説明

スペクトラム拡散クロックジェネレータ

【課題】 残ピークノイズを低減させることができるとともに、ジッターの増大を防止することのできるスペクトラム拡散クロックジェネレータを提供する。
【解決手段】 実施形態のスペクトラム拡散クロックジェネレータは、チャージポンプ回路1が、出力電流量が設定に応じて変化する可変電流源を有し、位相比較器14により検出された位相差に応じた期間、VCO11へ印加する電圧を制御するためのチャージ電流を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、スペクトラム拡散クロックジェネレータに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路のクロックの高周波化に伴い顕著となった電磁波放射問題への対策の1つとして、スペクトラム拡散クロックジェネレータが用いられる。
【0003】
スペクトラム拡散クロックジェネレータでは、PLL(Phase Locked Loop)回路のVCO(Voltage Controlled Oscillator)の出力を分周する分周器に対して、その通常の分周比Nを、定期的に、N+α(αは変調深度により決定される値)、N−αへ交互に変化させる。このとき、通常のPLLはゲインが一定であるので、位相比較器から出力される位相差量が大きいほどVCOへ入力される電圧の変化量も大きく、(N+α)分周周波数、(N−α)分周周波数の2箇所に電磁エネルギーのピークが残存し、ノイズ低減効果が薄れる。
【0004】
また、位相比較器の出力が入力されるチャージポンプは位相誤差量が大きいと位相制御感度が高くなるため、ピーク周波数においてジッターが増大するという問題も発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−211479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、残ピークノイズを低減させることができるとともに、ジッターの増大を防止することのできるスペクトラム拡散クロックジェネレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のスペクトラム拡散クロックジェネレータは、チャージポンプ回路が、出力電流量が設定に応じて変化する可変電流源を有し、位相比較器により検出された位相差に応じた期間、VCOへ印加する電圧を制御するためのチャージ電流を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るスペクトラム拡散クロックジェネレータの構成の例を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態のスペクトラム拡散クロックジェネレータで用いられるチャージポンプ回路およびチャージ電流量制御部の構成の例を示す回路図。
【図3】図2に示すチャージ電流量制御部の動作説明図。
【図4】第1の実施形態のスペクトラム拡散クロックジェネレータで用いられるチャージポンプ回路内の可変電流源の別の構成の例を示す回路図。
【図5】プログラム分周器の分周比を変更する周期の中間時点における理想的の位相誤差量を示す図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るスペクトラム拡散クロックジェネレータの構成の例を示すブロック図。
【図7】第2の実施形態のスペクトラム拡散クロックジェネレータで用いられるチャージポンプ回路の構成の例を示す回路図。
【図8】第2の実施形態のスペクトラム拡散クロックジェネレータで用いられる補助電流制御部の構成の例を示すブロック図。
【図9】図8に示す補助電流制御部の動作説明図。
【図10】本発明の第3の実施形態に係るスペクトラム拡散クロックジェネレータの構成の例を示すブロック図。
【図11】第2の実施形態のスペクトラム拡散クロックジェネレータで用いられる補助電流制御部の構成の例を示すブロック図。
【図12】図11に示す補助電流制御部の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、図中、同一または相当部分には同一の符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るスペクトラム拡散クロックジェネレータの構成の例を示すブロック図である。
