説明

トップコート組成物

【課題】
レジスト膜上に設けられて、前記レジスト膜を保護するトップコート組成物において、適度な現像液溶解性を有するトップコート組成物を提供する。
【解決手段】
下記一般式(5)で表される繰返し単位を有する含フッ素重合体を含むことを特徴とするフォトレジスト用トップコート組成物。
【化1】


[式中、R1は水素原子、メチル基、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を表す。nは0または1であり、mは1〜(3+n)の整数である。R2またはR3は、水素原子もしくは保護基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の繰り返し単位を有する含フッ素重合体を含むフォトレジスト用トップコート組成物に関する。当該トップコート組成物は、特に液浸露光プロセスにおける保護膜として有用である。
【背景技術】
【0002】
フッ素系化合物は、フッ素の持つ撥水性、撥油性、低吸水性、耐熱性、耐候性、耐腐食性、透明性、感光性、低屈折率性、低誘電性などの特徴から先端材料の幅広い応用分野において開発又は使用されている。特に最近、F2レーザやArFエキシマレーザなどの短波長紫外線に対して透明性の高い新規な材料としてフッ素系化合物を採用したレジスト材料が活発に研究されている。これらの応用分野における共通の分子設計は、フッ素を導入することによる各使用波長での透明性に加え、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル−2−ヒドロキシ基(ヘキサフルオロイソプロピル水酸基ともいう)などを有するフルオロアルコールの酸性特性を利用した感光性、基板への密着性および高い硬度、すなわち、高いガラス転移点(Tg)などの諸性能に基づいている。
【0003】
一方、デバイス構造の微細化に伴って、リソグラフィー工程におけるレジストパターンの微細化が要求されており、露光装置の改良が検討されてきた。
【0004】
例えば、ステッパー(縮小投影型露光装置)は縮小投影レンズの性能向上、光学系設計の改良によって解像度も大きく向上してきている。ステッパーに使用されるレンズの性能は、NA(開口数)で表されるが、空気中では0.9程度の値が物理的な限界とされており、現在すでに達成されている。そこで、レンズとウェハーの間の空間を空気よりも屈折率の高い媒体で満たすことによってNAを1.0以上に引き上げる試みがなされており、特に媒体として純水(以後、単に水という場合もある)を使った液浸方式による露光技術が注目されてきている(非特許文献1)。
【0005】
液浸リソグラフィーにおいては、レジスト膜が媒体(例えば水)と接触することから様々な問題点が指摘されてきた。特に、露光によって膜中に発生した酸や、クエンチャーとして加えたアミン化合物が水に溶解することに起因するパターン形状の変化、膨潤によるパターン倒れなどが問題となる。そこで、レジスト膜と水とを分離すべく、レジスト上にトップコート層を設けることが有効であるとの報告がなされている(非特許文献2)。
【0006】
したがって、トップコート組成物には、良好な現像液溶解性、純水に対する耐性、レジスト膜と水との分離性、下層のレジスト膜を侵さない等の性能が要求される。かかる要求を満たすトップコート組成物として、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基を2個以上含むユニットを含有した繰返し単位を有する含フッ素重合体を含む組成物が開発され、現像液溶解性に特に優れている旨報告されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−316352号公報
【非特許文献1】Proceedings of SPIE Vol.4691(プロシーディングスオブエスピーアイイ((発行国)アメリカ)2002年、第4691巻、459−465頁)。
【非特許文献2】2nd Immersion Work Shop, July 11,2003,Resist and Cover MaterialInvestigation for Immersion Lithography)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
レジスト膜上に設けられて、前記レジスト膜を保護するトップコートは、良好な現像液溶解性、純水に対する耐性、レジスト膜と水との分離性等の性能が要求される。また、トップコートを形成するために用いられるトップコート組成物には、下層のレジスト膜を侵さない特性が求められる。
【0008】
現像液溶解性が悪い場合は、トップコート膜の除去が不充分となりフォトレジスト性能が劣化してしまい好ましくない。逆に現像液溶解性が良すぎる場合は、下層のレジスト層の膜べりを誘発する可能性もあり、適度な現像液溶解性を示すものが好ましい。
【0009】
特許文献1に記載のトップコート組成物は、現像液溶解性に優れた有用なトップコートを与えるが、トップコートの溶解性が高すぎることにより微妙な溶解性の制御が必要な場合には必ずしも適しておらず、適度な溶解性を有するトップコートが求められていた。さらに重合体の製造においても、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基を2個導入することはコスト的にも負担がかかり、より安価な組成物で前記性能を満たすトップコート組成物が求められていた。
【0010】
なお、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基は、下記の構造で表され、高いフッ素含有量を有し、且つ極性基であるヒドロキシル基を含む。
【0011】
【化3】

【課題を解決するための手段】
【0012】
前記のように、特許文献1に記載のトップコート組成物が、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基を2個有することで問題が生じていることを鑑み、本発明者らは、かかる課題を解決するため鋭意検討を行った。当初は、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基の数を減らすことによりかかる課題が解決できるものと考え、脂環式構造に、置換基として1個のヘキサフルオロイソプロピル水酸基が結合した繰り返し単位を含む重合体を成分とするトップコート組成物を検討したところ、予想に反して現像液には殆ど溶解しなかった(比較例4参照)。
【0013】
本発明者らは、さらに他の置換基との組合せにおいて現像液溶解性の改善を鋭意検討したところ、驚くべきことに他の置換基として水酸基を特定の個数導入した重合体をトップコート組成物に用いることにより、重合体の有機溶剤への溶解性が改善されるばかりでなく、形成されたトップコートは適度な現像液溶解性を有し、かつ、水に対する耐性があり、水とレジスト膜の分離が良好で、トップコート組成物はレジスト層を侵さないトップコート組成物が得られることを見出し、本発明に到達した。脂環式構造にヘキサフルオロイソプロピル水酸基と水酸基が同時に結合している重合性化合物はこれまで知られておらず、ましてそれから得られた重合体がトップコートとして使用できることも知られていない。
【0014】
本発明は、重合性基、六員環もしくは五員環の脂環式構造、六員環の場合は環に結合したヘキサフルオロイソプロピル水酸基1個および水酸基1個〜4個を有する繰返し構造を、五員環の場合は環に結合したヘキサフルオロイソプロピル水酸基1個および水酸基1個〜3個を有する繰返し単位を含む含フッ素重合体を成分とするトップコート組成物である。なお、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基もしくは環に結合した水酸基の一部又は全部が保護基で保護されてもよい。
【0015】
また、本発明のトップコート組成物を構成する含フッ素重合体を合成する原料の含フッ素単量体は重合反応性が良好であり、トップコート組成物に有用な含フッ素重合体を比較的安価に製造できるといった特徴を有している。
【0016】
すなわち本発明は、次のとおりである。
[発明1]
レジスト膜上に設けられて、前記レジスト膜を保護するトップコート組成物であって、下記一般式(5)で表される繰返し単位を有する含フッ素重合体を含むことを特徴とするフォトレジスト用トップコート組成物。
【0017】
【化4】

【0018】
[式中、R1は水素原子、メチル基、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を表す。nは0または1であり、mは1〜(3+n)の整数である。R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または保護基を表す。]
[発明2]
一般式(5)で表される繰り返し単位において、R2およびR3がともに水素原子である発明1のトップコート組成物。
[発明3]
下記一般式(6)〜一般式(8)で表される繰返し単位の少なくとも一つを有する含フッ素重合体を含むことを特徴とする発明2のトップコート組成物。
【0019】
【化5】

