説明

シリンダ錠の保護装置

【課題】閉塞位置にあるシャッターのロック解除の操作性を向上させて容易且つスムーズにロック解除を行わせることができるとともに、車両が具備する既存の制御手段を流用することにより製造コストを低減させることができるシリンダ錠の保護装置を提供する。
【解決手段】シャッター2と、閉塞位置にあるシャッター2をロックするソレノイドと、トランスポンダと、認証コードを受信可能なアンテナと、その認証コードが正規のものであるか否かを認証する認証手段とを具備し、正規の認証コードが受信された場合に限りソレノイドによるロックを解除し、シャッター2を開放位置まで移動可能な状態とするシリンダ錠の保護装置であって、車両が具備する既存のICU9で認証手段を兼用させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車などが具備するシリンダ錠の破壊等を防止し得るシリンダ錠の保護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、第三者によるはさみやドライバ等のキー孔への差し込みで二輪車などのシリンダ錠がいたずらされて破壊されるのを防止するために、例えば特許文献1で開示されたようなシリンダ錠の保護装置が提案されている。かかる保護装置は、キー孔を閉状態とする閉塞位置から当該キー孔を開状態とする開放位置まで摺動可能なシャッターと、該シャッターを開放位置と閉塞位置との間で摺動自在に保持するハウジングと、シャッターを閉塞位置に保持することによりキー孔を閉塞して施錠するマグネット錠と、磁石の磁気によりマグネット錠を解錠するマグネットキーを具備していた。
【0003】
上記シリンダ錠の保護装置によれば、ハウジングから突出したシャッターの一部を当該ハウジング内に押し込む操作を行うことによりキー孔を閉塞しつつ、その位置でマグネット錠にて施錠することができる。即ち、シャッターを閉塞位置とするための操作部が形成されており、運転者が当該操作部を操作することによってシャッターを閉塞位置とし、キー孔を覆ってシリンダ錠を保護し得る構成とされているのである。
【特許文献1】特開平11−44132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のシリンダ錠の保護装置においては、閉塞位置にあるシャッターを開放位置まで動作させるには、マグネットキーをマグネット錠に挿通させつつ操作して当該マグネット錠を解錠する必要があり、操作が面倒であるという問題があった。特に、夜間等の暗闇においては、マグネットキーをマグネット錠に挿通させる動作に困難性が生じてしまうという問題があった。
【0005】
本出願人は、上記問題を解決すべく、認証コードを送信可能な送信手段と、該送信手段が近接されることにより当該送信手段からの認証コードを非接触にて受信可能な受信手段と、該受信手段にて受信した認証コードが正規のものであるか否かを認証する認証手段とを具備し、当該認証手段により正規の認証コードが受信されたと認証された場合に限り、シャッターを閉塞位置に保つロック手段によるロックを解除し、当該シャッターを閉塞位置から開放位置まで移動可能な状態とするシリンダ錠の保護装置を検討するに至った。
【0006】
然るに、上記の如きシリンダ錠の保護装置においては、認証手段を構成するマイコン及びそれを実装する基板等が必要とされることから、製造コストが嵩んでしまうという不具合がある。而して、車両には、種々制御のためのマイコン(制御手段)が搭載されており、これを流用して認証を行わせることを検討するに至った。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、閉塞位置にあるシャッターのロック解除の操作性を向上させて容易且つスムーズにロック解除を行わせることができるとともに、車両が具備する既存の制御手段を流用することにより製造コストを低減させることができるシリンダ錠の保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、車両におけるシリンダ錠のキー孔の上方に設けられたハウジングと、該ハウジング内で閉塞位置と開放位置との間で移動可能とされ、閉塞位置で前記キー孔を塞ぐとともに開放位置で当該キー孔を開放するシャッターと、閉塞位置にある前記シャッターをロックして開放位置への移動を規制するロック手段と、運転者が携帯可能とされ、認証コードを送信可能な送信手段と、該送信手段が近接されることにより