スクライブ加工方法及び装置
【課題】 各スクライブ加工工程における基材の歪み量が、製造工程中の熱応力や機械的応力を原因として大きく異なるものであったとしても、2以上のスクライブ加工工程のそれぞれにおいて形成されるスクライブ線同士の位置的相関を設計通りの位置的相関に維持することを可能とする。
【解決手段】 1の成膜工程が完了した中間品シート乃至プレート上から、前記基材に直接に刻設されたパンチ孔やアライメントマーク等の位置合わせシンボルの位置を光学的に検出し、前記シンボルの検出された位置と、前記シンボルの位置とそれに対応するスクライブ線上の位置との設計上の位置関係とに基づいて、設計上のスクライブ加工位置を補正し、前記補正後のスクライブ加工位置に対してレーザ光を照射してスクライブ線を形成する。
【解決手段】 1の成膜工程が完了した中間品シート乃至プレート上から、前記基材に直接に刻設されたパンチ孔やアライメントマーク等の位置合わせシンボルの位置を光学的に検出し、前記シンボルの検出された位置と、前記シンボルの位置とそれに対応するスクライブ線上の位置との設計上の位置関係とに基づいて、設計上のスクライブ加工位置を補正し、前記補正後のスクライブ加工位置に対してレーザ光を照射してスクライブ線を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシート状乃至プレート状の基材に対して、成膜工程とスクライブ加工工程とを交互に施すことにより、シート状乃至プレート状の多層デバイスを製造するときに使用されるレーザスクライブ加工方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状乃至プレート状の基材に対して、成膜工程とスクライブ加工工程とを交互に施すことにより、シート状乃至プレート状の多層デバイスを製造するといった製造方法は、例えば、ポリイミドフィルムを基材として使用するソフトタイプの薄膜太陽電池、ガラス板を基材として使用するハードタイプの薄膜太陽電池などに採用される。
【0003】
薄膜太陽電池(ソフトタイプ)の製造工程図が図35に示されている。同図(a)〜(h)に示されるように、この薄膜太陽電池(ソフトタイプ)の製造工程は、ポリイミドフィルム基板を用意する工程と、スルーホールなどのためのパンチ穴を開ける工程と、裏面、背面Agとなる電極をスパッタリングする工程と、裏面電極のパターニングを行う工程と、α−SiのCVD膜を生成する工程と、TCO膜のスパッタリングを行う工程と、TCO及びα−Siのパターニングを行う工程と、背面電極のパターニングを行う工程とを含んでいる。
【0004】
上述の工程の中で、同(d)に示される裏面電極のパターニング工程と同図(g)に示されるTCO、α−Si膜のパターニング工程において、正しいスクライビング加工が行われた場合を図36に示す。
【0005】
同図に示されるように、Ag電極膜が形成された段階で、裏面電極のパターニング工程が行われると、400μm幅のスクライブ線201が形成される。こうして形成されたスクライブ線201の上には、同図(b)に示されるように、TCO膜及びα−Si膜がそれぞれ成膜される。そして、それら2層膜体の上には、同図(c)に示されるように、さらなるパターニング処理が行われ、その結果、裏面電極のパターニング処理で形成されたスクライブ線201のほぼ中心位置に、100μm幅のスクライブ線202が形成される。
【0006】
ところで、この種の薄膜太陽電池(ソフトタイプ)の製造工程は、一方のローラから送り出されたシートを他方のローラで巻き取るといった、いわゆるロール・ツー・ロール方式で行われることから、搬送中の中間品シートは搬送途中で引っ張られることから、局部的に歪みが生じて伸び縮みするほか、製造環境下における温度や湿度も微妙に異なることから、それらの熱応力によっても局部的に歪みが生じ、実際、搬送方向には0.2%程度の伸縮が発生すると言われている。
【0007】
不良のスクライビング加工の一例を示す説明図が図37に示されている。この例にあっては、裏面電極のパターニング時点における中間品シートの歪みと、TCO、α−Si膜のパターニング工程時の中間品シートの歪みとは大きく異なる。そのため、裏面電極のパターニングで形成されたスクライブ線201とTCO、α−Si膜のパターニング工程で形成されたスクライブ線202とは軸心整合しない。このような事態が生ずると、電流がリークしてしまい、太陽電池としては不良品として廃棄せざるを得ない。
【0008】
次に、薄膜太陽電池(ハードタイプ)の製造工程図が図38に示されている。同図(a)〜(g)に示されるように、この薄膜太陽電池(ハードタイプ)の製造工程は、ガラス板を用意する工程と、TCO膜を蒸着する工程と、TCOのパターン化のためにレーザスクライブを行う工程と、a−Siの蒸着工程と、a−Si膜のパターン化のためにレーザスクライブを行う工程と、シリコン側に金属を蒸着する工程と、金属の蒸着膜をパターニングのためにレーザスクライブする工程とを含んでいる。
【0009】
スクライビング加工の一例を示す説明図が図39に示されている。同図に示されるように、TCOのパターン化、シリコンの蒸着のパターン化、金属の蒸着のパターン化のそれぞれを行った場合、TCO膜上のスクライブ線とシリコン蒸着膜上のスクライブ線との距離L1並びに、シリコン蒸着膜上のスクライブ線と金属の蒸着膜上のスクライブ線との距離L2は、不要な領域(全体効率の低下)であるため、できるだけ短いことが好ましい。
【0010】
しかし、薄膜太陽電池(ハードタイプ)にあっても、実際には製造工程中における局部的な温度差や湿度差などから応力歪みが生ずるため、実際、上述の距離L1,L2を許容幅以内に抑えることができない場合も生ずる。
【0011】
以上、一例として、ソフトタイプ及びハードタイプの薄膜太陽電池で説明したように、シート状乃至プレート状の基材に対して、成膜工程とスクライブ加工工程とを交互に施すことにより、シート状乃至プレート状の多層デバイスを製造する方法にあっては、製造工程中に生ずる熱応力や機械的応力などによって各スクライブ加工工程における基材の歪み量に相違が生ずると、2以上のスクライブ加工工程のそれぞれにおいて形成されるスクライブ線同士の位置的相関を設計通りの位置的相関に維持することが難しく、その結果、2以上のスクライブ加工工程のそれぞれにおいて形成されるスクライブ線同士の位置的相関が、設計通りの位置的相関から大きく異なった場合、デバイスの効率が大きく低下したり、あるいは不良品が発生するなどの問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−233517号公報
【特許文献2】特開2002−252360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、従来のシート状乃至プレート状の基材に対して、成膜工程とスクライブ加工工程とを交互に施すことにより、シート状乃至プレート状の多層デバイスを製造する方法にあっては、製造中に生ずる熱応力や機械的応力によって、各スクライブ加工工程における基材の縮み量に大きな違いが存在すると、2以上のスクライブ加工工程のそれぞれにおいて形成されるスクライブ線同士の位置的相関を設計通りの位置的相関に維持することが困難となり、その結果完成されたデバイスは著しく効率が悪かったり、あるいは使用不能な不良品となるといった問題点があった。
【0014】
この発明は、上述の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、シート状乃至プレート状の基材に対して、成膜工程とスクライブ加工工程とを交互に施すことにより、シート状乃至プレート状の多層デバイスを製造する方法において、各スクライブ加工工程における基材の歪み量が、製造工程中の熱応力や機械的応力を原因として大きく異なるものであったとしても、2以上のスクライブ加工工程のそれぞれにおいて形成されるスクライブ線同士の位置的相関を設計通りの位置的相関に維持することを可能としたスクライブ加工方法及び装置を提供することにある。
【0015】
この発明のさらに他の目的並びに作用効果については、明細書の以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の発明が解決しようとする課題は以下の構成を有するスクライブ加工方法によって解決することができると考えられる。
【0017】
すなわち、このスクライブ加工方法は、シート状乃至プレート状の基材に対して、成膜工程とスクライブ加工工程とを交互に施すことにより、シート状乃至プレート状の多層デバイスを製造するときに使用されるレーザスクライブ加工方法である。
【0018】
この方法は、1の成膜工程が完了した中間品シート乃至プレート状から、前記基材に直接に刻設されたパンチ孔やアライメントマーク等の位置合わせシンボルの位置を光学的に検出するステップと、前記シンボルの検出された位置と、前記シンボルの位置とそれに対応するスクライブ線上の位置との設計上の位置関係とに基づいて、設計上のスクライブ加工位置を補正するステップと、前記補正後のスクライブ加工位置に対してレーザ光を照射してスクライブ線を形成するステップとを含むことを特徴とするものである。
【0019】
このような構成によれば、製造工程中に生ずる機械的応力や熱応力などによって、各スクライブ加工工程における基材の歪み量が大きく異なったとしても、スクライブ加工処理それ自体は、前記シンボルの検出された位置と、前記シンボルの位置とそれに対応するスクライブ線上の位置との設計上の位置関係とに基づいて、設計上のスクライブ加工位置を補正したスクライブ加工位置に対してレーザ光を照射して行われるため、各スクライブ加工工程における前記基材の歪み量の如何に拘わらず、2以上のスクライブ加工工程のそれぞれにおいて形成されるスクライブ線同士の位置的相関を設計通りの位置的相関に維持することが可能となり、完成された多層デバイスの効率が低下したり、不良品となる確率を可及的に低減することができる。
【0020】
上述の方法において、前記多層デバイスが、長尺シート状の薄膜太陽電池であって、前記位置合わせ用のシンボルが、集電孔となるべく前記シート状基材上に一列に並んだパンチ孔であり、さらに前記交互に施される成膜工程とスクライブ加工工程とが、第1の成膜工程である裏面電極のスパッタリング工程と、第1のレーザスクライブ工程である裏面電極のパターニング工程と、第2の成膜工程であるセル膜のCVD工程及び表面電極のスパッタリング工程と、第2のレーザスクライブ工程であるセル膜及び表面電極のパターニング工程とを含むものであれば、前記各スクライブ加工工程における基材の歪み量の如何に拘わらず、裏面電極上のスクライブ線と表面電極上のスクライブ線とが軸心整合することとなり、上述の電流リークの問題を未然に防止することができる。
【0021】
また、上述の方法において、前記多層デバイスが、板状の薄膜太陽電池であって、前記位置合わせ用のシンボルが、集電穴となるべく前記シート状基材上に一列に並んだパンチ孔であり、さらに、前記交互に施される成膜工程とスクライブ加工工程とが、第1の成膜工程である裏面電極のスパッタリング工程と、第1のレーザスクライブ工程である裏面電極のパターンニング工程と、第2の成膜工程であるセル膜の蒸着工程と、第2のレーザスクライブ工程であるセル膜のパターニング工程と、第3の成膜工程である表面側の電極蒸着工程と、第3のレーザスクライブ工程である表面電極のパターニング工程とを含むものであれば、前記各スクライブ加工工程における前記基材の歪み量の如何に拘わらず、裏面電極上のスクライブ線と表面電極上のスクライブ線との間に存在する不要領域の面積を所定値以下に維持することが可能となり、完成されたデバイスの歩留まりを向上させることができる。
【0022】
上述の発明が解決しようとする課題は、以下の構成を有するレーザスクライブ加工装置によっても解決することができる。
【0023】
このレーザスクライブ加工装置は、その幅方向に沿って多列に集電孔が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用されるレーザスクライブ加工装置である。
【0024】
そして、このレーザスクライブ加工装置には、前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シートが載置可能な載物台を有する加工ステーションと、前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージと、前記主ステージ上にあって、前記製造ラインの幅方向へと走行可能な副ステージと、前記副ステージ上にあって、前記製造ラインの長手方向へと所定ストロークで移動可能に取り付けられ、かつそのレーザ出射口を前記載物台上に載置固定された中間品シートに向けられたレーザパターニング用の加工ヘッドと、前記主ステージ上にあって、前記副ステージの走行ラインよりも、前記主ステージのスクライブ動作時の走行方向前方側の領域に、前記製造ラインの幅方向へと適宜間隔をおいて分散配置され、それぞれ前記中間品シート上の集電孔一列分の視野の一部を分担する複数個の固定カメラとを有し、それにより、前記複数の固定カメラのそれぞれから得られる画像を画像処理することで、各固定カメラ位置における実集電孔のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のヘッドの製造ライン方向の移動を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成したことを特徴とするものである。
【0025】
このような構成によれば、予め複数の固定カメラによって集電孔列の画像を取得し、それらに基づき複数の点のズレ量を求めることができるから、これらのズレ量に基づいて設計上のスクライブ線を補正することにより、制御を負担するコンピュータにおいては、画像処理や演算処理に煩わされることなく、スクライブ加工のためのビーム照射点制御に専念することができる。
【0026】
このとき、前記複数個の固定カメラが、低熱膨張材からなるホルダを介して前記主ステージに取り付けられていれば、製造環境下における温度管理が厳しい場合であっても、各カメラの基準となる光軸ズレを最小にとどめ、スクライブ線の補正精度を向上させることができる。
【0027】
上述の発明が解決しようとする課題は、以下の構成を有するレーザスクライブ加工装置によっても解決することが考えられる。
【0028】
すなわち、このレーザスクライブ加工装置は、その幅方向に沿って多列に集電孔が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用されるレーザスクライブ加工装置である。
【0029】
そして、このレーザスクライブ加工装置には、前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シートが載置可能な載物台を有する加工ステーションと、前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージと、前記主ステージ上にあって、前記製造ラインの幅方向へと走行可能な副ステージと、前記副ステージ上にあって、前記製造ラインの長手方向へと所定ストロークで移動可能に取り付けられ、かつそのレーザ出射口を前記載物台上に載置固定された中間品シートに向けられたレーザパターニング用の加工ヘッドと、前記副ステージ上にあって、前記製造ラインの幅方向へと、前記レーザパターニング用のヘッドと一体に移動する1個のカメラとを有し、それにより、前記カメラから得られる画像を画像処理することで、前記カメラの前記製造ラインの幅方向各位置における実集電孔のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のヘッドの製造ライン方向の移動を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成したことを特徴とするものである。
【0030】
このような構成によれば、制御のためのコンピュータとしては高速処理を求められるものの、画像を取得するためのカメラは1台で済むため、コンパクトかつ低コストに製作できる利点がある。
【0031】
このとき、前記単一のカメラが、スクライブ加工動作時における移動中、前記加工ヘッドの進行方向において所定距離下流側に配置されていれば、加工ヘッドが進行するに先立って、早めに進行する位置の画像情報が取得されるため、補正に必要なズレ量を取得するための画像処理に十分な余裕が生まれ、スクライブラインの補正処理に必要なコンピュータとして、さほど高速処理を必要としなくても済むという利点がある。
【0032】
上述の発明が解決しようとする課題は、以下の構成を有するレーザスクライブ加工装置によっても解決することができると考えられる。
【0033】
すなわち、このレーザスクライブ加工装置は、その幅方向に沿って多列に集電孔が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用されるレーザスクライブ加工装置である。
【0034】
そして、このレーザスクライブ加工装置には、前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シートが載置可能な載物台を有する加工ステーションと、前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージと、前記主ステージ上にあって、前記製造ラインの幅方向へと走行可能な副ステージと、前記副ステージ上にあって、前記製造ラインの長手方向へと所定ストロークで移動可能に取り付けられ、かつそのレーザ出射口を前記載物台上に載置固定された中間品シートに向けられたレーザパターニング用の加工ヘッドと、前記副ステージ上にあって、前記製造ラインの幅方向へと、前記レーザパターニング用のヘッドと一体に移動する複数個のカメラとを有し、それにより、前記カメラから得られる画像を画像処理することで、前記カメラの前記製造ラインの幅方向各位置における実集電孔のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のヘッドの製造ライン方向の移動を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成したことを特徴とするものである。
【0035】
