説明

ネジの検査装置

【課題】ネジの首部のネジ山を正確に検査しながら、回転円筒のネジの吊り下げ片を十分な強度として、変形などの弊害を確実に防止する。
【解決手段】ネジの検査装置は、ネジ1の雄ネジ部1Bを案内してネジ頭1Aを上面に引っかけて移送するスリット3を所定の間隔で設けている回転円筒2と、回転円筒2を回転させる回転機構10と、回転円筒2のスリット3にネジ1を供給する供給機構4と、回転円筒2で移送されるネジ1を検査する検査機構6とを備える。検査機構6は、光源7とカメラ8と演算検査器9とを備える。検査装置は、光源7の光をスリット3に透過させてカメラ8で受光し、カメラ8から出力される映像信号を演算検査器9で演算処理してネジ1を検査する。回転円筒2は、スリット上端の両側に一対の吊り下げ片20を一体構造に設けている。一対の吊り下げ片20は、その内面を、上端に向かってスリット幅を狭くするように傾斜または湾曲している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラでネジのシルエットを受光してネジを検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、円盤の外周部に半径方向に伸びる切欠部を設け、この切欠部にネジを供給して検査する装置を開発した。このネジの検査装置は、円盤の切欠部に案内されたネジに向かって光源から光を照射し、光源と反対側に設けているデジタルカメラでネジのシルエットを検査し、このシルエットを画像処理してネジを検査する。このネジの検査装置は、ネジのシルエットからネジ山の検査をすることができる。
【0003】
ただ、この検査装置は、円盤の外周に設けた切欠部でネジを移送し、ネジに光を照射してネジのシルエットの映像信号を演算して検査するので、ネジの首部、すなわちネジ頭と雄ネジ部との境界部分を検査できない欠点がある。それは、円盤の陰になってこの部分がネジのシルエットとして検出できなくなるからである。ネジは、首の部分にネジ山が設けられていないと、完全に締め付けできなくなる状態、すなわち「首浮き」の状態となる欠点がある。この弊害を避けるには、ネジの首部にネジ山があるかどうかを検査をすること、すなわちネジの全体を検査する必要がある。しかしながら、ネジに光を照射してシルエットで検査する装置は、ネジを移送するために円盤等を使用する必要があるが、これが光を遮断してネジの首部をシルエットで検出できなくなる。
【0004】
本出願人は、この弊害を解消するために、図1に示す検査装置を開発した(特許文献1参照)。この検査装置は、ネジ91の雄ネジ部を案内してネジ頭を上面に引っかけて移送するスリット93を所定の間隔で設けている回転円筒92と、スリット93にネジ91を供給する供給機構94と、移送されるネジ91を検査する検査機構96とを備える。検査機構96は、光源97とカメラ98と演算検査器99とを備える。回転円筒92のスリット93は、光源97の光を回転円筒92の内側から外側に透過できるように貫通させている。光源97は回転円筒92の内側に配設し、カメラ98は回転円筒92の外側に配設している。検査装置は、光源97の光を、スリット93を透過させてカメラ98で受光し、カメラ98がネジ91をシルエットの映像として撮像して映像信号を出力し、カメラ98から出力される映像信号を演算検査器99で演算処理してネジ91を検査する。
【特許文献1】特開2005−221270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この検査装置の回転円筒92は、図2と図3に示すスリット93を設けている。図2の回転円筒92は、スリット93の内幅を雄ネジ部91Bの外径よりもわずかに大きくして、ここに雄ネジ部91Bを案内してシルエットを検査する。この構造の回転円筒92は、ネジ91のシルエットがスリット内面に接近することから、ネジ91のシルエットからネジ山を正確に検査するのが難しい。図3の回転円筒92は、スリット上端の開口幅を調整するために、回転円筒92の上端面に調整プレート95を固定している。この回転円筒92は、調整プレート95によって、スリット上端の片方に吊り下げ片95Aを設けて、開口幅を狭くできるので、スリット93に案内される雄ネジ部91Bの片側をスリット内面から離すことができる。このため、ネジ91のシルエットの片側をスリット内面から離して、この部分のネジ山を検査できる。ただ、ネジ91のシルエットの両側をスリット内面から離して配設できないことから、雄ネジ部91Bの両側のネジ山を正確に検査できない欠点がある。
【0006】
さらに、この構造は、ネジ頭の吊り下げ片となる調整プレートを薄くすると強度が低下して変形するなどの弊害があることから、調整プレートの厚さに制約を受ける。吊り下げ片の調整プレートが変形すると、ネジをスリットの定位置に配設できなくなる。このため、調整プレートを変形しない程度に厚くする必要がある。調整プレートは、ネジのシルエットの首部に接近するので、調整プレートの厚みに相当する部分はネジ山を正確に検査できなくなる。したがって、この構造の回転円筒は、ネジの首部のネジ山をシルエットから正確に検査できない欠点を解消できない。
【0007】
本発明は、さらにこの欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、ネジの首部のネジ山をシルエットから正確に検査しながら、回転円筒のネジの吊り下げ片を十分な強度として、変形などの弊害を確実に防止できるネジの検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のネジの検査装置は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。
