説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】ベルトの寿命の残りが少ない場合に、ベルトを延命させることができるハイブリッド車両の制御装置を提供すること。
【解決手段】ハイブリッドECUは、タイミングベルトの有効張力を検出し(ステップS11)、タイミングベルトの有効張力を積算し(ステップS12)、積算した有効張力積算値が、寿命判定値以上であるか否かを判定し(ステップS13)、有効張力積算値が寿命判定値以上であると判定した場合には、タイミングベルトが寿命に達したと判定し、エンジン回転数がタイミングベルトを共振させる回転数に近いか否かを判定し(ステップS16)、エンジン回転数がタイミングベルトを共振させる回転数に近いと判定した場合には、エンジン回転数を変更する(ステップS17)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転力を伝達するベルトを備えたハイブリッド車両の制御装置に関し、特に、内燃機関から出力される回転力が伝達されるベルトのフェールセーフ機能を有するハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両に搭載されるエンジンは、出力軸としてのクランクシャフトを有しており、クランクシャフトには、吸排気バルブの開閉と、ピストンの上下動とのタイミングを適切に計るためのタイミングベルトや、補機類に動力を伝達するための補機ベルトが巻き掛けられている。
【0003】
このようなベルトは、エンジンの始動時等にかかる大きな力や偏った力および経年変化により劣化し、張力が低下してしまうということが知られている。ベルトの張力が低下してしまうと、吸排気バルブの開閉と、ピストンの上下動とのタイミングがずれてしまったり、補機類に対する動力伝達の効率が低下したりする可能性が生じる。
【0004】
補機ベルトを有する車両に用いられるものとして、エンジンの始動に際してベルトの切断を判定し、ベルトが切断していると判定した場合に、補機駆動用モータに代えて、駆動用モータでエンジンを始動するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
上述した従来の技術は、エンジンの始動に対するフェールセーフ機能を有しているものの、吸排気バルブの開閉と、ピストンの上下動とのタイミングを計るためのタイミングベルトのフェールセーフ機能に対して何ら考慮されていなかった。
【0006】
これに対し、ベルトの寿命の残りが少なくなったときに、ベルトの交換を促すものがあり、例えば、ベルトの寿命の残りが少ないと判断した場合に、ベルトを交換するように警告する疲労警告システムが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
この疲労警告システムは、エンジンの回転数が所定の基準回転数を超えている時間に基づいて、疲労度を累積し、累積した疲労度が所定の基準疲労度に至った場合に、タイミングベルトが疲労したことを警告するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−159385号公報
【特許文献2】特開2007−239802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来のシステムにおいては、ベルトの寿命の残りが少ないことを警告することができるものの、警告を発してからベルトが交換されるまでのエンジンの駆動状態によっては、ベルトの寿命を縮めてしまうことがあるといった課題があった。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、ベルトの寿命の残りが少ない場合に、ベルトを延命させることができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のハイブリッド車両の制御装置は、上記目的を達成するため、(1)内燃機関および回転電機よりなる駆動源と、前記内燃機関から出力される回転力が伝達されるベルトとを備えたハイブリッド車両の制御装置において、前記ベルトが劣化状態であるか否かを判定するベルト劣化判定手段と、前記ベルト劣化判定手段により前記ベルトが劣化状態であると判定されたことを条件として、前記ベルトを共振させる共振回転数域に前記内燃機関の回転数が入るか否かを判定し、前記共振回転数域に前記内燃機関の回転数が入ると判定したことを条件として、前記内燃機関の回転数を変更するよう制御する制御手段とを備えている。
【0012】
この構成により、内燃機関の回転がベルトを共振させないように、内燃機関の回転数を制御することにより、ベルトに大きな張力がかかることを防止するため、ベルトの寿命の残りが少ない場合に、ベルトを延命させることができる。
【0013】
また、上記(1)に記載のハイブリッド車両の制御装置において、(2)前記ベルト劣化判定手段は、前記ベルトの有効張力を積算し、前記有効張力の積算値が規定値以上であることを条件として、前記ベルトが劣化状態であると判定するようにしてもよい。
【0014】
この構成により、ベルトが劣化状態であるか否かを判定することができる。
【0015】
また、上記(1)または(2)に記載のハイブリッド車両の制御装置において、(3)前記制御手段は、前記ベルト劣化判定手段により前記ベルトが劣化状態であると判定されたことに加え、前記内燃機関の動力によってバッテリが充電されている状態にあることを条件として、前記共振回転数域に前記内燃機関の回転数が入るか否かを判定し、前記共振回転数域に前記内燃機関の回転数が入ると判定したことを条件として、前記内燃機関の回転数を変更するよう制御するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ベルトの寿命の残りが少ない場合に、ベルトを延命させることができるハイブリッド車両の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の制御装置を搭載した車両の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図1に示すエンジンの概略断面図である。
