説明

スピンドルモータ及びそれを備える記録ディスク駆動装置

【課題】
本発明の目的は、消費電力が少なく、安定回転を得られるスピンドルモータ及び小型薄型の記録ディスク駆動装置を提供することにある。
【解決手段】
磁気ヘッドは記録ディスクにアクセスする際に記録ディスクを押圧して、回転軸を特定方向に傾けるモーメントを発生させるが、その逆方向に定常的にバイアスモーメントを付加する機構を設けることで最大負荷モーメントを軽減し、軸受の損傷を回避すると共に軸損を小さく抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸を一定方向に傾けるモーメントが負荷された環境下で回転するスピンドルモータとそれを備えた記録ディスク駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スピンドルモータは、これまで一様均等な荷重下で使用されることが多かった(特許文献1)が、最近では、意図的に偏心させたり、偏荷重を加えた状態で回転するような特殊な用途にも使用されるようになってきた。
【0003】
記録ディスク駆動装置は、スピンドルモータによって記録ディスク媒体を回転させている。近年、記録ディスクの記録密度の増加と記録情報を読み書きする磁気ヘッドの高性能化が進み、記録ディスク駆動装置はますます小型化、薄型化している。記録ディスク駆動装置内は稠密に詰まっており、余分なスペースは全くない。特に小型・薄型の記録ディスク駆動装置においては、スペース及びコストの都合から、記録ディスクは1枚のみであり、磁気ヘッドはその記録ディスクの片面側にしか配置されていない。
【0004】
磁気ヘッドは、記録情報を読み書きする際には、記録ディスクの記録面上にアームで支持されている。アームにはサスペンションが形成されており、磁気ヘッドはこのサスペンションによる回転軸方向の荷重によって、記録ディスク上に押圧される。記録ディスクが回転すると、磁気ヘッドには周囲の空気流れによって揚力が発生し、磁気ヘッドはサスペンションによる荷重に逆らって浮上する。そして、記録ディスクには磁気ヘッドの反作用による荷重が負荷され、磁気ヘッドが記録ディスクと接触しているか否かにかかわらず、記録ディスクにはサスペンションによる回転軸方向の荷重が負荷されることになる。
【0005】
磁気ヘッドが記録ディスクの両側の面に配置される場合には、このサスペンション荷重は記録ディスクの両面に対しほぼ同等に負荷するので、対向する荷重同士で相殺され、記録ディスクには大きな回転軸方向の負荷は加わらない。しかし、磁気ヘッドが記録ディスクの片側の面にしか配置されない場合には、サスペンション荷重は相殺されることなく大きな負荷として記録ディスクに加わり、それを取り付けた回転体には回転軸を一方向に傾ける大きなモーメントが発生する。
【0006】
回転体にモーメントが加えられると、それを支える軸受には悪影響が発生する。玉軸受を使用している場合には、金属接触して保持する接触面積が小さく面圧が高いため、圧痕や偏磨耗が生じやすく、その結果、軸受寿命は短くなる。また、流体潤滑面を保持するため、玉軸受に比べて摩擦や磨耗に対する耐力が高いと言われている流体動圧軸受を用いる場合であっても、過大なモーメントが繰り返し負荷されれば、軸受面に磨耗が発生したり、軸損(軸と軸受間にはたらく摩擦や抵抗により発生する回転エネルギーのロス)が増大したり、回転が不安定になったり、異常振動が発生したりして軸受及びスピンドルモータの性能は悪化する可能性がある。
【0007】
こうした問題は、流体動圧軸受という要素部品のみの視点から言えば、軸受剛性を高めることによってある程度は回避することができる(特許文献2)。しかし、軸受剛性を高めるためには、軸受内部での発生圧力を高めると共にその面積を増やす必要があるわけで、それは軸受を大型化することであり、また軸損を増加する方向である(特許文献3)。小型薄型の記録ディスク駆動装置にとっては、大型の軸受を搭載することはスペースの点から困難であり、また、低消費電力であることが非常に重要な仕様である電池駆動の小型携帯機器にとっては、軸受剛性を高めるためとはいえ、軸損を増加させることはできない。したがって、特に小型薄型化の記録ディスク駆動装置においては、非常に難しい技術課題となっている。
【0008】
【特許文献1】特開2003−228959
【特許文献2】特開2002−295457
【特許文献3】特開平09−063183
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の従来の技術が抱える課題に鑑みてなされたものであり、磁気ヘッドによって回転体である記録ディスクに回転軸方向の荷重が負荷され、回転軸を傾ける方向にモーメントが付与される場合において、軸損を大幅に増大させることなくそのモーメントの少なくとも一部を打ち消すことが可能なスピンドルモータとそれを備えた記録ディスク駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明の記録ディスク駆動装置は磁気ヘッドを記録ディスクに押圧する際に発生する押圧力に対して、その押圧力によって生じる押圧力モーメントの少なくとも一部を打ち消すバイアス手段を、スピンドルモータの構造内部、記録ディスク駆動装置の筐体内部に配置している。
【0011】
より具体的には、記録ディスク駆動装置は記録ディスクを回転させるスピンドルモータと、記録ディスク上の情報を読み込み及び/又は書き込みする磁気ヘッドを備える情報アクセス手段と、バイアス手段と、それらを内部に収容する筐体とを備えている。
【0012】
スピンドルモータは、記録ディスクと一体に回転する回転体と、回転体に取り付けられたロータマグネットと、ロータマグネットと対向して配置されたステータと、ステータが一体に固定される静止部と、静止部に対して回転体を回転自在に支持する軸受機構とを備えている。なお、この軸受機構は、玉軸受、転がり軸受、流体動圧軸受、すべり軸受、空気軸受、及びそれらを組み合わせた軸受けを用いることができる。
【0013】
情報アクセス手段は、記録ディスクの回転軸方向一方側に配置されるヘッドと、ヘッドを支持し、ヘッドを記録ディスク上で径方向に移動させ、記録ディスク上の任意の位置に移動させ、ヘッドを記録ディスクに押圧するヘッドアームとを備える。
【0014】
バイアス手段は、記録ディスクを含む回転体の回転軸を一定の方向に傾けるモーメントを負荷する。
【0015】
このバイアス手段としては、大きく分けて2つの方法がある。
【0016】
ひとつの好適な態様は、ロータマグネットとステータの磁極歯との相互作用を用いるものである。ロータマグネットの中心とステータの磁極歯の中心とをずらす、又はロータマグネットと対向するステータの磁極歯の対向面積を周方向で変える、又は磁極歯とロータマグネット間の隙間を周方向で変える、コイルの巻数を周方向で変えることによって、バイアス力を発生させることができる。
【0017】
また、もうひとつの別な好適な態様は、ロータマグネットと静止部との間の磁気吸引力を用いるものである。静止部のロータマグネットと回転軸方向に対向する部分を強磁性体で形成し、静止部材に孔、凹部、凸部を形成する事によって、ロータマグネットと静止部間の隙間距離を周方向で変えることにより、バイアス力を発生させることができる。
【0018】
なお、さらに好ましくは、ヘッドアームを回転自在に支持するアーム支持機構の筐体への取り付け部と回転体の回転軸とを結ぶ線分とのなす角が、60度よりも大きく120度よりも小さくなる方向、もしくはヘッドの配置面側によっては、その180度対称方向にバイアスモーメントを付加すると更に良い。なお、モーメントの方向とは、無負荷時にモーメントを負荷した際に、回転軸が倒れる方向と180度対称な方向を言う。
【発明の効果】
【0019】
本発明を実施することにより、軸受の偏磨耗などの損傷や軸損増加を回避することができ、このようなスピンドルモータを記録ディスク駆動装置に適用することによって、記録ディスクを安定に回転させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施形態について、図を用いて説明する。なお、本発明の実施形態の説明において、上下左右等の方向をあらわす語句を用いる場合があるが、特別な記載がない限り図中の方向を示しているに過ぎず、実施に際しての方向を限定するものではない。
【0021】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態を実施したスピンドルモータ及び記録ディスク駆動装置の模式断面図である。
【0022】
(1−1 記録ディスクの構成)
記録ディスク駆動装置1は、筐体11の内部に、情報が記録される記録ディスク12、記録ディスク12を回転させるスピンドルモータ2、記録ディスク12の上面に位置し、記録ディスク12と微小な回転軸方向の間隙を介して対向するヘッド13と、ヘッド13を支持するヘッドアーム14と、ヘッドアーム14に形成されヘッド13が記録ディスク12から大きく離れないように記録ディスク12に押圧するヘッドサスペンション15とを備えている。また、ヘッドアーム14は、アーム支持機構であるピボット17に取りつけられて一定の角度範囲内で回転自在に支持されている。ヘッドアーム14はまた、アクチュエータ16によってピボット17を中心に揺動される。
【0023】
(1−2 スピンドルモータの構成)
