説明

ナビゲーション装置

【課題】運転者に負担をかけることなく音声出力による情報量を増加させ、もって効果的な経路誘導を行うこと。
【解決手段】ナビゲーションユニット2は、予定経路情報および位置情報から運転者に通知すべき第1の誘導方向および該第1の誘導方向に対応した車両操作を実行すべき地点の情報(第1ガイドポイント情報)を作成するとともに、第1の誘導方向の次に通知すべき第2の誘導方向および該第2の誘導方向に対応した車両操作を実行すべき地点の情報(第2ガイドポイント情報)を作成するガイド内容作成部26aと、第1ガイドポイントおよび第2ガイドポイント間の距離に応じて単一の誘導方向に方向感・距離感制御(音像定位制御)を行うか、若しくは複数の誘導方向それぞれに方向感・距離感制御(音像定位制御)を行うかを決定するガイド音声制御部26bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め設定された予定経路情報および自車両の位置情報をもとに誘導内容を通知する案内音声の音像を誘導方向に定位させる音像定位制御を行って自車両を経路誘導するナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自車両の予定経路を登録し、音声によって経路誘導を行うナビゲーション装置が実現されている。このナビゲーション装置は、自車両が右左折する交差点を予定経路と地図情報、現在位置をもとに特定し、事前に運転者に通知することで設定した経路通りに自車両を走行させるものである。
【0003】
この時、運転者への通知には、画面表示と音声出力とが併用されるが、車両の運転時にディスプレイを注視させることは好ましくないので、音声による通知が非常に有用である。このように、かかるナビゲーション装置では、音声出力における情報量を増加させ、運転者による車両操作に負担をかけることなく効果的な経路誘導を実現することが要求されている。
【0004】
このような要求を背景にして、予め設定された予定経路情報および自車両の位置情報をもとに誘導内容を通知する音像を誘導方向に定位させる音像定位制御を行って自車両を経路誘導するナビゲーション装置が開発されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、ナビゲーション装置の案内音声が運転者に対して相対角度方向から聴取されるように制御することで、音声の方向を情報として活用している。同様に、特許文献2においても、道路案内の方向に音像を定位させて音声データを出力する技術が開示されており、特許文献3においても経路の状況に応じて告知音の定位方向を変化させて経路案内を行う技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平7−57190号公報
【特許文献2】特開平6−176296号公報
【特許文献3】特開平8−110237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の従来技術(特許文献1、2および3)は、連続して異なる方向の経路誘導を行う場合においても、誘導内容を通知する音像をそれぞれの誘導方向に順次定位させるものに過ぎないため、音声出力による情報量の増加を行うこと(すなわち、誘導方向への方向感を付与する音声出力制御を実施すること)に起因して運転者側の聞き取りやすさが阻害される状況が生じることとなり、進路方向の誤認識など車両操作の混乱を招くおそれがあった。
【0008】
例えば、「次の交差点を右折し、その先の信号を左折する。」という音声案内を行う場合、右方向から音声を出力し、直後に左方向から音声を出力することとなるため、運転者は後から聞こえた左方向の情報を意識することとなる。すなわち、文章(音声の内容)による情報は、運転者側で容易に時系列の情報として認識可能であるが、音の方向の情報は、後発の情報が先発の情報を打ち消し、時系列での認識が困難であるので、音声方向の複雑な変化は、運転者側に「音の聞こえた方向の順番を記憶する。」という労力を強いることとなる。
【0009】
このように、上記の従来技術では、音声出力による情報量の増加を行うこと(すなわち、誘導方向への方向感を付与する音声出力制御を実施すること)に起因して運転者側の聞き取りやすさが阻害される状況が発生するため、効果的な経路誘導を行うことができないという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明は、上述した従来技術による課題(問題点)を解消するためになされたものであり、運転者に負担をかけることなく音声出力による情報量を増加させ、効果的な経路誘導を行うことができるナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1の発明に係るナビゲーション装置は、予め設定された予定経路情報および自車両の位置情報をもとに誘導内容を通知する案内音声の音像を誘導方向に定位させる音像定位制御を行って自車両を経路誘導するナビゲーション装置であって、第一の誘導位置に対応する第一の案内音声と、第二の誘導位置に対応する第二の案内音声とが連続的に出力される場合であって、且つ、前記第一の誘導位置における第一の誘導方向と、前記第二の誘導位置における第二の誘導方向とが異なる場合には、前記第一の誘導位置と前記第二の誘導位置との間の距離に応じて、前記第一の案内音声と、前記第二の案内音声の音像を単一の誘導方向に定位させるか、前記第一の誘導方向と前記第二の誘導方向にそれぞれ定位させるかを決定する音像制御手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の発明に係るナビゲーション装置は、請求項1の発明において、前記音像制御手段は、複数の誘導方向それぞれに前記音像定位制御を行うと決定した場合に、前記第一の誘導位置と自車両の位置との距離をもとに第一の誘導方向に音像定位制御を行う際の前記音像の運転者に対する相対距離を決定し、前記第一の誘導位置および前記第二の誘導位置間の距離をもとに第二の誘導方向に音像定位制御を行う際の前記音像の運転者に対する相対距離を決定することを特徴とする。
【0013】
また、請求項3の発明に係るナビゲーション装置は、請求項1または2の発明において、前記音像制御手段は、前記運転者に対して正面の位置若しくは当該ナビゲーション装置が搭載されている位置を誘導方向基準位置として前記音像定位制御を行うことを特徴とする。
【0014】
また、請求項4の発明に係るナビゲーション装置は、請求項1、2または3の発明において、前記音像定位制御を行う際に用いるスピーカを設定するスピーカ設定手段をさらに備え、前記音像制御手段は、前記スピーカ設定手段によって設定されたスピーカを用いて音像定位制御を行うことを特徴とする。
【0015】
また、請求項5の発明に係るナビゲーション装置は、請求項4の発明において、前記スピーカ設定手段は、前記音像定位制御を行う際にフロントスピーカを用いる設定、若しくはフロントスピーカおよびリアスピーカを用いる設定を有することを特徴とする。
【0016】
また、請求項6の発明に係るナビゲーション装置は、請求項4または5の発明において、前記自車両における乗員の在席状況を検出する在席状況検出手段をさらに備え、前記スピーカ設定手段は、前記在席状況検出手段による乗員の在席状況の検出結果に応じて前記音像定位制御を行う際に用いるスピーカを設定することを特徴とする。
