説明

ダイヤモンド結晶成長方法及びダイヤモンド結晶成長装置

【課題】原料ガスから結晶への固体変換効率を高めたダイヤモンド結晶成長方法及びダイヤモンド結晶成長装置を提供する。
【解決手段】反応槽11内で、化学気相法により原料ガスから基板71上にダイヤモンド結晶を成長させるダイヤモンド結晶成長方法であって、次式(1)を満たす原料ガス供給流量Gで反応漕11内に原料ガスを供給し、次式(2)を満たす排気流量Gで反応漕11内から排気するダイヤモンド結晶成長方法を用いることにより、原料ガス濃度を最適化して、結晶化効率を向上させるとともに、未反応の原料ガスの排気を抑制して、原料の回収効率を高めることができ、原料ガスからダイヤモンド結晶への固体変換効率を高めることができる。G≦10×S×h…(1)G≦0.90×G…(2)ここで、Sは基板面積であり、hは結晶成長速度である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤモンド結晶成長方法及びダイヤモンド結晶成長装置に関する。特に、原料ガスからダイヤモンド結晶への固体変換効率を高めたダイヤモンド結晶成長方法及びダイヤモンド結晶成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低圧下の一般的な結晶合成手法として、化学気相法がある。
従来、化学気相法では、まず、反応槽内が結晶成長に最適な反応圧力及びガス濃度に達するまで、熱源下で雰囲気ガス(キャリヤガスともいう。例えば、水素である。)及び原料ガス(例えば、メタンである。)を反応漕内に供給する。
その後、キャリヤガスおよび原料ガスを連続的に供給しながら、合成時にはキャリヤガス及び原料ガスを流量調整する事で、反応漕内に供給する混合ガスのガス比を制御する。従来方式では、反応漕内のガス比と供給混合ガスのガス比は、同じ値である。
ここで、混合ガスのガス比とは、原料ガス供給流量をキャリヤガスと原料ガスを含む、反応漕内への全供給ガス流量で除算した値を指す。また、原料ガスが2種類以上の場合、各原料ガス供給流量の総和を上記原料ガス供給流量とする。
【0003】
この方法により、反応漕内のガス濃度を結晶成長に最適な条件に保持する。また、このとき、反応漕内の反応圧力を結晶成長に最適な条件に保持するように、真空排気ポンプを用いて、反応漕内のガスを連続排気する。
即ち、原料ガスの一部は、固体変換されなかった未反応原料ガスとして、雰囲気ガスとともに廃棄されている。その結果、原料ガスの高々1%が、典型的にはその0.1%以下が結晶として固体変換されるのみであり、99%以上の原料ガスが未反応のまま系外に排気され、廃棄されている。
【0004】
特に、異種基板上への結晶合成の場合、核形成に有する時間の存在が原料ガスの固体変換効率を低下させることを考慮する必要がある。
例えば、ダイヤモンドを非ダイヤモンド基板上に合成する場合について説明すると、従来法では、非ダイヤモンド基板上面全体がダイヤモンド結晶で被覆されるまでの合成初期においても、キャリヤガスと原料ガスの供給・排気を連続的に行う。
合成初期において、ダイヤモンドの成長速度はダイヤモンド上の場合に比べて10分の1以下と極めて遅い。その結果、合成初期は、原料ガスの固体変換効率が0.1%にも満たない核形成時間帯となるので、この時間帯が長くなるに従い、原料ガスの損失が大きくなる。
【0005】
高度に精製された原料ガス、例えば超高純度ガスや同位体濃縮ガス等を用いた結晶成長を行うことで、結晶の様々な物性が大幅に向上することが知られている(特許文献1)。しかしながら、これらの原料ガスは高額であり、未反応の原料ガスの廃棄がコスト増を引き起こすという問題があった。
一方、結晶合成を含む半導体プロセスでは様々なガスが用いられるが、そこで生じる未反応ガスは環境汚染等の原因となるため、適切な回収方法をプロセス装置に具備する必要があった(特許文献2)。
混合ガスのガス比を変えながらダイヤモンド結晶を成長する方法が提案されているが(非特許文献1)、これは結晶性向上を目的としたものであり、固体変換効率を大幅に向上させるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−154092号公報
【特許文献2】特開2010−37631号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】D.Takeuchi,S.Yamanaka,H.Watanabe,S.Sawada,H.Ichinose,H.Okushi,K.Kajimura,Diamond and Related Materials 8(1999)1046−1049.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、原料ガスからダイヤモンド結晶への固体変換効率を高めたダイヤモンド結晶成長方法及びダイヤモンド結晶成長装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の構成を有する。