スピンドルモータ2は、記録ディスク12が載置され、記録ディスク12と一体に回転する回転体であるロータハブ21と、そのロータハブ21に取付けられて回転するロータマグネット32と、ロータマグネット32の外周面に位置し複数のコイル33を備えてなるステータ31と、ステータ31が固定されてスピンドルモータ2の基部をなすベースプレート22と、そのベースプレート22に対してロータハブ21を回転自在に支承する軸受機構4とを備えている。
【0024】
なお、本実施形態においては、軸受機構4として広く用いられている流体動圧軸受を用いた。本発明の効果を得るためには、他の構造の動圧軸受や玉軸受を用いてもよい。また、本実施形態においては、ロータマグネット32をステータ31の径方向内側に配置するいわゆるインナロータ形式のモータとしているが、アウタロータ型のスピンドルモータにしたとしても、本発明の実施はなんら妨げられない。
【0025】
(1−3 ヘッドによって発生されるモーメント)
ヘッド13は、記録ディスク12の上面にのみ位置している。さらにヘッド13はヘッドアーム14に形成されたヘッドサスペンション15によって記録ディスク12に回転軸方向に押圧されている。
【0026】
回転体である軸受機構4の回転側を構成するシャフト41と、ロータハブ21と、記録ディスク12とが、一体となって回転する場合、これらを実質的な剛体(応力による弾性変形や歪を実質上無視できる構造体)であるとみなすことができる。これら回転体は、軸受機構4によって回転自在に支承されている。この回転体の回転中に、この回転体の任意の点からある定められた点に向けて力を加えたときに、この回転体が回転変移をせずに並進変移のみをする場合、このある定められた点を“回転体支持中心点”43とする。
【0027】
このとき、ヘッドサスペンション15によって記録ディスク12に負荷される押圧力は、回転体支持中心点43のまわりに、図1に向かって左回りのモーメントを発生させている。これによって回転軸は図1に向かって角度の正方向に傾けられる。
【0028】
(1−4 ベースプレート)
ベースプレート22は、記録ディスク駆動装置1の筐体11の一部を構成している。ベースプレート22のステータ31が載置される部分は、コイル33と対向する部分にコイル逃がし孔24が形成されている。ステータ31は、複数の磁極歯35を有する鉄心と、磁極歯35に巻回されたコイル33とから構成されている。コイル33は磁極歯35よりも巻線の分だけ回転軸方向の寸法が大きい。そこで、コイル逃がし孔24を設けることによって、ステータ31をベースプレート22に配置する際に、その回転軸方向の寸法を低減することが可能になっている。
【0029】
本実施形態において、このベースプレート22は、強磁性材料であるSUS400番系ステンレス鋼で作られている。SUS400番系ステンレス鋼は、フェライト系・マルテンサイト系ともに強磁性を有し、加工性に優れている。そのため、プレス加工などにより、必要な加工精度のベースプレートを安価に量産することが可能である。なお、記録ディスク駆動装置1が必要とする機械強度や加工の要求などに応じて、珪素鋼板、亜鉛メッキ鋼板などの強磁性を示す材質を選択してもよい。
【0030】
(1−5 対向するモーメント)
ロータマグネット32の下端面は、ベースプレート22の上端面と対向している。ロータマグネット32は永久磁石であり、強磁性体であるベースプレート22との間には磁気吸引力が発生する。この磁気吸引力によってロータマグネット32、ロータハブ21及び記録ディスク12はベースプレート22に引き寄せられる。この磁気吸引力を周方向に変化させる事によって、(1−3)に記載された、ヘッド13によって生じるモーメントの一部を打ち消す。
【0031】
図2は、本実施形態に用いられるベースプレート22の平面図である。コイル逃がし孔24は、コイル33が巻回された磁極歯35の本数と同じ数が設けられており、本実施形態においてその数は9である。そのうち、左側に位置する4つのコイル逃がし穴24aは、コイル33の下から回転軸の方にまで延長されている。
【0032】
また、ベースプレート22には、ピボット17を取り付けるためのピボット取付孔22aが形成されている。このピボット取付孔22aの中心点Aと、スピンドルモータの回転中心Oを結んだ線分AOを定義する。また、バイアス手段である延長されたコイル逃がし孔24aの中心点Bと、スピンドルモータの回転中心Oとを結んだ線分BOを定義する。このとき、AOとBOがなす角である∠AOBは本実施形態においておよそ105度である。このときバイアス手段によって発生するモーメントは、ヘッド13が記録ディスク12を押圧する押圧力によって発生する押圧力モーメントの少なくとも一部を打ち消す方向にはたらいている。
【0033】
このようにすると、回転の周方向に沿ってロータマグネット32とベースプレート22との間の磁気吸引力は、コイル逃がし穴24が回転軸の方に延長されている図1の左側では弱く、右側のロータマグネット32とベースプレート22とが対向しない部分では磁気吸引力が強い。したがって、左右の磁気吸引力の違いによって回転体支持中心点43のまわりに、回転軸を右回りに回転させるモーメントが発生する。
【0034】
(1−6 作用)
本実施形態において、記録ディスク12の直径は1.0[inch](25.4[mm])であり、ヘッドサスペンション15による軸方向の押圧力は2.5[gf]である。記録ディスク12の最小情報記録可能域直径はおよそ12[mm]である。回転体支持中心点43は、回転軸上に位置している。回転体支持中心点43の回転軸方向の高さ位置は軸受の仕様等の条件によって影響されるが、本願発明においては回転体の重心とほぼ一致するように設計されている。したがって、ヘッドサスペンション15によって回転体支持中心点43のまわりに発生させられるモーメントの大きさはおよそ15〜32[g・mm]である。
【0035】
先に(1−5)において記載したように、このヘッドサスペンション15によって発生されるモーメントを打ち消す方向に負荷するモーメントの大きさは、このヘッドサスペンション15が発生させるモーメントの中間値を取るとよい。すなわち24[g・mm]程度である。こうすることによって、軸受には最大でもおよそ8.4[g・mm]のモーメントが負荷されるだけであって、この大きさはヘッドサスペンション15に発生させられるモーメントと比べると、最小でも約半分、最大で約1/4に低減される。
【0036】
仮に記録ディスク12の上下両面にヘッド13を配置した場合、ヘッドサスペンションによって負荷される押圧力の固体によるばらつきは1割程度である。本実施形態に使用したものと同サイズの記録ディスク12を用いると、回転体支持中心点43のまわりに負荷されえるモーメントの大きさは1割ずつのばらつきがある場合、最大でおよそ6.6[g・mm]である。すなわち、本実施形態に記載された方法を実施した場合と、モーメントの大きさにして2〜3割程度の差があるのみである。現在広く使用されている軸受機構であっても、この程度のモーメントならば、十分支持することが可能である。
【0037】
本実施形態において、ロータマグネット32としてNd−Fe−B系の焼結マグネットが用いられており、表面磁束密度が大きい。そのため、ロータマグネット32とベースプレート22との間の磁気吸引力が十分に大きく、ヘッドサスペンション15によって発生されるモーメントに対向するモーメントを不足なく発生させ、そのモーメントの大きさを適宜調節することができる。本実施形態において、ロータマグネット32の外周面の直径を9.4[mm]とし、ベースプレート22とロータマグネット32との回転軸方向の間隔は、最も狭い場所で0.16[mm]とした。なお、ロータマグネット32とベースプレート22との間の磁気吸引力は、ロータマグネット32とベースプレート22との回転軸方向の距離、ロータマグネット32の着磁波形、ロータマグネット32の下端と対向する部分に穿設された巻線逃がし孔の延長部の形状、位置などを変更することによって適宜変更することが可能である。こうすることによって、回転体とスピンドルモータ2の特性、及び記録ディスク駆動装置1の特性に合った最適な設計を得ることができる。また、ロータマグネット32の材質、大きさ、ベースプレート22の材質、厚み、磁気回路の設計などによっても大きく変化する。
【0038】
(1−7 効果)
本実施形態の実施により、ヘッド13とそれを支持するヘッドアーム14及びヘッドサスペンション16によって15〜32[g・mm]ものモーメントが発生している。しかし、ロータマグネット32と対向するベースプレート22の形状を工夫し、ロータマグネット32との間にはたらく磁気吸引力によって、モーメントを打ち消す方向のモーメントを発生させ、モーメントの発生を最大でおよそ1/4、少なくとも半分以下に当たる8〜9[g・mm]まで低減することが可能である。しかも、この範囲に収めることにより、軸受に与える影響を最小限にし、かつ軸受機構4の設計を大きく変更する必要もない。したがって軸受剛性を大幅に増加させて軸損を増大させることを避けることができる。
【0039】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態を実施したスピンドルモータ及び記録ディスク駆動装置の模式断面図である。
【0040】
(2−1 記録ディスクの構成)
本実施形態の記録ディスク駆動装置101は第1の実施形態の(1−1)に記載されたものと同様の構成を有する。すなわち、筐体111の内部に、情報が記録される記録ディスク112、記録ディスク112を回転させるスピンドルモータ102、記録ディスク112の上面に位置し、記録ディスク112と微小な回転軸方向の間隙を介して対向するヘッド113と、ヘッド113を支持するヘッドアーム114と、ヘッドアーム114に形成されヘッド113が記録ディスク112から大きく離れないように記録ディスク112に押圧するヘッドサスペンション115とを備えている。
