説明

スラブ連続鋳造機用ロール装置

【課題】故障などの不具合が少なく、耐久性の高いスラブ連続鋳造機用ロール装置を提供する。
【解決手段】軸方向に3本のロール体Rが並べられており、これらロール体Rのうちの中央に配置されている中央ロール体Rが、その両端部において軸方向に変位可能とされて自由転がり軸受Aにより支持されている。前記中央ロール体Rの端面は、凸状の球面部11を有しており、この中央ロール体Rに軸方向隣り合う他のロール体Rの端面は、前記凸状の球面部11と接触可能とされた凹状の球面部12を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スラブ連続鋳造機用ロール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶鋼からスラブ(鋳片)を連続的に鋳造する設備として連続鋳造機が知られている。この連続鋳造機はスラブを圧延して所定の形状とするためのロール装置を備えている。ロール装置は、通過させるスラブの両面側において多数のロールが鋳造方向(スラブ移動方向)に並べられた構成とされている。そして、鋳造方向に配置された複数本のロールで1組のセグメントが構成され、複数組のセグメントによりロール装置が構成されている。
近年スラブの連続鋳造において、スラブの内部亀裂、偏析等のスラブ品質問題の対策として、このロール装置のロールのピッチ寸法を小さくする傾向にある。つまり、ロール径を小さくすることでロールピッチを小さくしている。しかし、ロール径を小さくするとロールの強度が低下してしまう。
そこで、従来では1本のロールを両端でのみ軸受により支持していたが、図5のロール装置が有する1つのセグメントの平面図に示すように、ロールの途中部においても支持する構成が提案されている。つまり、従来では1本であったロールを軸方向に分割した複数のロール体から構成し、各ロール体の間に転がり軸受を設けている。なお、図5において、Rがロール体を示し、A及びBが転がり軸受を示している。
【0003】
そして、このようなロール装置に用いられる転がり軸受として従来知られるものに、例えば、特許文献1、特許文献2に示すものがある。
特許文献1に記載されている転がり軸受は、ロール体が撓んでその端部が撓み角を有しても転がり軸受のハウジングの凹球面部を外輪が滑動変位して、ロール体の撓みを許容させる構成である。また、スラブ連続鋳造機用ロール装置は高温の環境下で使用されるため、特許文献2では、転がり軸受においてロール体の熱膨張による軸方向変位を許容させた構成とされている。
【0004】
【特許文献1】実開平5−71438号公報
【特許文献2】実用新案登録第3086839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5に示しているロール装置が有するセグメントは、軸方向に主として3分割されたロール体Rからなるロール体列Lを鋳造方向(矢印e)に複数並べたものであり、各ロール体Rの両端部を回転可能に支持する転がり軸受は、ロール体Rの熱膨張による軸方向(アキシアル方向)の変位を吸収させるために、一方がロール体Rを軸方向に変位可能とさせた自由転がり軸受Aとされ、他方がロール体Rの軸方向の変位を拘束する固定転がり軸受Bとされている。
固定転がり軸受Bは、図4(b)に示すように、ロール体Rの端部に外嵌させた内輪31と、内輪31の径方向外方側の外輪34と、内輪31と外輪34との間に転動自在とされた複数の円筒ころ35と、外輪34に外嵌しかつベース部材36に装着された調心輪33とを有している。そして、外輪34と内輪31に鍔部32a,32bが形成され、内輪31を外嵌させたロール体Rはこの鍔部32a,32bにより外輪34(調心輪33)に対して軸方向の変位が拘束されている。
【0006】
従来において図5に示すように、ロール体列Lの軸方向中央部(セグメント中央部)付近に配置されるロール体Rの固定転がり軸受Bは、その他の部分に配置される軸受よりも損傷による不具合が発生する確率が高いことが判明した。これはスラブから負荷される荷重がロール体列Lの軸方向中央部側において大きく、かつ、固定転がり軸受には大きなアキシアル荷重が負荷されるからである。
そして、セグメントに組み込まれている転がり軸受がたとえ1つでも破損するとスラブ品質の低下につながるため、破損が生ずると製造ラインを停止させる必要があり、スラブの減産となってしまう。また、転がり軸受の破損等の不具合が生ずると、製造ライン停止時間をできるだけ短くするために、セグメントごと交換して作業の迅速化を図っている。これにより、予備セグメントが必要であり多大な費用が発生する。
