説明

テープキャリアの保持装置

【課題】 電子部品実装用のテープキャリアに形成された配線パターンの外観検査を確実に行なうためのテープキャリア保持装置を提供する。
【解決手段】 被検査面を上向きにしてテープキャリア7を搬送する搬送手段と、被検査面に光を照射してその反射光を取得する撮像手段15、25と、上面に吸着面を有して昇降自在に設けられた吸着ステージ24とを備え、前記搬送手段がテープキャリア7を搬送するときは吸着ステージ24はこのテープキャリア7と接触しない下方に位置し、前記搬送を停止して撮像手段15、25が撮像を行なうときは、吸着ステージ24が上方に移動してその上面をテープキャリア7の下面に接触させ、このテープキャリアを吸着保持することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばTAB(Tape Automated Bonding)法に用いられるテープキャリアのパターン検査装置において、当該テープキャリアの保持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、TCP(Tape Carrier Package)やCOP(Chip On Film)など、樹脂フィルムを基材とした長尺のテープにICチップを実装して外部端子を設ける集積回路の生産方法が広く利用されている。このテープはテープキャリアと称され、このようなテープキャリアを製造するには、一般に次のような工程を経る。
【0003】
まず、絶縁基材となるポリイミドフィルムを所望の形状となるようにパンチングしたあと、銅箔を接着剤を介して貼着する。次に銅箔上にフォトレジストを塗布し、フォトマスクを使用して露光、現像しエッチングにより配線パターンを形成する。 そして、配線および配線間を保護するために、配線パターンのうち接続端子となる部分を除いてソルダ−レジストが印刷される。次にソルダ−レジストを乾燥、硬化させたあと露出した接続端子部分に錫めっきや金めっき等の所望のめっき処理が行なわれる。
【0004】
このように、テープキャリアにICチップが実装される前の過程にも、いくつかの工程で、処理後の乾燥や加熱凝固のために乾燥装置での温風吹き付け処理が必要となる。そしてこのように加熱処理が行なわれると、前述したように、主に絶縁基材と銅箔で構成されたテープキャリアは、その両者の熱膨張率の差によって反りが生じる。この反りは一般的に図9で示すようなテープキャリア51の幅方向の反りとなり、この反りは従来から光学的に配線パターンの欠陥を検査する装置においての課題であった。
【0005】
また、これとは別の現象として次のようなものがある。一般にテープキャリア51はリールに巻かれて取り扱われるが、テープキャリア51のみをリールに巻きつけた場合、テープキャリア51の表裏面が接触し傷が発生するので、テープキャリア51に加えてテープキャリア51とほぼ同等の外形寸法であるスペーサテープを重ねてリールに巻きつけるようにしている。さらにこのスペーサテープの形状は、単に平面ではなく図10で示すように幅方向の両端が波状に形成されたものが多く使用されており、このようなスペーサテープ53とテープキャリア51とを重ねてリール52に巻きつけることで、図11(a)で示すようにテープキャリア51間に空隙を設けることができる。
【0006】
このような形態にしておくことでテープキャリア51の表面どうしが接触しないことに加えて、テープキャリア51の配線パターンが形成された領域においては、スペーサテープ53との接触も防ぐことができる。またさらに、前記テープキャリア51間の空隙が存在することで、前述したような温風乾燥や温風加熱を行なう場合には、図11(b)で示すように、テープキャリア51全体に均一に温風を吹き付けることが可能となる。
【0007】
しかしながら、図11で示すような状態で加熱されたテープキャリア51には、スペーサテープ53の波状に形成された部分が転写されるような現象が発生し、テープキャリア51自身の幅方向両端にも波型の変形が発生する。しかも、この波型は図11(a)で示されているように、テープキャリア51の表裏を押圧するスペーサテープ53の波型部の位置関係がランダムなので、テープキャリア51の幅方向両端には不規則な波型の変形が発生する。したがって、前述したテープキャリア51の幅方向の反りと合わせてこの不規則な変形も影響することで、テープキャリアを平坦に維持することがさらに困難となり、光学的な配線パターンの検査装置における大きな課題となっている。
