説明

ディーゼルエンジンの自動停止装置

【課題】自動停止条件が成立したときにエンジンを自動停止させるとともに、再始動条件が成立したときにエンジンを再始動させるエンジン制御装置と、停止時圧縮行程気筒のピストン位置が所定停止範囲外にあるときに筒内を加熱するグロープラグと、該グロープラグ及びその他の車両電気負荷に電力を供給するメインバッテリと、エンジン再始動時にスタータモータに電力を供給するサブバッテリとを備えたディーゼルエンジンの自動停止装置において、エンジン再始動時にヒルホルダ等の車両電気負荷への電力供給量が低下するのを防止しつつ、エンジンの再始動性の向上を図る。
【解決手段】メインバッテリの劣化が大きい場合(ステップS23でYESの場合)には、再始動条件が成立したときに停止時圧縮行程気筒のピストン位置が所定停止範囲外にあったとしても、グロープラグを非作動としてエンジンを再始動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の自動停止条件が成立したときにエンジンを自動停止させるとともに、所定の再始動条件が成立したときに該自動停止後のエンジンを再始動させる自動停止・再始動制御手段を備えたディーゼルエンジンの自動停止装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃費低減およびCO排出量抑制等を目的として、アイドル時にエンジンを自動で停止するようにしたエンジン制御システム(アイドルストップシステム)が知られている。このようなシステムでは、発進操作等のエンジン再始動要求に対して即座にエンジンを始動しなくてはならず、この再始動性を向上させるために様々な技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に示すものでは、ディーゼルエンジンのアイドルシステムにおいて、エンジンを再始動させる際に圧縮行程にある気筒(燃焼を開始する気筒)のピストン位置が所定範囲外にあるときには、圧縮ストロークの不足による筒内温度上昇不足を補うべく、グロープラグにより筒内を加熱するようにしている。
【特許文献1】特開2004−176569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アイドルストップシステムを搭載した車両では、エンジンの始動/停止が頻繁に繰り返されることによりバッテリ電力が不足しがちになり、このため、エンジンの再始動要求があったときでもエンジンスタータによるクランキングを確実に実行することができず、その始動確実性が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、エンジン再始動時にエンジンスタータに電力供給を行うための専用バッテリ(第2バッテリ)を別途設けることが考えられる。
【0006】
こうすることで、車両安全性の観点からエンジン自動停止中においても確実な作動が求められる電気負荷(ヒルホルダ等)に対しては、メインとなるバッテリ(第1バッテリ)から十分に電力供給を行うことができるとともに、エンジン再始動要求があったときに確実な作動が求められるスタータに対しては、上記専用バッテリから十分に電力供給を行うことができて、車両の安全性とエンジン再始動性の向上との両立を図ることができる。
【0007】
そして、このようなアイドルストップシステムをディーゼルエンジンに適用する場合には、エンジン再始動に際して筒内温度が不足することに起因する始動性の悪化を防止するべく、上記特許文献1と同様にグロープラグによる筒内加熱を行うようにすることが好ましい。
【0008】
しかしながら、この場合、エンジンを再始動させる際に消費電力の大きいグロープラグに対してメインバッテリから電力を供給する必要があるので、ヒルホルダ等のグロープラグ以外の電気負荷への供給電力が低下するという問題がある。
【0009】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、所定の自動停止条件が成立したときにエンジンを自動停止させるとともに、所定の再始動条件が成立したときにエンジンを再始動させるディーゼルエンジンの自動停止装置に対して、その構成および制御方法に工夫を凝らすことで、エンジン再始動時にヒルホルダ等の電気負荷への電力供給量が低下するのを防止して車両の安全性を確保しつつ、エンジン再始動時におけるその始動性(始動確実性及び始動迅速性)の向上を図ろうとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、この発明では、第1バッテリの劣化が大きい場合には、再始動条件成立時に停止時圧縮行程気筒のピストン位置が所定範囲外にあったとしても、グロープラグを非作動としてエンジンを再始動させるようにした。
【0011】
具体的には、請求項1の発明では、所定の自動停止条件が成立したときにエンジンを自動停止させるとともに、所定の再始動条件が成立したときに該自動停止後のエンジンを再始動させる自動停止・再始動制御手段を備えたディーゼルエンジンの自動停止装置を対象とする。
【0012】
