説明

ナビゲーション装置

【課題】画面上に表示される地図を現在地の変化に応じて自動スクロールするナビゲーション装置において、ユーザがタッチパネルを利用して地図上の所望の地点等を正確に指定できるようにすること。
【解決手段】接近検知部50は、タッチパネル20の近傍を撮影するカメラ30から出力される映像信号に基づいて、タッチパネル20への物体の接近を検知する。地図表示制御部40は、現在地取得部60によって取得される現在地の変化に応じて表示装置10の画面上に表示される地図を自動スクロールする自動スクロール機能を有し、接近検知部50がタッチパネル20への物体の接近を検知したことに応じて自動スクロールを一時休止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナビゲーション装置に関し、特に、画面上に表示される地図を現在地の変化に応じて自動スクロールするナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画面上に表示される地図を現在地の変化に応じて自動スクロールする機能を備え、かつタッチパネルを使って画面上に表示された画像内の所望の位置をユーザが指で直接指示することができるナビゲーション装置がある(例えば、特許文献1を参照)。タッチパネルを用いれば、ユーザは、画面に表示されている地図上の所望の地点や施設のアイコンや渋滞マーク(渋滞中の道路上に表示されるマーク)に対応するタッチパネル上の点をタッチすることによって、簡単に目的地を指定したり、施設の詳細説明を表示させたり、渋滞情報の詳細を表示させたりすることができる(図10参照)。
【特許文献1】国際公開第2006/013783号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のようなナビゲーション装置において、地図の自動スクロール中(すなわち車両の移動中)にユーザがタッチパネルを利用して地図上の所望の地点等を指定しようとした場合、地図の自動スクロールに応じて画面におけるこれらの地点等の位置が移動するため、ユーザは所望の地点等を正確に指定しづらいという問題がある。例えば、ユーザが図10の施設Bのアイコンを選択しようとして、施設Bのアイコンの画面上の表示位置に対応するタッチパネル上の点をタッチする場合、ユーザがタッチパネル上のその点まで指を移動させている間も車両の移動に応じて図11に示すように地図の表示エリア(すなわち画面に表示されるエリア)が変化するため、ユーザは誤って施設Aのアイコンを選択してしまう。特に、地図の縮尺が大きいとき(すなわち詳細表示のとき)は、地図の縮尺が小さいとき(すなわち広域表示のとき)と比較して地図のスクロール速度が速くなるので、ユーザは誤った地点等を指定してしまいやすい。
【0004】
それゆえに本発明の目的は、画面上に表示される地図を現在地の変化に応じて自動スクロールするナビゲーション装置において、ユーザがタッチパネルを利用して地図上の所望の地点等を正確に指定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
【0006】
本発明のナビゲーション装置は、現在地を取得する現在地取得手段と、地図情報に基づいて画面上に地図を表示する地図表示制御手段と、前記画面上の位置を指示するためのタッチパネルと、前記タッチパネルへの物体の接近を検知する接近検知手段とを備えたナビゲーション装置であって、前記地図表示制御手段は、前記現在地取得手段によって取得される現在地の変化に応じて前記画面上に表示される地図を自動スクロールする自動スクロール機能を有し、前記接近検知手段の検知結果に応じて前記自動スクロールを一時休止することを特徴とする。
【0007】
なお、前記接近検知手段は、前記タッチパネルの近傍を撮影する撮像手段から出力される映像信号に基づいて、前記タッチパネルへの物体の接近を検知するものであってもよいし、前記タッチパネルの近傍に設置された赤外線センサから出力される信号に基づいて、前記タッチパネルへの物体の接近を検知するものであってもよい。さらには、他の公知の手法によって前記タッチパネルへの物体の接近を検知するものであってもよい。
【0008】
また、前記地図表示制御手段は、物体が前記タッチパネルに接近している間、前記自動スクロールを一時休止してもよい。これにより、タッチパネルにユーザの手が接近したときに地図の自動スクロールが一時的に停止するので、ユーザは地図上の所望の地点等をタッチパネルで正確に指示することができる。
【0009】