【0008】
従来から上記課題を解決するための工夫がなされてきたが、その中の一つの方法は特許文献1が開示しているように、撮像部であるラインセンサ70をテープキャリア51の長手方向に沿って配置し、幅方向に反りのある被検査面の反りに合わせてラインセンサ70をテープキャリア51の幅方向に走査する、つまりラインセンサ70を被検査面の方向に移動させながらテープの幅方向に走査するというものである(図12)。また他の方法として、特許文献2が開示しているように、テープキャリア51の幅方向の両端部を機械的に把持して、キャリアテープ51を幅方向に引っ張ることでキャリアテープ51の反りを無くそうというものである(図13)。
【0009】
図13はテープキャリア51の搬送方向からテープキャリア51の断面を見た図である。ここで、テープ押さえ54が矢印アの方向に移動してテープキャリア51の幅方向両端を把持し、そのあとアクチュエータ55が駆動して支柱56を矢印イの方向へ移動させることでテープキャリア51を平坦にしようというものである。テープキャリア51の幅方向の両端はスプロケットホールが形成され配線パターンが形成されない帯状の領域であるから、この部分を利用した方法である。
【0010】
さらに他の方法として特許文献3が開示しているのは、テープキャリア51の幅方向両端を把持してテープを幅方向に引っ張る把持機構に加えて、この把持機構のあいだに吸着ステージを設けるものである。図14はこの方法を説明するもので、テープキャリア51の幅方向両端を把持する把持機構57およびテープを幅方向に引っ張る駆動機構58の動作は図13に基づいた前記説明と同様であり、一対の把持機構57の間に吸着ステージ59が設けられている。この吸着ステージ59の上面には真空吸着孔又は溝60が形成されており、検査のために搬送が停止した状態のテープキャリア51を吸着する。
【0011】
またこの特許文献3の場合、テープキャリア51の上方に撮像部、そして上方と下方の両側に照明を設け、上方からの照明の反射光に加えて下方からの照明の透過光も撮像できるようにした装置に関する技術なので、前記吸着ステージ59をテープキャリア51の幅方向に細長く形成し、これを図14を見て前後方向に2つ用意して、そのあいだ、つまりテープキャリア51の下面に吸着ステージ59が存在しない領域で検査するものとしている。
【0012】
【特許文献1】特開2002−372503号公報(第2頁、図2、図3)
【特許文献2】特開2004−28597号公報(第5頁、図3、図5)
【特許文献3】特開2006−17642号公報(第6頁、図1、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、図12に基づいて説明した特許文献1に記載された方法は、1度目の走査によってテープキャリア51の反りの深さを検知し、このデータに基づいてラインセンサ70に前記反りに沿った動きをさせて走査するというもので、一つの領域を2度走査することで検査時間が長くなる欠点と、センサに被検査面と垂直方向の移動をさせながらテープの幅方向に移動させる、つまり曲線的な動作で走査するための大掛りな機構を設けねばならず、装置が高価で大規模になってしまう。また、前記ラインセンサ70の近傍に、ラインセンサ70と被検査面との距離を検出する測距センサを設けて1度の走査でテープの反りに沿った動作をさせることも考えられるが、これも同様あるいはさらに大掛りな機構を設けねばならず、装置が高価で大規模になってしまう。
【0014】
また、図13に基づいて説明した特許文献2に記載された方法は、近年多く採用されている多条品、つまり図15に示すようにキャリアテープの幅方向に複数列の被検査ピース列を配置した幅広テープ(図では被検査ピース列が4列配置された4条品)を検査する場合、テープ幅が160mm程度に達するものが多く採用されているため、テープの幅方向の両端を引っ張るだけでは、被検査面全域を撮像部の焦点深度の範囲内にするのが困難になってきた。
【0015】