【図3】図2に示すエンジンの概略斜視図である。
【図4】タイミングベルトの寿命を説明するためのS−N線図である。
【図5】エンジン回転数とタイミングベルトの有効張力との関係を表すグラフである。
【図6】本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の制御装置のタイミングベルト延命動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明においては、動力分割式のハイブリッド車両に本発明に係るハイブリッド車両の制御装置を適用した場合を例に説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態におけるハイブリッド車両10は、内燃機関を構成するエンジン12と、エンジン12によって発生された動力をドライブシャフト13L、13Rを介して駆動輪14L、14Rに伝達するための動力伝達装置15と、ハイブリッド車両10の各部を制御するハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「ハイブリッドECU」という)100と、エンジン12を制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)101と、を備えている。
【0020】
エンジンECU101は、図示を省略するが、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、フラッシュメモリと、入出力ポートと、を備えたマイクロプロセッサによって構成されている。
【0021】
エンジンECU101のROMには、当該マイクロプロセッサをエンジンECU101として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、エンジンECU101のCPUがRAMを作業領域としてROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該マイクロプロセッサは、エンジンECU101として機能する。
【0022】
エンジンECU101は、ハイブリッドECU100と高速CAN(Controller Area Network)を介して通信するようになっており、ハイブリッドECU100から入力される制御信号およびエンジン12の運転状態を検出する各種センサから入力される検出信号等に基づいて、燃料噴射制御、点火制御および吸入空気量調節制御等のエンジン12の運転制御を行うとともに、必要に応じてエンジン12の運転状態に関するデータをハイブリッドECU100に出力するようになっている。
【0023】
動力伝達装置15は、電力と回転力とを相互に変換するモータジェネレータMG1、MG2、モータジェネレータMG2から伝達された回転を減速して駆動トルクを増幅する減速機17、および、エンジン12によって発生された動力を駆動輪14L、14R側に伝達する動力とモータジェネレータMG1を駆動する動力とに分割する動力分割機構18を備えている。なお、本実施の形態において、モータジェネレータMG1、MG2の少なくとも一方は、本発明における回転電機を構成する。
【0024】
動力分割機構18は、エンジン12の出力軸としてのクランクシャフト19の端部にダンパ24を介して結合された入力軸26と、入力軸26に軸中心が貫通された中空形状のサンギヤ軸20に結合されたサンギヤ21と、サンギヤ21と回転軸が一致するようにサンギヤ21の同心円上に配置されたリングギヤ22と、サンギヤ21に噛合すると共にリングギヤ22に噛合するようにサンギヤ21とリングギヤ22との間に配置された複数のピニオンギヤ23と、ピニオンギヤ23を自転自在に保持すると共に入力軸26に対して公転自在に保持するキャリア25と、を備えている。
【0025】
このように、動力分割機構18は、サンギヤ21、リングギヤ22、ピニオンギヤ23およびキャリア25を回転要素として、エンジン12によって発生された動力を分割すると共に、モータジェネレータMG1および駆動輪14L、14R側から伝達された動力を統合する遊星歯車機構を構成している。
【0026】
したがって、動力分割機構18は、エンジン12からキャリア25に入力された動力を、サンギヤ21側と、リングギヤ22側と、にそのギヤ比に応じて分割することにより、分割された一方の動力によってモータジェネレータMG1を発電機として機能させるとともに、分割された他方の動力によって駆動輪14L、14Rを回転させるようになっている。
【0027】
また、動力分割機構18は、駆動電力が供給されたモータジェネレータMG1が電動機として機能し、エンジン12が駆動しているときには、エンジン12からキャリア25に入力された動力と、モータジェネレータMG1からサンギヤ21に入力された動力とを統合してリングギヤ22から出力するようになっている。
【0028】
また、動力分割機構18は、駆動電力が供給されたモータジェネレータMG1が電動機として機能し、エンジン12が停止しているときには、モータジェネレータMG1からサンギヤ21に入力された動力をキャリア25に出力することにより、クランクシャフト19を回転させ、エンジン12を始動させるようになっている。このように、モータジェネレータMG1は、動力分割機構18と協働して、スタータとしても機能するようになっている。
【0029】
モータジェネレータMG1は、回転磁界を形成するステータ28と、ステータ28の内部に配置され、複数の永久磁石が埋め込まれているロータ29と、を備えており、ステータ28は、ステータコアおよびステータコアに巻き掛けられた三相コイルを備えている。
