説明

ハイブリッド建設機械の制御装置

【課題】 サブポンプの出力を相対的に小さくしたとしても作業性が安定し、しかも、過放電を防止できるハイブリッド建設機械の制御装置を提供することである。
【解決手段】 コントローラCは、上記バッテリー26の蓄電量がしきい値を下回ったかどうかを判定する機能と、蓄電量がしきい値を下回ったとき、上記アシスト修正係数Kaに基づいて上記アシスト力制御機構を制御してサブポンプSPのアシスト力を小さくする機能と、蓄電量がしきい値を下回ったとき、上記エンジン回転数修正係数Keに基づいてエンジン回転数制御手段ECを制御し、上記エンジン回転数を大きくしてメインポンプMP1,MP2の吐出量を相対的に多くする機能とを備え、サブポンプのアシスト力が小さくなった分、エンジンの回転数を上げてメインポンプの出力を上昇させる構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バッテリーの電力で回転する電動モータを備え、この電動モータの動力を利用するハイブリッド建設機械の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリーの電力で回転する電動モータを備えたハイブリッド建設機械の制御装置として特許文献1に記載されたものが従来から知られている。
この従来の装置は、バッテリーの電力で回転する電動モータの動力でサブポンプを回転し、このサブポンプの吐出油をメインポンプに合流させて、アシスト力を発揮させるようにしている。
そして、バッテリーの蓄電量が低下したとき、サブポンプのアシスト力を相対的に小さくするとともに、エンジンの回転数を上げてバッテリーの充電を優先させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−287344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにした従来の装置では、バッテリーの蓄電量が低下したとき、サブポンプのアシスト力を相対的に小さくするとともに、エンジンの回転数をアップさせて充電を優先させるようにしているが、サブポンプのアシスト出力が減少した分の出力をまかなう構成になっていなかった。
【0005】
上記のようにサブポンプのアシスト力を小さくしたときに、そのアシスト力の減少分をまかなえないと、継続している作業においてその作業性が変化し、オペレータに違和感を与えるという問題があった。
【0006】
この発明の目的は、サブポンプの出力を相対的に小さくしたとしても作業性が安定し、しかも、過放電を防止できるハイブリッド建設機械の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、可変容量型のメインポンプと、このメインポンプを駆動するエンジンと、このエンジンの回転を制御するエンジン回転数制御手段と、発電機で発電された電力を蓄電するバッテリーと、メインポンプの吐出側に接続されるとともにメインポンプをアシストする可変容量型のサブポンプと、このサブポンプが指令されたアシスト出力を出力するように制御するアシスト制御機構と、コントローラとを備えている。
【0008】
そして、上記コントローラは、エンジン回転数制御手段およびアシスト制御機構に接続している。また、このコントローラには、バッテリーの蓄電量がしきい値を下回ったとき上記アシスト制御機構を制御してサブポンプのアシスト出力を減少させるためのアシスト修正係数の係数テーブルと、バッテリーの蓄電量が上記しきい値を下回ったときエンジン回転数制御手段を制御してエンジンの回転数を上げるためのエンジン回転数修正係数の係数テーブルと、バッテリーの蓄電量に対するしきい値とを記憶している。
【0009】
さらに、コントローラは、上記バッテリーの蓄電量が上記しきい値を下回ったかどうかを判定する機能と、蓄電量がしきい値を下回ったとき、上記アシスト修正係数に基づいて上記アシスト制御機構を制御してサブポンプのアシスト出力を小さくする機能と、蓄電量がしきい値を下回ったとき、上記エンジン回転数修正係数に基づいてエンジン回転数制御手段を制御し、上記エンジン回転数を大きくしてメインポンプの吐出量を相対的に多くする機能とを備えている。そして、サブポンプのアシスト出力が小さくなった分、エンジンの回転数を上げてメインポンプの出力を上昇させる構成にしている。
【0010】
第2の発明は、上記コントローラに記憶された上記アシスト修正係数は蓄電量が十分ある時には1とし、蓄電量が上記しきい値を下回ったとき、上記アシスト修正係数が1以下になるように設定されている。
【0011】
第3の発明は、コントローラが、バッテリーの蓄電量に対する第1しきい値と第2しきい値とを記憶し、バッテリーの蓄電量が第1しきい値を下回ったとき、アシスト修正係数に基づいてサブポンプのアシスト出力を小さくする一方、バッテリーの蓄電量が第2しきい値に到達したとき、アシスト修正係数に基づいてサブポンプのアシスト出力をゼロにする機能を備えている。
【0012】
第4の発明は、上記メインポンプに、複数の操作弁を備えた回路系統を接続するとともに、この回路系統のすべての操作弁が中立位置に保たれているとき、中立流路に発生するパイロット圧の作用で、メインポンプの吐出量をスタンバイ流量に保つ構成にし、このメインポンプには発電機を回す油圧モータを接続する一方、上記コントローラには、バッテリーの蓄電量が上記しきい値を下回ったとき上記スタンバイ回生動力を多くするスタンバイ回生修正係数のテーブルを記憶し、バッテリーの蓄電量が上記しきい値を下回り、かつ、上記すべての操作弁が中立位置にあるとき、コントローラは、スタンバイ回生修正係数に基づいてエンジン回転数制御手段を制御してエンジン回転数を上げ、スタンバイ回生動力を相対的に多くする構成にしている。
【発明の効果】
【0013】