このような構成によれば、複数のカメラを加工ヘッドと同時に移動させながら、各カメラ位置におけるズレ量を補正しつつ、補正されたスクライブ線に基づいてスクライブ加工を行うものであるから、前記単一カメラの場合に比べ、一括取得できる画像データの量が増し、その分だけ画像処理を早めに済ますことによって、制御に必要なコンピュータをスクライブ加工上のビーム制御に専念させることができ、全体としてさほど処理速度を要求しないコンピュータによって、余裕をもって処理を実現できる利点がある。
【0036】
このとき、前記複数個のカメラが、スクライブ加工動作時における移動中、前記加工ヘッドの進行方向において所定距離下流側に配置されていれば、より一層画像データの取得を早めに行うことができ、コンピュータの処理に余裕が生まれることとなる。
【0037】
上述の発明が解決しようとする課題は、以下の構成を有するレーザスクライブ加工装置によっても解決することができる。
【0038】
すなわち、このレーザスクライブ加工装置は、その幅方向に沿って多列に集電孔が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用されるレーザスクライブ加工装置である。
【0039】
そして、このレーザスクライブ加工装置には、前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シートが載置可能な載物台を有する加工ステーションと、前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージと、前記主ステージ上にあって、前記製造ラインの幅方向へと走行可能な副ステージと、前記副ステージ上にあって、前記製造ラインの長手方向へと所定ストロークで移動可能に取り付けられ、かつそのレーザ出射口を前記載物台上に載置固定された中間品シートに向けられた同軸観察カメラ付きのレーザパターニング用の加工ヘッドとを有し、それにより、前記カメラから得られる画像を画像処理することで、前記カメラの前記製造ラインの幅方向各位置における実集電孔のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のヘッドの製造ライン方向の移動を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成したことを特徴とするものである。
【0040】
このような同軸観察カメラ付きのレーザパターニング用の加工ヘッドによれば、レーザ加工と画像取得とを同時に行うことはできないものの、それらの処理を同一の視野をもって行うことができるため、設計上のスクライブラインに対する補正の精度を向上させることができる。
【0041】
上述の発明が解決しようとする課題は、以下の構成を有するレーザスクライブ加工装置によっても解決できると考えられる。
【0042】
すなわち、このレーザスクライブ加工装置は、その幅方向に沿って多列に集電孔が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用されるレーザスクライブ加工装置である。
【0043】
このレーザスクライブ加工装置は、前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シートが載置可能な載物台を有する加工ステーションと、前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージと、前記主ステージ上にあって、前記載物台上に載置固定された中間品シートに向けられた出射光軸を、前記製造ラインの幅方向及び長手方向へとそれぞれ所定ストロークで首振り可能としたレーザパターニング用の加工ヘッドと、前記主ステージ上にあって、前記副ステージの走行ラインよりも、前記主ステージのスクライブ動作時の走行方向前方側の領域に、前記製造ラインの幅方向へと適宜間隔をおいて分散配置され、それぞれ前記中間品シート上の集電孔一列分の視野の一部を分担する複数個の固定カメラとを有し、それにより、前記複数の固定カメラのそれぞれから得られる画像を画像処理することで、各固定カメラ位置における実集電孔のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のヘッドの光軸首振り角度を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成したことを特徴とするものである。
【0044】
このような構成によれば、進行方向前方にある一列分の集電孔列に関する画像を一括して短時間で取得しこれに基づき設計上のスクライブ線を早期に補正できることに加え、レーザビーム照射位置の移動は、光軸首振り角度の制御によって高速に行うことができるため、これらが相俟って、中間品シートの動きを停止させることなく、これを搬送状態を維持したままで、補正後のスクライブラインに基づいてスクライブ加工を行うことができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、シート状乃至プレート状の基材に対して、成膜工程とスクライブ加工工程とを交互に施すことにより、シート状乃至プレート状の多層デバイスを製造する際に、前記各スクライブ加工工程における前記基材の歪み量に大きな違いがあったとしても、スクライブ線の加工処理は、光学的に検出された位置合わせ用シンボルの位置と、前記シンボルの位置とそれに対応するスクライブ線上の位置との設計上の位置関係とに基づいて、設計上のスクライブ加工位置を補正すると共に、この補正されたスクライブ加工位置に対してレーザ光を照射してスクライブ線を形成するから、2以上のスクライブ加工工程のそれぞれにおいて形成されるスクライブ線同士の位置的相関を設計通りの位置的相関に維持することができ、これにより完成されたデバイスの効率を低下させたり、不良品が発生する虞れを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】加工対象シートの搬送形態を示す説明図である。
【図2】加工対象シートと加工ステーションとの関係を示す説明図である。
【図3】本発明装置の第1実施形態の平面図である。
【図4】本発明装置の第1実施形態の側面図である。
【図5】第1実施形態における補正原理の説明図(その1)である。
【図6】第1実施形態における補正原理の説明図(その2)である。
【図7】補正原理の説明図(その3)である。
【図8】加工対象シートの歪みによるスクライブ位置のずれの説明図である。
【図9】第1実施形態の変形例を示す平面図(その1)である。
【図10】第1実施形態の変形例を示す平面図(その2)である。
【図11】本発明装置の第2実施形態の平面図である。
【図12】本発明装置の第2実施形態の側面図である。
【図13】CCDカメラと加工ヘッドとの位置関係を示す説明図である。
【図14】本発明装置の第3実施形態を示す平面図である。
【図15】本発明装置の第3実施形態を示す側面図である。
【図16】補正原理の説明図である。
【図17】加工ヘッドとカメラとの位置関係を示す説明図である。
【図18】本発明装置の第4実施形態を示す平面図である。
【図19】本発明装置の第4実施形態を示す側面図である。
【図20】加工ヘッドの光学系を示す説明図である。
【図21】本発明装置の第5実施例形態の平面図である。
【図22】本発明装置の第5実施例形態の側面図である。
【図23】加工ヘッドの光学系を示す構成図である。
【図24】補正処理プログラムの構成を示すフローチャート(その1)である。
【図25】補正処理プログラムの構成を示すフローチャート(その2)である。
【図26】加工速度と処理速度との関係の説明図(その1)である。
【図27】加工速度と処理速度との関係の説明図(その2)である。
【図28】フライングスポットのメリットの説明図である。
【図29】固定光学系を使用した場合(バイトサイズ制御なし)の作用説明図である。
【図30】固定光学系を使用した場合(バイトサイズ制御あり)の作用説明図である。
【図31】ガルバノスキャン光学系を使用した場合の作用説明図である。
【図32】一次元CCDの使用例を示す説明図である。
【図33】孔のずれ量の実寸法の説明図である。
【図34】Qスイッチレーザ固体レーザの代表的な特性(Nd:YAGレーザの場合)を示すグラフである。
【図35】薄膜太陽電池(ソフトタイプ)の製造工程図である。
【図36】正しいスクライビング加工の一例を示す説明図である。
【図37】不良のスクライビング加工の一例を示す説明図である。
【図38】薄膜太陽電池(ハードタイプ)の製造工程図である。
【図39】スクライビング加工の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下に、本発明方法及び装置の好適な実施の一形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。ここで述べる実施形態は、本発明をソフトタイプの薄膜太陽電池に応用したものである。
【0048】
[第1実施形態]
加工対象シートの搬送形態を示す説明図が図1に示されている。同図に示されるように、本発明における加工対象シートは、繰り出しロールR1と巻取りロールR2とテンションロールR3などからなるロール機構をもって搬送される、いわゆるロール・ツー・ロール方式により搬送されるものであり、こうして実現される搬送路の途中に、図2に見られるような所定長さの加工ステーションSTが設けられ、この加工ステーションSTにおいて、本発明に係るスクライブ加工方法及び装置が実現される。
【0049】
なお図2において、3は搬送される中間品シート2のその幅方向に沿って多列にかつ一面に配置された集電孔となるパンチ孔である。当業者にはよく知られているように、この種のソフトタイプの薄膜太陽電池においては、シートの長手方向に区分されて形成された各独立するセルとセルとの間を直並列に結んで電流容量を確保するためこのような多数の集電孔3を必要とするものであり、これらの集電孔3は、先に説明したように、製造段階の最初の工程において、ポリイミドフィルム基材上にパンチ孔加工される。このパンチ孔3は、.製造開始から最終段階まで、確かな位置合わせ用の基準として用いることができる。
【0050】
しかも、搬送中の中間品シート2は、ロール・ツー・ロール方式に起因する局部的な機械的応力を受けて、延びたり縮んだりし、この伸縮の傾向は、長手方向各部において一定とはならないため、図2に誇張して示されるように、様々な方向へと角度を変えて傾斜することとなる。もっとも、図はかなり誇張されて記載されており、現実に目で見た場合には、ほぼ直線に見えることは言うまでもない。
【0051】
本発明装置の第1実施形態の平面図が図3に、同側面図が図4にそれぞれ示されている。それらの図から明らかなように、この第1実施形態に係るスクライブ加工装置は、その幅方向に沿って多列に集電孔3が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用されるものである。
【0052】
そして、このレーザスクライブ加工装置には、前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シート2が載置可能な載物台1を有する加工ステーションSTと、前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージ5と、前記主ステージ5上にあって、前記製造ラインの幅方向へと走行可能な副ステージ7と、前記副ステージ7上にあって、前記製造ラインの長手方向へと所定ストロークで移動可能に取り付けられ、かつそのレーザ出射口を前記載物台1上に載置固定された中間品シート2に向けられたレーザパターニング用の加工ヘッド8と、前記主ステージ5上にあって、前記副ステージの走行ラインよりも、前記主ステージ5のスクライブ動作時の走行方向前方側の領域に、前記製造ラインの幅方向へと適宜間隔をおいて分散配置され、それぞれ前記中間品シート2上の集電孔1列分の視野の一部を分担する複数個の固定カメラ9とを有する。
【0053】
なお図において、4a,4bは、主ステージを搬送方向へ沿って移動可能とするための左右のガイドレール、6a,6bは副ステージ7を主ステージ5上に、搬送方向と直交する方向へと移動可能とするための左右のガイドレール、5aは搬送方向と直交する方向へと加工ヘッド8を移動可能とするための開口、10は複数台のカメラを主ステージに固定するための低線膨張材からなるホルダである。
【0054】
なお、当業者にはよく知られているように、主ステージ5、副ステージ7、加工ヘッド8を直線的に駆動するためには、ボールネジ機構やリニアモータを利用することができる。
【0055】
第1実施形態における補正原理の説明図(その1)〜(その3)が図5〜図8に示されている。それらの図から明らかなように、まず、この第1実施形態においては、複数台のカメラ9からその直下周辺の一定の視野内の画像を一括して取得する。図7に示されるように、カメラ9はその光軸9aを真下に向けるように装着されており、従って、その視野9bに集電孔3が存在すれば、光軸1とその集電孔3との距離はそのままその地点における集電孔3の設定値からの誤差δとして直ちに測定することができる。図6に示されるように、このようにして複数台(この例では7台)のカメラから、画像処理によって各地点の誤差をそれぞれ求めることができる。
【0056】
ここで、図5に示されるように、この例では、カメラは、加工ヘッドの進行方向において、1ピッチ先の集電孔列を読み取るように設定されている。つまり予め1ピッチ先の集電孔列の画像データに基づき、設計上のスクライブ線を補正し、その補正されたスクライブ線に基づき実際のスクライブ加工を行うのである。
【0057】
このスクライブ加工は、中間品シート2の移動を停止し、図示しないバキューム装置で、載物台1へと中間品シート2を吸着固定した状態において、加工対象となる集電孔列3の上に主ステージ5を移動させて固定し、その状態で副ステージ7を搬送ラインと直交する方向へと移動させながら、補正量に応じて、加工ヘッド9を搬送方向へと所定ストロークで進出または後退させることにより、所望の直線または曲線を描きながら、スクライブ加工を行うことができる。
【0058】
加工対象シートの歪みによるスクライブ位置のズレの説明図が図8に示されている。同図において最も左側の図から明らかなように、機械的、温度的理由からなんからの歪みが加工対象となるシートに生ずると、それに応じて、各集電孔3の位置もズレるから、カメラから得られる画像に基づいて画像処理を行うことで、各座標位置X1,X2・・・X7に対応して、それぞれのズレ量δが測定される。
【0059】
今仮に、設計上において、2以上のスクライブ線を重ね、かつ集電孔の配列に沿って引くように決められているとすると、従前の補正を行わないスクライブ線の形成方法では、図8において中央の図に示されるように、直線的にスクライブ線が引かれてしまう。しかし、このとき、それ以前のスクライブ工程で引かれたスクライブ線は、集電孔の配列に沿って曲線を描くよう存在している筈である。したがって、その上に直線的にスクライブ線引いてしまうと、上層と下層のスクライブ線が公差又は接近してしまい、先に説明したような様々な不都合が生ずる。
【0060】
これに対して、本発明にあっては、図8において右側の図に示されるように、設計上のスクライブ線位置は、各位置X1,X2・・・X7のズレ量δと設計上の集電孔の配列ラインと設計上のスクライブ線との距離とに基づいて修正され、結局、新たな修正後のスクライブ線位置は、集電孔の配列に沿いかつそれから所定距離平行に離れたものとなる。そのため、本発明によれば、各スクライブ工程にて引かれるスクライブ線は、上層と下層とのおいて、一定の関係に維持されるから、上下のスクライブ線が交差したり、以上に接近する等の問題を未然に防止することができるのである。
【0061】
このとき、複数台のカメラ9が低膨張材からなるホルダ11によって主ステージ5に固定されていれば、製造環境における温度変化等があったとしても、カメラの光軸中心位置9aがずれることを防止し、高精度を維持することができる。
【0062】
ここで、低膨張材としては、スーパーインバータやセラミック等の低い線膨張係数を有する素材を使用することができる。もっとも、このような低線膨張係数(1μm/℃程度)の素材を用いるとしても、素材の温度管理(±1〜2℃)は必要となるため、もし仮に、環境温度変化がこれ以上ある場合には、恒温化冷却水を流すことで要求される温度を維持することが好ましい。
【0063】
固定カメラ(例えば、CCDカメラ)を使用することによる利点としては、(1)移動させる必要がないため、CCDカメラの数だけ殆ど同時に1台のデータを取り込めること、(2)CCDカメラのベースの膨張を制御すれば高精度が比較的簡単に出せ、しかもこれが維持できること、(3)可動式のCCDカメラ方式であれば、メンテナンスも必要となるが、固定カメラであれば一旦調整すればその後はメンテナンスフリーとなること、(4)CCDカメラを駆動させると制御する軸数が1軸増えるため、コストが大きく上がるばかりでなく、制御が複雑になることによるコストアップにもなること、(5)CCDカメラのデータを一旦保存し、1台の画像処理装置で格納したデータを順番に処理させていけば安価なシステムが構築できること、(6)シート全体のデータを加工前に先に一括で取得する場合、本実施例ではスクライブラインの数だけステージをインデックス送りすればよいが、加工ヘッドとCCDカメラ1台を一体化させている本方式と比較すると、圧倒的に速く処理できる等が挙げられる。
【0064】
第1実施形態の変形例を示す平面図(その1)が図9に示されている。同図に示されるように、上述の複数台の固定カメラを用いる実施例にあっては、これを1個の加工ステーションに、共通の載物台1を利用して加工部8Aを2台以上設け、これにより加工効率を向上させることもできる。
【0065】
第1実施形態の変形例を示す平面図(その2)が図10に示されている。同図に示されるように、上述の複数台の固定カメラを使用する実施形態にあっては、1組の読取部9Aに対して、2組の加工部8A,8Aを設け、さらにそれら全体を共通の載物台に対して2台以上設けるようにしてもよい。このようにすれば、一層、加工効率を向上させることができる。
【0066】
