上記シリコーンパウダー(B)としては、たとえば、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製「リトレフィルF201」、「トレフィルF202」、「トレフィルF204」、「トレフィルR−900」、「トレフィルR−902A」、「トレフィルE−500」、「トレフィルE−600」、「トレフィルE−601」、「トレフィルE−850」、信越化学工業(株)製「KMP-597」、「KMP-590」、「KMP-701」、「X-52-854」、「X-52-1621」、「KMP-605」、「X-52-7030」などが挙げられる。
【0030】
上記シリコーンパウダー(B)は、凝集しにくいという点で球状または略球状であることが好ましい。また、上記シリコーンパウダー(B)の粒径は、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.1〜8μmである。粒径が前記範囲よりも小さいと、印刷性、艶消し性、タック性に対する効果が充分に発現しないことがあり、一方、前記範囲よりも大きいと、電気特性に悪影響を及ぼす場合がある。さらに、上記シリコーンパウダー(B)の比重は、好ましくは0.90〜1.5、より好ましくは0.95〜1.4である。比重が前記範囲よりも低いと、インクの状態で上層に浮き出し、均一分散が困難になる傾向にあり、一方、上記範囲を超えると、塗膜の基材側に偏在し、艶消し性、タック性への効果が減少する場合がある。
【0031】
上記シリコーンパウダー(B)は、1種単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。上記シリコーンパウダー(B)の配合量としては、特に制限されるものではないが、上記熱硬化性樹脂100質量%に対して、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは5〜12質量%となる量が好ましい。シリコーンパウダー(B)の配合量が少なすぎると、印刷性、艶消し性、タック性が低下する傾向にあり、一方、配合量が多すぎると、均一分散が難しくなって塗工性が低下する傾向にある。
【0032】
(C)硬化剤
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、効果反応を促進させるために、必要に応じて硬化剤(C)を用いてもよい。硬化剤を用いることにより、密着性、耐薬品性、耐熱性等の特性をより一層向上させることができる。
【0033】
このような硬化剤(C)としては、たとえば、四国化成工業(株)製「2MZ」、「2E4MZ」、「C11Z」、「C17Z」、「2PZ」、「1B2MZ」、「2MZ−CN」、「2E4MZ−CN」、「C11Z−CN」、「2PZ−CN」、「2PHZ−CN」、「2MZ−CNS」、「2E4MZ−CNS」、「2PZ−CNS」、「2MZ−AZINE」、「2E4MZ−AZINE」、「C11Z−AZINE」、「2MA−OK」、「2P4MHZ」、「2PHZ、「2P4BHZ」等のイミダゾール誘導体;アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類;ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジシアンジアミド、尿素、尿素誘導体、メラミン、多塩基ヒドラジド等のポリアミン類;これらの有機酸塩および/またはエポキシアダクト;三フッ化ホウ素のアミン錯体;エチルジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジン,2,4−ジアミノ−6−キシリル−S−トリアジン等のトリアジン誘導体類;トリメチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N−ベンジルジメチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、ヘキサ(N−メチル)メラミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノフェノール)、テトラメチルグアニジン、m−アミノフェノール等のアミン類;ポリビニルフェノール、ポリビニルフェノール臭素化物、フェノールノボラック、アルキルフェノールノボラック等のポリフェノール類;トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス−2−シアノエチルホスフィン等の有機ホスフィン類;トリ−n−ブチル(2,5−ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩類;ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;前記多塩基酸無水物;ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボロエート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、2,4,6−トリフェニルチオピリリウムヘキサフルオロホスフェート、チバ・ガイギー社製「イルガキュアー261」、旭電化(株)製「オプトマ−SP−170」等の光カチオン重合触媒;スチレン−無水マレイン酸樹脂;フェニルイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物や、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物などの公知慣用で
ある硬化剤類もしくは硬化促進剤類が挙げられる。
【0034】
上記硬化剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本発明において硬化剤の使用は必須ではないが、特に硬化を促進したい場合には、前記熱硬化性成分100質量%に対して25質量%以下の範囲で用いることができる。25質量%を超えるとその硬化物からの昇華性成分が多くなり好ましくない。
【0035】
(D)有機溶剤
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記熱硬化性樹脂(A)、シリコーンパウダー(B)および必要に応じて硬化剤(C)を、たとえば、ディスパー、ニーダー、3本ロールミル、ビーズミル等の混合機を用いて、溶解または分散させることにより得られる。この際、熱硬化性樹脂(A)およびシリコーンパウダー(B)を容易に溶解または分散させるため、あるいは、塗工に適した粘度に調整するために、組成物に含まれる官能基に対して不活性な有機溶剤(D)を使用してもよい。
