説明

トンネルデータ処理システムおよびトンネルデータ処理方法

【課題】 GPSが利用できないトンネル内において、距離メータなどの機械的計測により得た入力データに対してGPSや距離メータ等に起因する誤差を正確に補正する。
【解決手段】 走行する車両に搭載された距離メータやジャイロ装置などの位置検知手段210により測定した原座標系の位置データと、車両に搭載された壁面検知手段120により位置データと同期させた原座標系のトンネル内面点群データをデータ入力部120を介して入力する。入口被検知板310に関するGPSでの計測データと既知の位置データの差分からGPSの誤差を補正し、出口被検知板320に関する距離メータの計測データと既知の位置データの差分からトンネル内で距離メータの誤差により蓄積したトンネル内計測誤差の総計を算出し、キロポスト上の任意の点に対してはトンネル内計測誤差を按分して補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー等を用いた非接触式のトンネル内空面データ検知手段を用いて計測した測定対象となるトンネル等の構造物の内空面のデータを基に測定対象となるトンネル等の内空面データを生成するトンネルデータ処理システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル等の構造物は頑丈なコンクリートで形成されており、極めて安定した構造物であるが、大きな圧力がかかっている上、地震の影響や、車両走行による影響や、雨雪に晒されるなど厳しい環境に設置されているために経年変化を起こすおそれがある。そのため、トンネル構造物のメンテナンスにおいて、トンネル等の構造物の内空面データを定期的または随時に測定し、トンネルの内空面の歪みの蓄積などを把握する必要がある。
【0003】
従来、大きなコンクリート構造物壁面の歪みなどを検出する技術として、超音波やレーザー光を利用して非接触式にて計測箇所からトンネル内空面までの距離を精密に測定する方法が知られており、コンクリート構造物壁面に超音波やレーザー光を発射し、反射してくる音波や光を受ける時間差や波長の位相差から距離を算出する。
【0004】
例えば、超音波距離計を用いた測定方法がある(特許文献1)。コンクリート構造物に対して超音波距離計から超音波を発振して検出ポイントを加振し、構造物から離れた地点でレーザードップラー振動計を用いて検出ポイントの振動を検出することによりコンクリート構造物の表面の凹凸を計測する。
【0005】
また、例えば、レーザー距離計を用いた測定方法がある(特許文献2)。レーザー距離計から変調したレーザー光を測定対象物に照射し、測定対象物で反射して変調レーザー光と自己混合を起こした鋸歯状波を受光し、鋸歯状波の周波数から測定対象物までの距離を計測する。
【0006】
上記の超音波距離計やレーザー距離計を用いた測定では、コンクリート構造物の壁面の凹凸を計測することができるが、道路やトンネルなど長い距離にまたがる構造物のデータ測定を行う場合は、測定地点を移動しつつ超音波距離計やレーザー距離計を用いた測定を繰り返して行かなければならない。測定地点を移動する場合、測定地点がどこであるか正確に把握しなければならない。近年、GPSシステム(グロバール測位システム)が発達しており、GPSシステムを用いて測定地点を正確に把握するものが知られている。現在導入されているGPSシステムと連動した計測システムは、測定地点の建物などの画像を撮影し、測定地点の緯度経度の絶対座標値と当該画像データとを関連付けるものであり、道路形状計測やトンネルの内空面形状計測に用いるものではない。
【0007】
【特許文献1】特開平8−248006号公報
【特許文献2】特開平10−246782号公報
【特許文献3】特開2009−121945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のGPSシステムと連動した計測システムを用いてトンネル内の内空面形状などを計測する場合、以下の問題がある。
【0009】
まず、走行する車両に搭載した超音波距離計やレーザー距離計を用いてトンネル内空面の凹凸を計測するにあたり、トンネルという特殊環境ゆえにGPSシステムにより測定位置を特定することができないという問題がある。トンネルという長い構造物を計測する場合、走行する車両に計測システムを搭載して走行させながら超音波距離計やレーザー距離計を用いてトンネル等のコンクリート構造物の壁面の凹凸を計測することが好ましいところ、測定地点を移動しつつ測定を繰り返して行かなければならないので測定地点がどこであるか正確に把握しなければならない。しかし、GPSシステムを用いて測定位置を特定する場合、トンネル内部ではGPSが使用できないため、測定地点の緯度経度の絶対座標データが得られないという問題がある。つまり、トンネル内部において内空面形状をある地点で計測しても、測定位置を特定することができないため、それがどの地点であったかを特定することが難しい。結局トンネル内の内空面のデータを正確に計測することは難しくなってしまう。
【0010】
次に、走行する車両に搭載した超音波距離計やレーザー距離計を用いて、断面が半円でいわゆるドーム型という独特の断面形状であるトンネル内空面を如何に測定するかという問題がある。トンネルは直線状のトンネルもあれば、緩やかにカーブしているトンネルもある。トンネルを走行する車両はトンネル内の道路、つまり、トンネルの中心軸に沿って走行するが、測定すべきトンネル内空面は車両の左側から天井を通り車両の右側まで180度、また、車両の右側から路面を通り車両の左側までの180度の合計360度ある。走行する車両は1カ所に留まらずほぼ一定の速度で進行するため、走行する車両に搭載した計測装置を用いて360度にわたってトンネル内を走行しながら内空面を効果的に計測する方法をしっかりと確立しておかなければ正しいトンネル内空面計測データを得ることはできない。
【0011】
次に、トンネル内空面の歪みや劣化を把握するためには、計測結果に基づいて作成したトンネル内空面データにおいて凹凸が把握できるだけでなく、所定期間を経過した後に計測して作成したトンネル内空面データとの比較において、同じ測定個所のデータが正確に比較できないと経年劣化が把握できないという問題がある。トンネル内空面の経年劣化は数年単位の長期間インターバルを経て計測する場合もあるため、今回計測して得たデータが前回計測して得たデータと正確に突き合わすことができなければならない。つまり、如何にトンネル内空面データを任意のキロポストにて正規化されたデータとして獲得し、それらを比較評価するかということが問題となってくる。
【0012】
上記問題点に鑑み、本発明は、GPSシステムが利用できないトンネル内において、トンネル内の測定位置を正確に特定することができるトンネルデータ処理システムを提供することを目的とする。
また、上記問題点に鑑み、本発明は、トンネルという独特の形状が直線状にまたは湾曲しつつ続くトンネル内空面を効果的に測定することができるトンネルデータ処理システムを提供することを目的とする。
また、上記問題点に鑑み、本発明は、計測して得たトンネルデータを正規化し、数年単位の長期間インターバルを経て別に計測して得たトンネルデータ同士を任意のキロポスト上の点において正確に突き合わすことができるトンネルデータ処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明にかかるトンネルデータ処理システムは、走行する車両に搭載された位置検知手段により測定した原座標系の位置データと、前記車両に搭載されたトンネル内空面検知手段により前記位置データと同期させて円弧状に測定した原座標系のトンネル内空面点群データとを基にデータ処理を行うシステムにおいて、測定対象トンネルの入口付近および出口付近に設置された車両走行方向に対向する平面を備えた入口被検知板および出口被検知板を利用して、前記車両に搭載した前記位置検知手段と前記トンネル内空面検知手段を用いて測定された、前記入口被検知板の計測位置データ、前記測定対象トンネル内空面の前記トンネル内空面点群データ、前記出口被検知板の計測位置データと、別途、正確に既知なデータとして得られている前記入口被検知板の既知位置データと前記出口検知板の既知位置データとを入力するデータ入力部と、前記入口被検知板に関する前記計測位置データと前記既知位置データの差分を前記測定対象トンネルでの計測開始時点で既に含まれているオフセット誤差として、前記トンネル内空面点群データ全体を一律に補正する計測開始オフセット誤差補正手段と、前記出口被検知板に関する前記計測位置データと前記既知位置データの差分を前記測定対象トンネル内での計測中に蓄積して行ったトンネル内計測誤差として、前記トンネル内空面点群データを個々に按分補正するトンネル内計測誤差補正手段とを備えたものである。
