ハイブリッド車両の駆動装置
【課題】内燃機関と少なくとも1個の回転電機を備えたハイブリッド車両の駆動装置において内燃機関のみでの走行を可能にすると共に、ハイレシオ側の効率も向上させるようにしたハイブリッド車両の駆動装置を提供する。
【解決手段】内燃機関(Eg)12に接続される入力軸16にサンギヤが接続されるダブルピニオン式の第1遊星歯車機構24と、キャリアが接続されるシングルピニオン式の第2遊星歯車機構26と、入力軸の回転を減速して第1遊星歯車機構24のキャリアに伝達可能な減速機構(Gr)と、第1遊星歯車機構のキャリアと第2遊星歯車機構のサンギヤとを断接するクラッチ(C4)56と、第1、第2遊星歯車機構のリングギヤ同士を断接するクラッチ(C3)54とを備えると共に、第2遊星歯車機構のリングギヤを出力軸22に接続し、第1遊星歯車機構のキャリアに回転電機(G)14を接続する。
【解決手段】内燃機関(Eg)12に接続される入力軸16にサンギヤが接続されるダブルピニオン式の第1遊星歯車機構24と、キャリアが接続されるシングルピニオン式の第2遊星歯車機構26と、入力軸の回転を減速して第1遊星歯車機構24のキャリアに伝達可能な減速機構(Gr)と、第1遊星歯車機構のキャリアと第2遊星歯車機構のサンギヤとを断接するクラッチ(C4)56と、第1、第2遊星歯車機構のリングギヤ同士を断接するクラッチ(C3)54とを備えると共に、第2遊星歯車機構のリングギヤを出力軸22に接続し、第1遊星歯車機構のキャリアに回転電機(G)14を接続する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はハイブリッド車両の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両の駆動装置としては特許文献1記載の技術が知られている。その技術は内燃機関と第1、第2回転電機を備え、第1回転電機あるいは第1回転電機と内燃機関を車両の動力源として用いると共に、第2回転電機を内燃機関で駆動して発電させるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3099721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の技術にあっては、走行するとき常に第2回転電機による発電と電動機駆動が必要となり、エネルギがいつも電気系統を通過することに伴う効率悪化が避けられなかった。また第2回転電機が比較的低回転で駆動されることで駆動効率が低下するため、ハイレシオ側の効率が低下する問題もあった。
【0005】
従って、この発明の目的は上記した不都合を解消し、内燃機関と少なくとも1個の回転電機を備えたハイブリッド車両の駆動装置において内燃機関のみでの走行を可能にすると共に、ハイレシオ側の効率も向上させるようにしたハイブリッド車両の駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、請求項1にあっては、内燃機関(Eg)と少なくとも1個の回転電機(G)とを備えたハイブリッド車両の駆動装置において、前記内燃機関に接続される入力軸(16)と、車輪側に接続される出力軸(22)と、前記入力軸にサンギヤ(Sf)が接続されるダブルピニオン式の第1遊星歯車機構(24)と、前記入力軸にキャリア(Cr)が接続されるシングルピニオン式の第2遊星歯車機構(26)と、前記入力軸の回転を減速して前記第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)に伝達可能な減速機構(Gr)と、前記第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)と前記第2遊星歯車機構のサンギヤ(Sr)とを断接するクラッチ(第4クラッチ(C4)56)と、前記第1遊星歯車機構のリングギヤ(Rf)と前記第2遊星歯車機構のリングギヤ(Rr)とを断接するクラッチ(第3クラッチ(C3)54)とを備えると共に、前記第2遊星歯車機構のリングギヤ(Rr)を前記出力軸に接続し、前記第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)に前記回転電機を接続するように構成した。
【0007】
請求項2に係るハイブリッド車両の駆動装置にあっては、前記減速機構(Gr)は、前記車両の走行状態に応じて前記入力軸と前記第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)とを断接可能なクラッチ(第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52)を備えるように構成した。
【0008】
請求項3に係るハイブリッド車両の駆動装置にあっては、前記第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)を装置ハウジングに固定するブレーキ(B1)を備えるように構成した。
【0009】
請求項4に係るハイブリッド車両の駆動装置にあっては、前記出力軸に接続される第2の回転電機(M)を備えるように構成した。
【0010】
請求項5に係るハイブリッド車両の駆動装置にあっては、前記内燃機関(Eg)と前記入力軸(16)の間にクラッチ(第5クラッチ(C5)70)を備えるように構成した。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係るハイブリッド車両の駆動装置にあっては、内燃機関に接続される入力軸(16)にサンギヤ(Sf)が接続されるダブルピニオン式の第1遊星歯車機構(24)と、入力軸にキャリア(Cr)が接続されるシングルピニオン式の第2遊星歯車機構(26)と、入力軸の回転を減速して第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)に伝達可能な減速機構(Gr)と、第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)と第2遊星歯車機構のサンギヤ(Sr)とを断接するクラッチ(第4クラッチ(C4)56)と、第1、第2遊星歯車機構のリングギヤ(Rf)(Rr)とを断接するクラッチ(第3クラッチ(C3)54)とを備えると共に、第2遊星歯車機構のリングギヤ(Rr)を車輪側に接続される出力軸(22)に接続し、第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)に回転電機を接続するように構成したので、内燃機関(Eg)のみでの走行を可能とすることでエネルギがいつも電気系統を通過することに伴う効率悪化を回避することができる。
【0012】
即ち、第3、第4クラッチ(C3,C4)54,56と、入力軸の回転を減速して第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)に伝達可能な減速機構(Gr)を備えることで、減速機構(Gr)のクラッチ(請求項3で規定される)と第3、第4クラッチ(C3,C4)54,56のうちの少なくとも2つを係合させて固定変速段を形成することができ、よって内燃機関(Eg)のみで走行して効率悪化を回避することができる。
【0013】
また、ハイレシオになるほど差回転が減少する第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)に回転電機(G)を接続するように構成したので、ハイレシオになるほど回転電機(G)の連れ回りによる引き摺りを減少することができ、内燃機関走行時のハイレシオ側の効率を向上させることができる。
【0014】
また、運転の態様を持ち替えたとき、発電が欲しい低速では回転電機(G)の回転を高くすることができる一方、内燃機関で走行するときは回転数を低下させることができて内燃機関の効率を向上させることができる。
【0015】
請求項2に係るハイブリッド車両の駆動装置にあっては、減速機構(Gr)は、車両の走行状態に応じて入力軸と第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)とを断接可能なクラッチ(第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52)を備えるように構成したので、上記した効果に加え、車両の走行状態に応じて固定変速段による内燃機関のみで走行することで、効率悪化を一層良く回避することができる。
【0016】
請求項3に係るハイブリッド車両の駆動装置にあっては、第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)を装置ハウジングに固定するブレーキ(B1)を備えるように構成したので、上記した効果に加え、最もハイレシオにおいて回転電機(G)の連れ回りによる引き摺りを確実に零にすることができる。
【0017】
請求項4に係るハイブリッド車両の駆動装置にあっては、出力軸に接続される第2の回転電機(M)を備えるように構成したので、上記した効果に加え、第2の回転電機(M)で発進するとき、(第1の)回転電機(G)も動作させてアシストさせることが可能となり、第2の回転電機(M)のサイズを小型にすることができる。また、加速時などにも第2の回転電機(M)も動作させることで加速性を向上させることができる。
【0018】
さらに、第2の回転電機(M)での走行時、内燃機関によって(第1の)回転電機(G)で発電させて電気エネルギを補充することができる。
【0019】
また、第2の回転電機(M)を備えると共に、車両の走行状態に応じて減速機構のクラッチ(第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52)を係合させることで、状況に応じて発電優先のときと内燃機関での走行による効率(燃費)優先のときとで発電効率を一層適宜変更することができる。
【0020】
請求項5に係るハイブリッド車両の駆動装置にあっては、内燃機関(Eg)と入力軸(16)の間にクラッチ(第5クラッチ(C5)70)を備えるように構成したので、上記した効果に加え、少なくとも回転電機(G)で走行するときなど、内燃機関(Eg)と入力軸(16)との接続を断つことで内燃機関(Eg)が負荷となるのを回避することが可能となり、回転電機走行時の電力の消費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の第1実施例に係るハイブリッド車両の駆動装置を全体的に示す模式図である。
【図2】図1に示す駆動装置の第1、第2遊星歯車機構などの速度線図である。
【図3】図1に示す駆動装置の変速段を確立するためのクラッチの係合を示す表である。
【図4】この発明の第2実施例に係るハイブリッド車両の駆動装置を全体的に示す、図1と同様の模式図である。
【図5】図4に示す駆動装置の第1、第2遊星歯車機構などの速度線図である。
【図6】図4に示す駆動装置の変速段を確立するためのクラッチの係合を示す表である。
【図7】第2実施例における1速から3速までの速度段の確立をより詳細に示す、図5と同様の速度線図である。
【図8】第2実施例における4速から7速までの速度段の確立をより詳細に示す、図5と同様の速度線図である。
【図9】第2実施例における電気CVT走行の動作を示す、図5と同様の速度線図である。
【図10】第2実施例におけるEV走行の動作を示す、図5と同様の速度線図である。
【図11】第2実施例におけるシリーズEV走行の動作を示す、図5と同様の速度線図である。
