説明

ナビゲーション装置及びその地図データ更新方法

【課題】記録媒体に格納された複数の更新データを用いて複数の地図データの差分更新をまとめて行う際に、各地図データに適用すべき更新データを適切に抽出して複数の地図データのそれぞれの差分更新を適切に行うことができるナビゲーション装置、及び当該ナビゲーション装置の地図データ更新方法を提供する。
【解決手段】更新データUにより地図データMを差分更新する更新手段24が、記録媒体Rに格納された更新データUにより地図データMの更新を行う場合に、地図データMの区画識別情報及び更新バージョンに対して、区画識別情報が合致するとともに更新バージョンが新しい更新データUを、記録媒体Rに格納された複数の更新データUの中から抽出し、当該抽出された更新データUにより地図データMの差分更新を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の更新単位毎に分割された複数の地図データが格納された地図データベースを備え、各地図データを更新データにより差分更新できるように構成されたナビゲーション装置、及び当該ナビゲーション装置の地図データ更新方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置に使用する地図データは、刻々と変化する道路や施設等の現実の状態を正確に表していることが望まれる。そのため、新しい地図データを、通信ネットワークを介して配信し、当該配信した地図データを用いて、ナビゲーション装置の地図データベース内の地図データを更新するシステムが既に知られている。また、このような地図データの更新を行うに際して、ナビゲーション装置側の地図データの更新状態を管理するために、地図データベースに格納される複数の地図データのそれぞれに識別符号(地図番号)を付与するとともに、各地図データの識別符号に対応付けて更新バージョン(版数)を付与するシステムが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
このようなシステムでは、同じ識別符号が付された対応する地図データについて、サーバ装置側の地図データの更新バージョンがナビゲーション装置側の地図データの更新バージョンよりも新しい場合には、サーバ装置からナビゲーション装置へ最新の地図データの送信を行う。そして、最新の地図データを受信したナビゲーション装置側では、古い地図データを最新の地図データに置き換えることで地図データベース内の地図データの更新を行うことになる。また、この際、ナビゲーション装置側では、当該地図データの更新バージョンを最新の更新バージョンに変更して管理する。
【0004】
【特許文献1】特開平04−349575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来のシステムでは、一つの識別符号が付された地図データを更新対象として更新を行うに際して、当該更新対象の地図データについての最新の地図データの全体をナビゲーション装置に送信することになる。そのため、ナビゲーション装置のように複雑な地図データを対象とする場合には、更新のための送信データ量が多くなり、通信時間及び通信コストが高くなるという問題がある。
【0006】
そこで、更新対象の前記地図データの更新内容を、更新前の前記地図データと更新後の地図データとの差分情報で構成される更新データとして送信することにより、ナビゲーション装置への送信データ量を小さくすることが考えられる。しかし、このような更新データの差分情報は、当該更新データによる更新前の前記地図データに対する差分の情報となっているため、更新対象の前記地図データが、当該更新データの想定する更新前の状態となっていない場合には、適切に差分更新を行うことができない。すなわち、例えば、前記地図データの現在の更新バージョンより古い更新バージョンの更新データにより当該地図データの更新を行い、或いは、更新データの更新バージョンに対して2つ以上前の更新バージョンの地図データに対して当該更新データにより更新を行った場合には、地図データを適切に更新することができないという問題が生じ得る。
【0007】
特に、ナビゲーション装置が、通信ネットワークを介して受信した更新データにより地図データを更新する方法と、記録媒体から読み出した更新データにより地図データを更新する方法の2通りの更新方法を実行可能な構成を有している場合には、このような問題が生じやすい。すなわち、このような構成を有する場合には、通信ネットワークを介して受信した更新データにより、地図データベースに格納された複数の地図データの中の一部だけが最新の更新バージョンに更新された結果、地図データベース内に、最新の更新バージョンまで更新された地図データと古い更新バージョンのままの地図データとが混在する状態が生じ得る。ここで、前記記録媒体は、通常、多数のナビゲーション装置に対して共通の内容で提供されるものであるため、当該記録媒体内には、前記地図データベース内の複数の地図データのそれぞれに対する、過去のある時期から最近までの全ての更新バージョンの更新データが格納されている。そのため、上記のように地図データ毎の更新バージョンが互いに異なる状態で、前記記録媒体に格納された複数の更新データを用いて複数の地図データの差分更新をまとめて行う際に、前記記録媒体に格納された全ての更新データを適用して各地図データの差分更新を機械的に行うと、上記のように更新データの想定する更新前の状態となっていない地図データに対して当該更新データによる差分更新を行う場合が生じ得る。そのため、地図データベース内の複数の地図データのそれぞれを適切に更新することができない。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、地図データの差分更新用の更新データを通信ネットワーク及び記録媒体の双方を介して取得可能であるために、地図データベース内の複数の地図データの更新バージョンが互いに異なる状態が生じ得る場合において、記録媒体に格納された複数の更新データを用いて複数の地図データの差分更新をまとめて行う際に、各地図データに適用すべき更新データを適切に抽出して複数の地図データのそれぞれの差分更新を適切に行うことができるナビゲーション装置、及び当該ナビゲーション装置の地図データ更新方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係るナビゲーション装置の特徴構成は、所定の更新単位毎に分割され、それぞれに識別符号を表す識別情報と現在の更新バージョンを表すバージョン情報とを有する複数の地図データが格納された地図データベースと、前記地図データに対応する前記更新単位毎に生成され、更新対象の前記地図データの更新内容を更新前の前記地図データとの差分として表す差分情報と、更新対象の前記地図データの前記識別符号を表す識別情報と、更新後の更新バージョンを表すバージョン情報とを有する更新データを、通信ネットワークを介して受信する受信手段と、複数の前記更新データが格納された記録媒体から前記更新データを読み出す読出手段と、前記受信手段により受信し、又は前記読出手段により読み出した前記更新データにより前記地図データを差分更新する更新手段と、を備え、前記更新手段は、前記記録媒体に格納された前記更新データにより前記地図データの更新を行う場合に、前記地図データの前記識別情報及び前記更新バージョンに対して、前記識別情報が合致するとともに前記更新バージョンが新しい前記更新データを、前記記録媒体に格納された複数の前記更新データの中から抽出し、当該抽出された前記更新データにより前記地図データの差分更新を行う点にある。
【0010】
この特徴構成によれば、前記受信手段により受信し、又は前記読出手段により読み出した前記更新データにより前記地図データを差分更新することができる構成としているので、更新の必要性が高い地図データについて、通信ネットワークを介して更新データを頻繁に取得することができるとともに、記録媒体に記録された複数の更新データを用いて複数の地図データをまとめて更新することもできる。したがって、利用頻度が高い等の更新の必要性が高い地図データについては頻繁に更新して最新の更新バージョンに保つとともに、利用頻度が低い地図データについては記録媒体を用いて更新することで、通信時間及び通信コストを低く抑えることができる。これにより、地図データベースに格納されている複数の地図データのそれぞれについて、更新の必要性に応じて適切に更新を行うことが可能となる。また、更新データを差分更新用のデータとしたことにより、更新データのデータ量を少なく抑えることができる。よって、通信ネットワークを介しての更新に際して更新データを受信するための通信時間及び通信コストを低く抑えることができ、更に記録媒体を用いる場合にも、一つの記録媒体に多くの更新データを格納することができる。
【0011】
更に、この特徴構成では、記録媒体に格納された更新データにより前記地図データの更新を行う場合に、前記地図データの前記識別情報及び前記更新バージョンに対して、前記識別情報が合致するとともに前記更新バージョンが新しい前記更新データを、前記記録媒体に格納された複数の前記更新データの中から抽出する構成としている。したがって、例えば、前記受信手段により受信した前記更新データによって地図データベースに格納された複数の地図データの中の一部だけを更新したことにより、地図データベース内の複数の地図データの更新バージョンが互いに異なる状態となっている場合において、記録媒体に格納された複数の更新データを用いて複数の地図データの差分更新をまとめて行う際にも、各地図データに適用すべき更新データを適切に抽出して複数の地図データのそれぞれの差分更新を適切に行うことができる。
