説明

トンネル内取締機対応の道路交通情報受信装置

【課題】トンネル内の取締機に対して高価なジャイロセンサ等のシステムを用いることなく安価な加速度センサだけで対応できて交通事故を防止に寄与する道路交通情報受信装置を提供する。
【解決手段】GPSモジュールから位置および速度データを受信し位置登録データメモリから現在位置に対応した道路交通情報を得て制御を行うCPUと、前記道路交通情報を聴覚的または視覚的に運転者に報知する報知部と、を備え、さらに位置登録データメモリの中にトンネル情報を登録し、加速度センサを備え、GPSモジュールから受信しなくなったトンネルでは、トンネル情報と加速度センサからのデータをハイパス・フィルタを介して用いて自車の位置と車速を算出し、トンネル内の取締機の警告をするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の制限速度を遵守させるため、GPSモジュールにより現在の走行速度と道路の制限速度を比較してその旨を自動車の運転手に報知して速度遵守を促す機能を備えた道路交通情報受信装置に関し、特にGPSモジュールが機能しないトンネル内での取締機に対応できることで交通事故の低減に寄与することのできる交通情報受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の道路交通情報の受信装置には、全国の高速道を含む道路を緯度・経度に対応づけてその制限速度を位置登録データメモリに記憶させ、GPSモジュールから受ける現在位置情報とから、現在位置に対応した道路の制限速度が判り、このようにして得られた制限速度とGPSモジュールから受ける自動車の走行速度を比較することで、制限速度違反かどうかが制限速度の異なる道路においても判るようにし、制限速度違反の場合これを報知するようにしたものがある。例えば、本出願人の先行出願に係る特許文献1を参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−256165号公報
【0004】
図4は公知の道路交通情報受信装置のブロック図である。
図において、300は本発明に係る受信装置、110はソーラバッテリー、111は電源制御部、112は自動車のエンジンで発電機を回転させて発電した電気エネルギを充電する充電式電池である。120はGPSモジュールで、GPS受信器121と位置検出/速度演算部122から成り、GPS受信器121の受信信号が位置検出/速度演算部122で処理されて、その結果を距離・位置・速度データ受信部130に送信する。主制御部(CPU)130では、距離・位置・速度データ受信部140と、演算部および位置・登録データメモリ150が信号の授受を行なっている。位置・登録データメモリ150は、日本全国の緯度・経度に対応した位置における道路交通情報と、高速道/一般道データ、各道路の制限速度データ150aを記憶している。
【0005】
また、ここで言う「道路交通情報」とは、上述のスピード違反取締機(オービス)として、固定式のレーダー式、速度計測機(計測用カメラ)、速度警告板、計測センサーとしてカメラとループセンサーを備えたループコイル式のもの、「NHシステム」、ステルス型、光電管式や赤外線式の計測センサーを使用して車が一定区間を通過する時間を計測して車速を割り出すもの、移動式のものにはパトロールカーの屋根に積載されるレーダー式の取締り機等の信号および設置位置を示す情報を言う。
【0006】
X・Kバンドのレーダー受信部160としての高周波受信器161からの受信信号を信号処理部161aで処理して主制御部130に入力している。
【0007】
また、無線受信部170として、350MHz高周波受信器171からの受信信号を信号レベル検出・検波器171aへ送り、所定の信号レベルのものを検波して主制御部130に入力している。
また、407MHz高周波受信器172の受信した信号を信号レベル検出器172aで検出して所定の信号レベル以上のものを主制御部130に入力している。
同じく、160MHz帯高周波受信器173の受信した信号を信号レベル検出器73aで検出して所定の信号レベル以上のものを主制御部130に入力している。