図15に基づいてこの幅広テープを説明すると、まず大きな四角で示してあるのが被検査ピース61であり、テープの搬送方向に4列つまり4条並べて設けられている。また符号62で示す小さな四角がパーフォレーションホールであり、被検査ピース61の両側に配置されている。テープの幅方向両端に配置されている小さな四角は、この4条品のテープキャリア全体を搬送及び位置決めするためのパーフォレーションホール63である。したがってこのような幅広テープにおいては、4条に並んだ被検査ピースの4つの列それぞれが1条品のような傾向で湾曲するという現象を示すことが多い。
【0016】
また、図10および図11に基づいて説明した、スペーサテープ53の波型形状と加熱工程が影響して引き起こすテープキャリアの幅方向両端の不規則な変形がある場合、図13に基づいて説明した技術ではテープの幅方向両端のみを把持して機械的に平面に矯正するだけなので、テープの幅方向両端の不規則な変形が矯正された場合に、その反発力がテープキャリアの内側方向に表れ、かえって被検査領域を不規則に湾曲させてしまう可能性がある。したがって、テープキャリア51の幅方向両端を機械的に挟んで幅方向に引っ張るだけでは、十分にテープキャリア51を平面にすることはできない。
【0017】
さらに、図14に基づいて説明した特許文献3に記載された方法は、把持機構57の間に吸着ステージ59を配置するものであるが、ある程度の改善はあるものの、撮像部が撮像する被検査ピースが吸着ステージ59上で吸着されているわけではないので、前述した幅広テープの複数の条それぞれの湾曲や、テープの幅方向両端の不規則な変形の影響を防ぐのが困難である。また、検査装置が透過光を用いず反射光の撮像のみで検査を行なうものであった場合は、吸着ステージ59を撮像領域の直下に配置することは可能であるが、近年の傾向である薄型(厚さ約20μm)の絶縁基材で構成されたテープキャリアを機械的に穿設された吸引口や溝で吸引した場合、その吸引力により被検査面に凹凸が発生し、これが高精細配線パターンの検査には大きく悪影響を及ぼす。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は第1の態様として、電子部品実装用のテープキャリアに形成された配線パターンの形状を光学的に取得して検査するパターン検査装置において、被検査面を上向きにしてテープキャリアを搬送する搬送手段と、被検査面に光を照射してその反射光を取得する撮像手段と、上面に吸着面を有して昇降自在に設けられた吸着ステージとを備え、前記搬送手段が前記テープキャリアを搬送するときは前記吸着ステージはこのテープキャリアと接触しない下方に位置し、前記搬送を停止して前記撮像手段が撮像を行なうときは、前記吸着ステージが上方に移動してその上面を前記テープキャリアの下面に接触させ、このテープキャリアを吸着保持することを特徴とするテープキャリアの保持装置を提供する。
【0019】
また本発明は第2の態様として、前記吸着ステージの上面を構成する吸着板は多孔質部材からなり、この上面の吸着領域の寸法において、前記テープキャリアの幅方向に対応する吸着領域の幅寸法が、テープキャリアの全幅よりも大きいことを特徴とする第1の態様として記載のテープキャリアの保持装置を提供する。
【0020】
また本発明は第3の態様として、前記テープキャリアの上方に押さえユニットが固定されて設けられ、前記吸着ステージが上昇して前記テープキャリアを押し上げることにより、この押さえユニットに設けられた押さえ部が、前記吸着ステージ上にある前記テープキャリアの少なくともパーフォレーションホールを含む領域に接触することを特徴とする第2の態様として記載のテープキャリアの保持装置を提供する。
【0021】
さらに本発明は第4の態様として、前記押さえ部は弾性を有し、前記テープキャリアの搬送方向に細長い帯状部品であることを特徴とする第3の態様として記載のテープキャリアの保持装置を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の第1の態様によれば、吸着ステージが上下するように構成してあるので、テープキャリアが搬送されているときは吸着ステージは下方に退避し、カメラによる撮像のためにテープキャリアが停止しているときは吸着ステージが上方に移動してテープキャリアを吸着保持する。したがって、テープキャリアの下面を傷つけることなく、確実にテープ搬送時と撮像時とのテープの保持状態を切り替えることができると同時に、テープキャリアの上方にテープ押さえのための可動部を設けていないので、テープキャリアの上方で被検査面に接近して走査のための移動を行なう撮像装置とテープ押さえ機構とが干渉しないように構成することが容易になる。
