説明

チアジアゾール構造含有高分子の製造方法、チアジアゾール構造含有高分子、並びにそれを用いた電荷輸送材料及び有機電子デバイス

【課題】 バイポーラ型半導体特性を示すチアジアゾール構造含有高分子を、効率的に製造するための方法を提供する。
【解決手段】 下記式(1)で表わされる構造を繰り返し単位として含有するチアジアゾール構造含有高分子を製造する際に、少なくとも下記式(2)で表わされる化合物を用いて、金属錯体の存在下で重合させる。


(式(2)中、Xは、ハロゲン原子を表わす。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チアジアゾール構造を含有する高分子の新規な製造方法と、チアジアゾール構造を含有する新規な高分子に関し、更にはこの高分子を含有する、p型とn型の双方の特性を兼ね備えたバイポーラ型半導体特性に優れた電荷輸送材料と、この電荷輸送材料を用いた有機電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
主鎖にπ電子共役二重結合を有するπ電子共役系高分子には、電子受容性物質の添加により酸化され、正孔が電気伝導の主役を演じるp型有機半導体と、電子供与性物質の添加により還元され、電子が電気伝導の主役を演じるn型有機半導体とがある。前者の例としては、ポリ(2,5−チエニレン)、ポリ(2,5−ピロリレン)、ポリパラフェニレンビニレン等数多くあるが、後者の例は極めて少ない。更に、その双方の特性を兼ね備えたバイポーラ型有機半導体は、オキサジアゾール誘導体を除いて皆無に等しい。
【0003】
正孔及び電子伝導体となり得るバイポーラ型有機半導体は、有機EL素子、有機半導体電極、有機トランジスタ等の電子輸送層やその他広範な用途に使用できるため、近年その開発が切望されている。
【0004】
特許文献1に記載されている、オキサジアゾール構造を側鎖に有するポリマーは、バイポーラ性を示すπ電子含有高分子として数少ない有機半導体のひとつである。しかしながら、オキサジアゾール構造は結晶性が高く、有機半導体として使用する場合、成膜性が劣るため素子の安定性の面で不十分であり、また、成膜性を向上させるためにオキサジアゾール構造の含有量を減らすと、半導体特性が低下してしまうという課題を有していた。よって、新たなバイポーラ性の半導体材料が求められていた。
【0005】
チアジアゾール構造は、オキサジアゾール構造に比べて電子吸引性基Nと電子供与性基Sとをバランス良く含み、配向制御を行なうことでそのπ共役平面構造を拡げることができるので、電荷輸送性が高い半導体となることが期待される。
【0006】
非特許文献1には、チアジアゾール骨格を主鎖に導入したポリマーの合成が報告されているが、チアジアゾール環を有する単量体を重合するのではなく、下記反応式で表わされるように、分子内閉環反応を利用してチアジアゾール構造単位(下記反応式中「unit A」)を形成する高分子反応であるため、欠陥が非常に多く、原料由来の構造単位が生成物中に混在してしまう(下記反応式中「unit B」)。その結果、トランジスタ等に応用した場合に十分な半導体特性が得られないという課題があった。更に、主鎖中に存在する芳香環の修飾が困難であるため、合成できる分子及びポリマーの種類に限りがあった。
【0007】
【化1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−255725号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Macromolecules、Vol. 22、1989年、p.2589
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上の背景から、従来報告例の少ないバイポーラ型の半導体材料として十分な特性を示し、有機電子デバイスの電荷輸送材料等の用途に応用可能な高分子を、効率的に製造することができる方法が求められていた。
【0011】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。
即ち、本発明は、バイポーラ型半導体特性を示すチアジアゾール構造含有高分子を効率的に製造するための方法を提供することを、その目的の一つとする。
また、本発明は、上述の製造方法によって得られる新規なチアジアゾール構造含有高分子を提供することを、その目的の一つとする。
また、本発明は、上述の高分子を用いた電荷輸送材料を提供することを、その目的の一つとする。
更に、本発明は、上述の電荷輸送材料を用いた有機電子デバイスを提供することを、その目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、チアジアゾール構造を有する特定の化合物をモノマーとして用い、これを金属錯体の存在下で重合させることによって、チアジアゾール構造を高分子の主鎖に効率的に導入することができること、また、得られた高分子は電子供与性と電子吸引性の双方に優れており、バイポーラ型有機半導体材料として電荷輸送材料等の用途に好適に利用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明の趣旨は、下記式(1)で表わされる構造を繰り返し単位として含有するチアジアゾール構造含有高分子を製造する方法において、少なくとも下記式(2)で表わされる化合物を用いて、金属錯体の存在下で重合させることを特徴とする、チアジアゾール構造含有高分子の製造方法に存する(請求項1)。
【化2】

【化3】

(式(2)中、Xは、ハロゲン原子を表わす。)
【0014】
ここで、金属錯体としては、ニッケル錯体及び/又はパラジウム錯体を用いることが好ましい(請求項2)。
【0015】
また、本発明の別の趣旨は、下記式(3)で表わされる構造を有することを特徴とする、チアジアゾール構造含有高分子に存する(請求項3)。
【化4】

(式(3)中、nは2以上の整数を表わす。)
【0016】
また、本発明の更に別の趣旨は、下記式(4)で表わされる構造を繰り返し単位として含有し、且つ、該繰り返し単位の分子平面から該繰り返し単位を構成する各原子の中心までの距離が3Å未満であることを特徴とする、チアジアゾール構造含有高分子に存する(請求項4)。
【化5】

(式(4)中、Arは、π共役構造を有する2価の有機基を示す。)
【0017】
また、本発明の更に別の趣旨は、上述のチアジアゾール構造含有高分子を含有することを特徴とする、電荷輸送材料に存する(請求項5)。
【0018】
また、本発明の更に別の趣旨は、上述の電荷輸送材料を用いたことを特徴とする、有機電子デバイスに存する(請求項6)。
【0019】
ここで、上記有機電子デバイスとしては、発光素子、スイッチング素子、光電変換素子、光センサー、又は太陽電池であることが好ましい(請求項7〜11)。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、各種のチアジアゾール構造含有高分子を、効率的に製造することが可能である。また、得られたチアジアゾール構造含有高分子は、優れたバイポーラ型半導体特性を示すことから、有機電子デバイスの電荷輸送材料等の用途に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の有機電子デバイスの一種である電界効果トランジスタの構造例を示す断面図である。
【図2】本発明の有機電子デバイスの一種である電界効果トランジスタの別の構造例を示す断面図である。
【図3】本発明の有機電子デバイスの一種である電界効果トランジスタの更に別の構造例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
【0023】
〔I.チアジアゾール構造含有高分子の製造方法〕
本発明に係るチアジアゾール構造含有高分子の製造方法(以下適宜「本発明の高分子の製造方法」或いは単に「本発明の製造方法」という。)は、下記式(1)で表わされる構造(チアジアゾール構造)を繰り返し単位として含有する高分子(以下適宜「チアジアゾール構造含有高分子」という。)を製造するものである。
【0024】
【化6】

