説明

ハイブリッド車およびその制御方法

【課題】内燃機関の暖機を促進する。
【解決手段】エンジン潤滑システム110とモータ潤滑システム120とを備え、更にモータ潤滑システム120の潤滑油をエンジン22に供給可能なエンジン用オイルポンプ126を備えるから、エンジン22の温度を反映するエンジン潤滑システム110の潤滑油温よりモータ潤滑システム120の潤滑油温が高いときにモータ潤滑システム120の潤滑液をエンジン22に供給することができ、エンジン22の暖機を促進することができる。また、エンジン22の運転が停止されてモータ走行している最中にエンジン潤滑システム110の潤滑油温が第1温度未満でモータ潤滑システム120の潤滑油温が第1温度より高い第2温度以上のときにエンジン用オイルポンプ126を駆動するよう制御するから、エンジン22の暖機をより確実に促進できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車およびその制御方法に関し、詳しくは、内燃機関と、走行用の動力を出力可能な電動機と、電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段とを備えるハイブリッド車およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド車としては、内燃機関と、電動機と、オイルパンからの潤滑オイルを内燃機関に供給するオイルポンプとを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車両では、内燃機関の本体に電動機のステータを結合すると共に内燃機関のシリンダヘッドからのオイル排出通路を電動機のステータに向かって開口させて、内燃機関の動弁機構を潤滑したオイルを電動機のステータに供給可能な構造とすることにより、内燃機関の潤滑オイルによって電動機のステータを冷却するものとしている。
【特許文献1】特開2005−180261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のハイブリッド車では、内燃機関の運転を停止した状態で電動機からの動力により走行するいわゆるモータ走行が行なわれるが、モータ走行の終了後に内燃機関を運転しながら暖機しようとすると、内燃機関の潤滑オイルが暖まっておらずその粘性が高いために燃費が悪化したり、燃料噴射量の増量補正により燃費が悪化したりするなどのため、内燃機関の運転を伴う暖機をできるだけ早期に完了することが望ましい。また、内燃機関を低温時に始動するとエミッションの悪化が生じやすくなるため、内燃機関を始動する前にある程度暖機しておくことも望まれる。
【0004】
本発明のハイブリッド車およびその制御方法は、内燃機関の暖機を促進することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のハイブリッド車およびその制御方法は、少なくとも上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明のハイブリッド車は、
内燃機関と、走行用の動力を出力可能な電動機と、前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段とを備えるハイブリッド車であって、
前記内燃機関を潤滑するための潤滑液を貯留する機関用貯留手段と、該機関用貯留手段に貯留された潤滑液を前記内燃機関の回転に伴って該内燃機関に供給可能な機関用供給手段とを有する機関潤滑系と、
前記機関用貯留手段に接続され前記電動機を潤滑するための潤滑液を貯留する電動機用貯留手段と、該電動機用貯留手段に貯留された潤滑液を前記電動機に供給可能な電動機用供給手段とを有する電動機潤滑系と、
前記電動機潤滑系の潤滑液を前記内燃機関に供給可能な潤滑液供給手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明のハイブリッド車では、内燃機関を潤滑するための潤滑液を貯留する機関用貯留手段と機関用貯留手段に貯留された潤滑液を内燃機関の回転に伴って内燃機関に供給可能な機関用供給手段とを有する機関潤滑系と、機関用貯留手段に接続され電動機を潤滑するための潤滑液を貯留する電動機用貯留手段と電動機用貯留手段に貯留された潤滑液を電動機に供給可能な電動機用供給手段とを有する電動機潤滑系と、電動機潤滑系の潤滑液を内燃機関に供給可能な潤滑液供給手段とを備える。これにより、内燃機関の温度より電動機潤滑系の潤滑液の温度が高いときに電動機潤滑系の潤滑液を内燃機関に供給することができるから、内燃機関の暖機を促進することができる。ここで、「機関用供給手段」には、内燃機関の出力軸の回転により駆動されて潤滑液を圧送可能な機械式ポンプなどが含まれる。また、「電動機用供給手段」には、蓄電手段からの電力を用いて駆動されて潤滑液を圧送可能な電動式ポンプや車軸の回転により駆動されて潤滑液を圧送可能な機械式ポンプなどが含まれる。
【0008】
こうした本発明のハイブリッド車において、前記潤滑液供給手段は、前記電動機潤滑系の潤滑液を前記内燃機関に圧送可能な圧送機器または開閉可能なバルブにより構成され、該圧送機器の駆動または該バルブの開成により前記電動機潤滑系の潤滑液を前記内燃機関に供給する手段であるものとすることもできる。
【0009】
また、本発明のハイブリッド車において、前記内燃機関の温度が反映された機関反映温度を検出する機関反映温度検出手段と、前記電動機潤滑系の潤滑液の温度である潤滑液温度を検出する潤滑液温度検出手段と、前記内燃機関の運転が停止され且つ前記検出された機関反映温度が前記内燃機関が暖機されていない状態を示す第1の温度未満のときに前記検出された潤滑液温度が前記第1の温度より高い第2の温度以上のときには、前記電動機潤滑系の潤滑液が前記内燃機関に供給されるよう前記潤滑液供給手段を制御する暖機制御を実行する制御手段と、を備えるものとすることもできる。こうすれば、内燃機関の暖機をより確実に促進することができる。
【0010】
この内燃機関の運転が停止されているときに暖機制御を実行する態様の本発明のハイブリッド車において、前記制御手段は、前記暖機制御の実行を開始した以降に前記検出された潤滑液温度が前記第1の温度以上で前記第2の温度未満の温度である第3の温度未満になったときには、前記検出された潤滑液温度が前記第2の温度以上になるまで前記電動機潤滑系の潤滑液の前記内燃機関への供給が停止されるよう前記潤滑液供給手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、暖機制御の実行と停止とが頻繁に切り替えられるのを抑制することができると共に、電動機の温度が過剰に低下するのを抑制することができる。