【0014】
ここで、前記入口被検知板が測定対象トンネルの外で入口坑口の直前部に設置されたものであり、前記出口被検知板が前記測定対象トンネルの外で出口坑口の直後部に設置されたものであり、前記入口被検知板の前記位置検知手段がGPSシステムおよび距離メータおよびジャイロ装置であり、前記測定対象トンネル内空面および前記出口被検知板に対する前記位置検知手段が距離メータおよびジャイロ装置とすることが好ましい。
入口被検知板はGPSシステムにより位置情報を得るので、トンネル外部に設けることが好ましい。
【0015】
なお、上記の構成のうち、前記計測開始オフセット誤差補正手段による前記オフセット誤差の一律補正と前記トンネル内計測誤差補正手段によるトンネル内計測誤差の按分補正とがなされた前記トンネル内空面点群データに対する処理を行う手段として、前記トンネル内空面検知手段の計測周期ごとに円弧データ群として分割し、前記車両進行方向に沿って最初の円弧データ群から順にソートする円弧データ群生成処理手段と、各々の前記円弧データ群における円弧中心点を求め、前記車両の進行方向に沿って最初の円弧中心点から順次ソートする円弧中心点群生成処理手段と、前記円弧中心点群を順次接続して得られる線分群をトンネル近似中心線とするトンネル近似中心線生成処理手段と、前記トンネル近似中心線を前記トンネルの入口方向および出口方向に延長し、前記入口被検知板の前記既知位置データより特定される前記トンネル入口坑口の既知位置をキロポストの始点とし、前記トンネル近似中心線に沿って線分の長さを積算し、前記トンネル内の距離指標であるキロポストを制定するキロポスト生成処理手段とを備えたものである。
【0016】
次に、計測装置を搭載した車両のトンネル内での走行軌跡や走行速度は一定ではなく、計測ごとに微妙に異なるため、レーザーが照射されて反射してくる計測ポイントは毎回ばらつきがある。例えば、断面が半円形のトンネルであれば、トンネルの中心点からトンネル内空面を計測するとアーク上の正しい点で計測できるが、走行軌跡はトンネルの中心から左右にずれている場合、そのばらつきに起因して円弧データ群の計測ポイントがばらつく。つまり円弧データ群内にばらつきがある。
【0017】
そのばらつきを補正するため、上記構成のトンネルデータ処理システムにおいて、前記円弧中心点群生成処理手段が、前記円弧データ群内のデータを用いて、仮に定めた中心点から所定角度(例えば1度ピッチ)ごとに計測された距離を描くことで得られる半円形の軌跡であるトンネル内空面断面形状において幾何学的に正しい中心点を定める中心点算出処理手段と、前記トンネル内空面の正しい中心点から正確に所定角度のピッチで幾何学的に半円形のトンネル内空面と交わる点を計算する正規化計測点算出処理手段と、前記正規化計測点における計測値を、前記実測された計測点における前記計測値を基にした補間処理などで推定する円弧データ群内正規化処理手段を備えたことを特徴とする。
【0018】
また、同様に、主に走行速度のばらつきに起因してトンネル進行方向に計測地点(実測地点)はばらついている。つまり、円弧データ群間においてばらつきが存在する。
そのばらつきを補正するため、トンネル進行方向上の正しいピッチの距離ごとに設けた計測地点(正規化計測地点)における計測値を、実際に計測された前後の実測地点から補間により算出することで正規化することとし、前記円弧中心点群生成処理手段が、前記測定対象トンネルの進行方向に沿って、前記円弧データ群のデータを実測した計測地点ごとに並べる処理手段と、正確に所定の距離ピッチに設けた正規化計測地点を算出する正規化計測地点算出処理手段と、実測された前記円弧データ群のデータを基に正規化計測地点で計測した場合に得られたであろう円弧データ群を推定する円弧データ群間正規化処理手段を備えたことを特徴とする。
【0019】
上記のように、トンネル中心点からの左右のずれに起因する計測データのばらつきや、走行速度のずれに起因する計測データのばらつきを、トンネル中心点でかつ所定ピッチの間隔で設けられた正規化計測地点で計測したデータに正規化することにより、ばらつきの発生を防止することができる。
【0020】
また、上記の構成のうち、前記キロポスト上での任意の点の指定と、前記任意の点からの任意の距離区間の指定を受け付ける指定手段と、前記指定手段を介して指定された前記任意の点を座標原点とし、前記任意の距離区間に属する前記円弧データ群を抽出する、円弧データ群抽出処理手段と、前記円弧データ群抽出処理手段で抽出された前記円弧データ群をコンピュータ3次元描画空間に配置し、各々の前記円弧データ間の隙間の空間を線形補間し、前記コンピュータ3次元描画空間に前記測定対象トンネル内空面の3次元画像を描画せしめる指定区間トンネル内空面画像描画処理手段を備えたものとする。
【0021】
上記構成のトンネルデータ処理システムで生成したトンネルデータを用いて、経年劣化を調べることが可能となる。例えば、前記データ入力部から入力された各々のデータセットとして、或る時期に計測されたデータセットと、他の時期に計測されたデータセットがあり、前記或る時期に計測されたデータセットから描画される前記指定区間の前記測定対象トンネル内空面の3次元画像と、前記他の時期に計測されたデータセット描画される同一の前記指定区間の前記測定対象トンネル内空面の3次元画像とを比較し、両者において差分がある箇所とその量を計算する経年比較処理手段を備えた構成とすれば、その差分を表示することにより、経年劣化などにより形状が変化した箇所とその変化量を把握することが可能となる。
【0022】
また、上記構成のトンネルデータ処理システムにおいて、入力されたデータにおいて欠損している場合がある。走行車両に搭載したレーザー距離計などを用いて計測するため、例えばケーブル類や装置類などの障害物があったりするとデータが得られない場合がある。そこで、前記円弧データ群生成処理手段において、生成した各円弧に属するデータの個数が、前記トンネル内空面検知手段の計測周期内から得られるべきデータ個数より少なく、データが一部欠損しているものにつき、前記データ列の並びの中から欠損箇所を特定し、当該欠損箇所に隣接するデータから補間することにより欠損しているデータを推定・補間する欠損データ補間処理を行う欠損データ補間処理手段を備えた構成とすることが好ましい。
【0023】
次に、本発明のトンネルデータ処理方法は、走行する車両に搭載された位置検知手段により測定した原座標系の位置データと、前記車両に搭載されたトンネル内空面検知手段により前記位置データと同期させて円弧状に測定した原座標系のトンネル内空面点群データとを基にデータ処理方法であって、測定対象トンネルの入口付近および出口付近に設置された車両走行方向に対向する平面を備えた入口被検知板および出口被検知板を利用して、前記車両に搭載した前記位置検知手段と前記トンネル内空面検知手段を用いて測定された、前記入口被検知板の計測位置データ、前記測定対象トンネル内空面の前記トンネル内空面点群データ、前記出口被検知板の計測位置データと、別途、正確に既知なデータとして得られている前記入口被検知板の既知位置データと前記出口検知板の既知位置データとを入力するデータ入力処理と、前記入口被検知板に関する前記計測位置データと前記既知位置データの差分を前記測定対象トンネルでの計測開始時点で既に含まれているオフセット誤差として、前記トンネル内空面点群データ全体を一律に補正する計測開始オフセット誤差補正処理と、前記出口被検知板に関する前記計測位置データと前記既知位置データの差分を前記測定対象トンネル内での計測中に蓄積して行ったトンネル内計測誤差として、前記トンネル内空面点群データを個々に按分補正するトンネル内計測誤差補正処理とを備えたものである。
【0024】
なお、上記方法において、前記計測開始オフセット誤差補正処理における前記オフセット誤差の一律補正と前記トンネル内計測誤差補正処理におけるトンネル内計測誤差の按分補正とがなされた前記トンネル内空面点群データに対する処理として、前記トンネル内空面検知手段の計測周期ごとに円弧データ群として分割し、前記車両進行方向に沿って最初の円弧データ群から順にソートする円弧データ群生成処理と、各々の前記円弧データ群における円弧中心点を求め、前記車両の進行方向に沿って最初の円弧中心点から順次ソートする円弧中心点群生成処理と、前記円弧中心点群を順次接続して得られる線分群をトンネル近似中心線とするトンネル近似中心線生成処理と、前記トンネル近似中心線を前記トンネルの入口方向および出口方向に延長し、前記入口被検知板の前記既知位置データより特定される前記トンネル入口坑口の既知位置をキロポストの始点とし、前記トンネル近似中心線に沿って線分の長さを積算し、前記トンネル内の距離指標であるキロポストを制定するキロポスト生成処理を備えた方法とする。