【0007】
従って、不具合が起こりやすい中央部のロール体に対してはアキシアル荷重を受け持つ固定転がり軸受ではなく、アキシアル方向に変位可能で大きなアキシアル荷重が作用しない自由転がり軸受を用いることが考えられる。しかしこの場合、自由転がり軸受に支持されたロール体は軸方向に制限されることなく自由に移動できる。これにより、隣のロール体の端面と接触し、しかもロール体が撓んでその端部が傾き角を有するため、隣り合うロール体が相互の回転に悪影響を及ぼし、また、ロール体端面の角部が相手側に接触してロール体端部を傷つけるという問題点を有している。
そこで、この発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、耐久性が高く不具合により製造ラインが停止してしまうのを防ぐことのできるスラブ連続鋳造機用ロール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するためのこの発明は、軸方向に並べられた3本以上のロール体を備え、これらロール体のうちの少なくとも軸方向中央寄りに配置されている中央ロール体が、その両端部において軸方向に変位可能とされて転がり軸受により支持されているとともに、前記中央ロール体と、この中央ロール体に軸方向隣り合う他のロール体との対向している両端面のうち、一方の端面は凸状の球面部を有し、他方の端面は前記凸状の球面部と接触可能とされた凹状の球面部を有していることを特徴としている。
【0009】
スラブから負荷される荷重は、軸方向に並べられた3本以上のロール体からなるロール体列の軸方向中央部が大きくなるため、その中央部寄りに配置される中央ロールの転がり軸受において不具合が生ずる確率が高くなる。しかしこの構成によれば、この中央ロールの両端部を軸方向に変位可能として転がり軸受により支持していることで、つまり、両端部をロール体の軸方向の変位を可能とさせている自由転がり軸受により支持していることで、装置の不具合を抑えることができる。つまり、ロール体を軸方向に自由に変位させていることにより、ロール体とこれを支持している転がり軸受との間に無理な軸方向の荷重を作用させないため、損傷が少ない。
そして、中央ロール体は両端が自由転がり軸受により支持されているため、全体として軸方向の移動が自在となって、その軸方向に隣りのロール体と端部(端面)同士で接触する。しかし、これらロール体の対向する両端面は凸状の球面部と凹状の球面部とされているため、両ロール体の端面が相傾いても円滑に相対滑りして無理な偏荷重等が作用しない。さらに接触面積の増加により接触面圧が低下する。よって、ロール端面の損傷を防止できる。
【0010】
また、前記ロール体の端部に座金部材が取り付けられて、この座金部材に前記球面部が形成されているのが好ましい。この構成によれば、座金部材に形成した球面部を接触面とすることができ、これにより隣り合うロール体の球面部同士が接触し、長期にわたる使用によりその球面部が摩耗等して取替えが必要となっても、ロール体全体を取り換えるのではなく、座金部材のみを取り換えることで再生が可能となる。従ってメンテナンス費用を低減させることができる。さらに、座金部材をロール体と異なる材質とすることができ、例えば座金部材を特に耐摩耗性の優れた材質とすることができる。さらに、球面部の硬度を上げるために熱処理を施す場合、小さな座金部材に対して熱処理を行うことができ作業性に優れる。
【0011】
また、前記座金部材は、前記球面部が形成された面に開口するネジ孔を有しているのが好ましい。これによれば、座金部材をロール体から取り外す際に、例えばアイボルトのような取手部材を座金部材のこのネジ孔に螺合させ、取手部材を引っ張ることで座金部材をロール体から容易に取り外すことができる。
さらに、このネジ孔をグリース溜りとさせることができる。つまり、このネジ孔は座金部材の球面部に開口するよう形成されているため、ネジ孔にグリースを充填させることで、接触する凸・凹状の両球面部間において長期にわたってグリースによる潤滑状態が得られ、装置の寿命を長くさせることができる。
【0012】
また、前記凸状の球面部の曲率は、前記凹状の球面部の曲率よりも大きくされているのが好ましい。これにより、凹状の球面部に凸状の球面部を安定して接触させることができる。そして、隣り合うロール体の端面同士に偏荷重が生じず、接触面圧も低くなるため、凹状の球面部と凸状の球面部との間にかじりや焼き付きを起こすことがない。
【0013】