そして、上記エンジンの各気筒の燃焼室に臨んで配設されるグロープラグと、少なくとも上記エンジンの自動停止中に電力供給が必要な電気負荷と上記グロープラグとに電力を供給するための第1バッテリと、上記エンジンのスタータに電力を供給するための第2バッテリと、上記第1バッテリの劣化度合に関連する値を検出するとともに該検出情報を上記自動停止・再始動制御手段に出力するバッテリ劣化度合検出手段とを備え、上記自動停止・再始動制御手段は、上記エンジンを再始動させるに際して停止時圧縮行程気筒のピストン位置が所定範囲内にあるときには、上記グロープラグを非作動として上記スタータを作動させる一方、上記停止時圧縮行程気筒のピストン位置が所定範囲外にあるときには、該グロープラグ及びスタータを共に作動させて、当該停止時圧縮行程気筒から燃焼を再開させるものであって、上記バッテリ劣化度合検出手段からの検出情報を基に上記第1バッテリの劣化度合が所定度合よりも大きいと判定した場合には、上記エンジンを再始動させる際に上記停止時圧縮行程気筒のピストン位置が上記所定範囲外にあったとしても、上記グロープラグを非作動として上記スタータを作動させるとともに該スタータの作動により圧縮行程に移行した停止時吸気行程気筒から燃焼を再開させるように構成されているものとする。
【0013】
上記の構成によれば、自動停止・再始動制御手段は、第1バッテリの劣化度合が所定度合よりも大きく且つ停止時圧縮行程気筒(自動停止条件の成立によりエンジンの停止が完了したときに圧縮行程にある気筒)のピストン位置が所定範囲外となる場合を除いて、エンジンを再始動させる際に停止時圧縮行程気筒のピストン位置が所定範囲内にあるときには、グロープラグを非作動としてスタータを作動させる一方、停止時圧縮行程気筒のピストンが所定範囲外にあるときには、グロープラグ及びスタータを共に作動させて、停止時圧縮行程気筒から燃焼を再開させる。このことで、エンジンを再始動させる際に停止時圧縮行程気筒が所定範囲外にあるために該ピストンの圧縮による温度上昇だけでは始動が困難な場合でも、グロープラグを通電して該気筒内を加熱することができ、これによって、該停止時圧縮行程気筒から燃焼を確実に開始させることができる。
【0014】
また、自動停止・再始動制御手段は、第1バッテリの劣化度合が所定度合よりも大きいと判定した場合には、上記エンジンを再始動させる際に停止時圧縮行程気筒のピストン位置が所定範囲外にあったとしても、上記グロープラグを非作動として上記スタータを作動させるとともに該スタータの作動により圧縮行程に移行した停止時吸気行程気筒(自動停止条件の成立によりエンジンの停止が完了したときに吸気行程にある気筒)から燃焼を再開させる。このことで、第1バッテリが劣化している場合には、該第1バッテリーからグロープラグに供給していた電力を該グロープラグ以外の電気負荷に供給することができる。従って、安全性の観点から確実な作動が求められるヒルホルダや電動パワーステアリングといった電気負荷に対してエンジン再始動時にも十分な電力を供給することできて、車両の安全性を確保することができる。また、圧縮行程に移行した停止時吸気行程気筒から燃焼が開始されるので、圧縮ストロークが不足する停止時圧縮行程気筒から燃焼を再開する場合に比べて筒内温度を十分に高めることができ、この結果、燃焼を確実に再開させることができる。
【0015】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記エンジンの吸気通路に配設される吸気絞り弁と、上記吸気絞り弁の作動を制御する弁作動制御手段とをさらに備え、上記弁作動制御手段は、上記自動停止条件が成立して上記自動停止・再始動制御手段が上記エンジンを自動停止させる際には、上記停止時圧縮行程気筒のピストン位置が上記所定範囲内になるように上記吸気絞り弁の開度を制御するよう構成されているものとする。
【0016】
このことにより、エンジン自動停止完了時における停止時圧縮行程気筒のピストン位置を極力、所定範囲内に納めることができる。従って、停止時圧縮行程気筒が所定範囲外にあるときに作動するグロープラグの作動頻度を低減することができ、延いては、第1バッテリからグロープラグへの電力供給頻度を低減することができる。これにより、第1バッテリの劣化を抑制することができるので、ヒルホルダー等の電気負荷に確実に電力を供給することができ、この結果、車両の安全性を可及的に向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明のディーゼルエンジンの自動停止装置によると、エンジン再始動時にヒルホルダ等の電気負荷への電力供給量が低下するのを防止して車両の安全性を確保しつつ、エンジン再始動性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係るディーゼルエンジンの自動停止装置を含むアイドルストップシステムEを示し、このシステムEは、シリンダヘッド11及びシリンダブロック12を備えたディーゼルエンジン10と、該エンジン10を制御するためのエンジン制御装置(以下、ECUという)100とを備えている。
【0020】
エンジン10(図1参照)のシリンダヘッド11およびシリンダブロック12には、エンジン前側から順に4つの気筒14A〜14Dが直列に配設されている。また、各気筒14A〜14Dの内部には、図略のコネクティングロッドによつてクランクシャフト15に連結されたピストン16が嵌挿される。ピストン16には、シリンダヘッド11とともに燃焼室17を区画するキャビティ16aが形成されている。各気筒14A〜14Dに設けられたピストン16は、所定の位相差をもってクランクシャフト15の回転に伴い上下運動を行うように構成されている。ここで、4気筒4サイクルエンジンであるエンジン10では、各気筒14A〜14Dが所定の位相差をもって吸気、圧縮、膨張、排気の各行程からなるサイクルを行うようになっており、各サイクルが1番気筒14A、3番気筒14C、4番気筒14D、2番気筒14Bの順にクランク角で180°(180°CA)の位相差をもって行われるように構成されている。