【0008】
また、赤外線検知部180として赤外線受信部181があり、ここで受信した赤外線信号を主制御部30に入力している。
【0009】
主制御部130は、聴覚的警報信号をアナウンス・音声出力部191へ出力し、スピーカ192で知らせる。また、視覚的警報信号をワーニングランプ・設定状態LED表示部193へ出力する。
【0010】
次に、図4の受信装置の動作について図5のフローチャートを用いて説明する。
受信装置が動作開始すると、主制御部(CPU)130は、GPSモジュール120から現在位置と自動車の現在の車速データを受け取り(ステップ41)、ステップ42で位置登録データメモリから受け取ったスピード違反取締機の設置位置情報を基に進行方向にスピード違反取締機があるかどうかを調べ、なければステップ41へ戻り、スピード違反取締機があればステップ44へ進む。
ステップ44では、位置登録データメモリから受け取った位置対制限速度データを基に、現在の車速が現在地の制限速度を超えているか調べ、超えていなければ通常の報知、例えば「取締機が近くにある」という事実だけを運転者に報知して(ステップ46)、運転者にこれから加速しないようにさせて、ステップ41へ戻る。
一方、車速が現在地の制限速度を超えていれば、「取締機が近くにある」という報知だけではなくて、車速が制限速度を超えているのでスピードを落とすように警告をする。さらにその警告の際にその制限速度が一般道か高速道かの報知をも行って(ステップ46)、運転者に速度を落とすべきかどうかの最終判断を委ねるようにしている。
【0011】
このように、スピード違反取締機の設置位置および全国の高速道を含む道路を緯度・経度に対応づけてその制限速度を位置登録データメモリに記憶させているので、GPSモジュール120から受ける現在位置情報からスピード違反取締機が近傍にあるかどうかが判りかつ道路の制限速度が判り、この制限速度とGPSモジュール120から受ける自動車の走行速度を比較することで、制限速度違反かどうかが制限速度の異なる道路においても判ることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
〈従来の受信装置の長所〉
このように、従来装置は、スピード違反取締機の設置位置および全国の高速道を含む道路を緯度・経度に対応づけてその制限速度を位置登録データメモリに記憶させているので、GPSモジュール120から受ける現在位置情報に対応した道路の制限速度が判り、このようにして得られた制限速度とGPSモジュール120から受ける自動車の走行速度を比較することで、制限速度違反かどうかが制限速度の異なる道路においても判ることになる。
【0013】
〈従来の受信装置の弱点〉
最近、トンネル内での事故防止からトンネル内にもスピード違反取締機が設置されるようになった。従来の受信装置は上記のようにGPSモジュールから位置を得ているので、GPSからの電波が受信できる場所ではスピードを落とすように警告することができたが、トンネル内では衛星からのGPS電波が受信できないので、GPSモジュールが機能しなくなり未測位状態となってトンネル内の取締機については警告できなかった。
【0014】
〈ジャイロセンサを使えば可能〉
そこでトンネル内の取締機についても警告できるようにするには、カーナビゲーションで採用されている「ジャイロセンサと加速度センサ、あるいは車速情報(車からの速度信号)」を利用したトンネル内位置推定システム(以下、「ジャイロセンサ等のシステム」と言う。)を採用すれば比較的高精度なシステムが可能である。
しかしながら、このようなトンネル内位置推定システムは高価なジャイロセンサを用いているので高価となってしまい、安価に製造する課題を負っている受信装置には高価なジャイロセンサ等のシステムを搭載することができなかった。
【0015】
〈本発明の目的〉
