説明

ノルケタミンおよびケタミン/ノルケタミンプロドラッグの鎮痛的使用

本発明は、ノルケタミンおよびケタミン/ノルケタミンプロドラッグ、ならびにそれらの鎮痛剤としての使用方法に関する。特に、本発明は、ノルケタミン、ケタミンおよびノルケタミンのN-コンジュゲートプロドラッグ、ならびに麻酔剤の投与を必要とせずに慢性疼痛を処置するためのこれらの薬剤の使用方法に関する。本発明は、疼痛を緩和するのに有効な1用量以上のノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグを、経皮、鼻腔、直腸、経口、経粘膜、静脈内、筋内および他の経路等の従来経路を介して、疼痛を持つ被検体に投与することを含む、外来患者を原則とした疼痛の自己処置に関する。ノルケタミンおよびケタミン/ノルケタミンプロドラッグの使用はまた、例えば、頭痛、薬剤乱用、気分障害、不安障害、および神経変性により生じると考えられているアルツハイマー病、パーキンソン症候群等の他の神経精神学的障害(運動性および認知性の両方)を治療するのにも適用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下、2002年11月18日に出願された米国特許仮出願第60/426,793号(この開示全体を参照により本明細書に援用する)に対する優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、ノルケタミンおよびケタミン/ノルケタミンプロドラッグ、ならびにそれらの鎮痛剤としての使用方法に関する。特に、本発明は、ノルケタミン、ケタミンおよびノルケタミンのN-コンジュゲートプロドラッグ、ならびに麻酔剤の投与を必要とせずに慢性疼痛を処置するためのこれらの薬剤の使用方法に関する。本発明は、疼痛を緩和するのに有効なノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグを、経皮、鼻腔、直腸、経口、経粘膜、静脈内、筋内および他の経路等の従来経路を介して、疼痛を持つ被検体に投与することを含む、外来患者を原則とした疼痛の自己処置に関する。ノルケタミンおよびケタミン/ノルケタミンプロドラッグの使用はまた、例えば、頭痛、薬剤乱用、気分障害、不安障害、ならびに神経変性により生じると考えられているアルツハイマー病、パーキンソン症候群等の他の神経精神学的障害(運動性および認知性の両方)を治療するのにも適用され得る。
【背景技術】
【0003】
ケタミン(2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)-シクロヘキサノン)は、麻酔医、獣医および研究者に使用される一般的な麻酔剤である。通常、ケタミンは筋内(i.m.)または静脈内(i.v.)投与されて麻酔を誘導するが、ケタミンは万能的な麻酔剤と考えられており、i.v.経路が利用できない場合には他の従来あまり使用されていない経路を介して送達されてきた。ケタミンおよびミダゾラムを鼻腔投与して、眼科手術のために鎮静させたり、健康な子供の待機手術の前に麻酔を誘導することが報告されている(Louonら, 1993, Br. J. Ophthalmol. 77:529-530;Wekslerら, 1993, Can. J. Anaesthesia 40:119-121)。ケタミンの鼻腔、直腸およびi.v.投与は、幼児におけるハロタン(halothane)麻酔剤と比較されている(Malinovskyら, 1996, Br. J. Anaesthesia 77:203-207)。しかし、ケタミンは、重要な臨床的欠点を有することが周知である;特にケタミンは、精神錯乱、抑うつおよび不快な夢を含む不安出現反応を引き起こすことが知られている(Leungら, 1985, J. Med. Chem. 29:2396-2399)。現在のケタミン医薬組成物は、S-およびR-ケタミンのラセミ混合物であるが、S-ケタミンはR-ケタミンよりも2倍有効であり、ラセミ混合物よりも負の副作用少なく早く回復させることが最近分かった(C.S.T.Aun, 1999, Br. J. Anaesthesia 83: 29-41)。ケタミンの主要代謝生成物の1つはノルケタミン(2-(2-クロロフェニル)-2-アミノ-シクロヘキサノンである。
【0004】
ケタミンはまた、鎮痛性質を持つことも知られている(Dominoら, 1965, Clin. Pharmacol. Ther. 6:279);強い鎮痛は、麻酔域下用量のケタミンにより得られる(Bovill, 1971, Br. J. Anaesth. 43:496;Sadoveら, 1971, Anesth. Analg. 50:452-457)。薬剤は、i.v.、i.m.、尾骨、髄腔内、経口、直腸および皮下(s.c.)を含む様々な経路で投与される。ケタミンの皮下投与は、術後および末期癌に伴う疼痛を治療するために使用されてきた(例えば、Oshimaら, 1990, Can. J. Anaesth. 37:385-386を参照)。皮下カニューレを介して投与された塩酸ケタミンが、幻肢痛の治療に成功したことが報告された(StannardおよびPorter, 1993, Pain 54:227-230)。ケタミンの経口投与は、筋内投与よりもノルケタミン代謝産物の濃度を高めた(Grantら, 1981, Br. J. Anaesthesia 53:805-810)。著者らはまた、ノルケタミンの鎮痛的効果についても推測している。
【0005】
疼痛、特に慢性の疼痛の処置は複雑であり、失敗に終わることが多い。最初の治療は、通常、μ-オピオイドアゴニスト(例えば、モルヒネ等の麻酔薬)の投与を伴う(例えば、AndersonおよびBrill, 1992, Semin. Anesth. 11:158-171を参照)。しかし、麻酔薬に対する迅速な寛容および著しい耐性が発達することが多く、従ってこれらの薬剤を無効にしてしまう(例えば、Abram, 1993, Reg. Anesth. 18(SUPPL):406-413を参照)。ケタミンおよびノルケタミン等の非競合性N-メチル-D-アスパラギン酸塩(NMDA)受容体アンタゴニストは、モルヒネの鎮痛効果に対する寛容の発達を妨害することが報告されている。これは、おそらくアンタゴニストの「副作用」ではなく(なぜなら、アンタゴニストは寛容を逆転することが認められていない)、NMDA受容体のブロックを経たものである(TrujilloおよびAkil, 1994, Brain Res. 633:178-188)。
【0006】
脊髄後角におけるNMDA受容体複合体の活性化により、自発的神経放電の上昇、受容野の拡張、および求心性インプット(afferent input)に対する過剰反応が生じることが調査で示されている。これらの神経メカニズムは、痛覚過敏(増大した痛覚)、および異痛(通常は痛みを伴わない刺激により生じる疼痛)として物理的に現れ得る。度重なる刺激は、後角侵害ニューロンのC繊維仲介型応答の一過的な加重を生じる;一定のインプットに対してアウトプットが増大するこの現象は、「ワインドアップ(wind-up)」として知られている。オピオイドは、主要求心性神経伝達物質の放出を阻害する能力、または侵害経路において介在ニューロンを早期阻害する能力により、より深い(deeper)後角侵害ニューロンへのC繊維インプットを初めに低減またはブロックする。しかし、抹消刺激が続くと、ワインドアップはインプット阻害を突破し、ニューロンが応答し始める。従って、適度な用量にて、オピオイドは、プロセス自体を阻害することなく、ワインドアップのオンセットを遅延させる。全般的に、Chapman、C.R.ら、"Pain Measurement:an Overview"、1985、疼痛 22:1-31;およびHawthorn、Janら、"Management of Cancer Pain:International Training for Cancer Nurses"、developed by Glaxo Wellcome in collaboration with The International Society of Nurses in Cancer Care、1996、6 ppを参照。
【0007】
疼痛処置は、麻酔薬、アゴニスト-アンタゴニスト剤、ブトルファノール、ベンゾジアゼピン、GABA刺激因子、バルビツール酸塩、バルビツール酸塩様薬等の薬剤を大量に、例えば、錠剤もしくは液体製剤に入っている状態で経口で、またはi.v.もしくはi.m.注射して投与することを伴うことが多い。 オピオイドアゴニストおよびアンタゴニストは、組み合わせることができる。従って、薬剤の組み合わせはオフセット効果があるかもしれない。より問題なのは、有害な副作用、特に経口投与に伴う胃の負担、または注射が呼び起こす恐怖感等の可能性である。
【0008】
慢性疼痛を持つ患者は、薬剤の経口投与の結果生じる胃、および他の胃に関する問題を制御する投薬を必要とすることが多い。口周囲投与に加えて、慢性疼痛の治療のためのほとんどの鎮痛剤および鎮静剤投薬についての経口自己投与の代替法は普及しておらず、煩わしい場合もあり(例えば、i.m.、i.v.またはs.c.投与はカニューレまたは針の使用を必要とする)、通常医療トレーニングを必要とする。
【0009】
米国特許第4,671,953号は、鎮静剤の投与、薬剤が口腔粘膜を介して血流に導入されるキャンディーマトリックスに入った鎮痛剤または鎮静剤について記載している。しかし、この方法は、沈静される患者が、キャンディーを口にしたまま眠り、喉つまりを起こすという不都合を被る。さらに、キャンディー中の薬剤の合計用量は所望の用量を超え得るため、キャンディーの投与は医学的に管理されなければならない。最後に、キャンディーは、単純に日常的使用に向いていない。なぜなら、飴を舐めることは、雇用者またはビジネスマンにとっては場所にそぐわない行為であるからである。
【0010】
さらに、疼痛を持つ患者の制御下で投与する場合(すなわち、外来患者を原則とする場合)、特に麻酔薬について、過量摂取または乱用の可能性がある。
【0011】
研究から、投与経路に依存する速度で(経口および直腸投与が、肝臓における初回通過代謝の程度が高いことから最も速度が速い)、ケタミンが脱メチル化を介してノルケタミンに代謝的にin vivo変換されることが示されている。 (例えば、Grantら.、1981、Br. J. Anaesth. 53:805-810;Grantら、1981、Br. J. Anaesth. 55:1107-1111;Leungら、1985、J. Med. Chem. 29:2396-2399;Malinovskyら、1996、Br. J. Anaesthesia 77:203-207を参照)。ノルケタミンは、S-またはR-ケタミンのいずれよりもNMDA受容体との結合が弱く(Ebertら、1997、Eur. J. Pharm. 333:99-104)、ノルケタミンは、麻酔剤および鎮痛剤の効能がケタミンの3分の1であると推測されており(C. S. T. Aun、1999、Br. J. Anaesthesia 83:29-41)、これはおそらく、従来技術においてノルケタミンを鎮痛剤として投与しないことの理由であろう。
【0012】
米国特許第5,543,434号および同第6,248,789 B1号は、疼痛を処置し、薬剤依存性を低下させるためのケタミンの経粘膜および鼻腔投与を開示している。Wegの方法では、投薬量は、ケタミンに起因する情動不安性の副作用を避けるために低く保たなければならない。しかし、研究では、ラットに静脈内(Leungら、1985、J. Med. Chem. 29:2396-2399)または髄腔内(Shimoyamaら、1999、Pain 81:85-93)で送達されたノルケタミンは、等量のケタミンよりも有害な続発症が少ないことが示されている。
【0013】
米国特許第6,194,000 B1号は、ワインドアップの治療のための即時放出型および持続放出型形態に組み合わせたNMDA受容体アンタゴニストの使用を開示している。しかし、この特許は、この方法による治療が、疼痛伝達侵害ニューロンへの初期インプットを低減させるのに無効であると開示している。
【発明の開示】
【0014】
従って、当該分野では、非オピオイド薬剤および副作用が低減した薬剤を用いた、疼痛を処置する改善された方法が必要とされている。
【0015】
当該分野では、標準的な治療計画では難治性の突出痛およびワインドアップに伴う疼痛を低減または除去するための迅速な方法がさらに必要とされている。
【0016】
当該技術分野では、疼痛薬剤の経口および注射投与を避けることがさらに必要とされている。
【0017】
当該技術分野では、疼痛を処置または制御するための薬剤の患者による自己投与の迅速、便利そして社会的に許容可能な方法が必要とされている。
【0018】
当該技術分野では、自己投与薬剤の過量摂取および乱用を避けることがさらに必要とされている。
【0019】
当該技術分野における上記および他の必要性を本発明は扱っており、本発明はS-ノルケタミン、R-ノルケタミン、それらのラセミ混合物、およびケタミン/ノルケタミンプロドラッグが他の疼痛処置療法計画と併せてまたは独立して疼痛を安全かつ有効に緩和するのに使用できること、そして上記プロドラッグが、送達の際には不活性または活性が低い一方でそれぞれの作用薬であるS-ノルケタミン、R-ノルケタミン、S-ケタミン、R-ケタミン、(±)ケタミンまたは(±)ノルケタミンに代謝により変換可能であるという発明者の主張に基いている。
【0020】
本出願におけるいずれの参考文献の引用または特定によっても、このような参照文献が本発明に対する従来技術であることを認めるものではない。しかし、本出願において特定する全ての参考文献および引用は、参照により本出願に全体的に援用する。
【0021】
本発明の目的は、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグを含む薬物組成物を提供することである。より具体的には、本発明の目的は、S-ノルケタミン、R-ノルケタミンもしくは(±)ノルケタミン、ならびに/またはS-ケタミン、R-ケタミン、S-ノルケタミン、R-ノルケタミンもしくはラセミ混合物と様々なカルボン酸および他の置換基との化学結合を介して構造1および2に示す式を構成するS-ケタミン、R-ケタミン、S-ノルケタミン、R-ノルケタミンもしくは(±)ノルケタミンのプロドラッグを含む薬物組成物を提供することである。
【化1】