【0012】
ここで、前記更新手段は、前記地図データと前記識別情報が合致するとともに当該地図データよりも前記更新バージョンが新しい前記更新データが複数ある場合に、当該各更新データが有する前記バージョン情報に基づいて、前記更新バージョンが古い前記更新データから順に適用して、前記地図データの差分更新を行う構成とすると好適である。
【0013】
このように構成すれば、地図データベースに格納された複数の地図データの中の一つの地図データについて、更新バージョンが異なる複数の更新データがある場合にも、更新バージョンが古い順に更新データの内容を当該地図データに反映させることができるので、当該地図データの差分更新を適切に行うことができる。
【0014】
また、前記更新単位は、地図を所定の領域毎に区切る区画であり、前記識別符号は、各区画に付された区画IDである構成とすると好適である。
【0015】
この構成によれば、ナビゲーション装置の地図データベース内には、地図を所定の領域毎に区切る区画毎に分割された地図データが格納されることになる。したがって、更新の必要性に応じて前記区画毎に地図データを更新することができる。
【0016】
また、前記更新データのバージョン情報は、同じ生成時期に生成された、更新対象の前記地図データが異なる複数の更新データについて同じ更新バージョンとすると好適である。
【0017】
このように構成すれば、更新データのバージョン情報に示される更新バージョンが、当該更新データの生成された時期を表すことになるので、地図データについても、そのバージョン情報に示される更新バージョンに基づいて、どの時期までの更新データにより更新された状態であるかが容易に把握することが可能となる。
【0018】
また、前記更新データは、前記バージョン情報に加えて、更新対象の前記地図データについての過去の前記更新データの更新バージョンを表す過去バージョン情報を有する構成とすると好適である。
【0019】
上記のように、同じ生成時期に生成された複数の更新データについて同じ更新バージョンとなるようにした場合、一つの地図データについて見れば、現実の状態に変更がないために一部の更新バージョンについて更新データが生成されなかった場合には、当該地図データを更新対象とする、更新バージョンが異なる複数の更新データについて、更新バージョンが不連続となる場合が生じ得る。この構成によれば、ある更新データの前記過去バージョン情報に基づいて、同じ地図データを更新対象とする過去の更新データの更新バージョンの情報を取得することができ、それにより、当該更新データが想定する更新前の地図データの更新バージョンを把握することができる。したがって、上記のように更新バージョンが不連続となった場合であっても、各地図データへの更新データの適用漏れを防止して正常な差分更新を保障することが可能となる。
【0020】
また、前記記録媒体には、所定の地域に含まれる複数の前記地図データのそれぞれを更新対象とするものであって、所定期間内に生成された全ての更新バージョンの更新データが格納されている構成とすると好適である。
【0021】
このように構成すれば、前記記録媒体を用いて、前記所定の地域に含まれる複数の前記地図データの全てについて一度に、前記所定期間の最後に生成された更新バージョンの状態まで、更新することができる。したがって、通信ネットワークを介して送信すると時間及び通信コストが非常に大きくなるような広い地域の全体の地図データを一度にまとめて、適切に更新することが可能となる。
【0022】
本発明に係るナビゲーション装置の地図データ更新方法の特徴構成は、所定の更新単位毎に分割され、それぞれに識別符号を表す識別情報と現在の更新バージョンを表すバージョン情報とを有する複数の地図データが格納された地図データベースを備えたナビゲーション装置において、通信ネットワークを介して受信し、又は記録媒体から読み出した更新データにより前記地図データを差分更新するに際して、前記更新データは、前記地図データに対応する前記更新単位毎に生成され、更新対象の前記地図データの更新内容を更新前の前記地図データとの差分として表す差分情報と、更新対象の前記地図データの前記識別符号を表す識別情報と、更新後の更新バージョンを表すバージョン情報とを有するものとし、複数の前記更新データが格納された記録媒体から前記更新データを読み出して前記地図データの更新を行う場合に、前記地図データの前記識別情報及び前記更新バージョンに対して、前記識別情報が合致するとともに前記更新バージョンが新しい前記更新データを、前記記録媒体に格納された複数の前記更新データの中から抽出し、当該抽出された前記更新データにより前記地図データの差分更新を行う点にある。
【0023】
この特徴構成によれば、通信ネットワークを介して受信し、又は記録媒体から読み出した前記更新データにより前記地図データを差分更新することができる構成としているので、更新の必要性が高い地図データについて、通信ネットワークを介して更新データを頻繁に取得することができるとともに、記録媒体に記録された複数の更新データを用いて複数の地図データをまとめて更新することもできる。したがって、利用頻度が高い等の更新の必要性が高い地図データについては頻繁に更新して最新の更新バージョンに保つとともに、利用頻度が低い地図データについては記録媒体を用いて更新することで、通信時間及び通信コストを低く抑えることができる。これにより、地図データベースに格納されている複数の地図データのそれぞれについて、更新の必要性に応じて適切に更新を行うことが可能となる。また、更新データを差分更新用のデータとしたことにより、更新データのデータ量を少なく抑えることができる。よって、通信ネットワークを介しての更新に際して更新データを受信するための通信時間及び通信コストを低く抑えることができ、更に記録媒体を用いる場合にも、一つの記録媒体に多くの更新データを格納することができる。
【0024】
更に、この特徴構成では、記録媒体に格納された更新データにより前記地図データの更新を行う場合に、前記地図データの前記識別情報及び前記更新バージョンに対して、前記識別情報が合致するとともに前記更新バージョンが新しい前記更新データを、前記記録媒体に格納された複数の前記更新データの中から抽出する構成としている。したがって、例えば、前記受信手段により受信した前記更新データによって地図データベースに格納された複数の地図データの中の一部だけを更新したことにより、地図データベース内の複数の地図データの更新バージョンが互いに異なる状態となっている場合において、記録媒体に格納された複数の更新データを用いて複数の地図データの差分更新をまとめて行う際にも、各地図データに適用すべき更新データを適切に抽出して複数の地図データのそれぞれの差分更新を適切に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係るナビゲーション装置1を含むデータ更新システムの全体の構成を模式的に示すブロック図である。本実施形態に係るデータ更新システムは、更新データUの提供を受けて地図データベースDB1内に格納された地図データMの更新を行うことが可能に構成されたナビゲーション装置1と、更新データUを生成して更新データベースDB2に格納し、適宜配信するサーバ装置3とを有して構成されている。ここで、ナビゲーション装置1及びサーバ装置3の各部は、CPU等の演算処理装置を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うための機能部がハードウエア又はソフトウエア(プログラム)或いはその両方で実装されて構成されている。また、ナビゲーション装置1の地図データベースDB1及びサーバ装置3の更新データベースDB2は、例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等の書き換え可能な記録媒体とその駆動手段とを有する装置をハードウエア構成として備えている。以下、本実施形態に係るナビゲーション装置1及びサーバ装置3の各部の構成について説明する。
【0026】
1.ナビゲーション装置のナビゲーション機能を実現するための構成
図1に示すように、このナビゲーション装置1は、一般的なナビゲーション機能を実現することができる構成となっている。そのための構成として、ナビゲーション装置1は、地図データベースDB1、ナビゲーション用演算部11、自位置検出装置12、表示入力装置13、及び音声出力装置14を備えている。
【0027】
地図データベースDB1は、ナビゲーション機能を実現するためにナビゲーション用演算部11により参照される複数の地図データMが格納されたデータベースである。本実施形態においては、地図データベースDB1には、所定の区画p毎に分割された区画p毎の複数の地図データMが格納されている。ここで、区画pは、地図を所定の領域毎に区切る概念である。区画pとしては、例えば、現実世界の距離で2.5〔km〕四方等の所定の大きさの矩形領域のように距離や面積で区切ったものの他、行政区域を単位として区切り、或いは地形に応じて区切ったものとしても好適である。そして、複数の区画p毎の地図データMの集合により、例えば日本全国の地図データが構成される。よって、本実施形態においては、区画pが、本発明における「更新単位」となる。
【0028】