【0017】
また、請求項7の発明に係るナビゲーション装置は、請求項1〜6のいずれか一つの発明において、前記音像制御手段は、前記自車両が当該ナビゲーション装置による経路誘導に反した進路を取った場合に、経路を逸脱した旨および/または経路を補正すべき旨を通知する音像を経路誘導されるべき誘導方向に定位させることを特徴とする。
【0018】
また、請求項8の発明に係るナビゲーション装置は、請求項1〜7のいずれか一つの発明において、前記音像制御手段は、前記音像定位制御を行っている際にウィンカーの動作指示を受け付けたならば、該音像定位制御を中止することを特徴とする。
【0019】
また、請求項9の発明に係るナビゲーション装置は、請求項1〜8のいずれか一つの発明において、前記音像制御手段による音像定位制御が行われている際にウィンカーの動作指示を受け付けたならば、前記誘導内容を通知する案内音声の音声出力を中止する音声出力制御手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0020】
また、請求項10の発明に係るナビゲーション装置は、請求項9の発明において、前記音声出力制御手段は、前記音像制御手段による音像定位制御が行われている際にウィンカーの動作指示を受け付けたならば、前記誘導内容を通知する案内音声の音声出力レベルを通常時の音声出力レベルに比較して低くなるように制御することを特徴とする。
【0021】
また、請求項11の発明に係るナビゲーション装置は、請求項9または10の発明において、前記音声出力制御手段は、経路誘導すべき誘導方向が正面方向である場合に、前記誘導内容を通知する案内音声の音声出力を行わないように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、第一の誘導位置に対応する第一の案内音声と、第二の誘導位置に対応する第二の案内音声とが連続的に出力される場合であって、且つ、第一の誘導位置における第一の誘導方向と、第二の誘導位置における第二の誘導方向とが異なる場合には、第一の誘導位置と第二の誘導位置との間の距離に応じて、第一の案内音声と、第二の案内音声の音像を単一の誘導方向に定位させるか、第一の誘導方向と第二の誘導方向にそれぞれ定位させるかを決定することとしたので、運転者に負担をかけることなく音声出力による情報量を増加させることができ、効果的な経路誘導を行うことが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
【0023】
また、本発明によれば、複数の誘導方向それぞれに音像定位制御を行うと決定した場合に、第一の誘導位置と自車両の位置との距離をもとに第一の誘導方向に音像定位制御を行う際の音像の運転者に対する相対距離を決定し、第一の誘導位置および第二の誘導位置間の距離をもとに第二の誘導方向に音像定位制御を行う際の音像の運転者に対する相対距離を決定することとしたので、連続して異なる方向の経路誘導を行う場合でも、第一の誘導位置に係る案内音声への方向感制御と、第二の誘導位置に係る案内音声への方向感制御とを時系列に区別させることが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。さらに、これに関連して、第一の誘導位置に係る案内音声の音声出力に次いで出力される第二の誘導位置に係る案内音声を通常時に比して遅らせて音声出力することで、ユーザ(すなわち、運転者)が異なる複数の音声方向の変化を時系列に認識することをより効果的にサポートすることが可能になる。
【0024】
また、本発明によれば、運転者に対して正面の位置若しくは当該ナビゲーション装置が搭載されている位置を誘導方向基準位置として音像定位制御を行うこととしたので、ユーザの感覚・嗜好に応じた誘導方向基準位置を選択させることが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
【0025】
また、本発明によれば、音像定位制御を行う際に用いるスピーカを設定し、設定されたスピーカを用いて音像定位制御を行うこととしたので、任意のスピーカを方向感・距離感制御に利用するスピーカとして設定することが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
【0026】
また、本発明によれば、音像定位制御を行う際にフロントスピーカを用いる設定、若しくはフロントスピーカおよびリアスピーカを用いる設定を有することとしたので、ユーザがリアシートに着座する乗員に配慮した方向感・距離感制御を設定することが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
【0027】
また、本発明によれば、自車両における乗員の在席状況を検出し、乗員の在席状況の検出結果に応じて音像定位制御を行う際に用いるスピーカを設定することとしたので、乗員の在席状況に応じた方向感・距離感制御を自動的に提供することが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。特に、フロントシートおよびリアシートごとの在席状況に応じて方向感・距離感制御に利用するスピーカを設定することで、リアシートに着座する乗員に配慮した方向感・距離感制御を自動で提供することが可能になる。
【0028】
また、本発明によれば、自車両が当該ナビゲーション装置による経路誘導に反した進路を取った場合に、経路を逸脱した旨および/または経路を補正すべき旨を通知する音像を経路誘導されるべき誘導方向に定位させることとしたので、経路を逸脱した旨および/または経路を補正すべき旨を音声出力によって通知するとともに、仮想音源によって本来進むべき方向をも強調することができ、音声出力による情報量を効果的に増加させることが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
【0029】
また、本発明によれば、音像定位制御を行っている際にウィンカーの動作指示を受け付けたならば、該音像定位制御を中止することとしたので、ユーザが進行すべき方向を認識している場合に、不要な方向感・距離感制御を行うことを防止することが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
【0030】
また、本発明によれば、音像定位制御が行われている際にウィンカーの動作指示を受け付けたならば、誘導内容を通知する案内音声の音声出力を中止することとしたので、ユーザが進むべき方向を認識している場合に、方向感・距離感制御を伴った音声案内を中止することが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
【0031】
また、本発明によれば、音像定位制御が行われている際にウィンカーの動作指示を受け付けたならば、誘導内容を通知する案内音声の音声出力レベルを通常時の音声出力レベルに比較して低くなるように制御することとしたので、ユーザが進むべき方向を認識している場合に、煩わしくない程度の方向感・距離感制御に留めることが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
【0032】
