説明

ナビゲーション装置、ナビゲート方法および車両

【課題】交差点等の分岐地点において、進路変更等に必要となる当該分岐地点付近についての適切な画像をドライバに提供するナビゲーション装置を提供すること。
【解決手段】経路探索部102は、設定された目的地にいたる経路を探索する。撮像規則設定部107は、探索された経路に存在する分岐地点における撮像部109の撮像規則を決定する。距離算出部104は、自車位置と分岐地点までの距離を算出する。制御部108は、決定された撮像規則に基づき、算出された距離に応じて出力装置に提示する画像を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置、ナビゲート方法および車両に関し、より特定的には、車載カメラ等の撮像装置により撮像された画像をドライバに提示し、車両の走行を支援するナビゲーション装置、ナビゲート方法および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に設置され、ディスプレイを通してドライバに進行方向を提示し、経路案内を行うナビゲーション装置が広く知られている。このようなナビゲーション装置においては、あらかじめHDDやDVD(Digital Versatile Disk)に地図情報を格納しておく。当該地図情報には、道路情報や交差点などの分岐地点に関するCG(Computer Graphics)データが含まれている。そして、車両が分岐地点に接近したのを検出すると分岐地点に関するCGデータに対して、案内経路(進行方向)を表す矢印を重畳して描画することで、ドライバに対して自身の進むべき進路を通知している。この分岐地点に関するCGデータは非常に高精細であり、実際の風景と類似したデータが備わっている。しかしながら、実際には存在する自車前方の車両や新たに建設された施設が描かれないなど、様々な点でドライバが見る風景と異なることが多い。そのためドライバにとっては、CGデータで描かれた進路が実際の風景においてどこに相当するのかを認知するための余計な負荷が生じていた。このような問題に対し、車両の前方にカメラを設置して一定の撮像倍率にて前方の風景を撮像し、分岐交差点まで所定の距離以内に接近したことを検出すると、その後交差点への接近に伴い、距離に応じた大きさの案内矢印を画像に対して重畳表示する技術が開示されている(例えば特許文献1)。これによれば、ドライバが見る風景と案内経路を示した画像が一致するため、ドライバの認知的負荷を軽減する効果が生じる。
【特許文献1】特開2000−155895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載されている技術では撮像倍率や撮像方位などが固定されているため、交差点から所定の距離だけ離れた地点(遠隔地点と呼ぶ)と、交差点近傍の地点(近傍地点と呼ぶ)の、いずれにおいても適切な画像をドライバに対して提示することは困難である。すなわち、遠隔地点において交差点での進行方向を認知しやすくするためには、撮像倍率を高くし交差点付近の詳細な風景を提示する必要があるが、このような高い倍率では近傍地点においては局所的な範囲しか撮像できず、ドライバに分かり易い画像を提示できない。一方、近傍地点において交差点付近の適切な画像を提供しようとすると、撮像倍率を低くしなければならないが、このような低い倍率では遠隔地点において、ドライバは交差点における進行方向を確認することが困難となる。
【0004】
また、ドライバにとって右左折など進路変更を行うときに必要となる情報は、交差点までの距離に応じて異なることも考えられる。すなわち、遠隔地点においてはドライバは進路変更を行うための手がかり情報(「交差点の角にある銀行のところを左折」など)が必要となるので交差点の中心部付近を撮像した画像が提示されることが望ましいが、近傍地点では手がかり情報もさることながら進路変更した後の周囲の状況(左折した道路上の歩行者など障害物の存在)を確認しなければならず、撮像方向を変化させ交差点中心部だけでなく進路変更する方向を撮像した画像の提示が必要となる。
【0005】
それ故に、本発明の目的は、交差点等の分岐地点において、進路変更等に必要となる当該分岐地点付近についての適切な画像をドライバに提供するナビゲーション装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下のような構成を採用した。
【0007】
第1の発明は、車両に設置され、当該車両の前方を撮像する撮像手段が撮像した画像を画面に表示するナビゲーション装置であって、ユーザにより設定された目的地に至る経路を探索する経路探索手段と、探索された経路上の分岐地点の位置情報を取得する分岐地点情報取得手段と、車両の現在位置を取得する位置情報検出手段と、車両の現在位置から分岐地点の位置までの距離を算出する距離算出手段と、算出された距離に応じて、画面に表示する画像の表示倍率を変更する制御手段とを備えるナビゲーション装置である。なお、ここでいう画像には、動画および静止画の双方が含まれる。また、ここでいう画面に表示される画像の表示倍率の変更には、撮像手段が撮像した画像を拡大等することで表示倍率を変更するだけでなく、撮像手段の撮像倍率そのものを調整することで画面に表示される画像の表示倍率を変更することも含まれる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、制御手段は、算出された距離に応じて、撮像手段が撮像した画像の少なくとも一部の領域を所定の表示サイズまで拡大することで表示倍率を変更する。
【0009】
第3の発明は、第2の発明において、制御手段は、算出された距離が短くなるのに応じて拡大する領域の大きさを大きくして、当該領域を所定の表示サイズまで拡大することで表示倍率を変更する。
【0010】
第4の発明は、第2の発明において、制御手段は、撮像手段が撮像した画像に対して設定する拡大する領域の位置を、更に分岐地点における車両の分岐方向に応じた方向に移動して、当該領域を所定の表示サイズまで拡大することで表示倍率を変更する。
【0011】
第5の発明は、第4の発明において、制御手段は、算出された距離に応じて、撮像手段が撮像した画像に対して設定する拡大する領域の位置を移動する量を変化させる。
【0012】
第6の発明は、第2の発明において、ナビゲーション装置は、少なくとも分岐地点毎の撮像開始および終了のタイミングについての規則と分岐地点毎の撮像開始時における拡大する領域の大きさについての規則とを含む撮像手段の撮像規則を設定する撮像規則設定手段と、分岐地点にかかる道路の道幅についての情報を取得する道幅情報取得手段とを更に備え、制御手段は、分岐地点毎における道幅と撮像規則とに基づいて、撮像開始時における拡大する領域の大きさを決定する。
【0013】