また、前記接近検知手段は、前記タッチパネルに接近した物体が手か否かを判別する手識別手段を含み、前記地図表示制御手段は、手が前記タッチパネルに接近している間は前記自動スクロールを一時休止してもよい。これにより、タッチパネルに手以外の物体が接近したときに、地図の自動スクロールが不必要に停止してしまうのを防止することができる。
【0010】
また、前記接近検知手段は、前記タッチパネルに接近した物体が右手と左手のうちの予め決められた方の手か否かを判別する手識別手段を含み、前記地図表示制御手段は、前記予め決められた方の手が前記タッチパネルに接近している間、前記自動スクロールを一時休止してもよい。これにより、例えば、安全のために移動中は運転席のユーザによる入力操作を受け付けないようにしている場合において、運転席のユーザの手(右ハンドル車の場合は左手、左ハンドル車の場合は右手)がタッチパネルに接近したときには地図の自動スクロールを停止せず(入力操作を受け付けないため、地図の自動スクロールを停止させる必要がない)、助手席のユーザの手(右ハンドル車の場合は右手、左ハンドル車の場合は左手)がタッチパネルに接近したときは地図の自動スクロールを一時的に停止することができる。
【0011】
また、前記地図表示制御手段は、画面に表示すべき地図にユーザに提供すべき情報を合成する情報合成手段を含み、前記接近検知手段の検知結果に応じて前記自動スクロールを一時休止している間も、ユーザに提供すべき前記情報の更新を継続してもよい。これにより、自動スクロールが一時休止している間も、ユーザは最新の情報を得ることができる。なお、地図に合成表示される「ユーザに提供すべき情報」の例として、現在地情報と渋滞情報が挙げられる。
【0012】
また、前記タッチパネルが前記画面から離れた位置に設置されてもよい。これにより、タッチパネルをユーザの手元に配置することができ、より楽に操作できるようになる。また、画面に直接タッチしないので、指紋の付着によって画面の視認性が低下してしまうことがない。
【0013】
また、前記地図表示制御手段は、前記タッチパネルにユーザの手が接近したときに、画面に表示すべき地図に当該ユーザの手に対応する手画像を当該ユーザの手の位置に対応する地図上の位置に合成する手画像合成手段を含み、前記接近検知手段は、前記手画像合成手段によって前記手画像が前記画面に表示される状態になったときに、前記タッチパネルに物体が接近したと判定してもよい。これにより、画面から離れた位置に設置されたタッチパネルを操作しているユーザの手を画面に表示する方式を採用しているナビゲーション装置において、単に手画像を画面に表示すべき状態(これは、タッチパネルにユーザの手が接近していることを意味する)になったかどうかを判定することによって、タッチパネルへの物体の接近を簡単に検知できるため、タッチパネルへの物体の接近を検知するための新たなハードウェアを追加することなく、ナビゲーション装置のわずかな設計変更により本発明の効果が得られる。
【0014】
また、前記接近検知手段は、前記タッチパネルに接近した物体が動いているか否かを判別する動き検出手段を含み、前記地図表示制御手段は、前記タッチパネルに接近した物体が動いている間、前記自動スクロールを一時休止してもよい。これにより、ユーザが所望の地点や施設等を指示しようとしているのではなくて単にタッチパネル上に手を浮かせて静止させているときには地図の自動スクロールを停止せず、ユーザが所望の地点や施設等を指示しようとして手を動かしたときに地図の自動スクロールを一時的に停止することができる。
【0015】
また、前記タッチパネルが車両の肘掛け上に設置されてもよい。これにより、ユーザが肘掛け上に腕を載せてタッチパネル上に手を浮かせて静止させているときには地図の自動スクロールを停止せず、ユーザが所望の地点や施設等を指定しようとして手を動かしたときに地図の自動スクロールを一時的に停止することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、ユーザがタッチパネルを利用して、画面上に表示された地図上の所望の地点や施設等を正確に指定できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態にかかるナビゲーション装置の外観を示す図である。図1において、表示装置10の画面には現在地周辺の地図が表示される。表示装置10としては、液晶ディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、EL(Electronic Luminescence)ディスプレイなどが利用できる。運転席と助手席の間にある肘掛け上にはタッチパネル20が設置されている。タッチパネル20上の各点は、表示装置10の画面上の各点と一対一に対応しており、ユーザは、タッチパネル20の表面をタッチすることによって、表示装置10の画面上の任意の点を指定することができる。なお、タッチパネル20の設置位置は図1で示した位置に限らず、表示装置10の画面上や、ステアリングの中央部や、運転席および助手席のドアに設けられた肘掛け上や、後部座席に設けられた肘掛け上など、他の任意の位置に設置してもよい。
