説明

ナビゲーション装置およびナビゲーション方法

【課題】運転者の行動の傾向や性格に合わせた適切な経路案内サービスを行なうこと。
【解決手段】運転行動監視部11は、車両制御系20の動作状態を監視して運転行動データベース13に蓄積する。行動様式分類部14は、蓄積した運転行動から運転者の行動様式を分類する。経路案内ユニット19は行動様式分類部14および定常性判断部15の出力結果に基づいてドライバ特性テーブル16および定常性テーブル17を参照し、経路探索や案内処理の処理内容を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の運転時に経路案内を行なうナビゲーション装置およびナビゲーション方法に関し、特に運転者に合わせた適切な経路案内サービスを行なうナビゲーション装置およびナビゲーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の運転操作を支援するため、目的地までの経路を探索して設定し、設定した経路に沿って走行するよう案内するナビゲーション装置が実用化されている。
【0003】
さらに、ナビゲーション装置による案内を的確に行なうため、全ての運転者に同一の案内を行なうのではなく、例えば運転者が渋滞を迂回する傾向から迂回経路案内を行なう基準を変更する技術(例えば特許文献1参照。)や、運転者の運転習熟度から案内を行なうタイミングや案内の内容を変更する技術(例えば特許文献2,3および4参照。)が考案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−90877号公報
【特許文献2】特開2003−262530号公報
【特許文献3】特開2004−301547号公報
【特許文献4】特開2004−325255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術では、渋滞迂回の実績から渋滞回避の案内を、運転の習熟度から案内出力を制御することで、ある程度、運転者に合わせた案内を行なうことができる。
【0006】
しかし、例えば同程度の習熟度であっても、詳細な案内を望む運転者や、案内が少ないことを好む運転者が居る。また、渋滞迂回の実績は学習が終了するまでの期間が長くなり、運転者に適合した案内を行なうことができるまでに時間が必要である。
【0007】
すなわち、従来の技術では、運転者ごとのナビゲーション処理の適合が不十分であるという問題点があり、運転者の行動の傾向や性格にさらに適合した案内を行なう技術の実現が重要な課題となっていた。
【0008】
本発明は、上述した従来技術における問題点を解消し、課題を解決するためになされたものであり、運転者の行動の傾向や性格に合わせた適切な経路案内サービスを行なうナビゲーション装置およびナビゲーション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係るナビゲーション装置およびナビゲーション方法は、運転者による運転操作を監視して蓄積し、蓄積結果から運転者の行動様式を分類し、分類結果に基づいて運転者への経路案内を行なう。
【発明の効果】
【0010】
本発明によればナビゲーション装置およびナビゲーション方法は、運転者の運転行動から行動様式を分類し、分類結果に基づいて経路案内することで、運転者の行動の傾向や性格に合わせた適切な経路案内サービスを行なうナビゲーション装置およびナビゲーション方法を得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、この発明に係るナビゲーション装置およびナビゲーション方法の好適な実施例について詳細に説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の実施例であるナビゲーション装置1の概要構成を示す概要構成図である。同図に示すように、ナビゲーション装置1は、車両制御系20、GPS(Global Positioning System)ユニット31、ジャイロ32、操作入力機構41、ディスプレイ42およびスピーカ43と接続する。
【0013】
車両制御系20は、車両の動作制御を行なう装置群であり、アクセルペダルの操作に基づいてエンジンの動作を制御するエンジン制御機構21、ブレーキペダルの操作に基づいて車両の制動を行なうブレーキ制御機構22、ハンドル操作に基づいて車両の舵角を制御する舵角制御機構23、ヘッドライトやウインカーランプなどの車載灯具を制御する灯火制御機構24などを含む。
【0014】
この車両制御系20は、運転者の操作に応答して車両制御を行なうとともに、その動作状態、すなわち運転者による操作状態をナビゲーション装置1に出力する。
【0015】
GPSユニット31は、人工衛星からの電波を受信して自車両の座標を算出するユニットであり、ジャイロ32は自車両が向いている方向を特定する装置である。