【0025】
そして、本発明の高分子の製造方法は、モノマーとして少なくとも下記式(2)で表わされる化合物(2,5−二ハロゲン置換−1,3,4−チアジアゾール)を含む1種又は2種以上の化合物を用いて、金属錯体の存在下で重合又は共重合させることを特徴としている。
【0026】
【化7】

【0027】
式(2)中、Xは、ハロゲン原子を表わす。中でも、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子が好ましく、臭素原子が特に好ましい。
【0028】
式(2)の化合物の製法は特に制限されず、一般的なチアジアゾール構造化合物の製法として公知の各種の手法を任意に選択することができる。公知の手法の具体例としては、R. Stolle, K. Fehrenbach、J. Prakt. Chem.、122、1929年、p.289〜318等に記載の方法等が挙げられる。
【0029】
モノマーとしては、式(2)の化合物のうち一種を単独で用いても良く、二種以上を任意の組み合わせで併用してもよい。二種以上を併用する場合、その使用比率は特に制限されず、目的とする高分子の構造に応じて適宜調整すればよい。
【0030】
また、式(1)以外の繰り返し単位を含む高分子を製造する場合は、式(2)の化合物に加え、その他のモノマーを併用しても良い。その他のモノマーについても、一種を単独で用いても良く、二種以上を任意の組み合わせで併用しても良い。また、その使用比率も特に制限されず、目的とする高分子の構造に応じて適宜調整すればよい。
【0031】
式(2)の化合物以外のモノマーの好ましい例として、ハロゲン原子(中でも臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子が好ましく、臭素原子が特に好ましい。)、エチニル基、トシル基、トリフルオロカルボン酸エステル基、−MgXで表わされる基(Xはハロゲン原子)、−ZnXで表わされる基(Xはハロゲン原子)、及び、有機典型元素(ケイ素、錫、ホウ素等)を含む基(中でも、ボロン酸又はそのエステル、トリアルキル錫基、トリアルキルシリル基が好ましい。)からなる群より選ばれる基(以下「特定置換基」という。)によって、2つ以上の置換位置が置換された芳香族系化合物が挙げられる。ここでいう「(特定置換基によって)2つ以上の置換位置が置換された芳香族系化合物」とは、1又は2以上の芳香環(芳香族性を示す環状炭化水素又は複素環であって、単環でも縮合環でも良い。)を有する化合物であって、芳香環における任意の位置の2つ以上の水素が特定置換基によって置換されたものであれば、その種類に特に制限はなく、目的とする繰り返し単位の構造に応じて適切なものを選択すればよい。この芳香族系化合物の炭素数は特に制限されないが、通常4以上、好ましくは6以上、また、通常48以下、好ましくは22以下の範囲である。また、2つ以上の特定置換基は同じでも良く、互いに異なっていても良い。具体例としては、p−ジブロモベンゼン、2,5−ジブロモチオフェン、2,5−ジブロモピリジン、2,6−ジブロモピリジン、2,5−ビストリメチルスタニルチオフェン、1,4−ジドデシロキシ−2,5−ジエチニルベンゼン、2,5−ジエチニル−N−ドデシルピロール等が挙げられる。
【0032】
金属錯体の種類も特に制限されず、公知の各種の重合用金属錯体の中から、任意に選択して使用することができる。例としては、銅錯体、ニッケル錯体、パラジウム錯体等の還元触媒が挙げられる。中でも、ニッケル錯体、パラジウム錯体が好ましい。
【0033】
ニッケル錯体の例としては、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、ジクロロ(2,2′−ビピリジン)ニッケルなどが挙げられる。中でも、式(2)の化合物に対する重合能力が高いという点で、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル等のニッケル(0価)錯体が好ましい。なお、ニッケル錯体は、何れか一種を単独で用いても良く、二種以上を任意の組成及び組み合わせで用いても良い。また、ジクロロ(2,2′−ビピリジン)ニッケル(2価)と脱ハロゲン化剤としてマグネシウムや亜鉛を併用することもできる。
【0034】
パラジウム錯体の例としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ{1,3−ビス(ジフェニルホスフィン)プロパン}パラジウムなどが挙げられる。中でも、式(3)の化合物に対する重合能力が高いという点で、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムが好ましい。なお、これらのパラジウム錯体は、何れか一種を単独で用いても良く、二種以上を任意の組成及び組み合わせで用いても良い。また、一種又は二種以上のパラジウム錯体を、一種又は二種以上のニッケル錯体と任意の組み合わせで併用しても良い。
【0035】
金属錯体の使用量は、触媒として用いる場合には、原料となる全モノマーに対するモル比の値で、通常5×10-3倍以上、5×10-2倍以下の範囲である。また、0価ニッケル錯体のようにそれ自身が反応剤として作用する場合には、原料となる全モノマーに対するモル比で通常1倍以上、2倍以下の範囲である。
【0036】
重合の手順は特に制限されないが、通常は、反応容器中でモノマーを溶媒に溶解又は分散させ、そこに触媒を加えて反応を開始する。
【0037】
溶媒としては、モノマーを好適に溶解又は分散させることができ、且つ、モノマーや高分子との間に好ましからぬ反応を生じないものであれば、その種類は特に制限されない。例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トルエン、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、ジイソプロピルアミンなどが挙げられる。溶媒は一種を単独で用いても良く、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いても良い。
【0038】
重合反応時の雰囲気は特に限定されないが、通常は空気中又は不活性雰囲気下、好ましくは不活性雰囲気下で行なう。不活性雰囲気の例としてはアルゴンガス又は窒素ガス雰囲気が挙げられる。
【0039】
重合反応時の温度に特に制限はないが、通常20℃以上、好ましくは40℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは80℃以下の範囲である。重合反応時の圧力にも特に制限はないが、通常は常圧で行なう。
【0040】
重合反応の時間は、使用するモノマーや触媒の種類、重合時の温度や圧力等によっても異なるが、通常1時間以上、好ましくは5時間以上、また、通常200時間以下、好ましくは100時間以下、更に好ましくは80時間以下の範囲である。
【0041】
重合反応の終了後、得られた高分子を任意の方法で回収し、必要に応じて後処理を行なう。反応溶液から高分子を回収する方法としては、再沈殿等の方法が挙げられる。また、後処理としては、キレート化剤等を用いた洗浄による金属錯体の除去等が挙げられる。
【0042】
以上、説明した本発明の製造方法により、上記式(1)の繰り返し単位を含有する高分子が得られる。ここで、原料として用いるモノマーの種類を調整することにより、様々な種類の高分子を製造することができる。製造可能な高分子の例としては、一種類の式(1)の繰り返し単位からなる単独重合体、二種類以上の式(1)の繰り返し単位からなる共重合体、一種類又は二種類以上の式(1)の繰り返し単位と、一種類又は二種類以上のその他の繰り返し単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0043】
高分子中における式(1)の繰り返し単位の割合は特に制限されないが、高分子に十分な電子供与性と電子吸引性を付与し、バイポーラ型半導体としての性質を発揮させる観点からは、ある程度高い割合であることが好ましい。具体的には、高分子製造時の原料モノマー全体に対する、式(1)の繰り返し単位に対応するモノマーの重量比の値で、通常1重量%以上、好ましくは10重量%以上である。一方、上限としては、通常100重量%以下、好ましくは90重量%以下である。
【0044】
以上説明した本発明の製造方法により得られる高分子は、チアジアゾール構造をその主鎖に含むものであって、両極性に優れ、バイポーラ型半導体としての性質を示す。
上述のように、チアジアゾール構造のポリマー構造は、I.Delfanne等によって上記非特許文献1に報告されていたが、チアジアゾール構造を得るためにポリチオアミドを重合し、更にチオアミドの分子内閉環反応を高分子反応で行わなければならず、高分子中での欠陥が多数観察され、十分な電気的特性が得られていなかった。
一方、チアジアゾール自身の反応性は非常に乏しいので、チアジアゾール構造を有する化合物そのものをモノマーとして重合させ、高分子の主鎖へチアジアゾール構造を導入するのは、非常に困難であった。
これに対して、本発明の製造方法によれば、チアジアゾール構造を有する化合物そのものをモノマーとして重合することができ、その結果、チアジアゾール構造を主鎖に含有する高分子を効率的に製造することができる。得られる高分子は両極性に優れ、バイポーラ型有機半導体として優れた性質を示すことから、例えば各種の有機電子デバイス等の電荷輸送材料として好適に用いることができる。
【0045】
なお、本発明の製造方法により得られる高分子が半導体であることは、電気伝導度測定により確認することができる。具体的には、光学的又は電気化学的に還元された試料の導電性を測定することによって確認できる。また、その他にも、電界効果トランジスタの作動挙動を解析する、ホール効果を測定する、熱起電力を測定する、光導電性を測定する等の手法が挙げられる。
【0046】
〔II.チアジアゾール構造含有高分子〕
本発明の製造方法により得られるチアジアゾール構造含有高分子の中でも、特に好ましい高分子の例としては、以下の二種類を挙げることができる。
【0047】
(i)第1の高分子:
まず、下記式(3)で表わされる構造を有するチアジアゾール構造含有高分子(以下、適宜「第1の高分子」という。)が挙げられる。
【化8】