第7の発明は、第1の発明において、制御手段は、算出された距離に応じて撮像手段の撮像倍率を変化させることで、画面に表示する画像の表示倍率を変更する。
【0014】
第8の発明は、第7の発明において、制御手段は、算出された距離が短くなるのに応じて撮像手段の撮像倍率を下げることで表示倍率を変更する。
【0015】
第9の発明は、第7の発明において、制御手段は、撮像手段の撮像方位を分岐地点における車両の分岐方向に変更して撮像倍率を変更する。
【0016】
第10の発明は、第9の発明において、制御手段は、算出された距離に応じて、撮像手段の撮像方位を変更する角度を変化させる。
【0017】
第11の発明は、第7の発明において、少なくとも分岐地点毎の撮像開始および終了のタイミングについての規則と分岐地点毎の撮像開始時における撮像手段の撮像倍率についての規則とを含む撮像手段の撮像規則を設定する撮像規則設定手段と、分岐地点にかかる道路の道幅についての情報を取得する道幅情報取得手段とを更に備え、制御手段は、分岐地点毎における道幅と撮像規則とに基づいて、撮像開始時における撮像倍率を設定する。
【0018】
第12の発明は、第7の発明において、撮像手段によって撮像された画像から画像認識を行うことで人を検出する認識手段を更に備え、制御手段は、検出された人の位置に応じて撮像手段の撮像方位を変更してから撮像倍率を変更する。
【0019】
第13の発明は、第1の発明において、表示倍率が変更された画像を仮想視点から見た画像に視点変換する仮想視点変換手段を更に備える。
【0020】
第14の発明は、第13の発明において、仮想視点変換手段は、分岐地点との距離が短くなるのに応じて、仮想視点の高さを相対的に高くする。
【0021】
第15の発明は、第1の発明において、制御手段によって表示倍率が変更された画像に更に別の画像を重畳する画像編集手段を更に備える。
【0022】
第16の発明は、車両に設置され、当該車両の前方を撮像する撮像手段が撮像した画像を取得する撮像画像取得ステップと、ユーザにより設定された目的地に至る経路と当該経路上の分岐地点の位置情報と車両の現在位置とを取得する情報取得ステップと、車両の現在位置から分岐地点の位置までの距離を算出する距離算出ステップと、算出された距離に基づいて画面に表示する画像の表示倍率を変更する制御ステップとを有するナビゲート方法である。
【0023】
第17の発明は、第16の発明において、制御ステップにおいては、算出された距離に応じて、撮像画像取得ステップにおいて取得した画像の少なくとも一部の領域を所定の表示サイズまで拡大することで表示倍率を変更する。
【0024】
第18の発明は、第16の発明において、制御ステップは、算出された距離に応じて撮像手段の撮像倍率を変化させることで、画面に表示する画像の表示倍率を変更する。
【0025】
第19の発明は、移動方向の前方にかかる風景を撮像する撮像手段が設置可能な車体と、撮像手段が撮像した画像を画面に表示するナビゲーション装置とを備え、ナビゲーション装置は、ユーザにより設定された目的地に至る経路を探索する経路探索手段と、探索された経路上の分岐地点の位置情報を取得する分岐地点情報取得手段と、移動体の現在位置を取得する位置情報検出手段と、移動体の現在位置から分岐地点の位置までの距離を算出する距離算出手段と、算出された距離に応じて、画面に表示する画像の表示倍率を変更する制御手段とを含む車両である。
【0026】
第20の発明は、第19の発明において、撮像手段は、車両の車室内に設置される。
【0027】
第21の発明は、第19の発明において、撮像手段は、車両の車室外に設置される。
【発明の効果】
【0028】
上記第1の発明によれば、分岐地点と車両との距離に応じて、分岐地点の画像をユーザにとって見やすい大きさ(表示倍率)で画面に表示することができる。これにより、ユーザにとって必要となる、分岐地点近傍の画像を把握しやすい形で表示でき、ユーザに安全な運転を行うことを可能とさせる。
【0029】
上記第2の発明によれば、撮像された画像の一部を拡大して表示するため、分岐地点の状況をより把握しやすい状態にした画像をユーザに提供することができる。
【0030】
上記第3の発明によれば、分岐地点に近づいていく過程において、ほぼ同じ範囲が映っている当該分岐地点についての画像を提供することができる。これにより、分岐地点の画像を常に把握しやすい状態で提供できる。
【0031】
上記第4乃至第5の発明によれば、自車が交差点近傍に接近した際に、あらかじめ分岐方向の画像をユーザに提示して注意を促すことができる。これにより、ユーザは右折や左折後の道路状況などに注意を払って運転を行うことができる。
【0032】
上記第6の発明によれば、分岐地点の道幅に応じた適切な大きさの画像を提供することができる。これにより、ユーザにとって分岐地点の状況をより把握しやすい画像を提供できる。
【0033】
上記第7の発明によれば、分岐地点の画像をズームして撮影するため、分岐地点についての画像を鮮明な状態で提供することができる。これにより、分岐地点の状況についてユーザに把握させやすくできる。
【0034】
上記第8乃至第11の発明によれば、上記第3乃至第6の発明と同様の効果を得ることができる。
【0035】
上記第12の発明によれば、歩行者等の人物を画像認識し、当該人物が映されるように撮像手段の撮像方位を変化させることができる。これにより、ユーザに歩行者の存在を気付かせやすくすることができ、その結果、より安全な運転を行わせることが可能となる。
【0036】
上記第13乃至第14の発明によれば、高い視点からの分岐地点近傍の画像を提供できるため、分岐地点近傍の状況について、より把握しやすい形で情報提供できる。
【0037】
上記第15の発明によれば、表示倍率変更後の画面に矢印画像を重ねる等の編集を行うことができ、より分かりやすい形でユーザにナビゲートすることができる。
【0038】
また、本発明のナビゲート方法によれば、上述した第1、第2、第7の発明と同様の効果を得ることができる。
【0039】
また、上記第19の発明によれば、上述した第1の発明と同様の効果を得ることができる。
【0040】
上記第20の発明によれば、撮像手段を車室の内部に設置するため、撮像手段が汚れることや、盗難に遭うことを防ぐことができる。
【0041】
上記第21の発明によれば、撮像手段を車室外に設置するため、車室内に設置するときに比べ、障害物に遮られない広い範囲で車外の風景を撮像することが可能となる。その結果、より多くの情報を収集し、ユーザに提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。尚、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【0043】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るナビゲーション装置(以下、ナビ装置と呼ぶ)の構成を示したブロック図である。図1において、ナビ装置10は、入力部101と、経路探索部102と、位置情報検出部103と、距離算出部104と、地図DB105と、撮像規則記憶部106と、撮像規則設定部107と、制御部108と、撮像部109と、表示部110とで構成されている。