そこで、本発明はかかる欠点を解決するためになされたもので、高価なジャイロセンサ等のシステムを用いずに安価な加速度センサだけで、トンネル内の取締機に対応できる受信装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、第1の発明は、道路交通情報を自動車において受信し、前記受信の受信内容や受信状況に応じて運転者に報知する道路交通情報の受信装置であって、前記自動車の位置と前記自動車の速度を演算するGPSモジュールと、位置に対応した道路交通情報を登録している位置登録データメモリと、前記GPSモジュールから位置および速度データを受信し前記位置登録データメモリから現在位置に対応した道路交通情報を得て制御を行うCPUと、前記道路交通情報を聴覚的または視覚的に運転者に報知する報知部と、を備えた道路交通情報の受信装置において、前記位置登録データメモリの中にトンネル情報であるトンネルの位置・出口までの距離・方向のデータを登録し、加速度センサを備え、前記CPUが、前記GPSモジュールから受信しなくなったら前記トンネル情報と前記加速度センサからの加速度データを用いて自車の位置と車速を算出し、自車がトンネル内の取締機に近づきかつ制限速度超過のとき減速を促す警告をすることを特徴としている。
【0017】
第2の発明は、上記第1の発明において、前記加速度センサの加速度データをハイパス・フィルタを介して用いるようにし、かつ、走行開始時から所定時間は前記ハイパス・フィルタを介して得られた加速度のピークホールドを行い、前記ピークホールド値を用いて自車の位置と車速を算出し、自車がトンネル内の取締機に近づきかつ制限速度超過のとき減速を促す警告をすることを特徴としている。
【0018】
第3の発明は、上記第1の発明において、前記加速度センサの加速度データをハイパス・フィルタを介して用いるようにし、かつ、前記ハイパス・フィルタを介して得られた加速度を[前回GPSの速度/x軸加速度センサによる速度]の値で補正することを特徴としている。
【0019】
第4の発明は、上記第1の発明において、前記加速度センサの加速度データをハイパス・フィルタを介して用いるようにし、かつ、走行開始から所定時間経過後から前記ハイパス・フィルタを介して得られた加速度の値に所定の係数を乗じて用いることを特徴としている。
【0020】
第5の発明は、上記第1の発明において、前記加速度センサのy軸の加速度データを用いて車両が所定の角度より大きく曲がったことを検知したら停止判定することを特徴としている。
【0021】
第6の発明は、上記第1の発明において、前記加速度センサのz軸の加速度データが所定時間中に所定%以上の時間で所定レベル以内のときは「自動車は停止している」とするチェックを設けたことを特徴としている。
【0022】
第7の発明は、上記第1の発明において、前記CPUが、前記トンネル情報と前記加速度センサからの加速度データを用いて自車の位置を算出したら、トンネルの出口が近いことの案内又は現在時間から日中か夜か判断して日中ならばライトを消すことを促す案内をすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
以上の第1の発明により、従来は高価なジャイロセンサ等のシステムを用いなくてはトンネル内の取締機に対して対応できなかったが、本発明ではジャイロセンサ等のシステムを用いなくても「加速度センサだけ」でトンネル内の取締機に対して対応する受信装置の実用化が可能となる。
第2の発明により、ハイパス・フィルタを用いる弊害を除去ないし緩和することができるようになり、ジャイロセンサ等のシステムを用いなくても「加速度センサだけ」でトンネル内の取締機に対して対応する受信装置の実用化が可能となる。
第3の発明により、ハイパス・フィルタを用いる弊害を除去ないし緩和することができるようになり、ジャイロセンサ等のシステムを用いなくても「加速度センサだけ」でトンネル内の取締機に対して対応する受信装置の実用化が可能となる。
第4の発明により、走行開始の加速度と所定時間経過後の加速度のレベルの異なりを是正することで、ジャイロセンサ等のシステムを用いなくても「加速度センサだけ」でトンネル内の取締機に対して対応する受信装置の実用化が可能となる。
第5の発明により、y軸の加速度データを用いて車両が所定の角度より大きく曲がったことを検知したら停止判定することで、誤差の多いy軸の加速度データを有効利用することができる。