【0020】
[式中、R1は水素原子、メチル基、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を表す。]
[発明4]
含フッ素重合体が、酸不安定基を有する繰返し単位を含むことを特徴とする発明1〜3のトップコート組成物。
[発明5]
有機溶剤を含むことを特徴とする発明1〜4のトップコート組成物。
[発明6]
有機溶剤が炭素数5〜20の環状または鎖状の炭化水素、炭素数1〜20のアルコール、部分的にフッ素で置換された環状または鎖状炭化水素よりなる群より選ばれる1種または2種以上からなる有機溶剤である発明5のトップコート組成物。
[発明7]
有機溶剤が炭素数5〜20の炭化水素を50%以上99.9%未満、炭素数1〜20のアルコールを0.1%以上50%未満で混合した溶剤である発明5または発明6のトップコート組成物。
[発明8]
液浸リソグラフィーに用いることを特徴とする発明1〜7のトップコート組成物。
[発明9]
発明1〜8のいずれかのトップコート組成物から形成された半導体装置製造用のトップコート。
[発明10]
発明9のトップコート組成物を使用して製造した半導体装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明のトップコート組成物は、適度な現像液溶解性を有し、かつ、水に対する耐性があり、水とレジスト膜の分離が良好なトップコート膜を形成でき、レジスト層を侵さないという効果が得られる。
【0022】
また、本発明のトップコート組成物を構成する含フッ素重合性単量体は重合反応性が良好であり、トップコート組成物に有用な含フッ素重合体を比較的安価に製造できるといった特徴を有している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のトップコート組成物は、レジスト膜上に設けられて、前記レジスト膜を保護するトップコート(明細書において、「トップコート膜」ということがある。)を形成するために使用するトップコート組成物(明細書において、「トップコート溶液」ということがある。)であって、下記一般式(5)で表される繰返し単位を有する含フッ素重合体を含むことを特徴とするフォトレジスト用トップコート組成物である。
【0024】
【化6】

【0025】
[式中、R1は水素原子、メチル基、フッ素原子、または、トリフルオロメチル基を表す。nは0または1であり、mは1〜(3+n)の整数である。R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または保護基を表す。]
上記一般式(5)の繰返し単位を有する含フッ素重合体を与える含フッ素重合性単量体は、下記一般式(1)で表すことができる。
【0026】
【化7】

【0027】
[式中、R1は水素原子、メチル基、フッ素原子、または、トリフルオロメチル基を表す。nは0または1であり、mは1〜(3+n)の整数である。R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または保護基を表す。] 一般式(1)において、n=0のときは5員環を、n=1のときは、6員環を表す。5員環でも6員環でもとりうるが、入手、コストおよび合成が容易であるので6員環の方が好ましい。
【0028】
また、(R2O)−の置換基の数mは、1〜(3+n)であり、5員環の場合は、1〜3、6員環の場合は、1〜4をとりうる。
【0029】
一般式(1)で表される化合物においては、脂環構造を構成する個々の炭素原子に水素原子以外の置換基が同時に2個結合する構造も含みうるが、当該炭素原子に置換基が結合する場合は、当該置換基1個と水素原子が1個ずつ結合した構造が入手容易であるので好ましい。したがって、一般式(1)で表される化合物には、脂環構造を構成するすべての炭素原子に、少なくとも1個の水素原子が結合している構造である含フッ素単量体が好適に用いられる。
【0030】
2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または保護基を表す。後述のように、保護基は、含フッ素重合性単量体から得られた重合体を用いたトップコートの水や現像液に対する親和性または撥水性、もしくは重合体の溶剤への溶解性を調整するなどの必要性がある場合に有用であるが、通常はR2およびR3はともに水素原子であるものが好適に用いられる。
【0031】
一般式(1)で表される含フッ素重合性単量体であって、R2およびR3が水素原子であるものを次に具体的に例示する。
【0032】
【化8】

【0033】
【化9】

【0034】
【化10】

【0035】
[式中、R1は水素原子、メチル基、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を表す。]
上記のように、環に直接結合する水酸基の数は5員環で1〜3、6員環で1〜4の範囲をとりうる。この水酸基は、現像液への溶解性を促進するのに効果的であるが、数が増えるにしたがって現像時に膨潤を引き起こす可能性が大きくなる。溶解性と膨潤の性能のバランスに依存するところもあるが、この水酸基の数は1〜2である方が、3以上の場合よりも好ましい。
【0036】
また、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基がエステル基の結合している炭素に隣接する環炭素に結合した場合は重合性が低下するため、それ以外の環炭素に結合した構造が好ましい。
【0037】
また、原料の入手、コストおよび合成の容易さの関係で、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基と水酸基は隣接するのが望ましい。
【0038】
以上のことより、上記に例示した化合物の中でも、下記一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)
【0039】
【化11】

【0040】
[式中、R1は一般式(1)と同じ意味]で表される含フッ素重合性単量体のいずれかが好適に用いられる。
【0041】
保護基としては、炭化水素基、アルコキシカルボニル基、アセタール基、アシル基等を挙げることができる。炭化水素基としては、炭素数1〜25の直鎖状、分岐状もしくは環状の炭化水素基あるいは芳香族炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、sec−ペンチル基,ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、エチルヘキシル基、ノルボルネル基、アダマンチル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、エチニル基、フェニル基、ベンジル基、4−メトキシベンジル基などが例示でき、上記官能基の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものでもよい。また、アルコキシカルボニル基としてはtert−ブトキシカルボニル基、tert−アミルオキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基等を例示できる。アセタール基としては、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基、シクロヘキシルオキシエチル基、ベンジルオキシエチル基、フェネチルオキシエチル基、エトキシプロピル基、ベンジルオキシプロピル基、フェネチルオキシプロピル基、エトキシブチル基、エトキシイソブチル基の鎖状のエーテル基やテトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等の環状エーテル基が挙げられる。アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基、イソバレリル基、ラウリロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、ピペロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、オレオイル基、マレオイル基、フマロイル基、メサコノイル基、カンホロイル基、ベンゾイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、ナフトイル基、トルオイル基、ヒドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基等を挙げることができる。さらに、上記置換基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものを使用することもできる。
【0042】
一般式(1)〜(4)で表される含フッ素重合性単量体製造の中間体となるヘキサフルオロイソプロピル水酸基が導入された芳香族化合物は、例えば下記非特許文献3に記載の方法により、相当するヒドロキシ置換芳香族化合物とヘキサフルオロアセトンとを反応させて得られる。
「非特許文献3」Basil S.Farah,Everett E.Gilbert,Morton Litt,Julian A.Otto,John P.SibiliaJ.Org.Chem.,1965,30(4),pp 1003-1005
次いで、この中間体の環に水素添加反応して対応する脂環式化合物(アルコール体)に誘導し、更にこれを(メタ)アクリル酸またはその反応性誘導体でエステル化することによって含フッ素重合性単量体を合成することができる。
【0043】
一例として、以下に一般式(3)で表される重合性単量体の製造ルートを例示する。レゾルシノールを原料とし、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基を導入後、環水素添加で対応するアルコール体に誘導し、エステル化により製造できる。
【0044】
【化12】