【0044】
入力部101は、ナビ装置に対して目的地に関する情報を入力するための手段であり、リモコンやタッチパネル、音声入力用のマイクなどにより構成される。
【0045】
経路探索部102は、上記入力部101から入力された目的地に関する情報、位置情報検出部103によって検出された自車位置情報、および地図DB105を参照して、目的地にいたる経路を探索する。
【0046】
位置情報検出部103は、車両に取り付けられたGPS(Global Positioning System)などに代表される測位センサによって計測された自車位置に関する情報を取得する。
【0047】
距離算出部104は、位置情報検出部103により検出された自車位置情報を参照して、経路探索部102により探索された経路上の分岐地点(自車が右折、左折するなどの進路変更を行う地点)に対して、自車の現在地以降の進路上、最初に進入する分岐地点と自車位置との距離を算出する。
【0048】
地図DB105は、経路案内や探索に必要な地図情報を格納する手段である。例えば、HDDやDVDにより実現される。
【0049】
撮像規則記憶部106には、上記撮像部109を用いて分岐地点を撮像する際の規則(以下、撮像規則と呼ぶ)に関するデータが記憶される。撮像規則記憶部106に記憶されるデータの詳細については後述する。
【0050】
撮像規則設定部107は、経路探索部102により探索された経路上の分岐地点を抽出する。そして、分岐地点それぞれに対して、地図DB105に記憶されている分岐地点にかかる道路の道幅に関する情報、および撮像規則記憶部106を参照し、撮像の開始・終了タイミング等の撮像規則を設定する。また、撮像規則設定部107は、当該設定した撮像規則を制御部108に出力する。
【0051】
制御部108は、上記撮像規則に基づいて撮像部109を制御する。また、制御部108は、撮像部109により撮像された画像を表示部110へ出力する。
【0052】
撮像部109は、車両の前方を撮像する。撮像部109は、例えば、CCD(Charge Coupled Devices)カメラやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラなどで実現される。当該カメラは車内、車外いずれに設置されてもよいが、車内であればルームミラー付近の位置、車外であれば車体の屋根部など、路面から高い位置に設置されることが望ましい。なお、本実施形態においては、説明の便宜上、撮像部109は、300m先に分岐地点である交差点があると仮定した場合に、当該交差点がカメラ画像の中心に来るような位置・向きにあらかじめ設置されているものとする。
【0053】
表示部110は、撮像部109により撮像された画像を表示する。表示部110は、液晶ディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ、画像をフロントガラスに投影する投影装置等で実現される。
【0054】
次に、本実施形態におけるナビ装置が行うナビゲーションの概要について説明する。まず、ドライバが車に乗り込み、目的地の情報をナビ装置に入力することで、ナビ装置は、目的地までの経路を探索する。当該経路が探索できれば、経路上に存在する、右折あるいは左折すべき交差点や高速道路の出口などの分岐地点を抽出し、分岐地点毎に上述したような撮像規則を設定する。本実施形態では、分岐地点の300m手前からナビゲーションを開始し、分岐地点に到達したらナビゲーションを終了するという撮像規則を設定するものとする。その後、ドライバは運転を開始する。そして、分岐地点となる交差点(以下、分岐交差点と呼ぶ)から300mの距離に自車が近づくと、撮像部109(以下、カメラと呼ぶ)で車両の前方にかかる画像の撮像を開始する。これに併せて、表示部110には、当該カメラで撮像される実写画像が表示される。このとき、表示部110には、カメラで撮像した画像のうち、分岐交差点の近傍の画像領域のみがデジタルズームで拡大され、さらに、交差点における進行方向を表す矢印が重畳された画像が表示される。その後、分岐交差点に接近するに伴い、デジタルズームの対象となる領域を大きくし、ズームの倍率を下げていく。すなわち、表示部110には、常に同じくらいの範囲で分岐交差点近傍の画像が表示されるようにする。
【0055】
図2〜図4は、当該ナビゲーションの概要を模式的に示す図である。まず、図2(A)は、分岐交差点から300m手前の地点におけるカメラに映る画像を模式的に示す図である。この画像に対して、表示部110には、図2(B)に示すような画像が表示される。つまり、図2(A)に示すカメラ画像の真中近傍の領域21(以下、表示対象領域と呼ぶ)のみをデジタルズーム(ここでは10倍とする)して、表示部110に表示する。図3は、100m手前の地点まで近づいたときにおけるカメラが捕らえる画像(図3(A))と表示部110に表示される画像(図3(B))とを示す図である。図3(A)に示すように、カメラ画像では300m手前地点の画像よりも分岐交差点に近づいた画像となる。この画像に対し、表示対象領域21を300m手前のときより大きくし、ズームの倍率を下げて(ここでは7倍とする)、表示部110に表示する。その結果、図3(B)に示すように、ナビゲーションの画面として、300m手前の時と同じくらいの範囲で分岐交差点近傍の画像が表示される。図4は、50m手前の地点まで近づいたときにおけるカメラ(図4(A))と表示部110(図4(B))の画像を示す図である。この状態になると、カメラの画像はかなり分岐交差点に近づいた画像となっている。この画像に対し、表示対象領域21を100m手前のときの表示対象領域21よりも大きくし、ズームの倍率を更に下げて(ここでは2倍)表示部110に表示する。その結果、図4(B)に示すように、表示部110には300mおよび100m手前の時と同じくらいの範囲で分岐交差点近傍の画像が表示される。そして、分岐交差点を通過すれば、当該案内を終了する。以上のように、自車と分岐地点との距離に応じて、カメラ画像のうち表示対象領域(つまり、デジタルズームすべき領域)とそのズームの倍率を適宜変化させて画面に表示することで、ドライバに対し、常に交差点近傍の適切な画像を表示することが可能となる。
【0056】
