説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】EHCドライバをMG駆動ドライバと兼ねたハイブリッド車両において、触媒暖機を適切に行う。
【解決手段】ハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関、モータジェネレータ、触媒、及び触媒を加熱する加熱手段を有すると共に、EHCドライバをMG駆動ドライバと兼ねたハイブリッド車両に適用される。触媒暖機手段は、EV走行中に触媒の温度が判定温度以下となった場合には、内燃機関の排気ガスによって触媒を暖機させる。また、触媒暖機手段は、車両停車時とEV走行時とで異なる温度を判定温度として用いて、触媒を暖機させるか否かの判定を行う。これにより、車両停車時において加熱手段による触媒暖機が実行され易くなるため、EV走行中の内燃機関の始動頻度を低下させることができる。よって、ドライバビリティ悪化を抑制することができると共に、燃費を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気通路上に電気加熱式触媒を備えたハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、排気通路上に配設された電気加熱式触媒(以下、適宜「EHC(Electrically Heated Catalyst)」と表記する。)を用いて排気ガスを浄化する技術が知られている。例えば、特許文献1には、内燃機関及び電動機を車両の駆動源として有すると共に、排気通路上にEHCが設けられたハイブリッド車両が記載されている。具体的には、このハイブリッド車両では、EV走行中において、バッテリのSOCが低下して内燃機関の始動が必要となった場合に、内燃機関の始動に先立って、EHCへの通電による触媒加熱を行っている。また、当該ハイブリッド車両では、バッテリのSOCが触媒を十分加熱できない状態にある場合には、内燃機関の排気も触媒加熱に利用している。
【0003】
その他にも、本発明に関連する技術が、例えば特許文献2に提案されている。特許文献2には、ハイブリッド車両において、内燃機関の停止中においてEHCへの通電を行う技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−288028号公報
【特許文献2】特開平8−338235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、EHCを制御するにあたってEHCの専用のドライバを設けることが望ましいが、当該ドライバを設けるとコストアップする傾向にある。つまり、ハイブリッド車両における既存のドライバとは別に、EHCの専用のドライバを別途設けると、コストアップする傾向にあると言える。その対応策としては、EHCを制御するためのドライバ(以下、適宜「EHCドライバ」と表記する。)を、モータジェネレータを制御するためのドライバ(以下、適宜「MG駆動ドライバ」と表記する。)によって兼ねさせることが考えられる。
【0006】
しかしながら、EHCドライバをMG駆動ドライバによって兼ねた場合には、モータジェネレータの駆動時に、EHCを通電できないといった不具合が生じるものと考えられる。つまり、EV走行などの走行を行っている際に、EHCへの通電による触媒加熱を行えないといった不具合が生じるものと考えられる。そのため、例えばEV走行が継続された場合には、EHC内の触媒が活性温度以下の温度にまで冷えてしまうことが考えられる。この場合に急加速などにより内燃機関が始動されると、エミッションが悪化してしまう可能性があると言える。
【0007】
なお、上記した特許文献1及び2には、上記のような不具合に対して適切に対処する方法などについては記載されていない。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、EHCドライバをMG駆動ドライバと兼ねたハイブリッド車両において、触媒暖機を適切に行うことが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの観点では、ハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関と、バッテリの電力により作動するモータジェネレータと、前記内燃機関の排気通路上に設けられた触媒と、前記バッテリの電力を利用して前記触媒を加熱する加熱手段と、を有しており、前記加熱手段を制御するためのドライバが、前記モータジェネレータを制御するためのドライバと兼ねて構成されたハイブリッド車両に適用され、前記触媒の温度が所定の判定温度以下である場合に、前記加熱手段によって前記触媒を暖機させる制御、又は前記内燃機関の排気ガスによって前記触媒を暖機させる制御を行う触媒暖機手段を備えており、前記触媒暖機手段は、前記ハイブリッド車両がEV走行しているときに、前記触媒の温度が前記判定温度以下である場合には、前記排気ガスによって前記触媒を暖機させる制御を行うと共に、前記ハイブリッド車両の停車時とEV走行時とで異なる温度を前記判定温度として用いる。