【0011】
本実施形態のスペクトラム拡散クロックジェネレータは、その基本的な構成として、VCO11と、VCO11の出力クロックCK0を分周するプログラマブル分周器12と、基準クロック信号CKをM分周する分周器13と、プログラマブル分周器12の出力Bと分周器13の出力Aとの位相差を検出する位相比較器14と、位相比較器14により検出された位相差UPあるいはDNに応じた期間、VCO11へ印加する電圧を制御するためのチャージ電流を出力するチャージポンプ回路1と、チャージポンプ回路1の出力を平滑化してVCO11へ印加する電圧を発生するLPF(低域通過フィルタ)15と、により構成されるPLL回路を備えている。
【0012】
さらに、本実施形態のスペクトラム拡散クロックジェネレータは、プログラマブル分周器12から出力される分周クロックBの数をカウントするカウンタ16と、カウンタ16が一定周期をカウントするごとに、プログラマブル分周器12の分周比を変更する分周比変更部17とを有している。分周比変更部17は、カウンタ16のカウント値CNTに応じてプログラマブル分周器12の分周比の変動量(+1、±0、−1)を切り替える切り替え部171と、通常の分周比Nに、切り替え部171により設定された変動量を加算してプログラマブル分周器12へ与える分周比を出力する加算器172と、を備える。
【0013】
分周比変更部17が、プログラマブル分周器12の分周比を定期的に増減させることにより、本実施形態のスペクトラム拡散クロックジェネレータは、周波数が変調されたクロックを生成する。
【0014】
本実施形態のスペクトラム拡散クロックジェネレータは、チャージポンプ回路1が、出力電流量が設定に応じて変化する可変電流源と、チャージポンプ回路1の単位時間当たりのチャージ電流量を変化させるチャージ電流量制御部2と、を備える。
【0015】
チャージ電流量制御部2は、カウンタ16のカウント値CNTに応じてチャージポンプ回路1の可変電流源に対する設定を変更することにより、チャージポンプ回路1の単位時間当たりのチャージ電流量を変化させる。
【0016】
図2に、チャージポンプ回路1およびチャージ電流量制御部2の具体的な回路構成の例を示す。
【0017】
チャージポンプ回路1は、位相比較器14により検出された位相差信号UPをインバータIVで反転させた信号により導通が制御されるPMOSトランジスタPTと、位相比較器14により検出された位相差DNにより導通が制御されるNMOSトランジスタNTとが直列に接続され、PMOSトランジスタPTには可変電流源VIG1が接続され、NMOSトランジスタNTには可変電流源VIG2が接続されている。
【0018】
可変電流源VIG1は、並列接続が可能な3つの定電流源IG11、IG12、IG13と、その並列接続数を変化させるスイッチSW11、SW12と、を有している。
【0019】
同様に、可変電流源VIG2は、並列接続が可能な3つの定電流源IG21、IG22、IG23と、その並列接続数を変化させるスイッチSW21、SW22と、を有している。
【0020】
スイッチSW11、SW21は、チャージ電流量制御部2の出力信号S1によりそのオン/オフが制御され、スイッチSW12、SW22は、チャージ電流量制御部2の出力信号S2によりそのオン/オフが制御される。
【0021】
可変電流源VIG1は、スイッチSW11、SW12がともにオフしているときは定電流源IG11の単独接続であるが、スイッチSW11がオンすると定電流源IG11に定電流源IG12が並列接続され、さらにスイッチSW12がオンすると定電流源IG13がさらに並列接続される。
【0022】
同様に、可変電流源VIG2も、スイッチSW21、SW22がともにオフしているときは定電流源IG21の単独接続であるが、スイッチSW21がオンすると定電流源IG21に定電流源IG22が並列接続され、さらにスイッチSW22がオンすると定電流源IG23がさらに並列接続される。
【0023】
チャージ電流量制御部2は、カウンタ16のカウント値CNTを閾値C1と比較する比較器211と、カウンタ16のカウント値CNTを閾値C2(C2>C1)と比較する比較器212と、を有している。
【0024】
