説明

スライディングモード制御を用いた制御装置及び制御方法

【課題】 車両用の無段変速機等の制御に好適な、スライディングモード制御を用いた制御に関し、制御のハンチングをより確実に防止することができるようにする。
【解決手段】 無段変速機の目標変速比に応じた可動プーリの第1目標ストロークx1*を設定し、第1目標ストロークx1*に、可動プーリの実ストロークxとこの第1目標ストロークx1*との偏差e´の大きさに応じた遅れを与えて得られる第2目標ストロークx2*を用いてスライディングモード制御の切り換え関数σを設計し、この切り換え関数σに基づいてスライディングモード制御の非線形入力u´nlを演算し、演算した非線形入力を含む制御入力によりスライディングモード制御により可動プーリの位置を制御し、目標変速比状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力される調整量により、この調整量に対応する状態に向けて制御系の状態を変化させる被制御システム、例えば無段変速機等に対して制御を行なう制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の無段変速機として、ベルト式無段変速機が知られているが、このベルト式無段変速機を制御するための制御装置は、プーリ位置やプライマリ回転数(駆動プーリの回転数)を制御対象として、無段変速機の変速比を、車両の運転状態に適合する変速比となるように制御していた。
この変速比の調整のために、一般に、ベルト式無段変速機においては、入力トルクに応じてセカンダリ油圧(従動プーリのベルト挟持力調整のための油圧)を設定するセカンダリ油圧制御系と、入力トルクおよびセカンダリ油圧に応じて、所定の変速比を得るのに必要なプライマリ油圧(駆動プーリのプーリ位置調整のための油圧)を設定する変速比制御系とを備えていた。
【0003】
ここで、変速比制御系では目標変速比を実現するために、対応する目標プーリ位置、或いは、目標プライマリ回転数が演算され、これらプーリ位置或いはプライマリ回転数の実値との偏差に基づくフィードバック制御によってプライマリ油圧の目標値が演算され、このプライマリ油圧の目標値となるように実油圧が調整されていた。
このようなフィードバック制御を行なうにあたっては、各種走行モード(発進、定常、キックダウン、手動変速、ブレーキなど)に応じて制御ゲインの調整、或いは、目標値の補正を行なうことにより、変速比のハンチングを防止して、変速制御の応答性、収束性の適正化が図られていた。
【0004】
この種の無段変速機において、制御ゲインを調整する技術として、例えば、特許文献1には、急ブレーキ時には通常の走行モードより制御ゲインを大きくして変速比が大側に移動する速度を上げ、それ以外の場合は制御ゲインを小さく維持する技術が開示されている。
また、目標値の補正を行なう技術として、例えば、特許文献2には、スロットルが急閉された場合など、目標のプライマリ回転数が急減したときに、PID制御器の過剰な積分制御により、実プライマリ回転数がアンダーシュートすることで変速比のハンチングが生じるのを防止するために、目標のプライマリ回転数の減少速度にリミッタをかける技術が開示されている。
【0005】
しかし、上記先行技術においては、基本的にはPID制御であることからロバスト性が低いとともに、以下の様な不具合がある。すなわち、(1)各種走行モード毎に、制御ゲインを調整、あるいは、目標値の補正を行なうために、制御ソフトウエアが複雑化する。(2)各種走行モード毎に、最適な制御ゲインや目標値の補正量を設定する必要があるために制御ソフトウエアの開発に時間がかかる。
【0006】
このような、PID制御の欠点を補うフィードバック制御として、ロバスト性が高く、前記(1)、(2)の問題が少ない、スライディングモード制御が知られている(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6等参照。)。
これらの技術は、基本的にはフィードフォワード演算にて得られた目標値に基づいて、スライディングモード制御器にてサーボ機構に対するフィードバック制御を行っている。
【0007】
しかし、スライディングモード制御では、その性質上、制御のハンチングが生じ易く、運転条件が限られているロボットのような分野では大きな問題とならないものの、他の多くの分野での各種装置の制御、例えば、車両用の無段変速機等の制御に適用すると、そのハンチングが無視できず、車両の乗り心地の低下につながるなどのおそれがあった。
そこで、例えば無段変速機をスライディングモード制御するに際して、このようなハンチングを抑制するようにした技術も提案されている(特許文献7参照)。
【0008】
この技術では、スライディングモード制御部により演算したスライディングモード制御量と、プライマリ油圧フィードフォワード項演算部にて演算したフィードフォワード制御量とを加算し、この加算した制御量(目標プライマリ油圧)によりプライマリ油圧制御アクチュエータを調整するようにしている。これにより、目標プライマリ油圧は、その全てがスライディングモード制御による制御量に基づくのではなく、フィードフォワード制御による制御量分が含まれることになり、フィードフォワード制御による制御量分が含まれている分だけ、そうでない場合に比べ、小さくなる。したがって、スライディングモード制御における非線形フィードバック項ゲインを小さくとれることになり、応答性を満足しつつ、ハンチングの防止ができる。
【0009】
さらに具体的には、以下の技術が記載されている。
スライディングモード制御量の演算において、該制御量の内の非線形フィードバック項の演算については、少なくともスライディングモード制御の位相空間上の切換え面に設けられた境界層内では、位相空間上の被制御システム(無段変速機の制御系)の状態点sと切換え面(切り換え関数で表される面)との距離で比例計算して得られる値よりも、絶対値として小さい値を与える非線形関数f(s)で状態点sを写像した値に基づいて、非線形フィードバック項の値を求めるようにしている(請求項4)。また、この場合の状態点sは、前記偏差に基づいて式fのごとく定義される(請求項5)。
s=k1・err´+k2・err+k3・ierr [式f]
そして、前記位相空間上の被制御システムの状態点sと前記切換え面との距離が、予め設定された値より大きい場合には、前記式(f)における偏差の積分演算を停止するとともに、該積分演算の停止までの積分量を保持する(請求項6)。
【0010】
したがって、例えば、無段変速機においてプライマリ油圧を制御する場合、その油圧制御にかかる状態点(PID制御量)sが切換え面(基準の状態)から一定以上離れたら、偏差の積分演算(PID制御量の内の積分制御量の項の演算)を停止し、積分制御量については、この積分演算の停止までの積分量を保持することになる。
【特許文献1】特許第2505420号公報
【特許文献2】特開平7−167234号公報
【特許文献3】特開平8−249067号公報
【特許文献4】特開昭61−271509号公報
【特許文献5】特開昭61−271510号公報
【特許文献6】特開平2−297602号公報
【特許文献7】特開平11−194801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献7の技術では、スライディングモード制御における非線形フィードバック項のうち積分制御項の増大が防止されるため、制御ハンチングの防止に有効ではあるが、状態点が切換え面から一定以上離れない場合には、スライディングモード制御における非線形フィードバック項に対する制御ハンチング対策等はなされないため、設定によっては制御ハンチングを十分に防止できないおそれがある。