次に、本実施形態のナビゲート処理を実行するために必要な各種テーブルについて説明する。本実施形態では、案内タイミングマスタ50、初期表示領域テーブル60、および変化率マスタ80が用いられる。案内タイミングマスタ50および変化率マスタ80は、あらかじめ作成され、撮像規則記憶部106に格納されるテーブルである。一方、初期表示領域テーブル60は、上記撮像規則設定部107により生成されて、図示しないメモリに記憶される。そして、制御部108が、当該メモリに記憶された初期表示領域テーブル60を参照して、撮像部109を制御する。
【0057】
図5は、案内タイミングマスタ50のデータ構造の一例を示した図である。案内タイミングマスタ50は、開始距離51と終了距離52とから成る。開始距離および終了距離は、ドライバに対して進路の案内を行う期間を示すものである。分岐地点に対し、車両が開始距離まで近づいたら、画像の提示による案内を開始し、終了距離まで来たら、当該案内を終了する。本実施形態では、開始距離は300m、終了距離は0mであるとして、以下説明する。なお、開始距離や終了距離は、これに限らず、例えば、分岐交差点50m手前で案内を終了するようにしても良いことは言うまでもない。
【0058】
図6は、初期表示領域テーブル60のデータ構造の一例を示した図である。初期表示領域テーブル60は、分岐地点ID61と初期表示領域座標62と初期倍率63との集合からなる。分岐地点ID61は、上記各分岐地点を識別するためのIDである。初期表示領域座標62は、撮像部109で撮像される画像のうち、ナビゲーション開始時における表示部110に表示すべき表示対象領域を示すためのものである。初期倍率63は、ナビゲーション開始時におけるデジタルズームの倍率である。ここで、初期表示領域について説明する。初期表示領域とは、ドライバに対して画像の提示を開始する際(上述した例では、分岐交差点まで300mに接近した時点)に表示部110に表示すべき実風景の画像領域(すなわち、ナビゲート開始時の表示対象領域)を示す。初期表示領域について、図7を用いて説明する。図7は、分岐交差点を模式的に表現した図である。図7において、分岐交差点幅をαmとした場合、少なくとも、その左右δmづつを含む領域が表示されるように初期表示領域の水平方向の幅が設定される。換言すれば、当該領域を含むに十分な、広い範囲の画像が撮像できるように、あらかじめ撮像部109の取り付け位置や撮像倍率を設定しておく。分岐交差点幅についての情報は、上記地図DB105に記憶されている。そのため、初期表示領域は、地図DB105を参照し、分岐交差点ごとに適応的に設定される。分岐交差点までの距離、および撮像範囲の水平方向の幅が定まると、初期表示領域の大きさが一意に決定されることになる。なお、初期表示領域を含む表示対象領域について、本実施形態では、カメラ画像の中心点が表示対象領域の中心点と一致するように決定する。但し、これに限らず、表示対象領域は、例えば分岐交差点手前50mの領域が表示されるように設定するようにしてもよい。すなわち、カメラ画像の中心点に対して、表示対象領域の中心点が下方に来るように表示対象領域を決定してもよい。また、地図DB105に分岐交差点幅についての情報が記憶されていない場合には、道路の車線数に関する情報と車線幅の概算値などを用いて決定してもよい。
【0059】
図8は、変化率マスタ80のデータ構造の一例を示した図である。変化率マスタ80は、初期倍率81と分岐地点までの各距離における距離毎倍率82との集合からなる。初期倍率81は、上述の初期倍率63に対応するものである。距離毎倍率82は、分岐地点までの距離に応じて表示対象領域について施すべきデジタルズームの倍率を示す。ここで、当該変化率について説明する。ここでいう変化率とは、自車と分岐地点との距離に応じた、表示対象領域に施すデジタルズームの倍率の変化量を示すものである。当該倍率の変化の一例を図9に示す。図9は、進路の案内のために画像の提示を開始する位置(分岐地点までの距離300m)におけるデジタルズームの倍率を10.0とした場合に、分岐地点までの距離30mにおいて倍率が1となるまで一定の割合づつ倍率を低下させる規則を表している。このような規則を設けることによる効果について、図10を用いて説明する。分岐地点までの距離に関わらず倍率が一定値であった場合、図10(A)に示すように遠隔地点(例えば、分岐地点までの距離300m)において分岐交差点付近を撮像対象領域に含む撮像倍率を設定すると近傍地点(例えば、分岐地点までの距離30m)では分岐交差点全体を撮像することができない。これに対し、分岐地点への接近に伴って撮像倍率を低くする(つまり、撮像画角を大きくする)ように撮像変化率を定義すると、図10(B)に示すように遠隔地点、近傍地点いずれにおいても分岐交差点全体を撮像することが可能となり、ドライバに対して好ましい画像を提供することができる。
【0060】
なお、変化率については上述した数値(距離30mで1倍など)の限りではなく、カメラの性能や車両への取り付け位置等、種々の条件を勘案して任意に定めることができる。また、単位変化量に関しても図9に示すような一定値ではなく、分岐地点へ接近するほど変化量を大きくしたり、小さくしたりするなど任意に定めてもよい。
【0061】
以下、図11〜図12を用いて、ナビ装置100で行われるナビゲート処理の詳細動作を説明する。図11は、本実施形態におけるナビゲート処理の詳細を示すフローチャートである。図11において、まず、経路探索部102は、入力部101を介してドライバによる目的地の情報が入力されたか否かを判定する(ステップS101)。その結果、目的地の情報の入力がされていなければ(ステップS101でNO)、目的地の情報が入力されるまで当該判定を繰り返す。一方、目的地の情報が入力されれば(ステップS101でYES)、経路探索部102は、位置情報検出部103により検出される自車位置情報を取得し、これに基づいて目的地に至る経路の探索を行う(ステップS102)。
【0062】
次に、撮像規則設定部107は、探索された経路における分岐地点に関する情報を地図DB105から取得し、撮像規則記憶部106を参照して、各分岐地点における撮像規則を設定するための撮像規則設定処理を行う(ステップS103)。図12は、上記ステップS103で示した撮像規則設定処理の詳細を示すフローチャートである。図12において、まず、撮像規則設定部107は、図11のステップS102で探索した経路上に存在する分岐地点の情報を経路探索部102から取得する(ステップS201)。当該情報には、少なくとも、分岐地点の位置情報および分岐地点にかかる道路の道幅についてのデータが含まれる。
【0063】
次に、撮像規則設定部107は、撮像規則記憶部106から案内タイミングマスタ50を参照し、開始距離51および終了距離52を取得する(ステップS202)。ここでは、全ての分岐地点について、開始距離は300mであり、終了距離は0mであるものとする。すなわち、分岐地点の300m手前に来たときに、以下に述べるようなナビゲーション画面(以下、ナビ画面と呼ぶ)を表示部110に表示し、当該分岐地点に到達すると、ナビ画面の表示を終了する。