また、区画p毎の各地図データMには、その識別符号としての区画IDが付されており、各地図データMは、区画IDを表す識別情報としての区画識別情報Dm1を有する。更に、区画p毎の各地図データMは、更新データUにより更新されることから、更新データUによる更新状態として現在の更新バージョンを表すバージョン情報Dm2を有する。図2(a)は、区画p毎の各地図データMのデータ構造の具体例を示す図である。この図に示すように、各地図データMには、データの先頭に管理データフレームFm0が設けられている。そして、この管理データフレームFm0内に、区画識別情報Dm1及びバージョン情報Dm2が格納されている。なお、この管理データフレームFm0には、この他にも実データフレームFm1内の実データの格納場所等の管理データで構成される管理ヘッダ等が格納されている。そして、この管理データフレームFm0の後に、実データフレームFm1が設けられ、地図データMを構成する実データ0001、0002・・・が格納される。
【0029】
再び図1に戻り説明する。ナビゲーション用演算部11は、ナビゲーション装置1のナビゲーション機能を実現するための演算処理を行う。具体的には、例えば、自位置や指定した位置の周辺の地図表示、自位置を地図の道路上に補正するマップマッチング、出発地から目的地までの経路探索、目的地までの経路誘導、目的地等の地点検索等の機能がある。
【0030】
自位置検出装置12は、ナビゲーション装置1の現在位置を検出するための装置である。そのため、自位置検出装置12は、図示は省略するが、例えば、GPS受信機、方位センサ、及び距離センサ等を有して構成されている。そして、これらにより取得された情報に基づいて現在の位置を示す座標や進行方位等の情報を取得して、ナビゲーション用演算部11に出力する。ナビゲーション用演算部11は、この自位置検出装置12により検出された自位置情報と地図データベースDB1内の地図データMとに基づいて、自位置表示、マップマッチング、経路探索等のナビゲーション処理を行う。
【0031】
表示入力装置13は、液晶ディスプレイ等の表示ユニットと、該表示ユニットに一体的に設けられたタッチパネルや操作スイッチ等の入力ユニットとを有して構成される。音声出力装置14は、スピーカ及びアンプ等を備えて構成される。表示入力装置13の表示ユニット及び音声出力装置14は、ナビゲーション用演算部11により制御されて動作し、自位置表示、2地点間の経路計算、進路案内、目的地検索等のための表示や音声出力等を行う。表示入力装置13の入力ユニットは、ユーザによる操作入力を受け付け、その内容をナビゲーション用演算部11へ出力する。なお、表示入力装置13の入力ユニットとともに、或いはこれに代えて図示しないリモートコントローラを備える構成とすることもできる。
【0032】
2.ナビゲーション装置の地図データの更新を行うための構成
このナビゲーション装置1は、更新データUにより地図データベースDB1内に格納された地図データMの差分更新を行うことができる構成となっている。そのための構成として、ナビゲーション装置1は、第一通信部21、第二通信部22、メディア再生部23、及び更新制御部24を備えている。また、更新制御部24は、配信要求処理部25、抽出処理部26、及び更新処理部27を備えている。なお、以下の説明においては、図3〜7を適宜参照する。これらの図は、地図データベースDB1内に格納されている複数の地図データMの中のA区画からG区画までの7つの各区画pを横軸に沿って配置し、各区画pの地図データMを更新対象とする更新データUの更新バージョンを縦軸としたグラフである。ここで、縦軸の更新バージョンは、図における上方ほど新しい更新バージョンとなっている。また、これらのグラフ中の複数の矩形枠はそれぞれ更新データUを表しており、矩形枠内の番号は各更新データUの更新バージョンを示している。また、これらの図における更新バージョン「0509」と「0510」との間に引かれた水平破線h1より下側の矩形枠が、ナビゲーション装置1の出荷時の各地図データMの更新バージョンを示している。そして、これらの図は、後述するように、図3〜5が地図データベースDB1内の地図データMの更新データUによる更新状態の移り変わりを示し、図6がサーバ装置3の更新データベースDB2内に格納されている更新データUを示し、図7が記録メディアR内に格納されている更新データUを示している。
【0033】
第一通信部21は、無線基地局4との間で無線による通信を行う。それにより、第一通信部21は、無線基地局4を介してサーバ装置3とデータの送受信を行う。具体的には、第一通信部21は、サーバ装置3に更新データUの配信要求データを送信し、サーバ装置3から更新データUを受信する。第一通信部21と無線基地局4との間の無線通信方法としては、例えば携帯電話網や無線LAN(Local Area Network)等の公知の通信網を用いることができる。本実施形態においては、この第一通信部21が本発明における「受信手段」を構成する。
【0034】
第二通信部22は、ユーザやナビゲーション装置1の取扱い業者等の有する更新用端末5との間で有線による通信を行う。それにより、第二通信部22は、更新用端末5にインターネット等の通信ネットワーク6を介して送信され、更新用端末5内のハードディスク等の記録媒体に格納された更新データUを読み出すことが可能に構成されている。ここで、更新用端末5としては、例えばパーソナルコンピュータ等を用いることができる。第二通信部22と更新用端末5との間の通信方法としては、公知の有線又は無線による各種通信方法を用いることができる。
【0035】
メディア再生部23は、更新データUが格納された光ディスクや磁気ディスク等の容易に運搬可能な記録媒体(以下、記録メディアRとする)を再生し、更新データUを読み出す。このようなメディア再生部23としては、例えば、CD(コンパクトディスク)やDVD等の光ディスクを再生する再生装置等を用いることができる。本例では、後述するサーバ装置3のメディア作成部35において作成されたマスターメディアRmに基づいて、工場7で量産された記録メディアRがナビゲーション装置1の各ユーザに配布されメディア再生部23において再生される。また、図示は省略するが、上記の更新用端末5により、更新用端末5内のハードディスク等の記録媒体に格納された更新データUを、光ディスクや磁気ディスク等の書き込み可能な記録媒体に記録して記録メディアRを作成する構成としても好適である。この場合にも、更新用端末5により作成された記録メディアRをメディア再生部23により再生し、更新データUを読み出す。
【0036】
上記のように、第二通信部22は、更新用端末5内のハードディスク等の記録媒体に格納された更新データUを読み出し、メディア再生部23は、記録メディアRに格納された更新データUを読み出す。したがって、本実施形態においては、これらの第二通信部22及びメディア再生部23がいずれも本発明における「読出手段28」を構成する。なお、以下の説明では、主にメディア再生部23において記録メディアRから更新データUを読み出す場合を例として説明するが、第二通信部22により更新用端末5内の記録媒体から更新データUを読み出す場合も全く同様の処理を行う。
【0037】
更新制御部24は、第一通信部21により受信した更新データU、又はメディア再生部23により記録メディアRから読み出した更新データUにより、地図データベースDB1内に格納された地図データMの差分更新の処理を行う。すなわち、本実施形態においては、更新制御部24は、無線基地局4を介してサーバ装置3から受信した更新データUにより地図データMの差分更新を行う通信更新処理と、メディア再生部23において記録メディアRを再生して読み出した更新データUにより地図データMの差分更新を行う媒体更新処理との2通りの地図データMの更新処理を実行可能に構成されている。そのため、更新制御部24は、上記のとおり、配信要求処理部25、抽出処理部26、及び更新処理部27を備えている。本実施形態においては、この更新制御部24が本発明における「更新手段」を構成する。この更新制御部24の各部の構成について以下に説明するが、その前に本実施形態に係る更新データUの構成について詳細に説明する。
【0038】
更新データUは、地図データベースDB1内の各地図データMを差分更新するための更新用のデータであり、地図データMの区画pに対応して区画p毎に生成される。本実施形態においては、更新データUは、サーバ装置3の更新データ生成部32において生成される。そして、各更新データUは、更新対象の区画pの地図データMの更新内容を表す差分情報Du4と、区画識別情報Du1と、バージョン情報Du2と、過去バージョン情報Du3とを有する。図2(b)は、区画p毎の各更新データUのデータ構造の具体例を示す図である。この図に示すように、各更新データUには、データの先頭に管理データフレームFu0が設けられている。そして、この管理データフレームFu0内に、区画識別情報Du1、バージョン情報Du2、及び過去バージョン情報Du3が格納されている。
【0039】
ここで、区画識別情報Du1は、当該更新データUが更新対象とする地図データMの区画pを特定するための情報であって、更新対象の地図データMの区画IDを表す識別情報である。すなわち、各更新データUは、区画識別情報Du1が表す区画IDと同じ区画IDを区画識別情報Dm1として有する地図データMを更新対象とする。
【0040】
