説明

ハイブリッド車両

【課題】故障発生時に速やかに退避走行をさせることができるハイブリッド車両を提供する。
【解決手段】ハイブリッド車両20は、車輪と、車輪を固定するロック機構36と、モータMG2と、エンジン22と、モータMG2およびエンジン22からのトルクを車輪の駆動軸に伝達する動力分割機構30と、モータMG2およびエンジン22を制御するとともに動力分割機構30の分配比を可変に制御する制御ユニット70とを備える。制御ユニット70は、ロック機構36が非作動状態においてモータMG2に異常が発生した場合であって、車速が所定値より大きいときには、モータMG2を非駆動状態としエンジン22からのトルクを車輪に伝達するように動力分割機構30を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハイブリッド車両に関し、特に、エンジンとモータとを用いて車輪を駆動するように構成されたハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2008−290547号公報(特許文献1)は、駆動軸に動力を出力する電動機の回転検出手段が異常状態であると疑われる際に、より確実に動力を出力することができるハイブリッド自動車を開示している。
【0003】
このハイブリッド自動車は、システム起動時に、モータジェネレータMG2の回転状態を検出する回転位置検出センサの状態を検出する。回転位置検出センサの状態が正常状態であると検出されていないときには、エンジンを始動するようモータジェネレータMG1とエンジンとを駆動制御する。回転位置検出センサの状態が異常状態であると検出されたときには、モータジェネレータMG1を介してエンジンから出力されるトルクだけがこのリングギヤ軸に出力されるようエンジンとモータジェネレータMG1とを駆動制御する。このように、回転位置検出センサが異常状態であると疑われるときには、その後、エンジンの始動ができなくなることがあり得るため、エンジンを始動しておくことによって、より確実に動力を出力する。
【0004】
このようにして、モータジェネレータMG2に故障が発生した可能性があっても、エンジンからのトルクによって退避走行を行なうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−290547号公報
【特許文献2】特開2008−168773号公報
【特許文献3】特開2006−250269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特開2008−290547号公報に開示された技術では、システム起動時に異常検出を行なうことが示されているのみで、車両起動後の停車時や走行時に異常が検出された場合の処理については特に示されていない。
【0007】
車両のシフトレンジがパーキング(P)レンジ以外である場合にモータジェネレータMG2の回転状態が制御できなければ、モータジェネレータMG1を始動するとその反力で車両が動く可能性がある。このためシフトレンジがPレンジ以外であれば、走行中であっても一旦車両を停止させ車両のシステムを再起動しなければ退避走行をさせることができない。
【0008】
走行中に故障が発生した場合であっても、可能であれば速やかに退避走行をさせるほうが望ましい。
【0009】
この発明の目的は、故障発生時に速やかに退避走行をさせることができるハイブリッド車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、要約すると、ハイブリッド車両であって、車輪と、車輪を固定するロック機構と、モータと、エンジンと、モータおよびエンジンからのトルクを車輪の駆動軸に伝達する動力分割機構と、モータおよびエンジンを制御するとともに動力分割機構の分配比を可変に制御する制御装置とを備える。制御装置は、ロック機構が非作動状態においてモータに異常が発生した場合であって、車速が所定値より大きいときには、モータを非駆動状態としエンジンからのトルクを車輪に伝達するように動力分割機構を制御する。
【0011】
好ましくは、制御装置は、モータに異常が発生した場合であって、車速が所定値より小さくかつエンジンが停止しているときには、ロック機構が作動するまで待ってからエンジンを始動させ、モータを非駆動状態としエンジンからのトルクを車輪に伝達するように動力分割機構を制御する。
【0012】
より好ましくは、制御装置は、モータに異常が発生した場合であって、車速が所定値より小さくかつエンジンが停止しているときには、ロック機構を作動させる操作を運転者に要求し、運転者が要求した操作を行なわないときには、車両の動作を停止させる。
【0013】
好ましくは、ハイブリッド車両は、車輪に制動力を与えるブレーキをさらに備える。制御装置は、モータに異常が発生した場合であって、車速が所定値より小さくかつエンジンが停止しているときには、ブレーキを作動させてからエンジンを始動させ、モータを非駆動状態としエンジンからのトルクを車輪に伝達するように動力分割機構を制御する。
【0014】
好ましくは、ハイブリッド車両は、ジェネレータをさらに備える。動力分割機構は、3つの回転軸がモータ、エンジンおよびジェネレータからのトルクを受けるように構成される。制御装置は、モータに異常が発生した場合であって、車速が所定値より大きいときには、モータを非駆動状態としジェネレータの回転を制御することによってエンジンからのトルクを車輪に伝達するように動力分割機構を制御する。
【0015】
より好ましくは、制御装置は、車速をエンジンの回転速度およびジェネレータの回転速度に基づいて算出する。
【0016】
より好ましくは、ハイブリッド車両は、車輪速センサをさらに備える。制御装置は、車速を車輪速センサの出力に基づいて算出する。