【0030】
ロータ29は、動力分割機構18のサンギヤ21と一体に回転するサンギヤ軸20に結合されており、ステータ28のステータコアは、例えば、電磁鋼板の薄板を積層して形成され、本体ケース51の内周部に固定されている。
【0031】
このように構成されたモータジェネレータMG1において、ステータ28の三相コイルに三相交流電力が供給されると、ステータ28によって回転磁界が形成され、この回転磁界にロータ29に埋め込まれた永久磁石が引かれることにより、ロータ29が回転駆動される。このように、モータジェネレータMG1は、電動機として機能するようになっている。
【0032】
また、ロータ29に埋め込まれた永久磁石が回転すると、回転磁界が形成され、この回転磁界によりステータ28の三相コイルに誘導電流が流れることにより、三相コイルの両端に電力が発生する。このように、モータジェネレータMG1は、発電機としても機能するようになっている。
【0033】
モータジェネレータMG2は、回転磁界を形成するステータ32と、ステータ32の内部に配置され複数の永久磁石が埋め込まれたロータ33と、を備えており、ステータ32は、ステータコアおよびステータコアに巻き掛けられた三相コイルを備えている。
【0034】
ロータ33は、減速機17に結合されたロータシャフト36に結合されており、ステータ32のステータコアは、例えば、電磁鋼板の薄板を積層して形成され、本体ケース51の内周部に固定されている。
【0035】
このように構成されたモータジェネレータMG2において、ステータ32の三相コイルに三相交流電力が供給されると、ステータ32によって回転磁界が形成され、この回転磁界にロータ33に埋め込まれた永久磁石が引かれることにより、ロータ33が回転駆動される。このように、モータジェネレータMG2は、電動機として機能するようになっている。
【0036】
また、ロータ33に埋め込まれた永久磁石が回転すると、回転磁界が形成され、この回転磁界によりステータ32の三相コイルに誘導電流が流れることにより、三相コイルの両端に電力が発生する。このように、モータジェネレータMG2は、発電機としても機能するようになっている。
【0037】
減速機17は、モータジェネレータMG2のロータ33に結合されたロータシャフト36に結合されたサンギヤ37と、回転軸がサンギヤ37と一致するようにサンギヤ37の同心円上に配置されたリングギヤ39と、サンギヤ37に噛合すると共にリングギヤ39に噛合するようにサンギヤ37とリングギヤ39との間に配置された複数のピニオンギヤ40と、一端が本体ケース51に固定され、他端がピニオンギヤ40を自転自在に支持する支持軸を有するキャリア38と、を備えている。
【0038】
このように、減速機17は、サンギヤ37、リングギヤ39およびピニオンギヤ40を回転要素として、モータジェネレータMG2から伝達された回転を減速して駆動トルクを増幅する遊星歯車機構を構成している。
【0039】
したがって、減速機17は、駆動電力が供給されたモータジェネレータMG2が電動機として機能しているときには、モータジェネレータMG2から伝達された回転を減速して駆動トルクを増幅してリングギヤ39から出力するようになっている。
【0040】
また、減速機17は、リングギヤ39に入力された動力による回転を加速して駆動トルクを減衰させてサンギヤ37から出力することにより、モータジェネレータMG2を発電機として機能させるようになっている。
【0041】
減速機17のリングギヤ39および動力分割機構18のリングギヤ22には、リングギヤ39とリングギヤ22とが一体回転するようにカウンタドライブギヤ52が設けられている。カウンタドライブギヤ52は、ギヤ機構56に噛合され、ギヤ機構56は、デファレンシャルギヤ57に噛合されている。カウンタドライブギヤ52に出力された動力は、カウンタドライブギヤ52からギヤ機構56を介して、デファレンシャルギヤ57に伝達されるようになっている。
【0042】
デファレンシャルギヤ57は、ドライブシャフト13L、13Rに接続され、ドライブシャフト13L、13Rは、駆動輪14L、14Rにそれぞれ接続されている。デファレンシャルギヤ57に伝達された動力は、ドライブシャフト13L、13Rを介して、駆動輪14L、14Rに出力される。
【0043】
したがって、駆動電力が供給されたモータジェネレータMG2は、駆動源として機能するようになっており、モータジェネレータMG2によって発生された動力は、駆動輪14L、14Rに伝達されるようになっている。また、駆動電力が供給されていないモータジェネレータMG2は、駆動輪14L、14Rの回転を減速しつつ、その回転力を電力に変換する電力回生器として機能するようになっている。
【0044】
モータジェネレータMG1とモータジェネレータMG2とは、インバータ61およびインバータ62を介してバッテリ63との間で電力のやりとり、すなわち、バッテリ63を充放電させるようになっている。
【0045】
インバータ61およびインバータ62とバッテリ63とを接続する電力ライン64は、インバータ61およびインバータ62が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータジェネレータMG1、MG2のいずれか一方で発電された電力を他方のモータジェネレータで消費することができるようになっている。
【0046】
このようなモータジェネレータMG1、MG2を駆動制御するために、ハイブリッド車両10は、モータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)102を備えている。
【0047】
モータECU102は、図示を省略するが、CPUと、ROMと、RAMと、フラッシュメモリと、入出力ポートと、を備えたマイクロプロセッサによって構成されている。
【0048】