【図12】第2実施例における低中速走行時に電気CVTから内燃機関主体の走行に切り換える場合の動作を示す、図5と同様の速度線図である。
【図13】同様に第2実施例における中高速走行時に電気CVTから内燃機関主体の走行に切り換える場合の動作を示す、図5と同様の速度線図である。
【図14】この発明の第3実施例に係るハイブリッド車両の駆動装置を全体的に示す、図4と同様の模式図である。
【図15】第3実施例の駆動装置の第1、第2遊星歯車機構などの速度線図である。
【図16】図15に示す装置の変速段を確立するためのクラッチの係合を示す表である。
【図17】第3実施例における2,3速から4,5,6速までのEV走行動作を示す、図12などと同様の速度線図である。
【図18】図17に示す動作のときの変速段を確立するためのクラッチの係合を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に即してこの発明に係るハイブリッド車両の駆動装置を実施するための形態を説明する。
【実施例1】
【0023】
図1はこの発明の第1実施例に係るハイブリッド車両の駆動装置を全体的に示す模式図である。
【0024】
以下説明すると、符号10はハイブリッド車両の駆動装置を示し、駆動装置10は、内燃機関12と、少なくとも1個の回転電機14と、内燃機関12に接続される入力軸16と、駆動輪20に接続される出力軸22と、入力軸16と出力軸22の間に配置される、内燃機関12からの入力において上流(フロント)側の第1遊星歯車機構24と下流(リヤ)側の第2遊星歯車機構26とを備え、ハイブリッド車両(図示せず。以下「車両」という)に搭載される。
【0025】
内燃機関(「Eg」と示す。以下「エンジン」という)12はガソリンを燃料とする火花点火式のガソリンエンジン(あるいは軽油を燃料とする圧着着火式のディーゼルエンジン)からなり、燃料と空気の混合気を点火(着火)されるとき、燃焼してピストン(図示せず)を駆動する。
【0026】
ピストンの駆動はクランク軸(図示せず)の回転に変換され、クランク軸に接続される出力軸から出力されるエンジン12の駆動力は、フライホイール、トルクコンバータなどのダンパ(図示せず)を介して入力軸16から入力される。
【0027】
回転電機(「G」と示す)14はブラシレス交流同期電動機からなり、通電されて回転するときは電動機(モータ)として機能すると共に、エンジン12(あるいは駆動輪20)によって駆動されて回転するときは発電機(ジェネレータ)として機能する。以下、回転電機14を「モータ・ジェネレータ」という。
【0028】
このように、この明細書において「回転電機」は電動機(モータ)と発電機(ジェネレータ)の機能を共に有する機器を意味する。モータ・ジェネレータ14によって発電された電気エネルギはバッテリなどのエネルギ貯留手段(図示せず)に蓄えられ、モータとして動作するときエネルギとして供給される。
【0029】
モータ・ジェネレータ14は、装置ハウジング10aに固定されるステータ14aと、ステータ14aに対して相対回転自在に配置されるロータ14bを備える。
【0030】
駆動装置10において、入力軸16はベアリング16aを介して装置ハウジング10aに回転自在に支承される。
【0031】
第1遊星歯車機構24は、サンギヤSfとキャリアCfとリングギヤRfを備え、キャリアCfがそれぞれ2個ずつのピニオンに接続されるダブルピニオン式からなる。
【0032】
第2遊星歯車機構26は、サンギヤSrとキャリアCrとリングギヤRrを備え、キャリアCrが1個ずつのピニオンに接続されるシングルピニオン式からなる。
【0033】
第1遊星歯車機構24において、サンギヤSfは入力軸16に接続され、エンジン12によって駆動される。キャリアCfは上流側でモータ・ジェネレータ14のロータ14aに連結部材24aを介して接続される一方、下流側で第2遊星歯車機構(Pr)26のサンギヤSrに連結部材24bを介して接続される。リングギヤ(Rf)は第2遊星歯車機構(Pr)26のリングギヤ(Rr)に連結部材24cを介して接続される。
【0034】
第2遊星歯車機構26において、キャリアCrは入力軸16に接続され、エンジン12によって駆動される。リングギヤ(Rr)は一方では上記したように第1遊星歯車機構(Pf)24のリングギヤ(Rf)に連結部材24cを介して接続されると共に、他方では出力軸22に固定された減速ギヤ30に噛合する。
【0035】
出力軸22には減速ギヤ30に隣接してドライブギヤ32aが固定され、減速ギヤ30の回転はドライブギヤ32aと、それと噛合するディファレンシャル34に配置されたドリブンギヤ32bを介して駆動輪20に接続される。
【0036】
駆動装置10は、入力軸16と平行に配置される中間軸36を備え、入力軸16には第1遊星歯車機構24の上流側においてドライブギヤ40aが相対回転自在に配置されると共に、中間軸36にはドライブギヤ40aと噛合すると共に、それより歯数の多いドリブンギヤ40bが固定される。
【0037】
また入力軸16にはその上流側においてドライブギヤ42aが固定されると共に、中間軸36にはドライブギヤ42aと噛合するドリブンギヤ42bが相対回転自在に配置される。
【0038】
さらに中間軸36には下流側においてドライブギヤ44aが固定されると共に、第1遊星歯車機構24の連結部材24aにはドライブギヤ44aと噛合するドリブンギヤ44bが固定され、それによって中間軸36の回転はモータ・ジェネレータ(G)14のロータ14bに伝達される。
【0039】
ドライブギヤ40aには第1クラッチ(C1)50が配置されると共に、ドリブンギヤ42bには第2クラッチ(C2)52が配置される。第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52は多板式の油圧クラッチからなり、入力軸16と中間軸36(の接続)を断接する。
【0040】
即ち、第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52は車両の走行状態に応じて油圧を供給されて係合(オン)されるとき、ギヤ40,42を介して入力軸16の回転を中間軸36に接続する一方、油圧を排出されて解放(オフ)されるとき、ギヤ40,42を介しての入力軸16の回転の中間軸36への接続を遮断する。
【0041】
従ってギヤ40,42,44と第1、第2クラッチ(C1,C2)が、入力軸16の回転を減速して第1遊星歯車機構24のキャリア(Cf)に伝達可能な減速機構Grとして機能する。このように減速機構Grは、入力軸16と第1遊星歯車機構24のキャリアCfと(の接続)を断接可能なクラッチ(第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52)を備える。
【0042】
また、前記した第2遊星歯車機構26の連結部材24cには第3クラッチ(C3)54が配置されると共に、第1遊星歯車機構24の連結部材24bには第4クラッチ(C4)56が配置される。第3、第4クラッチ(C3,C4)54,56も多板式の油圧クラッチからなり、第1、第2遊星歯車機構24,26のリングギヤRf,Rrとを、あるいは第1遊星歯車機構24のキャリアCfと第2遊星歯車機構26のサンギヤSrと(の接続)を断接する。
【0043】
即ち、第3クラッチ(C3)54は、油圧を供給されて係合(オン)されるとき、第1遊星歯車機構24のリングギヤRfと第2遊星歯車機構26のリングギヤRrとを接続する一方、油圧を排出されて解放(オフ)されるとき、それらの接続を遮断する。
【0044】
また第4クラッチ(C4)56は、油圧を供給されて係合(オン)されるとき、第1遊星歯車機構24のキャリアCfと第2遊星歯車機構26のサンギヤSrとを接続する一方、油圧を排出されて解放(オフ)されるとき、それらの接続を遮断する。
【0045】
駆動装置10は油圧機構(図示せず)とECU(電子制御ユニット)60を備える。ECU60はマイクロコンピュータからなり、走行状態に応じてエンジン12と、モータ・ジェネレータ14と、第1から第4クラッチCn(C1,C2,C3,C4)50,52,54,56の動作を制御する。
【0046】
図2は図1に示す駆動装置10の(ECU60によってその動作が制御される)第1、第2遊星歯車機構24,26などの速度線図、図3は図1に示す駆動装置10の変速段を確立するためのクラッチCnの係合を示す表である。図3において丸印が付されることはクラッチCnが係合されることを、丸印が付されないことはクラッチCnが解放されることを意味する。
【0047】
図2の速度線図において3つの縦軸は第1、第2遊星歯車機構24,26の3つの要素に対応し、上方への長さが前進方向の回転数を示す。また、縦軸間の距離はサンギヤSf,SrあるいはリングギヤRf,Rrの歯数の逆数に比例する。
【0048】
以下、説明すると、第1、第3クラッチ(C1,C3)50,54が係合されると、1速(1)が確立される。
【0049】
即ち、エンジン12から入力される入力軸16の回転は第1遊星歯車機構24のサンギヤSfにそのまま伝達される一方、第1クラッチ(C1)50が係合されることから、ギヤ40,42で減速されてキャリアCfとモータ・ジェネレータ14のロータ14bに伝達される。図2においてN1がそのときのキャリアCfの回転を示す。
【0050】
従って、図2に示す如く、第1遊星歯車機構24にあってはサンギヤSfとキャリアCfの回転に応じてリングギヤRfの回転が決まる。第3クラッチ(C3)54が係合されることから、第1遊星歯車機構24の出力は第2遊星歯車機構26のリングギヤRrからそのまま出力される。
【0051】
また第2、第3クラッチ(C2,C3)52,54が係合されると、2速(2)が確立される。
【0052】
この場合もエンジン12から入力される入力軸16の回転は第1遊星歯車機構24のサンギヤSfにそのまま伝達されるが、第2クラッチ(C2)52が係合されることから、ギヤ44,42で1速より少ない量だけ減速されてキャリアCfとモータ・ジェネレータ14のロータ14bに伝達される。図2においてN2がそのときのキャリアCfの回転を示す。
【0053】
図2に示す如く、第3クラッチ(C3)54が係合されることから、第1遊星歯車機構24の出力は第2遊星歯車機構26のリングギヤRrからそのまま出力される。
【0054】
また第3、第4クラッチ(C3,C4)54,56が係合されると、3速(3)が確立される。
【0055】
この場合エンジン12から入力される入力軸16の回転は第1遊星歯車機構24のサンギヤSfにそのまま伝達される一方、第2遊星歯車機構26のキャリアCrにそのまま伝達される。
【0056】
尚、この実施例において3速にあってはエンジン12とモータ・ジェネレータ14の回転が回転数N3で等速になるように第1、第2遊星歯車機構24,26の構造が設定される。
【0057】
第3、第4クラッチ(C3,C4)54,56が共に係合されることから、第1、第2遊星歯車機構24,26は一体化され、第2遊星歯車機構26のリングギヤRrから出力される。
【0058】
また第2、第4クラッチ(C2,C4)52,56が係合されると、4速(4)が確立される。
【0059】
この場合は2速のときと同様であり、第2遊星歯車機構26のリングギヤRrから出力される。図2においてN2で示されるキャリアCfの回転に応じて第2遊星歯車機構26のサンギヤSrの回転が決定される結果、第2遊星歯車機構26のリングギヤRrの回転が決定されて出力される。
【0060】