ネジの検査装置は、全体の形状が円筒状に形成されると共に、ネジ1の雄ネジ部1Bを案内してネジ頭1Aを上面に引っかけて移送するスリット3を所定の間隔で上下に伸びるように設けている回転円筒2と、この回転円筒2を円筒の中心を回転軸として回転させる回転機構10と、回転円筒2のスリット3にネジ1を供給する供給機構4と、回転円筒2で移送されるネジ1を検査する検査機構6とを備えている。検査機構6は、ネジ1に向かって光を照射する光源7と、光源7から照射された光を受光してネジ1の輪郭を示すシルエットの映像信号に変換するカメラ8と、このカメラ8から出力される映像信号を演算して、ネジ1を画像処理して検査する演算検査器9とを備えている。光源7は、回転円筒2の内側から外側に向かって光を照射するように回転円筒2の内側に配設している。カメラ8は、スリット3を透過する光を受光するように回転円筒2の外側に配設している。検査装置は、光源7の光を、ネジ1を保持するスリット3を透過させてカメラ8で受光し、カメラ8がネジ1をシルエットの映像として撮像して映像信号を出力し、カメラ8から出力される映像信号を演算検査器9で演算処理してネジ1を検査する。回転円筒2は、スリット上端の両側に対向して一対の吊り下げ片20を一体構造に設けている。一対の吊り下げ片20は、その内面を、上端に向かってスリット幅を狭くするように傾斜または湾曲している。
【0009】
本発明の請求項2のネジの検査装置は、回転円筒2に設けているスリット上部の内面を、所定の曲率半径で湾曲する湾曲面21としている。
【0010】
本発明の請求項3のネジの検査装置は、回転円筒2を脱着自在に回転機構10に連結している。
【0011】
本発明の請求項4のネジの検査装置は、回転円筒2を、金属製の円筒からスリット部を切除してなる金属円筒としている。
【0012】
本発明の請求項5のネジの検査装置は、回転円筒2の上端面の幅(H)を、検査するネジ91のネジ頭91Aの外径(D)よりも狭くしている。
【発明の効果】
【0013】
本発明のネジの検査装置は、ネジの首部のネジ山をシルエットから正確に検査しながら、回転円筒のネジの吊り下げ部を十分な強度として、変形などの弊害を確実に防止できる特徴がある。それは、本発明の検査装置が、回転円筒に設けているスリット上端の両側に対向して一対の吊り下げ片を一体構造に設けており、さらに一対の吊り下げ片は、その内面を、上端に向かってスリット幅を狭くするように傾斜または湾曲しているからである。この構造の回転円筒は、スリット上端の対向面に設けている吊り下げ片がネジ山の表面に接近する先端縁を薄くしながら十分な強度にできる。それは、一対の吊り下げ片の内面を、上端に向かってスリット幅を狭くするように傾斜させることで、吊り下げ片を先端に向かって次第に先細り状に薄くしているからである。先端を次第に薄くしている吊り下げ片の先端縁は、雄ネジ部の表面に接近する上下幅を狭く、すなわち薄くして、雄ネジ部の首部までネジ山をシルエットで正確に検査できる。
【0014】
本発明の請求項2のネジの検査装置は、回転円筒に設けているスリット上部の内面を、所定の曲率半径で湾曲する湾曲面としているので、スリット上端を極めて薄くしながら、ネジを吊り下げて係止する部分を十分な強度にできる。このため、ネジ山を、より首部までシルエットから確実に検査しながら、変形などの弊害を有効に防止できる。
【0015】
本発明の請求項3のネジの検査装置は、回転円筒を脱着自在に回転機構に連結しているので、回転円筒を交換して、外径が異なる複数種のネジを検査できる。
【0016】
本発明の請求項4のネジの検査装置は、回転円筒を、金属製の円筒からスリット部を切除してなる金属円筒としているので、全体を吊り下げて保持する部分をとくに強靱な構造にできる。
【0017】
本発明の請求項5のネジの検査装置は、回転円筒の上端面の幅を、検査するネジのネジ頭の外径よりも狭くしているので、幅の狭い、すなわち薄い回転円筒でもって、ネジ山をシルエットからより正確に検査できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのネジの検査装置を例示するものであって、本発明はネジの検査装置を以下のものに特定しない。
【0019】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0020】
図4と図5に示すネジの検査装置は、全体の形状が円筒状で、ネジ1の雄ネジ部1Bを案内してネジ頭1Aを上面に引っかけて移送するスリット3を所定の間隔で上下に伸びるように設けている回転円筒2と、この回転円筒2を回転させる回転機構10と、この回転円筒2のスリット3にネジ1を供給する供給機構4と、この供給機構4でスリット3に供給されたネジ1をスリット3に保持して移送する移送ガイド5と、回転円筒2のスリット3で移送されるネジ1を検査する検査機構6とを備えている。
【0021】
回転円筒2は、図4と図5に示すように、金属製の円筒からなる金属円筒で、この金属円筒は、上端から下方にスリット部を切除してスリット3を設けている。スリット3は、図6に示すように、光源7の光を、内側から外側に透過できるように、内側から外側に貫通するように設けている。回転円筒2である金属円筒の上端面の幅(H)は、ネジ頭1Aの外径(D)の1/2ないし2倍、好ましくは0.6倍ないし1.5倍、さらに好ましくは、0.6倍ないし1倍とする。たとえば、3mmのネジは、種類によってネジ頭の外径は異なるが、この種のネジの検査装置にあっては、回転円筒の上端面の厚さを約3mm〜5mmとする。
【0022】
回転円筒は、上端面の幅をスリットを設けた部分よりも広くすることができる。この回転円筒は、上端面に向かって次第に厚くして上端面の幅を広くし、あるいは上端面の内側と外側の一方又は両方に凸条を突出して上端面の幅を広くすることができる。回転円筒は、全体の厚さを同じとすることもできる。この回転円筒は、上端面の幅が回転円筒の厚さとなる。
【0023】