【0025】
また、上記方法において、さらに、前記キロポスト上での任意の点の指定と、前記任意の点からの任意の距離区間の指定を受け付ける指定受付処理と、前記指定受付処理において指定された前記任意の点を座標原点とし、前記任意の距離区間に属する前記円弧データ群を抽出する、円弧データ群抽出処理と、前記円弧データ群抽出処理で抽出された前記円弧データ群をコンピュータ3次元描画空間に配置し、各々の前記円弧データ間の隙間の空間を線形補間し、前記コンピュータ3次元描画空間に前記測定対象トンネル内空面の3次元画像を描画せしめる指定区間トンネル内空面画像描画処理を備えた方法とすることが好ましい。
【0026】
ここで、経年劣化を調べる方法としては、前記データ入力処理において入力された各々のデータセットとして、或る時期に計測されたデータセットと、他の時期に計測されたデータセットがあれば、前記或る時期に計測されたデータセットから描画される前記指定区間の前記測定対象トンネル内空面の3次元画像と、前記他の時期に計測されたデータセット描画される同一の前記指定区間の前記測定対象トンネル内空面の3次元画像とを比較し、両者において差分がある箇所とその量を計算する経年比較処理を行うことにより経年劣化を調べることができる。
【0027】
また、入力されたデータにおいて欠損がある場合、前記円弧データ群生成処理において、生成した各円弧に属するデータの個数が、前記トンネル内空面検知手段の計測周期内から得られるべきデータ個数より少なく、データが一部欠損しているものにつき、前記データ列の並びの中から欠損箇所を特定し、当該欠損箇所に隣接するデータから補間することにより欠損しているデータを推定・補間する欠損データ補間処理を行うことにより補間を行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のトンネルデータ生成処理システムによれば、GPSシステムが機能するトンネル外ではGPSシステムで計測された位置データ、GPSシステムが機能しないトンネル内においては走行する車両に搭載された距離メータとジャイロ装置などで計測した位置データを得たうえ、入口被検知板に関する計測位置データとあらかじめ既知の位置データの差分を利用することにより、GPSシステムに起因するトンネル入口の計測開始時点で既に含まれている誤差をオフセット誤差としてトンネル内空面点群データ全体を一律に補正することができ、また、出口被検知板に関する計測位置データと既知の位置データの差分を利用することにより、トンネル内での計測中に蓄積して行った距離メータなどに起因する誤差をトンネル内計測誤差としてトンネル内空面点群データを個々に按分補正することができ、正確なトンネル内の測定データとして正規化することができる。GPSシステムや距離メータなどに起因する誤差は、計測する回数ごとに異なり、例えば、同じトンネルであっても、最初の計測で得られたトンネル内空面点群データと、次の計測で得られたトンネル内空面点群データは異なる数値として得られるが、上記の補正による正規化によって、計測ごとに異なる誤差が補正され、キロポスト上で指定された任意の点において、正確に各回の計測データを比較して、経年変化などを捉えることができる。
【0029】
次に、計測装置を搭載した車両のトンネル内での走行軌跡や走行速度は一定ではなく、計測ごとに微妙に異なるため、レーザーが照射されて反射してくる計測ポイントは毎回ばらつきがあるが、実測された円弧データ群によりトンネル内空面を一旦形成し、その上で、幾何学的に中心点から正確に1度ずつのピッチで計測した場合の計測点(正規化計測点)をそれぞれ算出し、それら正規化計測点における計測値も、実測された円弧データ群により形成したトンネル内空面から算出することで推定することができ、計測データを正規化することができる。
また、同様に、主に走行速度のばらつきに起因してトンネル進行方向の計測地点(実測地点)にはばらつきがあるが、トンネル進行方向に正しいピッチの距離ごとに設けた計測地点(正規化計測地点)における計測値を、実際に計測された前後の実測地点から補間により算出することで正規化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照しつつ、本発明のトンネルデータ処理システムの実施例を説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施例に示した具体的な用途、形状、個数などには限定されないことは言うまでもない。
なお、以下の各実施例の構成において、 “入口側”に設けられている構成として説明したものが“出口側”に設けられていても構わず、入口側の構成と出口側の構成が相互に入れ替わって逆になっても構わない。
【実施例1】
【0031】
実施例1にかかる本発明のトンネルデータ処理システムの例を示す。
図1は実施例1にかかるトンネルデータ処理システム100のブロック図および入力データの計測方法を簡単に説明する図である。
図2は、計測時における測定対象トンネル300、入口被検知板310、出口被検知板320の設置状態を分かりやすく模式的に示した図である。
図3は、本発明のトンネルデータ処理システム100に対して入力される種々の位置データを示した図である。
【0032】
まず、本発明のトンネルデータ処理システム100に対してデータ入力部120を介して入力される入力データの計測方法について説明しておく。
図1に示すように、トンネルデータ処理システム100に入力される入力データの取得は、車両200に搭載された位置検知手段210およびトンネル内空面検知手段220の計測により行われる。
【0033】
位置検知手段210は、車両200に搭載され、計測位置(車両の位置)を検知する手段である。一般的に、道路の路面状態の調査はトンネルを含む道路網に対して行われ、トンネルの外ではGPSシステムを用いた計測が前提となっているため、位置データは基本的にはGPSシステムの計測がベースとなっている。そこで、トンネル内に入るまでのアプローチ部分はトンネル外でのGPSシステムを用いた位置計測となり、引き続いてGPS信号が受信できないトンネル内においてはGPSシステムに代わり位置計測ができる装置、例えば、走行距離を検知する距離メータと方向の変化を検知するジャイロ装置との組み合わせなどを用いる。つまり、ここでは、位置検知手段210として、GPSシステム、距離メータ、ジャイロ装置の3つの装置を搭載しているものとする。ジャイロ装置を用いる目的は、トンネルには起伏やカーブがあるためトンネル内を走行する車両の位置は3次元的に移動しうるためこの3次元的な移動を捉えるべく距離メータに加えてジャイロ装置を組み合わせて用いる。車両200の移動距離については車両200に設けた距離メータにより計測でき、ジャイロ装置の計測データと距離メータの計測データを用いることで車両200の3次元空間内での位置データを計測することができる。もっとも、将来において、トンネル坑内など電波の届かない場所にもGPSシステムが機能するような技術革新があればGPSシステムが利用できることを排除するものではない。
【0034】
なお、位置検知手段210の検知精度であるが、トンネルという比較的大きな構造物を対象として計測するが、後述するように正規化して、過去のデータと照らし合わせて経年劣化を調べる用途を想定しているため、ある程度正確に対比できるよう、5mm程度の精度があるものが好ましいが、計測精度は限定されるものではない。
【0035】
トンネル内空面検知手段220は、車両200に搭載され、非接触式でトンネル内空面の凹凸データを収集できる装置である。本発明はトンネル内空面の凹凸の計測を行うので、トンネル内において客観的に内空面の凹凸が検知できる装置であれば特に装置は限定されない。例えば、レーザー距離計、超音波距離計などがある。
【0036】
トンネル内空面検知手段220の走査方式であるが、車両200が走行しながらデータ収集を行うため、例えば、前方斜め方向に対して扇状に走査しつつその反射波を測定するいわゆる“レーダー走査方式”が好ましい。図2に示すように、走行する車両200と、各々の走行位置においてトンネル内空面検知手段220から発射されてレーダー走査線が内空面に当たり反射して受信される。
【0037】
トンネル内空面の検知は360度にわたり計測する必要がある。そこで、図2の例では、車両200の左側から天井を通り車両200の右側まで180度と、車両200の右側から路面を通り車両200の左側までに戻る180度の合計360度にわたってレーザーを照射し、その反射波を受信して距離を計測して表面の凹凸を検知するものとなっている。
図2に示すように、車両200が走行するにつれ、斜め前方に形成される扇状のレーザー走査線も合わせて前方に移動する。
【0038】