第1〜4の発明によれば、サブポンプのアシスト出力が小さくなった分、エンジンの回転数を上げてメインポンプの出力を上昇させる構成にしたので、サブポンプの出力を相対的に小さくしたとしてもその作業性を損なうようなことはない。
また、バッテリーの蓄電量に応じて修正係数をあらかじめテーブル化して記憶させているので、その修正係数に基づいてサブポンプのアシスト出力やエンジン回転数の制御が簡単になるとともに、コントローラの調整やメンテナンスが簡単になる。
【0014】
さらに、第3の発明によれば、バッテリーの蓄電量が第2しきい値になれば、サブポンプのアシスト出力もゼロにするので、バッテリーが過放電にはならない。特に、リチウムイオンバッテリーは、過放電によって大きなダメージを受けるが、この発明ではリチウムイオンバッテリーを用いても、そのような問題は発生しない。
さらに、第4の発明によれば、スタンバイ回生エネルギーを多くできるとともに、修正係数に応じて制御を可能にしたので、バッテリーにすばやく充電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態の回路図である。
【図2】実施形態の修正テーブルを示す説明図である。
【図3】実施形態のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1はパワーショベルの回路図で、図示していない回転数センサーを備えたエンジンEで駆動する可変容量型の第1,2メインポンプMP1,MP2を設けているが、これら第1,2メインポンプMP1、MP2は同軸回転するものである。なお、図中符号1はエンジンEに設けたジェネレータで、エンジンEの余力を利用して発電機能を発揮するものである。また、このエンジンEはエンジン回転数制御手段ECの出力信号でその回転数が制御できるようにしている。
【0017】
上記第1メインポンプMP1は第1回路系統S1に接続しているが、この第1回路系統S1は、その上流側から順に、旋回モータRMを制御する操作弁2、図示していないアームシリンダを制御する操作弁3、ブームシリンダBCを制御するブーム2速用の操作弁4、図示していない予備用アタッチメントを制御する操作弁5および図示していない左走行用である第1走行用モータを制御する操作弁6を接続している。
【0018】
上記各操作弁2〜6のそれぞれは、中立流路7およびパラレル通路8を介して第1メインポンプMP1に接続している。
上記中立流路7であって、第1走行モータ用操作弁6の下流側にはパイロット圧を生成するための絞り9を設けている。この絞り9はそこを流れる流量が多ければ、その上流側に高いパイロット圧を生成し、その流量が少なければ低いパイロット圧を生成するものである。
【0019】
また、上記中立流路7は、上記操作弁2〜6のすべてが中立位置もしくは中立位置近傍にあるとき、第1メインポンプMP1から吐出された油の全部または一部を、絞り9を介してタンクTに導くが、このときには絞り9を通過する流量も多くなるので、上記したように高いパイロット圧が生成される。
【0020】
一方、上記操作弁2〜6がフルストロークの状態で切り換えられると、中立流路7が閉ざされて流体の流通がなくなる。したがって、この場合には、絞り9を流れる流量がほとんどなくなり、パイロット圧はゼロを保つことになる。
ただし、操作弁2〜6の操作量によっては、ポンプ吐出量の一部がアクチュエータに導かれ、一部が中立流路7からタンクに導かれることになるので、絞り9は、中立流路7に流れる流量に応じたパイロット圧を生成する。言い換えると、絞り9は、操作弁2〜6の操作量に応じたパイロット圧を生成することになる。
【0021】
上記のようにした中立流路7であって、最下流の操作弁6と上記絞り9との間には、電磁切換制御弁10を設けているが、この電磁切換制御弁10はそのソレノイドをコントローラCに接続している。
【0022】
上記のようにした電磁切換制御弁10は、そのソレノイドが非励磁のとき、スプリングのばね力の作用で図示の全開位置を保ち、ソレノイドが励磁したとき、上記スプリングのばね力に抗して絞り位置に切り換わるようにしている。そして、電磁切換制御弁10が上記絞り位置に切り換わったときの絞り開度は、上記絞り9の開度よりも小さくなるようにしている。
【0023】
また、上記中立流路7であって、操作弁6と電磁切換制御弁10との間にはパイロット流路11を接続しているが、このパイロット流路11は、第1メインポンプMP1の傾転角を制御するレギュレータ12に接続している。
上記レギュレータ12は、パイロット流路11のパイロット圧と逆比例して第1メインポンプMP1の傾転角を制御して、その1回転当たりの押し除け量を制御する。したがって、操作弁2〜6をフルストロークして中立流路7の流れがなくなって、パイロット圧がゼロになれば、第1メインポンプMP1の傾転角が最大になり、その1回転当たりの押し除け量が最大になる。
【0024】
上記のようにしたパイロット流路11には、減圧弁R1とパイロット流路切換電磁弁PL1とを並列に設けている。つまり、パイロット流路切換電磁弁PL1は、上記減圧弁R1を迂回するバイパス流路に設けている。このようにしたパイロット流路切換電磁弁PL1は、そのソレノイドが非励磁のときに開位置を保ち、中立流路7からパイロット流路11に至る過程で、上記減圧弁R1を迂回させる。また、パイロット流路切換電磁弁PL1は、そのソレノイドが励磁したとき閉位置を保ち、減圧弁R1を介してのみ中立流路7とパイロット流路11とを連通させる。
【0025】
そして、操作弁2〜6のすべてが中立位置にあって、電磁切換制御弁10が全開位置にあるときに、減圧弁R1を迂回して中立流路7とパイロット流路11とが連通すると、絞り9の上流側の圧力がパイロット圧として直接レギュレータ12に作用する。このように操作弁2〜6のすべてが中立位置にあるときに、絞り9の上流側の圧力がレギュレータ12に直接作用すると、第1メインポンプMP1は、最小傾転角を維持してスタンバイ流量を確保する。
