説明

トロイダル型無段変速機及び無段変速装置

【課題】エンジンの始動時には押圧装置の油圧室内の油圧を素早く立ち上がらせ、停止時にはこの油圧室内の油圧を徐々に低下させる事で、大きな弾力を有する予圧ばねを使用しなくても、エンジンの始動、停止時にトラクション部でグロススリップが発生するのを防止できる構造を実現する。
【解決手段】エンジンを停止状態から始動させる際に、押圧装置用油圧調整弁による、前記押圧装置の油圧室内に導入する油圧の制御値を、最高値とする。これにより、この油圧室内への圧油の送り込みを円滑にする。又、エンジンを停止させる操作を行った状態で、前記押圧装置用油圧調整弁の開度を、前記油圧室内に導入する油圧を、前記各トラクション部の面圧を必要最低限の値に規制する為の開度に調整する。これにより、前記油圧室からの圧油の排出を緩徐に行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車用自動変速機として利用するトロイダル型無段変速機、及び、このトロイダル型無段変速機を組み込んだ無段変速装置の改良に関する。具体的には、油圧式の押圧装置を備えたトロイダル型無段変速機を備えた自動車で、エンジンの起動、停止時にもトラクション部の面圧を確保してグロススリップの発生を防止し、耐久性の向上を図れる構造を実現するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用自動変速機として使用されるトロイダル型無段変速機が、特許文献1〜6等の多くの刊行物に記載され、且つ、一部で実施されていて周知である。この様なトロイダル型無段変速機は、互いに対向する軸方向側面をトロイド曲面とした第一のディスク(例えば入力側ディスク)と第二のディスク(例えば出力側ディスク)との間に、複数のパワーローラを挟持して成る。運転時には、前記入力側ディスクの回転が、これら各パワーローラを介して前記出力側ディスクに伝達される。これら各パワーローラは、それぞれトラニオン等の支持部材に回転自在に支持されており、これら各支持部材は、それぞれ前記各ディスクの中心軸に対し捩れの位置にある枢軸を中心とする揺動変位を自在に支持されている。前記各ディスク同士の間の変速比を変える場合は、油圧式のアクチュエータにより前記各支持部材を前記枢軸の軸方向に変位させる。この様なアクチュエータへの圧油の給排は、制御弁により制御すると共に、前記各支持部材の動きをこの制御弁にフィードバックする様に構成している。
【0003】
前記アクチュエータへの圧油の給排に基づき、前記各支持部材を前記枢軸の軸方向に変位させると、前記各パワーローラの周面と前記入力側、出力側各ディスクの側面との転がり接触部(トラクション部)に作用する、接線方向の力の向きが変化(転がり接触部にサイドスリップが発生)する。そして、この力の向きの変化に伴って前記各支持部材が前記枢軸を中心に揺動(傾斜)し、前記各パワーローラの周面と前記入力側、出力側各ディスクの側面との接触位置が変化する。前記各パワーローラの周面を、前記入力側ディスクの側面の径方向外寄り部分と、前記出力側ディスクの側面の径方向内寄り部分とに転がり接触させれば、前記各ディスク同士の間の変速比が増速側になる。これに対して、前記各パワーローラの周面を、前記入力側ディスクの側面の径方向内寄り部分と、前記出力側ディスクの側面の径方向外寄り部分とに転がり接触させれば、前記各ディスク同士の間の変速比が減速側になる。
【0004】
又、上述の様なトロイダル型無段変速機を実際の自動車用自動変速機に組み込む場合、遊星歯車機構等の歯車式の差動ユニットと組み合わせて無段変速装置を構成する事が、従来から提案されている。図1〜2は、本発明の対象となる無段変速装置のブロック図(図1)及び油圧に関する制御回路(図2)を示している。この様な無段変速装置の構造に就いては、基本的には、特許文献3等に記載されて従来から知られているので、簡単に説明する。尚、上記図1中、太矢印は動力の伝達経路を、実線は油圧回路を、破線は電気回路を、それぞれ示している。又、図2に示した油圧制御回路は、前記特許文献3等に記載されたものに比べて簡略化(本発明に直接関係しない部分を一部省略)している。
【0005】
エンジン1の出力は、ダンパ2を介して、入力軸3に入力される。この入力軸3に伝達された動力は、トロイダル型無段変速機4を構成する押圧装置5から入力側ディスク6に伝達され、更に複数のパワーローラ7を介して出力側ディスク8に伝達される。これら各ディスク6、8のうち、入力側ディスク6の回転速度は入力側回転センサ9により、出力側ディスク8の回転速度は出力側回転センサ10により、それぞれ測定して、制御器11に入力し、前記各ディスク6、8間の(トロイダル型無段変速機4の)変速比を算出する。前記押圧装置5は、後述する図2に示す様に、油圧の送り込みに伴ってこの油圧に比例した押圧力を発生させる油圧式のものとしている。
【0006】