モータECU102のROMには、当該マイクロプロセッサをモータECU102として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、モータECU102のCPUがRAMを作業領域としてROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該マイクロプロセッサは、モータECU102として機能する。
【0049】
モータECU102には、モータジェネレータMG1、MG2を駆動制御するために必要な信号、例えば、モータジェネレータMG1、MG2の回転子の回転位置をそれぞれ検出する回転位置検出センサ111、112の検出信号、および、モータジェネレータMG1、MG2に入力される相電流を検出する図示しない電流センサの検出信号等が入力されるようになっている。
【0050】
モータECU102は、インバータ61およびインバータ62にスイッチング制御信号を出力することにより、モータジェネレータMG1、MG2を駆動制御するようになっている。
【0051】
また、モータECU102は、ハイブリッドECU100と高速CANを介して通信するようになっており、ハイブリッドECU100から入力された制御信号に応じてインバータ61、62を制御することにより、モータジェネレータMG1、MG2をそれぞれ駆動制御するようになっている。また、モータECU102は、必要に応じてモータジェネレータMG1、MG2の駆動状態に関するデータをハイブリッドECU100に出力するようになっている。
【0052】
バッテリ63の蓄電容量や温度等の状態を管理するために、ハイブリッド車両10は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、「バッテリECU」という)103を備えている。バッテリECU103は、図示を省略するが、CPUと、ROMと、RAMと、フラッシュメモリと、入出力ポートと、を備えたマイクロプロセッサによって構成されている。
【0053】
バッテリECU103のROMには、当該マイクロプロセッサをバッテリECU103として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、バッテリECU103のCPUがRAMを作業領域としてROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該マイクロプロセッサは、バッテリECU103として機能する。
【0054】
バッテリECU103には、バッテリ63の状態を管理するために必要な信号、例えば、バッテリ63の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧、バッテリ63の出力端子に接続された電力ライン64に取り付けられた電流センサ65によって検出される充放電電流、および、バッテリ63に取り付けられた図示しない温度センサからの電池温度等を表す信号が入力されるようになっている。
【0055】
また、バッテリECU103は、必要に応じてバッテリ63の状態に関するデータをハイブリッドECU100に出力するようになっている。例えば、バッテリECU103は、電流センサ65によって検出された充放電電流の積算値に基づいて、バッテリ63の残容量を表すSOC(State Of Charge)を算出し、算出したSOCをハイブリッドECU100に出力するようになっている。
【0056】
ハイブリッドECU100は、CPU100aと、ROM100bと、RAM100cと、フラッシュメモリ100dと、図示しない入出力ポートと、を備えたマイクロプロセッサによって構成されている。
【0057】
ROM100bには、当該マイクロプロセッサをハイブリッドECU100として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、CPU100aがRAM100cを作業領域としてROM100bに記憶されたプログラムを実行することにより、当該マイクロプロセッサは、ハイブリッドECU100として機能する。
【0058】
ハイブリッドECU100には、イグニッションスイッチ(IG)113からのイグニッション信号と、運転手により手動操作されるシフトレバー91の操作位置を検出するシフトポジションセンサ114からのシフトポジション信号と、運転手により踏み込まれるアクセルペダル92の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ115からのアクセル開度信号と、ブレーキペダル93の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ116からのブレーキペダルポジション信号と、車速センサ117からの車速信号等が、それぞれ入力ポートを介して入力されるようになっている。
【0059】
また、ハイブリッド車両10には、エンジン12およびバッテリ63のエネルギーの伝達状態を表す画像、シフトポジション信号SPが表すシフトポジション、車速信号が表す車速、および、各種警告等の情報を表示するための表示装置94が設けられており、ハイブリッドECU100は、これらの情報を表示装置94に表示させるようになっている。
【0060】
ハイブリッドECU100は、エンジンECU101やモータECU102、バッテリECU103と高速CANを介して互いに接続されており、エンジンECU101やモータECU102、バッテリECU103と各種制御信号やデータのやりとりを行うようになっている。
【0061】
例えば、ハイブリッドECU100は、バッテリECU103から送信されたデータが表すSOCが所定の下限値を下回った場合には、モータジェネレータMG1、MG2によって発電された電力をバッテリ63に充電させるようモータECU102に制御信号を送信するようになっている。
【0062】
また、ハイブリッドECU100は、バッテリECU103から送信されたデータが表すSOCが所定の上限値を上回った場合には、モータジェネレータMG1、MG2によって発電された電力をバッテリ63に充電させないようモータECU102に制御信号を送信するようになっている。