【0016】
操作入力機構41は、タッチパネルやスイッチなど、車両乗員(特に運転者)からの操作を受け付ける入力手段である。またディスプレイ42は、車両乗員に対して表示による通知を行なう出力手段であり、スピーカ43は車両乗員に音声による通知を行なう出力手段である。これらの入出力手段は、ナビゲーション装置1の入出力の他、図示しない車載オーディオ装置など各種車載装置で共用することができる。
【0017】
ナビゲーション装置1は、目的地までの経路を探索して設定し、設定した経路に沿って走行するよう経路案内をする装置である。また、ナビゲーション装置1は、運転者の運転操作を監視して解析し、運転者の行動様式を分類する。そして、この分類結果を経路案内に利用することで、運転者に合わせた経路案内を実現する。
【0018】
具体的には、ナビゲーション装置1はその内部に運転行動監視部11、運転者識別部12、運転行動データベース13、行動様式分類部14、定常性判断部15、ドライバ特性テーブル16、定常性テーブル17、地図データベース18および経路案内ユニット19を有する。
【0019】
運転行動監視部11は、車両制御系20から運転操作の状態を取得することで運転者の運転行動を監視し、取得した運転操作を運転行動データベース13に蓄積する。
【0020】
また、運転者識別部12は、運転者の個人識別を行なう処理部である。この運転者の識別は、例えば運転者を撮影した画像に対する画像処理や生体認証によって行なってもよいし、運転者ごとに専用のキーを割り当てるようにしてよい。また、運転者自身の入力に基づいて識別するようにしてもよい。
【0021】
運転行動データベース13は、運転行動監視部11が取得した運転操作を記憶する場合に、運転者識別部12による識別結果を利用し、運転者毎に運転行動監視手段による監視結果を蓄積する。
【0022】
行動様式分類部14は、運転行動データベース13に蓄積された運転行動に基づいて、運転者の行動様式、すなわち運転者の行動の傾向や性格を分類する。また、定常性判断部15は、運転者の状態が疲労などによって通常の状態(定常状態)から逸脱しているか否かを判断する。
【0023】
経路案内ユニット19は、運転者に対する経路案内を行なうユニットであり、その内部に経路探索部19a、案内処理部19b、自車位置特定部19cを有する。自車位置特定部19cは、GPSユニット31およびジャイロ32の出力と地図データベース18に格納された地図データとを用いて自車両の現在位置を特定する処理を行なう。
【0024】
経路探索部19aは、現在位置から目的地への適切な走行性路を探索して設定する処理を行なう。そして案内処理部19bは、経路探索部19aが設定した経路に沿って走行するよう表示出力や音声出力を用いた案内を行なう処理部である。
【0025】
ここで、経路探索部19aによる経路探索や、案内処理部19bによる案内出力は、行動様式分類部14による分類結果や定常性判断部15による判断結果に基づいて制御するので、運転者の行動の傾向や性格、疲労状態に適合した経路案内を行なうことができる。
【0026】
行動様式分類部14は、具体的には、運転者を図2に示す4つのグループ(グループG1〜G4)に分類する。グループG1には、几帳面な運転傾向で、せっかちではなく、運転技術に多少なりとも自信のある、などの項目に該当する運転者を分類する。また、グループG2には、心配性、不安定、消極的、几帳面な運転傾向、運転技術に自信が無い、などの項目に該当する運転者を分類する。
【0027】
同様に、グループG3には、運転技術に多少なりとも自信がある、消極的、などの項目に該当する運転者を分類する。そして、グループG4には、運転技術に自信がある、せっかち、心配性ではない、消極的ではない、などの項目に該当する運転者を分類する。なお、ここに示した分類の数と項目はあくまで一例であり、適宜変更することができる。
【0028】
これらの分類は、運転者の運転行動から行なう。例えば図3に示す様に、一定以上の操舵角時の平均速度、右左折などにおける平均速度を解析すると、グループG1とグループG4は速度が高く、グループG2は速度が低い傾向がある。
【0029】
そこで、第1の閾値と第2の閾値(第1の閾値>第2の閾値)を設定し、運転者の運転傾向から、例えばハンドルの操作量が200度以上となった場合の平均速度が第1の閾値を越える傾向にあれば運転者がグループG4もしくはグループG1に属する可能性が高く、第2の閾値以下の速度をとる傾向があればグループG2に属する可能性が高いと判断することができる。
【0030】
そして、アクセルペダル操作およびブレーキペダル操作では、グループG2は単位時間当たりの変化量が大きい(操作が滑らかでない)傾向があり、ハンドル操作の単位時間当たりの変化量はグループG1が小さく、グループG4が大きい傾向がある。
【0031】