【0011】
また、内燃機関の運転が停止されているときに暖機制御を実行する態様の本発明のハイブリッド車において、前記制御手段は、前記暖機制御の実行を開始した以降に前記検出された機関反映温度が前記第1の温度以上になったときには、前記電動機潤滑系の潤滑液の前記内燃機関への供給が停止されるよう前記潤滑液供給手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、暖機制御の実行が無駄に継続されるのを抑制することができる。
【0012】
さらに、内燃機関の運転が停止されているときに暖機制御を実行する態様の本発明のハイブリッド車において、前記蓄電手段からの電力を用いて前記内燃機関をモータリング可能な第2電動機を備え、前記制御手段は、前記暖機制御を実行する際には前記内燃機関がモータリングされるよう前記第2電動機を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、暖機制御を実行する際に内燃機関をより確実に潤滑することができ、内燃機関の暖機をより確実に促進することができる。
【0013】
あるいは、内燃機関の運転が停止されているときに暖機制御を実行する態様の本発明のハイブリッド車において、前記制御手段は、前記内燃機関の運転が停止された状態でアクセル操作に応じて前記電動機からの動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御している最中に前記暖機制御を実行する手段であるものとすることもできる。この場合、前記制御手段は、前記電動機用貯留手段からの潤滑液が前記電動機に供給されるよう前記電動機用供給手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、電動機潤滑系の潤滑油を暖めやすくすることができ、内燃機関の暖機をより確実に促進することができる。
【0014】
また、内燃機関の運転が停止されているときに暖機制御を実行する態様の本発明のハイブリッド車において、前記機関用貯留手段と前記電動機用貯留手段とを接続する流路に開閉可能な接続用バルブを備え、前記制御手段は、前記暖機制御を実行する際には前記接続用バルブが開成されるよう該接続用バルブを制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、暖機制御を実行する際に電動機用貯留手段に貯留された潤滑液が減少するのを抑制することができる。
【0015】
本発明のハイブリッド車の制御方法は、
内燃機関と、走行用の動力を出力可能な電動機と、前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、前記内燃機関を潤滑するための潤滑液を貯留する機関用貯留手段と該機関用貯留手段に貯留された潤滑液を前記内燃機関の回転に伴って該内燃機関に供給可能な機関用供給手段とを有する機関潤滑系と、前記機関用貯留手段に接続され前記電動機を潤滑するための潤滑液を貯留する電動機用貯留手段と該電動機用貯留手段に貯留された潤滑液を前記電動機に供給可能な電動機用供給手段とを有する電動機潤滑系と、前記電動機潤滑系の潤滑液を前記内燃機関に供給可能な潤滑液供給手段と、を備えるハイブリッド車の制御方法であって、
前記内燃機関の運転が停止され且つ前記内燃機関の温度が反映された機関反映温度が前記内燃機関が暖機されていない状態を示す第1の温度未満のときに前記電動機潤滑系の潤滑液の温度である潤滑液温度が前記第1の温度より高い第2の温度以上のときには、前記電動機潤滑系の潤滑液が前記内燃機関に供給されるよう前記潤滑液供給手段を制御する暖機制御を実行する、
ことを特徴とする。
【0016】
この本発明のハイブリッド車の制御方法では、内燃機関の運転が停止され且つ内燃機関の温度が反映された機関反映温度が内燃機関が暖機されていない状態を示す第1の温度未満のときに電動機潤滑系の潤滑液の温度である潤滑液温度が第1の温度より高い第2の温度以上のときには、電動機潤滑系の潤滑液が内燃機関に供給されるよう潤滑液供給手段を制御する暖機制御を実行する。これにより、内燃機関の暖機を促進することができる。ここで、「機関用供給手段」には、内燃機関の出力軸の回転により駆動されて潤滑液を圧送可能な機械式ポンプなどが含まれる。また、「電動機用供給手段」には、蓄電手段からの電力を用いて駆動されて潤滑液を圧送可能な電動式ポンプや車軸の回転により駆動されて潤滑液を圧送可能な機械式ポンプなどが含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関としてのエンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパを介してキャリアが接続された遊星歯車機構30と、遊星歯車機構30のサンギヤに回転子が接続された同期発電電動機としてのモータMG1と、遊星歯車機構30のリングギヤに接続されると共にデファレンシャルギヤ62を含むギヤ機構を介して駆動輪63a,63bに連結されたドライブシャフト32に回転子が接続された同期発電電動機としてのモータMG2と、インバータ41,42を介してモータMG1,MG2に接続されたバッテリ50と、車両全体をコントロールする電子制御ユニット70とを備える。ここで、バッテリ50は、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池として構成され、家庭用電源(AC100V)などの外部電源に接続される車外の充電器54のコネクタ55に結合可能なコネクタ53が取り付けられた充電回路52が接続されており、充電回路52と車外の充電器54とが接続されたときに車両のシステム起動前すなわち走行開始前に外部電源からの電力を用いて充電回路52により充電することができるようになっている。これにより、ハイブリッド自動車20は、バッテリ50を満充電にした状態での走行開始が可能となる。また、ハイブリッド自動車20は、バッテリ50から電力を供給される図示しない補機バッテリと、図2に示すようにエンジン22やモータMG1,MG2を冷却する冷却システム90と、図3に示すようにエンジン22を潤滑するエンジン潤滑システム110およびモータMG1,MG2を潤滑するモータ潤滑システム120とを更に備える。
【0019】