【0045】
一般式(1)〜(4)で表される含フッ素重合性単量体の製造において、環水素添加の方法は特に限定されず、既知の方法を用いればよく、有機溶媒と共にRu/Cなどの貴金属触媒を用いて水素添加を行う方法が好ましく採用される。
【0046】
また、対応するアルコールからメタクリル酸エステル等の重合性単量体を得る方法としては、特に限定されず、既知のエステル化の方法を用いればよい。具体的にアクリル酸誘導体としては、アクリル酸、メタクリル酸、トリフルオロメチルアクリル酸、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、トリフルオロメチルアクリル酸クロライド、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、トリフルオロメチルアクリル酸無水物などが例示できる。
【0047】
エステル化において、触媒は用いても用いなくても良いが、適当な反応温度と反応速度を得る目的で触媒を用いることができる。代表的例では、原料としてアクリル酸、メタクリル酸、トリフルオロメチルアクリル酸などのカルボン酸を用いる場合には酸触媒の存在下で反応することができる。また、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、トリフルオロメチルアクリル酸クロライドなどの酸クロライド、あるいはアクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、トリフルオロメチルアクリル酸無水物などの無水物を用いる場合には酸触媒または塩基触媒の存在下で反応することができる。中でも無水物を用いる場合に適度な反応速度が得られることから好適に採用される。
【0048】
前記アクリル酸誘導体の使用量は、原料となる含フッ素アルコール1モルに対して1倍モル以上使用すればよく、反応速度と目的とする含フッ素重合性単量体の収率の観点から1.0倍モルから5倍モルの量が好ましい。更に、1.05倍モルから2倍モルがより好ましい。
【0049】
使用できる前記酸触媒としてはプロトン酸とルイス酸があり、例示するならば、フッ化水素、硫酸、燐酸、塩化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などのプロトン酸と、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化ガリウム、臭化ガリウム、塩化第二鉄(FeCl3)、塩化亜鉛、塩化アンチモン、四塩化チタン、四塩化錫、三フッ化ホウ素、Ti(OCH34、Ti(OC254、Ti(OC494、Ti(OCH(CH324、Zn(CH3COO)2・2H2Oなどのルイス酸が挙げられる。この中で、プロトン酸を用いた場合に収率よく目的物が得られることから、好ましく採用される。より好ましくは、反応が速やかに進行し、入手も容易なメタンスルホン酸が採用される。
【0050】
酸触媒の量としては、原料となる含フッ素アルコール1モルに対して0.01〜10倍モルの量が使用できる。0.01倍モルより少ない場合には反応速度が遅すぎることと目的の含フッ素重合性単量体の収率が非常に小さいことから現実的ではなく、また10倍モル以上の酸を加えても収率向上の効果は期待できず、副生成物も増加する。より好ましくは基質に対して0.1〜1.5倍モルの酸が使用され、適当な反応速度と良好な収率が達成される。
【0051】
アクリル酸誘導体の原料としてアクリル酸無水物あるいはアクリル酸クロライドを用いる場合、反応で発生する酸(カルボン酸あるいは塩化水素)を捕捉するために塩基を用いることが有効である。塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシドなどの無機塩基の他、ピリジン、ルチジン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ピペリジン、ピロリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセンなどの有機塩基を用いることができる。好ましくは、有機塩基が用いられ、特にルチジンが用いられる。
【0052】
用いられる塩基の量としては、含フッ素アルコール1モルに対して、1〜10倍モル、好ましくは1〜3倍モルが用いられる。
【0053】
エステル化反応で使用する溶媒としては、反応中安定で原料となる含フッ素アルコールを溶解するものであれば特に制限はない。例えばヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒等が例示でき、これらを単独で又は2種類以上混合して使用してもよい。
【0054】
エステル化の反応温度は特に限定されないが、通常、室温から200℃の範囲で反応が可能である。反応時間は前述のアクリル酸誘導体、酸触媒、塩基の種類や量、反応温度などによって反応速度が変わることから、これに合わせて適宜変更される。実際には、反応中に反応溶液を逐次分析しながら反応を行い、原料が消費されるまで反応することが可能である。反応後の処理は特に限定されないが、反応溶液を水又は氷水に加えた後、有機溶媒による抽出操作で目的物を取り出す方法や、蒸留によって目的物を取り出す方法が可能である。
【0055】
次に、本発明のトップコート組成物にかかる含フッ素重合体について説明する。本発明の含フッ素重合体とは、一般式(5)で表される繰返し単位を含むことを特徴とする重合体のことであり、前述の一般式(1)で表される含フッ素重合性単量体の有する二重結合が開裂して単独で、またはそれ以外の単量体と共重合することにより製造できる。
【0056】
【化13】

【0057】
[式中、R1、n、m、R2またはR3は、一般式(1)と同じ意味。]
一般式(5)で表される繰り返し単位は、一般式(1)で表される含フッ素単量体の重合性二重結合が開裂して形成され、その他の構造は維持される。したがって、R1、R2、R3、m、nについての説明およびそれらの組み合わせの具体例は一般式(1)で表される含フッ素単量体についての開示がそのまま適用できる。
【0058】
前述の含フッ素重合性単量体を用いて得られた繰り返し単位の中でも、一般式(6)、(7)、(8)で示される繰返し単位を有する含フッ素重合体の少なくとも一つを含む含フッ素重合体が、特に好適に用いられる。
【0059】
【化14】

【0060】
[式中、R1は一般式(1)と同じ意味]。なお、一般式(6)、(7)、(8)のヘキサフルオロイソプロピル水酸基または環に結合した水酸基は、その一部又は全部が保護基で保護されていてもよい。
【0061】
本発明の含フッ素重合性単量体と共重合可能な単量体を具体的に例示するならば、少なくとも、無水マレイン酸、アクリル酸エステル類、含フッ素アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、含フッ素メタクリル酸エステル類、スチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物、ビニルエーテル類、含フッ素ビニルエーテル類、アリルエーテル類、含フッ素アリルエーテル類、オレフィン類、含フッ素オレフィン類、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物、二酸化硫黄、ビニルシラン類、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸エステルから選ばれた一種類以上の単量体が挙げられる。
【0062】
共重合可能なアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとしては、エステル側鎖について特に制限なく使用できるが、公知の化合物を例示するならば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール基を含有したアクリレート又はメタクリレート、さらにアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどの不飽和アミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルコキシシラン含有のビニルシランやアクリル酸又はメタクリル酸エステル、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、3−オキソシクロヘキシルアクリレート、3−オキソシクロヘキシルメタクリレート、アダマンチルアクリレート、アダマンチルメタクリレート、メチルアダマンチルアクリレート、メチルアダマンチルメタクリレート、エチルアダマンチルアクリレート、エチルアダマンチルメタクリレート、ヒドロキシアダマンチルアクリレート、ヒドロキシアダマンチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリシクロデカニルメタクリレート、ラクトン環やノルボルネン環などの環構造を有したアクリレート又はメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸などを挙げることができる。さらにα位にシアノ基を有する前記アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルや、類似化合物としてマレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などを共重合することも可能である。
【0063】
また、前記の含フッ素アクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステルとしては、フッ素原子又はフッ素原子を有する基がアクリルのα位に含有した単量体、又はエステル部位にフッ素原子を含有した置換基からなるアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルであって、α位とエステル部ともにフッ素を含有した含フッ素化合物も好適である。さらにα位にシアノ基が導入されていてもよい。例えば、α位に含フッ素アルキル基が導入された単量体としては、上述した非フッ素系のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのα位にトリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ノナフルオロ−n−ブチル基などが付与された単量体が採用される。
【0064】
一方、そのエステル部位にフッ素を含有する単量体としては、エステル部位としてパーフルオロアルキル基、フルオロアルキル基であるフッ素アルキル基や、またエステル部位に環状構造とフッ素原子を共存する単位であって、その環状構造が例えばフッ素原子、トリフルオロメチル基、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基などで置換された含フッ素ベンゼン環、含フッ素シクロペンタン環、含フッ素シクロヘキサン環、含フッ素シクロヘプタン環等を有する単位などを有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルである。またエステル部位が含フッ素のt−ブチルエステル基であるアクリル酸又はメタクリル酸のエステルなども使用可能である。これらの含フッ素の官能基は、α位の含フッ素アルキル基と併用した単量体を用いることも可能である。そのような単位のうち特に代表的なものを単量体の形で例示するならば、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルアクリレート、1,1−ジヒドロヘプタフルオロ−n−ブチルアクリレート、1,1,5−トリヒドロオクタフルオロ−n−ペンチルアクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロトリデカフルオロ−n−オクチルアクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルメタクリレート、1,1−ジヒドロヘプタフルオロ−n−ブチルメタクリレート、1,1,5−トリヒドロオクタフルオロ−n−ペンチルメタクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロトリデカフルオロ−n−オクチルメタクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルメタクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルアクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルメタクリレート、6−[3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イルアクリレート、6−[3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イル 2−(トリフルオロメチル)アクリレート、6−[3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イルメタクリレート、1,4−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルアクリレート、1、4−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルメタクリレート、1,4−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシル 2−トリフルオロメチルアクリレートなどが挙げられる。
【0065】
また、共重合に使用できるヘキサフルオロイソプロピル水酸基を有する重合性単量体を具体的に例示するならば、下記に示す化合物をあげることができる。
【0066】
【化15】