なお、上述の第1変形例は、シートの長さが長い時、マルチヘッド化することで、加工時間の短縮が図られる。また、第2の変形例の場合、例えば1列読み取れば0.5m程度歪み量が大きく変わらない場合、加工部だけを2段にして、加工速度を上昇させることができる。このときシートが長ければ、これをさらに2組設けることで、一層の加工速度の向上が図れる。
【0067】
[第2実施形態]
本発明装置の第2実施形態の平面図が図11に、同側面図が図12にそれぞれ示されている。それらの図から明らかなように、この第2実施形態に係るスクライブ加工装置は、その幅方向に沿って多列に集電孔が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用される。
【0068】
このレーザスクライブ加工装置は、前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シート2が載置可能な載物台を有する加工ステーションSTと、前記製造ラインSTの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージ5と、前記主ステージ5上にあって、前記製造ラインの幅方向へと走行可能な副ステージ7と、前記副ステージ7上にあって、前記製造ラインの長手方向へと所定ストロークで移動可能に取り付けられ、かつそのレーザ出射口を前記載物台上に載置固定された中間品シート2に向けられたレーザパターニング用の加工ヘッド8と、前記副ステージ7上にあって、前記製造ラインの幅方向へと、前記レーザパターニング用のヘッド8と一体に移動する1個のカメラ9とを有し、それにより前記カメラ9から得られる画像を画像処理することで、前記カメラの前記製造ラインの幅方向各位置における実集電孔3のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のヘッド8の製造ライン方向の移動を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成されている。
【0069】
すなわち、この第2実施形態においては、誤差測定用CCDカメラ9は1台で、パターニング加工ヘッド8の駆動ステージである副ステージ7上に搭載されていることが特徴となる。加工ヘッド8の速度に合わせてCCDカメラ9も移動し、基準点と実際の歪み量をオンザフライ(On The Fly)で測定していく。加工ヘッド8の移動速度は最大2m/s程度で駆動するため、データ量を増やす場合、高速シャッタ機能があるものが必要とされるであろう。
【0070】
第1実施形態と比較すると、利点としては、(1)測定部であるカメラ9が移動するため、データの取り込みを自在に変化させることが可能であり、中間品シート2の歪みが複雑である場合、第1実施形態では使用できるカメラの数に限度があるため、データ数が少なくなって、正確な補正ができない場合もあり得るが、この第2実施形態では歪みのひどい所でもデータ取り込み量を増大させて、正確なデータ分析が可能となること、(2)CCDカメラ9は1台であるため、構成が簡素化でき、組立・調整などが簡単であること、(3)データ取り込み条件などを変えられるパラメータが多いため、融通性が高い(後でソフト的な改善等が可能)などを挙げることができる。
【0071】
なお、図示の例では、加工ヘッド8の横方向(中間品シート2の引っ張り方向)の1ライン上流を読み取るように構成したが、図13に示されるように、加工ヘッドの下方向(先読み方向)に設置してもよい。誤差Eが1cmの場合は、加工速度が2[m/s]であっても、5msの遅延時間があるので、リアルタイムOSを用いれば1ms程度で処理できるので、加工ヘッドに誤差信号を与えることができる。
【0072】
[第3実施形態]
本発明装置の第3実施形態の平面図が図14に、同側面図が図15にそれぞれ示されている。それらの図から明らかなように、この第3実施形態に係るレーザスクライブ加工装置は、その方向に沿って多列に集電孔3が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用される。
【0073】
このレーザスクライブ加工装置は、前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シート2が載置可能な載物台1を有する加工ステーションSTと、前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージ5と、前記主ステージ5上にあって、前記製造ラインの幅方向へと走行可能な副ステージ7と、前記副ステージ7上にあって、前記製造ラインの長手方向へと所定ストロークで移動可能に取り付けられ、かつそのレーザ出射口を前記載物台上に載置固定された中間品シート2に向けられたレーザパターニング用の加工ヘッド8と、前記副ステージ7上にあって、前記製造ラインの幅方向へと、前記レーザパターニング用のヘッド8と一体に移動する複数個のカメラ9とを有し、それにより、前記カメラから得られる画像を画像処理することで、前記カメラ9の前記製造ラインの幅方向各位置における実集電孔3のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のヘッド8の製造ライン方向の移動を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成したものである。
【0074】
すなわち、この第3実施形態にあっては、測定用固定CCDカメラ9を複数台(この例では3台)使用したことに特徴がある。CCDカメラ9をスクライブラインにおける加工ヘッド8の位置より下流側方向に複数台配置することによって、データの先読みが可能になるということである。
【0075】
この第3実施形態の利点としては、複数台の固定CCDカメラ9の使用によって画像処理装置をCCDカメラ9と独立に用いることにより、これから補正データ値を組み入れて加工しようとするためのデータの先読み(但し、1列前の情報)ができるため、データを読み込みながら、次の加工位置を計算して加工できる利点がある。
【0076】
この例にあっては、読み込みカメラの位置が数十cm程度離れる場合も考えられるため、実際の装置では、2[m/s]の加工速度であっても、100ms台の処理時間が許される。このため、精度良く補正をかけられるばかりでなく、加工ヘッド8を動かす時間にも余裕がとれる利点がある。
【0077】
図17に示されるように、誤差Eが30cmの場合、加工速度が2[m/s]であっても、150msの遅延時間があるので、加工ヘッドを追従させて動かす時間も十分な時間がとれる。この意味で設計は簡単となる。
【0078】
[第4実施形態]
本発明装置の第4実施形態を示す平面図が図18に、同側面図が図19にそれぞれ示されている。それらの図から明らかなように、第4実施形態に係るレーザスクライブ装置は、その幅方向に沿って多列に集電孔が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用される。
【0079】
このレーザスクライブ加工装置は、前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シート2が載置可能な載物台1を有する加工ステーションSTと、前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージ5と、前記主ステージ5上にあって、前記製造ラインの幅方向へと走行可能な副ステージ7と、前記副ステージ7上にあって、前記製造ラインの長手方向へと所定ストロークで移動可能に取り付けられ、かつそのレーザ出射口を前記載物台上に載置固定された中間品シート2に向けられた同軸観察カメラ付きのレーザパターニング用の加工ヘッド10とを有し、それにより前記カメラ9から得られる画像を画像処理することで、前記カメラ9の前記製造ラインの幅方向各位置における実集電孔のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中のレーザパターニング用のヘッド8の製造ライン方向の移動を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成されている。
【0080】
すなわちこの第4実施形態の特徴は、測定用固定CCDカメラ9をパターニング加工光学ヘッド8と同軸上に配置した点にある。
【0081】
この第4実施形態の利点としては、同軸構成とすることにより観察(測定)と加工点のずれがないため、構成が単純化され、コスト的にも低く抑えることができる。一方で、測定と加工は排他的になり、同時に処理できなくなる。このため、測定をシート全面に渡り採取するのではなく、特異点だけの測定や、50本毎にしかデータ採取する必要がないという場合には利点となる。
【0082】
図18に示されるように、この例にあっては、1本目のスクライブラインを加工する前に、同軸観察光学系より基準ラインのデータを採取する。その後、加工するスクライブラインの位置だけずらして、そのデータ通りに加工する。
【0083】
なお、このような加工ヘッドの光学系については、種々文献で周知であるが、図20に示されるように、ガイド光ファイバ10a、加工光ファイバ10bからのレーザ光を、それぞれ、光学系10c,10d及びハーフミラー10e,10fを介して対物レンズ10gに導き、対象物に照射し、その反射光を対物レンズ10g及び2枚のハーフミラー10e,10fを介してカメラ9より観測するようにしたものである。
【0084】
[第5実施形態]
本発明装置の第5実施形態の平面図が図21に、同側面図が図22にそれぞれ示されている。それらの図から明らかなように、この第5実施形態に係るレーザスクライブ加工装置は、その幅方向に沿って多列に集電孔3が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用される。
【0085】
このレーザスクライブ加工装置は、前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シート2が載置可能な載物台1を有する加工ステーションSTと、前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージ5と、前記ステージ5上にあって、前記載物台1上に載置固定された中間品シート2に向けられた出射光軸を、前記製造ラインの幅方向及び長手方向へとそれぞれ所定ストロークで首振り可能としたレーザパターニング用の加工ヘッド8Aと、前記主ステージ5上にあって、前記副ステージの走行ラインよりも、前記主ステージのスクライブ動作時の走行方向前方側の領域に、前記製造ラインの幅方向へと適宜間隔をおいて分散配置され、それぞれ前記中間品シート上に集電孔1列分の視野の一部を分担する複数個の固定カメラ9とを有し、それにより、前記複数の固定カメラ9のそれぞれから得られる画像を画像処理することで、固定カメラ位置9における実集電孔のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のレーザ光の光軸首振り角度を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成されている。
【0086】
すなわち、この第5実施形態に係るレーザスクライブ加工装置は、第1実施形態において、パターニング加工光学ヘッドを固定光学系でなくfθレンズを用いたスキャン光学系の加工ヘッド8A(図23参照)にしたことが特徴である。図23において、81はスキャンミラー、82は折り返しミラーである。
【0087】
この第5実施形態の利点としては、(1)スキャン光学系にすることにより、加工光学系を固定させることができ、スクライブ加工ライン方向やこれに垂直方向への微小移動ステージ(ピッチ間隔調整用)が不要になる。そのため構成が単純化され、コスト的にも低く抑えることが可能となること、(2)スキャン光学系は高速スキャンが可能であるため、測定したデータを高速に加工して反映でき、オンザフライ加工も可能になり、加工時間を短縮することがでるほか、オンザフライ加工させると、ライン毎にピッチ送りさせることがなく、連続的に移動させることが可能になるため、加工速度が短縮できる利点もある(図24参照)。
【0088】
補正処理プログラムの構成を示すフローチャート(その1)が図24に、同(その2)が図25にそれぞれ示されている。
【0089】
図24において処理が開始されると、まず、歪み補正有りの加工モードを選択するか、それとも歪み補正なしの加工モードを選択するかの判定が行われる。
【0090】
ここで、オペレータによる所定の選択操作に応答して、歪み補正なしと判定されると(ステップ101NO)、ステップ114へと進んで、スクライブライン歪み補正なしによる加工モードへの移行が行われる。続いて、図25へ移って、主ステージは加工スタート位置へと移動し(ステップ115)、最初のスクライブラインに関して、歪み補正なしのスクライブ加工が行われる(ステップ116)。ここで、歪み補正なしのスクライブ加工とは、図8の真ん中の列に示されるように、集電孔の配列軌跡は無視して、設計通りのスクライブラインに従って、搬送路を横断するように、これと直交方向にスクライブラインを加工する。以後、同様にして、最後のスクライブラインに至るまで(ステップ117NO)、隣接スクライブラインへと移動しては、搬送路と直交する方向へのスクライブラインの加工が行われ、最後のスクライブラインまで到達するのを待って(ステップ117YES)、処理は終了する。
【0091】
これに対して、図24へ戻って、歪み補正有りと判定されると(ステップ101YES)、加工モードはスクライブライン歪み補正有りへと設定され、以後、歪み補正有りモードにおけるスクライブラインの加工処理が実行される。
【0092】
まず、最初のスクライブラインから始まると(ステップ103YES)、カメラ9を読み取り測定位置へと移動した後(ステップ104)、最初のスクライブラインに関して、実際の集電孔3の位置と基準位置(光軸中心)との誤差から歪み測定を行い、データの蓄積を行う(ステップ105)。しかる後、加工ヘッド8を、加工スタート位置へと移動した後(ステップ106)、最初のスクライブラインに関し、1本目の歪みデータを反映して、スクライブラインの加工を行う。
【0093】
ここで、図8の一番右の列に示されるように、歪み補正有りの場合、集電孔の配列軌跡に沿うようにして、これと所定距離d0,d11,d21,d31だけ離して、スクライブラインの加工を行う。
【0094】
以後、2本目以降のスクライブラインに関しては、加工方法Aと加工方法Bとの2つの選択肢が存在する。ここで、加工方法Aが選択されると(ステップ108A)、2本目以降のスクライブライン歪み測定を行った後、2本目以降のデータの蓄積を行い(ステップ109)、蓄積データによる補正値でのスクライブラインの加工処理が行われる(ステップ110)。
【0095】
これに対して、加工方法Bが選択されると(ステップ108B)、2本目以降のスクライブライン歪みの測定を行った後(ステップ112)、2本目以降は前のスクライブラインの歪みデータに従った補正値でのスクライブラインの加工処理が実行される(ステップ113)。
【0096】
そして、以上の加工方法A又は加工方法Bによる処理が、最後のスクライブラインに達するまで(ステップ111NO)、繰り返され、最後のスクライブラインに達するのを待って(ステップ111YES)、処理は完了する。
【0097】
このように、この補正処理プログラムによれば、歪み補正有りと歪み補正なしとの2つの選択肢が存在することに加え、歪み補正有りが選択された場合にあっては、最初のスクライブライン以降、加工方法A又は加工方法Bの2つの選択肢が存在する。
【0098】
そして、歪み補正なしを選択すれば、図8の中央の図に示されるように、実際の集電孔3の配列軌跡とは関わりなく、設計値通りに搬送方向と直交する方向へと直線的にスクライブラインが加工される。これに対して、歪み補正有りが選択された場合には、集電孔列の配列軌跡に沿って、曲線的にスクライブラインが加工される。このとき、加工方法Aが選択されれば、蓄積データによる補正値での加工が行われるのに対し、加工方法Bが選択されれば、2本目以降のスクライブラインについては前のスクライブラインの歪みデータに従った補正値での加工処理が行われる。
【0099】
最後に、以上各実施形態に共通な補足事項について述べることとする。
[加工速度と処理速度との関係]
加工速度(パターニング加工速度)は、Qスイッチパルスレーザを用いて加工するため、図26及び図27に示されるように、
・Qスイッチ周波数:F[Hz]
・レーザ光の移動速度(加工ヘッド移動ステージ速度):V[mm/s]
とすれば、
・加工ピッチ(バイトサイズ)d:V/F[mm]
ここで、図26にあるように、レーザ加工点のスポット径に対して、バイトサイズは大きい必要がある。
【0100】
通常の加工では、スポット径はオーバラップ率90%程度で太陽電池のような薄膜に対する加工でも50%程度は重ねながら加工する。スポット径は、必要とされるスクライブ加工幅で決定されるので、FとVの関係は、どちらか一方が決定されれば、自動的に決定される。
【0101】
実際の例では、通常のレーザの場合、Qスイッチ周波数は、必要とされるピークパワーあるいは平均出力によって、選択する範囲が決まってくる。たとえば30[kHz]とする。太陽電池のスクライブ加工幅は100μm程度を要求されるので、オーバラップ33%とすれば、バイトサイズd=67μmとなるので、加工速度は2010[mm/s][V=Fd=30[kHz]×67[μm]=2010[mm/s]]となる。加工ステージは約2[m/s]の高速さが必要となる。
【0102】
加工速度が2[m/s]とあるとすれば、中間品シートの幅(実際のスクライブ加工する長さ)が1[m]である場合、スクライブ加工に要する時間は図28のように試算される。
【0103】
このように、各スクライブラインが0.8[s]で終了するので、1ライン先読みしながら加工する例では、少なくとも1ライン分の位置ずれの読み取り時間(第1実施形態では6台の固定カメラでの読み取り時間)+これらのズレ情報による隣のラインの下降補正データ作り+隣のラインまでの加工ヘッド移動時間までを0.8[s]以内で全て終了させる必要がある。実際にはマージン等が必要になるので、半分の0.4[s]程度で終了させることが必要となる。
【0104】
[フライングスポットのメリット(戻り加工)]