冷却システム90は、図示するように、エンジン22を冷却する冷却系と、この冷却系とは独立にインバータ41,42およびモータMG1,MG2を冷却する冷却系とにより構成されている。エンジン22の冷却系は、走行風や図示しないファンによりエンジン22を循環した冷却水を冷却するラジエータ92と、ラジエータ92からの冷却水を水温条件が成立していないときに遮断するサーモスタット93と、図示しない補機バッテリからの電力により駆動されると共にラジエータ92からのサーモスタット93を経由した冷却水やエンジン22の内部を循環した図示しないバイパス流路からのサーモスタット93を経由しない冷却水などを吸入してエンジン22に圧送する電動式のウォータポンプ94と、エンジン22を循環した冷却水により図示しない空調装置の冷却空気を暖めるヒータ95とを備え、ウォータポンプ94の駆動によりエンジン22を構成するシリンダーブロック24やシリンダーヘッド23などに冷却水を強制的に循環させることによりエンジン22を冷却することができる。インバータ41,42およびモータMG1,MG2の冷却系は、走行風や図示しないファンによりモータMG1,MG2を循環した冷却水を冷却するラジエータ96と、図示しない補機バッテリにより駆動されインバータ41,42を冷却した冷却水を吸入してモータMG1,MG2に圧送する電動式のウォータポンプ98とを備え、ウォータポンプ98の駆動によりインバータ41,42およびモータMG1,MG2を冷却することができる。なお、サーモスタット93の水温条件として、実施例では、冷却水温がエンジン22が暖機された状態を示す所定温度(例えば、75℃や80℃など)以上となる条件を用いるものとした。また、ウォータポンプ98の駆動は、実施例では、冷却水温が高いほど吐出する流量が大きくなるように行なわれるものとした。
【0020】
エンジン潤滑システム110は、図示するように、エンジン22の下部に取り付けられて潤滑油を貯留するオイルパン112と、エンジン22のクランクシャフト26に取り付けられクランクシャフト26の回転により駆動されると共にオイルパン112に貯留された潤滑油を吸入してシリンダヘッド23上面などのエンジン22の上部に圧送する機械式のオイルポンプ114とを備え、オイルポンプ114の駆動によりエンジン22の上部から供給された潤滑油がシリンダヘッド23の図示しないオイル戻し穴からシリンダブロック24を経てオイルパン112に戻るなどして、エンジン22における図示しないカムシャフトやピストン,クランクシャフト26などの摺動部を潤滑することができるようになっている。
【0021】
モータ潤滑システム120は、図示するように、単一のケースに収納されたモータMG1,MG2の下部に取り付けられて潤滑油を貯留するオイルパン122と、図示しない補機バッテリからの電力により駆動されると共にオイルパン122に貯留された潤滑油を吸入し単一のケースに収納されたインバータ41,42の上部に圧送するオイルポンプ124とを備え、オイルポンプ124の駆動によりインバータ41,42の上部から供給された潤滑油がインバータ41,42の下部に配置されたモータMG1,MG2を経てオイルパン122に戻ることによって、インバータ41,42およびモータMG1,MG2が過熱するのを抑制したり、モータMG1,MG2の回転軸などの摺動部を潤滑することができるようになっている。さらに、モータ潤滑システム120は、図示しない補機バッテリからの電力により駆動されると共にオイルパン122に貯留された潤滑油を吸入してエンジン22の上部に圧送するオイルポンプ126と、オイルパン112とオイルパン122とを接続する流路に設けられて図示しない補機バッテリからの電力を用いて開度調整が可能な調整バルブ128とを備え、通常は駆動停止しているオイルポンプ126の駆動と通常は全閉している調整バルブ128の開成とにより、エンジン潤滑システム110のオイルポンプ114が駆動したときと同様にエンジン22の摺動部を潤滑することができるようになっている。なお、以下では、オイルポンプ124をモータ用オイルポンプ124,オイルポンプ126をエンジン用オイルポンプ126ともいう。
【0022】
電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートを備える。電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号やシフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vの他に、クランクシャフト26に取り付けられた図示しないクランクポジションセンサなどエンジン22の運転状態を検出する各種センサからの信号や、モータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する図示しない回転位置検出センサからの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などのモータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、バッテリ50の出力端子近傍に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流や充電回路52に取り付けられた図示しない電圧センサや電流センサからの信号などのバッテリ50を管理するために必要な信号、エンジン22のシリンダブロック24に取り付けられて冷却水の温度を検出する水温センサ25からの冷却水温Twegやインバータ41,42への冷却水の入口近傍に取り付けられて冷却水の温度を検出する水温センサ43からの冷却水温Twmgなどの冷却システム90を制御するために必要な信号、オイルパン112に取り付けられて潤滑油の温度の検出する油温センサ115からの潤滑油温Toegやオイルパン122に取り付けられて潤滑油の温度を検出する油温センサ125からの潤滑油温Tomgなどのエンジン潤滑システム110およびモータ潤滑システム120を制御するために必要な信号などが入力されている。また、電子制御ユニット70からは、エンジン22を運転制御するための信号やインバータ41,42へのスイッチング制御信号,充電回路52への制御信号,冷却システム90のウォータポンプ94,98への駆動信号,モータ潤滑システム120のオイルポンプ124,126への駆動信号などが出力されている。なお、電子制御ユニット70は、図示しないクランクポジションセンサからの信号に基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neを演算したり、図示しない回転位置検出センサからの各回転子の回転位置に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2を演算したり、図示しない電流センサからの充放電電流の積算値に基づいてバッテリ50の残容量SOCを演算している。