【0021】
シリンダヘッド11には、プラグ先端が燃焼室17内に臨むように配置されたグロープラグ18が気筒14A〜14D毎に設けられている。また、シリンダヘッド11には、燃料噴射弁19が気筒14A〜14D毎に設けられている。この燃料噴射弁19は、燃料を当該燃料噴射弁19の開弁圧(噴射圧)以上の高圧状態で蓄えて分配するコモンレール20に対し、気筒14A〜14D毎に配設された分岐管21を介してそれぞれ接続されている。各燃料噴射弁19は、通電により電磁力で燃料通路を開くことで燃料圧力により噴射ノズルの真弁が開き、コモンレール20から供給される高圧の燃料を、噴射ノズル先端の複数の噴孔から燃焼室17を区画するピストン16のキャビティ16aに向けて気筒14A〜14D内に直接噴射供給するものである。本実施形態においては、燃料圧力を検出するための燃圧センサSW1がコモンレール20に設けられている。燃料噴射弁19の燃料噴射量は、通電時間で制御される。また、燃料噴射弁19に燃料を供給するコモンレール20は、高圧燃料供給管22を介して燃料供給ポンプ23に接続されている。
【0022】
シリンダヘッド11には、燃焼室17に向かって開口する吸気ポート24および排気ポート25が各気筒14A〜14Dの上部に設けられている。そして、これらのポート24、25と燃焼室17との連結部分には、吸気バルブ26および排気バルブ27がそれぞれ装備されている。吸気ポート24および排気ポート25には、吸気通路28および排気通路29が接続されている。吸気通路28の下流側は、気筒14A〜14D毎に分岐した分岐吸気通路28aに分岐しており、この各分岐吸気通路28aの上流端がそれぞれサージタンク28bに連通している。このサージタンク28bよりも上流側には共通吸気通路28cが設けられている。
【0023】
図1では模式化されているが、上記共通吸気通路28cには、各気筒14A〜14Dに流入する吸気流通量を調整可能な吸気シャッタ弁(吸気絞り弁)30と、吸気流通量を検出するエアフローセンサSW2と、吸気圧力Pinaを検出する吸気圧センサSW3と、吸気温度を検出する吸気温度センサSW4とが設けられている。吸気シャッタ弁30は、アクチュエータ30aによって開閉駆動されるように構成されている。図示の例において、吸気シャッタ弁30は、全閉状態でも空気が流通するように設定されている。
【0024】
エンジン10には、タイミングベルト等によりクランクシャフト15に連結されたオルタネータ32が付設されている。このオルタネータ32は、図略のフィールドコイルの電流を制御して出力電圧を調節することにより発電量を調整するレギュレータ回路33を内蔵し、このレギュレータ回路33に入力されるECU100からの制御信号に基づき、車両の電気負荷および車載バッテリ80の電圧等に対応した発電量の制御が実行されるように構成されている。
【0025】
エンジン10には、当該エンジン10を始動するためのスタータモータ34が設けられている。このスタータモータ34は、モータ本体34aとピニオンギヤ34bとを有している。ピニオンギヤ34bは、モータ本体34aの出力軸上にて相対回転不能な状態で往復移動する。また、クランクシャフト15には、図略のフライホイールに固定されたリングギヤ35が、回転中心に対して同心に設けられている。そして、このスタータモータ34を用いてエンジン10を再始動する場合には、このピニオンギヤ34bが所定の噛合位置に移動して、フライホイールに固定されたリングギヤ35に噛合することにより、クランクシャフト15が回転駆動されるようになっている。
【0026】
さらに、エンジン10には、クランクシャフト15の回転角を検出する2つのクランク角度センサSW5、SW6が設けられ、一方のクランク角度センサSW5から出力される検出信号(パルス信号)に基づいてエンジン回転速度Neが検出されるとともに、この両クランク角度センサSW5、SW6から出力される位相のずれた検出信号に基づいてクランクシャフト15の回転角度が検出されるようになっている。さらに、エンジン10には、冷却水温度を検出する水温センサSW7と、車両のアクセルペダル36の操作量に対応したアクセル開度を検出するアクセル開度センサSW8と、車両のブレーキペダル37の操作を検出するブレーキペダルセンサSW9とが設けられている。
【0027】
エンジン10には、排気還流装置40が設けられている。排気還流装置40は、EGRを排気通路29から吸気通路28に環流するEGR通路41と、このEGR通路41の途中に設けられたEGR弁42とを備えている。EGR弁42は、次に説明するECU100によって、開閉制御されるようになっている。
【0028】
図2は、上記アイドルストップシステムEに係る電力供給系の構成を示し、このシステムEは、メインバッテリ80a(第1バッテリ)と、サブバッテリ80b(第2バッテリ)との2つのバッテリを備えた、2バッテリシステムとされている。
【0029】
メインバッテリ80aは、相対的に容量の大きいバッテリである。メインバッテリ80aは、車両電気負荷82に常時接続されていて、主としてこれらに対する電力供給を行う。車両電気負荷82は、自動変速機用の油圧発生用電動オイルポンプ82a(負荷1)、電動パワーステアリングのモータ82b(負荷2)、坂道停車中に車両のずり下がりを防止するヒルホルダ機構82c(負荷3)、及びグロープラグ18(負荷4)を含んでおり、この他にも、例えば、ナビゲーションシステム、オーディオ、各種ライト、各種メータ類等が挙げられる。