また、前記中央ロール体に軸方向隣り合う他のロール体の端部を支持している転がり軸受のうち、軸方向に並べられたロール体からなるロール体列の軸方向中央部に配置されている転がり軸受は、ロール体を軸方向に変位可能とさせて支持している自由転がり軸受とされているのが好ましい。
この構成によれば、スラブから負荷される荷重はロール体列の軸方向中央部が大きくなるため、その中央部付近に配置される転がり軸受に不具合が生ずる確率が高くなるが、中央ロール体以外のロール体を支持する転がり軸受のうち、中央部寄りのものを自由転がり軸受とすることにより、装置の不具合を抑えることができる。
【0014】
また、前記ロール体を支持している転がり軸受は自動調心軸受とされているのが好ましい。ロール体はスラブから荷重を受けるため撓みが生じ、転がり軸受により支持されるロール体の端部において撓み角が生ずるが、この構成によれば、ロール体の端部においてより大きい撓み角を許容できる。そして、中央ロール体の端部とこれに隣り合うロール体の端部とが相互異なる角度の撓み角を有して端面同士が接触しても、これらロール体の対向する両端面は凸状の球面部と凹状の球面部とされているため、円滑な相対滑りを許容して両ロール体が相互とも自由に回転ができる状態で、端面同士を接触させることが可能となる。さらに、接触面積が増大して、接触面圧を低下できる。これにより、ロール体端面の角部が衝突して損傷するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスラブ連続鋳造用ロール装置によれば、装置の耐久性を高めることができて長寿命化を図ることができる。装置の耐久性が高まることにより製造ラインを停止させることがなく、スラブの生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1はこの発明の実施の一形態に係るスラブ連続鋳造機用ロール装置の一部を示す平面図であり、このロール装置は、多数のロール体列Lが鋳造方向(以下、スラブ移動方向ともいう:矢印e)に並べられた構成であり、複数のロール体列Lが1組のセグメントを構成し、複数組のセグメントによりロール装置が構成されている。
1つのロール体列Lは、同心状として軸方向に並べて設けられた3本以上のロール体Rから構成されている。図1のロール装置は、主として3本のロール体Rと、各ロール体Rの両端部を夫々支持している転がり軸受A,Bとを備えている。
図1はこの1つのセグメントを示したものであり、ロール体Rの配置、転がり軸受A,Bの配置を示している。
【0017】
スラブの移動方向(矢印e)上流側から1列目のロール体列Lは4本のロール体Rからなり、回転駆動される駆動ロールを有している。上流側から2列目以下のロール体列Lはロール体Rが3本とされており、各ロール体Rの端部が転がり軸受A,Bに回転自在に支持された従動ロールとされている。なお、前記駆動ロールがなく、従動ロールのみで構成される場合もある。
さらに、上流側から2列目のロール体列L2について説明すると、ロール体列Lは軸方向一方側(左側)から、長さが順に長くなる短ロール体Ra、中ロール体Rb、長ロール体Rcと並んでいる。これにスラブ移動方向eに隣設されたロール体列L3においては、この短ロール体Ra、中ロール体Rb、長ロール体Rcの軸方向配置の順番が逆となる。つまり、3列目(L3)においては軸方向一方側(左側)から長ロール体Rc、中ロール体Rb、短ロール体Raとなるよう配置されている。このように左右交互に入れ替えて配置することで、スラブを全面においてロール体Rと接触させることができる。そして、2列目以降全てのロール体列(従動ロール体列)Lにおいて、中ロール体Rbが、ロール体列Lの軸方向中央寄りに配置されている中央ロール体となる。
【0018】
これらロール体Rの夫々は図1に示すように、その両端部において自由転がり軸受A又は固定転がり軸受Bにより回転可能に支持されている。自由転がり軸受Aは、支持するロール体Rを軸方向に変位可能とさせており、自由転がり軸受Aは、図2に示すように、ロール体Rの端部に外嵌させた内輪1と、この内輪1の径方向外方側に設けた外輪2と、これらの間に設けられて転動自在とされた複数個の円筒ころ3とを備えており、内輪1と円筒ころ3との間において軸方向の相対滑りを許容させている。
一方、固定転がり軸受Bは、支持するロール体Rの軸方向の変位を拘束している。つまり、図4(a)に示すように、固定転がり軸受Bは、外輪34の内周面(軌道)が球面とされ、外輪34と内輪31との間に樽型のころ35が複列設けられている自動調心ころ軸受とされている。