又、前記入力軸3に伝達された動力は、直接又は前記トロイダル型無段変速機4を介して、差動ユニットである遊星歯車装置12に伝達される。そして、この遊星歯車装置12の構成部材の差動成分が、クラッチ装置13を介して出力軸14に取り出される。尚、このクラッチ装置13は、後述する図2に示す低速用クラッチ15及び高速用クラッチ16を表すものである。又、図示の例では、出力軸回転センサ17により前記出力軸14の回転速度を検出して、前記入力側回転センサ9及び出力側回転センサ10の故障の有無を判定する為のフェールセーフを可能としている。
【0007】
一方、前記ダンパ2部分から取り出した動力によりオイルポンプ18を駆動し、このオイルポンプ18から吐出した圧油を、前記押圧装置5と、前記パワーローラ7を支持した支持部材であるトラニオンを枢軸(図示省略)の軸方向に変位させるアクチュエータ19(図2参照)の変位量を制御する為の制御弁装置20とに、送り込み自在としている。尚、この制御弁装置20とは、制御弁21と、高速用切換弁22及び低速用切換弁23(図2参照)と、図示しない補正用電磁弁等とを合わせたものである。このうちの制御弁21は、前記アクチュエータ19への油圧の給排を制御するものである。又、このアクチュエータ19に設けた1対の油圧室24a、24b(図2参照)内の油圧を油圧センサ25(実際には図2に示す様に1対の油圧センサ25a、25b)により検出して、その検出信号を、前記制御器11に入力している。
【0008】
前記制御器11は、前記油圧センサ25からの信号(前記両油圧室24a、24b内の油圧の差)に基づいて、前記トロイダル型無段変速機4を通過するトルク(通過トルク、トロイダル型無段変速機の技術分野で周知の、所謂2Ft)を算出する。又、前記制御弁装置20は、ステッピングモータ26と、ライン圧制御用油圧調整弁27と、押圧装置用油圧調整弁28、28aと、前記高速用切換弁22及び低速用切換弁23を切り換える為のモード切換用電磁弁29とにより、その作動状態を切り換えられる。そして、これらステッピングモータ26と、ライン圧制御用油圧調整弁27と、押圧装置用油圧調整弁28と、前記高速用切換弁22及び低速用切換弁23を切り換える為のモード切換用電磁弁29(図2の、低速用、高速用両切換弁22、23)とは、何れも前記制御器11からの制御信号に基づいて切り換えられる。尚、前記ライン圧制御用油圧調整弁27は、油圧源である前記オイルポンプ18から吐出された圧油を、前記押圧装置5を含む複数の油圧機器に供給する油圧系路の供給油圧を調節するものである。又、前記押圧装置用油圧調整弁28、28aは、この油圧系路の途中で前記ライン圧制御用油圧調整弁27よりも前記押圧装置5側(下流側)に設けられて、この押圧装置5の油圧室30内に導入する油圧を調節するものである。従って、この油圧室30内に導入される油圧は、ライン圧制御用油圧調整弁27により調節された、前記油圧系路の上流側部分の油圧以下となる。尚、図示の例では、上流側の押圧装置用油圧調整弁28により、前記押圧装置5部分の他、前記アクチュエータ19部分の油圧も調整し、下流側の押圧力調整弁28aにより、この押圧装置5部分の油圧を独立して調整する様にしている。従って、前記油圧室30内に導入される油圧は、前記上流側の押圧装置用油圧調整弁28により調整された油圧以下となる。
【0009】
又、前記制御器11には、前記各回転センサ9、10、17及び前記油圧センサ25からの信号の他、油温センサ31の検出信号と、ポジションスイッチ32の位置信号と、エンジンコントローラ33の信号等、図1に示した各種センサ、及びスイッチの出力信号を入力している。このうちの油温センサ31は、無段変速装置を納めたケーシング内の潤滑油(トラクションオイル)の温度を検出するものである。又、前記ポジションスイッチ32は、運転席に設けられたシフトレバー(操作レバー)の操作位置(選択位置)を表す信号を発するものである。又、前記制御器11には、アクセルペダルの開度を検出するアクセルセンサ34、ブレーキペダルの踏み込み状況を検出するブレーキセンサ35、手動変速モード状態で選択された変速段を表す信号を出力するパドルシフトセンサ36等の検出信号を入力している。又、前記制御器11は、エンジンコントローラ33にも指令信号を出力する様にしている。
【0010】
そして、この制御器11は、運転状況に応じて、前記ステッピングモータ26により前記制御弁21を切り換えて前記トロイダル型無段変速機4の変速比を調節する他、前記高速用、低速用両切換弁22、23により、前記高速用、低速用両クラッチ16、15の断接を制御する。又、ライン圧制御用油圧調整弁27により前記油圧系路の供給油圧を調節し、前記押圧装置用油圧調整弁28、28aにより前記押圧装置5の油圧室30内に導入する油圧を調節する。このうちの押圧装置用油圧調整弁28、28aは、前記アクチュエータ19に導入する部分の油圧を調整する為の上流側の調整弁28と、前記押圧装置5の油圧室30に導入する油圧のみを調整する為の下流側の調整弁28aとから成る。このうちの上流側の調整弁28のドレンポートから排出された潤滑油は、潤滑油流路41を通じて、前記トロイダル型無段変速機4のトラクション部や各種回転支持部等に供給する様にしている。又、前記潤滑油流路41と、前記オイルポンプ18の吸入口との間に圧力調整弁37を設けて、この潤滑油流路41内の圧力を適正値に維持し、前記トラクション部や各種回転支持部等への潤滑油の供給量を適正値に維持できる様にしている。