【0026】
一方、パイロット流路切換電磁弁PL1が閉位置に切り換わって、中立流路7とパイロット流路11とが減圧弁R1を介して連通すれば、レギュレータ12に導かれるパイロット圧は、この減圧弁R1で減圧された圧力になる。言い換えると、レギュレータ12に作用するパイロット圧は、パイロット流路切換電磁弁PL1が開位置にあるときよりも、減圧弁R1で減圧された分だけ低くなる。
【0027】
したがって、すべての操作弁2〜6が中立位置にあってパイロット流路切換電磁弁PL1が開位置にあるときよりも、第1メインポンプMP1の傾転角が大きくなり、その1回転当たりの押し除け量が相対的に多くなる。
【0028】
さらに、上記パイロット流路11には第1圧力センサー13を接続するとともに、この第1圧力センサー13で検出した圧力信号をコントローラCに伝達するようにしている。そして、パイロット流路11のパイロット圧は、操作弁2〜6の操作量に応じて変化するので、第1圧力センサー13が検出する圧力信号は、第1回路系統S1の要求流量に応じて変化することになる。
【0029】
また、コントローラCは、上記第1圧力センサー13が検出する圧力信号に応じて、操作弁2〜6がすべて中立位置にあるかどうかを検出することができる。つまり、コントローラCは、操作弁2〜6がすべて中立位置にあるときの絞り9の上流に発生する圧力を設定圧としてあらかじめ記憶している。したがって、第1圧力センサー13の圧力信号が設定圧に達したとき、コントローラCは、当該操作弁のすべてが中立位置にあり、それに接続されたアクチュエータが非作業の状態にあると判断することができる。
【0030】
なお、上記設定圧を検出する第1圧力センサー13が操作弁2〜6の操作状況を検出する操作状況検出手段を構成することになる。
ただし、操作状況検出手段は、上記圧力センサーに限定されるものではない。たとえば、各操作弁2〜6に中立位置を検出するセンサーを設け、このセンサーをコントローラCに接続すれば、上記中立位置を検出するセンサーが操作状況検出手段となる。
【0031】
一方、上記第2メインポンプMP2は第2回路系統S2に接続しているが、この第2回路系統S2は、その上流側から順に、図示していない右走行用である第2走行用モータを制御する操作弁14、図示していないバケットシリンダを制御する操作弁15、ブームシリンダBCを制御する操作弁16および図示していないアームシリンダを制御するアーム2速用の操作弁17を接続している。なお、上記操作弁16には、その操作方向および操作量を検出するセンサーを設けるとともに、その操作信号をコントローラCに伝達するようにしている。
【0032】
上記各操作弁14〜17は、中立流路18を介して第2メインポンプMP2に接続するとともに、操作弁15および操作弁16はパラレル通路19を介して第2メインポンプMP2に接続している。
上記中立流路18であって、操作弁17の下流側には絞り20を設けているが、この絞り20は、第1回路系統S1の絞り9と全く同様に機能するものである。
【0033】
そして、上記中立流路18であって、最下流の操作弁17と上記絞り20との間には、電磁切換制御弁21を設けているが、この電磁切換制御弁21も第1回路系統S1側の電磁切換制御弁10と同じ構成にしている。
【0034】
また、上記中立流路18であって、操作弁17と電磁切換制御弁21との間にはパイロット流路22を接続しているが、このパイロット流路22は、第2メインポンプMP2の傾転角を制御するレギュレータ23に接続している。
【0035】
上記のようにしたパイロット流路22には、減圧弁R2とパイロット流路切換電磁弁PL2とを並列に設けている。つまり、パイロット流路切換電磁弁PL2は、上記減圧弁R2を迂回するバイパス流路に設けている。
なお、上記レギュレータ23、減圧弁R2およびパイロット流路切換電磁弁PL2も、第1回路系統S1側のレギュレータ12、減圧弁R1およびパイロット流路切換電磁弁PL1と同じ構成にするとともに、それらの作動も同じである。したがって、第2回路系統S2に対する電磁切換制御弁21、レギュレータ23、減圧弁R2およびパイロット流路切換電磁弁PL2の作動の説明は、上記第1回路系統S1側の電磁切換制御弁10、レギュレータ12、減圧弁R1およびパイロット流路切換電磁弁PL1の説明を援用する。
【0036】
上記のようにした第1,2メインポンプMP1,MP2のそれぞれには、流路55,56を介して電磁弁58,59を接続している。なお、上記流路55,56は、第1,2回路系統S1,S2の上流側において第1,2メインポンプMP1,MP2に接続している。
また、上記電磁弁58,59は、ソレノイドが非励磁状態にあるとき図示の閉位置を保ち、ソレノイドを励磁したとき開位置を保つとともに、それらソレノイドをコントローラCに接続している。
【0037】
さらに、これら電磁弁58,59は合流通路57およびチェック弁60を介して油圧モータMに接続している。この油圧モータMは、発電機兼用の電動モータMGと連係して回転するとともに、この発電機兼用の電動モータMGの回転で発電された電力はインバータIを介してバッテリー26にチャージされる。
なお、上記油圧モータMと発電機兼用の電動モータMGとは、それらを直結してもよいし、図示していない減速機を介して連係してもよい。
【0038】
上記のようにした実施形態において、第1,2回路系統S1,S2のいずれかの操作弁、例えば第1回路系統S1のいずれかの操作弁を切り換えて、当該操作弁に接続したアクチュエータを作動させると、当該操作弁の操作量に応じて中立流路7に流れる流量が変化する。そして、中立流路7に流れる流量に応じて、パイロット圧発生用の絞り9の上流側に発生するパイロット圧が変化するが、このパイロット圧に応じてレギュレータ12は第1メインポンプMP1の傾転角を制御する。すなわち、パイロット圧が小さくなればなるほど、上記傾転角を大きくして第1メインポンプMP1の1回転当たりの押し除け量を多くする。反対にパイロット圧が大きくなればなるほど、上記傾転角を小さくして第1メインポンプMP1の1回転当たりの押し除け量を少なくする。