本発明のダイヤモンド結晶成長方法は、反応槽内で、化学気相法により原料ガスから基板上にダイヤモンド結晶を成長させるダイヤモンド結晶成長方法であって、次式(1)を満たす原料ガス供給流量Gで反応漕内に原料ガスを供給し、次式(2)を満たす排気流量Gで前記反応漕内から排気することを特徴とする。
≦10×S×h…(1)
≦0.90×G…(2)
ここで、Sは基板面積であり、hは結晶成長速度である。
断続供給等、合成期間中の原料ガス供給流量が一定でない場合、原料ガス供給流量Gは、(メタンガス総供給量)/(総合成時間)と定義する。
【0010】
本発明のダイヤモンド結晶成長方法は、結晶を成長させる間、前記反応漕内の原料ガス濃度を一定に保持するように、原料ガスを連続的に供給することが好ましい。
本発明のダイヤモンド結晶成長方法は、結晶を成長させる間、前記反応漕内の原料ガス濃度を0.01vol%以上とするように、原料ガスを断続的に供給することが好ましい。
本発明のダイヤモンド結晶成長方法は、結晶を成長させる間、結晶成長速度を0.1μm/h(3.52mg・h−1・mm−2)以上、100μm/h(3520mg・h−1・mm−2)以下とすることが好ましい。
本発明のダイヤモンド結晶成長方法は、結晶を成長させる間、原料ガスとともにキャリヤガスを前記反応漕内に供給することが好ましい。
【0011】
本発明のダイヤモンド結晶成長装置は、反応槽と、前記反応槽内に備えられたガスモニターと、前記反応槽に接続されたガス供給管と、前記ガス供給管に備えられた調整弁又はガス流量制御器とを有するダイヤモンド結晶成長装置であって、前記ガスモニターが測定した前記反応槽内の原料ガス濃度に基づき、10×S×h以下の原料ガス供給流量Gで前記原料ガス濃度を一定に保持するように、前記調整弁又は前記ガス流量制御器を制御可能なガス流量制御手段が備えられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のダイヤモンド結晶成長方法は、反応槽内で、化学気相法により原料ガスから基板上にダイヤモンド結晶を成長させるダイヤモンド結晶成長方法であって、次式(1)を満たす原料ガス供給流量Gで反応漕内に原料ガスを供給し、次式(2)を満たす排気流量Gで前記反応漕内から排気する構成なので、原料ガス濃度を最適化して、結晶化効率を向上させるとともに、未反応の原料ガスの排気を抑制して、原料の回収効率を高めることができ、原料ガスからダイヤモンド結晶への固体変換効率を高めることができる。炭素原料ガスからダイヤモンド結晶への固体変換効率では、少なくとも10%以上とすることができ、条件を制御することにより50%以上とすることができる。
【0013】
本発明のダイヤモンド結晶成長装置は、反応槽と、前記反応槽内に備えられたガスモニターと、前記反応槽に接続されたガス供給管と、前記ガス供給管に備えられた調整弁又はガス流量制御器とを有するダイヤモンド結晶成長装置であって、前記ガスモニターが測定した前記反応槽内の原料ガス濃度に基づき、10×S×h以下の原料ガス供給流量Gで前記原料ガス濃度を一定に保持するように、前記調整弁又は前記ガス流量制御器を制御可能なガス流量制御手段が備えられている構成なので、調整弁を制御して、式(1)を満たすように、容易に原料ガス供給流量Gを制御できるとともに、調整弁を制御して、式(2)を満たすように、容易に排気流量Gを制御できる。これにより、原料ガスからダイヤモンド結晶への固体変換効率を高めることができ、未反応原料排気量を削減して、原料回収効率を高めることができる。この効果は、超高純度メタンガスや同体制制御されたメタンガスなど、高額な原料ガスを用いる場合に有用性が大きくなり、製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のダイヤモンド結晶成長装置を示す模式図である。
【図2】本発明のダイヤモンド結晶成長方法を示す工程図である。
【図3】本発明のダイヤモンド結晶成長方法を示す工程図である。
【図4】本発明のダイヤモンド結晶成長方法を示す工程図である。
【図5】ガス断続供給、排気停止系での合成例を示す図である。
【図6】ガス断続供給、断続排気での合成例を示す図である。
【図7】ガス連続供給、断続排気での合成例を示す図である。
【図8】ガス連続供給、連続排気での合成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態であるダイヤモンド結晶成長方法及びダイヤモンド結晶成長装置について説明する。
【0016】
(本発明の実施形態)
<結晶成長装置>
図1は、本発明の実施形態であるダイヤモンド結晶成長装置の一例を示す模式図である。
図1に示すように、本発明の実施形態であるダイヤモンド結晶成長装置91は、ガス供給管31、排気管32、励起源発生部81が備えられた反応漕11を有する。
励起源発生部81は、マイクロ波発生部21、導波管22、整合器23、別の導波管24、真空窓25を有している。