【0063】
より具体的には、ハイブリッドECU100は、エンジン12の始動時、発進時および低速走行時には、モータジェネレータMG2を電動機として駆動させるようモータECU102に制御信号を送信するようになっている。
【0064】
また、ハイブリッドECU100は、通常走行時には、エンジン12の効率が最大となるように、モータジェネレータMG1によって発電された電力をモータジェネレータMG2に供給させると共に、バッテリECU103から送信されたデータが表すSOCが所定の上限値を上回らない範囲でバッテリ63に充電させるようモータECU102に制御信号を送信するようになっている。
【0065】
また、ハイブリッドECU100は、高負荷走行時には、モータジェネレータMG1によって発電された電力と、バッテリ63から得られた電力とによって、モータジェネレータMG2を電動機として駆動させるようモータECU102に制御信号を送信するようになっている。
【0066】
また、ハイブリッドECU100は、減速時および制動時には、バッテリECU103から送信されたデータが表すSOCが所定の上限値を上回らない範囲でモータジェネレータMG2によって発電された電力をバッテリ63に充電させるようモータECU102に制御信号を送信するようになっている。
【0067】
図2に示すように、エンジン12は、内燃機関によって構成されており、シリンダブロック210と、シリンダブロック210の上部に固定されたシリンダヘッド220と、オイルを収納するオイルパン230とを備え、シリンダブロック210と、シリンダヘッド220とによって複数の気筒200が形成されている。
【0068】
なお、本実施の形態において、エンジン12は、直列4気筒のガソリンエンジンによって構成されているものとして説明するが、本発明においては、直列6気筒エンジン、V型6気筒エンジン、V型12気筒エンジンまたは水平対向6気筒エンジンなどの種々の型式のエンジンによって構成されていてもよい。ここで、図2に示すエンジン12は、直列に配置された4つの気筒のうちの1つ気筒200が図示されている。
【0069】
気筒200には、ピストン211が往復動可能に収納され、シリンダブロック210、シリンダヘッド220およびピストン211によって、各気筒200の燃焼室201が形成されている。
【0070】
本実施の形態において、エンジン12は、ピストン211が2往復する間に吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行う、4サイクルのガソリンエンジンによって構成されているものとして説明する。
【0071】
クランクシャフト19は、各気筒200に収納されたピストン211とコネクティングロッド212を介して連結されている。コネクティングロッド212は、ピストン211の往復動をクランクシャフト19の回転運動に変換するようになっている。
【0072】
従って、エンジン12は、燃焼室201で燃料と空気との混合気を燃焼させることによりピストン211を往復動させ、コネクティングロッド212を介してクランクシャフト19を回転させることにより、動力伝達装置15に動力を伝達するようになっている。なお、エンジン12に用いられる燃料は、ガソリンもしくは軽油等の炭化水素系の燃料またはエタノール等のアルコールとガソリンとを混合したアルコール燃料であってもよい。
【0073】
エンジン12には、車外から流入した空気を清浄するエアクリーナ312と、清浄された空気を燃焼室201に導入するためにシリンダヘッド220に連結されている吸気管311と、燃焼室201に導入される空気の流量を調整するためのスロットルバルブ313と、スロットルバルブ313の開度を検出するスロットルセンサ135と、燃焼室201のなかで混合気の燃焼によって発生した排気ガスを車外に排出するためにシリンダヘッド220に連結されている排気管321と、排気ガス中の有害物質を酸化還元浄化するために排気管321に設けられた触媒コンバータ322と、が設けられている。
【0074】
エアクリーナ312は、例えば、内部に収容した紙または合成繊維の不織布のフィルターにより、吸入空気中の異物を除去するようになっている。
【0075】
スロットルバルブ313は、薄い円板状の弁体によって構成され、この弁体の中央にシャフトを備えている。スロットルバルブ313には、エンジンECU101の制御に応じてシャフトを回動させることによって弁体を回動させ、吸気管311における空気の流量を変更するスロットルバルブアクチュエータ314が設けられている。
【0076】
触媒コンバータ322は、一般に、排気ガスに含まれる未燃炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)および窒素酸化物(NOx)といった有害物質を効率的に除去することができる三元触媒を備えている。この三元触媒は、好ましくはNOx含有率の高い排気ガスからでも、NOxを効率的に除去する機能を有するものが用いられる。
【0077】
シリンダヘッド220には、吸気管311と燃焼室201とを連通させる吸気ポート221と、燃焼室201と排気管321とを連通させる排気ポート222とが形成されている。
【0078】
また、シリンダヘッド220には、吸気管311から燃焼室201への燃焼用空気の導入を制御するための吸気バルブ223と、燃焼室201から排気管321への排気ガスの排出を制御するための排気バルブ224と、燃焼室201内に燃料を噴射するためのインジェクタ225と、燃焼室201内の混合気に点火するための点火プラグ226と、が取り付けられている。
【0079】
インジェクタ225は、エンジンECU101によって制御されるソレノイドコイルおよびニードルバルブを有している。インジェクタ225には、所定の圧力で燃料が供給されている。インジェクタ225は、エンジンECU101によってソレノイドコイルが通電されると、ニードルバルブを開いて、燃焼室201に燃料を噴射するようになっている。