【0030】
メインバッテリ80aはまた、パワーリレー85を介してスタータモータ34に接続されている。パワーリレー85はECU100によってそのオン・オフが制御される。パワーリレー85がオフのときには、メインバッテリ80aからスタータモータ34への電力供給がなされず、パワーリレー85がオンのときに、メインバッテリ80aからスタータモータ34への電力供給が可能となる。
【0031】
メインバッテリ80aはさらに、オルタネータ32に常時接続されており、これによって、オルタネータ32によって発電された電力はメインバッテリ80aに蓄電される。
【0032】
サブバッテリ80bは、相対的に容量の小さいバッテリであり、ここではスタータモータ34の駆動専用のバッテリとされている。サブバッテリ80bは、スタータモータ34に対し常時接続されており、スタータモータ34に対し電力供給が可能とされている。サブバッテリ80bはまた、チャージリレー87を介してオルタネータ32(メインバッテリ80a)に接続されている。チャージリレー87はECU100によってそのオン・オフが制御される。チャージリレー87がオンのときには、オルタネータ32で発電された電力はサブバッテリ80bにも蓄電される。
【0033】
また、バッテリ80a,80bには、バッテリ電圧を検出するための電圧センサSW10,11(バッテリ劣化度合検出手段に相当)が設けられている。該電圧センサSW10,11は、ECU100に接続されており、ECU100は、後述するように、該電圧センサSW10,11からの電圧信号を基にバッテリ80a,80bの劣化判定を行うとともに、該判定結果に基づいてエンジン再始動制御を行う。
【0034】
ECU100は、CPU、メモリ、カウンタタイマ群、インターフェース並びにこれらのユニットを接続するパスを有するマイクロプロセッサで構成され、各センサSW1〜SW11を初めとする入力要素からの検出信号に基づき、種々の演算を行うとともに、燃料噴射弁19やスタータモータ34、或いはグロープラグ18等の各アクチュエータの制御信号を出力するものである。例えば、運転条件に応じた燃料の噴射量および噴射時期や点火時期を演算し、燃料噴射弁19等に制御信号を出力している。また、運転条件に応じて吸気シャッタ弁30の目標開度を演算し、吸気シャッタ弁30の開度がこの目標開度となるような制御信号を吸気シャッタ弁30のアクチュエータ30aに出力している。
【0035】
ECU100は、車両の運転状態を判定する運転状態判定部101と、運転状態判定部101の判定に基づいてエンジン10の燃料噴射を制御する燃料噴射制御部102と、運転状態判定部101の判定に基づいて筒内へ流入する吸気流通量を調整する吸気流通量制御部103と、運転状態判定部101の判定に基づいて再始動条件の成立時にエンジン10のスタータモータ34を駆動制御するスタータ制御部104と、グロープラグ18を制御するグロープラグ制御部105と、排気還流装置40を駆動制御するEGR制御部106と、バッテリ80(メインバッテリ80a及びサブバッテリ80b)の劣化度合を検出するバッテリ劣化度合判定部107と、バッテリ制御部108とを有している。
【0036】
運転状態判定部101は、燃圧センサSW1、エアフローセンサSW2、吸気圧センサSW3、吸気温度センサSW4、クランク角度センサSW5、SW6、水温センサSW7、およびアクセル開度センサSW8、ブレーキペダルセンサSW9等からのセンサ信号に基づき、エンジン10の自動停止条件や再始動条件の成立又は解除、並びに、エンジン10の運転状態が低負荷運転状態にあるか否か等を判定するモジュールである。この他にも、運転状態判定部101は、燃料圧力、ピストン16の停止位置、筒内温度、或いはエンジン10が正転しているか否か等、種々の運転状態を判定する。この運転状態判定部101は、エンジン10が自動停止時しているときにおけるピストン16の停止位置の判定や、ピストン16が停止すべき適正停止位置SAの設定をするものでもある。本実施形態において、停止時圧縮行程気筒(エンジン10の停止完了時に圧縮行程となる気筒)の適正停止位置SAは、デフォルトでは、圧縮上死点前120°CAから圧縮上死点前100°CAの範囲に設定される。すなわち、ディーゼルエンジンにおいては、停止時圧縮行程気筒に燃料を噴射し、スタータモータ34でピストン16を駆動して、当該燃料が噴射された気筒内で混合気を自着火させる必要があるため、ピストン16は、下死点側に停止しているのが好ましい。他方、ピストン16が下死点近傍にある場合には、スタータモータ34の駆動時間が長くなるので、確実な自着火とスタータモータの駆動時間短縮とを両立させるために、デフォルトでは、圧縮上死点前120°CAから圧縮上死点前100°CAの範囲に設定される。尚、本実施形態において、運転状態判定部101は、車両のブレーキペダル37のON/OFFや車速等も判定できるように図略のセンサからの検出信号が入力されるようになっている。
【0037】
燃料噴射制御部102は、運転状態判定部101の判定に基づき、エンジン10の適正な空燃比に対応する燃料噴射量と、燃料噴射タイミングとを設定し、その設定に基づいて、燃料噴射弁19を駆動制御するモジュールである。
【0038】
吸気流通量制御部103は、運転状態判定部101の判定に基づき、エンジン10の適正な吸気流通量を設定し、その設定に基づいて、吸気シャッタ弁30を駆動制御するモジュールである。
【0039】
スタータ制御部104は、エンジン10の始動時にスタータモータ34に制御信号を出力し、スタータモータ34を駆動するモジュールである。