【0011】
上述の様な、トロイダル型無段変速機4を組み込んだ無段変速装置の耐久性を確保する為には、前記入力側、出力側各ディスク6、8の軸方向側面と、前記各パワーローラ7の周面との転がり接触部(前記トラクション部)で過大な滑り(グロススリップ)が発生しない様にする必要がある。このグロススリップの発生防止の為には、前記各トラクション部の面圧を確保する必要がある。但し、この面圧を過大にすると、これら各トラクション部の転がり抵抗が増大し、前記無段変速装置の伝達効率が悪化する。この為に、前記押圧装置用油圧調整弁28により、前記オイルポンプ18から吐出されて前記押圧装置5の油圧室30内に導入する油圧を適正値に調整し、前記各トラクション部の面圧を適正値に調節している。但し、前記オイルポンプ18は前記エンジン1により駆動するので、このエンジン1が停止している状態では、前記油圧室30内に導入される油圧はゼロ(0MPa)である。従って、他に押圧手段を設けない限り、前記各トラクション部の面圧もゼロになる。
【0012】
この状態から前記エンジン1を始動すると、前記オイルポンプ18が必要とする圧力及び流量の圧油を吐出する以前に、前記入力側ディスク6が回転し始める。そして、前記各トラクション部で、面圧が不足した状態のまま互いに対向する面同士が相対変位し始めて、前記グロススリップが発生する為、前記トロイダル型無段変速機4の耐久性が損なわれる。この様な状況でのグロススリップの発生を防止する為に従来は、特許文献7に記載されている様に、前記押圧装置5内に、皿ばね等の、大きな弾力を有する予圧ばねを組み込んで、前記油圧室30内の油圧がゼロであっても、前記各トラクション部の面圧を最低限確保できる様にしていた。但し、この場合には、前記押圧装置5が発生する押圧力を、前記予圧ばねの弾力よりも小さくする事ができなくなる。この結果、前記エンジン1を始動した後、通常走行中、特に、比較的低速での定速走行時の如く、前記トロイダル型無段変速機4を通過するトルクが低い状態で、前記押圧装置5が発生する押圧力が過大になる可能性がある。この押圧力が過大になると、前述した様に、伝達効率が悪化し、燃費性能が悪化する等の問題がある。この為、前記予圧ばねを省略若しくは弾力の小さなものにしても、前記エンジンの始動時にグロススリップの発生を抑えられる構造の実現が望まれる。
【0013】
又、前記予圧ばねを省略若しくは弾力の小さなものとした場合には、前記エンジン1の停止時にも、グロススリップが発生する可能性がある。即ち、このエンジン1の停止動作に伴って前記オイルポンプ18が吐出する圧油の量は急激に減少する為、特に対策を施さない場合には、前記油圧室30内の油圧が急激に低下する。そして、前記エンジン1が完全に停止する前に、前記押圧装置5が発生する押圧力が過度に低下すると、前記グロススリップが発生して、前記トロイダル型無段変速機4の耐久性を損なう原因となる。
【0014】
以上に述べた様な、エンジンの始動時、停止時に発生するグロススリップを、弾力の大きな予圧ばねを使用せずに防止する為には、前記エンジン1の始動時には前記押圧装置5の油圧室30内の油圧を素早く立ち上がらせ、停止時にはこの油圧室30内の油圧を徐々に低下させる事が効果がある。但し、従来は、この油圧室30内の油圧をこの様に制御する技術は知られていなかった。
特許文献8〜10には、エンジンとトロイダル型無段変速機との間にクラッチを設け、エンジン始動時にこのクラッチの接続を断ち、始動後、油圧が安定してからこのクラッチを接続する構造が記載されている。この様な従来構造によれば、上述の様な原因による耐久性の低下を防止はできるが、構造が複雑になり、大型化する事が避けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2004−169719号公報
【特許文献2】特開2005−221018号公報
【特許文献3】特開2006−250255号公報
【特許文献4】特開2007−46661号公報
【特許文献5】特開2009−121530号公報
【特許文献6】特開2010−190362号公報
【特許文献7】特開2004−162851号公報
【特許文献8】特開2000−104804号公報
【特許文献9】特開2001−124163号公報