また、本発明によれば、経路誘導すべき誘導方向が正面方向である場合に、誘導内容を通知する案内音声の音声出力を行わないように制御することとしたので、ユーザが進むべき方向を認識している場合に、車両走行時の快適さを阻害することを防止することが可能なナビゲーション装置が得られるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るナビゲーション装置の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下では、本実施例で用いる用語の概念を最初に説明してから、本発明に係るナビゲーションシステムの概要および特徴を説明し、その後、本実施例1に係るナビゲーションシステムを説明し、最後に、他の実施例として種々の変形例(実施例2)を説明することとする。
【0034】
(用語の説明)
以下に、本実施例で用いる用語の概念を簡単に説明する。本実施例で用いる「方向感制御」とは、ナビ音声(案内音声)に誘導方向への方向感を付与する音声出力制御を指し、また、「距離感制御」とは、ナビ音声(案内音声)に誘導指示(例えば、右左折、方向転換などの車両操作の指示)を実行すべき地点(例えば、交差点、信号、道路の合流地点などのガイドポイント)までの距離感を付与する音声出力制御を指す。なお、かかる「方向感制御」および「距離感制御」が組み合わせて実施される際には、「方向感・距離感制御」と記すこととする。
【0035】
また、本実施例で用いる「ガイドポイント」とは、自車両の予定経路、現在位置および地図情報をもとに、運転者に対して音声案内すべきと判断される地点を指し、具体的には、誘導指示(例えば、右左折、方向転換などの指示)を実行すべき地点(例えば、交差点、道路の合流地点などのガイドポイント)のことを指す。
【0036】
(概要および特徴)
まず最初に、本発明に係るナビゲーション装置の概要および特徴を説明する。図1は、本実施例1に係るナビゲーションシステム1の概要構成を示す概要構成図である。同図に示すように、このナビゲーションシステム1は、予め設定された予定経路情報および自車両の位置情報をもとに誘導内容を通知する案内音声の音像を誘導方向に定位させる音像定位制御を行って自車両を経路誘導するものである。
【0037】
ここで、本発明に係るナビゲーションシステム1は、第一の誘導位置(第1ガイドポイント)に対応する第一の案内音声と、第二の誘導位置(第2ガイドポイント)に対応する第二の案内音声とが連続的に出力される場合であって、且つ、第1ガイドポイントにおける第一の誘導方向と、第2ガイドポイントにおける第二の誘導方向とが異なる場合には、第1ガイドポイントと第2ガイドポイントとの間の距離に応じて、第一の案内音声と、第二の案内音声の音像を単一の誘導方向に定位させるか、第一の誘導方向と第二の誘導方向にそれぞれ定位させるかを決定する点に主たる特徴があり、かかる一連の処理によって、運転者に負担をかけることなく音声出力による情報量を増加させ、効果的な経路誘導を行うことができるようにしている。
【0038】
この主たる特徴を具体的に説明すると、このナビゲーションシステム1では、第1ガイドポイントおよび第2ガイドポイント間の距離が所定の距離以内であれば(すなわち、ガイドポイント間の距離が中距離の案内音声出力ポイント「300m」以内の距離である場合)、単一の誘導方向に音像定位制御を実行すると決定し、第1ガイドポイントおよび第2ガイドポイント間の距離が所定の距離以内でなければ(すなわち、ガイドポイント間の距離が中距離の案内音声出力ポイント「300m」以遠であり、かつ遠距離の案内音声出力ポイント「700m」以内の距離である場合)、複数の誘導方向それぞれに音像定位制御を実行すると決定する。
【0039】
つまり、このナビゲーションシステム1では、第1ガイドポイントに係る案内音声および第2ガイドポイントに係る案内音声それぞれに距離感制御を行ったとしても、第1ガイドポイントに係る案内音声への方向感制御と、第2ガイドポイントに係る案内音声への方向感制御とを時系列に区別させることが困難である場合には、第1ガイドポイントに係る案内音声の音像および第2ガイドポイントに係る案内音声の音像を第1音声方向(第1の誘導方向)に固定する音像定位制御を実行する決定を下す。
【0040】
一方、第1ガイドポイントに係る案内音声および第2ガイドポイントに係る案内音声それぞれに距離感制御を行うことで、第1ガイドポイントに係る案内音声への方向感制御と、第2ガイドポイントに係る案内音声への方向感制御とを時系列に区別させることが容易である場合には、第1ガイドポイントに係る案内音声の音像を第1音声方向(第1の誘導方向)に定位させ、第2ガイドポイントに係る案内音声の音像を第2音声方向(第1の誘導方向)に定位させる音像定位制御を実行する決定を下す。
【0041】
このように、第1ガイドポイントおよび第2ガイドポイント間の距離に応じて音像定位対象である誘導方向を単一もしくは複数にするかを決定することで、第1ガイドポイントに係る案内音声への方向感制御と、第2ガイドポイントに係る案内音声への方向感制御とを時系列に区別させることが容易である場合にのみ複数の誘導方向それぞれに音像定位制御を実行させることができ、運転者側の聞き取りやすさを阻害することなく、音声出力による情報量を増加させること(すなわち、誘導方向への方向感を付与する音声出力制御を実施すること)ができるようにしている。
【0042】
したがって、上記した従来技術の例で言えば、連続して異なる方向の経路誘導を行う場合に、誘導内容を通知する音像をそれぞれの誘導方向に順次定位させ、運転者側の聞き取りやすさが阻害される状況を発生させるのではなく、第1の誘導位置および第2の誘導位置間の距離に応じて音像定位対象である誘導方向を単一もしくは複数にするかを決定することで、運転者に負担をかけることなく音声出力による情報量を増加させることができ、上記した主たる特徴のように、効果的な経路誘導を行うことが可能になる。
【実施例1】
【0043】
次に、本実施例1に係るナビゲーションシステムについて説明する。なお、ここでは、本実施例1に係るナビゲーションシステムの構成について説明した後に、このナビゲーションシステムの各種処理の手順を説明することとする。
【0044】
(ナビゲーションシステムの構成)
図1は、本実施例1に係るナビゲーションシステム1の概要構成を示す概要構成図である。同図に示すように、このナビゲーションシステム1は、ナビゲーションユニット2、オーディオユニット3、スピーカ制御部4およびスピーカSP1〜SP4を有する。
【0045】
このうち、ナビゲーションユニット2は、その内部にGPS(Global Positioning System)受信部21、経路設定部22、ウィンカー23、スピーカ設定部24、シート荷重センサ25および制御部26を有する。ここで、GPS受信部21、経路設定部22、ウィンカー23、スピーカ設定部24、シート荷重センサ25、制御部26は、マイコンなどによって構成しても良いし、電子回路によって構成しても良い。また、本構成は各機能によって区分したものであり、物理的な構成については、全体若しくは一部を統合或いは分散したものとしても良い。
【0046】
GPS受信部21は、GPS人工衛星からの情報を受信して時刻情報の取得、自車両の位置情報の特定を行う。また、GPS受信部21は、特定した自車両の位置をガイド内容作成部26aに出力する。