【0010】
上記のハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関及びモータジェネレータを車両の駆動源として有すると共に、触媒と、バッテリの電力を利用して当該触媒を加熱する加熱手段とを有するハイブリッド車両に適用される。加熱手段はヒータであり、触媒及び加熱手段は電気加熱式触媒(EHC)を構成する。また、当該ハイブリッド車両は、加熱手段を制御するためのドライバが、モータジェネレータを制御するためのドライバと兼ねて構成されている。例えば、既存のモータジェネレータを制御するためのドライバが、加熱手段に対する制御も行う。触媒暖機手段は、触媒の温度が所定の判定温度以下である場合に、加熱手段によって触媒を暖機させる制御、又は内燃機関の排気ガスによって触媒を暖機させる制御を行う。具体的には、触媒暖機手段は、EV走行中において触媒の温度が判定温度以下となった場合には、加熱手段による触媒暖機を行わずに、内燃機関の排気ガスによる触媒暖機を行う。こうしているのは、加熱手段を制御するためのドライバを、モータジェネレータを制御するためのドライバと兼ねているため、モータジェネレータが駆動されているEV走行中には、加熱手段による触媒暖機を行うことができないからである。
【0011】
また、触媒暖機手段は、車両停車時とEV走行時とで異なる温度を判定温度として用いて、触媒を暖機させる制御を行うか否かの判定を行う。好適には、触媒暖機手段は、車両停車時には、EV走行時よりも高い温度を判定温度として用いる。これにより、車両停車時において加熱手段による触媒暖機が実行され易くなるため、EV走行時における排気ガスによる触媒暖機の実行頻度を低下させることができる。したがって、EV走行中の内燃機関の始動頻度を低下させることができ、ドライバビリティの悪化を抑制することが可能となると共に、燃費を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係るプラグインハイブリッド車両の概略構成図を示す。
【図2】本実施形態に係る触媒暖機処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
[装置構成]
図1は、本実施形態におけるプラグインハイブリッド車両100の概略構成図を示す。なお、図1中の破線矢印は、信号の入出力を示している。
【0014】
プラグインハイブリッド車両100は、主に、エンジン(内燃機関)1と、駆動輪3と、第1のモータジェネレータMG1と、第2のモータジェネレータMG2と、動力分割機構4と、インバータ5と、バッテリ6と、外部充電装置8と、排気通路12と、電気加熱式触媒(EHC)13と、制御部20と、を備える。プラグインハイブリッド車両100は、家庭用電源などの外部電源から充電した電力を動力として使用するハイブリッド車両である。
【0015】
エンジン1は、燃焼室内で空気と燃料との混合気を燃焼させることによって動力を発生させる。エンジン1は、制御部20との間で、制御信号を送受信することにより制御が行われる。動力分割機構4は、差動作用を生じるように構成されており、エンジン1より伝達された動力を第1のモータジェネレータMG1と第2のモータジェネレータMG2の回転軸とに分配する。第1のモータジェネレータMG1は、主に、動力分割機構4より分配された動力が伝達されて発電を行う。インバータ5は、制御部20により制御され、第1のモータジェネレータMG1、第2のモータジェネレータMG2、バッテリ6間で電力の授受を行う。基本的には、インバータ5は、第1のモータジェネレータMG1で発電された電力についての第2のモータジェネレータMG2やバッテリ6への印加、或いはバッテリ6に充電された電力についての第2のモータジェネレータMG2への印加を選択的に行う。第2のモータジェネレータMG2は、主として、プラグインハイブリッド車両100においてEV走行を行う場合に、インバータ5を介して供給された電力により駆動力を発生する。減速機2は、第2のモータジェネレータMG2及び/又はエンジン1から伝達された動力を減速して、当該減速した動力をドライブシャフト3aを介して駆動輪3に伝達する。