【0023】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのドライブシャフト32に出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がドライブシャフト32に出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが遊星歯車機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてドライブシャフト32に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が遊星歯車機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がドライブシャフト32に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をドライブシャフト32に出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。ハイブリッド自動車20では、こうした運転モードの切り替えを伴って要求トルクに対応する要求動力がドライブシャフト32に出力されるようエンジン22の目標回転数および目標トルクやモータMG1,MG2の目標トルクを設定し、エンジン22が目標回転数および目標トルクで運転されるよう燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御が行なわれると共に、モータMG1,MG2が目標トルクを必要に応じて制限したトルクで駆動されるようインバータ41,42をスイッチング制御する駆動制御が行なわれている。
【0024】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特にバッテリ50を満充電にした状態でイグニッションオンにより開始したモータ運転モードによる走行を継続している最中にエンジン22を潤滑する際の動作について説明する。図4は電子制御ユニット70により実行される潤滑制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、モータ運転モードでアクセル操作に応じて走行したり停車したりする(以下、単に「モータ走行する」ともいう)ようエンジン22やモータMG1,MG2を制御する図示しない駆動制御ルーチンの実行と並列に所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。なお、エンジン22の運転が停止されているため、エンジン潤滑システム110のオイルポンプ114はその駆動を停止している。
【0025】
潤滑制御ルーチンが実行されると、電子制御ユニット70のCPU72は、まず、エンジン潤滑システム110の油温センサ115からの潤滑油温Toegやモータ潤滑システム120の油温センサ125からの潤滑油温Tomgなど制御に必要なデータを入力し(ステップS110)、入力した潤滑油温Toegが第1温度To1未満であるか否かを判定する処理を実行する(ステップS110)。第1温度To1は、エンジン22が暖機されていない状態を示す温度であり、実施例では常温より若干高い温度(例えば、40℃や45℃など)として予め定められてROM74に記憶された値を用いるものとした。
【0026】
エンジン潤滑システム110の潤滑油温Toegが第1温度To1未満のときには、モータ潤滑システム120のエンジン用オイルポンプ126が駆動されているか否かを判定し(ステップS120)、エンジン用オイルポンプ126が駆動されていないときには、入力したモータ潤滑システム120の潤滑油温Tomgが第1温度To1より高い第2温度To2以上であるか否かを判定する(ステップS130)。第2温度To2は、実施例では、常温近傍のエンジン22を十分に暖めることができる温度(例えば、60℃や65℃など)として予め実験などにより定められてROM74に記憶された値を用いるものとした。
【0027】
モータ潤滑システム120の潤滑油温Tomgが第2温度To2未満のときには、モータ潤滑システム120のモータ用オイルポンプ124を駆動して(ステップS210)、潤滑制御ルーチンを終了する。モータ用オイルポンプ124の駆動は、実施例では、インバータ41,42の上部に潤滑油を供給するのに十分な所定の吐出圧が得られるよう行なうものとした。いまは、モータ走行しているときを考えているから、モータ用オイルポンプ124の駆動と走行用の動力を出力するモータMG2の駆動とによりモータ潤滑システム120の潤滑油温Tomgが徐々に上昇することになる。
【0028】
ステップS130でモータ潤滑システム120の潤滑油温Tomgが第2温度To2以上になったときには、モータ潤滑システム120のエンジン用オイルポンプ126の駆動を開始し(ステップS150)、全閉していた調整バルブ128を開く(実施例では全開する)と共に(ステップS160)、エンジン22がモータリングされるようモータMG1の駆動を開始し(ステップS170)、モータ用オイルポンプ124の駆動を継続して(ステップS210)、潤滑制御ルーチンを終了する。エンジン用オイルポンプ126の駆動は、実施例では、エンジン22の上部に潤滑油を供給するのに十分な吐出圧が得られるよう行なうものとした。モータMG1の駆動は、燃料噴射を停止しているエンジン22を所定回転数(例えば、900rpmや1000rpmなど)で回転させるためのトルクがモータMG1から出力されるようモータMG1の回転数Nm1をフィードバック制御することにより行なうものとした。モータMG1によりエンジン22をモータリングするのは、エンジン22の各摺動部に潤滑油がより行き渡りやすくなるようにするためである。こうした制御により、モータ潤滑システム120の第2温度To2以上になった潤滑油をエンジン22に供給することができるから、モータ走行している最中にエンジン22を暖めることができる。
【0029】
ステップS110でエンジン潤滑システム110の潤滑油温Toegが第1温度To1未満のときにステップS120でモータ潤滑システム120のエンジン用オイルポンプ126が駆動されているときには、モータ潤滑システム120の潤滑油温Tomgが第1温度To1より高く第2温度To2より低い第3温度To3未満であるか否かを判定し(ステップS140)、潤滑油温Tomgが第3温度To3以上のときには、モータ用ポンプ124の駆動を継続して(ステップS210)、潤滑制御ルーチンを終了する。第3温度To3は、実施例では、インバータ41,42およびモータMG1,MG2が駆動するための所定の適温範囲の下限値(例えば、50℃や55℃など)として予め実験などにより定められてROM74に記憶された値を用いるものとした。したがって、エンジン用ポンプ126の駆動を継続してモータ潤滑システム120の潤滑油をエンジン22に供給し続けることにより、モータ走行している最中にエンジン22を更に暖めることができる。