トンネル内空面検知手段220は、トンネル内空面の計測にあたり、位置検知手段により得られる位置データと同期させて円弧状に測定してゆく。位置データと同期させることにより測定すべき内空面が延々と連続したトンネルのような構造物のデータ処理が可能となる。
【0039】
なお、位置検知手段210およびトンネル内空面検知手段220は走行する車両200に搭載されたまま計測を行うので、実際には、トンネル300内の車両の走行軌跡、走行速度がかならずしも一定ではないため、計測値にはいわゆる歪みが混入してしまうこととなる。本発明のトンネルデータ処理システム100は、この車両の走行軌跡のずれや走行速度のばらつきなどに起因する計測値に混入する歪みを、後述するように計測値を正規化することにより取り除くことができ、同じトンネルを別の時期に測ったデータ同士でも正しく対比照合することができる。
【0040】
次に、入口被検知板310、出口被検知板320について説明する。
図2の例において、入口被検知板310はトンネル入口にかかる直前に設置され、車両走行方向に対向する平面、例えば、略垂直に設けられた平面を持つ看板や立て板のようなものである。大きさや形状は少なくとも平面と認識できる大きさと形状があれば良いが、後述するように扇状のレーダー走査線で容易に捉えられ、他の円弧状の点群データと同じように取扱いやすいように、図2の例ではアーチ状の平面板となっている。
【0041】
また、図2の例において、出口被検知板320はトンネル出口の直後に設置され、車両走行方向に対向する平面、例えば、略垂直に設けられた平面を持つ看板や立て板のようなものである。出口被検知板320も同様、大きさや形状は少なくとも平面と認識できる大きさと形状があれば良いが、扇状のレーダー走査線で容易に捉えられ、他の円弧状の点群データと同じように取扱いやすいように、図2の例ではアーチ状の平面板となっている。
【0042】
ここで、入口被検知板310は、トンネル外でのGPSシステムによる位置計測と、トンネル内での距離メータとジャイロ装置による位置計測の境界となるため、入口被検知板310の位置計測データは、GPSシステムによる計測結果と、距離メータおよびジャイロ装置による計測結果の2つの計測結果が得られる。また、別途、あらかじめ、入口被検知板310の位置は既知の値として正確な位置データが与えられている。例えば、従来の三角点を用いた測量により精密に正確な緯度経度の絶対位置データが与えられているものとする。なお、その設置位置が事前の測量等により既知であれば、入口被検知板310も出口被検知板320もトンネル坑内に設置されていても良いが、少なくとも入口被検知板310はGPSシステム誤差の補正に用いるためGPSシステムによる位置計測結果が必要であるので、トンネル外部に設けられる必要がある。
【0043】
上記したように、入口被検知板310の位置データとしては、GPSシステムによる計測データと、距離メータとジャイロ装置による計測データと、あらかじめ既知の正確な位置データの3つの位置データが取得され、GPSシステム誤差に起因する計測開始時点のオフセット誤差の一律補正に用いられることとなる。
【0044】
また、出口被検知板320の位置データとしては、距離メータとジャイロ装置による計測データと、あらかじめ既知の正確な位置データの2つの位置データが取得され、距離メータとジャイロ装置の誤差に起因するトンネル内の計測において蓄積してゆくトンネル内計測誤差の按分補正に用いられることとなる。
【0045】
図3は、本発明のトンネルデータ処理システム100に対して入力される種々の位置データを示したものである。図3の例では、トンネル内空面点群データは7500個ある例として説明されている。図3に示すように、計測して用意する位置データとしては、GPSシステムにより取得された入口被検知板310の位置データ、距離メータとジャイロ装置により取得されたトンネル内の任意の点における位置データ、距離メータとジャイロ装置により取得された出口被検知板320の位置データがある。本発明のトンネルデータ処理システム100はこれら位置データをデータ入力部120を介して入力し、後述するような種々のデータ処理を実行する。
なお、この実施例では、あらかじめ計測しておいた位置データをデータ入力部120を介して入力し、本発明のトンネルデータ処理システム100によりバッチ処理を行うシステムとして説明するが、トンネルデータ処理システム100を車両搭載型としてトンネル内での計測データをその場で受け取ってリアルタイム処理するタイプでも良い。
【0046】
図3に示すように、入口被検知板310に対するGPSシステムの計測結果は、[x’(0),y’(0),z’(0)]として表現され、トンネル内の任意の点(i)(任意のキロポスト上の任意の点(i))における距離メータおよびジャイロ装置による計測結果は、[x”(i),y”(i),z”(i)]として表現され、出口被検知板320に対する距離メータおよびジャイロ装置による計測結果は[x”(7500),y”(7500),z”(7500)]として表現される。また、入口被検知板310の正確な既知の位置データは[x(0),y(0),z(0)]と表現され、出口被検知板320の正確な既知の位置データは[x(7500),y(7500),z(7500)]と表現される。それぞれの座標系はxyzの絶対座標系となっている。
【0047】
本発明のトンネルデータ処理システム100は、これらの計測データに含まれるGPSシステム誤差の補正と、距離メータやジャイロ装置の計測に含まれる誤差の補正を考察して、データの正規化を試みる。
本発明のトンネルデータ処理システム100の補正処理について図面を参照しつつ説明する。トンネルデータ処理システム100は、計測開始オフセット誤差補正手段101、トンネル内計測誤差補正手段102、データ入力部120を備えている。
【0048】
まず、入口被検知板310の位置データを用いてGPSシステム誤差の補正を説明する。
図3に示すように、入口被検知板310に対するGPSシステムの計測結果は、[x’(0),y’(0),z’(0)]であり、入口被検知板310の正確な既知の位置データは[x(0),y(0),z(0)]であるので、GPSシステムに起因する誤差として、以下の(数1)で計算される誤差[△x(0),△y(0),△z(0)]がある。
【0049】
[x’(0),y’(0),z’(0)]−[x(0),y(0),z(0)]
=[△x(0),△y(0),△z(0)] ‥‥(1)
【0050】
この誤差[△x(0),△y(0),△z(0)]は、トンネル内空面の計測開始時点で含まれている誤差であり、いわば、計測時点におけるオフセット誤差である。トンネル坑内に入ってから引き続き距離メータとジャイロ装置による位置計測に切り替わった後は、GPSシステムにより計測された入口被検知板の位置データを基準(ゼロ)としてキロポストの概念で引き継がれるので、計測開始時点で生じているオフセット誤差は、その後の距離メータおよびジャイロ装置による計測結果[x”(7500),y”(7500),z”(7500)]に一律に混入している。そこで、計測開始オフセット誤差補正手段101は、後述する(数4)に示すように、GPSシステム誤差[△x(0),△y(0),△z(0)]をオフセット誤差として一律に差し引いて補正する。
【0051】
次に、出口被検知板320の位置データを用いて距離メータとジャイロ装置に起因するトンネル内計測誤差の補正を説明する。
距離メータには種々のタイプがあるが、例えば、車両のタコメータのように車軸の回転に連動してメータがカウントアップして行くもの等がある。ジャイロ装置にも種々のタイプがあるが、やはり機械的な誤差が生じ得る。この距離メータやジャイロ装置に起因する誤差はトンネル内の特定の場所で集中的に発生するものではなく、距離に比例して一様に蓄積されてゆくものと考えるのが適切である。トンネル内の任意の点(i)(任意のキロポスト上の任意の点(i))における距離メータおよびジャイロ装置による計測結果は[x”(i),y”(i),z”(i)]で表現されるが、この中にはトンネル全体で蓄積する誤差から距離に比例して按分される分の誤差が混入していると推定される。今、距離メータおよびジャイロ装置で計測された出口被検知板320に対する位置データは[x”(7500),y”(7500),z”(7500)]であり、出口被検知板320の正確な既知の位置データは[x(7500),y(7500),z(7500)]であるので、図3に示すように、(数2)で示す差分は、距離メータおよびジャイロ装置に起因する誤差がトンネル内の計測において蓄積した誤差の総計と考えることができる。
【0052】
[x”(7500),y”(7500),z”(7500)]−[x(7500),y(7500),z(7500)]
=[△x(7500),△y(7500),△z(7500)] ‥‥(2)