反応槽11内には、略円筒形状の壁からなるプラズマ形成部12が設けられている。プラズマ形成部12内の真空窓25の反対側には、マイクロ波反射板13が配置されている。マイクロ波反射板13の一面13aは、真空窓25の一面25aと対面配置されている。マイクロ波反射板13は、基板を配置可能なホルダーとして利用できる。なお、反応漕11をプラズマ形成部12としてもよい。
【0017】
反応漕11は、内部を10−4Pa以下の高真空にすることが可能な容器からなり、Oリング、コンフラットフランジ等が用いられている。これにより、反応漕11の外部ガス・リークレートを10−7Pa・m/s以下にできる。外界へ、あるいは外界からのガス漏れを少なくすることにより、100時間以上に渡って、反応漕11内に大気構成ガスを混入させないようにできる。
【0018】
反応漕11およびプラズマ形成部12には、壁面の冷却機構(図示略)が備えられていることが好ましい。冷却機構により、壁面温度を所定の温度に一定に保つ事ができ、壁面への原料ガスの付着及びその固体化を抑制できる。壁面への原料ガスの付着及びその固体化が進行すると、励起源発生部81への悪影響を及ぼす場合が生じる。
反応漕11内から外部への排気を停止(以下、排気停止系という。)又は排気量を低減した状態(以下、準排気停止系という。)で、反応漕11内で化学気相法により結晶成長させる場合、反応漕11内でのガスの流れが低減され、壁面への原料ガスの固体化及び付着化が特に生じやすい。そのため、排気停止系及び準排気停止系で、冷却機構は、特に効果的である。
【0019】
図1に示す結晶成長装置91は、マイクロ波プラズマCVD(Microwave Plasma Chemical Vapor Deposition:MPCVD)装置であり、マイクロ波発生部21からプラズマ励起源となるマイクロ波を発生可能とされている。プラズマ形成部12内でプラズマを発生させ、原料ガスと反応させることにより、原料ガスから結晶を成長させることができる。
励起源発生部81は、マイクロ波発生部21を用いる構成に限られる訳ではなく、直流放電プラズマ発生部、燃焼炎プラズマ発生部、アークジェットプラズマ発生部等を用いてもよく、熱フィラメントや誘導加熱を用いてもよい。いずれの方法でも、原料ガスから結晶を成長させることができる。
【0020】
排気管32には、調整弁64が備えられている。排気を停止することにより、反応漕11内を排気停止系とすることができるとともに、調整弁64の開閉、開口幅及び開口時間を制御して、反応漕11内を準排気停止系とすることもできる。
ガス供給管31には、3つの調整弁61、62、63が備えられたガス調製漕38が備えられている。ガス調製漕38内には、ガスセンサー52が備えられている。
【0021】
ガス調製漕38にはガス管33、34が接続されている。
ガス管33は原料ガス貯蔵タンク(図示略)に接続されている。調整弁61の開閉、開口幅及び開口時間を制御して、ガス管33からガス調製漕38への原料ガスの供給の開始・停止及び供給速度の調整が可能とされている。
ガス管34はキャリヤガス貯蔵タンク(図示略)に接続されている。調整弁62の開閉、開口幅及び開口時間を制御して、ガス管34からガス調製漕38へのキャリヤガスの供給の開始・停止及び供給速度の調整が可能とされている。
【0022】
ガス調製漕38内では、ガスセンサー52で混合ガスのガス比及びガス圧をモニターして、原料ガスとキャリヤガスの混合ガスのガス比及びガス圧を調整できる。
ガス比は、原料ガス濃度で表記できる。原料ガス濃度(vol%)=原料ガス量(vol)/混合ガス量(vol)であり、混合ガス量(vol)=原料ガス量(vol)+キャリヤガス量(vol)+その他のガス量(vol)であり、その他のガスには、ドーピングガス、エッチングガス、プラズマ支援ガス等がある。
【0023】
ガス調製漕38はガス供給管31により反応槽11と連結されている。
ガス供給管31はプラズマ形成部12内に連結されており、調整弁63の開閉、開口幅及び開口時間を制御して、ガス調製漕38からプラズマ形成部12内への混合ガスの供給の開始・停止及び供給速度の調整が可能とされている。
【0024】
反応槽11内には、ガス比及びガス圧を測定可能なガスセンサー51が備えられている。
反応槽11外には、ガスセンサー51に接続されたガス流量制御手段67が配置されている。ガス流量制御手段67は、ガスセンサー51でモニターした反応槽11内のガス比及びガス圧に基づき、調整弁61〜64の開閉、開口幅及び開口時間を制御して、供給の開始・停止及び供給速度の調整、排気の開始・停止及び排気速度の調整が可能とされている。
【0025】
なお、ガス調整漕38は、3つ以上の調整弁を備えていればよく、例えば4つの調整弁を備えていてもよい。この場合、3種のガスを混合することができる。
【0026】
図1に示す結晶成長装置91では、調整弁を用いる構成を示したが、ガス流量制御器を用いる構成としても良い。ガス流量制御器によっても、配管33、34を流れるガス流量をそれぞれ制御することができ、所望の混合ガス比の混合ガスを反応槽11内に供給することができる。
【0027】
<結晶成長方法>
本発明の実施形態であるダイヤモンド結晶成長方法について説明する。