【0030】
モータ潤滑システム120の潤滑油温Tomgが第3温度To3未満になったときには、エンジン用オイルポンプ126の駆動を停止し(ステップS180)、調整バルブ128を全閉すると共に(ステップS190)、エンジン22のモータリングが停止されるようモータMG1の駆動を停止し(ステップS200)、モータ用ポンプ124の駆動を継続して(ステップS210)、潤滑制御ルーチンを終了する。モータ走行の状態によってはモータ潤滑システム120の潤滑油温Tomgが第3温度To3以上の状態を保持する場合もあるが、潤滑油温Tomgが第3温度To3未満になったときにはモータ潤滑システム120の潤滑油をエンジン22に供給するのを停止するから、インバータ41,42やモータMG1,MG2の温度が過剰に低下するのを抑制することができる。なお、これ以降に潤滑油温Toegが第1温度To1未満の状態で潤滑油温Tomgが第2温度To2以上になったときには、モータ潤滑システム120の潤滑油のエンジン22への供給を再開する(ステップS100〜S130,S150〜S170,S210)。
【0031】
ステップS110でエンジン潤滑システム110の潤滑油温Toegが所定温度Tref以上になったときには、エンジン用オイルポンプ126の駆動が停止され且つ調整バルブ128が全閉されると共にモータMG1の駆動が停止された状態でモータ用オイルポンプ124の駆動を継続し(ステップS180〜S210)、潤滑制御ルーチンを終了する。こうして潤滑油温Toegが第1温度To1以上になるまでエンジン22が暖められたときにはモータ潤滑システム120の潤滑油をエンジン22に供給するのを停止するから、モータ潤滑システム120の潤滑油がエンジン22に無駄に供給され続けるのを抑制することができる。
【0032】
図5に、バッテリ50を満充電にした状態でイグニッションオンにより開始したモータ走行を継続している最中にエンジン22を潤滑する際のバッテリ50の残容量SOCと潤滑油温Toegと潤滑油温Tomgとエンジン22への潤滑油の供給量との時間変化の一例を示す。モータ走行によってバッテリ50の残容量SOCが徐々に低下するが、潤滑油温Toegが第1温度To1未満であるエンジン22が暖機されていない状態で潤滑油温Tomgが第2温度To2以上になるとモータ潤滑システム120からエンジン22への潤滑油の供給が開始され(時刻t1)、潤滑油温Tomgが第3温度To3未満になるとこの潤滑油の供給が停止され(時刻t2)、その後もこうした潤滑油の供給の開始−停止−開始が繰り返し行なわれて(時刻t3−t4−t5)、エンジン22が徐々に暖められることになる。そして、バッテリ50の残容量SOCが閾値未満に至ると、モータ走行を終了するようエンジン22を始動することになる(時刻t6)。こうしてモータ走行している最中にエンジン22を暖めることができる。この結果、モータ走行の終了後にエンジン22の運転を伴うエンジン22の暖機を早期に完了して例えば摺動部の摩擦ロスや燃料噴射量の増量を抑制するなどにより無駄な燃料消費を抑制したり、エンジン22の始動時における例えば窒素酸化物(NOx)の排出などによるエミッションの悪化を抑制したりすることができる。また、実施例のハイブリッド自動車20では、モータ潤滑システム120の潤滑油温Tomgが例えば第2温度To2以上などに高くなると冷却システム90によるインバータ41,42やモータMG1,MG2の冷却による熱エネルギの放出量は大きくなり、特にバッテリ50を満充電にした状態でモータ走行を開始することができるハイブリッド自動車20では、バッテリ50の残容量SOCが閾値未満に至ることによりイグニッションオンからエンジン22が始動されるまでの時間がバッテリ50を満充電にすることなくモータ走行を開始するもの比して長く傾向にあるために熱エネルギの放出量は大きくなる傾向にある。これに対し、実施例のハイブリッド自動車20では、冷却システム90のインバータ41,42およびモータMG1,MG2の冷却系から放出され得る熱エネルギをエンジン22を暖めるのに用いることができるから、車両全体のエネルギ効率を向上させることができる。なお、冷却システム90のエンジン22の冷却系はサーモスタット93を備えるため、エンジン22の暖機が完了するまではエンジン22の熱エネルギがエンジン22の冷却系から放出されることはない。さらに、モータ走行の終了後にエンジン22の暖機を早期に完了することができるから、例えば寒冷地などでモータ走行の終了後に冷却システム90のヒータ95を用いて乗員室を暖房するのをより確実に行なうことができるものとなる。
【0033】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、エンジン潤滑システム110とモータ潤滑システム120とを備え、更にモータ潤滑システム120の潤滑油をエンジン22に供給可能なエンジン用オイルポンプ126を備えるから、エンジン22の温度を反映するエンジン潤滑システム110の潤滑油温Toegなどの温度よりモータ潤滑システム120の潤滑油温Tomgが高いときにモータ潤滑システム120の潤滑液をエンジン22に供給することができ、エンジン22の暖機を促進することができる。また、エンジン22の運転が停止されたモータ運転モードの状態で油温センサ115からの潤滑油温Toegが第1温度To1未満且つ油温センサ126からの潤滑油温Tomgが第2温度To2以上のときにエンジン用オイルポンプ126を駆動するよう制御するから、エンジン22の暖機をより確実に促進することができる。さらに、エンジン用オイルポンプ126が駆動されているときに潤滑油温Tomgが第3温度To3未満になったときには、潤滑油温Tomgが第2温度To2以上になるまでエンジン用オイルポンプ126の駆動を停止するから、エンジン用オイルポンプ126の駆動と駆動停止とが頻繁に切り替えられるのを抑制することができると共に、インバータ41,42やモータMG1,MG2の温度が過剰に低下するのを抑制することができる。しかも、エンジン用オイルポンプ126の駆動が開始された以降に潤滑油温Toegが第1温度To1以上になるまでエンジン22が暖められたときにはエンジン用オイルポンプ126の駆動を停止するから、モータ潤滑システム120の潤滑油がエンジン22に無駄に供給され続けることはない。また、モータ潤滑システム120の潤滑油をエンジン22に供給する際にモータMG1によりエンジン22をモータリングするから、エンジン22をより確実に潤滑することができ、エンジン22の暖機をより確実に促進することができる。さらに、モータ潤滑システム120の潤滑油のエンジン22への供給をモータ走行中のモータ用オイルポンプ124の駆動を伴って行なうものとしたから、モータ潤滑システム120の潤滑油を暖めやすくすることができ、エンジン22の暖機をより確実に促進することができる。しかも、モータ潤滑システム120の潤滑油のエンジン22への供給を行なうときには調整バルブ128を開くことによりエンジン用オイルポンプ126が吸入する潤滑油が不足するのを抑制することができると共に、こうした供給を行なわないときには調整バルブ128を閉じることによりモータ潤滑システム120の潤滑油を暖めやすくすることができる。