上記の作用は、第2メインポンプMP2と第2回路系統S2との関係においても同様である。
【0039】
次に、油圧モータMを回転してバッテリー26にチャージするために、オペレータが手動操作によって、コントローラCにスタンバイ回生指令信号を入力した場合について説明する。
なお、オペレータからスタンバイ回生指令信号が入力されていない状態では、コントローラCは、上記した電磁切換制御弁10,21、パイロット流路切換電磁弁PL1,PL2および電磁弁58,59のすべてを図示のノーマル位置に保持する。したがって、この状態では、第1,2メインポンプMP1,MP2の傾転角は、パイロット圧発生用の絞り9,20の上流側の圧力で制御されることになる。
【0040】
したがって、上記の状態で、例えば制御弁2〜6,14〜17のすべてが中立位置に保たれれば、パイロット流路11,22に導かれるパイロット圧が最大になる。パイロット圧が最大になれば、レギュレータ12,23が第1,2メインポンプMP1,MP2の傾転角を小さくして1回転当たりの押し除け量を最小にするので、第1,2メインポンプMP1,MP2はスタンバイ流量を確保する。
【0041】
一方、オペレータの手動操作により、スタンバイ回生指令信号がコントローラCに入力すると、コントローラCは、第1,2圧力センサー13,24で検出された圧力信号が設定圧に達しているか否かを判定する。もし、上記圧力信号が設定圧に達していなければ、第1,2回路系統S1,S2のいずれかの操作弁に接続したアクチュエータが作業中であると判定して、電磁切換制御弁10,21、パイロット流路切換電磁弁PL1,PL2および電磁弁58,59をノーマル位置に保持する。
【0042】
第1,2圧力センサー13,24で検出された圧力信号が設定圧に達していれば、コントローラCは、第1,2回路系統S1,S2のいずれの操作弁に接続したアクチュエータも非作業状態にあると判定し、コントローラCは,電磁切換制御弁10,21および電磁弁58,59のソレノイドを励磁する。したがって、上記電磁切換制御弁10,21は絞り位置に切り換わるとともに、電磁弁58,59は開位置に切り換わる。
【0043】
上記のようにして電磁切換制御弁10,21および電磁弁58,59が切り換えられると、第1,2メインポンプMP1,MP2の吐出量は、電磁弁58,59を経由して油圧モータMに供給されるので、油圧モータMの駆動力で発電機兼用の電動モータMGを回転して発電する。発電機兼用の電動モータMGで発電された電力は、インバータIを介してバッテリー26にチャージされる。
【0044】
上記のように発電機兼用の電動モータMGを回転して発電するとき、コントローラCは、バッテリー26の蓄電量を検出し、この蓄電量に基づいた修正係数をテーブル化して記憶するとともに、この係数テーブルの修正係数に応じて、エンジンEの回転数、スタンバイ回生動力を制御するものである。
すなわち、コントローラCには、図2に示すようにスタンバイ回生修正係数をテーブル化してあらかじめ記憶させている。このスタンバイ回生修正係数は、バッテリー26の蓄電量が第1しきい値SO1を超えているときに1、第1しきい値SO1を下回ったときには1以上となり、バッテリー26の蓄電量が第2しきい値SO2を下回ったときその修正係数が最大になるように設定されている。そして、コントローラCは、制御指令値に上記修正係数を乗じてエンジン回転数、スタンバイ回生動力を制御する。
【0045】
したがって、バッテリー26の蓄電量が第1しきい値SO1を超えていれば、スタンバイ回生修正係数KSが1となり、エンジンEの回転数、スタンバイ回生動力は現状のままを維持する。しかし、バッテリー26の蓄電量が第1しきい値SO1を下回っていると、スタンバイ回生修正係数KSが1よりも大きくなるので、当該係数の増加分だけエンジンEの回転数、スタンバイ回生動力が上がることになる。さらに、上記蓄電量が第2しきい値SO2を下回れば、スタンバイ修正係数が最大になるので、それにともなってエンジンEの回転数、スタンバイ回生動力がさらに上昇する。
【0046】
上記のようにエンジンEの回転数が上昇すれば、それにともなって第1,2メインポンプMP1,MP2の回転数も上昇し、その吐出量を相対的に多くする。このように第1,2メインポンプMP1,MP2の吐出量が多くなれば、油圧モータMの回転数も上昇するので、それにともなって発電機兼用の電動モータMGの回転数も上昇し、発電量が相対的に多くなる。
つまり、バッテリー26の蓄電量が十分足りていれば、発電機兼用の電動モータMは現状の発電量を保つ。そして、上記蓄電量がしきい値よりも少なくなれば、発電機兼用の電動モータの発電量が相対的に多くなる。
【0047】
なお、上記の説明の中では、第1,2回路系統S1,S2の操作弁2〜6,14〜17の全てが中立位置に保たれていることを前提にしたが、第1,2回路系統S1,S2のいずれか一方の操作弁2〜6あるいは14〜17が中立位置にあるときにも油圧モータMを回転させられる。この場合には、コントローラCが、いずれか一方の圧力センサー13あるいは24の圧力信号に基づいていずれか一方の電磁弁58あるいは59を開位置に切り換え、いずれか他方の電磁弁59あるいは58を閉位置に保つ。したがって、第1,2メインポンプMP1,MP2のいずれか一方のポンプの吐出油が油圧モータMに供給されるとともに、この油圧モータMの回転力で発電機兼用の電動モータMGを回転することができる。
【0048】
また、上記エンジンEに設けたジェネレータ1はバッテリーチャージャー25に接続し、ジェネレータ1が発電した電力は、バッテリーチャージャー25を介してバッテリー26に充電される。