本発明の実施形態であるダイヤモンド結晶成長方法は、準備工程(反応漕内減圧工程)と、反応漕内原料ガス濃度調整工程と、結晶成長工程と、を有する。
図2〜図4は、本発明の実施形態であるダイヤモンド結晶成長方法の一例を示す工程図である。
【0028】
<準備工程(反応漕内減圧工程)>
準備工程(反応漕内減圧工程)は、プラズマ形成部内のマイクロ波反射板上に基板を配置してから、反応漕内を減圧する工程である。
まず、図2に示すように、基板71をプラズマ形成部12内に配置してから、排気管32に接続した真空排気ポンプ(図示略)を用いて、反応漕11内を排気して、反応漕11内を減圧する。
反応漕内ベース圧力は10−4Pa以下とする。真空度を向上させることにより、不純物の混在を抑制し、結晶を高品質にできる。反応漕内ベース圧力は10−5Paとすることが好ましく、10−6Paとすることがより好ましい。
【0029】
基板71の材料には、モリブデン、チタン、タングステン、銅、ニッケル、白金、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、シリコン、炭化珪素、ダイヤモンド、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、窒化ガリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化炭素、ガリウム砒素、ガリウムリンあるいはこれらの混合物を利用できる。
【0030】
基板71は、成長させる結晶と同種の単結晶基板を用いることが好ましい。この単結晶基板を用いることにより、成長させる結晶の結晶方位を整合させることが容易となり、欠陥の少ない結晶層を短時間で形成できる。
【0031】
基板71として異種基板を用いる場合は、予め基板上でのダイヤモンド核発生密度を向上させる処理、例えば、傷つけ処理、種付け処理を行うことが好ましい。また、結晶成長時にプラズマパワー密度を上昇させてもよい。これにより、欠陥の少ない結晶層を形成できる。
【0032】
<反応漕内原料ガス濃度調整工程>
反応漕内原料ガス濃度調整工程は、原料ガスとキャリヤガスを混合して、原料ガス濃度を調製した混合ガスを反応漕内に供給する工程である。
ガス調製漕38で、原料ガス濃度を調製する。なお、供給の際、調整弁64を閉じて反応漕11を排気停止系とする。
【0033】
まず、調整弁63を閉じた状態で、調整弁61、62を開けて、ガス調製漕38で、原料ガスGとキャリヤガスGを混合し、所定の結晶成長用原料ガス濃度Rとする。
次に、調整弁63を開け、原料ガスとキャリヤガスとからなり、結晶成長用原料ガス濃度Rとした混合ガスを反応漕11内に供給して、反応漕11内を結晶成長用ガス圧Pとする。なお、反応漕11内圧力とプラズマ形成部12内圧力は等しい。
【0034】
原料ガスは、結晶を構成する元素を含有するガスである。例えばダイヤモンドの場合、メタンガスのような炭素を含有する化合物ガスを挙げることができる。
プラズマ形成部12内で発生させたプラズマにより、炭素を含有する化合物ガスからなる原料ガスを励起あるいは分解させることにより、原料ガスから結晶粒子を生成させることができ、基板上にダイヤモンド結晶層を成長させることができる。
キャリヤガスは、反応槽内の原料ガス濃度を調整したり、反応槽内のガス圧を調製するために用いるガスであり、例えば、水素ガス又は不活性ガス等を用いる。
【0035】
反応漕11内の結晶成長用原料ガス濃度Rは0.001vol%以上90vol%以下とすることが好ましく、0.01vol%以上30vol%以下とすることがより好ましく、0.05vol%以上10vol%以下とすることが更に好ましい。
また、結晶成長用ガス圧Pは、1kPa以上30kPa以下とすることが好ましく、2kPa以上25kPa以下とすることがより好ましく、3kPa以上20kPa以下とすることが更に好ましい。
反応漕11内の結晶成長用原料ガス濃度R及び結晶成長用ガス圧Pは、上記範囲内で、発生させるプラズマのパワー密度、供給するガスの種類、ガス濃度(ガス比)によって結晶成長に最適な数値にすることが好ましい。
【0036】
例えば、ダイヤモンドの結晶成長の場合、原料ガスとしてメタンガスを用い、キャリヤガスとして水素ガスを用い、原料ガス濃度:0.01vol%超30vol%以下、ガス圧力:1kPa以上30kPa以下の条件を利用することができる。
また、ダイヤモンド結晶を成長させる場合は、基板温度(反応温度)を700℃−1300℃とすることが好ましい。
特に、ダイヤモンド結晶を短時間で成長させるためには、上記条件において、原料ガス濃度、ガス圧及び反応温度をそれぞれ高めに設定することが望ましい。
【0037】
<結晶成長工程>
結晶成長工程は、原料ガスから結晶成長させる工程である。
図3は、基板71の一面を覆うように結晶層Kが形成された時点の工程図である。
【0038】