【0048】
上記式(3)中、nは2以上の整数を表わす。即ち、第1の高分子は式(1)の繰り返し単位が2つ以上連続して現れる構造を有するため、π共役平面構造が広くなり、優れたバイポーラ型半導体特性を発揮することになる。中でもnは3以上が好ましい。nの上限は特に制限されないが、通常10000以下、好ましくは1000以下の範囲である。
【0049】
第1の高分子は、式(3)の構造を有していればその他の制限はなく、式(3)の構造のみからなっていても、それ以外の構造が共存していても良い。式(3)の構造のみからなる場合、第1の高分子は式(1)の繰り返し単位の単独重合体となる。式(3)以外の構造が存在する場合、第1の高分子は1種又は2種以上の式(3)の構造とその他の1種又は2種以上の構造とが交互に連結された高分子、即ち式(1)の繰り返し単位とその他の繰り返し単位との共重合体となる。式(3)以外の構造が存在する場合、その構造は特に制限されない。またその種類は一種類のみでも良く、二種類以上が任意の組み合わせ及び比率で共存していても良い。式(3)の構造と他の構造との存在比率も特に制限されない。
【0050】
(ii)第2の高分子:
続いて、下記式(4)で表わされる構造を繰り返し単位として含有するチアジアゾール構造含有高分子(以下、適宜「第2の高分子」という。)が挙げられる。
【化9】

【0051】
上記式(4)中、Arは、π共役構造を有する2価の有機基を表わす。ここで「π共役構造」とは、多重結合が単結合と交互に連なった構造を表わす。高分子中にこのようなπ共役構造を有する有機基が存在することによって、高分子のπ共役平面が広がり、チアジアゾール骨格の両極性がより高くなり、バイポーラ型半導体としての特性がより向上する。
【0052】
更に、第2の高分子においては、式(4)で表わされる繰り返し単位が、平面性の高い構造を有していることが重要である。具体的には、式(4)の繰り返し単位の分子平面から式(4)の繰り返し単位を構成する各原子の中心までの距離が3Å未満となるように配置された構造であることが必須である。ここで、式(4)の繰り返し単位の分子平面とは、式(4)の繰り返し単位の両末端に水素原子を配した下記式(5)で表わされる化合物を想定し、その化合物について決定される分子平面のことを指すものとする。なお、化合物の「分子平面」は、その化合物の構造を最適化した場合に算出される分子骨格において、全ての原子の中心からの距離の二乗の和が最小になるような平面として定義される。
【0053】
【化10】

【0054】
なお、分子平面の決定や、分子平面から各原子の中心までの距離の算出は、例えば、J. J. P. Stewart により開発された半経験的分子軌道法MOPAC Parametric Method 3(MOPACPM3)を用いて行なうことができる。その結果、繰り返し単位の基準平面から各原子の中心までの距離が3Å未満であれば、その繰り返し単位は十分な平面性を備えているものと判別できる。
【0055】
特に、チアジアゾール構造含有高分子を電荷輸送材料として使用する場合、キャリアの移動度を高めるためには、固体状態において隣り合う分子間が良好に重なり合う状態となっていることが望ましい。これはキャリア、即ち電子或いは正孔が分子間を伝達して行く際に、π電子軌道間の相互作用が重要な役割を果たすためである。そのためには、ポリマー分子の平面性が高いことが望ましい。平面性の尺度としては、ポリマー分子平面からの各原子のずれを参考にすることができる。この平面からの各原子の中心までの距離が3Å未満であれば、高い平面性を有し、電荷移動度が高くなる条件を満たすことができる。
【0056】
Arの例としては、以下の式(I)〜(XII)で表わされる構造が挙げられる。但し、これらはあくまでも例示であり、第2の高分子に適用可能なArは以下の式(I)〜(XII)の構造に限定されるわけではない。
【0057】
【化11】

