説明

タイヤ圧検出装置及びタイヤ監視システム

【課題】従来より低コスト化及び高精度化が可能なタイヤ圧検出装置及びタイヤ監視システムを提供する。
【解決手段】本発明では、圧力センサ40による検出データのみならず、圧力センサ40の検出誤差に対する補正データをタイヤ圧検出装置30から車両本体12に送信するので、車両本体12側でこの補正データを用いて圧力センサ40の検出誤差を検出データから排除することができる。これにより、圧力センサ40の検出誤差のばらつきに拘わらず、車両本体12側で正確な検出データを取得することができ、従来より検出精度が高くなる。また、従来より検出誤差のばらつきが大きな圧力センサ40をタイヤ圧検出装置30に用いて低コスト化を図ることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの内圧を検出し、その検出データを車輪と車両本体との間で無線送信するためのタイヤ圧検出装置及びタイヤ監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のタイヤ圧検出装置として、トランスポンダに圧力センサを接続して備えたものが知られている。このタイヤ圧検出装置は、車両本体から送信された電波を受けると、圧力センサにてタイヤの内圧を検出して、その検出データを車両本体に返信する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−189034号公報(段落[0013]〜[0017]、第2〜4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、タイヤ圧検出装置の普及は高まってきているが、更なる普及を図るために、タイヤ圧検出装置の低コスト化及び高精度化が求められている。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、従来より低コスト化及び高精度化が可能なタイヤ圧検出装置及びタイヤ監視システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係るタイヤ圧検出装置(30)は、タイヤ(15)を含む車輪(13)に固定され、タイヤ(15)の内圧を検出する圧力センサ(40)を有し、その圧力センサ(40)による検出データを車両本体(12)に無線送信するタイヤ圧検出装置(30)であって、圧力センサ(40)に固有の検出誤差に対する補正データを記憶した補正データ記憶部(26)と、補正データ記憶部(26)から補正データを取得して、車両本体(12)に無線送信する補正データ送信部(21S)とを備えたところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のタイヤ圧検出装置(30)において、補正データ記憶部(26)及び補正データ送信部(21S)を含み、車両本体(12)側から出力された無線信号に応じて補正データを無線送信するトランスポンダ(21,21A)を備えたところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2に記載のタイヤ圧検出装置(30)において、トランスポンダ(21)は、RFIDタグ(21)であるところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項2又は3に記載のタイヤ圧検出装置(30)において、圧力センサ(40)とトランスポンダ(21,21A)とが一体に固定されたタイヤバルブ(16)を備えたところに特徴を有する。
【0009】
請求項5の発明は、請求項4に記載のタイヤ圧検出装置(30)において、タイヤバルブ(16)の外面に雄螺子部(16B)が形成され、その雄螺子部(16B)に螺合されたリング部材(19)にトランスポンダ(21,21A)が固定されたところに特徴を有する。
【0010】
請求項6の発明は、請求項4に記載のタイヤ圧検出装置(30)において、タイヤバルブ(16)の先端にキャップ(18)が装着され、そのキャップ(18にトランスポンダ(21,21A)が固定されたところに特徴を有する。
【0011】