バージョン情報Du2は、当該更新データUによる更新後の地図データMの更新バージョンを表す情報である。ここで、バージョン情報Du2に示される更新バージョンは、同じ生成時期に生成された、更新対象の地図データMが異なる複数の更新データUについて同じ更新バージョンとなるように設定される。本例では、更新バージョンは、更新データUが生成された時期を表すように設定する。具体的には、本例では、更新バージョンは、更新データUが生成された年月を表すように、更新バージョンの上2桁を更新データUの生成年の西暦下2桁とし、更新バージョンの下2桁を更新データUの生成月としている。すなわち、例えば2006年の12月に生成された更新データUの更新バージョンは「0612」となる。また、このバージョン情報Du2に示される更新バージョンが、当該更新データUによる更新後の地図データMの更新バージョンとなる。したがって、詳しくは後述するが、例えば図3及び図4に示すC区画について、図3に示すように更新バージョン「0602」の状態の地図データMを、図4に示すように更新バージョン「0612」の更新データUで更新した場合には、更新後の地図データMの更新バージョンは「0612」となる。
【0041】
過去バージョン情報Du3は、更新対象の地図データMについての過去の更新データUの更新バージョンを表す情報である。本例では、過去バージョン情報Du3として、当該更新データUの一つ前の更新データUの更新バージョンを表す情報が格納される。したがって、詳しくは後述するが、例えば図4に示すC区画の地図データMが更新対象である場合のように、地図データMが、更新バージョン「0512」、「0602」、「0612」の3つの更新データUにより順に差分更新される場合、更新バージョン「0612」の更新データUでは過去バージョン情報Du3は更新バージョン「0602」となり、更新バージョン「0602」の更新データUでは過去バージョン情報Du3は更新バージョン「0512」となる。この過去バージョン情報Du3に基づけば、本例のように更新データUの生成時期を表す更新バージョンを設定したことにより更新バージョンが不連続となっている場合にも、各更新データUが想定する更新前の地図データMの更新バージョンを把握することができ、地図データMへの過去の更新データUの適用漏れを防止して正常な差分更新を保障することができる。
【0042】
なお、図2(b)に示すように、管理データフレームFu0には、この他にも差分データフレームFu1内の差分情報Du4を構成する各差分データの格納場所等の管理データで構成される管理ヘッダ等が格納されている。そして、この管理データフレームFu0の後に、差分データフレームFu1が設けられ、その中に差分情報Du4を構成する差分データ0001、0002・・・が格納されている。ここで、差分情報Du4は、実際の道路や施設等の変化の状態に合わせて更新すべき更新対象の区画pの地図データMの更新内容を、更新前の当該区画pの地図データMとの差分として表す情報である。
【0043】
図8は、この差分情報Du4の具体的な内容について説明するための説明図である。この図は、図5に示すC区画の地図データMが処理対象である場合の差分更新による地図データMの変化の例を示している。すなわち、図8(a)〜(c)は、更新バージョン「0512」の地図データMに対して、更新バージョン「0602」(図8(d))及び「0612」(図8(e))の更新データUを順に適用した場合の地図データMの変化の状態をそれぞれ表している。具体的には、この図8に示す例では、(d)に示す更新バージョン「0602」の更新データUは、道路r1を削除し、道路r2を追加することを内容とする差分情報Du4を有している。したがって、(a)に示す更新バージョン「0512」の地図データMに対して(d)に示す更新バージョン「0602」の更新データUを適用して差分更新を行うと、(b)に示す更新バージョン「0602」の地図データMに更新される。また、(e)に示す更新バージョン「0612」の更新データUは、道路r3を追加することを内容とする差分情報Du4を有している。したがって、(b)に示す更新バージョン「0612」の地図データMに対して(e)に示す更新バージョン「06012」の更新データUを適用して差分更新を行うと、(c)に示す更新バージョン「0612」の地図データMに更新される。なお、更新データUが、差分情報Du4を実態的な内容とするものであるため、例えば、図8(a)に示す更新バージョン「0512」の地図データMに対して(e)に示す更新バージョン「0612」の更新データUを適用して差分更新を行うと、図8(f)に示すように、現実には存在しない道路r1と新設された道路r3との交差点や、現実には存在する道路r2と新設された道路r3と交差点等についての情報が適切に処理できないことになる。そのため、地図データMの差分更新を正常に行うことができない。なお、この図8では、簡略化のために地図データMの道路のみを示しているが、実際には、地図データMは、交差点や各種施設等の様々な情報を備えている。
【0044】
配信要求処理部25は、第一通信部21及び無線基地局4を介してサーバ装置3に更新データUの配信要求を行う。ここで、一般的に、記録メディアRからの更新データUの読み出しに比べて、無線通信による更新データUの受信は通信時間及び通信コストが高くなる。そこで、本実施形態においては、配信要求処理部25は、地図データベースDB1に格納されている全ての区画pの地図データMについて更新データUの配信要求を行うのではなく、更新データUを要求する一又は二以上の区画pを要求区画として決定し、当該要求区画についてのみ更新データUの配信要求をサーバ装置3に対して行う。この際、配信要求処理部25は、決定した要求区画と各要求区画の地図データMの現在の更新バージョンとを特定するための情報を含む配信要求データを生成してサーバ装置3に送信する。ここで、要求区画は、地図データベースDB1に格納されている複数の地図データMの区画pの中から、更新の必要性が高い区画pを選択することにより決定される。これにより、更新の必要性が高い地図データについて、更新データUにより頻繁に更新して最新の更新バージョンに保つことが可能となる。このような更新の必要性が高い区画pとしては、ナビゲーション用演算部11による利用頻度又は利用可能性が高い区画pが該当する。このような区画pとしては、例えば、ナビゲーション装置1のユーザが自宅として登録している位置周辺、自位置検出装置12により検出される現在の自位置周辺、ユーザが指定した位置周辺、目的地が設定された場合には目的地周辺及び設定された目的地までの設定経路周辺を含む区画p等が該当する。また、このような区画pを、例えば、各区画pに含まれる、自位置が過去に通行したことを表す通行履歴の多さ、地点検索を容易にするために登録された登録地点の多さ、目的地等としての地点の検索履歴の多さ等に応じて選択する構成としても好適である。
【0045】
配信要求処理部25において生成され、サーバ装置3に送信される配信要求データは、配信要求処理部25により決定された一又は二以上の要求区画の地図データMについての区画識別情報Dm1及びバージョン情報Dm2を有して構成される。例えば、地図データベースDB1内の各地図データMが図3に示すような更新状態である場合であって、配信要求処理部25により要求区画としてB区画及びC区画が決定された場合には、配信要求データは、B区画及びC区画の区画IDをそれぞれ表す2つの区画識別情報Dm1と、B区画の現在の更新バージョン「0512」及びC区画の現在の更新バージョン「0602」をそれぞれ表す2つのバージョン情報Dm2とを有するデータとして生成される。そして、このような配信要求データを受信したサーバ装置3は、抽出処理部33により、配信要求データに含まれる区画識別情報Dm1及びバージョン情報Dm2に基づいて、要求区画の地図データMを更新対象とする更新データUであって、要求区画の地図データMの更新バージョンよりも新しい更新バージョンの更新データUを、更新データベースDB2から抽出する。そして、配信部34により、抽出した更新データUをナビゲーション装置1に送信する。図6は、本例におけるサーバ装置3の更新データベースDB2内に格納されている更新データUの更新対象の区画p及び更新バージョンを示す図である。抽出処理部33は、上記のような配信要求データの内容に基づいて、図6のハッチングが施された矩形枠に相当する更新データU、すなわち、B区画については更新バージョン「0512」より新しい更新バージョン「0606」及び「0612」の更新データU、C区画については更新バージョン「0602」より新しい更新バージョン「0612」の更新データUを更新データベースDB2から抽出して読み出す。なお、この配信要求処理部25による更新データUの配信要求に伴う更新データUの受信及び地図データMの差分更新の処理(通信更新処理)については、後に図9に示すフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0046】
抽出処理部26は、メディア再生部23により記録メディアRを再生し、記録メディアRに格納された更新データUにより地図データMの更新を行う場合に、記録メディアRに格納された複数の更新データUの中から、地図データベースDB1内に格納された地図データMの差分更新に用いる更新データUを抽出する処理を行う。この際、抽出処理部26は、地図データベースDB1内に格納された複数の地図データMの区画識別情報Dm1及びバージョン情報Dm2と記録メディアR内に格納された複数の更新データUの区画識別情報Du1及びバージョン情報Du2とを比較し、地図データMの区画識別情報Dm1及びバージョン情報Dm2が示す更新バージョンに対して、区画識別情報Du1が合致するとともにバージョン情報Du2が示す更新バージョンが新しい更新データUを、記録メディアRに格納された複数の更新データUの中から抽出する。すなわち、抽出処理部26は、地図データベースDB1内に格納された複数の地図データMの区画識別情報Dm1及びバージョン情報Dm2を読み出すとともに、記録メディアR内に格納された複数の更新データUの区画識別情報Du1及びバージョン情報Du2を読み出してそれらを比較する。そして、地図データベースDB1内に格納された地図データMのそれぞれについて、各地図データMの区画pを更新対象とする更新データUであって、各地図データMの更新バージョンよりも更新バージョンが新しい更新データUを記録メディアRから抽出する。