【0058】
【化12】

【0059】
【化13】

【0060】
【化14】

【0061】
【化15】

【0062】
【化16】

【0063】
【化17】

【0064】
【化18】

【0065】
【化19】

【0066】
【化20】

【0067】
【化21】

【0068】
【化22】

【0069】
上記式(I)〜(XII)において、各符号の定義はそれぞれ以下の通りである。
【0070】
4〜R70は、各々独立に、
H、
F、
CH3−、
CH3(CH2n−(nは1以上23以下の整数を表わす。)、
CH3(CH2n(CF2m−(n及びmは各々独立に、1以上23以下の整数を表わす。)、
CF3−、
CF3(CF2n−(nは1以上23以下の整数を表わす。)、
CF3(CH2n(CF2m−(n及びmは各々独立に、1以上23以下の整数を表わす。)、
フェニル基、
ニトロ基、
アミノ基、
シアノ基、
カルボキシル基、
スルホン酸基、
水酸基、又は
アルコキシ基を表わす。
【0071】
3〜A30は、各々独立に、炭素原子又は窒素原子を表わす。窒素原子の場合は、これに対応するR4〜R70は存在しないことになる。
【0072】
1〜Q6は、各々独立に、−CR7172−、−NR73−、−S−、−SiR7475−、又は−Se−を表わす(R71〜R75は、各々独立に、水素原子、炭素数1以上23以下の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基、そのアルキル基が1又は2以上のフッ素原子で置換されたフッ素置換アルキル基、又は芳香環基を表わす。)。
【0073】
1は、窒素原子又は
【化23】