【0019】
タッチパネル20の下方(すなわち肘掛けの内部)には空間が設けられており、この空間には図2Aおよび図2Bに示すようにカメラ30と光源32が設置されている。なお、図2Aはタッチパネル20の側面から見た図であり、図2Bはタッチパネル20の上面から見た図である。本実施形態ではタッチパネル20として透明のタッチパネルを利用する。これにより、タッチパネル20の裏面側に設置されたカメラ30を利用して、タッチパネル20の上方の空間に進入する物体を撮影することができる。カメラ30としては、例えば可視光カメラ、近赤外カメラ、赤外線カメラ、超音波カメラを利用することができる。カメラ30として近赤外カメラを利用する場合には、光源32として近赤外光を照射する光源を利用し、さらに図2Aに示すようにタッチパネル20の裏面に可視光カットフィルター22を配置するのが好ましい。
【0020】
なお、本実施形態ではカメラ30をタッチパネル20の裏面側に設置しているが、本発明はこれに限らず、例えば車両の天井など、タッチパネル20の近傍を撮影できる任意の位置(すなわちタッチパネル20の上方の空間に進入する物体を撮影できる任意の位置)にカメラ30を設置してもよい。
【0021】
図3は、ナビゲーション装置の構成を示す機能ブロック図である。図3において、ナビゲーション装置は、表示装置10、タッチパネル20、カメラ30、地図表示制御部40、接近検知部50、現在地取得部60、および地図情報記憶部70を含んでいる。
【0022】
現在地取得部60は、車両の現在地を示す現在地情報(例えば経度・緯度を示す情報)を取得するためのものである。現在地取得部60は、典型的にはGPS(Global Positioning System)を利用して現在地情報を取得する。もちろん、GPS以外の公知の技術を利用して現在地情報を取得してもよい。
【0023】
地図情報記憶部70には、表示装置10の画面に表示すべき地図画像を生成するための地図情報(道路データや画像データを含む)が格納されている。なお、地図情報は必要に応じてナビゲーション装置の外部から通信によって取得してもよい。
【0024】
地図表示制御部40は、現在地取得部60が取得した現在地情報と、地図情報記憶部70に格納されている地図情報とを利用して、現在地周辺の様子を示す地図画像を生成して表示装置10に表示させる。この地図画像には、現在地を示す現在地マークや、施設を示す施設アイコンや、渋滞中の道路区間を示す渋滞マークが合成される。車両が移動すると、現在地取得部60によって取得される現在地情報が変化し、それに伴って、地図表示制御部40によって表示装置10に表示される地図の表示エリアが変化する(すなわち、表示装置10に表示される地図がスクロールする)。地図表示制御部40は、ユーザによって画面上のいずれかの点が指定されたときに、その点に対応する処理を実行する機能も備えている。例えば、ユーザによって施設アイコンが指定されたときは、その施設アイコンが示す施設の詳細説明を地図に重ねて表示する。また例えば、ユーザによって渋滞マークが指定されたときには、その渋滞マークが示す渋滞情報の詳細説明を地図に重ねて表示する。
【0025】
接近検知部50は、カメラ30から出力される映像信号に基づいて、タッチパネル20に物体が接近したかどうかを判定し、この判定結果を地図表示制御部40に通知する。例えば、ユーザがタッチパネル20にタッチしようとしてタッチパネル20の上方の空間に手を進入させると、手がタッチパネル20に触れているか否かに関わらず、カメラ30によって撮影された映像にはユーザの手が写る。カメラ30によって撮影された映像に何らかの物体(ここではユーザの手)が写っているか否かは、公知技術を利用して判定可能である。一例として、タッチパネル20の上方の空間に物体が進入していないときの画像を参照用画像として保持しておき、カメラ30で撮影された映像と参照用画像とを比較することによって、タッチパネル20への物体の接近を検知することができる。
【0026】
次に、図4のフローチャートを参照して、上記のように構成されたナビゲーション装置の動作の詳細を説明する。
【0027】
ナビゲーション装置の電源が投入されると、ステップS10において地図表示制御部40は現在地取得部60から現在地情報を取得する。
【0028】