当該送信手段からの認証コードを非接触にて受信可能な受信手段と、該受信手段にて受信した認証コードが正規のものであるか否かを認証する認証手段とを具備し、当該認証手段により正規の認証コードが受信されたと認証された場合に限り、前記ロック手段によるロックを解除し、シャッターを閉塞位置から開放位置まで移動可能な状態とするシリンダ錠の保護装置であって、車両が具備する既存の制御手段で前記認証手段を兼用させたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のシリンダ錠の保護装置において、前記制御手段は、車両のエンジンの駆動を制御するECUから成るものであることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のシリンダ錠の保護装置において、前記制御手段は、エンジン回転数、車速又は種々警告を車両のメータパネルに表示させるべく制御するメータパネル用マイコンから成るものであることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1記載のシリンダ錠の保護装置において、前記制御手段は、車両が具備するスマートエントリシステムを制御するためのスマートコントローラ用マイコンから成るものであることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れか1つに記載のシリンダ錠の保護装置において、前記送信手段は、イグニッションキーの把持部に内蔵されたトランスポンダから成るとともに、前記認証コードは、車両固有のIDコードであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、送信手段を受信手段に近接させることにより認証手段による認証が行われた後、正規の認証コードを受信したことを条件としてロック手段によるロックが解除され、シャッターを閉塞位置から開放位置まで移動可能な状態とするので、閉塞位置にあるシャッターを開放位置まで動作させる際、当該シャッターのロック解除の操作性を向上させて容易且つスムーズにロック解除を行わせることができる。
【0014】
また、送信手段を受信手段に近接させることにより認証手段による認証を行わせ、ロック手段によるロックを解除可能としたので、不用意なロック解除を回避することができる。即ち、ロックの解除を行わせるためには、運転者が意識して送信手段を受信手段に近接させる動作が必要であることから、意図しないで不用意にロックが解除されてしまうのを防止することができるのである。
【0015】
更に、車両が具備する既存の制御手段で認証手段を兼用させたので、当該車両が具備する既存の制御手段を流用することにより製造コストを低減させることができる。尚、既存の制御手段を流用する際には、プログラムを書き換える作業等が必要とされるが、ソフト的な変更作業で済むことから本発明の適用に際しての製造コスト上昇を抑制することができる。
【0016】
請求項2〜4の発明によれば、車両のエンジンの駆動を制御するECU、エンジン回転数、車速又は種々警告を車両のメータパネルに表示させるべく制御するメータパネル用マイコン、又は車両が具備するスマートエントリシステムを制御するためのスマートコントローラ用マイコンから成る制御手段を流用して認証手段とすることができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、送信手段は、イグニッションキーの把持部に内蔵されたトランスポンダから成るとともに、認証コードは、車両固有のIDコードであるので、トランスポンダから受信手段に対して車両固有のIDコードを送信し、そのIDコードが正規のものである場合に限りエンジン始動を許可するイモビライザシステムのIDコードと認証コードとを共用させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るシリンダ錠の保護装置は、スクータ等の二輪車が具備するシリンダ錠のキー孔上方に設けられ、当該キー孔を外側から開閉可能とすることによりシリンダ錠を保護し得るもので、図1〜図8で示すように、ハウジング1と、シャッター2と、ロック手段としてのソレノイド3と、アクセススイッチ4と、付勢手段としてのコイルスプリング5と、送信手段としてのトランスポンダ6と、受信手段としてのアンテナ7と、認証手段8とから主に構成されている。
【0019】