【0053】
つまり、7500個あるトンネル内空面点群データ一つあたりの誤差は、[△x(7500),△y(7500),△z(7500)]/7500であるので、トンネル内計測誤差補正手段102は、キロポスト上の任意の点(i)に対して按分した(数3)に相当する誤差補正を行う。
【0054】
[△x(7500),△y(7500),△z(7500)]*i/7500 ‥‥(3)
【0055】
結局、キロポスト上の任意の点(i)における正確な位置データ[x(i),y(i),z(i)]は、図3に示すように、GPSシステム誤差のオフセット一律補正と、距離メータとジャイロ装置のトンネル内計測誤差の按分補正とを反映した(数4)で表される。
【0056】
[x(i),y(i),z(i)]=[x”(i),y”(i),z”(i)]−[△x(0),△y(0),△z(0)]−[△x(7500),△y(7500),△z(7500)]*i/7500 ‥‥(4)
【0057】
トンネルデータ処理システム100の他の各制御機能について図面を参照しつつ、各々の処理の様子を説明する。
トンネルデータ処理システム100は、上記した計測開始オフセット誤差補正手段101、トンネル内計測誤差補正手段102、データ入力部120に加え、円弧データ群生成処理手段103、データ正規化手段104、円弧中心点群生成処理手段105、欠損データ補間処理手段106、近似中心線生成処理手段107、キロポスト生成処理手段108、トンネル内空面画像描画処理手段109、比較処理手段110を備えている。
【0058】
円弧データ群生成処理手段103は、計測開始オフセット誤差補正手段101によるオフセット誤差の一律補正と、トンネル内計測誤差補正手段102によるトンネル内計測誤差の按分補正とがなされたトンネル内空面点群データを受け取り、トンネル内空面検知手段220の計測周期Tごとに円弧データ群として分割し、車両200の進行方向に沿って最初の円弧データ群から順にソート・整理するものである。これらのデータはトンネル表面を輪切りにした形となっている。このため天井面および床面(路面)はいずれも輪切り毎にデータをまとめることができる。1つの円弧データ群のデータ数は、特に限定されないが、以下の説明では、例えば、天井面は180点、路面も180点のデータからなるものとする。この円弧データ群はその形状から「アーク」と呼ぶことができる。また、トンネル内空面点群データを計測周期Tごとに円弧データ群として分割することを「アーク分割」と呼ぶことができる。
【0059】
なお、実際のトンネルでレーザー距離計などのトンネル内空面検知手段で計測すると、トンネルの天井面と床面の境界付近などはデータが不規則な場合もあり、そのような天井面と床面の境界付近のデータは除外しても良い。
【0060】
円弧データ群生成処理手段103による処理の結果、円弧データ群は、計測周期T、車両速度Vとすると、図4に示すように測定対象トンネル300内に一定間隔VTの間隔を持った円弧データ群となっている。実際のトンネルは必ずしも直線のトンネルばかりではなく、長距離トンネルになると途中で道が緩やかにカーブしているトンネルが多い。
【0061】
円弧データ群の個数はトンネルの長さによるが、ここの説明では、例えば、天井面は7500個、床面も7500個あったものとする。また、この他に、入口被検知板310により得られた点群データより生成された円弧データ群1個と、出口被検知板320により得られた点群データより生成された円弧データ群1個が得られている。なお、入口被検知板310の円弧データと出口被検知板320の円弧データは、トンネル内空面検知出段220の計測結果から最初に検知された滑らかな平板状のものと最後に検出された滑らかな平板状のものとなる。
【0062】
これらの円弧データ群は平面的に展開して順々に並べて行くことにより、行列の形に並べて表現できる。つまり、i番目の円弧データ群に含まれるj番目の点をノードnijとれば、nijは、nij:(xij,yij,zij)のように表現できる。この例では、天井面、床面とも、i=1〜7500、j=1〜180である。
また、入口被検知板310により得られた円弧データ群をnENT、出口被検知板320により得られた円弧データ群をnEXITとする。
【0063】
この天井面や路面の円弧データ群を平面上に展開してトンネルの進行方向順に並べた行列はそれぞれ模式的に図5のように示すことができる。図5は一例として天井面の円弧データ群を平面上に行列形式に展開した図である。
ここで、上述したように、一つ一つの円弧データ群は、走行する車両200に搭載した位置検知手段210およびトンネル内空面検知手段220により計測を行った結果であるので、トンネル300内の車両の走行軌跡、走行速度がかならずしも一定ではないことから、計測値にはいわゆる歪みが混入している。断面が半円形のトンネル壁面を計測する場合、車両がトンネルの中心線に沿って一定の速度で走行することが理想的であるが、実際の計測では、走行レーンを通過することが想定される。走行レーンはトンネルの中心線から左右のどちらかにずれていることがほとんどである。また、走行中の運転の揺らぎにより走行軌跡は微妙に左右に蛇行してしまうものである。そのため、中心線からずれることによりトンネル内空面の計測値にはいわゆる歪みが混入している。例えば図5の例では、行列において左側の列の間隔が密になっており、右側の列の間隔が粗くなっており、粗密が見られる。
【0064】
また、走行速度もできるだけ一定にすべく努力しても走行速度の揺らぎにより走行速度は微妙に変化してしまうものである。そのため、走行速度の揺らぎにより位置計測データにはいわゆる歪みが混入している。図5の例では、行列において始めの付近の行は間隔が密になっており、最後の付近の行は間隔が粗くなっており、粗密が見られる。
本発明のトンネルデータ処理システム100は、この車両の走行軌跡のずれや走行速度のばらつきなどに起因する計測値に混入する歪みをデータ正規化手段104による計測値の正規化によって取り除く。
【0065】
まず、車両の走行軌跡のずれに起因するばらつきの正規化について述べる。ここでは、円弧データ群内のばらつきを正規化する処理を、“円弧データ群内正規化処理”と呼ぶ。データ正規化手段104は、一つの円弧データ群に属するデータを仮に定めた中心点から所定角度(例えば1度ピッチ)ごとに計測された距離に壁面を描いてゆき、一旦、実測点からトンネル内空面を形成すると半円形の軌跡が得られる。ここで、データ正規化手段104は、半円形の軌跡から幾何学的に半円形の正しい中心点を容易に定めることができる。
【0066】
次に、データ正規化手段104は、半円形のトンネル内空面の正しい中心点から正確に1度ずつのピッチで幾何学的に半円形のトンネル内空面と交わる点を計算してゆき、180個の点を計算する。それらの点は実測された計測点ではなく、幾何学的に特定した正規化計測点となる。データ正規化手段104は、それぞれの正規化計測点における計測値を、実測された計測点における計測値を基にした補間処理などで推定する。このように、データ正規化手段104は、正規化計測点における正規化データを得ることができる。以上の “円弧データ群内正規化処理”により円弧データ群内のばらつきを正規化する。
【0067】
次に、車両の走行速度のずれに起因するばらつきの正規化について述べる。ここでは、円弧データ群のピッチ間のばらつきを正規化する処理を、“円弧データ群間正規化処理”と呼ぶ。データ正規化手段104は、トンネル進行方向に沿って実測した計測地点を並べて行く。車両の走行速度のずれに起因して計測地点の距離間隔には粗密があるが、データ正規化手段104は、車両が理想的な一定速度で走行した場合に計測地点となる正規化計測地点を算出する。つまり、所定の均等間隔をもった正規化計測地点を算出する。
【0068】
次に、データ正規化手段104は、正規化計測地点で計測した場合に得られたであろう円弧データ群を推定する。例えば、各々の正規化計測地点に隣接する実測した計測地点の円弧データ群からの按分補正により円弧データ群の各計測値を推定する。以上の “円弧データ群間正規化処理”により円弧データ群のピッチ間のばらつきを正規化する。
【0069】
このように、データ正規化手段104は、車両の走行軌跡のずれに起因するばらつきの正規化、車両の走行速度のずれに起因するばらつきの正規化を行い、トンネル内空面の正確な中心点かつ走行距離上の所定の均等間隔離れた計測地点(正規化計測地点)から所定角度のピッチ(例えば1度ずつ)の正規化計測点における計測値を得ることができる。
【0070】
図6は、図5のようにばらつきがある実測の計測データをデータ正規化手段104により正規化した結果を模式的に示した図である。図6に示すように、正規化された円弧データ群内のデータの並びは行方向に均等間隔に並び、列方向にも均等間隔に並んだものとなっている。