請求項7の発明は、請求項2乃至6の何れかに記載のタイヤ圧検出装置(30)において、検出データを無線送信する検出データ送信部(31S)を、トランスポンダ(21,21A)とは別個に設けたところに特徴を有する。
【0012】
請求項8の発明は、請求項7に記載のタイヤ圧検出装置(30)において、検出データ送信部(31S)及びトランスポンダ(21,21A)によって無線送信させる共通の識別データを記憶した識別データ記憶部(26,36)を備えたところに特徴を有する。
【0013】
請求項9の発明に係るタイヤ監視システム(10)は、請求項1乃至8の何れかに記載のタイヤ圧検出装置(30)と、車両本体(12)に設けられて、タイヤ圧検出装置(30)から検出データと補正データとを受信し、補正データに基づいて検出データを補正するタイヤ受信装置(50)とを備えたところに特徴を有する。
【0014】
請求項10の発明に係るタイヤ監視システム(10)は、請求項7又は8に記載のタイヤ圧検出装置(30)と、車両本体(12)に設けられて、無線信号を出力してトランスポンダ(21,21A)に補正データを送信させかつ、その補正データを受信する補正データ取得部(61)と、車両本体(12)に設けられて、検出データ送信部(31S)から検出データを受信すると共に補正データ取得部(61)から補正データを取得し、その補正データに基づいて検出データを補正する検出データ処理部(51)とを備えたところに特徴を有する。
【0015】
請求項11の発明は、請求項10に記載のタイヤ監視システム(10)において、トランスポンダ(21)は、RFIDタグ(21)であり、補正データ取得部(61)は、タグリーダー(61)であるところに特徴を有する。
【0016】
請求項12の発明は、請求項11に記載のタイヤ監視システム(10)において、補正データ取得部(61)は、タグリーダー/ライター(61)であるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0017】
[請求項1及び9の発明]
請求項1及び9の構成によれば、タイヤ圧検出装置(30)が、圧力センサ(40)による検出データのみならず、圧力センサ(40)の検出誤差に対する補正データも車両本体(12)に送信する。これにより、車両本体(12)側で、この補正データを用いて圧力センサ(40)の検出誤差を検出データから排除することができる。このように本発明のタイヤ圧検出装置(30)によれば、圧力センサ(40)の検出誤差のばらつきに拘わらず、車両本体(12)側で正確な検出データを取得することができ、従来より検出精度が高くなる。また、従来より検出誤差のばらつきが大きな圧力センサ(40)をタイヤ圧検出装置(30)に用いて低コスト化を図ることもできる。
【0018】
なお、車両本体(12)側に各圧力センサ(40)の補正データを記憶しておく構成も考えられるが、本発明の構成によれば、圧力センサ(40)と補正データを記憶した補正データ記憶部(26)とが共にタイヤ圧検出装置(30)に備えられて同じ車輪(13)に固定されるので、車輪(13)が車両本体(12)と別に流通しても圧力センサ(40)と補正データとの整合性が維持される。
【0019】
[請求項2の発明]
請求項2の構成によれば、必要に応じて車両本体(12)側から無線信号を出力すれば、トランスポンダ(21,21A)から補正データが返信される。
【0020】
[請求項3の発明]
請求項3の構成によれば、量産品のRFIDタグ(21)を用いてタイヤ圧検出装置(30)のさらなる低コスト化を図ることができる。
【0021】
[請求項4の発明]
請求項4の構成によれば、圧力センサ(40)とトランスポンダ(21,21A)とがタイヤバルブ(16)に一体に固定されているので、タイヤの交換又はタイヤホイールの交換が行われても、圧力センサ(40)とトランスポンダ(21,21A)とが分離されることがなく、圧力センサ(40)に固有の検出誤差と補正データとの整合性が維持される。
【0022】
[請求項5及び6の発明]
請求項5及び請求項6の構成によれば、トランスポンダ(21,21A)のタイヤバルブ(16)への取り付け・交換作業を容易に行うことができる。
【0023】
[請求項7及び10の発明]