さらに、上記バッテリーチャージャー25は、通常の家庭用の電源27に接続した場合にも、バッテリー26に電力を充電できるようにしている。つまり、このバッテリーチャージャー25は、当該装置とは別の独立系電源にも接続可能にしたものである。
【0049】
次に、第1,2メインポンプMP1,MP2の出力をアシストする可変容量型のサブポンプSPについて説明する。
上記可変容量型のサブポンプSPは、発電機兼用の電動モータMGの駆動力で回転するが、この発電機兼用の電動モータMGの駆動力によって、可変容量型の油圧モータMも同軸回転する構成にしている。
なお、後で詳しく説明するが、上記サブポンプSPは、油圧モータMの駆動力でも回転できるし、それら発電機兼用の電動モータMGおよび油圧モータMの合成駆動力でも回転できる。
そして、上記発電機兼用の電動モータMGには、バッテリー26に接続したインバータIを接続するとともに、このインバータIをコントローラCに接続し、このコントローラCで発電機兼用の電動モータMGの回転数等を制御できるようにしている。
また、上記のようにしたサブポンプSPおよび油圧モータMの傾転角は傾角制御器37,38で制御されるが、この傾角制御器37,38は、コントローラCの出力信号で制御される。
【0050】
上記サブポンプSPには吐出通路39を接続しているが、この吐出通路39は、第1メインポンプMP1の吐出側に合流する第1アシスト流路40と、第2メインポンプMP2の吐出側に合流する第2アシスト流路41とに分岐するとともに、これら第1,2アシスト流路40,41のそれぞれには、コントローラCの出力信号で開度が制御される第1,2比例電磁絞り弁42,43を設けている。
なお、図中符号44,45は上記第1,2アシスト流路40,41に設けたチェック弁で、サブポンプSPから第1,2メインポンプMP1,MP2への流通のみを許容するものである。
【0051】
したがって、サブポンプSPの吐出油は、第1,2比例電磁絞り弁42.43の開度に応じて第1,2アシスト流路40,41に振り分けられて、第1,2メインポンプMP1,MP2の吐出油と合流し、これら第1,2メインポンプMP1,MP2をアシストする。
ただし、このサブポンプのアシスト流量は第1の圧力センサー13、第2の圧力センサー24の圧力に対応して、流量が設定され、その中で、コントローラCが、サブポンプSPの傾転角、油圧モータMの傾転角、発電機兼用の電動モータMGの回転数などをどのように制御したら最も効率的かを判断してそれぞれの制御を実施するようにしている。
【0052】
また、上記コントローラCは、図2に示すように、バッテリー26の蓄電量に応じて、アシスト流量、動力を制御するためのアシスト修正係数をテーブル化し記憶している。このアシスト修正係数は、バッテリー26の蓄電量が第1しきい値SO1を超えているときに1、第1しきい値SO1を下回ったときには1以下となり、バッテリー26の蓄電量が第2しきい値SO2以下になったときにゼロになるようにしている。
【0053】
したがって、バッテリー26の蓄電量が第1しきい値SO1を超えていれば、サブポンプSPの吐出量があらかじめ設定したアシスト流量、動力になるように、コントローラCが、サブポンプSPの傾転角、油圧モータMの傾転角、発電機兼用の電動モータMGの回転数などを制御する。
また、バッテリー26の蓄電量が第1しきい値SO1を下回れば、サブポンプSPの吐出量があらかじめ設定したアシスト流量、動力になるように修正指令し、コントローラCが、サブポンプSPの傾転角、油圧モータMの傾転角、発電機兼用の電動モータMGの回転数などを制御する。
【0054】
さらに、バッテリー26の蓄電量が第2しきい値SO2を下回れば、サブポンプSPの吐出量がゼロになるように、コントローラCが、サブポンプSPの傾転角、油圧モータMの傾転角、発電機兼用の電動モータMGの回転数などを制御する。
なお、上記のように第2しきい値を下回ったとき、サブポンプSPのアシスト出力をゼロにしたのは、サブポンプSPを駆動するために、バッテリー26が過放電にならないようにするためである。
上記のようにバッテリー26の蓄電量が少なくなったときに、サブポンプSPのアシスト流量、動力を減少させるようにしたのは、発電機兼用の電動モータMGの出力を軽減して、バッテリー26の電力消費量を少なくし、バッテリー26に対する充電を優先させるためである。
【0055】
なお、上記のようにサブポンプSPのアシスト流量、動力を制御するためには、サブポンプSPの傾転角、油圧モータMの傾転角、発電機兼用の電動モータMGのいずれを制御してもよいし、それらを複合的に制御してもよい。したがって、サブポンプSPの傾転角を制御する傾角制御器37、油圧モータMの傾転角を制御する傾角制御器38、および発電機兼用の電動モータMGの回転数を制御するインバータIのそれぞれが、この発明のアシスト制御機構を構成するものである。
【0056】
また、上記のようにサブポンプSPのアシスト流量、動力を減少させたときには、エンジン回転数制御手段ECを介してエンジンEの回転数を上げ、アシスト流量の減少分に相当する流量を、第1,2メインポンプMP1,MP2の吐出量の増加でまかなえるようにしている。
そのために、上記コントローラCは、図2に示すように、バッテリー26の蓄電量に応じて、エンジンEの回転数を制御するためのエンジン回転数修正係数をテーブル化して記憶している。このエンジン回転数修正係数は、バッテリー26の蓄電量が第1しきい値SO1を超えているときに1、第1しきい値SO1を下回ったときには1以上となり、バッテリー26の蓄電量が第2しきい値SO2以下になったときに最大になるようにしている。
【0057】
そして、上記のようにしたアシスト修正係数Kaとエンジン回転数修正係数Keとは、バッテリー26の蓄電量を変数として互いに相関させるとともに、サブポンプSPのアシスト流量が減少した分を、第1,2メインポンプMP1,MP2の吐出量が増加して、アクチュエータに対する供給油量が変化しないように設定されている。