【0034】
実施例のハイブリッド自動車20では、第3温度To3は第1温度To1より高い温度であるものとしたが、第3温度To3は第1温度To1と同じ温度であるものとしてもよい。こうすれば、エンジン22の暖機をより促進することができる。
【0035】
実施例のハイブリッド自動車20では、潤滑油温Tomgが第2温度To2以上のときにエンジン用オイルポンプ126の駆動を開始し潤滑油温Tomgが第3温度To3未満になったときにエンジン用オイルポンプ126の駆動を停止するものとしたが、第3温度To3を用いることなく潤滑油温Tomgが第2温度To2以上か否かに応じてエンジン用オイルポンプ126の駆動を開始したり停止したりするものとしてもよい。
【0036】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の温度を反映するものとして、油温センサ115からの潤滑油温Toegを用いるものとしたが、水温センサ25からの冷却水温Twegを用いるものとしてもよい。
【0037】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータ潤滑システム120の潤滑油をエンジン22に供給する際に、エンジン用オイルポンプ126の駆動開始及び停止とエンジン22をモータリングするためのモータMG1の駆動開始及び停止とを同時に行なうものとしたが、エンジン用オイルポンプ126の駆動開始後の所定タイミングでモータMG1の駆動を開始すると共にエンジン用オイルポンプ126の駆動停止と同時にモータMG1の駆動を停止することによりエンジン22をモータリングするものとしてもよい。
【0038】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータ潤滑システム120において、エンジン用オイルポンプ126はオイルパン122に貯留された潤滑油を吸入してエンジン22に圧送するものとしたが、モータ潤滑システム120の潤滑油をエンジン22に供給可能であればよいから、モータ用オイルポンプ124からの潤滑液の一部をエンジン22に供給するためのエンジン22の上部への流路を設けると共にこの流路に配置されたエンジン用オイルポンプ126によりモータ用オイルポンプ124からの潤滑液の一部を吸入してエンジン22に圧送するものとしてもよい。
【0039】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータ潤滑システム120にエンジン用オイルポンプ126を備えるものとしたが、オイルポンプ126に代えて、開閉可能なバルブを備えるものとしてもよい。この場合、モータ用オイルポンプ124からの潤滑液の一部をエンジン22に供給するための流路を設けると共にこの流路にバルブを配置し、モータ潤滑システム120の潤滑油をエンジン22に供給する際にはこのバルブ及び調整バルブ128を開くと共にオイルパン122に貯留された潤滑油をインバータ41,42およびモータMG1,MG2とエンジン22とに供給するのに十分な吐出圧が得られるモータ用オイルポンプ124を駆動するものとすればよい。
【0040】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータ潤滑システム120に電動式のモータ用オイルポンプ124を備えるものとしたが、電動式のオイルポンプ124に代えて、車軸の回転により駆動されて潤滑油を圧送する機械式のオイルポンプを備えるものとしてもよいし、駆動輪63a,63bとドライブシャフト32とを連結するギヤ機構のギヤの一部やモータMG2の回転子の一部がオイルパン122やオイルパン122に代わるケースなどからなる貯留部に貯留された潤滑油に浸漬されて車軸の回転やモータMG2の回転に伴って掻き上げられた潤滑油をエンジン22の上部に供給する掻き上げ機構を備えるものとしてもよい。これらの場合、図4の潤滑制御ルーチンにおけるステップS210のモータ用ポンプ124を駆動する処理は必要ない。
【0041】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータ潤滑システム120の潤滑油をエンジン22に供給する際に、調整バルブ128を全開するものとしたが、オイルパン122に取り付けられた図示しないレベルセンサからの信号に基づいてオイルパン122の油量がオイルポンプ124,126の正常駆動に十分な所定量以上となるよう調整バルブ128の開度を調整するものとしてもよい。
【0042】
実施例のハイブリッド自動車20では、オイルパン112とオイルパン122とを接続する流路に調整バルブ128を設けるものとしたが、調整バルブ128に代えて、オイルパン122からオイルパン112への潤滑油の流入を止める逆止弁やオイルパン122の油量がオイルポンプ124,126の正常駆動に十分な所定量以上となるよう設計されたオリフィスを備えるものとしてもよい。
【0043】
実施例のハイブリッド自動車20では、イグニッションオンにより開始したモータ走行を継続している最中の処理として説明したが、エンジン22が一旦は始動されておりその間欠運転に際してモータ走行を行なっている最中の処理に適用するものとしてもよい。この場合、第1温度To1としてエンジン22が暖機されていない状態を示す温度の上限(例えば、60℃や65℃など)を用いると共に第3温度To3を用いることなく第2温度To2として潤滑油温Tomgがエンジン22が暖機された状態を示す温度(例えば、70℃や80℃など)以上か否かに応じてエンジン用オイルポンプ126の駆動を開始したり停止したりするなどとしても構わない。
【0044】
実施例のハイブリッド自動車20では、バッテリ50を満充電にした状態で走行開始が可能となるよう外部電源に接続される車外の充電器54に接続可能な充電回路52を備えるものとしたが、こうした充電回路52を備えないものとしてもよい。