【0040】
グロープラグ制御部105は、グロープラグ18の駆動を制御するモジュールである。
【0041】
EGR制御部106は、所定の部分負荷運転領域において、EGR弁42を開くことにより、燃焼安定性を図るものである。
【0042】
バッテリ劣化度合判定部107は、バッテリ電圧センサSW10,11からの電圧信号等を基に各バッテリ80a,80bの劣化判定を行う。
【0043】
具体的には、スタータモータ34の専用バッテリであるサブバッテリ80bの劣化検出は、サブバッテリ80bからスタータモータ34への電力供給時におけるその電圧低下を基に行う。より詳細には、サブバッテリ80bの電圧低下時の最小電圧Vs(図6参照)が、劣化判定電圧Vs1よりも小さいときには、サブバッテリ80bの劣化度合がその劣化限界値を超えたと判定する。尚、図6は、サブバッテリ80bの劣化度合が劣化限界値を超えていない状態を示している。
【0044】
一方、主に車両電気負荷82への電力供給を行うメインバッテリ80aの劣化判定は、エンジン運転中及びエンジン自動停止中に、バッテリ電圧Vm、バッテリ電流Im、及びバッテリ温度Tmを基に行う。具体的には、バッテリ電圧Vmが劣化判定電圧Vm1よりも大きいときには、メインバッテリ80aの劣化度合がその劣化限界値(所定度合)を超えたと判定する。ここで、この劣化判定電圧Vm1は、バッテリ電流Im及びバッテリ温度Imを基に、予め設定されたマップ(図7参照)により決定する。図7に示すように、例えば、バッテリ電流がIm´でバッテリ温度がTm2のときには、劣化判定電圧はVm2´となる。
【0045】
バッテリ制御部108は、バッテリ80a,80bの充放電制御を行う。具体的には、バッテリ制御部108は、キースイッチ83のオン信号を検出したときには、パワーリレー85をオン状態にするとともにメインバッテリ80aを放電させてその放電電力をスタータモータ34に供給する。すなわち、乗員のキー操作によるエンジン始動は、メインバッテリ80aからスタータモータ34への電力供給により行われる。
【0046】
また、該バッテリ制御部108は、再始動条件が成立したときにはパワーリレー85をオフ状態にするとともにサブバッテリ80bを放電させてその放電電力をスタータモータ34に供給する。すなわち、エンジン自動停止後のエンジン再始動は、サブバッテリ80bからスタータモータ34への電力供給により行われる。従って、サブバッテリ80bは、エンジン再始動時におけるスタータモータ34の駆動専用バッテリであると言える。尚、サブバッテリ80bの劣化度合が劣化限界値を超えているときには、この劣化を補うべくパワーリレー85をオン状態にしてメインバッテリ80aからスタータモータ34への電力供給も行う。これにより、スタータモータ34の再始動を確実に行うことができる。
【0047】
また、バッテリ制御部108は、エンジン自動停止中(アイドルストップ中)及びエンジン運転中には、メインバッテリ80aを放電させてその放電電力を車両電気負荷82に供給する。
【0048】
次に、エンジン10の自動停止制御、再始動制御について、その制御例を説明する。
【0049】
図3は、本実施形態に係る自動停止制御を中心とするフローチャートであり、図4は、図3の制御例に基づくエンジン回転速度Neの推移を示すタイミングチャートである。
【0050】
図3を参照して、ECU100は、予め設定されたエンジンの自動停止条件が成立するのを待機する(ステップS10)。具体的には、ブレーキペダル37の作動状態が所定時間継続し、車速が所定値以下であるといった場合(つまりエンジン10のアイドル運転状態が所定時間継続していると想定される場合)には、エンジン10の自動停止条件が成立したと判定される。
【0051】
ステップS10において、自動停止条件が成立したと判定した場合には、オルタネータ制御を含むエンジン回転速度調整制御を開始する(ステップSll)。具体的には、エンジン回転速度Neが所定の第1の回転速度Nl(例えば850rpm)に調節されるのを待機する(ステップS12)。そして、エンジン回転速度Neがこの第1の回転速度Nlになったタイミング(ステップS12でYESのタイミング)tlで、燃料噴射弁19からの燃料供給を停止する(ステップS13)。このタイミングtlにおいて、ECU100は、吸気シャッタ弁30を全閉にする(ステップS14)。この制御により、ピストン16が適正停止位置SAに停止する確率を高めることが可能になる。
【0052】
すなわち、ピストン16の停止位置は、エンジン10が完全に停止する直前の停止時膨張行程気筒内の空気量と停止時圧縮行程気筒内の空気量とのバランスにより決定される。従って、ディーゼルエンジンにおいてピストン16を適正停止位置SA内に停止させるためには、まず停止時膨張行程気筒および停止時圧縮行程気筒の吸気流通量を一旦低減し、その後、停止時圧縮行程気筒に十分な空気を供給して、停止時膨張行程気筒の空気量よりも多くなるように、両気筒に対する空気量を調節する必要がある。そこで本実施形態では、タイミングtlで吸気シャッタ弁30を全閉にすることにより吸気圧を低減し、停止時膨張行程気筒および停止時圧縮行程気筒の空気量を低減しているのである。
【0053】
タイミングtlで燃料噴射が停止されると、各気筒14A〜14Dでは、極めて少ない吸気流通量で吸気、圧縮、膨張、排気のサイクルが繰り返され、クランクシャフト15等が有する運動エネルギーが摩擦抵抗による機械的な損失や、各気筒14A〜14Dのポンプ仕事によって消費されることにより、エンジン10は、小刻みに波打ちながら降下し、4気筒4サイクルのエンジンでは、10回前後の圧縮上死点を迎えた後に停止する。この過程で、気筒14A〜14Dのうちの何れかの気筒が圧縮上死点を超えるタイミングは、エンジン回転速度Neが波打つ谷のタイミングと一致している。