【0064】
次に、撮像規則設定部107は、各分岐地点における初期撮像領域を設定する(ステップS203)。すなわち、上述した初期表示領域テーブル60の生成を行う。このステップS203の処理をより具体的に説明すると、撮像規則設定部107は、ステップS201で取得した各分岐地点の道幅に応じて所定のマージンを加え、初期表示領域の水平幅を決定する。次に、当該水平幅に応じて所定の垂直方向の幅を決定して初期表示領域座標62を決定する。次に、上記水平幅および上記開始距離51とに基づいて、ナビ画面を表示する際のデジタルズームの倍率となる初期倍率63を設定する。なお、表示対象領域の大きさは、カメラ画像について、ピクセル単位の座標を用いて指定するものとする。
【0065】
次に、撮像規則設定部107は、変化率を設定する(ステップS204)。具体的には、撮像規則設定部107は、上記初期倍率63に応じて、上記変化率マスタ80から距離毎倍率82を読み込み、対象となる分岐地点に関連付けてメモリに記憶する。
【0066】
次に、経路上の全ての分岐地点について、上記のような撮像規則が設定されたか否かを判定する(ステップS205)。全ての分岐地点について撮像規則を設定していない場合は(ステップS205でNO)、撮像規則設定部107は、上記ステップS201に戻って処理を繰り返す。一方、全ての分岐地点について撮像規則を設定した場合は(ステップS205でYES)、撮像規則設定部107は、当該撮像規則設定処理を終了する。
【0067】
図11に戻り、ステップS103の処理の次に、距離算出部104は、自車位置と分岐地点までの距離を算出し、当該算出した結果を制御部108へ通知する(ステップS104)。
【0068】
続いて、制御部108は、距離算出部104により算出された距離が、制御部108において、撮像規則設定部107により設定された開始距離51以下であるか否か(すなわち、分岐地点の手前300m以内に入ったか)を判定する(ステップS105)。当該判定の結果、開始距離51以下ではない場合は(ステップS105でNO)、ステップS104に戻って処理を繰り返す。一方、開始距離51以下である場合は(ステップS105でYES)、制御部108は、撮像規則設定部107により設定された撮像規則に基づき撮像部109を制御する(ステップS106)。具体的には、制御部108は、カメラによる撮像を行い、上述したような表示対象領域を切り出す。そして、制御部108は、上記算出された距離に応じた距離毎倍率82に基づいて当該表示対象領域をデジタルズームした画像を生成する。
【0069】
次に、制御部108は、分岐地点における進行方向を示す矢印画像22(図2(B)等参照)を重畳(オーバレイ)した画像を生成する(ステップS107)。このステップS107の処理をより具体的に説明すると、まず、制御部108は、分岐地点までの距離とカメラの向きとに基づいて、矢印の角度、傾き、大きさを計算する。そして、当該計算結果に基づいて矢印画像22を生成する。最後に、生成した矢印画像22を上記デジタルズームを施した画像に重畳することで、ナビ画像を生成する。
【0070】
次に、制御部108は、上記ステップS107で生成されたナビ画像を、表示部110に出力する(ステップS108)。すなわち、表示部110には、上記図2(B)に示したような画像が表示されることになる。
【0071】
次に、制御部108は、分岐地点と自車との距離が終了距離52に達したか否かを判定する(ステップS109)。その結果、まだ終了距離52に達していないときは(ステップS109でNO)、ステップS104に戻って処理を繰り返す。一方、終了距離52に達したときは(ステップS109でYES)、撮像部109に対する制御、および表示部110への画像出力を終了し、処理を次のステップS110に進める。
【0072】
ステップS110においては、制御部108は、目的地に到達したか否かを判定する(ステップS110)。その結果、目的地にまだ到着していないときは(ステップS110でNO)、目的地に到達するまで、残りの分岐地点に対してステップS104以降の処理を繰り返す。一方、目的地に到達したら(ステップS110でYES)、当該ナビゲーション処理を終了する。
【0073】
このように、第1の実施形態では、車両に設置されたカメラにより撮像された分岐地点の画像を用いて経路の案内を行う際に、カメラの画像からドライバにとって必要となる実風景の画像を分岐地点までの距離に応じて切り出し、拡大して提示する。これにより、ドライバにとって必要となる、分岐地点近傍の画像を把握しやすい形で表示でき、ドライバに安全な運転を行うことを可能とさせる。
【0074】
なお、上記実施形態では、表示対象領域について、その中心点をカメラ画像の中心点と常に一致させているが、これに限らず、表示対象領域の中心点を、分岐地点との距離に応じて、例えば、進行方向(分岐方向)寄りにシフトさせるようにしてもよい。図13は、表示対象領域を進行方向へシフトする様子を模式的に示した図である。図13において、範囲121は分岐交差点の300m手前の時点での表示対象領域を示している。当該分岐交差点での進路が右折である場合、自車が分岐交差点近傍に接近した際には右折後の道路状況などに注意を払って(歩行者などと接触しないために)運転を行わなければならないため、あらかじめ右折方向の画像をドライバに提示して注意を促すことが望ましい。そこで、分岐交差点への接近に伴い、表示対象領域を初期の範囲121から自車の進行方向である範囲122へシフトさせるようにしてもよい。具体的には、上記変化率マスタで、表示対象領域のシフト量(何ピクセルずらすか)を分岐地点までの距離に応じて定義しておけばよい。あるいは、車両の現在地座標と分岐地点(ノード)の座標と車両の方向とに基づいて、シフト量を算出するようにしてもよい。そして、上記ステップS106において、制御部108は、当該分岐地点における進行方向および上記シフト量に応じて、右あるいは左に表示対象領域をシフトしてから当該領域を切り出し、デジタルズームを施すようにすればよい。また、このような左右方向の移動だけでなく、更には、図14に示すように上下方向への移動、あるいは上下・左右方向の双方の移動を定義してもよい。
【0075】
更に、進行方向だけではなく、例えば、歩行者などの物体に応じて表示対象領域を変化させるようにしてもよい。この場合は、例えば、制御部108に画像認識機能を持たせる。そして、撮像した画像を分析し、進行方向に歩行者が検出された場合には、その歩行者が表示対象領域に含まれるように表示対象領域を適宜シフトさせるようにしてもよい。これにより、歩行者等を目視しやすくなり、より安全な運転をドライバに行わせることが可能となる。
【0076】