【0023】
また、本発明の第2の態様によれば、テープキャリアの幅方向の両端も吸着ステージ上の吸着領域に含まれるので、テープキャリア自身の搬送方向の張力と吸着ステージの吸着力が同時にテープの幅方向両端に作用する。したがって、リールへのスペーサテープとの重ね巻きに起因するテープキャリアの幅方向両端の不規則な変形が発生していても、これを平坦化し、少なくとも被検査領域に影響するのを防ぐことが期待できる。
【0024】
また、本発明の第3の態様によれば、吸着ステージによるテープキャリアの吸着を妨げる一要因であるパーフォレーションホールを塞ぐことができるので、テープの幅方向に複数のピース列が存在してそれらのあいだの部分が浮き上がったり、テープの幅方向両端が不規則に変形していたりしても、吸着ステージの吸引力をこれらの部分に確実に及ぼすことができるので、テープの被検査領域をより確実に平坦化できる。
【0025】
さらに、本発明の第4の態様によれば、テープキャリアの押圧すべき領域に対して、押さえ部自身の弾性による押圧とパーフォレーションホールを塞ぐことによる吸着力の増大が同時に作用し、確実にテープキャリアを平坦化することができる。また、これらの作用はテープキャリアの上方に駆動部を設けることなく実現できる、つまり扁平で平坦な形状に構成できるので、この押さえ部に接近してその上方を水平方向に移動する撮像装置との干渉を容易に避けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に添付図面を参照して本発明に係るテープキャリアの保持装置の実施形態を詳細に説明する。
【0027】
実施の形態としては、配線パターンが形成されたテープキャリアのパターン外観検査装置に備えたテープキャリアの保持装置として説明する。まず図1に基づいて、このパターン外観検査装置の全体構成を説明する。図1において、符号1は巻き出し部、2は検査部、3はテンショナー部、4はパンチ部、5は巻き取り部である。ここで、装置の動作を制御する制御部および検査部で取得した画像を処理して配線パターンに欠陥が存在するか否かを検査するデータ処理部は図示を省略してある。
【0028】
まず図を見て左から、巻き出し部1には巻き出しリール6が装着されており、この巻き出しリール6には未検査のテープキャリア7およびスペーサテープ8が収納されている。テープキャリア7は配線パターン面が図を見て上側になった状態で検査部2へと搬送される。一方スペーサテープ8はスペーサ巻き取りリール9に巻き取られる。そして検査部2に搬送されたテープキャリア7は後で詳細に説明する検査ステージ10に搬送され、外観検査のための撮像が行われる。ここで、撮像中はテープの搬送を停止させ、撮像が終了すると次の被検査領域を撮像するために搬送するという間欠搬送が行なわれる。
【0029】
次に撮像が終了したテープキャリア7はテンショナー部3を経由してパンチ部4に搬送される。パンチ部4にはパンチユニット11が備えられており、検査ステージ10で取得した画像に基づいてデータ処理部が不良と判断した被検査ピースにパンチングで穴を明け、次工程に流出しないようにする。またテンショナー部3は検査ステージ10およびパンチユニット11に在るテープキャリア7に所望の張力を付与すると共に、検査部2とパンチ部4の搬送の非同期性による両者間のテープ長の変化を吸収する。パンチ部4を通過したテープキャリア7は最後に巻き取り部5に搬送され、巻き取りリール12に巻き取られる。このときスペーサ巻き出しリール13から巻き出されたスペーサテープ14と前記テープキャリア7が交互に重なった状態で巻き取られる。
【0030】