【0041】
なお、本実施の形態において、ヘッドアーム114が記録ディスク上の任意の点に移動される際の作用は、第1の実施形態と同様である。
【0042】
(2−2 スピンドルモータの構成)
本実施形態におけるスピンドルモータ102は、記録ディスク112が載置され、記録ディスク112と一体に回転する回転体であるロータハブ121と、そのロータハブ121に取付けられて回転するロータマグネット132と、ロータマグネット132の外周面に位置し複数のコイル133を備えてなるステータ131と、ステータ131が固定されてスピンドルモータ102の基部をなすベースプレート122と、そのベースプレート122に対してロータハブ121を回転自在に支承する軸受機構104と、ベースプレート122の上に配置され、ロータマグネット132の下端面と対向するスラストヨーク123を備えている。
【0043】
なお、本実施形態においては、軸受機構104として広く用いられている流体動圧軸受を用いた。本発明の効果を得るためには、他の構造の動圧軸受や玉軸受を用いてもよい。また、本実施形態においては、ロータマグネット132をステータ131の径方向内側に配置するいわゆるインナロータ形式のモータとしているが、アウタロータ型のスピンドルモータにしたとしても、本発明の実施はなんら妨げられない。
【0044】
(2−3 ヘッドによって発生されるモーメント)
ヘッド113は、第1の実施形態と同様に記録ディスク112の上面にのみ位置している。さらにヘッド113はヘッドアーム114に形成されたヘッドサスペンション115によって記録ディスク112に回転軸方向に押圧されている。
【0045】
第1の実施形態において定義した回転体支持中心点43を、同様の定義を用いて本実施形態においては回転体支持中心点143とする。
【0046】
このとき、ヘッドサスペンション115によって記録ディスク112に負荷される押圧力は、回転体支持中心点143のまわりに、図3に向かって左回りのモーメントを発生させている。これによって回転軸は図3に向かって角度の正方向に傾けられる。
【0047】
(2−4 スラストヨーク)
スラストヨーク123は、ベースプレート122の上に配置され、ロータマグネット132の下端面と対向している。このスラストヨーク123は、円環状の平板の一部を切り取った、C字状もしくは馬蹄状の部材である。
【0048】
本実施形態において、このスラストヨーク123は、強磁性を示す珪素鋼板が用いられている。珪素鋼板は、飽和磁束密度が高く、非常に高い強磁性を示す。スラストヨークは、平板を打ち抜いて形成されるため、それほど高い加工性を要求されない。強磁性を示す金属であれば、SUS400番系ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼板などの強磁性を示す材質のなかから選択することができる。
【0049】
(2−5 対向するモーメント)
ロータマグネット132の下端面は、スラストヨーク123の上端面と対向している。ロータマグネット132は永久磁石であり、強磁性体であるスラストヨーク123との間には磁気吸引力が発生する。この磁気吸引力によってロータマグネット132、ロータハブ121及び記録ディスク112はスラストヨーク123に引き寄せられる。この磁気吸引力を周方向に変化させる事によって、(1−3)に記載された、ヘッド113によって生じるモーメントの一部を打ち消す。
【0050】
図4は、本実施形態に用いられるスラストヨーク123の平面図である。図4に向かって左側が一部切り欠かれている。
【0051】
このようにすると、回転の周方向に沿ってロータマグネット132とスラストヨーク123との間の磁気吸引力は、切りかかれている図4の左側では弱く、右側のロータマグネット132とベースプレートとが対向しない部分では磁気吸引力が強い。したがって、左右の磁気吸引力の違いによって回転体支持中心点143のまわりに、回転軸を右回りに回転させるモーメントが発生する。
【0052】
(2−6 作用)
本実施形態において、回転体支持中心点のまわりのモーメントの作用は、第1の実施形態と同様である。
【0053】
本実施形態において、第1の実施形態と同様にロータマグネット132としてNd−Fe−B系の焼結マグネットが用いられており、表面磁束密度が高い。一方スラストヨーク132は、第1の実施形態におけるベースプレートと比べて厚みは薄いものの、珪素鋼板を用いているために、飽和磁束密度が高い。そのため、ロータマグネット132とスラストヨーク123との間の磁気吸引力が十分に大きく、ヘッドサスペンション15によって発生されるモーメントに対向するモーメントを不足なく発生させ、そのモーメントの大きさを適宜調節することができる。なお、ロータマグネット132とスラストプレート123との間の磁気吸引力は、ロータマグネット132とスラストプレート123との回転軸方向の距離、ロータマグネット132の着磁波形、スラストプレートの切り欠き形状や切りかかれる範囲などを変更することによって適宜変更することが可能である。こうすることによって、回転体とスピンドルモータ102の特性、及び記録ディスク駆動装置101の特性に合った最適な設計を得ることができる。
【0054】
また、スラストヨーク123を切り欠かなくても、図5(a)、(b)に示されるように、左側の厚みを薄くし右側の厚みを厚くしたり、左側を切り欠かずに穴あけをしたりすることもできる。このようにしても、ロータマグネット132とスラストヨーク123との間にはたらく磁気吸引力を周方向で変化させることができる。
【0055】
(2−7 効果)
本実施形態を実施すると、第1の実施形態と同様に、ヘッド113とそれを支持するヘッドアーム114及びヘッドサスペンション116によって15〜32[g・mm]ものモーメントが発生している。しかし、ロータマグネット132の下端面と対向するスラストヨーク123の形状を工夫して、ロータマグネット132との間にはたらく磁気吸引力によって、ヘッドによって負荷されるモーメントを打ち消す方向のモーメントを発生させ、モーメントの発生を大幅に低減することが可能である。しかも、この範囲に収めることにより、軸受に与える影響を最小限にし、かつ軸受機構104の設計を大きく変更する必要もない。したがって軸受剛性を増加させて軸損を大きく増大させることも避けられる。
【0056】
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態を実施したスピンドルモータ及び記録ディスク駆動装置の模式断面図である。
【0057】
(3−1 記録ディスクの構成)
本実施形態の記録ディスク駆動装置201は第1の実施形態の(1−1)に記載されたものと同様の構成を有する。すなわち、筐体211の内部に、情報が記録される記録ディスク212、記録ディスク212を回転させるスピンドルモータ202、記録ディスク212の上面に位置し、記録ディスク212と微小な回転軸方向の間隙を介して対向するヘッド213と、ヘッド213を支持するヘッドアーム214と、ヘッドアーム214に形成されヘッド213が記録ディスク212から大きく離れないように記録ディスク212に押圧するヘッドサスペンション215とを備えている。
【0058】
(3−2 スピンドルモータの構成)
本実施形態におけるスピンドルモータ202は、記録ディスク212が載置され、記録ディスク212と一体に回転する回転体であるロータハブ221と、そのロータハブ221に取付けられて回転するロータマグネット232と、ロータマグネット232の外周面に位置し複数のコイル233を備えてなるステータ231と、ステータ231が固定されてスピンドルモータ202の基部をなすベースプレート222と、そのベースプレート222に対してロータハブ221を回転自在に支承する軸受機構204とを備えている。ロータマグネット232とステータ231は、スピンドルモータ202の駆動部であり、磁気回路203を形成している。
【0059】
なお、本実施形態において、軸受機構204としては広く用いられている流体動圧軸受を用いた。本発明の効果を得るために、他の構造の動圧軸受や玉軸受を用いてもよい。また、本実施形態においては、ロータマグネット232をステータ231の径方向内側に配置したいわゆるインナロータ形式のモータとしているが、アウタロータ型のスピンドルモータにしたとしても、本発明の実施はなんら妨げられない。
【0060】
(3−3 ヘッドによって発生されるモーメント)
ヘッド213は、第1の実施形態と同様に記録ディスク212の上面にのみ位置している。さらにヘッド213は、ヘッドアーム214に形成されたヘッドサスペンション215によって記録ディスク212に回転軸方向に押圧されている。
【0061】
第1の実施形態において定義した回転体支持中心点43を、同様の定義を用いて本実施形態においては回転体支持中心点243とする。
【0062】
このとき、ヘッドサスペンション215によって記録ディスク212に負荷される押圧力は、回転体支持中心点243のまわりに、図6に向かって左回りのモーメントを発生させている。これによって回転軸は図6に向かって角度の正方向に傾けられる。
【0063】
(3−4 磁気回路)