【0016】
なお、以下では、第1のモータジェネレータMG1及び第2のモータジェネレータMG2のことを単に「モータジェネレータMG」と表記する。
【0017】
バッテリ6は、第2のモータジェネレータMG2やプラグインハイブリッド車両100内に設けられた種々の電気機器(不図示)を駆動するための電源として機能することが可能に構成された充電可能な蓄電池である。バッテリ6は、外部充電装置8が外部電源(不図示)に接続された状態で、当該外部電源から電力の供給を受けることによって充電される。バッテリ6には、バッテリ6の充電状態(SOC;State Of Charge)を検出可能に構成されたSOCセンサ15が設けられている。SOCセンサ15は、検出したSOCに対応する検出信号S15を制御部20に供給する。
【0018】
エンジン1での燃焼によって発生した排気ガスは、図1中の実線矢印で示すように、排気通路12を流れていく。排気通路12上には、排気ガスを浄化可能に構成されたEHC13が設けられている。EHC13は、排気ガス中のNOxやSOxなどを浄化可能な触媒、及び、通電されることで当該触媒を加熱可能なヒータ(詳しくは電気ヒータ)を備える。EHC13内のヒータは、加熱手段に相当し、バッテリ6の電力を利用して触媒を加熱する。また、ヒータは、制御部20から供給される制御信号によって、その作動が制御される。以下では、「触媒」の文言を用いた場合にはEHC13が有する触媒を指すものとし、「ヒータ」の文言を用いた場合にはEHC13が有するヒータを指すものとする。EHC13には、触媒の温度(触媒床温)を検出可能に構成された温度センサ14が設けられている。温度センサ14は、検出した触媒床温に対応する検出信号S14を制御部20に供給する。
【0019】
制御部20は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などを備え、プラグインハイブリッド車両100内の各構成要素に対して種々の制御を行う。制御部20は、例えばハイブリッドECU、エンジンECU、及びモータECUを具備して構成されている。また、制御部20は、EHC13を制御するためのEHCドライバが、モータジェネレータMGを制御するためのMG駆動ドライバ(モータECUに相当する)によって兼ねて構成されている。このように構成した場合、EHC13の専用のドライバを別途設ける構成と比較して、低コストでEHC通電システムを構成することが可能となる。
【0020】
本実施形態では、制御部20は、EHC13内の触媒を暖機するための制御を行う。具体的には、制御部20は、温度センサ14が検出した触媒床温に対応する検出信号S14、SOCセンサ15が検出したSOCに対応する検出信号S15、及び車速センサ16が検出した車速に対応する検出信号S16を取得し、これらに基づいて触媒を暖機するための制御を行う。この場合、制御部20は、EHC13内のヒータを通電することで触媒を加熱する制御(以下、適宜「ヒータによる触媒暖機」と呼ぶ。)、又はエンジン1の排気ガスによって触媒を加熱する制御(以下、適宜「エンジン1による触媒暖機」と呼ぶ。)を行う。詳しくは、制御部20は、触媒床温を活性温度(触媒が最適な排気浄化性能を発揮するような温度である。以下同様とする。)以上の温度に維持するべく、触媒床温が所定の判定温度(以下、「触媒暖機判定温度」と呼ぶ。)以下である場合に、ヒータによる触媒暖機又はエンジン1による触媒暖機を行う。このように、制御部20は、本発明におけるハイブリッド車両の制御装置に相当し、触媒暖機手段として機能する。
【0021】
なお、上記したプラグインハイブリッド車両100は、基本的には、SOCが所定値以上である場合(つまりバッテリ6のSOCが十分残存している場合)には、第2のモータジェネレータMG2の駆動力のみを走行用の動力として用いるEV走行を行う。これに対して、プラグインハイブリッド車両100は、SOCが所定値未満である場合(つまりバッテリ6のSOCが十分残存していない場合)や、高負荷(高速)走行を行っている場合には、エンジン1の駆動力を併用するHV走行を行う。
[触媒暖機方法]
次に、本実施形態において制御部20が行う触媒暖機方法について説明する。ここでは、本実施形態における触媒暖機方法の基本概念を説明する。
【0022】
本実施形態では、制御部20は、プラグインハイブリッド車両100がEV走行を行っている場合には、エンジン1による触媒暖機を行う。具体的には、制御部20は、EV走行中において、触媒床温が触媒暖機判定温度以下である場合に、エンジン1による触媒暖機を行う。つまり、制御部20は、バッテリ6のSOCが十分残存していても、ヒータによる触媒暖機を行わずに、エンジン1による触媒暖機を行う。