【特許文献10】特開2003−97659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、特に構造を複雑にする事なく小型に構成できて、エンジンの始動時には押圧装置の油圧室内の油圧を素早く立ち上がらせ、停止時にはこの油圧室内の油圧を徐々に低下させる事で、大きな弾力を有する予圧ばねを使用しなくても、エンジンの始動、停止時にトラクション部でグロススリップが発生するのを防止できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のトロイダル型無段変速機及び無段変速装置のうち、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機は、従来から知られているトロイダル型無段変速機と同様に、第一、第二のディスクと、複数のパワーローラと、複数の支持部材と、変速比調節手段と、油圧式の押圧装置と、押圧装置用油圧調整弁とを備え、車両の駆動源であるエンジンの出力を駆動輪に伝達する駆動系の途中に設置された状態で使用される。
前記第一、第二のディスクは、それぞれがトロイド曲面である軸方向側面同士を互いに対向させた状態で、相対回転を可能として互いに同心に配置されている。
又、前記各パワーローラは、前記第一、第二のディスクの軸方向側面同士の間に挟持されてこれら第一、第二のディスク同士の間で動力を伝達するもので、それぞれの周面を部分球面状の凸面としている。
又、前記各支持部材は、前記各パワーローラを回転自在に支持している。
又、前記変速比制御手段は、前記各支持部材を揺動変位させて、前記第一のディスクと前記第二のディスクとの間の変速比を変える。
又、前記押圧装置は、油圧室内への油圧の導入に伴って、前記第一のディスクと前記第二のディスクとを互いに近付く方向に押圧し、前記各ディスクと前記各パワーローラの周面との転がり接触部である各トラクション部の面圧を確保する。
更に、前記押圧装置用油圧調整弁は、油圧源と前記油圧室との間に設けられて、この油圧室内に導入する油圧を調節する。
【0018】
特に、本発明のトロイダル型無段変速機に於いては、前記エンジンを停止状態から始動させる際に、前記押圧装置用油圧調整弁による前記油圧室内に導入する油圧の制御値を最高値とする。
この様な本発明を実施する場合に、具体的には、請求項2に記載した発明の様に、前記エンジンを停止状態から始動させる際を、イグニッションキーをONしてから、このエンジンをスタータモータにより駆動し、このエンジンが点火してセルモータによらずに回転を継続し始めるまでの間とする。
或いは、請求項3に記載した発明の様に、前記油圧源と前記押圧装置用油圧調整弁との間に、この油圧源から吐出された圧油を前記押圧装置を含む複数の油圧機器に供給する油圧系路の供給油圧を調節する為の、ライン圧制御用油圧調整弁を設ける。そして、前記油圧室内に導入する油圧の制御値の最高値を、このライン圧制御用油圧調整弁により調整された、前記供給油圧とする。
【0019】
又、上述の様な本発明を実施する場合に好ましくは、請求項4に記載した発明の様に、前記押圧装置用油圧調整弁を、ソレノイドへの通電状態の切換に伴って流路を開閉し、経過時間に対する通電時間の割合であるデューティ比を変える事により前記油圧室内に導入する油圧を調整する電磁式とする。そして、前記エンジンを停止状態から始動させる際に前記押圧装置用油圧調整弁を、前記デューティ比を調節可能範囲のうちで最も偏った値にする事により、前記油圧室内に導入する油圧の制御値を最高値とする。尚、この最も偏った値とは、前記デューティ比が最大(例えば100%)である場合に前記流路を開放したままとし、前記油圧室内に導入する油圧を最大値にする構造であれば、前記デューティ比の最大値である。これに対して、前記デューティ比が最小(例えば0%)である場合に前記流路を開放したままとし、前記油圧室内に導入する油圧を最大値にする構造であれば、前記デューティ比の最小値である。
又、本発明を実施する場合に好ましくは、請求項5に記載した発明の様に、前記エンジンを停止させる操作を行った状態で、前記押圧装置用油圧調整弁の開度を、前記油圧室内に導入する油圧を、前記各トラクション部の面圧を必要最低限の値に規制する為の開度に調整する。尚、この必要最低限の値に規制する為の開度とは、前記押圧装置用油圧調整弁の開度を最も絞った状態であり、例えば、デューティ比100%で前記流路を開放する場合には、例えば20%程度の値を、デューティ比0%で前記流路を開放する場合には、例えば80%程度の値を、それぞれ言う。
【0020】
更に、請求項6に記載した無段変速装置の発明は、トロイダル型無段変速機と、複数の歯車を組み合わせて成る歯車式の差動ユニットとを備える。このうちの差動ユニットは、前記トロイダル型無段変速機を構成する第一のディスクと共に入力軸により回転駆動される第一の入力部と、同じく第二のディスクに接続される第二の入力部とを有し、これら第一、第二の入力部同士の間の速度差に応じた回転を取り出して出力軸に伝達するものである。
特に、本発明の無段変速装置に於いては、前記トロイダル型無段変速機が、上述した様な、本発明のトロイダル型無段変速機である。
【発明の効果】
【0021】