【0017】
より好ましくは、ハイブリッド車両は、車輪速センサをさらに備える。制御装置は、モータに異常が発生した場合に、エンジンの回転速度およびジェネレータの回転速度に基づいて算出した第1の車速と、車輪速センサの出力に基づいて算出した第2の車速とを比較し、第1、第2の車速の差分が所定値より小さい場合にエンジンを始動させ、差分が所定値より大きい場合にはモータおよびジェネレータを非駆動状態として差分が所定値より小さくなるまでエンジンの始動をせずに待機する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ハイブリッド車両に対して、故障発生時に速やかに退避走行をさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態のハイブリッド車両20の主たる構成を示す図である。
【図2】本実施の形態で実行されるエンジンの始動および直行走行モードへの移行についての制御を説明するためのフローチャートである。
【図3】動力分割機構の3軸の回転速度の関係を説明するための共線図である。
【図4】エンジンを始動させる場合の回転速度の変化を説明するための共線図である。
【図5】図2のステップS7で実行される車両停止時のエンジン始動処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】車両停止時のエンジン始動処理の変形例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0021】
[車両の全体構成]
図1は、本実施の形態のハイブリッド車両20の主たる構成を示す図である。
【0022】
図1を参照して、ハイブリッド車両20は、エンジン22と、エンジン22の出力軸であるクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分割機構30と、動力分割機構30に接続された発電可能なモータジェネレータMG1と、動力分割機構30に接続されたモータジェネレータMG2と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを含む。
【0023】
エンジン22は、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン22の運転状態を検出する各種センサから信号を入力するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0024】
動力分割機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、サンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを含む。動力分割機構30は、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。
【0025】
キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が連結され、サンギヤ31にはモータジェネレータMG1が連結されている。動力分割機構30は、モータジェネレータMG1が発電機として機能するときには、キャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配する。動力分割機構30は、モータジェネレータMG1が電動機として機能するときには、キャリア34から入力されるエンジン22からの回転力とサンギヤ31から入力されるモータジェネレータMG1からの回転力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ32の回転軸からギヤ機構37、デファレンシャルギヤ38を介して前輪39a,39bに出力される。
【0026】
ギヤ機構37には、パーキングロック機構36が取り付けられている。パーキングロック機構36は、ファイナルギヤ37aに取り付けられたパーキングギヤ36aと、パーキングギヤ36aと噛み合ってその回転駆動を停止した状態でロックするパーキングロックポール36bとを含む。パーキングロックポール36bは、シフトレバー81によって与えられるパーキングポジション(Pポジション)への変更信号が図示しないシフトケーブルを介して伝達されることにより、上下に作動する。パーキングロックポール36bは、パーキングギヤ36aとの噛合およびその解除によりパーキングロックおよびその解除を行なう。
【0027】
ファイナルギヤ37aは、機械的に駆動軸としてのリングギヤ32の回転軸に接続されているから、パーキングロック機構36は間接的に駆動軸としてのリングギヤ32の回転軸をロックすることになる。
【0028】
モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2は、発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機を用いることができる。モータジェネレータMG1,MG2は、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。
【0029】
インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線を含む。これにより、モータジェネレータMG1,MG2の一方で発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータジェネレータMG1,MG2から生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータジェネレータMG1とモータジェネレータMG2とにより電力収支のバランスをとるようにすれば、バッテリ50は充放電されない。