ハウジング1は、シリンダ錠Sのキー孔Aの上方に設けられたもので、本保護装置の筐体を成すものである。このハウジング1には、略中央にキー孔Aを外部に臨ませる貫通孔1aが形成されるとともに、シャッター2を摺動自在に収容させる収容部1bが形成されている。尚、シリンダ錠Sを構成するシリンダボディ内には、複数のタンブラ(不図示)を内在したロータRが配設されるとともに、キー孔Aが形成されてイグニッションキーIK(図7参照)を抜き差しし得るよう構成されている。
【0020】
シャッター2は、ハウジング1内で閉塞位置と開放位置との間で移動可能とされ、閉塞位置(図9〜11参照)でキー孔Aを塞ぐとともに開放位置(図3〜5)で当該キー孔Aを外部に臨ませて開放するものである。より具体的には、シャッター2は、ハウジング1内で摺動自在とされており、一方の摺動端で閉塞位置となってキー孔Aを塞ぎ、他方の摺動端で開放位置となって当該キー孔Aを開放するよう構成されている。
【0021】
また、シャッター2には、その上面端部に上方に突出形成された凸部2aと、裏面側に形成されて閉塞位置でプランジャ3aと係合し得る凹部2bと、側方に延設されてアクセススイッチ4をオンさせる腕部2cとが形成されており、凸部2aを摘んでシャッター2を摺動操作(特に、開放位置から閉塞位置への動作)すると、凹部2bがソレノイド3のプランジャ3aと対向した位置となるよう構成されている。
【0022】
ロック手段としてのソレノイド3は、閉塞位置にあるシャッター2をロックして開放位置への移動を規制するためのものであり、通電により出没(図中上下動)し得るプランジャ3aを具備している。即ち、シャッター2が閉塞位置にあるとき、プランジャ3aが突出状態となり、その先端3aaをシャッター2の凹部2bに係合させることによりロックして開放位置への移動を規制するとともに、当該プランジャ3aを没入状態とすることにより、シャッター2のロックが解除され、閉塞位置から開放位置への動作が許容され得るよう構成されているのである。
【0023】
より詳しくは、プランジャ3aは、図示しないスプリング等により常時上方へ付勢されており、シャッター2が開放位置にあるとき、その裏面に押されて没入位置とされるとともに、当該シャッター2が閉塞位置に至ると、その裏面の凹部2b内で突出して当該凹部2b内壁面と係合してシャッター2をロックし得るようになっている。この状態で、ソレノイド3に通電させると、プランジャ3aは下降して没入し、係合が解かれてシャッター2のロックが解除されるようになっている。
【0024】
送信手段としてのトランスポンダ6は、運転者が携帯可能とされ、認証コードを無線にて送信可能なもので、図7に示すように、イグニッションキーIKの把持部に内蔵されて車両側に配設されたアンテナ7(受信手段)(図6参照)との間で通信可能とされて成るものである。より詳しくは、イグニッションキーIKに内蔵したトランスポンダ6は、アンテナ7から送信される無線信号に基づいて動作し、その無線信号に対して回答となる信号(認証コード及び車両固有のIDコード)を送信するものである。
【0025】
然るに、かかるトランスポンダ6には、アンテナ7側から送られる無線信号を受信し及び当該トランスポンダ6側で生成した情報を送信するためのアンテナ、受信した無線信号を復調するための高周波回路、トランスポンダ6の制御を行う認証コード生成IC、イグニッションキーIK固有(即ち、車両固有)の情報を格納すべく不揮発性記憶手段から成るEEPROM及びコンデンサ等が配設されており、アンテナ7側からの電波にて励磁されて電力供給がなされるよう構成されている。即ち、乾電池やバッテリ等の電源を具備していないのである。
【0026】
受信手段としてのアンテナ7は、イグニッションキーIKと共にトランスポンダ6が近接されることにより当該トランスポンダ6からの認証コード(IDコード)を非接触にて受信可能なものであり、ハウジング1の外部に別体として配設された円環状のコイルから成るものである。即ち、アンテナ7とトランスポンダ6との間で電波の送受信(通信)が可能範囲(電波到達範囲)までイグニッションキーIKを近づけることにより、アンテナ7による認証コード(IDコード)の受信が可能とされるのである。
【0027】
然るに、本実施形態においては、上述したように、アンテナ7側からの電波にて励磁されてトランスポンダ6の電力供給がなされるので、アンテナ7とトランスポンダ6とを極めて近い位置まで近接させた状態にてアンテナ7が認証コードを受信し得るようになっている。アンテナ7は、図1に示すように、配線Cを介してECU9(エンジン・コントロール・ユニット)と電気的に接続されており、アンテナ7で受信した認証コード(IDコード)をECU9内の認証手段8に送信し得るよう構成されている。