第6の発明により、z軸の加速度データで「自動車は停止している」とするチェックを設けたので、車両の停止が判るようになり、この車両停止情報を各種の制御に用いることができる。
第7の発明により、取締機の警告だけではなくて、出口やライト消し忘れ等の他の注意を促すことで運転者にフレンドリーな受信装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は本発明に係るトンネル内取締機対応道路交通情報受信装置のブロック図である。
【図2】図2は速度−時間線図と加速度−時間線図の関係を示す線図である。
【図3】図3は本発明に係る受信装置の補正処理のメインルーチンである。
【図4】図4は公知の道路交通情報受信装置のブロック図である。
【図5】図5は図4の受信装置の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
従来の受信装置ではトンネル内の取締機に対して対応できなかったが、本発明ではジャイロセンサ等のシステムを用いずに加速度センサだけトンネル内の取締機に対して対応できるようになったので、以下、本発明に係る受信装置について説明する。
【0026】
〈本発明の装置が従来装置と異なる点〉
図1は本発明に係る受信装置のブロック図の1例である。
図において、100は本発明に係る受信装置である。受信装置本体100の内部構成が前述の従来装置320と同じ部分については重複説明は省略する。
本発明の受信装置100が従来の受信装置300と異なる点は2つある。
1つは、速度・左右折・停止の各情報を得ることができる加速度センサ50を受信装置100内に設けたことである。高価なジャイロセンサ等のシステムはもちろん搭載していない。
2つ目は、位置・登録データメモリ150に「トンネル情報」(150b)を加えたことである。
「トンネル情報」とは、(1)トンネル入口の位置(緯度・経度)、(2)出口までの距離、(3)出口までの方向についての情報である。
【0027】
〈加速度センサ50〉
使用する加速度センサ50は単位時間当たりの速度の変化を検出するための回路素子で、センサから見て“ある方角”(軸方向)に「どのくらいの加速度がかかっているか」を数値として得るものである。一度に検知できる軸方向の数によって「1軸」「2軸」「3軸」という言い方をしており、ここでは「3軸」の加速度センサを用いている。性能としては±数Gの範囲を測定でき、このときのx、y、zの加速ベクトルの合計から地面に対する向き(姿勢)を測定している。例えば、1つめの軸(例えばx軸)が0G(ジー)で2つめの軸(y軸)が1Gの加速度を検知した場合、このセンサはまっすぐy軸方向に立っていることが判り、逆に、1つめの軸(x軸)が1Gで2つめの軸(y軸)が0Gの加速度を検知した場合、このセンサはまっすぐx軸方向に寝ているということになる。45度に傾けている場合、x軸方向には「1G×Sin(45°)=約0.707G」が検知され、y軸方向にも同じく約0.707Gが検知される。
x軸により速度・y軸により左右折・z軸により上下動、すなわち停止情報を得ることができる。
【0028】
〈トンネル情報と加速度センサによる可能性〉
トンネル情報150bと加速度センサ50を備えたことにより、以下の(1)〜(4)が可能となった。
(1)これまで不可能であったトンネル内に設置されている速度取締機の警告。
(2)GPSはトンネルを出ても復帰するのにしばらく時間を要するが、トンネル出口の直後に設置されている速度取締機の警告には間に合わなかった。これが可能となること、および、その他のトンネル出口の設備の警告・案内。
(3)トンネル走行中に「まもなくトンネル出口です」といったトンネル出口の案内と、現在時間から日中か夜かの判断をしてライト消し忘れ防止アナウンスの案内。
(4)「急発進・急減速行為」が加速度センサにより簡単に計算できるので、エンジンの負担となる「急発進・急減速行為」の速度警告をトンネル内外を問わずに行うこと。
【0029】
〈加速度センサから速度の求め方〉
重力加速度(単位:G[ジー]。1G=9.80665m/s2)から速度への変換は、
1G≒35km/h/s
で与えられる。