【0023】
このようにエンジン1による触媒暖機を行っているのは、前述したようにEHCドライバをMG駆動ドライバによって兼ねているため、EHC13内のヒータ及びモータジェネレータMGのいずれか一方のみにしか電力を供給できないので、ヒータ及びモータジェネレータMGの両方を同時に駆動することができないからである。即ち、モータジェネレータMGが駆動されているEV走行中には、ヒータを作動させることができないため、ヒータによる触媒暖機を行うことができないからである。
【0024】
したがって、本実施形態では、制御部20は、EV走行中において触媒床温が触媒暖機判定温度以下になった場合には、エンジン1による触媒暖機を行う。これにより、EV走行時などにおいて、触媒床温を活性温度以上の温度に適切に維持することが可能となる。なお、上記したようなことから、ヒータによる触媒暖機は、基本的にはプラグインハイブリッド車両100が停車(停止)している際に行われる。具体的には、制御部20は、車両停車時において触媒床温が触媒暖機判定温度以下になった場合に、ヒータによる触媒暖機を行う。
【0025】
なお、「触媒暖機判定温度」は、触媒床温を活性温度以上の温度に維持するべく、触媒暖機を実行していない場合において触媒暖機の実行を開始すべきか否かを判定するために用いられる。そのため、触媒暖機判定温度は、触媒の活性温度に基づいて設定される。例えば、触媒の活性温度が350[℃]〜400[℃]である場合には、触媒暖機判定温度は350[℃]程度の温度に設定される。
【0026】
また、本実施形態では、制御部20は、触媒床温が目標温度に達するまで触媒暖機を継続する。この目標温度は、触媒暖機を実行している場合において触媒暖機を継続すべきか否かを判定するために用いられ、触媒暖機判定温度よりも少なくとも高い温度に設定される。例えば、触媒暖機判定温度が350[℃]程度の温度に設定された場合には、目標温度は500[℃]程度の温度に設定される。このように目標温度に達するまで触媒暖機を継続するのは、触媒床温が触媒暖機判定温度付近の温度を変動することに起因して、触媒暖機の実行と停止とが繰り返されてしまうことを防止するためである。
【0027】
具体的には、制御部20は、エンジン1による触媒暖機の実行中である場合には、プラグインハイブリッド車両100が停車しても、触媒床温が目標温度に達するまで、エンジン1による触媒暖機を継続する。これにより、エンジン1の始動頻度を低下させることができ、つまりエンジン1の始動(起動)と停止とが繰り返してしまうことを抑制することができ、ドライバビリティの悪化(ドライバが覚える違和感を意味する。以下同様とする。)を抑制することが可能となる。また、制御部20は、触媒床温が目標温度に達するまで、プラグインハイブリッド車両100が停車するごとにヒータによる触媒暖機を繰り返す。こうしているのは、ヒータによる触媒暖機を実行した場合にはエンジン1が始動されないため、ドライバビリティの悪化が生じる可能性がかなり低いからである。なお、制御部20は、プラグインハイブリッド車両100が停車した際にエンジン1による触媒暖機が行われていない場合に、このようなヒータによる触媒暖機を行う。
【0028】
更に、本実施形態では、制御部20は、プラグインハイブリッド車両100の停車時とEV走行時とで、触媒を暖機するか否かを判定するための触媒暖機判定温度として異なる温度を用いる。つまり、本実施形態では、ヒータによる触媒暖機を行うような状況(車両停車時に対応する)と、エンジン1による触媒暖機を行うような状況(EV走行時に対応する)とで、触媒暖機判定温度を異ならせる。具体的には、制御部20は、車両停車時には、EV走行時よりも、触媒暖機判定温度として高い温度を用いる。例えば、制御部20は、EV走行時には触媒の活性温度に応じた温度を触媒暖機判定温度として用い、車両停車時には当該触媒の活性温度に応じた温度よりも高い温度を触媒暖機判定温度として用いる。一例としては、制御部20は、EV走行時には350[℃]を触媒暖機判定温度として用い、車両停車時には400[℃]を触媒暖機判定温度として用いる。
【0029】
このように車両停車時に用いる触媒暖機判定温度を高くして触媒を暖機するか否かの判定を行うことにより、車両停車時において、ヒータによる触媒暖機が実行され易くなる、即ちヒータによって触媒活性温度を維持する機会が増加する。そのため、EV走行時におけるエンジン1による触媒暖機の実行頻度を低下させることができる、即ちEV走行中のエンジン1の始動頻度を低下させることができる。これにより、エンジン1が作動されないEV走行を行う頻度を増加させることができ、ドライバビリティの悪化を抑制することが可能となると共に、燃費を向上させることが可能となる。