また、分岐地点への接近に伴って撮像される画像に対して、視点変換を行ってもよい。当該視点変換について、図15および図16を用いて説明する。視点変換とは、実画像に対して座標変換を行うことで、実際とは異なった視点(仮想視点)からの画像を生成する技術である。この場合は、撮像規則記憶部106に、座標変換のための所定の規則を記憶した座標変換テーブルを格納しておく。そして、制御部108は、当該座標変換テーブルの規則に従って視点変換を行い、表示部110に表示するようにすればよい。例えば、座標変換テーブルに、図15(B)に示すような、高さh2、カメラ光軸の俯角(地面と平行な面に対するカメラ光軸の下向きの角度)ω2の視点に変換するための規則(仮想視点1用規則)と、図15(C)に示す高さh3、俯角ω3の視点に変換するための規則(仮想視点2用規則)の2種類の規則を定義しておく。そして、撮像される画像に対して、例えば、分岐地点まで50mから70mの間は仮想視点2用規則を、50m以内では仮想視点3用規則を適用して座標変換が行われ、生成された画像をドライバに提示する。具体的には、撮像規則設定部107は、案内開始タイミング以後、自車位置が分岐地点から50mから70mの地点にあるときは、画像に対して仮想視点1への視点変換を、分岐地点から50m以内の地点では、画像に対して仮想視点2への視点変換を行うことを決定する。制御部108は、距離算出部104により算出される自車位置と分岐地点までの距離に応じて撮像規則設定部107で選択された座標変換テーブルを用い、撮像部109により撮像される画像に座標変換処理を施して、表示部110に出力する。ここで、図15(A)に示すように車両に搭載された撮像部109の高さをh1、俯角をω1(以上、カメラ視点と呼ぶ)とすると、h1<h2<h3、ω1<ω2<ω3の関係が成り立つものとする。すなわち分岐地点への接近に伴い、より高い視点の画像に視点変換される。
【0077】
ここで、視点変換のアルゴリズムについて説明する。カメラ視点で撮像された画像を仮想視点2から見た画像に変換するアルゴリズムは、カメラ視点での撮像部109のカメラパラメータと仮想視点2のカメラパラメータから幾何学的に一意に決定される。以下、その手法について述べる。まず、第一ステップで、仮想視点におけるカメラパラメータから求められる地面座標系と、この仮想視点における仮想撮像素子面座標系との対応関係を求める。これにより、仮想撮像素子面座標系の各画素が、地面座標系上のどの位置に相当するのかが算出される。第二ステップで、仮想視点2における地面座標系と、撮像部109のカメラパラメータから求められる地面座標系との対応関係を求める。これにより、仮想視点2における地面座標系の各座標が、撮像部109のカメラパラメータにおける地面座標系上のどの位置に相当するのかが算出される。第三ステップで、撮像部109のカメラパラメータにおける地面座標系と、撮像部109のカメラパラメータにおける撮像素子面座標系との対応関係を求める。これにより撮像部109のカメラパラメータにおける地面座標系の各座標が、撮像部109のカメラパラメータにおける撮像素子面座標系上でのどの位置に相当するのかが算出される。このような処理を行うことで、撮像部109の撮像素子面座標系と仮想視点2における仮想撮像素子面座標系とが対応付けられ、撮像規則記憶部106中に変換テーブルとして記憶される。以上の処理はカメラパラメータが既知であるいずれの仮想視点においても可能である。
【0078】
図16に、50m地点における視点変換の効果を表す模式図を示す。図16(A)はこの地点でのカメラ視点における撮像画像、図16(B)は仮想視点2へ座標変換処理を施した画像である。視点変換で分岐交差点付近を高い視点からの画像に変換すると、図16(B)のように交差点から離れた領域であるβは表示対象領域からはずれるが、分岐交差点付近の領域αについて、より大きく表示される。そのため、ドライバは、分岐交差点付近の状況をより把握しやすくすることが可能となる。
【0079】
このように、視点を変換することにより、ドライバにとってより有用な情報を提供することが可能となる。この点についてより詳しく説明する。分岐地点に接近すると、分岐方向などを特定するためにより詳細な情報(「あのコンビニの向こうを左折」、「あの信号機の手前を左折」など)が必要になる。そのため、ドライバにとっては図15の領域βのように分岐地点から離れた領域の情報はそれほど重要でなく領域αの詳細な情報をより必要とする。そこで、分岐地点への接近に伴い高い視点へと視点変換を行うことで、領域αを大きく、詳細に表示することが可能となる。これにより図16(A)の領域αでは確認しづらい物体であっても、図16(B)の領域αでは確認しやすくなり、また重畳する案内矢印の分岐方向を示す部分の幅も広く描画することができるため、ドライバにとっては自身の分岐方向の判断が容易になるという効果が生じる。
【0080】
(第2の実施形態)
次に、図17から図20を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。上述の第1の実施形態では、カメラ画像から所定の領域を切り出してデジタルズームを施して表示している。これに対して、第2の実施形態では、デジタルズームを用いずに、光学ズームを用いる。なお、当該実施形態に係るナビ装置は、撮像部109に光学ズームのためにレンズを駆動させる第1の駆動手段(図示せず)、および撮像部109の向きを変えるための第2の駆動手段(図示せず)が含まれる他は、上述した第1の実施形態と同様であるため、同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0081】
次に、第2の実施形態で使用されるデータについて説明する。本実施形態で使用されるデータは、基本的には第1の実施形態と同じであるが、図8を用いて上述した変化率マスタ80の距離毎倍率82は、撮像部109の光学ズームの倍率を示す点が第1の実施形態と異なる。また、初期表示領域テーブル60の初期倍率63も、光学ズームの倍率を示す。すなわち、それぞれの分岐地点の道幅に応じて、ナビゲート開始時における光学ズームの倍率が設定される。
【0082】
以下、図17〜図20を用いて、本発明の第2の実施形態にかかるナビゲート処理を説明する。図17は、第2の実施形態にかかるナビ装置で行われるナビゲート処理を示すフローチャートである。第2の実施形態で行われるナビゲート処理は、ステップS306を除いては、基本的に図10を用いて説明した第1の実施形態におけるナビゲート処理と同様である。そのため、共通する処理については、詳細な説明を省略する。
【0083】