また第1、第4クラッチ(C1,C4)50,56が係合されると、5速(5)が確立される。
【0061】
この場合は1速のときと同様であり、第2遊星歯車機構26のリングギヤRrから出力される。図2においてN1で示されるキャリアCfの回転に応じて第2遊星歯車機構26のサンギヤSrの回転が決定される結果、同様に第2遊星歯車機構26のリングギヤRrの回転が決定されて出力される。
【0062】
後進(R)走行は図3に「R−EV」と示す如く、エンジン12を停止させ、モータ・ジェネレータ14を逆転させ、1速と同様、第1、第3クラッチ(C1,C3)50,54が係合されることで確立される。
【0063】
上記はエンジン12(とモータ・ジェネレータ14)を動作させて変速段を確立する場合であるが、図3に「EV可能」と記載するように、EV、即ち、エンジン12に代え、モータ・ジェネレータ14のみを動作させて1速から5速までの速度段に対応する回転を第2遊星歯車機構26のリングギヤRrから出力させることも可能である。
【0064】
その場合、エンジン12を停止させ、モータ・ジェネレータ14を動作させ、図3に従ってクラッチCnを係合することで、1速から5速までの速度段に対応する回転を第2遊星歯車機構26のリングギヤRrから出力させることができる。
【0065】
また、図2に「電気CVT」(ECU60の制御によるCVT(無段変速機)に類似する無段変速動作(制御))と示すように、図示の構成において電気CVTが可能である。
【0066】
即ち、エンジン12とモータ・ジェネレータ14を適宜動作させると共に、第4クラッチ(C4)56を係合して第1遊星歯車機構24のキャリアCfの回転数を第2遊星歯車機構サンギヤSrに入力(伝達)させ、同図下部に示す如く、サンギヤSrの回転数を増減することで所望のレシオに相当する回転をリングギヤRrから出力させることができる。
【0067】
第1実施例にあっては、エンジン(内燃機関。Eg)12と少なくとも1個のモータ・ジェネレータ(回転電機。G)14とを備えたハイブリッド車両の駆動装置10において、前記エンジン(内燃機関)12に接続される入力軸16と、駆動輪(車輪)20側に接続される出力軸22と、前記入力軸16にサンギヤSfが接続されるダブルピニオン式の第1遊星歯車機構24と、前記入力軸16にキャリアCrが接続されるシングルピニオン式の第2遊星歯車機構26と、前記入力軸16の回転を減速して前記第1遊星歯車機構24のキャリアCfに伝達可能な減速機構Gr(ギヤ40,42,44、第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52)と、前記第1遊星歯車機構24のキャリアCfと前記第2遊星歯車機構26のサンギヤSrとを断接する第4クラッチ(C4)56と、前記第1遊星歯車機構24のリングギヤRfと前記第2遊星歯車機構26のリングギヤRrとを断接する第3クラッチ(C3)54とを備えると共に、前記第2遊星歯車機構26のリングギヤRrを前記出力軸22に接続し、前記第1遊星歯車機構24のキャリアCfに前記モータ・ジェネレータ14を接続するように構成したので、エンジン12のみでの走行を可能とすることでエネルギがいつも電気系統を通過することに伴う効率悪化を回避することができる。
【0068】
即ち、第3、第4クラッチ(C3,C4)54,56と、入力軸16の回転を減速して第1遊星歯車機構24のキャリア(Cf)に伝達可能な減速機構Gr(ギヤ40,42,44、第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52)を備えることで、減速機構Grの第1、第2クラッチ(C1,C2)と第3、第4クラッチ(C3,C4)のうちの少なくとも2つを係合させて固定変速段を形成することができ、よってエンジン12のみで走行して効率悪化を回避することができる。
【0069】
また、ハイレシオになるほど差回転が減少する第1遊星歯車機構24のキャリアCfにモータ・ジェネレータ(G)14を接続するように構成したので、ハイレシオになるほどモータ・ジェネレータ(G)14の連れ回りによる引き摺りを減少することができ、エンジン12での走行時のハイレシオ側の効率を向上させることができる。
【0070】
即ち、図2に示す如く、レシオが3速、4速、5速とハイ側になるほどキャリアCfの回転数がN3,N2,N1と低下するので、換言すればハイレシオになるほどモータ・ジェネレータ(G)14の連れ回りによる引き摺りを減少できるので、エンジン12での走行時のハイレシオ側の効率を向上させることができる。
【0071】
また、運転の態様を持ち替えたとき、発電が欲しい低速ではモータ・ジェネレータ(G)14の回転を高くすることができる一方、エンジン12で走行するときは回転数を低下させることができてエンジン12の効率を向上させることができる。
【0072】
また、前記減速機構(Gr)は、前記車両の走行状態に応じて前記入力軸(16)と前記第1遊星歯車機構(24)のキャリア(Cf)とを断接可能なクラッチ(第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52)を備えるように構成したので、車両の走行状態に応じて固定変速段によるエンジン12のみで走行することで、効率悪化を一層良く回避することができる。
【実施例2】
【0073】
図4はこの発明の第2実施例に係るハイブリッド車両の駆動装置を全体的に示す、図1と同様の模式図である。
【0074】
第2実施例において、図1に示す第1実施例の構成要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0075】
第1実施例と相違する点に焦点をおいて説明すると、第2実施例においては、第1遊星歯車機構24のキャリアCf、より具体的にはその連結部材24aを装置ハウジング10aに固定するブレーキ(B1)64を備えるように構成した。
【0076】
また、第1のモータ・ジェネレータ14に加え、出力軸22に接続される第2のモータ・ジェネレータ(回転電機。「M」と示す)66を備えるように構成した。
【0077】
第2のモータ・ジェネレータ66も第1のモータ・ジェネレータ14と同様にブラシレス交流同期電動機からなり、通電されて回転するときは電動機(モータ)として機能すると共に、エンジン12(あるいは駆動輪20)によって駆動されて回転するときは発電機(ジェネレータ)として機能する。モータ・ジェネレータ66は、減速ギヤ30と噛合するギヤ66aを介して出力軸22に接続される。
【0078】
図5は図4に示す駆動装置10の第1、第2遊星歯車機構24,26などの速度線図、図6は図4に示す駆動装置10の変速段を確立するためのクラッチCnの係合を示す表である。
【0079】
第2実施例にあっては、図6に示す如く、1速から7速までの速度段を備える。図7はそのうちの1速から3速、図8は4速から7速までの速度段の確立をより詳細に示す、図5と同様の速度線図である。
【0080】
以下、説明すると、第2実施例にあっては、第1クラッチ(C1)50に代えてブレーキ(B1)64が係合されると共に、第3クラッチ(C3)54が係合されると、1速(1)が確立される。
【0081】
即ち、ブレーキ(B1)64が係合されると、第1遊星歯車機構(Pf)24のキャリアCfが装置ハウジング10aに固定される結果、モータ・ジェネレータ(G)14も停止させられる。図7において1がそのときのリングギヤRfの回転を示す。第3クラッチ(C3)54が係合されることから、第1遊星歯車機構24の出力は第2遊星歯車機構26のリングギヤRrからそのまま出力される。
【0082】
2速から6速までは第1実施例の1速から5速までと同様である。即ち、第2実施例にあっては4速のときエンジン12とモータ・ジェネレータ14の回転が等速になるように第1、第2遊星歯車機構24,26の構造が設定される。
【0083】
またブレーキ(B1)64と第4クラッチ(C4)56が係合されると、7速(7)が確立される。即ち、1速のときと同じ第1遊星歯車機構24のキャリアCfの回転が第2遊星歯車機構26のサンギヤSrに入力され、そのリングギヤRrから出力される。
【0084】
後進(R)走行も、第1実施例と同様、第1、第3クラッチ(C1,C3)50,54が係合されることで確立される。
【0085】
次いで電気CVTについて説明すると、図9はその動作を示す、図5と同様の速度線図である。
【0086】
第2実施例にあっても、第1実施例と同様、エンジン12とモータ・ジェネレータ14を適宜動作させると共に、第4クラッチ(C4)56を係合して第1遊星歯車機構24のキャリアCfの回転数を第2遊星歯車機構サンギヤSrに入力(伝達)させ、同図下部に示す如く、サンギヤSrの回転数を増減することで所望のレシオに相当する回転をリングギヤRrから出力させることができる。
【0087】
次いでEV走行について説明すると、図10はその動作を示す、図5と同様の速度線図である。
【0088】
第2実施例は第1のモータ・ジェネレータ14に加えて第2のモータ・ジェネレータ66を備えることから、図9に示す如く、それを動作させることで、容易にEV走行を可能とすることができる。
【0089】
その場合、エンジン12は動作させても停止させても良い。尚、第1実施例と同様、第1のモータ・ジェネレータ14を動作させてEV走行させても良いことはいうまでもない。また第2のモータ・ジェネレータ66と第1のモータ・ジェネレータ14の両方を動作させてEV走行能力を上げることも可能である。
【0090】
次いでシリーズEV、即ち、発電しながら走行する場合を説明すると、図11はその動作を示す、図5と同様の速度線図である。
【0091】
この場合、第1クラッチ(C1)50(あるいは第2クラッチ(C2)52)を係合させ、第1のモータ・ジェネレータ14を減速した回転で駆動して発電させる。モータ・ジェネレータ14によって発電された電気エネルギは図示しないエネルギ貯留手段に貯留されるか、あるいは自らまたは図11に破線で示すように第2のモータ・ジェネレータ66に供給される。
【0092】
後進(R)走行は、エンジン12を停止させ、第2のモータ・ジェネレータ66を逆転させて行なう。尚、その場合、第1、第3クラッチ(C1,C3)50,54を係合させ、第1のモータ・ジェネレータ14を逆転させて行っても良い。
【0093】
次いで電気CVTからエンジン12主体の走行に切り換える場合を説明する。図12はそのときの特に1速から3速の低中速走行している場合、図13は4速から7速の動作を示す、図5と同様の速度線図である。
【0094】
即ち、低、中負荷にあるときはモータ・ジェネレータ14を主体に走行すると共に、高負荷になったときは、エンジン12主体に切り換えるような場合である。
【0095】
そのような場合、図12に示す如く、第1、第2遊星歯車機構24,26のリングギヤRf,Rrの回転が合う(回転が合い、かつ目標の変速段相当にエンジン回転となる)ようにエンジン12とモータ・ジェネレータ14で回転を合わせることとする。図13に示す中高速走行している場合も同様である。
【0096】