【0047】
本実施形態においては、記録メディアRには、所定の地域に含まれる複数の地図データMのそれぞれを更新対象とするものであって、所定期間内に生成された全ての更新バージョンの更新データUが格納されている。ここで、所定の地域は、例えば、日本全国等の国、関東地方や近畿地方等の地方、東京都や大阪府等の都道府県単位等とすることができる。また、所定期間は、例えば、記録メディアRを配布する周期に相当する期間とすることができ、例えば1年や3年等とすることができる。図7は、本例における記録メディアR内に格納されている更新データUの更新対象の区画p及び更新バージョンを示す図である。この図に示す例では、A区画からG区画までの7つの区画pについての地図データMを更新対象とするものであって、2005年10月から2006年9月までの間(図7の水平破線h1から水平線h2までの間)に生成された全ての更新バージョンの更新データUが格納されている。本例では、この期間は、ナビゲーション装置1の出荷後1年間という期間に相当する。ここで、地図データベースDB1内に格納されている地図データMの更新状態が図4に示す状態であった場合には、抽出処理部26は、各地図データMよりも更新バージョンが新しい更新データUとして、図7のハッチングが施された矩形枠に相当する更新データU、すなわち、記録メディアRに格納されているA区画からG区画までの全ての区画pについて、地図データベースDB1内の各区画pの地図データMの更新バージョンよりも更新バージョンが新しい記録メディアR内の全ての更新データUを抽出して読み出す。なお、この抽出処理部26による記録メディアRからの更新データUの抽出処理に伴う地図データMの差分更新の処理(媒体更新処理)については、後に図10及び図11に示すフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0048】
更新処理部27は、第一通信部21によりサーバ装置3から受信した更新データU、又は抽出処理部26により記録メディアRから抽出して読み出した更新データUにより、地図データベースDB1内に格納された地図データMの差分更新を行う。ここで、更新処理部27は、地図データMの区画識別情報Dm1及びバージョン情報Dm2が示す更新バージョンに対して、区画識別情報Du1が合致するとともにバージョン情報Du2が示す更新バージョンが新しい更新データUが複数ある場合には、当該各更新データUが有するバージョン情報Du2に基づいて、更新バージョンが古い更新データUから順に適用して、各地図データMの差分更新を行う。また、この際、更新処理部27は、各更新データUが有する過去バージョン情報Du3に基づいて、更新データUによる更新順序を確認し、各地図データMへの更新データUの適用漏れを防止して正常な差分更新を保障する処理も行う。なお、この更新処理部27による地図データMの更新処理については、後に図12に示すフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0049】
3.サーバ装置の構成
サーバ装置3は、ナビゲーション装置1に提供する更新データUを生成して配信し、或いは更新データUを格納した記録メディアRを作成する。そのための構成として、サーバ装置3は、図1に示すように、更新データベースDB2、入力受付部31、更新データ生成部32、抽出処理部33、配信部34、及びメディア作成部35を備えている。
【0050】
更新データベースDB2は、ナビゲーション装置1に提供するために生成された更新データUが格納されたデータベースである。この更新データベースDB2には、ナビゲーション装置1が有する全ての区画pの地図データMについての、過去に生成された全ての更新バージョンの更新データUが格納されている。図6は、本例におけるサーバ装置3の更新データベースDB2内に格納されている更新データUの更新対象の区画p及び更新バージョンを示す図である。この図に示す例では、更新データベースDB2には、A区画からG区画までの7つの区画pについての地図データMを更新対象とするものであって、2005年4月から2006年12月までに生成された全ての更新バージョンの更新データUが格納されている。なお、この例は説明を簡略化するために区画数を非常に限定しているが、実際には、非常に多くの区画pについての更新データUが更新データベースDB2に格納されることになる。
【0051】
図1に戻り、入力受付部31は、更新データUを生成するための地図データMの更新情報の入力を受け付ける。そのため、入力受付部31は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、スキャナ等の各種の入力用機器を有して構成されている。また、作業者が更新情報の入力作業の確認等を行うための表示装置を備えていてもよい。更新データ生成部32は、入力受付部31から入力された更新情報に基づいて更新データUを生成する。ここで生成される更新データUの具体的内容については、既に説明したのでここでは説明しない。
【0052】
抽出処理部33は、配信部34を介してナビゲーション装置1からの更新データUの配信要求データを受信した場合に、当該配信要求データに基づいて、更新データベースDB2内に格納された複数の更新データUの中から、ナビゲーション装置1に送信する更新データUを抽出する処理を行う。この際、抽出処理部33は、配信要求データに含まれる地図データMの区画識別情報Dm1及びバージョン情報Dm2と更新データベースDB2内に格納された複数の更新データUの区画識別情報Du1及びバージョン情報Du2とを比較し、区画識別情報Dm1、Du1が合致するとともに当該地図データMよりも更新バージョンが新しい更新データUを、更新データベースDB2に格納された複数の更新データUの中から抽出する。すなわち、抽出処理部33は、配信要求データに含まれる区画識別情報Dm1及びバージョン情報Dm2に基づいて、要求区画の地図データMを更新対象とする更新データUであって、要求区画の地図データMの更新バージョンよりも新しい更新バージョンの更新データUを、更新データベースDB2から抽出する。この抽出処理部33による更新データUの抽出処理は、抽出対象となる区画pが要求区画の範囲内に限られる点以外は、上記のナビゲーション装置1の抽出処理部26による記録メディアRからの更新データUの抽出処理とほぼ同様である。
【0053】
配信部34は、無線基地局4を介してナビゲーション装置1の第一通信部21との間で通信し、インターネット等の通信ネットワーク6を介して更新用端末5との間で通信し、データの送受信を行う。具体的には、ナビゲーション装置1との間では、配信要求データを受信し、当該配信要求に対して必要な更新データUを送信する処理を行う。また、更新用端末5との間では、更新用端末5からの要求に従い、更新データベースDB2内に格納された更新データUの一部又は全部を送信する処理を行う。
【0054】
メディア作成部35は、更新データベースDB2内に格納された更新データUを光ディスクや磁気ディスク等の容易に運搬可能な記録媒体に格納し、ナビゲーション装置1に提供する記録メディアRの元となるマスターメディアRmを作成する。本実施形態においては、メディア作成部35で作成されたマスターメディアRmは工場7へ送られる。この工場7では、マスターメディアRmをコピーした記録メディアRが量産され、ナビゲーション装置1のユーザに配布される。マスターメディアRmに格納される更新データUの内容は、上記記録メディアRに格納される更新データUの内容と同様である。
【0055】
4.サーバ装置との通信による地図データの差分更新処理の方法
次に、ナビゲーション装置1とサーバ装置3との間の通信で取得した更新データUによる地図データMの更新処理(通信更新処理)の方法について説明する。本実施形態においては、ナビゲーション装置1は、サーバ装置3に対して更新データUの配信要求を行い、サーバ装置3から受信した更新データUにより地図データベースDB1内の地図データMの差分更新を行う。図9は、この通信更新処理の方法を示すフローチャートである。ここでは、サーバ装置3の更新データベースDB2内の更新データUの状態が図6に示す状態であり、このサーバ装置3からの更新データUを受信して地図データMの差分更新を行い、ナビゲーション装置1の地図データベースDB1内の地図データMの更新状態が図3に示す状態から図4に示す状態に変化する場合を例として説明する。
【0056】
図9に示すように、ナビゲーション装置1では、まず、配信要求処理部25が、サーバ装置3に対して更新データUの配信要求を行うか否かを判定する(ステップ#01)。この配信要求を行うか否かの判定は、例えば1ヶ月毎等のような期間に基づいて行い、或いはユーザによる地図データMの更新要求操作等に基づいて行うことができる。そして、更新データUの配信要求を行う場合には(ステップ#01:Yes)、配信要求処理部25は、更新データUを要求する要求区画を決定する(ステップ#02)。上記のとおり、要求区画としては、地図データベースDB1に格納されている全ての地図データMの区画pの中から、ナビゲーション用演算部11による利用頻度又は利用可能性が高い一又は二以上の区画pを選択して決定する。ここでは、B区画及びC区画が要求区画として決定された場合を例として説明する。
【0057】