【0080】
点火プラグ226は、プラチナやイリジウム合金製の電極を有する公知の点火プラグによって構成されている。点火プラグ226は、エンジンECU101によって電極が通電されることにより放電し、燃焼室201内の混合気に点火するようになっている。
【0081】
図3に示すように、エンジン12には、吸気カムシャフト241および排気カムシャフト242が、シリンダヘッド220の上部に回転可能に設けられている。
【0082】
吸気カムシャフト241には、吸気バルブ223の上端に当接する吸気カム243が設けられている。吸気カムシャフト241が回転すると、吸気カム243が吸気バルブ223を開閉駆動し、吸気ポート221と燃焼室201との間が開閉されるようになっている。
【0083】
排気カムシャフト242には、排気バルブ224の上端に当接する排気カム244が設けられており、排気カムシャフト242が回転すると、排気カム244が排気バルブ224を開閉駆動し、燃焼室201と排気ポート222との間が開閉されるようになっている。
【0084】
吸気カムシャフト241の一端部には、吸気カムスプロケット245と、吸気カムシャフト241を吸気カムスプロケット245に対して回転させる吸気側回転位相コントローラ247が設けられている。また、排気カムシャフト242の一端部には、排気カムスプロケット246が取り付けられている。
【0085】
クランクシャフト19の一端部には、クランクシャフト19とともに回転するクランクロータ254と、クランクスプロケット248が設けられている。また、ハイブリッド車両10は、クランクロータ254の回転角を検出するためのクランク角センサ255を備えている。
【0086】
なお、本実施の形態において、ハイブリッドECU100は、クランク角センサ255によって検出されたクランクロータ254の回転角に基づいて、エンジン回転数を算出するものとする。
【0087】
吸気カムスプロケット245、排気カムスプロケット246およびクランクスプロケット248には、タイミングベルト250が巻き掛けられている。タイミングベルト250は、クランクスプロケット248の回転を吸気カムスプロケット245および排気カムスプロケット246に伝達するようになっている。
【0088】
したがって、タイミングベルト250によって、クランクシャフト19の回転が、吸気カムシャフト241および排気カムシャフト242に伝達されることにより、吸気カムシャフト241および排気カムシャフト242に駆動される吸気バルブ223および排気バルブ224が、クランクシャフト19に同期して吸気ポート221および排気ポート222を開閉するようになっている。
【0089】
また、エンジン12には、タイミングベルト250に適度なテンションを与えることにより、タイミングベルト250が吸気カムスプロケット245、排気カムスプロケット246およびクランクスプロケット248から外れることを防止するためのテンショナ251が設けられている。
【0090】
このように、タイミングベルト250は、クランクシャフト19の回転力を、吸気バルブ223および排気バルブ224を駆動する吸気カムシャフト241および排気カムシャフト242に伝達するようになっている。なお、本実施の形態において、タイミングベルト250は、本発明におけるベルトを構成する。
【0091】
以下、本発明の実施の形態に係るハイブリッド車両10の制御装置を構成するハイブリッドECU100の特徴的な構成について、説明する。
【0092】
図4に示すように、タイミングベルト250の寿命は、有効張力(N)と、繰り返し回数(n)と、によって求められる。有効張力(N)とは、タイミングベルト250がどれくらいの力で引っ張られているかを示す値であり、繰り返し回数(n)とは、タイミングベルト250が何回転されたかを示すものである。
【0093】
例えば、タイミングベルト250が有効張力aで長時間回転していた場合、c回転で寿命が来ることを示している。また、タイミングベルト250が有効張力bで長時間回転していた場合、d回転で寿命が来ることも示している。したがって、タイミングベルト250にかかる有効張力(N)が、aからbとなった場合、タイミングベルト250の寿命は、c回転からd回転まで延長される。このように、タイミングベルト250の寿命は、有効張力(N)と、繰り返し回数(n)と、によって求められる面積によって、おおむね把握することができるようになっている。
【0094】
すなわち、タイミングベルト250の寿命は、タイミングベルト250にかかった有効張力の積算値によってわかる。したがって、予めこの積算値によってタイミングベルト250の寿命を算定し、この算定値をタイミングベルト250の寿命判定値として、ハイブリッドECU100のROM100bに記憶しておく。
【0095】
図5に示すように、タイミングベルト250の有効張力は、エンジン回転数によって変化する。特に、エンジン回転数が特定の回転数となると、タイミングベルト250が共振し、有効張力が著しく強くなる(以下、この「特定の回転数」を単に「共振回転数」という)。
【0096】
ところが、タイミングベルト250の有効張力は、エンジン回転数が特定の回転数から少しずれるだけで、大幅に弱くなるようになっている。そこで、ハイブリッドECU100のROM100bに、このようなタイミングベルト250のエンジン回転数に対する有効張力を表す有効張力マップを記憶しておく。
【0097】
図1において、ハイブリッドECU100は、タイミングベルト250の劣化状態を判定するようになっている。具体的には、ハイブリッドECU100は、タイミングベルト250の有効張力を積算し、有効張力の積算値が規定値以上、すなわち、タイミングベルト250の寿命判定値以上であることを条件として、タイミングベルト250が劣化状態であると判定するようになっている。すなわち、ハイブリッドECU100は、本発明におけるベルト劣化判定手段を構成する。