第2実施例にあっても、エンジン(内燃機関。Eg)12と少なくとも1個のモータ・ジェネレータ(回転電機。G)14とを備えたハイブリッド車両の駆動装置10において、前記エンジン(内燃機関)12に接続される入力軸16と、駆動輪(車輪)20側に接続される出力軸22と、前記入力軸16にサンギヤSfが接続されるダブルピニオン式の第1遊星歯車機構24と、前記入力軸16にキャリアCrが接続されるシングルピニオン式の第2遊星歯車機構26と、前記入力軸16の回転を減速して前記第1遊星歯車機構24のキャリアCfに伝達可能な減速機構Gr(ギヤ40,42,44、第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52)と、前記第1遊星歯車機構24のキャリアCfと前記第2遊星歯車機構26のサンギヤSrとを断接する第4クラッチ(C4)56と、前記第1遊星歯車機構24のリングギヤRfと前記第2遊星歯車機構26のリングギヤRrとを断接する第3クラッチ(C3)54とを備えると共に、前記第2遊星歯車機構26のリングギヤRrを前記出力軸22に接続し、前記第1遊星歯車機構24のキャリアCfに前記モータ・ジェネレータ(回転電機。G)14を接続するように構成したので、エンジン12のみでの走行を可能とすることでエネルギがいつも電気系統を通過することに伴う効率悪化を回避することができる。
【0097】
即ち、第3、第4クラッチ(C3,C4)54,56と、入力軸16の回転を減速して第1遊星歯車機構24のキャリア(Cf)に伝達可能な減速機構Gr(ギヤ40,42,44、第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52)を備えることで、エンジン12のみでの走行を可能にして効率悪化を回避することができる。
【0098】
より具体的には、1速確立時に図7に示すように第1遊星歯車機構24のキャリアCfの回転数が零となるように第1、第2遊星歯車機構24,26の構造を設定されるので、エンジン12のみで走行することが可能となる。
【0099】
また、ハイレシオになるほど差回転が減少する第1遊星歯車機構24のキャリアCfにモータ・ジェネレータ(G)14を接続するように構成したので、図8に示す如く、4速から5速、6速、7速とハイレシオになるほど、キャリアCfの回転数を減少させてモータ・ジェネレータ(G)14の連れ回りによる引き摺りを減少することができ、エンジン12での走行時のハイレシオ側の効率を向上させることができる。
【0100】
また、運転の態様を持ち替えたとき、発電が欲しい低速ではモータ・ジェネレータ(G)14の回転を高くすることができる一方、エンジン12で走行するときは回転数を低下させることができてエンジン12の効率を向上させることができる。
【0101】
また、前記減速機構(Gr)は、前記車両の走行状態に応じて前記入力軸(16)と前記第1遊星歯車機構(24)のキャリア(Cf)とを断接可能なクラッチ(第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52)を備えるように構成したので、第1実施例と同様、車両の走行状態に応じて固定変速段によるエンジン12のみで走行することで、効率悪化を一層良く回避することができる。
【0102】
また、前記第1遊星歯車機構24のキャリアCfを装置ハウジング10aに固定するブレーキ(B1)64を備えるように構成したので、上記した効果に加え、最もハイレシオにおいてモータ・ジェネレータ14の連れ回りによる引き摺りを確実に零にすることができる。
【0103】
また、前記出力軸22に接続される第2のモータ・ジェネレータ(回転電機。M)66を備えるように構成したので、上記した効果に加え、第2のモータ・ジェネレータ66で発進するとき、第1のモータ・ジェネレータ14も動作させてアシストさせることが可能となり、第2のモータ・ジェネレータ66のサイズを小型にすることができる。また、加速時などにも第2のモータ・ジェネレータ66も動作させることで加速性を向上させることができる。
【0104】
さらに、第2のモータ・ジェネレータ66での走行時、エンジン12によって(第1の)モータ・ジェネレータ14で発電させて電気エネルギを補充することができる。
【0105】
また、第2のモータ・ジェネレータ66を備えると共に、車両の走行状態に応じて減速機構Grのクラッチ(第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52)を係合させることで、状況に応じて発電優先のときとエンジン12での走行による効率(燃費)優先のときとで発電効率を一層適宜変更することができる。
【実施例3】
【0106】
図14はこの発明の第3実施例に係るハイブリッド車両の駆動装置を全体的に示す、図4と同様の模式図である。尚、第3実施例においても、第1、第2実施例の構成要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0107】
第1、第2実施例と相違する点に焦点をおいて説明すると、第3実施例においてはエンジン12と入力軸16の間に第5クラッチ(C5)70を備えるように構成した。
【0108】
これにより、第1のモータ・ジェネレータ14(あるいは第1のモータ・ジェネレータ14と第2のモータ・ジェネレータ66)で走行するとき、エンジン12と入力軸16との接続を断つことでエンジン12が負荷となるのを回避することが可能となり、モータ・ジェネレータ14(あるいは14,66)走行時の電力の消費を抑えることができる。尚、残余の効果は第1、第2実施例と異ならない。
【0109】
図15は第3実施例の駆動装置の第1、第2遊星歯車機構などの速度線図、図16はそのときの変速段を確立するためのクラッチの係合を示す表である。
【0110】
図16から明らかな如く、第3クラッチ(C3)54と第4クラッチ(C4)56を係合して第1のモータ・ジェネレータ14(あるいは第1モータ・ジェネレータ14と第2のモータ・ジェネレータ66)でEV走行するとき、第5クラッチ(C5)70を解放すればエンジン12を引き摺ることがない(負荷とならない)ことから、電力の消費を抑えることができる。
【0111】
尚、図15に示す如く、EV発進時などに第1のモータ・ジェネレータ14と第2のモータ・ジェネレータ66でEV走行することで、モータサイズを小さくすることもできる。これは第2実施例においても同様である。
【0112】
図17は第3実施例における2,3速から4,5,6速までのEV走行動作を示す、図12などと同様の速度線図、図18はそのときの変速段を確立するためのクラッチの係合を示す表である。
【0113】
第3実施例においても、第1、第2実施例と同様、遊星歯車機構24,26をスプリット型としているので、図17と図18に示す如く、エンジン12ではなく、第1のモータ・ジェネレータ14を駆動源として固定変速比を確立することができる。また、そのとき第5クラッチ(C5)70を解放することで電力の消費を抑えることができる。
【0114】
尚、第3実施例を第2実施例の構成に第5クラッチ(C5)70を追加するように構成したが、第1実施例の構成に第5クラッチ(C5)70を追加するように構成しても良いことはいうまでもない。
【0115】
第3実施例にあっても、エンジン(内燃機関。Eg)12と少なくとも1個のモータ・ジェネレータ(回転電機。G)14とを備えたハイブリッド車両の駆動装置10において、前記エンジン(内燃機関)12に接続される入力軸16と、駆動輪(車輪)20側に接続される出力軸22と、前記入力軸16にサンギヤSfが接続されるダブルピニオン式の第1遊星歯車機構24と、前記入力軸16にキャリアCrが接続されるシングルピニオン式の第2遊星歯車機構26と、前記入力軸16の回転を減速して前記第1遊星歯車機構24のキャリアCfに伝達可能な減速機構Gr(ギヤ40,42,44、第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52)と、前記第1遊星歯車機構24のキャリアCfと前記第2遊星歯車機構26のサンギヤSrとを断接する第4クラッチ(C4)56と、前記第1遊星歯車機構24のリングギヤRfと前記第2遊星歯車機構26のリングギヤRrとを断接する第3クラッチ(C3)54とを備えると共に、前記第2遊星歯車機構26のリングギヤRrを前記出力軸22に接続し、前記第1遊星歯車機構24のキャリアCfに前記モータ・ジェネレータ(回転電機。G)14を接続するように構成したので、エンジン12のみでの走行を可能とすることでエネルギがいつも電気系統を通過することに伴う効率悪化を回避することができる。
【0116】
また、前記エンジン(内燃機関。Eg)12と前記入力軸16の間にクラッチ(第5クラッチ(C5)70)を備えるように構成したので、少なくともモータ・ジェネレータ(第1のモータ・ジェネレータ(回転電機G)14あるいは第2のモータ・ジェネレータ(回転電機。M)66、あるいはその双方)で走行するときなど、エンジン12と入力軸16との接続を断つことでエンジン12が負荷となるのを回避することが可能となり、モータ・ジェネレータ走行時の電力の消費を抑えることができる。
【0117】
尚、上記においてモータ・ジェネレータ14を入力軸16上に配置したが、中間軸36上などに配置しても良い。
【符号の説明】
【0118】
10 ハイブリッド車両の駆動装置、12 内燃機関(エンジン)Eg、14 (第1の)回転電機(モータ・ジェネレータ)G、16 入力軸、20 駆動輪、22 出力軸、24 第1遊星歯車機構Pf、24a,24b,24c 連結部材、26 第2遊星歯車機構Pr、30 減速ギヤ、36 中間軸、減速機構Gr(ギヤ40,42,44、第1クラッチ(C1)50,第2クラッチ(C2)52)、54 第3クラッチ(C3)、56 第4クラッチ(C4)、60 ECU(電子制御ユニット)、64 ブレーキB1、66 第2の回転電機(モータ・ジェネレータ)M、70 第5クラッチ(C5)
【技術分野】
【0001】
この発明はハイブリッド車両の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両の駆動装置としては特許文献1記載の技術が知られている。その技術は内燃機関と第1、第2回転電機を備え、第1回転電機あるいは第1回転電機と内燃機関を車両の動力源として用いると共に、第2回転電機を内燃機関で駆動して発電させるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3099721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の技術にあっては、走行するとき常に第2回転電機による発電と電動機駆動が必要となり、エネルギがいつも電気系統を通過することに伴う効率悪化が避けられなかった。また第2回転電機が比較的低回転で駆動されることで駆動効率が低下するため、ハイレシオ側の効率が低下する問題もあった。
【0005】
従って、この発明の目的は上記した不都合を解消し、内燃機関と少なくとも1個の回転電機を備えたハイブリッド車両の駆動装置において内燃機関のみでの走行を可能にすると共に、ハイレシオ側の効率も向上させるようにしたハイブリッド車両の駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、請求項1にあっては、内燃機関(Eg)と少なくとも1個の回転電機(G)とを備えたハイブリッド車両の駆動装置において、前記内燃機関に接続される入力軸(16)と、車輪側に接続される出力軸(22)と、前記入力軸にサンギヤ(Sf)が接続されるダブルピニオン式の第1遊星歯車機構(24)と、前記入力軸にキャリア(Cr)が接続されるシングルピニオン式の第2遊星歯車機構(26)と、前記入力軸の回転を減速して前記第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)に伝達可能な減速機構(Gr)と、前記第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)と前記第2遊星歯車機構のサンギヤ(Sr)とを断接するクラッチ(第4クラッチ(C4)56)と、前記第1遊星歯車機構のリングギヤ(Rf)と前記第2遊星歯車機構のリングギヤ(Rr)とを断接するクラッチ(第3クラッチ(C3)54)とを備えると共に、前記第2遊星歯車機構のリングギヤ(Rr)を前記出力軸に接続し、前記第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)に前記回転電機を接続するように構成した。