比較器211の出力信号S1は、CNT<C1のときはスイッチSW11、SW21をオフさせ、CNT≧C1のときはスイッチSW11、SW21をオンさせる。
【0025】
また、比較器212の出力信号S2は、CNT<C2のときはスイッチSW12、SW22をオフさせ、CNT≧C2のときはスイッチSW12、SW22をオンさせる。
【0026】
このようなチャージ電流量制御部2の制御により、カウンタ16のカウントが進むほど、可変電流源VIG1および可変電流源VIG2の並列接続される定電流源の数が増加し、可変電流源VIG1および可変電流源VIG2の電流量が増加する。
【0027】
図3に、カウンタ16のカウント値CNTに対する、位相比較器14により検出される位相誤差量およびチャージポンプ回路1の単位時間当たりのチャージ電流量の関係を示す。
【0028】
図3に示す例では、カウンタ16は繰返し周期が(K+1)のカウンタであり、カウント値CNTが0のときにプログラマブル分周器12の分周比が(N+1)とされ、カウント値CNTが1〜Kの間はプログラマブル分周器12の分周比がNとされるものとする。
【0029】
したがって、位相比較器14により検出される位相誤差量は、プログラマブル分周器12の分周比が(N+1)とされた直後が最も大きく、その後、位相誤差量は徐々に小さくなって行く。ここでは、カウント値CNTを0〜(C1−1)、C1〜(C2−1)、C2〜Kの期間に分け、それぞれの期間の位相誤差量を「大」、「中」、「小」とする。
【0030】
本実施形態では、この位相誤差量を区分するカウント値C1、C2をチャージ電流量制御部2比較器211、212に設定する閾値とする。
【0031】
したがって、チャージポンプ回路1の単位時間当たりのチャージ電流量は、カウント値CNTが0〜(C1−1)の期間は「小」、カウント値CNTがC1〜(C2−1)の期間は「中」、カウント値CNTがC2〜Kの期間は「大」と変化する。
【0032】
チャージポンプ回路1のPMOSトランジスタPTおよびNMOSトランジスタNT
は、位相比較器14により検出される位相誤差量が大きいほど導通時間が長くなる。そのため、チャージポンプ回路1の出力チャージ電流量は、チャージポンプ回路1の単位時間当たりのチャージ電流量を位相誤差量で積分した値となる。
【0033】
一般的なチャージポンプ回路では、単位時間当たりのチャージ電流量が固定されているため、位相誤差量が大きいほど、チャージポンプ回路の出力チャージ電流量も増大する。
【0034】
しかし、本実施形態のチャージポンプ回路1では、単位時間当たりのチャージ電流量が、位相比較器14により検出される位相誤差量が「大」の期間は「小」、位相誤差量が「中」の期間は「中」、位相誤差量が「小」の期間は「大」と変化する。
【0035】
そのため、チャージポンプ回路1の出力チャージ電流量は、位相誤差量に対する相関が低くなり、本実施形態のPLL回路の位相制御感度は平坦化される。
【0036】
なお、可変電流源VIG1および可変電流源VIG2として、1つの定電流源と、この定電流源に接続され、チャージ電流量制御部2により抵抗値が制御される可変抵抗と、を備える回路を用いるようにしてもよい。
【0037】
図4に、可変抵抗を用いて構成した可変電流源VIG1の回路の例を示す。この例では、定電流源IG1に、可変抵抗としてR−2Rラダー回路が接続されている。R−2Rラダー回路は、定電流源IG1の電流Iを、1/2・I、1/4・I、1/8・Iと分流する。図4に示す例では、チャージ電流量制御部2の出力信号S1、S2によりスイッチSW11、SW12が制御される。分流電流1/2・Iに対して、スイッチSW11がオンすると分流電流1/4・Iが加算され、SW12がオンすると分流電流1/8・Iが加算される。
【0038】
このような本実施形態によれば、チャージポンプ回路1の単位時間当たりのチャージ電流量をカウンタ16のカウント値CNTに応じて変化させることができるので、チャージポンプ回路1の出力チャージ電流量の位相誤差量に対する相関を低くすることができる。そのため、プログラマブル分周器12の分周比を(N±1)に変化させた直後のVCO11の周波数の変化量を小さくすることができ、残ピークノイズを低減させることができる。また、PLL回路の位相制御感度を平坦化するため、(N±1)分周直後のジッターも低減させることができる。