図7は、本実施形態のロータマグネット232とステータ231との位置関係を示す平面模式図である。ステータ231は、外周部にリング状のコアバック231aと、そのコアバック231aから径方向内方に延びる磁極歯235と、その磁極歯235の各々に巻回されたコイル233とを備えて構成されている。磁極歯235の内周端部は、周方向に広げられた周面の一部を形成する磁極歯端面235aを有している。その磁極歯端面235aは、ロータマグネット232の外周面と間隙dを介して対向している。その間隙dは、ロータマグネット232の周に沿って右側から左側に行くにつれて連続的に拡大している。すなわち、回転軸であるロータマグネット232の中心軸が、磁気回路203の中心であるステータ231の中心234よりも右に偏心している。
【0064】
本実施形態において、ピボット217を取り付けるためのピボット取付孔222aがベースプレート222には形成されている。このピボット取付孔222aの中心点Aと、スピンドルモータの回転中心Oを結んだ線分AOを定義する。また、バイアス手段であるロータマグネット232とステータ231の磁極歯の内周面235aとの間隔がもっとも狭い部分Bとスピンドルモータの回転中心Oとを結んだ線分BOを定義する。このとき、AOとBOがなす角である∠AOBは本実施形態においておよそ90度である。このときバイアス手段によって発生するモーメントは、ヘッド213が記録ディスク212を押圧する押圧力によって発生する押圧力モーメントの少なくとも一部を打ち消す方向にはたらいている。
【0065】
(3−5 対向するモーメント)
本実施形態において、回転体支持中心点243は、回転体の重心とほぼ一致しているかまたはやや上方に位置しており、回転軸方向に見ると、ステータ中心よりも上方に位置している。(3−4)に記載されているとおり、回転軸がステータ中心234から右側にずれて配置されることによって、ロータマグネット232には、回転とともに、回転軸を磁気回路203の中心に向けて移動させるラジアルバイアス力がはたらく。このラジアルバイアス力は、回転軸の回転体支持中心点243よりも下側に左向きにはたらく力であり、回転軸を回転体支持中心点243のまわりに時計回りに傾けるモーメントを発生する。
【0066】
(3−6 作用)
(3−3)に記載されたヘッド215が発生するモーメントと、(3−5)に記載された磁気回路203が発生するモーメントとが、対向して、ヘッド215が発生するモーメントの一部を打ち消す。
【0067】
(3−7 効果)
本実施形態を実施すると、第1の実施形態と同様に、ヘッド213とそれを支持するヘッドアーム214及びヘッドサスペンション216によって15〜32[g・mm]ものモーメントが発生している。しかし、回転軸をステータ中心234からずらした位置に配置することにより、磁気回路203が回転軸をステータ中心234の位置に戻そうとするラジアルバイアス力を利用することにより、ヘッドによって負荷されるモーメントを打ち消す方向のモーメントを発生させ、モーメントの発生を大幅に低減することが可能である。それによって、モーメントが軸受に与える影響を低減させ、かつ軸受機構204の設計に大きな変更をする必要もない。したがって軸受剛性を増加させて軸損を大きく増大させることも避けられる。
【0068】
(第4の実施形態)
図8は、本発明の第4の実施形態を実施したスピンドルモータ及び記録ディスク駆動装置の平面模式図である。
【0069】
(4−1 記録ディスクの構成)
本実施形態の記録ディスク駆動装置401は図9に示されている構成を有し、第1の実施形態の(1−1)に記載されたものと同様の構成を有する。すなわち、筐体411の内部に、情報が記録される記録ディスク412、記録ディスク412を回転させるスピンドルモータ402、記録ディスク412の上面に位置し、記録ディスク412と微小な回転軸方向の間隙を介して対向するヘッド413と、ヘッド413を支持するヘッドアーム414と、ヘッドアーム414に形成されヘッド413が記録ディスク412から大きく離れないように記録ディスク412に押圧するヘッドサスペンション415とを備えている。
【0070】
(4−2 スピンドルモータの構成)
本実施形態におけるスピンドルモータ402は、図9に示されている構成と類似しているが、磁気回路303に特徴を有している。したがって、図9に示されているロータマグネット432、ステータ431及びそれを構成するコイル433、磁極歯435は、本実施の形態には用いられていない。その代わりに本発明の磁気回路303は、以下の構成を備えている。すなわち、記録ディスク412が載置され、記録ディスク412と一体に回転する回転体であるロータハブ421と、そのロータハブ421に取付けられて回転するロータマグネット332と、ロータマグネット332の外周面に位置し複数のコイル333を備えてなるステータ331と、ステータ331が固定されてスピンドルモータ402の基部をなすベースプレート422と、そのベースプレート422に対してロータハブ421を回転自在に支承する軸受機構404と、を備えている。ロータマグネット332とステータ331は、スピンドルモータ402の駆動部であり、磁気回路303を形成している。
【0071】
なお、本実施形態において、軸受機構404としては広く用いられている流体動圧軸受を用いた。本発明の効果を得るために、他の構造の動圧軸受や玉軸受を用いてもよい。また、本実施形態においては、ロータマグネット332をステータ331の径方向内側に配置するいわゆるインナロータ形式のモータとしているが、アウタロータ型のスピンドルモータにしたとしても、本発明の実施はなんら妨げられない。
【0072】
(4−3 ヘッドによって発生されるモーメント)
ヘッド413は、第1の実施形態と同様に記録ディスク412の上面にのみ位置している。さらにヘッド413はヘッドアーム414に形成されたヘッドサスペンション415によって記録ディスク412に回転軸方向に押圧されている。
【0073】
第1の実施形態において定義した回転体支持中心点43を、同様の定義を用いて本実施形態においては回転体支持中心点443とする。
【0074】
本実施形態の縦断面図は第3の実施形態と同様であり、図9に示されているとおりである。ヘッドサスペンション415によって記録ディスク412に負荷される押圧力は、回転体支持中心点443のまわりに、図9に向かって左回りのモーメントを発生させている。これによって回転軸は図9に向かって角度の正方向に傾けられる。
【0075】
(4−4 磁気回路)
ステータ331は、外周部にリング状のコアバック331aと、そのコアバック331aから径方向内方に延びる磁極歯335と、その磁極歯335の各々に巻回されたコイル333とを備えて構成されている。磁極歯335の内周端部は、周方向に広げられた周面の一部を形成する磁極歯端面335aを有している。その磁極歯端面335aは、ロータマグネット332の外周面と間隙dを介して対向している。磁極歯端面335aは、ロータマグネット332の外周面と対向する面の面積が、図8に向かって右側では広く、左側では狭くなっている。
【0076】
(4−5 対向するモーメント)
本実施形態において、回転体支持中心点443は、回転体の重心とほぼ一致しているかまたはやや上方に位置しており、回転軸方向に見ると、ステータ中心よりも上方に位置している。(4−4)に記載されているとおり、ロータマグネット332の外周面と対向する磁極歯端面335aの面積は、図8に向かって右側では広く、左側では狭くされている。コイル333に電流を流すと、磁束が径方向に貫いて、磁極歯端面335aから径方向内方にむかって磁束が出て、ロータマグネット332と磁気相互作用をして駆動力を発生させている。磁極歯335の端面335aは、ロータマグネット332の外周面とより広い面積で磁極歯を対向させ、界磁磁場が理想的な正弦波を描くように磁極歯335のコイル333部分の断面積よりも広くされているが、それによって、隣り合う磁極歯335に磁束がごくわずかながら漏れ、磁束の短絡が発生する。そこで、図8に向かって左側に位置する磁極歯端面335aの面積を狭くすることにより、磁束の変化を急峻にし、ロータマグネット332との相互作用を最大にすることによって、ロータマグネット332及び一体となって回転するロータハブ421や記録ディスク412には左側に向けてラジアルバイアス力がはたらく。このラジアルバイアス力は、回転軸の回転体支持中心点443よりも下側において左向きにはたらく力であり、回転軸を回転体支持中心点443のまわりに時計回りに傾けるモーメントを発生する。
【0077】
また、ベースプレート422には、ピボット417を取り付けるためのピボット取付孔422aが形成されている。このピボット取付孔422aの中心点Aと、スピンドルモータの回転中心Oを結んだ線分AOを定義する。また、バイアス手段である内周面の一部を切り取られた磁極歯335aの中心点Bと、スピンドルモータの回転中心Oとを結んだ線分BOを定義する。このとき、AOとBOがなす角である∠AOBは本実施形態においておよそ85度である。このときバイアス手段によって発生するモーメントは、ヘッド413が記録ディスク412を押圧する押圧力によって発生する押圧力モーメントの少なくとも一部を打ち消す方向にはたらいている。
【0078】
(4−6 作用)
(4−3)に記載されたヘッド415が発生するモーメントと、(4−5)に記載された磁気回路303が発生するモーメントとが対抗して、ヘッド415が発生するモーメントの一部を打ち消す。
【0079】
(4−7 効果)