[触媒暖機処理]
次に、図2を参照して、本実施形態に係る触媒暖機処理について具体的に説明する。図2は、本実施形態に係る触媒暖機処理を示すフローチャートである。当該処理は、制御部20によって、所定の周期で繰り返し実行される。
【0030】
ここでは、車両停車時に使用する触媒暖機判定温度として400[℃]を用い、EV走行時に使用する触媒暖機判定温度として350[℃]を用いた場合を例に挙げる。また、このように触媒暖機判定温度を異ならせたことに合わせて、車両停車時とEV走行時とで目標温度を同様に異ならせた場合を例に挙げる。具体的には、車両停車時に使用する目標温度として550[℃]を用い、EV走行時に使用する目標温度として500[℃]を用いた場合を例に挙げる。
【0031】
また、図2に示す触媒暖機処理では、エンジン1による触媒暖機の実行フラグを「XENON」と表記し、ヒータによる触媒暖機の実行フラグを「XCAON」と表記している。具体的には、エンジン1による触媒暖機を実行する場合に「XENON=1」に設定され、エンジン1による触媒暖機を実行しない場合(例えば中止する場合)に「XENON=0」に設定される。また、ヒータによる触媒暖機を実行する場合に「XCAON=1」に設定され、ヒータによる触媒暖機を実行しない場合(例えば中止する場合)に「XCAON=0」に設定される。
【0032】
まず、ステップS101では、制御部20は、SOCセンサ15が検出したSOC(検出信号S15に対応する)を取得する。そして、処理はステップS102に進む。ステップS102では、制御部20は、ステップS101で取得されたSOCが30[%]よりも大きいか否かを判定する。
【0033】
SOCが30[%]よりも大きい場合(ステップS102;Yes)、つまりバッテリ6のSOCが十分残存している場合、処理はステップS103に進む。この場合には、制御部20は、プラグインハイブリッド車両100にEV走行を行わせる。
【0034】
これに対して、SOCが30[%]未満である場合(ステップS102;Yes)、つまりバッテリ6のSOCが十分残存していない場合、処理はステップS110に進む。ステップS110では、制御部20は、通常のHV制御を実行する。具体的には、制御部20は、エンジン1の動力を用いたHV走行を行うための制御、及びエンジン1の動作によって発電された電力をバッテリ6に充電させるための制御を行う。そして、処理は終了する。このように通常のHV制御を実行した場合には、エンジン1が動作されるため、エンジン1からの排気ガスによって触媒が加熱されるので、触媒床温が冷えることによるエミッション悪化は生じないと言える。
【0035】
ステップS103では、制御部20は、温度センサ14が検出した触媒床温(検出信号S14に対応する。以下では、触媒床温を適宜「Tca」と表記する。)を取得する。そして、処理はステップS104に進む。ステップS104では、制御部20は、エンジン1による触媒暖機実行フラグXENONが「XENON=0」であるか否かを判定する。つまり、制御部20は、エンジン1による触媒暖機を実行していないか否かを判定する。「XENON=0」である場合(ステップS104;Yes)、処理はステップS105に進み、「XENON=1」である場合(ステップS104;No)、処理はステップS111に進む。
【0036】
ステップS105では、制御部20は、ステップS103で取得された触媒床温Tcaが400[℃]以下であるか否かを判定する。ここでは、制御部20は、車両停車時に使用する触媒暖機判定温度を用いて、触媒を暖機するか否かの判定を行っている。触媒床温Tcaが400[℃]以下である場合(ステップS105;Yes)、処理はステップS106に進み、触媒床温Tcaが400[℃]より高い場合(ステップS105;No)、処理はステップS113に進む。
【0037】
ステップS106では、制御部20は、車速センサ16が検出した車速(検出信号S16に対応する。以下では、車速を適宜「spd」と表記する。)を取得する。そして、処理はステップS107に進む。ステップS107では、制御部20は、ステップS106で取得された車速spdが0[km/h]であるか否かを判定する、言い換えると車両停車時であるか否かを判定する。車速spdが0[km/h]である場合(ステップS107;Yes)、処理はステップS108に進み、車速spdが0[km/h]でない場合(ステップS107;No)、処理はステップS116に進む。