【0054】
そこで、本実施形態では、タイミングtlで吸気シャッタ弁30を全開にした後、ECU100は、エンジン回転速度Neが所定の第2の回転速度N2(例えば約400rpm)よりも低くなるのを待機する(ステップS15)。この第2の回転速度N2は、停止時圧縮行程気筒のピストン16が膨張行程から吸気行程の上死点に達するタイミングと一致している。
【0055】
ステップS15においてYESの場合、ECU100は、吸気シャッタ弁30を開弁する(ステップS16)。この開弁動作により、停止時膨張行程気筒では、少ない空気量で吸気バルブ26および排気バルブ27が閉じて圧縮行程に移行しているのに対し、停止時圧縮行程気筒では、吸気バルブ26が開くことにより、相対的に多量の新気が筒内に吸入されることになる。この結果、停止時圧縮行程気筒では、停止時膨張行程気筒よりも空気量が多くなる。
【0056】
その後もECU100はオルタネータ制御を継続してピストン16の停止位置調整を実行し続け、クランク角度センサSW5、SW6の検出値に基づいてエンジン10が完全に停止するのを待機する(ステップS17)。エンジン10が完全に停止した場合には、エンジン回転速度調整制御を終了する(ステップS18)。
【0057】
エンジン10が完全に停止したタイミングでは、停止時圧縮行程気筒のピストン16が吸気行程の下死点を通過し、圧縮行程に移行する。このタイミングでは、吸気バルブ26および排気バルブ27は、概ね閉じているので、大量に筒内に吸入された空気が下死点を通過したピストン16によつて圧縮されることになる。他方、停止時膨張行程気筒においては、相対的に少ない空気量にある筒内を圧縮したピストン16が圧縮上死点を通過して、膨張行程に移行している。このため、停止時圧縮行程気筒では、筒内の圧縮反力によって比較的下死点側で停止することになる。従って、予め実験等によって、第2の回転速度N2や、この第2の回転速度N2を検出したタイミングt2での吸気流通量等を適切に設定しておくことにより、停止時圧縮行程気筒のピストン16を所定停止範囲内(本実施形態では圧縮上死点前100°CAから下死点までの間)で、特に圧縮上死点前100°CAから120°までの適正停止位置SAに停止させることができる。
【0058】
エンジン10が完全に停止すると、ECU100は、クランク角度センサSW5,SW6の検出によって運転状態判定部101が判定したピストン16の停止位置を記憶する(ステップS19)。
【0059】
次に図5を参照して、ECU100におけるエンジンの再始動制御について説明する。
【0060】
ステップS20では、エンジン10が自動停止中(アイドルストップ中)か否かを判定し、この判定がNOであるときにはリターンする一方、YESであるときにはステップS21に進む。
【0061】
ステップS21では、再始動条件が成立したか否かを判定する。再始動条件としては、アクセルペダル36が踏込まれたこと、上記自動停止条件がエンジン10の停止後に解除されたこと等が含まれる。そして、このステップS21の判定がNOであるときには、該判定を再度行う一方、YESであるときには、ステップS22に進む。
【0062】
ステップS22では、スタータモータ34を駆動させる。具体的には、バッテリ制御部108によりサブバッテリ80bを放電させてその放電電力をスタータモータ34に供給する。
【0063】
ステップS23では、バッテリ劣化度合判定部107にて上述の劣化判定を行うことで、メインバッテリ80aの劣化度合が劣化限界値を超えているか否かを判定し、この判定がNOであるときにはステップS28に進み、YESであるときにはステップS24に進む。
【0064】
ステップS24では、ステップS19にて記憶したピストン位置が上記所定停止範囲内(圧縮上死点前100°CAから下死点までの間)にあるか否かを判定し、この判定がNOであるときにはステップS26に進む一方、YESであるときにはステップS25に進む。尚、ピストン位置は、運転状態判定部101においてクランク角度センサSW5,SW6からの検出信号を基に算出される。
【0065】
ステップS25では、上記停止時圧縮行程気筒から燃焼を再開させるべく、燃料噴射制御部102から燃料噴射弁19に対して駆動信号を出力する。
【0066】
ステップS26では、停止時吸気行程気筒から燃焼を再開させるべく、該停止時吸気行程気筒(エンジン停止完了時に吸気行程にある気筒)が圧縮行程に移行するのを待って、燃料噴射制御部102から燃料噴射弁19に対して駆動信号を出力する。
【0067】
ステップS27では、エンジン再始動制御を終了して通常のエンジン運転制御に移行してリターンする。
【0068】
ステップS23の判定がNOであるときに進むステップS28では、ステップS19にて記憶したピストン位置が上記所定停止範囲内(圧縮上死点前100°CAから下死点までの間)にあるか否かを判定し、この判定がYESであるときにはステップS30に進む一方、NOであるときにはステップS29に進む。
【0069】
ステップS29では、グロープラグ制御部105からグロープラグ18に駆動信号を出力するとともに、バッテリ制御部108によりメインバッテリ88を放電させてその電力をグロープラグ18に供給し、しかる後にステップ30に進む。
【0070】