上述の様に構成する本発明のトロイダル型無段変速機及び無段変速装置によれば、エンジンの始動時には押圧装置の油圧室内の油圧を素早く立ち上がらせる事で、大きな弾力を有する予圧ばねを使用しなくても、エンジンの始動時にトラクション部でグロススリップが発生するのを防止できる。即ち、エンジンを停止状態から始動させる際に、前記押圧装置用油圧調整弁による前記油圧室内に導入する油圧の制御値を最高値にすると、この押圧装置用油圧調整弁を通過する圧油の流量が十分に多くなる。この結果、前記油圧室内の油圧を素早く立ち上がらせる事ができて、前記グロススリップの発生を防止できる。
又、請求項5に記載した発明の様に、前記エンジンを停止させる操作を行った状態で、前記押圧装置用油圧調整弁による前記油圧室内に導入する油圧の制御値を最低限の値とすれば、この押圧装置用油圧調整弁を通過する圧油の流量が絞られる。この結果、前記油圧室内の油圧を徐々に低下させて、エンジンが完全に停止する前に、前記押圧装置が発生する押圧力が過度に低下する事を防止して、前記グロススリップの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の対象となる無段変速装置のブロック図。
【図2】同じく油圧回路図。
【図3】本発明の動作を示すフローチャート。
【図4】エンジン始動時に於ける各部の状態を、(A)は本発明を実施した場合に就いて、(B)は同じく実施しない場合に就いて、それぞれ示す線図。
【図5】エンジン停止時に於ける各部の状態を、(A)は本発明を実施した場合に就いて、(B)は同じく実施しない場合に就いて、それぞれ示す線図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜3により、本発明の実施の形態の1例に就いて説明する。尚、本例の特徴は、エンジン1の始動、停止時に、1対の押圧装置用油圧調整弁28、28aのうちの下流側の調整弁28aの開度を調節する事により、押圧装置5に適切な押圧力を発生させて、入力側、出力側各ディスク6、8の軸方向側面と各パワーローラ7の周面との転がり接触部でグロススリップが発生する事を防止する点にある。その他の部分の構成及び作用に就いては、前述した通りであるから、重複する説明は省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0024】
油圧系路の途中でライン圧制御用油圧調整弁27よりも下流側で、前記押圧装置5の油圧室30に直接繋がる部分に設けられた、前記押圧装置用油圧調整弁28aは、ソレノイド38とリターンスプリング39とによりスプール40を移動させ、流路を高速で開閉する事により、前記押圧装置5の油圧室30内に導入する油圧を調節する、デューティ比制御式の電磁弁である。前記ソレノイド38への通電時間の割合(デューティ比)が大きい(100%に近い)程、前記押圧装置用油圧調整弁28aを通過して前記油圧室30内に送り込まれる圧油の量を多くし、この油圧室30内の油圧を高くできる。逆に、前記デューティ比が小さい(0%に近い)程、前記押圧装置用油圧調整弁28aを通過する圧油の量を少なく抑え、前記油圧室30内の油圧を低くする。
【0025】
本例の場合には、前記エンジン1の始動時に前記押圧装置用油圧調整弁28aのデューティ比を100%とし、同じく停止時に20%とする事で、前記エンジン1の始動、停止時に各トラクション部でグロススリップが発生する事を防止する様にしている。以下、この点に就いて図3のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0026】
本発明の制御を行う場合、先ず、ステップ1で、イグニッションスイッチ(IGKEY)がONされているか否かを判定する。ONされている場合には、ステップ2に移り、前記エンジン1が運転状態、即ち、点火状態で、スタータモータによらずに自力で回転しているか否かを判定する。この判定は、例えば入力側回転センサ9の検出信号により、或いはエンジンコントローラ33からの信号により、前記エンジン1がアイドリング回転(Idle回転)以上であるか否かにより判定する。前記エンジン1が運転状態である(エンジン回転数≧Idle回転)と判定された場合には、ステップ3に移り、通常の制御を行う。即ち、前記エンジン1の運転状態や自動車の走行状態、アクセルペダルやブレーキペダルの踏み込み状態等に応じて、前記ライン圧制御用油圧調整弁27及び前記押圧装置用油圧調整弁28、28aを制御し、前記油圧室30内等に適切な油圧を導入する。
【0027】
一方、前記ステップ2で、前記エンジン1が自力で回転していない(エンジン回転数<Idle回転)と判定した場合には、ステップ4に移り、本例の特徴の一つである、始動時に前記押圧装置5の押圧力を迅速に高める為の制御を行う。この為に本例の場合には、前記押圧装置用油圧調整弁28aのソレノイド38に通電し続け(デューティ比を100%とし)、この押圧装置用油圧調整弁28aを通過する圧油の流量を確保する。この結果、前記油圧室30内の油圧を素早く立ち上がらせて、前記押圧装置5が発生する押圧力を、短時間の間に十分に上昇させる事ができ、前記各トラクション部でのグロススリップの発生を防止できる。