【0012】
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、スライディングモード制御における制御のハンチングをより確実に防止することができるようにして、例えば車両用の無段変速機等の制御に適用すれば、制御ハンチングの防止により、車両の乗り心地や運転フィーリングを向上させることができるようにした、スライディングモード制御を用いた制御装置及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目標を達成するため、本発明のスライディングモード制御を用いた制御装置は、制御対象に関する特定のパラメータの実値を取得する実値取得手段と、前記特定のパラメータの目標値を設定する目標値設定手段と、前記実値取得手段により取得された実値と前記目標値設定手段により設定された目標値との偏差に基づいてスライディングモード制御の切り換え関数σを設計する切り換え関数設計手段と、前記切り換え関数設計手段により設計された切り換え関数σに基づいてスライディングモード制御の非線形入力を演算する非線形入力演算手段と、前記非線形入力演算手段により演算された非線形入力を含む制御入力によりスライディングモード制御により前記制御対象を制御する制御手段とをそなえ、前記目標値設定手段は、前記制御対象の目的状態に応じた前記特定のパラメータの第1目標値を設定する第1目標値設定手段と、前記第1目標値に対して、前記実値と前記第1目標値との偏差である第1偏差の大きさに応じた遅れを与えて出力する遅れフィルタを用いて前記目標値としての第2目標値を生成する第2目標値生成手段とをそなえていることを特徴としている(請求項1)。
【0014】
前記遅れフィルタの時定数は、前記第1偏差の大きさが大きいほど大きく、前記第1偏差の大きさが小さいほど小さく設定されることが好ましい(請求項2)。
また、前記遅れフィルタの時定数は、前記第1偏差の大きさが第1の所定範囲内の場合には一定値とされ、前記第1偏差の大きさが第1の所定範囲よりも大きい場合には、前記第1偏差の大きさの増加と比例して増大するように設定されることが好ましい(請求項3)。
【0015】
さらに、前記切り換え関数σの積分ゲインを、前記第1偏差が大きいほど小さくなるように前記第1偏差に応じて変更する積分ゲイン変更手段をそなえていることが好ましい(請求項4)。
もう一つの本発明のスライディングモード制御を用いた制御装置は、制御対象に関する特定のパラメータの実値を取得する実値取得手段と、前記特定のパラメータの目標値を設定する目標値設定手段と、前記実値取得手段により取得された実値と前記目標値設定手段により設定された目標値との偏差に基づいてスライディングモード制御の切り換え関数σを設計する切り換え関数設計手段と、前記切り換え関数設計手段により設計された切り換え関数σに基づいてスライディングモード制御の非線形入力を演算する非線形入力演算手段と、前記非線形入力演算手段により演算された非線形入力を含む制御入力によりスライディングモード制御により前記制御対象を制御する制御手段とをそなえるとともに、前記切り換え関数σの積分ゲインを、前記第1偏差が大きいほど小さくなるように前記第1偏差に応じて変更する積分ゲイン変更手段をそなえていることを特徴としている(請求項5)。
【0016】
前記積分ゲイン変更手段は、前記切り換え関数σの積分ゲインを、前記第1偏差の大きさが第2の所定範囲内の場合には最大値に設定し、前記第1偏差の大きさが前記第2の所定範囲よりも大きく第3の所定範囲内の場合には、前記第1偏差の大きさが小さいほど大きく、前記第1偏差の大きさが大きいほど小さく設定し、前記第1偏差の大きさが第3の所定範囲よりも大きい場合には最小値に設定することが好ましい(請求項6)。
【0017】
また、前記切り換え関数設計手段により設計する前記切り換え関数σの積分項を0にリセット指令するリセット指令手段をさらにそなえ、前記リセット指令手段は、前記制御対象に対する制御の完了前の制御中であると判断しうる第1状態のときには前記リセット指令は行なわず、前記制御対象が制御前の定常状態から制御開始となったと判断しうる第2状態のときには前記リセット指令を行なうことが好ましい(請求項7)。なお、制御中であるか、又は、定常状態からの制御開始であるかは、実値と第1目標値との偏差、又は、遅れフィルタの時定数(請求項2,3)の大きさによって判断することができる。
【0018】
例えば、前記制御対象を、車両用無段変速機の変速比を調整するための可動部材(可動プーリ)とし、前記特定のパラメータを前記可動部材(可動プーリ)の位置として制御する場合(請求項9)において、変速時には、定常状態から変速指令があると可動部材の第1目標変位が急変して実変位と第1目標変位との第1偏差が大きくなるが、その後は、第1偏差は小さくなっていくので、実変位と第1目標変位との偏差が所定値も小さい場合(遅れフィルタの時定数が所定の時定数よりも小さい場合)には、変速完了前の変速途中であると判断して、実変位と第1目標変位との偏差が大きい場合(遅れフィルタの時定数が所定の時定数よりも大きい場合)には、定常状態から変速を開始すると判断することができる。
【0019】
また、前記制御対象の数学モデルに基づいてスライディングモード制御の線形入力である等価制御入力を演算する線形入力演算手段をさらにそなえ、前記制御手段は、前記非線形入力演算手段により演算された非線形入力と前記線形入力演算手段により演算された等価制御入力との和を制御入力として前記制御対象を制御することが好ましい(請求項8)。
【0020】
さらに、前記制御対象は車両用無段変速機の変速比を調整するための可動部材(可動プーリ)であって、前記特定のパラメータは前記可動部材(可動プーリ)の位置であることが好ましい(請求項9)。
また、本発明のスライディングモード制御を用いた制御方法は、制御対象に関する特定のパラメータの実値を取得する実値取得ステップと、前記特定のパラメータの目標値を設定する目標値設定ステップと、前記実値取得ステップにより取得された実値と前記目標値設定ステップにより設定された目標値との偏差に基づいてスライディングモード制御の切り換え関数σを設計する切り換え関数設計ステップと、前記切り換え関数設計ステップにより設計された切り換え関数σに基づいてスライディングモード制御の非線形入力を演算する非線形入力演算ステップと、前記非線形入力演算ステップにより演算された非線形入力を含む制御入力によりスライディングモード制御により前記制御対象を制御する制御ステップとをそなえ、前記目標値設定ステップは、前記制御対象の目的状態に応じた前記特定のパラメータの第1目標値を設定する第1目標値設定ステップと、前記第1目標値に対して、前記実値と前記第1目標値との偏差である第1偏差の大きさに応じた遅れを与えて出力する遅れフィルタを用いて前記目標値としての第2目標値を生成する第2目標値生成ステップとをそなえていることを特徴としている(請求項10)。
【0021】
前記切り換え関数設計ステップでは、前記切り換え関数σの積分ゲインを、前記第1偏差に応じて変更することが好ましい(請求項11)。