【0007】
請求項2に係るハイブリッド車両の駆動装置にあっては、前記減速機構(Gr)は、前記車両の走行状態に応じて前記入力軸と前記第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)とを断接可能なクラッチ(第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52)を備えるように構成した。
【0008】
請求項3に係るハイブリッド車両の駆動装置にあっては、前記第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)を装置ハウジングに固定するブレーキ(B1)を備えるように構成した。
【0009】
請求項4に係るハイブリッド車両の駆動装置にあっては、前記出力軸に接続される第2の回転電機(M)を備えるように構成した。
【0010】
請求項5に係るハイブリッド車両の駆動装置にあっては、前記内燃機関(Eg)と前記入力軸(16)の間にクラッチ(第5クラッチ(C5)70)を備えるように構成した。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係るハイブリッド車両の駆動装置にあっては、内燃機関に接続される入力軸(16)にサンギヤ(Sf)が接続されるダブルピニオン式の第1遊星歯車機構(24)と、入力軸にキャリア(Cr)が接続されるシングルピニオン式の第2遊星歯車機構(26)と、入力軸の回転を減速して第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)に伝達可能な減速機構(Gr)と、第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)と第2遊星歯車機構のサンギヤ(Sr)とを断接するクラッチ(第4クラッチ(C4)56)と、第1、第2遊星歯車機構のリングギヤ(Rf)(Rr)とを断接するクラッチ(第3クラッチ(C3)54)とを備えると共に、第2遊星歯車機構のリングギヤ(Rr)を車輪側に接続される出力軸(22)に接続し、第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)に回転電機を接続するように構成したので、内燃機関(Eg)のみでの走行を可能とすることでエネルギがいつも電気系統を通過することに伴う効率悪化を回避することができる。
【0012】
即ち、第3、第4クラッチ(C3,C4)54,56と、入力軸の回転を減速して第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)に伝達可能な減速機構(Gr)を備えることで、減速機構(Gr)のクラッチ(請求項3で規定される)と第3、第4クラッチ(C3,C4)54,56のうちの少なくとも2つを係合させて固定変速段を形成することができ、よって内燃機関(Eg)のみで走行して効率悪化を回避することができる。
【0013】
また、ハイレシオになるほど差回転が減少する第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)に回転電機(G)を接続するように構成したので、ハイレシオになるほど回転電機(G)の連れ回りによる引き摺りを減少することができ、内燃機関走行時のハイレシオ側の効率を向上させることができる。
【0014】
また、運転の態様を持ち替えたとき、発電が欲しい低速では回転電機(G)の回転を高くすることができる一方、内燃機関で走行するときは回転数を低下させることができて内燃機関の効率を向上させることができる。
【0015】
請求項2に係るハイブリッド車両の駆動装置にあっては、減速機構(Gr)は、車両の走行状態に応じて入力軸と第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)とを断接可能なクラッチ(第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52)を備えるように構成したので、上記した効果に加え、車両の走行状態に応じて固定変速段による内燃機関のみで走行することで、効率悪化を一層良く回避することができる。
【0016】
請求項3に係るハイブリッド車両の駆動装置にあっては、第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)を装置ハウジングに固定するブレーキ(B1)を備えるように構成したので、上記した効果に加え、最もハイレシオにおいて回転電機(G)の連れ回りによる引き摺りを確実に零にすることができる。
【0017】
請求項4に係るハイブリッド車両の駆動装置にあっては、出力軸に接続される第2の回転電機(M)を備えるように構成したので、上記した効果に加え、第2の回転電機(M)で発進するとき、(第1の)回転電機(G)も動作させてアシストさせることが可能となり、第2の回転電機(M)のサイズを小型にすることができる。また、加速時などにも第2の回転電機(M)も動作させることで加速性を向上させることができる。
【0018】
さらに、第2の回転電機(M)での走行時、内燃機関によって(第1の)回転電機(G)で発電させて電気エネルギを補充することができる。
【0019】
また、第2の回転電機(M)を備えると共に、車両の走行状態に応じて減速機構のクラッチ(第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52)を係合させることで、状況に応じて発電優先のときと内燃機関での走行による効率(燃費)優先のときとで発電効率を一層適宜変更することができる。
【0020】
請求項5に係るハイブリッド車両の駆動装置にあっては、内燃機関(Eg)と入力軸(16)の間にクラッチ(第5クラッチ(C5)70)を備えるように構成したので、上記した効果に加え、少なくとも回転電機(G)で走行するときなど、内燃機関(Eg)と入力軸(16)との接続を断つことで内燃機関(Eg)が負荷となるのを回避することが可能となり、回転電機走行時の電力の消費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の第1実施例に係るハイブリッド車両の駆動装置を全体的に示す模式図である。
【図2】図1に示す駆動装置の第1、第2遊星歯車機構などの速度線図である。
【図3】図1に示す駆動装置の変速段を確立するためのクラッチの係合を示す表である。
【図4】この発明の第2実施例に係るハイブリッド車両の駆動装置を全体的に示す、図1と同様の模式図である。
【図5】図4に示す駆動装置の第1、第2遊星歯車機構などの速度線図である。
【図6】図4に示す駆動装置の変速段を確立するためのクラッチの係合を示す表である。
【図7】第2実施例における1速から3速までの速度段の確立をより詳細に示す、図5と同様の速度線図である。
【図8】第2実施例における4速から7速までの速度段の確立をより詳細に示す、図5と同様の速度線図である。
【図9】第2実施例における電気CVT走行の動作を示す、図5と同様の速度線図である。
【図10】第2実施例におけるEV走行の動作を示す、図5と同様の速度線図である。
【図11】第2実施例におけるシリーズEV走行の動作を示す、図5と同様の速度線図である。
【図12】第2実施例における低中速走行時に電気CVTから内燃機関主体の走行に切り換える場合の動作を示す、図5と同様の速度線図である。
【図13】同様に第2実施例における中高速走行時に電気CVTから内燃機関主体の走行に切り換える場合の動作を示す、図5と同様の速度線図である。
【図14】この発明の第3実施例に係るハイブリッド車両の駆動装置を全体的に示す、図4と同様の模式図である。
【図15】第3実施例の駆動装置の第1、第2遊星歯車機構などの速度線図である。
【図16】図15に示す装置の変速段を確立するためのクラッチの係合を示す表である。
【図17】第3実施例における2,3速から4,5,6速までのEV走行動作を示す、図12などと同様の速度線図である。
【図18】図17に示す動作のときの変速段を確立するためのクラッチの係合を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に即してこの発明に係るハイブリッド車両の駆動装置を実施するための形態を説明する。
【実施例1】
【0023】
図1はこの発明の第1実施例に係るハイブリッド車両の駆動装置を全体的に示す模式図である。
【0024】
以下説明すると、符号10はハイブリッド車両の駆動装置を示し、駆動装置10は、内燃機関12と、少なくとも1個の回転電機14と、内燃機関12に接続される入力軸16と、駆動輪20に接続される出力軸22と、入力軸16と出力軸22の間に配置される、内燃機関12からの入力において上流(フロント)側の第1遊星歯車機構24と下流(リヤ)側の第2遊星歯車機構26とを備え、ハイブリッド車両(図示せず。以下「車両」という)に搭載される。
【0025】
内燃機関(「Eg」と示す。以下「エンジン」という)12はガソリンを燃料とする火花点火式のガソリンエンジン(あるいは軽油を燃料とする圧着着火式のディーゼルエンジン)からなり、燃料と空気の混合気を点火(着火)されるとき、燃焼してピストン(図示せず)を駆動する。
【0026】
ピストンの駆動はクランク軸(図示せず)の回転に変換され、クランク軸に接続される出力軸から出力されるエンジン12の駆動力は、フライホイール、トルクコンバータなどのダンパ(図示せず)を介して入力軸16から入力される。
【0027】
回転電機(「G」と示す)14はブラシレス交流同期電動機からなり、通電されて回転するときは電動機(モータ)として機能すると共に、エンジン12(あるいは駆動輪20)によって駆動されて回転するときは発電機(ジェネレータ)として機能する。以下、回転電機14を「モータ・ジェネレータ」という。
【0028】
このように、この明細書において「回転電機」は電動機(モータ)と発電機(ジェネレータ)の機能を共に有する機器を意味する。モータ・ジェネレータ14によって発電された電気エネルギはバッテリなどのエネルギ貯留手段(図示せず)に蓄えられ、モータとして動作するときエネルギとして供給される。
【0029】
モータ・ジェネレータ14は、装置ハウジング10aに固定されるステータ14aと、ステータ14aに対して相対回転自在に配置されるロータ14bを備える。
【0030】
駆動装置10において、入力軸16はベアリング16aを介して装置ハウジング10aに回転自在に支承される。
【0031】
第1遊星歯車機構24は、サンギヤSfとキャリアCfとリングギヤRfを備え、キャリアCfがそれぞれ2個ずつのピニオンに接続されるダブルピニオン式からなる。
【0032】
第2遊星歯車機構26は、サンギヤSrとキャリアCrとリングギヤRrを備え、キャリアCrが1個ずつのピニオンに接続されるシングルピニオン式からなる。