【0022】

【0023】
ここで、R3およびR4は、フェニル、アリール、アザアリール、アルキル、分岐アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニルであり;R5 = OHまたはSH;R6 = アルキル、分岐アルキル;である]
の化合物;
式1および式2の化合物のラセミ混合物(ここで、R1= H、およびR2はHを含む上記列挙した任意の基である);ならびに
それらの薬学上許容可能な塩および溶媒和物。
【0024】
ケタミンおよびノルケタミンの純粋な鏡像異性体のプロドラッグ(またはそれぞれのプロドラッグ鏡像異性体の光学的に活性な混合物)に加えて、本発明は、ノルケタミンのラセミ混合物、そのプロドラッグ、またはケタミンのプロドラッグも含む。
【0025】
本発明は、広範には、疼痛を緩和するのに有効な1以上の用量のノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグを、疼痛を持つ被検体に投与することを含む、被検体の疼痛を治療する方法、ならびにこのような投与のためのノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグを含む組成物に関する。本発明の組成物は、経皮、鼻腔、直腸、膣、経口、経粘膜、静脈内、筋内、尾骨、髄腔内および皮下を含む多数ある経路のいずれかよって送達される。さらなる実施形態では、本発明は、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの吸入による肺投与を提供する。鎮痛剤用量のノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの経皮、鼻腔および肺投与は、患者自身による薬剤投与を都合よく可能にし、これは外来患者を原則とした疼痛処置を可能にする。さらに、経皮パッチ、鼻腔スプレーおよび吸入器でのノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグ投与は、概して社会的に許容可能な。
【0026】
外来患者を原則とした疼痛療法は、有利には病院業務に対する要求を減らして、治療コストの実質的な低下をもたらし、より通常の生活および労働環境を患者に提供して、これは治療結果にプラスの影響を与え得る。
【0027】
本発明の別の利点は、慢性疼痛の治療のために麻酔薬を投与する必要を回避することである。有効な鎮痛剤でも、麻酔薬は寛容または耐性により有効性を失うことがある。また麻酔薬は、中毒性が高く、乱用されやすい。
【0028】
本発明のさらなる利点は、医療的管理を必要とし、社会的に問題のある、さもなくば率直には許容し難いキャンディーによる投与を回避することである。ノルケタミンまたはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの経粘膜(経頬側、舌下、膣および直腸を含む)、肺、または鼻腔投与は、迅速であり、プロドラッグから親薬剤への迅速な変換、および薬剤の即効作用を可能にして、医療的訓練を受けていない患者によっても簡単に実行できる。経皮投与は、作用がより遅いが、それでも医療的訓練を受けていない患者によって簡単に実行できる。有効な疼痛治療は、経皮または経粘膜送達を介した少用量を確立することによってより良く達成され、これらの投与経路はi.v.またはi.m.投与を介して送達されるケタミンのボーラス投薬に関連する副作用を回避することがさらに発見されている。さらに、少量の経粘膜または経皮のノルケタミンおよび/もしくはケタミン/ノルケタミンプロドラッグは、より頻度高く投与することができ、これにより被検体の必要に応じてモジュレートされ得る薬剤の本質的に安定した状態レベルを達成できる。患者の状態によってノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの鼻腔投与が阻まれる場合、例えば、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグ点眼薬を用いた眼球投与に代えてもよい。経粘膜経路(例えば、鼻腔、経頬側、舌下、膣および直腸)の投与に加えて、本発明は、経口投与(経口-咽頭粘膜ではなく、胃腸管を介したもの)、ならびに非経口投与(例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、皮内、筋内、心室内または皮下)を想定する。
【0029】
一態様では、疼痛を緩和するノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの用量は、約0.01〜約20 mg/体重(kg)である。より好適な態様では、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの用量は、約0.05〜約8 mg/体重(kg)である。別の実施形態では、1投与当たりのノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの合計用量は、約1〜約30 mgの範囲である。
【0030】
本発明の具体的な態様では、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの用量は、突出痛、または慢性疼痛状態もしくは神経障害性疼痛を持つ患者におけるワインドアップに伴う疼痛を緩和するのに有効である。
【0031】
本発明の別の具体的な態様では、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの用量は、陣痛(特に、一過性の陣痛)に伴う突出痛を緩和するのに有効である。
【0032】
具体的な態様では、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの経口、経皮、経粘膜、肺または鼻腔投与は、例えば上述したような1つ以上の麻酔薬、鎮痛剤および鎮静剤の投与を含む、疼痛処置療法計画における補足的療法であり得る。それぞれの場合に、第2の疼痛薬剤は、適切であればノルケタミンおよび/もしくはケタミン/ノルケタミンプロドラッグと同じ経路を介して投与されるか、またはノルケタミンおよび/もしくはケタミン/ノルケタミンプロドラッグが経皮もしくは経頬側を介して投与される一方で、例えば経口等異なる経路を介して投与され得る。他の薬剤(とりわけ麻酔薬)が関与する継続中の疼痛処置療法計画に加えた、疼痛を処置するためのノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの投与が、該他の鎮痛剤(特に、麻酔性鎮痛剤)を時間経過と共に減らすことを可能にすることは本発明の内容において驚くべき発見であった。一般的に、経験から、異なる鎮痛剤の効果は相加的で、追加の鎮痛剤は投薬療法計画に補足的に(例えば、第1の鎮痛剤に対する寛容が増加する場合に)加えられることが示されている。本発明の方法によるノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの投与は、この寛容の増加を回避する。
【0033】
本発明は、高用量のノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの投与に伴い得る情動不安を阻害するのに有効な1回用量のベンゾジアゼピンを投与することをさらに想定する。好適な態様では、ベンゾジアゼピンは、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグと同じ投与経路を介して同時に投与される。しかし、本発明のさらなる利点は、情動不安または幻覚誘発を伴うレベルをはるかに下回る定量の鎮痛剤用量を提供することにより、情動不安性または幻覚誘発性の量のノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグを患者に投薬するのを回避することであることを付記しておく。
【0034】
さらなる実施形態では、本発明は、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグで疼痛を緩和するのに有効な1回用量の麻酔性鎮痛剤を投与することを想定する;麻酔性鎮痛剤は、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグと同じ投与経路を介して同時に投与されることが好ましい。
【0035】
従って、本発明は、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの患者による自己投与のための装置を提供する。本発明の装置は、その最も広範な態様において、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの製剤を、場合により薬学上許容可能な分散剤と共に含む肺吸入器を備え、該装置は、疼痛を緩和するのに有効な用量のノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグを含む量の製剤を分散するように測定する。分散剤は、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルコール、およびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の(ただし、これらに限定されない)界面活性剤であり得る。
【0036】
1つの具体的な実施形態では、製剤は、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグが微粉化粉末として存在する乾燥粉末製剤である。乾燥粉末製剤は、乳糖、ソルビトール、ショ糖およびマンニトール等の(ただしこれらに限定されない)充填剤をさらに含んでいてもよく、またはノルケタミンおよび/もしくはケタミン/ノルケタミンプロドラッグは担体粒子を伴っていてもよい。
【0037】
別の具体的な実施形態では、製剤は、滅菌水、食塩水、緩衝化食塩水およびデキストロース溶液等の(ただしこれらに限定されない)薬学上許容可能な希釈剤を場合により含む液体製剤である。
【0038】
さらなる実施形態では、製剤は、装置により分散される一定量の製剤が情動不安を阻害するのに有効な用量のベンゾジアゼピンを含む濃度のベンゾジアゼピン、または装置により分散される一定量の製剤が疼痛を緩和するのに有効な用量の麻酔薬を含む濃度の麻酔薬をさらに含む。本発明は、製剤中にベンゾジアゼピンおよび麻酔薬の両方を含むことをさらに想定する。
【0039】
従って、本発明の目的は、外来患者の疼痛治療のための、安全かつ非麻酔性の薬剤の自己投与を提供することである。
【0040】
本発明のさらなる目的は、疼痛治療のために制御された量で薬剤を投与する方法を提供することである。
【0041】
従って、本発明は、ノルケタミンおよびケタミン/ノルケタミンプロドラッグの患者による自己投与のための様々な医薬担体を提供する。このような担体の例としては、坐薬、ガム、キャンディーまたはロゼンジが挙げられるがこれらに限定されない;他の担体として経頬側パッチおよび経皮パッチが挙げられる。製剤は、持続放出型製剤であることが好ましい。
【0042】
本発明のさらなる目的は、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの自己投与のための、非医療従事者でも病院または診療所の外で使用できる装置を提供することである。
【0043】
本発明の上記および他の目的は、以下の詳細な説明を参照することによりより理解し易くなるであろう。
【0044】
主要な態様において、本発明は、疼痛の治療のためのノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの投与に関する。より好適な態様では、本発明は、疼痛処置のための、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの患者による自己投与のための方法および装置を提供する。
【0045】
本発明の(±)ノルケタミン、ならびにケタミンおよびノルケタミンのプロドラッグは、以下の式1および2:
【化2】