ステップS12では、地図表示制御部40は現在地情報に基づいて地図の表示エリアを決定する。典型的には、車両の現在地が中央にくるように地図の表示エリアが決定される。
【0029】
ステップS14では、地図表示制御部40は、地図情報記憶部70に格納されている地図情報に基づいて、現在の表示エリアに対応する地図画像を生成する。地図画像としては、地図を2次元的に表現した画像でもよいし、地図を3次元的に表現した画像でもよい。
【0030】
ステップS16では、地図表示制御部40は、地図画像に、現在地マーク・施設アイコン・渋滞マークを合成する。現在地マークは、車両の現在地を示すマークであって、現在地取得部60から取得した現在地情報に対応する地図上の位置に合成される。施設アイコンは、種々の施設の位置を示すアイコンである。各施設の位置に関する情報は、地図情報記憶部70に格納されている地図情報に含まれている。渋滞マークは、渋滞中の道路区間を示すマークである。渋滞中の道路区間に関する情報(渋滞情報)は、典型的には、ナビゲーション装置の外部から無線通信によって供給される渋滞情報に含まれる。
【0031】
なお、地図表示制御部40は、必要に応じてさらに他の情報(マーク、アイコン、文字、記号など)を地図画像に合成してもよい。例えば、国際公開第2006/013783号パンフレットに開示されているように、タッチパネル20にユーザの手が接近したときに、地図画像に、ユーザの手に対応する手画像(例えば、ユーザの手の輪郭を示す画像)をユーザの手の位置に対応する地図画像上の位置に合成してもよい。これにより、ユーザはタッチパネル20に視点を移さなくても表示装置10の画面に表示された手画像を見るだけでタッチパネル20上の自身の手の位置を確認できるので、所望の地点等を簡単かつ正確に指定することができる。なお、このようにタッチパネル20に接近したユーザの手に対応する手画像を地図に合成して表示する方式を採用しているナビゲーション装置では、接近検知部50は、単に手画像が画面に表示される状態になったかどうかを判定することによって、タッチパネル20への物体の接近を簡単に検知できる。よって、タッチパネル20への物体の接近を検知するための新たなハードウェア(カメラや赤外線センサなど)を別途追加する必要が無く、ナビゲーション装置のわずかな設計変更により本実施形態と同じ効果が得られる。
【0032】
ステップS18では、地図表示制御部40は地図画像を表示装置10に表示させる。
【0033】
ステップS20では、地図表示制御部40は、タッチパネル20から出力される信号に基づいて、タッチパネル20がタッチされたかどうかを判断する。タッチパネル20がタッチされた場合には、地図表示制御部40はステップS22において、タッチパネル20から出力される信号に含まれるタッチ位置を示す情報に基づいて、タッチ位置に応じた処理を実行する。例えば、タッチ位置に対応する位置に施設Bのアイコンが表示されている場合には、地図表示制御部40は施設Bに関する詳細説明を表示装置10の画面に表示する。また例えば、タッチ位置に対応する位置に渋滞マークが表示されている場合には、地図表示制御部40はその渋滞マークが示す渋滞区間に関する詳細説明を表示装置10の画面に表示する。
【0034】
ステップS24では、地図表示制御部40は現在地取得部60から最新の現在地情報を取得する。
【0035】
ステップS26では、接近検知部50がカメラ30からの映像信号に基づいて画像を取得する。
【0036】
ステップS28では、接近検知部50は、取得した画像に基づいて、タッチパネル20に物体が接近したかどうかを判定する。この判定の仕方は前述の通りである。判定の結果は地図表示制御部40に通知される。
【0037】
接近検知部50によってタッチパネル20への物体の接近が検知されなかった場合には、ステップS30で、地図表示制御部40は現在地取得部60から取得した最新の現在地情報に基づいて地図の表示エリアを更新する。その後、処理はステップS14に戻る。
【0038】
一方、接近検知部50によってタッチパネル20への物体の接近が検知された場合には、地図の表示エリアが更新されることなく、処理はステップS14に戻る。
【0039】
以上のように、本実施形態では、接近検知部50によってタッチパネル20への物体の接近が検知された場合には、現在地の移動に応じた地図の表示エリアの自動更新(すなわち地図の自動スクロール)が一時休止される。例えば、図5に示す状態でユーザがタッチパネル20の上方の空間に手を進入させると、現在地が変化したとしても図6のように地図の表示エリアは変化せず、その他の情報(例えば現在地マークの位置や交通マークの位置など)だけが更新される。その後、ユーザがタッチパネル20の上方の空間から手を退出させると、図7のように、現在地を中心とした表示エリアとなるように地図の表示エリアが更新され、地図の自動スクロールが再開される。