マイクロ波発生部21から放出されたマイクロ波は、導波管22、整合器23、別の導波管24、真空窓25を通過し、プラズマ形成部12内に導入される。導入されたマイクロ波は、マイクロ波反射板13によって反射される。この反射波は、整合器23で再びプラズマ形成部12側に反射される。結果として、導入されたマイクロ波のエネルギーは全てプラズマ形成部12内で消費され、プラズマPを形成する。
【0039】
プラズマPのパワー密度は、適宜設定する。例えば、基板51としてモリブデンを用いた場合は、プラズマPのパワー密度は20W・cm−3以上とすることを要し、50W・cm−3以上とすることが望ましく、100W・cm−3以上とすることが更に望ましい。
【0040】
プラズマPは、反応槽11内に充填された原料ガスと反応し、マイクロ波反射板13上に置かれた基板71上に結晶層Kを生成する。結晶層Kは、粒子状又は膜状結晶からなる層である。
【0041】
結晶成長の間、次式(1)を満たす原料ガス供給流量Gで反応漕内に原料ガスを供給し、次式(2)を満たす排気流量Gで前記反応漕内から排気した状態で、結晶成長を行う。
≦10×S×h…(1)
≦0.90×G…(2)
ここで、Sは基板面積であり、hは結晶成長速度である。
なお、hは結晶が基板面に垂直方向に伸長する速度であるので、S×hは基板上に結晶が堆積する堆積速度である。
図3に示すGは結晶成長に伴い消費される原料ガスの消費流量であり、S×hと等しい。
【0042】
排気流量Gは0.90×G以下の速度であり、原料ガス供給流量の90%以下の速度で排気するので、結晶成長の間、反応漕11内を、排気停止系(反応漕11内から外部へ排気停止した状態)又は準排気停止系(排気流量Gを低減した状態)とすることができる。なお、非連続供給でのGおよび非連続排気でのGに関しては合成プロセス時間全体での平均値が該当する。そのため、例えば混合ガスをパルス的に供給する場合、ガス供給期間中は一時的に式(1)を満たさなくとも、ガス非供給期間も含めた全プロセス時間での平均値としての原料ガス供給流量Gを用いて式(1)を満たし、合成プロセス期間全体にわたって結晶成長用原料ガス濃度Rがダイヤモンド合成に適した条件の範囲内に保つ事が出来れば良い。
【0043】
排気停止は、結晶成長の際、調整弁64を閉じればよい。排気停止により、反応槽内にガスを溜め込むことができる。ガスを溜め込むことにより、反応漕11内の反応圧力が上昇を続ける。反応圧力の上昇とともにプラズマの大きさが小さくなるので、反応圧力の上昇に合わせ、マイクロ波投入電力を増加させ、プラズマの大きさを一定に保つことが必要である。これにより、プラズマ中のガス励起状態を一定にでき、結晶性を高くできる。また、ガスを溜め込むことにより、真空排気ポンプを停止させる事ができ、電力消費量と廃熱を抑制でき、システム全体を大幅に節電できる。
【0044】
準排気停止は、結晶成長の際、調整弁64をわずかに開ける連続排気方式又は調整弁64の開閉を断続的に行う断続排気方式により実施できる。排気量は、ガスを連続的に排気する従来法に比べて10分の1以下にする。排気量を低減した準排気停止系とすることにより、従来法に比べ、原料損失を大幅に低減できる。特に、異種基板を用いた場合、基板の一面を覆うように結晶層Kが形成されるまで成長時間が従来法と変わらないにもかかわらず、排気量を10分の1以下とするので、原料損失低減の効果はより大きくなる。準排気停止系では、反応漕11内の反応圧力を一定に保つことができ、マイクロ波投入電力の制御は必要ない。
【0045】
排気停止又は準排気停止して、反応漕11内にガス溜め込むことにより、ガスを連続的に排気する従来法に比べ、未反応で廃棄される原料ガスの割合を低減でき、原料損失を大幅に低減でき、固体変換効率を向上させることができる。また、ガスを反応漕11内に滞留させることにより、結晶化確率を上げることができ、固体変換効率を向上させることができる。
【0046】
原料ガス供給流量Gは10×S×h以下の速度であり、結晶化速度に近い速度で反応槽内に原料ガスを供給するので、結晶成長に使用された原料ガスの不足分を常に補うように、反応漕11内に原料ガスを供給することができる。
【0047】
結晶を成長させる間、反応漕11内の原料ガス濃度を一定に保持するように、結晶成長に伴い消費される量の原料ガスを連続的に供給することが好ましい。結晶化条件をほぼ同一にして、成長速度を一定に保つことにより、結晶を高品質化できる。
【0048】
結晶を成長させる間、反応漕11内の原料ガス濃度を0.01vol%以上とするように、原料ガスを断続的に供給してもよい。これにより、反応槽11内を結晶成長に十分な量の原料ガス濃度以上の状態として、結晶化条件を安定化でき、均一な結晶を成長させることができる。
【0049】
反応漕11内のガス圧は一定のガス圧以上に維持することが好ましい。これにより、プラズマと原料ガスを安定して反応させることができ、安定して結晶成長させることができる。
【0050】
結晶を成長させる間、供給ガスとして原料ガス100%を用いてもよいが、原料ガスとともにキャリヤガスを前記反応漕内に供給してもよい。これにより、原料ガス濃度をより精密に制御でき、固体変換効率を向上させることができる。