【0046】

【0047】
ここで、R3およびR4は、フェニル、アリール、アザアリール、アルキル、分岐アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニルであり;R5 = OHまたはSH;R6 = アルキル、分岐アルキル;である]
の化合物;
式1および式2の化合物のラセミ混合物(ここで、R1= H、およびR2はHを含む上記列挙した任意の基である);ならびに
それらの薬学上許容可能な塩および溶媒和物である。
【0048】
本発明は、ショック;肢切断;重度の化学または熱火傷;捻挫、靭帯断裂、骨折、創傷および他の組織外傷;歯科手術、処置および疾患;陣痛および分娩;理学療法中の疼痛;術後疼痛;放射線障害;癌;後天性免疫不全症候群(AIDS);硬膜外(または硬膜上)線維症;不成功に終わった背中の手術および不成功に終わった椎弓切除;坐骨神経痛;疼痛性鎌状赤血球発症;関節炎;自己免疫疾患;難治性膀胱痛;等を含む(ただし、これらに限定されない)多くの原因に起因する疼痛を緩和することができる。ノルケタミンまたはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの投与はまた、ホスピス、特に癌およびAIDS患者の介護を専門とするホスピスにおける使用にも適している。
【0049】
一実施形態では、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの投与により、急性の突出痛、または慢性疼痛状態で生じ得るワインドアップに伴う疼痛の発現を軽減または緩和できる。さらなる実施形態では、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの投与は、慢性疼痛状態のための従来の療法計画に対する補助的療法として使用されて、突出痛またはワインドアップに伴う疼痛を緩和することができる。
【0050】
陣痛および分娩疼痛を低減するための本発明の特定の利点は、低用量のノルケタミンおよびケタミン/ノルケタミンプロドラッグが、胎児に対して有意に有害な影響をもたらすことが知られていないことである。
【0051】
関連する実施形態では、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの経皮投与を補助的にまたは直接的に使用して、急性喘息発作を治療できる。無関係な疼痛状態が喘息を引き起こし得るため、本発明は有利に疼痛を緩和し、その結果発作の原因を遮断する。さらに、ケタミンおよびノルケタミンは(麻酔性疼痛薬剤とは対照的に)、気管支拡張薬である。
【0052】
別の関連する実施形態では、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの投与は、急性嘔吐の治療において使用できる。経皮、経粘膜または鼻腔用のノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグは、この症状にとって特に魅力がある。なぜなら、嘔吐は、経口薬剤の使用を不可能にするからである。特に、経皮、経粘膜または鼻腔投与は、嘔吐を生じ得る疼痛を緩和することができ、重度の嘔吐を伴うことが多い腹痛を緩和できる。
【0053】
さらに関連する実施形態では、ノルケタミンおよびケタミン/ノルケタミンプロドラッグの投与を、急性興奮、例えば、アルコールもしくは薬剤に依存した個人または警察に逮捕された人物が示す興奮を処置するのに使用できる。
【0054】
同様に、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの投与は、重度の外傷により生じるショックの治療にも有用であり得る。つまり、患者が重度のショックにより疼痛を感じなくても、重度の外傷に伴う極度の疼痛はショックに寄与する。
【0055】
本発明は、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの投与が慢性疼痛または神経障害性疼痛の症状を緩和できるという驚くべきかつ予想外の発見に基づいている。従って、難治性膀胱疼痛を患い、様々な麻酔薬、鎮痛剤および鎮静剤を飲んで疼痛を制御する試みが失敗している患者は、0.26〜0.53 mg/体重(kg)に対応する16〜32 mgのノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグを投与することにより、より満足のいく疼痛処置を得ることができる。投薬は、約15分〜約1時間の間疼痛を緩和するのに有効である。患者は、胃痛を起こし易い経口疼痛薬剤の量を減らすことができる。
【0056】
ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグは、経粘膜経路、例えば、鼻腔、経頬側、舌下、膣および直腸;経口経路(経口-咽頭粘膜ではなく胃腸管を介したもの);肺経路(すなわち、吸引);または非経口経路、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、皮内、筋内、心室内もしくは皮下による投与に適した製剤または医薬組成物として調製されることが好ましい。適切な製剤は、以下で詳細に議論している。さらなる実施形態では、ノルケタミンまたはケタミン/ノルケタミンプロドラッグは、粘膜透過増強剤と共に製剤化されて、薬剤送達を促進させてもよい。製剤はまた、可溶性、薬剤安定性、皮膚または粘膜を介した吸収、および他の考慮について最適化されたpHで調製され得る。
【0057】
本発明は、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの治療上有効用量、すなわち疼痛を緩和するのに有効な用量の投与を提供する。実際の用量は、患者の体重、疼痛の重症度、投与経路、並列して投与する薬剤の性質、一日に投与する用量の数、および薬剤投与における技術を持つ通常の医師により一般的に考慮される他の要因に応じて変化する。具体的な実施形態では、慢性疼痛を持つ患者に投与されるノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの量は、麻酔を誘引するのに使用される量の約1〜約50%;より好ましくは約5%〜約40%、そしてさらにより好ましくは約10%〜約20%である。
【0058】
別の具体的な実施形態では、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの用量は、体重1kg当たり約0.01 mg(0.01 mg/kg)〜約20 mg/kg;好ましくは約0.05 mg/kg〜約8 mg/kgである。さらに別の実施形態では、用量は、約1 mg〜約30 mgの範囲である。有効用量は、 医師または医療提供者の監督下にて漸増されて、特定の用途に対する最適用量が正確に決定されることが好ましい。従って、本発明は、個々の患者それぞれに適した用量を提供する。
【0059】
投薬量範囲が確立すれば、本発明のさらなる利点は、患者が、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグを必要に応じて、効果−用量基準で投与できる点である。従って、投与の頻度は患者の制御下にある。しかし、各投与が比較的低い用量であることにより、患者による自己投与により生じる乱用の可能性が低くなる。
本発明のさらに別の具体的な利点は、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの経粘膜または肺投与が、非侵襲的であり、i.v.投与とほぼ同じぐらい速く、そして口周囲投与よりもはるかに早く血流に導入されることである。
【0060】
もっと重要なのは、患者が疼痛薬剤の投与を制御できることである。なぜなら、経粘膜または肺投与により、一日にわたる活性および疼痛レベルの変化を相殺するのに使用する薬剤の効果および投薬量に対する厳密な制御が得られるからである。ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの経粘膜または肺投与は、薬剤の効果−用量基準の投与を最適に提供する。経皮投与は、同じように迅速には作用しないが、同じように投薬量の厳密な制御、また薬剤の優れた効果的用量投与を可能にする。
【0061】
従って、本発明によれば、患者は、本発明による製剤の投与の量および頻度を制御することにより、疼痛を緩和するのに有効な量の薬剤を安全に投与できる。疼痛は主観的な症状であるため、疼痛薬剤の安全な患者調節型制御は有力な利点である。患者が疼痛を有効に緩和できること、そして疼痛を緩和する力は有意な生理学的利点を有することから、利点は二倍である。上向きな生理学的な状態により、治療計画の経過および結果を有意に改善でき、同時に、患者が全体的なプロセスをより受け入れ易くなる。
【0062】
明細書中、様々な用語を使用するが、以下にこれらを定義する:
当業者には容易に理解されるように、"ケタミン"という用語は、ケタミン(2-o-クロロフェニル)-2-メチルアミノ-シクロヘキサノン、その薬学上許容可能な塩、生物学的に等価の誘導体、およびその類似体、例えば、アスパラギン酸ケタミン、コハク酸ケタミン等を指す。具体的な実施形態では、ケタミンは、塩酸ケタミン等のケタミンの塩を指す。これらの塩の性質は、治療的目的で使用された場合に薬学上許容可能(つまり、当該分野で周知なように、遊離化合物と比較して活性が低かったり毒性が高かったりしないことを意味する)であれば、限定されない。これらの塩の例としては:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、過塩素酸、硫酸またはリン酸等の無機酸との塩;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、フマル酸、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸等の有機酸との塩;ならびに当業者に周知の他の鉱酸およびカルボン酸が挙げられる。無機陽イオンとの塩の例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、亜鉛等との塩があり;アンモニア、アルキルアミン、ヒドロキシアルキルアミン、リジン、アルギニン、N-メチルグルカミン、プロカイン等の薬学上許容可能なアミンと形成される塩も挙げられる。当業者は推測するであろうが"ケタミン"という用語の範囲には、鎮静剤の性質を示す、例えば、より高い効力もしくはより少ない副作用、または両方を有する、その異性体および鏡像異性体、ならびにS-およびR-ケタミンの任意の組み合わせのラセミまたは光学的に活性な混合物も含まれる。
【0063】
当業者には容易に理解されるように、"ノルケタミン"という用語は、ノルケタミン(2-o-クロロフェニル)-2-アミノ-シクロヘキサノン、その薬学上許容可能な塩、その生物学的に等価な誘導体および類似体、例えば、アスパラギン酸ノルケタミン、コハク酸ノルケタミン、等を含む。具体的な実施形態では、ケタミン、ノルケタミンは、塩酸ノルケタミン等のノルケタミンの塩を指す。これらの塩の性質は、治療的目的で使用された場合に薬学上許容可能(つまり、当該分野で周知なように、遊離化合物と比較して活性が低かったり毒性が高かったりしないことを意味する)であれば、限定されない。これらの塩の例としては:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、過塩素酸、硫酸またはリン酸等の無機酸との塩;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、フマル酸、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸等の有機酸との塩;ならびに当業者に周知の他の鉱酸およびカルボン酸が挙げられる。無機陽イオンとの塩の例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、亜鉛等との塩があり;アンモニア、アルキルアミン、ヒドロキシアルキルアミン、リジン、アルギニン、N-メチルグルカミン、プロカイン等の薬学上許容可能なアミンと形成される塩も挙げられる。当業者は推測するであろうが、"ノルケタミン"という用語の範囲には、鎮静剤の性質を示す、例えば、より高い効力もしくはより少ない副作用、または両方等を有する、その異性体および鏡像異性体、ならびにS-およびR-ノルケタミンの任意の組み合わせのラセミまたは光学的に活性な混合物も含まれる。
【0064】
"ノルケタミンのプロドラッグ"は、ノルケタミンに生理学的に変換され得る全ての化合物を指すために本明細書において使用する。ケタミンがin vivoでノルケタミンに代謝されることは周知であるが、ケタミンをノルケタミンのプロドラッグとして考慮しないこと、そして"ノルケタミンプロドラッグ"という用語は、あらゆる形態において、本出願において使用するケタミンを特に排除することに留意することが重要である。
【0065】
"突出痛"という用語は、本明細書において、疼痛治療における通常の意味に従って使用される。例えば、突出痛は、疼痛の治療を受けているが、現在の治療計画では治療できないレベルの疼痛を経験している被検体の疼痛を指し得る。"棘徐(Spike)痛"は、急性形態の突出痛である。通常、慢性疼痛のための薬剤または療法は、突出痛については十分な軽減を提供しない。これは、これらの療法計画の最大疼痛軽減効果が達成されているからか、発達した薬剤寛容のためか、または治療が十分に速くないからかのいずれかである。"ワインドアップ"に伴う疼痛は、後角侵害ニューロンのC繊維仲介型応答の一過的な加重を生じる度重なる刺激から生じ、痛覚過敏(増大した痛覚)、および異痛(通常は痛みを伴わない刺激により生じる疼痛)として物理的に現れ得る疼痛である。
【0066】
ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの投与が、疼痛を処置するためまたは代替的な疼痛療法との相乗作用のための効果的な治療計画となる被検体は、ヒトであることが好ましいが、あらゆる動物であり得る。従って、当業者には容易に理解されるように、本発明の方法および装置は、任意の動物、特に哺乳動物(ネコまたはイヌ被検体等の家庭内動物、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジおよびブタ被検体等の(ただし、これに限定されない)家畜、(野生または動物園にいる)野生動物、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ等の研究動物(すなわち、獣医学的用途)が挙げられるがこれらに限定されない)への、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの投与に特に適している。獣医学的用途については、直腸投与または経皮投与が便利であり、動物の激化または過敏状態を最小限にする。
【0067】
"粘膜"という用語は、口腔、頬側、直腸または膣粘膜および肺粘膜等の粘膜を含む組織を指す。"経粘膜"は、薬剤の全身送達のための粘膜を介した血流への薬剤の投与を指す。経粘膜送達の一つの明確な利点は、不快な注射の必要なく非経口送達とほぼ同じぐらいの速さで血流への薬剤の送達を提供することである。
【0068】
"経皮投与"という用語は、文法上のあらゆる形態において、薬剤の全身送達のために真皮を介した血流への薬剤の投与を指す。薬剤送達のための経皮投与の利点は、シリンジや針を使った注射を必要としないこと、薬剤のi.m.投与に伴う壊死を回避すること、定期的に飴を舐める必要を回避することであり、薬剤の経皮投与は自己投与に非常に適していることである。
【0069】
"肺投与"は、薬剤の全身送達のための肺管を介した(すなわち、肺に吸引する)血流への薬剤の投与を指す。本発明は、特定の態様での吸入器を介した肺投与を想定する。
【0070】
"粘膜透過増強剤"とは、胆汁塩、脂肪酸、界面活性剤またはアルコール等(ただし、これらに限定されない)のノルケタミンまたはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの経粘膜透過の速度または容易性を高める試薬を指す。具体的な実施形態では、透過増強剤は、コール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコレート、グリココール酸ナトリウム、ジメチルスルホキシドまたはエタノールであり得る。
【0071】
薬剤の"治療上有効量"は、薬剤の所望の活性を示すのに有効な量である。本発明によれば、治療上有効量のノルケタミンまたはケタミン/ノルケタミンプロドラッグは、患者における疼痛を緩和(すなわち、著しく低下)するのに有効な量である。
【0072】
以下、本発明を、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグ、ならびにノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグが一緒に投与され得る追加の治療的作用薬または薬剤の経皮、経粘膜および肺投与を特に参照しながらより詳細に記載する。
【0073】
ケタミン/ノルケタミンプロドラッグの合成
いくつかの新しいアルキルオキシ、アリールオキシカルボニルおよびアルキルアセチルオキシノルケタミン誘導体を、Leungら(Louis Y. LeungおよびThomas A. Ballie、Camparative Pharmacology in the Rat of Ketamine and Its Two Principal Metabolites、Norketamine and (Z)-6-Hydroxynorketamine. Journal of Medicinal Chemistry (1986)、29(11)、2396-2399)により報告されている手順を改変して調製した。
【0074】
1. N-アルキルオキシカルボニルノルケタミン
【化3】