を表わす。
【0074】
1は、0以上6以下の整数を表わす。
2は、1以上6以下の整数を表わす。
3及びn4は、各々独立に、1以上8以下の整数を表わす。
5及びn10は、各々独立に、1以上10以下の整数を表わす。
6〜n9及びn11〜n14は、各々独立に、0以上10以下の整数を表わす。
【0075】
第2の高分子は、式(4)の繰り返し単位を含有していれば、その他の制限はない。具体的に、式(4)の繰り返し単位は一種類のみでも良く、二種類以上が任意の組み合わせ及び比率で共存していても良い。また、第2の高分子は式(4)の繰り返し単位のみからなっていても良く、その他の繰り返し単位が共存していても良い。後者の場合、式(4)以外の繰り返し単位の種類も特に特定されない。更に、式(4)以外の繰り返し単位は一種類のみでも良く、二種類以上が任意の組み合わせ及び比率で共存していても良い。また、式(4)の繰り返し単位とその他の繰り返し単位との存在比率も特に制限されない。但し、式(4)の繰り返し単位の比率が多いと、チアジアゾール骨格の持つ電子供与性と電子吸引性がポリマー分子間に働き、ポリマー分子同士がスタッキングを起こして配向しやすくなるので好ましい。
【0076】
本発明の高分子は、上述の第1の高分子と第2の高分子の何れか一方のみに該当すれば良いが、双方に該当するものであっても良い。特に、上述した本発明の製造方法により、式(1)の繰り返し単位と、上記Arで表わされる繰り返し単位との共重合体を製造すると、得られる高分子中では、式(1)の繰り返し単位とArで表わされる繰り返し単位とがランダムに存在することになる。この場合、一般的には、式(1)の繰り返し単位が2つ以上連続して存在する箇所と、式(1)の繰り返し単位の隣にArで表わされる繰り返し単位が並んで存在する箇所とが現れるが、これらの箇所はそれぞれ上述の式(3)及び式(4)の構造に相当する。即ち、こうして得られた高分子は、上述の第1の高分子と第2の高分子の双方に該当することになる。
【0077】
なお、本発明の高分子の構造は、核磁気共鳴(以下「NMR」と略す。)スペクトル、赤外(以下「IR」と略す。)スペクトル、元素分析法、質量分析法(以下「MS」と略す。)等の方法で分析し、同定することが可能である。
【0078】
例としては、本発明の高分子を含有する有機電子デバイス等から、洗浄等の方法によって本発明の高分子を分離し、更に、熱重量分析−質量分析(以下「TG−MS」と略す。)法で分解物の構造から式(1)のチアジアゾール構造を同定する、元素分析法で元素の組成比を定量する、NMRスペクトル測定やIRスペクトル測定で結合状態を同定する等の手法によって、式(1)のチアジアゾール構造を同定することが可能である。具体例としては、Polymer Journal、Vol. 32、No. 11、2000年、p.991〜994に記載のポリ−ニトロピリジンでの測定と同様の方法で行なうことができる。
【0079】
本発明の高分子の分子量としては、特に制限はなく、その用途に応じて適切な範囲となるように選択すればよい。例えば、本発明の高分子を、後述する有機電子デバイス等の電荷輸送層として使用する場合には、通常はこれを成膜するために、高分子を溶媒に溶解して塗布する方法を行うが、その際に、高分子の分子量が高いほど、成膜後の膜強度や均一性に優れた膜を得ることができる。その一方で、高分子の分子量が高過ぎると、溶媒に溶け難くなったりする虞があり好ましくない。従って、本発明の高分子の分子量は、その加工性、用途等によって最適値が異なり、それぞれに使い分けることが好ましい。一般的には、GPCによる分子量測定で得られる重量平均分子量が、通常300以上、中でも1000以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが、通常10万以下である。
【0080】
なお、本発明の高分子の分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」と略す。)等の液体クロマトグラフィーにより測定することができる。具体的には、例えば、Polymer Journal, Vol. 32, No. 11, p.991-994, 2000に記載のポリ−ニトロピリジンでの測定と同様に、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、トリフルオロ酢酸等の溶媒に溶解し、GPCにより測定することができる。
【0081】
〔III.電荷輸送材料〕
次に、本発明の電荷輸送材料について説明する。
本発明の電荷輸送材料は、上に説明した本発明の高分子を少なくとも含有することを特徴とする。本発明の高分子のうち、何れか一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせで含有していても良い。また、本発明の高分子のみからなるものであってもよいが、その他の成分(例えば、その他の高分子やモノマー、各種の添加剤等)を含有していてもよい。
【0082】
本発明の電荷輸送材料は、その用途の一つとして後述する有機電子デバイスの電荷輸送層に好適である。その場合、当該電荷輸送材料を成膜して用いることが好ましく、この際に前述した有機溶剤への可溶性及びその加工性に優れているなどの物性が好ましい点として現れる。有機電子デバイスの電荷輸送層として用いる際の詳細は、有機電子デバイスの項にて説明する。
【0083】
本発明の電荷輸送材料は、単独でも有機電子デバイスの電荷輸送層の材料として十分に作用するが、他の電荷輸送材料と混合及び/又は積層して使用することも可能である。本発明の電荷輸送材料と併用可能な他の電荷輸送材料としては、トリスアルミニウムキノリノール(以下、「Alq3」と略す。)などのキノリノール誘導体金属錯体、オキサジアジン誘導体、トリアジン誘導体などの既知の電荷輸送材料が挙げられるが、特にこれらに限定されることはない。
【0084】
〔IV.有機電子デバイス〕
次に、本発明の有機電子デバイスについて説明する。
本発明の有機電子デバイスは、上述した本発明の電荷輸送材料を用いて形成されたことを特徴としている。本発明の電荷輸送材料を適用可能なものであれば、有機電子デバイスの種類に特に制限はない。例としては、発光素子、スイッチング素子、光電変換素子、光電導性を利用した光センサー、太陽電池等が挙げられる。
【0085】
発光素子としては、表示デバイスに用いられる各種の発光素子が挙げられる。具体例としては、液晶表示素子、高分子分散型液晶表示素子、電気泳動表示素子、エレクトロルミネッセント素子、エレクトロクロミック素子等が挙げられる。
【0086】
スイッチング素子の具体例としては、ダイオード(pn接合ダイオード、ショットキー・ダイオード、MOSダイオード等)、トランジスタ(バイポーラートランジスタ、電界効果トランジスタ(FET)等)、サイリスタ、更にはそれらの複合素子(例えばTTL等)等が挙げられる。
【0087】
光電変換素子の具体例としては、電荷結合素子(CCD)、光電子増倍管、フォトカプラ等が挙げられる。また、光電導性を利用した光センサーとしては、これらの光電変換素子を利用したものが挙げられる。
【0088】
本発明の電荷輸送材料を有機電子デバイスのどの部位に用いるかは特に制限されず、バイポーラ型半導体としての特性を生かすことができる部位であれば、任意の部位に用いることが可能であるが、通常は有機電子デバイスの電荷輸送層に使用される。
【0089】
本発明の有機電子デバイスの例として、スイッチング素子の一種である電界効果トランジスタ(FET)を挙げて説明する。図1〜3はそれぞれ、本発明の有機電子デバイスの一種である電界効果トランジスタ(以下「本発明の電界効果トランジスタ」或いは「本発明のFET」と略する場合がある。)の構成例を模式的に示す断面図である。本発明の電界効果トランジスタの基本的な構造は、図1〜3に示すように、支持基板1上に、絶縁体層3と、この絶縁体層3により隔離されたゲート電極2及び電荷輸送性層4と、この電荷輸送性層4に接するように設けられたソース電極5及びドレイン電極6とを有するものである。各層が積層される順番は特に制限されず、図1〜3の何れの順序で積層されていてもよい。更には、本発明の電界効果トランジスタは何ら図1〜3に示す構造の電界効果トランジスタに限定されず、更に図1〜3に示される層以外の層が形成されていても良い。
【0090】
本発明の電荷輸送材料を有機電子デバイスに用いる場合には、基板等の上に成膜して電荷輸送膜として用いることが適当である。
【0091】
成膜対象となる基板の材料は、電界効果トランジスタ及びその上に作製される表示素子、表示パネル等を支持できるものであれば、その種類は特に制限されない。例としては、ガラス等の無機基板やポリマーからなるプラスチック基板が挙げられる。中でも好ましくは、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、アモルファスポリオレフィン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ビニル系ポリマー、ポリパラバン酸、ポリシルセスキオキサン、及びシロキサンよりなる群から選択されるプラスチック基板が好適である。更に、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル類やポリカーボネート等の汎用樹脂が強度やコストの点から好ましく、また、ポリイミド、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリパラバン酸等の縮合系高分子や、熱処理などにより不溶化が行なえるポリビニルフェノール等の架橋体が耐熱性や耐溶剤性の点から好ましい。支持基板の構成材料としては、特に、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾールが好ましく、最も好ましいのはポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル及びポリイミドである。
【0092】
電荷輸送材料を成膜する方法も特に制限はなく、公知の方法を用いて成膜することができる。例えば、電荷輸送材料を有機溶媒に溶解させた溶液を用いた塗布プロセスは、簡便に多層構造素子を作製する場合に好適である。
【0093】
塗布の方法としては、溶液をたらして乾燥するだけのキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、ブレードコーティング、ワイヤバーコーティング、スプレーコーティング等のコーティング法や、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法等、更にはこれらの手法を複数組み合わせた方法を用いることができる。更に、塗布に類似の技術として、水面上に形成した単分子膜を基板に移し積層するラングミュア・ブロジェット法、液晶や融液状態を2枚の基板で挟んだり毛管現象で基板間に導入したりする方法等も挙げられる。
【0094】
電荷輸送膜の膜厚は特に制限されない。先に例示した電界効果トランジスタの場合、素子の特性は必要な膜厚以上であれば膜厚には依存しない。膜厚が厚くなると漏れ電流が増加してくることが多い。従って、好ましい膜厚は、通常1nm以上、好ましくは10nm以上である。また、通常10μm以下、中でも500nm以下が望ましい。また、本発明の電荷輸送材料は、それを単独で用いることはもちろんであるが、他の材料との混合で用いることもできるし、更には他の層との積層構造で用いることも出来る。
【0095】
作製された電荷輸送膜は、後処理により特性を改良することが可能である。例えば、加熱処理により、成膜時に生じた膜中の歪みを緩和することができ、特性の向上や安定化を図ることができる。更に、酸素や水素等の酸化性或いは還元性の気体や液体にさらすことにより、酸化或いは還元による特性変化を誘起することもできる。これは例えば膜中のキャリア密度の増加或いは減少の目的で利用することができる。
【0096】
有機電子デバイスを作製する際の電極や配線には、金、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、コバルト、チタン、白金、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属、InO2、SnO2、ITO等の導電性の酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、等の導電性高分子及びそれに塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、PF6、AsF5、FeCl3等のルイス酸、ヨウ素等のハロゲン原子、ナトリウムカリウム等の金属原子等のドーピングされた材料、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、等の半導体及びそのドーピングされた材料、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイト等の炭素材料や金属粒子を分散した導電性の複合材料等の、導電性を有する材料が用いられる。これらを形成する方法も、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、印刷法、ゾルゲル法等を用いることができる。また、そのパターニング方法も、フォトレジストのパターニングとエッチング液や反応性のプラズマでのエッチングを組み合わせたフォトリソグラフィー法、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法及びこれらの手法を複数組み合わせた手法を利用することができる。また、レーザーや電子線等のエネルギー線を照射して材料を除去したり材料の導電性を変化させたりすることにより、直接パターンを作製することも利用できる。
【0097】
形成した電荷輸送膜や電極、配線等の表面には、外気の影響を最小限にするために、保護膜を形成することができる。これには、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリビニルアルコール等のポリマー膜、酸化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化膜や窒化膜等が挙げられる。ポリマー膜の形成方法としては、ポリマー溶液を塗布、乾燥する方法や、モノマーを塗布或いは蒸着して重合する方法等が挙げられる。更には、架橋処理を施したり、多層膜を形成することも可能である。無機物の膜の形成には、スパッタ法、蒸着法等の真空プロセスでの形成方法や、ゾルゲル法に代表される溶液プロセスでの形成方法も用いることができる。
【0098】
本発明の有機電子デバイスは、その種類に応じて任意の用途に用いることができる。例えば、本発明の電荷輸送材料を用いた電界効果トランジスタは、ディスプレーのアクティブマトリクスのスイッチング素子として利用することが出来る。これは、ゲートに印加される電圧でソースとドレイン間の電流をスイッチング出来ることを利用して、ある表示素子に電圧を印加或いは電流を供給する時のみスイッチを入れ、その他の時間は回路を切断する事により、高速、高コントラストな表示を行なうものである。また、従来のアクティブマトリクスの代替としても、省エネルギープロセス、低コストプロセスの可能な素子として有利である。
【実施例】
【0099】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、本明細書において、「部」とは、特に断り書きの無い場合「重量部」を表わし、「wt%」とは、「重量%」を表わすものとする。
【0100】
〔評価法〕
<電荷輸送材料の酸化還元電位測定方法>
電荷輸送材料の酸化還元電位は、サイクリックボルタンメトリー測定BAS社製「エレクトロケミカルアナライザー650A」によって行なった。掃引速度は100mV/sec、試料の濃度は1mMで行なった。内部標準にフェロセン/フェロセニウム(Fc/Fc+)を用いた。
【0101】
<電荷輸送層の電気伝導度測定>
2.5cm×2.5cmのパイレックス(登録商標)基板(フルウチ化学社製)に、幅1mmのシャドーマスクを用いて、ウルバック社製真空蒸着機EX−400(真空度:1.3×10-4Pa)により、厚さ1000Å(100nm)のアルミニウム電極を蒸着した。この電極付き基板上に、0.5wt%濃度の試料を1000rpmの回転数でスピンコートして、厚さ4000Å(400nm)のフィルムを作製した。このフィルムに、再び電極に対してクロスになるように、幅1mmのシャドーマスクを用いて、ウルバック社製真空蒸着機EX−400(真空度:1.3×10-4Pa)により、厚さ1000Å(100nm)のアルミニウム電極を蒸着した。電極間をAgilent社製の半導体パラメーターアナライザー4155で測定し、電圧−電流曲線を求めて、その電気伝導度を算出した。
【0102】
<電界効果トランジスタ素子の測定>
300nmの酸化膜を形成したN型のシリコン基板(Sbドープ、抵抗率0.02Ωcm以下、住友金属工業社製)上に、0.5wt%濃度の試料を1000rpmの回転数でスピンコートして、厚さ4000Å(400nm)のフィルムを作製した。このフィルムに、シャドーマスクで長さ(L)25μm、幅(W)500μmのギャップを有する金又はアルミニウム電極(ソース、ドレイン電極)を形成した。こうして得られた電界効果トランジスタの特性を、アジレントテクノロジー社製半導体パラメータアナライザー4155Cを用いて測定した。ソースとドレイン間に印加された電圧Vdに対して流れる電流をId、ソースとゲートに印加される電圧をVg、閾値電圧をVt、絶縁膜の単位面積当たりの静電容量をCi、ソース電極とドレイン電極の間隔をL、幅をW、半導体層の移動度をμとすると、その動作は以下の式(i)、式(ii)で表わされる。
【0103】
【数1】