【0040】
上記のような処理の結果、ユーザは、タッチパネルを利用して地図上の所望の地点等を正確に指定できるようになる。
【0041】
なお、本実施形態では、ユーザがタッチパネル20の上方の空間から手を退出させると、即座に地図の自動スクロールが再開される例を説明したが、本発明はこれに限らず、ユーザがタッチパネル20の上方の空間から手を退出させてから一定時間が経過した後に地図の自動スクロールが再開されるようにしてもよい。
【0042】
なお、本実施形態では、接近検知部50がカメラ30からの映像信号に基づいてタッチパネル20への物体の接近を検知する例を説明したが、本発明はこれに限らず、任意の公知の手法によってタッチパネル20への物体の接近を検知してもよい。例えば、タッチパネルの近傍(つまり、タッチパネル20への物体の接近を検知できる位置)に赤外線センサを設置しておき、接近検知部50は、この赤外線センサから出力される信号に基づいてタッチパネルへの物体の接近を検知してもよい。
【0043】
なお、接近検知部50は、タッチパネル20への物体の接近を単に検知するだけでなく、画像認識処理によってその物体が手か否か(さらには右手か左手か)を判別する機能を有してもよい。このような画像認識処理自体は公知技術である(例えば、国際公開第2006/013783号パンフレットを参照)。例えば、画像中の物体が手か否かを判定する手法の一例として、典型的な手の形状を示すデータを予め保持しておき、輪郭抽出処理によって得られた物体の輪郭が、その典型的な手の形状を示すデータに類似しているか否かを判定する(パターンマッチング)ことが考えられる。
【0044】
接近検知部50が、タッチパネル20へ接近した物体が手か否かを判別する機能を有していれば、タッチパネル20に手が接近したときだけ地図の自動スクロール処理を一時休止し、手以外の物体(例えば荷物や虫など)がタッチパネル20に接近したときには自動スクロール処理を一時休止しないという動作が可能となる。これにより、タッチパネル20に手以外の物体が接近したときに、地図の自動スクロール処理が一時休止してしまう誤動作を防止することができる。
【0045】
接近検知部50が、タッチパネル20へ接近した物体が右手か左手かを判別する機能を有していれば、タッチパネル20に右手が接近したときだけ地図の自動スクロール処理を一時休止し、左手が接近したときには自動スクロール処理を一時休止しないという動作が可能となる。タッチパネル20が図1に示すように運転席と助手席の間に設置されている場合、運転席に座ってるユーザはタッチパネル20を左手で操作し、助手席に座っているユーザはタッチパネル20を右手で操作することになる(ただし、左ハンドル車の場合はそれぞれ反対の手になる)。したがって、タッチパネル20へ接近した物体が右手か左手かを判別することによって、タッチパネル20を操作しようとしているユーザが運転席に座っているユーザなのか助手席に座っているユーザなのかを判別することができる。ところで、運転中にナビゲーション装置の入力操作を行うことは安全面で好ましくないため、運転中は助手席に座っているユーザによる入力操作は受け付けるが、運転席のユーザによる入力操作を受け付けない仕様を採用する場合が考えられる(例えば、国際公開第2006/013783号パンフレットを参照)。この場合、運転席に座っているユーザの手がタッチパネル20に接近したことが検知されたとしても、それは地図上の地点等を指定するためではないため、地図の自動スクロールを一時休止する必要はなく、むしろ地図の自動スクロールを継続する方が好ましい。そこで、タッチパネル20へ接近した物体が右手か左手かを判別する機能を接近検知部50に持たせることで、タッチパネル20へ接近した手が助手席に座っているユーザの手である場合には地図の自動スクロールを一時休止し、タッチパネル20へ接近した手が運転席に座っているユーザの手である場合には地図の自動スクロールを継続することが可能となる。
【0046】
なお、タッチパネル20へ接近した物体が右手か左手かを判別するための簡易的な方法として、タッチパネル20の上方の空間に手が運転席側から進入しているのか助手席側から進入しているのかを判別してもよい。つまり、タッチパネル20の上方の空間に運転席側から手が進入している場合には、その手は運転席に座っているユーザの左手であると判断し、タッチパネル20の上方の空間に助手席側から手が進入している場合には、その手は助手席に座っているユーザの右手であると判断することができる。
【0047】