【0075】
1.1 [1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸エチルエステル(3a)
無水ベンゼン(8 ml)中の1(224 mg、1.0 mmol)およびNa2CO3(366 mg)の混合物に、無水ベンゼン(0.5 ml)中のクロロギ酸エチル(287 mg、2.66 mmol)の溶液を添加した。還流下で6時間加熱した後、反応混合物を室温まで冷却し、H2O、10% Na2CO3、H2Oで洗浄した。有機層をジエチルエーテルで希釈し、無水MgS04上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。ジエチルエーテルからの再結晶化の後、3aを白い固体として得た。収率282 mg(95%):mp. 112-114℃;1H-NMR(CDCl3) 6.7-7.6(m、4H、Ar H)、4.03(m、2H、OCH2CH3)、1.4-2.8(m、シクロヘキサノンCH2プロトン)、1.26(t、3H、OCH2CH3);MS、m/z 295(M+、2%)、260([M-Cl]+、20%)、232([M-Cl-CO]+、100%)。
【0076】
1.2 [1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸イソプロピルエステル(3b)
無水ベンゼン(8 ml)中の1(224 mg、1.0 mmol)およびNa2CO3(366 mg)の混合物に、無水ベンゼン(0.5 ml)中のクロロギ酸イソプロピル(326 mg、2.66 mmol)の溶液を添加した。還流下で3時間加熱した後、反応混合物を室温まで冷却し、濾過した。混合物をジエチルエーテルで希釈し、蒸発させた。ジエチルエーテルからの再結晶化の後、3bを白い固体として得た。収率298 mg(96%):mp. 124-126℃;1H-NMR(CDCl3) 6.8-7.6(m、4H、Ar H)、4.16(m、1H、OCH[CH3]2));1.6-2.6(m、シクロヘキサノン CH2プロトン)、1.36(d、6H、OCH[CH3]2));MS、m/z 309(M+、2%)、274([M-Cl]+、12%)、246([M-Cl-CO]+、65%)、204(100%)。
【0077】
1.3[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸ブチルエステル(3c)
無水ベンゼン(8 ml)中の1(224 mg、1.0 mmol)およびNa2CO3(366 mg)の混合物に、無水ベンゼン(0.5 ml)中のクロロギ酸ブチル(363 mg、2.66 mmol)の溶液を添加した。還流下で2時間加熱した後、反応混合物を室温まで冷却し、濾過した。混合物をジエチルエーテルで希釈し、蒸発させた。ジエチルエーテルからの再結晶化の後、3cを白い固体として得た。収率308 mg(95%):mp. 130-132℃、1H-NMR(CDCl3) 7.0-7.4(m、4H、Ar H)、4.08 (m、2H、OCH2CH2CH2CH3)、1.7-2.6(m、シクロヘキサノン CH2プロトン)、1.3-1.6(m、4H、OCH2CH2CH2CH3)、1.0(t、3H、OCH2CH2CH2CH3);MS、m/z 323(M+、1%)、288([M-Cl]+、14%)、260([M-Cl-CO]+、100%)。
【0078】
2. N-アリールオキシカルボニルノルケタミン
【化4】

【0079】
2.1 [1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸フェニルエステル(4)
無水ベンゼン(8 ml)中の1(224 mg、1.0 mmol)およびNa2CO3(366 mg)の混合物に、無水ベンゼン(0.5 ml)中のクロロギ酸フェニル(448 mg、2.86 mmol)の溶液を添加した。還流下で8時間加熱した後、反応混合物を室温まで冷却し、濾過した。混合物をジエチルエーテルで希釈し、蒸発させた。ジエチルエーテルからの再結晶化の後、4を白い固体として得た。収率275 mg(80%):mp. 137-139℃、1H-NMR(CDCl3) 6.9-7.6(m、9H、Ar H)、1.6-2.6(m、シクロヘキサノンCH2プロトン);MS、m/z 341(M+-2、1%)、281([M-Cl-CO]+、100%)。
【0080】
3. N-ベンジルオキシカルボニルノルケタミン
【化5】

【0081】
3.1 [1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸ベンジルエステル(5)
無水ベンゼン(8 ml)中の1(224 mg、1.0 mmol)およびNa2CO3(366 mg)の混合物に、無水ベンゼン(0.5 ml)中のクロロギ酸ベンジル(488 mg、2.86 mmol)の溶液を添加した。還流下で6時間加熱した後、反応混合物を室温まで冷却し、濾過した。混合物をジエチルエーテルで希釈し、蒸発させた。ジエチルエーテルからの再結晶化の後、5を白い固体として得た。収率258 mg(72%):MS、m/z 357(M+、0.5%)、322([M-Cl]+、8%)、294([M-Cl-CO]+、26%)。
【0082】
4. N-酢酸アルキルノルケタミン
【化6】