【0036】
上記有機溶剤(D)としては、たとえば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ニトロベンゼン、シクロヘキサン、イソホロン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、カルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、クロロホルムおよび塩化メチレンなどが挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
(E)添加剤
本発明の熱硬化性組成物には、公知の各種添加剤、たとえば、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、アルミナ、ガラス粉、石英粉、シリカ等の無機フィラー;ガラス繊維、炭素繊維、窒化ホウ素繊維等の繊維強化材;酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、鉄黒、有機顔料、有機染料等の着色剤;ヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物、ヒンダードアミン系化合物等の酸化防止剤;ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等の紫外線吸収剤などを配合してもよい。また、用途に合わせて粘度調整剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、老化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、発泡剤などを配合してもよい。
【0038】
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
<合成例>
攪拌装置、温度計およびコンデンサーを備えた反応容器に、ポリオール化合物として(株)クラレ製「C−1065N」(ポリカーボネートジオール、原料ジオールモル比:1,9−ノナンジオール:2−メチル−1,8−オクタンジオール=65:35、分子量991)70.7g、カルボキシル基含有ジヒドロキシ化合物として2,2−ジメチロールブタン酸(日本化成(株)製)13.5g、溶媒としてジエチレングリコールエチルエーテルアセテート(ダイセル化学(株)製)128.9gを仕込み、90℃に加熱してすべての原料を溶解した。反応液の温度を70℃まで下げ、滴下ロートにより、ポリイソシアネートとしてメチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)(住化バイエルウレタ
ン(株)製「デスモジュール−W」)42.4gを30分かけて滴下した。滴下終了後、80℃で1時間、90℃で1時間、100℃で2時間反応を行い、ほぼイソシアネートが消失したことを確認した後、イソブタノール(和光純薬(株)製)1.46gを滴下し、さらに105℃にて1.5時間反応を行った。得られたカルボキシル基含有ポリウレタンは、数平均分子量が6,800であり、固形分の酸価が39.9mg-KOH/gであっ
た。
【0040】
〔実施例1〕
合成例1で得られたポリウレタン溶液(固形分濃度50質量%)に、該ポリウレタン固形分100質量%に対して、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート828EL」)を、該ポリウレタンのカルボキシル基に対してエポキシ基が1.1当量となる37.5質量%、硬化剤としてメラミンを4質量%、シリコーンパウダーとして信越化学工業(株)製「シリコーンレジンパウダーKMP-701」(比重1.3、粒径3.5μ
m)を10質量%の割合で配合した。次いで、これらの成分が配合された組成物を、三本ロールミル((株)小平製作所製、型式:RIII−1RM−2)に3回通して混練りするこ
とにより、ソルダーレジストインキを調製した。
【0041】
〔実施例2〕
シリコーンパウダーとして実施例1の「シリコーンレジンパウダーKMP-701」の代わり
に信越化学工業(株)製「シリコーンゴムパウダーKMP-597」(比重0.99、粒径2μ
m)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてソルダーレジストインキを得た。
【0042】
〔実施例3〕
シリコーンパウダーとして実施例1の「シリコーンレジンパウダーKMP-701」の代わり
に信越化学工業(株)製「シリコーンレジンパウダーX-52-854」(比重1.3、粒径0.8μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてソルダーレジストインキを得た。
【0043】
〔比較例1〕
シリコーンパウダーを使用しなかったこと以外は実施例1と同様にしてソルダーレジストインキを得た。
【0044】
〔比較例2〕
実施例1のシリコーンパウダーの代わりに信越化学工業(株)製「シリコーンオイルKF-56」を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてソルダーレジストインキを得た。
【0045】
〔比較例3〕
実施例1のシリコーンパウダーの代わりに松村産業(株)製「タルク:ハイフィラー♯5000PJ」を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてソルダーレジストインキを得た。
【0046】
〔比較例4〕
実施例1のシリコーンパウダーの代わりにコープケミカル(株)製「合成雲母:ソマシフMEE」を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてソルダーレジストインキを得た。
【0047】
〔比較例5〕
実施例1のシリコーンパウダーの代わりにエレメンティスジャパン(株)製「有機変性スメクタイト:ベントン38」を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてソルダーレジストインキを得た。
【0048】
〔比較例6〕
実施例1のシリコーンパウダーの代わりに白石工業(株)製「有機ベントナイト:ニュ