ステップS30では、上記停止時圧縮行程気筒から燃焼を再開させるべく、燃料噴射制御部102から燃料噴射弁19に対して駆動信号を出力する。
【0071】
以上の如く上記実施形態では、ECU100は、メインバッテリ80aの劣化度合が劣化限界値以下の場合(ステップS23の判定がNOの場合)において、上記再始動条件が成立した際に停止時圧縮行程気筒が上記所定停止範囲外にあるとき(ステップS28の判定がNOのとき)には、グロープラグ18を作動さつつ(ステップS29の処理を実行しつつ)スタータモータ34を駆動する一方、停止時圧縮行程気筒のピストン位置が上記所定停止範囲内にあるとき(ステップS28の判定がYESのとき)には、グロープラグ18を非作動としてスタータモータ34を駆動する。そして、該制御ユニット100は、該停止時圧縮行程気筒から燃焼を再開させることでエンジンを再始動させるようになっている。
【0072】
従って、上記再始動条件が成立した際(エンジン10を再始動させる際)に停止時圧縮行程気筒が上記所定停止範囲外にあっても(つまり筒内の燃焼温度を高めるための圧縮ストロークを十分に確保できない状態にあっても)、グロープラグ18を作動させることで筒内温度を十分に高めることができ、これによって、該停止時圧縮行程気筒から燃焼を確実に再開させることができる。よって、エンジン再始動の確実性及び迅速性を共に向上させることが可能となる。
【0073】
また、ECU100は、メインバッテリ80aの劣化度合が劣化限界値よりも大きい場合(ステップS23の判定がYESの場合)においては、再始動条件が成立したときに停止時圧縮行程気筒が停止範囲外にあったとしても(ステップS24の判定がNOであったとしても)、グロープラグ18を非作動としてスタータモータ34を駆動する。そして、該制御ユニット100は、スタータモータ34の駆動により停止時吸気行程気筒が圧縮行程に移行するのを待って該圧縮行程中の気筒から燃焼を再開させる(ステップS26の処理を実行する)ことでエンジン10を再始動させるようになっている。
【0074】
このことで、メインバッテリ80aが劣化している場合には、エンジン再始動時にメインバッテリ80aからグロープラグ18への電力供給は行われず、その分の電力を他の車両電気負荷82に供給することができる。従って、ヒルホルダ機構82c等の電気負荷に対して十分に電力を供給して車両の安全性を確保することができる。また、圧縮ストロークが不足する停止時圧縮行程気筒からではなく、圧縮行程気筒に移行した停止時吸気行程気筒から燃焼が開始されるので、筒内温度不足に起因する失火等を防止することができる。よって、エンジン再始動の確実性が損なわれることもない。
【0075】
また、ECU100は、メインバッテリ80aの劣化度合が劣化限界値よりも大きい場合において(ステップS23の判定がYESの場合において)、再始動条件が成立した際に停止時圧縮行程気筒のピストン位置が所定停止範囲内にあるとき(ステップS24の判定がYESのとき)には、メインバッテリ80aの劣化度合が劣化限界値以下の場合と同様に、グロープラグ18を作動させつつスタータモータ34を駆動して該停止時圧縮行程から燃焼を再開させる(ステップS25の処理を実行する)。
【0076】
こうすることで、メインバッテリ80aが劣化している場合であっても、停止時圧縮行程気筒の圧縮ストロークを十分に確保することができるときには、停止時吸気行程気筒が圧縮行程気筒に移行するのを待つまでもなく、停止時圧縮行程気筒から燃焼を再開させることで、エンジン再始動の迅速性を向上させることができる。
【0077】
また、上記実施形態では、自動停止条件が成立した際、エンジン10を再始動するために好適な位置(適正停止位置SA)にピストン16を停止し、その後の始動性を高めることができる。具体的には、上記実施形態では、燃料噴射の停止後に吸気流通量を制限し(ステップS14の処理が実行され)、停止時圧縮行程気筒が最後の吸気行程に移行することが予測される第2の回転速度N2を検出したタイミングt2に吸気流通量を増加する(ステップS16の処理が実行される)ようになっているので、停止時膨張行程気筒に比べて停止時圧縮行程気筒に吸入される空気量が多くなる。その結果、停止時圧縮行程気筒では、筒内に充填された比較的多量の空気の圧縮反力によって、上記所定停止範囲内における適正停止位置SA(上死点前100°CAから上死点前120°CA)に停止することになる。
【0078】
これにより、メインバッテリ80aが劣化していない場合(ステップS23の判定がNOの場合)に、停止時圧縮行程気筒のピストン位置が所定停止範囲外になることによりグロープラグ18が駆動されるのを極力回避しつつ(ステップS29の処理を極力実行せずに)エンジン10を再始動させることができる。従って、メインバッテリ80aからグロープラグ18への電力供給の頻度を低減して該バッテリ80aの劣化を抑制することができる。よって、メインバッテリ80aから上記車両電気負荷82への電力供給を確実に行うことができ、延いては、車両の安全性を向上させることが可能となる。また、メインバッテリ80aが劣化している場合(ステップS23の判定がYESの場合)においては、停止時圧縮行程気筒のピストン位置を所定停止範囲内に極力納めることによって、停止時吸気行程気筒から燃焼が再開されるのを出来る限り回避して(ステップS26の処理が実行されるのを回避して)、停止時圧縮行程気筒から燃焼を再開させることができる(ステップS25の処理を実行させることができる)。よって、エンジン再始動時における始動迅速性を向上させることが可能となる。
【0079】
(他の実施形態)