図17において、ステップS105の処理の次に、制御部108は、撮像制御を行う(ステップS306)。第1の実施形態における撮像制御(ステップS106)では、制御部108は、カメラで撮像し、その画像から表示対象領域を切り出していた。これに対し、本実施形態における撮像制御の処理では、制御部108は、上記変化率マスタ80の距離毎倍率82に沿ってカメラの倍率を変化させて、すなわち、光学ズームを行って前方の画像を撮像する。つまり、距離に応じて、カメラの撮像倍率を変化させていくことで、どのような距離であっても、ほぼ同じ範囲の風景が写るようにする。そして、ステップS107では、制御部108は、当該撮像された画像に矢印画像22を重畳し、ステップS108で出力する。
【0084】
図18〜図20を用いて、上記ステップS306の処理について補足説明する。まず、図18(A)は、分岐交差点の手前300mにおけるカメラ画像を模式的に示す図である。また、図18(B)は、このときに表示部110に表示される画像を模式的に示す図である。このときの初期倍率は10倍であるとする。その結果、カメラ画像自体が、分岐交差点近傍をズームアップした画像となっているため、この画像にそのまま矢印画像22を重畳することで、ナビ画面(図18(B))が生成されることになる。図19は、100m手前の画像を模式的に示す図である。この時点では撮像倍率は5倍になっている。この画像(図19(A))に矢印画像22を重畳してナビ画面(図19(B))を生成する。図20は、50m手前の画像を示す模式図である。この時点ではカメラ撮像倍率は2倍である。このカメラ画像(図20(A))に矢印画像22を重畳して、ナビ画面(図20(B))を生成する。
【0085】
このように、撮像倍率を距離に応じて変化させることにより、分岐交差点近傍を拡大したカメラ画像(すなわち、ほぼ同じ範囲が写っている画像)が撮れるため、当該画像に矢印画像22を重ねるだけでナビ画面が生成できる。また、ズームアップされた画像がそのまま出力されるため、デジタルズームを施して出力するときに比べ、鮮明な画像を提供することができる。
【0086】
なお、上記ステップS306において、制御部108は、分岐地点との距離に応じて、カメラの向き(撮像方位)を車両の分岐方向に向けるようにしてもよい。これは、図12を用いて上述した第1の実施形態における、車両の進行方向にあわせて表示対象領域の位置をシフトすることと同様の理由による。
【0087】
更に、上記光学ズームと第1の実施形態で説明したデジタルズームとを組み合わせて用いてもよい。例えば、光学ズーム5倍で撮像した画像に対し、所定の表示対象領域を切り出し、2倍のデジタルズームを施して表示するようにしてもよい。これにより、高倍率の光学ズーム機構を搭載するコストを抑えつつ、デジタルズームのみを用いる場合に比べて鮮明な画像をドライバに提供することが可能となる。
【0088】
また、上述した図1の距離算出部104、撮像規則設定部107および制御部108を撮像部109に含ませるようにしてもよい。例えば、経路探索部102および距離算出部104からのナビゲーションに関する情報を、ナビ装置とは別途独立したカメラユニット(撮像部109)に出力する。そして、カメラユニットにおいて、上述した撮像規則の設定や撮像倍率の制御や画像の編集等を行うことでドライバに提示すべき画像を生成する。その後、当該生成した画像をナビ装置に出力し、ナビ装置が当該画像を表示するようにすればよい。また、上述した図1の距離算出部104、撮像規則設定部107および制御部108を、ナビ装置ともカメラとも独立している外部のユニット(例えば、カメラコントロールユニット)に含ませるようにしてもよい。この場合は、当該外部ユニットは、ナビ装置から経路情報や位置情報を受け取り、上述した撮像規則を設定して、カメラを制御する信号をカメラに出力するようにすればよい。併せて、カメラから画像を受け取り、上述したようなデジタルズームや矢印を重畳する等の処理を行ってから、処理後の画像をナビ装置に出力するようにすればよい。
【0089】
また、上述した各実施形態は、コンピュータに実行させるプログラムの形態で提供されてもよい。この場合は、上記撮像規則記憶部106に格納されたナビゲートプログラムを読み込み、制御部108が図11、12に示すような処理を実行すればよい。また、上述のようなナビゲーション装置を搭載した車両等の移動体の形態で提供されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明にかかるナビゲーション装置、方法および車両は、分岐地点と車両との距離に応じて案内表示すべき画像を変化させることができ、車両内に設置されるカーナビゲーション装置、ディスプレイなどの画像表示装置、車載情報端末、カメラユニットやカメラ制御用のコントロールユニット等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施形態におけるナビゲーション装置のブロック図
【図2】交差点から300m手前の地点におけるカメラに映る画像を模式的に示す図
【図3】交差点から100m手前の地点におけるカメラに映る画像を模式的に示す図
【図4】交差点から50m手前の地点におけるカメラに映る画像を模式的に示す図
【図5】案内タイミングマスタ50のデータ構造の一例を示した図
【図6】初期表示領域テーブル60のデータ構造の一例を示した図
【図7】交差点を模式的に表現した図
【図8】変化率マスタ80のデータ構造の一例を示した図
【図9】ズーム倍率の変化量の一例を示すグラフ
【図10】交差点撮像可能領域を示す図
【図11】本実施形態におけるナビゲート処理の詳細を示すフローチャート
【図12】図11のステップS103で示した撮像規則設定処理の詳細を示すフローチャート
【図13】表示対象領域を進行方向へシフトする様子を模式的に示した図
【図14】表示対象領域を上下方向へシフトする様子を模式的に示した図
【図15】視点変換に突いて説明するための図
【図16】50m地点における視点変換の効果を表す模式図
【図17】第2の実施形態にかかるナビ装置で行われるナビゲート処理を示すフローチャート
【図18】第2の実施形態における分岐地点の画像を模式的に示す図
【図19】第2の実施形態における分岐地点の画像を模式的に示す図
【図20】第2の実施形態における分岐地点の画像を模式的に示す図
【符号の説明】
【0092】
101 入力部
102 経路探索部
103 位置情報検出部
104 距離算出部
105 地図DB
106 撮像規則記憶部
107 撮像規則設定部
108 制御部
109 撮像部
110 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置され、当該車両の前方を撮像する撮像手段が撮像した画像を画面に表示するナビゲーション装置であって、
ユーザにより設定された目的地に至る経路を探索する経路探索手段と、
前記探索された経路上の分岐地点の位置情報を取得する分岐地点情報取得手段と、
前記車両の現在位置を取得する位置情報検出手段と、