請求項7及び10の構成では、従来のタイヤ圧検出装置にトランスポンダ(21,21A)を付加して本発明に係るタイヤ圧検出装置(30)にすることができる。これにより、タイヤ圧検出装置(30)の設計作業の簡素化及び従来品の有効利用を図ることができる。
【0024】
[請求項8の発明]
請求項8の構成によれば、検出データ送信部(31S)及びトランスポンダ(21,21A)が識別データ記憶部(26,36)に記憶した共通の識別データを無線送信することで、複数の車輪(13)に取り付けられたタイヤ圧検出装置(30)同士を容易に識別することができる。
【0025】
[請求項11の発明]
請求項11の構成によれば、量産品のRFIDタグ(21)及びタグリーダー(61)を用いて、タイヤ監視システム(10)の更なる低コスト化を図ることができる。
【0026】
[請求項12の発明]
請求項12の構成によれば、タイヤ監視システム(10)の出荷時又はメンテナンス時に、タグリーダー/ライター(61)を用いてタイヤ圧検出装置(30)のRFIDタグ(21)に補正データを容易に書き込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。図1に示すように本実施形態のタイヤ監視システム10は、車両11の各車輪13(図1には1つの車輪13のみが示されている)にそれぞれ設けられたタイヤ圧検出装置30と、車両本体12に設けられた1つのタイヤ受信装置50とからなる。
【0028】
車輪13は、タイヤホイール14のリム14Aにチューブレスのタイヤ15を嵌合して備えている。図2に示すようにリム14Aにはバルブ装着孔14Cが形成され、そのバルブ装着孔14Cにタイヤバルブ16が固定されている。タイヤバルブ16は、両端が開放した筒状のバルブステム16Aの内部に逆止弁構造のバルブコア17を備えている。そして、タイヤバルブ16の先端部がリム14Aの内周面側に突出する一方、タイヤバルブ16の基端部がリム14Aの外周面側に突出してタイヤ15内に配置されている。また、タイヤバルブ16の外面には雄螺子部16Bが形成され、その雄螺子部16Bの先端部にキャップ18が螺合されている。
【0029】
各車輪13に設けられたタイヤ圧検出装置30は、タイヤバルブ16の基端部に固定されてタイヤ15内に配置された検出装置本体部31と、タイヤバルブ16の雄螺子部16Bに螺合固定されてタイヤ15外に配置されたRFIDアッシ20とからなる。
【0030】
検出装置本体部31は、タイヤバルブ16に固定されたケース37の内部に回路基板38、ボタン電池39及びアンテナ35を収容して備えている。図3に示すように、回路基板38には、メモリ36、制御部32、無線回路33、圧力センサ40、温度センサ41及び加速度センサ42が実装され、回路基板38上の回路がボタン電池39から受電して作動する。また、制御部32と無線回路33とによって本発明に係る検出データ送信部31Sが構成されている。
【0031】
メモリ36は、後述するRFIDタグ21に備えたメモリ26と共に本発明に係る「識別データ記憶部」を構成し、このメモリ36に各タイヤ圧検出装置30毎に設定された識別データが記憶されている。
【0032】
圧力センサ40は、圧力に応じて電気抵抗が変化する図示しない感圧素子と、その電気抵抗の変化を電圧信号にする図示しない検出回路とからなる。ここで所定範囲の圧力をp、その圧力pに対する圧力センサ40の出力電圧をE1、所定の係数K1とすると、下記関係式(1)が成立するように圧力センサ40が設計されている。ところが、実際の圧力センサ40の出力電圧E2は、下記関係式(2)に示したように、設計上の圧力センサ40の出力電圧E1に対して誤差定数C1分がオフセットする。この誤差定数C1は所定範囲の圧力pに対しては一定値であるが、各圧力センサ40毎によってばらつく。
【0033】
E1=K1・p ・・・・(1)
E2=K1・p+C1=E1+C1 ・・・・(2)
【0034】
また、温度センサ41は、温度に応じて電気抵抗が変化する図示しない感温素子と、その電気抵抗の変化を電圧信号にする図示しない検出回路とからなる。そして、所定範囲の温度をt、その温度tに対する温度センサ41の出力電圧をE11、所定の係数K2とすると、下記関係式(3)が成立するように温度センサ41が設計されている。そして、温度センサ41に関しても同様に、実際の温度センサ41の出力電圧E12は、下記関係式(4)に示したように、設計上の温度センサ41の出力電圧E11に対して誤差定数C2分がオフセットする。