【0033】
第1遊星歯車機構24において、サンギヤSfは入力軸16に接続され、エンジン12によって駆動される。キャリアCfは上流側でモータ・ジェネレータ14のロータ14aに連結部材24aを介して接続される一方、下流側で第2遊星歯車機構(Pr)26のサンギヤSrに連結部材24bを介して接続される。リングギヤ(Rf)は第2遊星歯車機構(Pr)26のリングギヤ(Rr)に連結部材24cを介して接続される。
【0034】
第2遊星歯車機構26において、キャリアCrは入力軸16に接続され、エンジン12によって駆動される。リングギヤ(Rr)は一方では上記したように第1遊星歯車機構(Pf)24のリングギヤ(Rf)に連結部材24cを介して接続されると共に、他方では出力軸22に固定された減速ギヤ30に噛合する。
【0035】
出力軸22には減速ギヤ30に隣接してドライブギヤ32aが固定され、減速ギヤ30の回転はドライブギヤ32aと、それと噛合するディファレンシャル34に配置されたドリブンギヤ32bを介して駆動輪20に接続される。
【0036】
駆動装置10は、入力軸16と平行に配置される中間軸36を備え、入力軸16には第1遊星歯車機構24の上流側においてドライブギヤ40aが相対回転自在に配置されると共に、中間軸36にはドライブギヤ40aと噛合すると共に、それより歯数の多いドリブンギヤ40bが固定される。
【0037】
また入力軸16にはその上流側においてドライブギヤ42aが固定されると共に、中間軸36にはドライブギヤ42aと噛合するドリブンギヤ42bが相対回転自在に配置される。
【0038】
さらに中間軸36には下流側においてドライブギヤ44aが固定されると共に、第1遊星歯車機構24の連結部材24aにはドライブギヤ44aと噛合するドリブンギヤ44bが固定され、それによって中間軸36の回転はモータ・ジェネレータ(G)14のロータ14bに伝達される。
【0039】
ドライブギヤ40aには第1クラッチ(C1)50が配置されると共に、ドリブンギヤ42bには第2クラッチ(C2)52が配置される。第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52は多板式の油圧クラッチからなり、入力軸16と中間軸36(の接続)を断接する。
【0040】
即ち、第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52は車両の走行状態に応じて油圧を供給されて係合(オン)されるとき、ギヤ40,42を介して入力軸16の回転を中間軸36に接続する一方、油圧を排出されて解放(オフ)されるとき、ギヤ40,42を介しての入力軸16の回転の中間軸36への接続を遮断する。
【0041】
従ってギヤ40,42,44と第1、第2クラッチ(C1,C2)が、入力軸16の回転を減速して第1遊星歯車機構24のキャリア(Cf)に伝達可能な減速機構Grとして機能する。このように減速機構Grは、入力軸16と第1遊星歯車機構24のキャリアCfと(の接続)を断接可能なクラッチ(第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52)を備える。
【0042】
また、前記した第2遊星歯車機構26の連結部材24cには第3クラッチ(C3)54が配置されると共に、第1遊星歯車機構24の連結部材24bには第4クラッチ(C4)56が配置される。第3、第4クラッチ(C3,C4)54,56も多板式の油圧クラッチからなり、第1、第2遊星歯車機構24,26のリングギヤRf,Rrとを、あるいは第1遊星歯車機構24のキャリアCfと第2遊星歯車機構26のサンギヤSrと(の接続)を断接する。
【0043】
即ち、第3クラッチ(C3)54は、油圧を供給されて係合(オン)されるとき、第1遊星歯車機構24のリングギヤRfと第2遊星歯車機構26のリングギヤRrとを接続する一方、油圧を排出されて解放(オフ)されるとき、それらの接続を遮断する。
【0044】
また第4クラッチ(C4)56は、油圧を供給されて係合(オン)されるとき、第1遊星歯車機構24のキャリアCfと第2遊星歯車機構26のサンギヤSrとを接続する一方、油圧を排出されて解放(オフ)されるとき、それらの接続を遮断する。
【0045】
駆動装置10は油圧機構(図示せず)とECU(電子制御ユニット)60を備える。ECU60はマイクロコンピュータからなり、走行状態に応じてエンジン12と、モータ・ジェネレータ14と、第1から第4クラッチCn(C1,C2,C3,C4)50,52,54,56の動作を制御する。
【0046】
図2は図1に示す駆動装置10の(ECU60によってその動作が制御される)第1、第2遊星歯車機構24,26などの速度線図、図3は図1に示す駆動装置10の変速段を確立するためのクラッチCnの係合を示す表である。図3において丸印が付されることはクラッチCnが係合されることを、丸印が付されないことはクラッチCnが解放されることを意味する。
【0047】
図2の速度線図において3つの縦軸は第1、第2遊星歯車機構24,26の3つの要素に対応し、上方への長さが前進方向の回転数を示す。また、縦軸間の距離はサンギヤSf,SrあるいはリングギヤRf,Rrの歯数の逆数に比例する。
【0048】
以下、説明すると、第1、第3クラッチ(C1,C3)50,54が係合されると、1速(1)が確立される。
【0049】
即ち、エンジン12から入力される入力軸16の回転は第1遊星歯車機構24のサンギヤSfにそのまま伝達される一方、第1クラッチ(C1)50が係合されることから、ギヤ40,42で減速されてキャリアCfとモータ・ジェネレータ14のロータ14bに伝達される。図2においてN1がそのときのキャリアCfの回転を示す。
【0050】
従って、図2に示す如く、第1遊星歯車機構24にあってはサンギヤSfとキャリアCfの回転に応じてリングギヤRfの回転が決まる。第3クラッチ(C3)54が係合されることから、第1遊星歯車機構24の出力は第2遊星歯車機構26のリングギヤRrからそのまま出力される。
【0051】
また第2、第3クラッチ(C2,C3)52,54が係合されると、2速(2)が確立される。
【0052】
この場合もエンジン12から入力される入力軸16の回転は第1遊星歯車機構24のサンギヤSfにそのまま伝達されるが、第2クラッチ(C2)52が係合されることから、ギヤ44,42で1速より少ない量だけ減速されてキャリアCfとモータ・ジェネレータ14のロータ14bに伝達される。図2においてN2がそのときのキャリアCfの回転を示す。
【0053】
図2に示す如く、第3クラッチ(C3)54が係合されることから、第1遊星歯車機構24の出力は第2遊星歯車機構26のリングギヤRrからそのまま出力される。
【0054】
また第3、第4クラッチ(C3,C4)54,56が係合されると、3速(3)が確立される。
【0055】
この場合エンジン12から入力される入力軸16の回転は第1遊星歯車機構24のサンギヤSfにそのまま伝達される一方、第2遊星歯車機構26のキャリアCrにそのまま伝達される。
【0056】
尚、この実施例において3速にあってはエンジン12とモータ・ジェネレータ14の回転が回転数N3で等速になるように第1、第2遊星歯車機構24,26の構造が設定される。
【0057】
第3、第4クラッチ(C3,C4)54,56が共に係合されることから、第1、第2遊星歯車機構24,26は一体化され、第2遊星歯車機構26のリングギヤRrから出力される。
【0058】
また第2、第4クラッチ(C2,C4)52,56が係合されると、4速(4)が確立される。
【0059】
この場合は2速のときと同様であり、第2遊星歯車機構26のリングギヤRrから出力される。図2においてN2で示されるキャリアCfの回転に応じて第2遊星歯車機構26のサンギヤSrの回転が決定される結果、第2遊星歯車機構26のリングギヤRrの回転が決定されて出力される。
【0060】
また第1、第4クラッチ(C1,C4)50,56が係合されると、5速(5)が確立される。
【0061】
この場合は1速のときと同様であり、第2遊星歯車機構26のリングギヤRrから出力される。図2においてN1で示されるキャリアCfの回転に応じて第2遊星歯車機構26のサンギヤSrの回転が決定される結果、同様に第2遊星歯車機構26のリングギヤRrの回転が決定されて出力される。
【0062】
後進(R)走行は図3に「R−EV」と示す如く、エンジン12を停止させ、モータ・ジェネレータ14を逆転させ、1速と同様、第1、第3クラッチ(C1,C3)50,54が係合されることで確立される。
【0063】
上記はエンジン12(とモータ・ジェネレータ14)を動作させて変速段を確立する場合であるが、図3に「EV可能」と記載するように、EV、即ち、エンジン12に代え、モータ・ジェネレータ14のみを動作させて1速から5速までの速度段に対応する回転を第2遊星歯車機構26のリングギヤRrから出力させることも可能である。
【0064】
その場合、エンジン12を停止させ、モータ・ジェネレータ14を動作させ、図3に従ってクラッチCnを係合することで、1速から5速までの速度段に対応する回転を第2遊星歯車機構26のリングギヤRrから出力させることができる。
【0065】
また、図2に「電気CVT」(ECU60の制御によるCVT(無段変速機)に類似する無段変速動作(制御))と示すように、図示の構成において電気CVTが可能である。
【0066】
即ち、エンジン12とモータ・ジェネレータ14を適宜動作させると共に、第4クラッチ(C4)56を係合して第1遊星歯車機構24のキャリアCfの回転数を第2遊星歯車機構サンギヤSrに入力(伝達)させ、同図下部に示す如く、サンギヤSrの回転数を増減することで所望のレシオに相当する回転をリングギヤRrから出力させることができる。
【0067】
第1実施例にあっては、エンジン(内燃機関。Eg)12と少なくとも1個のモータ・ジェネレータ(回転電機。G)14とを備えたハイブリッド車両の駆動装置10において、前記エンジン(内燃機関)12に接続される入力軸16と、駆動輪(車輪)20側に接続される出力軸22と、前記入力軸16にサンギヤSfが接続されるダブルピニオン式の第1遊星歯車機構24と、前記入力軸16にキャリアCrが接続されるシングルピニオン式の第2遊星歯車機構26と、前記入力軸16の回転を減速して前記第1遊星歯車機構24のキャリアCfに伝達可能な減速機構Gr(ギヤ40,42,44、第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52)と、前記第1遊星歯車機構24のキャリアCfと前記第2遊星歯車機構26のサンギヤSrとを断接する第4クラッチ(C4)56と、前記第1遊星歯車機構24のリングギヤRfと前記第2遊星歯車機構26のリングギヤRrとを断接する第3クラッチ(C3)54とを備えると共に、前記第2遊星歯車機構26のリングギヤRrを前記出力軸22に接続し、前記第1遊星歯車機構24のキャリアCfに前記モータ・ジェネレータ14を接続するように構成したので、エンジン12のみでの走行を可能とすることでエネルギがいつも電気系統を通過することに伴う効率悪化を回避することができる。
【0068】