【0028】
ECU9は、二輪車が搭載するエンジンの駆動を制御(例えばエンジンの回転数に応じた燃料噴射量を調整し、当該エンジンをコントロール)するための制御手段から成るものであり、図2に示すように、二輪車の所定位置に搭載される。かかるECU9は、車両が具備する既存の制御手段を構成するものであり、所定のプログラムに基づいてエンジンをコントロールし得るよう構成されているのである。
【0029】
ここで、本実施形態においては、ECU9のプログラムを一部変更し、当該ECU9内に認証手段8を形成して成る。即ち、二輪車が具備する既存のECU9(制御手段)で認証手段8を兼用させているのである。認証手段8は、アンテナ7(受信手段)にて受信した認証コード(IDコード)が正規のものであるか否かを認証するためのものであり、図6に示すように、ロック手段としてのソレノイド3、アクセススイッチ4及びアンテナ7と電気的に接続されている。
【0030】
而して、シャッター2が閉塞位置にてロックされた状態において、認証手段8にて正規の認証コードがアンテナ7によって受信されたと認証されると、ソレノイド3のプランジャ3aを没入(下降)させて当該シャッター2との係合が解かれてロックが解除される一方、認証手段8による正規の認証コードの認証がないと、プランジャ3aによる係合が維持されてロックは解除されない。
【0031】
即ち、認証手段8により正規の認証コードが受信されたと認証された場合に限り、ソレノイド3(ロック手段)によるロックを解除し、シャッター2を閉塞位置から開放位置まで移動可能な状態とするのである。そして、イグニッションキーIKがキー孔Aに挿通されつつ回動操作された状態においては、認証手段8により正規の認証コードが受信されたと認証された場合に限り、ECU9がエンジンの始動を許可するようになっている。
【0032】
また、閉塞位置にあるシャッター2を常時開放位置へ付勢するコイルスプリング5(付勢手段)がハウジング1内に配設されており、ソレノイド3(ロック手段)によるロックが解除されると当該コイルスプリング5による付勢力にてシャッター2が閉塞位置から開放位置まで自然に移動するよう構成されている。即ち、開放位置から閉塞位置までシャッター2を摺動操作すると、図11に示すように、コイルスプリング5を押圧して圧縮せしめ、付勢力(開放位置へ向かう付勢力)を得ることができるのである。
【0033】
更に、ハウジング1内には、ソレノイド3(ロック手段)によりロックされたシャッター2を更に押圧することによりオンし、認証手段8による認証を開始させるアクセススイッチ4が配設されている。より具体的には、閉塞位置にあるシャッター2を更に押し込み操作(図11中右側への操作)すると、当該シャッター2から延設された腕部2cがアクセススイッチ4の操作部4aを押圧して(図12参照)、電気的にオンし、これにより認証手段8による認証が開始するよう構成されているのである。
【0034】
また更に、本実施形態においては、認証手段8により認証コードが正規のものであると認証したことを条件に点灯して報知する報知手段(具体的にはLED10)がハウジング1に形成されている。これにより、運転者に対し、正規の認証コードの受信が良好に行われたか否かを把握させることができるとともに、認証コードが受信されるとロックが解除されてコイルスプリング5にてシャッター2が開放位置となるので、暗闇でもシャッター2が開放位置にあるか否かが分かるようになっている。
【0035】
尚、本実施形態においては、図8に示すように、ハウジング1内にキー孔Aを照らす照明手段(具体的にはLED11)が配設されており、認証コードが受信されてロックが解除され、コイルスプリング5にてシャッター2が開放位置となると、LED11が点灯し、キー孔AへのイグニッションキーIKの差し込み動作を容易とすることができるよう構成されている。即ち、照明手段としてのLED11は、シャッターが閉塞位置から開放位置に移動したことを条件に点灯してキー孔Aを照らすので、夜間や車庫内等、車両の周囲が暗い場合においても、キー孔AへのイグニッションキーIKの差し込み動作を容易とすることができるのである。
【0036】
次に、上記構成のシリンダ錠の保護装置における動作について説明する。