キャリヤガスを混在させた場合には、反応槽11内に供給する混合ガスの原料ガス濃度を結晶成長開始時の反応槽11内の結晶成長用原料ガス濃度Rより高くすることを要する。これにより、結晶成長に必要な十分な量の原料ガスを供給でき、安定して結晶成長させることができる。しかしながら、混合ガスの原料ガス濃度が結晶成長開始時の結晶成長用原料ガス濃度Rより低くなったとしても、ダイヤモンド合成に適した条件の範囲であり、上記の式(1)と(2)の条件を満たしてあれば、高い固体変換効率で結晶成長させる事が出来る。
【0051】
図4は、結晶成長終了時点の工程図である。
図4に示すように、基板71の一面を覆うように層厚の厚い結晶層Kを形成できる。本願方法では、排気停止系又は準排気停止系なので、原料ガスを全く排気していないか、ほとんど排気していない。また、結晶化効率も高めている。これにより、原料ガスから結晶への固体変換効率を上げることができる。
【0052】
本実施形態では、ダイヤモンドの結晶成長を示したが、これに限られるものではなく、SiCの結晶成長などに使用することもできる。
【0053】
本発明の実施形態であるダイヤモンド結晶成長方法は、反応槽11内で、化学気相法により原料ガスから基板71上に結晶を成長させる結晶成長方法であって、式(1)を満たす原料ガス供給流量Gで反応漕11内に原料ガスを供給し、式(2)を満たす排気流量Gで反応漕11内から排気する構成なので、原料ガス濃度を最適化して、結晶化効率を向上させるとともに、未反応の原料ガスの排気を抑制して、原料の回収効率を高めることができ、原料ガスから結晶への固体変換効率を高めることができる。炭素原料ガスからダイヤモンド結晶への固体変換効率では、少なくとも10%以上とすることができ、条件を制御することにより50%以上とすることができる。
また、原料の回収効率を高めることにより、製造コストを低減できる。同位体制御されたメタンガス等の高価な原料ガスを用いて、ダイヤモンド等の結晶成長を行う場合には、原料費が製造コストの大部分を占めるので、製造コストを大幅に削減できる。
また、ダイヤモンド製造時の真空排気ポンプを断続的あるいは完全停止させることにより、廃熱量を低減し、ポンプ冷却や製造室内用空調の負荷低下のエネルギー損失も抑制できる。
更に、特殊材料ガス等の毒性・発火性を有する原料ガスを用いて、ダイヤモンド、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ガリウム等の結晶成長を行う場合には、除害システムを簡便化でき、合成実施環境を整備するための障壁を下げることができ、製造工程を効率化できる。
【0054】
本発明の実施形態であるダイヤモンド結晶成長方法は、結晶を成長させる間、反応漕11内の原料ガス濃度を一定に保持するように、原料ガスを連続的に供給する構成なので、結晶成長に伴い消費される量の原料ガスを連続的に供給して、結晶化条件をほぼ同一にして、成長速度を一定に保つことにより、結晶を高品質化できる。
【0055】
本発明の実施形態であるダイヤモンド結晶成長方法は、結晶を成長させる間、反応漕11内の原料ガス濃度を0.01vol%以上とするように、原料ガスを断続的に供給する構成なので、反応槽11内を結晶成長に十分な量の原料ガス濃度以上の状態として、結晶化条件を安定化でき、均一な結晶を成長させることができる。
【0056】
本発明の実施形態であるダイヤモンド結晶成長方法は、結晶を成長させる間、原料ガスとともにキャリヤガスを反応漕11内に供給する構成なので、原料ガス濃度をより精密に制御でき、固体変換効率を向上させることができる。
【0057】
本発明の実施形態であるダイヤモンド結晶成長装置は、反応槽11と、反応槽11内に備えられたガスモニター51と、反応槽11に接続されたガス供給管31と、ガス供給管31に備えられた調整弁61、62、63又はガス流量制御器とを有するダイヤモンド結晶成長装置91であって、前記ガスモニターが測定した前記反応槽11内の原料ガス濃度に基づき、10×S×h以下の原料ガス供給流量Gで前記原料ガス濃度を一定に保持するように、前記調整弁又は前記ガス流量制御器を制御可能なガス流量制御手段67が備えられている構成なので、調整弁64を制御して、式(1)を満たすように、容易に原料ガス供給流量Gを制御できるとともに、調整弁61〜63を制御して、式(2)を満たすように、容易に排気流量Gを制御できる。これにより、原料ガスからダイヤモンド結晶への固体変換効率を高めることができ、未反応原料排気量を削減して、原料回収効率を高めることができ、製造コストを低減できる。
【0058】
本発明の実施形態であるダイヤモンド結晶成長方法及びダイヤモンド結晶成長装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0059】
(実施例1)
実施例1は、ガス断続供給、排気停止系での第1の合成例である。
図5は、ガス断続供給、排気停止系での合成例を示す図である。
図5に示す超高真空対応のマイクロ波プラズマCVD装置を用い、反応漕内に水素ガス2000cc、メタンガス250ccを供給し、またマイクロ波投入電力を1.3kW、反応圧力19kPa、反応温度900℃とした。