本実施形態を実施すると、第1の実施形態と同様に、ヘッド413とそれを支持するヘッドアーム414及びヘッドサスペンション416によって15〜32[g・mm]ものモーメントが発生している。しかし、磁極歯端面335aの面積が、図8に向かって右側では広く、左側では狭くすることにより、磁気回路303がロータマグネットに左方向に向けてラジアルバイアス力をはたらかせることにより、ヘッドによって負荷されるモーメントを打ち消す方向のモーメントを発生させ、モーメントの発生を大幅に低減することが可能である。それによって、モーメントが軸受に与える影響を低減させ、かつ軸受機構404の設計に大きな変更をする必要もない。したがって軸受剛性を増加させて軸損を大きく増大させることも避けられる。
【0080】
(第5の実施形態)
図9は、本発明の第5の実施形態を実施したスピンドルモータ及び記録ディスク駆動装置の模式断面図である。
【0081】
(5−1 記録ディスクの構成)
本実施形態の記録ディスク駆動装置401は第1の実施形態の(1−1)に記載されたものと同様の構成を有する。すなわち、筐体411の内部に、情報が記録される記録ディスク412、記録ディスク412を回転させるスピンドルモータ402、記録ディスク412の上面に位置し、記録ディスク412と微小な回転軸方向の間隙を介して対向するヘッド413と、ヘッド413を支持するヘッドアーム414と、ヘッドアーム414に形成されヘッド413が記録ディスク412から大きく離れないように記録ディスク412に押圧するヘッドサスペンション415とを備えている。
【0082】
(5−2 スピンドルモータの構成)
本実施形態におけるスピンドルモータ402は、記録ディスク412が載置され、記録ディスク412と一体に回転する回転体であるロータハブ421と、そのロータハブ421に取付けられて回転するロータマグネット432と、ロータマグネット432の外周面に位置し複数のコイル433を備えてなるステータ431と、ステータ431が固定されてスピンドルモータ402の基部をなすベースプレート422と、そのベースプレート422に対してロータハブ421を回転自在に支承する軸受機構404とを備えている。ロータマグネット432とステータ431は、スピンドルモータ402の駆動部であり、磁気回路403を形成している。
【0083】
なお、本実施形態においては、ロータマグネット432をステータ431の径方向内側に配置するいわゆるインナロータ形式のモータとしているが、アウタロータ型のスピンドルモータにしたとしても、本発明の実施はなんら妨げられない。
【0084】
(5−3 ヘッドによって発生されるモーメント)
ヘッド413は、第1の実施形態と同様に記録ディスク412の上面にのみ位置している。さらにヘッド413はヘッドアーム414に形成されたヘッドサスペンション415によって記録ディスク412に回転軸方向に押圧されている。
【0085】
第1の実施形態において定義した回転体支持中心点43を、同様の定義を用いて本実施形態においては回転体支持中心点443とする。
【0086】
本実施形態の縦断面図は第3の実施形態と同様であり、図6に示されているとおりである。ヘッドサスペンション415によって記録ディスク412に負荷される押圧力は、回転体支持中心点443のまわりに、図6に向かって左回りのモーメントを発生させている。これによって回転軸は図6に向かって角度の正方向に傾けられる。
【0087】
(5−4 軸受構造)
図10は、本実施形態の軸受機構404の縦断面図であり、図11は、そのラジアル動圧発生溝の展開模式図である。本実施形態における軸受機構404は、ベースプレート422に固定されたスリーブ442と、ロータハブ421と一体に固定されたシャフト441とから構成されている。スリーブ442は、円筒状の内周面を有し、その円筒状の内周面は軸受孔を構成している。シャフト441は、円筒状の外周面を有しており、径方向に微小な間隙を介して軸受孔に嵌合される。シャフト441の外周面と、スリーブ442の内周面との間の径方向間隙には、動圧発生流体が介在し、ラジアル動圧軸受444を構成している。さらに、スリーブ442の内周面には、ラジアル動圧発生溝446が回転軸方向に離間して一対形成されて、回転軸方向の2箇所においてラジアル動圧の発生を助けている。これら一対のラジアル動圧発生溝446のうち、上側のものをラジアル動圧発生溝446aとし、下側のものをラジアル動圧発生溝446bとする。また、同じくラジアル動圧軸受のうち、主に上側のラジアル動圧発生溝446aで動圧が高められて動圧軸受けを構成する軸受をラジアル動圧軸受444aとし、主に下側のラジアル動圧発生溝446bで動圧が高められて動圧軸受けを構成する軸受をラジアル動圧軸受444bとする。
【0088】
本実施形態において、ラジアル動圧軸受444は、鰊の骨の形状に似ていることから名づけられたヘリングボーン軸受としているが、回転時に溝の回転軸方向中央に向けて動圧を高める形状であれば、溝はサイン曲線形状のように滑らかに曲げた形でも良いし、軸方向の中間部に平滑部を設けた部分溝形式でも、あるいは逆に、魚の背骨のように、軸方向の中間部に複数の溝を連通する周方向溝を設けた形式でもよい。また、軸方向の上側と下側で非対称にし、以って回転軸方向にアンバランスな動圧を発生させる形状であってもよい。
【0089】
シャフト441の下端部には円環状のスラストプレート441bが一体に固定されている。スラストプレート441bの上端面は、スリーブ442の下面と回転軸方向に微小な間隙を介して対向している。一方、スリーブ442の下端部はカウンタプレート442bによって封止されている。スラストプレート441bの下端面は、このカウンタプレート442bと回転軸方向に微小な間隙を介して対向している。これらスラストプレート441bの上下に形成された回転軸方向の微小な間隙には、動圧発生流体が介在し、スラストプレート441bの上下2箇所にスラスト動圧軸受445を構成している。さらに、スリーブ442のスラストプレート441bの上端面と対向する面にはスラスト動圧発生溝447が形成されて、スラスト動圧の発生を助けている。また、カウンタプレート442bの上端面にもスラスト動圧発生溝447が形成されて、スラスト動圧の発生を助けている。これら2つのスラスト動圧軸受445は互いに上下逆方向のスラスト動圧を発生させており、回転軸方向の荷重を支持している。
【0090】
なお、本発明の実施の形態において、動圧発生流体には潤滑油が用いられている。回転の条件や、軸受の構成によって、この動圧発生流体として、空気・気体や、ゲル状体、グリースなどを用いてもよい。
【0091】
(5−5 対抗するモーメント)
本実施形態において、回転体支持中心点443は、ラジアル動圧軸受444とスラスト動圧軸受445の発生させる動圧力の中心であり、下側のラジアル動圧軸受444bよりもやや上側に位置している。
【0092】
そこで、上側のラジアル動圧発生溝446aのヘリングボーン溝同士の周方向の間隔を、周方向に変化させる。図11は、そのときのラジアル動圧発生溝446a及び446bを、展開して示した図である。図中の「A」の位置は、図10の左側に該当し、一方図中の「B」の位置は図10の右側に該当する。「A」に対応する位置では溝間隔は密であり、発生する動圧も大きい。また「B」に対応する位置では溝間隔が疎であり、径方向の同じ位置において発生する動圧は「A」の位置に比べて小さい。したがって、上側のラジアル動圧軸受444aにおいてはアンバランスな動圧が発生している。上側のラジアル動圧軸受444aは、回転体支持中心点443よりも上部に位置しているので、動圧によるアンバランスはモーメントを発生させる。このモーメントはAからBに向かって発生する動圧のアンバランス力によって発生し、回転軸を図10に向かって右回り(時計回り)の方向である。
【0093】
(5−6 作用)
(4−3)に記載されたヘッド415が発生するモーメントと、(5−5)に記載された上側のラジアル動圧軸受444aのアンバランスによって発生するモーメントとが対抗して、ヘッド415が発生するモーメントの一部を打ち消す。
【0094】
(5−7 効果)
本実施形態を実施すると、第1の実施形態と同様に、ヘッド413とそれを支持するヘッドアーム414及びヘッドサスペンション416によって15〜32[g・mm]ものモーメントが発生している。しかし、上側のラジアル動圧軸受444aの動圧発生を助けるラジアル動圧発生溝446の周方向の溝間隔に、周方向に疎密を設けることによりアンバランスを発生させている。そのラジアル動圧軸受444のアンバランスが、ヘッドによって負荷されるモーメントを打ち消す方向のモーメントを発生させている。こうして、ヘッド413が発生するモーメントの負荷を大幅に低減することが可能である。この構造によって、一定のラジアル動圧が負荷されることになるので、回転が安定する。しかも、軸受が支持するべきモーメント荷重が減少するので、軸受が必要とする剛性が大幅に増大することもなく、軸損が大幅に増大することを避けることができる。
【0095】
(第6の実施形態)
(6−1 記録ディスク及びスピンドルモータの構成)
本実施形態の記録ディスク駆動装置501及びスピンドルモータ502は第5の実施形態における記録ディスク駆動装置401及びスピンドルモータ402とほぼ同様である。ただ軸受機構504のみが、第5の実施形態の軸受機構404とは異なっている。なお、本実施形態においては、ロータマグネット432をステータ431の径方向内側に配置するいわゆるインナロータ形式のモータとしているが、アウタロータ型のスピンドルモータにしたとしても、本発明の実施はなんら妨げられない。
【0096】
(6−2 ヘッドによって発生されるモーメント)