【0028】
又、前記ステップ1で、イグニッションスイッチがONされていない(OFFである)と判定した場合には、ステップ5に移り、前記エンジン1が完全に停止している(ENG=0min-1である)か否かを判定する。このステップ5で、エンジン1が完全には停止していない(ENG≠0min-1である)と判定した場合には、ステップ6に移り、前記押圧装置用油圧調整弁28aの開度を、前記油圧室30内に導入する油圧を、前記各トラクション部の面圧を必要最低限の値に規制する為の開度(例えばデューティ比20%)に調整する。
【0029】
イグニッションスイッチがOFFであるが、エンジン1が完全には停止していない状態とは、このエンジン1の停止動作中であるから、前記オイルポンプ18が吐出する圧油の量は急激に減少する。この状態で、前記押圧装置用油圧調整弁28aの開度が大きい(圧油が流通可能な量が多い)と、前記油圧室30内の油圧が早期に(前記エンジン1により回転駆動される前記入力側ディスク6が完全に停止する以前に)低下して、前記各トラクション部でグロススリップが発生する。これに対して本例の場合には、前記ステップ6で、前記押圧装置用油圧調整弁28aの開度を小さくする為、前記油圧室30内の油圧の低下が緩徐になり、前記入力側ディスク6が完全に停止する以前に前記押圧装置5の押圧力が過度に低下する事がなくなり、前記各トラクション部でグロススリップが発生する事を防止して、前記トロイダル型無段変速機4の耐久性確保を図れる。
尚、前記ステップ5で、前記エンジン1が完全に停止していると判定された場合には、前記ステップ4に移り、前記押圧装置用油圧調整弁28aの開度を大きく(デューティを100%に)しておく。この結果、次のエンジン始動時に、前記油圧室30内の油圧を迅速に上昇させる事ができる。
【実施例1】
【0030】
本発明の効果を確認する為に行った、コンピュータによるシミュレーションの結果に就いて、図4〜5により説明する。
先ず、本発明により、エンジンを始動する際に、各トラクション部でグロススリップが発生するのを防止できる事を確認する為に行ったシミュレーションの結果に就いて、図4により説明する。
【0031】
図4は、エンジン1を始動する際に於ける、入力側ディスク6の回転速度(太い実線a)と、出力側ディスク8の回転速度(細い実線b)と、前記エンジン1の出力トルク(太い破線c)と、ライン圧制御用油圧調整弁27及び元の押圧装置用油圧調整弁28により調節された(押圧装置5の直前の押圧装置用油圧調整弁28aの上流側部分の)油圧(細い破線d)と、この押圧装置5の直前の押圧装置用油圧調整弁28aにより調節された(この押圧装置用油圧調整弁28aの下流側部分の)油圧(細い鎖線e)との関係を示している。図4の横軸は経過時間(秒)を、縦軸は回転速度(min-1、左軸)又は油圧(MPa、右軸)を、それぞれ表している。又、図4のうちの(A)は本発明の制御を行った場合を、(B)は本発明の制御を行わなかった場合を、それぞれ示している。尚、前記エンジンの始動開始時に、前記ライン圧制御用油圧調整弁27及び前記押圧装置用油圧調整弁28aの調節圧(目標圧)は、何れも0.5MPaとした。
【0032】
又、図4の(A)に対応する、本発明の制御を行った場合に関しては、前記押圧装置用油圧調整弁28aを全開(デューティ比100%)とした。これに対して、図4の(B)に対応する、本発明の制御を行わない、従前の技術に関しては、前記押圧装置用油圧調整弁28aの開度(デューティ比)を20%とした。尚、前記ライン圧制御用油圧調整弁27の目標圧「0.5MPa」を実現する為のデューティ比は、オイルポンプ18の吐出圧力によって変わるが、例えば20%程度で実現できる。又、前記押圧装置5では、圧油が消費される事はないので、押圧装置用油圧調整弁28aの目標圧「0.5MPa」は、エンジンが起動した後の定常運転の状態であれば、デューティ比を20%とする事で十分に実現できる。
【0033】
この様な条件で行ったシミュレーションの結果を示す、図4の(A)(B)の鎖線eを比較すれば明らかな通り、本発明によれば、前記エンジン1の始動時には前記押圧装置5の油圧室30内の油圧を素早く立ち上がらせる事ができる。即ち、前記ライン圧調節用油圧調整弁27による油圧系路の調節圧は、スタータモータの起動後、極く短時間(0.3秒程度)で0.3MPa程度にまで上昇した。そして、本発明を実施した場合には、図4の(A)に示す様に、前記油圧系路部分の油圧上昇に合わせて、前記押圧装置用油圧調整弁28aの下流側(前記油圧室30内)の油圧も、ほぼ同じタイミングで、0.3MPa程度にまで上昇した。この油圧室30内の油圧が0.3MPa程度あれば、エンジンの始動時に前記入力側ディスク6と前記出力側ディスク8との間で伝達される程度のトルクでは、前記各トラクション部でグロススリップが発生する事はない。
【0034】