【0047】
経路設定部22は、ユーザ(例えば、運転者)からのユーザ入力を受け付けて自車両の予定経路を設定・記憶する処理部である。また、経路設定部22は、設定した経路や地図情報をガイド内容作成部26aに出力する。
【0048】
スピーカ設定部24は、音像定位制御を行う際に用いるスピーカを設定する処理部であり、具体的には、図5に示すように、スピーカ設定画面300において、ユーザ(すなわち、運転者)からタッチパネルなどのユーザインターフェースを介して「フロントスピーカ」ボタンの押下を受け付けた場合には、「フロントスピーカ」を方向感・距離感制御に利用するスピーカとする設定を行い、「フロントスピーカ+リアスピーカ」ボタンを受け付けた場合には、「フロントスピーカ+リアスピーカ」を方向感・距離感制御に利用するスピーカとする設定を行う。なお、かかる設定は、ポジションセレクタと連動して実現するようにしても良い。
【0049】
このように、方向感・距離感制御をおこなう際にフロントスピーカを用いる設定、若しくはフロントスピーカおよびリアスピーカを用いる設定を有することで、ユーザがリアシートに着座する乗員に配慮した方向感・距離感制御を設定することが可能になる。
【0050】
また、スピーカ設定部24は、ユーザ(すなわち、運転者)からタッチパネルなどのユーザインターフェースを介して「Auto」ボタンの押下を受け付けた場合には、各乗員のシートに設置されたシート荷重センサ25と連動して方向感・距離感制御に利用するスピーカを設定することで、乗員の在席状況に応じた方向感・距離感制御を自動的に提供することができるようにしている。
【0051】
例えば、フロントシートのみ乗員が在席している場合には、「フロントスピーカ+リアスピーカ」を方向感・距離感制御に利用するスピーカとする設定を行い、また、フロントシートおよびリアシートの両方に乗員が在席している場合には、「フロントスピーカ」を方向感・距離感制御に利用するスピーカとする設定を行う。このように、フロントシートおよびリアシートごとの在席状況に応じて方向感・距離感制御に利用するスピーカを設定することで、リアシートに着座する乗員に配慮した方向感・距離感制御を自動で提供することが可能になる。
【0052】
また、スピーカ設定部24は、「Manual」ボタンの押下とともに、各スピーカSP1〜SP4に対応するボタンの押下を受け付けることで、任意のスピーカを方向感・距離感制御に利用するスピーカとして設定することもできる。
【0053】
制御部26は、OS(Operating System)などの制御プログラム、各種の処理手順などを規定したプログラムおよび所要データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する処理部であり、特に本発明に密接に関連するものとしては、ガイド内容作成部26a、ガイド音声制御部26bおよびガイド表示制御部26cを有する。
【0054】
このうち、ガイド内容作成部26aは、GPS受信部21および経路設定部22の出力をもとに、自車両の運転者に通知する内容を作成する処理部である。具体的には、運転者に次に音声案内を行うべき場所に関する情報を第1ガイドポイント情報として記憶し、第1ガイドポイントの次に音声案内を行うべき場所に関する情報を第2ガイドポイント情報として記憶する。ここで、ガイドポイントとは、自車両の予定経路、現在位置および地図情報をもとに、運転者に対して音声案内すべきと判断される場所である。この判断、すなわち、「どの場所で案内音声を出力すべきか」の判断については、従来技術と同様であるのでここでは説明を省略する。
【0055】
より詳細には、第1ガイドポイント情報の内容は、自車両の現在位置からその場所(第1ガイドポイント)までの距離情報、およびその場所で自車両が取るべき方向を示す方向情報である。同様に、第2ガイドポイント情報の内容は、第1ガイドポイントからその場所(第2ガイドポイント)までの距離情報、およびその場所で自車両が取るべき方向を示す方向情報である。なお、第2ガイドポイント情報における距離情報は、自車両の現在位置から第2ガイドポイントまでの距離を示す情報であっても良い。
【0056】
例えば、自車両が現在位置から300m先の交差点で右折し、右折後の信号で左折する場合、第1ガイドポイントは、300m先の交差点であり、第2ガイドポイントは、右折後の信号である。
【0057】
ガイド内容作成部26aは、これらの第1ガイドポイント情報と第2ガイドポイント情報とを用いて経路誘導の内容を決定する。さらに、経路誘導のうち、音声によって出力する内容については、ガイド音声制御部26bに出力し、ディスプレイに表示する内容については、ガイド表示制御部26cに出力する。
【0058】
ガイド音声制御部26bは、ガイド内容作成部26aの出力をもとに、ガイド音声を運転者に対してどの方向から出力するかを決定してスピーカ制御部4に送信する。また、ガイド表示制御部26cは、ガイド内容作成部26aの出力をもとに、ディスプレイに表示する内容をオーディオユニット3に送信する。なお、ガイド音声制御部26bにおける「方向感・距離感制御」(すなわち、音像定位制御)、並びに「各種設定に対応した方向感・距離感制御」の説明については、後述する。
【0059】
オーディオユニット3は、その内部に主制御部31、オーディオ出力制御部32およびディスプレイ33を有する。ここで、主制御部31およびオーディオ出力制御部32は、マイコンなどによって構成しても良いし、電子回路によって構成しても良い。また、本構成は各機能によって区分したものであり、物理的な構成については双方を統合したものとしても良い。
【0060】
主制御部31は、オーディオユニット3を全体制御する制御部であり、例えば、オーディオユニット3がDVDプレイヤーであるならば、DVDディスクに記憶された音楽情報などを読み出してオーディオ出力制御部32に出力するとともに、映像情報などを読み出してディスプレイ33に表示する。さらに、オーディオ出力制御部32は、主制御部31が出力した音楽情報を、スピーカ制御部4に送信する。なお、このオーディオユニット3は、DVDプレイヤーに限らず、コンパクトディスク、ハードディスク、ラジオ、テレビなどの機能を有するものであっても良い。
【0061】
ここで、ディスプレイ33は、ナビゲーションユニット2による経路誘導の画像表示と共用される。そこで、主制御部31は、ナビゲーションユニット2内部にガイド表示制御部26cから受信した内容をディスプレイ33に表示させる機能を有する。すなわち、主制御部31は、各種媒体から情報の読出し、出力とともに、ディスプレイ33の統合管理を行うこととなる。
【0062】
スピーカ制御部4は、その内部に主制御部41、コーディック42、DSP(Digital Signal Processor)43およびアンプ44を有する。主制御部41、コーディック42およびDSP43は、マイコンなどによって構成しても良いし、電子回路によって構成しても良い。また、本構成は各機能によって区分したものであり、物理的な構成については双方を統合したものとしても良い。
【0063】
ナビゲーションユニット2内のガイド音声制御部26bから受信した音声情報、およびオーディオユニット3内部のオーディオ出力制御部32から受信した音楽情報は、所定のデジタル圧縮処理が施されている。そこで、コーディック42は、その内部に有するA/D部42aによってこれらの音声情報および音楽情報を復号し、音データとしてDSP43に出力する。