【0104】
μは素子の電流電圧特性から求めることができる。μを求めるには式(i)或いは式(ii)を用いるが、式(ii)の飽和電流部分のId1/2−Vgの傾きから求める方法を採用した。このプロットのId=0との切片からスレシホールド電圧Vt、Vd=−30V印加時のVg=30VとVg=−50VのIdの比をオンオフ比とした。
【0105】
〔合成例1:2,5−ジブロモ−1,3,4−チアジアゾールの合成〕
【化24】

上記反応式(1)に従って合成を行なった。具体的には以下の通りである。
【0106】
<工程1−1>
室温、窒素雰囲気下において、300mLフラスコ中に、酢酸(100mL)、2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール(10.1g、100mmol)、臭素(16.0g、100mmol)を入れ、この反応液を60℃で5時間攪拌した。その後、溶媒をエバポレータにより除去し、残渣を炭酸水素ナトリウム水で洗浄した後、固体を濾別することにより、白色の固体状の生成物を得た。
【0107】
得られた生成物について、元素分析、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)測定及び13C核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)測定を行なった。その結果を以下に示す。
・Elemental analysis: predicted for C2H2BrN3S : C, 13.34; H, 1.12; Br, 44.38; N, 23.34; S, 17.81%. Found: C, 13.62; H, 1.24; Br, 44.70; N, 24.46; S, 17.89 %.
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6): δ=7.51 (s, 2H, -NH2.)
13C-NMR (400MHz, DMSO-d6): δ=170.6, 71.90.
【0108】
以上の結果より、得られた生成物が2−アミノ−5−ブロモ−1,3,4−チアジアゾールであることが確認された(収率74%)。
【0109】
<工程1−2>
室温、窒素雰囲気下において、500mLフラスコ中に、アセトニトリル300mL、臭化銅(II)(13.4g、60mmol)、t−BuNO2(90%、7.7g)を加
えた。次いで、工程1−1で得られた2−アミノ−5−ブロモ−1,3,4−チアジアゾール(9.0g、50mmol)をゆっくり加えた。この反応液を室温で20時間攪拌した後、塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止した。反応溶液中の生成物をエーテル−水の2層で洗浄し、エーテルにより抽出した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム)により精製し、メタノールで再結晶を行なうことにより、白色の結晶状の生成物を得た。
【0110】
得られた生成物について、元素分析及び13C−NMR測定を行なった。その結果を以下に示す。
・Elemental analysis: predicted for C2Br2N2S: C, 9.85; Br, 65.52; N, 11.49; S, 13.15 %. Found: C, 10.05; Br, 65.93; N, 11.50; S, 13.05 %.
13C-NMR (400MHz, CDCl3): δ=141.1.
【0111】
以上の結果より、得られた生成物が2,5−ジブロモ−1,3,4−チアジアゾールであることが確認された(収率74%)。
【0112】
〔実施例1:高分子1[P(Thdz−Th)]の製造〕
窒素雰囲気下、100mLのシュレンク管に、合成例1で得られた2,5−ジブロモ−1,3,4−チアジアゾール(1.22g、5.0mmol)と2,5−ビストリメチルスタニルチオフェン(2.05g、5.0mmol)を入れ、50mLの脱水NMP(N−メチル−2−ピロリドン)に完全に溶解させた。これに金属触媒としてPd(PPh34(0.29g、0.25mmol)を加え、80℃に加熱した状態で48時間攪拌した。その後、室温に冷却し、反応溶液をフッ化カリウム水溶液(5%、250mL)に注いで反応を停止した。析出した固体を濾取し、アンモニア水、メタノール、クロロホルム、アセトンにより順に洗浄し、真空乾燥することにより、茶色の粉末状の生成物(0.71g)を得た。
【0113】
得られた生成物について、元素分析、1H−NMR測定及びフーリエ変換赤外分光(FT−IR)測定を行なった。その結果を以下に示す。
・Elemental analysis: predicted for (C6H2N2S2・0.5H2O)n: C, 41.12; H, 1.73; N, 15.99%; Found: C, 41.02; H, 1.73; N, 15.54%; Mn=3200. Found: C, 68.89; H, 7.37; N, 19.26%; Mn=3000 (by 1H-NMR).
1H-NMR (400MHz, CF3COOD): δ=8.18 - 7.43 (m, 2H)
・FT-IR (KBr, cm-1): 3067, 1603, 1544, 1443, 1418, 1267, 1054, 1026, 884, 804, 767
【0114】
以上の結果より、得られた生成物が、下記式(A)で表わされる繰り返し単位を有する高分子[P(Thdz−Th)]であることが確認された。その収率は86%であった。
【0115】
【化25】