スリット3は、図7の拡大正面図に示すように、上端の両側に対向して一対の吊り下げ片20を一体構造に設けている。一対の吊り下げ片20は、スリット3に案内されるネジ1のネジ頭1Aを支持できるように、対向縁の間隔(d)をネジ頭1Aの外径(D)よりも小さく、雄ネジ部1Bの山径(t)よりも大きくしている。さらに、一対の吊り下げ片20は、その内面を、上端に向かってスリット幅を狭くするように傾斜させている。吊り下げ片20を一体構造に設けている回転円筒2は、金属製の円筒からスリット3の部分を切除して製作される。図の吊り下げ片20は、内面を所定の曲率半径で湾曲する湾曲面21として、上端開口部に向かってスリット幅を次第に狭くしている。スリット上端にこの吊り下げ片20を設けている回転円筒2は、ネジ1の首の部分のネジ山をシルエットから正確に検査しながら、吊り下げ片20を強固にできる。ただし、本発明の検査装置は、吊り下げ片20を、図8に示すように、上端に向かってスリット幅を直線的に狭くする傾斜面22とすることもできる。
【0024】
図4の回転円筒2は、スリット3の姿勢を半径方向としている。この回転円筒2は、図6に示すように、光源7の光を半径方向にスリット3に透過させて、スリット3に案内しているネジ1のシルエットをカメラ8で撮像する。スリットの姿勢は、必ずしも半径方向とする必要はなく、たとえば、半径方向に対して傾斜する姿勢で設けることもできる。ただし、傾斜するスリットは、このスリットと平行に光源から光を照射し、スリットを透過する光をカメラで撮像して、スリットのネジをシルエットで撮像する。
【0025】
回転機構10は、回転円筒2を、円筒の中心を回転軸として回転させる。図5に示す回転機構10は、回転円筒2を固定する回転リング板11と、この回転リング板11を回転させる駆動機構12とを備え、駆動機構12で回転される回転リング板11を介して回転円筒2を所定の速度で回転させている。回転リング板11は、中央部に円形の貫通部11Aを有するリング状で、リング状の外周部の上面に回転円筒2を固定している。回転円筒は、回転リング板11に、脱着自在に連結している。図に示す回転円筒2は、内周面の下端部に連結リング23を固定しており、この連結リング23を介して回転リング板11の上面に、脱着自在に連結している。連結リング23は、ネジ止めして回転円筒に固定し、あるいは溶着して回転円筒に固定し、あるいはまた、金属でもって、回転円筒と一体構造に製作される。図に示す回転円筒2は、止ネジ15を介して連結リング23を回転リング板11に脱着自在に固定している。このように、回転円筒2を脱着自在に回転機構10に連結する構造は、回転円筒2を、スリット3の間隔が異なるものに交換して、外径が異なる種々のネジを検査できる。
【0026】
図の回転機構10は、回転リング板11の内側に設けた貫通部11Aに駆動機構12を備えており、この駆動機構12で回転リング板11の内周を駆動して回転させている。駆動機構12は、回転リング板11を水平な姿勢で支持すると共に、回転リング板11を所定の速度で回転させる。図に示す駆動機構12は、回転リング板11の内側に3組のローラー13を備えている。3組のローラー13は、いずれかひとつを駆動ローラー13Aとして回転リング板11を駆動し、他のローラー13を支持ローラー13Bとして回転リング板11を所定の姿勢に保持して回転リング板11を回転させている。駆動ローラー13Aは、図5の断面図に示すように、回転リング板11を上下で弾性的に挟着して、回転リング板11を回転させる。回転リング板11を駆動する駆動ローラー13Aは、図5に示すように、モーター14に連結されて、モーター14で回転される。
【0027】
ただ、駆動機構は、必ずしも回転リング板の内側に駆動ローラーを配設する必要はなく、回転リング板の内側に配設するローラーをすべて支持ローラーとして、回転リング板を所定の姿勢に保持しながら、回転リング板の外側に設けた駆動ローラーで回転リング板を駆動して回転させることもできる。また、回転機構は、回転リング板を、貫通部のない円盤状として、中心に回転軸を設けて、この回転軸を中心として回転させることもできる。この回転機構は、たとえば、円盤状の回転リング板に回転軸を固定し、回転軸をモーターで駆動して回転リング板を回転させ、あるいは、回転軸を回転リング板に固定することなく、回転リング板の外周部を駆動ローラー等で駆動して回転させることができる。
【0028】
さらに、回転機構は、図示しないが、回転リング板を設けることなく、駆動機構で直接に回転円筒を回転させることもできる。この回転機構は、回転円筒の内周部を内側に突出させると共に、その内側縁を円形とする円形リング状にして、この内周部を駆動ローラーで駆動して回転させることができる。この回転機構は、回転円筒を脱着するために、ローラーを、バネ等の弾性体(図示せず)で、回転円筒の内側に突出する内周部に向かって弾性的に移動できるように配設する。この構造は、ローラーを回転円筒の中心側に移動させて、回転円筒を交換する。
【0029】
供給機構4は、回転円筒2のスリット3にネジ1を供給する供給ガイド41を備える。図4、及び9ないし図11の供給ガイド41は、ネジ1を1列に並べて回転円筒2のスリット3に供給する構造としている。供給ガイド41は、ネジ1を1列に並べて移送できるように、一対の側壁42を備えており、これらの側壁42の間隔を、ネジ1のネジ頭1Aより狭く、雄ネジ部1Bよりも広くして直線状に配置している。さらに、この供給ガイド41は、振動によって、ネジ1を並べて移送する構造としている。供給ガイド41は、その先端を、回転円筒2の外周縁の近傍であって、回転円筒2の外周に接近して配設しているガイド43の先端に接近して位置させている。直線状の供給ガイド41は、送り出すネジ1をスムーズにスリット3に送り込みできるように、回転円筒2の接線方向に対して、たとえば、45〜80度傾けて配設している。
【0030】