【0098】
また、ハイブリッドECU100は、タイミングベルト250が劣化状態であると判定したことを条件として、タイミングベルト250が共振しないように、エンジン12の回転数を制御するようになっている。
【0099】
すなわち、ハイブリッドECU100は、タイミングベルト250が劣化状態であると判定したことを条件として、エンジン12の回転数が共振回転数とならないように、エンジン12の回転数を制御するようになっている。
【0100】
具体的には、ハイブリッドECU100は、エンジン回転数Neが共振回転数に近いか否かを判定し、エンジン回転数Neが共振回転数に近いと判定した場合には、エンジン回転数Neを共振回転数から離すように変更するようになっている。
【0101】
より具体的には、ハイブリッドECU100は、エンジン回転数Neが共振回転数を中心に予め定められた範囲(以下、単に「共振回転数域」という)内にあるか否かを判定し、エンジン回転数Neが共振回転数域にあると判定した場合には、エンジン回転数Neを共振回転数域外になるように変更するようになっている。
【0102】
例えば、共振回転数域の上限より高い高回転目標値と、共振回転数域の下限より低い低回転目標値とをROM100bに予め記憶しておいた上で、ハイブリッドECU100は、共振回転数よりも現在のエンジン回転数Neが低い場合には、現在のエンジン回転数Neが低回転目標値に近づくようにエンジンECU101を制御させ、共振回転数よりも現在のエンジン回転数Neが高い場合には、現在のエンジン回転数Neが高回転目標値に近づくようにエンジンECU101を制御させるようになっている。このように、ハイブリッドECU100は、本発明における制御手段を構成する。
【0103】
次に、ハイブリッドECU100のタイミングベルト延命動作について、図6に示すフローチャートを参照して、説明する。
【0104】
なお、図6に示すフローチャートは、ハイブリッドECU100のCPU100aによって、イグニッションのオンからオフまでの間に、予め定められた時間間隔、例えば、8ms間隔で実行されるようになっている。
【0105】
図6に示すように、まず、ハイブリッドECU100のCPU100aは、タイミングベルト250の有効張力を検出する(ステップS11)。例えば、CPU100aは、クランク角センサ255によって検出されたクランクロータ254の回転角に基づいて、エンジン回転数Neを算出し、算出したエンジン回転数Neに有効張力マップ上で対応する有効張力を検出する。
【0106】
次に、CPU100aは、タイミングベルト250の有効張力を積算する(ステップS12)。例えば、CPU100aは、タイミングベルト延命動作の実行間隔およびタイミングベルト250の回転数から、ステップS11で算出した有効張力で何回転したかを算出することで、タイミングベルト250の有効張力を積算する。
【0107】
より具体的に説明すると、タイミングベルト延命動作の実行間隔をPmsとし、ステップS11で算出したタイミングベルト250の有効張力をTAとする。ここで、タイミングベルト250の回転数は、エンジン回転数Neと比例するので、その比例定数をkとする。
【0108】
この場合、タイミングベルト延命動作の1間隔あたりのタイミングベルト250の回転数は、k×Ne×P/(60*1000)である。したがって、ステップS12で積算される有効張力Taは、以下の式によって、求めることができる。
【0109】
Ta=TA×k×Ne×P/60000
【0110】
したがって、タイミングベルト延命動作の実行間隔を8msとすると、エンジン回転数が1800rpmであれば、積算する有効張力Taは、TA×0.24×kとなり、エンジン回転数が4200rpmであれば、積算する有効張力Taは、TA×0.56×kとなる。なお、有効張力の積算値(以下、単に「有効張力積算値」という)は、タイミングベルト250の交換時にクリアされるものとする。
【0111】
次に、CPU100aは、ステップS12で積算した有効張力積算値が、寿命判定値以上であるか否かを判定する(ステップS13)。ここで、有効張力積算値が寿命判定値以上でないと判定した場合には(ステップS13でNOと判定)、CPU100aは、タイミングベルト250がまだ寿命に達していないと判定し、タイミングベルト延命動作を終了する。
【0112】
一方、有効張力積算値が寿命判定値以上であると判定した場合には(ステップS13でYESと判定)、CPU100aは、タイミングベルト250の寿命が近いと判定し、タイミングベルト250の寿命が近い旨の警告を表示装置94に表示させていなければ(ステップS14でNOと判定)、タイミングベルト250の寿命が近い旨の警告を表示装置94に表示させる(ステップS15)。
【0113】
次いで、CPU100aは、エンジン回転数Neがタイミングベルト250を共振させる回転数に近いか否か、より具体的には、エンジン回転数Neが共振回転数域内にあるか否かを判定する(ステップS16)。
【0114】
ここで、エンジン回転数Neが共振回転数域にないと判定した場合には(ステップS16でNOと判定)、CPU100aは、タイミングベルト延命動作を終了する。一方、エンジン回転数Neが共振回転数域にあると判定した場合には(ステップS16でNOと判定)、CPU100aは、エンジン回転数Neを変更する(ステップS17)。
【0115】
例えば、CPU100aは、共振回転数よりも現在のエンジン回転数Neが低い場合には、現在のエンジン回転数Neが低回転目標値に近づくようにエンジンECU101を制御させ、共振回転数よりも現在のエンジン回転数Neが高い場合には、現在のエンジン回転数Neが高回転目標値に近づくようにエンジンECU101を制御させる。
【0116】