なお、接近検知部50は、タッチパネル20への物体の接近を単に検知するだけでなく、その物体が動いているか否かを判別する機能を有してもよい。以下、図8および図9を参照して、この変形例について詳しく説明する。
【0048】
図1のようにタッチパネル20が肘掛け上に設置されている場合、タッチパネル20の設置位置によっては、図8に示すようにユーザが単に肘掛けに腕をあずけている状態でもタッチパネル20の上方にユーザの手が位置することがある。また、地図上の地点等の指定を終えたにも関わらず、ユーザが手をタッチパネル20の上方の空間からすぐに退出させないこともある。これらの状況では、ユーザは地図上の地点等を指定しようとしているわけではないため、地図の自動スクロールを一時休止してしまうとユーザにとって不便である。そこで本変形例では、接近検知部50が、タッチパネル20に接近した物体が動いているか否かを判別し、物体の移動が検知された場合(すなわちユーザが地図上の地点等を指定しようとして手を移動させている場合)には、地図の自動スクロールを一時休止し、物体の移動が検知されない場合には地図の自動スクロールを継続する。
【0049】
図9のフローチャートを参照して、この変形例に係るナビゲーション装置の動作を説明する。ただし、図9のステップS10〜ステップS26およびステップS30の処理については図4と同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0050】
ステップS32では、接近検知部50は、今回取得した画像(ステップS26でカメラ30からの映像信号に基づいて取得した画像)と前回取得した画像とを比較する。比較の仕方の一例としては、今回取得した画像と前回取得した画像の輝度差(絶対値)を画素毎に算出し、算出された各画素間の輝度差を合計することによって相違度を算出し、この相違度と予め定められた閾値とを比較することが考えられる。比較の結果は地図表示制御部40に通知される。なお、ここで説明する動き検出の手法は単なる一例に過ぎず、公知のより複雑もしくはより単純な動き検出手法を利用してもよい。
【0051】
ステップS34では、地図表示制御部40は、接近検知部50による動き検出結果に基づいて、物体の動きが検知されたかどうかを判断する。なお、接近検知部50による動き検出結果だけでなく、前述した画像認識処理による手か否か(または右手か左手か)の判別結果にも基づいて、物体の動きが検知されたかどうかを判断してもよい。
【0052】
接近検知部50によって物体の動きが検知されなかった場合には、ステップS30で、地図表示制御部40は地図の表示エリアを更新し、その後、処理はステップS14に戻る。
【0053】
一方、接近検知部50によって物体の動きが検知された場合には、地図の表示エリアが更新されることなく、処理はステップS14に戻る。
【0054】
なお、本変形例では、物体の動きが検知されて地図の自動スクロールが一時休止された後、物体の動きが検知されなくなると即座に地図の自動スクロールが再開される例を説明したが、本発明はこれに限らず、物体の動きが検知されなくなってから一定時間が経過した後に地図の自動スクロールが再開されるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、例えば、車両の周辺の地図をユーザに提示するとともに、地図上の地点や施設等をユーザがタッチパネルを利用して指定することが可能なナビゲーション装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係るナビゲーション装置の表示装置とタッチパネルの設置例
【図2A】本発明の一実施形態に係るナビゲーション装置のタッチパネルを側面から見た図
【図2B】本発明の一実施形態に係るナビゲーション装置のタッチパネルを上面から見た図
【図3】本発明の一実施形態に係るナビゲーション装置の機能ブロック図
【図4】本発明の一実施形態に係るナビゲーション装置の動作を示すフローチャート
【図5】本発明の一実施形態に係るナビゲーション装置の地図のスクロール処理を示す図
【図6】本発明の一実施形態に係るナビゲーション装置の地図のスクロール処理を示す図
【図7】本発明の一実施形態に係るナビゲーション装置の地図のスクロール処理を示す図
【図8】ユーザによる本発明の一実施形態に係るナビゲーション装置の使用状況の一例を示す図
【図9】本発明の変形例に係るナビゲーション装置の動作を示すフローチャート
【図10】従来のナビゲーション装置の地図のスクロール処理を示す図
【図11】従来のナビゲーション装置の地図のスクロール処理を示す図
【符号の説明】
【0057】
10 表示装置
20 タッチパネル