本発明の受信装置は0.1秒単位で加速度データを得ているので、その周期で車の進行方向であるx方向(なお、y方向は車の左右方向、z方向は上下方向)の加速度を時間積分すれば速度が算出される。
【0030】
〈実際の加速度センサには誤差が多い〉
しかしながら、各種の調査および実験において、加速度センサの出力結果に多くの誤差が含まれているために、結果をそのまま使用することができないため、これまで加速度センサによる速度算出は困難とされ、開発も停滞しており、カーナビゲーション等ではもっぱらジャイロセンサ等のシステムが使用されていた。
【0031】
〈本発明による補正処理1〜6〉
本発明では次のような補正処理を行うことにより「加速度センサのみによる」トンネル内使用が可能となった。
本発明による加速度データ処理として次の1〜6のことを行っている。
【0032】
(1)《長時間走行の場合の問題と処理》
加速度センサが水平状態ならば問題ないが、坂道では停止しているだけでも加速度センサから出力が出てしまい、また、ある程度走行時間を経過した場合や加減速を何回か繰り返した場合には、ドリフトを起こしてしまうという問題があった。
これを正すために、本発明では、DC(ドリフト)部分の出力を除去するハイパス・フィルタを接続し、その後の出力を使うようにした。
【0033】
(2)《走行開始時の問題と処理》
発進 →加速 →定速走行 →減速 →停止といった場合の速度曲線は図2(a)の(イ)のようになり、その場合の加速度曲線は(b)の(ロ)ようになる。
すなわち、速度が加速すれば加速度は+方向となり、加速の大きさが増加するときは加速度勾配が正となり、加速の大きさが減少するときは負勾配となる。
定速走行の場合は加速度は0となる。
速度が減速すれば加速度は−方向(負)となり、減速の大きさが増加するときは加速度勾配が負となり、減速の大きさが減少するときは加速度勾配が正となる。
このような線図(ロ)が理想であるが、実際は処理1で使用したドリフト対策用のハイパス・フィルタの弊害として、ドリフトのない走行開始時には加速しているにもかかわらず図2(b)の(ハ)の点線のような符号反転した誤出力となってしまうことが判った。
これを正すために、本発明では、加速度のピークホールドを行い、ある一定時間(最大加速後10秒〜50秒)内は加速度データを使用せずに前記ピークホールド値を用い、一定時間経過後に再び加速度データを使用することとしている。
【0034】
(3)《全体がレベルダウンする問題と処理法》
処理1で使用したドリフト対策用のハイパス・フィルタの別の弊害として、加速度レベル全体が図2(c)の(ニ)1点鎖線のように、加速度レベルが減衰してしまうことが判った。
これを正すために、本発明では、下式のように「速度の学習機能」を備えた補正係数を求めてこの値で補正している。
補正係数=定数×[前回GPSの速度/x軸加速度センサによる速度]
【0035】
(4)《連続走行時の加速と、停止からの加速との相違の問題と処理》
さらに、連続走行しているときからの加速度は停止から走行するときの加速度より低減してしまうことが判った。
これを正すために、本発明では、走行開始から一定時間(例えば、10秒〜60秒の所定値)経過後に加速度データの値に所定の係数(例えば、0.05〜0.5のうちのいずれかの値)を乗じることとしている。
【0036】
(5)《y方向の加速度の処理》
以上はすべてx方向についての処理であったが、ここではy方向の加速度データの処理について説明する。曲がる角度はy方向の加速度データを用いて算出するが、実際は誤差が大きいために、本発明では、y方向の加速度データを極端に曲がったことの判断をするのに用いて、極端に曲がったことを検知したら停止判定するものとした。
【0037】
(6)《z方向の加速度の処理》
さらに、z方向の加速度は停止判定に活用している。具体的には、所定時間中の80%以上の時間でz方向の加速度が一定レベル以内のときは「自動車は停止している」とするチェックを設けることにした。
【0038】
《加速度データの上記補正処理1〜6の更なる補正》