図2は図1で示した検査ステージ10内の構成を示す正面図であり本発明の第1の実施形態を示している。本図はテープキャリア7の搬送が停止し、カメラ15による撮像を開始する前の状態である。ここでテープキャリア7は、補助ローラ16、17間に所定の張力が付与された状態で停止しているが、補助ローラ16、17間の空中に在るだけなので、テープキャリア7の被検査面はテープの幅方向に反っており、ミクロン単位の解像度で画像を取得するカメラ15にとって有効な撮像が可能な状態ではない。また図2において、符号18は直径約1μm以下の気孔を多数有する多孔質セラミックスプレートからなる吸着板であり、その上面以外のほとんどが吸着ボックス19で覆われている。またこの吸着ボックス19の底面には排気管20が接続されており、図示しない排気手段により吸着ボックス19内に負圧を与えるようになっている。
【0031】
さらに吸着ボックス19の底面にはエアシリンダ−21が配置されており、その駆動によって吸着ボックス19は上下方向に移動するようになっている。また、この上下動の最上部での位置は、吸着ボックス19から下方にL字形に突出した突起22と、これに隣接して設けられたストッパー23とが当接することで制限される。ストッパー23は上面視長方形の吸着ボックス19の四隅近傍にそれぞれ配置されており、ストッパー23に備わったマイクロメータ23Aをそれぞれ調節することで、吸着ボックス19と共に上昇し最上部に位置したときの吸着板18の上面の傾斜姿勢を調節することができる。本書ではこの吸着板18と吸着ボックス19とを合わせて吸着ステージ24と記載する。
【0032】
図3はカメラ15の撮像のために吸着ステージ24が上方に移動し、最上部に位置した状態を示している。ここで、補助ローラ16、17間で張力が付与されほぼ水平に保持されていたテープキャリア7は、吸着ステージ24の上面によって数mm程度上方に持ち上げられるように設定されている。そして、図示しない排気手段により排気管20を介して吸着ステージ24内を減圧すると、吸着ステージ24上面の多数の微細な気孔に吸引力が発生しテープキャリア7を真空吸着する。これにより、テープの幅方向の反りが強制され、平面に仕上げられた吸着ステージ24の上面に貼り付いた状態となる。
【0033】
次にカメラ15が撮像を開始するのであるが、本実施形態の場合はカメラ15はラインセンサであり、図3の符号25で示したドーム型照明がカメラ15と撮像対象の間隙に配置してある。このドーム型照明25は図示しない光源装置から光ファイバの束であるライトガイド71を経由して半球状のドーム内部で乱反射した光を被検査面に照射するものである。またこのドーム型照明25はカメラ15と一体的に前後左右に移動するようになっており、カメラ15のラインセンサはドーム型照明25に設けられたスリット25Aから被検査面を撮像する。
【0034】
ここで、吸着ステージ24の上面に多数設けられた気孔は1μm程度の直径なのでテープキャリア7に凹凸を生じさせること無く撮像に悪影響を及ぼさない。また、先にスペーサテープ8によってテープキャリア7の幅方向両端に不規則な波型の変形が発生することを技術的課題として取り上げたが、これがさほど大きくない場合は、テープキャリアに付与されている搬送方向の張力と前記真空吸着によって、少なくとも配線パターンの存在する被検査領域は平面を保つことができるので、カメラ15の撮像に悪影響を及ぼさない。
【0035】
しかしながら、スペーサテープ8によってテープキャリア7の幅方向両端に不規則な波型の変形が大きく発生している場合は、これまで説明した図3の構成だけでは良好なテープキャリア7の保持は困難となる。さらに、テープキャリア7が多条品の幅広テープであった場合にも、先に技術的課題として述べたような1条1条それぞれがテープの幅方向に反り、条と条との間(以下条間と記載する)が浮き上がってしまう現象を引き起こす。これら2つの現象は、パーフォレーションホール62、63が存在する部分に発生しており、このパーフォレーションホールによる空気の流通が真空吸着を妨げていることも原因の一つであることが分かる。図4にこれら2つの現象が発生した状態のテープキャリアを示す。
【0036】
次に第2の実施形態として、テープキャリアが吸着ステージ24上で真空吸着されている状態にもかかわらずテープの幅方向両端の波型の変形が被検査領域の平面度に影響したり、条間の浮きが被検査領域の平面度に影響したりする場合のテープキャリアの保持装置について説明する。
【0037】