本実施形態の縦断面図は第5の実施形態と同様であり、図9に示されているとおりである。ヘッドサスペンション415によって記録ディスク412に負荷される押圧力は、回転体支持中心点543のまわりに、図9に向かって左回りのモーメントを発生させている。これによって回転軸は図9に向かって角度の正方向に傾けられる。
【0097】
(6−3 軸受構造)
図12は、本実施形態の軸受機構504の縦断面図である。本実施形態における軸受機構504は、ベースプレート422に固定されたスリーブハウジング542cと、スリーブ542aと、ロータハブ521と一体に固定されたシャフト541とから構成されている。スリーブ542aは、円筒状の内周面を有し、その円筒状の内周面は軸受孔を構成している。シャフト541は、円筒状の外周面を有しており、径方向に微小な間隙を介して軸受孔に嵌合される。シャフト541の外周面と、スリーブ542aの内周面との間の径方向間隙には、動圧発生流体が介在し、ラジアル動圧軸受544を構成している。さらに、スリーブ542aの内周面には、一対のラジアル動圧発生溝546が回転軸方向に離間して形成されて、回転軸方向の2箇所においてラジアル動圧の発生を助けている。
【0098】
スリーブハウジング542cの上端部は、ロータハブ521の下側平坦面と回転軸方向に微小な間隙を介して対向している。また、シャフト541の下端にはスラストプレート541bが螺合されている。このスラストプレート541bの上端面と、スリーブ542aの下端面とが回転軸方向に微小間隙を介して対向している。これらの回転軸方向の微小な間隙には、動圧発生流体が介在し、スラスト動圧軸受545が構成されている。さらに、スリーブハウジング542cの上端面にはスラスト動圧発生溝547aが形成されて、スラスト動圧の発生を助けている。また、スリーブ542aの下端面にはスラスト動圧溝547bが形成されて、スラスト動圧の発生を助けている。これら2つのスラスト動圧軸受545aと545bとは互いに上下逆方向のスラスト動圧を発生させており、回転軸方向の荷重を支持している。
【0099】
図13(a)、(b)は、本実施の形態における上下それぞれのスラスト動圧軸受545のスラスト動圧発生溝547の形状をそれぞれ示している。本実施の形態において、上側、下側とも、スラスト動圧発生溝547aはスパイラル状であり、上側のスラスト動圧軸受545aの動圧発生溝547はシャフト541の回転によって径方向内方に動圧発生流体を送るいわゆるポンプイン形状に形成されている。また下側のスラスト動圧軸受545bのスラスト動圧発生溝547bも、シャフト541の回転によって径方向内方に動圧発生流体を送る、いわゆるポンプイン形状である。
【0100】
なお、本発明の実施の形態において、動圧発生流体には潤滑油が用いられている。回転の条件や、軸受の構成によって、この動圧発生流体として、空気・気体や、ゲル状体、グリースなどを用いてもよい。
【0101】
(6−4 対抗するモーメント)
本実施形態において、回転体支持中心点543は、ラジアル動圧軸受544とスラスト動圧軸受545の発生させる動圧力の中心であり、一対のラジアル動圧軸受の回転軸方向ほぼ中間に位置している。
【0102】
スラスト動圧発生溝547のスパイラル溝の周方向太さが変化されている。上側のスラスト動圧溝547aは、図13(a)に示されているように、図9に向かって右側において溝が太くされ、左側において細くされる。一方、下側のスラスト動圧溝547bは、図13(b)に示されているように、図9に向かって右側において溝が細くされ、左側において太くされる。溝が細い部分では、スラスト動圧発生溝547の溝数が多くなるので、動圧が高まる。一方溝が太い部分では、スラスト動圧発生溝547の溝数が減少し、動圧が弱まる。
【0103】
したがって、上側のスラスト動圧軸受545aでは、図9に向かって左側で動圧が高められ、右側では動圧があまり発生しない。上側のスラスト動圧軸受545aは回転体支持中心点543よりも上側に位置しているので、上側のスラスト動圧軸受545aが発生させる動圧は、回転軸であるシャフト541を回転体支持中心点543のまわりに右回り(時計回り)させるモーメントを発生させる。
【0104】
一方下側のスラスト動圧軸受545bでは、図9に向かって右側の動圧が高められ、左側の動圧はあまり発生しない。下側のスラスト動圧軸受545bは回転体支持中心点543よりも下側に位置しているので、下側のスラスト動圧軸受545bが発生させる動圧は、回転軸であるシャフト541を回転体支持中心点543のまわりに右回り(時計回り)させるモーメントを発生させる。
【0105】
こうして、上下両方のスラスト動圧軸受545が、回転軸に右回り(時計回り)のモーメントを付与する。
【0106】
(6−5 作用)
(6−2)に記載されたヘッド415が発生するモーメントと、(6−4)に記載された上下のスラスト動圧軸受545a、545bによって生じる動圧が発生するモーメントとが対抗して、ヘッド415が発生するモーメントの一部を打ち消す。
【0107】
(6−6 効果)
本実施形態を実施すると、第1の実施形態と同様に、ヘッド413とそれを支持するヘッドアーム414及びヘッドサスペンション416によって15〜32[g・mm]ものモーメントが発生している。しかし、スラスト動圧発生溝547a及びbの周方向太さを周方向に変化を設けることによって、ヘッドによって負荷されるモーメントを打ち消す方向のモーメントを発生させる。こうして、ヘッド413が発生させるモーメントによる荷重を大幅に低減することが可能である。この構造によって、一定のスラスト動圧が負荷されることになるので、回転が安定する。しかも、軸受が支持するべきモーメント荷重が減少するので、軸受が必要とする剛性が大幅に増大することもなく、軸損が大幅に増大することを避けることができる。
【0108】
(第7の実施形態)
(7−1 記録ディスク及びスピンドルモータの構成)
本実施形態の記録ディスク駆動装置601及びスピンドルモータ602は第5の実施形態における記録ディスク駆動装置401及びスピンドルモータ402とほぼ同様である。ただ軸受機構604のみが、第5の実施形態の軸受機構404とは異なっている。
【0109】
(7−2 ヘッドによって発生されるモーメント)
本実施形態の縦断面図は第5の実施形態と同様であり、図9に示されているとおりである。ヘッドサスペンション415によって記録ディスク412に負荷される押圧力は、回転体支持中心点643のまわりに、図9に向かって左回りのモーメントを発生させている。これによって回転軸は図9に向かって角度の正方向に傾けられる。
【0110】
(7−3 軸受構造)
図14は、本実施形態の軸受機構604の縦断面図である。本実施形態における軸受機構604は、ベースプレート422に固定されたスリーブハウジング642cと、スリーブ642aと、ロータハブ621と一体に固定されたシャフト641とから構成されている。スリーブ642aは、円筒状の内周面を有し、その円筒状の内周面は軸受孔を構成している。シャフト641は、円筒状の外周面を有しており、径方向に微小な間隙を介して軸受孔に嵌合される。シャフト641の外周面と、スリーブ642aの内周面との間の径方向間隙には、動圧発生流体が介在し、ラジアル動圧軸受644を構成している。さらに、スリーブ642aの内周面には、一対のラジアル動圧発生溝646が回転軸方向に離間して形成されて、回転軸方向の2箇所においてラジアル動圧の発生を助けている。
【0111】
スリーブハウジング642cの上端部は、ロータハブ621の下側平坦面と回転軸方向に微小な間隙を介して対向している。この回転軸方向の微小な間隙には、動圧発生流体が介在し、スラスト動圧軸受645が構成されている。さらに、スリーブハウジング642cの上端面にはスラスト動圧発生溝647が形成されて、スラスト動圧の発生を助けている。スラスト動圧軸受445はロータハブ621を上方に浮上させる方向にスラスト動圧を発生させており、回転軸方向の荷重を支持している。
【0112】
本実施の形態において、スラスト動圧発生溝647はスパイラル状であり、シャフト641の回転によって径方向内方に動圧発生流体を送るいわゆるポンプイン形状に形成されている。
【0113】
なお、本発明の実施の形態において、動圧発生流体には潤滑油が用いられている。回転の条件や、軸受の構成によって、この動圧発生流体として、空気・気体や、ゲル状体、グリースなどを用いてもよい。
【0114】
(7−4 対抗するモーメント)
本実施形態において、回転体支持中心点643は、ラジアル動圧軸受644とスラスト動圧軸受645の発生させる動圧力の中心であり、上側のラジアル動圧軸受644よりも回転軸方向やや下側に位置している。
【0115】
スラスト動圧軸受645を形成する回転軸方向の微小間隙が、周方向に変化されている。図9に向かって左側では回転軸方向の間隙が狭められており、一方向かって右側において回転軸方向の間隙が広げられている。回転軸方向の間隙が狭い部分では、スラスト動圧発生溝647による動圧発生効果に加え、静圧が高められるために圧力が高まる。一方回転軸方向の間隙が広い部分では、スラスト動圧発生溝647によって発生された動圧が、軸受間隙が広いために軸受空間に分散してしまい、圧力が高まらない。
【0116】
したがって、スラスト動圧軸受645では、図9に向かって左側で圧力が高められ、右側では圧力が高まらない。スラスト動圧軸受645は回転体支持中心点643よりも上側に位置しているので、スラスト動圧軸受645は、回転軸であるシャフト641を回転体支持中心点643のまわりに右回り(時計回り)させるモーメントを発生させる。