この状態を10時間保持する事で、Mo基板上面をダイヤモンドで覆った。
【0060】
その後、新たにメタンガス250ccを供給し、この状態を20時間保持するというプロセスを3回繰り返し、更にメタンガスを70cc追加し、合計メタンガス1070ccを投入した。総合成時間は83時間であった。この間、圧力上昇に伴い投入電力を最大2.0kWまで徐々に増加させた。また、排気は一切行わない、完全閉鎖での合成とした。
【0061】
以上の結果、430mgのダイヤモンド結晶を得た。
1070ccメタンガス中に存在する炭素総重量は573mgである事から、原料メタンガスの76.8%がダイヤモンドに固体変換された。即ち、23.2%のメタンガスが固体化されずに廃棄された。また、堆積速度は毎時5.3mgと見積もられた。
【0062】
(実施例2)
実施例2は、ガス断続供給、排気停止系での第2の合成例である。
超高真空対応のマイクロ波プラズマCVD装置を用い、反応漕内に水素ガス2000cc、メタンガス250ccを供給し、またマイクロ波投入電力を1.3kW、反応圧力13kPa、反応温度900℃とした。
この状態を10時間保持する事で、Mo基板上面をダイヤモンドで覆った。
【0063】
その後、新たにメタンガス250ccを供給し、この状態を15時間保持するというプロセスを4回繰り返し、更にメタンガスを117cc追加し、合計メタンガス1367ccを投入した。総合成時間は88時間であった。この間、圧力上昇に伴い投入電力を最大2.0kWまで徐々に増加させた。また、排気は一切行わない、完全閉鎖での合成とした。
【0064】
以上の結果、587mgのダイヤモンド結晶を得た。
1367ccメタンガス中に存在する炭素総重量は732mgである事から、原料メタンガスの80.1%がダイヤモンドに固体変換された。即ち、19.9%のメタンガスが固体化されずに廃棄された。また、堆積速度は毎時6.7mgと見積もられた。
【0065】
(実施例3)
実施例3は、ガス断続供給、断続排気系での合成例である。
図6は、ガス断続供給、断続排気系での合成例を示す図である。
図6に示す超高真空対応のマイクロ波プラズマCVD装置を用い、反応漕内に水素ガス2000cc、メタンガス250ccを供給し、またマイクロ波投入電力を1.3kW、反応圧力17kPa、反応温度900℃とした。
この状態を10時間保持する事で、Mo基板上面をダイヤモンドで覆った。
【0066】
その後、メタンガス流量0.4sccmで50秒間供給し、メタンガス供給停止を50秒間保持する、というプロセスを3456回繰り返した、合計メタンガス1412ccを投入した。総合成時間は189時間であった。合成期間中、反応圧力は19kPaを超えないように、真空排気ポンプを用いて断続的に排気された。
【0067】
以上の結果、530mgのダイヤモンド結晶を得た。
1412ccメタンガス中に存在する炭素総重量は756mgである事から、原料メタンガスの70.1%がダイヤモンドに固体変換された。即ち、29.9%のメタンガスが固体化されずに廃棄された。また、堆積速度は毎時2.8mgと見積もられた。
【0068】
(実施例4)
実施例4は、ガス連続供給、断続排気系での合成例である。
図7は、ガス連続供給、断続排気系での合成例を示す図である。
図7に示す超高真空対応のマイクロ波プラズマCVD装置を用い、反応漕内に水素ガス2000cc、メタンガス260ccを供給し、またマイクロ波投入電力を1.3kW、反応圧力17kPa、反応温度900℃とした。
この状態を48時間保持する事で、Mo基板上面をダイヤモンドで覆った。
【0069】
その後、メタンガス流量0.2sccmで288時間連続供給した、合計メタンガス3716ccを投入した。総合成時間は336時間であった。合成期間中、反応圧力は19kPaを超えないように、真空排気ポンプを用いて断続的に排気された。
【0070】
以上の結果、1413mgのダイヤモンド結晶を得た。
3716ccメタンガス中に存在する炭素総重量は1991mgである事から、原料メタンガスの71.0%がダイヤモンドに固体変換された。即ち、29.0%のメタンガスが固体化されずに廃棄された。また、堆積速度は毎時4.2mgと見積もられた。
【0071】
(比較例1)
従来例である。
図8は、ガス連続供給、連続排気系での合成例を示す図である。
図8に示す超高真空対応のマイクロ波プラズマCVD装置を用い、反応漕内に水素ガス流量90sccm、メタンガス流量10sccmを供給した。
また、マイクロ波投入電力を1.3kW、反応圧力17kPa、反応温度900℃とした。この状態を保持する事で、合計メタンガス120000ccを投入した。総合成時間は200時間であった。合成期間中、反応圧力は19kPaを超えないように、真空排気ポンプを用いて排気された。
【0072】
以上の結果、673mgのダイヤモンド結晶を得た。
120000ccメタンガス中に存在する炭素総重量は642857mgである事から、原料メタンガスの0.1%がダイヤモンドに固体変換された。即ち、99.9%のメタンガスが固体化されずに廃棄された。また、堆積速度は毎時3.4mgと見積もられた。