フライング加工の方法は、2つ存在する。その第1の方法は、既に第5実施形態で説明したように、中間品シートをゆっくりと動かしながらオンザフライで加工する方法である。これに対して、第2の方法は、中間品シートについては固定しておき、スクライブ加工方向の移動ステージ上にスキャナを搭載して、オンザフライ加工する方法である。これを図28に示す。
【0105】
第2の方法であるオンザフライの加工の利点としては、(1)ガルバノスキャンのような高速スキャン可能な駆動系を使用することにより、第1〜第4実施形態のように、加工ヘッドを小型のリニアステージでドライブする方式では高速駆動が困難であるが、ガルバノタイプのスキャナを使用すれば、簡単にXY2軸の高速ポジショニングが可能であるため、より遅れの少ない補正が可能になる上、安価な構成にもできること、及び(2)ガルバノスキャナは、リニアステージに搭載されているので、実際の加工速度は、リニアステージ走査速度+ガルバノ走査速度となり、スクライブ加工速度を2[m/s]にする場合、ガルバノスキャン速度を1[m/s]とすれば、リニアステージは最高速度1[m/s]でよくなり、より小型で安価なリニアステージが選択できること、等を挙げる。
【0106】
第2の方法であるオンザフライ加工で、もう1つの利点としては、ステージの加減速領域のバイトサイズ制御を行うことによって、加減速領域をなくすることが可能になることである。図29に示されているように、適当な一定周期のレーザパルスを照射してパルス光を残した様子、加減速領域は等速で移動しないので、レーザの周波数が一定ではピッチ間隔が異なってしまう(図29参照)。従って、実際の中間品シートにスクライブ加工する場合は、この等速領域のところで加工する必要がある。即ち、加減速領域は助走領域となり、装置が大型化し、コストも上がる結果となる。できるだけこの助走期間を短くしたいが、使用するモータのトルクの大きなものを使用する必要があるばかりか、加減速度を大きくすることにより各ガイドに対する負荷が大きくなるため寿命低下につながるほか、振動が大きくなり、加工精度の悪化や除震ユニットの必要性などの問題が発生する。
【0107】
[固定光学系を使用した場合(バイトサイズ制御時)]
加減速領域においても、レーザ照射されたパルス痕のピッチ間隔が等間隔になるように、加減速領域においてレーザパルス発振の繰り返し周波数を変化させる(これをバイトサイズコントロールと称する)。
【0108】
バイトサイズ制御は、リニアスケールから発せられる位置信号(絶対座標やパルス数)を用いて、設定された長さ単位にトリガを発し、このトリガでレーザを出射させるような制御である。ステージの速度に依らないで、設定された間隔でレーザ照射が行われる。
【0109】
バイトサイズ制御方法を用いると、レーザは一定間隔で正確に照射されるので、加減速領域でも等速運動領域でも関係なく等ピッチでレーザ照射される。しかしながら、図30にあるように、加減速領域でレーザ発振の繰り返し周波数が変化する。
【0110】
しかしながら、図30にあるように、加減速領域でレーザ発振の繰り返し周波数が変化する。Qスイッチレーザ発振器では、レーザのパルス繰り返しが変化すると、ピークパワーが大きく変化する。Nd,YAGレーザの例では、5kHz以下の低繰り返しにおいて、2kHz程度まで加速的にピーク出力が大きくなる。実際の加工では、加速時のスタート部、減速時の最後のところでピーク出力が大きくなり、加工が深くなったり、太くなったりして加工不具合を起こす。このため、レーザ強度が変化しても加工状態が大きく変化しない薄膜加工等でしか適用できない場合が多い。
【0111】
[ガルバノスキャン光学系を使用した場合]
通常のリニアステージで設けられる加減速領域をなくしても、高速移動が可能なガルバノスキャン光学系を用いることにより、バイトサイズ制御でトータル速度を一定とすることができる。結果として、リニアステージの加減速制御に支配されずに、レーザ照射されたパルス痕のピッチ間隔が等間隔になるようなバイトサイズ制御が可能になる。
【0112】
図31では例として、リニアステージの最高速度(等速)とガルバノスキャナの等速領域での速度が同じ速度とした例である。
【0113】
この場合は、スキャナ速度はスタート後減速しながら等速になる制御となるため、Qスイッチレーザのピークパルスはスタート時が最も低いピークパワーで、等速になったとき最大のピークパワーとなる。本例のようにガルバノ速度をリニアステージ速度と同程度であればピークパワーの差異も小さくできる。すなわち加減速領域でなくても等ピッチ間隔にできる。
【0114】
[一次元CCDの活用]
ズレはフレキシブルシートを引っ張る方向に伸びる量が大きいと考えられるので、二次元CCDの代わりに、大きく伸びる方向の一次元CCDを用いてズレ量を測定する実施を追加しても構わない。但し、二次元CCDの場合は画像をモニタして、この画像を画像処理して目的とする穴形状や線を測定する。これに対して、一次元CCD(リニアCCD)は図32のように表面形状の測定に用いられる。
【0115】
本方法はフレキシブルシートのパターン等が上面に処理されていて、通常の(二次元)CCDカメラでは明確の像が得られない場合、図32のような高さをレーザ測長器で精密に測定することにより、パターン部の盛り上がりにより測定できる利点がある。但し、測定のためにレーザ測長器ユニットをスキャンしなければいけないため、測定時間は非常に長くなる欠点もある。
【0116】
[穴のずれ量の実寸法]
これはプロセス方法(温度/湿度)やフレキシブルシートの厚み、種類により、大きく異なる。材料がポリイミドの場合は、図33にあるように250℃で0.1%程度の伸縮があるので、1m長の場合は、1mmの伸縮がある。レーザプロセス時には特に加熱させるプロセスはないので、10〜100μm程度の伸縮となる。応力をかけることにより、機械的な伸縮も加わるから、さらに値は増える場合がある。
【0117】
[レーザ波長]
レーザ波長は、Nd:YAGレーザの場合、基本波(1064nm)、第2高調波(532nm)、第3高調波(355nm)、第4高調波(266nm)のいずれかの波長あるいは複数の波長を切り換えて使用するシステムとなる。
【0118】
レーザがNd:YAGレーザと異なるレーザの場合、たとえばNd:YLFレーザの場合は、基本波が1053nmまたは1047nmとなり、第2〜第4高調波が同様に使用される。その他の発振波長を有する種類のレーザが使用される場合があっても同じである。Qスイッチレーザ固体レーザの代表的な特性(Nd:YAGレーザの場合)を図34に示す。
【0119】
レーザはCW、Q−SW発振あるいはモードクロック発振、モードクロックQ−SW発振の形態が利用される。説明ではパルスレーザでの場合を示したが、CW発振のレーザでの加工もあり得る(露光用のパターニング等)。
【0120】
ステージはリニアスケール付きのものであって、スケールで正確な位置情報を得て、目的とする観察/加工位置を得る方式を用いる。第5実施形態のようにオンザフライ加工する場合は、リニアスケールの位置情報を元にスキャナを同期制御させるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、シート状乃至プレート状の基材に対して、成膜工程とスクライブ加工工程とを交互に施すことにより、シート状乃至プレート状の多層デバイスを製造するときに使用することができる。
【符号の説明】
【0122】
1 載物台
2 中間品シート
3 集電孔
4a,4b X方向主ガイド
5 主ステージ
5a 開口
6a,6b Y方向ガイド
7 副ステージ
8 加工ヘッド
8A 加工部
9 カメラ
9A 読み取り部
9a 光軸
9b 視野
10 同軸観察カメラ付きの加工ヘッド
11 ホルダ
R1 繰り出しローラ
R2 巻き取りローラ
R3 テンションローラ
ST 加工ステーション
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシート状乃至プレート状の基材に対して、成膜工程とスクライブ加工工程とを交互に施すことにより、シート状乃至プレート状の多層デバイスを製造するときに使用されるレーザスクライブ加工方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状乃至プレート状の基材に対して、成膜工程とスクライブ加工工程とを交互に施すことにより、シート状乃至プレート状の多層デバイスを製造するといった製造方法は、例えば、ポリイミドフィルムを基材として使用するソフトタイプの薄膜太陽電池、ガラス板を基材として使用するハードタイプの薄膜太陽電池などに採用される。
【0003】
薄膜太陽電池(ソフトタイプ)の製造工程図が図35に示されている。同図(a)〜(h)に示されるように、この薄膜太陽電池(ソフトタイプ)の製造工程は、ポリイミドフィルム基板を用意する工程と、スルーホールなどのためのパンチ穴を開ける工程と、裏面、背面Agとなる電極をスパッタリングする工程と、裏面電極のパターニングを行う工程と、α−SiのCVD膜を生成する工程と、TCO膜のスパッタリングを行う工程と、TCO及びα−Siのパターニングを行う工程と、背面電極のパターニングを行う工程とを含んでいる。
【0004】
上述の工程の中で、同(d)に示される裏面電極のパターニング工程と同図(g)に示されるTCO、α−Si膜のパターニング工程において、正しいスクライビング加工が行われた場合を図36に示す。
【0005】
同図に示されるように、Ag電極膜が形成された段階で、裏面電極のパターニング工程が行われると、400μm幅のスクライブ線201が形成される。こうして形成されたスクライブ線201の上には、同図(b)に示されるように、TCO膜及びα−Si膜がそれぞれ成膜される。そして、それら2層膜体の上には、同図(c)に示されるように、さらなるパターニング処理が行われ、その結果、裏面電極のパターニング処理で形成されたスクライブ線201のほぼ中心位置に、100μm幅のスクライブ線202が形成される。
【0006】
ところで、この種の薄膜太陽電池(ソフトタイプ)の製造工程は、一方のローラから送り出されたシートを他方のローラで巻き取るといった、いわゆるロール・ツー・ロール方式で行われることから、搬送中の中間品シートは搬送途中で引っ張られることから、局部的に歪みが生じて伸び縮みするほか、製造環境下における温度や湿度も微妙に異なることから、それらの熱応力によっても局部的に歪みが生じ、実際、搬送方向には0.2%程度の伸縮が発生すると言われている。
【0007】
不良のスクライビング加工の一例を示す説明図が図37に示されている。この例にあっては、裏面電極のパターニング時点における中間品シートの歪みと、TCO、α−Si膜のパターニング工程時の中間品シートの歪みとは大きく異なる。そのため、裏面電極のパターニングで形成されたスクライブ線201とTCO、α−Si膜のパターニング工程で形成されたスクライブ線202とは軸心整合しない。このような事態が生ずると、電流がリークしてしまい、太陽電池としては不良品として廃棄せざるを得ない。
【0008】
次に、薄膜太陽電池(ハードタイプ)の製造工程図が図38に示されている。同図(a)〜(g)に示されるように、この薄膜太陽電池(ハードタイプ)の製造工程は、ガラス板を用意する工程と、TCO膜を蒸着する工程と、TCOのパターン化のためにレーザスクライブを行う工程と、a−Siの蒸着工程と、a−Si膜のパターン化のためにレーザスクライブを行う工程と、シリコン側に金属を蒸着する工程と、金属の蒸着膜をパターニングのためにレーザスクライブする工程とを含んでいる。
【0009】
スクライビング加工の一例を示す説明図が図39に示されている。同図に示されるように、TCOのパターン化、シリコンの蒸着のパターン化、金属の蒸着のパターン化のそれぞれを行った場合、TCO膜上のスクライブ線とシリコン蒸着膜上のスクライブ線との距離L1並びに、シリコン蒸着膜上のスクライブ線と金属の蒸着膜上のスクライブ線との距離L2は、不要な領域(全体効率の低下)であるため、できるだけ短いことが好ましい。
【0010】
しかし、薄膜太陽電池(ハードタイプ)にあっても、実際には製造工程中における局部的な温度差や湿度差などから応力歪みが生ずるため、実際、上述の距離L1,L2を許容幅以内に抑えることができない場合も生ずる。
【0011】
以上、一例として、ソフトタイプ及びハードタイプの薄膜太陽電池で説明したように、シート状乃至プレート状の基材に対して、成膜工程とスクライブ加工工程とを交互に施すことにより、シート状乃至プレート状の多層デバイスを製造する方法にあっては、製造工程中に生ずる熱応力や機械的応力などによって各スクライブ加工工程における基材の歪み量に相違が生ずると、2以上のスクライブ加工工程のそれぞれにおいて形成されるスクライブ線同士の位置的相関を設計通りの位置的相関に維持することが難しく、その結果、2以上のスクライブ加工工程のそれぞれにおいて形成されるスクライブ線同士の位置的相関が、設計通りの位置的相関から大きく異なった場合、デバイスの効率が大きく低下したり、あるいは不良品が発生するなどの問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−233517号公報
【特許文献2】特開2002−252360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、従来のシート状乃至プレート状の基材に対して、成膜工程とスクライブ加工工程とを交互に施すことにより、シート状乃至プレート状の多層デバイスを製造する方法にあっては、製造中に生ずる熱応力や機械的応力によって、各スクライブ加工工程における基材の縮み量に大きな違いが存在すると、2以上のスクライブ加工工程のそれぞれにおいて形成されるスクライブ線同士の位置的相関を設計通りの位置的相関に維持することが困難となり、その結果完成されたデバイスは著しく効率が悪かったり、あるいは使用不能な不良品となるといった問題点があった。
【0014】
この発明は、上述の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、シート状乃至プレート状の基材に対して、成膜工程とスクライブ加工工程とを交互に施すことにより、シート状乃至プレート状の多層デバイスを製造する方法において、各スクライブ加工工程における基材の歪み量が、製造工程中の熱応力や機械的応力を原因として大きく異なるものであったとしても、2以上のスクライブ加工工程のそれぞれにおいて形成されるスクライブ線同士の位置的相関を設計通りの位置的相関に維持することを可能としたスクライブ加工方法及び装置を提供することにある。
【0015】
この発明のさらに他の目的並びに作用効果については、明細書の以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の発明が解決しようとする課題は以下の構成を有するスクライブ加工方法によって解決することができると考えられる。
【0017】
すなわち、このスクライブ加工方法は、シート状乃至プレート状の基材に対して、成膜工程とスクライブ加工工程とを交互に施すことにより、シート状乃至プレート状の多層デバイスを製造するときに使用されるレーザスクライブ加工方法である。
【0018】
この方法は、1の成膜工程が完了した中間品シート乃至プレート状から、前記基材に直接に刻設されたパンチ孔やアライメントマーク等の位置合わせシンボルの位置を光学的に検出するステップと、前記シンボルの検出された位置と、前記シンボルの位置とそれに対応するスクライブ線上の位置との設計上の位置関係とに基づいて、設計上のスクライブ加工位置を補正するステップと、前記補正後のスクライブ加工位置に対してレーザ光を照射してスクライブ線を形成するステップとを含むことを特徴とするものである。
【0019】
このような構成によれば、製造工程中に生ずる機械的応力や熱応力などによって、各スクライブ加工工程における基材の歪み量が大きく異なったとしても、スクライブ加工処理それ自体は、前記シンボルの検出された位置と、前記シンボルの位置とそれに対応するスクライブ線上の位置との設計上の位置関係とに基づいて、設計上のスクライブ加工位置を補正したスクライブ加工位置に対してレーザ光を照射して行われるため、各スクライブ加工工程における前記基材の歪み量の如何に拘わらず、2以上のスクライブ加工工程のそれぞれにおいて形成されるスクライブ線同士の位置的相関を設計通りの位置的相関に維持することが可能となり、完成された多層デバイスの効率が低下したり、不良品となる確率を可及的に低減することができる。
【0020】
上述の方法において、前記多層デバイスが、長尺シート状の薄膜太陽電池であって、前記位置合わせ用のシンボルが、集電孔となるべく前記シート状基材上に一列に並んだパンチ孔であり、さらに前記交互に施される成膜工程とスクライブ加工工程とが、第1の成膜工程である裏面電極のスパッタリング工程と、第1のレーザスクライブ工程である裏面電極のパターニング工程と、第2の成膜工程であるセル膜のCVD工程及び表面電極のスパッタリング工程と、第2のレーザスクライブ工程であるセル膜及び表面電極のパターニング工程とを含むものであれば、前記各スクライブ加工工程における基材の歪み量の如何に拘わらず、裏面電極上のスクライブ線と表面電極上のスクライブ線とが軸心整合することとなり、上述の電流リークの問題を未然に防止することができる。
【0021】
また、上述の方法において、前記多層デバイスが、板状の薄膜太陽電池であって、前記位置合わせ用のシンボルが、集電穴となるべく前記シート状基材上に一列に並んだパンチ孔であり、さらに、前記交互に施される成膜工程とスクライブ加工工程とが、第1の成膜工程である裏面電極のスパッタリング工程と、第1のレーザスクライブ工程である裏面電極のパターンニング工程と、第2の成膜工程であるセル膜の蒸着工程と、第2のレーザスクライブ工程であるセル膜のパターニング工程と、第3の成膜工程である表面側の電極蒸着工程と、第3のレーザスクライブ工程である表面電極のパターニング工程とを含むものであれば、前記各スクライブ加工工程における前記基材の歪み量の如何に拘わらず、裏面電極上のスクライブ線と表面電極上のスクライブ線との間に存在する不要領域の面積を所定値以下に維持することが可能となり、完成されたデバイスの歩留まりを向上させることができる。
【0022】
上述の発明が解決しようとする課題は、以下の構成を有するレーザスクライブ加工装置によっても解決することができる。
【0023】