次に、配信要求処理部25は、配信要求データを生成し、第一通信部21を介してサーバ装置3に送信する(ステップ#03)。上記のとおり、ここで生成される配信要求データは、一又は二以上の要求区画の地図データMについての区画識別情報Dm1及びバージョン情報Dm2を有して構成される。本例では、地図データベースDB1内の各地図データMは、図3に示すような更新状態であるため、配信要求データは、B区画及びC区画の区画IDをそれぞれ表す2つの区画識別情報Dm1と、B区画の現在の更新バージョン「0512」及びC区画の現在の更新バージョン「0602」をそれぞれ表す2つのバージョン情報Dm2とを有するデータとして生成される。
【0058】
その後、サーバ装置3から一又は二以上の更新データUを受信した場合には(ステップ#04)、更新処理部27は、当該受信した更新データUにより地図データベースDB1内に格納されている地図データMの差分更新を行う(ステップ#05)。本例では、後述するように、サーバ装置3から図6のハッチングが施された矩形枠に相当する更新データU、すなわち、B区画については更新バージョン「0606」及び「0612」の更新データU、C区画については更新バージョン「0612」の更新データUが送信される。したがって、ナビゲーション装置1の更新処理部27は、これらの更新データUを、それぞれが更新対象とするB区画又はC区画の地図データMに適用し、地図データMの差分更新を行う。その結果、地図データベースDB1内に格納されている地図データMの更新状態は、図4に示す状態となる。なお、この地図データMの差分更新処理の方法については、後に図12のフローチャートに基づいて詳細に説明する。以上でナビゲーション装置1側の処理を終了する。
【0059】
一方、サーバ装置3では、配信部34によりナビゲーション装置1からの更新要求データを受信した場合には(ステップ#11:Yes)、抽出処理部33が、更新データベースDB2内に格納された複数の更新データUのそれぞれについての区画識別情報Du1及びバージョン情報Du2を読み出す(ステップ#12)。
【0060】
次に、抽出処理部33は、受信した配信要求データに基づいて、ナビゲーション装置1に送信する更新データUを抽出する(ステップ#13)。この際、抽出処理部33は、配信要求データに含まれる区画識別情報Dm1及びバージョン情報Dm2に基づいて、要求区画の地図データMを更新対象とする更新データUであって、要求区画の地図データMの更新バージョンよりも新しい更新バージョンの更新データUを、更新データベースDB2から抽出する。本例では、更新データベースDB2内に格納されている更新データUの更新対象の区画p及び更新バージョンは、図6に示す状態である。そして、上記のとおり、配信要求データによる要求区画はB区画及びC区画であり、B区画の現在の更新バージョンが「0512」、C区画の現在の更新バージョンが「0602」である。したがって、抽出処理部33は、図6のハッチングが施された矩形枠に相当する更新データU、すなわち、B区画については更新バージョン「0512」より新しい更新バージョン「0606」及び「0612」の更新データU、C区画については更新バージョン「0602」より新しい更新バージョン「0612」の更新データUを更新データベースDB2から抽出する。ここでの更新データUの抽出処理の方法は、抽出対象となる区画pが要求区画の範囲内に限られる点以外は、後述するナビゲーション装置1における記録メディアRからの更新データUの抽出処理(図10の(ステップ#24))とほぼ同様である。そして、この記録メディアRからの更新データUの抽出処理の方法は、図11のフローチャートに基づいて後に詳細に説明する。その後、サーバ装置3は、配信部34を介して、ステップ#13で抽出した一又は二以上の更新データUをナビゲーション装置1に送信する(ステップ#14)。以上でサーバ装置3側の処理を終了する。
【0061】
5.記録メディアから読み出した更新データによる差分更新処理の方法
次に、記録メディアR(記録媒体)から読み出した更新データUによる地図データMの更新処理(媒体更新処理)の方法について説明する。本実施形態においては、ナビゲーション装置1は、記録メディアRから必要な更新データUを抽出して読み出し、該読み出した更新データUにより地図データベースDB1内の地図データMの差分更新を行う。図10は、この媒体更新処理の方法を示すフローチャートである。ここでは、記録メディアR内の更新データUの状態が図7に示す状態であり、この記録メディアRから読み出した更新データUにより地図データMの差分更新を行い、ナビゲーション装置1の地図データベースDB1内の地図データMの更新状態が図4に示す状態から図5に示す状態に変化する場合を例として説明する。
【0062】
図10に示すように、ナビゲーション装置1では、まず、メディア再生部23において記録メディアRが再生された場合には(ステップ#21:Yes)、抽出処理部26は、地図データベースDB1内に格納された複数の地図データMのそれぞれについての区画識別情報Dm1及びバージョン情報Dm2を読み出す(ステップ#22)。本例では、図4に示すように、A区画からG区画までの各区画pの区画識別情報Dm1と、各区画pについての最新の更新バージョン、すなわち図4の各区画pについて最も上方に位置する矩形枠内の更新バージョンを示すバージョン情報Dm2が読み出される。次に、抽出処理部26は、メディア再生部23により記録メディアR内に格納されている複数の更新データUの区画識別情報Du1及びバージョン情報Du2を読み出す(ステップ#23)。本例では、図7に示される全ての更新データU、すなわち図7に矩形枠で示される全ての更新データUのそれぞれについての区画識別情報Du1とバージョン情報Du2とが読み出される。
【0063】
次に、抽出処理部26は、ステップ#22で読み出した地図データMの区画識別情報Dm1及びバージョン情報Dm2と、ステップ#23で読み出した更新データUの区画識別情報Du1及びバージョン情報Du2とを比較し、地図データMの区画識別情報Dm1及びバージョン情報Dm2が示す更新バージョンに対して、区画識別情報Du1が合致するとともにバージョン情報Du2が示す更新バージョンが新しい更新データUを、記録メディアRから更新データUを抽出する(ステップ#24)。本例では、抽出処理部26は、図7のハッチングが施された矩形枠に相当する更新データUを抽出する。このステップ#24の更新データUの抽出処理については、後に図11のフローチャートに基づいて詳細に説明する。その後、更新処理部27は、ステップ#24で抽出した更新データUを、それぞれが更新対象とする区画の地図データMに適用し、地図データMの差分更新を行う。その結果、地図データベースDB1内に格納されている地図データMの更新状態は、図5に示す状態となる。なお、この地図データMの差分更新処理の方法については、後に図12のフローチャートに基づいて詳細に説明する。以上で処理を終了する。
【0064】
6.記録メディアからの更新データの抽出処理方法
次に、図10のステップ#24の記録メディアR(記録媒体)からの更新データUの抽出処理の方法について説明する。図11は、この更新データUの抽出処理の方法を示すフローチャートである。本例では、記録メディアR内の更新データUの状態は図7に示す状態であり、ナビゲーション装置1の地図データベースDB1内の地図データMの更新状態は図4に示す状態である。
【0065】
図11に示すように、ナビゲーション装置1の抽出処理部26は、まず、処理対象区画を選択する(ステップ#31)。ここで、処理対象区画としては、記録メディアRに格納されている更新データUの複数の区画pの中から、抽出処理の対象とする一つの区画が選択される。本例では、A区画からG区画まで一区画ずつ順に選択されることとし、まずA区画が処理対象区画として選択されたこととする。次に、抽出処理部26は、ステップ#31で選択された処理対象区画を更新対象区画とする更新データU、すなわち区画識別情報Du1に示される区画pが処理対象区画である更新データUを抽出する(ステップ#32)。本例では、図7に示すように、処理対象区画であるA区画を更新対象区画とする更新データUとして、更新バージョンが「0512」と「0606」の2つの更新データUが記録メディアRに格納されているので、これら2つの更新データUがステップ#32で抽出される。
【0066】
次に、抽出処理部26は、ステップ#32で抽出された更新データUの中から、処理対象区画の地図データMよりも更新バージョンが新しい更新データUを抽出する(ステップ#34)。本例では、図4に示すように、処理対象区画であるA区画の地図データMの更新バージョンは「0512」であるので、図7にハッチングが施された矩形枠として示すように、更新バージョン「0606」の更新データUがステップ#34で抽出される。以上で、A区画を更新対象とする更新バージョン「0606」の一つの更新データUが抽出される。
【0067】