さらに、図に示す供給機構4は、ネジ1の供給部分に、空気ノズル44を配設しており、この空気ノズル44から吹き出される空気流でもって、ネジ1を回転円筒2のスリット3に移送するようにしている。空気ノズル44は、ネジ1をスリット3に押し出すもので、ネジ1をスリット3に向けて移送する方向に空気を噴射する。空気ノズル44は、供給ガイド41の最先端に位置するネジ1に空気を吹き付けてこれを加速し、先端のネジ1を次に送られてくるネジ1から離して、最先端のネジ1を空気流でもって回転円筒2の外周縁に押圧する。回転円筒2が回転して供給ガイド41の前方にスリット3が来ると、最先端のネジ1は、空気流で押圧されてスリット3に押し込まれる。
【0031】
空気ノズル44は、空気を吹き付けてネジ1を供給ガイド41から回転円筒2のスリット3へ押し出す。空気ノズル44は、図4に示すように、空気の吹き出しを制御する開閉弁45を介して空気源29であるコンプレッサに連結している。供給機構は、図示しないが、上下2本の空気ノズルを配設することもできる。この供給機構は、下の空気ノズルからネジの雄ネジ部に空気を吹き付け、上の空気ノズルからネジのネジ頭に空気を吹き付けて、上下の空気ノズルでもって、ネジのネジ頭と雄ネジ部とを押圧できる。この構造は、上下に配置される空気ノズルから噴射する空気圧を、ネジの形状、たとえば、雄ネジ部とネジ頭の重量比や形状に応じて調整して、種々の形状のネジを確実に回転円筒のスリットに移送できるを特徴がある。
【0032】
ガイド43は、供給機構4で回転円筒2のスリット3に案内されたネジ1をスリット3に位置させるように、回転円筒2の外周に接近して配設している。ガイド43は、回転円筒2の外周縁と対向する対向面を、回転円筒2の外周に沿う円弧状としている。ガイド43は、回転円筒2の外周との間に、ネジ1の外径よりも狭い移送隙間46を形成している。図のガイド43は、一方の端縁43Aを供給ガイド41の排出側に接近して配設している。このガイド43は、供給ガイド41から移送されるネジ1を端縁43Aに沿って回転円筒2のスリット3に案内する。
【0033】
さらに、ガイド43は、回転円筒2との移送隙間46を弾性的に拡開できる構造としている。図のガイド43は、回転円筒2と同一面内で回動させて、移送隙間46を拡開するようにしている。ガイド43は、図9と図11の矢印Aで示すように、供給ガイド41の排出側に位置する端部を、回転円筒2の外周から離れる方向に移動させて、回転円筒2との移送隙間46を拡開する。ガイド43は、拡開する端部と反対側の端部に回転軸47を設けて、ガイド43を水平面内で回動できるようにしている。さらに、図9のガイド43は、弾性的に拡開できるように、すなわち、弾性的に元の位置に復帰できるように、弾性体48を連結している。弾性体48は、回動するガイド43を回転円筒2に向かって付勢するように配設している。図に示す弾性体48は引きバネで、ガイド43に固定した連結片49を弾性的に引っ張って、拡開した端部が回転円筒2の外周に向かって移動するようにガイド43を回動させている。さらに、図のガイド43は、回転円筒2との移送隙間46を調整する隙間調節ネジ50を備えている。
【0034】
以上の構造のガイド43は、供給ガイド41から供給されるネジ1が移送隙間46にブリッジとなって詰まると、移送隙間46を拡開する方向に弾性的に回動する。ガイド43が回動して移送隙間46が拡開されると、この移送隙間46に詰まったネジ1が回転円筒2の外周縁に沿って移動して、スリット3に案内される。ネジ1がスリット3に案内されると、ガイド43は弾性的に元の位置に復帰する。以上のようにして、弾性的に拡開するガイド43は、移送隙間46に詰まったネジ1を速やかにスリット3に案内する。
【0035】
さらに、図の供給機構4は、移送隙間46にネジ1が詰まった状態で、供給機構4から次のネジ1が供給されて、2個のネジ1が移送隙間46に詰まった状態となるのを防止するために、移送隙間46にネジ1が詰まってガイド43が拡開すると、供給機構4から次のネジ1が回転円筒2に供給されるのを阻止するシャッター51を備えている。
【0036】
シャッター51は、供給機構4から移送隙間46に供給されてスリット3に案内されないネジ1がガイド43を拡開すると、拡開されたガイド43に制御されてネジ1の移送を停止する。図のシャッター51は、移送隙間46を拡開するガイド43に連動して移動し、供給機構4からのネジ1の移送を停止する。シャッター51は、供給ガイド41の排出側と回転円筒2の外周との間に配設している。このシャッター51は、回転円筒2の接線方向に往復運動して、供給ガイド41からのネジ1の移送を停止する。図に示すシャッター51は、回転円筒2の接線方向に往復運動できるように、この接線に沿うスライド面を有するガイド台52に、往復運動できるように連結している。シャッター51は、先端部を供給ガイド41の排出側に位置させており、シャッター51が押し出される状態で供給ガイド41の排出部を閉塞してネジ1が排出されるのを停止する。シャッター51は、往復運動機構53で往復運動される。図の往復運動機構53は、シャッター51の後端を押圧してシャッター51を閉塞位置に移動させる駆動アーム54と、シャッター51を非閉塞位置に復帰させる弾性体55とを備える。
【0037】
さらに、図に示す検査装置は、移送隙間46を拡開するガイド43に連動して、シャッター51を往復運動させるために、ガイド43とシャッター51をリンク機構56で連結している。リンク機構56は、スリット3に案内されないネジ1でガイド43が拡開されると、拡開されたガイド43に連動して、ネジ1の移送を停止するようにシャッター51を移動させる。図に示すリンク機構56は、ガイド43に連結されて、ガイド43と共に回動する固定アーム57と、シャッター51を駆動する駆動アーム54に連結されて、駆動アーム54と共に回動する連結アーム58と、固定アーム57と連結アーム58に両端を連結しているコンロッド59とを備える。
【0038】