このレーザスクライブ加工装置は、その幅方向に沿って多列に集電孔が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用されるレーザスクライブ加工装置である。
【0024】
そして、このレーザスクライブ加工装置には、前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シートが載置可能な載物台を有する加工ステーションと、前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージと、前記主ステージ上にあって、前記製造ラインの幅方向へと走行可能な副ステージと、前記副ステージ上にあって、前記製造ラインの長手方向へと所定ストロークで移動可能に取り付けられ、かつそのレーザ出射口を前記載物台上に載置固定された中間品シートに向けられたレーザパターニング用の加工ヘッドと、前記主ステージ上にあって、前記副ステージの走行ラインよりも、前記主ステージのスクライブ動作時の走行方向前方側の領域に、前記製造ラインの幅方向へと適宜間隔をおいて分散配置され、それぞれ前記中間品シート上の集電孔一列分の視野の一部を分担する複数個の固定カメラとを有し、それにより、前記複数の固定カメラのそれぞれから得られる画像を画像処理することで、各固定カメラ位置における実集電孔のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のヘッドの製造ライン方向の移動を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成したことを特徴とするものである。
【0025】
このような構成によれば、予め複数の固定カメラによって集電孔列の画像を取得し、それらに基づき複数の点のズレ量を求めることができるから、これらのズレ量に基づいて設計上のスクライブ線を補正することにより、制御を負担するコンピュータにおいては、画像処理や演算処理に煩わされることなく、スクライブ加工のためのビーム照射点制御に専念することができる。
【0026】
このとき、前記複数個の固定カメラが、低熱膨張材からなるホルダを介して前記主ステージに取り付けられていれば、製造環境下における温度管理が厳しい場合であっても、各カメラの基準となる光軸ズレを最小にとどめ、スクライブ線の補正精度を向上させることができる。
【0027】
上述の発明が解決しようとする課題は、以下の構成を有するレーザスクライブ加工装置によっても解決することが考えられる。
【0028】
すなわち、このレーザスクライブ加工装置は、その幅方向に沿って多列に集電孔が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用されるレーザスクライブ加工装置である。
【0029】
そして、このレーザスクライブ加工装置には、前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シートが載置可能な載物台を有する加工ステーションと、前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージと、前記主ステージ上にあって、前記製造ラインの幅方向へと走行可能な副ステージと、前記副ステージ上にあって、前記製造ラインの長手方向へと所定ストロークで移動可能に取り付けられ、かつそのレーザ出射口を前記載物台上に載置固定された中間品シートに向けられたレーザパターニング用の加工ヘッドと、前記副ステージ上にあって、前記製造ラインの幅方向へと、前記レーザパターニング用のヘッドと一体に移動する1個のカメラとを有し、それにより、前記カメラから得られる画像を画像処理することで、前記カメラの前記製造ラインの幅方向各位置における実集電孔のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のヘッドの製造ライン方向の移動を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成したことを特徴とするものである。
【0030】
このような構成によれば、制御のためのコンピュータとしては高速処理を求められるものの、画像を取得するためのカメラは1台で済むため、コンパクトかつ低コストに製作できる利点がある。
【0031】
このとき、前記単一のカメラが、スクライブ加工動作時における移動中、前記加工ヘッドの進行方向において所定距離下流側に配置されていれば、加工ヘッドが進行するに先立って、早めに進行する位置の画像情報が取得されるため、補正に必要なズレ量を取得するための画像処理に十分な余裕が生まれ、スクライブラインの補正処理に必要なコンピュータとして、さほど高速処理を必要としなくても済むという利点がある。
【0032】
上述の発明が解決しようとする課題は、以下の構成を有するレーザスクライブ加工装置によっても解決することができると考えられる。
【0033】
すなわち、このレーザスクライブ加工装置は、その幅方向に沿って多列に集電孔が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用されるレーザスクライブ加工装置である。
【0034】
そして、このレーザスクライブ加工装置には、前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シートが載置可能な載物台を有する加工ステーションと、前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージと、前記主ステージ上にあって、前記製造ラインの幅方向へと走行可能な副ステージと、前記副ステージ上にあって、前記製造ラインの長手方向へと所定ストロークで移動可能に取り付けられ、かつそのレーザ出射口を前記載物台上に載置固定された中間品シートに向けられたレーザパターニング用の加工ヘッドと、前記副ステージ上にあって、前記製造ラインの幅方向へと、前記レーザパターニング用のヘッドと一体に移動する複数個のカメラとを有し、それにより、前記カメラから得られる画像を画像処理することで、前記カメラの前記製造ラインの幅方向各位置における実集電孔のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のヘッドの製造ライン方向の移動を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成したことを特徴とするものである。
【0035】
このような構成によれば、複数のカメラを加工ヘッドと同時に移動させながら、各カメラ位置におけるズレ量を補正しつつ、補正されたスクライブ線に基づいてスクライブ加工を行うものであるから、前記単一カメラの場合に比べ、一括取得できる画像データの量が増し、その分だけ画像処理を早めに済ますことによって、制御に必要なコンピュータをスクライブ加工上のビーム制御に専念させることができ、全体としてさほど処理速度を要求しないコンピュータによって、余裕をもって処理を実現できる利点がある。
【0036】
このとき、前記複数個のカメラが、スクライブ加工動作時における移動中、前記加工ヘッドの進行方向において所定距離下流側に配置されていれば、より一層画像データの取得を早めに行うことができ、コンピュータの処理に余裕が生まれることとなる。
【0037】
上述の発明が解決しようとする課題は、以下の構成を有するレーザスクライブ加工装置によっても解決することができる。
【0038】
すなわち、このレーザスクライブ加工装置は、その幅方向に沿って多列に集電孔が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用されるレーザスクライブ加工装置である。
【0039】
そして、このレーザスクライブ加工装置には、前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シートが載置可能な載物台を有する加工ステーションと、前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージと、前記主ステージ上にあって、前記製造ラインの幅方向へと走行可能な副ステージと、前記副ステージ上にあって、前記製造ラインの長手方向へと所定ストロークで移動可能に取り付けられ、かつそのレーザ出射口を前記載物台上に載置固定された中間品シートに向けられた同軸観察カメラ付きのレーザパターニング用の加工ヘッドとを有し、それにより、前記カメラから得られる画像を画像処理することで、前記カメラの前記製造ラインの幅方向各位置における実集電孔のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のヘッドの製造ライン方向の移動を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成したことを特徴とするものである。
【0040】
このような同軸観察カメラ付きのレーザパターニング用の加工ヘッドによれば、レーザ加工と画像取得とを同時に行うことはできないものの、それらの処理を同一の視野をもって行うことができるため、設計上のスクライブラインに対する補正の精度を向上させることができる。
【0041】
上述の発明が解決しようとする課題は、以下の構成を有するレーザスクライブ加工装置によっても解決できると考えられる。
【0042】
すなわち、このレーザスクライブ加工装置は、その幅方向に沿って多列に集電孔が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用されるレーザスクライブ加工装置である。
【0043】
このレーザスクライブ加工装置は、前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シートが載置可能な載物台を有する加工ステーションと、前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージと、前記主ステージ上にあって、前記載物台上に載置固定された中間品シートに向けられた出射光軸を、前記製造ラインの幅方向及び長手方向へとそれぞれ所定ストロークで首振り可能としたレーザパターニング用の加工ヘッドと、前記主ステージ上にあって、前記副ステージの走行ラインよりも、前記主ステージのスクライブ動作時の走行方向前方側の領域に、前記製造ラインの幅方向へと適宜間隔をおいて分散配置され、それぞれ前記中間品シート上の集電孔一列分の視野の一部を分担する複数個の固定カメラとを有し、それにより、前記複数の固定カメラのそれぞれから得られる画像を画像処理することで、各固定カメラ位置における実集電孔のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のヘッドの光軸首振り角度を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成したことを特徴とするものである。
【0044】
このような構成によれば、進行方向前方にある一列分の集電孔列に関する画像を一括して短時間で取得しこれに基づき設計上のスクライブ線を早期に補正できることに加え、レーザビーム照射位置の移動は、光軸首振り角度の制御によって高速に行うことができるため、これらが相俟って、中間品シートの動きを停止させることなく、これを搬送状態を維持したままで、補正後のスクライブラインに基づいてスクライブ加工を行うことができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、シート状乃至プレート状の基材に対して、成膜工程とスクライブ加工工程とを交互に施すことにより、シート状乃至プレート状の多層デバイスを製造する際に、前記各スクライブ加工工程における前記基材の歪み量に大きな違いがあったとしても、スクライブ線の加工処理は、光学的に検出された位置合わせ用シンボルの位置と、前記シンボルの位置とそれに対応するスクライブ線上の位置との設計上の位置関係とに基づいて、設計上のスクライブ加工位置を補正すると共に、この補正されたスクライブ加工位置に対してレーザ光を照射してスクライブ線を形成するから、2以上のスクライブ加工工程のそれぞれにおいて形成されるスクライブ線同士の位置的相関を設計通りの位置的相関に維持することができ、これにより完成されたデバイスの効率を低下させたり、不良品が発生する虞れを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】加工対象シートの搬送形態を示す説明図である。
【図2】加工対象シートと加工ステーションとの関係を示す説明図である。
【図3】本発明装置の第1実施形態の平面図である。
【図4】本発明装置の第1実施形態の側面図である。
【図5】第1実施形態における補正原理の説明図(その1)である。
【図6】第1実施形態における補正原理の説明図(その2)である。
【図7】補正原理の説明図(その3)である。
【図8】加工対象シートの歪みによるスクライブ位置のずれの説明図である。
【図9】第1実施形態の変形例を示す平面図(その1)である。
【図10】第1実施形態の変形例を示す平面図(その2)である。
【図11】本発明装置の第2実施形態の平面図である。
【図12】本発明装置の第2実施形態の側面図である。
【図13】CCDカメラと加工ヘッドとの位置関係を示す説明図である。
【図14】本発明装置の第3実施形態を示す平面図である。
【図15】本発明装置の第3実施形態を示す側面図である。
【図16】補正原理の説明図である。
【図17】加工ヘッドとカメラとの位置関係を示す説明図である。
【図18】本発明装置の第4実施形態を示す平面図である。
【図19】本発明装置の第4実施形態を示す側面図である。
【図20】加工ヘッドの光学系を示す説明図である。
【図21】本発明装置の第5実施例形態の平面図である。
【図22】本発明装置の第5実施例形態の側面図である。
【図23】加工ヘッドの光学系を示す構成図である。
【図24】補正処理プログラムの構成を示すフローチャート(その1)である。
【図25】補正処理プログラムの構成を示すフローチャート(その2)である。
【図26】加工速度と処理速度との関係の説明図(その1)である。
【図27】加工速度と処理速度との関係の説明図(その2)である。
【図28】フライングスポットのメリットの説明図である。
【図29】固定光学系を使用した場合(バイトサイズ制御なし)の作用説明図である。
【図30】固定光学系を使用した場合(バイトサイズ制御あり)の作用説明図である。
【図31】ガルバノスキャン光学系を使用した場合の作用説明図である。
【図32】一次元CCDの使用例を示す説明図である。
【図33】孔のずれ量の実寸法の説明図である。
【図34】Qスイッチレーザ固体レーザの代表的な特性(Nd:YAGレーザの場合)を示すグラフである。
【図35】薄膜太陽電池(ソフトタイプ)の製造工程図である。
【図36】正しいスクライビング加工の一例を示す説明図である。
【図37】不良のスクライビング加工の一例を示す説明図である。
【図38】薄膜太陽電池(ハードタイプ)の製造工程図である。
【図39】スクライビング加工の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下に、本発明方法及び装置の好適な実施の一形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。ここで述べる実施形態は、本発明をソフトタイプの薄膜太陽電池に応用したものである。
【0048】
[第1実施形態]
加工対象シートの搬送形態を示す説明図が図1に示されている。同図に示されるように、本発明における加工対象シートは、繰り出しロールR1と巻取りロールR2とテンションロールR3などからなるロール機構をもって搬送される、いわゆるロール・ツー・ロール方式により搬送されるものであり、こうして実現される搬送路の途中に、図2に見られるような所定長さの加工ステーションSTが設けられ、この加工ステーションSTにおいて、本発明に係るスクライブ加工方法及び装置が実現される。
【0049】
なお図2において、3は搬送される中間品シート2のその幅方向に沿って多列にかつ一面に配置された集電孔となるパンチ孔である。当業者にはよく知られているように、この種のソフトタイプの薄膜太陽電池においては、シートの長手方向に区分されて形成された各独立するセルとセルとの間を直並列に結んで電流容量を確保するためこのような多数の集電孔3を必要とするものであり、これらの集電孔3は、先に説明したように、製造段階の最初の工程において、ポリイミドフィルム基材上にパンチ孔加工される。このパンチ孔3は、.製造開始から最終段階まで、確かな位置合わせ用の基準として用いることができる。
【0050】
しかも、搬送中の中間品シート2は、ロール・ツー・ロール方式に起因する局部的な機械的応力を受けて、延びたり縮んだりし、この伸縮の傾向は、長手方向各部において一定とはならないため、図2に誇張して示されるように、様々な方向へと角度を変えて傾斜することとなる。もっとも、図はかなり誇張されて記載されており、現実に目で見た場合には、ほぼ直線に見えることは言うまでもない。
【0051】
本発明装置の第1実施形態の平面図が図3に、同側面図が図4にそれぞれ示されている。それらの図から明らかなように、この第1実施形態に係るスクライブ加工装置は、その幅方向に沿って多列に集電孔3が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用されるものである。
【0052】
そして、このレーザスクライブ加工装置には、前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シート2が載置可能な載物台1を有する加工ステーションSTと、前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージ5と、前記主ステージ5上にあって、前記製造ラインの幅方向へと走行可能な副ステージ7と、前記副ステージ7上にあって、前記製造ラインの長手方向へと所定ストロークで移動可能に取り付けられ、かつそのレーザ出射口を前記載物台1上に載置固定された中間品シート2に向けられたレーザパターニング用の加工ヘッド8と、前記主ステージ5上にあって、前記副ステージの走行ラインよりも、前記主ステージ5のスクライブ動作時の走行方向前方側の領域に、前記製造ラインの幅方向へと適宜間隔をおいて分散配置され、それぞれ前記中間品シート2上の集電孔1列分の視野の一部を分担する複数個の固定カメラ9とを有する。