一方、本発明を実施しない場合には、図4の(B)に示す様に、前記ライン圧調節用油圧調整弁27による油圧系路の調節圧は、本発明を実施した場合と同様に、スタータモータの起動後、極く短時間で0.3MPa程度にまで上昇した。但し、前記押圧装置用油圧調整弁28aの下流側の油圧の上昇は遅く、前記油圧系路の調節圧を0.7MPa程度にまで上昇させたにも拘らず、スタータモータの起動後、0.3MPa程度にまで上昇するのに、2.5秒程度要した。特に、このスタータモータによる前記エンジン1の駆動中(エンジンクランキング中)に、このエンジン1が点火してから1秒程度経過する時点まで、前記油圧室30内の油圧が0.1MPa以下に留まった。この油圧室30内の油圧がこの程度に留まると、エンジンの始動時に前記入力側ディスク6と前記出力側ディスク8との間で伝達される程度のトルクであっても、前記各トラクション部でグロススリップが発生する可能性がある。
以上、図4の(A)(B)にその結果を示したシミュレーションから明らかな通り、本発明により、エンジンを始動する際に、各トラクション部でグロススリップが発生するのを防止できる。
【0035】
次に、本発明により、エンジンを停止する際に、各トラクション部でグロススリップが発生するのを防止できる事を確認する為に行ったシミュレーションの結果に就いて、図5により説明する。この図5中の曲線a〜e、横軸並びに縦軸の意味は、図4と同じである。又、図5の(A)が本発明を実施した場合を、(B)が実施しなかった場合を、それぞれ示している。実験条件は、前記エンジンの定常運転中の前記ライン圧制御用油圧調整弁27の調節圧(目標圧)を0.5MPaとし、本発明を実施する場合には、イグニッションキーをOFFした後の状態での前記押圧装置用油圧調整弁28aのデューティ比を20%とし、同じく実施しない状態でのデューティ比を100%(全開)とした。
【0036】
この様な条件で行ったシミュレーションの結果を表した図5から、イグニッションキーをOFFする事で、短時間(0.7秒程度)経過後に、前記ライン圧調節用油圧調整弁27の下流側の油圧は、何れの場合も急速に低下し、エンジンが停止する前後に0〜0.1MPaになる事が分かる。但し、本発明を実施して、前記押圧装置用油圧調整弁28のデューティ比を小さく抑えた場合には、図5(A)の鎖線eから明らかな様に、この押圧装置用油圧調整弁28aの絞り効果(前記油圧室30から圧油が排出される事を抑える効果)により、前記エンジン1が停止した瞬間にも、この油圧室30内の油圧が0.3MPa程度残る事が分かる。この油圧が0.3MPa程度あれば、エンジンの停止動作時に前記入力側ディスク6と前記出力側ディスク8との間で伝達される程度のトルクでは、前記各トラクション部でグロススリップが発生する事はない。
【0037】
一方、本発明を実施せず、前記押圧装置用油圧調整弁28を全開とした場合には、図5の(B)の鎖線eに示す様に、油圧室30内の油圧が前記ライン圧調節用油圧調整弁27の下流側の油圧とほぼ同期して低下し、前記エンジン1が停止した瞬間に前記油圧室30内の油圧は、0.15MPa程度しか残らない事が分かる。この油圧が0.15MPa程度に迄低下すると、エンジンの停止動作時に前記入力側ディスク6と前記出力側ディスク8との間で伝達される程度のトルクであっても、前記各トラクション部でグロススリップが発生する可能性がある。
【0038】
以上、図5の(A)(B)にその結果を示したシミュレーションから明らかな通り、本発明により、エンジンを停止する際にも、各トラクション部でグロススリップが発生するのを防止できる。
但し、エンジンの停止動作時には、始動時とは異なり、前記各トラクション部に潤沢な潤滑油(トラクションオイル)が存在する。従って、前記押圧装置5による押圧力が多少不足し、前記各トラクション部で軽いグロススリップが発生しても、これら各トラクション部を構成する各面が損傷する程度は軽微であるか、殆ど無視できる場合もある。従って、必要に応じて、エンジンの停止時に前記押圧装置用油圧調整弁28aを全開として、前記油圧室30内の油圧を迅速に低下させても良い。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、トロイダル型無断変速機であれば、ハーフトロイダル型に限らず、フルトロイダル型でも実施できる。又、変速比調節手段に関しても、従来から知られている各種構造を採用できる。又、押圧装置用油圧調整弁に関しても、スプールに対するソレノイドとリターンスプリングとの設置位置を逆とし、デューティ比0%で全開となり、同じく100%で全閉となる構造を採用する事もできる。更には、流路面積を高速で変更できるものであれば、デューティ比制御式のものに限らずに使用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 エンジン
2 ダンパ
3 入力軸
4 トロイダル型無段変速機
5 押圧装置
6 入力側ディスク
7 パワーローラ
8 出力側ディスク
9 入力側回転センサ
10 出力側回転センサ
11 制御器
12 遊星歯車装置