このリンク機構56は、ガイド43が移送隙間46を拡開する方向、すなわち、図の矢印Aで示す方向に回動すると、回転軸47を介して固定アーム57がガイド43と一体的に図の矢印Cで示す方向に回動する。回動する固定アーム57は、コンロッド59を図の矢印Dで示す方向に移動させる。図の矢印Dで示す方向に移動するコンロッド59は、連結アーム58を矢印Eで示す方向に回動させる。回動する連結アーム58は、回転軸60を介して一体的に連結している駆動アーム54を、図の矢印Fで示す方向に回動させる。回動する駆動アーム54は、先端部でシャッター51の後端部を押圧して、シャッター51を図の矢印Bで示す方向に移動させる。矢印Bの方向に移動するシャッター51は、供給ガイド41の排出部を閉塞して、次のネジ1が回転円筒2に供給されるのを停止する。
【0039】
以上の供給機構4は、移送隙間46にネジ1が詰まってガイド43が拡開されると、拡開するガイド43に連動して、シャッター51が供給ガイド41を閉塞して、次のネジ1が供給されるのを停止する。したがって、複数のネジ1が移送隙間46に詰まるのを確実に防止する。リンク機構56は、移送隙間46にネジ1が詰まる状態となってガイド43が拡開されると、シャッター51が速やかに供給ガイド41の排出側を閉塞するように連動させる。すなわち、リンク機構56は、ガイド43が移送隙間46をネジ1の雄ネジ部1Bの太さ以上に拡開すると、シャッター51の移動量が供給ガイド41の排出部を閉塞できる移動量となるように調整する。
【0040】
さらに、リンク機構56は、以下のようにしてガイド43とシャッター51を元の位置に復帰させて供給ガイド41を開放する。移送隙間46に詰まったネジ1が、回転する回転円筒2でスリット3に案内されると、ガイド43は、図4と図6の矢印Aと反対の方向に回動する。ガイド43は、弾性体48の弾性力で元の復帰位置まで回動する。元の位置まで回動するガイド43は、回転軸47を介して一体的に連結している固定アーム57を、図4の矢印Cと反対の方向に回動させる。回動する固定アーム57は、コンロッド59を図の矢印Dと反対方向に移動させる。移動するコンロッド59は、連結アーム58を図の矢印Eと反対方向に回動させる。回動する連結アーム58は、回転軸60を介して一体的に連結している駆動アーム54を、図の矢印Fと反対方向に回動させる。回動する駆動アーム54は、先端部でシャッター51の後端部を押圧しなくなるので、シャッター51が弾性体55で付勢されて、矢印Bと反対の方向に移動する。この方向に移動するシャッター51は、供給ガイド41の排出部を開放して、供給ガイド41から回転円筒2のスリット3にネジ1を供給できる状態とする。
【0041】
以上の供給機構4を備える検査装置は、移送隙間46にネジ1が詰まっても、弾性的に拡開するガイド43でもって、詰まったネジ1をスリット3に案内しながら、また、複数のネジ1が移送隙間46に詰まるのを防止しながら、供給されるネジ1を回転円筒2のスリット3に確実に案内して移送できる。ただ、本発明の検査装置は、回転円筒のスリットにネジを供給する機構を以上の供給機構に特定しない。供給機構は、回転する回転円筒のスリットに連続してネジを供給できる他の全ての機構が採用できる。供給機構4で回転円筒2のスリット3に案内されるネジ1は、検査位置まで移送されて検査機構6で検査される。
【0042】
さらに、図4に示す検査装置は、スリット3に供給されたネジ1を、スリット3に保持して移送する移送ガイド5を備える。図4の検査装置は、回転円筒2の内側の一部の領域であって、供給機構4でネジ1が供給される部分と、回転円筒2の外側の一部の領域であって、供給機構4で供給されたネジ1を検査機構6で検査するまでの領域に配置している。ただ、移送ガイドは、供給機構で供給されたネジを排出するまでの全ての領域であって、検査機構でネジを検査する部分以外の領域にわたって配設することもできる。回転円筒2の内側に配置される移送ガイド5は、回転円筒2の内周に沿って配設し、回転円筒2の外側に配置される移送ガイド5は、回転円筒2の外周に沿って配設している。これらの移送ガイド5は、回転円筒2のスリット3の開口縁を閉塞して、回転円筒2で移送されるネジ1がスリット3から落下するのを防止する。移送ガイド5は、回転円筒2の周縁に接触してもよいが、好ましくは、回転円筒2をよりスムーズに回転させるために、接近するが接触しない非接触状態とするのがよい。図の検査装置は、回転円筒2の上端面の幅をネジ頭1Aの外径よりも小さくしているので、移送ガイド5の対向面を回転円筒2の周縁から離して配設している。この移送ガイド5は、回転円筒2の上面に配置されるネジ頭1Aの側縁を、移送ガイド5の対向面に接近ないし接触させてスリット3の定位置に保持しながら移送する。ただ、回転円筒の上端面の幅をネジ頭の外径よりも大きくする検査装置は、スリットの上方にネジの移送方向に伸びる移送ガイドを設けることもできる。
【0043】
検査機構6は、ネジ1に向かって光を照射する光源7と、光源7から照射された光を受光してネジ1の輪郭を示すシルエットの映像信号に変換するカメラ8と、このカメラ8から出力される映像信号を演算して、ネジ1を画像処理して検査する演算検査器9とを備えている。この検査機構6は、図4と図6に示すように、ネジ1に側方から光を照射して全体のシルエットを検出してネジの状態を検査する。この検査機構6は、ネジ1の全体の形状や全長、メッキの状態、さらには、雄ネジ部1Bのネジ山の状態等を検査する。
【0044】
図4の検査機構6は、光源7を回転円筒2の内側に配設している。この光源7は、回転円筒2の内側から外周に向かって光を照射し、スリット3のネジ1に向かって光を照射するように配置している。カメラ8は、回転円筒2の外側に配設されて、光源7からネジ1に向かって照射される光を受光して、ネジ1をシルエットの映像として撮像して映像信号を出力する。カメラから出力される映像信号を演算検査器9で演算処理してネジを検査する。図の検査機構6は、回転円筒2の内側に光源7を、回転円筒2の外側にカメラ8を配設しているが、検査機構は、回転円筒の内側にカメラを配設して、回転円筒の外側に光源を配設することもできる。この検査機構は、光源が回転円筒の外側から内側に向けて光を照射して、スリットのネジに向かって光を照射するように配置する。