【0053】
なお図において、4a,4bは、主ステージを搬送方向へ沿って移動可能とするための左右のガイドレール、6a,6bは副ステージ7を主ステージ5上に、搬送方向と直交する方向へと移動可能とするための左右のガイドレール、5aは搬送方向と直交する方向へと加工ヘッド8を移動可能とするための開口、10は複数台のカメラを主ステージに固定するための低線膨張材からなるホルダである。
【0054】
なお、当業者にはよく知られているように、主ステージ5、副ステージ7、加工ヘッド8を直線的に駆動するためには、ボールネジ機構やリニアモータを利用することができる。
【0055】
第1実施形態における補正原理の説明図(その1)〜(その3)が図5〜図8に示されている。それらの図から明らかなように、まず、この第1実施形態においては、複数台のカメラ9からその直下周辺の一定の視野内の画像を一括して取得する。図7に示されるように、カメラ9はその光軸9aを真下に向けるように装着されており、従って、その視野9bに集電孔3が存在すれば、光軸1とその集電孔3との距離はそのままその地点における集電孔3の設定値からの誤差δとして直ちに測定することができる。図6に示されるように、このようにして複数台(この例では7台)のカメラから、画像処理によって各地点の誤差をそれぞれ求めることができる。
【0056】
ここで、図5に示されるように、この例では、カメラは、加工ヘッドの進行方向において、1ピッチ先の集電孔列を読み取るように設定されている。つまり予め1ピッチ先の集電孔列の画像データに基づき、設計上のスクライブ線を補正し、その補正されたスクライブ線に基づき実際のスクライブ加工を行うのである。
【0057】
このスクライブ加工は、中間品シート2の移動を停止し、図示しないバキューム装置で、載物台1へと中間品シート2を吸着固定した状態において、加工対象となる集電孔列3の上に主ステージ5を移動させて固定し、その状態で副ステージ7を搬送ラインと直交する方向へと移動させながら、補正量に応じて、加工ヘッド9を搬送方向へと所定ストロークで進出または後退させることにより、所望の直線または曲線を描きながら、スクライブ加工を行うことができる。
【0058】
加工対象シートの歪みによるスクライブ位置のズレの説明図が図8に示されている。同図において最も左側の図から明らかなように、機械的、温度的理由からなんからの歪みが加工対象となるシートに生ずると、それに応じて、各集電孔3の位置もズレるから、カメラから得られる画像に基づいて画像処理を行うことで、各座標位置X1,X2・・・X7に対応して、それぞれのズレ量δが測定される。
【0059】
今仮に、設計上において、2以上のスクライブ線を重ね、かつ集電孔の配列に沿って引くように決められているとすると、従前の補正を行わないスクライブ線の形成方法では、図8において中央の図に示されるように、直線的にスクライブ線が引かれてしまう。しかし、このとき、それ以前のスクライブ工程で引かれたスクライブ線は、集電孔の配列に沿って曲線を描くよう存在している筈である。したがって、その上に直線的にスクライブ線引いてしまうと、上層と下層のスクライブ線が公差又は接近してしまい、先に説明したような様々な不都合が生ずる。
【0060】
これに対して、本発明にあっては、図8において右側の図に示されるように、設計上のスクライブ線位置は、各位置X1,X2・・・X7のズレ量δと設計上の集電孔の配列ラインと設計上のスクライブ線との距離とに基づいて修正され、結局、新たな修正後のスクライブ線位置は、集電孔の配列に沿いかつそれから所定距離平行に離れたものとなる。そのため、本発明によれば、各スクライブ工程にて引かれるスクライブ線は、上層と下層とのおいて、一定の関係に維持されるから、上下のスクライブ線が交差したり、以上に接近する等の問題を未然に防止することができるのである。
【0061】
このとき、複数台のカメラ9が低膨張材からなるホルダ11によって主ステージ5に固定されていれば、製造環境における温度変化等があったとしても、カメラの光軸中心位置9aがずれることを防止し、高精度を維持することができる。
【0062】
ここで、低膨張材としては、スーパーインバータやセラミック等の低い線膨張係数を有する素材を使用することができる。もっとも、このような低線膨張係数(1μm/℃程度)の素材を用いるとしても、素材の温度管理(±1〜2℃)は必要となるため、もし仮に、環境温度変化がこれ以上ある場合には、恒温化冷却水を流すことで要求される温度を維持することが好ましい。
【0063】
固定カメラ(例えば、CCDカメラ)を使用することによる利点としては、(1)移動させる必要がないため、CCDカメラの数だけ殆ど同時に1台のデータを取り込めること、(2)CCDカメラのベースの膨張を制御すれば高精度が比較的簡単に出せ、しかもこれが維持できること、(3)可動式のCCDカメラ方式であれば、メンテナンスも必要となるが、固定カメラであれば一旦調整すればその後はメンテナンスフリーとなること、(4)CCDカメラを駆動させると制御する軸数が1軸増えるため、コストが大きく上がるばかりでなく、制御が複雑になることによるコストアップにもなること、(5)CCDカメラのデータを一旦保存し、1台の画像処理装置で格納したデータを順番に処理させていけば安価なシステムが構築できること、(6)シート全体のデータを加工前に先に一括で取得する場合、本実施例ではスクライブラインの数だけステージをインデックス送りすればよいが、加工ヘッドとCCDカメラ1台を一体化させている本方式と比較すると、圧倒的に速く処理できる等が挙げられる。
【0064】
第1実施形態の変形例を示す平面図(その1)が図9に示されている。同図に示されるように、上述の複数台の固定カメラを用いる実施例にあっては、これを1個の加工ステーションに、共通の載物台1を利用して加工部8Aを2台以上設け、これにより加工効率を向上させることもできる。
【0065】
第1実施形態の変形例を示す平面図(その2)が図10に示されている。同図に示されるように、上述の複数台の固定カメラを使用する実施形態にあっては、1組の読取部9Aに対して、2組の加工部8A,8Aを設け、さらにそれら全体を共通の載物台に対して2台以上設けるようにしてもよい。このようにすれば、一層、加工効率を向上させることができる。
【0066】
なお、上述の第1変形例は、シートの長さが長い時、マルチヘッド化することで、加工時間の短縮が図られる。また、第2の変形例の場合、例えば1列読み取れば0.5m程度歪み量が大きく変わらない場合、加工部だけを2段にして、加工速度を上昇させることができる。このときシートが長ければ、これをさらに2組設けることで、一層の加工速度の向上が図れる。
【0067】
[第2実施形態]
本発明装置の第2実施形態の平面図が図11に、同側面図が図12にそれぞれ示されている。それらの図から明らかなように、この第2実施形態に係るスクライブ加工装置は、その幅方向に沿って多列に集電孔が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用される。
【0068】
このレーザスクライブ加工装置は、前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シート2が載置可能な載物台を有する加工ステーションSTと、前記製造ラインSTの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージ5と、前記主ステージ5上にあって、前記製造ラインの幅方向へと走行可能な副ステージ7と、前記副ステージ7上にあって、前記製造ラインの長手方向へと所定ストロークで移動可能に取り付けられ、かつそのレーザ出射口を前記載物台上に載置固定された中間品シート2に向けられたレーザパターニング用の加工ヘッド8と、前記副ステージ7上にあって、前記製造ラインの幅方向へと、前記レーザパターニング用のヘッド8と一体に移動する1個のカメラ9とを有し、それにより前記カメラ9から得られる画像を画像処理することで、前記カメラの前記製造ラインの幅方向各位置における実集電孔3のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のヘッド8の製造ライン方向の移動を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成されている。
【0069】
すなわち、この第2実施形態においては、誤差測定用CCDカメラ9は1台で、パターニング加工ヘッド8の駆動ステージである副ステージ7上に搭載されていることが特徴となる。加工ヘッド8の速度に合わせてCCDカメラ9も移動し、基準点と実際の歪み量をオンザフライ(On The Fly)で測定していく。加工ヘッド8の移動速度は最大2m/s程度で駆動するため、データ量を増やす場合、高速シャッタ機能があるものが必要とされるであろう。
【0070】
第1実施形態と比較すると、利点としては、(1)測定部であるカメラ9が移動するため、データの取り込みを自在に変化させることが可能であり、中間品シート2の歪みが複雑である場合、第1実施形態では使用できるカメラの数に限度があるため、データ数が少なくなって、正確な補正ができない場合もあり得るが、この第2実施形態では歪みのひどい所でもデータ取り込み量を増大させて、正確なデータ分析が可能となること、(2)CCDカメラ9は1台であるため、構成が簡素化でき、組立・調整などが簡単であること、(3)データ取り込み条件などを変えられるパラメータが多いため、融通性が高い(後でソフト的な改善等が可能)などを挙げることができる。
【0071】
なお、図示の例では、加工ヘッド8の横方向(中間品シート2の引っ張り方向)の1ライン上流を読み取るように構成したが、図13に示されるように、加工ヘッドの下方向(先読み方向)に設置してもよい。誤差Eが1cmの場合は、加工速度が2[m/s]であっても、5msの遅延時間があるので、リアルタイムOSを用いれば1ms程度で処理できるので、加工ヘッドに誤差信号を与えることができる。
【0072】
[第3実施形態]
本発明装置の第3実施形態の平面図が図14に、同側面図が図15にそれぞれ示されている。それらの図から明らかなように、この第3実施形態に係るレーザスクライブ加工装置は、その方向に沿って多列に集電孔3が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用される。
【0073】
このレーザスクライブ加工装置は、前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シート2が載置可能な載物台1を有する加工ステーションSTと、前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージ5と、前記主ステージ5上にあって、前記製造ラインの幅方向へと走行可能な副ステージ7と、前記副ステージ7上にあって、前記製造ラインの長手方向へと所定ストロークで移動可能に取り付けられ、かつそのレーザ出射口を前記載物台上に載置固定された中間品シート2に向けられたレーザパターニング用の加工ヘッド8と、前記副ステージ7上にあって、前記製造ラインの幅方向へと、前記レーザパターニング用のヘッド8と一体に移動する複数個のカメラ9とを有し、それにより、前記カメラから得られる画像を画像処理することで、前記カメラ9の前記製造ラインの幅方向各位置における実集電孔3のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のヘッド8の製造ライン方向の移動を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成したものである。
【0074】
すなわち、この第3実施形態にあっては、測定用固定CCDカメラ9を複数台(この例では3台)使用したことに特徴がある。CCDカメラ9をスクライブラインにおける加工ヘッド8の位置より下流側方向に複数台配置することによって、データの先読みが可能になるということである。
【0075】
この第3実施形態の利点としては、複数台の固定CCDカメラ9の使用によって画像処理装置をCCDカメラ9と独立に用いることにより、これから補正データ値を組み入れて加工しようとするためのデータの先読み(但し、1列前の情報)ができるため、データを読み込みながら、次の加工位置を計算して加工できる利点がある。
【0076】
この例にあっては、読み込みカメラの位置が数十cm程度離れる場合も考えられるため、実際の装置では、2[m/s]の加工速度であっても、100ms台の処理時間が許される。このため、精度良く補正をかけられるばかりでなく、加工ヘッド8を動かす時間にも余裕がとれる利点がある。
【0077】
図17に示されるように、誤差Eが30cmの場合、加工速度が2[m/s]であっても、150msの遅延時間があるので、加工ヘッドを追従させて動かす時間も十分な時間がとれる。この意味で設計は簡単となる。
【0078】
[第4実施形態]
本発明装置の第4実施形態を示す平面図が図18に、同側面図が図19にそれぞれ示されている。それらの図から明らかなように、第4実施形態に係るレーザスクライブ装置は、その幅方向に沿って多列に集電孔が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用される。
【0079】
このレーザスクライブ加工装置は、前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シート2が載置可能な載物台1を有する加工ステーションSTと、前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージ5と、前記主ステージ5上にあって、前記製造ラインの幅方向へと走行可能な副ステージ7と、前記副ステージ7上にあって、前記製造ラインの長手方向へと所定ストロークで移動可能に取り付けられ、かつそのレーザ出射口を前記載物台上に載置固定された中間品シート2に向けられた同軸観察カメラ付きのレーザパターニング用の加工ヘッド10とを有し、それにより前記カメラ9から得られる画像を画像処理することで、前記カメラ9の前記製造ラインの幅方向各位置における実集電孔のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中のレーザパターニング用のヘッド8の製造ライン方向の移動を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成されている。
【0080】
すなわちこの第4実施形態の特徴は、測定用固定CCDカメラ9をパターニング加工光学ヘッド8と同軸上に配置した点にある。
【0081】
この第4実施形態の利点としては、同軸構成とすることにより観察(測定)と加工点のずれがないため、構成が単純化され、コスト的にも低く抑えることができる。一方で、測定と加工は排他的になり、同時に処理できなくなる。このため、測定をシート全面に渡り採取するのではなく、特異点だけの測定や、50本毎にしかデータ採取する必要がないという場合には利点となる。
【0082】
図18に示されるように、この例にあっては、1本目のスクライブラインを加工する前に、同軸観察光学系より基準ラインのデータを採取する。その後、加工するスクライブラインの位置だけずらして、そのデータ通りに加工する。
【0083】
なお、このような加工ヘッドの光学系については、種々文献で周知であるが、図20に示されるように、ガイド光ファイバ10a、加工光ファイバ10bからのレーザ光を、それぞれ、光学系10c,10d及びハーフミラー10e,10fを介して対物レンズ10gに導き、対象物に照射し、その反射光を対物レンズ10g及び2枚のハーフミラー10e,10fを介してカメラ9より観測するようにしたものである。
【0084】
[第5実施形態]
本発明装置の第5実施形態の平面図が図21に、同側面図が図22にそれぞれ示されている。それらの図から明らかなように、この第5実施形態に係るレーザスクライブ加工装置は、その幅方向に沿って多列に集電孔3が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用される。
【0085】
このレーザスクライブ加工装置は、前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シート2が載置可能な載物台1を有する加工ステーションSTと、前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージ5と、前記ステージ5上にあって、前記載物台1上に載置固定された中間品シート2に向けられた出射光軸を、前記製造ラインの幅方向及び長手方向へとそれぞれ所定ストロークで首振り可能としたレーザパターニング用の加工ヘッド8Aと、前記主ステージ5上にあって、前記副ステージの走行ラインよりも、前記主ステージのスクライブ動作時の走行方向前方側の領域に、前記製造ラインの幅方向へと適宜間隔をおいて分散配置され、それぞれ前記中間品シート上に集電孔1列分の視野の一部を分担する複数個の固定カメラ9とを有し、それにより、前記複数の固定カメラ9のそれぞれから得られる画像を画像処理することで、固定カメラ位置9における実集電孔のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のレーザ光の光軸首振り角度を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成されている。
【0086】
すなわち、この第5実施形態に係るレーザスクライブ加工装置は、第1実施形態において、パターニング加工光学ヘッドを固定光学系でなくfθレンズを用いたスキャン光学系の加工ヘッド8A(図23参照)にしたことが特徴である。図23において、81はスキャンミラー、82は折り返しミラーである。
【0087】
この第5実施形態の利点としては、(1)スキャン光学系にすることにより、加工光学系を固定させることができ、スクライブ加工ライン方向やこれに垂直方向への微小移動ステージ(ピッチ間隔調整用)が不要になる。そのため構成が単純化され、コスト的にも低く抑えることが可能となること、(2)スキャン光学系は高速スキャンが可能であるため、測定したデータを高速に加工して反映でき、オンザフライ加工も可能になり、加工時間を短縮することがでるほか、オンザフライ加工させると、ライン毎にピッチ送りさせることがなく、連続的に移動させることが可能になるため、加工速度が短縮できる利点もある(図24参照)。