さらにカーブでの車速は、グループG4がメリハリの大きい(速度の変化が大きい)傾向があり、走行速度の分布についてはグループG1は法定速度付近での分布が高く、グループG4は全体的に高速で運転しがちであり、グループG2は速度のばらつきが大きい。
【0032】
このように、運転行動を参照して定められた運転者の分類は、図4に示すように経路案内に適用される。
【0033】
まず、最初に目的地までの経路を探索する場合、運転者がグループG2に分類されていれば運転し易さを優先した経路探索を行なう。具体的には、細い道路を避け、右左折(特に左折)をなるべく少なくした上で目的に到達する経路を探索する。一方で、運転者がグループG4に分類されていれば、速度を優先した経路探索を行なう。
【0034】
また、走行途中で渋滞に遭遇する場合、運転者がグループG2に分類されている場合には渋滞回避の提案を行なわず、グループG4に分類されている場合に渋滞回避ルートの選択と提案を実行する(グループG1,グループG3の場合は、渋滞に遭遇することを通知し、運転者が渋滞回避を選択した場合には渋滞を回避可能な経路を探索して提案する。)。
【0035】
また、例えば日帰りでのレジャープランをナビゲーション装置1が提案する場合、運転者がグループG2に分類されていれば走り易い道路で早めに帰宅可能なプランを提案する。
【0036】
また、目的地への到達予定時間が目標時間よりも早い場合、運転者がグループG1,グループG3,グループG4のいずれかに分類されていれば、追加の目的地やプランを提案する。
【0037】
つぎに、分類結果と定常性の判断結果を案内処理に適用する場合の例について図5を参照して説明する。同図に示す様に、運転者が右左折などの行動を起こす必要のある位置から700m手前での音声案内は、常に行なうが、グループG4に分類した運転者に対しては300m手前での通知は行なわない。但し、グループG4に分類した運転者であっても、運転者が定常状態を逸脱している場合、例えば運転者が疲れている場合には、300m手前での通知を行なう。
【0038】
また、右折する交差点近傍での交差点の拡大図表時については、グループG1〜G3に分類した運転者に対しては常に実行するが、グループG4に分類した運転者に対しては運転者が希望する場合のみ実行する。
【0039】
さらに、グループG2の運転者に対しては右左折時における理想速度を通知するが、グループG4の運転者に対しては行なわず、グループG1,G3の場合は運転者が希望する場合のみ実行する。なお、グループG1の運転者が非定常状態であれば、理想速度の通知は自動実行する。
【0040】
さらに、自車両の速度が理想速度を超過する場合、グループG2の運転者の場合は常に通知し、グループG4では行なわず、グループG1,G3では運転者が希望する場合にのみ通知する。なお、運転者が非定常状態であればその分類に関わらず通知を自動実行する。
【0041】
同様に、グループG2の運転者には右左折時に適切な待機場所の通知を行ない、グループG4では行なわず、グループG1,G3では運転者が希望する場合にのみ通知する。なお、運転者が非定常状態であり、グループG1〜G3に分類されていれば通知を行なう。
【0042】
さらに、運転者がグループG2に分類されている場合には、右左折を実行する場合に適切なタイミングを通知する案内を行なう。
【0043】
つづいて、ナビゲーション装置1の動作のうち、本発明に特に重要な処理について説明する。まず、運転行動監視部11は、図6に示すように運転者による運転行動を監視し(ステップS101)、運転者識別部12による識別結果に対応付けて運転行動データベース13に蓄積する(ステップS102)処理を繰り返し実行する。
【0044】
そして行動様式分類部14は、図7に示す様に運転行動データベース13から、その時点の運転者の運転行動を読み出し(ステップS201)、運転行動を解析して行動様式を分類する(ステップS202)処理を繰り返す。
【0045】
同様に、定常性判断部15は、運転行動データベース13から運転者の運転行動を読み出し(ステップS301)、運転行動の傾向に変化がない(ステップS302,No)場合には定常状態と判定し(ステップS303)、運転行動の傾向に変化がある(ステップS302,Yes)場合には非定常状態と判定する(ステップS304)処理を繰り返す。
【0046】
分類結果や定常状態の判断結果に対応する経路案内処理の内容はドライバ特性テーブル16および定常性テーブル17にそれぞれ格納されているので、経路案内ユニット19は行動様式分類部14および定常状態判断部15の出力結果に基づいてドライバ特性テーブル16および定常性テーブル17を参照することで、実行する経路案内処理の内容を適切に変化させることが可能となる。
【0047】