【0071】
次に、入力部120を介して入力された計測データにおいて一部に欠損が見られる場合の補間処理についての述べておく。上記のように、円弧データごとに分割された行列は7500行180列あるべきところ、実際にトンネル内空面検知手段220で計測されたデータには所々に欠損が見られ、所定数のデータが揃っていない場合もあり得る。例えば、内空面にケーブル類の障害物があったり、トンネル内空面検知手段220のレーザー光による反射が正常に受信できなかったりなど多様な原因があり得る。円弧データ中に欠損データがある場合、円弧データ中のどこに欠損があったかは分からない。このような場合、欠損データ補間処理手段106により以下のデータ補間処理を行う。
【0072】
図7(a)に示すように本来180個ある円弧データに1ヶ所のデータ欠損がある場合、計測データは179個の円弧データとなっている。ここで、欠損データ補間処理手段106は円弧データ群の前後に隣接する円弧データと各々のデータ同士の距離を計算する。各々のデータは原座標で得られているので距離の計算は可能である。図7(b)に示すように、最後の180番目のデータが欠損していると仮定した場合、実際に欠損しているデータより以降のデータは一つずつずれた形で対応づけられるため、距離計算が斜めになり、距離が大きく計算される。そこで、欠損データ補間処理手段106は、データが欠損している箇所を179番目、178番目と順次移動して距離計算を繰り返して行くと、図7(c)に示すように、実際にデータが欠損しているnij番目のデータが欠損していると仮定した場合の距離がもっとも小さいものとして計算される。このように、欠損データ補間処理手段106はデータが欠損した箇所を特定することができる。欠損データ補間処理手段106は、データ欠損箇所が特定できれば、欠損した箇所のデータを自己が属する円弧データや隣接する円弧データなどの周囲のデータから補間する。
【0073】
次に、円弧中心点群生成処理105は、円弧データ群生成処理手段103が分割してソートした各々の円弧データ群における円弧中心点を求め、車両の進行方向に沿って最初の円弧中心点から順次ソート・整理するものである。
【0074】
円弧中心点群生成処理手段105が円弧中心点を求める処理は、特に限定されないが、原座標系の各々の円弧データ群において天井面のデータであれば1番目のデータ(ni1)と180番目のデータ(ni180)の平均をとれば円弧中心点が得られる。
【0075】
近似中心線生成処理手段107は、円弧中心点群生成処理手段105が求めた円弧中心点群を順次接続して得られる線分群を生成する部分であり、その線分群をトンネル近似中心線と呼ぶ。図8は、図5に示した行列形式で並べた各々の円弧データ群から円弧中心点を特定し、それらを結んでトンネル中心線を描いた様子を示す図である。z座標も加味するので、当然トンネル中心線は3次元的なものとなる。図9は、図4に示した測定対象トンネル300におけるトンネル中心線を模式的に示す図である。
【0076】
ここで、入口被検知板310により得られた円弧データ群nENTから特定された円弧中心点nENT*、出口被検知板320により得られた円弧データ群nEXITから特定された円弧中心点nEXIT*が含まれている。
なお、上記は天井面の円弧データ群からトンネル中心線を描いたが、路面データ群からも同様にトンネル中心線を描くことができる。
【0077】
キロポスト生成処理手段108は、トンネル近似中心線において、最初の円弧中心点をトンネル坑口原点としてトンネル近似中心線に沿って線分の長さを積算し、トンネル内の近似距離であるキロポストを制定するものである。
【0078】
トンネル内の位置は通常キロポストで表現される。キロポストの定義はトンネルの入口の中心点k1*を起点として所定間隔ごとにキロポスト単位が設けられ、トンネル中心線を軸として定められる。つまり、キロポストは、本来はトンネル入口の中心点k1*から定義される。しかし、現時点では、上記の円弧中心点群生成処理手段105により決定された中心点のうち最も先頭の中心点n1*は、トンネルの入口の中心点k1*ではなく、トンネル内空面検知手段220によりトンネル内で最初に走査された地点となっている。
【0079】
この段階ではまだトンネル入口坑口の中心点k1*が定まっていないので、ソートされた中心点群のうち最初の円弧中心点n1*を“近似キロポスト原点”とし、所定のキロポスト間隔で“近似キロポスト単位”を定めるのである。なお、キロポスト及び近似キロポストの所定間隔は特に限定されないが、例えば、1mや10mとすることができる。
図10(a)から図10(b)は、円弧中心点群から模式的に近似キロポスト単位を定めた様子を模式的に示した図である。
【0080】
次に、先頭の中心点n1*を基とした近似キロポスト単位k1'*、k2'*、k3'*・・・を導入した後、トンネルの入口の中心点k1*を基としたキロポスト単位k1*、k2*、k3*・・・を算出する。
キロポスト生成処理手段108は、入口被検知板310、出口被検知板320の既知の座標データを用いて、“近似キロポスト単位”から“キロポスト単位”への変換を行う。入口被検知板310の位置はトンネル入口からどのぐらいの位置に設けられているか既知である。例えば、入口被検知板310の位置はトンネル入口から(△k・x(0),△k・y(0),△k・z(0))の位置であったとする。この場合、トンネルの入口の中心点k1*は(数5)のように計算できる。
【0081】
[x(k1),y(k1),z(k1)]
=[x(1),y(1),z(1)]−[△k・x(0),△k・y(0),△k・z(0)] ‥‥(5)
【0082】
つまり、任意の位置[x(i),y(i),z(i)]も正しいキロポスト上の任意の点としては(数6)のように補正される。
【0083】
[x(ki),y(ki),z(ki)]
=[x(i),y(i),z(i)]−[△k・x(0),△k・y(0),△k・z(0)] ‥‥(6)
【0084】
トンネルデータ処理システム100を用いれば、上記の補正処理を行うことにより、“キロポスト座標系”において正確に正規化されたデータが得られることとなる。“キロポスト座標系”はもともとトンネル坑内において施設運用者が定めるキロポスト単位を軸とする座標系であるが、キロポスト上の任意の点を指定すれば、正確にトンネル内のある点を特定することができる。しかしそれは、キロポストが正確にトンネル坑口入口をキロポスト原点とし、位置データ中に機器に依存する計測誤差が混入しない正規化されたものでなければならない。正規化されていないと、他の時期に計測したデータと突き合わせをしても正確には比較ができないおそれがある。上記の補正処理を行うことにより各回の計測結果においてキロポスト座標系で正しく位置を特定することができる。
【0085】
トンネル内空面画像描画処理手段109は、上記の種々のデータ処理を経たトンネルデータを基に、トンネル内空面画像を描画する部分である。トンネルデータはこの例では天井面も床面も180×7500の行列となっているが、現在のパソコンのリソースでは3次元表示などの演算処理能力の点で支障が生じる可能性がある。
【0086】
そこで、トンネル内空面画像描画処理手段109は、オペレータが描画を指示したキロポストの所定区間に属するデータサブセットを抽出して、トンネルデータを所定区間ごとに生成する。つまり、キロポスト座標系において、例えば、10mや20mなど指定した区間(キロポストセクション)ごとに分割してコンパクトな部分集合を取り上げてトンネル内空面データを表示する。
【0087】
例えば、任意の点iにおいて、行列で75列分の区間が指定されたとすると、当該区間に属する180×75の位置データと画像データが得られているので、それらをプロットしてゆくとあたかも180×75のグリッドからなるトンネル内空面状のワイヤーフレームが描画される。ここでは一つの行を結ぶラインが“アーク”であり、一つの列を結ぶラインが“リンク”と呼ぶ。
【0088】
トンネル内空面画像描画処理手段109は、このワイヤーフレームの間の画像も線形補間することにより画像データを生成し、トンネル内空面を3次元画像として描画する。
図11は、あるキロポストセクションを取り出してトンネル内空面データをグラフィック表示した例である。図12は図11のグラフィック表示内容を説明する図である。図11、図12において、(a)はトンネル内空面データのグラフィックス表示、(b)はトンネル路面データのグラフィックス表示となっている。図12に示すように、この表示例ではトンネル中心線が中央付近で横方向にとられている。(a)のトンネル内空面データのグラフィックス表示において、四角く表示されているものは照明灯、横方向に走っている線はケーブルが写り込んだものである。(b)のトンネル路面データのグラフィックス表示において、横方向に走っている線は車のいわゆる“轍”である。目視すると“轍”は分からないが、トンネル内空面検知手段で凹凸データを取得して画像として表示してみるとトンネル路面にこのような“轍”があることが分かる。