(上記式(A)中、nは整数を表わす。)
また、GPC法による測定で平均繰り返し数を求めたところ、n=51であった。
【0116】
得られた高分子[P(Thdz−Th)]について、酸化還元電位測定を行なったところ、第一還元電位としては、−2V付近に可逆なピークが観測され、n型導電体となる可能性が示唆された。また、イオン化ポテンシャルを測定した結果、4.6eVとなり、p型導電体となる可能性が示唆された。
【0117】
次に、得られた高分子[P(Thdz−Th)]の電気伝導度測定を行なった。試料溶液はトリフルオロ酢酸溶液とした。その結果、電気伝導度が10-8S/cm台となり、半導体領域の電気伝導度を示した。また、電界効果トランジスタ特性を評価したところ、n型の特性で移動度は5.4×10-3cm2/Vs、Vtは−16V、オンオフ比は3.3×104となり、また、p型の特性で移動度は3.4×10-4cm2/Vs、Vtは+13V、オンオフ比は1.2×104となった。この結果から、高分子[P(Thdz−Th)]はバイポーラ型半導体としての特性を示すことが分かった。
【0118】
また、高分子[P(Thdz−Th)]の繰返し単位である式(A)の構造の平面性について、半経験的分子軌道法MOPAC Parametric Method 3(MOPACPM3)により評価を行なった。式(A)のチアジアゾール−チオフェン(Thdz−Th)の両末端に水素原子を配した化合物(H−Thdz−Th−H)の構造を最適化したところ、その分子平面(即ち、式(A)の繰り返し単位の基準平面)から各原子の中心までの距離の最大値は1.8Åとなり、本発明の3Å未満という規定を満たす分子構造であることが確認された。
【0119】
〔実施例2:高分子2[P(Thdz−Ph)]の製造〕
窒素雰囲気下、200mLのシュレンク管に2,5−ジブロモ−1,3,4−チアジアゾール(0.49g、2.0mmol)と1,4−ジドデシロキシ−2,5−ジエチニルベンゼン(0.99g、2.0mmol)を入れ、70mLの脱水トルエンと30mLの脱水ジイソプロピルアミンの混合溶媒に溶解させた。これに金属触媒としてPd(PPh34(0.12g、0.1mmol)とCuI(0.02g、0.1mmol)を加え、室温で30分間攪拌し、次いで60℃に加熱して12時間攪拌した。その後室温に冷却し、減圧下で溶媒を留去し濃縮した。粗生成物をクロロホルムに溶解させ、メタノール中に再沈殿を行なった。析出した固体を濾取し、アセトンにより洗浄した後、再度クロロホルムに溶解させ、メタノールにより再沈殿を行ない精製した。これを真空乾燥することにより、橙色の固体状の生成物(1.05g)を得た。
【0120】
得られた生成物について、元素分析、1H−NMR測定及びFT−IR測定を行なった。その結果を以下に示す。
・Anal. Calcd. for Br-(C36H52N2O2S)51-C2N2SBr (Mn = 29665): C, 74.42; H, 9.01; N, 4.91; S, 5.62; Br, 0.54. Found: C, 74.83; H, 8.93; N, 4.68; S, 5.69; Br, 0.41.・1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.11 (s, 2H), 4.04 (br, 4H), 1.86 (br, 4H), 1.52-1.24 (br, 36H), 0.86 (br, 6H).
・FT-IR (KBr, cm-1): 2924, 2852, 2212, 1505, 1469, 1439, 1379, 1278, 1219, 1109, 1022, 858, 718.
【0121】
以上の結果より、得られた生成物が下記式(B)で表わされる繰り返し単位を有する高分子[P(Thdz−Ph)]であることが確認された。その収率は91%であった。
【0122】
【化26】

(上記式(B)中、nは整数を表わす。)
また、GPC法による測定で平均繰り返し数を求めたところ、n=51であった。
【0123】
得られた高分子[P(Thdz−Ph)]について、酸化還元電位測定を行なったところ、第一還元電位としては、−1.83V付近に可逆なピークが観測され、n型導電体となる可能性が示唆された。また、イオン化ポテンシャルを測定した結果、4.8eVとなり、p型導電体となる可能性が示唆された。
【0124】
次に、得られた高分子[P(Thdz−Ph)]の電気伝導度測定を行なった。試料溶液はトリフルオロ酢酸溶液とした。その結果、電気伝導度が10-11S/cm台となり、半導体領域の電気伝導度を示した。
【0125】
また、高分子[P(Thdz−Ph)]の繰返し単位である式(B)の構造の平面性について、実施例1と同様に評価を行なったところ、式(B)の繰り返し単位の基準平面から各原子の中心までの距離は1.7Åとなり、本発明の3Å未満という規定を満たす分子構造であることが確認された。
【0126】
〔実施例3:高分子3[P(Thdz−Pyr)]の製造〕
窒素雰囲気下、100mLのシュレンク管に[合成例1]で得られた2,5−ジブロモ−1,3,4−チアジアゾール(0.49g、2.0mmol)と2,5−ジエチニル−N−ドデシルピロール(0.57g、2.0mmol)を入れ、50mLの脱水トルエンと20mLの脱水ジイソプロピルアミンの混合溶媒に溶解させた。これに金属触媒としてPd(PPh34(0.12g、0.1mmol)とCuI(0.02g、0.1mmol)を加え、室温で30分間攪拌し、次いで60℃に加熱して24時間攪拌した。その後室温に冷却し、減圧下で溶媒を留去し濃縮した。粗生成物をクロロホルムに溶解させ、メタノール中に再沈殿を行なった。析出したポリマーを濾取し、アセトンにより洗浄した後、再度クロロホルムに溶解させ、メタノールに再沈殿を行ない精製した。これを真空乾燥することにより、赤色の固体状の生成物(0.59g)を得た。
【0127】
得られた生成物について、元素分析、1H−NMR測定及びFT−IR測定を行なった。その結果を以下に示す。
・Anal. Calcd. for Br-(C22H27N3S・0.1H2O)52-C2N2SBr (Mn = 19345): C, 71.15; H, 7.37; N, 11.44; S, 8.78; Br, 0.83. Found: C, 71.43; H, 7.46; N, 10.89; S, 8.21; Br, 0.61.
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 6.71 (s, 2H), 4.26 (br, 2H), 1.88 (br, 2H), 1.35-1.22 (m, 18H), 0.86 (br, 3H).
・FT-IR (KBr, cm-1): 2923, 2851, 2197, 1457, 1389, 1321, 1197, 1119, 1027, 767, 733.
【0128】
以上の結果より、この生成物が、下記式(C)で表わされる繰り返し単位を有する高分子[P(Thdz−Pyr)]であることが確認された。その収率は81%であった。
【0129】
【化27】