【0039】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、カウンタ16のカウント値CNTに応じてチャージポンプ回路1の単位時間当たりのチャージ電流量を変化させることにより、プログラマブル分周器12の出力Bと分周器13の出力Aとの位相差を一定の変化率で減少させることを図っている。理想的には、カウンタ16のカウント値CNTが0のとき最大VCO11の出力クロックCK0の1周期分あった位相差が、カウンタ16のカウント値CNTがKになったとき丁度0になるのが望ましい。その場合、図5に示すように、カウンタ16のカウント値CNTがカウント周期(K+1)の中間値のとき、位相比較器14により検出される位相誤差量が、VCO11の出力クロックCK0の1/2周期分であることが理想的である。
【0040】
すなわち、図5(a)に示すように、プログラマブル分周器12の当初の分周比が(N+1)であった場合、位相比較器14により検出される位相誤差信号UPの誤差量は、カウンタ16のカウント値CNTが0のときにVCO11の出力クロックCK0の周期Tに相当する位相誤差量を示す。これが、カウンタ16のカウント値CNTが1/2(K+1)のとき、1/2・Tとなっているのが理想的である。
【0041】
同様に、プログラマブル分周器12の当初の分周比が(N−1)であった場合は、カウンタ16のカウント値CNTが1/2(K+1)のとき、位相比較器14により検出される位相誤差信号DNの誤差量が1/2・Tとなっているのが理想的である。
【0042】
そこで、本実施形態では、カウンタ16のカウント値CNTがカウント周期の中間値であるときの位相誤差信号UP、DNの誤差量をVCO11の出力クロックCK0の半周期と比較して位相遷移量の過不足を判定し、その判定結果に応じてチャージポンプ回路の単位時間当たりのチャージ電流量の補正を行ない、以降の位相遷移量の調整を行うことができるスペクトラム拡散クロックジェネレータの例を示す。
【0043】
図6は、本発明の第2の実施形態に係るスペクトラム拡散クロックジェネレータの構成の例を示すブロック図である。
【0044】
本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、チャージポンプ回路1Aが、可変電流源VIG1、VIG2のそれぞれに並列に接続される補助電流源を有する点と、その補助電流源の出力電流量を制御する補助電流量制御部3を備えている点である。ここで、図1に示したブロックと同じ機能のブロックについては図1と同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0045】
図7は、チャージポンプ回路1Aの具体的な回路構成の例を示す回路図である。
【0046】
図7に示すチャージポンプ回路1Aでは、図2に示したチャージポンプ回路1の構成に対して、可変電流源VIG1に並列に補助電流源HIG1が接続され、可変電流源VIG2に並列に補助電流源HIG2が接続されている。
【0047】
補助電流源HIG1は、並列接続が可能な2つの定電流源IG31、IG32と、その並列接続数を変化させるスイッチSW31、SW32を有している。
【0048】
同様に、補助電流源HIG2は、並列接続が可能な2つの定電流源IG41、IG42と、その並列接続数を変化させるスイッチSW41、SW42を有している。
【0049】
スイッチSW31、SW41は、補助電流量制御部3の出力信号H1によりそのオン/オフが制御され、スイッチSW32、SW42は、補助電流量制御部3の出力信号H2によりそのオン/オフが制御される。
【0050】
図8に、補助電流量制御部3の構成の例を示す。
【0051】
図8に示す例では、補助電流量制御部3は、位相比較器14から出力される位相誤差信号UPの信号幅をVCO11の出力クロックCK0の半周期と比較する比較器311と、位相比較器14から出力される位相誤差信号DNの信号幅をVCO11の出力クロックCK0の半周期と比較する比較器312と、カウンタ16のカウント値CNTが1/2(K+1)であるときの比較器311あるいは比較器312の出力にもとづいて位相遷移量の過不足を判定する判定部32と、を有する。
【0052】