【0045】
図に示す光源7は面光源である。面光源は、表面から均一な光を正面に照射する。面光源である光源7は、検査領域を通過するネジ1に光を照射する。検査機構の光源は、図示しないが、ネジのネジ頭に光を照射する上部光源と、ネジの雄ネジ部に光を照射する下部光源とを備えることができる。この光源は、上部光源を、下部光源よりもネジから離してネジに光を照射させる。このように、上部光源と下部光源とに分割して、上部光源でネジ頭に光を照射し、下部光源でネジの雄ネジ部に光を照射する光源は、ネジの検査精度を高くできる。それは、外径が異なるネジ頭と雄ネジ部の両方を、シルエットの外周縁ににじみができないように、カメラが鮮明な輪郭の画像として撮像できるからである。シルエットでネジの輪郭を撮像する場合、光源からネジまでの距離が近すぎると、シルエットの外周縁ににじみが発生する。この弊害を避けるために、光源をネジから離すと、ネジのシルエットと光源とのコントラストが低下する。上部光源が、下部光源よりもネジから離れてネジに光を照射する構造は、ネジ頭と雄ネジ部の両方のシルエットを鮮明な画像として撮像できる。外径の大きいネジ頭は、光源を接近させるとにじみができる。外径の小さい雄ネジ部は、光源を離すとコントラストが低下する。にじみとコントラストは、ネジと光源との間の距離で変化する。外径の大きいネジ頭は、光源を接近させるとにじみが発生しやすくなる。ネジ頭に最適なように光源をネジから離すと、雄ネジ部のコントラストが低下する。上部光源と下部光源とに分割している光源は、上部光源をにじみができないようにネジ頭から離し、ネジの雄ネジ部はコントラストを高くするために接近して、ネジの全体を鮮明なシルエットとしてカメラで撮像できる。ただ、光源は、必ずしも上部光源と下部光源とに分割する必要はない。光源は、同一平面状の面光源として、ネジ頭と雄ネジ部の両方に光を照射することができる。
【0046】
面光源は、白色光をネジ1に照射し、あるいは赤、青、緑等の光をネジ1に照射する。光源7は、発光ダイオード、冷陰極管、電球が使用できるが、面光源は、これ等の表面に均一に分散してネジ1を照射する。面光源は、液晶のバックライト等に使用される構造とすることができる。面光源は、ネジ1の全体に均一に光を照射できるので、ネジ1の検査精度を高くできる。ただ、本発明の検査装置は、光源を必ずしも面光源とする必要はなく、点光源も使用できる。
【0047】
カメラ8は、検査領域を通過するネジ1の輪郭をシルエットの映像として受光して、ネジ1のシルエットの映像信号を演算検査器9に出力する。カメラ8は、たとえば、図12に示すように、1本のネジ1の全体を撮像して、その映像信号を演算検査器9に出力する。演算検査器9は、入力される映像信号を演算して、このネジ1の検査をする。このように、1本のネジ1を撮像して、演算検査器9で演算処理する検査装置は、検査するネジ1のシルエットを鮮明な画像として撮像しながら、正確に検査できる特徴がある。ただ、検査装置は、カメラで複数のネジを一緒に撮像して、その映像信号を演算検査器に出力して、複数のネジを同時に検査することもできる。この検査装置は、1本のネジを検査する時間を短縮して、短時間に多量のネジを検査できる。
【0048】
カメラ8は、回転円筒2のスリット3の位置を検出する位置センサー19から出力されるタイミング信号に同期してネジ1を撮像する。この構造は、回転円筒2の回転位置に同期して、カメラ8がネジ1を撮像するので、カメラ8は常に一定の位置でネジ1を撮像できる。位置センサー19は、たとえば、スリット3を光で検出してタイミング信号を出力する。また、位置センサーは、回転円筒に設けている凹凸を検出して、あるいは、回転円筒に設けている位置を示す磁気信号を検出して、タイミング信号を出力することもできる。
【0049】
光源7は、位置センサー19から出力されるタイミング信号に同期して点滅させ、あるいは連続して点灯される。位置センサー19のタイミング信号に同期して点滅する光源7は、カメラ8がネジ1を撮像するタイミングに点灯し、カメラ8がネジ1を撮像しないときに消灯される。カメラ8がネジ1を撮像するタイミングに同期して、光源7を点灯する装置は、光源7の点灯時間を短くして、移動しているネジ1をくっきりと撮像できる。
【0050】
演算検査器9は、カメラ8から入力される映像信号から、ネジ1の全長、雄ネジ部1Bの長さ、ネジ頭1Aの高さ、ネジ頭1Aの外径、雄ネジ部1Bの山径と谷径、ネジ1のリード角、雄ネジ部1Bの先端尖り形状、ネジ1のメッキの状態等を演算する。演算された結果から、検査するネジが規格のネジであると正常ネジとし、規格外のネジであると規格外ネジと判別する。
【0051】
さらに、図4に示す検査装置は、ネジ1に上方から光を照射して、ネジ頭1Aの映像を検出して検査する第2の検査機構16も備えている。この第2の検査機構16は、ネジ頭1Aの形状やメッキの状態、ネジ頭1Aに設けた溝の状態等を検査する。この第2の検査機構16は、図13に示すように、回転円筒2の上側に、光源17とカメラ18を備えている。光源17は面光源で、上方からネジ頭1Aに向かって光を照射する。カメラ18は、光源17から照射された光の反射光を受光してネジ頭1Aの映像を撮影し、ネジ頭1Aの映像信号を出力する。カメラ18から出力される映像信号を演算検査器9で演算して、ネジ頭1Aを画像処理して検査する。演算された結果から、ネジ頭1Aの形状や状態を検査し、検査するネジが規格のネジであると正常ネジとし、規格外のネジであると規格外ネジと判別する。ただ、検査装置は、必ずしも第2の検査機構を備える必要はない。
【0052】
