説明

タイヤトレッド面の断面形状ならびにトレッド溝の深さを測定する測定装置。

【課題】タイヤのトレッド面の断面形状とトレッド溝の深さを非接触で高速で測定する装置
【解決手段】この発明は、タイヤのトレッド面の断面形状を測定して、測定結果からトレッド溝の深さを計測する装置であり、タイヤのトレッド面近くに幅方向に並置するガイド機構と、トレッド面を単一光で照射する光源装置と、単一光の反射輝点を撮影するデジタルカメラと、光源装置並びにデジタルカメラをガイド機構に沿って移動させながら反射輝点を撮影する制御装置と撮影された画像データからトレッド面断面形状とトレッド溝の深さを測定する手段を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【発明の属する分野】
【0001】
本発明はタイヤのトレッド面の断面形状とトレッド溝の深さを計測する測定装置に関し、詳しくはトレッド面の断面形状とトレッド溝の深さを非接触で容易に測定できるタイヤトレッド面断面形状ならびにトレッド溝深さ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にタイヤトレッド面の溝は比較的溝幅が狭く深いため、深度ゲージ等による物理的な接触方式が多く採られている。これは溝形状が一様でなくうねりを伴ったパターンなど多様であり、数mmから10数mmの高低差を十分な精度で計測するには一番確実かつ簡便な方式であることに起因する。ただ、接触方式はプローブの挿入角度や溝底部の接触点の状態、ゲージの読み取り誤差などの要因により測定誤差を生じやすく、さらにゴムなどの弾性体では接触による変形誤差を生じる可能性も高い。また通常は一度に1点しか測定できないため、数多くの計測点を効率よく計測するには時間と工数を要する。さらにトレッド面の断面形状を計測することは深度ゲージでは不可能である。
【0003】
また、従来知られている非接触方式による測定装置は、トレッド溝に限らずトレッド断面形状の計測は可能であるが大型の装置であり専用の設置場所を必要とした。そのためタイヤを車両に装着した状態で計測することが難しいか、可能であっても車両を測定装置の設置場所に移動させるなど準備作業が必要で簡単に計測を行うことが困難であった。
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、タイヤのトレッド面の断面形状とトレッド溝の深さを、作業者の経験や操作方法あるいはタイヤの状態によらず測定精度が高く、なおかつ比較的容易に計測できることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、タイヤトレッド面の断面形状を計測する装置であり、タイヤトレッド面の幅方向にガイド機構を近接並置させることにより、ガイド機構の軸線を計測基線として計測基線に沿って移動する光源装置とデジタルカメラ、ならびに光源装置とデジタルカメラを移動させる制御装置を備えている事を特徴とするタイヤトレッド断面形状とトレッド溝の深さ測定装置である。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1の制御装置を介して光源装置とデジタルカメラを計測基線に沿って移動させながら反射輝点の撮影を行い、撮影された画像データと光源装置ならびにデジタルカメラの位置情報とを関連させて一群の解析データとして蓄積し、蓄積された解析データからタイヤトレッド面の形状を図式表示できる情報に変換するとともに、トレッド溝の深さを測定する処理を備えていることを特徴とするタイヤトレッド断面形状とトレッド溝の深さ測定方法である。
【作用】
【0007】
この発明によれば、タイヤトレッド面の断面形状を計測しトレッド溝の深さを測定する際、ガイド機構をその軸線がタイヤトレッド面の幅方向と略並行になるように近接させて、光源装置とデジタルカメラとを物理的に特定の位置関係に保ちながら光源装置をガイド機構に沿って移動させ、一定量を移動する毎に反射輝点を撮影する。この一定の移動量は要求される測定分解能によってきまり、例えば0.1mmの要求測定分解能であれば移動量が0.1mmにつき少なくとも1枚以上の撮影をおこなう。
【0008】
光源装置とデジタルカメラはともにガイド機構に沿って移動するため、光源装置とデジタルカメラはガイド機構を介してタイヤトレッド面との対向面間を一定に保ちながら移動することになり、移動軸を基準としてトレッド面上の反射輝点と撮影された画像データ上の反射輝点像との間には光源装置とデジタルカメラの位置を変数とする一定の関係式が成立する。
【0009】
反射輝点を撮影したときの光源装置とデジタルカメラの位置情報は測定開始点からの移動量から特定でき、撮影した画像データと各装置の位置情報を一群とする計測データとして出力する。