【0035】
E11=K2・t ・・・・(3)
E12=K2・t+C2=E11+C2 ・・・・(4)
【0036】
制御部32は、車輪13の回転により加速度センサ42が遠心力を検出したことを条件に所定のプログラムを実行し、圧力センサ40及び温度センサ41の出力電圧E2,E12の値を検出データとして取り込む。そして、制御部32は、それら検出データに前記した識別データを付加して、無線回路33により無線信号してアンテナ35から送信する。
【0037】
図2に示すように、RFIDアッシ20は、タイヤバルブ16の雄螺子部16Bの基端部に螺合固定されたリング部材19と、リング部材19に固定されたアンテナ25及び本発明に係る「トランスポンダ」としてのRFIDタグ21からなる。リング部材19の外周面には環状溝19Aが形成され、アンテナ25は環状溝19A内に電線を巻回してなる。そして、RFIDタグ21はアンテナ25の外周面に固定され、これらRFIDタグ21及びアンテナ25を覆うようにして、環状溝19Aがモールド樹脂19Bにて埋められている。
【0038】
図3に示すように、RFIDタグ21には、メモリ26、制御部22、無線回路23及び整流回路24が備えられている。そして、制御部22と無線回路23とから本発明に係る補正データ送信部21Sが構成されている。
【0039】
RFIDタグ21のメモリ26は、本発明に係る「補正データ記憶部」に相当すると共に前記検出装置本体部31のメモリ36と共に「識別データ記憶部」を構成し、そのメモリ36と同一の識別データを記憶している。また、メモリ26には、各タイヤ圧検出装置30毎の圧力センサ40に固有の補正データと温度センサ41に固有の補正データとが記憶されている。具体的には、圧力センサ40に固有の補正データとして前記した誤差定数C1が記憶され、温度センサ41に固有の補正データとして前記した誤差定数C2が記憶されている。
【0040】
整流回路24は、外部から受けた電波によりアンテナ25に電磁誘導された交流電圧を直流電圧に変換して制御部22に付与する。これにより制御部22が作動して所定のプログラムを実行し、アンテナ25が受信した電波に含まれる情報を無線回路23を通して取得する。このとき取得した情報にデータ送信命令が含まれていた場合には、制御部22は、メモリ26から補正データ(即ち、誤差定数C1,C2)と識別データとを読み込む。そして、制御部22は、補正データに識別データを付加し、無線回路23により無線信号にしてアンテナ25から送信する。また、取得した情報にデータ更新命令と更新データとが含まれていた場合には、メモリ26に記憶されている補正データ及び/又は識別データを更新データ通りに更新する。
【0041】
このように本実施形態のタイヤ圧検出装置30は、圧力センサ40及び温度センサ41の検出誤差を含んだ検出データを無線送信すると共に、それら圧力センサ40及び温度センサ41の検出誤差に対応した補正データを無線送信する構成になっている。
【0042】
タイヤ受信装置50は、検出データ処理部51と補正データ取得部61とからなる。これら検出データ処理部51と補正データ取得部61とは車両本体12に備えたバッテリー69から電力を受けて作動し、検出データ処理部51がタイヤ圧検出装置30の検出装置本体部31と無線信号を送受信する一方、補正データ取得部61がタイヤ圧検出装置30のRFIDタグ21と無線信号を送受信する。
【0043】
具体的には、補正データ取得部61は、所謂、タグリーダー/ライターであって、アンテナ65と無線回路63と制御部62とを備えている。制御部62は、通常は、データ送信命令を含めた信号を無線回路63により無線信号にしてアンテナ65から出力する。そして、これに応答してRFIDタグ21が出力した無線信号を受信し、その無線信号に含まれる補正データ及び識別データを取得する。また、補正データ取得部61は、外部端末68が接続可能となっており、その外部端末68が補正データ取得部61に更新データを付与すると、制御部62がデータ更新命令及び更新データを無線回路63にて無線信号にしてアンテナ65から出力する。