【0088】
補正処理プログラムの構成を示すフローチャート(その1)が図24に、同(その2)が図25にそれぞれ示されている。
【0089】
図24において処理が開始されると、まず、歪み補正有りの加工モードを選択するか、それとも歪み補正なしの加工モードを選択するかの判定が行われる。
【0090】
ここで、オペレータによる所定の選択操作に応答して、歪み補正なしと判定されると(ステップ101NO)、ステップ114へと進んで、スクライブライン歪み補正なしによる加工モードへの移行が行われる。続いて、図25へ移って、主ステージは加工スタート位置へと移動し(ステップ115)、最初のスクライブラインに関して、歪み補正なしのスクライブ加工が行われる(ステップ116)。ここで、歪み補正なしのスクライブ加工とは、図8の真ん中の列に示されるように、集電孔の配列軌跡は無視して、設計通りのスクライブラインに従って、搬送路を横断するように、これと直交方向にスクライブラインを加工する。以後、同様にして、最後のスクライブラインに至るまで(ステップ117NO)、隣接スクライブラインへと移動しては、搬送路と直交する方向へのスクライブラインの加工が行われ、最後のスクライブラインまで到達するのを待って(ステップ117YES)、処理は終了する。
【0091】
これに対して、図24へ戻って、歪み補正有りと判定されると(ステップ101YES)、加工モードはスクライブライン歪み補正有りへと設定され、以後、歪み補正有りモードにおけるスクライブラインの加工処理が実行される。
【0092】
まず、最初のスクライブラインから始まると(ステップ103YES)、カメラ9を読み取り測定位置へと移動した後(ステップ104)、最初のスクライブラインに関して、実際の集電孔3の位置と基準位置(光軸中心)との誤差から歪み測定を行い、データの蓄積を行う(ステップ105)。しかる後、加工ヘッド8を、加工スタート位置へと移動した後(ステップ106)、最初のスクライブラインに関し、1本目の歪みデータを反映して、スクライブラインの加工を行う。
【0093】
ここで、図8の一番右の列に示されるように、歪み補正有りの場合、集電孔の配列軌跡に沿うようにして、これと所定距離d0,d11,d21,d31だけ離して、スクライブラインの加工を行う。
【0094】
以後、2本目以降のスクライブラインに関しては、加工方法Aと加工方法Bとの2つの選択肢が存在する。ここで、加工方法Aが選択されると(ステップ108A)、2本目以降のスクライブライン歪み測定を行った後、2本目以降のデータの蓄積を行い(ステップ109)、蓄積データによる補正値でのスクライブラインの加工処理が行われる(ステップ110)。
【0095】
これに対して、加工方法Bが選択されると(ステップ108B)、2本目以降のスクライブライン歪みの測定を行った後(ステップ112)、2本目以降は前のスクライブラインの歪みデータに従った補正値でのスクライブラインの加工処理が実行される(ステップ113)。
【0096】
そして、以上の加工方法A又は加工方法Bによる処理が、最後のスクライブラインに達するまで(ステップ111NO)、繰り返され、最後のスクライブラインに達するのを待って(ステップ111YES)、処理は完了する。
【0097】
このように、この補正処理プログラムによれば、歪み補正有りと歪み補正なしとの2つの選択肢が存在することに加え、歪み補正有りが選択された場合にあっては、最初のスクライブライン以降、加工方法A又は加工方法Bの2つの選択肢が存在する。
【0098】
そして、歪み補正なしを選択すれば、図8の中央の図に示されるように、実際の集電孔3の配列軌跡とは関わりなく、設計値通りに搬送方向と直交する方向へと直線的にスクライブラインが加工される。これに対して、歪み補正有りが選択された場合には、集電孔列の配列軌跡に沿って、曲線的にスクライブラインが加工される。このとき、加工方法Aが選択されれば、蓄積データによる補正値での加工が行われるのに対し、加工方法Bが選択されれば、2本目以降のスクライブラインについては前のスクライブラインの歪みデータに従った補正値での加工処理が行われる。
【0099】
最後に、以上各実施形態に共通な補足事項について述べることとする。
[加工速度と処理速度との関係]
加工速度(パターニング加工速度)は、Qスイッチパルスレーザを用いて加工するため、図26及び図27に示されるように、
・Qスイッチ周波数:F[Hz]
・レーザ光の移動速度(加工ヘッド移動ステージ速度):V[mm/s]
とすれば、
・加工ピッチ(バイトサイズ)d:V/F[mm]
ここで、図26にあるように、レーザ加工点のスポット径に対して、バイトサイズは大きい必要がある。
【0100】
通常の加工では、スポット径はオーバラップ率90%程度で太陽電池のような薄膜に対する加工でも50%程度は重ねながら加工する。スポット径は、必要とされるスクライブ加工幅で決定されるので、FとVの関係は、どちらか一方が決定されれば、自動的に決定される。
【0101】
実際の例では、通常のレーザの場合、Qスイッチ周波数は、必要とされるピークパワーあるいは平均出力によって、選択する範囲が決まってくる。たとえば30[kHz]とする。太陽電池のスクライブ加工幅は100μm程度を要求されるので、オーバラップ33%とすれば、バイトサイズd=67μmとなるので、加工速度は2010[mm/s][V=Fd=30[kHz]×67[μm]=2010[mm/s]]となる。加工ステージは約2[m/s]の高速さが必要となる。
【0102】
加工速度が2[m/s]とあるとすれば、中間品シートの幅(実際のスクライブ加工する長さ)が1[m]である場合、スクライブ加工に要する時間は図28のように試算される。
【0103】
このように、各スクライブラインが0.8[s]で終了するので、1ライン先読みしながら加工する例では、少なくとも1ライン分の位置ずれの読み取り時間(第1実施形態では6台の固定カメラでの読み取り時間)+これらのズレ情報による隣のラインの下降補正データ作り+隣のラインまでの加工ヘッド移動時間までを0.8[s]以内で全て終了させる必要がある。実際にはマージン等が必要になるので、半分の0.4[s]程度で終了させることが必要となる。
【0104】
[フライングスポットのメリット(戻り加工)]
フライング加工の方法は、2つ存在する。その第1の方法は、既に第5実施形態で説明したように、中間品シートをゆっくりと動かしながらオンザフライで加工する方法である。これに対して、第2の方法は、中間品シートについては固定しておき、スクライブ加工方向の移動ステージ上にスキャナを搭載して、オンザフライ加工する方法である。これを図28に示す。
【0105】
第2の方法であるオンザフライの加工の利点としては、(1)ガルバノスキャンのような高速スキャン可能な駆動系を使用することにより、第1〜第4実施形態のように、加工ヘッドを小型のリニアステージでドライブする方式では高速駆動が困難であるが、ガルバノタイプのスキャナを使用すれば、簡単にXY2軸の高速ポジショニングが可能であるため、より遅れの少ない補正が可能になる上、安価な構成にもできること、及び(2)ガルバノスキャナは、リニアステージに搭載されているので、実際の加工速度は、リニアステージ走査速度+ガルバノ走査速度となり、スクライブ加工速度を2[m/s]にする場合、ガルバノスキャン速度を1[m/s]とすれば、リニアステージは最高速度1[m/s]でよくなり、より小型で安価なリニアステージが選択できること、等を挙げる。
【0106】
第2の方法であるオンザフライ加工で、もう1つの利点としては、ステージの加減速領域のバイトサイズ制御を行うことによって、加減速領域をなくすることが可能になることである。図29に示されているように、適当な一定周期のレーザパルスを照射してパルス光を残した様子、加減速領域は等速で移動しないので、レーザの周波数が一定ではピッチ間隔が異なってしまう(図29参照)。従って、実際の中間品シートにスクライブ加工する場合は、この等速領域のところで加工する必要がある。即ち、加減速領域は助走領域となり、装置が大型化し、コストも上がる結果となる。できるだけこの助走期間を短くしたいが、使用するモータのトルクの大きなものを使用する必要があるばかりか、加減速度を大きくすることにより各ガイドに対する負荷が大きくなるため寿命低下につながるほか、振動が大きくなり、加工精度の悪化や除震ユニットの必要性などの問題が発生する。
【0107】
[固定光学系を使用した場合(バイトサイズ制御時)]
加減速領域においても、レーザ照射されたパルス痕のピッチ間隔が等間隔になるように、加減速領域においてレーザパルス発振の繰り返し周波数を変化させる(これをバイトサイズコントロールと称する)。
【0108】
バイトサイズ制御は、リニアスケールから発せられる位置信号(絶対座標やパルス数)を用いて、設定された長さ単位にトリガを発し、このトリガでレーザを出射させるような制御である。ステージの速度に依らないで、設定された間隔でレーザ照射が行われる。
【0109】
バイトサイズ制御方法を用いると、レーザは一定間隔で正確に照射されるので、加減速領域でも等速運動領域でも関係なく等ピッチでレーザ照射される。しかしながら、図30にあるように、加減速領域でレーザ発振の繰り返し周波数が変化する。
【0110】
しかしながら、図30にあるように、加減速領域でレーザ発振の繰り返し周波数が変化する。Qスイッチレーザ発振器では、レーザのパルス繰り返しが変化すると、ピークパワーが大きく変化する。Nd,YAGレーザの例では、5kHz以下の低繰り返しにおいて、2kHz程度まで加速的にピーク出力が大きくなる。実際の加工では、加速時のスタート部、減速時の最後のところでピーク出力が大きくなり、加工が深くなったり、太くなったりして加工不具合を起こす。このため、レーザ強度が変化しても加工状態が大きく変化しない薄膜加工等でしか適用できない場合が多い。
【0111】
[ガルバノスキャン光学系を使用した場合]
通常のリニアステージで設けられる加減速領域をなくしても、高速移動が可能なガルバノスキャン光学系を用いることにより、バイトサイズ制御でトータル速度を一定とすることができる。結果として、リニアステージの加減速制御に支配されずに、レーザ照射されたパルス痕のピッチ間隔が等間隔になるようなバイトサイズ制御が可能になる。
【0112】
図31では例として、リニアステージの最高速度(等速)とガルバノスキャナの等速領域での速度が同じ速度とした例である。
【0113】
この場合は、スキャナ速度はスタート後減速しながら等速になる制御となるため、Qスイッチレーザのピークパルスはスタート時が最も低いピークパワーで、等速になったとき最大のピークパワーとなる。本例のようにガルバノ速度をリニアステージ速度と同程度であればピークパワーの差異も小さくできる。すなわち加減速領域でなくても等ピッチ間隔にできる。
【0114】
[一次元CCDの活用]
ズレはフレキシブルシートを引っ張る方向に伸びる量が大きいと考えられるので、二次元CCDの代わりに、大きく伸びる方向の一次元CCDを用いてズレ量を測定する実施を追加しても構わない。但し、二次元CCDの場合は画像をモニタして、この画像を画像処理して目的とする穴形状や線を測定する。これに対して、一次元CCD(リニアCCD)は図32のように表面形状の測定に用いられる。
【0115】
本方法はフレキシブルシートのパターン等が上面に処理されていて、通常の(二次元)CCDカメラでは明確の像が得られない場合、図32のような高さをレーザ測長器で精密に測定することにより、パターン部の盛り上がりにより測定できる利点がある。但し、測定のためにレーザ測長器ユニットをスキャンしなければいけないため、測定時間は非常に長くなる欠点もある。
【0116】
[穴のずれ量の実寸法]
これはプロセス方法(温度/湿度)やフレキシブルシートの厚み、種類により、大きく異なる。材料がポリイミドの場合は、図33にあるように250℃で0.1%程度の伸縮があるので、1m長の場合は、1mmの伸縮がある。レーザプロセス時には特に加熱させるプロセスはないので、10〜100μm程度の伸縮となる。応力をかけることにより、機械的な伸縮も加わるから、さらに値は増える場合がある。
【0117】
[レーザ波長]
レーザ波長は、Nd:YAGレーザの場合、基本波(1064nm)、第2高調波(532nm)、第3高調波(355nm)、第4高調波(266nm)のいずれかの波長あるいは複数の波長を切り換えて使用するシステムとなる。
【0118】
レーザがNd:YAGレーザと異なるレーザの場合、たとえばNd:YLFレーザの場合は、基本波が1053nmまたは1047nmとなり、第2〜第4高調波が同様に使用される。その他の発振波長を有する種類のレーザが使用される場合があっても同じである。Qスイッチレーザ固体レーザの代表的な特性(Nd:YAGレーザの場合)を図34に示す。
【0119】
レーザはCW、Q−SW発振あるいはモードクロック発振、モードクロックQ−SW発振の形態が利用される。説明ではパルスレーザでの場合を示したが、CW発振のレーザでの加工もあり得る(露光用のパターニング等)。
【0120】
ステージはリニアスケール付きのものであって、スケールで正確な位置情報を得て、目的とする観察/加工位置を得る方式を用いる。第5実施形態のようにオンザフライ加工する場合は、リニアスケールの位置情報を元にスキャナを同期制御させるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、シート状乃至プレート状の基材に対して、成膜工程とスクライブ加工工程とを交互に施すことにより、シート状乃至プレート状の多層デバイスを製造するときに使用することができる。
【符号の説明】
【0122】
1 載物台
2 中間品シート
3 集電孔
4a,4b X方向主ガイド
5 主ステージ
5a 開口
6a,6b Y方向ガイド
7 副ステージ
8 加工ヘッド
8A 加工部
9 カメラ
9A 読み取り部
9a 光軸
9b 視野
10 同軸観察カメラ付きの加工ヘッド
11 ホルダ
R1 繰り出しローラ
R2 巻き取りローラ
R3 テンションローラ
ST 加工ステーション
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状乃至プレート状の基材に対して、成膜工程とスクライブ加工工程とを交互に施すことにより、シート状乃至プレート状の多層デバイスを製造するときに使用されるレーザスクライブ加工方法であって、
1の成膜工程が完了した中間品シート乃至プレート上から、前記基材に直接に刻設されたパンチ孔やアライメントマーク等の位置合わせシンボルの位置を光学的に検出するステップと、
前記シンボルの検出された位置と、前記シンボルの位置とそれに対応するスクライブ線上の位置との設計上の位置関係とに基づいて、設計上のスクライブ加工位置を補正するステップと、
前記補正後のスクライブ加工位置に対してレーザ光を照射してスクライブ線を形成するステップとを含み、
それにより、前記各スクライブ加工工程における前記基材の歪み量の如何に拘わらず、2以上のスクライブ加工工程のそれぞれにおいて形成されるスクライブ線同士の位置的相関を設計通りの位置的相関に維持する、ことを特徴とするレーザスクライブ加工方法。
【請求項2】
前記多層デバイスが、長尺シート状の薄膜太陽電池であって、前記位置合わせ用のシンボルが、集電光となるべく前記シート状基材上に一列に並んだパンチ孔であり、さらに
前記交互に施される成膜工程とスクライブ加工工程とが、
第1の成膜工程である裏面電極のスパッタリング工程と、
第1のレーザスクライブ工程である裏面電極のパターンニング工程と、
第2の成膜工程であるセル膜のCVD工程及び表面電極のスパッタリング工程と、
第2のレーザスクライブ工程であるセル膜及び表面電極のパターニング工程とを含み、
それにより、前記各スクライブ加工工程における前記基材の歪み量の如何に拘わらず、裏面電極上のスクライブ線と表面電極上のスクライブ線とが軸心整合する、ことを特徴とする請求項1に記載のレーザスクライブ加工方法。
【請求項3】
前記多層デバイスが、板状の薄膜太陽電池であって、前記位置合わせ用のシンボルが、集電光となるべく前記シート状基材上に一列に並んだパンチ孔であり、さらに
前記交互に施される成膜工程とスクライブ加工工程とが、
第1の成膜工程である裏面電極のスパッタリング工程と、
第1のレーザスクライブ工程である裏面電極のパターンニング工程と、
第2の成膜工程であるセル膜の蒸着工程と、
第2のレーザスクライブ工程であるセル膜のパターニング工程と、
第3の成膜工程である表面側の電極蒸着工程と、
第3のレーザスクライブ工程である表面電極のパターニング工程とを含み、
それにより、前記各スクライブ加工工程における前記基材の歪み量の如何に拘わらず、裏面電極上のスクライブ線と表面電極上のスクライブ線との間に存在する不要領域の面積を所定値以下に維持する、ことを特徴とする請求項1に記載のレーザスクライブ加工方法。
【請求項4】
その幅方向に沿って多列に集電孔が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用されるレーザスクライブ加工装置であって、
前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シートが載置可能な載物台を有する加工ステーションと、
前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージと、
前記主ステージ上にあって、前記製造ラインの幅方向へと走行可能な副ステージと、
前記副ステージ上にあって、前記製造ラインの長手方向へと所定ストロークで移動可能に取り付けられ、かつそのレーザ出射口を前記載物台上に載置固定された中間品シートに向けられたレーザパターニング用の加工ヘッドと、
前記主ステージ上にあって、前記副ステージの走行ラインよりも、前記主ステージのスクライブ動作時の走行方向前方側の領域に、前記製造ラインの幅方向へと適宜間隔をおいて分散配置され、それぞれ前記中間品シート上の集電孔一列分の視野の一部を分担する複数個の固定カメラとを有し、