このとき、CPU100aは、エンジン回転数Neの変更により車速が変更されないように、モータジェネレータMG2を制御するようにしてもよい。具体的には、CPU100aは、エンジン回転数Neが低くなるようにエンジンECU101を制御させた場合には、モータジェネレータMG2を電動機として駆動させ、エンジン回転数Neが高くなるようにエンジンECU101を制御させた場合には、モータジェネレータMG2を発電機として駆動させるようにしてもよい。
【0117】
また、ステップS17において、CPU100aは、共振回転数よりも現在のエンジン回転数Neが低い場合には、現在のエンジン回転数Neが高回転目標値に近づくようにエンジンECU101を制御させ、共振回転数よりも現在のエンジン回転数Neが高い場合には、現在のエンジン回転数Neが低回転目標値に近づくように制御させるようにしてもよい。
【0118】
このとき、CPU100aは、エンジン回転数Neの変更により車速が変更されないように、エンジン回転数Neが低くなるようにエンジンECU101を制御させた場合には、モータジェネレータMG2を電動機として駆動させ、エンジン回転数Neが高くなるようにエンジンECU101を制御させた場合には、モータジェネレータMG2を発電機として駆動させるようにしてもよい。
【0119】
また、CPU100aは、エンジン12の動力によってバッテリ63が充電されている状態にあることを条件として、ステップS16以降を実行するようにしてもよい。すなわち、ステップS16を実行する前に、CPU100aは、エンジン12の動力によってバッテリ63が充電されている状態にない場合には、タイミングベルト延命動作を終了するようにしてもよい。
【0120】
以上のように、本発明の実施の形態に係るハイブリッド車両の制御装置は、エンジン12の回転がタイミングベルト250を共振させないように、エンジン12の回転数を制御することにより、タイミングベルト250に大きな張力がかかることを防止するため、タイミングベルト250の寿命の残りが少ない場合に、タイミングベルト250を延命させることができる。
【0121】
なお、本実施の形態においては、吸気カムスプロケット245、排気カムスプロケット246およびクランクスプロケット248に巻き掛けられたタイミングベルト250によって本発明におけるベルトが構成される例について説明したが、本発明においては、クランクシャフト19から補機類に動力を伝達するための補機ベルトによって本発明におけるベルトが構成されるようにしてもよい。
【0122】
また、タイミングベルト250および補機ベルトの双方によって本発明におけるベルトが構成されるようにしてもよい。この場合には、ハイブリッドECU100のROM100bには、タイミングベルト250および補機ベルトのそれぞれに対し、寿命判定値と有効張力マップとを記憶しておき、CPU100aは、各ベルトに対する有効張力積算値を積算するように構成する。
【0123】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0124】
以上のように、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、ベルトの寿命の残りが少ない場合に、ベルトを延命させることができるという効果を奏するものであり、内燃機関の出力軸に巻き掛けられたベルトのフェールセーフ機能を有するハイブリッド車両の制御装置に有用である。
【符号の説明】
【0125】
MG1、MG2 モータジェネレータ
10 ハイブリッド車両
12 エンジン
15 動力伝達装置
17 減速機
18 動力分割機構
19 クランクシャフト
61、62 インバータ
63 バッテリ
94 表示装置
100 ハイブリッドECU
101 エンジンECU
102 モータECU
103 バッテリECU
200 気筒
201 燃焼室
241 吸気カムシャフト
242 排気カムシャフト
243 吸気カム
244 排気カム
245 吸気カムスプロケット
246 排気カムスプロケット
248 クランクスプロケット
250 タイミングベルト
251 テンショナ
254 クランクロータ
255 クランク角センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関および回転電機よりなる駆動源と、前記内燃機関から出力される回転力が伝達されるベルトとを備えたハイブリッド車両の制御装置において、
前記ベルトが劣化状態であるか否かを判定するベルト劣化判定手段と、
前記ベルト劣化判定手段により前記ベルトが劣化状態であると判定されたことを条件として、前記ベルトを共振させる共振回転数域に前記内燃機関の回転数が入るか否かを判定し、前記共振回転数域に前記内燃機関の回転数が入ると判定したことを条件として、前記内燃機関の回転数を変更するよう制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記ベルト劣化判定手段は、前記ベルトの有効張力を積算し、前記有効張力の積算値が規定値以上であることを条件として、前記ベルトが劣化状態であると判定することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記ベルト劣化判定手段により前記ベルトが劣化状態であると判定されたことに加え、前記内燃機関の動力によってバッテリが充電されている状態にあることを条件として、前記共振回転数域に前記内燃機関の回転数が入るか否かを判定し、前記共振回転数域に前記内燃機関の回転数が入ると判定したことを条件として、前記内燃機関の回転数を変更するよう制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−162231(P2012−162231A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26117(P2011−26117)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】