したがって、サブポンプSPのアシスト流量が減少したとしても、継続している作業においてその作業性が変化せず、従来のようにオペレータに違和感を与えるといったこともなくなる。
【0058】
したがって、この実施形態では、コントローラCは、常にバッテリー26の蓄電量を検出し、その蓄電量に応じた制御を実行することになる。
すなわち、図3に示すように、コントローラCは、バッテリー26の蓄電量を検出する(ステップS1)とともに、そのときの蓄電量に応じて、アシスト修正係数Ka、エンジン回転数修正係数Keおよびスタンバイ回生修正係数Ksを特定する(ステップS2)。
【0059】
上記のように各係数を特定したら、そのときのアクチュエータが作業状態にあるかあるいは非作業状態にあるかを検出し(ステップS3)、作業状態にあればサブポンプSPの吐出量を圧力センサ13,24の圧力に対応したアシスト流量になるように上記アシスト制御機構を制御する(ステップS4)。このときコントローラCは、サブポンプSPに対する通常の指令値に、バッテリー26の蓄電量に基づいた係数を乗じる(ステップS5)とともに、その係数を乗じた値で、サブポンプSPの出力およびエンジンEの回転数の制御を実行する(ステップS6)。
【0060】
また、ステップS3において、非作業状態にあるときには、ステップS7に移行して、スタンバイ回生エネルギーの回収制御を実行するが、このときコントローラCは、バッテリー26の蓄電量に基づいた係数を指令値に乗じて(ステップS7)、エンジン回転数、スタンバイ回生動力制御を実行する(ステップS8)。
【0061】
なお、上記油圧モータMには接続用通路46を接続しているが、この接続用通路46は、導入通路47およびチェック弁48,49を介して、旋回モータRMに接続した通路28,29に接続している。しかも、上記導入通路47にはコントローラCで開閉制御される電磁切換弁50を設けるとともに、この電磁切換弁50とチェック弁48,49との間に、旋回モータRMの旋回時の圧力あるいはブレーキ時の圧力を検出する圧力センサー51を設け、この圧力センサー51の圧力信号をコントローラCに入力するようにしている。
【0062】
また、導入通路47であって、旋回モータRMから接続用通路46への流れに対して、上記電磁切換弁50よりも下流側となる位置には、安全弁52を設けているが、この安全弁52は、例えば電磁切換弁50など、通路46系統に故障が生じたとき、通路28,29の圧力を維持して旋回モータRMがいわゆる逸走するのを防止するものである。
さらに、上記ブームシリンダBCと上記比例電磁弁36との間には、接続用通路46に連通する導入通路53を設けるとともに、この導入通路53にはコントローラCで制御される電磁開閉弁54を設けている。
【0063】
そして、上記第1回路系統S1に接続した旋回モータ用の操作弁2のアクチュエータポートには、旋回モータRMに連通する通路28,29を接続するとともに、両通路28,29のそれぞれにはブレーキ弁30,31を接続している。そして、旋回モータ用の操作弁2を中立位置に保っているときには、上記アクチュエータポートが閉じられて旋回モータRMは停止状態を維持する。
【0064】
上記の状態から旋回モータ用の操作弁2をいずれか一方の方向に切り換えると、一方の通路28が第1メインポンプMP1に接続され、他方の通路29がタンクに連通する。したがって、通路28から圧油が供給されて旋回モータRMが回転するとともに、旋回モータRMからの戻り油が通路29を介してタンクに戻される。
旋回モータ用の操作弁2を上記とは反対方向に切り換えると、今度は、通路29にポンプ吐出油が供給され、通路28がタンクに連通し、旋回モータRMは逆転することになる。
【0065】
上記のように旋回モータRMを駆動しているときには、上記ブレーキ弁30あるいは31がリリーフ弁の機能を発揮し、通路28,29が設定圧以上になったとき、ブレーキ弁30,31が開弁して、上記通路28,29の圧力を設定圧に保つ。また、旋回モータRMを回転している状態で、旋回モータ用の操作弁2を中立位置に戻せば、当該操作弁2のアクチュエータポートが閉じられる。このように操作弁2のアクチュエータポートが閉じられても、旋回モータRMはその慣性エネルギーで回転し続けるが、旋回モータRMが慣性エネルギーで回転することによって、当該旋回モータRMがポンプ作用をする。この時には、通路28,29、旋回モータRM、ブレーキ弁30あるいは31で閉回路が構成されるとともに、ブレーキ弁30あるいは31によって、上記慣性エネルギーが熱エネルギーに変換されることになる。
【0066】
なお、上記通路28あるいは29の圧力は、旋回動作あるいはブレーキ動作に必要な圧力に保たれていなければ、旋回モータRMを旋回させたり、あるいはブレーキをかけたりできなくなる。
そこで、上記通路28あるいは29の圧力を、上記旋回圧あるいはブレーキ圧に保つために、コントローラCは油圧モータMの傾転角を制御しながら、この旋回モータRMの負荷を制御するようにしている。つまり、コントローラCは、圧力センサー51で検出される圧力が上記旋回モータRMの旋回圧あるいはブレーキ圧とほぼ等しくなるように、油圧モータMの傾転角を制御する。
【0067】
上記のようにして油圧モータMが回転力を得れば、その回転力は、同軸回転する発電機兼用の電動モータMGに作用するが、この油圧モータMの回転力は、発電機兼用の電動モータMGに対するアシスト力として作用する。したがって、油圧モータMの回転力の分だけ、発電機兼用の電動モータMGの消費電力を少なくすることができる。
また、上記油圧モータMの回転力でサブポンプSPの回転力をアシストすることもできるが、このときには、油圧モータMとサブポンプSPとが相まって圧力変換機能を発揮する。