即ち、第3、第4クラッチ(C3,C4)54,56と、入力軸16の回転を減速して第1遊星歯車機構24のキャリア(Cf)に伝達可能な減速機構Gr(ギヤ40,42,44、第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52)を備えることで、減速機構Grの第1、第2クラッチ(C1,C2)と第3、第4クラッチ(C3,C4)のうちの少なくとも2つを係合させて固定変速段を形成することができ、よってエンジン12のみで走行して効率悪化を回避することができる。
【0069】
また、ハイレシオになるほど差回転が減少する第1遊星歯車機構24のキャリアCfにモータ・ジェネレータ(G)14を接続するように構成したので、ハイレシオになるほどモータ・ジェネレータ(G)14の連れ回りによる引き摺りを減少することができ、エンジン12での走行時のハイレシオ側の効率を向上させることができる。
【0070】
即ち、図2に示す如く、レシオが3速、4速、5速とハイ側になるほどキャリアCfの回転数がN3,N2,N1と低下するので、換言すればハイレシオになるほどモータ・ジェネレータ(G)14の連れ回りによる引き摺りを減少できるので、エンジン12での走行時のハイレシオ側の効率を向上させることができる。
【0071】
また、運転の態様を持ち替えたとき、発電が欲しい低速ではモータ・ジェネレータ(G)14の回転を高くすることができる一方、エンジン12で走行するときは回転数を低下させることができてエンジン12の効率を向上させることができる。
【0072】
また、前記減速機構(Gr)は、前記車両の走行状態に応じて前記入力軸(16)と前記第1遊星歯車機構(24)のキャリア(Cf)とを断接可能なクラッチ(第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52)を備えるように構成したので、車両の走行状態に応じて固定変速段によるエンジン12のみで走行することで、効率悪化を一層良く回避することができる。
【実施例2】
【0073】
図4はこの発明の第2実施例に係るハイブリッド車両の駆動装置を全体的に示す、図1と同様の模式図である。
【0074】
第2実施例において、図1に示す第1実施例の構成要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0075】
第1実施例と相違する点に焦点をおいて説明すると、第2実施例においては、第1遊星歯車機構24のキャリアCf、より具体的にはその連結部材24aを装置ハウジング10aに固定するブレーキ(B1)64を備えるように構成した。
【0076】
また、第1のモータ・ジェネレータ14に加え、出力軸22に接続される第2のモータ・ジェネレータ(回転電機。「M」と示す)66を備えるように構成した。
【0077】
第2のモータ・ジェネレータ66も第1のモータ・ジェネレータ14と同様にブラシレス交流同期電動機からなり、通電されて回転するときは電動機(モータ)として機能すると共に、エンジン12(あるいは駆動輪20)によって駆動されて回転するときは発電機(ジェネレータ)として機能する。モータ・ジェネレータ66は、減速ギヤ30と噛合するギヤ66aを介して出力軸22に接続される。
【0078】
図5は図4に示す駆動装置10の第1、第2遊星歯車機構24,26などの速度線図、図6は図4に示す駆動装置10の変速段を確立するためのクラッチCnの係合を示す表である。
【0079】
第2実施例にあっては、図6に示す如く、1速から7速までの速度段を備える。図7はそのうちの1速から3速、図8は4速から7速までの速度段の確立をより詳細に示す、図5と同様の速度線図である。
【0080】
以下、説明すると、第2実施例にあっては、第1クラッチ(C1)50に代えてブレーキ(B1)64が係合されると共に、第3クラッチ(C3)54が係合されると、1速(1)が確立される。
【0081】
即ち、ブレーキ(B1)64が係合されると、第1遊星歯車機構(Pf)24のキャリアCfが装置ハウジング10aに固定される結果、モータ・ジェネレータ(G)14も停止させられる。図7において1がそのときのリングギヤRfの回転を示す。第3クラッチ(C3)54が係合されることから、第1遊星歯車機構24の出力は第2遊星歯車機構26のリングギヤRrからそのまま出力される。
【0082】
2速から6速までは第1実施例の1速から5速までと同様である。即ち、第2実施例にあっては4速のときエンジン12とモータ・ジェネレータ14の回転が等速になるように第1、第2遊星歯車機構24,26の構造が設定される。
【0083】
またブレーキ(B1)64と第4クラッチ(C4)56が係合されると、7速(7)が確立される。即ち、1速のときと同じ第1遊星歯車機構24のキャリアCfの回転が第2遊星歯車機構26のサンギヤSrに入力され、そのリングギヤRrから出力される。
【0084】
後進(R)走行も、第1実施例と同様、第1、第3クラッチ(C1,C3)50,54が係合されることで確立される。
【0085】
次いで電気CVTについて説明すると、図9はその動作を示す、図5と同様の速度線図である。
【0086】
第2実施例にあっても、第1実施例と同様、エンジン12とモータ・ジェネレータ14を適宜動作させると共に、第4クラッチ(C4)56を係合して第1遊星歯車機構24のキャリアCfの回転数を第2遊星歯車機構サンギヤSrに入力(伝達)させ、同図下部に示す如く、サンギヤSrの回転数を増減することで所望のレシオに相当する回転をリングギヤRrから出力させることができる。
【0087】
次いでEV走行について説明すると、図10はその動作を示す、図5と同様の速度線図である。
【0088】
第2実施例は第1のモータ・ジェネレータ14に加えて第2のモータ・ジェネレータ66を備えることから、図9に示す如く、それを動作させることで、容易にEV走行を可能とすることができる。
【0089】
その場合、エンジン12は動作させても停止させても良い。尚、第1実施例と同様、第1のモータ・ジェネレータ14を動作させてEV走行させても良いことはいうまでもない。また第2のモータ・ジェネレータ66と第1のモータ・ジェネレータ14の両方を動作させてEV走行能力を上げることも可能である。
【0090】
次いでシリーズEV、即ち、発電しながら走行する場合を説明すると、図11はその動作を示す、図5と同様の速度線図である。
【0091】
この場合、第1クラッチ(C1)50(あるいは第2クラッチ(C2)52)を係合させ、第1のモータ・ジェネレータ14を減速した回転で駆動して発電させる。モータ・ジェネレータ14によって発電された電気エネルギは図示しないエネルギ貯留手段に貯留されるか、あるいは自らまたは図11に破線で示すように第2のモータ・ジェネレータ66に供給される。
【0092】
後進(R)走行は、エンジン12を停止させ、第2のモータ・ジェネレータ66を逆転させて行なう。尚、その場合、第1、第3クラッチ(C1,C3)50,54を係合させ、第1のモータ・ジェネレータ14を逆転させて行っても良い。
【0093】
次いで電気CVTからエンジン12主体の走行に切り換える場合を説明する。図12はそのときの特に1速から3速の低中速走行している場合、図13は4速から7速の動作を示す、図5と同様の速度線図である。
【0094】
即ち、低、中負荷にあるときはモータ・ジェネレータ14を主体に走行すると共に、高負荷になったときは、エンジン12主体に切り換えるような場合である。
【0095】
そのような場合、図12に示す如く、第1、第2遊星歯車機構24,26のリングギヤRf,Rrの回転が合う(回転が合い、かつ目標の変速段相当にエンジン回転となる)ようにエンジン12とモータ・ジェネレータ14で回転を合わせることとする。図13に示す中高速走行している場合も同様である。
【0096】
第2実施例にあっても、エンジン(内燃機関。Eg)12と少なくとも1個のモータ・ジェネレータ(回転電機。G)14とを備えたハイブリッド車両の駆動装置10において、前記エンジン(内燃機関)12に接続される入力軸16と、駆動輪(車輪)20側に接続される出力軸22と、前記入力軸16にサンギヤSfが接続されるダブルピニオン式の第1遊星歯車機構24と、前記入力軸16にキャリアCrが接続されるシングルピニオン式の第2遊星歯車機構26と、前記入力軸16の回転を減速して前記第1遊星歯車機構24のキャリアCfに伝達可能な減速機構Gr(ギヤ40,42,44、第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52)と、前記第1遊星歯車機構24のキャリアCfと前記第2遊星歯車機構26のサンギヤSrとを断接する第4クラッチ(C4)56と、前記第1遊星歯車機構24のリングギヤRfと前記第2遊星歯車機構26のリングギヤRrとを断接する第3クラッチ(C3)54とを備えると共に、前記第2遊星歯車機構26のリングギヤRrを前記出力軸22に接続し、前記第1遊星歯車機構24のキャリアCfに前記モータ・ジェネレータ(回転電機。G)14を接続するように構成したので、エンジン12のみでの走行を可能とすることでエネルギがいつも電気系統を通過することに伴う効率悪化を回避することができる。
【0097】
即ち、第3、第4クラッチ(C3,C4)54,56と、入力軸16の回転を減速して第1遊星歯車機構24のキャリア(Cf)に伝達可能な減速機構Gr(ギヤ40,42,44、第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52)を備えることで、エンジン12のみでの走行を可能にして効率悪化を回避することができる。
【0098】
より具体的には、1速確立時に図7に示すように第1遊星歯車機構24のキャリアCfの回転数が零となるように第1、第2遊星歯車機構24,26の構造を設定されるので、エンジン12のみで走行することが可能となる。
【0099】
また、ハイレシオになるほど差回転が減少する第1遊星歯車機構24のキャリアCfにモータ・ジェネレータ(G)14を接続するように構成したので、図8に示す如く、4速から5速、6速、7速とハイレシオになるほど、キャリアCfの回転数を減少させてモータ・ジェネレータ(G)14の連れ回りによる引き摺りを減少することができ、エンジン12での走行時のハイレシオ側の効率を向上させることができる。
【0100】
また、運転の態様を持ち替えたとき、発電が欲しい低速ではモータ・ジェネレータ(G)14の回転を高くすることができる一方、エンジン12で走行するときは回転数を低下させることができてエンジン12の効率を向上させることができる。
【0101】
また、前記減速機構(Gr)は、前記車両の走行状態に応じて前記入力軸(16)と前記第1遊星歯車機構(24)のキャリア(Cf)とを断接可能なクラッチ(第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52)を備えるように構成したので、第1実施例と同様、車両の走行状態に応じて固定変速段によるエンジン12のみで走行することで、効率悪化を一層良く回避することができる。
【0102】
また、前記第1遊星歯車機構24のキャリアCfを装置ハウジング10aに固定するブレーキ(B1)64を備えるように構成したので、上記した効果に加え、最もハイレシオにおいてモータ・ジェネレータ14の連れ回りによる引き摺りを確実に零にすることができる。
【0103】
また、前記出力軸22に接続される第2のモータ・ジェネレータ(回転電機。M)66を備えるように構成したので、上記した効果に加え、第2のモータ・ジェネレータ66で発進するとき、第1のモータ・ジェネレータ14も動作させてアシストさせることが可能となり、第2のモータ・ジェネレータ66のサイズを小型にすることができる。また、加速時などにも第2のモータ・ジェネレータ66も動作させることで加速性を向上させることができる。