【0089】
なお、一つのアークに存する180個のそれぞれの走査点と、他のアークにおいて対応するべき走査点同士が、必ずしもトンネル内の同じ角度や同じ高さの点とは限らないので、一つのアークデータにおいて中心点から1度ずつの角度にて180個の点を定点として決め、それぞれのアークデータにおいてそれぞれ180個の定点における画像データを計算すれば、すべてのリンクはトンネルの中心線に平行な線となり、整理された升目を持つワイヤーフレームを得ることができる。このように整理された升目であれば、升目に対して隣接するグリッドの画像データから線形補間することにより、精度良い画像を推定することが可能となる。
【0090】
以上のような処理を経て、各回ごとに計測したトンネル内空面データを蓄積しておき、必要に応じて、同じキロポストセクションのトンネル内空面データ同士を比較することにより、経年変化などトンネル内空面の変化が分かる。
【0091】
比較処理手段110は、データ入力部120から入力された、或る時期に計測されたデータセットと、他の時期に計測されたデータセットを基に、或る時期に計測されたデータセットから描画される指定区間の測定対象トンネル内空面の3次元画像と、他の時期に計測されたデータセット描画される同一の指定区間の測定対象トンネル内空面の3次元画像とを比較し、両者において差分がある箇所とその量を計算する部分である。
【0092】
本発明のトンネルデータ処理システム100では、キロポスト上の任意の点を指定すると、トンネルデータが正規化されているので、トンネル内の同じ点が特定でき、その点および所定区間に渡るデータを抽出して比較することが可能となる。
同じ点について、或る時期の描画結果と、他の時期の描画結果を比較して、差分がある部分について色を変えるなどオペレータに分かりやすいように表示したり、差分を数値化して表示することも可能である。
例えば、図13は、或る時期の描画結果と、他の時期の描画結果を比較して、差分がある部分について色を変えて表示する例を簡単に示した図である。図13(a)はトンネル内空面データのグラフィックス表示画像上に変位箇所を着色した例、図13(b)はトンネル路面データのグラフィックス表示画像上に変位箇所を着色した例である。この例では、図13(a)に示すように、トンネル内空面データにおいて表示画面中央付近に略楕円状に経年劣化でへこんだ箇所があり、図13(b)に示すように、トンネル路面データにおいても表示画面左上と表示画面右下の2カ所に略四角形に経年劣化でへこんだ箇所がみられることが分かる。
【0093】
以上、本発明の好ましい実施形態を図示して説明してきたが、トンネルデータ処理システムに向けて広く適用することができる。
本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。従って本発明の技術的範囲は添付された特許請求の範囲の記載によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】実施例1にかかるトンネルデータ処理システム100のブロック図および入力データの計測方法を簡単に説明する図
【図2】計測時における測定対象トンネル300、入口被検知板310、出口被検知板320の設置状態を分かりやすく模式的に示した図
【図3】本発明のトンネルデータ処理システム100に対して入力される種々の位置データを示した図
【図4】トンネル内における円弧データ点群を模式的に示した図
【図5】天井面の円弧データ群の行列データを模式的に示した図
【図6】実測の計測データをデータ正規化手段104により正規化した結果を模式的に示した図
【図7】円弧データに1ヶ所のデータ欠損がある場合における欠損データの補間の原理を説明する図
【図8】行列形式で並べた各々の天井面の円弧データ群から円弧中心点を特定し、それらを結んでトンネル中心線を描いた様子を示す図
【図9】図4に示した測定対象トンネル300におけるトンネル中心線を模式的に示す図
【図10】(a)は円弧中心点群から近似キロポスト単位を定めた様子を模式的に示した図、(b)は近似キロポスト単位をキロポスト単位に変換した様子を模式的に示した図
【図11】あるキロポストセクションを取り出してトンネル内空面データをグラフィック表示した例を示す図
【図12】あるキロポストセクションを取り出してトンネル内空面データをグラフィック表示内容を説明する図
【図13】或る時期の描画結果と、他の時期の描画結果を比較して、差分がある部分について色を変えて表示する例を簡単に示した図
【符号の説明】
【0095】
100 トンネルデータ処理システム
101 計測開始オフセット誤差補正手段
102 トンネル内計測誤差補正手段
103 円弧データ群生成処理手段
105 円弧中心点群生成処理手段
106 欠損データ補間処理手段
107 近似中心線生成処理手段
108 キロポスト生成処理手段
109 トンネル内空面画像描画手段
110 比較処理手段
120 データ入力部
200 車両
210 位置検知手段
220 トンネル内空面検知手段
300 測定対象トンネル
310 入口被検知板
320 出口被検知板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する車両に搭載された位置検知手段により測定した原座標系の位置データと、前記車両に搭載されたトンネル内空面検知手段により前記位置データと同期させて円弧状に測定した原座標系のトンネル内空面点群データとを基にデータ処理を行うシステムにおいて、
測定対象トンネルの入口付近および出口付近に設置された車両走行方向に対向する平面を備えた入口被検知板および出口被検知板を利用して、前記車両に搭載した前記位置検知手段と前記トンネル内空面検知手段を用いて測定された、前記入口被検知板の計測位置データ、前記測定対象トンネル内空面の前記トンネル内空面点群データ、前記出口被検知板の計測位置データと、別途、正確に既知なデータとして得られている前記入口被検知板の既知位置データと前記出口検知板の既知位置データとを入力するデータ入力部と、
前記入口被検知板に関する前記計測位置データと前記既知位置データの差分を前記測定対象トンネルでの計測開始時点で既に含まれているオフセット誤差として、前記トンネル内空面点群データ全体を一律に補正する計測開始オフセット誤差補正手段と、
前記出口被検知板に関する前記計測位置データと前記既知位置データの差分を前記測定対象トンネル内での計測中に蓄積して行ったトンネル内計測誤差として、前記トンネル内空面点群データを個々に按分補正するトンネル内計測誤差補正手段とを備えたトンネルデータ処理システム。
【請求項2】
前記入口被検知板が測定対象トンネルの外で入口坑口の直前部に設置されたものであり、前記出口被検知板が前記測定対象トンネルの外で出口坑口の直後部に設置されたものである請求項1に記載のトンネルデータ処理システム。
【請求項3】
前記位置検知手段が、前記入口被検知板に対するものがGPSシステムであり、前記測定対象トンネル内空面および前記出口被検知板に対するものが前記車両走行距離をカウントする距離メータおよび前記車両の移動を検知するジャイロ装置である請求項1または2に記載のトンネルデータ処理システム。
【請求項4】
前記計測開始オフセット誤差補正手段による前記オフセット誤差の一律補正と前記トンネル内計測誤差補正手段によるトンネル内計測誤差の按分補正とがなされた前記トンネル内空面点群データに対する処理を行う手段として、
前記トンネル内空面検知手段の計測周期ごとに円弧データ群として分割し、前記車両進行方向に沿って最初の円弧データ群から順にソートする円弧データ群生成処理手段と、
各々の前記円弧データ群における円弧中心点を求め、前記車両の進行方向に沿って最初の円弧中心点から順次ソートする円弧中心点群生成処理手段と、
前記円弧中心点群を順次接続して得られる線分群をトンネル近似中心線とするトンネル近似中心線生成処理手段と、
前記トンネル近似中心線を前記トンネルの入口方向および出口方向に延長し、前記入口被検知板の前記既知位置データより特定される前記トンネル入口坑口の既知位置をキロポストの始点とし、前記トンネル近似中心線に沿って線分の長さを積算し、前記トンネル内の距離指標であるキロポストを制定するキロポスト生成処理手段とを備えたものである請求項1から3のいずれか1項に記載のトンネルデータ処理システム。
【請求項5】