判定部32は、位相遷移量の過不足の判定にもとづいて出力信号H1、H2の信号レベルを決定し、補助電流源HIG1、HIG2の各スイッチのオン/オフを制御し、補助電流源HIG1、HIG2の出力電流量を調整する。
【0053】
図9に、補助電流量制御部3の判定部32の判定と、出力信号H1、H2による補助電流源HIG1、HIG2の各スイッチのオン/オフの制御の関係を示す。なお、ここでは、初期状態では、出力信号H1は制御対象のスイッチをオンさせ、出力信号H2は制御対象のスイッチをオフさせるように設定されているものとする。すなわち、初期状態では、補助電流源HIG1は定電流源IG31の電流を出力し、補助電流源HIG2は定電流源IG41の電流を出力しているものとする。
【0054】
図9(a)に示すように、判定部32は、位相遷移量に関して、位相比較器14から出力される位相誤差信号UPの信号幅が、VCO11の出力クロックCK0の半周期と比較して、広いときは「不足」、等しいときは「適切」、狭いときは「過剰」、と判定する。
【0055】
図9(b)に、この判定と、出力信号H1、H2がそれぞれ制御するスイッチのオン/オフの関係を示す。
【0056】
判定が「不足」のときは、出力信号H1、H2が、それぞれ制御するスイッチをオンさせる。これにより、補助電流源HIG1は定電流源IG31と定電流源IG32の加算電流を出力し、補助電流源HIG2は定電流源IG41と定電流源IG42の加算の電流を出力するようになる。すなわち、初期状態に比べて、それぞれの出力電流が増加する。これにより、位相遷移率が増加し、位相遷移量の不足が解消されるようになる。
【0057】
判定が「適切」のときは、出力信号H1、H2は、初期状態を保つように、それぞれのスイッチを制御する。これにより、現状の位相遷移率が維持される。
【0058】
判定が「過剰」のときは、出力信号H1、H2が、それぞれ制御するスイッチをオフさせる。これにより、補助電流源HIG1、HIG2から電流が出力されなくなる。すなわち、初期状態に比べて、それぞれの出力電流が減少する。これにより、位相遷移率が低下し、位相遷移量の過剰が解消されるようになる。
【0059】
このような本実施形態では、VCO11の出力クロックCK0の1周期分の位相誤差量を与える周期の中間時点で、位相誤差量がVCO11の出力クロックCK0の1/2周期になっているかどうかを判定し、この判定結果をチャージポンプ回路1Aの単位時間当たりのチャージ電流量の制御へフィードバックする。そのため、チャージポンプ回路の単位時間当たりのチャージ電流量が補正され、以降の位相遷移率の適正化が図られる。これにより、より滑らかなスペクトラム拡散特性を得ることができる。
【0060】
また、スペクトラム拡散動作時、上述のフィードバック制御が常時働くため、温度変動などによるPLL特性の乱れに影響されることも防止することができる。
【0061】
なお、外乱等により突発的に定常位相差が増えるような場合には、位相遷移量の判定を、例えば中間時点の前後3点程度で行い、その判定結果から総合的に判断するようにすればよい。
【0062】
(第3の実施形態)
第2の実施形態では、補助電流量制御部3の判定部32の判定において、位相比較器14から出力される位相誤差信号UP、DNが示す位相誤差量が、VCO11の出力クロックCK0の半周期に等しいとき、位相遷移量が「適切」と判定している。すなわち、判定ポイントが1点である。したがって、この「適切」の判定は、かなりクリティカルな判定となる。そのため、位相誤差量がVCO11の出力クロックCK0の半周期に近づくと、「不足」と「過剰」の判定が交互に現れる可能性があり、チャージポンプ回路1Aの単位時間当たりのチャージ電流量が振動的に変化するおそれがある。そこで、本実施形態では、位相遷移量が「適切」と判定される幅を設定することのできるスペクトラム拡散クロックジェネレータの例を示す。
【0063】
図10は、本発明の第3の実施形態に係るスペクトラム拡散クロックジェネレータの構成の例を示すブロック図である。
【0064】
本実施形態の基本的な構成は第2の実施形態と同じであるが、本実施形態では、VCO11の出力クロックCK0を遅延器4、5で順次遅延させて、クロックCK0とは位相の異なるクロックCK1、CK2を生成し、クロックCK1をプログラム分周器12へ入力するクロックとしている。なお、プログラム分周器12は、クロックCK1の立ち下りに同期して分周動作を行うものとする。