検査機構6で規格外と判定され、あるいは第2の検査機構16で規格外と判定された規格外ネジは、図4に示すように、除去手段30で正常ネジから分別されて排除される。また、検査機構6と第2の検査機構16で規格のネジであると判定された正常ネジは、除去手段30で排除されることなく、除去位置から排出位置まで移送されて、排出手段35で排出される。
【0053】
除去手段30は、演算検査器9で検出された規格外ネジが除去位置にきたときにこれを除去するもので、除去センサー31と、除去ノズル32と、この除去ノズル32から噴射される空気流を制御する除去ノズル32の制御部材である開閉弁33とを備える。ネジ1を回転円筒2で並べて移送する場合、規格外ネジを検出位置で直ちに除去するよりは、一旦これを所定の距離だけ移送して除去するのが便利である。これを実現するには、ネジの良否を検出する検査位置と規格外ネジを除去する除去位置との間に何個のネジが存在するかを検出し、除去位置を何個目に通過するネジを除去するかを決定すればよい。
【0054】
除去センサー31は、規格外ネジが定位置にきたことを検出する。除去センサー31は、除去が必要な規格外ネジが除去ノズル32の前を通過すると、このことを演算検査器9に出力する。演算検査器9は、除去ノズル32と空気源29との間に接続された開閉弁33を御制している。演算検査器9は、規格外ネジに向かって空気を噴射するように開閉弁33を開いて、規格外ネジを空気流で回転円筒2から除去する。
【0055】
除去センサー31は、図14に示すように、光源31Aが発光した光ビームを受ける受光体31Bを備え、光源31Aの光がネジ頭1Aで遮光されることによってネジ1が定位置に来たことを検出する。したがって、光源31Aは、回転円筒2の半径方向に向けて、しかもネジ頭1Aに向けて光ビームを照射し、受光体31Bは、光源31Aから出る光ビームの前方で光源31Aとの間にネジ頭1Aを挟む位置に配設される。この構造の除去センサー31は、光源31Aと受光体31Bとの間にネジ頭1Aがきて、光源31Aからの入射光が減少したことを受光体31Bで検出して、ネジ1が定位置に来たことを検出する。受光体35の出力信号は演算検査器9に送られる。
【0056】
除去位置を通過するネジ1が規格外ネジの場合、開閉弁33が開かれて除去ノズル32から空気が噴射される。除去ノズル32から空気が噴射されると、図14と図15に示すように、規格外ネジは直ちに回転円筒2のスリット3から吹き飛ばされ、除去ガイド34に送り込まれて回収される。ここで、一般的には、図14に示すように、除去センサー31と除去ノズル32とは多少離されて配設される。よって、除去ノズル32の空気噴射を制御する開閉弁33は、ネジ1が除去センサー31から除去ノズル32の前方まで移動する時間だけ遅れて開かれ、かつ、1個のネジ1を吹き飛ばす時間だけパルス状に空気を吹き出した後、閉弁される。
【0057】
除去位置を通過するネジ1が良品の正常ネジの場合、開閉弁33は開かず、すなわち除去ノズル32から空気を噴射して吹き飛ばすことなく、次工程に送られる。除去ノズル32から空気が吹き出されない場合、正常ネジは、除去ノズル32の前方を通り過ぎた後、回転円筒2のスリット3で排出位置までに移送され、排出手段35によって良品ガイド38に送り込まれて回収される。
【0058】
排出手段35は、演算検査器9で規格のネジであると判定された正常ネジが排出位置にきたときにこれを排出するもので、排出ノズル36と、この除去ノズル36から噴射される空気流を制御する排出ノズル36の制御部材である開閉弁37とを備える。排出手段35は、正常ネジが定位置まで移送されると、演算検査器9が、排出ノズル36と空気源29との間に接続された開閉弁37を開いて、規格外ネジに向かって空気を噴射して、正常ネジを空気流で回転円筒2から排出する。この排出手段35は、除去センサー31がネジ1の通過を検出してから所定の時間経過後、すなわち、正常ネジが除去センサー31から排出ノズル36の前方まで移動する時間だけ遅れて開閉弁37を開いて、排出ノズル36から正常ネジに空気を噴射することができる。排出ノズル36を制御する開閉弁37は、1個のネジ1を吹き飛ばす時間だけパルス状に空気を吹き出した後、閉弁することができる。ただ、排出手段は、連続して空気を噴射することもできる。除去位置を通過して排出位置まで移送されるネジは、全てが正常ネジであり、これらの正常ネジを全て排出位置において回転円筒のスリットから排出するからである。この排出手段は、開閉弁を常に開いた状態として、排出ノズルから空気を連続して噴射する。
【0059】
さらに、排出手段は、必ずしも正常ネジを空気流で吹き飛ばして排出する構造とする必要はなく、回転円筒で移送されるネジの通路に取出アームを配設することもできる。この取出アームは、ネジの移送方向に向かって傾斜する姿勢でネジの通路に配設される。この排出手段は、排出位置に移送される正常ネジを取出アームに沿って移動させて、回転円筒から落下させて排出する。
【0060】
以上の除去手段30と排出手段35は、除去センサー31でネジ1の通過を検出しており、このネジ1の通過から所定の時間経過後に、除去ノズル32の開閉弁33を制御して規格外ネジを除去し、あるいは、排出ノズル36の開閉弁37を制御して正常ネジを排出している。ただ、検査装置は、必ずしも除去センサーを必要とはしない。除去センサーのない検査装置は、例えば、位置センサーでもって、回転する回転円筒のスリットの通過を検出し、通過するスリットの数から移送されるネジの位置を検出することができる。この検査装置は、検査位置から除去位置までを所定の数のスリットが通過したことを位置センサーで検出して、除去が必要な規格外ネジが除去ノズルの前を通過することを検出し、また、検査位置から排出位置までを所定の数のスリットが通過したことを位置センサーで検出して、正常ネジが排出ノズルの前を通過することを検出することができる。
【0061】