【0067】
この場合、R1は水素原子、メチル基、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を表す。また、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基は、その一部又は全部が前述の保護基で保護されていても良い。
【0068】
さらに、共重合に使用できるスチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物としては、スチレン、フッ素化スチレン、ヒドロキシスチレンなどが使用できる。より具体的には、ペンタフルオロスチレン、トリフルオロメチルスチレン、ビストリフルオロメチルスチレンなどのフッ素原子又はトリフルオロメチル基で芳香環の水素を置換したスチレン、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基やその水酸基を保護した官能基で芳香環の水素を置換したスチレンが使用できる。また、α位にハロゲン、アルキル基、含フッ素アルキル基が結合した上記スチレン、パーフルオロビニル基含有のスチレンなどが使用できる。
【0069】
また、共重合に使用できるビニルエーテル、含フッ素ビニルエーテル、アリルエーテル、含フッ素アリルエーテルとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシブチル基などのヒドロキシル基を含有してもよいアルキルビニルエーテルあるいはアルキルアリルエーテルなどが使用できる。また、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、芳香環やその環状構造内に水素やカルボニル結合を有した環状型ビニル、アリルエーテルや、上記官能基の水素の一部又は全部がフッ素原子で置換された含フッ素ビニルエーテル、含フッ素アリルエーテルも使用できる。
【0070】
なお、ビニルエステル、ビニルシラン、オレフィン、含フッ素オレフィン、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物やそれら以外のの重合性不飽和結合を含有した化合物も本発明で特に制限なく使用することが可能である。
【0071】
共重合で使用できるオレフィンとしてはエチレン、プロピレン、イソブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどを、含フッ素オレフィンとしてはフッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテンなどが例示できる。
【0072】
共重合で使用できるノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物は一核又は複数の核構造を有するノルボルネン単量体である。この際、含フッ素オレフィン、アリルアルコール、含フッ素アリルアルコール、ホモアリルアルコール、含フッ素ホモアリルアルコールがアクリル酸、α−フルオロアクリル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸、メタクリル酸、本明細書で記載したすべてのアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステル又は含フッ素メタクリル酸エステル、2−(ベンゾイルオキシ)ペンタフルオロプロパン、2−(メトキシエトキシメチルオキシ)ペンタフルオロプロペン、2−(テトラヒドロキシピラニルオキシ)ペンタフルオロプロペン、2−(ベンゾイルオキシ)トリフルオロエチレン、2−(メトキメチルオキシ)トリフルオロエチレンなどの不飽和化合物と、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンとのDiels−Alder付加反応で生成するノルボルネン化合物で、3−(5−ビシクロ[2.2.1]ヘプテン−2−イル)−1,1,1−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2−プロパノール等が例示できる。
【0073】
本発明にかかる含フッ素重合体に酸不安定基を導入する場合、酸不安定基を有する重合性単量体を使用することができる。酸不安定基を有する単量体としては、前述の一般式(1)〜(4)で示した含フッ素重合性単量体のヘキサフルオロイソプロピル水酸基または環に結合した水酸基を保護基として酸不安定性の保護基で保護したものを用いることも可能であるが、一般的には、それ以外の酸不安定基を有する重合性単量体と共重合させる方法が好適に用いられる。
【0074】
さらに、酸不安定基を有する重合体またはトップコート組成物を得る別の方法として、先に得た重合体に後から高分子反応によって酸不安定基を導入する方法や、酸不安定部位を有する単量体や重合体を混合することも可能である。
【0075】
酸不安定基を使用する目的は、波長300nm以下の紫外線、エキシマレーザ、X線等の高エネルギー線もしくは電子線の露光によりレジスト膜中で発生してトップコートへ拡散して来た酸をトラップしつつ露光部位近傍のトップコートのアルカリ現像液への溶解性を向上させることである。
【0076】
本発明に使用できる、一般式(1)〜(4)で表される含フッ素重合性単量体以外の酸不安定基を有する重合性単量体は、酸不安定基が光酸発生剤から発生した酸により加水分解して脱離するものであれば特に制限なく使用でき、重合性基としてはアルケニル基またはシクロアルケニル基であればよく、ビニル基、1−メチルビニル基または1−トリフルオロメチルビニルビニル基であるものが好ましい。例示するならば、下記の一般式(9)〜(11)に示す基を有する単量体が好ましく使用できる。
【0077】
【化16】

【0078】
ここで、R4、R5、R6、R7、R8は同じであっても良い炭素数1〜25の直鎖状、分岐状、または、環状のアルキル基であって、その一部にフッ素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ヒドロキシル基を含んでもよい。R4、R5、R6のうち2つは結合して環を形成してもよい。
【0079】
一般式(9)〜(11)に示す基の具体例として、特に限定されないが下記に示すものを例示することができる。
【0080】
【化17】