まず、駐車時においては、イグニッションキーIKをキー孔Aから抜き取った後、開放位置にあるシャッター2の凸部2aを摘みつつ閉塞位置まで押し込んで摺動させる。このような開放位置から閉塞位置への摺動の過程で、図11に示すように、シャッター2がコイルスプリング5を圧縮し、閉塞位置に至ったシャッター2が常時開放位置側へ付勢された状態となる。
【0037】
また、シャッター2が閉塞位置に至ると、図10に示すように、ソレノイド3のプランジャ3aが当該シャッター2と係合し、開放位置へ向かう摺動動作を規制してロックするとともに、シャッター2がキー孔Aの上方を覆ってキー等を差し込むことができない状態となる。これにより、第三者がキー孔Aに他のキーやハサミ等を差し込んでいたずら等がなされてしまうのを防止することができる。
【0038】
一方、閉塞位置にあるシャッター2を開放位置まで摺動させてキー孔Aを外部に臨ませるには、まず、図12に示すように、シャッター2を更に押し込んで僅かに摺動させ、アクセススイッチ4をオンさせる。尚、シャッター2によりコイルスプリング5は更に押圧されて圧縮されることとなる。これにより、イモビライザシステムを含む車両の電源がオンするとともに、認証手段8による認証が可能とされる。このとき、LED10(報知手段)が点灯して運転者に電源がオンされたことを報知可能となっている。
【0039】
その後、イグニッションキーIKをハウジング1に近づけ、内蔵されたトランスポンダ6をアンテナ7に近接させる。これにより、トランスポンダ6とアンテナ7との間で無線による通信が行われ、アンテナ7にトランスポンダ6から認証コード(IDコード)が送信される。この認証コード(IDコード)が、予め定められた正規のものか否かをECU9内の認証手段8が認証し、正規のものである場合は、ソレノイド3のプランジャ3aを没入(下降)させて当該シャッター2との係合を解き、ロックが解除される。プランジャ3aとシャッター2との係合が解かれてロックが解除されると、コイルスプリング5による付勢力にてシャッター2が閉塞位置から開放位置まで自然に移動する。
【0040】
こうして、シャッター2が開放位置に至ると、キー孔Aが外部に臨んだ状態となるので、イグニッションキーIKを当該キー孔Aに挿通して所定方向へ回転操作すれば、エンジンが始動され走行可能な状態となる。然るに、イグニッションキーIKがキー孔Aに挿通した状態においても、トランスポンダ6とアンテナ7との間で通信による通信を行わせ、アンテナ7にトランスポンダ6から認証コード(IDコード)を送信する。この認証コード(IDコード)が、予め定められた正規のものか否かを認証手段8が認証し、正規のものである場合に限り、ECU9がエンジンの始動を許可するようになっている。
【0041】
次に、ECU9内に形成された認証手段8の制御内容を図13のフローチャートに基づいて説明する。
まず、アクセススイッチ4がオンしたか否かが判定され(S1)、オンしたと判定されると、認証手段8によるキー認証(認証動作)が開始され(S2)、当該認証コード(IDコード)が予め定められた正規のものであるか否か判定される(S3)。受信した認証コード(IDコード)が当該正規のものであると判定されると、ソレノイド3に電気信号が送られてプランジャ3aを没入(下降)させることにより当該シャッター2との係合を解く(S4)。これにより、シャッター2が開放位置となる(S5)。
【0042】
上記実施形態によれば、トランスポンダ6(送信手段)をアンテナ7(受信手段)に近接させることにより認証手段8による認証が行われた後、正規の認証コードを受信したことを条件としてソレノイド3(ロック手段)によるロックが解除され、シャッター2を閉塞位置から開放位置まで移動可能な状態とするので、閉塞位置にあるシャッター2を開放位置まで動作させる際、従来の如きマグネット錠を用いるものに比べ、当該シャッター2のロック解除の操作性を向上させて容易且つスムーズにロック解除を行わせることができる。
【0043】
また、トランスポンダ6(送信手段)をアンテナ7(受信手段)に近接させることにより認証手段8による認証を行わせ、ソレノイド3(ロック手段)によるロックを解除可能としたので、不用意なロック解除を回避することができる。即ち、ロックの解除を行わせるためには、運転者が意識してトランスポンダ6をアンテナ7に近接させる動作が必要であることから、意図しないで不用意にロックが解除されてしまうのを防止することができるのである。
【0044】