以上のように、本発明の検査装置は、回転円筒2の回転を停止することなく、連続回転する回転円筒2でネジ1を移送して時間当りの処理能力を高くしながら、移送されるネジ1を検査機構6で正確に検査できる。とくに、回転円筒のネジの吊り下げ部を十分な強度として、変形などの弊害を確実に防止しながら、ネジの首部のネジ山まで正確に検査できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本出願人が先に開発したネジの検査装置の平面図である。
【図2】図1に示す回転円筒のスリット部分における端面図である。
【図3】回転円筒の他の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施例にかかるネジの検査装置の平面図である。
【図5】図4に示すネジの検査装置のA−A線断面図である。
【図6】図4に示す検査装置の検査機構がネジを検査する状態を示す概略断面図である。
【図7】回転円筒のスリットの正面図である。
【図8】回転円筒のスリットの他の一例を示す正面図である。
【図9】図4に示す検査装置の供給機構を示す斜視図である。
【図10】図4に示す検査装置の供給機構の拡大平面図である。
【図11】図10に示す供給機構のガイドとシャッターが連動して動作する状態を示す平面図である。
【図12】図4に示す検査装置の検査機構が撮像したネジの画像の一例を示す図である。
【図13】図4に示す検査装置の第2の検査機構がネジを検査する状態を示す概略断面図である。
【図14】図4に示す検査装置の除去手段を示す拡大平面図である。
【図15】図14に示す除去手段の垂直断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1…ネジ 1A…ネジ頭
1B…雄ネジ部
2…回転円筒
3…スリット
4…供給機構
5…移送ガイド
6…検査機構
7…光源
8…カメラ
9…演算検査器
10…回転機構
11…回転リング板 11A…貫通部
12…駆動機構
13…ローラー 13A…駆動ローラー
13B…支持ローラー
14…モーター
15…止ネジ
16…第2の検査機構
17…光源
18…カメラ
19…位置センサー
20…吊り下げ片
21…湾曲面
22…傾斜面
23…連結リング
29…空気源
30…除去手段
31…除去センサー 31A…光源
31B…受光体
32…除去ノズル
33…開閉弁
34…除去ガイド
35…排出手段
36…排出ノズル
37…開閉弁
38…良品ガイド
41…供給ガイド
42…側壁
43…ガイド 43A…側縁
44…空気ノズル
45…開閉弁
46…移送隙間
47…回転軸
48…弾性体
49…連結片
50…隙間調節ネジ
51…シャッター
52…ガイド台
53…往復運動機構
54…駆動アーム
55…弾性体
56…リンク機構
57…固定アーム
58…連結アーム
59…コンロッド
60…回転軸
91…ネジ 91A…ネジ頭
91B…雄ネジ部
92…回転円筒
93…スリット
94…供給機構
95…調整プレート 95A…吊り下げ片
96…検査機構
97…光源
98…カメラ
99…演算検査器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体の形状が円筒状に形成されると共に、ネジ(1)の雄ネジ部(1B)を案内してネジ頭(1A)を上面に引っかけて移送するスリット(3)を所定の間隔で上下に伸びるように設けている回転円筒(2)と、この回転円筒(2)を円筒の中心を回転軸として回転させる回転機構(10)と、回転円筒(2)のスリット(3)にネジ(1)を供給する供給機構(4)と、回転円筒(2)で移送されるネジ(1)を検査する検査機構(6)とを備えており、
検査機構(6)は、ネジ(1)に向かって光を照射する光源(7)と、光源(7)から照射された光を受光してネジ(1)の輪郭を示すシルエットの映像信号に変換するカメラ(8)と、このカメラ(8)から出力される映像信号を演算して、ネジ(1)を画像処理して検査する演算検査器(9)とを備えており、
前記光源(7)は回転円筒(2)の内側から外側に向かって光を照射するように回転円筒(2)の内側に配設され、カメラ(8)はスリット(3)を透過する光を受光するように回転円筒(2)の外側に配設され、
光源(7)の光がネジ(1)を保持するスリット(3)を透過してカメラ(8)で受光され、カメラ(8)がネジ(1)をシルエットの映像として撮像して映像信号を出力し、カメラ(8)から出力される映像信号を演算検査器(9)で演算処理してネジ(1)を検査するようにしてなるネジの検査装置であって、
前記回転円筒(2)が、スリット上端の両側に対向して一対の吊り下げ片(20)を一体構造に設けており、さらに一対の吊り下げ片(20)は、その内面を、上端に向かってスリット幅を狭くするように傾斜または湾曲してなることを特徴とするネジの検査装置。
【請求項2】
前記回転円筒(2)に設けているスリット上部の内面が所定の曲率半径で湾曲する湾曲面(21)である請求項1に記載されるネジの検査装置。
【請求項3】
前記回転円筒(2)が脱着自在に回転機構(10)に連結されてなる請求項1に記載されるネジの検査装置。
【請求項4】
前記回転円筒(2)が、金属製の円筒からスリット部を切除してなる金属円筒である請求項1に記載されるネジの検査装置。
【請求項5】
前記回転円筒(2)の上端面の幅(H)が、検査するネジ(1)のネジ頭(1A)の外径(D)よりも狭い請求項1に記載されるネジの検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−276093(P2009−276093A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125174(P2008−125174)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(508141335)高越鋼業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】