【0064】
また、主制御部41は、スピーカ制御部4を全体制御する制御部であり、具体的には、ナビゲーションユニット2からの音声出力と、オーディオユニット3からの音楽出力とを統合制御し、どのスピーカからどれだけの出力で音声再生および音楽再生を行うかを制御する。
【0065】
DSP43は、主制御部41の出力をもとに、各スピーカからの出力内容を決定し、A/D部42aの出力についてデジタル信号処理を施し、コーディック42内部のDAコンバータ部(D/A部42b)に出力する。D/A部42bの出力は、アンプ44によって出力強度を調整され、スピーカSP1〜SP4から音声や音楽として再生される。
【0066】
スピーカSP1〜SP4は、車室内において、例えば、右フロントスピーカ、左フロントスピーカ、右リアスピーカ、左リアスピーカのように配置される。これらのスピーカは、それぞれの出力強度を制御することで、運転者に対して所望の方向、所望の距離から音声が聞こえるように音声の出力を行うことができる。このように、運転者に対して仮想的な位置から聞こえるように出力する音声を、以下、「音像」と表記し、その仮想的な位置を「音像位置」と表記する。
【0067】
かかる「音像位置」は、ガイド音声制御部26bによって決定され、その音像位置を実現するためのスピーカ出力は、主制御部41およびDSP43によって調節される。ガイド音声制御部26bは、第1ガイドポイントの距離情報および方向情報、並びに第2ガイドポイントの距離情報および方向情報から音像の位置を決定する。
【0068】
つぎに、ガイド音声制御部26bにおける「方向感・距離感制御」(すなわち、音像定位制御)について説明する。図2は、音像定位制御の具体例を説明する説明図である。同図では、運転者50に対して3つの音像作成範囲51、52、53を設定している。音像作成範囲51は、自車両の現在位置の近傍での車両操作を案内する場合に使用する。また、音像作成範囲52は、自車両の現在位置から中距離、例えば、300m先での車両操作を案内する場合に使用する。さらに、音像作成範囲53は、自車両の現在位置から遠距離、例えば、700m先での車両操作を案内する場合に使用する。
【0069】
音像作成範囲51は、その内部に移動開始位置51aおよび方向変化位置51bを有する。音像作成範囲51に音像を定位する場合、まず、移動開始位置51aに音像を定位し、音声出力とともに音像位置を移動させる。その後、音像の移動方向を方向変化位置51bから変化させることで、自車両がどちらの方向に進むべきかを音像の移動方向によって示す。
【0070】
音像作成範囲51では、音像の移動方向として、「前方」、「右前方」、「左前方」、「右方向」、「左方向」、「右後方」、「左後方」、「後方」の8方向に対応している。例えば、運転者に次の交差点で「右方向」に針路変更するように通知する場合、「次の交差点を右前方です。」という音声情報を作成し、音像GV1に示すように、音像位置を移動開始位置51aに定位して音声出力を開始し、音声情報の出力中に音像位置を移動させて方向変化位置51bから右前方に移動方向を変化させる。
【0071】
同様に、音像作成範囲52は、その内部に移動開始位置52aおよび方向変化位置52bを有し、音像を定位する場合には、まず移動開始位置52aに音像を定位して音声出力とともに音像位置を移動させ、音像の移動方向を方向変化位置52bから変化させる。また、音像作成範囲52においても、音像の移動方向として、「前方」、「右前方」、「左前方」、「右方向」、「左方向」、「右後方」、「左後方」、「後方」の8方向に対応している。
【0072】
さらに、音像作成範囲53は、その内部に移動開始位置53aおよび方向変化位置53bを有し、音像を定位する場合には、まず移動開始位置53aに音像を定位して音声出力とともに音像位置を移動させ、音像の移動方向を方向変化位置53bから変化させる。また、音像作成範囲53においても、音像の移動方向として、「前方」、「右前方」、「左前方」、「右方向」、「左方向」、「右後方」、「左後方」、「後方」の8方向に対応している。なお、音像作成範囲53は、運転者50に対して固定した点であってもかまわない。その場合、この音像作成範囲53からの音声出力は、音像の移動を伴わないこととなる。
【0073】
また、音像作成範囲51の大きさは、音像作成範囲52に比して大きくしている。さらに、運転者50から音像作成範囲52の移動開始位置52aまでの距離d20、方向変化位置52bまでの距離d21は、運転者50から音像作成範囲51の移動開始位置51aまでの距離d10、方向変化位置51bまでの距離d11に比してそれぞれ大きい。同様に、音像作成範囲52の大きさは、音像作成範囲53に比して大きく、運転者50から音像作成範囲53の移動開始位置53aまでの距離d30、方向変化位置53bまでの距離d31は、運転者50から音像作成範囲52の移動開始位置52aまでの距離d20、方向変化位置52bまでの距離d21に比してそれぞれ大きい。
【0074】
したがって、自車両の近傍での車両操作を案内する場合には、その音声は運転者50の近くで聞こえ、また音像の移動量が大きくなり、中距離での車両操作を案内する場合には、その音声は運転者50から中程度の距離で聞こえ、音像の移動量は小さくなる。さらに、遠距離での車両操作を案内する場合には、その音声は遠くから聞こえ、音像の移動量はさらに小さくなる、或いは移動しないこととなる。
【0075】
そのため、運転者50は、案内された経路についての情報を、音声の内容のみではなく、音像の移動によって認識することができる。さらに、「右後方」や「左後方」、「後方」への案内音声であっても、音像位置が移動開始位置51a、52aから前方に移動した後、方向変化位置51b、52bまで直進した後に方向が変化するので、自車両の実際の挙動に即して方向の案内をすることができ、かつ運転者50の前方から音声の出力を行うことができる。そのため、運転者50に負担をかけることなく音声出力における情報量を増加させ、効果的な経路誘導を行うことができる。
【0076】
ここで、連続して異なる方向の経路誘導を行う場合における方向感・距離感制御(すなわち、音像定位制御)について説明する。ガイド音声制御部26bは、連続して異なる方向の経路誘導を行う場合に、第1ガイドポイントおよび第2ガイドポイント間の距離に応じて単一の誘導方向に方向感・距離感制御を行うか、若しくは複数の誘導方向それぞれに方向感・距離感制御を行うかを決定する。
【0077】
これを具体的に説明すると、ガイド音声制御部26bは、第1ガイドポイントおよび第2ガイドポイント間の距離が所定の距離以内であれば(すなわち、ガイドポイント間の距離が中距離の案内音声出力ポイント「300m」以内の距離である場合)、単一の誘導方向に方向感・距離感制御を実行すると決定し、第1ガイドポイントおよび第2ガイドポイント間の距離が所定の距離以内でなければ(すなわち、ガイドポイント間の距離が中距離の案内音声出力ポイント「300m」以遠であり、かつ遠距離の案内音声出力ポイント「700m」以内の距離である場合)、複数の誘導方向それぞれに方向感・距離感制御を実行すると決定する。
【0078】