(上記式(C)中、nは整数を表わす。)
また、GPC法による測定で平均繰り返し数を求めたところ、n=52であった。
【0130】
得られた高分子[P(Thdz−Pyr)]について、酸化還元電位測定を行なったところ、第一還元電位としては、−1.84V付近に可逆なピークが観測され、n型導電体となる可能性が示唆された。また、イオン化ポテンシャルを測定した結果、4.5eVとなり、p型導電体となる可能性が示唆された。
【0131】
次に、得られた高分子[P(Thdz−Pyr)]の電気伝導度測定を行なった。試料溶液はトリフルオロ酢酸溶液とした。その結果、電気伝導度が10-9S/cm台となり、半導体領域の電気伝導度を示した。
【0132】
また、高分子[P(Thdz−Pyr)]の繰返し単位である式(C)の構造の平面性について、実施例1と同様に評価を行なったところ、式(C)の繰り返し単位の基準平面から各原子の中心までの距離は1.9Åとなり、本発明の3Å未満という規定を満たす分子構造であることが確認された。
【0133】
〔実施例4:高分子4[P(Thdz)]の製造〕
窒素雰囲気下、100mLのシュレンク管に[合成例1]で得られた2,5−ジブロモ−1,3,4−チアジアゾール(1.22g、5.0mmol)を入れ、テトラヒドロフランを溶媒として溶解させた。これにJ. Org. Chem.、1991年、p.1445に記載の活性化した亜鉛を加え、グリニヤール試薬を調製した。これに金属触媒としてPd(PPh34(0.12g、0.1mmol)を加え、80℃に加熱して6時間攪拌した。その後室温に冷却し、減圧下で溶媒を留去し濃縮した。粗生成物を1規定の塩酸水溶液に加えて亜鉛を除去し、更にソクスレー洗浄をすることにより精製した。これを真空乾燥することにより、黒赤色の固体状の生成物(0.38g)を得た。
【0134】
得られた生成物について、元素分析及び13C−NMR測定を行なった。その結果を以下に示す。
・Elemental analysis: predicted for C2N2S: C, 27.89; N, 32.53; S, 37.23 %. Found: C, 27.92; N, 32.48; S, 37.29 %.
13C-NMR (400MHz, CDCl3): δ=141.1.
【0135】
以上の結果より、この生成物が、下記式(D)で表わされる繰り返し単位を有する高分子[P(Thdz)]であることが確認された。その収率は88%であった。
【0136】
【化28】

(上記式(D)中、nは整数を表わす。)
また、GPC法による測定で平均繰り返し数を求めたところ、n=5であった。
【0137】
得られた高分子[P(Thdz)]について、酸化還元電位測定を行なったところ、第一還元電位としては、−1.88V付近に可逆なピークが観測され、n型導電体となる可能性が示唆された。また、イオン化ポテンシャルを測定した結果、4.7eVとなり、p型導電体となる可能性が示唆された。
【0138】
次に、得られた高分子[P(Thdz)]の電気伝導度測定を行なった。試料溶液はトリフルオロ酢酸溶液とした。その結果、電気伝導度が10-8S/cm台となり、半導体領域の電気伝導度を示した。
【0139】
また、高分子[P(Thdz)]の繰返し単位である式(D)の構造の平面性について、実施例1と同様に評価を行なったところ、式(D)の繰り返し単位の基準平面から各原子の中心までの距離は1.6Åとなり、本発明の3Å未満という規定を満たす分子構造であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明のチアジアゾール構造含有高分子は、電荷吸引性及び電荷供与性に優れており、バイポーラ型有機半導体として優れた性質を有することから、電荷輸送材料として、有機電子デバイスなどの各種の用途に好適に用いることができ、極めて有用である。
【符号の説明】
【0141】
1 支持基板
2 ゲート電極
3 絶縁体層
4 電荷輸送性層
5 ソース電極
6 ドレイン電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表わされる構造を繰り返し単位として含有するチアジアゾール構造含有高分子を製造する方法において、
少なくとも下記式(2)で表わされる化合物を用いて、金属錯体の存在下で重合させることを特徴とする、チアジアゾール構造含有高分子の製造方法。
【化1】

【化2】

(式(2)中、Xは、ハロゲン原子を表わす。)
【請求項2】
金属錯体として、ニッケル錯体及び/又はパラジウム錯体を用いる
ことを特徴とする、請求項1記載のチアジアゾール構造含有高分子の製造方法。
【請求項3】
下記式(3)で表わされる構造を有する
ことを特徴とする、チアジアゾール構造含有高分子。
【化3】

(式(3)中、nは2以上の整数を表わす。)
【請求項4】
下記式(4)で表わされる構造を繰り返し単位として含有し、且つ、該繰り返し単位の分子平面から該繰り返し単位を構成する各原子の中心までの距離が3Å未満である
ことを特徴とする、チアジアゾール構造含有高分子。
【化4】

(式(4)中、Arは、π共役構造を有する2価の有機基を示す。)
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載のチアジアゾール構造含有高分子を含有する
ことを特徴とする、電荷輸送材料。
【請求項6】
請求項5記載の電荷輸送材料を用いた
ことを特徴とする、有機電子デバイス。
【請求項7】
発光素子である
ことを特徴とする、請求項6記載の有機電子デバイス。
【請求項8】
スイッチング素子である
ことを特徴とする、請求項6記載の有機電子デバイス。
【請求項9】
光電変換素子である
ことを特徴とする、請求項6記載の有機電子デバイス。
【請求項10】
光電導性を利用した光センサーである
ことを特徴とする、請求項6記載の有機電子デバイス。
【請求項11】
太陽電池である
ことを特徴とする、請求項6記載の有機電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−150551(P2010−150551A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6889(P2010−6889)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【分割の表示】特願2004−323723(P2004−323723)の分割
【原出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年5月10日 社団法人高分子学会発行の「高分子学会予稿集 53巻1号」に発表
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】