もう一つの本発明のスライディングモード制御を用いた制御方法は、制御対象に関する特定のパラメータの実値を取得する実値取得ステップと、前記特定のパラメータの目標値を設定する目標値設定ステップと、前記実値取得ステップにより取得された実値と前記目標値設定ステップにより設定された目標値との偏差に基づいてスライディングモード制御の切り換え関数σを設計する切り換え関数設計ステップと、前記切り換え関数設計ステップにより設計された切り換え関数σに基づいてスライディングモード制御の非線形入力を演算する非線形入力演算ステップと、前記非線形入力演算ステップにより演算された非線形入力を含む制御入力によりスライディングモード制御により前記制御対象を制御する制御ステップとをそなえ、前記切り換え関数設計ステップでは、前記切り換え関数σの積分ゲインを、前記実値と前記第1目標値との偏差である第1偏差に応じて変更することを特徴としている(請求項12)。
【0022】
上記の各制御方法において、前記切り換え関数設計ステップにより設計する前記切り換え関数σの積分項を0にリセット指令するリセット指令ステップをさらにそなえ、前記リセット指令ステップでは、前記制御対象に対する制御の完了前の制御中であると判断しうる第1状態のときには前記リセット指令は行なわず、前記制御対象が制御前の定常状態から制御開始となったと判断しうる第2状態のときには前記リセット指令を行なうことが好ましい(請求項13)。
【発明の効果】
【0023】
本発明のスライディングモード制御を用いた制御装置(請求項1)及び制御方法(請求項10)によれば、制御対象の目的状態に応じた第1目標値に対して、実値とこの第1目標値との偏差である第1偏差の大きさに応じた遅れを与えて得られる第2目標値を目標値とするので、スライディングモード制御の非線形入力のチャタリングや制御対象のオーバシュートを抑制することができる。これにより、例えば、車両用無段変速機の変速比を調整するための可動部材(可動プーリ)を制御対象として、前記可動部材(可動プーリ)の位置を前記の特定のパラメータとして制御する場合(請求項9)、かかる無段変速機を備えた車両の目標変速比への変速安定性を高めて、車両の燃費向上や安定した乗車感を得ることができる。
【0024】
つまり、制御対象の目的状態を大きく変化させる場合には、第1目標値を大きく変化させることになるが、制御対象の目的状態への変化速度には限界があり、制御対象の状態(実値)と第1目標値との偏差(第1偏差)が大きい状態が継続してしまうことになる。このため、この第1偏差に基づいて切り換え関数を設計すると、切り換え関数に含まれる偏差の積分項がこの大きな第1偏差を累積的に加算して過剰な値になっていくため、非線形入力のチャタリングや制御対象のオーバシュートを招いてしまう。これに対して、第1目標値に対して、第1偏差の大きさに応じた遅れを与えて得られる第2目標値に基づいて切り換え関数を設計すると、第1目標値が大きく変化しても、第2偏差の大きさは抑制されるため、切り換え関数に含まれる偏差の積分項の過剰な増大を抑えることができ、非線形入力のチャタリングや制御対象のオーバシュートの発生を防止又は抑制することができる。
【0025】
特に、第2目標値を生成するための遅れフィルタの時定数を、第1偏差の大きさが大きいほど大きく、第1偏差の大きさが小さいほど小さく設定する(請求項2)、或いは、第1偏差の大きさの増加と比例して増大するように設定する(請求項3)ことにより、制御対象に対する本来の目標値(第1目標値)への追従性を確保しながら、非線形入力のチャタリングや制御対象のオーバシュートの発生を防止又は抑制する効果を得ることができる。また、第1偏差の大きさが一定以内に小さい(第1の所定範囲内の)場合には、遅れフィルタの時定数を一定値とすることにより(請求項3)、第2目標値を第1目標値に滑らかに収束させることができ、制御を円滑に行なえる。
【0026】
本発明のスライディングモード制御を用いた制御装置(請求項4,5)及び制御方法(請求項11,12)によれば、切り換え関数σの積分ゲインを、第1偏差に応じて変更するので、切り換え関数σの積分ゲインを、第1偏差が大きいほど小さくなるように第1偏差に応じて変更するので、スライディングモード制御の非線形入力のチャタリングや制御対象のオーバシュートを抑制することができる。これにより、例えば、車両用無段変速機の変速比を調整するための可動部材(可動プーリ)を制御対象として、前記可動部材(可動プーリ)の位置を前記の特定のパラメータとして制御する場合(請求項9)、車両の燃費向上や乗車感の向上や運転フィーリングの向上といった効果を得ることができる。
【0027】
つまり、制御対象の状態(実値)と目標値(第1目標値)との偏差(第1偏差)が大きいと切り換え関数に含まれる偏差の積分項が過剰な値になって、非線形入力のチャタリングや制御対象のオーバシュートを招いてしまうが、切り換え関数σの積分ゲインを、第1偏差が大きいほど小さくなるように変更するので、偏差の積分項が過剰な増大を抑えることができ、非線形入力のチャタリングや制御対象のオーバシュートの発生を防止又は抑制することができる。
【0028】
また、本発明のスライディングモード制御を用いた制御装置(請求項7)及び制御方法(請求項13)によれば、制御対象に対する制御の完了前の制御中であると判断しうる状態のときには切り換え関数σの積分項を0にするリセット指令は行なわず、制御対象が制御前の定常状態から制御開始となったと判断しうる状態のときには前記リセット指令を行なうことにより、切り換え関数σの積分項に適切な値を与えることができ、制御精度を高めることができる。これにより、例えば、車両用無段変速機の変速比を調整するための可動部材(可動プーリ)を制御対象として、前記可動部材(可動プーリ)の位置を前記の特定のパラメータとして制御する場合(請求項9)、変速比の応答遅れを抑制して変速性能を高め車両の燃費向上を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図4は本発明の一実施形態を説明するもので、これらの図に基づいて説明する。
図1はその制御装置の構成を示すブロック図、図2はその制御にかかるCVT油圧制御装置を搭載した車両のシステム構成図、図3はその制御の特性を示すグラフ、図4はその制御方法を説明するフローチャートである。
【0030】
[本制御にかかるCVT油圧制御装置搭載車両のシステム構成]
図2は、本制御にかかるCVT油圧制御装置を搭載した車両(自動車)のシステム構成図である。図2に示すように、エンジン10の動力はトルクコンバータ20及び前後進クラッチ25を介してCVT30に伝達される。CVT(ベルト式無段変速機)30は駆動側のプライマリプーリ31及び従動側のセカンダリプーリ32からなり、両者の間に介在されたベルト33により動力伝達を行なう。
【0031】
かかるCVT30ではこれらの駆動側及び従動側双方のプーリ31,32にかかる油圧を独立して制御することで変速が行われ、プライマリプーリ(駆動側プーリ,可動プーリ)31及びセカンダリプーリ(従動側プーリ)32はそれぞれプライマリスライドプーリ31a及びセカンダリスライドプーリ32aを備えている。このプライマリスライドプーリ31a及びセカンダリスライドプーリ32aを油圧によりスライドさせることで、プライマリプーリ31a及びセカンダリプーリ32aにおけるベルト回転半径を独立に変化させて変速を行なう。
【0032】
オイルポンプ40は、第1調圧弁51を介してプライマリ調圧弁71及びセカンダリ調圧弁72に油を供給し、第2調圧弁52を介してプライマリソレノイド61及びセカンダリソレノイド62に油を供給する油圧源である。また、プライマリソレノイド61及びセカンダリソレノイド62はCVTコントロールユニット(制御装置)100により制御されるソレノイドバルブであり、それぞれプライマリ調圧弁71及びセカンダリ調圧弁72と接続して信号圧を送ることで制御を行なう。
【0033】
(CVTプーリの油圧制御)