【0083】
4.1 [1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシルアミノ]-酢酸エチルエステル(6)
無水ベンゼン(8 ml)中の1(224 mg、1.0 mmol)およびNa2CO3(366 mg)の混合物に、無水ベンゼン(0.5 ml)中のブロモ酢酸エチル(478 mg、2.66 mmol)の溶液を添加した。還流下で36時間加熱した後、反応混合物を室温まで冷却し、濾過した。混合物を、ジエチルエーテルで希釈し、蒸発させた。ジエチルエーテルからの再結晶化の後、6を白い固体として得た。収率258 mg(92%):MS、m/z 309(M+、1%)、281([M-CO]+、23%)。
【0084】
5. N-アシルオキシアルキルケタミンおよびN-アシルオキシアルキルノルケタミン
【化7】

【0085】
R1=HまたはCH3
R3=フェニル、アリール、アザアリール、アルキル、分岐アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル
異なる酸のクロロメチルエステルは、一般的に、対応する塩化アシルおよびパラホルムアルデヒドから、高温条件下にて簡単に作ることができる(Chenら、2003)。精製生成物を、ケタミンまたはノルケタミンのいずれかと、通常の条件下で反応させて、適切な新規誘導体を得る。
【0086】
6. ケタミンおよびノルケタミンのN-(酢酸エステル)
【化8】

【0087】
R1=HまたはCH3
R3=フェニル、アリール、アザアリール、アルキル、分岐アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル
異なるO-アルキルブロモ-またはクロロ-アセテートは市販されている。これらは、塩基性条件下で、第一級または第二級アミンと反応して、第二級または第三級アミンを形成する(Soede-Huijbregtsら、2001)。この方法論を採用して、対応するケタミンおよびノルケタミンN-酢酸エステルを調製できる。
【0088】
7. アミノアルキルオキシカルボニルケタミンおよびアミノアルキルオキシカルボニルノルケタミン
【化9】

【0089】
R1=HまたはCH3
アミノアルキルオキシカルボニルアミンプロドラッグは、in vivoで親アミンに簡単に加水分解されるアルキルオキシカルボニルアミンプロドラッグと同じように作用する。これらのプロドラッグの調製は、上記一般的な反応に従って達成される(Boyleら、1997)。2-アミノエチルクロロホルメート反応物質は、2-ジメチルアミノエタノールおよびホスゲンから、以下に示すような通常条件下で作られる(BrothertonおよびLynn、1961)。次いで、この中間体を、ケタミンまたはノルケタミンのいずれかと反応させて、対応するアミノアルキルオキシカルボニルプロドラッグを得ることができる。
【化10】

【0090】
8. アシルオキシアルコキシカルボニルケタミンおよびアシルオキシアルコキシカルボニルケタミンノルケタミン
【化11】

【0091】
R1=HまたはCH3
R3=フェニル、アリール、アザアリール、アルキル、分岐アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル
R4=フェニル、アリール、アザアリール、アルキル、分岐アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル
このタイプのプロドラッグは、構造中の複数反応点のために他のプロドラッグよりもより簡単に親アミン剤に加水分解される。α,α-アルケンジエステル中間体は、α-クロロアルキルクロロホルメート(市販されている)から、以下に概要を記載するステップを介して調製される(Lund、1991)。次いで、得られたクロロホルメート中間体を、ケタミンまたはノルケタミンのいずれかと反応させて、所望のアシルオキシアルコキシカルボニルプロドラッグを得る(Lund、1991)。
【化12】

【0092】
9. N-(アリールアミドメチレン)ケタミンおよびN-(アリールアミドメチレン)ノルケタミン
【化13】

【0093】
R1=HまたはCH3
R5=0HまたはSH
ケタミンまたはノルケタミンと、N-(クロロメチル)ベンズアミド誘導体との反応により、別の種類のケタミンプロドラッグが生成する(Fischerら、1985)。中間体N-(クロロメチル)ベンズアミド)も、ベンゼン環置換されて、一連のN-(アリールアミドメチレン)プロドラッグが得られる。これらのプロドラッグは、対応するベンズアミドおよびパラホルムアルデヒドから得られ、形成されたヒドロキシル誘導体の塩素処理(Fischerら、1985)、続けて得られたN-(クロロメチル)ベンズアミドとケタミンまたはノルケタミンのいずれかとの反応を行う。
【0094】
10. N-(N'-フタルイミドメチレン)ケタミン、N-(N'-フタルイミドメチレン)ノルケタミン、N-(N'-2,5-ピロリジンジオンメチレン)ケタミンおよびN-(N'-2,5-ピロリジンジオン-メチレン)ノルケタミン
【化14】

【0095】
R1=HまたはCH3
これらのプロドラッグは、ケタミンまたはノルケタミンと、N-(ヒドロキシメチル)フタルイミドまたは1-(ヒドロキシメチル)-2,5-ピロリジンジオン(共に市販されている)との光延反応により得る(ZaragozaおよびStephensen、2000)。
【0096】
11. N-フタリドケタミンおよびN-フタリドノルケタミン
【化15】

【0097】
R1=HまたはCH3
フタルアデヒル酸(Phthaladehylic acid)(市販品)を、水溶液中の第一級および第二級アミンと反応させて、N-置換フタリドを得た(Wheelerら、1957)。N-フタリドケタミンおよびノルケタミンプロドラッグは、上記したスキームに従ってこのように調製できた。
【0098】
12. N-(2-オキソ-1,3,ジオキソール-5-置換-4-イル)メチルケタミンおよびN-(2-オキソ-1,3,ジオキソール-5-置換-4-イル)メチルノルケタミン
【化16】