上述してきたように、本実施例にかかるナビゲーション装置1は、運転行動監視部11によって車両制御系20の動作状態を監視して運転行動データベース13に蓄積し、蓄積した運転行動から行動様式分類部14が運転者の行動様式を分類する。そして経路案内ユニット19は、運転者の行動様式の分類結果に基づいて経路の探索や案内処理を行なうので、運転者の行動の傾向や性格に合わせた適切な経路案内サービスを行なうことができる。
【0048】
なお、本実施例はあくまで一例をしめしたものであり、発明の内容を限定するものではない。本発明の実施に当たっては、その構成を適宜変更して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明にかかるナビゲーション装置およびナビゲーション方法は、目的地までの経路案内に有用であり、特に運転者に合わせた経路案内に適している。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施例にかかるナビゲーション装置の概要構成を示す概要構成図である。
【図2】運転者の行動様式の分類について説明する説明図である。
【図3】運転行動に基づく行動様式の分類の具体例を説明する説明図である。
【図4】分類結果に基づく経路探索について説明する説明図である。
【図5】分類結果に基づく案内処理について説明する説明図である。
【図6】図1に示した運転行動監視部の処理動作について説明するフローチャートである。
【図7】図1に示した行動様式分類部の処理動作について説明するフローチャートである。
【図8】図1に示した定常性判断部の処理動作について説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
1 ナビゲーション装置
11 運転行動監視部
12 運転者識別部
13 運転行動データベース
14 行動様式分類部
15 定常性判断部
16 ドライバ特性テーブル
17 定常性テーブル
18 地図データベース
19 経路案内ユニット
19a 経路探索部
19b 案内処理部
19c 自車位置特定部
20 車両制御系
21 エンジン制御機構
22 ブレーキ制御機構
23 舵角制御機構
24 灯火制御機構
31 GPSユニット
32 ジャイロ
41 操作入力機構
42 ディスプレイ
43 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者による運転操作を監視する運転行動監視手段と、
前記運転行動監視手段による監視結果を蓄積する蓄積手段と、
前記蓄積手段による蓄積結果から運転者の行動様式を分類する分類手段と、
前記分類手段による分類結果に基づいて運転者への経路案内を行なう経路案内手段と、
を備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記経路案内手段は、前記分類結果に基づいて運転者に提示する経路を変更することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記経路案内手段は、前記分類結果に基づいて、運転者に提示する経路を探索する際の優先事項、渋滞発生時における回避経路提案の有無、到着時刻、追加目的地の提案の有無のうち、少なくともいずれかを変更することを特徴とする請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記運転行動監視手段は、運転操作の単位時間当たりの変化量、一定以上の操舵角時の平均速度、カーブ走行時における車速、走行速度の分布のうち少なくともいずれかを監視することを特徴とする請求項1,2または3に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記分類手段は、運転者の運転者技術への自信、行動の積極性のうち、少なくともいずれかに対応付けた分類を行なうことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
運転者を識別する運転者識別手段をさらに備え、前記蓄積手段は、前記運転者識別手段によって識別した運転者毎に前記運転行動監視手段による監視結果を蓄積することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
運転者による運転操作を監視する運転行動監視工程と、
前記運転行動監視工程による監視結果を蓄積する蓄積工程と、
前記蓄積工程による蓄積結果から運転者の行動様式を分類する分類工程と、
前記分類工程による分類結果に基づいて運転者への経路案内を行なう経路案内工程と、
を含んだことを特徴とするナビゲーション方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−58193(P2008−58193A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−236524(P2006−236524)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】