【0073】
(比較例2)
比較例2は、ガス断続供給、排気停止系での合成例である。
核発生が不十分な場合の比較例である。
超高真空対応のマイクロ波プラズマCVD装置を用い、反応漕内に水素ガス1600cc、メタンガス175ccを供給し、またマイクロ波投入電力を0.8kWとする事で、反応圧力12kPa、反応温度850℃を得た。
この状態を19時間保持したが、Mo基板上面はダイヤモンドで十分に覆われなかった。
【0074】
その後、新たにメタンガス175ccを供給し、この状態を24時間保持した。これを2回繰り返し、合計メタンガス525ccを投入した。総合成時間は99時間であった。この間、投入電力は0.8kWに保った。また排気は一切行わない、完全閉鎖での合成とした。
【0075】
以上の結果、得られた物質は、ダイヤモンド結晶を僅かに含む黒鉛であった。
実施例1〜3及び比較例1、2の実験条件を表1にまとめた。また、実験結果を表2にまとめた。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
実施例1〜4では、原料ガスのダイヤモンド変換率は70.10%以上となった。一方、従来例である比較例1は、0.10%であった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のダイヤモンド結晶成長方法及びダイヤモンド結晶成長装置は、ダイヤモンド結晶を原料ガスの無駄を抑制して、効率よく成長させる方法及びダイヤモンド結晶成長装置に関するものであり、ダイヤモンド結晶製造産業及びダイヤモンド結晶を用いたデバイス製造産業において利用可能性がある。
【符号の説明】
【0080】
11…反応漕、12…プラズマ形成部、13…マイクロ波反射板、13a…一面、21…マイクロ波発生部、22…導波管、23…整号器、24…導波管、25…真空窓、25a…一面、31…ガス供給管、32…排気管、33、34…ガス管、38…ガス調製漕、51、52…ガスセンサー、61、62、63、64…調整弁、67…ガス流量制御手段、71…基板、81…励起源発生部、91…ダイヤモンド結晶成長装置。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽内で、化学気相法により原料ガスから基板上にダイヤモンド結晶を成長させるダイヤモンド結晶成長方法であって、
次式(1)を満たす原料ガス供給流量Gで反応漕内に原料ガスを供給し、
次式(2)を満たす排気流量Gで前記反応漕内から排気することを特徴とするダイヤモンド結晶成長方法。
≦10×S×h…(1)
≦0.90×G…(2)
ここで、Sは基板面積であり、hは結晶成長速度である。
【請求項2】
結晶を成長させる間、前記反応漕内の原料ガス濃度を一定に保持するように、原料ガスを連続的に供給することを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド結晶成長方法。
【請求項3】
結晶を成長させる間、前記反応漕内の原料ガス濃度を0.01vol%以上とするように、原料ガスを断続的に供給することを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド結晶成長方法。
【請求項4】
結晶を成長させる間、結晶成長速度を0.1μm/h(3.52mg・h−1・mm−2)以上、100μm/h(3520mg・h−1・mm−2)以下とすることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド結晶成長方法。
【請求項5】
結晶を成長させる間、原料ガスとともにキャリヤガスを前記反応漕内に供給することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のダイヤモンド結晶成長方法。
【請求項6】
反応槽と、前記反応槽内に備えられたガスモニターと、前記反応槽に接続されたガス供給管と、前記ガス供給管に備えられた調整弁又はガス流量制御器とを有するダイヤモンド結晶成長装置であって、前記ガスモニターが測定した前記反応槽内の原料ガス濃度に基づき、10×S×h以下の原料ガス供給流量Gで前記原料ガス濃度を一定に保持するように、前記調整弁又は前記ガス流量制御器を制御可能なガス流量制御手段が備えられていることを特徴とするダイヤモンド結晶成長装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−1601(P2013−1601A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134198(P2011−134198)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、科学技術振興機構、戦略的国際科学技術協力推進事業委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】