特に、本実施形態においては、イグニッションキーIKの把持部にトランスポンダ6が内蔵されているので、イグニッションキーIKをアンテナ7に近接させてトランスポンダ6からの認証コード(IDコード)を認証させ、シャッター2を開放位置まで摺動させた後、そのイグニッションキーIKをそのままキー孔Aに差し込むことができ、一連の動作を連続して行わせることができる。
【0045】
加えて、二輪車が具備する既存のECU9(制御手段)で認証手段8を兼用させたので、当該二輪車が具備する既存のECU9を流用することにより製造コストを低減させることができる。尚、既存のECU9を流用する際には、プログラムを書き換える作業等が必要とされるが、ソフト的な変更作業で済むことから本実施形態の適用に際しての製造コスト上昇を抑制することができる。
【0046】
一方、本実施形態によれば、送信手段は、イグニッションキーIKの把持部に内蔵されたトランスポンダ6から成るとともに、認証コードは、車両固有のIDコードであるので、トランスポンダ6からアンテナ7(受信手段)に対して車両固有のIDコードを送信し、そのIDコードが正規のものである場合に限りエンジン始動を許可するイモビライザシステムのIDコードと認証コードとを共用(共通化)させることができる。
【0047】
また、ソレノイド3から成るロック手段によるロックが解除されるとコイルスプリング5から成る付勢手段による付勢力にてシャッター2が閉塞位置から開放位置まで移動するので、閉塞位置にあるシャッター2を開放位置まで運転者が操作する必要がなく、ロック解除からキー孔A開放までの一連の操作性をより向上させることができる。
【0048】
更に、ソレノイド3から成るロック手段によりロックされたシャッター2を押圧することによりオンし、認証手段8による認証を開始させるアクセススイッチ4を具備したので、認証手段8による認証動作を任意タイミングにて行わせることができるとともに、キー孔Aを塞ぐ防犯機能とアクセススイッチ4をオンさせる操作機能とをシャッター2が兼ね備えることができる。
【0049】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、二輪車が具備する既存の制御手段で認証手段8を兼用させるものであれば、当該制御手段が他のものであってもよい。例えば、図14、15に示すように、エンジン回転数、車速又は種々警告を車両のメータパネル12に表示させるべく制御するメータパネル用マイコン13から成る既存の制御手段で認証手段8を兼用させるようにしてもよい。
【0050】
また、図16に示すように、車両が具備するスマートエントリシステムを制御するためのスマートコントローラ用マイコン14から成る既存の制御手段で認証手段8を兼用させるようにしてもよい。かかるスマートコントローラ用マイコン14は、二輪車の各スイッチ信号に対して携帯機(車両固有のIDコードを送信し得る携帯可能なもの)との間で通信したIDコードが正規のものであるか否かを照合し、二輪車の車体各部を制御するための既存のマイコンである。
【0051】
而して、二輪車のエンジンの駆動を制御するECU、エンジン回転数、車速又は種々警告を二輪車のメータパネルに表示させるべく制御するメータパネル用マイコン、又は二輪車が具備するスマートエントリシステムを制御するためのスマートコントローラ用マイコンから成る制御手段を流用して認証手段とすることができる。
【0052】
また、運転者が携帯可能とされ、認証コードを送信可能な送信手段は、本実施形態の如くイモビライザシステムを構成するトランスポンダに限定されず、他の送信手段(例えばイグニッションキーIKとは別個独立した携帯型のもの等)としてもよい。この場合、イモビライザシステムを具備していない車両にも適用できる。また、ロック手段は、本実施形態の如くソレノイド3から成るものに限らず、モータやシリンダ等で駆動し得るもの等としてもよい。更には、二輪車の他、四輪車やバギー、雪上車等他の車両におけるシリンダ錠の保護装置に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
認証手段により正規の認証コードが受信されたと認証された場合に限り、ロック手段によるロックを解除し、シャッターを閉塞位置から開放位置まで移動可能な状態とするものであって、車両が具備する既存の制御手段で前記認証手段を兼用させたシリンダ錠の保護装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態に係るシリンダ錠の保護装置を示す斜視図