【0099】
R1=HまたはCH3
R6=アルキル、分岐アルキル
これらのプロドラッグは、適切な(2-オキソ-1,3,ジオキソール-5-置換-4-イル)メチルクロリド(TESSENDERLO GROUP/COS、Belgiumから入手可能)と、ケタミンおよびノルケタミンとの反応により調製される(Kanebo、Ltd、1983)。
【0100】
ノルケタミンおよびケタミン/ノルケタミンプロドラッグの肺および鼻腔経粘膜投与
本発明は、呼吸器管、好ましくは肺および気管支への医薬組成物および治療製剤の送達のために設計された多様な装置において使用されるノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグを含む製剤を想定している。本発明の投与の好ましい経路は、肺吸入用のエーロゾルスプレーである。場合により分散薬剤または分散剤と組み合わされたノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグは、乾燥粉末としての肺製剤で、または溶液もしくは懸濁液で場合により希釈剤と一緒に投与され得る。
【0101】
本明細書で使用する場合、"エーロゾル"という用語は、空気中に含まれる懸濁液を指す。特に、エーロゾルは、本発明の製剤およびその懸濁液の空気中での微粒化(particalization)または噴霧化を指す。本発明によれば、肺製剤は、吸入または肺投与用のノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグを含む製剤である。
【0102】
本明細書で使用する場合、"吸入器"という用語は、例えば、溶液、粉末等での薬剤の鼻腔-経粘膜および肺投与用の両方の装置を指す。例えば、"吸入器"という用語は、急性喘息発作用の抗ヒスタミン剤を投与するために使用されるような噴射剤作動型吸入器または乾燥粉末吸入器、および充血除去剤を投与するために使用されるようなプラスチックスプレー瓶を包含することを意図する。本明細書で使用する場合、"吸入器"は、当該分野で周知の"噴霧器"という用語も包含する。
【0103】
本明細書で使用する場合、"分散剤"という用語は、粘膜組織におけるノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグのエーロゾル化もしくは吸収、または両方を助ける薬剤を指す。具体的な態様では、分散剤は、粘膜透過増強剤であり得る。分散剤は、薬学上許容可能であることが好ましい。本明細書で使用する場合、"薬学上許容可能な"という用語は、動物、より具体的にはヒトにおける使用を、連邦政府または州政府の規制機関により認可されているか、または米国薬局方もしくは他の一般的に認められている薬局方に一覧されていることを意味する。
【0104】
適切な分散薬剤は、当該分野で周知であり、界面活性剤等が挙げられるがこれに限定されない。例えば、液体エーロゾルを形成する溶液の噴霧化により生じるノルケタミンまたはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの表面誘起凝集を低減するために当該分野で一般的に使用される界面活性剤が使用できる。このような界面活性剤の限定しない例としては、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルおよびアルコール、ならびにポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の界面活性剤が挙げられる。使用する界面活性剤の量はさまざまであり、該して製剤の0.001〜4重量%の範囲内である。適切な界面活性剤は、当該分野で周知であり、具体的な製剤、ノルケタミンまたはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの濃度、(液体製剤における)希釈剤、または(乾燥粉末製剤における)粉末の形態等に応じて、所望の性質に基づいて選択することができる。
液体製剤は、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグを、場合により分散薬剤と共に、生理学的に許容可能な希釈剤中に含む。本発明の乾燥粉末製剤は、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの微粉化固体形態からなり、場合により分散薬剤と共に構成される。液体製剤または乾燥粉末製剤のいずれにおいても、製剤は、エーロゾル化されなければならない。つまり、液体粒子または固体粒子にまで細かくして、エーロゾル化用量が、気管支または肺の粘膜に実際に到達することを確実にしなければならない。"エーロゾル粒子"という用語は、本明細書において、経粘膜または肺投与に適した、すなわち、粘膜または肺に到達する、液体または固体の粒子を表すのに使用する。送達装置の構築、製剤中の追加成分、ならびに粒子の組成および特徴等の他の考慮も重要である。これらの態様における薬剤の経粘膜または肺投与は、当該分野で周知であり、製剤の操作、エーロゾル化手段、および送達装置の構築は、最大限でも、当業者による常套的実験を必要とするにすぎない。
【0105】
鼻腔または肺投与については、有用な装置は、定量化用量スプレーが取り付けられた小さく硬い瓶である。一実施形態では、定量化用量は、チャンバ中の液体が圧縮されたときにスプレーを形成して製剤をエーロゾル化するように寸法設計された開口を有する規定容量のチャンバに、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグ溶液を引き入れることにより送達される。チャンバを圧縮して、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグを投与する。具体的な実施形態では、チャンバはピストン構成にされている。このような装置は、市販されている。
【0106】
あるいはまた、絞られた際にスプレーを形成して肺製剤をエーロゾル化するように寸歩設計された開口または開きを有するプラスチックの搾り出し瓶がある。開きは、通常瓶の上部にあり、上部は、エーロゾル製剤の効率的な投与のために鼻腔路に部分的に適合するように通常テーパにされている。鼻腔または肺吸入器は、定量化用量の薬剤を投与するために定量の製剤を提供することが好ましい。
【0107】
肺への吸入のための液体または乾燥粉末製剤のエーロゾル化は、噴射剤を要する場合が多い。噴射剤は、当該分野で一般的に使用される任意の噴射剤であり得る。このように有用な噴射剤の具体的な限定しない例として、クロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、または炭化水素(トリフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノールおよび1,1,1,2-テトラフルオロエタン、またはそれらの組み合わせを含む)がある。
【0108】
圧縮式定量噴霧器および乾燥粉末吸入器等のエーロゾル送達の系は、Newman、S. P.、Aerosols and the Lung、Clarke、S. W.およびDavia、D. editors、pp. 197-222、ならびに米国特許第6,358,530号、同第6,360,743号、同第6,406,745号、同第6,423,683号、同第6,565,888号および同第6,630,169号に記載されている(これらの開示は、本明細書に全体的に援用し、本発明に関連して使用され得る)。
【0109】
別の実施形態では、以下で詳細に議論するように、本発明の鼻腔経粘膜用または肺用製剤は、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグに加えて、他の治療的または薬理学的に作用する成分(ベンゾジアゼピンまたは麻酔性鎮痛剤等(ただしこれらに限定されない))を含み得る。
【0110】
一般的に、以下に詳細に記載するように、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグは、エーロゾル形態で、約0.01 mg/哺乳動物体重(kg)から最大約1 mg/哺乳動物体重(kg)の量で被検体に導入される。具体的な実施形態では、必要に応じて用量を投与する。当業者は、本発明の製剤中のノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの濃度に基づいて、この用量に対応するエーロゾルの体積または重量を容易に決定できる。
【0111】
特定の実施形態では、薬剤粒子が確実に肺胞に到達するために、動力学的中央粒子径は5マイクロメートル以下である(Wearley、L. L.、1991、1991、Crit. Rev. in Ther. Drug Carrier Systems 8:333)。
【0112】
送達装置の構築に関して、当該分野で公知の任意の形態のエーロゾル化(液体製剤のスプレー瓶、噴霧化(nebulization)、微粒化(atomization)またはポンプエーロゾル化、および乾燥粉末製剤のエーロゾル化が挙げられるがこれらに限定されない)が、本発明の実施において使用できる。
【0113】
上記したように、本発明の好適な態様では、エーロゾル化のための装置は、定量噴霧器である。定量噴霧器は、投与された場合に、投与に応じた可変的な用量ではなく、特定の用量を提供する。このような定量噴霧器は、液体または乾燥粉末製剤のいずれとも使用できる。定量噴霧器は、当該分野で周知である。
【0114】
ノルケタミンおよびケタミン/ノルケタミンプロドラッグの経粘膜投与
上記したように、本発明は、とりわけノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの経粘膜投与に関する。初期の研究は、鼻腔粘膜または肺吸入、および肺粘膜を介した吸収のいずれかを介したノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの鼻腔投与が、疼痛の治療に非常に有効であることを実証している。その後、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの経粘膜投与の他の経路も、上述したように疼痛の治療に有効であることが発見された。特に、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの経粘膜投与が、低用量の薬剤で有効な薬理動態を可能にし、従って、ボーラスi.v.またはi.m.投薬に伴う情動不安または他の副作用を回避するという驚くべき発見がされた。経粘膜ノルケタミン、および/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグは、例えば上でより詳細に記載したように、突出痛および棘徐痛について特に示唆されている。
【0115】
本発明によれば、任意の投与経粘膜経路(直腸、経口、膣、頬側等が挙げられるがこれらに限定されない)が採用できる。特に、本発明は、以下の経粘膜投与経路に関する。いずれの経粘膜投与経路も、(例えば、上述した)粘膜透過増強剤の使用により向上され得ることが容易に理解されよう。特定の粘膜透過増強剤の選択は、具体的な粘膜の特徴に依存し得る。これらの要因は、以下により詳細に扱っている。
【0116】
坐薬を介した投与
別の態様では、ノルケタミンおよびケタミン/ノルケタミンプロドラッグは、直腸(または膣)挿入に適したマトリックス中に、すなわち坐薬として、製剤化される。本発明は、いかなる特定の坐薬製剤にも限定されない。実際、多くの坐薬製剤が当該分野で公知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、Physician's Desk Reference、および米国薬局方に記載されている。
【0117】
坐薬を介した投与は、特定の状況(例えば、従来および慣習的に好まれるため)、または鼻腔投与が許容可能でないとみなされる場合において好ましい。
【0118】
頬側パッチを介した投与
本発明によれば、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグは、頬の内側を介した投与のための頬側パッチとして製剤化され得る。頬側パッチは、別の形態の経粘膜投与を構成することが理解されよう。頬側パッチ製剤を調製するための技術は、当該分野で公知である(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences(前掲)).
経口-咽頭投与
さらに別の実施形態では、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグは、舌下および経頬側投与を含む経口-咽頭投与のために製剤化され得る。例えば、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグは、米国特許第4,671,953号に記載のもの等の"キャンディー"マトリックス、ガムベース、またはロゼンジに組み込んでもよい。別の実施形態では、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグは、舌下に配置するためのカプセルまたは錠剤形態で製剤化され得る。
【0119】
経口-咽頭投与のためのノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグは、香味マスキング剤またはコーティングと共に製剤化され得ることを特に想定する。経口製剤とともに使用される多くの香味マスキング剤は当該分野で公知であり、本明細書で使用するために選択され得る。
【0120】
経口投与
さらに別の実施形態では、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグは、胃および腸の粘膜を介した経口投与のために製剤化され得る。経口投与のために、薬剤は、胃(酸性環境)もしくは腸のいずれか、または両方における薬剤放出のために設計された担体に入れられて投与され得る。薬剤の経口投与のための多くのカプセル、錠剤およびマトリックスは、当該分野で公知であり、ノルケタミンおよびケタミン/ノルケタミンプロドラッグとの適合性、薬剤放出の所望の点および速度に基づき、通常の技術のある医師により選択され得る。持続放出製剤が好ましい。ケタミンの投与とは対照的に、ノルケタミンおよびケタミン/ノルケタミンプロドラッグの経口投与は、肝臓による初回通過代謝の影響を克服するための他の投与経路と比較して高い投薬量を必要としない。
【0121】
経皮投与