【0044】
検出データ処理部51は、制御部52と無線回路53とアンテナ55とを備え、その制御部52が補正データ取得部61の制御部62に接続されている。そして、検出データ処理部51は、タイヤ圧検出装置30から無線送信された検出データを、アンテナ55及び無線回路53を通して検出データ処理部51の制御部52に取り込むと共に、その検出データに付加された識別データと同一の識別データが付加された補正データを、補正データ取得部61から取り込む。詳細には、検出データ処理部51の制御部52は、タイヤ圧検出装置30から無線送信された検出データを取り込んだことを条件にして、補正データ取得部61に補正データを要求する。すると、これに応じて補正データ取得部61が前述の如くデータ送信命令をRFIDタグ21に無線送信し、RFIDタグ21から返信された補正データを検出データ処理部51の制御部52に付与する。
【0045】
検出データ処理部51の制御部52は、所定のプログラムを実行し、補正データを用いて検出データを補正する。具体的には、下記演算式(5)のように、圧力センサ40の検出データである前記出力電圧E2から圧力センサ40の補正データである前記誤差定数C1を引く補正を行うと共に、下記演算式(6)のように、温度センサ41の検出データである前記出力電圧E12から温度センサ41の補正データである前記誤差定数C2を引く補正を行う。これにより、圧力センサ40の検出データから検出誤差が排除されると共に、温度センサ41の検出データから検出誤差が排除される。
【0046】
E3 =E2−C1=E1 ・・・・・・・(5)
E13=E12−C2=E11 ・・・・・・・(6)
【0047】
そして、その補正後の値E3,E13にそれぞれ所定の係数を乗じてタイヤ15の内圧及び温度を求め、これら内圧及び温度が、所定の基準値を超えたか否かに基づいて異常の有無を判別する。
【0048】
本実施形態の構成は以上である。次に、上記構成からなる本実施形態の作用効果を説明する。車両11を走行させると4つの車輪13の各タイヤ圧検出装置30が加速度センサ42にて遠心力を検出して圧力センサ40及び温度センサ41の検出データを無線送信する。すると、車両本体12側のタイヤ受信装置50がそれら検出データを受信すると共に、各検出データに対応した補正データをRFIDタグ21から取得する。そして、タイヤ受信装置50が補正データを用いて検出データを補正し、これにより車両本体12側でタイヤ15の正確な内圧及び温度を取得することができる。また、圧力又は温度に異常が有った場合には、タイヤ受信装置50が例えば車両本体12に備えたスピーカー54A(図3参照)から警告音を出力させたり、或いは、車両本体12に備えた表示器54B(図3参照)を用いて警告メッセージを表示する。これにより、タイヤ15の異常に迅速に対応することが可能になる。
【0049】
このように、本実施形態によれば、圧力センサ40及び温度センサ41による検出データのみならず、圧力センサ40及び温度センサ41に固有の検出誤差に対する補正データをタイヤ圧検出装置30から車両本体12に送信するので、車両本体12側で、これら補正データを用いて検出データから検出誤差を排除することができる。これにより、圧力センサ40及び温度センサ41の検出誤差のばらつきに拘わらず、車両本体12側で正確な検出データを取得することができ、従来より検出精度が高くなる。また、従来より検出誤差のばらつきが大きな圧力センサ40及び温度センサ41をタイヤ圧検出装置30に用いて低コスト化を図ることができる。
【0050】
しかも、本実施形態の構成によれば、従来のタイヤ圧検出装置にRFIDタグ21を付加して本発明に係るタイヤ圧検出装置30にすることができ、これにより設計作業の簡素化及び従来品の有効利用が図られる。また、RFIDタグ21は受信した電波から電力を取得して作動する構成になっているので、電池切れの心配もない。さらに、タイヤ監視システム10の出荷時やメンテナンス時に、タグリーダー/ライターとしての補正データ取得部61を用いてRFIDタグ21に補正データを容易に書き込むことができる。さらに、本実施形態では、RFIDタグ21を固定したリング部材19をタイヤバルブ16の雄螺子部16Bに螺合した構成になっているので、RFIDタグ21のタイヤバルブ16への取り付け・交換作業を容易に行うことができる。また、量産品のRFIDタグ21を用いて、タイヤ監視システム10のさらなる低コスト化を図ることもできる。