【0019】
さらに、図2の自由転がり軸受Aは、外輪2の外周面が凸状の球面とされており、この凸状の球面に、環状の調心輪4の内周面に形成した凹状の球面が接触し、自動調心軸受を構成している。そして、この調心輪4がベース部材5に形成した孔部に嵌合されている。図4(a)の固定転がり軸受Bは一般的ないわゆる自動調心軸受とされている。なお、本発明において自動調心軸受は、図2の型、図4(a)、(b)の型など、あらゆる自動調心型のものを包含する。これにより、ロール体Rが撓んだ際のロール体Rの端部の撓み角を許容している。
また、自由転がり軸受Aと固定転がり軸受Bにおいて、内輪1(31)が外嵌しているロール体Rの端部は、スラブが接触して通過する本体部よりも直径が小さくされている。
【0020】
1本のロール体列Lにおける構成を説明すると、図1に示すように、中央ロール体とされている中ロール体Rbは、その両端部が自由転がり軸受Aにより支持されている。これにより、中ロール体Rbは、軸方向両側に移動可能とされている。
短ロール体Raは中ロール体Rb側が固定転がり軸受Bとされその反対側(軸方向外側)が自由転がり軸受Aとされている。また、長ロール体Rcは中ロール体Rb側が自由転がり軸受Aとされその反対側(軸方向外側)が固定転がり軸受Bとされている。
【0021】
さらに、図2は中ロール体Rbと長ロール体Rcと、これらの間における一対の自由転がり軸受Aとを示す図であり、中ロール体Rbと長ロール体Rcとの間において、対向する両端面のうち一方の端面に凸状の球面部11が形成され、他方の端面にこの凸状の球面部11と接触可能とされた凹状の球面部12が形成されている。図2では、中ロール体Rbの端面に凸状の球面部11が形成されており、長ロール体Rc側に凹状の球面部12が形成されている。これと同様に、図示しないが、中ロール体Rbと短ロール体Raとの間において、対向する両端面のうち一方の端面に凸状の球面部11が形成され、他方の端面にこの凸状の球面部11と接触可能とされた凹状の球面部12が形成されている。
【0022】
従って、軸方向に変位する中ロール体Rbは、中ロール体Rbの両側において夫々凸状の球面部11と凹状の球面部12とを介して短ロール体Raと長ロール体Rcとに接触可能となり、中ロール体Rbの軸方向両側への変位は、隣の短ロール体Raの一端部を支持する固定転がり軸受B及び長ロール体Rcの一端部を支持する固定転がり軸受Bにより規制される。
【0023】
球面部11,12の構成について、図2と図3により説明する。これら球面部11,12は、隣り合うロール体Rの共通する共通中心線上の点を中心として(同一の点を中心として又は異なる2点を夫々中心として)夫々所定の半径で形成された球面とされている。
【0024】
ロール体Rは、中心部に冷却水を通過させるための孔部9が形成されており、ロール体Rの孔部9にスリーブ部材6を挿入させて軸方向隣り合う孔部9,9を連続させている。なお、スリーブ部材6の外周面と孔部9の内周面との間にはシール部材が設けられており、孔部9内の冷却水の漏れを防いでいる。また、ロール体Rb,Rcはスリーブ部材6に対して軸方向に拘束されていない。
従って、ロール体Rb,Rcの端面は環状とされており、この環状の端面が凸状の球面、凹状の球面とされた球面部11,12となる。
【0025】
図3はロール体Rb,Rcの他の実施の形態であり、ロール体Rb,Rcの端部には夫々座金部材7a,7bが取り付けられている。座金部材7a,7bはリング状の部材であり、ロール体Rb,Rcと同軸となるよう取り付けられている。座金部材7a,7bはロール体Rb,Rcの端部に形成された小径部13a、13bに軸方向からの圧入により外嵌されている。そして、中ロール体Rbに取り付けた座金部材7aの側面に凸状の球面部11が形成されており、長ロール体Rcに取り付けた座金部材7bの側面に凹状の球面部12が形成されている。そして、座金部材7a,7bの凸・凹状の球面部11,12が夫々形成された側面が、ロール体Rb,Rcの軸方向で最も端の面とされ、座金部材7aの凸状の球面部11が形成されている面と、座金部材7bの凹状の球面部12が形成されている面とが、相互の当接面となる。
このように、座金部材7a,7bを介在させることにより、長期にわたる使用によりその球面部11,12が摩耗等して取替えが必要となっても、ロール体Rb,Rc全体を取り換えるのではなく、座金部材7a,7bのみを取り換えることで再生が可能となる。
【0026】