オイルポンプ40により発生した油圧は第1調圧弁51によりライン圧に調整され、プライマリ調圧弁71及びセカンダリ調圧弁72に供給される。また、第2調圧弁52によりパイロット圧とされてプライマリソレノイド61及びセカンダリソレノイド62に供給される。CVTコントロールユニット100はプライマリソレノイド61及びセカンダリソレノイド62を制御し、供給されたパイロット圧を所望の信号圧に調整してプライマリ調圧弁71及びセカンダリ調圧弁72に供給する。
【0034】
プライマリ調圧弁71及びセカンダリ調圧弁72は、供給された信号圧に基づいてライン圧を調圧し、それぞれプライマリスライドプーリ31a及びセカンダリスライドプーリ32aに油圧を供給してスライドさせる。以上示されるように、CVTコントロールユニット100によってプライマリソレノイド61及びセカンダリソレノイド62を制御することで、CVT30の変速を達成する。
【0035】
[CVTコントロールユニットの制御構成]
図1は、CVTコントロールユニット100による制御ブロック図である。図1に示すように、CVTコントロールユニット100は、外部入力取得部101と、推力,差推力演算部110と、スライディングモード制御部(スライディングモード制御器)120と、加算部102,103と、油圧フィードバック制御部(制御手段)130と、実変速比演算部150とをそなえ、油圧弁ソレノイド140(プライマリソレノイド61及びセカンダリソレノイド62)を制御し、CVT30の変速部(プーリ&ベルト)の状態を制御する。
【0036】
このうち、外部入力取得部101では、CVT30が接続されたエンジンのエンジン回転数Ne及びエンジンから変速機への入力トルク(エンジン負荷)Teなどの情報や、車速センサ(図示略)からの車速VSP,プライマリ回転センサ(図示略)からのプライマリプーリ回転数Npri,スロットル開度センサ(図示略)からのスロットル開度[入力トルク(エンジン負荷)Teの関連する情報]TV0などの情報を収集するとともに、変速指令(目標変速比)ip*を算出する。なお、目標変速比ip*は、車速VSP,プライマリプーリ回転数Npri及びスロットル開度TV0に基づき変速線により算出される。
【0037】
推力演算部110は、目標変速比ip*が維持できるようにベルトプーリに与えるべきバランス推力F*を演算するバランス推力演算部111と、実験結果から予め求めた変速時の変速速度を左右する(即ち、所定変速速度を出すための)差推力ΔFを演算する差推力演算部112とをそなえている。これらのバランス推力F*及び差推力ΔFは加算部102において加算され、これにより得られたバランス推力F*と差推力ΔFとの和Uffは、無段変速機のプーリ制御のフィードフォワード量としてベルトプーリに加えるべく出力される。
【0038】
また、実変速比演算部150では、プライマリ回転センサ(図示略)から入力されたプライマリ回転数Npri及びセカンダリ回転センサ(図示略)から入力されたセカンダリ回転数Nsecから実変速比rip(=Npri/Nsec)を算出する。
スライディングモード制御器120では、目標変速比ip*と実変速比ripとに基づいて実変速比が目標変速比へある程度の外乱などがあっても定常誤差なく安定に収束するように制御量を算出してベルトプーリに加えるべく出力する。
【0039】
このスライディングモード制御器120は、変速比−ストローク変換部(第1目標値設定手段)121aと、変速比−ストローク変換部121bと、補正目標変位生成部(第2目標値生成手段)122と、偏差演算部123と、切り換え関数用積分ゲイン設定部(積分ゲイン変更手段)124と、切り換え関数設計部(切り換え関数設計手段)125と、積分リセット司令部(リセット司令手段)126と、線形入力演算部(線形入力演算手段)127と、非線形入力演算部(非線形入力演算手段)128と、加算部129とをそなえる。なお、変速比−ストローク変換部121aと補正目標変位生成部122とから目標値設定手段が構成される。
【0040】
変速比−ストローク変換部121aでは、外部入力取得部101から入力された目標変速比ip*からプーリの目標変位(目標ストローク量、第1目標値に相当する)x1*を求める。また、変速比−ストローク変換部121bでは、実変速比演算部150から入力された実変速比ripからプーリの実変位(実ストローク量、実値に相当する)xを求める。変速比とプーリストロークとの間には相関関係があるので、これらの変換部121a,121bでは、この相関関係を例えばマップ化又はテーブル化しておき、これらに基づいて上記変換を行なう。
【0041】
偏差演算部123では、プーリの実変位xと目標変位x1*との偏差(第1偏差)e´(e´=x−x1*、図中及び数式中ではe上にバーを付して表記する)を演算する。また、偏差演算部123では、プーリの実変位xと後述の補正目標変位x2*との偏差(第2偏差)e(e=x−x2*)についても演算する。
補正目標変位生成部122には、遅れフィルタが備えられ、変換部121aで変換された目標変位x1*に対して遅れを与えて、補正目標変位(補正目標ストローク量、第2目標値に相当する)x2*として出力する。この遅れフィルタは、遅れにかかる時定数Tcを偏差演算部123で演算された第1偏差e´の大きさに応じて与えられる。
【0042】
つまり、図3に太線で示すように、第1偏差e´の大きさが大きくなるほど時定数Tcが大きくなるように設定される。ただし、ここでは、第1偏差e´の大きさが所定範囲(第1の所定範囲)内の場合は、時定数Tcを最小値に固定し、第1偏差e´の大きさが所定範囲(第1の所定範囲)よりも大きい場合に、時定数Tcは、第1偏差e´の大きさの増加に応じて線形に比例して増大する。
【0043】
このように、目標変位x1*に対して、第1偏差e´の大きさに応じた遅れを与えて補正目標変位x2*を生成することにより、図1に変位x,x1*,x2*の時間変化を示すが、変速開始時に、プーリの目標変位x1*が一気に立ち上がって、実変位xと目標変位x1*との偏差e´が急増するのに対して、この偏差e´に応じて偏差e´の大きさが大きいほど大きな遅れで補正目標変位x2*が変化するので、実変位xと目標変位x2*との偏差eは過剰に増大することがない。
【0044】
また、第1偏差e´の大きさが一定以内に小さい(第1の所定範囲内、即ち、図3に示すe1´〜e4´の間)場合には、遅れフィルタの時定数を一定値(最小値)とすることにより、目標変位x1*に対して一定の遅れをもって補正目標変位x2*が出力されるため、補正目標変位x2*を目標変位x1*に滑らかに収束させることができるようになっている。
切り換え関数用積分ゲイン設定部124では、スライディングモード制御の非線形入力の計算に用いる切り換え関数σの積分ゲインS1を第1偏差e´に基づいて設定する[S1=f(e´)]。つまり、図3に示すように、第1偏差e´の大きさが一定以内に小さい(第2の所定範囲内、即ち、図3に示すe2´〜e3´の間)場合には、積分ゲインS1を最大値に設定し、第1偏差e´の大きさが第2の所定範囲よりも大きく第3の所定範囲(即ち、図3に示すe1´〜e4´の間)内の場合には、積分ゲインS1を第1偏差e´の大きさが大きくなるほど小さくなるような特性で設定し、第1偏差e´の大きさが第3の所定範囲よりも大きい場合(即ち、第1偏差e´が図3に示すe1´よりも小さい場合及びe4´よりも大きい場合)には、積分ゲインS1を最小の一定値(最小値)に設定する。
【0045】
特に、第1偏差e´が第2の所定範囲外で且つ第3の所定範囲内(即ち、e1´〜e2´又はe3´〜e4´の間)にある場合、補正目標変位生成部122で用いる遅れフィルタの時定数Tcを利用し、次式(A)の関係により、積分ゲインS1を設定する。
【0046】
【数1】