【0104】
さらに、第2のモータ・ジェネレータ66での走行時、エンジン12によって(第1の)モータ・ジェネレータ14で発電させて電気エネルギを補充することができる。
【0105】
また、第2のモータ・ジェネレータ66を備えると共に、車両の走行状態に応じて減速機構Grのクラッチ(第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52)を係合させることで、状況に応じて発電優先のときとエンジン12での走行による効率(燃費)優先のときとで発電効率を一層適宜変更することができる。
【実施例3】
【0106】
図14はこの発明の第3実施例に係るハイブリッド車両の駆動装置を全体的に示す、図4と同様の模式図である。尚、第3実施例においても、第1、第2実施例の構成要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0107】
第1、第2実施例と相違する点に焦点をおいて説明すると、第3実施例においてはエンジン12と入力軸16の間に第5クラッチ(C5)70を備えるように構成した。
【0108】
これにより、第1のモータ・ジェネレータ14(あるいは第1のモータ・ジェネレータ14と第2のモータ・ジェネレータ66)で走行するとき、エンジン12と入力軸16との接続を断つことでエンジン12が負荷となるのを回避することが可能となり、モータ・ジェネレータ14(あるいは14,66)走行時の電力の消費を抑えることができる。尚、残余の効果は第1、第2実施例と異ならない。
【0109】
図15は第3実施例の駆動装置の第1、第2遊星歯車機構などの速度線図、図16はそのときの変速段を確立するためのクラッチの係合を示す表である。
【0110】
図16から明らかな如く、第3クラッチ(C3)54と第4クラッチ(C4)56を係合して第1のモータ・ジェネレータ14(あるいは第1モータ・ジェネレータ14と第2のモータ・ジェネレータ66)でEV走行するとき、第5クラッチ(C5)70を解放すればエンジン12を引き摺ることがない(負荷とならない)ことから、電力の消費を抑えることができる。
【0111】
尚、図15に示す如く、EV発進時などに第1のモータ・ジェネレータ14と第2のモータ・ジェネレータ66でEV走行することで、モータサイズを小さくすることもできる。これは第2実施例においても同様である。
【0112】
図17は第3実施例における2,3速から4,5,6速までのEV走行動作を示す、図12などと同様の速度線図、図18はそのときの変速段を確立するためのクラッチの係合を示す表である。
【0113】
第3実施例においても、第1、第2実施例と同様、遊星歯車機構24,26をスプリット型としているので、図17と図18に示す如く、エンジン12ではなく、第1のモータ・ジェネレータ14を駆動源として固定変速比を確立することができる。また、そのとき第5クラッチ(C5)70を解放することで電力の消費を抑えることができる。
【0114】
尚、第3実施例を第2実施例の構成に第5クラッチ(C5)70を追加するように構成したが、第1実施例の構成に第5クラッチ(C5)70を追加するように構成しても良いことはいうまでもない。
【0115】
第3実施例にあっても、エンジン(内燃機関。Eg)12と少なくとも1個のモータ・ジェネレータ(回転電機。G)14とを備えたハイブリッド車両の駆動装置10において、前記エンジン(内燃機関)12に接続される入力軸16と、駆動輪(車輪)20側に接続される出力軸22と、前記入力軸16にサンギヤSfが接続されるダブルピニオン式の第1遊星歯車機構24と、前記入力軸16にキャリアCrが接続されるシングルピニオン式の第2遊星歯車機構26と、前記入力軸16の回転を減速して前記第1遊星歯車機構24のキャリアCfに伝達可能な減速機構Gr(ギヤ40,42,44、第1、第2クラッチ(C1,C2)50,52)と、前記第1遊星歯車機構24のキャリアCfと前記第2遊星歯車機構26のサンギヤSrとを断接する第4クラッチ(C4)56と、前記第1遊星歯車機構24のリングギヤRfと前記第2遊星歯車機構26のリングギヤRrとを断接する第3クラッチ(C3)54とを備えると共に、前記第2遊星歯車機構26のリングギヤRrを前記出力軸22に接続し、前記第1遊星歯車機構24のキャリアCfに前記モータ・ジェネレータ(回転電機。G)14を接続するように構成したので、エンジン12のみでの走行を可能とすることでエネルギがいつも電気系統を通過することに伴う効率悪化を回避することができる。
【0116】
また、前記エンジン(内燃機関。Eg)12と前記入力軸16の間にクラッチ(第5クラッチ(C5)70)を備えるように構成したので、少なくともモータ・ジェネレータ(第1のモータ・ジェネレータ(回転電機G)14あるいは第2のモータ・ジェネレータ(回転電機。M)66、あるいはその双方)で走行するときなど、エンジン12と入力軸16との接続を断つことでエンジン12が負荷となるのを回避することが可能となり、モータ・ジェネレータ走行時の電力の消費を抑えることができる。
【0117】
尚、上記においてモータ・ジェネレータ14を入力軸16上に配置したが、中間軸36上などに配置しても良い。
【符号の説明】
【0118】
10 ハイブリッド車両の駆動装置、12 内燃機関(エンジン)Eg、14 (第1の)回転電機(モータ・ジェネレータ)G、16 入力軸、20 駆動輪、22 出力軸、24 第1遊星歯車機構Pf、24a,24b,24c 連結部材、26 第2遊星歯車機構Pr、30 減速ギヤ、36 中間軸、減速機構Gr(ギヤ40,42,44、第1クラッチ(C1)50,第2クラッチ(C2)52)、54 第3クラッチ(C3)、56 第4クラッチ(C4)、60 ECU(電子制御ユニット)、64 ブレーキB1、66 第2の回転電機(モータ・ジェネレータ)M、70 第5クラッチ(C5)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(Eg)と少なくとも1個の回転電機(G)とを備えたハイブリッド車両の駆動装置において、前記内燃機関に接続される入力軸(16)と、車輪側に接続される出力軸(22)と、前記入力軸にサンギヤ(Sf)が接続されるダブルピニオン式の第1遊星歯車機構(24)と、前記入力軸にキャリア(Cr)が接続されるシングルピニオン式の第2遊星歯車機構(26)と、前記入力軸の回転を減速して前記第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)に伝達可能な減速機構(Gr)と、前記第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)と前記第2遊星歯車機構のサンギヤ(Sr)とを断接するクラッチ(C4)と、前記第1遊星歯車機構のリングギヤ(Rf)と前記第2遊星歯車機構のリングギヤ(Rr)とを断接するクラッチ(C3)とを備えると共に、前記第2遊星歯車機構のリングギヤ(Rr)を前記出力軸に接続し、前記第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)に前記回転電機を接続するように構成したことを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項2】
前記減速機構(Gr)は、前記車両の走行状態に応じて前記入力軸と前記第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)とを断接可能なクラッチ(C1,C2)を備えることを特徴とする請求項1記載のハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項3】
前記第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)を装置ハウジングに固定するブレーキ(B1)を備えることを特徴とする請求項2記載のハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項4】
前記出力軸に接続される第2の回転電機(M)を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項5】
前記内燃機関(Eg)と前記入力軸(16)の間にクラッチ(C5)を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項1】
内燃機関(Eg)と少なくとも1個の回転電機(G)とを備えたハイブリッド車両の駆動装置において、前記内燃機関に接続される入力軸(16)と、車輪側に接続される出力軸(22)と、前記入力軸にサンギヤ(Sf)が接続されるダブルピニオン式の第1遊星歯車機構(24)と、前記入力軸にキャリア(Cr)が接続されるシングルピニオン式の第2遊星歯車機構(26)と、前記入力軸の回転を減速して前記第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)に伝達可能な減速機構(Gr)と、前記第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)と前記第2遊星歯車機構のサンギヤ(Sr)とを断接するクラッチ(C4)と、前記第1遊星歯車機構のリングギヤ(Rf)と前記第2遊星歯車機構のリングギヤ(Rr)とを断接するクラッチ(C3)とを備えると共に、前記第2遊星歯車機構のリングギヤ(Rr)を前記出力軸に接続し、前記第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)に前記回転電機を接続するように構成したことを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項2】
前記減速機構(Gr)は、前記車両の走行状態に応じて前記入力軸と前記第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)とを断接可能なクラッチ(C1,C2)を備えることを特徴とする請求項1記載のハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項3】
前記第1遊星歯車機構のキャリア(Cf)を装置ハウジングに固定するブレーキ(B1)を備えることを特徴とする請求項2記載のハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項4】
前記出力軸に接続される第2の回転電機(M)を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項5】
前記内燃機関(Eg)と前記入力軸(16)の間にクラッチ(C5)を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のハイブリッド車両の駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−17091(P2012−17091A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67095(P2011−67095)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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