【0068】
つまり、接続用通路46に流入する圧力はポンプ吐出圧よりも低いことが多い。この低い圧力を利用して、サブポンプSPに高い吐出圧を維持させるために、油圧モータMおよびサブポンプSPによって増圧機能を発揮させるようにしている。
すなわち、上記油圧モータMの出力は、1回転当たりの押しのけ容積Qとそのときの圧力Pの積で決まる。また、サブポンプSPの出力は1回転当たりの押しのけ容積Qと吐出圧Pの積で決まる。そして、この実施形態では、油圧モータMとサブポンプSPとが同軸回転するので、Q×P=Q×Pが成立しなければならない。そこで、例えば、油圧モータMの上記押しのけ容積Qを上記サブポンプSPの押しのけ容積Qの3倍すなわちQ=3Qにしたとすれば、上記等式が3Q×P=Q×Pとなる。この式から両辺をQで割れば、3P=Pが成り立つ。
したがって、サブポンプSPの傾転角を変えて、上記押しのけ容積Qを制御すれば、油圧モータMの出力で、サブポンプSPに所定の吐出圧を維持させることができる。言い換えると、旋回モータRMからの油圧を増圧してサブポンプSPから吐出させることができる。
【0069】
ただし、油圧モータMの傾転角は、上記したように通路28,29の圧力を旋回圧あるいはブレーキ圧に保つように制御される。したがって、旋回モータRMからの圧油を利用する場合には、油圧モータMの傾転角は必然的に決められることになる。このように油圧モータMの傾転角が決められた中で、上記した圧力変換機能を発揮させるためには、サブポンプSPの傾転角を制御することになる。
なお、上記通路46系統の圧力が何らかの原因で、旋回圧あるいはブレーキ圧よりも低くなったときには、圧力センサー51からの圧力信号に基づいてコントローラCは、電磁切換弁50を閉じて、旋回モータRMに影響を及ぼさないようにする。
また、接続用通路46に圧油の漏れが生じたときには、安全弁52が機能して通路28,29の圧力が必要以上に低くならないようにして、旋回モータRMの逸走を防止する。
【0070】
一方ブームシリンダBCであるが、操作弁16を中立位置から一方の方向に切り換えると、第2メインポンプMP2からの圧油は、通路32を経由してブームシリンダBCのピストン側室33に供給されるとともに、そのロッド側室34からの戻り油は通路35を経由してタンクに戻され、ブームシリンダBCは伸長することになる。
【0071】
操作弁16を上記とは反対方向に切り換えると、第2メインポンプMP2からの圧油は、通路35を経由してブームシリンダBCのロッド側室34に供給されるとともに、そのピストン側室33からの戻り油は通路32を経由してタンクに戻され、ブームシリンダBCは収縮することになる。なお、ブーム2速用の操作弁3は、上記操作弁16と連動して切り換るものである。
上記のようにしたブームシリンダBCのピストン側室33と操作弁16とを結ぶ通路32には、コントローラCで開度が制御される比例電磁弁36を設けている。なお、この比例電磁弁36はそのノーマル状態で全開位置を保つようにしている。
【0072】
そして、ブームシリンダBCを作動させるために、操作弁16を切り換えると、その操作弁16に設けたセンサー(図示していない)によって、上記操作弁16の操作方向とその操作量が検出されるとともに、その操作信号がコントローラCに入力される。
【0073】
上記センサーの操作信号に応じて、コントローラCは、オペレータがブームシリンダBCを上昇させようとしているのか、あるいは下降させようとしているのかを判定する。ブームシリンダBCを上昇させるための信号がコントローラCに入力すれば、コントローラCは比例電磁弁36をノーマル状態に保つ。言い換えると、比例電磁弁36を全開位置に保つ。このときには、コントローラCは、電磁開閉弁54を図示の閉位置に保つとともに、発電機兼用の電動モータMGの回転数やサブポンプSPの傾転角を制御する。
一方、ブームシリンダBCを下降させる信号が上記センサーからコントローラCに入力すると、コントローラCは、操作弁16の操作量に応じて、オペレータが求めているブームシリンダBCの下降速度を演算するとともに、比例電磁弁36を閉じて、電磁開閉弁54を開位置に切り換える。
【0074】
上記のように比例電磁弁36を閉じて電磁開閉弁54を開位置に切り換えれば、ブームシリンダBCの戻り油の全量が油圧モータMに供給される。しかし、油圧モータMで消費する流量が、オペレータが求めた下降速度を維持するために必要な流量よりも少なければ、ブームシリンダBCはオペレータが求めた下降速度を維持できない。このようなときには、コントローラCは、上記操作弁16の操作量、油圧モータMの傾転角や発電機兼用の電動モータMGの回転数などをもとにして、油圧モータMが消費する流量以上の流量をタンクに戻すように比例電磁弁36の開度を制御し、オペレータが求めるブームシリンダBCの下降速度を維持する。
【0075】
さらに、旋回モータRMを旋回させながら、ブームシリンダBCを下降させるときには、旋回モータRMからの圧油と、ブームシリンダBCからの戻り油とが、接続用通路46で合流して油圧モータMに供給される。
このとき、導入通路47の圧力が上昇すれば、それにともなって導入通路47側の圧力も上昇するが、その圧力が旋回モータRMの旋回圧あるいはブレーキ圧よりも高くなったとしても、チェック弁48,49があるので、旋回モータRMには影響を及ぼさない。
また、前記したように接続用通路46側の圧力が旋回圧あるいはブレーキ圧よりも低くなれば、コントローラCは、圧力センサー51からの圧力信号に基づいて電磁切換弁50を閉じる。
【0076】
したがって、旋回モータRMの旋回動作とブームシリンダBCの下降動作とを上記のように同時に行うときには、上記旋回圧あるいはブレーキ圧にかかわりなく、ブームシリンダBCの必要下降速度を基準にして油圧モータMの傾転角を決めればよい。