【0030】
ハイブリッド車両20は、さらに、インバータ92と、モータジェネレータMGRと、ファイナルギヤ96と、デファレンシャルギヤ98と、後輪99a、99bとを含む。インバータ92はモータジェネレータMGRを駆動し、ファイナルギヤ96の動力は、デファレンシャルギヤ98を介して後輪99a,99bに出力される。
【0031】
モータジェネレータMG1,MG2,MGRは、共にモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータジェネレータMG1,MG2,MGRを駆動制御するために必要な信号が入力されている。これらの信号は、例えばモータジェネレータMG1,MG2,MGRの回転子の回転速度を検出するレゾルバからの信号や、図示しない電流センサにより検出されモータジェネレータMG1,MG2,MGRに印加される相電流などを含む。モータECU40からは、インバータ41,42,92へのスイッチング制御信号が出力されている。
【0032】
モータECU40は、レゾルバ43,44から入力した信号に基づいて図示しない回転速度算出ルーチンによりモータジェネレータMG1,MG2の回転子の回転速度Nm1,Nm2やリングギヤ32の回転軸の回転速度Nrを計算している。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信している。
【0033】
モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータジェネレータMG1,MG2,MGRを駆動制御すると共に、必要に応じてモータジェネレータMG1,MG2,MGRの運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0034】
モータジェネレータMG2の回転軸48は、リングギヤ32の回転軸に接続されている。なお、回転軸48とリングギヤ32の回転軸との間に、減速機や、減速比が変更可能な変速機などを設けても良い。
【0035】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧、バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流、バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度などが入力されている。これらのバッテリ50の状態に関するデータは、必要に応じて通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に送信される。なお、バッテリECU52では、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)も演算している。
【0036】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心として構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶し情報を書込可能なフラッシュROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを含んで構成される。
【0037】
ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP、アクセルペダル83の踏み込み量に対応したアクセル開度Accを検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP、車輪速センサ88からの車輪速などが入力ポートを介して入力されている。
【0038】
また、ハイブリッド用電子制御ユニット70からは、パーキングロック機構36への制御信号などが出力されている。なお、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0039】
このような構成を有するハイブリッド車両20においては、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ32の回転軸に出力すべき要求トルクが計算され、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ32の回転軸に出力されるようにエンジン22とモータジェネレータMG1とモータジェネレータMG2とが運転制御される。
【0040】
ハイブリッド車両20の走行モードとしては、トルク変換走行モード、充放電走行モード、モータ走行モード、直行走行モードなどがある。
【0041】
トルク変換走行モードでは、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22が運転制御されると共に、エンジン22から出力される動力のすべてが動力分割機構30とモータジェネレータMG1とモータジェネレータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ32の回転軸に出力されるようモータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2が駆動制御される。
【0042】
充放電走行モードでは、要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22が運転制御されると共に、バッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分割機構30とモータジェネレータMG1とモータジェネレータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ32の回転軸に出力されるようモータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2が制御される。