さらに、座金部材7a,7bは、凸・凹状の球面部11,12が夫々形成された面に開口する軸方向のネジ孔8a,8bを有している。ネジ孔8a,8bは、座金部材7a,7bの曲面が形成されている側面に周方向複数箇所(例えば、90°ピッチで4箇所)設けられている。
このネジ孔8a,8bは、座金部材7a,7bをロール体Rb,Rcから取り外す際に、例えばアイボルトのような取手部材(図示せず)をこのネジ孔8a,8bに螺合させ、取手部材を引っ張ることで圧入させた座金部材7a,7bをロール体Rb,Rcから容易に取り外すことができる。さらに、このネジ孔8a,8bは座金部材7a,7bの球面部11,12に開口するよう形成されているため、ネジ孔8a,8bにグリースを充填させることにより、接触する両凸・凹状の球面部11,12間において長期にわたってグリースによる潤滑状態が得られる。
また、座金部材7a,7bの外周面は転がり軸受内部への異物の侵入を防止するためのシール部材14の摺接面とされている。ロール体Rb(Rc)が座金部材7a(7b)と共に回転して、ベース部材5の端部に嵌合させた円板部材15の内周面に取り付けられたシール部材14が座金部材7a(7b)の外周面を摺動することにより、ロール体Rb(Rc)本体の端部外周面がシール部材14により摩耗するのを防止できる。
【0027】
また、図2と図3において、凸状の球面部11の曲率は、凹状の球面部12の曲率よりも大きくされている。すなわち、凸状の球面部11の半径r1は、凹状の球面部12の半径r2よりも小さくされている(r1<r2)。これら半径r1,r2はこの大小関係を満たして任意の値に設定することができるが、例えば、半径r1,r2を共に800mm〜1200mmの範囲とし、凸状の球面部11の半径r1を、凹状の球面部12の半径r2の98%〜99.5%とすることができる。これにより、凹状の球面部12に凸状の球面部11を必ず接触させることができる。
さらに、図2と図3において、凸状の球面部11、凹状の球面部12が形成されている面は、焼き入れ・焼き戻し等の熱処理を施した熱処理部が形成されているのが好ましく、これにより耐摩耗性を向上させている。つまり、図3においては、座金部材7a,7bに熱処理を施している。
【0028】
以上の実施形態によれば、次のような作用効果を奏することができる。
スラブ連続鋳造用ロール装置においてスラブから負荷される荷重は、ロール体列Lの軸方向中央部が大きくなり、その中央部寄りに配置される中ロール体Rbの転がり軸受において損傷による不具合が生ずる確率が高くなる。しかし、この中ロール体Rbの両端部が自由転がり軸受Aにより支持されているため、この自由転がり軸受Aと中ロール体Rbとの間で軸方向の無理な荷重が作用しないため、故障を低減させることができる。
さらに、凸状の球面部11と凹状の球面部12により、隣り合う両ロール体の端面が相傾いても円滑に相対滑りして無理な偏荷重等が作用しない。さらに接触面積の増加により接触面圧が低下する。よって、ロール端面の損傷を防止できる。すなわち、中ロール体Rbが長ロール体Rc側や短ロール体Ra側へ移動して、相互が端面において接触した状態となっても、相互は凸状の球面部11と凹状の球面部12とにより安定して接触し、他の部分では接触することがない。これにより、隣り合うロール体Rb,Rc(Ra,Rb)は、凸状の球面部11と凹状の球面部12において滑らかに摺動して相互独立して回転することができる。
【0029】
図1に示すように、中央ロール体である長ロール体Rbに軸方向隣り合う他のロール体R、つまり、短ロール体Raと長ロール体Rcの端部を支持している軸受のうち、ロール体列Lの軸方向中央部(中央の領域G内)に配置されている軸受は、自由転がり軸受Aとされている。つまり、長ロール体Rcと中ロール体Rbとの間において隣接して設けられている一対の自由転がり軸受A,Aは、全てのロール体列Lにおいて、ロール体列Lの軸方向中央部(中央の領域G内)に配置されている。従って、この中央の領域Gには固定転がり軸受Bが存在しておらず、中央の領域G以外の側方の領域において固定転がり軸受Bが存在している。
【0030】
さらに中央ロール体とされている中ロール体Rbの配置について説明すると、図1に示すように、中ロール体Rbはロール装置中心線Cを跨ぐ位置に設けられており、転がり軸受(自由転がり軸受A及び固定転がり軸受B)はロール装置中心線C上には配置されていない。なお、ロール装置中心線Cとは、スラブ移動方向に複数設けられたロール体列Lの夫々の軸方向中心点を結ぶ直線となる。
【0031】