本発明の構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、それ以外の種々の構成を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、エンジンを自動停止させる際に停止時圧縮行程気筒のピストン位置を上記所定停止範囲内の適正停止位置SAにて停止させるべく吸気シャッタ弁30の開閉制御を行うようにしているが、必ずしもこの制御を行う必要はない。
【0080】
また、上記実施形態では、再始動条件が成立してエンジン10を再始動させる際に、スタータモータ34の駆動用バッテリとしてサブバッテリ80bのみを使用するようにしているが、これに限ったものではなく、メインバッテリ80a及びサブバッテリ80bの両方を使用するようにしてもよい。この場合には、メインバッテリ80aの劣化判定を、再始動条件成立後のメインバッテリ80aの電圧低下に基づいて判定することもできる。
【0081】
また、上記実施形態では、メインバッテリ80aの劣化判定を、そのバッテリ電圧Vm、バッテリ電流Im、及びバッテリ温度Tmに基づいて行うようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、キースイッチ83のオン操作によるスタータモータ34の始動直後のメインバッテリ80aの電圧低下に基づいて劣化判定を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、エンジンスタータ用の第1バッテリと車両の電気負荷用の第2バッテリとの2つのバッテリを備えたディーゼルエンジンの自動停止装置に有用であり、特に該エンジンの各気筒に臨んで配設されるグロープラグを備えた自動停止装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジンの自動停止装置を含むアイドルストップシステムの概略図である。
【図2】アイドルストップシステムの電気系統図である。
【図3】エンジン制御装置における自動停止制御を示すフローチャートである。
【図4】エンジン回転速度の推移を示すタイミングチャートである。
【図5】エンジン制御装置における再始動制御を示すフローチャートである。
【図6】サブバッテリの劣化判定方法を説明するための図である。
【図7】メインバッテリの劣化判定方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0084】
SW10 バッテリ電圧センサ(バッテリ劣化度合検出手段)
10 エンジン
30 吸気シャッタ弁(吸気絞り弁)
34 スタータモータ(エンジンのスタータ)
18 グロープラグ
80a メインバッテリ(第1バッテリ)
80b サブバッテリ(第2バッテリ)
82 車両電気負荷(電気負荷)
100 エンジン制御装置(自動停止・再始動制御手段,弁作動制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の自動停止条件が成立したときにエンジンを自動停止させるとともに、所定の再始動条件が成立したときに該自動停止後のエンジンを再始動させる自動停止・再始動制御手段を備えたディーゼルエンジンの自動停止装置であって、
上記エンジンの各気筒の燃焼室に臨んで配設されるグロープラグと、
少なくとも上記エンジンの自動停止中に電力供給が必要な電気負荷と上記グロープラグとに電力を供給するための第1バッテリと、
上記エンジンのスタータに電力を供給するための第2バッテリと、
上記第1バッテリの劣化度合に関連する値を検出するとともに該検出情報を上記自動停止・再始動制御手段に出力するバッテリ劣化度合検出手段とを備え、
上記自動停止・再始動制御手段は、上記エンジンを再始動させるに際して停止時圧縮行程気筒のピストン位置が所定範囲内にあるときには、上記グロープラグを非作動として上記スタータを作動させる一方、上記停止時圧縮行程気筒のピストン位置が所定範囲外にあるときには、該グロープラグ及びスタータを共に作動させて、当該停止時圧縮行程気筒から燃焼を再開させるものであって、上記バッテリ劣化度合検出手段からの検出情報を基に上記第1バッテリの劣化度合が所定度合よりも大きいと判定した場合には、上記エンジンを再始動させる際に上記停止時圧縮行程気筒のピストン位置が上記所定範囲外にあったとしても、上記グロープラグを非作動として上記スタータを作動させるとともに該スタータの作動により圧縮行程に移行した停止時吸気行程気筒から燃焼を再開させるように構成されていることを特徴とするディーゼルエンジンの自動停止装置。
【請求項2】
請求項1記載のディーゼルエンジンの自動停止装置において、
上記エンジンの吸気通路に配設される吸気絞り弁と、
上記吸気絞り弁の作動を制御する弁作動制御手段とをさらに備え、
上記弁作動制御手段は、上記自動停止条件が成立して上記自動停止・再始動制御手段が上記エンジンを自動停止させる際には、上記停止時圧縮行程気筒のピストン位置が上記所定範囲内になるように上記吸気絞り弁の開度を制御するよう構成されていることを特徴とするディーゼルエンジンの自動停止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−209775(P2009−209775A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53503(P2008−53503)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】