【0081】
【化18】

【0082】
本発明の含フッ素重合体において、レジスト膜との密着性の向上を目的にラクトン構造を含むユニットを導入することができる。かかるユニットの導入においては、ラクトン構造含有の重合性単量体が好適に用いられる。かかるラクトン構造としては、γ−ブチロラクトンやメバロニックラクトンから水素原子1つを除いた基などの単環式のラクトン構造、ノルボルナンラクトンから水素原子1つを除いた基などの多環式のラクトン構造などを例示することができる。このようなラクトン構造基のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを共重合して、ラクトン構造を含フッ素重合体に含有させることによって、トップコートとレジスト膜との密着性を向上させるばかりでなく、現像液との親和性を高めたりすることが可能である。
【0083】
なお、以上の本発明で使用できる共重合可能な単量体は、単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0084】
本発明にかかる含フッ素重合体は、複数の単量体からなる繰り返し単位で構成されていてもよい。その割合は特に制限なく設定されるが、例えば以下に示す範囲は好ましく採用される。
【0085】
本発明にかかる含フッ素重合体は、一般式(1)〜(4)で表される含フッ素重合性単量体が開裂して形成した繰り返し単位のみからなるものが好ましい。また、この繰り返し単位を1〜100mol%、より好ましくは5〜90mol%含有することもできる。共重合体の場合、本発明にかかる含フッ素重合体は、酸不安定基を有する繰り返し単位を1〜80mol%、好ましくは5〜70mol%、より好ましくは10〜60mol%含有することができる。さらに、他の重合性単量体により酸不安定基を有しない繰り返し単位を含むこともでき、全繰り返し単位の1〜80mol%、より好ましくは5〜50mol%含有することもできる。一般式(1)〜(4)で表される含フッ素重合性単量体が開裂して形成した繰り返し単位が1mol%よりも小さい場合には、本発明の単量体を用いたことによる明確な効果が期待できない。また、酸不安定基を有する繰り返し単位が1mol%よりも小さい場合には、酸不安定基を導入する効果がなく好ましくない。このときに、酸不安定基を有する繰り返し単位の形成に一般式(1)〜(4)で表される単量体ではない単量体を用いてもよいし、一般式(1)〜(4)で表される単量体を酸不安定基を有する単量体に誘導したものを用いてもよい。あるいは、重合後に酸不安定基を高分子反応により導入したものであってもよい。酸不安定基を含まない他の重合性単量体に由来する繰り返し単位は、含フッ素重合体の有機溶媒への溶解性、膜の耐エッチング性、機械的強度などを改良するために用いるが、1mol%未満ではその効果が発現せず、80mol%を超えると一般式(1)〜(4)で表される含フッ素重合性単量体が開裂して形成した繰り返し単位の含有量が少なくなりその効果が十分に発揮できないので好ましくない。
【0086】
本発明のトップコート組成物にかかる含フッ素重合体の重合方法としては、一般的に使用される方法であれば特に制限されないが、ラジカル重合、イオン重合などが好ましく、場合により、配位アニオン重合、リビングアニオン重合、カチオン重合、開環メタセシス重合、ビニレン重合などを使用することも可能である。
【0087】
ラジカル重合は、ラジカル重合開始剤あるいはラジカル開始源の存在下で、塊状重合、溶液重合、懸濁重合又は乳化重合などの公知の重合方法により、回分式、半連続式又は連続式のいずれかの操作で行えばよい。
【0088】
ラジカル重合開始剤としては特に限定されるものではないが、例としてアゾ系化合物、過酸化物系化合物、レドックス系化合物が挙げられ、とくにアゾビスイソブチロニトリル、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−t−ブチルパーオキシド、i−ブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキシド、ジシンナミルパーオキシド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、過硫酸アンモニウム等が好ましい。
【0089】
重合反応に用いる反応容器は特に限定されない。また、重合反応においては、重合溶媒を用いてもよい。重合溶媒としては、ラジカル重合を阻害しないものが好ましく、代表的なものとしては、酢酸エチル、酢酸n−ブチルなどのエステル系、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系、トルエン、シクロヘキサンなどの炭化水素系、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤などがある。また水、エーテル系、環状エーテル系、フロン系、芳香族系、などの種々の溶媒を使用することも可能である。これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。また、メルカプタンのような分子量調整剤を併用してもよい。共重反応の反応温度はラジカル重合開始剤あるいはラジカル重合開始源により適宜変更され、通常は20〜200℃が好ましく、特に30〜140℃が好ましい。
【0090】
一方、開環メタセシス重合は、共触媒存在下、IV、V、VI、VII属の遷移金属触媒を用いれば良く、溶媒存在下、公知の方法を用いればよい。
【0091】
重合触媒としては特に限定されるものではないが、例としてTi系、V系、Mo系、W系触媒が挙げられ、特に、塩化チタン(IV)、塩化バナジウム(IV)、バナジウムトリスアセチルアセトナート、バナジウムビスアセチルアセトナートジクロリド、塩化モリブデン(VI)、塩化タングステン(VI)などが好ましい。触媒量としては、使用モノマーに対して10mol%から0.001mol%、好ましくは、1mol%から0.01mol%である。
【0092】
共触媒としては、アルキルアルミニウム、アルキルすずなどが挙げられ、特に、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−2−メチルブチルアルミニウム、トリ−3−メチルブチルアルミニウム、トリ−2−メチルペンチルアルミニウム、トリ−3−メチルペンチルアルミニウム、トリ−4−メチルペンチルアルミニウム、トリ−2−メチルヘキシルアルミニウム、トリ−3−メチルヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルアルミニウム類、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソプロピルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライドなどのジアルキルアルミニウムハライド類、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジアイオダイド、プロピルアルミニウムジクロライド、イソプロピルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライドなどのモノアルキルアルミニウムハライド類、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、プロピルアルミニウムセスキクロライド、イソブチルアルミニウムセスキクロライドなどのアルキルアルミニウムセスキクロライド類などのアルミニウム系や、テトラ−n−ブチルすず、テトラフェニルすず、トリフェニルクロロすずなどが例示できる。共触媒量は、遷移金属触媒に対してモル比で、100当量以下、好ましくは30当量以下の範囲である。
【0093】
また、重合溶媒としては重合反応を阻害しなければ良く、代表的なものとして、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの炭化水素系、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素などが例示できる。また、これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。反応温度は、通常は−70〜200℃が好ましく、特に−30〜60℃が好ましい。
【0094】
ビニレン重合は、共触媒存在下、鉄、ニッケル、ロジウム、パラジウム、白金などのVIII属の遷移金属触媒や、ジルコニウム、チタン、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステンなどのIVBからVIB属の金属触媒を用いればよく、溶媒存在下、公知の方法を用いればよい。
【0095】
重合触媒としては特に限定されるものではないが、例として特に、鉄(II)クロライド、鉄(III)クロライド、鉄(II)ブロマイド、鉄(III)ブロマイド、鉄(II)アセテート、鉄(III)アセチルアセトナート、フェロセン、ニッケロセン、ニッケル(II)アセテート、ニッケルブロマイド、ニッケルクロライド、ジクロロヘキシルニッケルアセテート、ニッケルラクテート、ニッケルオキサイド、ニッケルテトラフルオロボレート、ビス(アリル)ニッケル、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル、ニッケル(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナートテトラハイドレート、ニッケル(II)トリフルオロアセチルアセトナートジハイドレート、ニッケル(II)アセチルアセトナートテトラハイドレート、塩化ロジウム(III)、ロジウムトリス(トリフェニルホスフィン)トリクロライド、パラジウム(II)ビス(トリフルオロアセテート)、パラジウム(II)ビス(アセチルアセトナート)、パラジウム(II)2−エチルヘキサノエート、パラジウム(II)ブロマイド、パラジウム(II)クロライド、パラジウム(II)アイオダイド、パラジウム(II)オキサイド、モノアセトニトリルトリス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)テトラフルオロボレート、テトラキス(アセトニトリル)パラジウム(II)テトラフルオロボレート、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセトナート、パラジウムビス(アセトニトリル)ジクロライド、パラジウムビス(ジメチルスルホキサイド)ジクロライド、プラチニウムビス(トリエチルホスフィン)ハイドロブロマイドなどのVIII属の遷移金属類や、塩化バナジウム(IV)、バナジウムトリスアセチルアセトナート、バナジウムビスアセチルアセトナートジクロリド、トリメトキシ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(IV)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなどのIVBからVIB属の遷移金属類が好ましい。触媒量としては、使用モノマーに対して10mol%から0.001mol%、好ましくは、1mol%から0.01mol%である。
【0096】
共触媒としては、アルキルアルミノキサン、アルキルアルミニウムなどが挙げられ、特に、メチルアルミノキサン(MAO)や、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−2−メチルブチルアルミニウム、トリ−3−メチルブチルアルミニウム、トリ−2−メチルペンチルアルミニウム、トリ−3−メチルペンチルアルミニウム、トリ−4−メチルペンチルアルミニウム、トリ−2−メチルヘキシルアルミニウム、トリ−3−メチルヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルアルミニウム類、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソプロピルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライドなどのジアルキルアルミニウムハライド類、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジアイオダイド、プロピルアルミニウムジクロライド、イソプロピルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライドなどのモノアルキルアルミニウムハライド類、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、プロピルアルミニウムセスキクロライド、イソブチルアルミニウムセスキクロライドなどのアルキルアルミニウムセスキクロライド類などが例示できる。共触媒量は、メチルアルミノキサンの場合、Al換算で50から500当量、その他アルキルアルミニウムの場合、遷移金属触媒に対してモル比で、100当量以下、好ましくは30当量以下の範囲である。
【0097】
また、重合溶媒としては重合反応を阻害しなければ良く、代表的なものとして、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの炭化水素系、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−シクロヘキシルピロリドンなどが例示できる。また、これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。反応温度は、通常は−70〜200℃が好ましく、特に−40〜80℃が好ましい。
【0098】
このようにして得られる本発明にかかる含フッ素重合体の溶液又は分散液から、媒質である有機溶媒又は水を除去する方法としては、公知の方法のいずれも利用できるが、例を挙げれば再沈殿ろ過又は減圧下での加熱留出等の方法がある。
【0099】
本発明のトップコート組成物にかかる含フッ素重合体の数平均分子量としては、通常、1,000〜100,000、好ましくは3,000〜50,000の範囲が適切である。
分子量分散は1〜4であり、1〜2.5が好ましい。
【0100】
トップコートとしての使用において、分子量により、溶解性およびキャスティングの特性が変わり得る。分子量が高いポリマーは現像液への溶解速度が遅くなり、分子量が低い場合は溶解速度が速くなる可能性があるが、分子量はこの技術分野の常識に基づいて重合条件を適宜調整することにより制御可能である。
【0101】
本発明にかかる含フッ素重合体は、脂環式構造とその環に結合したヘキサフルオロイソプロピル水酸基を含むので、300nm以下の波長における吸光度が非常に低いという特性を有する。したがって、露光においては、300nm以下の高エネルギー線を使用することが可能である。
【0102】
また、本発明のトップコート組成物に用いる含フッ素重合体は、脂環式構造を有しているため、比較的高いガラス転移温度(Tg)を与える。ガラス転移温度(Tg)が低いとレジスト構成成分がトップコート層へ拡散して好ましくない。本発明にかかる含フッ素重合体は、共重合する成分にも依存するが、概ね120℃以上のTgを有するので、ベーク温度(100℃)よりも高いため、かかる拡散は抑えることができる。
【0103】
本発明のトップコート組成物は、上記で製造した含フッ素重合体を有機溶剤、又は水と有機溶媒の混合液に溶解した後に使用する。使用できる有機溶剤としては、その溶剤が下層のレジスト膜を浸食しにくく、かつ、レジスト膜から添加剤等を抽出しにくい溶剤であることが必須の要件になる。
レジスト膜を浸食しにくく、かつ、レジスト膜から添加物を抽出しにくい有機溶剤としては、下層のレジスト膜組成に依存するが、炭化水素溶媒、アルコール、エーテル、エステル、フッ素系溶剤などが挙げられる。
具体的には好ましくは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカンや脂環類の炭化水素溶媒やブタノール(ノルマル、イソ体、ターシャリー)、メチルエチルカルビノール、ペンタノール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、4−メチル−2−ペンタノールなどのアルコール類、さらに好ましくは部分的にフッ素で置換された炭化水素系溶媒が好適に採用される。部分的にフッ素で置換された炭化水素溶媒とは、アルカンや脂環類の炭化水素溶媒やアルコール類であって、その水素の一部がフッ素原子で置換されたものが採用できる。フッ素原子を導入することで本発明の高分子化合物を効果的に溶解させ、かつ下地のレジスト膜にダメージを与えないコーティングを行うことが可能となる。
【0104】
後述するように、トップコート組成物はスピンコート法によりレジスト膜上に塗布される。したがって、これらの溶媒においては、スピンコートに適した沸点範囲、すなわち、沸点が70℃〜170℃程度のであることが取扱いの関係で望ましい。
上記の溶媒の中でも、沸点の関係で特定の炭素数の炭化水素、アルコールが好ましい。炭素数が小さすぎると沸点が70℃より低く、炭素数が大きすぎると沸点が170℃を越えてしまいスピンコートには適さない。
かかる溶媒としては、炭素数5〜20のアルカンもしくは脂環類の炭化水素、炭素数1〜20の炭化水素系アルコール、または、上記炭化水素もしくはアルコールが部分的にフッ素原子で置換されたものよりなる群より選ばれる1種の有機溶媒または2種以上の混合溶媒が好ましい。
さらに好ましくは、炭素数5〜10のアルカンまたは脂環類の炭化水素、炭素数1〜10の炭化水素系アルコール、および、これらの炭化水素または炭化水素系アルコールが部分的にフッ素で置換されたものよりなる群より選ばれる1種の有機溶媒または2種以上の混合液が挙げられる。
【0105】
スピンコートに適した沸点を与える炭化水素および炭化水素系アルコールの組成としては、炭素数5〜20の炭化水素を50以上99.9%未満、炭素数1〜20の炭化水素系アルコールを0.1%以上50%未満で混合した溶剤が好ましい。
【0106】
さらに好ましくは、炭素数5〜10の炭化水素を50以上99.9%未満、炭素数1〜10の炭化水素系アルコールを0.1%以上50%未満で混合した溶剤が挙げられる。
【0107】
配合する溶剤の量は特に限定されないが、好ましくはトップコート組成物の固形分濃度が3〜25%、より好ましくは5〜15%となる様に用いられる。トップコート組成物の固形分濃度を調整することによって、形成される樹脂膜の膜厚を調整することが可能である。
また、本発明においては、水の膨潤やしみ込みに対する影響を抑制するための疎水性添加剤、現像液への溶解性を促進させるための酸性添加剤などが好適に使用できる。
本発明によるトップコート組成物は、下層のレジストの種類に制限なく使用することができる。すなわち下層レジストが、ネガ型、ポジ型、複合型などの任意のレジストシステムであっても好適に使用できる。
【0108】
露光に用いる波長は限定されないが、前述のように、300nm以下の高エネルギー線が使用でき、KrFエキシマレーザ(248nm)、ArFエキシマレーザ(193nm)、F2レーザー(157nm)、EUV、EB、X線が好適に使用でき、特には、ArFエキシマレーザに好ましく採用される。
また、特に本発明のトップコート組成物は液浸リソグラフィーにおいて、好適に応用される。
以下、液浸リソグラフィーを用いたデバイス(半導体装置)製造において本発明を使用する場合について説明する。デバイスとしては、特に限定されないが、シリコンウェハー、化合物半導体基板、絶縁性基板などに形成されるCPU、SRAM、DRAMなどの微細加工により製造される半導体装置が挙げられる。
【0109】
まずシリコンウエハーや半導体製造基板のような支持体上に、レジスト組成物の溶液をスピンナーなどで塗布した後、プレベークを行いレジスト層を形成させる。この工程にかかる条件は、使用するレジスト組成物の組成に応じて適宜設定できる。
【0110】
次に上記のように形成したレジスト膜の表面に、本発明のトップコート組成物溶液をスピナーなどで均一に塗布した後、熱処理することにより、レジスト層の上にトップコート層でコートした2層膜からなる樹脂膜が形成される。
【0111】
この樹脂層が形成された基板を水等の媒体に浸漬し、次いで300nm以下の高エネルギー線を所望のマスクパターンを介して照射する。この時、露光光は、媒体(例えば水)とトップコート層を通過してレジスト層に到達する。また、レジスト層は、トップコート層によって媒体(例えば水)と分離しているので、媒体(例えば水)がレジスト層に浸漬して膨潤したり、逆にレジストが媒体(例えば水)に溶出することもない。
【0112】
露光された基板をベーク後、現像液、例えば0.1〜10重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液のようなアルカリ性水溶液などを用いて現像処理する。現像処理においては、まず、トップコート層が全溶解し、次いで露光部のレジスト膜が溶解する。すなわち、1回の現像処理により、トップコート層とレジスト層の一部を溶解除去することが可能で、所望のマスクパターンに応じたレジストパターンを得ることができる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[単量体合成例1] 化合物−4(MA3−4OH)の合成
(1)化合物−2: 1−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)−2,5−ジヒドロキシベンゼンの合成
【0114】
【化19】