切り換え関数設計部125では、偏差演算部123で求めたプーリの実変位xと補正目標変位x2*との偏差(第2偏差)e(e=x−x2*)と、切り換え関数用積分ゲイン設定部124で求めた積分ゲインS1を用いて次式(B)によりスライディングモード制御の切り換え関数σを計算する。
【0047】
【数2】

積分リセット司令部126では、スライディングモード制御の切り換え関数σの積分器(上記のS1∫edtの項)のリセット(積分項を0にすること)の要否に応じて、切り換え関数設計部125に積分リセット司令を出力する。つまり、本実施形態の場合、制御中において積分器をリセットすべき状態は変速開始時であり、逆に、変速中(変速が開始されたが完了していない場合)には積分器を有効に効かせなければ制御を滑らかに行なえないのでリセットすべきではない。ただし、このような積分リセット司令については、変速開始時と判断した時のみに行なうこととする。
【0048】
変速開始時には、プーリ実変位xに対して第1目標変位x1*が大きく離れるため第1偏差e´が大きくなるが、その後の変速中には第1偏差e´は次第に小さくなるので、第1偏差e´から変速開始時か変速中であるかを判定することができる。また、ここでは、第1偏差e´がある程度以上大きい領域(第1の所定範囲外)の場合、第1偏差e´と遅れフィルタの時定数Tcとが比例的な関係になるので、積分リセット司令部126では、第1偏差e´が小さい場合、即ち、遅れフィルタの時定数Tcが所定の時定数Tcminよりも小さい場合には、変速制御の変速途中だと判断して、この場合には、スライディングモード制御の切り換え関数σの積分器(上記のS1∫edtの項)をリセットしない。これにより、変速途中の余計な積分のリセットを防止し、スムーズに変速を完了させる。即ち、変速途中では積分のリセットを禁止することでプーリ推力が急に変動しなくなりスムーズに変速し運転フィーリングを崩さない。
【0049】
また、第1偏差e´が大きい場合、即ち、遅れフィルタの時定数Tcが所定の時定数Tcminよりも大きい場合、変速制御の定常状態からの変速開始だと判断して、スライディングモード制御の切り換え関数σの積分器をリセットする。これにより、変速開始時の無駄時間,遅れを少なくして変速応答性を高めることができる。
また、線形入力演算部127では、スライディングモード制御論理のもとで、制御対象の数学モデルに最も近い等価制御入力ueq´(数式中では、u上にハットマークを付して表記する)を次式(C)により計算する。
【0050】
【数3】

非線形入力演算部128では、切り換え関数設計部125で求めたスライディングモード制御の切り換え関数σと線形入力演算部127で求めた等価制御入力ueq´(状態フィードバック制御入力)に基づいて、制御対象の数式モデルの不確かさや外乱などがあってもスライディング条件を満たすようなスライディングモード制御の非線形入力unl´を次式(D)により計算する。
【0051】
【数4】

加算部129では、スライディングモード制御の非線形入力unl´と等価制御入力ueq´とを加算(=Uscm)する。
【0052】
そして、加算部103では、加算部102からのフィードフォワード制御入力Uffと加算部129からのスライディングモード制御入力Uscmとを加算する。
油圧フィードバック制御部(制御手段)130では、このように加算部103により算出された最終制御入力の推力を、各運転状態を考慮して各プーリに必要とする油圧に変換し、油圧指令を行ない、油圧指令に実油圧が追従するフィードバック制御を行なう。ただし、油圧フィードバック制御部130では、具体的には、油圧弁の駆動源となるソレノイドの電流制御を通じて油圧を制御するので、油圧指令を、油圧弁の駆動源となるソレノイド140の電流制御に変換して、油圧弁のソレノイド140を制御する。
【0053】
このように、油圧弁のソレノイド140が制御されることにより、無段変速機30では、油圧弁から供給された油圧によって無段変速機のプーリが軸方向に移動して変速が行なわれるようになっている。
[数学モデルからのスライディングモード制御の入力設計]
ここで、ベルト式無段変速機を数式モデルで表し、上記の非線形入力unl´と等価制御入力ueq´との導出について説明する。
【0054】
ベルト式無段変速機は次式(1)のような数式モデルで表すことができる。
無段変速機の数式モデル
【0055】
【数5】

定常誤差を無くすため、サーボ系スライディングモード制御の切り換え関数σを次式(2)のように定義する[次式(2)は前式(B)と同じもの]。
【0056】
【数6】

スライディングモード制御をサーボ系に適用するため、式(2)に基づいて、次式(3)のように積分値を付加した拡大形を用いる。
【0057】
【数7】

安定なスライディングモード制御システムを設計するためには、前記に定義された切り換え関数σがゼロに収束するような制御を考える。
【0058】
そのため、次式(4)のように、Lyapunov関数V=(1/2)σTσを導入する。
【0059】
【数8】

ここで、明らかにV≧0である。
したがって、Lyapunov関数が常に単調減少する(V<0)ならば、σは有限の時間でゼロになる。つまり、σが有限の時間でゼロになるには、V=σ・σ<0となればよい。
【0060】
前記のLyapunov安定条件からスライディングモードの制御入力である等価制御入力(状態フィードバック制御)ueq´と非線形入力unl´とを求める。
まず、次式(5)のように、数学モデル式(3)に最も近い等価制御入力ueq´をσ=0から求める。
【0061】
【数9】

また、外乱やシステムの不確かさに対してもスライディング条件を満たすために、次式(6)のように、切り換え平面(σ=0)で不連続な項(−Ksgn(σ))の非線形入力unl´を導入する。
【0062】
【数10】

ここで、前記の式(3)は、拡大系の無段変速機の数学モデルであるが、これを、不確かさをもつ実プラントモデルとすると次式(7)のように表すことができる。
【0063】
【数11】

ここで、安定条件V=σ・σ<0を満たす十分に大きなKを次式(8)のように求める。
【0064】
【数12】

ここで、上式のうちのα,β,ε,ηは、不確かさや外乱などに応じて決める設計パラメータである。
【0065】
非線形入力unl´は等価制御入力ueq´と似ている形なので、非線形入力unl´を次式(9)のように表すこともできる。
【0066】
【数13】