また、本発明のスラブ連続鋳造機用ロール装置は、図示する形態に限らずこの発明の範囲内において他の形態のものであっても良く、図示しないが、ロール体列Lが4本以上のロール体Rからなるよう構成してもよく、例えば4本の場合、これらロール体Rのうちの軸方向中央寄りの2本の中央ロール体Rを、その両端部において自由転がり軸受Aにより支持させればよい。
また、例えば、5本のロール体Rからロール体列Lがなる場合、真ん中の1本のみのロール体Rの両端部を自由転がり軸受Aにより支持してもよく、または、両端を除いた中央側の3本のロール体Rの夫々両端部を自由転がり軸受Aにより支持してもよい。
また、中央のロール体の両端部の支持軸受と、両端に配置される他のロール体の両最外端部を除く全ての支持軸受を自由転がり軸受Aとし、前記両最外端部の支持軸受のみ固定転がり軸受Bとしてもよい。これによれば、寸法制約の少ない両端の固定軸受に容量の大きなものを採用できるため、ロール装置全体の負荷容量を大きくできる。
または、ロール体列Lの全てのロール体Rの夫々両端部を自由転がり軸受Aにより支持し、これらロール体Rの軸方向の移動は、ロール体列Lの両側に(軸受とは別部材として)設けたガイド部材により規制させてもよい。
つまり、少なくとも軸方向中央寄りに配置されている中央ロール体Rを、その両端部において自由転がり軸受Aにより支持させればよい。
また、自動調心軸受の型は例示したものに限らずどのような型でもよい。1つのロール装置で複数の相異なる型を、使用条件や接触条件により様々に組み合わせてもよいし、全てを同じ型としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るスラブ連続鋳造機用ロール装置の一部を示す平面図である。
【図2】スラブ連続鋳造機用ロール装置が有するロール体と転がり軸受の縦断面図である
【図3】スラブ連続鋳造機用ロール装置が有するロール体と転がり軸受の他の実施の形態を示す縦断面図である。
【図4】(a)は固定転がり軸受を説明する説明図であり、(b)は他の形態の転がり軸受を説明する説明図である。
【図5】従来のスラブ連続鋳造機用ロール装置の一部を示す平面図である。
【符号の説明】
【0033】
7a 座金部材
7b 座金部材
8a ネジ孔
8b ネジ孔
11 凸状の球面部
12 凹状の球面部
A 自由転がり軸受
B 固定転がり軸受
L ロール体列
R ロール体
Ra 短ロール体
Rb 中ロール体
Rc 長ロール体
r1 凸状の球面部の半径
r2 凹状の球面部の半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に並べられた3本以上のロール体を備え、これらロール体のうちの少なくとも軸方向中央寄りに配置されている中央ロール体が、その両端部において軸方向に変位可能とされて自由転がり軸受により支持されているとともに、前記中央ロール体と、この中央ロール体に軸方向隣り合う他のロール体との対向している両端面のうち、一方の端面は凸状の球面部を有し、他方の端面は前記凸状の球面部と接触可能とされた凹状の球面部を有していることを特徴とするスラブ連続鋳造機用ロール装置。
【請求項2】
前記ロール体の端部に座金部材が取り付けられて、この座金部材に前記球面部が形成されている請求項1に記載のスラブ連続鋳造機用ロール装置。
【請求項3】
前記座金部材は、前記球面部が形成された面に開口するネジ孔を有している請求項2に記載のスラブ連続鋳造機用ロール装置。
【請求項4】
前記凸状の球面部の曲率は、前記凹状の球面部の曲率よりも大きくされている請求項1〜3のいずれか一項に記載のスラブ連続鋳造機用ロール装置。
【請求項5】
前記中央ロール体に軸方向隣り合う他のロール体の端部を支持している転がり軸受のうち、軸方向に並べられたロール体からなるロール体列の軸方向中央部に配置されている転がり軸受は、ロール体を軸方向に変位可能とさせて支持している自由転がり軸受とされている請求項1〜4のいずれか一項に記載のスラブ連続鋳造機用ロール装置。
【請求項6】
前記ロール体を支持している転がり軸受は自動調心軸受とされている請求項1〜5のいずれか一項に記載のスラブ連続鋳造機用ロール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−239767(P2006−239767A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62514(P2005−62514)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】