【0115】
攪拌機および温度計を備えた内容積2,000mlのSUS316製耐圧反応器に、ハイドロキノン(化合物−1)200g(1.82mol)、p−トルエンスルホン酸17.3g(0.091mol)、トルエン600mlを入れ、反応器を閉止した。次に、真空ポンプで反応器を脱気した後、攪拌しながら1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロアセトン332g(2.00mol)を導入した。反応器を昇温し、100℃で30時間攪拌を続けた。
【0116】
反応終了後、内容物を抜き出し、ジイソプロピルエーテル400mlおよび水400mlを加えて攪拌した。静置して有機層を分離し、飽和食塩水200mlで2回洗浄した。得られた溶液を濃縮した後、トルエンとヘプタンの1:2混合溶媒800mlを加えて80℃まで加熱した後、除冷して再結晶した。結晶をろ過して乾燥し、1−(1,1,1,3,3,3−ヘジサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)−2,5−ジヒドロキシベンゼン(化合物−2)370gを得た。収率72%。
1H−NMR(溶媒:重アセトン,基準物質:TMS);δ(ppm)6.82−7.05(3H,m),8.87(3H,bs)
19F−NMR(溶媒:重アセトン,基準物質:CCl3F);δ(ppm)−75.05 (6F,s)
(2)化合物−3:(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)−2,5−ジヒドロキシシクロヘキサンの合成
【0117】
【化20】

【0118】
攪拌機および温度計を備えた内容積2,000mlのSUS316製耐圧反応器に、ジイソプロピルエーテルを800ml、化合物−2を350g(1.27mol)、5%Ru/C(50%含水品、エヌ・イーケムキャット製)を17.5g入れ、反応器を閉止した。攪拌を開始し、反応器内を水素で置換した後、水素圧を3.0MPaとした。反応器を昇温し、130℃ で20時間攪拌を続けた。
【0119】
反応終了後、内容物を抜き出し、セライトを使用して触媒を濾別した。得られた濾液を濃縮した後、トルエンとヘプタンの1:2混合溶媒800mlを加えて80℃まで加熱した後、除冷して再結晶した。結晶をろ過して乾燥し、1−(1,1,1,3,3,3−ハキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)−2,5−ジヒドロキシシクロヘキサン(化合物−3)を283gを得た。収率79%。化合物−3は、主に2種類の異性体の混合物(化合物−3A:化合物−3B=64:36)として得られた。
化合物−3A:
1H−NMR(溶媒:重アセトン,基準物質:TMS);δ(ppm)1.20−2.80(7H,m),3.82(1H,s),4.17(1H,s),4.61(1H,s),5.20(1H,s),7.29(1H,s)
19F−NMR(溶媒:重アセトン,基準物質:CCl3F);δ(ppm)−71.25 (3F,q,J=12Hz),−73.86 (3F,q,J=12Hz)
化合物−3B:
1H−NMR(溶媒:重アセトン, 基準物質:TMS);δ(ppm)1.20−2.80(7H,m),3.63(1H,s),3.95(1H,s),4.54(1H,s),5.24(1H,s),7.29(1H,s)
19F−NMR(溶媒:重アセトン,基準物質:CCl3F);δ(ppm)−71.25 (3F,q,J=12Hz),−73.86 (3F,q,J=12Hz)
(3)化合物−4(MA3−4OH):(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)−2−ヒドロキシシクロヘクス−5−イル メタクリレートの合成
【0120】
【化21】

【0121】
攪拌機、温度計、還流冷却器を備えた3,000mlの四つ口フラスコに、化合物−3を270g(0.96mol)、トルエン(1,200ml)、メタンスルホン酸18.4g(0.191mol)、メタクリル酸無水物155g(1.01mol)を加え、70℃で4時間攪拌を続けた。
【0122】
反応終了後、反応液を抜き出し、ジイソプロピルエーテルを800ml加えて重曹水、飽和食塩水の順に洗浄した。得られた溶液を濃縮した後、トルエンとヘプタンの1:2混合溶媒600mlを加えて70℃まで加熱した後、除冷して再結晶した。結晶をろ過して乾燥し、1−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)−2−ヒドロキシシクロヘクス−5−イル メタクリレート(化合物−4;MA3−4OH、113g)を得た。収率34%。
1H−NMR(溶媒:CDCl3,基準物質:TMS);δ(ppm)1.95(3H,s),1.55−2.60(8H,m),4.71(1H,s),5.27(1H,s),5.58(1H,s),5.94(1H,s),6.08(1H,s).
19F−NMR(溶媒:CDCl3,基準物質:CCl3F);δ(ppm)−72.42(3F,q,J=12Hz),−74.72(3F,q,J=12Hz)
[単量体合成例2] 化合物−8(MA4−3OH)の合成
(1)化合物−6:1−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)−2,4−ジヒドロキシベンゼンの合成
【0123】
【化22】