【0043】
モータ走行モードでは、エンジン22の運転を停止してモータジェネレータMG2からの要求動力に見合う動力がリングギヤ32の回転軸に出力されるようモータジェネレータMG2が運転制御される。
【0044】
直行走行モードでは、モータジェネレータMG2の運転が停止され、モータジェネレータMG1でエンジントルクの反力を受け持ちながらエンジン22から動力分割機構30を介してリングギヤ32の回転軸に直接伝達されるトルク(これを直達トルクともいう)だけで走行が行なわれる。
【0045】
[モータジェネレータMG2の故障時の退避走行]
モータジェネレータMG2に関連する故障が検出された場合、この直行走行モードに移行すれば、退避走行をさせることが可能である。しかし、信号待ちなどの停車中であればエンジンの運転が停止されている場合がある。
【0046】
正常時であれば、このような場合にモータジェネレータMG1でエンジンを始動させるときモータジェネレータMG2によって始動の反力をキャンセルすることができる。しかし、モータジェネレータMG2に関連する故障が発生している場合には、反力のキャンセルができないのでエンジンを始動させると車両が進行方向とは逆に動いてしまう可能性がある。したがって、停車中であれば、パーキングロックがかかっている状態等の車両が動かない状態にしてからエンジンを始動させるのが望ましい。
【0047】
また、車両が所定の車速以上で走行していれば、車両の慣性力があるため、エンジンの始動時の反力で車両が進行方向とは逆に動いてしまうことはない。したがって、車両が動かない状態でなくてもエンジンを始動させることができる。しかし、モータジェネレータMG2の回転速度は、精度良く計測されているので車速の算出にも用いられている。モータジェネレータMG2の回転速度を検出するレゾルバ44に故障が発生した場合には、車両が停車中か否かも不明となり、エンジンの始動が可能な状況であるにも拘わらずその状況が検出できない。
【0048】
このような場合に必ず車両システムを停止させる必要があるのでは、走行中であっても車両を停止させなければ退避走行に移れないため不便である。したがって、本実施の形態では、エンジンの始動が可能な状況である場合に、故障したレゾルバ以外の手段で状況を把握してエンジンを始動させる。
【0049】
図2は、本実施の形態で実行されるエンジンの始動および直行走行モードへの移行についての制御を説明するためのフローチャートである。このフローチャートの処理は、所定のメインルーチンから一定時間ごとまたは所定の条件が成立するごとに、呼び出されて実行される。
【0050】
図2を参照して、このフローチャートの処理が開始されると、ステップS1において、モータジェネレータMG2系のフェールが発生しているか否かが判断される。モータジェネレータMG2系のフェールとは、たとえば図1のレゾルバ44の故障や、インバータ42からモータジェネレータMG2に供給される電流を検出するセンサ(図示せず)の故障などである。
【0051】
ステップS1においてモータジェネレータMG2系のフェールが発生していなかった場合には、ステップS12に処理が進み、制御はメインルーチンに移される。一方、ステップS1においてモータジェネレータMG2系のフェールが発生していた場合には、ステップS2に処理が進む。
【0052】
ステップS2では、エンジン回転速度NeおよびモータジェネレータMG1の回転速度Nm1に基づいて共線図から算出された車速Vcと車輪速センサ88の出力に基づいて算出された車速Vwとの差の絶対値が所定値Aより小か否かが判断される。
【0053】
図3は、動力分割機構の3軸の回転速度の関係を説明するための共線図である。
図3を参照して、動力分割機構の3軸には、モータジェネレータMG1の回転速度Nm1、エンジン回転速度Ne、およびモータジェネレータMG2の回転速度Nm2がそれぞれ与えられる。動力分割機構30には遊星歯車機構を使用しているため、エンジン22の回転速度NeおよびモータジェネレータMG1,MG2の回転速度Nm1,Nm2については、図3に示す共線図に示すように直線上に並ぶように連動して動く。
【0054】
そして、エンジン回転速度Ne,モータジェネレータMG1の回転速度Nm1およびモータジェネレータMG2の回転速度Nm2は式(1)で示す関係が成立する。
Ne=Nm1×1/(1+ρ)+Nm2×ρ/(1+ρ)・・・(1)
この式により、モータジェネレータMG1の回転速度Nm1とエンジン22の回転速度Neとに基づいてモータジェネレータMG2の回転速度Nm2を算出することができる。
【0055】
通常、車速が一定の場合、(a)モータジェネレータMG2のレゾルバ44の出力に基づいて求められる車速Vと、(b)モータジェネレータMG1の回転速度Nm1およびエンジン回転速度Neに基づいて式(1)を用いて算出した車速Vcと、(c)車速Vw(車輪速)とは同じ値を示す。ここで、モータジェネレータMG2のレゾルバ44が故障したときは(a)の車速Vの値のみが信頼できなくなる。
【0056】
このような故障が検出された場合には、車両制御に用いる車速を(a)で求めた車速Vから(b)で求めた車速Vcに切替えるようにしている。しかし、車速Vcは演算周期が遅い変数を参照して求めているので、切替え後に正常な車速に復帰するまでに所定時間末必要がある。(b)で求めた車速Vcと(c)で求めた車速Vwとの偏差が小さくなったら車速Vcが正しい値に更新されたと考えられるので、ステップS2においてこの判断を行なっている。