13 クラッチ装置
14 出力軸
15 低速用クラッチ
16 高速用クラッチ
17 出力軸回転センサ
18 オイルポンプ
19 アクチュエータ
20 制御弁装置
21 制御弁
22 高速用切換弁
23 低速用切換弁
24a、24b 油圧室
25、25a、25b 油圧センサ
26 ステッピングモータ
27 ライン圧制御用油圧調整弁
28、28a 押圧装置用油圧調整弁
29 モード切換用電磁弁
30 油圧室
31 油温センサ
32 ポジションスイッチ
33 エンジンコントローラ
34 アクセルセンサ
35 ブレーキセンサ
36 パドルシフトセンサ
37 圧力調整弁
38 ソレノイド
39 リターンスプリング
40 スプール
41 潤滑油流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれがトロイド曲面である軸方向側面同士を互いに対向させた状態で、相対回転を可能として互いに同心に配置された第一、第二のディスクと、これら第一、第二のディスクの軸方向側面同士の間に挟持されてこれら第一、第二のディスク同士の間で動力を伝達する、それぞれの周面を部分球面状の凸面とした複数のパワーローラと、これら各パワーローラを回転自在に支持した複数の支持部材と、これら各支持部材を揺動変位させて前記第一のディスクと前記第二のディスクとの間の変速比を変える変速比調節手段と、油圧室内への油圧の導入に伴って前記第一のディスクと前記第二のディスクとを互いに近付く方向に押圧し、前記各ディスクと前記各パワーローラの周面との転がり接触部である各トラクション部の面圧を確保する油圧式の押圧装置と、油圧源と前記油圧室との間に設けられて前記油圧室内に導入する油圧を調節する、押圧装置用油圧調整弁とを備え、車両の駆動源であるエンジンの出力を駆動輪に伝達する駆動系の途中に設置された状態で使用されるトロイダル型無段変速機に於いて、前記エンジンを停止状態から始動させる際に、前記押圧装置用油圧調整弁による前記油圧室内に導入する油圧の制御値を最高値とする事を特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項2】
前記エンジンを停止状態から始動させる際とは、イグニッションキーをONしてから、このエンジンをスタータモータにより駆動し、このエンジンが点火してセルモータによらずに回転を継続し始めるまでの間である、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機。
【請求項3】
前記油圧源と前記押圧装置用油圧調整弁との間に、この油圧源から吐出された圧油を前記押圧装置を含む複数の油圧機器に供給する油圧系路の供給油圧を調節する為の、ライン圧制御用油圧調整弁が設けられており、前記油圧室内に導入する油圧の制御値の最高値は、このライン圧制御用油圧調整弁により調整された、前記供給油圧である、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載したトロイダル型無段変速機。
【請求項4】
前記押圧装置用油圧調整弁が、ソレノイドへの通電状態の切換に伴って流路を開閉し、経過時間に対する通電時間の割合であるデューティ比を変える事により前記油圧室内に導入する油圧を調整する電磁式であり、前記エンジンを停止状態から始動させる際に前記押圧装置用油圧調整弁が、前記デューティ比を調節可能範囲のうちで最も偏った値にする事により、前記油圧室内に導入する油圧の制御値を最高値とする、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載したトロイダル型無段変速機。
【請求項5】
前記エンジンを停止させる操作を行った状態で、前記押圧装置用油圧調整弁の開度を、前記油圧室内に導入する油圧を、前記各トラクション部の面圧を必要最低限の値に規制する為の開度に調整する、請求項1〜4のうちの何れか1項に記載したトロイダル型無段変速機。
【請求項6】
トロイダル型無段変速機と、複数の歯車を組み合わせて成る歯車式の差動ユニットとを備え、このうちの差動ユニットは、前記トロイダル型無段変速機を構成する第一のディスクと共に入力軸により回転駆動される第一の入力部と、同じく第二のディスクに接続される第二の入力部とを有し、これら第一、第二の入力部同士の間の速度差に応じた回転を取り出して出力軸に伝達するものである無段変速装置に於いて、前記トロイダル型無段変速機が、請求項1〜5のうちの何れか1項に記載したトロイダル型無段変速機である事を特徴とする無段変速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−167790(P2012−167790A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31255(P2011−31255)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】