【0038】
ステップS108では、制御部20は、ヒータによる触媒暖機実行フラグXCAONを「XCAON=1」に設定する。上記のようにステップS108に進んだ状況では、エンジン1による触媒暖機を実行しておらず、且つ触媒床温Tcaが触媒暖機判定温度以下であり、尚且つ車両停車時であるため、制御部20は、ヒータによる触媒暖機を実行すべく当該設定を行う。そして、処理はステップS109に進む。ステップS109では、制御部20は、ヒータによる触媒暖機を実行する。この後、処理は終了する。このようなステップS107〜S109の処理によれば、車両停車ごとにヒータによる触媒暖機が繰り返されることとなる。具体的には、触媒床温Tcaが目標温度に達するまで、ヒータによる触媒暖機が繰り返されることとなる。
【0039】
次に、ステップS111以降の処理について説明する。ステップS111の処理は、「XENON=1」である場合(ステップS104;No)に行われる。つまり、エンジン1による触媒暖機を実行している場合に行われる。
【0040】
ステップS111では、制御部20は、触媒床温Tcaが500[℃]以下であるか否かを判定する。ここでは、制御部20は、目標温度(詳しくはEV走行時に使用する目標温度)を用いて、触媒暖機を継続するか否かの判定を行っている。
【0041】
触媒床温Tcaが500[℃]以下である場合(ステップS111;Yes)、処理はステップS118に進む。この場合には、触媒床温Tcaが目標温度に達していないため、制御部20は、エンジン1による触媒暖機を実行する(ステップS118)。そして、処理は終了する。このようなステップS111、S118の処理は、車速spdに対する判定(ステップS107)を行わずに実行される。具体的には、当該処理は、エンジン1による触媒暖機が実行されている場合に(ステップS104;No)、車速spdの値に関わらずに実行される。したがって、ステップS111、S118の処理によれば、プラグインハイブリッド車両100が停車しても、触媒床温Tcaが目標温度に達するまで、エンジン1による触媒暖機が継続されることとなる。
【0042】
これに対して、触媒床温Tcaが500[℃]より高い場合(ステップS111;No)、処理はステップS112に進む。この場合には、触媒床温Tcaが目標温度に達しているため、制御部20は、エンジン1による触媒暖機を中止すると共に、エンジン1による触媒暖機実行フラグXENONを「XENON=0」に設定する(ステップS112)。そして、処理は終了する。
【0043】
次に、ステップS113以降の処理について説明する。ステップS113の処理は、触媒床温Tcaが400[℃]より高い場合(ステップS105;No)に行われる。つまり、触媒床温Tcaが触媒暖機判定温度(詳しくは車両停車時に使用する触媒暖機判定温度)より高い場合に行われる。
【0044】
ステップS113では、制御部20は、ヒータによる触媒暖機実行フラグXCAONが「XCAON=1」であるか否かを判定する。つまり、制御部20は、ヒータによる触媒暖機を実行しているか否かを判定する。「XCAON=1」である場合(ステップS113;Yes)、処理はステップS114に進み、「XCAON=0」である場合(ステップS113;No)、処理は終了する。
【0045】
ステップS114では、制御部20は、触媒床温Tcaが550[℃]以下であるか否かを判定する。ここでは、制御部20は、目標温度(詳しくは車両停車時に使用する目標温度)を用いて、触媒暖機を継続するか否かの判定を行っている。触媒床温Tcaが550[℃]以下である場合(ステップS114;Yes)、処理はステップS107に進む。この場合には、触媒床温Tcaが目標温度に達していないので、制御部20は、触媒暖機を継続するために、上記したステップS107以降の処理を行う。
【0046】
これに対して、触媒床温Tcaが550[℃]より高い場合(ステップS114;No)、処理はステップS115に進む。この場合には、触媒床温Tcaが目標温度に達しているため、制御部20は、ヒータによる触媒暖機を中止すると共に、ヒータによる触媒暖機実行フラグXCAONを「XCAON=0」に設定する(ステップS115)。そして、処理は終了する。
【0047】
次に、ステップS116以降の処理について説明する。ステップS116の処理は、車速spdが0[km/h]でない場合(ステップS107;No)に行われる。つまり、EV走行が行われている場合に行われる。
【0048】