ーDオルベン」を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてソルダーレジストインキを得
た。
【0049】
〔比較例7〕
実施例1のシリコーンパウダーの代わりに扶桑化学工業(株)製「球状シリカ:クォートロンSP-1B」を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてソルダーレジストインキを得
た。
【0050】
〔評価〕
実施例1〜3および比較例1〜7で得られたソルダーレジストインキを用いて、以下のようにして印刷性、つや消し性、タック性および電気特性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0051】
<印刷性>
市販の基板(IPC規格)のIPC−C(櫛型パターン)上に、ソルダーレジストインキを#100メッシュポリエステル版でスクリーン印刷により塗布し、80℃で30分間乾燥した後、150℃で1時間熱硬化した。硬化後の細線部を顕微鏡観察しブリード量を測定し、以下の基準で評価した。
○:ブリード量が50μm以下
△:ブリード量が50〜100μm
×:ブリード量が100μm以上。
【0052】
<つや消し性>
ソルダーレジストインキを、#100メッシュポリエステル版で、基板にスクリーン印刷により塗布し、80℃で30分間乾燥した後、150℃で1時間熱硬化した。基板は25μm厚ポリイミドフィルム〔カプトン(登録商標)100EN、東レ・デュポン(株)製〕を用いた。ソルダーレジストインキを塗布・熱硬化した塗膜を以下の基準で目視評価した。
○:つや消しあり
△:わずかにつや消しあり
×:光沢あり。
【0053】
<タック性>
ソルダーレジストインキを、#100メッシュポリエステル版で、基板にスクリーン印刷により塗布し、80℃で30分間乾燥した後、150℃で1時間熱硬化した。基板は25μm厚ポリイミドフィルム〔カプトン(登録商標)100EN、東レ・デュポン(株)製〕を用いた。ソルダーレジストインキを塗布・熱硬化した塗膜について、レジスト面同士を張り合わせ、べたつきの有無について以下の基準で評価した。
○:べたつきなし
△:わずかにべたつきあり
×:接着を伴うべたつきあり。
【0054】
<長期信頼性>
市販の基板(IPC規格)のIPC−C(櫛型パターン)上に、ソルダーレジストインキを#100メッシュポリエステル版でスクリーン印刷により塗布し、80℃で30分間乾燥した後、150℃で1時間熱硬化した。その基板を85℃、相対湿度85%の雰囲気下において100Vのバイアス電圧を印加して2000時間放置し、以下の基準で電気絶縁性を評価した。
○:マイグレーション、絶縁抵抗値の低下ともになし
△:1000〜2000時間でマイグレーションまたは絶縁抵抗値の低下あり
×:1000時間以下でマイグレーションまたは絶縁抵抗値の低下あり。
【0055】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の硬化性樹脂組成物は、印刷性、タック性、つや消し性および電気絶縁特性などに優れた硬化物を形成することができ、ソルダーレジストや層間絶縁膜等の電気絶縁材料、ICや超LSI封止材料、積層板、電子部品等の分野へ好適に利用できる。
【0057】
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物は、絶縁保護皮膜として利用することができ、プリント配線基板、フレキシブルプリント配線板、チップオンフィルム(COF)などにおいて、一部または全面を被覆させるために用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱硬化性樹脂および(B)シリコーンパウダーを含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記シリコーンパウダー(B)の粒子形状が球状または略球状であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記シリコーンパウダー(B)の比重が0.95〜1.5であり、かつ、粒径が0.01〜10μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂(A)が、カルボキシル基含有樹脂および熱硬化性成分を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記カルボキシル基含有樹脂がカルボキシル基含有ポリウレタンであることを特徴とする請求項4に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記カルボキシル基含有ポリウレタンが、(a)ポリイソシアネート化合物、(b)ポリオール化合物(化合物(c)を除く)および(c)カルボキシル基含有ジヒドロキシ化合物を反応させて得られることを特徴とする請求項5に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記カルボキシル基含有ポリウレタンが、前記化合物(a)、(b)および(c)とともに、(d)モノヒドロキシ化合物および/または(e)モノイソシアネート化合物を反応させて得られることを特徴とする請求項6に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を含むことを特徴とするソルダーレジストインキ。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする硬化物。
【請求項10】
請求項9に記載の硬化物からなることを特徴とする絶縁保護皮膜。
【請求項11】
請求項9に記載の硬化物によって一部または全面が被覆されたことを特徴とするプリント配線板。
【請求項12】
請求項9に記載の硬化物によって一部または全面が被覆されたことを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項13】
請求項9に記載の硬化物によって一部または全面が被覆されたことを特徴とするチップオンフィルム(COF)。
【請求項14】
請求項9に記載の硬化物を含有することを特徴とする電子部品。

【公開番号】特開2007−100038(P2007−100038A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295276(P2005−295276)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】