【図2】同シリンダ錠の保護装置が適用される二輪車のECUが配設される位置を示す模式図
【図3】同シリンダ錠の保護装置のハウジング(シャッターが開放位置)を示す上面図
【図4】図3におけるIV−IV線断面図
【図5】同シリンダ錠の保護装置(ハウジングを取り外して当該ハウジングの内部構成が分かる状態としたもの)を示す側面図
【図6】同シリンダ錠の保護装置全体を示すブロック図
【図7】同シリンダ錠の保護装置において適用されるイグニッションキーを示す模式図
【図8】図3におけるVIII−VIII線断面図
【図9】同シリンダ錠の保護装置のハウジング(シャッターが開放位置)を示す上面図
【図10】図9の状態におけるシリンダ錠の保護装置を示す縦断面図
【図11】図9の状態におけるシリンダ錠の保護装置(ハウジングを取り外して当該ハウジングの内部構成が分かる状態としたもの)を示す側面図
【図12】同シリンダ錠の保護装置であって閉塞位置にあるシャッターを更に摺動させてアクセススイッチをオンした状態を示す側面図
【図13】同シリンダ錠の保護装置における認証手段の制御内容を示すフローチャート
【図14】本発明の他の実施形態に係るシリンダ錠の保護装置(メータパネル用マイコンから成る既存の制御手段で認証手段を兼用させたもの)を示す模式図
【図15】同他の実施形態が適用される二輪車が具備するメータパネル及びその近傍を示す模式図
【図16】本発明の更に他の実施形態に係るシリンダ錠の保護装置(スマートコントローラ用マイコンから成る既存の制御手段で認証手段を兼用させたもの)を示す模式図
【符号の説明】
【0055】
1 ハウジング
2 シャッター
3 ソレノイド(ロック手段)
4 アクセススイッチ
5 コイルスプリング(付勢手段)
6 トランスポンダ(送信手段)
7 アンテナ(受信手段)
8 認証手段
9 ECU
10 LED(報知手段)
11 LED(照明手段)
12 メータパネル
13 メータパネル用マイコン
14 スマートコントローラ用マイコン
A キー孔
S シリンダ錠
C 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両におけるシリンダ錠のキー孔の上方に設けられたハウジングと、
該ハウジング内で閉塞位置と開放位置との間で移動可能とされ、閉塞位置で前記キー孔を塞ぐとともに開放位置で当該キー孔を開放するシャッターと、
閉塞位置にある前記シャッターをロックして開放位置への移動を規制するロック手段と、
運転者が携帯可能とされ、認証コードを送信可能な送信手段と、
該送信手段が近接されることにより当該送信手段からの認証コードを非接触にて受信可能な受信手段と、
該受信手段にて受信した認証コードが正規のものであるか否かを認証する認証手段と、
を具備し、当該認証手段により正規の認証コードが受信されたと認証された場合に限り、前記ロック手段によるロックを解除し、シャッターを閉塞位置から開放位置まで移動可能な状態とするシリンダ錠の保護装置であって、
車両が具備する既存の制御手段で前記認証手段を兼用させたことを特徴とするシリンダ錠の保護装置。
【請求項2】
前記制御手段は、車両のエンジンの駆動を制御するECUから成るものであることを特徴とする請求項1記載のシリンダ錠の保護装置。
【請求項3】
前記制御手段は、エンジン回転数、車速又は種々警告を車両のメータパネルに表示させるべく制御するメータパネル用マイコンから成るものであることを特徴とする請求項1記載のシリンダ錠の保護装置。
【請求項4】
前記制御手段は、車両が具備するスマートエントリシステムを制御するためのスマートコントローラ用マイコンから成るものであることを特徴とする請求項1記載のシリンダ錠の保護装置。
【請求項5】
前記送信手段は、イグニッションキーの把持部に内蔵されたトランスポンダから成るとともに、前記認証コードは、車両固有のIDコードであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載のシリンダ錠の保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−37836(P2010−37836A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202862(P2008−202862)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000213954)朝日電装株式会社 (184)
【Fターム(参考)】