それにより、前記複数の固定カメラのそれぞれから得られる画像を画像処理することで、各固定カメラ位置における実集電孔のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のヘッドの製造ライン方向の移動を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成した、ことを特徴とするレーザスクライブ加工装置。
【請求項5】
前記複数個の固定カメラは、低膨張材からなるホルダを介して前記主ステージに取り付けられている、ことを特徴とする請求項4に記載のレーザスクライブ加工装置。
【請求項6】
その幅方向に沿って多列に集電孔が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用されるレーザスクライブ加工装置であって、
前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シートが載置可能な載物台を有する加工ステーションと、
前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージと、
前記主ステージ上にあって、前記製造ラインの幅方向へと走行可能な副ステージと、
前記副ステージ上にあって、前記製造ラインの長手方向へと所定ストロークで移動可能に取り付けられ、かつそのレーザ出射口を前記載物台上に載置固定された中間品シートに向けられたレーザパターニング用の加工ヘッドと、
前記副ステージ上にあって、前記製造ラインの幅方向へと、前記レーザパターニング用のヘッドと一体に移動する1個のカメラとを有し、
それにより、前記カメラから得られる画像を画像処理することで、前記カメラの前記製造ラインの幅方向各位置における実集電孔のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のヘッドの製造ライン方向の移動を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成した、ことを特徴とするレーザスクライブ加工装置。
【請求項7】
前記単一のカメラが、スクライブ加工動作時における移動中、前記加工ヘッドの進行方向において所定距離下流側に配置されている、ことを特徴とする請求項6に記載のレーザスクライブ加工装置。
【請求項8】
その幅方向に沿って多列に集電孔が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用されるレーザスクライブ加工装置であって、
前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シートが載置可能な載物台を有する加工ステーションと、
前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージと、
前記主ステージ上にあって、前記製造ラインの幅方向へと走行可能な副ステージと、
前記副ステージ上にあって、前記製造ラインの長手方向へと所定ストロークで移動可能に取り付けられ、かつそのレーザ出射口を前記載物台上に載置固定された中間品シートに向けられたレーザパターニング用の加工ヘッドと、
前記副ステージ上にあって、前記製造ラインの幅方向へと、前記レーザパターニング用のヘッドと一体に移動する複数個のカメラとを有し、
それにより、前記カメラから得られる画像を画像処理することで、前記カメラの前記製造ラインの幅方向各位置における実集電孔のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のヘッドの製造ライン方向の移動を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成した、ことを特徴とするレーザスクライブ加工装置。
【請求項9】
前記複数個のカメラが、スクライブ加工動作時における移動中、前記加工ヘッドの進行方向において所定距離下流側に配置されている、ことを特徴とする請求項8に記載のレーザスクライブ加工装置。
【請求項10】
その幅方向に沿って多列に集電孔が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用されるレーザスクライブ加工装置であって、
前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シートが載置可能な載物台を有する加工ステーションと、
前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージと、
前記主ステージ上にあって、前記製造ラインの幅方向へと走行可能な副ステージと、
前記副ステージ上にあって、前記製造ラインの長手方向へと所定ストロークで移動可能に取り付けられ、かつそのレーザ出射口を前記載物台上に載置固定された中間品シートに向けられた同軸観察カメラ付きのレーザパターニング用の加工ヘッドとを有し、
それにより、前記カメラから得られる画像を画像処理することで、前記カメラの前記製造ラインの幅方向各位置における実集電孔のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のヘッドの製造ライン方向の移動を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成した、ことを特徴とするレーザスクライブ加工装置。
【請求項11】
その幅方向に沿って多列に集電孔が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用されるレーザスクライブ加工装置であって、
前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シートが載置可能な載物台を有する加工ステーションと、
前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージと、
前記主ステージ上にあって、前記載物台上に載置固定された中間品シートに向けられた出射光軸を、前記製造ラインの幅方向及び長手方向へとそれぞれ所定ストロークで首振り可能としたレーザパターニング用の加工ヘッドと、
前記主ステージ上にあって、前記副ステージの走行ラインよりも、前記主ステージのスクライブ動作時の走行方向前方側の領域に、前記製造ラインの幅方向へと適宜間隔をおいて分散配置され、それぞれ前記中間品シート上の集電孔一列分の視野の一部を分担する複数個の固定カメラとを有し、
それにより、前記複数の固定カメラのそれぞれから得られる画像を画像処理することで、各固定カメラ位置における実集電孔のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のヘッドの光軸首振り角度を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成した、ことを特徴とするレーザスクライブ加工装置。
【請求項1】
シート状乃至プレート状の基材に対して、成膜工程とスクライブ加工工程とを交互に施すことにより、シート状乃至プレート状の多層デバイスを製造するときに使用されるレーザスクライブ加工方法であって、
1の成膜工程が完了した中間品シート乃至プレート上から、前記基材に直接に刻設されたパンチ孔やアライメントマーク等の位置合わせシンボルの位置を光学的に検出するステップと、
前記シンボルの検出された位置と、前記シンボルの位置とそれに対応するスクライブ線上の位置との設計上の位置関係とに基づいて、設計上のスクライブ加工位置を補正するステップと、
前記補正後のスクライブ加工位置に対してレーザ光を照射してスクライブ線を形成するステップとを含み、
それにより、前記各スクライブ加工工程における前記基材の歪み量の如何に拘わらず、2以上のスクライブ加工工程のそれぞれにおいて形成されるスクライブ線同士の位置的相関を設計通りの位置的相関に維持する、ことを特徴とするレーザスクライブ加工方法。
【請求項2】
前記多層デバイスが、長尺シート状の薄膜太陽電池であって、前記位置合わせ用のシンボルが、集電光となるべく前記シート状基材上に一列に並んだパンチ孔であり、さらに
前記交互に施される成膜工程とスクライブ加工工程とが、
第1の成膜工程である裏面電極のスパッタリング工程と、
第1のレーザスクライブ工程である裏面電極のパターンニング工程と、
第2の成膜工程であるセル膜のCVD工程及び表面電極のスパッタリング工程と、
第2のレーザスクライブ工程であるセル膜及び表面電極のパターニング工程とを含み、
それにより、前記各スクライブ加工工程における前記基材の歪み量の如何に拘わらず、裏面電極上のスクライブ線と表面電極上のスクライブ線とが軸心整合する、ことを特徴とする請求項1に記載のレーザスクライブ加工方法。
【請求項3】
前記多層デバイスが、板状の薄膜太陽電池であって、前記位置合わせ用のシンボルが、集電光となるべく前記シート状基材上に一列に並んだパンチ孔であり、さらに
前記交互に施される成膜工程とスクライブ加工工程とが、
第1の成膜工程である裏面電極のスパッタリング工程と、
第1のレーザスクライブ工程である裏面電極のパターンニング工程と、
第2の成膜工程であるセル膜の蒸着工程と、
第2のレーザスクライブ工程であるセル膜のパターニング工程と、
第3の成膜工程である表面側の電極蒸着工程と、
第3のレーザスクライブ工程である表面電極のパターニング工程とを含み、
それにより、前記各スクライブ加工工程における前記基材の歪み量の如何に拘わらず、裏面電極上のスクライブ線と表面電極上のスクライブ線との間に存在する不要領域の面積を所定値以下に維持する、ことを特徴とする請求項1に記載のレーザスクライブ加工方法。
【請求項4】
その幅方向に沿って多列に集電孔が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用されるレーザスクライブ加工装置であって、
前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シートが載置可能な載物台を有する加工ステーションと、
前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージと、
前記主ステージ上にあって、前記製造ラインの幅方向へと走行可能な副ステージと、
前記副ステージ上にあって、前記製造ラインの長手方向へと所定ストロークで移動可能に取り付けられ、かつそのレーザ出射口を前記載物台上に載置固定された中間品シートに向けられたレーザパターニング用の加工ヘッドと、
前記主ステージ上にあって、前記副ステージの走行ラインよりも、前記主ステージのスクライブ動作時の走行方向前方側の領域に、前記製造ラインの幅方向へと適宜間隔をおいて分散配置され、それぞれ前記中間品シート上の集電孔一列分の視野の一部を分担する複数個の固定カメラとを有し、
それにより、前記複数の固定カメラのそれぞれから得られる画像を画像処理することで、各固定カメラ位置における実集電孔のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のヘッドの製造ライン方向の移動を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成した、ことを特徴とするレーザスクライブ加工装置。
【請求項5】
前記複数個の固定カメラは、低膨張材からなるホルダを介して前記主ステージに取り付けられている、ことを特徴とする請求項4に記載のレーザスクライブ加工装置。
【請求項6】
その幅方向に沿って多列に集電孔が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用されるレーザスクライブ加工装置であって、
前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シートが載置可能な載物台を有する加工ステーションと、
前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージと、
前記主ステージ上にあって、前記製造ラインの幅方向へと走行可能な副ステージと、
前記副ステージ上にあって、前記製造ラインの長手方向へと所定ストロークで移動可能に取り付けられ、かつそのレーザ出射口を前記載物台上に載置固定された中間品シートに向けられたレーザパターニング用の加工ヘッドと、
前記副ステージ上にあって、前記製造ラインの幅方向へと、前記レーザパターニング用のヘッドと一体に移動する1個のカメラとを有し、
それにより、前記カメラから得られる画像を画像処理することで、前記カメラの前記製造ラインの幅方向各位置における実集電孔のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のヘッドの製造ライン方向の移動を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成した、ことを特徴とするレーザスクライブ加工装置。
【請求項7】
前記単一のカメラが、スクライブ加工動作時における移動中、前記加工ヘッドの進行方向において所定距離下流側に配置されている、ことを特徴とする請求項6に記載のレーザスクライブ加工装置。
【請求項8】
その幅方向に沿って多列に集電孔が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用されるレーザスクライブ加工装置であって、
前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シートが載置可能な載物台を有する加工ステーションと、
前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージと、
前記主ステージ上にあって、前記製造ラインの幅方向へと走行可能な副ステージと、
前記副ステージ上にあって、前記製造ラインの長手方向へと所定ストロークで移動可能に取り付けられ、かつそのレーザ出射口を前記載物台上に載置固定された中間品シートに向けられたレーザパターニング用の加工ヘッドと、
前記副ステージ上にあって、前記製造ラインの幅方向へと、前記レーザパターニング用のヘッドと一体に移動する複数個のカメラとを有し、
それにより、前記カメラから得られる画像を画像処理することで、前記カメラの前記製造ラインの幅方向各位置における実集電孔のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のヘッドの製造ライン方向の移動を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成した、ことを特徴とするレーザスクライブ加工装置。
【請求項9】
前記複数個のカメラが、スクライブ加工動作時における移動中、前記加工ヘッドの進行方向において所定距離下流側に配置されている、ことを特徴とする請求項8に記載のレーザスクライブ加工装置。
【請求項10】
その幅方向に沿って多列に集電孔が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用されるレーザスクライブ加工装置であって、
前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シートが載置可能な載物台を有する加工ステーションと、
前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージと、
前記主ステージ上にあって、前記製造ラインの幅方向へと走行可能な副ステージと、
前記副ステージ上にあって、前記製造ラインの長手方向へと所定ストロークで移動可能に取り付けられ、かつそのレーザ出射口を前記載物台上に載置固定された中間品シートに向けられた同軸観察カメラ付きのレーザパターニング用の加工ヘッドとを有し、
それにより、前記カメラから得られる画像を画像処理することで、前記カメラの前記製造ラインの幅方向各位置における実集電孔のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のヘッドの製造ライン方向の移動を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成した、ことを特徴とするレーザスクライブ加工装置。
【請求項11】
その幅方向に沿って多列に集電孔が一面に配置された長尺シート状の薄膜太陽電池のロール・ツー・ロール製造ラインで使用されるレーザスクライブ加工装置であって、
前記製造ラインの途中にあって、1の成膜工程が完了した中間品シートが載置可能な載物台を有する加工ステーションと、
前記製造ラインの上に、その幅方向へと架け渡され、かつ前記製造ラインの長手方向に沿って走行可能な主ステージと、
前記主ステージ上にあって、前記載物台上に載置固定された中間品シートに向けられた出射光軸を、前記製造ラインの幅方向及び長手方向へとそれぞれ所定ストロークで首振り可能としたレーザパターニング用の加工ヘッドと、
前記主ステージ上にあって、前記副ステージの走行ラインよりも、前記主ステージのスクライブ動作時の走行方向前方側の領域に、前記製造ラインの幅方向へと適宜間隔をおいて分散配置され、それぞれ前記中間品シート上の集電孔一列分の視野の一部を分担する複数個の固定カメラとを有し、
それにより、前記複数の固定カメラのそれぞれから得られる画像を画像処理することで、各固定カメラ位置における実集電孔のズレ量を計測すると共に、計測されたズレ量に基づいて設計上のスクライブラインの位置を補正し、こうして得られた補正後のスクライブラインに基づいて、前記副ステージ移動中の前記レーザパターニング用のヘッドの光軸首振り角度を制御することにより、前記補正後のスクライブラインに従ったスクライブ線を形成するように構成した、ことを特徴とするレーザスクライブ加工装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図2】
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【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【公開番号】特開2010−219171(P2010−219171A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62115(P2009−62115)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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