【0117】
(7−5 作用)
(7−2)に記載されたヘッド415が発生するモーメントと、(7−4)に記載されたスラスト動圧軸受645によって発生するモーメントとが対抗して、ヘッド415が発生するモーメントの一部を打ち消す。
【0118】
(7−7 効果)
本実施形態を実施すると、第1の実施形態と同様に、ヘッド413とそれを支持するヘッドアーム414及びヘッドサスペンション416によって15〜32[g・mm]ものモーメントが発生している。しかし、スラスト動圧軸受645を構成する回転軸方向の微小間隙を周方向に変化を設けることによって、ヘッド413によって負荷されるモーメントを打ち消す方向のモーメントを発生させる。こうして、ヘッド413が発生させるモーメントによる荷重を大幅に低減することが可能である。この構造によって、一定のスラスト動圧が負荷されることになるので、回転が安定する。しかも、軸受が支持するべきモーメント荷重が減少するので、軸受が必要とする剛性が大幅に増大することもなく、軸損が大幅に増大することを避けることができる。
【0119】
(他の実施形態)
本発明の実施形態は、上述の実施形態のほかにも発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、記録ディスクの直径の大小やディスクの枚数などは用途に応じて適宜決定されるべき事項である。
【0120】
また、第1〜第4の実施形態における軸受機構として動圧軸受の代わりに玉軸受を用いてもよい。玉軸受の場合には、回転軸を傾けようとする一方向のモーメントの負荷が低減されることによって、玉軸受の偏磨耗を低減することができる。また、回転体支持中心点は、玉軸受を用いた場合にも同じ定義に基づいて定義できることは言うまでもない。
【0121】
また、スピンドルモータがインナロータであるかアウタロータであるかは、本発明の実施になんら影響を及ぼすものではない。さらにステータの磁極歯数、ロータマグネットの形状などは、その満たすべき仕様によって適宜選択、変更されるべきものである。
【0122】
ラジアル動圧軸受を用いる場合、一対のラジアル動圧軸受けである必要はない。ひとつのラジアル動圧軸受であってもよいし、さらにはラジアル軸受と玉軸受の両方を用いた、いわゆるハイブリッド軸受を用いてもよい。
【0123】
また、スラスト動圧軸受は、スパイラル溝でなく、ヘリングボーン溝やステップ溝、その他の異形溝であってもよい。
【0124】
また、実施形態どおり、必ずしもスラスト動圧軸受とラジアル動圧軸受の両方が形成されていなくてもよい。例えば、円錐タイプの軸受を用いてもよい。円錐タイプの軸受は、スラスト動圧軸受とラジアル動圧軸受との両方の機能を備えており、小型化に適している。円錐タイプの動圧軸受は、シャフトに形成された円錐状の外周面を有するコーン部材と、その円錐状の外周面に平行な円錐状の内周面を有するスリーブとを備えて構成される。コーン部材の外周面又はスリーブの内周面のいずれか一方には動圧溝が形成されており、コーン部材の外周面とスリーブの内周面との間隙には潤滑流体が保持されて、円錐タイプの動圧軸受が形成される。
【0125】
さらに、スラスト方向は、摺動部材と点接触によって支持されるいわゆるピボット軸受によって支持されていてもよい。さらに、動圧軸受はその動圧発生流体が、液体の油脂、その他の高分子化合物であってもよく、または各種の気体、圧縮気体、空気であってもよい。特に、高回転で用いられる場合には、軸損の低減は大きな課題であり、本発明による効果が著しい。また、気体軸受においては、高い軸受剛性を得ることが難しく、その点でも本発明を実施することによって大きな効果を得ることができるのは言うまでもない。一方、空気に比べて油脂は粘性が大きく、軸損が大きくなりやすいので、この場合にも本発明を実施することによる効果を得ることができる。
【0126】
したがって、本発明の真の精神および範囲内に存在する変形例は、すべて特許請求の範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の第1の実施形態を実施したスピンドルモータ及び記録ディスク駆動装置の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態におけるベースプレートの平面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を実施したスピンドルモータ及び記録ディスク駆動装置の断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態におけるスラストヨークの斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態におけるスラストヨークの斜視図である。
【図6】本発明の第3の実施形態を実施したスピンドルモータ及び記録ディスク駆動装置の断面図である。
【図7】本発明の第3に実施形態における磁気回路の平面模式図である。
【図8】本発明の第4の実施形態における磁気回路の平面模式図である。
【図9】本発明の実施形態を実施したスピンドルモータ及び記録ディスク駆動装置の断面図である。
【図10】本発明の第5の実施形態における軸受機構の断面図である。
【図11】本発明の第5の実施形態におけるラジアル動圧発生溝の展開模式図である。
【図12】本発明の第6の実施形態における軸受機構の断面図である。
【図13】本発明の第6の実施形態におけるスラスト動圧発生溝の模式図である。
【図14】本発明の第7の実施形態における軸受機構の断面図である。
【符号の説明】
【0128】
1、101、201、301、401、501、601 記録ディスク駆動装置
2、102、202、302、402、502、602 スピンドルモータ
3、103、203、303、403 磁気回路
4、104、204、404、504、604 軸受機構
11、111、211、411 筐体
12、112、212、412 記録ディスク
13、113、213、413 ヘッド
14、114、214、414 ヘッドアーム
15、115、215、415 ヘッドサスペンション
16、116、216、416 アクチュエータ
17、117、217、417 ピボット
21、121、221、421、521、621 ロータハブ
22、122、222、422 ベースプレート
22a、222a、422a ピボット取付孔
123 スラストヨーク
24 コイル逃がし孔
24a 延長されたコイル逃がし孔
31、131、231、331、431 ステータ
231a、331a コアバック
32、132、232、332、432 ロータマグネット
33、133、233、333、433 コイル
234 ステータ中心
35、135、235、335、435 磁極歯
235a、335a 磁極歯端面
41、141、441、541、641 シャフト
441b、541b スラストプレート
442 スリーブ
542a、642a スリーブ
442b カウンタプレート
542c、642c スリーブハウジング
43、143、243、343、443、543、643 回転体支持中心点
444、544、644 ラジアル動圧軸受
444a 上側のラジアル動圧軸受
444b 下側のラジアル動圧軸受
445、545、645 スラスト動圧軸受
545a 上側のスラスト動圧軸受
545b 下側のスラスト動圧軸受
446、546、646 ラジアル動圧発生溝
446a 上側のラジアル動圧発生溝
446b 下側のラジアル動圧発生溝
447、547、647 スラスト動圧発生溝
547a 上側のスラスト動圧発生溝
547b 下側のスラスト動圧発生溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体とロータマグネットと軸受機構を備え、該回転体は、ロータハブ及び、該ロータハブの外周面に固定取り付けられた記録ディスク及び、該ロータハブに取り付けられた該ロータマグネットを有し、静止部には、該ロータマグネットに対向して配置されたステータ及び、回転座標軸回りに該回転体を回転自在に支持する軸受支持機構を有しているスピンドルモータと、
前記記録ディスクの記録面上に配置され、前記記録ディスク上の情報を読み込み及び/又は書き込みするヘッド及び、該ヘッドを支持し、前記記録ディスク上の任意の位置に前記ヘッドを移動させ、ヘッドを前記記録ディスクに押圧するヘッドアームを有する情報アクセス手段と、
前記回転体の回転軸を一方向に傾けるモーメントを生じるバイアス手段と、
前記記録ディスク及び、前記スピンドルモータ及び、前記情報アクセス手段及び、前記バイアス手段を内部に収容する筐体とを備え、
前記静止部は前記筐体に対して静止して取り付けられ、前記情報アクセス手段は前記筐体に取り付けられ、
前記情報アクセス手段によって前記ヘッドが前記記録ディスクに押圧される押圧力は、前記回転体の回転軸を傾ける押圧力モーメントを発生させ、
前記バイアス手段が発生させるモーメントによって、前記押圧力モーメントの少なくとも一部が打ち消される記録ディスク駆動装置。
【請求項2】
前記ヘッドは記録ディスクのいずれか一方の面上にのみ配置されている請求項1に記載された記録ディスク駆動装置。
【請求項3】
前記ステータは複数の放射状に延伸する磁極歯を備え、該磁極歯にはコイルが巻回され、
前記バイアス手段が前記ロータマグネットと前記磁極歯とによって構成され、