上記のように本発明による加速度データの処理1〜6をしたところ(ジャイロセンサ等のシステムを使用しなくても)加速度センサのみのデータで実用化できることが確認できたが、まだ位置情報には若干誤差が伴う恐れがあるので、本発明ではこれらを補正する仕組みとして、さらに、(イ)ポイント名称(例えば、東名高速の日本坂トンネル下り)、(ロ)緯度(例えば、34度54分58秒)、(ハ)経度(例えば、138度20分60秒)、(ニ)方向(例えば、204度)、(ホ)トンネル距離(例えば、2.5km)といった「トンネル情報」を内部メモリ150bに記録している。この「トンネル情報」は、(1)トンネル内警告は容量的に全国をカバーできないので高速道路に限定したこと、と、(2)高速道路のトンネルは概ね直線的な構造をしていること、の理由から直線的に表したもので、車両がこの軌跡上を走行しているように表現することで実現化可能となった。
【0039】
図3は以上説明した補正処理1〜6を実行する本発明に係る受信装置のメインルーチンを表している。
〈メインルーチンの概要〉
図3において、メインルーチンは大きく(イ)〜(ハ)に分かれる。
(イ)は0.1秒毎処理で、0.1秒毎に速度(x軸加速度)・角度(y軸加速度)と停止判定(z軸方向加速度)を読込む。0.1秒はループ又はタイマー割込み等で実現している。
(ロ)は1秒毎処理で、1秒毎にGPS若しくは加速度データのどちらかを使用して、警告判定を行う。
(ハ)は1.5秒毎処理で、1.5秒毎に停止判定を行う。
【0040】
〈メインルーチンの説明〉
そこで、メインルーチンがスタートすると、ステップ21でイニシャル処理をしたあと、ステップ22で「0.1秒毎か」調べ、No(0.1秒未満)であればステップ25へ飛び、「1秒カウンタが1秒か」調べ、No(1秒未満)であれば、さらにステップ44へ飛び、「1.5秒カウンタが1.5秒か」調べ、No(1.5秒未満)であれば、ステップ22へ戻る。これを繰り返すうちにステップ22で0.1秒毎がYes(0.1秒毎)となる。
ステップ22でYesとなるとステップ23へ進み、「加速度センサ速度データ読取処理」を行なう。
【0041】
《加速度センサ速度データ読取処理》
加速度センサ速度データ読取処理では、
(イ)X軸の加速度データに単位時間(10.1秒)と前記(1)式で求めたフイルタによる減衰補正の係数を乗じて、メモリに格納している。
(ロ)次ぎに、所定時間(10秒〜50秒)以上連続走行していれば、連続走行用の補正値(0.1倍)による補正を実施する。
(ハ)さらに、車両が停止状態から走行開始した以後の加速度はハイパスフイルタの影響で符号が反転してしまい不確実な状態になるので、これの対策として、走行開始から最大加速度値(ピークホールド値)を取得した後の所定時間(10秒〜50秒)は加速度センサのデータを使用せずにピークホールド値にて補正を行なうようにしている。
(ニ)そして、y軸加速度により右折・左折を判定する角度を読込む。
以上の(イ)〜(ニ)処理を行った後、メインルーチンのステップ24に戻る。
【0042】
《加速度センサ停止判定データ読取処理》
ステップ24の処理は0.1秒毎に上下方向(z軸方向)の加速度を読込む。
メインルーチンでは、これを15回分(1.5秒)完了(図3のステップ44でYes)後、停止判定処理にて判定処理(図3のステップ45)を行なう。
ステップ24の加速度センサ停止判定データ読取処理を行なったら、ステップ25で1秒カウンタが1秒か調べ、No(1秒未満)であればステップ44へ飛び、Yes(1秒)であればステップ26でGPSアンテナデータ読取処理を行なう。
【0043】
《GPSアンテナデータ読取処理》
加速度データで緯度・経度を求めるためには以前の位置(緯度・経度)と進行方向を基点として算出する必要があるので、ステップ26のGPSアンテナデータ読取処理は、そのためのGPSデータを記録保持するステップである。緯度、経度、方位、速度の各テーブルを用意し、そこにGPS測位があればその値を各テーブルに記録保持している。
【0044】
《加速度データ算出処理》
ステップ27の加速度データ算出処理では、加速度データから1秒分の移動距離を求め、これと前回のGPS緯度・経度・方位とから加速度の緯度・経度を求めている。また、1秒毎の角度が30度以上であれば「曲がった」と判断する。
【0045】
《測位状態判定処理》