【0057】
ステップS2において、|Vc−Vw|<Aが成立しない場合には、まだ車速Vcが正しい値に更新されていないので、ステップS9に処理が進み、エンジンの始動やGDモードへの移行は行なわない。この場合、ステップS9においてエンジン停止中か否かが判断される。ステップS9でエンジン停止中であれば、ステップS10に処理が進み、インバータ41,42のスイッチング素子のゲートをシャットダウンして非活性状態とし、待機させる。一方、ステップS9でエンジン停止中でなければ、ステップS11に処理が進み、モータジェネレータMG1を用いてエンジンが停止しないようにエンジン回転速度の低下を防止する。
【0058】
ステップS10、S11のいずれかの処理が実行された場合には、ステップS12に処理が進み制御はメインルーチンに移される。
【0059】
一方、ステップS2において、|Vc−Vw|<Aが成立している場合には、車速Vcが正しい値に更新されていると考えられるので、ステップS3に処理が進む。ステップS3ではエンジン停止中か否かが判断される。ステップS3においてエンジンが停止中であると判断された場合には、ステップS4に処理が進み、エンジン停止中でなければステップS8に処理が進む。ステップS4ではでシフトレンジがPレンジであるか否かが判断される。
【0060】
ステップS4において、シフトレンジがPレンジであった場合には、パーキングロック機構36によって車輪の駆動軸が固定されているので、エンジン始動の反力で車両が逆方向に走行する心配はない。そこでステップS4からステップS6に処理が進む。ステップS6では、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、エンジンECU24およびモータECU40に対してエンジン始動を要求する。モータECU40はモータジェネレータMG2のインバータをシャットダウンして非駆動状態としつつ、エンジン22をクランキングするために、モータジェネレータMG1を回転させる。
【0061】
図4は、エンジンを始動させる場合の回転速度の変化を説明するための共線図である。
図4を参照して、車両停止中(Nm2=0)においてエンジン始動前では、エンジン回転速度Ne(0)=0、モータジェネレータMG1の回転速度Nm1(0)=0である。
【0062】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、エンジンECU24およびモータECU40に対してエンジン始動を要求する。モータECU40はモータジェネレータMG2のインバータをシャットダウンして非駆動状態とすると共に、エンジン22をクランキングするために、モータジェネレータMG1を回転させる。
【0063】
モータジェネレータMG2が正常であれば、エンジン22をクランキングする場合にモータジェネレータMG1を駆動したときにモータジェネレータMG2の回転軸に生じる反力は、モータジェネレータMG2を駆動することによってキャンセルしていた。
【0064】
しかし、モータジェネレータMG2系に異常が発生している場合には、この反力をキャンセルすることができない。シフトレンジがPレンジであった場合には、パーキングロック機構36によって車輪の駆動軸が固定されているので、エンジン始動の反力で車両が逆方向に走行する心配はない。そこでモータジェネレータMG1の回転速度をNm1(1)に増加させる。すると動力分割機構30の働きによってエンジン回転速度がNe(1)に増加する。これにより、エンジン22が自立運転可能となる。
【0065】
再び図2を参照して、ステップS4においてシフトレンジがPレンジでなかった場合には、ステップS5に処理が進む。ステップS5では、共線図から算出した車速Vcの絶対値がしきい値B(km/h)よりも大きいか否かが判断される。ここで、しきい値Bは、エンジン始動時に駆動軸に生じる反力を車両の慣性力が上回るような値に設定される。すなわち、車両がB(km/h)よりも大きい速度で走行していれば、エンジンを始動させたときにモータジェネレータMG2で反力をキャンセルしなくても、車両が逆方向に動くことは無い。なお、ステップS5において、車速Vcを用いる代わりに、車輪速センサ88の出力に基づいて算出された車速Vwの絶対値がしきい値Bよりも大きいか否かを判断するように変更しても良い。
【0066】
ステップS5において、|Vc|>Bが成立した場合には、ステップS6に処理が進む。ステップS6では、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、エンジンECU24およびモータECU40に対してエンジン始動を要求する。モータECU40はモータジェネレータMG2のインバータをシャットダウンして非駆動状態としつつ、エンジン22をクランキングするために、モータジェネレータMG1を回転させる。
【0067】
ステップS5において、|Vc|>Bが成立していない場合には、ステップS7に処理が進む。ステップS7では、車両停止時におけるエンジン始動処理が実行される。
【0068】
図5は、図2のステップS7で実行される車両停止時のエンジン始動処理を説明するためのフローチャートである。
【0069】
図1、図5を参照して、まずステップS101において、HAC(ヒルスタートアシストコントロール)が使用可能であるか否かが判断される。HACは、急な登り坂やすべりやすい丘面で発進する際に、ブレーキペダル85を踏み込んだあと放しても暫くブレーキ60を作動させたままにしておくことにより、車両の後退を緩和し発進しやすくする機能である。ステップS101でHACが使用可能である場合にはステップS102に処理が進む。
【0070】