【0045】
実施例では、ドライブシャフト32にエンジン22およびモータMG1が遊星歯車機構30を介して接続されると共にモータMG2が接続されたハイブリッド自動車20に適用するものとしたが、モータMG1を備えずにドライブシャフトにエンジンとモータとが接続されたハイブリッド自動車や、エンジンからの動力の全てを用いて発電機で発電してバッテリを充電すると共にバッテリからの電力を用いて電動機から動力を出力して走行するハイブリッド自動車に適用するものとしてもよい。
【0046】
また、ハイブリッド自動車に適用するものに限定されるものではなく、自動車以外の列車などのハイブリッド車やこうしたハイブリッド車の制御方法の形態としてもよい。
【0047】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、バッテリ50が「蓄電手段」に相当し、「機関用貯留手段」に相当するオイルパン112と「機関用供給手段」に相当するオイルポンプ114とを備えるエンジン潤滑システム110が「機関潤滑系」に相当し、「電動機用貯留手段」に相当するオイルパン122と「電動機用供給手段」に相当するオイルポンプ124とを備えるモータ潤滑システム120のうちオイルポンプ126や調整バルブ128を除くものが「電動機潤滑系」に相当し、オイルポンプ126が「潤滑液供給手段」に相当する。また、油温センサ115や水温センサ25が「機関反映温度検出手段」に相当し、油温センサ125が「潤滑液温度検出手段」に相当し、モータ走行中に図4の潤滑制御ルーチンを実行する電子制御ユニット70が「制御手段」に相当し、モータMG1が「第2電動機」に相当し、調整バルブ128が「接続用バルブ」に相当する。
【0048】
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機としてのモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、走行用の動力を出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「蓄電手段」としては、二次電池としてのバッテリ50に限定されるものではなく、キャパシタなど、電動機と電力のやりとりが可能であれば如何なるものとしても構わない。「機関用貯留手段」,「機関用供給手段」としては、オイルパン112,オイルポンプ114にそれぞれ限定されるものではなく、内燃機関を潤滑するための潤滑液を貯留するもの,機関用貯留手段に貯留された潤滑液を内燃機関の回転に伴って内燃機関に供給可能なものであればそれぞれ如何なるものとしても構わない。「機関潤滑系」としては、エンジン潤滑システム110に限定されるものではなく、「機関用貯留手段」に相当するものと「機関用供給手段」に相当するものとを有するものであれば如何なるものとしても構わない。「電動機用貯留手段」,「電動機用供給手段」としては、オイルパン122,オイルポンプ124にそれぞれ限定されるものではなく、電動機を潤滑するための潤滑液を貯留するもの,電動機用貯留手段に貯留された潤滑液を電動機に供給可能なものであればそれぞれ如何なるものとしても構わない。「電動機潤滑系」としては、モータ潤滑システム120のうちオイルポンプ126や調整バルブ128を除くものに限定されるものではなく、「電動機用貯留手段」に相当するものと「電動機用供給手段」に相当するものとを有するものであれば如何なるものとしても構わない。「潤滑液供給手段」としては、オイルポンプ126に限定されるものではなく、開閉可能なバルブや潤滑油の掻き上げ機構など、電動機潤滑系の潤滑液を内燃機関に供給可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「機関反映温度検出手段」としては、油温センサ115や水温センサ25に限定されるものではなく、内燃機関の温度が反映された機関反映温度を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「潤滑液温度検出手段」としては、油温センサ125に限定されるものではなく、電動機潤滑系の潤滑液の温度である潤滑液温度を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、単一の電子制御ユニットにより構成されるものに限定されるものではなく、複数の電子制御ユニットの組み合わせからなるものとしてもよい。また、「制御手段」としては、モータ走行中に図4の潤滑制御ルーチンを実行するものに限定されるものではなく、内燃機関の運転が停止され且つ検出された機関反映温度が内燃機関が暖機されていない状態を示す第1の温度未満のときに検出された潤滑液温度が第1の温度より高い第2の温度以上のときには、電動機潤滑系の潤滑液が内燃機関に供給されるよう潤滑液供給手段を制御する暖機制御を実行するものであれば、如何なるものとしても構わない。「第2電動機」としては、同期発電電動機としてのモータMG1に限定されるものではなく、スタータモータなど、蓄電手段からの電力を用いて内燃機関をモータリング可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「接続用バルブ」としては、調整バルブ128に限定されるものではなく、機関用貯留手段と電動機用貯留手段とを接続する流路に備える開閉可能なバルブであれば如何なるものとしても構わない。
【0049】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0050】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、ハイブリッド自動車の製造産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】エンジン22やモータMG1,MG2を冷却する冷却システム90の構成の概略を模式的に示す説明図である。
【図3】エンジン22を潤滑するエンジン潤滑システム110およびモータMG1,MG2を潤滑するモータ潤滑システム120の構成の概略を模式的に示す説明図である。
【図4】電子制御ユニット70により実行される潤滑制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図5】モータ走行している最中にエンジン22を潤滑する際のバッテリ50の残容量SOCと潤滑油温Toegと潤滑油温Tomgとエンジン22への潤滑油の供給量との時間変化の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0053】