いずれにしても、油圧モータMの出力で、サブポンプSPの出力をアシストできるとともに、サブポンプSPから吐出された流量を、第1,2比例電磁絞り弁42,43で按分して、第1,2回路系統S1,S2に供給することができる。
【0077】
一方、油圧モータMを駆動源として発電機兼用の電動モータMGを発電機として使用するときには、サブポンプSPの傾転角をゼロにしてほぼ無負荷状態にし、油圧モータMには、発電機兼用の電動モータMGを回転させるために必要な出力を維持しておけば、油圧モータMの出力を利用して、発電機Gを機能させることができる。
また、エンジンEの出力を利用してジェネレータ1で発電したり、油圧モータMを利用して発電機兼用の電動モータMGに発電させたりできる。
【0078】
さらに、チェック弁44,45を設けるとともに、電磁切換弁50および電磁開閉弁54あるいは電磁弁58,59を設けたので、例えば、サブポンプSPおよび油圧モータM系統が故障した場合に、第1,2メインポンプMP1,MP2系統と、サブポンプSPおよび油圧モータM系統とを油圧的には切り離すことができる。特に、電磁切換弁50、電磁開閉弁54及び電磁弁58,59は、それらがノーマル状態にあるとき、図面に示すようにスプリングのバネ力で閉位置を保つとともに、上記比例電磁弁36も全開位置であるノーマル位置を保つので、電気系統が故障したとしても、上記のように第1,2メインポンプMP1,MP2系統と、サブポンプSPおよび油圧モータM系統とを油圧的に切り離すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
ハイブリッド型のパワーショベル等の建設機械に利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
MP1 第1メインポンプ
MP2 第2メインポンプ
2〜6 操作弁
14〜17 操作弁
7,18 中立流路
E エンジン
EC エンジン回転数制御手段
MG 発電機兼用の電動モータ
C コントローラ
SP サブポンプ
26 バッテリー
37 サブポンプの傾転角を制御する傾角制御器
38 油圧モータの傾転角を制御する傾角制御器
I 発電機兼用の電動モータの回転数を制御するインバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量型のメインポンプと、このメインポンプを駆動するエンジンと、このエンジンの回転を制御するエンジン回転数制御手段と、発電機で発電された電力を蓄電するバッテリーと、メインポンプの吐出側に接続されるとともにメインポンプをアシストする可変容量型のサブポンプと、このサブポンプが指令されたアシスト出力を出力するように制御するアシスト制御機構と、コントローラとを備え、このコントローラは、エンジン回転数制御手段およびアシスト制御機構に接続し、かつ、このコントローラには、バッテリーの蓄電量がしきい値を下回ったとき上記アシスト制御機構を制御してサブポンプのアシスト出力を減少させるためのアシスト修正係数の係数テーブルと、バッテリーの蓄電量が上記しきい値を下回ったときエンジン回転数制御手段を制御してエンジンの回転数を上げるためのエンジン回転数修正係数の係数テーブルと、バッテリーの蓄電量に対するしきい値とを記憶してなり、コントローラは、上記バッテリーの蓄電量が上記しきい値を下回ったかどうかを判定する機能と、蓄電量がしきい値を下回ったとき、上記アシスト修正係数に基づいて上記アシスト制御機構を制御してサブポンプのアシスト出力を小さくする機能と、蓄電量がしきい値を下回ったとき、上記エンジン回転数修正係数に基づいてエンジン回転数制御手段を制御し、上記エンジン回転数を大きくしてメインポンプの吐出量を相対的に多くする機能とを備え、サブポンプのアシスト出力が小さくなった分、エンジンの回転数を上げてメインポンプの出力を上昇させる構成にしたハイブリッド建設機械の制御装置。
【請求項2】
上記コントローラに記憶された上記アシスト修正係数は蓄電量が十分ある時には1とし、蓄電量が上記しきい値を下回ったとき、上記アシスト修正係数が1以下になるように設定された請求項1記載のハイブリッド建設機械の制御装置。
【請求項3】
コントローラは、バッテリーの蓄電量に対する第1しきい値と第2しきい値とを記憶し、バッテリーの蓄電量が第1しきい値を下回ったとき、アシスト修正係数に基づいてサブポンプのアシスト出力を小さくする一方、バッテリーの蓄電量が第2しきい値に到達したとき、アシスト修正係数に基づいてサブポンプのアシスト出力をゼロにする機能を備えた請求項1または2記載のハイブリッド建設機械の制御装置。
【請求項4】
上記メインポンプには、複数の操作弁を備えた回路系統を接続するとともに、この回路系統のすべての操作弁が中立位置に保たれているとき、中立流路に発生するパイロット圧の作用で、メインポンプの吐出量をスタンバイ流量に保つ構成にし、このメインポンプには発電機を回す油圧モータを接続する一方、上記コントローラには、バッテリーの蓄電量が上記しきい値を下回ったとき上記スタンバイ回生動力を多くするスタンバイ回生修正係数のテーブルを記憶し、バッテリーの蓄電量が上記しきい値を下回り、かつ、上記すべての操作弁が中立位置にあるとき、コントローラは、スタンバイ回生修正係数に基づいてエンジン回転数制御手段を制御してエンジン回転数を上げ、スタンバイ回生動力を相対的に多くする構成にした請求項1〜3のいずれか1に記載したハイブリッド建設機械の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−163291(P2011−163291A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29344(P2010−29344)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】