ステップS102では、HACを作動させる(ブレーキペダルを踏まなくてもブレーキを作動させる)ことで、車輪の駆動軸をロックし、エンジン始動時の反力によって車両が逆方向に動くのを防ぐ。ステップS102においてブレーキによる駆動輪の固定が完了したら、ステップS108に処理が進む。
【0071】
一方、ステップS101においてHACが使用可能でなかった場合には、ステップS103に処理が進む。ステップS103では、音声や画面表示などで運転者に「シフトレバーをパーキング位置に設定してください。」などのメッセージを伝える。そして、ステップS104においてシフトレンジがPレンジに変更されたか否かが判断される。
【0072】
ステップS104において、シフトレンジがまだPレンジでなかった場合には、ステップS105に処理が進む。ステップS105では、ステップS103のPレンジ移行要求からX(秒)が経過したか否かが判断される。まだX(秒)が経過していなければステップS104に処理が戻り、再びシフトレンジがPレンジに変更されたか否かが判断される。ステップS105において、X(秒)が経過していた場合には、時間切れとして、ステップS106においてReadyOffすなわち車両のシステムの電源を一旦オフとする。この場合、車両のシステムの電源がオフされると共に、シフトレンジもPレンジに移動する。したがって、運転者が再起動をかければ、シフトレンジがPレンジに設定された状態でエンジンを始動できる。
【0073】
ステップS104において、Pレンジへの移行が確認できた場合には、ステップS108に処理が進む。
【0074】
ステップS108では、ブレーキが作動しているか、またはパーキングロック機構が働いているので、車両が逆方向に動く心配がない。そこで、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、エンジンECU24およびモータECU40に対してエンジン始動を要求する。モータECU40はモータジェネレータMG2のインバータをシャットダウンして非駆動状態としつつ、エンジン22をクランキングするために、モータジェネレータMG1を回転させる。
【0075】
ステップS108においてエンジンの始動が完了するとステップS109において処理は図2のフローチャートに移る。
【0076】
再び図2を参照して、ステップS3でNOであった場合(すなわちエンジンが運転中であった場合)およびステップS6またはステップS7においてエンジンが始動された場合には、ステップS8においてGDモードへの移行が行なわれる。
【0077】
GDモードとは、直行走行モードのことであり、モータジェネレータMG2の運転が停止され、モータジェネレータMG1でエンジントルクの反力を受け持ちながらエンジン22から動力分割機構30を介してリングギヤ32の回転軸に直接伝達されるトルクだけで走行が行なわれる。
【0078】
ステップS8の移行処理が完了すると、ステップS12において制御はメインルーチンに移される。
【0079】
なお、以上説明したうちの図5のフローチャートのエンジン始動処理は、図1に示す車両の構成のうち後輪を駆動するモータジェネレータMGRが搭載されていない車両(前輪のみ駆動する車両)であっても適用することができる。
【0080】
次に、始動時の反力のキャンセルにモータジェネレータMGRも使用する変形例について説明する。
【0081】
図6は、車両停止時のエンジン始動処理の変形例を説明するためのフローチャートである。
【0082】
図6に示したフローチャートの処理は、図2のステップS7に代えてステップS7Aとして実行される。そして、図6に示したフローチャートの処理には、図5に示したステップS7の処理に加えてステップS201,S202の処理が追加されている。ステップS101〜S108の処理は図5で説明したものと同様であるのでここでは説明は繰返さない。
【0083】
まず、ステップS7Aの処理が開始されると、ステップS201において、図1のモータジェネレータMGRが使用可能か否かが判断される。ステップS201においてモータジェネレータMGRが使用可能であれば、ステップS202に処理が進み、使用可能でなければステップS101に処理が進む。
【0084】
ステップS101に処理が進んだ場合には、以降図5と同様なステップS101〜S108の処理が実行される。
【0085】
ステップS202に処理が進んだ場合には、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、エンジンECU24およびモータECU40に対してエンジン始動を要求する。モータECU40はモータジェネレータMG2のインバータをシャットダウンして非駆動状態としつつ、エンジン22をクランキングするために、モータジェネレータMG1を回転させる。同時にモータECU40は、モータジェネレータMG1の反力をキャンセルするためにモータジェネレータMGRを駆動する。後輪を駆動するモータジェネレータMGRに前進方向にトルクを発生させれば、前輪において後退方向に反力トルクが発生しても、両者をキャンセルさせることができるので車両の後退が防止できる。
【0086】
これにより、エンジン停止時であってもエンジンを始動させて直行走行モード(GDモード)に移行することができる。
【0087】
[動作例]
車速80km/hから車速40km/hに減速中にモータジェネレータMG2に故障が発生した場合を考える。減速時には、エンジン回転速度は停止側に動くので、故障検出後(たとえば、レゾルバ44の断線など)にエンジン22を始動する。故障検出直後はモータジェネレータMG2の回転速度から算出している車速V(ECU認識車速)が信用できない値となっている。たとえば実際の車速が40km/hだがレゾルバ44の出力より算出する車速が3km/hであるなどということが発生する。そこで車速算出方法を、共線図を用いた方法に切替え車速Vcを算出する。ただし、応答がやや遅いので車速Vcが実際の車速になるまでたとえば1秒を要する。