【0051】
ところで、車両本体12側のタイヤ受信装置50に各圧力センサ40に固有の補正データを記憶しておく構成も考えられるが、本実施形態では、圧力センサ40と補正データを記憶したメモリ26とが共にタイヤ圧検出装置30に備えられて同一の車輪13を固定されるので車輪13を車両本体12と別に流通させても、圧力センサ40と補正データとの整合性が維持される。また、圧力センサ40とRFIDタグ21とがタイヤバルブ16に一体に固定されているので、タイヤ15又はタイヤホイール14の交換が行われても圧力センサ40とRFIDタグ21とが分離されることがない。
【0052】
なお、本実施形態では、検出装置本体部31が電源としてボタン電池39を有していたが、電池を排除し、無線回路33を電源に兼用してもよい。即ち、無線回路33がアンテナ35を通して受信した電波から電力を抽出し、その電力によって検出装置本体部31全体が作動する構成にしてもよい。
【0053】
[第2実施形態]
本実施形態のタイヤ監視システム10は、図4に示すように、前記第1実施形態のRFIDタグ21に代えてボタン電池39から電力を受けて作動するトランスポンダ21Aが備えられている。なお、このトランスポンダ21Aは、例えば、ケース37(図2参照)の内部に収容されている。その他の構成は、第1実施形態と同様であるので、第1実施形態と同一の部位に同一符号を付して重複した説明は省略する。本実施形態の構成によっても第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0054】
[第3実施形態]
本実施形態のタイヤ圧検出装置30は、図5に示すように、前記した第2実施形態の検出装置本体部31からアンテナ35、無線回路33を排除し、検出装置本体部31の制御部32をトランスポンダ21Aの制御部22に接続した構成になっている。そして、RFIDタグ21の無線回路23及びアンテナ25を検出装置本体部31による無線信号の送受信に兼用している。これに対応させて、タイヤ受信装置50においても、前記した第2実施形態の検出データ処理部51からアンテナ55、無線回路53を排除し、補正データ取得部61の無線回路63及びアンテナ65を検出データ処理部51による無線信号の送受信に兼用した構成になっている。その他の構成は、第2実施形態と同様であるので、第2実施形態と同一の部位に同一符号を付して重複した説明は省略する。本実施形態の構成によっても第2実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0055】
[第4実施形態]
本実施形態のタイヤ監視システム10は、図6に示すように、前記第1の実施形態に記載された検出装置本体部31がタイヤ圧検出装置30から排除されると共に、RFIDタグ21の制御部22に、圧力センサ40及び温度センサ41が接続されている。その他の構成は、第3実施形態と同様であるので、第3実施形態と同一の部位に同一符号を付して重複した説明は省略する。本実施形態の構成によれば、タイヤ圧検出装置30の小型化が図られる。
【0056】
[第5実施形態]
本実施形態のタイヤ監視システム10は、図7に示すように、タイヤ圧検出装置30には、前記第1実施形態に記載されたRFIDタグ21が排除されると共に、検出装置本体部31に備えたメモリ36が本発明に係る「補正データ記憶部」とされ、このメモリ36に圧力センサ40及び温度センサ41に対応した補正データが記憶されている。そして、制御部32及び無線回路33によって構成された検出データ送信部31Sが、本発明に係る「補正データ送信部」を兼ねている。これに対応して、タイヤ受信装置50から前記第1〜第3の実施形態に記載の補正データ取得部61が排除されている。そして、検出装置本体部31の制御部32が、圧力センサ40及び温度センサ41の検出データに補正データを付加して送信する構成になっている。その他の構成は、第1実施形態と同様であるので、第1実施形態と同一の部位に同一符号を付して重複した説明は省略する。本実施形態の構成によれば、構成の簡素化が図られると共に、従来のタイヤ監視システム10から本発明に係るタイヤ監視システム10への変更が容易になる。