ステップ28の測位状態判定処理は、GPSの測位/未測位状態で、どのデータ(緯度・経度)を使用するのかの判断モジュールである。結果は「測位状態スイッチ(SW)」テーブルに3〜0のどれかの値を出力する。
数字の意味は以下の通りとする。
(イ)測位状態SW=3:
GPS測位中を意味する。GPSの緯度・経度データを使用する。これと同時に、予めメモリーに記憶してあるトンネルポイントと位置比較する。 (ロ)測位状態SW=2:
トンネルポイント通過後のGPS未測位状態を表わす。加速度センサーにて位置算出する状態とする。
(ハ)測位状態SW=1:
トンネルポイント以外でGPS未測位状態を表わす。加速度センサーにて位置算出する状態とする。
このように、SW=1と2の違いは2は受信装置が予定していたトンネルでのGPS未測位状態となったとき、1はそれ以外(すなわち警告対象外)のトンネルでのGPS未測位状態となったときである。
(ニ)測位状態SW=0:
位置算出不可の状態。復帰はGPS測位するまでは、この状態を保持する(警告処理不可能状態)
【0046】
《不可判定0となる場合》
また、不可判定は次のようにしている。
(1)SW=2の場合は、トンネルポイントから出口迄の距離を通過した以降にGPS測位しなければ0とする。
(2)SW=1の場合は、トンネル距離を500mとしてセットし、その距離通過後にGPS測位しなければ0とする。
(3)SW=1の場合が10秒経過した後に、曲がったか(30度以上)若しくは2回停止判定した場合に0とする。
【0047】
《測位状態判定処理の結果》
以上のステップ28の測位状態判定を行った結果、ステップ29で測位状態スイッチが3(GPS測位中)か、2又は1(加速度補間中)か、0(未測位で加速度補間不可)かを調べる。
結果が3であればステップ33へ、2又は1であればステップ31へ、0であればステップ30へ進む。
ステップ30では、緯度・経度はGPS結果を保持することとして、ステップ43へ進む。
ステップ31では、緯度・経度は加速度センサ結果を使用し、その後ステップ41へ進む。
ステップ33では、緯度・経度はGPS結果を使用し、その後ステップ41へ進む。
ステップ41では警告するポイントか調べ、No(警告なし)であればステップ44へ進み、Yes(警告ポイント)であればその後ステップ42へ進んで、警告処理をした後、ステップ43へ進み、ステップ43で1秒カウンタを0にしてステップ44へ進む。ステップ44で1.5秒カウンタが1.5秒となったか調べ、No(1.5秒未満)であればステップ22へ戻り、Yes(1.5秒)であればステップ45で停止判定処理を行なう。
【0048】
《停止判定処理》
ステップ45の停止判定処理は、所定の時間(1秒〜10秒)の80%〜90%以上の間にz軸(上下方向)加速度の値が10mG以下ならば、車両は停止したと判断する処理である。そして停止していなければ、所定時間20秒〜1分の間連続走行しているかチェックを行った後、メインルーチンへ戻る
ステップ45で停止判定処理を行なった後は、ステップ46で1.5秒カウンタを0にしてステップ22へ戻る。
【0049】
以上のように、従来は高価なジャイロセンサ等のシステムを用いなくてはトンネル内の取締機に対して対応できなかったが、本発明では上記のような各種の補正処理を行わせることによって、ドリフトの問題をハイパス・フィルタで解決し、ハイパス・フィルタを接続したことの弊害を一定時間加速度のピークホールド値を用いることと、全体のレベルダウン問題を[前回GPSの速度/x軸加速度センサによる速度]の補正で解決し、また連続走行時の加速と停止からの加速との相違の問題を走行開始から一定時間経過後に加速度データの値に所定の係数(例えば、0.05〜0.5のうちのいずれかの値)を乗じることで解決し、またy方向の加速度とz方向の加速度も有効利用することで、ジャイロセンサ等のシステムを用いなくても「加速度センサだけ」でトンネル内の取締機に対して対応する受信装置の実用化が可能となった。
【符号の説明】
【0050】
100 本発明に係る受信装置
50 加速度センサ
110 ソーラバッテリー
111 電源制御部
112 充電式電池
120 GPSモジュール
121 GPS受信器