前記車両の現在位置から前記分岐地点の位置までの距離を算出する距離算出手段と、
前記算出された距離に応じて、前記画面に表示する画像の表示倍率を変更する制御手段とを備えるナビゲーション装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記算出された距離に応じて、前記撮像手段が撮像した画像の少なくとも一部の領域を所定の表示サイズまで拡大することで前記表示倍率を変更する、請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記算出された距離が短くなるのに応じて前記拡大する領域の大きさを大きくして、当該領域を前記所定の表示サイズまで拡大することで前記表示倍率を変更する、請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記撮像手段が撮像した画像に対して設定する前記拡大する領域の位置を、更に前記分岐地点における車両の分岐方向に応じた方向に移動して、当該領域を前記所定の表示サイズまで拡大することで前記表示倍率を変更する、請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記算出された距離に応じて、前記撮像手段が撮像した画像に対して設定する前記拡大する領域の位置を移動する量を変化させる、請求項4に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記ナビゲーション装置は、
少なくとも前記分岐地点毎の撮像開始および終了のタイミングについての規則と前記分岐地点毎の撮像開始時における前記拡大する領域の大きさについての規則とを含む前記撮像手段の撮像規則を設定する撮像規則設定手段と、
前記分岐地点にかかる道路の道幅についての情報を取得する道幅情報取得手段とを更に備え、
前記制御手段は、前記分岐地点毎における道幅と前記撮像規則とに基づいて、前記撮像開始時における前記拡大する領域の大きさを決定する、請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記算出された距離に応じて前記撮像手段の撮像倍率を変化させることで、前記画面に表示する画像の表示倍率を変更する、請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記算出された距離が短くなるのに応じて前記撮像手段の撮像倍率を下げることで前記表示倍率を変更する、請求項7に記載のナビゲーション装置。
【請求項9】
前記制御手段は、更に前記撮像手段の撮像方位を前記分岐地点における車両の分岐方向に変更して、前記撮像倍率を変更する、請求項7に記載のナビゲーション装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記算出された距離に応じて、前記撮像手段の撮像方位を変更する角度を変化させる、請求項9に記載のナビゲーション装置。
【請求項11】
前記ナビゲーション装置は、
少なくとも前記分岐地点毎の撮像開始および終了のタイミングについての規則と前記分岐地点毎の撮像開始時における前記撮像手段の撮像倍率についての規則とを含む前記撮像手段の撮像規則を設定する撮像規則設定手段と、
前記分岐地点にかかる道路の道幅についての情報を取得する道幅情報取得手段とを更に備え、
前記制御手段は、前記分岐地点毎における道幅と前記撮像規則とに基づいて、前記撮像開始時における前記撮像倍率を設定する、請求項7に記載のナビゲーション装置。
【請求項12】
前記ナビゲーション装置は、前記撮像手段によって撮像された画像から画像認識を行うことで人を検出する認識手段を更に備え、
前記制御手段は、前記検出された人の位置に応じて前記撮像手段の撮像方位を変更してから前記撮像倍率を変更する、請求項7に記載のナビゲーション装置。
【請求項13】
前記表示倍率が変更された画像を仮想視点から見た画像に視点変換する仮想視点変換手段を更に備える、請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項14】
前記仮想視点変換手段は、前記分岐地点との距離が短くなるのに応じて、前記仮想視点の高さを相対的に高くする、請求項13に記載のナビゲーション装置。
【請求項15】
前記制御手段によって前記表示倍率が変更された画像に更に別の画像を重畳する画像編集手段を更に備える、請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項16】
車両に設置され、当該車両の前方を撮像する撮像手段が撮像した画像を取得する撮像画像取得ステップと、
ユーザにより設定された目的地に至る経路と当該経路上の分岐地点の位置情報と前記車両の現在位置とを取得する情報取得ステップと、
前記車両の現在位置から前記分岐地点の位置までの距離を算出する距離算出ステップと、
前記算出された距離に基づいて画面に表示する前記画像の表示倍率を変更する制御ステップとを有するナビゲート方法。
【請求項17】
前記制御ステップにおいては、前記算出された距離に応じて、前記撮像画像取得ステップにおいて取得した画像の少なくとも一部の領域を所定の表示サイズまで拡大することで前記表示倍率を変更する、請求項16に記載のナビゲート方法。
【請求項18】
前記制御ステップは、前記算出された距離に応じて前記撮像手段の撮像倍率を変化させることで、前記画面に表示する画像の表示倍率を変更する、請求項16に記載のナビゲート方法。
【請求項19】
移動方向の前方にかかる風景を撮像する撮像手段が設置可能な車体と、
前記撮像手段が撮像した画像を画面に表示するナビゲーション装置とを備え、
前記ナビゲーション装置は、
ユーザにより設定された目的地に至る経路を探索する経路探索手段と、
前記探索された経路上の分岐地点の位置情報を取得する分岐地点情報取得手段と、
前記移動体の現在位置を取得する位置情報検出手段と、
前記移動体の現在位置から前記分岐地点の位置までの距離を算出する距離算出手段と、
前記算出された距離に応じて、前記画面に表示する画像の表示倍率を変更する制御手段とを含む車両。
【請求項20】
前記撮像手段は、前記車両の車室内に設置されることを特徴とする、請求項19に記載の車両。
【請求項21】
前記撮像手段は、前記車両の車室外に設置されることを特徴とする、請求項19に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−94045(P2007−94045A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283647(P2005−283647)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】