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、23 シリンダヘッド、24 シリンダブロック、25 水温センサ、26 クランクシャフト、30 遊星歯車機構、32 ドライブシャフト、41,42 インバータ、43 水温センサ、50 バッテリ、52 充電回路、53,55 コネクタ、54 充電器、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、70 電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、90 冷却システム、92,96 ラジエータ、93 サーモスタット、94,98 ウォータポンプ、95 ヒータ、110 エンジン潤滑システム、112,122 オイルパン、114,124,126 オイルポンプ,115,125 油温センサ、128 調整バルブ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、走行用の動力を出力可能な電動機と、前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段とを備えるハイブリッド車であって、
前記内燃機関を潤滑するための潤滑液を貯留する機関用貯留手段と、該機関用貯留手段に貯留された潤滑液を前記内燃機関の回転に伴って該内燃機関に供給可能な機関用供給手段とを有する機関潤滑系と、
前記機関用貯留手段に接続され前記電動機を潤滑するための潤滑液を貯留する電動機用貯留手段と、該電動機用貯留手段に貯留された潤滑液を前記電動機に供給可能な電動機用供給手段とを有する電動機潤滑系と、
前記電動機潤滑系の潤滑液を前記内燃機関に供給可能な潤滑液供給手段と、
を備えるハイブリッド車。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド車であって、
前記潤滑液供給手段は、前記電動機潤滑系の潤滑液を前記内燃機関に圧送可能な圧送機器または開閉可能なバルブにより構成され、該圧送機器の駆動または該バルブの開成により前記電動機潤滑系の潤滑液を前記内燃機関に供給する手段である、
ハイブリッド車。
【請求項3】
請求項1または2記載のハイブリッド車であって、
前記内燃機関の温度が反映された機関反映温度を検出する機関反映温度検出手段と、
前記電動機潤滑系の潤滑液の温度である潤滑液温度を検出する潤滑液温度検出手段と、
前記内燃機関の運転が停止され且つ前記検出された機関反映温度が前記内燃機関が暖機されていない状態を示す第1の温度未満のときに前記検出された潤滑液温度が前記第1の温度より高い第2の温度以上のときには、前記電動機潤滑系の潤滑液が前記内燃機関に供給されるよう前記潤滑液供給手段を制御する暖機制御を実行する制御手段と、
を備えるハイブリッド車。
【請求項4】
請求項3記載のハイブリッド車であって、
前記制御手段は、前記暖機制御の実行を開始した以降に前記検出された潤滑液温度が前記第1の温度以上で前記第2の温度未満の温度である第3の温度未満になったときには、前記検出された潤滑液温度が前記第2の温度以上になるまで前記電動機潤滑系の潤滑液の前記内燃機関への供給が停止されるよう前記潤滑液供給手段を制御する手段である、
ハイブリッド車。
【請求項5】
請求項3または4記載のハイブリッド車であって、
前記制御手段は、前記暖機制御の実行を開始した以降に前記検出された機関反映温度が前記第1の温度以上になったときには、前記電動機潤滑系の潤滑液の前記内燃機関への供給が停止されるよう前記潤滑液供給手段を制御する手段である、
ハイブリッド車。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれか1つの請求項に記載のハイブリッド車であって、
前記蓄電手段からの電力を用いて前記内燃機関をモータリング可能な第2電動機を備え、
前記制御手段は、前記暖機制御を実行する際には前記内燃機関がモータリングされるよう前記第2電動機を制御する手段である、
ハイブリッド車。
【請求項7】
請求項3ないし6のいずれか1つの請求項に記載のハイブリッド車であって、
前記制御手段は、前記内燃機関の運転が停止された状態でアクセル操作に応じて前記電動機からの動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御している最中に前記暖機制御を実行する手段である、
ハイブリッド車。
【請求項8】
請求項7記載のハイブリッド車であって、
前記制御手段は、前記電動機用貯留手段からの潤滑液が前記電動機に供給されるよう前記電動機用供給手段を制御する手段である、
ハイブリッド車。
【請求項9】
請求項3ないし8のいずれか1つの請求項に記載のハイブリッド車であって、
前記機関用貯留手段と前記電動機用貯留手段とを接続する流路に開閉可能な接続用バルブを備え、
前記制御手段は、前記暖機制御を実行する際には前記接続用バルブが開成されるよう該接続用バルブを制御する手段である、
ハイブリッド車。
【請求項10】
内燃機関と、走行用の動力を出力可能な電動機と、前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、前記内燃機関を潤滑するための潤滑液を貯留する機関用貯留手段と該機関用貯留手段に貯留された潤滑液を前記内燃機関の回転に伴って該内燃機関に供給可能な機関用供給手段とを有する機関潤滑系と、前記機関用貯留手段に接続され前記電動機を潤滑するための潤滑液を貯留する電動機用貯留手段と該電動機用貯留手段に貯留された潤滑液を前記電動機に供給可能な電動機用供給手段とを有する電動機潤滑系と、前記電動機潤滑系の潤滑液を前記内燃機関に供給可能な潤滑液供給手段と、を備えるハイブリッド車の制御方法であって、
前記内燃機関の運転が停止され且つ前記内燃機関の温度が反映された機関反映温度が前記内燃機関が暖機されていない状態を示す第1の温度未満のときに前記電動機潤滑系の潤滑液の温度である潤滑液温度が前記第1の温度より高い第2の温度以上のときには、前記電動機潤滑系の潤滑液が前記内燃機関に供給されるよう前記潤滑液供給手段を制御する暖機制御を実行する、
ことを特徴とするハイブリッド車の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−95017(P2010−95017A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265084(P2008−265084)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】