ステップS116では、制御部20は、触媒床温Tcaが350[℃]以下であるか否かを判定する。ここでは、制御部20は、EV走行時に使用する触媒暖機判定温度を用いて、触媒を暖機するか否かの判定を行っている。触媒床温Tcaが350[℃]以下である場合(ステップS116;Yes)、処理はステップS117に進む。
【0049】
ステップS117では、制御部20は、エンジン1による触媒暖機実行フラグXENONを「XENON=1」に設定すると共に、ヒータによる触媒暖機実行フラグXCAONを「XCAON=0」に設定する。ステップS117に進んだ状況では、エンジン1による触媒暖機を実行しておらず、且つ触媒床温Tcaが触媒暖機判定温度以下であり、尚且つEV走行時であるため、制御部20は、エンジン1による触媒暖機を実行すべく当該設定を行う。そして、処理はステップS118に進む。ステップS118では、制御部20は、エンジン1による触媒暖機を実行する。この後、処理は終了する。このようなステップS116〜S118の処理によれば、バッテリ6のSOCが十分残存していても、EV走行中において触媒床温が触媒暖機判定温度以下になった場合に、エンジン1による触媒暖機が行われることとなる。
【0050】
これに対して、触媒床温Tcaが350[℃]より高い場合(ステップS116;No)、処理は終了する。この場合には、触媒床温Tcaが触媒暖機判定温度より高いため、制御部20は、エンジン1による触媒暖機を行わない。
【0051】
ここで、ステップS105〜S109及びステップS116〜S118の処理によれば、車両停車時においては触媒床温Tcaが400[℃]以下であればヒータによる触媒暖機が実行されることとなり、これに対して、EV走行時においては触媒床温Tcaが400[℃]以下であっても350[℃]よりも高い場合にはエンジン1による触媒暖機が実行されないこととなる。このことから、車両停車時に用いる触媒暖機判定温度をEV走行時に用いる触媒暖機判定温度よりも高くして触媒を暖機するか否かの判定を行うことにより、車両停車時においてヒータによる触媒暖機が実行され易くなると言える。
【0052】
したがって、本実施形態に係る触媒暖機処理によれば、車両停車時においてヒータによって触媒活性温度を維持する機会が増加するため、EV走行中におけるエンジン1の始動頻度を低下させることができる。したがって、エンジン1が作動されないEV走行を行う頻度を増加させることができ、ドライバビリティの悪化を抑制することが可能となると共に、燃費を向上させることが可能となる。
【0053】
なお、本発明の適用は、プラグインハイブリッド車両に限定はされない。本発明は、通常のハイブリッド車両にも適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 エンジン
5 インバータ
6 バッテリ
8 外部充電装置
12 排気通路
13 EHC(電気加熱式触媒)
14 温度センサ
15 SOCセンサ
16 車速センサ
20 制御部
MG1 第1のモータジェネレータ
MG2 第2のモータジェネレータ
100 プラグインハイブリッド車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、バッテリの電力により作動するモータジェネレータと、前記内燃機関の排気通路上に設けられた触媒と、前記バッテリの電力を利用して前記触媒を加熱する加熱手段と、を有しており、前記加熱手段を制御するためのドライバが、前記モータジェネレータを制御するためのドライバと兼ねて構成されたハイブリッド車両に適用され、
前記触媒の温度が所定の判定温度以下である場合に、前記加熱手段によって前記触媒を暖機させる制御、又は前記内燃機関の排気ガスによって前記触媒を暖機させる制御を行う触媒暖機手段を備えており、
前記触媒暖機手段は、
前記ハイブリッド車両がEV走行しているときに、前記触媒の温度が前記判定温度以下である場合には、前記排気ガスによって前記触媒を暖機させる制御を行うと共に、
前記ハイブリッド車両の停車時とEV走行時とで異なる温度を前記判定温度として用いることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記触媒暖機手段は、前記ハイブリッド車両の停車時には、前記EV走行時よりも高い温度を前記判定温度として用いる請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−162040(P2011−162040A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26470(P2010−26470)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】