前記円弧中心点群生成処理手段が、前記円弧データ群内のデータを用いて、仮に定めた中心点から所定角度ごとに計測された距離を描くことで得られる半円形の軌跡であるトンネル内空面断面形状において幾何学的に正しい中心点を定める中心点算出処理手段と、前記トンネル内空面の正しい中心点から正確に所定角度のピッチで幾何学的に半円形のトンネル内空面と交わる点を計算する正規化計測点算出処理手段と、前記正規化計測点における計測値を、前記実測された計測点における前記計測値を基にした補間処理などで推定する円弧データ群内正規化処理手段を備えたことを特徴とする、請求項4に記載のトンネルデータ処理システム。
【請求項6】
前記円弧中心点群生成処理手段が、前記測定対象トンネルの進行方向に沿って、前記円弧データ群のデータを実測した計測地点ごとに並べる処理手段と、正確に所定の距離ピッチに設けた正規化計測地点を算出する正規化計測地点算出処理手段と、実測された前記円弧データ群のデータを基に正規化計測地点で計測した場合に得られたであろう円弧データ群を推定する円弧データ群間正規化処理手段を備えたことを特徴とする、請求項4に記載のトンネルデータ処理システム。
【請求項7】
前記キロポスト上での任意の点の指定と、前記任意の点からの任意の距離区間の指定を受け付ける指定手段と、
前記指定手段を介して指定された前記任意の点を座標原点とし、前記任意の距離区間に属する前記円弧データ群を抽出する、円弧データ群抽出処理手段と、
前記円弧データ群抽出処理手段で抽出された前記円弧データ群をコンピュータ3次元描画空間に配置し、各々の前記円弧データ間の隙間の空間を線形補間し、前記コンピュータ3次元描画空間に前記測定対象トンネル内空面の3次元画像を描画せしめる指定区間トンネル内空面画像描画処理手段とを備えた請求項1から6のいずれか1項に記載のトンネルデータ処理システム。
【請求項8】
前記データ入力部から入力された各々のデータセットとして、或る時期に計測されたデータセットと、他の時期に計測されたデータセットがあり、前記或る時期に計測されたデータセットから描画される前記指定区間の前記測定対象トンネル内空面の3次元画像と、前記他の時期に計測されたデータセット描画される同一の前記指定区間の前記測定対象トンネル内空面の3次元画像とを比較し、両者において差分がある箇所とその量を計算する経年比較処理手段を備えた請求項1から7のいずれか1項に記載のトンネルデータ処理システム。
【請求項9】
前記円弧データ群生成処理手段において、生成した各円弧に属するデータの個数が、前記トンネル内空面検知手段の計測周期内から得られるべきデータ個数より少なく、データが一部欠損しているものにつき、前記データ列の並びの中から欠損箇所を特定し、当該欠損箇所に隣接するデータから補間することにより欠損しているデータを推定・補間する欠損データ補間処理を行う欠損データ補間処理手段を備えた請求項7または8に記載のトンネルデータ処理システム。
【請求項10】
走行する車両に搭載された位置検知手段により測定した原座標系の位置データと、前記車両に搭載されたトンネル内空面検知手段により前記位置データと同期させて円弧状に測定した原座標系のトンネル内空面点群データとを基にデータ処理方法であって、
測定対象トンネルの入口付近および出口付近に設置された車両走行方向に対向する平面を備えた入口被検知板および出口被検知板を利用して、前記車両に搭載した前記位置検知手段と前記トンネル内空面検知手段を用いて測定された、前記入口被検知板の計測位置データ、前記測定対象トンネル内空面の前記トンネル内空面点群データ、前記出口被検知板の計測位置データと、別途、正確に既知なデータとして得られている前記入口被検知板の既知位置データと前記出口検知板の既知位置データとを入力するデータ入力処理と、
前記入口被検知板に関する前記計測位置データと前記既知位置データの差分を前記測定対象トンネルでの計測開始時点で既に含まれているオフセット誤差として、前記トンネル内空面点群データ全体を一律に補正する計測開始オフセット誤差補正処理と、
前記出口被検知板に関する前記計測位置データと前記既知位置データの差分を前記測定対象トンネル内での計測中に蓄積して行ったトンネル内計測誤差として、前記トンネル内空面点群データを個々に按分補正するトンネル内計測誤差補正処理とを備えたトンネルデータ処理方法。
【請求項11】
前記計測開始オフセット誤差補正処理における前記オフセット誤差の一律補正と前記トンネル内計測誤差補正処理におけるトンネル内計測誤差の按分補正とがなされた前記トンネル内空面点群データに対する処理であって、
前記トンネル内空面検知手段の計測周期ごとに円弧データ群として分割し、前記車両進行方向に沿って最初の円弧データ群から順にソートする円弧データ群生成処理と、
各々の前記円弧データ群における円弧中心点を求め、前記車両の進行方向に沿って最初の円弧中心点から順次ソートする円弧中心点群生成処理と、
前記円弧中心点群を順次接続して得られる線分群をトンネル近似中心線とするトンネル近似中心線生成処理と、
前記トンネル近似中心線を前記トンネルの入口方向および出口方向に延長し、前記入口被検知板の前記既知位置データより特定される前記トンネル入口坑口の既知位置をキロポストの始点とし、前記トンネル近似中心線に沿って線分の長さを積算し、前記トンネル内の距離指標であるキロポストを制定するキロポスト生成処理を備えた請求項10に記載のトンネルデータ処理方法。
【請求項12】
前記円弧中心点群生成処理が、前記円弧データ群内のデータを用いて、仮に定めた中心点から所定角度(例えば1度ピッチ)ごとに計測された距離を描くことで得られる半円形の軌跡であるトンネル内空面断面形状において幾何学的に正しい中心点を定める中心点算出処理と、前記トンネル内空面の正しい中心点から正確に所定角度のピッチで幾何学的に半円形のトンネル内空面と交わる点を計算する正規化計測点算出処理と、前記正規化計測点における計測値を、前記実測された計測点における前記計測値を基にした補間処理などで推定する円弧データ群内正規化処理を備えたことを特徴とする、請求項11に記載のトンネルデータ処理方法。
【請求項13】
前記円弧中心点群生成処理が、前記測定対象トンネルの進行方向に沿って、前記円弧データ群のデータを実測した計測地点ごとに並べる処理と、正確に所定の距離ピッチに設けた正規化計測地点を算出する正規化計測地点算出処理と、実測された前記円弧データ群のデータを基に正規化計測地点で計測した場合に得られたであろう円弧データ群を推定する円弧データ群間正規化処理を備えたことを特徴とする、請求項11に記載のトンネルデータ処理システム。
【請求項14】
前記キロポスト上での任意の点の指定と、前記任意の点からの任意の距離区間の指定を受け付ける指定受付処理と、
前記指定受付処理において指定された前記任意の点を座標原点とし、前記任意の距離区間に属する前記円弧データ群を抽出する、円弧データ群抽出処理と、
前記円弧データ群抽出処理で抽出された前記円弧データ群をコンピュータ3次元描画空間に配置し、各々の前記円弧データ間の隙間の空間を線形補間し、前記コンピュータ3次元描画空間に前記測定対象トンネル内空面の3次元画像を描画せしめる指定区間トンネル内空面画像描画処理とを備えた請求項11から13のいずれか1項に記載のトンネルデータ処理方法。
【請求項15】
前記データ入力処理において入力された各々のデータセットとして、或る時期に計測されたデータセットと、他の時期に計測されたデータセットがあり、前記或る時期に計測されたデータセットから描画される前記指定区間の前記測定対象トンネル内空面の3次元画像と、前記他の時期に計測されたデータセット描画される同一の前記指定区間の前記測定対象トンネル内空面の3次元画像とを比較し、両者において差分がある箇所とその量を計算する経年比較処理を備えた請求項10から14のいずれか1項に記載のトンネルデータ処理方法。
【請求項16】
前記円弧データ群生成処理において、生成した各円弧に属するデータの個数が、前記トンネル内空面検知手段の計測周期内から得られるべきデータ個数より少なく、データが一部欠損しているものにつき、前記データ列の並びの中から欠損箇所を特定し、当該欠損箇所に隣接するデータから補間することにより欠損しているデータを推定・補間する欠損データ補間処理を行う請求項11から15のいずれか1項に記載のトンネルデータ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−69747(P2011−69747A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221728(P2009−221728)
【出願日】平成21年9月26日(2009.9.26)
【出願人】(501170080)株式会社創発システム研究所 (10)
【出願人】(508337204)株式会社ネクスコ・エンジニアリング新潟 (4)
【Fターム(参考)】