【0065】
これにより、プログラム分周器12の入力クロックCK1に対して、クロックCK0は位相の進んだクロックとなり、クロックCK2は位相の遅れたクロックとなる。
【0066】
そこで、本実施形態の補助電流量制御部3Aは、このクロックCK0とクロックCK2を用いて、位相遷移量の判定を行う。この場合、遅延器4、5の遅延時間の合計が、位相遷移量が「適切」と判定される幅となる。
【0067】
図11に、補助電流量制御部3Aの回路構成の例を示す。
【0068】
図11に示す例では、補助電流量制御部3Aは、VCO11の出力クロックCK0で分周器13の出力Aを取り込むレジスタ331と、遅延器5から出力されるクロックCK2で分周器13の出力Aを取り込むレジスタ332と、レジスタ331の正転出力Qと反転出力QNのいずれかを選択するセレクタ341と、レジスタ332の正転出力Qと反転出力QNのいずれかを選択するセレクタ342と、カウンタ16のカウント値CNTが1/2(K+1)を示したときに、セレクタ341の出力Q1とセレクタ342の出力Q2にもとづいて位相遷移量の過不足を判定する判定部35と、を備える。
【0069】
セレクタ341、342の選択の切り替えは、分周比変更部17の切り替え部171から出力される切り替え信号Yにより行われる。すなわち、切り替え信号Yが+1(プログラム分周器12の分周比がN+1)のときは、レジスタ331、332の正転出力Qが選択され、切り替え信号Yが−1(プログラム分周器12の分周比がN−1)のときは、レジスタ331、332の反転出力QNが選択される。この切り替えは、プログラム分周器12の分周比が(N+1)のときと(N−1)のときとでは、分周器13の出力Aとプログラム分周器12の出力Bの位相関係が逆転することに対処するためのものである。
【0070】
次に、図12を用いて、補助電流量制御部3Aの動作を説明する。なお、ここでは、プログラム分周器12が(N+1)分周を行った後を例にとって説明する。また、図12(a)〜(c)に示す波形は、カウンタ16のカウント値CNTが1/2(K+1)を示した時点での波形である。
【0071】
図12(a)に示すように、位相遷移量が不足しているときは、クロックCK0の立ち上りよりも早く、分周器13の出力Aが立ち上がる。したがって、レジスタ331の正転出力Q(Q1)、レジスタ332の正転出力Q(Q2)は、ともに‘H’となる。
【0072】
一方、図12(b)に示すように、分周器13の出力Aの立ち上がりが、クロックCK0の立ち上りよりも遅く、クロックCK2の立ち上りよりも早い場合、レジスタ331の正転出力Q(Q1)は‘L’となり、レジスタ332の正転出力Q(Q2)は‘H’となる。このように、分周器13の出力Aの立ち上がりがクロックCK0の立ち上りとクロックCK2の立ち上りの間にあり、レジスタ331とレジスタ332の出力が異なる値となる場合、判定部35は、位相遷移量が「適切」と判定する。
【0073】
また、図12(c)に示すように、位相遷移量が過剰なときは、クロックCK2の立ち上りよりも遅く、分周器13の出力Aが立ち上がる。したがって、レジスタ331の正転出力Q(Q1)、レジスタ332の正転出力Q(Q2)は、ともに‘L’となる。
【0074】
図12(d)に、判定部35へ入力されるQ1、Q2の信号レベルと、位相遷移量の判定および出力信号H1、H2がそれぞれ制御するスイッチのオン/オフとの関係を示す。
【0075】
判定部35は、位相遷移量に関して、入力されるQ1、Q2の信号レベルがともに‘H’のときは、「不足」と判定し、Q1が‘L’でQ2‘H’のときは、「適切」と判定し、Q1、Q2の信号レベルがともに‘L’ のときは、「過剰」と判定する。
【0076】
なお、位相遷移量の判定と出力信号H1、H2により制御されるスイッチのオン/オフの関係は、第2の実施形態と同じであるので、ここでは、その説明を省略する。
【0077】
このような本実施形態によれば、遅延器4、5の遅延時間を設定することにより、位相遷移量が「適切」と判定される幅を任意に設定することができる。そのため、位相誤差量がVCO11の出力クロックCK0の半周期に近づいたときに、チャージポンプ回路1Aの単位時間当たりのチャージ電流量が無用に変動することを防止することができる。