その後、抽出処理部26は、全ての区画pについて以上の処理を終了したか否かについて判定する(ステップ#34)。そして、全ての区画pについて以上の処理が終了するまでは(ステップ#34:No)、ステップ#31へ戻り、次の区画pを処理対象区画として同様の処理を繰り返し行う。本例では、次に、ステップ#31で、B区画が処理対象区画として選択される。そして、ステップ#32で、B区画を更新対象区画とする更新データUとして、更新バージョンが「0512」と「0606」の2つの更新データUが抽出される(図7参照)。次に、ステップ#33では、ステップ#32で抽出された更新データUの中から、処理対象区画の地図データMよりも更新バージョンが新しい更新データUが抽出されるが、本例では、図4に示すように、B区画の地図データMの更新バージョンが「0612」であるので、ステップ#33では更新データUは抽出されない。よって、A区画を更新対象とする更新データUは抽出されない。以下、同様の処理を繰り返し、図7にハッチングが施された矩形枠として示す複数の更新データUが抽出される。そして、全ての区画pについて以上の処理を終了した場合には(ステップ#34:Yes)、すなわち本例では、G区画についての上記ステップ#31〜#33の処理が終了した場合には、記録メディアR(記録媒体)からの更新データUの抽出処理を終了する。
【0068】
なお、サーバ装置3の抽出処理部33による更新データベースDB2からの更新データUの抽出処理では、ステップ#31の処理対象区画となる区画pが、記録メディアRに格納されている更新データUの全ての区画pではなく、配信要求データの要求区画から処理対象区画が選択される。その他の処理方法については、上記と同様である。
【0069】
7.地図データの差分更新処理の方法
次に、地図データベースDB1内に格納されている地図データMの差分更新処理の方法について説明する。図12は、この地図データMの差分更新処理の方法を示すフローチャートである。本例では、図10のステップ#24で記録メディアRから抽出された更新データUが図7のハッチングが施された矩形枠で示される複数の更新データUであり、これらの更新データUにより地図データMの差分更新を行い、ナビゲーション装置1の地図データベースDB1内の地図データMの更新状態が図4に示す状態から図5に示す状態に変化する場合を例として説明する。
【0070】
図12に示すように、ナビゲーション装置1の更新処理部27は、まず、処理対象区画を選択する(ステップ#41)。ここで、処理対象区画としては、図10のステップ#24で記録メディアRから抽出された一又は二以上の更新データUの更新対象区画の中から、差分更新処理の対象とする一つの区画が選択される。本例では、更新データUが抽出されなかったB区画及びC区画を除く、A、D、E、F、Gの各区画から一区画ずつ順に選択される。ここでは、まず、A区画が処理対象区画として選択されたこととする。次に、更新処理部27は、記録メディアRから抽出された複数の更新データUの中から、ステップ#41で選択された処理対象区画を更新対象区画とする更新データU、すなわち区画識別情報Du1に示される区画pが処理対象区画である更新データUを抽出する(ステップ#42)。本例では、図7に示すように、A区画を更新対象区画とする更新データUとして、更新バージョン「0606」の更新データUが記録メディアRから抽出されているので、この一つの更新データUがステップ#42で抽出される。
【0071】
次に、更新処理部27は、ステップ#42で抽出された更新データUが複数あるか否かを判定する(ステップ#43)。そして、ステップ#42で抽出された更新データUが一つである場合には(ステップ#43:No)、更新処理部27は、当該抽出された更新データUを適用して処理対象区画の地図データMの差分更新を行う(ステップ#50)。本例では、上記のとおり、ステップ#42において、処理対象区画であるA区画を更新対象区画とする更新バージョン「0606」の更新データUが一つのみ抽出されている。したがって、更新処理部27は、このA区画を更新対象区画とする更新バージョン「0606」の更新データUをA区画の地図データMに適用して差分更新を行う。その後、更新処理部27は、全ての区画pについて以上の処理を終了したか否かについて判定する(ステップ#48)。そして、全ての区画pについて以上の処理が終了するまでは(ステップ#48:No)、ステップ#41へ戻り、次の区画pを処理対象区画として同様の処理を繰り返し行う。本例では、以降、D、E、F、Gの各区画が順に選択される(ステップ#41)。
【0072】
そこで、次に、ステップ#42において、複数の更新データUが抽出される例として、ステップ#41で処理対象区画としてF区画が選択された場合について説明する。この場合、図7に示すように、ステップ#42では、F区画を更新対象区画とする更新データUとして、更新バージョンが「0511」、「0603」、「0609」の3つの更新データUが抽出される。したがって、ステップ#42で抽出された更新データUが複数ある場合(ステップ#43:Yes)に相当する。よって次に、更新処理部27は、更新データUによる更新順序を、更新バージョンが古い順に決定する(ステップ#44)。本例では、更新バージョンが「0511」、「0603」、「0609」の順に更新データUの更新順序を決定する。
【0073】
次に、更新処理部27は、過去バージョン情報Du3に基づいて更新順序が正常であることを確認する処理を行う(ステップ#45)。すなわち、更新処理部27は、ステップ#44で決定された更新順序に従って、更新順序が1番目の更新データUの過去バージョン情報Du3が、処理対象区画の地図データMの現在の更新バージョンと一致することを確認するとともに、更新順序が2番目以降の各更新データUの過去バージョン情報Du3が、当該更新データUの一つ前の更新順序の更新データUの更新バージョンと一致することを確認する。そして、これらの全てが一致する場合には、ステップ#44で決定した更新順序が正常であることが確認できる。本例では、更新バージョンが「0511」、「0603」、「0609」の3つの更新データUの過去バージョン情報Du3は、それぞれ「0504」、「0511」、「0603」となっている。よって、更新処理部27は、まず、更新順序が1番目の更新バージョン「0511」の更新データUの過去バージョン情報Du3「0504」が、処理対象区画の地図データMの現在の更新バージョン「0504」と一致することを確認する。また、更新処理部27は、更新順序が2番目以降の更新バージョンが「0603」、「0609」の2つの更新データUの過去バージョン情報Du3「0511」、「0603」が、それぞれの更新データUの一つ前の更新順序の更新データUの更新バージョン「0511」、「0603」と一致することを確認する。本例では、地図データM及び全ての更新データUの更新バージョンと過去バージョン情報Du3とが一致しており、更新順序が正常であることが確認される。
【0074】
そして、更新処理部27は、ステップ#45の結果、更新順序が正常である場合には(ステップ#46:Yes)、ステップ#44で決定された更新順序に従い、更新データUを順に適用して処理対象区画の地図データMの差分更新を行う(ステップ#47)。本例では、図4に示す更新バージョンが「0504」であるF区画の地図データMに対して、まず更新バージョン「0511」の更新データUを適用して差分更新を行う。次に、これにより更新バージョンが「0511」となったF区画の地図データMに対して、更新バージョン「0603」の更新データUを適用して差分更新を行い、最後に更新バージョン「0609」の更新データUを適用して差分更新を行う。これにより、F区画の地図データMは更新バージョンが「0609」となる。そして、全ての区画pについて以上の処理が終了した場合には(ステップ#48:Yes)、地図データMの差分更新処理を終了する。
【0075】
一方、更新処理部27は、ステップ#45の結果、更新順序が正常でない場合には(ステップ#46:No)、更新データUの再抽出処理を行う(ステップ#49)。具体的には、更新処理部27は、更新順序が正常でないと判定された際の処理対象区画の更新データUの抽出処理の指令を、抽出処理部26に対して出力する。これにより、抽出処理部26は、前記処理対象区画について、記録メディアRから再度更新データUを抽出する処理を行う。この場合、更新処理部27による地図データMの差分更新処理は一旦終了する。
【0076】
なお、サーバ装置3から一又は二以上の更新データUを受信した場合における、当該受信した更新データUによる地図データMの差分更新処理(図9のステップ#05)については、ステップ#41の処理対象区画となる区画pが、サーバ装置3から受信した一又は二以上の更新データUの更新対象区画の中から選択された区画pとなる。また、ステップ#49の再抽出処理が、更新順序が正常でないと判定された際の処理対象区画の更新データUの抽出処理の指令を、抽出処理部26ではなく、配信要求処理部25に対して出力することになる。その他の処理方法については、上記と同様である。
【0077】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、地図データMの更新単位を区画pとする場合を例として説明した。しかし、これは地図データMの更新単位の単なる一例であり、他の更新単位により地図データMを更新する構成とすることもできる。したがって、例えば、道路や施設等の地物を地図データMの更新単位とすることもできる。また、地点検索用のデータに関しては、検索ジャンルや地域等を地図データMの更新単位とすると好適である。
【0078】
(2)上記の実施形態では、更新バージョンを更新データUが生成された年月を表すように設定する場合を例として説明した。しかし、更新バージョンの設定方法はこれに限定されない。したがって、例えば、更新データUの生成時期に関して、年月日や年月日時分までを表すように設定することも好適な実施形態の一つである。また、更新バージョンが、このような更新データUの生成時期と、更新対象とする地図データMの区画p等のような他の情報との双方を表すように設定することも可能である。また、更新バージョンを、一つの更新対象の地図データMについて連続する連続番号とすることも可能である。