つまり、第1ガイドポイントに係る案内音声および第2ガイドポイントに係る案内音声それぞれに距離感制御を行ったとしても、第1ガイドポイントに係る案内音声への方向感制御と、第2ガイドポイントに係る案内音声への方向感制御とを時系列に区別させることが困難である場合には、第1ガイドポイントに係る案内音声の音像および第2ガイドポイントに係る案内音声の音像を第1音声方向(第1の誘導方向)に固定する方向感・距離感制御を実行する決定を下す。
【0079】
その後、ガイド音声制御部26bは、単一の誘導方向に方向感・距離感制御を行うと決定した場合に、第1ガイドポイントと自車両の現在位置との距離をもとに第1の誘導方向に方向感制御を行う際の音像の運転者に対する相対距離を決定して音像データを作成する。このように、第1ガイドポイントと第2ガイドポイントとを独立に取り扱うのではなく、直近の誘導位置で必要な操作方向(誘導方向)に方向感・距離感制御を固定することで、進路方向の誤認識など車両操作の混乱を招くことなく必要最低限の情報を確実に伝達することが可能になる。
【0080】
一方、第1ガイドポイントに係る案内音声および第2ガイドポイントに係る案内音声それぞれに距離感制御を行うことで、第1ガイドポイントに係る案内音声への方向感制御と、第2ガイドポイントに係る案内音声への方向感制御とを時系列に区別させることが容易である場合には、第1ガイドポイントに係る案内音声の音像を第1音声方向(第1の誘導方向)に定位させ、第2ガイドポイントに係る案内音声の音像を第2音声方向(第1の誘導方向)に定位させる方向感・距離感制御を実行する決定を下す。
【0081】
そして、ガイド音声制御部26bは、複数の誘導方向それぞれに方向感・距離感制御を行うと決定した場合に、第1ガイドポイントと自車両の現在位置との距離をもとに第1の誘導方向に方向感制御を行う際の音像の運転者に対する相対距離を決定するとともに、第1ガイドポイントおよび第2ガイドポイント間の距離をもとに第2の誘導方向に方向感制御を行う際の音像の運転者に対する相対距離を決定して音像データを作成する。
【0082】
このように、第1ガイドポイントおよび第2ガイドポイント間の距離をもとに第2の誘導方向に方向感制御を行う際の音像の運転者に対する相対距離を決定して方向感・距離感制御を行うことで、連続して異なる方向の経路誘導を行う場合でも、第1ガイドポイントに係る案内音声への方向感制御と、第2ガイドポイントに係る案内音声への方向感制御とを時系列に区別させることが可能になる。さらに、これに関連して、第1ガイドポイントに係る案内音声の音声出力に次いで出力される第2ガイドポイントに係る案内音声を通常時に比して遅らせて音声出力することで、ユーザ(すなわち、運転者)が異なる複数の音声方向の変化を時系列に認識することをより効果的にサポートすることが可能になる。
【0083】
つぎに、ガイド音声制御部26bにおける「各種設定に対応した方向感・距離感制御」について説明する。例えば、図4に示すように、方向感・距離感制御設定画面400において、ユーザ(すなわち、運転者)からタッチパネルなどのユーザインターフェースを介して「ON」ボタンまたは「OFF」ボタンの押下を受け付けることで、「方向感・距離感制御」のON/OFFの設定を行うことができる。
【0084】
また、図4に示すように、「連続音声案内モード」における「自動選択」ボタンの押下を受け付けた場合には、単一の誘導方向に方向感・距離感制御を行うか、若しくは複数の誘導方向それぞれに方向感・距離感制御を行うかを自動的に決定する設定が適用され、また、「連続音声案内モード」における「先方向固定」ボタンの押下を受け付けた場合には、単一の誘導方向に方向感・距離感制御が画一的に行われる設定が適用されることとなる。
【0085】
さらに、図5に示すように、方向感・距離感制御設定画面500において、「方向感・距離感制御のみを中止」というホットスポットボタンのポインティング操作を受け付けた場合には、方向感・距離感制御を行っている際にウィンカーの動作指示を受け付けたならば、方向感・距離感制御を中止する設定を適用することができる。
【0086】
このように、方向感・距離感制御を行っている際にウィンカーの動作指示を受け付けたならば、該方向感・距離感制御を中止することで、ユーザが進行すべき方向を認識している場合に、不要な方向感・距離感制御を行うことを防止することが可能になる。
【0087】
また、図5に示すように、方向感・距離感制御設定画面500において、「ガイド音声の音量を下げつつ、方向感・距離感制御」というホットスポットボタンのポインティング操作を受け付けた場合には、方向感・距離感制御が行われている際にウィンカーの動作指示を受け付けたならば、誘導内容を通知する案内音声の音声出力レベルを通常時の音声出力レベルに比較して低くなるように制御する設定を適用することができる。
【0088】
なお、この時、方向感・距離感制御は、音声出力レベルが下げられた状態で行われることとなる。そして、ウィンカー23の動作が解除された時点(すなわち、自車両の進行方向変更が完了したと判断された時点)で、案内音声の音声出力レベルを通常時の音声出力レベルに復帰させる。
【0089】
このように、方向感・距離感制御が行われている際にウィンカーの動作指示を受け付けたならば、誘導内容を通知する案内音声の音声出力レベルを通常時の音声出力レベルに比較して低くなるように制御することで、ユーザが進むべき方向を認識している場合に、煩わしくない程度の方向感・距離感制御に留めることが可能になる。
【0090】
また、図5に示すように、方向感・距離感制御設定画面500において、「ガイド音声の音量をミュート」というホットスポットボタンのポインティング操作を受け付けた場合には、方向感・距離感制御が行われている際にウィンカーの動作指示を受け付けたならば、誘導内容を通知する案内音声の音声出力を中止する設定を適用することができる。なお、この時、案内音声の音量は、ユーザが違和感を感じないように段階的にミュートされることとなる。
【0091】
このように、方向感・距離感制御が行われている際にウィンカーの動作指示を受け付けたならば、誘導内容を通知する案内音声の音声出力を中止することで、ユーザが進むべき方向を認識している場合に、方向感・距離感制御を伴った音声案内を中止することが可能になる。
【0092】
また、図5に示すように、方向感・距離感制御設定画面500において、「道なり経路走行時の音声通知」の「ON」ボタンまたは「OFF」ボタンの押下を受け付けることで、経路誘導すべき誘導方向が正面方向である場合に、誘導内容を通知する案内音声の音声出力を行わないように制御する設定の適用可否を選択することができる。
【0093】
かかる設定(「道なり経路走行時の音声通知」のOFF設定)を設けることとしたのは、ユーザが快適に道なり走行を行っている場合、進行すべき方向(直進方向)を認識している蓋然性が十分に高く、方向感・距離感制御は元より音声通知そのものが不要であるためである。
【0094】
このように、経路誘導すべき誘導方向が正面方向である場合に、誘導内容を通知する案内音声の音声出力を行わないように制御することで、ユーザが進むべき方向を認識している場合に、車両走行時の快適さを阻害することを防止することが可能になる。
【0095】
また、図3に示すように、「方向感・距離感制御のセンター位置」の「ドライバーセンター」ボタンまたは「ナビセンター」ボタンの押下を受け付けることで、運転者50に対して正面の位置若しくは当該ナビゲーションユニット2が搭載されている位置を誘導方向基準位置として方向感・距離感制御を行う設定を適用することができる。