前記ロータマグネットと前記ステータの磁極歯との間にはたらく磁気相互作用による力を、前記ロータマグネットの回転周方向に沿って一定方向に不均一にすることによって、前記バイアス力を発生させることを特徴とする請求項1又は2に記載された記録ディスク駆動装置。
【請求項4】
前記ロータマグネットの周面と対向する磁極歯の端部は、前記ロータマグネットの周面に沿った円筒面の一部となる形状として形成されており、
それぞれの前記磁極歯の前記ロータマグネットと対向する面の面積に、周方向に沿って差を生じさせることによって、前記バイアス力を発生させることを特徴とする請求項3に記載された記録ディスク駆動装置。
【請求項5】
前記ロータマグネットの周面と、それに対向する磁極歯の端部との間の距離に、周方向に沿って差を設けることによって、前記バイアス力を発生させることを特徴とする請求項3に記載された記録ディスク駆動装置。
【請求項6】
前記磁極歯に巻回されたコイルの巻数に、周方向の前記軸方向荷重負荷手段が形成された側と、回転軸を挟んで反対側とで差を設けることによって、前記バイアス力を発生させることを特徴とする請求項3に記載された記録ディスク駆動装置。
【請求項7】
前記磁極歯間の角度間隔を、
周方向の前記軸方向荷重負荷手段が形成された側と、回転軸を挟んで反対側とで一定の割合で不均一にすることによって、前記バイアス力を発生させることを特徴とする請求項3に記載された記録ディスク駆動装置。
【請求項8】
前記静止部のうち、少なくとも前記ロータマグネットと軸方向に対向する位置は強磁性体から構成されており、
前記バイアス手段は前記ロータマグネットと前記固定部材とから構成され、
前記ロータマグネットと前記固定部材とが発生させる軸方向の磁気的な吸引力を、前記ロータマグネットの回転周方向に沿って変化させることによって、前記バイアス力を発生させることを特徴とする請求項1又は2に記載された記録ディスク駆動装置。
【請求項9】
前記静止部の一部を構成し、前記筐体の一部を構成するスピンドルモータの基板部材を備え、
該基板部材が強磁性体で形成され、
前記ロータマグネットの軸方向一端は前記基板部材と対向しており、
前記基板部材の周方向の一部に孔または凹部もしくは凸部が形成され、前記基板部材と前記ロータマグネットとの磁気吸引力が周方向に沿って変化させることにより、前記バイアス力を発生させていること特徴とする請求項8に記載された記録ディスク駆動装置。
【請求項10】
前記ステータは複数の放射状に延伸する磁極歯を備え、該磁極歯にはコイルが巻回され、
前記基板部材の前記コイルと対向する部分にはあらかじめコイル逃がし孔が設けられており、
該コイル逃がし孔のうち、周方向の一部に配置されている前記コイル逃がし孔は前記ロータマグネットの軸方向一端側と対向する位置まで延伸され、前記基板部材と前記ロータマグネットとの磁気吸引力が周方向に沿って変化させることにより、前記バイアス力を発生させていること特徴とする請求項9に記載された記録ディスク駆動装置。
【請求項11】
前記静止部は、前記ロータマグネットの軸方向一端と対向する部分に形成された強磁性体であるスラストヨークを備え、
前記スラストヨークの周方向の一部に切り欠きまたは孔もしくは凹部あるいは凸部が形成され、前記基板部材に固定された前記スラストヨークと前記ロータマグネットとの磁気吸引力が周方向に不均一にされることにより、前記バイアス力を発生させることを特徴とする請求項8に記載された記録ディスク駆動装置。
【請求項12】
前記情報アクセス手段は、前記ヘッドをその一端に有するヘッドアーム及び、該ヘッドアームの他端が取り付けられ該ヘッドアームを回転自在に支持するアーム支持機構からなり、
該アーム支持機構は前記筐体上のアーム支持機構取り付け部において筐体に取り付けられており、
該アーム支持機構取り付け部と前記回転体の回転中心とを結ぶ線分と、
前記バイアス手段のモーメントによって前記回転体の回転軸を傾ける方向又はその方向と該回転中心に対して180度対称な方向と、
の間でなす角が、60度より大きく120度より小さい角度に設定されていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載された記録ディスク駆動装置。
【請求項13】
ベースプレート付きスピンドルモータであって、
回転体とロータマグネットと軸受機構を備え、該回転体は、記録ディスク載置面を外周部に有するロータハブ及び、該ロータハブに取り付けられた該ロータマグネットを有し、静止部には、該ロータマグネットに対向して配置されたステータ及び、回転座標軸回りに該回転体を回転自在に支持する軸受支持機構を有しているスピンドルモータと、
前記スピンドルモータ及び、前記バイアス手段及び、前記静止部を取り付けられたベースプレートと、で構成され、
前記ベースプレートには、前記記録ディスク上の情報を読み込み及び/又は書き込みするヘッドをその一端に有するヘッドアームを回転自在に支持するアーム支持機構の取り付け部があることを特徴とするベースプレート付きスピンドルモータ。
【請求項14】
前記ステータは複数の放射状に延伸する磁極歯を備え、該磁極歯にはコイルが巻回され、
前記バイアス手段が前記ロータマグネットと前記磁極歯とによって構成され、
前記ロータマグネットと前記ステータの磁極歯との間にはたらく磁気相互作用による力を、前記ロータマグネットの回転周方向に沿って一定方向に不均一にすることによって、前記バイアス力を発生させることを特徴とする請求項13に記載されたベースプレート付きスピンドルモータ。
【請求項15】
前記ロータマグネットの周面と対向する磁極歯の端部は、前記ロータマグネットの周面に沿った円筒面の一部となる形状として形成されており、
それぞれの前記磁極歯の前記ロータマグネットと対向する面の面積を周方向に沿って増減することによって、前記バイアス力を発生させることを特徴とする請求項14に記載されたベースプレート付きスピンドルモータ。
【請求項16】
前記ロータマグネットの周面とそれに対向する磁極歯の端部との間の距離を、周方向に沿って増減することによって、前記バイアス力を発生させることを特徴とする請求項14に記載されたベースプレート付きスピンドルモータ。
【請求項17】
前記磁極歯に巻回されたコイルの巻数を、周方向の配置位相によって増減することによって、前記バイアス力を発生させることを特徴とする請求項14に記載されたベースプレート付きスピンドルモータ。
【請求項18】
前記磁極歯間の角度間隔を、
周方向の配置位相によって増減することによって、前記バイアス力を発生させることを特徴とする請求項14に記載されたベースプレート付きスピンドルモータ。
【請求項19】
前記静止部のうち、少なくとも前記ロータマグネットと回転軸方向に対向する位置は強磁性体から構成されており、
前記バイアス手段は前記ロータマグネットと前記固定部材とから構成され、
前記ロータマグネットと前記固定部材とが発生させる回転軸方向の磁気的な吸引力を、前記ロータマグネットの回転周方向に沿って変化させることによって、前記バイアス力を発生させることを特徴とする請求項13に記載されたベースプレート付きスピンドルモータ。
【請求項20】
前記静止部の一部を構成し、前記筐体の一部を構成するスピンドルモータの基板部材を備え、
該基板部材が強磁性体で形成され、
前記ロータマグネットの回転軸方向一端は前記基板部材と対向しており、
前記基板部材の周方向の一部に孔または凹部もしくは凸部が形成され、前記基板部材と前記ロータマグネットとの磁気吸引力を周方向に沿って増減することにより、前記バイアス力を発生させていること特徴とする請求項19に記載されたベースプレート付きスピンドルモータ。
【請求項21】
前記ステータは複数の放射状に延伸する磁極歯を備え、該磁極歯にはコイルが巻回され、
前記基板部材の前記コイルと対向する部分にはあらかじめコイル逃がし孔が設けられており、
該コイル逃がし孔のうち、周方向の一部に配置されている前記コイル逃がし孔は前記ロータマグネットの回転軸方向一端側と対向する位置まで延伸され、前記基板部材と前記ロータマグネットとの磁気吸引力を周方向に沿って変化させることにより、前記バイアス力を発生させること特徴とする請求項20に記載されたベースプレート付きスピンドルモータ。
【請求項22】
前記静止部は、前記ロータマグネットの軸方向一端と対向する部分に形成された強磁性体であるスラストヨークを備え、
前記スラストヨークの周方向の一部に切り欠きまたは孔、もしくは凹部あるいは凸部が形成され、前記基板部材に固定された前記スラストヨークと前記ロータマグネットとの磁気吸引力を周方向で不均等にすることにより、前記バイアス力を発生させることを特徴とする請求項19に記載されたベースプレート付きスピンドルモータ。
【請求項23】
ベースプレート付きスピンドルモータであって、
前記アーム支持機構取り付け部と前記回転体の回転中心とを結ぶ線分と、
前記バイアス手段のモーメントによって前記回転体の回転軸を傾ける方向又はその方向と該回転中心に対して180度対称な方向と、
の間でなす角が、60度より大きく120度より小さい角度に設定されていることを特徴とする請求項13乃至22のいずれかに記載されたベースプレート付きスピンドルモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−147129(P2006−147129A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302391(P2005−302391)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】