−Ksgn(σ)の切り換え関数sgn(σ)についての不連続チャタリングを防ぐため、飽和(saturation)関数を用いて次式(10)のように連続化する[式(10)は前記の式(D)と同じもの]。
【0067】
【数14】

ここで、上式のΦは、切り換え面の境界層の幅を決める設計パラメータ、即ち、不連続のsgn関数を連続化する区間を決める設計パラメータである。
【0068】
サーボ系のスライディングモード制御の最終制御入力は、非線形入力unl´と等価制御入力(状態フィードバック制御)ueq´との加算値として次式(11)のように纏められる[式(11)は前記の式(C)と式(D)とを合わせたもの]。
【0069】
【数15】

[CVTコントロールユニット(制御装置)による制御方法]
本発明の一実施形態にかかるCVTコントロールユニット(制御装置)100は、上述のように構成されているので、例えば図4に示すように変速制御が行なわれる。なお、図4のフローは所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0070】
つまり、まず、外部入力取得部101及び実変速比演算部150において、各検出手段から種々のデータ、例えば、エンジン回転数Ne,入力エンジントルクTe,車速VSP,プライマリプーリ回転数Npri,セカンダリプーリ回転数Nsec,スロットル開度TV0などを読み出す(ステップS10:実値取得ステップ)。そして、外部入力取得部101及び実変速比演算部150では、目標ip(目標変速比)ip*及び実ip(実変速比)ripを算出する(ステップS20:目標値取得ステップ)。
【0071】
これらの目標変速比ip*,実変速比ripは、スライディングモード制御器120の変速比−ストローク変換部121a,においてそれぞれストローク(変位)に変換され、第1目標変位x1*,実変位xが算出される(ステップS30:目標値取得ステップの第1目標値取得ステップ,実値取得ステップ)。そして、偏差演算部123において実変位xと第1目標変位x1*との偏差(第1偏差)e´(e´=x−x1*)が演算され(ステップS40)、この偏差e´が、閾値e1´,e4´と比較される(ステップS50)。
【0072】
ここで、偏差e´の大きさが閾値e1´,e4´以下、つまり、偏差e´が閾値e1´,e4´の間(第1の所定範囲内)にあれば、遅れフィルタの時定数Tcを最小値とし(ステップS60)、偏差e´の大きさが閾値−e1´,e4´よりも大、つまり、偏差e´が閾値e1´,e4´の外(第1の所定範囲外)にあれば、遅れフィルタの時定数Tcを偏差e´に比例して大きくする(ステップS70)。
【0073】
このように、目標変位x1*に対して、第1偏差e´の大きさに応じた遅れを与えて補正目標変位x2*を生成することにより、偏差e´の大きさが大きいほど大きな遅れで補正目標変位x2*が変化するので、実変位xと目標変位x2*との偏差eは過剰に増大することがない。
補正目標変位生成部(第2目標値生成手段)122では、このように時定数Tcを設定された遅れフィルタによって第1目標変位x1*を第2目標変位x2*に変換する(ステップS80:第2目標値取得ステップ)。そして、偏差演算部123において実変位xと第2目標変位x2*との偏差(第2偏差)e(e=x−x2*)が演算される(ステップS90)。この偏差eが、閾値e2´,e3´と比較される(ステップS100)。
【0074】
切り換え関数用積分ゲイン設定部(積分ゲイン変更手段)124では、偏差eの大きさが閾値−e2´,e3´以下、つまり、偏差eが閾値e2´,e3´の間(第2の所定範囲内)にあれば、切り換え関数σの積分ゲインS1を最大値s1とし(ステップS110)、偏差eの大きさが閾値−e2´,e3´よりも大、つまり、偏差eが閾値e2´,e3´の外(第2の所定範囲外)にあれば、切り換え関数σの積分ゲインS1を前記の式(A)の関係により、第1偏差e´の大きさが大きくなるほど小さくなるように設定する(ステップS120:積分ゲイン変更ステップ)。
【0075】
切り換え関数設計部(切り換え関数設計手段)125ではこのように設定された積分ゲインS1を用いて、前記の式(B)のように、切り換え関数σを設計する(ステップS130:切り換え関数設計ステップ)。
そして、時定数Tcを所定時定数Tcminと比較して(ステップS140)、ここで、時定数Tcが所定時定数Tcmin以上ならば、第1偏差e´の大きさが一定以上に大きい場合であり、ステップS140からステップS144に進んで、積分リセットフラグFrが0か否かを判断する。積分リセットフラグFrが0なら、変速制御の定常状態からの変速開始だと判断して、この場合には、スライディングモード制御の切り換え関数σの積分器をリセットする(ステップS160)。これにより、変速開始時の無駄時間,遅れを少なくして変速応答性を高めることができる。
【0076】
その後、積分リセットフラグFrを1にセットする(ステップS162)。
なお、積分リセットフラグFrは、スライディングモード制御の切り換え関数σの積分器を0にリセットする処理が複数回行なわれないようにするためのフラグであり、変速開始時に積分器のリセットが行なわれたら1とされ(ステップS162)、その後、次回の変速開始時に備えて、所定条件(下記のステップS141)を満たす場合、再び0に戻される(下記のステップS142)。
【0077】
一方、時定数Tcが所定時定数Tcminよりも小さければ、第1偏差e´の大きさが一定以内に小さい場合であり、変速制御の変速途中(即ち、変速開始時ではない)と判断して、この場合には、さらに、偏差eが閾値e2´と閾値e3´との間にある(e2´≦e≦e3´)か否かを判定し(ステップS141)、偏差eが閾値e2´と閾値e3´との間にあれば、ステップS142に進んで積分リセットフラグFrを0にクリアして、ステップS150に進み、偏差eが閾値e2´と閾値e3´との間で減少しなければ、ステップS142を経ずにステップS150に進む。ステップS150では、スライディングモード制御の切り換え関数σの積分器(上記のS1∫edtの項)をリセットしない。
【0078】
ステップS150の処理により、変速途中の余計な積分のリセットを防止し、スムーズに変速を完了させる。即ち、変速途中では積分のリセットを禁止することでプーリ推力が急に変動しなくなりスムーズに変速し運転フィーリングを崩さない。
なお、積分リセットフラグFrは、変速開始時に積分器のリセットが行なわれたら1とされるので(ステップS162)、次回の変速開始時に備えて0に戻す必要があるが、変速開始後に早期に積分リセットフラグFrを0に戻すと、積分器のリセットを複数回行なってしまうおそれがある。ステップS141の積分リセットフラグFrを0に戻す条件は、このような事態を回避するためである。つまり、偏差eが閾値e1´又は閾値e4´の前後でふらつく場合を想定すると、e<e1´又はe4´<eの状態(即ち、時定数Tcが所定時定数Tcmin以上の状態)からe1´≦e≦e4´の状態(即ち、時定数Tcが所定時定数Tcminよりも小さい状態)に変化しても、その後すぐに、e<e1´又はe4´<eの状態(即ち、時定数Tcが所定時定数Tcmin以上の状態)に戻ってしまうことが考えられ、時定数Tcが所定時定数Tcminよりも小さくなって直に積分リセットフラグFrを0に戻すと再び積分器のリセットすることが考えられる。そこで、時定数Tcが所定時定数Tcmin以上の状態から所定時定数Tcminよりも小さい状態に変化してもすぐには積分リセットフラグFrを0に戻さずに、偏差eが閾値e2´と閾値e3´との間の大きさまで十分に小さくなった(e2´≦e≦e3´)ところで、積分リセットフラグFrを0にクリアする(ステップS142)ようにしているのである。
【0079】