【0096】
例えば、図6−1に示すように、運転者50に対して正面の位置を誘導方向基準位置として方向感・距離感制御を行ったり、図6−2に示すように、当該ナビゲーションユニット2が搭載されている位置を誘導方向基準位置として方向感・距離感制御を行ったりすることができる。
【0097】
このように、運転者50に対して正面の位置若しくは当該ナビゲーションユニット2が搭載されている位置を誘導方向基準位置として方向感・距離感制御を行うことで、ユーザの感覚・嗜好に応じた誘導方向基準位置を選択させることが可能になる。
【0098】
また、ガイド音声制御部26bは、自車両が当該ナビゲーションシステム1による経路誘導に反した進路を取った場合に、経路を逸脱した旨および/または経路を補正すべき旨を通知する音像を経路誘導されるべき誘導方向に定位させる。
【0099】
すなわち、図7に示すように、経路設定部22によって設定された経路から逸脱する針路を取った場合に、本来進むべき方向(後方)に仮想音源を置くことで、経路を逸脱した旨および/または経路を補正すべき旨を音声出力によって通知するとともに、仮想音源によって本来進むべき方向(後方)をも強調することができ、音声出力による情報量を効果的に増加させることが可能になる。なお、かかる警告音声(すなわち、経路を逸脱した旨および/または経路を補正すべき旨の音声)を直前の誘導方向(左方向)に固定して定位させるようにしても良い。
【0100】
つぎに、ナビゲーションユニット2とスピーカ制御部4との通信について説明する。ナビゲーションユニット2とスピーカ制御部4との通信は、車載LAN機能を用いて通信しても良いし、直接配線を行っても良い。なお、直接配線を行う場合には、ナビゲーションユニット2から「経路誘導音声信号」、「音像方向指定信号」、「オーディオ出力ミュート信号」のそれぞれに対応する配線を行う。
【0101】
このうち、「経路誘導音声信号」は、出力する音声の波形を示す信号であり、この信号は、アナログ信号を用いても良いし、デジタル信号を用いても良い。また、「音像方向指定信号」は、音像の作成位置や移動内容を示す信号であり、テキストデータやバイナリデータを利用することができる。さらに、「オーディオ出力ミュート信号」は、経路誘導の音声信号の出力要求、すなわち、オーディオユニット3などが出力する音楽情報の再生出力の低下、若しくは再生の停止を要求する信号であり、二値信号などを用いることができる。
【0102】
(各種処理の手順)
次に、本実施例1に係るナビゲーションシステムの処理手順について説明する。図8は、ガイド音声制御部の具体的な処理内容を示すフローチャートである。図8に示したフローは、ナビゲーションユニット2の動作時に回帰的に実行される。
【0103】
まず、ガイド内容作成部26aは、自車両の位置および予定経路から、ガイドポイント情報を作成する(ステップS801)。続いて、ガイド内容作成部26bは、第1ガイドポイントが自車両の近傍に存在するか否かを判定する(ステップS802)。
【0104】
第1ガイドポイントが自車両の近傍に存在するならば(ステップS802肯定)、ガイド音声制御部26bは、第1ガイドポイントに係る案内音声の音像作成範囲を近距離に設定、すなわち音像作成範囲51を選択する(ステップS805)。一方、第1ガイドポイントが自車両の近傍に存在しなければ(ステップS802否定)、ガイド内容作成部26aは、第1ガイドポイントが自車両から300m以内に存在するか否かを判定する(ステップS803)。
【0105】
第1ガイドポイントが自車両から300m以内に存在するならば(ステップS803肯定)、ガイド音声制御部26bは、第1ガイドポイントに係る案内音声の音像作成範囲を中距離に設定、すなわち音像作成範囲52を選択する(ステップS806)。一方、第1ガイドポイントが自車両から300m以内に存在しなければ(ステップS803否定)、ガイド内容作成部26aは、第1ガイドポイントが自車両から700m以内に存在するか否かを判定する(ステップS804)。
【0106】
第1ガイドポイントが自車両から700m以内に存在するならば(ステップS804肯定)、ガイド音声制御部26bは、第1ガイドポイントに係る案内音声の音像作成範囲を遠距離に設定、すなわち音像作成範囲53を選択する(ステップS807)。一方、第1ガイドポイントが自車両から700m以内に存在しなければ(ステップS804否定)、ガイド内容作成部24は、処理を終了する。
【0107】
音像作成範囲の設定(ステップS805、ステップS806、ステップS807)終了後、ガイド音声制御部26bは、第1ガイドポイントおよび第2ガイドポイント間の距離が300m以内であるか否かを判定する(ステップS808)。
【0108】
第1ガイドポイントおよび第2ガイドポイント間の距離が300m以内でなければ(ステップS808否定)、ガイド音声制御部26bは、第2ガイドポイントに係る音声案内の音像作成範囲を遠距離に設定、すなわち音像作成範囲53を選択する(ステップS809)。
【0109】
そして、ガイド音声制御部26bは、第1ガイドポイントと自車両の現在位置との距離をもとに第1の誘導方向に方向感制御を行う際の音像の運転者に対する相対距離を決定するとともに、第1ガイドポイントおよび第2ガイドポイント間の距離をもとに第2の誘導方向に方向感制御を行う際の音像の運転者に対する相対距離を決定して音像データを作成する(ステップS810)。
【0110】
一方、第1ガイドポイントおよび第2ガイドポイント間の距離が300m以内であれば(ステップS808肯定)、ガイド音声制御部26bは、第1ガイドポイントに係る案内音声の音像および第2ガイドポイントに係る案内音声の音像を第1音声方向(第1の誘導方向)に固定する(ステップS811)。
【0111】
そして、ガイド音声制御部26bは、第1ガイドポイントと自車両の現在位置との距離をもとに第1の誘導方向に方向感制御を行う際の音像の運転者に対する相対距離を決定して音像データを作成する(ステップS810)。
【0112】
音像データの作成(ステップS810)完了後、ガイド音声制御部26bは、音像データをスピーカ制御部4に出力して、処理を終了する。
【0113】
上述してきたように、本実施例1に係るナビゲーションシステム1によれば、第1の誘導位置および第2の誘導位置間の距離に応じて音像定位対象である誘導方向を単一もしくは複数にするかを決定することで、運転者に負担をかけることなく音声出力による情報量を増加させることができ、効果的な経路誘導を行うことが可能になる。
【実施例2】
【0114】
さて、これまで本発明の実施例1について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、上記特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施例にて実施されてもよいものである。
【0115】
例えば、実施例1では、シート荷重センサ25で乗員の在席状況を検出する実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、車内カメラで撮像された画像に対して画像認識をおこなって乗員の在席状況を検出しても良いし、ドアの開閉によって乗員の在席状況を検出しても良い。