【0057】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0058】
(1)前記第1実施形態では、RFIDタグ21を固定したリング部材19がタイヤバルブ16に対して離脱可能であったが、タイヤバルブ16を構成するバルブステム16Aの壁部にRFIDタグ21及びアンテナ25を埋設することで、RFIDタグ21及びアンテナ25をタイヤバルブ16に対して離脱不能にしてもよい。この場合、図8に示すようにバルブステム16Aの筒壁部分うちタイヤホイール14の外側に位置した部位にRFIDタグ21及びアンテナ25を埋設してもよいし、図9に示すようにバルブステム16Aの筒壁部分のうちタイヤホイール14の内側に位置した部位にRFIDタグ21及びアンテナ25を埋設してもよい。
【0059】
(2)また、前記第1実施形態では、RFIDタグ21及びアンテナ25を固定したリング部材19がバルブステム16Aの外側に嵌合されていたが、図10に示すようにRFIDタグ21及びアンテナ25を固定したリング部材19Vをバルブステム16Aの基端部に配置してバルブステム16Aと検出装置本体部31のケース37との間に挟んで固定してもよい。
【0060】
(3)また、図11に示すように、タイヤバルブ16の先端部を塞ぐためのキャップ18の天井壁18UにRFIDタグ21及びアンテナ25を埋設してもよい。この場合、バルブステム16Aとキャップ18とを連結片18Aにて連結することで、キャップ18がバルブステム16Aから所定距離以上離れない構成にしておくことが好ましい。
【0061】
(4)さらに、図12に示すように、キャップ18の開放端に延長筒部18Vを一体形成し、その延長筒部18VにRFIDタグ21及びアンテナ25を埋設してもよい。
【0062】
(5)また、第1実施形態のタイヤ圧検出装置30のうち検出装置本体部31をタイヤバルブ16に固定する一方、RFIDタグ21を車輪13のうちタイヤバルブ16から離れた部位(例えば、タイヤ15、タイヤホイール14の外面)に固定してもよい。
【0063】
(6)本発明は、電池を有したタイヤ圧検出装置、電池を有しないタイヤ圧検出装置の何れに適用してもよい。また、電池を有しないタイヤ圧検出装置に関しては、RFID方式よって作動するもの、共振方式よって作動するものの何れに本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1実施形態に係るタイヤ監視システムの概念図
【図2】車輪及びタイヤ圧検出装置の断面図
【図3】タイヤ監視システムの電気的構成を示したブロック図
【図4】第2実施形態のタイヤ監視システムの電気的構成を示したブロック図
【図5】第3実施形態のタイヤ監視システムの電気的構成を示したブロック図
【図6】第4実施形態のタイヤ監視システムの電気的構成を示したブロック図
【図7】第5実施形態のタイヤ監視システムの電気的構成を示したブロック図
【図8】変形例(1)のタイヤバルブの断面図
【図9】タイヤバルブの断面図
【図10】変形例(2)のタイヤバルブの断面図
【図11】変形例(3)のタイヤバルブの断面図
【図12】変形例(4)のタイヤバルブの断面図
【符号の説明】
【0065】
10 タイヤ監視システム
12 車両本体
13 車輪
15 タイヤ
16 タイヤバルブ
16B 雄螺子部
18 キャップ
19 リング部材
21 RFIDタグ
21A トランスポンダ
21S 補正データ送信部
23 無線回路(補正データ送信回路)
26 メモリ(識別データ記憶部,補正データ記憶部)
30 タイヤ圧検出装置
31S 検出データ送信部
33 無線回路(検出データ送信回路)
36 メモリ(識別データ記憶部、補正データ記憶部)
37 ケース
40 圧力センサ
50 タイヤ受信装置
51 検出データ処理部
61 補正データ取得部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ(15)を含む車輪(13)に固定され、前記タイヤ(15)の内圧を検出する圧力センサ(40)を有し、その圧力センサ(40)による検出データを車両本体(12)に無線送信するタイヤ圧検出装置(30)であって、