【0078】
以上説明した少なくとも1つの実施形態のスペクトラム拡散クロックジェネレータによれば、残ピークノイズを低減させることができるとともに、ジッターの増大を防止することができる。
【0079】
また、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1、1A チャージポンプ回路
2 チャージ電流量制御部
3、3A 補助電流量制御部
4、5 遅延器
211、212、311、312 比較器
32、35 判定部
331、332 レジスタ
341、342 セレクタ
VIG1、VIG2 可変電流源
HIG1、HIG2 補助電流源
IG1、IG11〜IG13、IG21〜IG23、IG31、IG32、IG41、IG42 定電流源
SW11、SW12、SW21、SW22、SW31、SW32、SW41、SW42 スイッチ
PT PMOSトランジスタ
NT NMOSトランジスタ
IV インバータ
R、2R 抵抗
11 VCO
12 プログラマブル分周器
13 分周器
14 位相比較器
15 LPF
16 カウンタ
17 分周比変更部
171 切り替え部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VCOと、前記VCOの出力クロックを分周するプログラマブル分周器と、基準クロック信号を分周する分周器と、前記プログラマブル分周器の出力と前記分周器の出力との位相差を検出する位相比較器とを有するPLL回路を備え、前記プログラマブル分周器から出力される分周クロックの数をカウントするカウンタと、前記カウンタが一定周期をカウントするごとに前記プログラマブル分周器の分周比を変更する分周比変更手段とを有し、前記プログラマブル分周器の分周比を定期的に増減させて、周波数が変調されたクロックを生成するスペクトラム拡散クロックジェネレータであって、
出力電流量が設定に応じて変化する可変電流源を有し、前記位相比較器により検出された位相差に応じた期間、前記VCOへ印加する電圧を制御するためのチャージ電流を出力するチャージポンプ回路と、
前記カウンタのカウント値に応じて前記可変電流源の前記設定を変更し、前記チャージポンプ回路の単位時間当たりのチャージ電流量を変化させるチャージ電流量制御手段と
を備えることを特徴とするスペクトラム拡散クロックジェネレータ。
【請求項2】
前記チャージ電流量制御手段は、
前記カウンタのカウント開始時は前記可変電流源の出力電流量を小さくしておき、前記カウンタのカウント値が大きくなるほど前記可変電流源の出力電流量を増加させる
ことを特徴とする請求項1に記載のスペクトラム拡散クロックジェネレータ。
【請求項3】
前記チャージポンプ回路が、前記可変電流源に並列に接続され、初期状態では一定の電流を出力する補助電流源を有し、
前記カウンタのカウント値が予め定められた値を示した時点を観測時点とし、前記観測時点における前記プログラマブル分周器の出力と前記分周器の出力との位相差である観測時点位相差にもとづいて前記補助電流源の出力電流量を制御する補助電流量制御手段を
備えることを特徴とする請求項1または2に記載のスペクトラム拡散クロックジェネレータ。
【請求項4】
前記可変電流源が、
複数の定電流源と、
前記チャージ電流量制御手段によるスイッチング制御により、前記複数の定電流源の並列接続数を変化させるスイッチ群と
を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスペクトラム拡散クロックジェネレータ。
【請求項5】
前記可変電流源が、
定電流源と、
前記定電流源に接続され、前記チャージ電流量制御手段により抵抗値が制御される可変抵抗と
を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスペクトラム拡散クロックジェネレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−165036(P2012−165036A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21459(P2011−21459)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】