まず、第2の実施形態は、第1の実施形態で説明した吸着ステージ24及びその周辺の構成はそのままの形態を維持し、図5に斜視図で示す押さえユニット27を追加するものである。図5において、4本の脚26を備えた押さえユニット27は、2本の第1のフレーム28と2本の第2のフレーム29によってほぼ全体の剛性が保たれるような構造となっている。そして2本の第1のフレーム28のあいだには2本のローラ30が回転自在に支持されており、2本の第2のフレームにはベルト31、32が張り渡されている。そして、テープ幅方向外側の2本のベルト31は内側の3本のベルト32よりも幅広のものを使用している。後に詳しく説明するが、このベルト31、32が直接テープキャリアに接触する押さえ部となる。
【0038】
次に図6では、図5で示した押さえユニット27が検査ステージ10内に実装された様子を示す。図6において、押さえユニット27は4本の脚26によって吸着ステージ24にまたがるように固定されている。本図では吸着ステージ24のみ描き、エアシリンダーやカメラ等の周辺の構成部品は図示を省略している。ここで、押さえユニット27は図示しない基台に固定されており、吸着ステージ24のみが上下動するものである。また本図は、吸着ステージ24は下がった位置にあり、その上方に4条の幅広テープであるテープキャリア7Aが停止した状態を示している。
【0039】
そして、押さえユニット27に設けた2本のローラ30の5箇所の大径部30Aはそれぞれテープキャリア7Aの3ヶ所の条間とテープの幅方向両端部に対応するように位置している。また、2本のベルト31はテープの幅方向の両端に対応し、3本のベルト32は前記条間に対応するように位置している。これらベルト31及び32は帯状の弾性体からなり、本実施形態ではシリコンゴムを素材として使用している。またこの素材は通気性のないものあるいは僅かなものが好ましい。
【0040】
次に図7で示す断面図に基づいて吸着ステージ24と押さえユニット27の動作を説明する。図7はテープキャリア7Aおよび押さえユニット27をテープの搬送方向に沿って切断して正面から見た図である。図7(a)はカメラ15による撮像が行なわれていないときの状態、図7(b)は撮像が行なわれているときの状態を示す。図7(a)の状態において、テープキャリア7Aは図を見て左から右へ搬送され停止する。このとき吸着ステージ24は下方に位置しているのでテープ7Aとの接触はない。また図5及び図6に基づいて説明した押さえユニット27はローラ30の大径部30Aがテープキャリア7Aの上面に接触する位置に固定してある。この大径部30Aはテープの幅方向両端および条間に回動自在に接触しており、第2のフレーム29の下端29Aはこの接触点より上方に位置しているため、テープキャリア7Aが搬送されているとき上下に振動しても、前記下端29Aがテープキャリア7Aに接触して被検査面を傷つけることはない。
【0041】
テープキャリア7Aの、次に検査すべき検査領域を吸着ステージ24の上方に搬送し終えたら、この搬送を停止させて吸着ステージ24を図7(b)のように上昇させる。このとき吸着ステージ24の上面を、テープキャリア7Aを所定量(数ミリ)押し上げる位置まで上昇させるので、テープキャリア7Aが上方へ押し上げられることによりその上面がベルト31及び32に接触する。そしてさらに吸着ステージ24が若干上昇することでベルト31及び32も若干上方へ押し上げられる。この動作により、弾性を有するベルト31及び32は、自身の張力および自重によってキャリアテープ7Aの幅方向の両端部と条間を吸着ステージ7Aの上面に向けて押圧するとともに、それぞれが押圧している部分のパーフォレーションホール62及び63を塞ぐ。
【0042】
そして、この図7(b)の状態で吸着ステージ24が吸着を開始すると、ベルト31および32が、テープキャリア7Aの幅方向両端と条間とを吸着ステージ24の上面に向けて押圧するのと同時に、吸着作用の妨げとなっていたパーフォレーションホールを塞ぐのでこれら押圧部に作用する吸着ステージ24の吸着力も増大させることができる。したがって、確実にテープキャリア7Aを平坦にしてカメラ15の焦点深度の範囲に被検査領域全域を位置させることができる。
【0043】