【0116】
また、本実施例において説明した各処理のうち、自動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を手動的におこなうこともでき、あるいは、手動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的におこなうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0117】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【産業上の利用可能性】
【0118】
以上のように、本発明に係るナビゲーション装置は、音声による経路誘導に有用であり、特に、音声における情報量の増大と、誘導効果の向上に適している。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本実施例1に係るナビゲーションシステムの概要構成を示す概要構成図である。
【図2】音像定位制御の具体例を説明する説明図である。
【図3】スピーカ設定画面の一例を示す図である。
【図4】方向感・距離感制御設定画面の一例を示す図である。
【図5】方向感・距離感制御設定画面の一例を示す図である。
【図6−1】運転者に対して正面の位置を誘導方向基準位置としたドライバーセンターを説明するための説明図である。
【図6−2】ナビゲーションユニットが搭載されている位置を誘導方向基準位置としたナビセンターを説明するための説明図である。
【図7】経路逸脱時または経路補正時に行われる方向感・距離感制御を説明するための説明図である。
【図8】ガイド音声制御部の具体的な処理内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0120】
1 ナビゲーションシステム
2 ナビゲーションユニット
3 オーディオユニット
4 スピーカユニット
21 GPS受信部
22 経路設定部
23 ウィンカー
24 スピーカ制御部
25 シート荷重センサ
26 制御部
26a ガイド内容作成部
26b ガイド音声制御部
26c ガイド表示制御部
31 主制御部
32 オーディオ出力制御部
33 ディスプレイ
41 主制御部
42 コーディック
43 DSP
44 アンプ
50 運転者
51、52、53 音像作成範囲
51a、52a、53a 移動開始位置
51b、52b、53b 方向変化位置
GV1〜GV6 音像
SP1〜SP4 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された予定経路情報および自車両の位置情報をもとに誘導内容を通知する案内音声の音像を誘導方向に定位させる音像定位制御を行って自車両を経路誘導するナビゲーション装置であって、
第一の誘導位置に対応する第一の案内音声と、第二の誘導位置に対応する第二の案内音声とが連続的に出力される場合であって、且つ、前記第一の誘導位置における第一の誘導方向と、前記第二の誘導位置における第二の誘導方向とが異なる場合には、前記第一の誘導位置と前記第二の誘導位置との間の距離に応じて、前記第一の案内音声と、前記第二の案内音声の音像を単一の誘導方向に定位させるか、前記第一の誘導方向と前記第二の誘導方向にそれぞれ定位させるかを決定する音像制御手段を備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記音像制御手段は、複数の誘導方向それぞれに前記音像定位制御を行うと決定した場合に、前記第一の誘導位置と自車両の位置との距離をもとに第一の誘導方向に音像定位制御を行う際の前記音像の運転者に対する相対距離を決定し、前記第一の誘導位置および前記第二の誘導位置間の距離をもとに第二の誘導方向に音像定位制御を行う際の前記音像の運転者に対する相対距離を決定することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記音像制御手段は、前記運転者に対して正面の位置若しくは当該ナビゲーション装置が搭載されている位置を誘導方向基準位置として前記音像定位制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記音像定位制御を行う際に用いるスピーカを設定するスピーカ設定手段をさらに備え、
前記音像制御手段は、前記スピーカ設定手段によって設定されたスピーカを用いて音像定位制御を行うことを特徴とする請求項1、2または3に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記スピーカ設定手段は、前記音像定位制御を行う際にフロントスピーカを用いる設定、若しくはフロントスピーカおよびリアスピーカを用いる設定を有することを特徴とする請求項4に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記自車両における乗員の在席状況を検出する在席状況検出手段をさらに備え、
前記スピーカ設定手段は、前記在席状況検出手段による乗員の在席状況の検出結果に応じて前記音像定位制御を行う際に用いるスピーカを設定することを特徴とする請求項4または5に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記音像制御手段は、前記自車両が当該ナビゲーション装置による経路誘導に反した進路を取った場合に、経路を逸脱した旨および/または経路を補正すべき旨を通知する音像を経路誘導されるべき誘導方向に定位させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
前記音像制御手段は、前記音像定位制御を行っている際にウィンカーの動作指示を受け付けたならば、該音像定位制御を中止することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載のナビゲーション装置。
【請求項9】
前記音像制御手段による音像定位制御が行われている際にウィンカーの動作指示を受け付けたならば、前記誘導内容を通知する案内音声の音声出力を中止する音声出力制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載のナビゲーション装置。
【請求項10】
前記音声出力制御手段は、前記音像制御手段による音像定位制御が行われている際にウィンカーの動作指示を受け付けたならば、前記誘導内容を通知する案内音声の音声出力レベルを通常時の音声出力レベルに比較して低くなるように制御することを特徴とする請求項9に記載のナビゲーション装置。
【請求項11】
前記音声出力制御手段は、経路誘導すべき誘導方向が正面方向である場合に、前記誘導内容を通知する案内音声の音声出力を行わないように制御することを特徴とする請求項9または10に記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−24605(P2007−24605A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−204930(P2005−204930)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】