【0088】
この遅延を検出する方法として、図2のステップS2において|Vw−Vc|を監視し、この差がA(たとえば1km/h)より小さくなればVcが実際の車速になったとみなし、車速に応じて直行モードに移行する。差がA以上である場合には、エンジン22が始動してなければインバータのゲートをシャットダウンし、駆動力をカットした状態で車速Vcが実際の車速になるのを待つ。差がA以上である場合であって、エンジン22が始動しているときには、エンジンが停止するのを防ぐべく、モータジェネレータMG1でエンジン回転速度を一定値以上に維持する。
【0089】
ECU認識車速が実際の車速になった後、ECU認識車速がしきい値B(例えば3km/h)より高い場合(ステップS5でYES)、エンジン始動し即座に直行走行モードに移行する。
【0090】
ECU認識車速が実際の車速になった後、ECU認識車速がしきい値B(例えば3km/h)より低い場合(ステップS5でNO)、車両停止時エンジン始動処理(ステップS7)を行なった後直行走行モードに移行する。
【0091】
車両停止時エンジン始動処理では、車両が4輪駆動車両であれば、エンジン始動時に逆方向に進行させる反力トルクをモータジェネレータMGRのトルクによって相殺し(ステップS102)、直行走行モードに移行させる。車両が2輪駆動車両であれば、HACを用いて逆方向進行を防止し、エンジンを始動させ直行走行モードに移行させる。HACが使えない場合には、「Pレンジに入れてください」というメッセージを表示し(ステップS103)、Pレンジでのエンジン始動を促す。
【0092】
[まとめ]
最後に、図面を再び参照して本実施の形態について総括する。なお、以下説明の簡単のため、主として発電機として動作するモータジェネレータMG1をジェネレータMG1と称し、主として電動機として動作するモータジェネレータMG2をモータMG2と称している。
【0093】
図1、図2を参照して、ハイブリッド車両20は、車輪と、車輪を固定するロック機構36と、モータMG2と、エンジン22と、モータMG2およびエンジン22からのトルクを車輪の駆動軸に伝達する動力分割機構30と、モータMG2およびエンジン22を制御するとともに動力分割機構30の分配比を可変に制御する制御ユニット70とを備える。制御ユニット70は、ロック機構36が非作動状態においてモータMG2に異常が発生した場合であって、車速が所定値(Bkm/h)より大きいときには(ステップS5でYES)、モータMG2を非駆動状態としエンジン22からのトルクを車輪に伝達するように動力分割機構30を制御する(ステップS8)。
【0094】
好ましくは、制御ユニット70は、モータMG2に異常が発生した場合であって、車速が所定値(Bkm/h)より小さくかつエンジン22が停止しているときには(ステップS3でYESかつステップS5でNO)、ロック機構36が作動するまで待ってから(ステップS104でYES)エンジン22を始動させ(ステップS108)、モータMG2を非駆動状態としエンジン22からのトルクを車輪に伝達するように動力分割機構30を制御する(ステップS8)。
【0095】
より好ましくは、図2、図5に示すように、制御ユニット70は、モータMG2に異常が発生した場合であって(ステップS1でYES)、車速Vcが所定値(Bkm/h)より小さくかつエンジン22が停止しているときには(ステップS3でYESかつステップS5でNO)、ロック機構36を作動させる操作を運転者に要求し(ステップS103)、運転者が要求した操作を行なわないときには(ステップS105)、車両の動作を停止させる(ステップS106)。
【0096】
好ましくは、ハイブリッド車両20は、車輪に制動力を与えるブレーキ60をさらに備える。図2、図5に示すように、制御ユニット70は、モータMG2に異常が発生した場合であって(ステップS1でYES)、車速Vcが所定値(Bkm/h)より小さくかつエンジン22が停止しているときには(ステップS3でYESかつステップS5でNO)、ブレーキ60を作動させてからエンジン22を始動させ(ステップS102,S108)、モータMG2を非駆動状態としエンジン22からのトルクを車輪に伝達するように動力分割機構30を制御する(ステップS8)。
【0097】
好ましくは、ハイブリッド車両20は、ジェネレータMG1をさらに備える。動力分割機構30は、3つの回転軸がモータMG2、エンジン22およびジェネレータMG1からのトルクを受けるように構成される。制御ユニット70は、モータMG2に異常が発生した場合であって、車速が所定値より大きいときには(ステップS1でYESかつステップS5でYES)、モータMG2を非駆動状態としジェネレータMG1の回転を制御することによってエンジン22からのトルクを車輪に伝達するように動力分割機構30を制御する(ステップS8)。
【0098】
より好ましくは、図3および式(1)の関係を用いて、制御ユニット70は、車速をエンジン22の回転速度NeおよびジェネレータMG1の回転速度Nm1に基づいて算出する。
【0099】
より好ましくは、ハイブリッド車両20は、車輪速センサ88をさらに備える。制御ユニット70は、車速を車輪速センサ88の出力に基づいて算出する。
【0100】
より好ましくは、ハイブリッド車両20は、車輪速センサ88をさらに備える。制御ユニット70は、モータMG2に異常が発生した場合に、エンジン22の回転速度およびジェネレータMG1の回転速度に基づいて算出した第1の車速Vcと、車輪速センサ88の出力に基づいて算出した第2の車速Vwとを比較し、第1、第2の車速の差分が所定値より小さい場合に(ステップS2でYES)エンジン22を始動させ(図2:ステップS6またはステップS7)、差分が所定値より大きい場合には(ステップS2でNO)モータおよびジェネレータMG1を非駆動状態として差分が所定値より小さくなるまでエンジン22の始動をせずに待機する(図2:ステップS9〜ステップS11)。