前記圧力センサ(40)に固有の検出誤差に対する補正データを記憶した補正データ記憶部(26)と、
前記補正データ記憶部(26)から前記補正データを取得して、前記車両本体(12)に無線送信する補正データ送信部(21S)とを備えたことを特徴とするタイヤ圧検出装置(30)。
【請求項2】
前記補正データ記憶部(26)及び前記補正データ送信部(21S)を含み、前記車両本体(12)側から出力された無線信号に応じて前記補正データを無線送信するトランスポンダ(21,21A)を備えたことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ圧検出装置(30)。
【請求項3】
前記トランスポンダ(21)は、RFIDタグ(21)であることを特徴とする請求項2に記載のタイヤ圧検出装置(30)。
【請求項4】
前記圧力センサ(40)と前記トランスポンダ(21,21A)とが一体に固定されたタイヤバルブ(16)を備えたことを特徴とする請求項2又は3に記載のタイヤ圧検出装置(30)。
【請求項5】
前記タイヤバルブ(16)の外面に雄螺子部(16B)が形成され、その雄螺子部(16B)に螺合されたリング部材(19)に前記トランスポンダ(21,21A)が固定されたことを特徴とする請求項4に記載のタイヤ圧検出装置(30)。
【請求項6】
前記タイヤバルブ(16)の先端にキャップ(18)が装着され、そのキャップ(18に前記トランスポンダ(21,21A)が固定されたことを特徴とする請求項4に記載のタイヤ圧検出装置(30)。
【請求項7】
前記検出データを無線送信する検出データ送信部(31S)を、前記トランスポンダ(21,21A)とは別個に設けたことを特徴とする請求項2乃至6の何れかに記載のタイヤ圧検出装置(30)。
【請求項8】
前記検出データ送信部(31S)及び前記トランスポンダ(21,21A)によって無線送信させる共通の識別データを記憶した識別データ記憶部(26,36)を備えたことを特徴とする請求項7に記載のタイヤ圧検出装置(30)。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載のタイヤ圧検出装置(30)と、
前記車両本体(12)に設けられて、前記タイヤ圧検出装置(30)から前記検出データと前記補正データとを受信し、前記補正データに基づいて前記検出データを補正するタイヤ受信装置(50)とを備えたことを特徴とするタイヤ監視システム(10)。
【請求項10】
請求項7又は8に記載のタイヤ圧検出装置(30)と、
前記車両本体(12)に設けられて、無線信号を出力して前記トランスポンダ(21,21A)に前記補正データを送信させかつ、その補正データを受信する補正データ取得部(61)と、
前記車両本体(12)に設けられて、前記検出データ送信部(31S)から前記検出データを受信すると共に前記補正データ取得部(61)から前記補正データを取得し、その補正データに基づいて前記検出データを補正する検出データ処理部(51)とを備えたことを特徴とするタイヤ監視システム(10)。
【請求項11】
前記トランスポンダ(21)は、RFIDタグ(21)であり、
前記補正データ取得部(61)は、タグリーダー(61)であることを特徴とする請求項10に記載のタイヤ監視システム(10)。
【請求項12】
前記補正データ取得部(61)は、タグリーダー/ライター(61)であることを特徴とする請求項11に記載のタイヤ監視システム(10)。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2007−204006(P2007−204006A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28519(P2006−28519)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(000204033)太平洋工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】