これにより、時定数Tcが所定時定数Tcmin以上であっても、ステップS144の判定でステップS150に進むため、スライディングモード制御の切り換え関数σの積分器のリセットは行なわれない。そして、変速動作の進行により、時定数Tcが所定時定数Tcmin未満の状態を確実に保持するようになった(e2´≦e≦e3´)時点で、上記のように、ステップS140,S141からステップS142を経るようになって、積分リセットフラグFrは0にリセットされることになる。
【0080】
このように、変速制御の定常状態からの変速開始時には、スライディングモード制御の切り換え関数σの積分器がリセットされ、そうでなければ、このリセットは行なわれずに、その後、線形入力演算部127で、等価制御入力ueq´(数式中では、u上にハットマークを付して表記する)を前記の式(C)により計算する(ステップS170:線形入力演算ステップ)。
【0081】
さらに、非線形入力演算部128で、切り換え関数σと等価制御入力ueq´(状態フィードバック制御入力)とに基づいて、スライディングモード制御の非線形入力unl´を前記の式(D)により計算する(ステップS180:非線形入力演算ステップ)。
そして、加算部129で、スライディングモード制御の非線形入力unl´と等価制御入力ueq´とを加算(=Uscm)する(ステップS190)。
【0082】
この一方で、推力演算部110で、バランス推力F*及び差推力ΔFが演算され、これらのバランス推力F*及び差推力ΔFは加算部102において加算されフィードフォワード制御入力Uffが求められる(ステップS200)。
加算部103で、加算部102からのフィードフォワード制御入力Uffと加算部129からのスライディングモード制御入力Uscmとを加算する(ステップS210)。
【0083】
油圧フィードバック制御部(制御手段)130では、算出された最終制御入力の推力を、各プーリに必要とする油圧に変換し(ステップS220)、この油圧指令を、油圧弁の駆動源となるソレノイド140の電流制御に変換して、油圧弁のソレノイド140を制御する(ステップS230:制御ステップ)。
このように、油圧弁のソレノイド140が制御され、無段変速機30では、油圧弁から供給された油圧によって無段変速機のプーリが軸方向に移動して変速が行なわれる。
【0084】
本制御によれば、制御対象であるプーリ位置の本来の目標変位(第1目標変位)x1*に対して、遅れを与えた第2目標変位x2*を用いてスライディングモード制御を行なうので、スライディングモード制御の非線形入力のチャタリングや制御対象のオーバシュートを抑制することができる。これにより、車両用無段変速機の変速比を調整するための可動プーリの位置制御を安定して行なうことができ、車両の目標変速比への変速安定性を高めて、車両の燃費向上や安定した乗車感を得ることができる。
【0085】
特に、第2目標変位x2*を生成するための遅れフィルタの時定数を、第1偏差e´の大きさが一定以内に小さい(第1の所定範囲内の)場合には、最小値とし、第1偏差e´の大きさが大きい(第1の所定範囲外の)場合には、第1偏差e´の大きさの増加と比例して増大するように設定するので、第2目標変位x2*を本来の目標値である第1目標変位x1*に滑らかに収束させることができ、制御を円滑に行なえる。
【0086】
また、切り換え関数σの積分ゲインを、第1偏差e´が大きいほど小さくなるように変更するので、スライディングモード制御の非線形入力のチャタリングや制御対象のオーバシュートを抑制することができる。これにより、無段変速機の変速比を調整するための可動プーリの位置制御を適切に行なえ、車両の燃費向上や乗車感の向上や運転フィーリングの向上といった効果を得ることができる。
【0087】
また、時定数に基づいて、変速制御の完了前の制御中であるか、或いは、変速制御前の定常状態から変速制御開始となった状態であるかを判断し、変速制御の完了前の制御中には、切り換え関数σの積分項を0にするリセット指令は行なわず、変速開始時には、かかるリセット指令を行なうので、変速途中の余計な積分のリセットを防止し、スムーズに変速を完了させることができ、変速開始時には、スライディングモード制御の切り換え関数σの積分器をリセットして、変速開始時の無駄時間,遅れを少なくして変速応答性を高めることができる。
(その他)
以上、本発明を実施するための最良の形態を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0088】
例えば、上記の実施形態では、ベルト式無段変速機の変速制御に関して説明したが、本発明の制御装置及び制御方法は、他の無段変速機の変速制御や、そのほか、入力される調整量により、この調整量に対応する状態に向けて制御系の状態を変化させる被制御システム、例えば無段変速機等に対して制御を行なう制御装置に広く適用することができる。
また、遅れフィルタの時定数の設定や、切り換え関数σ積分ゲインの設定や、積分器のリセット判定についても、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一実施形態にかかる制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるCVT油圧制御装置を搭載した車両のシステム構成図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる制御の特性を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態にかかる制御方法を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0090】
10 エンジン
20 トルクコンバータ
25 前後進クラッチ
30 CVT(ベルト式無段変速機)
31 駆動側のプライマリプーリ
31a プライマリスライドプーリ
32 従動側のセカンダリプーリ
32a セカンダリスライドプーリ
33 ベルト
40 オイルポンプ
51 第1調圧弁
52 第2調圧弁
61 プライマリソレノイド
62 セカンダリソレノイド
71 プライマリ調圧弁
72 セカンダリ調圧弁
100 CVTコントロールユニット(制御装置)
101 外部入力取得部
102,103 加算部
110 推力,差推力演算部
111 バランス推力演算部
112 差推力演算部
120 スライディングモード制御部(スライディングモード制御器)
121a 変速比−ストローク変換部(第1目標値設定手段)
121b 変速比−ストローク変換部
122 補正目標変位生成部(第2目標値生成手段)
123 偏差演算部
124 切り換え関数用積分ゲイン設定部(積分ゲイン変更手段)
125 切り換え関数設計部(切り換え関数設計手段)
126 積分リセット司令部(リセット司令手段)
127 線形入力演算部(線形入力演算手段)
128 非線形入力演算部(非線形入力演算手段)
129 加算部
130 油圧フィードバック制御部(制御手段)
140 油圧弁ソレノイド(プライマリソレノイド61及びセカンダリソレノイド62)
150 実変速比演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象に関する特定のパラメータの実値を取得する実値取得手段と、
前記特定のパラメータの目標値を設定する目標値設定手段と、
前記実値取得手段により取得された実値と前記目標値設定手段により設定された目標値との偏差に基づいてスライディングモード制御の切り換え関数を設計する切り換え関数設計手段と、
前記切り換え関数設計手段により設計された切り換え関数に基づいてスライディングモード制御の非線形入力を演算する非線形入力演算手段と、