【0079】
(3)上記の実施形態では、更新データUが過去バージョン情報Du3を有する場合を例として説明した。しかし、更新データUがこのような過去バージョン情報Du3を有しない構成とすることも可能である。この場合、更新データUの更新対象区画毎に、更新バージョンの順序を格納したテーブルをサーバ装置3に備え、更新データUの送信時に当該テーブルのデータを共に送信し、或いは記録メディアRの元となるマスターメディアRmに更新データUと共に当該テーブルも格納する構成とすると好適である。また、更新バージョンを、更新データUの生成時期とは関係なく、更新データUの更新対象区画毎に連番となるように付与する場合には、更新バージョンに基づいて順序を容易に把握できるので、そのようなテーブルも不要となる。
【0080】
(4)上記の実施形態では、ナビゲーション装置1からの配信要求データに基づいてサーバ装置3の抽出処理部33により抽出された更新データUが複数ある場合における、各更新データUの配信順序については説明していない。しかし、複数の区画pについての複数の更新データUをナビゲーション装置1に配信する場合には、配信中に通信状態が悪化する場合があることを考慮して配信順序を定めておき、その配信順序に従って更新データUをナビゲーション装置1に配信する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。例えば、ナビゲーション装置1において目的地が設定されたことに伴い、現在の自位置周辺、目的地周辺、及び自位置から目的地までの設定経路周辺の複数の区画pについての更新データUを配信する場合には、以下のような配信順序とすることができる。すなわち、現在の自位置周辺の区画pから設定経路に沿って目的地周辺の区画pに向かう順序で更新データUを配信する配信順序とすることができる。このような配信順序とした場合、配信中に通信が途絶えたとしても、自位置周辺については最新の地図を表示入力装置13に表示することができる利点がある。また、目的地周辺の区画pから設定経路に沿って現在の自位置周辺の区画pに向かう順序で更新データUを配信する配信順序とすることもできる。このような配信順序とした場合、配信中に通信が途絶えたとしても、ユーザは目的地周辺の最新の地図の情報を取得することができる利点がある。また、現在の自位置周辺の区画pと目的地周辺の区画pとの更新データUを先に配信し、後で設定経路周辺の区画pの更新データUを配信する配信順序とすることもできる。このような配信順序とした場合、現在の自位置周辺と目的地周辺との間の設定経路については、更新データUに依存することが少ないため、配信中に通信が途絶えたとしても、経路案内に与える影響を少なくすることができる利点がある。ここで、配信順序の決定は、サーバ装置3の配信部34において行うことができる。また、配信順序の決定を、ナビゲーション装置1の配信要求処理部25により行うこともできる。この場合、配信要求処理部25は、生成する配信要求データに配信順序についての要求情報を含める構成とすると好適である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、所定の更新単位毎に分割された複数の地図データが格納された地図データベースを備え、各地図データを更新データにより差分更新できるように構成されたナビゲーション装置、及び当該ナビゲーション装置の地図データ更新方法に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施形態に係るナビゲーション装置を含むデータ更新システムの全体の構成を模式的に示すブロック図
【図2】区画毎の(a)地図データ及び(b)更新データのデータ構造の具体例を示す図
【図3】地図データベース内の地図データの更新データによる更新状態を示す図
【図4】地図データベース内の地図データの更新データによる更新状態を示す図
【図5】地図データベース内の地図データの更新データによる更新状態を示す図
【図6】サーバ装置の更新データベース内に格納されている更新データを示す図
【図7】記録メディア内に格納されている更新データを示す図
【図8】更新データに含まれる差分情報の具体的な内容について説明するための説明図
【図9】サーバ装置との通信による地図データの差分更新処理の方法を示すフローチャート
【図10】記録メディアから読み出した更新データによる地図データの差分更新処理の方法を示すフローチャート
【図11】記録メディアからの更新データの抽出処理方法を示すフローチャート
【図12】地図データの差分更新処理の方法を示すフローチャート
【符号の説明】
【0083】
1:ナビゲーション装置
21:第一通信部(受信手段)
24:更新制御部(更新手段)
28:読出手段
DB1:地図データベース
M:地図データ
Dm1:地図データの区画識別情報(識別情報)
Dm2:地図データのバージョン情報
U:更新データ
Du1:更新データの区画識別情報(識別情報)
Du2:更新データのバージョン情報
Du3:過去バージョン情報
Du4:差分情報
p:区画(更新単位)
R:記録メディア(記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の更新単位毎に分割され、それぞれに識別符号を表す識別情報と現在の更新バージョンを表すバージョン情報とを有する複数の地図データが格納された地図データベースと、
前記地図データに対応する前記更新単位毎に生成され、更新対象の前記地図データの更新内容を更新前の前記地図データとの差分として表す差分情報と、更新対象の前記地図データの前記識別符号を表す識別情報と、更新後の更新バージョンを表すバージョン情報とを有する更新データを、通信ネットワークを介して受信する受信手段と、
複数の前記更新データが格納された記録媒体から前記更新データを読み出す読出手段と、
前記受信手段により受信し、又は前記読出手段により読み出した前記更新データにより前記地図データを差分更新する更新手段と、を備え、
前記更新手段は、前記記録媒体に格納された前記更新データにより前記地図データの更新を行う場合に、前記地図データの前記識別情報及び前記更新バージョンに対して、前記識別情報が合致するとともに前記更新バージョンが新しい前記更新データを、前記記録媒体に格納された複数の前記更新データの中から抽出し、当該抽出された前記更新データにより前記地図データの差分更新を行うナビゲーション装置。
【請求項2】
前記更新手段は、前記地図データと前記識別情報が合致するとともに当該地図データよりも前記更新バージョンが新しい前記更新データが複数ある場合に、当該各更新データが有する前記バージョン情報に基づいて、前記更新バージョンが古い前記更新データから順に適用して、前記地図データの差分更新を行う請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記更新単位は、地図を所定の領域毎に区切る区画であり、前記識別符号は、各区画に付された区画IDである請求項1又は2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記更新データのバージョン情報は、同じ生成時期に生成された、更新対象の前記地図データが異なる複数の更新データについて同じ更新バージョンとした請求項1から3のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記更新データは、前記バージョン情報に加えて、更新対象の前記地図データについての過去の前記更新データの更新バージョンを表す過去バージョン情報を有する請求項1から4のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記記録媒体には、所定の地域に含まれる複数の前記地図データのそれぞれを更新対象とするものであって、所定期間内に生成された全ての更新バージョンの更新データが格納されている請求項1から5のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
所定の更新単位毎に分割され、それぞれに識別符号を表す識別情報と現在の更新バージョンを表すバージョン情報とを有する複数の地図データが格納された地図データベースを備えたナビゲーション装置において、通信ネットワークを介して受信し、又は記録媒体から読み出した更新データにより前記地図データを差分更新するに際して、
前記更新データは、前記地図データに対応する前記更新単位毎に生成され、更新対象の前記地図データの更新内容を更新前の前記地図データとの差分として表す差分情報と、更新対象の前記地図データの前記識別符号を表す識別情報と、更新後の更新バージョンを表すバージョン情報とを有するものとし、
複数の前記更新データが格納された記録媒体から前記更新データを読み出して前記地図データの更新を行う場合に、前記地図データの前記識別情報及び前記更新バージョンに対して、前記識別情報が合致するとともに前記更新バージョンが新しい前記更新データを、前記記録媒体に格納された複数の前記更新データの中から抽出し、当該抽出された前記更新データにより前記地図データの差分更新を行うナビゲーション装置の地図データ更新方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−249624(P2008−249624A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93899(P2007−93899)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】