【0010】
出力された計測データより、画像データ上のデジタルカメラの光軸中心を原点とした反射輝点の座標データ、光源装置とデジタルカメラの物理的位置関係ならびに光源装置の撮影時の位置情報から、前述の移動軸を基準とする反射輝点を発生したタイヤトレッド面の座標に変換する。
【0011】
変換された計測データは、基準軸を横座標軸としたトレッド面の断面形状を十分な密度でサンプル抽出した実寸値であり、その計測データの座標値を計測制御装置に接続した表示モニターにプロットしてトレッド面の断面形状を図示し、計測データのうちトレッド溝の頂部と底部のデータを用いて演算することでトレッド溝の深さを算出する。
【発明の実施形態】
【0012】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。図−1は、請求項1にあるガイド機構11と光源装置12とデジタルカメラ13と駆動サーボモーター14とラックギア送り装置Gと移動架台15と移動架台台座Tにより構成される移動機構の構成を示す。図−1(a)においてガイド機構11は、ガイド支持棒11aとガイドレール11bの両端をバックパネル11cにより固定された構造で構成されている。レーザーダイオードを用いた光源装置12とデジタルカメラ13は照射光の中心を通る照射光軸とデジタルカメラ13の焦点を通り撮像面に垂直な撮影光軸が同一平面上になるよう移動架台15に固定されている。移動架台15は移動架台台座Tを介してガイドレール11bに接続されており、同じく移動架台15に架装された駆動サーボモーター14とラックギア送り装置Gにより移動機構を構成する。本実施例では1つの移動架台15に光源装置12ならびにデジタルカメラ13を固定することで移動機構を共用しているが、光源装置12とデジタルカメラ13にそれぞれ移動機構を設けて作用させることもできる。移動架台15は計測エリアWの両端にある計測エリア検出センサー16により決まる計測エリアWの一端から他端まで駆動サーボモーター14により位置決めをしながら移動する。
【0013】
本実施形態では移動架台15がガイドレール11bに沿って移動するが、移動架台15に固定された光源装置12とデジタルカメラ13の物理的な位置関係は、移動架台15がガイドレール11bのどの位置にあっても変化しないため、撮影した反射輝点はすべての画像データにおいて撮影光軸を中心にしてガイド機構11の軸線を水平軸とする垂直方向にのみ移動した位置に写ることになる。
【0014】
図−2は、光源装置12とデジタルカメラ13と駆動サーボモーター14を制御する計測制御装置21の機能ブロックを示す。光源装置12の点滅制御、デジタルカメラ13の画像撮影と撮影した画像データの出力要求制御、駆動サーボモーター14を介して特定の位置に移動架台15を移動させる移動制御、撮影した画像データから断面形状を測定してトレッド溝の深さを計測する処理を行う。
【0015】
図−3は、請求項2にある計測制御装置21で実行する処理手順を示す。以下この手順に従って動作詳細を示す。計測制御装置21に対してキーボード入力213に接続されたキーボードから処理の開始指令を入力すると処理が起動される。最初の移動指令S1において計測制御装置21はモーター制御出力216から駆動サーボモーター14に移動指令を出して移動架台15を計測開始位置である計測エリアWの一方端まで移動させる。計測制御装置21は移動位置確認処理S2において計測エリア検出センサー16により移動架台15が計測開始位置に移動したことを検知して最初の移動指令S1が完了したことを確認する。
【0016】
計測制御装置21は移動架台15が計測開始位置にあることを確認したら移動架台15の位置を位置情報データとして記憶し、撮影指令S3において光源制御出力214から光源装置12に点灯指令を出したのちカメラ制御出力215からデジタルカメラ13にシャッター指令と撮影した画像データ出力指令を出す。その後計測データ取得S4において撮影した画像データがデジタルカメラ13から画像データ入力212に入力転送されるのを待つ。
【0017】
前述の点灯指令を受けた光源装置12はレーザービームを点灯させる。シャッター指令と画像データ出力指令を受けたデジタルカメラ13は反射輝点を撮影したのち撮影した画像データを計測制御装置21に出力する。
【0018】
計測制御装置21は画像データ入力212を経由してデジタルカメラ13から画像データを受け取った後、画像データと記憶している移動架台15の位置情報データとを一群の計測データとして関連付けする。
【0019】