別の実施形態では、上記したように、本発明は、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの経皮投与に関する。経皮投与はまた、上述したように、経粘膜投与が有効である理由の多くと同じ理由のために疼痛の治療のために有効であることが発見されている。特に、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの経皮投与は、低用量の薬剤で有効な薬理動態を可能にし、従って、ボーラスi.v.またはi.m.投薬に伴う情動不安または他の副作用を回避するという驚くべき発見をした。経皮投与は、例えば、上でより詳細に記載したように、突出痛および棘徐痛について特に指示されている。
【0122】
様々な多数の方法が、薬剤の経皮投与について当該分野で公知である(例えば、経皮パッチを介する等)。上記方法および関連する装置は、薬剤の投与の速度および量を制御し、一部は薬剤送達の連続的なモジュレーションを可能にする。経皮パッチは、例えば、1995年4月18日にRolandoらに発行された米国特許第5,407,713号;2004年10月4日にFallonらに発行された米国特許第5,352,456号;1994年8月9日にD'Angeloらに発行された米国特許第5,332,213号;1994年8月9日にSibalisに発行された米国特許第5,336,168号;1994年3月1日にFarhadiehらに発行された米国特許第5,290,561号;1993年10月19日にTuckerらに発行された米国特許第5,254,346号;1992年11月17日にBergerらに発行された米国特許第5,164,189号;1992年11月17日にSibalisに発行された米国特許第5,163,899号;両方とも1992年2月18日にSibalisに発行された米国特許第5,088,977号および同第5,087,240号;1991年4月16日にBeneckeらに発行された米国特許第5,008,110号;ならびに1990年5月1日にSibalisに発行された米国特許第4,921,475号(これらの開示はそれぞれ、参照により本明細書に全体的に援用する)に記載されている。
【0123】
経皮投与経路は、例えば、米国特許第5,164,189号(前掲)、米国特許第5,008,110号(前掲)、および1989年11月7日にArugaらに発行された米国特許第4,879,119号(これらの開示はそれぞれ、参照により本明細書に全体的に援用する)に記載されている増強剤等の皮膚透過増強剤の使用により向上され得ることが容易に理解されよう。
【0124】
追加の治療的作用薬または薬剤
上記したように、本発明は、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグと、治療上有効量の別の薬剤(特に、ベンゾジアゼピンまたは麻酔性鎮痛剤)との組合せ投与を想定する。
【0125】
ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグと、ベンゾジアゼピンとの同時投与は、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの高用量投与による可能性のある情動不安性または幻覚誘発性影響に対抗することが示されている。従って、ベンゾジアゼピンの治療上有効量は、情動不安を阻害するのに有効な量である。さらなる実施形態では、同様に患者を落ち着かせるのに有効な量のベンゾジアゼピンも投与され得る。
【0126】
ケタミンの緩やかな副作用、例えば、情動不安および/または幻覚誘発(場合により"ケタミン夢"とも呼ばれる)が、50 mgを上回る用量のケタミンの投与により生じ得るが、通常は、1kg当たり100 mgを上回る用量のケタミンを要する。本発明のひとつの利点は、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの送達により、鎮痛に有効なレベルで、ただし情動不安を生じるレベルよりは低い用量に制御できることである。別の利点は、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグが、ケタミンよりも有害な精神的影響の傾向が低いことである。しかし、個体が、(特に疼痛の急性発作に応答して)過量摂取する可能性はある。従って、ベンゾジアゼピンの同時投与が、特定の状況において示唆され得る。
【0127】
本発明に従って投与され得るベンゾジアゼピンとしては、フルラゼパム(Dalmane)、ジアゼパム(Valium)、および好ましくはVersedが挙げられるがこれらに限定されない。好適な態様では、本発明の経粘膜製剤は、それぞれ治療上有効量で存在するケタミンおよびベンゾジアゼピンを含む。
【0128】
特に突出痛または棘徐痛症状に対して有効な経粘膜、経皮または経口経路を介して単独で投与されるノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの有益な効果に加えて、本発明は、慢性疼痛の治療に使用する治療上有効量の麻酔性鎮痛剤と併用する、経粘膜、経皮および経口投与に加えて非経口投与を含む任意の経路を介する薬剤の投与に関する。麻酔性薬剤の治療上有効量は、疼痛を緩和するのに有効な量である。このような麻酔剤としては、フェンタニル、メペリジン(Demoral)、モルヒネおよびその麻酔性類似体および誘導体(ヒドロモルヒネ(Dilaudid)等)等が挙げられるがこれらに限定されない。好適な態様では、本発明の経粘膜製剤は、それぞれ治療上有効量で存在するノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグおよび麻酔剤を含む。従って、本発明は、他の疼痛療法(特に薬剤投与、とりわけ麻酔性鎮痛剤の使用)との相乗効果のために、ノルケタミンまたはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの投与のいずれかの特定の様式または経路に限定されない。従って、医薬の必要性または優先がある場合、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの非経口投与を行って、他の疼痛療法と相乗的に疼痛を治療できる。
【0129】
代替的な疼痛療法としては、カイロプラクティック医術、鍼療法、バイオフィードバックおよび他の代替的療法等(ただし、これらに限定されない)の非薬学的治療が挙げられる。
【0130】
ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグ投与の相乗的効果は、他の疼痛療法に対する依存性の低さ、もしくは直面している疼痛のレベルの低減、または両方によって反映されることが好ましい。本発明のこの態様は、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグの投与により、時間経過と共に麻酔性鎮痛剤が減らせるという驚くべき発見に基づいている。時間経過に伴うこのような減少は、寛容を越えるために徐々に鎮痛剤、特に麻酔性鎮痛剤の用量を増やす必要のある疼痛治療の通常の過程に反する。
【0131】
通常、疼痛薬剤の組合せは、良くても追加的または補足的な結果しかもたらさない。従って、疼痛軽減のレベルを譲歩することなく、疼痛薬剤のレベルの低減を可能にすることは、本発明の有意な利点である。
【0132】
非経口投与とは、一般的に静脈内注射を指し、細動脈内(intra-arteriole)、筋内、皮内、皮下、腹腔内、心室内および頭蓋内投与も含むがこれらに限定されない。
【0133】
別の実施形態では、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグは、小胞、特にリポソームに入れられて送達され得る(Langer、1990、Science 249:1527-1533;Treatら、1989、Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer、Lopez-BeresteinおよびFidler(編)、Liss:New York、pp. 353-365に掲載;Lopez-Berestein、同書、pp. 317-327を参照;同書を全般的に参照)。その全身性副作用を低減するために、これは、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグを導入する好ましい方法であり得る。
【0134】
さらに別の実施形態では、ノルケタミンおよび/またはケタミン/ノルケタミンプロドラッグは、制御放出系にて送達され得る。例えば、薬剤は、静脈内注入、移植可能浸透ポンプ、経皮パッチ、リポソームまたは持続放出投与の他の様式を使用して投与され得る。一実施形態では、ポンプが使用できる(Langer、前掲;Sefton、1987、CRC :201;Buchwaldら、1980、Surgery 88:507;Saudekら、1989、N. Engl. J. Med. 321:574を参照)。別の実施形態では、高分子材料が使用できる(Medical Applications of Controlled Release、LangerおよびWise(編)、CRC Pres.、Boca Raton、Fla.(1974);Controlled Drug Bioavailability、Drug Product Design and Performance、SmolenおよびBall(編)、Wiley、New York (1984);RangerおよびPeppas、1983、:61を参照;Levyら、1985、Science 228:190;Duringら、1989、Ann. Neurol. 25:351;Howardら、1989、J. Neurosurg. 71:105も参照)。
【0135】
他の制御放出系は、Langer(1990、Science 249:1527-1533)によるレビューで議論されている。
【0136】
本発明は、本明細書に記載した具体的な実施形態により範囲を限定されるものではない。実際、本明細書に記載したもの以外の本発明の様々な改変は、上記記載および添付の図面から、当業者には明らかであろう。このような改変は、請求の範囲内にあることを意図する。
【実施例】
【0137】
(実施例1)
40歳、約60 kgの体重の女性患者は、難治性膀胱疼痛(間質性膀胱炎(interstitial ceptitis))を示し、これは既に診断されている。この患者における疼痛対策は、3時間毎の100 mgのDemoral;4時間毎の2〜4 mgのDilaudid;1日当たり30 mgのDalmane;Duralgesicパッチ(フェンタニル経皮パッチ);尿路鎮痛剤であるピリジウム(Pyridium)(フェナロピリジン(phenaropyridine)HCl)での膀胱洗浄;ならびにベラドンナおよびアヘン剤坐薬から構成される。疼痛薬剤に加えて、患者は、胃腸負担を軽減するためにZanaxおよびTagametを服用し、嘔吐を処置するためにCompazine(抗吐剤)を服用している。この患者における胃腸負担および嘔吐は、疼痛薬剤に起因する。
【0138】
この患者が使用する疼痛薬剤の投薬量および幅広さにも関わらず、満足な疼痛処置は得られていない。
【0139】
診断的仙骨前または腸骨下腹神経ブロックを、この患者に行って疼痛を緩和した。残念なことに、このブロックの効果は一時的で、このブロックは有意な運動の衰弱を伴う。ブロックが効かなくなった後、患者は、日常的な活動のほとんどが疲労を伴い、働くことができないと述べた。
【0140】
ノルケタミン(10 mg/cc)ドリップを1時間、40 mgのノルケタミン合計用量でi.v.投与した。これを、患者によって主観的に評価してもらったところ、2倍の(#20から約#10-12への)疼痛レベルの低下をもたらした。ノルケタミン注入を中断してから約1時間後、患者は、疼痛のレベルが約#15に高まり、その後すぐに以前のレベルまで戻ったことを報告した。患者は、効果のない他の疼痛薬剤を取り続けている。
【0141】
ノルケタミンi.v.チャレンジの4日後、100 mg/mlノルケタミン溶液を含む5 ml瓶を準備した。瓶からの1回のスプレーは、約1/6 mlの溶液(すなわち、16 mgのノルケタミン)を送達する。患者は、重度な疼痛に対して瓶から1〜2回スプレーして自己投与することを指示される。外来患者を原則とした持続可能な疼痛薬剤を提供するために鼻腔スプレー瓶を調製する。
【0142】
患者は、ノルケタミンの鼻腔投与により顕著な疼痛処置を実証した。鼻腔ノルケタミンは、突出痛の制御に特に有効である。患者は、他の疼痛薬剤の量を減らした。
【0143】
(実施例2)
ノルケタミンプロドラッグについての加水分解調査プロトコール
安定性の調査を、ハンクス緩衝液(pH 7.4)およびヒト血漿の両方において、48時間にわたり行った(n=3)。
【0144】
分析的方法
アセトニトリル中の1 mg/mlのノルケタミンエステルおよびノルケタミンのストック溶液から、アセトニトリルを含む50〜1000 ng/mlの濃度範囲にある一連の標準溶液を調製する。ハンクス緩衝液(300μL)および血漿(200μL)に、10μLの異なる濃度の両方の薬剤溶液を混ぜる。ハンクス緩衝液サンプルを、30秒間ボルテックスし、遠心分離(12000 rpmにて20分間)し、上清をHPLCバイアルに移す。
【0145】
血漿サンプルの場合、750μLのアセトニトリルを添加し、30秒間ボルテックスし、遠心分離させ(12000 rpmにて20分間)、上清を除去する。上清を37℃にて窒素下で蒸発させ、400μLアセトニトリルで再構築し、HPLCバイアルに移す。HPLC系は、Perkin Elmerシリーズ200オートサンプラーおよびポンプ、ならびにTurbochrome 6.1ソフトウェアを有する785A UV/VIS検出器から構成される。逆相220×4.6mm Brownlee Spheri 5 VL C-18 5μカラムおよびガードカラムを使用する。検出器は、215 nmの波長に設定する。移動相は、0.1%トリフルオロ酢酸(トリエチルアミン+0.1%ナトリウムヘプタンスルホネートおよび5%アセトニトリルでpH 3まで調節):アセトニトリル(25:75)で構成され、流速は1.5 ml/分である。注射用量は100μLで、作用時間は10分間である。
【0146】
ノルケタミンエステルは、血漿サンプルにおいてノルケタミンに加水分解される。
【0147】
本発明において様々な文献を引用しているが、それらの開示は参照により本明細書に全体的に援用される。
【0148】
本発明は、その具体的な実施形態に関連して記載してきたが、さらなる改変が可能なこと、および本出願が請求の範囲に記載の本発明のあらゆる改変、使用または変更を網羅することが理解されよう。概して、本発明の原理は、本発明が属する技術分野の公知または慣習的な実施の範囲内にあって、上述および請求の範囲に示す本質的な特徴に適応する本開示からの逸脱を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1または式2:
【化1】