前記非線形入力演算手段により演算された非線形入力を含む制御入力によりスライディングモード制御により前記制御対象を制御する制御手段とをそなえ、
前記目標値設定手段は、前記制御対象の目的状態に応じた前記特定のパラメータの第1目標値を設定する第1目標値設定手段と、前記第1目標値に対して、前記実値と前記第1目標値との偏差である第1偏差の大きさに応じた遅れを与えて出力する遅れフィルタを用いて前記目標値としての第2目標値を生成する第2目標値生成手段とをそなえている
ことを特徴とする、スライディングモード制御を用いた制御装置。
【請求項2】
前記遅れフィルタの時定数は、前記第1偏差の大きさが大きいほど大きく、前記第1偏差の大きさが小さいほど小さく設定されることを特徴とする、請求項1記載のスライディングモード制御を用いた制御装置。
【請求項3】
前記遅れフィルタの時定数は、前記第1偏差の大きさが第1の所定範囲内の場合には一定値とされ、前記第1偏差の大きさが第1の所定範囲よりも大きい場合には、前記第1偏差の大きさの増加と比例して増大するように設定されることを特徴とする、請求項1又は2記載のスライディングモード制御を用いた制御装置。
【請求項4】
前記切り換え関数の積分ゲインを、前記第1偏差が大きいほど小さくなるように前記第1偏差に応じて変更する積分ゲイン変更手段をそなえていることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のスライディングモード制御を用いた制御装置。
【請求項5】
制御対象に関する特定のパラメータの実値を取得する実値取得手段と、
前記特定のパラメータの目標値を設定する目標値設定手段と、
前記実値取得手段により取得された実値と前記目標値設定手段により設定された目標値との偏差に基づいてスライディングモード制御の切り換え関数を設計する切り換え関数設計手段と、
前記切り換え関数設計手段により設計された切り換え関数に基づいてスライディングモード制御の非線形入力を演算する非線形入力演算手段と、
前記非線形入力演算手段により演算された非線形入力を含む制御入力によりスライディングモード制御により前記制御対象を制御する制御手段とをそなえるとともに、
前記切り換え関数の積分ゲインを、前記第1偏差が大きいほど小さくなるように前記第1偏差に応じて変更する積分ゲイン変更手段をそなえている
ことを特徴とする、スライディングモード制御を用いた制御装置。
【請求項6】
前記積分ゲイン変更手段は、前記切り換え関数の積分ゲインを、前記第1偏差の大きさが第2の所定範囲内の場合には最大値に設定し、前記第1偏差の大きさが前記第2の所定範囲よりも大きく第3の所定範囲内の場合には、前記第1偏差の大きさが小さいほど大きく、前記第1偏差の大きさが大きいほど小さく設定し、前記第1偏差の大きさが第3の所定範囲よりも大きい場合には最小値に設定することを特徴とする、請求項4又は5記載のスライディングモード制御を用いた制御装置。
【請求項7】
前記切り換え関数設計手段により設計する前記切り換え関数の積分項を0にリセット指令するリセット指令手段をさらにそなえ、
前記リセット指令手段は、前記制御対象に対する制御の完了前の制御中であると判断しうる第1状態のときには前記リセット指令は行なわず、前記制御対象が制御前の定常状態から制御開始となったと判断しうる第2状態のときには前記リセット指令を行なうことを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載のスライディングモード制御を用いた制御装置。
【請求項8】
前記制御対象の数学モデルに基づいてスライディングモード制御の線形入力である等価制御入力を演算する線形入力演算手段をさらにそなえ、
前記制御手段は、前記非線形入力演算手段により演算された非線形入力と前記線形入力演算手段により演算された等価制御入力との和を制御入力として前記制御対象を制御することを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載のスライディングモード制御を用いた制御装置。
【請求項9】
前記制御対象は車両用無段変速機の変速比を調整するための可動部材であって、前記特定のパラメータは前記可動部材の位置であることを特徴とする、請求項1〜8の何れか1項に記載のスライディングモード制御を用いた制御装置。
【請求項10】
制御対象に関する特定のパラメータの実値を取得する実値取得ステップと、
前記特定のパラメータの目標値を設定する目標値設定ステップと、
前記実値取得ステップにより取得された実値と前記目標値設定ステップにより設定された目標値との偏差に基づいてスライディングモード制御の切り換え関数を設計する切り換え関数設計ステップと、
前記切り換え関数設計ステップにより設計された切り換え関数に基づいてスライディングモード制御の非線形入力を演算する非線形入力演算ステップと、
前記非線形入力演算ステップにより演算された非線形入力を含む制御入力によりスライディングモード制御により前記制御対象を制御する制御ステップとをそなえ、
前記目標値設定ステップは、前記制御対象の目的状態に応じた前記特定のパラメータの第1目標値を設定する第1目標値設定ステップと、前記第1目標値に対して、前記実値と前記第1目標値との偏差である第1偏差の大きさに応じた遅れを与えて出力する遅れフィルタを用いて前記目標値としての第2目標値を生成する第2目標値生成ステップとをそなえている
ことを特徴とする、スライディングモード制御を用いた制御方法。
【請求項11】
前記切り換え関数設計ステップで用いる前記切り換え関数の積分ゲインを、前記第1偏差が大きいほど小さくなるように前記第1偏差に応じて変更する積分ゲイン変更ステップをさらにそなえていることを特徴とする、請求項10記載のスライディングモード制御を用いた制御方法。
【請求項12】
制御対象に関する特定のパラメータの実値を取得する実値取得ステップと、
前記特定のパラメータの目標値を設定する目標値設定ステップと、
前記実値取得ステップにより取得された実値と前記目標値設定ステップにより設定された目標値との偏差に基づいてスライディングモード制御の切り換え関数を設計する切り換え関数設計ステップと、
前記切り換え関数設計ステップにより設計された切り換え関数に基づいてスライディングモード制御の非線形入力を演算する非線形入力演算ステップと、
前記非線形入力演算ステップにより演算された非線形入力を含む制御入力によりスライディングモード制御により前記制御対象を制御する制御ステップとをそなえるとともに、
前記切り換え関数設計ステップで用いる前記切り換え関数の積分ゲインを、前記第1偏差が大きいほど小さくなるように前記第1偏差に応じて変更する積分ゲイン変更ステップをそなえている
ことを特徴とする、スライディングモード制御を用いた制御方法。
【請求項13】
前記切り換え関数設計ステップにより設計する前記切り換え関数の積分項を0にリセット指令するリセット指令ステップをさらにそなえ、
前記リセット指令ステップでは、前記制御対象に対する制御の完了前の制御中であると判断しうる第1状態のときには前記リセット指令は行なわず、前記制御対象が制御前の定常状態から制御開始となったと判断しうる第2状態のときには前記リセット指令を行なうことを特徴とする、請求項10〜12の何れか1項に記載のスライディングモード制御を用いた制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−233558(P2007−233558A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52600(P2006−52600)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】