座標変換/補正処理S5において後述する測定データの変換処理を行う。画像データ上の反射輝点は前述のように撮影光軸を中心としてガイド機構11を水平軸とする垂直方向にのみ移動した位置座標となるため、移動架台15の位置情報データを水平方向の位置座標とすることでタイヤトレッド面上移動架台15の位置における高さ方向のデータに座標変換する。また前述の画像データ上の垂直方向の位置座標値は、光源光軸と撮影光軸の交差する偏角により真値に対して視差を生じる。視差による真値と測定値との差分を偏角から求める補正処理を施して垂直方向の真値を求める。
【0020】
また本実施形態と異なる形態として光源装置12とデジタルカメラ13にそれぞれ移動機構を設けて作用させた場合は、光源装置12とデジタルカメラ13とに垂直方向の視差だけでなく移動機構の移動方向に対応する水平方向の視差を生じるため、前述の垂直方向の視差に対する補正処理と水平方向の視差に対する補正処理を施すことで真値を求める。
【0021】
計測制御装置21は座標変換/補正処理S5を終えたら、データ蓄積保存S6において変換処理を施した計測データを記憶部202に蓄積保存する。
【0022】
計測制御装置21は、計測エリア内判定S7において受け取った計測データが計測エリアW内のデータかどうかを判定する。計測エリアWの範囲内であったら移動指令S1で次の撮影地点へ移動架台15を移動させる。以下、移動架台15が計測エリアWの外側に移動するまで移動指令S1から計測エリア内判定S7までを繰り返す。
【0023】
計測制御装置21は計測エリア内判定S7において移動架台15が計測エリアWの外側に移動したことを検知するとトレッド断面の測定を完了したと判定し、溝の深さ計測・表示S8において予め与えられたトレッド溝の深さを計測する条件に基づき記憶部202に蓄積された計測データからトレッド溝の深さを求めるとともに、表示モニター出力218に接続された表示モニターにガイド機構11を水平軸とするタイヤのトレッド断面形状としてグラフ表示とともにトレッド溝の深さを表示して計測処理を終了する。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、タイヤトレッド面の幅方向にガイド機構を近接並置するだけで計測できるため、タイヤ毎に異なるタイヤ外径やトレッド幅であっても、測定装置とタイヤトレッド面との測定間隔を一定にして高精度に計測することができる。
【0025】
また、タイヤが路面に接地した接地状態でもリフトアップされた非接地状態であっても、あるいはタイヤを車両に装着した状態でも装着しない状態でも計測できる。このため、大型の測定装置を設置して計測するための場所を必要とせず、タイヤの設置状態の制約を受けないため計測作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図−1】本発明装置の実施例における装置構成
【図−2】計測制御装置機能ブロック図
【図−3】計測制御装置の処理フロー図
【符号の説明】
【0027】
11:ガイド機構
11a:ガイド機構を構成するガイド支持棒
11b:ガイド機構を構成するガイドレール
11c:ガイド機構を構成するバックパネル
12:光源装置
13:デジタルカメラ
14:駆動サーボモーター
15:移動架台
16:計測エリア検出センサー
21:計測制御装置
G:ラックギア送り装置
T:移動架台台座
S:タイヤ
W:計測エリア
【図−1】

【図−2】

【図−3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのトレッド面近くに並置するためのガイド機構と、トレッド面を照射する単一光を発生する光源装置と、光源装置をガイド機構に沿って所定の位置に移動させる移動機構と、単一光がトレッド面で発生する反射輝点を撮影するデジタルカメラと、デジタルカメラを反射輝点の撮影可能範囲となる所定の位置に移動させる移動機構と、光源装置とデジタルカメラと移動機構を制御する計測制御装置を備えたことを特徴とするタイヤトレッドの断面形状ならびにトレッド溝深さ測定装置。
【請求項2】
請求項1の装置を用いて、反射輝点を撮影した画像データと光源装置ならびにデジタルカメラの位置情報を対応させた解析データを蓄積し、蓄積された解析データからトレッド面の形状を求めて、得られたトレッド面形状からトレッド溝の深さを求める方法。

【公開番号】特開2012−154910(P2012−154910A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27820(P2011−27820)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(300088371)システム・コンサルタンツ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】