【0124】
化合物−5(レゾルシノール)を原料として、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロアセトンと反応させることにより、1−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)−2,4−ジヒドロキシベンゼン(化合物−6)を合成した。なお、合成においては、下記の非特許文献2に記載の方法で行った。
「非特許文献2」Basil S.Farah,Everett E.Gilbert,Morton Litt,Julian A.Otto,John P.SibiliaJ.Org.Chem.,1965,30(4),pp1003-1005

(2)化合物−7: 1−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)−2,4−ジヒドロキシシクロヘキサンの合成
【0125】
【化23】

【0126】
攪拌機および温度計を備えた内容積2,000mlのSUS316製耐圧反応器に、ジイソプロピルエーテルを800ml、化合物−6を350g(1.27mol)、5%Ru/C(50%含水品、エヌ・イーケムキャット製)を17.5g入れ、反応器を閉止した。攪拌を開始し、反応器内を水素で置換した後、水素圧を3.0MPaとした。反応器を昇温し、130℃で20時間攪拌を続けた。
【0127】
反応終了後、内容物を抜き出し、セライトを使用して触媒を濾別した。得られた濾液を濃縮した後、トルエンとヘプタンの1:2混合溶媒800mlを加えて80℃まで加熱した後、除冷して再結晶した。結晶をろ過して乾燥し、1−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)−2,4−ジヒドロキシシクロヘキサン(化合物−7)を315gを得た。収率88%。

(3)化合物−8(MA4−3OH): 1−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)−2−ヒドロキシシクロヘクス−4−イル メタクリレートの合成
【0128】
【化24】

【0129】
攪拌機、温度計、還流冷却器を備えた3,000mlの四つ口フラスコに、化合物−7を270g(0.96mol)、トルエン(1,200ml)、メタンスルホン酸18.4g(0.191mol)、メタクリル酸無水物155g(1.01mol)を加え、70℃で4時間攪拌を続けた。
【0130】
反応終了後、反応液を抜き出し、ジイソプロピルエーテルを800ml加えて重曹水、飽和食塩水の順に洗浄した。得られた溶液を濃縮した後、トルエンとヘプタンの1:2混合溶媒600mlを加えて70℃まで加熱した後、除冷して再結晶した。結晶をろ過して乾燥し、1−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)−2−ヒドロキシシクロヘクス−4−イル メタクリレート(化合物−8;MA4−3OH)を131gを得た。収率39%。
1H−NMR(溶媒:CDCl3,基準物質:TMS);δ(ppm)1.98(3H,s),1.65−2.29(7H,m),3.53(1H,bs),4.68(1H,s),5.29(1H,s),5.66(1H,s),6.07(1H,s),6.50(1H,bs).
19F−NMR(溶媒:CDCl3 ,基準物質:C66);δ(ppm)87.12 (3F,q,J=11.3Hz),89.70 (3F,q,J=11.3Hz)IR(ATR法):ν=3387,1685,1269,1200,1151,1136,1107,1095,979,952cm-1
GC−MS(FI+法):m/e 350(M+
[重合体合成例1]重合体−1:化合物−4;MA3−4OHのホモポリマー
重合体の分子量(数平均分子量Mn)と分子量分散(Mnと重量平均分子量Mwの比Mw/Mn)は、東ソー製HLC−8320GPCを使用し、東ソー製ALPHA−MカラムとALPHA−2500カラムを1本ずつ直列に繋ぎ、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定した。検出器は屈折率差検出器を用いた。結果を表1に示した。また、共重合体の組成は1H−NMRおよび19F−NMRにより決定し、結果は表1の「組成(繰り返し単位)」の欄に示した。他の重合体において同じ。
【0131】
【化25】

【0132】
ガラス製フラスコ中にて、2−ブタノン80.0gへ化合物−4(MA3−4OH)を40.0gおよびn-ドデシルメルカプタン(東京化成(株)製)を0.65g溶解した。この溶液に重合開始剤としてAIBN(2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、和光純薬(株)製)を1.65g加えてから撹拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した後に75℃にて16時間の反応を行った。反応終了後の溶液を600.0gのn−ヘプタンに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、60℃にて減圧乾燥を行い32.0gの白色固体(重合体−1)を得た(収率80%)。GPC測定結果;Mn=16,600、Mw/Mn=2.1
[重合体合成例2]重合体−2:化合物−8;MA4−3OHのホモポリマー
【0133】
【化26】

【0134】
ガラス製フラスコ中にて、2−ブタノン80.0gへ化合物−8(MA4−3OH)を40.0gおよびn-ドデシルメルカプタン(東京化成(株)製)を0.65g溶解した。この溶液に重合開始剤としてAIBN(2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、和光純薬(株)製)を1.65g加えてから撹拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した後に75℃にて16時間の反応を行った。反応終了後の溶液を600.0gのn−ヘプタンに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、60℃にて減圧乾燥を行い35.2gの白色固体(重合体−2)を得た(収率88%)。GPC測定結果;Mn=18,700、Mw/Mn=1.6
[重合体合成例3]重合体−3: 化合物−8/MA-ECp共重合系
【0135】
【化27】

【0136】
ガラス製フラスコ中にて、2−ブタノン64.6gへ化合物−8(MA−4,3−OH)を25.1g 、メタクリル酸1−エチル−1−シクロペンタン(MA−ECp)を7.2gおよびn−ドデシルメルカプタン(東京化成(株)製)を0.45g溶解した。この溶液に重合開始剤としてAIBN(2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、和光純薬(株)製)を1.3g加えてから撹拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した後に75℃にて16時間の反応を行った。反応終了後の溶液を500.0gのn−ヘプタンに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、60℃にて減圧乾燥を行い23.0gの白色固体(重合体ー3)を得た(収率71%)。GPC測定結果;Mn=11,200、Mw/Mn=2.2。
【0137】
[重合体合成例4]比較重合体−1: 化合物−9;MA4のホモポリマー
【0138】
【化28】

【0139】
ガラス製フラスコ中にて、2−ブタノン84.0gへ1−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシ−2−プロピル)シクロヘクス−4−イル メタクリレート(化合物−9;MA4)を42.0gおよびn-ドデシルメルカプタン(東京化成(株)製)を0.68g溶解した。この溶液に重合開始剤としてAIBN(2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、和光純薬(株)製)を1.71g加えてから撹拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した後に75℃にて16時間の反応を行った。反応終了後の溶液を630.0gのn−ヘプタンに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、60℃にて減圧乾燥を行い34.0gの白色固体(トップコート用比較重合体−1)を得た(収率81%)。GPC測定結果;Mn=17,000、Mw/Mn=1.9
[重合体合成例5]比較重合体−2: 化合物−10;MA35のホモポリマー
【0140】
【化29】

【0141】
ガラス製フラスコ中にて、2−ブタノン90.0gへ、1,3,3,3−ヘキサフルオロー2-ヒドロキシー2プロピル)シクロヘキシ−4−イルメタクリレート(化合物−10:MA35)を45.0gおよびn-ドデシルメルカプタン(東京化成(株)製)を0.70g溶解した。この溶液に重合開始剤としてAIBN(2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、和光純薬(株)製)を1.83g加えてから撹拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した後に75℃にて16時間の反応を行った。反応終了後の溶液を675.0gのn−ヘプタンに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、60℃にて減圧乾燥を行い34.2gの白色固体(トップコート用比較重合体−2)を得た(収率76%)。GPC測定結果;Mn=9,400、Mw/Mn=1.6

[重合体合成例6]レジスト用重合体:レジスト−1
【0142】
【化30】

【0143】
ガラス製フラスコ中にて、溶媒の2−ブタノン65.8gへ、モノマーとしてヒドロキシアダマンチルメタクリレート(MA−HAD)を12.0g、エチルアダマンチルメタクリレート(MA−EAD)を10.8g、γブチロラクトンメタクリレート(MA−GBL)を10.1g、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン(東京化成(株)製)を0.54g溶解した。この溶液に重合開始剤としてAIBN(製品名2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、和光純薬(株)製)を1.35g添加後、撹拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した後に75℃にて16時間の反応を行った。反応終了後の溶液を500.0gのn−ヘプタンに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、60℃にて減圧乾燥を行い29.6gの白色固体(レジスト用重合体)を得た(収率90%)。GPC測定結果;Mn=11,500、Mw/Mn=2.1。測定した結果を表1に示す。
【0144】
【表1】