ここで、R3およびR4は、フェニル、アリール、アザアリール、アルキル、分岐アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニルであり;R5 = OHまたはSH;R6 = アルキル、分岐アルキル;である]
の化合物;または
式1および式2の化合物のラセミ混合物(ここで、R1= H、およびR2はHを含むR2について上記列挙した任意の基である);ならびに
それらの薬学上許容可能な塩および溶媒和物を、有効量でそれを必要とする被検体に投与することを含む、被検体における疼痛を治療する方法。
【請求項2】
前記化合物が、(±)ノルケタミン、S-ノルケタミン、R-ノルケタミンもしくはそれらの任意の組み合わせ、またはそれらの任意の薬学上許容可能な塩もしくは溶媒和物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物が、(±)ノルケタミンのプロドラッグ、(±)ケタミンのプロドラッグ、S-ケタミンのプロドラッグ、R-ケタミンのプロドラッグ、S-ノルケタミンのプロドラッグ、R-ノルケタミンのプロドラッグもしくはそれらの任意の組み合わせ、またはそれらの任意の薬学上許容可能な塩もしくは溶媒和物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物が:
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸エチルエステル;
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸イソプロピルエステル;
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸ブチルエステル;
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸フェニルエステル;
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸ベンジルエステル;
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシルアミノ]-酢酸エチルエステル;
もしくはそれらの任意の組み合わせ、またはそれらの任意の薬学上許容可能な塩もしくは溶媒和物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物の有効量は、麻酔を誘引するのに使用する量の約1%〜約50%である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物の有効量は、麻酔を誘引するのに使用する量の約5%〜約40%である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物の有効量は、麻酔を誘引するのに使用する量の約10%〜約20%である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物の有効量は、約0.01〜約20 mg/体重(kg)である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物の有効量は、約0.05〜約8 mg/体重(kg)である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記疼痛は、突出痛、またはワインドアップ(wind-up)に伴う疼痛である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記疼痛は、陣痛および/または出産に伴う疼痛である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記疼痛は、慢性疼痛または神経障害性疼痛である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記有効量の化合物は、24時間にわたり投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記有効量の化合物は、疼痛を緩和するのに有効な麻酔性鎮痛剤と共に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
麻酔性鎮痛剤の用量を減らすことをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
外来患者を原則として、経粘膜、経皮、鼻腔、経口もしくは肺経路、またはそれらの任意の組み合わせの1つ以上を介して、疼痛を緩和するのに有効な請求項1の化合物を、約0.01〜約20 mg/体重(kg)で自己投与することを含む、被検体において疼痛を自己治療する方法。
【請求項17】
前記化合物の有効量は、情動不安を誘引するレベルより低くなるように医師または医療提供者により決定される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記化合物が、(±)ノルケタミン、S-ノルケタミン、R-ノルケタミンもしくはそれらの任意の組み合わせ、またはそれらの任意の薬学上許容可能な塩もしくは溶媒和物である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記化合物が、(±)ノルケタミンのプロドラッグ、(±)ケタミンのプロドラッグ、S-ケタミンのプロドラッグ、R-ケタミンのプロドラッグ、S-ノルケタミンのプロドラッグ、R-ノルケタミンのプロドラッグもしくはそれらの任意の組み合わせ、またはそれらの任意の薬学上許容可能な塩もしくは溶媒和物である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物は:
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸エチルエステル;
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸イソプロピルエステル;
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸ブチルエステル;
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸フェニルエステル;
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸ベンジルエステル;
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシルアミノ]-酢酸エチルエステル;
もしくはそれらの任意の組み合わせ、またはそれらの任意の薬学上許容可能な塩もしくは溶媒和物である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記化合物の有効量は、麻酔を誘引するのに使用する量の約1%〜約50%である、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記化合物の有効量は、麻酔を誘引するのに使用する量の約5%〜約40%である、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記化合物の有効量は、麻酔を誘引するのに使用する量の約10%〜約20%である、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記化合物の有効量は、約0.01〜約20 mg/体重(kg)である、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記化合物の有効量は、約0.05〜約8 mg/体重(kg)である、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記疼痛は、突出痛、またはワインドアップに伴う疼痛である、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記疼痛は、陣痛および/または出産に伴う疼痛である、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
前記疼痛は、慢性疼痛または神経障害性疼痛である、請求項16に記載の方法。
【請求項29】
前記有効量の化合物は、24時間にわたり投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項30】
前記有効量の化合物は、疼痛を緩和するのに有効な麻酔性鎮痛剤と共に投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項31】
麻酔性鎮痛剤の用量を減らすことをさらに含む、請求項29に記載の方法.
【請求項32】
外来患者を原則とした請求項1の化合物の患者による自己投与のための装置であって、該化合物および薬学上許容可能なビヒクルの製剤を含む鼻腔アプリケーターを含み、疼痛を緩和するのに有効な用量で該化合物を含む量の該製剤を計量して分散する前記装置。
【請求項33】
前記化合物が、(±)ノルケタミン、S-ノルケタミン、R-ノルケタミンもしくはそれらの任意の組み合わせ、またはそれらの任意の薬学上許容可能な塩もしくは溶媒和物である、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記化合物が、(±)ノルケタミンのプロドラッグ、(±)ケタミンのプロドラッグ、S-ケタミンのプロドラッグ、R-ケタミンのプロドラッグ、S-ノルケタミンのプロドラッグ、R-ノルケタミンのプロドラッグもしくはそれらの任意の組み合わせ、またはそれらの任意の薬学上許容可能な塩もしくは溶媒和物である、請求項32に記載の装置。
【請求項35】
前記化合物が:
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸エチルエステル;
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸イソプロピルエステル;
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸ブチルエステル;
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸フェニルエステル;
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸ベンジルエステル;
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシルアミノ]-酢酸エチルエステル;
もしくはそれらの任意の組み合わせ、またはそれらの任意の薬学上許容可能な塩もしくは溶媒和物である、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記化合物の有効量は、麻酔を誘引するのに使用する量の約1%〜約50%である、請求項32に記載の装置。
【請求項37】
前記化合物の有効量は、麻酔を誘引するのに使用する量の約5%〜約40%である、請求項32に記載の装置。
【請求項38】
前記化合物の有効量は、麻酔を誘引するのに使用する量の約10%〜約20%である、請求項32に記載の装置。
【請求項39】
前記化合物の有効量は、約0.01〜約20 mg/体重(kg)である、請求項32に記載の装置。
【請求項40】
前記化合物の有効量は、約0.05〜約8 mg/体重(kg)である、請求項32に記載の装置。
【請求項41】
前記疼痛は、突出痛、またはワインドアップに伴う疼痛である、請求項32に記載の装置。
【請求項42】
前記疼痛は、陣痛および/または出産に伴う疼痛である、請求項32に記載の装置。
【請求項43】
前記疼痛は、慢性疼痛または神経障害性疼痛である、請求項32に記載の装置。
【請求項44】
前記有効量の化合物は、24時間にわたり投与される、請求項32に記載の装置。
【請求項45】
前記有効量の化合物は、疼痛を緩和するのに有効な麻酔性鎮痛剤と共に投与される、請求項32に記載の装置。
【請求項46】
前記麻酔性鎮痛剤の用量を減らすことをさらに含む、請求項45に記載の装置。
【請求項47】
前記ビヒクルが分散剤を含む、請求項32に記載の装置。
【請求項48】
前記分散剤が界面活性剤である、請求項47に記載の装置。
【請求項49】
前記製剤が乾燥粉末製剤である、請求項32に記載の装置。
【請求項50】
前記化合物は、微粉化粉末として存在し、充填剤をさらに含む、請求項49に記載の装置。
【請求項51】
前記充填剤が、乳糖、ソルビトール、ショ糖およびマンニトールからなる群より選択される、請求項50に記載の装置。
【請求項52】
前記製剤が、薬学上許容可能な希釈剤をさらに含む液体製剤である、請求項32に記載の装置。
【請求項53】
前記希釈剤が、滅菌水、食塩水、緩衝化食塩水およびデキストロース溶液からなる群より選択される、請求項52に記載の装置。
【請求項54】
外来患者を原則とした請求項1の化合物の患者による自己投与のための装置であって、該化合物および薬学上許容可能な経皮担体の製剤を含む経皮パッチを含み、疼痛を緩和するのに有効な量で該製剤を計量して分散する前記装置。
【請求項55】
前記化合物が、(±)ノルケタミン、S-ノルケタミン、R-ノルケタミンもしくはそれらの任意の組み合わせ、またはそれらの任意の薬学上許容可能な塩もしくは溶媒和物である、請求項54に記載の装置。
【請求項56】
前記化合物が、(±)ノルケタミンのプロドラッグ、(±)ケタミンのプロドラッグ、S-ケタミンのプロドラッグ、R-ケタミンのプロドラッグ、S-ノルケタミンのプロドラッグ、R-ノルケタミンのプロドラッグもしくはそれらの任意の組み合わせ、またはそれらの任意の薬学上許容可能な塩もしくは溶媒和物である、請求項54に記載の装置。
【請求項57】
前記化合物が:
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸エチルエステル;
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸イソプロピルエステル;
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸ブチルエステル;
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸フェニルエステル;
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸ベンジルエステル;
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシルアミノ]-酢酸エチルエステル;
もしくはそれらの任意の組み合わせ、またはそれらの任意の薬学上許容可能な塩もしくは溶媒和物である、請求項54に記載の装置。
【請求項58】
前記化合物の有効量は、麻酔を誘引するのに使用する量の約1%〜約50%である、請求項54に記載の装置。
【請求項59】
前記化合物の有効量は、麻酔を誘引するのに使用する量の約5%〜約40%である、請求項54に記載の装置。
【請求項60】
前記化合物の有効量は、麻酔を誘引するのに使用する量の約10%〜約20%である、請求項54に記載の装置。
【請求項61】
前記化合物の有効量は、約0.01〜約20 mg/体重(kg)である、請求項54に記載の装置。
【請求項62】
前記化合物の有効量は、約0.05〜約8 mg/体重(kg)である、請求項54に記載の装置。
【請求項63】
前記疼痛は、突出痛、またはワインドアップに伴う疼痛である、請求項54に記載の装置。
【請求項64】
前記疼痛は、陣痛および/または出産に伴う疼痛である、請求項54に記載の装置。
【請求項65】
前記疼痛は、慢性疼痛または神経障害性疼痛である、請求項54に記載の装置。
【請求項66】
前記有効量の化合物は、24時間にわたり投与される、請求項54に記載の装置。
【請求項67】
前記有効量の化合物は、疼痛を緩和するのに有効な麻酔性鎮痛剤と共に投与される、請求項54に記載の装置。
【請求項68】
麻酔性鎮痛剤の用量を減らすことをさらに含む、請求項67に記載の装置。
【請求項69】
式1または式2
【化2】


ここで、R3およびR4は、フェニル、アリール、アザアリール、アルキル、分岐アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニルであり;R5 = OHもしくはSH;R6 = アルキル、分岐アルキル;である]
の化合物;または
式1および式2の化合物のラセミ混合物(ここで、R1= H、およびR2はHを除くR2について上記列挙した任意の基である);ならびに
それらの薬学上許容可能な塩および溶媒和物。
【請求項70】
前記化合物が:
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸エチルエステル;
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸イソプロピルエステル;
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸ブチルエステル;
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸フェニルエステル;
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシル]-カルバミン酸ベンジルエステル;
[1-(2-クロロ-フェニル)-2-オキソ-シクロヘキシルアミノ]-酢酸エチルエステル;
またはそれらの任意の薬学上許容可能な塩もしくは溶媒和物である、請求項54に記載の化合物。

【公表番号】特表2006−510618(P2006−510618A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553852(P2004−553852)
【出願日】平成15年11月18日(2003.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2003/036789
【国際公開番号】WO2004/045601
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(505183314)ヤウポン セラピューティクス,インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】