122 位置検出/速度演算部
130 主制御部(CPU)
130 距離・位置・速度データ受信部
150 位置・登録データメモリ
150a 高速道/一般道・制限速度データ
150b トンネル情報
160 X・Kバンドのレーダー受信部
161 高周波受信器
161a 信号処理部
170 無線受信部
171 350MHz高周波受信器
171a 信号レベル検出・検波器
172 307MHz高周波受信器
172a 信号レベル検出器
173 160MHz帯高周波受信器
173a 信号レベル検出器
180 赤外線検知部
181 赤外線受信部
191 アナウンス・音声出力部
192 スピーカ
194 ワーニングランプ・設定状態LED表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路交通情報を自動車において受信し、前記受信の受信内容や受信状況に応じて運転者に報知する道路交通情報の受信装置であって、前記自動車の位置と前記自動車の速度を演算するGPSモジュールと、位置に対応した道路交通情報を登録している位置登録データメモリと、前記GPSモジュールから位置および速度データを受信し前記位置登録データメモリから現在位置に対応した道路交通情報を得て制御を行うCPUと、前記道路交通情報を聴覚的または視覚的に運転者に報知する報知部と、を備えた道路交通情報の受信装置において、
前記位置登録データメモリの中にトンネル情報であるトンネルの位置・出口までの距離・方向のデータを登録し、
加速度センサを備え、
前記CPUが、前記GPSモジュールから受信しなくなったら前記トンネル情報と前記加速度センサからの加速度データを用いて自車の位置と車速を算出し、自車がトンネル内の取締機に近づきかつ制限速度超過のとき減速を促す警告をすることを特徴とする道路交通情報受信装置。
【請求項2】
前記加速度センサの加速度データをハイパス・フィルタを介して用いるようにし、かつ、走行開始時から所定時間は前記ハイパス・フィルタを介して得られた加速度のピークホールドを行い、前記ピークホールド値を用いて自車の位置と車速を算出し、自車がトンネル内の取締機に近づきかつ制限速度超過のとき減速を促す警告をすることを特徴とする請求項1記載の道路交通情報受信装置。
【請求項3】
前記加速度センサの加速度データをハイパス・フィルタを介して用いるようにし、かつ、前記ハイパス・フィルタを介して得られた加速度を[前回GPSの速度/x軸加速度センサによる速度]の値で補正することを特徴とする請求項1記載の道路交通情報受信装置。
【請求項4】
前記加速度センサの加速度データをハイパス・フィルタを介して用いるようにし、かつ、走行開始から所定時間経過後から前記ハイパス・フィルタを介して得られた加速度の値に所定の係数を乗じて用いることを特徴とする請求項1記載の道路交通情報受信装置。
【請求項5】
前記加速度センサのy軸の加速度データを用いて車両が所定の角度より大きく曲がったことを検知したら停止判定することを特徴とする請求項1記載の道路交通情報受信装置。
【請求項6】
前記加速度センサのz軸の加速度データが所定時間中に所定%以上の時間で所定レベル以内のときは「自動車は停止している」とするチェックを設けたことを特徴とする請求項1記載の道路交通情報受信装置。
【請求項7】
前記CPUが、前記トンネル情報と前記加速度センサからの加速度データを用いて自車の位置を算出したら、トンネルの出口が近いことの案内又は現在時間から日中か夜か判断して日中ならばライトを消すことを促す案内をすることを特徴とする請求項1記載の道路交通情報受信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−203881(P2010−203881A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48987(P2009−48987)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(593026627)セルスター工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】