【0145】
以下に、トップコート組成物としての評価を示す。
【0146】
[実施例1〜4、比較例1、2]
・トップコート組成物配合
重合体合成例1〜5で得られた重合体を用い、それぞれ表2の実施例1〜4、比較例1および比較例2に示す割合で溶剤に溶解して、調製したところ、いずれも均一で透明なトップコート溶液(トップコート−1−1、トップコート−1−2、トップコート−2、トップコート−3、比較トップコート−1、比較トップコート−2)が得られた。
【0147】
予め反射防止膜処理(日産化学工業製ARC29A、78nm;塗布後200℃で60秒間焼成)したシリコンウェハー上に、それぞれのトップコート溶液を、メンブランフィルター(0.2μm)でろ過した後、スピナーを用いて回転数1,500rpmでスピンコートし、ホットプレート上で100℃で90秒間乾燥したところ、それぞれ均一な樹脂膜が得られた(実施例1〜4、比較例1、2)。
【0148】
・レジスト配合
重合体合成例6で得られたレジスト用重合体をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解し、固形分12%に調整した。さらに酸発生剤としてノナフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウムを重合体100重量部に対して5重量部、塩基としてイソプロパノールアミンを同2重量部溶解し、レジスト溶液を調製した。実施例1と同様に、反射防止膜処理したシリコンウェハーに同様な条件で塗布、乾燥を行いレジスト膜を形成した(参考例1)。
【0149】
・溶剤溶解性
トップコート溶液およびレジスト組成物の配合を調整するにあたり、上記のように表2に示した溶剤を用いトップコート溶液およびレジスト組成物を調製した。いずれも、良好な溶解性を示した。結果を表2に示した。
【0150】
・後退接触角
実施例1〜4、比較例1、2で得られた樹脂膜と重合体合成例6から得たレジスト膜について後退接触角を測定した。動的接触角計(協和界面科学社製)の拡張縮小法により、水滴の後退接触角を測定した。初期液滴サイズ7μLを6μL/秒の速度にて8秒間吸引し、吸引中の動的接触角が安定した値を後退接触角とした。結果を表2に示す。
【0151】
含フッ素重合体を配合したトップコートと比較トップコート1〜2は、50度以上の後退接触角を示した。レジスト膜(参考例1;47度)と比較して樹脂膜の後退接触角が高くなる傾向がみられた。
【0152】
・現像液溶解性
実施例1〜4、比較例1および2で得られた樹脂膜を2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(現像液)に室温で60秒間浸漬したところ、比較トップコート−1を用いた場合(比較例1)を除き、速やかに膜が溶解して消失した。なお、参考例1で得られたレジスト膜について同様に溶解性を測定したところ、未露光であるため膜の溶解は観察されなかった。
【0153】
【表2】

【0154】
[実施例5〜8、比較例3〜5]
参考例1で調製したレジスト溶液、実施例1〜4および比較例1〜2で調製したトップコート溶液を用いて、下記に示すプロセスでシリコンウエハー上にレジスト層とトップコート層の2層膜よりなる樹脂膜を形成した。
【0155】
・樹脂膜形成プロセス(レジスト組成物塗布、トップコート溶液塗布)
参考例1で得られたレジスト溶液を、スピナーを用いてシリコンウェハー上にスピンコート後、ホットプレート上で100℃で90秒間乾燥し、膜厚150nmのレジスト膜を得た。このレジスト膜上に、メンブランフィルター(0.2μm)でろ過したトップコート−1−1の溶液を、スピナーを用いてスピンコート後、ホットプレート上で100℃で90秒間乾燥して、合計膜厚200nmの樹脂膜(レジスト層とトップコート層からなる2層膜)を形成した。
【0156】
同様に、レジスト膜を形成したしたシリコンウェハーに、トップコート−1−2、2、3、比較トップコート−1、−2の溶液をそれぞれ塗布して合計膜厚約200nmの樹脂膜(レジスト層とトップコート層からなる2層膜)を得た。
【0157】
シリコンウェハー上に形成した樹脂膜について、次に示す純水浸漬処理、トップコート層のアルカリ現像液溶解性試験、および露光解像試験を行った。これら試験の結果を表3に示した。
【0158】
・純水浸漬試験
上記の方法で樹脂膜を形成したシリコンウェハー20枚を、それぞれ、20mlの純水に10分浸漬して溶出物を抽出後、当該抽出液をイオンクロマトグラフィにて測定して、溶出物の有無を確認した。トップコートを設けなかったもの(比較例3)を除いて、光酸発生剤やその分解物に帰属されるピークは観測されなかった。これは、トップコートを設けたことにより、レジスト膜からレジスト成分の水への溶出が抑えられてたことを示す。
【0159】
・トップコート層のアルカリ現像液溶解性試験
レジストを塗布して樹脂膜を形成したシリコンウェハーを、レジスト現像アナライザー RDA-790(リソテックジャパン(株)製)を用いて室温でアルカリ現像液(2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)に浸漬して溶解速度を測定した。結果を表3に示した。
【0160】
比較例4はアルカリ現像液に不溶、比較例5はアルカリ現像液溶解速度が極めて速いのに対し、実施例5〜8のトップコートはその中間程度の溶解速度を示した。
【0161】
・露光解像試験
レジスト膜上にトップコート溶液を塗布して樹脂膜を形成したシリコンウェハーを、100℃で90秒間プリベークを行った後、フォトマスクを介して193nmで露光した。露光後のウェハーを回転させながら純水を2分間滴下した。その後、120℃で60秒間ポストエクスポーザーベークを行い、アルカリ現像液で現像した。アルカリ現像液としては、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いた。
【0162】
得られたパターンを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、解像性の評価を行った。結果を表3に示した。
【0163】
トップコート−1−1、トップコート−1−2、トップコート−2、トップコート−3を用いた実施例5〜8の場合には、矩形形状のパターンが形成されたのに対して、比較トップコート−1を用いた比較例4では溶解性不良とみられる頭はり形状で残渣のあるパターンが得られ、比較レトップコート−2を用いた比較例5では溶解性過剰とみられる未露光部の膜べりと、頭が丸くなった形状のパターンが観測された。なお、トップコートを用いなかった比較例3では、膨潤によると思われるライン同士の癒着が発生して乱れた形状のパターンが観測された。
【0164】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジスト膜上に設けられて、前記レジスト膜を保護するトップコート組成物であって、下記一般式(5)で表される繰返し単位を有する含フッ素重合体を含むことを特徴とするフォトレジスト用トップコート組成物。
【化1】

[式中、R1は水素原子、メチル基、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を表す。nは0または1であり、mは1〜(3+n)の整数である。R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または保護基を表す。]
【請求項2】
一般式(5)で表される繰り返し単位において、R2およびR3がともに水素原子である請求項1に記載のトップコート組成物。
【請求項3】
下記一般式(6)〜一般式(8)で表される繰返し単位の少なくとも一つを有する含フッ素重合体を含むことを特徴とする請求項2に記載のトップコート組成物。
【化2】

[式中、R1は水素原子、メチル基、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を表す。]
【請求項4】
含フッ素重合体が、酸不安定基を有する繰返し単位を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のトップコート組成物。
【請求項5】
有機溶剤を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のトップコート組成物。
【請求項6】
有機溶剤が炭素数5〜20の環状または鎖状の炭化水素、炭素数1〜20のアルコール、部分的にフッ素で置換された環状または鎖状炭化水素よりなる群より選ばれる1種または2種以上からなる有機溶剤である請求項5に記載のトップコート組成物。
【請求項7】
有機溶剤が炭素数5〜20の炭化水素を50%以上99.9%未満、炭素数1〜20のアルコールを0.1%以上50%未満で混合した溶剤である請求項5または請求項6に記載のトップコート組成物。
【請求項8】
液浸リソグラフィーに用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のトップコート組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のトップコート組成物から形成された半導体装置製造用のトップコート。
【請求項10】
請求項9に記載のトップコートを使用して製造した半導体装置。

【公開番号】特開2010−164957(P2010−164957A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281162(P2009−281162)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】