22 可視光カットフィルター
30 カメラ
32 光源
40 地図表示制御部
50 接近検知部
60 現在地取得部
70 地図情報記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在地を取得する現在地取得手段と、
地図情報に基づいて画面上に地図を表示する地図表示制御手段と、
前記画面上の位置を指示するためのタッチパネルと、
前記タッチパネルへの物体の接近を検知する接近検知手段とを備えたナビゲーション装置であって、
前記地図表示制御手段は、前記現在地取得手段によって取得される現在地の変化に応じて前記画面上に表示される地図を自動スクロールする自動スクロール機能を有し、前記接近検知手段の検知結果に応じて前記自動スクロールを一時休止することを特徴とする、ナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のナビゲーション装置であって、
前記接近検知手段は、前記タッチパネルの近傍を撮影する撮像手段から出力される映像信号に基づいて、前記タッチパネルへの物体の接近を検知することを特徴とする、ナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1に記載のナビゲーション装置であって、
前記接近検知手段は、前記タッチパネルの近傍に設置された赤外線センサから出力される信号に基づいて、前記タッチパネルへの物体の接近を検知することを特徴とする、ナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1に記載のナビゲーション装置であって、
前記地図表示制御手段は、物体が前記タッチパネルに接近している間、前記自動スクロールを一時休止することを特徴とする、ナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項1に記載のナビゲーション装置であって、
前記接近検知手段は、前記タッチパネルに接近した物体が手か否かを判別する手識別手段を含み、
前記地図表示制御手段は、手が前記タッチパネルに接近している間は前記自動スクロールを一時休止することを特徴とする、ナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項1に記載のナビゲーション装置であって、
前記接近検知手段は、前記タッチパネルに接近した物体が右手と左手のうちの予め決められた方の手か否かを判別する手識別手段を含み、
前記地図表示制御手段は、前記予め決められた方の手が前記タッチパネルに接近している間、前記自動スクロールを一時休止することを特徴とする、ナビゲーション装置。
【請求項7】
請求項1に記載のナビゲーション装置であって、
前記地図表示制御手段は、画面に表示すべき地図にユーザに提供すべき情報を合成する情報合成手段を含み、前記接近検知手段の検知結果に応じて前記自動スクロールを一時休止している間も、ユーザに提供すべき前記情報の更新を継続することを特徴とする、ナビゲーション装置。
【請求項8】
請求項1に記載のナビゲーション装置であって、
前記タッチパネルが前記画面から離れた位置に設置されることを特徴とする、ナビゲーション装置。
【請求項9】
請求項8に記載のナビゲーション装置であって、
前記地図表示制御手段は、前記タッチパネルにユーザの手が接近したときに、画面に表示すべき地図に当該ユーザの手に対応する手画像を当該ユーザの手の位置に対応する地図上の位置に合成する手画像合成手段を含み、
前記接近検知手段は、前記手画像合成手段によって前記手画像が前記画面に表示される状態になったときに、前記タッチパネルに物体が接近したと判定する、ナビゲーション装置。
【請求項10】
請求項1に記載のナビゲーション装置であって、
前記接近検知手段は、前記タッチパネルに接近した物体が動いているか否かを判別する動き検出手段を含み、
前記地図表示制御手段は、前記タッチパネルに接近した物体が動いている間、前記自動スクロールを一時休止することを特徴とする、ナビゲーション装置。
【請求項11】
請求項10に記載のナビゲーション装置であって、
前記タッチパネルが車両の肘掛け上に設置されることを特徴とする、ナビゲーション装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−20406(P2008−20406A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194358(P2006−194358)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】