【0101】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0102】
20 ハイブリッド車両、22 エンジン、24 エンジンECU、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分割機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、36 パーキングロック機構、36a パーキングギヤ、36b パーキングロックポール、37 ギヤ機構、37a,96 ファイナルギヤ、38,98 デファレンシャルギヤ、39a,39b 前輪、40 モータECU、41,42,92 インバータ、43,44 レゾルバ、48 回転軸、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリECU、54 電力ライン、60 ブレーキ、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 フラッシュROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車輪速センサ、99a,99b 後輪、MG1,MG2,MGR モータジェネレータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と、
前記車輪を固定するロック機構と、
モータと、
エンジンと、
前記モータおよび前記エンジンからのトルクを前記車輪の駆動軸に伝達する動力分割機構と、
前記モータおよび前記エンジンを制御するとともに前記動力分割機構の分配比を可変に制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記ロック機構が非作動状態において前記モータに異常が発生した場合であって、車速が所定値より大きいときには、前記モータを非駆動状態とし前記エンジンからのトルクを前記車輪に伝達するように前記動力分割機構を制御する、ハイブリッド車両。
【請求項2】
前記制御装置は、前記モータに異常が発生した場合であって、車速が所定値より小さくかつ前記エンジンが停止しているときには、前記ロック機構が作動するまで待ってから前記エンジンを始動させ、前記モータを非駆動状態とし前記エンジンからのトルクを前記車輪に伝達するように前記動力分割機構を制御する、請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項3】
前記制御装置は、前記モータに異常が発生した場合であって、車速が所定値より小さくかつ前記エンジンが停止しているときには、前記ロック機構を作動させる操作を運転者に要求し、運転者が要求した操作を行なわないときには、車両の動作を停止させる、請求項2に記載のハイブリッド車両。
【請求項4】
前記車輪に制動力を与えるブレーキをさらに備え、
前記制御装置は、前記モータに異常が発生した場合であって、車速が所定値より小さくかつ前記エンジンが停止しているときには、前記ブレーキを作動させてから前記エンジンを始動させ、前記モータを非駆動状態とし前記エンジンからのトルクを前記車輪に伝達するように前記動力分割機構を制御する、請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項5】
ジェネレータをさらに備え、
前記動力分割機構は、3つの回転軸が前記モータ、前記エンジンおよび前記ジェネレータからのトルクを受けるように構成され、
前記制御装置は、前記モータに異常が発生した場合であって、車速が所定値より大きいときには、前記モータを非駆動状態とし前記ジェネレータの回転を制御することによって前記エンジンからのトルクを前記車輪に伝達するように前記動力分割機構を制御する、請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項6】
前記制御装置は、前記車速を前記エンジンの回転速度および前記ジェネレータの回転速度に基づいて算出する、請求項5に記載のハイブリッド車両。
【請求項7】
車輪速センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記車速を前記車輪速センサの出力に基づいて算出する、請求項5に記載のハイブリッド車両。
【請求項8】
車輪速センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記モータに異常が発生した場合に、前記エンジンの回転速度および前記ジェネレータの回転速度に基づいて算出した第1の車速と、前記車輪速センサの出力に基づいて算出した第2の車速とを比較し、前記第1、第2の車速の差分が所定値より小さい場合に前記エンジンを始動させ、前記差分が所定値より大きい場合には前記モータおよび前記ジェネレータを非駆動状態として前記差分が前記所定値より小さくなるまで前記エンジンの始動をせずに待機する、請求項5に記載のハイブリッド車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−46252(P2011−46252A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195342(P2009−195342)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】