また、ここまで説明してきた実施形態で、検査対象となっていたテープキャリア7Aは検査ピースがテープの幅方向に複数列並んだ多条品であるが、テープキャリアが1条品である場合でも、図5および図6で示したベルト31および32のうち32を設けず31のみを利用することで、テープの幅方向両端を吸着ステージ24の上面に押圧することができるので、被検査領域を平坦にするという効果に差異がないことは言うまでもない。
【0044】
またこの場合は、図8で示すような押さえユニットとしても同様の効果を奏する。図8はテープキャリア7Bの保持部をテープの搬送方向から見た断面図である。ここでは、テープキャリア7Bの幅方向近傍に、帯状の弾性部材33を板ばね部材34で支持させた押さえユニットが固定して設けてある。この状態から吸着ステージ24が上昇することで、弾性部材33はパーフォレーションホールを含むテープの幅方向両端を吸着ステージ24の上面に向けて押圧する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態を示す正面図
【図2】本発明の実施形態を示す正面図
【図3】本発明の実施形態を示す正面図
【図4】テープキャリアの状態を示す斜視図
【図5】本発明の実施形態を示す斜視図
【図6】本発明の実施形態を示す斜視図
【図7】本発明の実施形態を示す断面図
【図8】本発明の実施形態を示す断面図
【図9】従来の技術に関連した斜視図
【図10】従来の技術に関連した斜視図
【図11】従来の技術に関連した側面図
【図12】従来の技術を示す斜視図
【図13】従来の技術を示す側面図
【図14】従来の技術を示す側面図
【図15】従来の技術に関連した斜視図
【符号の説明】
【0046】
1 巻き出し部
2 検査部
3 テンショナー部
4 パンチ部
5 巻き取り部
6 巻き出しリール
7 テープキャリア
8、14 スペーサテープ
9 スペーサ巻き取りリール
10 検査ステージ
11 パンチユニット
12 巻き取りリール
13 スペーサ巻き出しリール
15 カメラ
16、17 補助ローラ
18 吸着板
19 吸着ボックス
20 排気管
21 エアシリンダ
22 突起
23 ストッパー
24 吸着ステージ
25 ドーム型照明

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品実装用のテープキャリアに形成された配線パターンの形状を光学的に取得して検査するパターン検査装置において、被検査面を上向きにしてテープキャリアを搬送する搬送手段と、被検査面に光を照射してその反射光を取得する撮像手段と、上面に吸着面を有して昇降自在に設けられた吸着ステージとを備え、前記搬送手段が前記テープキャリアを搬送するときは前記吸着ステージはこのテープキャリアと接触しない下方に位置し、前記搬送を停止して前記撮像手段が撮像を行なうときは、前記吸着ステージが上方に移動してその上面を前記テープキャリアの下面に接触させ、このテープキャリアを吸着保持することを特徴とするテープキャリアの保持装置。
【請求項2】
前記吸着ステージの上面を構成する吸着板は多孔質部材からなり、この上面の吸着領域の寸法において、前記テープキャリアの幅方向に対応する吸着領域の幅寸法が、テープキャリアの全幅よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のテープキャリアの保持装置。
【請求項3】
前記テープキャリアの上方に押さえユニットが固定されて設けられ、前記吸着ステージが上昇して前記テープキャリアを押し上げることにより、この押さえユニットに設けられた押さえ部が、前記吸着ステージ上にある前記テープキャリアの少なくともパーフォレーションホールを含む領域に接触することを特徴とする請求項2に記載のテープキャリアの保持装置。
【請求項4】
前記押さえ部は弾性を有し、前記テープキャリアの搬送方向に細長い帯状部品であることを特徴とする請求項3に記載のテープキャリアの保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−88375(P2009−88375A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258516(P2007−258516)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000227836)日本アビオニクス株式会社 (197)
【Fターム(参考)】